説明

核酸マイクロスフェア、その生成および送達

【課題】特に医学的問題への取り組みにおいて樹状細胞寛容(dendritic cell tolerance)を誘導するための、核酸マイクロスフェアの調製およびそれらの送達の提供。
【解決手段】本発明は、一般に、特に医学的問題への取り組みにおいて樹状細胞寛容(dendritic cell tolerance)を誘導するための、核酸マイクロスフェアの調製およびそれらの送達に関する。核酸を含む化合物を適切な溶媒または溶媒系の中で溶解し、そして生じる溶液からマイクロスフェアを形成することによって、核酸を調製する。このマイクロスフェアは、核酸の送達が有用である状態からの保護として(例えば、自己免疫疾患の処置において)個体に投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、特に医学的問題への取り組みにおいて樹状細胞寛容(dendritic cell tolerance)を誘導するための、核酸マイクロスフェアの調製およびそれらの送達に関する。より具体的には、本発明は、水性条件を使用して作製されるマイクロスフェアを介する薬物送達技術に関する。これらのマイクロスフェアは、干渉RNA、プラスミドDNA、アンチセンス(AS)オリゴヌクレオチド、または他の核酸を取り入れ得る。これらのマイクロスフェアは、細胞機能のインビボまたはインサイチュでの変更のために使用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
微小粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルは、1ミリメートル未満の直径、より好ましくは100マイクロメートル未満の直径を有する、固体または半固体の粒子であり、合成ポリマー、タンパク質、および多糖類を含む、種々の材料で形成され得る。マイクロスフェアは、多くの異なる用途(主に、分離、診断、および薬物送達)において使用されてきた。
【0003】
多数の異なる技術が、合成ポリマー、天然ポリマー、タンパク質、および多糖類からこれらのマイクロスフェアを作製するために使用され得、その技術として、相分離、溶媒の蒸発、乳化、および噴霧乾燥が挙げられる。一般に、これらのポリマーは、これらのマイクロスフェアの支持構造を形成し、そして、目的の薬物は、そのポリマー構造中へと組み込まれる。マイクロスフェアの形成のために使用される例示的なポリマーとしては、以下が挙げられる:Ruizへの特許文献1、Reidらへの特許文献2、Ticeらへの特許文献3、Ticeらへの特許文献4、Ticeらへの特許文献5、Singhらへの特許文献6、Boyesらへの特許文献7、Ticeらへの特許文献8、Southern
Research Instituteへの特許文献9において記載されるような、乳酸のホモポリマーおよびグリコール酸のホモポリマー、ならびに乳酸とグリコール酸とのコポリマー(PLGA);Illumへの特許文献10において記載される、テトロニック(tetronic)908およびポロキサマー(poloxamer)407のようなブロックコポリマー;ならびに、Cohenらへの特許文献11において記載されるような、ポリフォスファゼン。これらのようなポリマーを使用して生成されるマイクロスフェアは、低い充填効率(loading efficiency)を示し、しばしば、目的の薬物のうちの少ない割合しかそのポリマー構造内へ組み込むことが出来ない。従って、しばしば、治療効果を達成するために、相当な量のマイクロスフェアが投与されねばならない。
【0004】
球状のビーズまたは粒子は、生化学者のための手段として長年市販されてきた。例えば、ビーズに結合した抗体は、特定のリガンドに特異的な比較的大きい粒子を作る。この抗体によって被覆された大きな粒子は、慣用的に、細胞活性化のために細胞の表面上のレセプターを架橋するために使用され、免疫アフィニティー精製のために固相へ結合され、さらに、薬剤を所望の部位へと標的化させるための、粒子に結合した組織特異的または腫瘍特異的な抗体を使用して、長時間にわたってゆっくり放出される治療薬を送達するために使用され得る。
【0005】
抗体を固相マトリクスに対して共有結合させる一般的な方法は、ビーズを化学的結合剤(chemical conjugating agent)で誘導体化し、次いで、この抗体を活性化ビーズに結合させることである。タンパク質分子よりもむしろ合成ポリマービーズを使用することは、多くのタンパク質が耐え得るよりずっと厳しい誘導体化条件の使用を可能とし、比較的安価であり、そしてしばしば広範囲の変性条件に対して安定である結合を生み出す。全てが多様な成分とサイズを有する、多数の誘導体化ビーズが市販されている。合成ポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリスチレン、またはラテックス)から形成されるビーズは、多数の販売者(例えば、Bio−Rad Laboratories(Richmond,Calif.)、およびLKB Produkter(Stockholm,Sweden))から市販されている。天然の高分子および粒子(例えば、アガロース、架橋アガロース、グロブリン、デオキシリボ核酸、およびリポソーム)から形成されるビーズは、Bio−Rad Laboratories、Pharmacia(Piscataway,N.J.)、およびIBF(France)のような販売元から市販されている。ポリアクリルアミドとアガロースとのコポリマーから形成されるビーズは、IBFおよびPharmaciaのような販売元から市販されている。磁気ビーズは、Dynal Inc.(Great Neck,N.Y.)のような販売元から市販されている。
【0006】
現行で利用可能な微小粒子またはビーズの一つの不都合は、それらを生成することが難しく、かつ高価であることである。これらの公知の方法によって生成される微小粒子は、広範囲の粒子サイズ分布を有し、しばしば均一性を欠き、そして、活性成分の濃度が高い場合、長期の放出動態を示すことが出来ない。さらに、これらの公知の方法において使用されるポリマーは、微小粒子を形成するために有機溶媒に溶解される。従って、これらは、有機溶媒を扱うために設計された特別な設備において生成されねばならない。これらの有機溶媒は、微小粒子中に含まれるタンパク質またはペプチドを変性させ得る。残留する有機溶媒は、ヒトまたは動物へ投与される場合、毒性であり得る。
【0007】
加えて、利用可能な微小粒子は、治療薬を投与するために一般的に使用される針のサイズの口径に適合するのに、または吸入による投与のために有用であるのに、十分に小さいサイズであることは、滅多にない。例えば、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)を使用して調製される微小粒子は、大きく、そして凝集する傾向を有する。生成物の損失をもたらすサイズ選択の工程が、注射のためには大きすぎる粒子を除去するために必要である。注射のために適切なサイズのPLGA粒子は、大きい粒子サイズに対応するために、大きいゲージの針を通して投与されねばならず、しばしば、患者にとっての不快をもたらす。
【0008】
一般には、現行で利用可能な多数の微小粒子は、その内容物を水性媒体へ放出するために活性化される。従って、これらの微小粒子は、早期の放出を防ぐためには、凍結乾燥されねばならない。加えて、PLGA系を使用して調製されるもののような粒子は、侵食および拡散の両方に基づく放出動態を示す。この型の系においては、初期バースト、すなわち薬物の急速な放出が観察される。このバースト効果は、この粒子が投与された患者において望ましくない副作用をもたらし得る。
【0009】
標的の薬物を被包するための脂質を使用して調製される微小粒子は、公知である。例えば、Sinil Kimに対する特許文献12において記載されるように、多重の水性区画を取り囲んで粒子を形成する二重層の膜に配置される脂質は、その後の送達のための水溶性薬物を被包するために使用され得る。これらの粒子は、一般に、サイズが10マイクロメートルより大きく、関節内投与、クモ膜下腔内投与、皮下投与、および硬膜外投与のために設計される。あるいは、リポソームが、低分子の静脈内送達のために使用されてきた。リポソームは、単一または複数のリン脂質およびコレステロールの二重層からなる球状粒子である。リポソームは、サイズが30マイクロメートル以上であり、種々の水溶性または脂溶性の薬物を運ぶことが出来る。リポソーム技術は、脂質成分の純度、予測される毒性、小胞の均一性および安定性、過剰の取り込み、ならびに製造および貯蔵寿命の難点を含む問題によって妨げられている。
【0010】
医学界のための一目的は、処置のための、被験体(動物または哺乳動物を含むが、それらに限定されない)の細胞への核酸の送達である。例えば、核酸は、培養物中(インビトロ)の細胞へは、比較的効率的に送達され得るが、核酸が動物へ(インビボで)送達される場合は、ヌクレアーゼが、高い比率での核酸分解をもたらす。
【0011】
核酸をヌクレアーゼ分解から保護することに加えて、核酸送達ビヒクルは、低毒性を示さねばならず、細胞によって効率的に取り込まれねばならず、そして、よく規定された、容易に製造される処方を有さねばならない。臨床試験において示されるように、送達のためのウイルスベクターは、インビボで、非常に有害で致死性ですらある免疫応答をもたらし得る。加えて、この方法は、インビボで変異促進性の効果を有する可能性を有する。異なる処方の脂質複合体(例えば、リポソームまたはカチオン性脂質複合体)中に核酸を封入することによる送達は、一般に、インビボでは非効果的であって、毒性効果を有し得る。核酸と種々のポリマーまたはペプチドとの複合体は、一貫性のない結果を示し、これらの処方の毒性は、まだ解決されていない。核酸はまた、送達のためにポリマーマトリクス中に被包されてきたが、これらの場合において、これらの粒子は広いサイズ範囲を有し、治療用途のための有効性は、実証されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,213,812号明細書
【特許文献2】米国特許第5,417,986号明細書
【特許文献3】米国特許第4,530,840号明細書
【特許文献4】米国特許第4,897,268号明細書
【特許文献5】米国特許第5,075,109号明細書
【特許文献6】米国特許第5,102,872号明細書
【特許文献7】米国特許第5,384,133号明細書
【特許文献8】米国特許第5,360,610号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第248,531号明細書
【特許文献10】米国特許第4,904,479号明細書
【特許文献11】米国特許第5,149,543号明細書
【特許文献12】米国特許第5,422,120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、核酸の送達の問題に取り組み、有効な核酸処方物を提供する必要性が存在する。また、マイクロスフェアの開発およびマイクロスフェアを作製する新規の方法への、現行での必要性が存在する。マイクロスフェアおよびそれらの調製は、Scottらへの米国特許第6,458,387号、Woiszwilloらへの同第6,268,053号、同第6,090,925号、同第5,981,719号、および同第5,599,719号、ならびにWoiszwilloへの同第5,578,709号において記載されている。前述の参考文献および本明細書において認められる全ての他の参考文献は、本明細書において参考として援用される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、生物学的に活性な因子(例えば、DNA、siRNA(サイレンシング(silencing)RNA、二本鎖RNAとしてもまた公知である)、mRNA、tRNA、および全ての他の核酸(オリゴヌクレオチドを含むが、それに限定されない)からなるマイクロスフェア、その調製方法および使用方法に関する。本発明のマイクロスフェア送達アプローチは、送達される核酸が細胞のヌクレアーゼへ接触することを防ぐかまたは妨げ、それによって治療用核酸の早期分解を防ぐと考えられる。
【0015】
核酸含有マイクロスフェアは、種々の疾患の処置のために使用され得、そのような疾患としては、以下のような自己免疫疾患が挙げられるが、それらに限定されない:多発性硬化症、1型真性糖尿病、乾癬、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、バージャー病(IgA腎症)、慢性疲労性症候群、クローン病、皮膚筋炎、線維筋痛症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、扁平苔癬、重症筋無力症、特発性(odopathic)血小板減少性紫斑病、リウマチ熱、慢性関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリトマトーデス、潰瘍性大腸炎、および白斑。さらに、これらのマイクロスフェアは、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAのアプローチなどによって処置され得るか媒介され得るかまたは緩和され得る疾患もしくは状態を含む、他の樹状細胞関連疾患もしくはマクロファージ関連疾患、または他の食作用細胞に基づく疾患もしくは状態を処置するために使用され得る。
【0016】
本発明の一実施形態において、被験体へのASオリゴヌクレオチドのマイクロスフェア送達は、個体における1型糖尿病の発症への取り組みと組み合わせて、樹状細胞寛容を誘導するために行われる。ASオリゴヌクレオチド含有マイクロスフェアは、水性条件を使用して作製される。これらのマイクロスフェアは、遺伝子発現を阻害するために使用され、被験体における自己免疫性糖尿病型の状態を予防するために使用される。本発明のマイクロスフェアは、進行中の状態を処置するために、または予防的治療として使用され得る。
【0017】
本発明のマイクロスフェアは、また、オリゴヌクレオチドを含む、複数の生物学的に活性な因子からなり得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、CD40、CD80、およびCD86の一次転写産物を標的とする三種のASオリゴヌクレオチドが合成され、このオリゴヌクレオチド混合物の水溶液が調製されて、ポリマー溶液と組み合わされる。プロセシングの後で、オリゴヌクレオチドを含有するマイクロスフェアが提供される。
【0019】
本発明のマイクロスフェアの調製は、架橋剤、ポリカチオン、ポリアニオン、および/またはエネルギー源(例えば、熱)を用いて行われても、これらを用いずに行われてもよい。
【0020】
本発明に従うマイクロスフェアは、インビボおよびインサイチュの手順(例えば、直接皮下送達)で投与されるのに特によく適している。この点に関する一適用は、皮下の腫瘍の処置への適用、およびウイルス感染の処置への適用である。これらのマイクロスフェアは、種々の他の投与経路を介して送達され得る。そのような他の投与経路として以下が挙げられるが、それらに限定されない:経口投与、肺投与、鼻投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、眼投与、皮内投与、腹腔内投与、および坐剤投与、ならびにこれらの組合せ。
【0021】
本発明のマイクロスフェアはまた、診断目的のために使用され得、そのような診断として、遺伝子診断が挙げられるが、それに限定されない。
【0022】
種々の組合せを含む、本発明のこれらの局面、目的、特徴、および利点、ならびに他の局面、目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明の考察から明白であり、それを介して明確に理解される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
約20重量%〜約100重量%の間の一種以上の核酸を含有し、平均粒子サイズが約50マイクロメートル以下である、マイクロスフェア。
(項目2)
前記核酸が、前記マイクロスフェアの約30重量%〜約100重量%の間を構成する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目3)
前記核酸が、前記マイクロスフェアの約50重量%〜約100重量%の間を構成する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目4)
前記核酸が、前記マイクロスフェアの約70重量%〜約100重量%の間を構成する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目5)
前記核酸が、前記マイクロスフェアの約90重量%〜約100重量%の間を構成する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目6)
前記核酸が、前記マイクロスフェアの少なくとも約95重量%を構成する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目7)
前記マイクロスフェアが、少なくとも2種の異なる核酸を含有する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目8)
前記核酸の少なくとも1つがオリゴヌクレオチドである、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目9)
前記マイクロスフェアが、少なくとも2種の異なるオリゴヌクレオチドを含有する、項目8に記載のマイクロスフェア。
(項目10)
前記マイクロスフェアが、約2マイクロメートル以下の平均粒子サイズおよび約0.04マイクロメートル〜約8マイクロメートルの粒子サイズ分布を有する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目11)
前記マイクロスフェアが、約2マイクロメートル以下の平均粒子サイズおよび約0.04マイクロメートル〜約8マイクロメートルの粒子サイズ分布を有する、項目7に記載のマイクロスフェア。
(項目12)
前記マイクロスフェアが、約2マイクロメートル以下の平均粒子サイズおよび約0.04マイクロメートル〜約8マイクロメートルの粒子サイズ分布を有する、項目8に記載のマイクロスフェア。
(項目13)
前記マイクロスフェアが、約1マイクロメートル以下の平均粒子サイズおよび約0.2マイクロメートル〜約4マイクロメートルの粒子サイズ分布を有する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目14)
前記マイクロスフェアが、約1マイクロメートル以下の平均粒子サイズおよび約0.2マイクロメートル〜約4マイクロメートルの粒子サイズ分布を有する、項目7に記載のマイクロスフェア。
(項目15)
前記マイクロスフェアが、約1マイクロメートル以下の平均粒子サイズおよび約0.2マイクロメートル〜約4マイクロメートルの粒子サイズ分布を有する、項目8に記載のマイクロスフェア。
(項目16)
前記核酸が、DNA、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴリボヌクレオチド、DNA/RNAハイブリッドオリゴヌクレオチド、mRNA、siRNA、またはtRNA、およびこれらの組合せからなる群より選択される、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目17)
前記マイクロスフェアが懸濁液中に存在する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目18)
前記マイクロスフェアが乾燥粉末処方物中に存在する、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目19)
被験体を処置する方法であって、該被験体に項目1に記載のマイクロスフェアを投与する工程を包含する、方法。
(項目20)
項目15に記載の方法であって、ここで、前記マイクロスフェアの送達のための投与経路が、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、局所経路、皮内経路、腹腔内経路、経口経路、肺経路、眼経路、鼻経路、口腔内経路、膣内経路、直腸経路、およびこれらの組合せからなる群より選択される、方法。
(項目21)
個体を自己免疫疾患から保護するための方法であって、項目1に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、方法。
(項目22)
個体を自己免疫疾患から保護するためのプロセスであって、項目7に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、プロセス。
(項目23)
核酸を溶媒で溶解して組成物を形成する工程によって、そして該組成物からマイクロスフェアを形成する工程によって、該核酸を含む生物学的に活性なマイクロスフェアを生成するためのプロセスであって、該マイクロスフェアは、約50マイクロメートル以下の平均粒子サイズを有する、プロセス。
(項目24)
少なくとも1種のポリカチオンが前記溶媒に添加される、項目23に記載のプロセス。
(項目25)
前記ポリカチオンが、ポリ−リジン、ポリ−オルニチン、ポリ−エチレン−イミン、プロラミン、プロタミン、ポリビニルピロリドン、ポリアルギニン、ビニルアミン、およびこれらの組合せからなる群より選択される、項目24に記載のプロセス。
(項目26)
前記ポリカチオンはポリ−リジンである、項目25に記載のプロセス。
(項目27)
前記ポリカチオンはポリ−オルニチンである、項目25に記載のプロセス。
(項目28)
少なくとも1種のポリアニオンが前記溶媒に添加される、項目23に記載のプロセス。
(項目29)
少なくとも1種のポリマーが前記溶媒に添加される、項目23に記載のプロセス。
(項目30)
前記ポリマーが、多糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、およびこれらの組合せからなる群より選択される、項目29に記載のプロセス。
(項目31)
前記形成工程が、前記組成物への架橋剤の添加と共に行われる、項目23に記載のプロセス。
(項目32)
前記形成工程が、前記組成物へのエネルギーの添加と共に行われる、項目23に記載のプロセス。
(項目33)
前記形成工程が、前記組成物中のポリカチオン成分の非存在下において行われる、項目23に記載のプロセス。
(項目34)
前記形成工程が、前記組成物中の架橋成分の非存在下において行われる、項目23に記載のプロセス。
(項目35)
前記形成工程が、前記組成物中のポリアニオン成分の非存在下において行われる、項目23に記載のプロセス。
(項目36)
前記形成工程が、前記組成物から前記マイクロスフェアを形成するためのエネルギー源を適用せずに行われる、項目23に記載のプロセス。
【0023】
この説明の過程において、添付の図面への参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、1型糖尿病における膵臓インスリン産生β細胞の自己免疫性破壊における樹状細胞の役割の略図である。
【図2】図2は、βガラクトシダーゼ遺伝子含有プラスミドDNAベクターの図である。
【図3】図3は、βガラクトシダーゼ遺伝子含有プラスミドDNA(pDNA)によるNIH 3T3線維芽細胞のトランスフェクションの証拠を提供する、顕微鏡写真である。
【図4】図4は、各々DNAaseへの曝露の後の、裸のpDNAのアガロース電気泳動ゲルの顕微鏡写真および本明細書発明に従う2種のpDNAマイクロスフェア処方物の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、4種の異なるプラスミドDNAトランスフェクション適用における、βガラクトシダーゼ活性の棒グラフである。
【図6】図6は、ASオリゴヌクレオチドとポリ−L−リジンポリカチオンとのマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、ASオリゴヌクレオチドとポリ−L−リジンポリカチオンとのマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、ASオリゴヌクレオチドとポリ−L−リジンポリカチオンとのマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、ASオリゴヌクレオチドとポリ−L−リジンポリカチオンとのマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、ASオリゴヌクレオチドおよびポリ−L−オルニチンポリカチオンを含むマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】図11は、ASオリゴヌクレオチドおよびポリ−L−オルニチンポリカチオンを含むマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】図12は、ASオリゴヌクレオチドおよびポリ−L−オルニチンポリカチオンを含むマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】図13は、ASオリゴヌクレオチドおよびポリ−L−オルニチンポリカチオンを含むマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、ポリカチオン成分なしで形成されたASオリゴヌクレオチドのマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】図15は、ポリカチオン成分なしで形成されたASオリゴヌクレオチドのマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】図16は、本発明のマイクロスフェアで処置され、そして3種の一次転写産物を標的とするASオリゴヌクレオチドの送達のための他の手順に従って処置された、3群のNODマウスにおける糖尿病発症率をまとめるプロットである。
【図17】図17は、本発明に従うsiRNAマイクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(好ましい実施形態の説明)
必要とされるように、本発明の詳細な実施形態が、本明細書において開示される;しかし、開示される実施形態は、本発明の例示でしかなく、本発明は、種々の形態において実施され得ることが理解されるべきである。従って、本明細書において開示される具体的な詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲のための基礎として、および、事実上あらゆる適切な様式において本発明を多様に使用することを当業者に教示するための代表的な基礎としてのみ、解釈されるべきである。
【0026】
一般に、本発明のマイクロスフェアは、活性因子(単数または複数)からなり、好ましくは実質的に球状であり、そして、細胞取り込みに適したサイズ範囲の、実質的に狭いサイズ分布を有する。これらのマイクロスフェアは、最適な投与方法によって送達され得、そのような投与方法としては、非経口送達、経口経路による投与、肺経路による投与、眼経路による投与、デポー系(depot system)の使用による投与、および他の投与経路が挙げられる。
【0027】
これらのマイクロスフェアは、核酸活性因子(例えば、DNA、RNA、siRNA、mRNA、tRNA,および他の型の核酸(RNAオリゴヌクレオチドまたはDNAオリゴヌクレオチドおよびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない)を含有する。本発明の好ましいマイクロスフェアは、一種以上のオリゴヌクレオチドを含む。これらのマイクロスフェアは、種々の疾患の処置のための治療薬として、および/または診断作業(機能的ゲノミクスが挙げられるが、それに限定されない)のための手段として有用である。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドマイクロスフェアは、mRNAがリボソームに到達することを妨げることによって、タンパク質産生プロセスの翻訳期を妨害し得る。これらのアンチセンスマイクロスフェアは、罹患した細胞、ウイルス、または細菌へと送達され、ここで、これらのマイクロスフェアは、その標的mRNAに特異的に結合(ハイブリダイズ)する。結果として、そのmRNAは分解され、従って、リボソームによって機能的なタンパク質へと翻訳されない。従って、アンチセンスマイクロスフェアは、体内におけるタンパク質の過剰発現および/または過少発現(例えば、自己免疫疾患において生じる発現)に関連する疾患と戦うための有効な手段である。
【0028】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの重要な利点は、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それらが一つの遺伝子の発現を阻害することにおいて、特異性が高いことである。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下のことにおいて、普遍的である:理論上、ASオリゴヌクレオチドは、任意の遺伝子およびそのmRNAに対して開発され得ること;DNA配列が、ASヌクレオチドの設計のために必要とされる唯一の情報であること。ASオリゴヌクレオチドはまた、動物およびヒトの培養細胞において有効である。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドマイクロスフェアはまた、非常に特異的な部位を有し、そして蛍光マーカーで標識され得るので、診断上有用であることにおいて「立証可能」である。
【0029】
オリゴヌクレオチドが、熱、振とう、および他の機械的または化学的処置によって容易に損傷を受け、その結果、そのオリゴヌクレオチドはもはや標的核酸に接着してその作用を遮断することが出来なくなることは、公知である。また、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドなどは、インビボでは非常に短い寿命(数分から数時間)を有し、細胞への効率的な送達を必要とし、そして、いくつかの状況では、分解酵素を避けるために直接的に、核への送達を必要とすることも、公知である。従って、これらの因子は、代表的には、「裸」では首尾よく送達され得ず、それらのインビボでの送達を可能にするような方法において保護されるかまたは処方されることを必要とする。
【0030】
本発明のオリゴヌクレオチドは、マイクロスフェアへの組み込みによって、それらの生物学的活性を保持する。加えて、これらのマイクロスフェアはまた、高い充填効率を提供する。言い換えると、そのマイクロスフェアの総重量に基づいて、高濃度(例えば、30重量%〜100重量%の核酸)のマイクロスフェアを服用することによって、より大きな用量での治療用核酸が、被験体へ投与され得る。本明細書において別に特定されない限り、パーセンテージは、その組成物の総重量に基づく、重量パーセントである。これらのマイクロスフェアは、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび他の型の核酸分子のための、非ウイルス性送達手段を提供する。
【0031】
これらのマイクロスフェアは、実質的に球状の形態の生物学的に活性な化合物を含む。代表的には、これらのマイクロスフェアは、平均粒子サイズが50マイクロメートル以下の、実質的に狭い粒子サイズ分布を有する。代表的には、この粒子サイズは、10マイクロメートル未満であり、より代表的には、5マイクロメートル未満である。好ましくは、これらは、狭いサイズ分布を有し、平均粒子サイズが、約0.04マイクロメートル〜約8マイクロメートルの間、または約0.1マイクロメートル〜約4マイクロメートルの間、または約0.2マイクロメートル〜約4マイクロメートルの間、または約0.4マイクロメートル〜約4マイクロメートルの間であり、そして約1マイクロメートルのマイクロスフェアが望ましい用途のためには、約1マイクロメートル〜約3マイクロメートルの間の範囲である。平均粒子サイズは、例えば、約2マイクロメートルであり得、そしてこの粒子サイズ範囲は、所望の用途に適合するように合わせられ得る。
【0032】
これらのマイクロスフェアは、好ましくは、実質的に無形または非結晶性の核酸を含む。すなわち、これらの核酸は、無形または半結晶性の形態である。本明細書において使用される場合、「無形」とは、核酸の概してランダムな固形形態を指し、ここで、このマイクロスフェア中のこの核酸の結晶格子は存在せず、そして、「半結晶性」とは、核酸の概してランダムな固形形態を指し、ここで、このマイクロスフェアの核酸内容物は、50%未満の結晶格子形態の核酸を含む。
【0033】
所望のサイズを有するマイクロスフェア形態での生物学的に活性な化合物の送達は、薬物の効力を増大させ得、損失を減少させ得る。このことはまた、高い投薬量の活性因子によって引き起こされる有害な効果を低減させる。マイクロスフェアのサイズは、このマイクロスフェアがどの器官に対して標的化されるかを決定し得る。加えて、インビボでの生物学的因子の送達のためのマイクロスフェアの最適な粒子サイズのコントロールは、重要である。なぜならば、特定のサイズのマイクロスフェアのみが、標的細胞によって取り込まれ得るからである。本明細書において記載されるより大きなサイズのマイクロスフェアは、マクロファージおよび他の免疫機構を、生物学的粒子を分解するように誘導し得る。一方、より小さいサイズは、溶解が早すぎる可能性がある。
【0034】
マイクロスフェアの作製において、所望の生物学的因子(代表的には、オリゴヌクレオチドまたは他の核酸化合物)が、水溶液に溶解される。これは、水溶性ポリマー(単数または複数)(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)およびこれらの組合せ)と組み合わされる。これらの水溶性ポリマーは、マイクロスフェアの、仮にあるにせよ実質的な部分を形成しないが、マイクロスフェアの調製において役立つ。上記の核酸は、マイクロスフェア組成物の100重量%までを構成し得る。代表的には、これらの核酸は、少なくとも20重量%、代表的には少なくとも約30重量%、好ましくは少なくとも約50重量%、さらに好ましくは少なくとも約70重量%、そして最も好ましくは少なくとも約90重量%を構成し得る。これらの核酸は、マイクロスフェアの少なくとも約95重量%を構成し得る。通常は、水性/水溶性ポリマー(単数または複数)混合物中で、中程度に酸性のpHで、マイクロスフェアを形成することが好ましい。例えば、しばしば、これらのポリマー(単数または複数)は、約5.3のpHで、酢酸ナトリウムのような緩衝溶液中に溶解される。これらの一般的な技術によるマイクロスフェアはまた、多糖類のような他のポリマーを用いて作製され得る。そのような他のポリマーとして、正または負に荷電された多糖類および他の生体適合性ポリマーが挙げられる。成分追加の順序は、異なる化学的特性および物理学的特性(例えば、サイズ、形態、および/または表面電荷)を有するマイクロスフェアを形成するために変更され得る。
【0035】
いくつかのマイクロスフェア調製物において、マイクロスフェアの形成の前に、核酸とポリカチオンとを組み合わせることが好ましい。しかし、ポリカチオンの使用を避けることは、一部の例において有益である。なぜならば、一部のポリカチオンは、毒性の問題と関連し得るからである。ポリアニオン、ポリアニオン架橋剤、または他の架橋剤の使用はまた、これらのマイクロスフェアを作製するために使用され得る。好ましいポリカチオンの例は、ポリ−リジンおよびポリ−オルニチンである。他には、ポリ−エチレン−イミン(PEI)、プロラミン(prolamin)、プロタミン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアルギニン、ビニルアミン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0036】
ポリカチオン成分がこのマイクロスフェアの調製物中およびまたマイクロスフェア中に含まれる場合、このポリカチオン成分は、総マイクロスフェア形成組成物の約0〜約80重量%のレベルで存在し得る。ポリカチオンを用いて作製されたマイクロスフェアは、少なくとも約2重量%のポリカチオンを含み得るか、または少なくとも約5重量%のポリカチオンを含み得るか、または少なくとも約10重量%のポリカチオンを含み得るか、または少なくとも約20重量%のポリカチオンを含み得るか、または少なくとも約30重量%のポリカチオンを、一般に、核酸を含んでバランスをとりながら、含み得る。
【0037】
いくつかのマイクロスフェア生成の適用において、エネルギー(例えば、熱または他のエネルギー源の形態で)が、マイクロスフェア形成を容易にするために、上記の組成物に供給される。本発明のいくつかの型のマイクロスフェアの生成のために、エネルギー添加が有用であり得ることが見出されている。
【0038】
マイクロスフェア組成物は、複数の生物学的に活性な化合物を含有し得る。従って、このマイクロスフェアは、個別で、またはマイクロスフェアの群として集合的にのいずれかで、一種以上の核酸(例えば、一種以上のオリゴヌクレオチド)を含有し得る。加えて、核酸マイクロスフェアの処方の後に、他の分子がその核酸マイクロスフェアの表面に添加され得る。そのような分子として、抗体、レセプターリガンド、または化学誘引物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
多くの技術が本発明のマイクロスフェアの調製のために有用であり得る(本明細書によって参考として援用される参考文献を参照のこと)が、以下は、本発明のマイクロスフェアの調製において特に有用であることが見出されている。
【0040】
この核酸混合物の水溶液は、約0.5:1〜約4:1のポリカチオン:核酸の容量比でポリカチオンを含有させることによって、調製される。ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチレングリコールのポリマー溶液が調製され、核酸含有溶液と混合される。加熱または冷却またはそれらの組合せによって混合溶液の温度を変化させること、および遠心分離と洗浄とを複数回行うことによって、水性の濃縮懸濁液が提供され、この濃縮懸濁液は、代表的には、凍結されてそして凍結乾燥され、ヌクレオチド(単数または複数)およびポリカチオンを含有するマイクロスフェアの乾燥粉末を形成する。マイクロスフェアの形成の前のこの混合物の温度は、約0.1〜約400℃/分の速度で、室温より低くされても高くされてもよい。冷却の適用については、この混合物は、代表的には、約35℃〜約−196℃まで冷却される。そして、加熱の適用については、この混合物は、約4℃〜約100℃まで加熱される。
【0041】
他の賦形剤(例えば、多糖類、正または負に荷電された多糖類、および好ましくは生体適合性である他のポリマー)が、最終組成物またはマイクロスフェア形成前混合物(pre−microsphere forming mixture)に加えられ得る。添加の順序が変更され得、このことは、異なる化学的特性および/または物理学的特性を有するマイクロスフェアの形成をもたらし得る。他の部分が、例えば、化学誘引物質として作用するために、またはレセプターリガンドとして作用するために、表面へ加えられ得る。
【0042】
本発明に従うマイクロスフェアは、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および他の核酸分子のための、有用な非ウイルス性送達ヒビクルである。
【0043】
このマイクロスフェア組成物は、(好ましくは、水性の)液体懸濁液の形態、乾燥粉末の形態、有機溶媒中の懸濁液、または他のポリマー中の固体形態でマイクロカプセルに被包(microencapsulate)されていてもよい。
【0044】
上記のように、本発明のマイクロスフェアは、種々の投与経路を介して服用され得る。活性因子の実際の服用量、服用されるべき処方物の濃度および処方物の容積は、熟練した臨床医によって決定され、一般に、多数の要因に依存する。そのような要因として、以下が挙げられるが、それらに限定されない:処置されるべき疾患または状態、処置されるべき被験体の年齢、性別、および体重、特定の標的を処置するための核酸の効力、服用する処方物中の核酸の濃度など。本明細書において使用される場合、「有効量」とは、被験体において、疾患または状態を、予防、処置、または緩和する、本発明のマイクロスフェアの量を指す。
【0045】
本発明に従うマイクロスフェアは、特に保護的な特徴を有する。βガラクトシダーゼマイクロスフェアを使用するインビトロでの研究は、このマイクロスフェアが、DNAをヌクレアーゼから保護する形態で形成することを示す。しばしば、DNAおよびオリゴヌクレオチドは、分解を遅くすることを目的として、チオアート化(thioate)される。例えば、代表的には、ASオリゴヌクレオチドは、チオアート化形態である。これらのマイクロスフェアの保護的な特徴が原因で、そのようなチオアート化形態の必要性が軽減され得るか、またはそのような形態は全く使用されなくともよい。
【0046】
本発明の好ましい方法は、本明細書において記載される、CD40、CD80、およびCD86の一次転写産物を標的とするアンチセンス(AS)−オリゴヌクレオチドマイクロスフェアを処方して注射することによる、自己免疫性インスリン依存性糖尿病の予防または改善を目的とする。これらのオリゴヌクレオチドは、NODマウスモデルで、インスリン産生β細胞の破壊を防ぐ試みにおいて、免疫寛容を誘導するように設計された。これらのβ細胞の破壊をもたらす事象は、図1に図解される。図1は、1型糖尿病が、NODマウス、ならびにヒトにおいて、膵臓のインスリン産生β細胞の自己免疫破壊によってどのように顕在化するかを図解する。糖尿病の臨床上の発症の時点で、ヒトは、残存β細胞量の10〜20%を維持する。この残存量を残しておくことは、グルコースレベルの調節のために適切であるインスリンレベルの維持をもたらし得る。本発明の好ましいマイクロスフェアは、図1で図解されるこれらのβ細胞の自己免疫破壊を妨げるように、提供される。
【0047】
樹状細胞(DC)が活性化されて、全ての組織において見出され、皮膚の下で高濃縮される、強力な抗原提示細胞となり得ることが、理解される。これらの抗原提示樹状細胞は、特にリンパ節において、T細胞の活性化を介して免疫応答を誘発するものとして機能する。
【0048】
図2は、NIH 3T3線維芽細胞をトランスフェクトするために使用され得る、βガラクトシダーゼ遺伝子を含むプラスミドベクターの図である。プラスミドDNAマイクロスフェアによるNIH 3T3線維芽細胞のトランスフェクションについてのインビトロでの証拠は、図3に示される。図3は、βガラクトシダーゼX−gal基質の添加に応答して青色に染まる細胞の様子である。
【0049】
図4は、マイクロスフェアがインビトロで溶液中のDNAを保護する能力を示す。この図は、アガロース電気泳動ゲルを表し、本明細書において記されるように一般的に生成されるプラスミドDNAのマイクロスフェアの作製によってヌクレアーゼ保護が与えられることを示す。プラスミドサンプル1、2、および3において、裸(naked)のプラスミドDNAが、DNAaseに曝露された。これらのスミアは、3種のレベルのDNAase曝露の各々でのプラスミドDNAの分解を示す。粒子1および粒子2のサンプルにおいて、プラスミドDNAマイクロスフェア処方物が、DNAaseに曝露された。スミア形成がないことは、このマイクロスフェア処方物が、プラスミドDNAを分解から保護することを示すことを示す。
【0050】
図5は、4種の異なるDNA適用において、トランスフェクションされたβガラクトシダーゼ活性の発現のレベルを定量する。裸のプラスミドDNA適用は非常に低いレベルを示した。リポフェクタミン(lipofectamine;市販のカチオン性脂質)を送達ビヒクルとして使用したプラスミドDNA−カチオン性脂質複合体トランスフェクションについて、少々高いレベルが示される。実質的により高い活性が、2種のプラスミドDNAマイクロスフェア調製物について示される(マイクロスフェア1は図4の粒子1に対応し、マイクロスフェア2は、図4の粒子2に対応する)。
【0051】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために、本発明の特定の特徴および利点を例示する。これらの実施例は、本発明を限定するようにも制限するようにも見なされるべきではない。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
CD40、CD80、およびCD86の一次転写産物を標的とする3種のASオリゴヌクレオチドを、ピッツバーグ大学(Pittsburgh,PA)のDNA合成設備によって合成した。そのASオリゴヌクレオチド配列(*はチオアート化(thioation)を示す)は、以下である:
【0053】
【化1】

オリゴヌクレオチド混合物の水溶液を、3種のオリゴヌクレオチド溶液(各々が一つの型のオリゴヌクレオチドを含む)のアリコートを組み合わせ、3種の型のオリゴヌクレオチドの10mg/ml溶液を形成することによって調製した。オリゴヌクレオチド混合物の水溶液の4種のバッチを調製した。脱イオン化水中の10mg/mlのポリ−L−リジン・HBr(50,000までのポリ−L−リジン・HBr(Bachem製:King
of Prussia,PA))を調製した。表1に記載するように、1:1、2:1、3:1、および4:1の容量比で、ポリ−L−リジン・HBrをオリゴヌクレオチド溶液に添加した。バッチを、1、2、3、および4とラベル付けした。これらの混合物を穏かにボルテックスした。pH5.5で、1Mの酢酸ナトリウム(Spectrum,Gardena,CA)中に、12.5%のPVP(ポリビニルピロリドン、40,000ダルトン、Spectrum Chemicals,Gardena,CA)と12.5%のPEG(ポリエチレングリコール、3,350ダルトン、Spectrum Chemicals,Gardena,CA)とを含有する、25%のポリマー溶液を作製した。このポリマー溶液を、バッチ1〜4中のASオリゴヌクレオチド、ポリ−L−リジン・HBr、およびPEG/PVPの容量を示す、表1に記載されるように、バッチ1〜4へ2:1の容量比で加えた。
【0054】
【表1】

これらのバッチを、30分間70℃でインキュベートし、次いで23℃まで冷却した。冷却の際に、溶液は混濁状になり、沈殿が生じた。次いで、この懸濁液を遠心分離し、そして過剰なPEG/PVPを除去した。生じたべレットを、脱イオン化水中で再懸濁し、遠心分離して上清を取り除くことによって、このペレットを洗浄した。この洗浄プロセスを、3回繰り返した。この水性の濃縮懸濁液を凍結し、そして凍結乾燥して、オリゴヌクレオチドとポリ−L−リジンとを含有するマイクロスフェアの乾燥粉末を形成した。
【0055】
図6は、バッチ番号1(1:1のポリ−L−リジン:オリゴヌクレオチド比)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を表す。サイズが0.5〜4μm、平均粒子サイズが約2.5μmのマイクロスフェアを作製した。未知の物質の沈殿もまた観察された。HPLCによるさらなる研究によって、この沈殿が残留PEG/PVP(主にPVP)を含むことを決定した。
【0056】
図7は、バッチ番号2(2:1のポリ−L−リジン:オリゴヌクレオチド比)のSEMを表す。サイズが0.2〜4μm、平均粒子サイズが約1μmのマイクロスフェアを作製した。
【0057】
図8は、バッチ番号3(3:1のポリ−L−リジン:オリゴヌクレオチド比)のSEMを表す。サイズが0.2〜4μm、平均粒子サイズが約1μmのマイクロスフェアを作製した。未知の物質の沈殿もまた観察された。HPLCによるさらなる研究によって、この沈殿が残留PEG/PVP(主にPVP)を含むことを決定した。
【0058】
図9は、バッチ番号4(4:1のポリ−L−リジン:オリゴヌクレオチド比)のSEMを表す。サイズが0.2〜6μmのマイクロスフェアを作製した。サイズには多分散性が存在し、およそ半分の粒子が1μmの平均粒子サイズを有し、半分の粒子が5μmの平均粒子サイズを有する。
【0059】
(実施例2)
CD40、CD80、およびCD86の一次転写産物を標的とするASオリゴヌクレオチドは、実施例1のASオリゴヌクレオチド配列であった。オリゴヌクレオチド混合物の水溶液を、3種のオリゴヌクレオチド溶液のアリコート(各々が一つの型のオリゴヌクレオチドを含む)を組み合わせ、3種の型のオリゴヌクレオチドの10mg/ml溶液を形成することによって調製した。オリゴヌクレオチド混合物の溶液の4種のバッチを調製した。脱イオン化水中の5mg/mlのポリ−L−オルニチン・HBr(ポリ−L−オルニチン・HBr 11,900(見かけの分子量)(Sigma製))溶液を調製した。
【0060】
ポリ−L−オルニチン・HBrを、表2に記載されるような多様な容量比で、オリゴヌクレオチド溶液へ加えた。バッチを、1、2、3、および4とラベル付けした。これらの混合物を、穏かにボルテックスした。pH=5.5の、0.1Mの酢酸ナトリウム(Spectrum Chemicals,Gardena,CA)中に、12.5%のPVP(40,000ダルトン、Spectrum Chemicals,Gardena,CA)と12.5%のPEG(3,350ダルトン、Spectrum Chemicals,Gardena,CA)とを含有する、25%のポリマー溶液を作製した。このポリマー溶液を、表2の異なる容量比で、バッチ1〜4に加えた。その後、実施例1において記載されるように、インキュベーションおよび洗浄を行った。バッチ1〜4中のASオリゴヌクレオチド、ポリ−L−オルニチン・HBr、PEG/PVP、およびPEGの容積を、表2で提供する。
【0061】
【表2】

図10は、バッチ番号1(1:1のポリ−L−オルニチン:オリゴヌクレオチド比)のSEMを表す。サイズが0.2〜8μm、平均粒子サイズが約2μmのマイクロスフェアを作製した。未知の物質の沈殿もまた観察された。さらなるHPLC研究によって、この沈殿が残留PEG/PVP(主にPVP)を含むことを証明することが出来た。
【0062】
図11は、バッチ番号2(2:1のポリ−L−オルニチン:オリゴヌクレオチド比)のSEMを表す。サイズが0.2〜8μm、平均粒子サイズが約2μmののマイクロスフェアを作製した。マイクロスフェアの多くが互いに融合していた。未同定の物質の沈殿もまた観察された。さらなるHPLC研究によって、この沈殿が残留PEG/PVP(主にPVP)を含むことを証明することが出来た。
【0063】
図12は、バッチ番号3(1:1のポリ−L−オルニチン:オリゴヌクレオチド比、PEGのみ)のSEMを表す。無形の形状の沈殿を形成した。このことは、処方物中のPVPの存在が、マイクロスフェアの形成において重要な役割を果たすことを示した。
【0064】
図13は、バッチ番号4(1:3のポリ−L−オルニチン:オリゴヌクレオチド比、PEGのみ)のSEMを表す。サイズが10〜50μmの多孔性のマイクロスフェア、壊れたマイクロスフェア、および融合マイクロスフェアの2〜10μmの鎖が形成された。単体のマイクロスフェアは観察されなかった。このバッチは、処方物中のPVPの存在が、マイクロスフェアの形成において重要な役割を果たすことを示した。
【0065】
(実施例3)
実施例1のオリゴヌクレオチド配列を有する、CD40、CD80、およびCD86の一次転写産物を標的とする3種のASオリゴヌクレオチドを合成した。オリゴヌクレオチド混合物の水溶液を、3種のオリゴヌクレオチド溶液のアリコート(各々が一つの型のオリゴヌクレオチドを含む)を組み合わせ、3種の型のオリゴヌクレオチドの10mg/ml溶液を形成することによって調製した。オリゴヌクレオチド混合物の溶液の2種のバッチを調製した。
【0066】
pH5.5の、0.1Mの酢酸ナトリウム(Spectrum Chemicals,Gardena,CA)中に、12.5%のPVP(40,000ダルトン、Spectrum Chemicals,Gardena,CA)と12.5%のPEG(3,350ダルトン、Spectrum Chemicals,Gardena,CA)とを含有する、25%のポリマー溶液を作製した。また、pH5.5の0.1Mの酢酸ナトリウム中の25%のPEGを作製した。このポリマー溶液を、表3に記載されるように、異なる容量比で、バッチ1〜2に添加した。続けて、実施例1に記載されるように、インキュベーションおよび洗浄を行った。バッチ1〜2中のASオリゴヌクレオチド、PEG/PVP、およびPEGの容量を、表3で提供する。
【0067】
【表3】

図14は、バッチ1(PEG:オリゴヌクレオチドが2:1)のSEMを表す。無形の形状の沈殿を形成した。このバッチは、繰り返し、PVPの存在が、このマイクロスフェアの処方において重要な役割を果たすことを示す。
【0068】
図15は、バッチ2(PEG/PVP:オリゴヌクレオチドが2:1)のSEMを表す。0.2〜6μmの粒子サイズ分布を有するマイクロスフェアを作製し、原料が同定されていない細長い小片もまた見られた。このバッチは、ポリカチオンなしでマイクロスフェアを形成し得ることを示した。
【0069】
(実施例4)
1型真性糖尿病のNODマウスモデルを使用して、インビボ研究を行った。図1に図解するように、1型糖尿病は、膵臓インスリン産生β細胞の自己免疫性破壊によって顕現する。ASオリゴヌクレオチドを、β細胞の自己免疫性破壊を妨げることを試みる、3種の適用において使用した。その目的は、T細胞の活性化のために必要とされる樹状細胞表面タンパク質をコードするCD40、CD80、およびCD86の一次転写産物を標的とすることによって、樹状細胞の機能を妨げることであった。CD40、CD80、およびCD86のレベルが低い樹状細胞は、インビボで抑制性の免疫細胞ネットワークを促進することが公知である。これらのカスケードは、インビボでのβ細胞に対するT細胞の低応答性をもたらし得る。
【0070】
試験動物の第一群において、NODマウスの骨髄の前駆細胞からエキソビボで樹状細胞を増殖させた。CD40、CD80、およびCD86の一次転写産物を標的とする3種のASオリゴヌクレオチドの組合せを、組織培養物中の細胞に添加した。インキュベーションの後で、ASオリゴヌクレオチドをトランスフェクトされた樹状細胞を、5〜8週齢の同系(syngenetic)の(まだ糖尿病でない)レシピエントに注射した。これは、エキソビボ送達アプローチである。
【0071】
並行して、ASオリゴヌクレオチドマイクロスフェアを、同じ週齢の他のNODマウスに直接注射した。各々のこのように処置されたマウスに、一回の注射を行った。これらのNODマウスの別の群を、処置せずにコントロールとして使用した。
【0072】
図16は、コントロールである未処置のNODマウスは、全てが23週齢までに糖尿病を発症したことを示す。エキソビボでASオリゴヌクレオチドでトランスフェクトされ再注射された樹状細胞(AS−ODN DC)を用いて処置された群は、糖尿病の発症の遅延を示し、20%が「糖尿病発症なし(Free)」(グルコースレベルが非糖尿病の範囲内に維持されていることを示す)のままであった。インビボで直接的にマイクロスフェアを注射されたNODマウスのうち、71%が43週齢で「糖尿病発症なし」のままであった。
【0073】
(実施例5)
蛍光のCy3で標識した低分子干渉二本鎖RNA(short interfering RNA duplex)、siGLOシクロフィリンB siRNA(マウス)(Dharmacon(Lafayette,CO)製)。二本鎖RNA配列を、配列番号4として示し、その相補鎖(complement)を、配列番号5として示す:
【0074】
【化2】

siRNAの水溶液を、15mg/mL溶液として調製した。また、脱イオン化水中の15mg/mLのポリ−L−リジン−HBr(ポリ−L−リジン 30,000〜70,000MW、Sigma)を調製した。表1に記載するように、ポリ−L−リジンを1:1の容量比でsiRNAに添加した。この混合物を、穏かにボルテックスした。pH5.5の、1Mの酢酸ナトリウム(Spectrum,Gardena,CA)中に、12.5%のPVP(ポリビニルピロリドン、40,000ダルトン、Spectrum Chemicals,Gardena,CA)と12.5%のPEG(ポリエチレングリコール、3350ダルトン、Spectrum,Gardena,CA)とを含有する、25%のポリマー溶液を作製した。siGLO二本鎖siRNA、ポリ−L−リジン−HBr、およびPEG/PVPの容量を示す表4に記載するように、siRNA/ポリ−L−リジン混合物に、2:1の容量比で、このポリマー溶液を加えた。
【0075】
【表4】

このバッチを、30分間58℃でインキュベートし、次いで、氷上で30分間冷却した。冷却の際に、この溶液は混濁状になり、沈殿が生じた。次いで、この懸濁液を遠心分離し、過剰なPEG/PVPを除去した。生じたペレットを、脱イオン化水中で再懸濁し、遠心分離し、そして上清を取り除くことによって、このペレットを洗浄した。この洗浄プロセスを、3回繰り返した。この水溶性の濃縮懸濁液を、−80℃で凍結し、そして凍結乾燥して、Cy3標識化されたsiGLOシクロフェリンB二本鎖siRNAおよびポリ−L−リジンを含むマイクロスフェアの乾燥粉末を形成した。
【0076】
図17は、マイクロスフェアのバッチ(1:1のポリ−L−リジン:二本鎖siRNAの比)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を表す。、このようにして、サイズが0.2〜1.4マイクロメートルで、平均粒子サイズが0.48マイクロメートルのマイクロスフェアを作製した。
【0077】
記載されてきた本発明の実施形態は、本発明の原理の適用の一部の例示であることが理解される。当業者によって、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく、多数の改変が行われ得る。本明細書において記載される多様な特徴は、任意の組合せで使用され得、本明細書において具体的に概説される明確な組合せに限定されない。
【数1】

【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図16】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−256203(P2011−256203A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−199455(P2011−199455)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【分割の表示】特願2007−513364(P2007−513364)の分割
【原出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】