核酸含有脂質粒子および関連方法
本発明は、固体コアを有し、1つまたは複数のカチオン性脂質、1つまたは複数の第2の脂質および1つまたは複数の核酸を具備する脂質粒子、並びに脂質粒子を製造するためのデバイスおよび方法、並びに脂質粒子を使用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全文が参照により本明細書に明確に組み込まれる2009年11月4日に出願された米国仮出願第61/280,510号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
脂質ナノ粒子(LNP)は、最も臨床的に進んだ薬物送達システムであり、7種のLNPベースの薬物が規制承認を受けている。これらの承認薬は、抗癌薬などの小分子を含有し、「遊離」薬物と比較して、有効性の改善および/または毒性の低減を示す。LNP担体技術はまた、治療用タンパク質の発現のためのプラスミドまたは疾患進行の一因となっている遺伝子をサイレンシングするための低分子干渉RNA(siRNA)オリゴヌクレオチド(OGN)などの「遺伝子」薬の送達にも適用されている。siRNA OGNおよびその他の遺伝子薬の効率的なin vivo送達のための方法を考案することが、これらの薬剤の治療薬としての革新的な可能性を妨げる大きな問題となっている。
【0003】
遺伝子薬のカプセル封入および送達に必要なLNP技術およびカチオン性脂質の設計における最近の進歩によって、in vivo送達問題を解決するためのLNPシステムの可能性が強調されている。LNP−siRNAシステムは、静脈内(i.v.)注射後に、非ヒト霊長類を始めとする動物モデルにおいて、治療上関連する標的遺伝子のサイレンシングを誘導することがわかっており、現在、いくつかの臨床試験において評価中である。
【0004】
遺伝子薬を含有するLNPシステムを製剤するために、種々の方法が開発されている。これらの方法として、エタノールの存在下で、予め形成しておいたLNPを、OGNと混合することまたはエタノールに溶解した脂質を、OGNを含有する水性媒体と混合することが挙げられ、その結果、100nm以下の直径を有するLNPおよび65〜95%のOGNカプセル封入効率が得られる。これらの方法の両方とも、OGNのカプセル封入を達成するためのカチオン性脂質ならびに凝集および大きな構造の形成を阻害するためのポリ(エチレングリコール)(PEG)脂質の存在に依存している。サイズおよびOGNカプセル封入効率を始めとする、生じるLNPシステムの特性は、イオン強度、脂質およびエタノール濃度、pH、OGN濃度および混合速度などの種々の製剤パラメータに対して敏感である。一般に、混合の時点での関連脂質およびOGN濃度などのパラメータならびに混合速度は、現在の製剤手順を使用して制御することが困難であり、その結果、生じるLNPの特徴が、製剤内および製剤間で変動する。
【0005】
マイクロ流体デバイスは、温度、滞留時間および溶質濃度にわたって精密制御して、ナノリットルスケールで流体を制御可能に、迅速に混合する能力を提供する。制御された迅速なマイクロ流体混合は、これまでに無機ナノ粒子および微粒子の合成において適用されており、ナノ粒子の大規模製造においてマクロスケールシステムより優れたものであり得る。マイクロ流体2相液滴技術は、薬物送達のために単分散高分子微粒子を製造するために、または細胞、タンパク質もしくはその他の生体分子をカプセル封入するための大きなベシクルを製造するために適用されている。試薬の迅速な混合を提供するための、サイズが制御された単分散リポソームを作製するための流体力学的フロー絞り込み、一般的なマイクロ流体技術の使用が実証されている。この技術はまた、高分子ナノ粒子の製造において有用であると証明されており、これでは、バルク製造法と比較して、より小さい、より多くの単分散粒子が得られ、より高い小分子カプセル封入が得られる。
【0006】
遺伝子薬を含有するLNPシステムのための方法の開発における進歩にもかかわらず、治療材料を含有する脂質ナノ粒子ならびに治療材料を含有する改善された脂質ナノ粒子を調製するためのデバイスおよび方法に対する必要性は存在している。本発明は、この必要性を満たし、さらなる関連する利点を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、本発明は、核酸を備える脂質粒子を提供する。
【0008】
一実施形態では、脂質粒子は、(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と、(b)1つまたは複数の第2の脂質と、(c)1つまたは複数の核酸とを備え、ここで、脂質粒子は、本明細書において定義される、実質的に固体のコアを備える。
【0009】
一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−KC2−DMAである。特定の実施形態では、粒子は、約30〜約95モルパーセントのカチオン性脂質を備える。
【0010】
一実施形態では、第2の脂質は、PEG−c−DMAである。一実施形態では、第2の脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である。特定の実施形態では、粒子は、約1〜約10モルパーセントの第2の脂質を備える。
【0011】
核酸は、DNA、RNA、ロックド核酸、核酸類似体またはDNAもしくはRNAを発現できるプラスミドであり得る。
【0012】
別の実施形態では、脂質粒子は、(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と、(b)1つまたは複数の中性脂質と、(c)1つまたは複数のPEG−脂質と、(d)1つまたは複数のステロールと、(e)1つまたは複数の核酸とを備え、ここで、脂質粒子は、本明細書において定義される実質的に固体のコアを備える。一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−KC2−DMAである。一実施形態では、PEG−脂質は、PEG−c−DMAである。一実施形態では、中性脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である。一実施形態では、ステロールはコレステロールである。一実施形態では、核酸はsiRNAである。
【0013】
さらなる実施形態では、脂質粒子は、1つまたは複数のカチオン性脂質と、1つまたは複数の核酸とからなる。一実施形態では、脂質粒子は、本明細書において定義される実質的に固体のコアを備える。一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−KC2−DMAである。一実施形態では、核酸は、siRNAである。
【0014】
その他の態様では、本発明は、脂質粒子を使用するための方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、核酸を対象に投与するための方法であって、それを必要とする対象に本発明の脂質粒子を投与することを備える方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、核酸を細胞に導入するための方法であって、細胞を本発明の脂質粒子と接触させることを備える方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節するための方法であって、細胞を本発明の脂質粒子と接触させることを備え、核酸が、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節できる方法を提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、対象におけるポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、対象に本発明の脂質粒子を投与することを備え、核酸が、ポリペプチドの発現をサイレンシングまたは低減できる方法を提供する。
【0019】
その他の態様では、本発明は、脂質粒子を製造するための方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、核酸を含有する脂質粒子を製造する方法であって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れをマイクロ流体デバイスに導入することであって、デバイスは、デバイスに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物をマイクロ流体ミキサーを用いて混合するための第2の領域とを有する、ことと;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れをデバイスに導入して、層流条件下を流れる第1および第2の流れを提供することであって、デバイスは、マイクロチャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有し、脂質粒子形成材料はカチオン性脂質を含み、第1および第2の溶媒は同一ではない、ことと;
(c)デバイスの第1の領域からデバイスの第2の領域に、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れを流すことと;
(d)デバイスの第2の領域において層流条件を流れる、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質ナノ粒子を備える第3の流れを提供することと
を備える方法を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、核酸を含有する脂質粒子を製造する方法であって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れを、チャネルに導入することであって、デバイスは、チャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する、ことと;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを導入することであって、チャネルは、チャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する、ことと;
(c)チャネルの第1の領域からチャネルの第2の領域に、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れを、2つの流れの物理的分離を維持しながら流すことであって、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れは、チャネルの第2の領域に到達するまで混合しない、ことと;
(d)マイクロチャネルの第2の領域において層流条件下を流れる1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質ナノ粒子を備える第3の流れを提供することと
を備える方法を提供する。
【0022】
上記の方法の特定の実施形態では、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合することは、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの濃度または相対混合速度を変更することを備える。
【0023】
上記の方法の特定の実施形態では、方法は、第3の流れを水性バッファーで希釈することをさらに備える。特定の実施形態では、第3の流れを希釈することは、第3の流れおよび水性バッファーを第2の混合構造中に流すことを備える。
【0024】
上記の方法の特定の実施形態では、方法は、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える水性バッファーを透析して、第2の溶媒の量を低減することをさらに備える。
【0025】
上記の方法の特定の実施形態では、第1の溶媒は水性バッファーである。上記の方法の特定の実施形態では、第2の溶媒は水性アルコールである。
【0026】
上記の方法の特定の実施形態では、第1および第2の流れの内容物を混合することは、カオス的移流を備える。上記の方法の特定の実施形態では、第1および第2の流れの内容物を混合することは、マイクロミキサーを用いて混合することを備える。
【0027】
上記の方法の特定の実施形態では、核酸カプセル封入効率は、約90〜約100%である。
【0028】
上記の方法の特定の実施形態では、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの混合は、障壁によって第1の領域では防がれる。特定の実施形態では、障壁は、チャネル壁、シース流体または同心チューブである。
【0029】
本発明の別の態様では、脂質粒子を製造するデバイスが提供される。一実施形態では、本発明は、核酸をカプセル封入する脂質粒子を製造するデバイスであって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の溶液を受け取るための第1の入口と、
(b)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れを提供するための、第1の入口と流体連通している第1の入口マイクロチャネルと;
(c)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の溶液を受け取るための第2の入口と;
(d)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを提供するための、第2の入口と流体連通している第2の入口マイクロチャネルと;
(e)第1および第2の流れを受け取るための第3のマイクロチャネルであって、層流条件下でマイクロチャネルに導入された第1および第2の流れを流すように適合されている第1の領域と、第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を含む第3の流れを提供するように適合されている第2の領域とを有する第3のマイクロチャネルと
を備えるデバイスを提供する。
【0030】
一実施形態では、デバイスは、第3の流れを希釈して、カプセル封入された核酸を有する安定化された脂質粒子を備える希釈流を提供するための手段をさらに備える。特定の実施形態では、第3の流れを希釈するための手段は、マイクロミキサーを備える。
【0031】
一実施形態では、マイクロチャネルは、約20〜約300μmの流体力学直径を有する。
【0032】
一実施形態では、マイクロチャネルの第2の領域は、浅浮き彫り構造を備える。一実施形態では、マイクロチャネルの第2の領域は、主要な流れ方向および少なくとも1つの溝または突起部が画定されている1つまたは複数の表面を有し、溝または突起部は、主要な方向と角度を形成する配向を有する。一実施形態では、第2の領域は、マイクロミキサーを備える。
【0033】
特定の実施形態では、デバイスは、第1および第2の流れの流速を変更するための手段をさらに備える。
【0034】
特定の実施形態では、デバイスは、第1の領域において、1つまたは複数の第1の流れを、1つまたは複数の第2の流れから物理的に分離するのに有効な障壁をさらに備える
上記の態様および本発明の付随する利点の多くは、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解されると、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の代表的な流体デバイスの概略図。
【図2】図1に示されるデバイスを精緻化したものである本発明の代表的な流体デバイスの概略図。
【図3】図2に示されるデバイスを精緻化したものである本発明の代表的な流体デバイスの概略図。
【図4】本発明の代表的な流体デバイスおよび方法の概略図。
【図5】10個の図4に示される流体デバイスを備える本発明の代表的なアレイの概略図。
【図6】本発明の代表的な流体デバイスの概略図。
【図7】10個の図6に示される代表的な流体デバイスを備える本発明の代表的なアレイの概略図。
【図8】3つの入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス800は、混合チャネル810を含む)。
【図9】2つの入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス900は、混合チャネル910を含む)。
【図10】多数(n)の一連の入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス1000は、混合チャネル1010a、1010b、1010cおよび1010dを含む)。
【図11】3つの入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス1100は、混合チャネル1110a、1110bおよび1110cを含む)。
【図12】7つの入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス1200は、混合チャネル1210a、1210b、1210cおよび1210dを含む)。
【図13】多層型ミキサーを有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス1300は、混合チャネル1310を含む)。
【図14】図14に示される多層型ミキサーのクローズアップ図。
【図15A−15B】脂質ナノ粒子(LNP)を製造する本発明の代表的なマイクロ流体(MF)法の概略図:脂質−エタノールおよびsiRNA−水溶液を、マイクロ流体混合デバイスの入口にポンプで入れ;デバイス中のヘリンボーン状の特徴が、層流のカオス的移流を誘発し、脂質種を、水性流と迅速に混合させ、脂質ナノ粒子を形成させる。混合チャネルは、200μmの幅で79μmの高さである。ヘリンボーン状の構造は、31μmの高さで、50μmの厚さである。
【0036】
脂質ナノ粒子(LNP)を製造するための予備形成ベシクル(PFV)法の概略図示す図(a)脂質−エタノール溶液を、水溶液、pH4.0に加えると、その結果、ベシクル型粒子が形成され;(b)Lipex Extruderを使用して、室温で80nmポリカーボネートメンブレン(Nuclepore)を通して押し出すと、より均一な粒子分布が得られ;(c)ボルテックス処理をしながらsiRNA溶液を加え、35℃で30分間インキュベートすることによって、siRNAのカプセル封入が促進される。
【図16A】混合およびLNP粒子サイズに対するマイクロ流体デバイス中の流速の影響を示す図。2種の10μMフルオレセイン(pH8.8で蛍光、pH5.15で非蛍光)溶液を混合して完全に蛍光の溶液を製造する。図16Aは、平均流体速度および移動の長さ(0.2、0.8、1.4および2mL/min)から算出される混合時間(msec)の関数として、チャネル幅に沿った平均蛍光強度によって決定される混合の程度(%)を比較する。
【図16B】混合およびLNP粒子サイズに対するマイクロ流体デバイス中の流速の影響を示す図。図16Bは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなるLNPの平均粒径を、siRNAを含有する25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mM脂質−エタノール相と比較する。図16Bは、流速(mL/min)の関数としてLNPの平均粒径(nm)を比較する。
【図16C】混合およびLNP粒子サイズに対するマイクロ流体デバイス中の流速の影響を示す図。16Cは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなるLNPの平均粒径を、siRNAを含有する25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mM脂質−エタノール相と比較する。図16Cは、エタノール/水性流速比の関数としてLNPの平均粒径(nm)を比較する。エラーバーは、動的光散乱によって測定される平均粒径の標準偏差を表す。
【図17】エタノール(mM)中の脂質濃度の関数として平均粒径(nm)を比較することによってLNP粒子サイズに対する脂質濃度の影響を示す図。脂質濃度の増大の結果、平均粒径が増大する。マイクロ流体チップ中で混合されているエタノール相中の総脂質含量を10mM〜50mMで変えた。LNPは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなる。マイクロ流体ミキサーの内側の総流速は、2ml/minで維持した。エラーバーは、動的光散乱によって測定される平均粒径の標準偏差を表す。
【図18A】LNPシステムに対するPEG−脂質およびカチオン性脂質の影響を示す図。図18Aは、PFVおよびMF法によって調製されたLNPの、PEG−c−DMA含量(LNP中のmol%)の関数としての平均粒径(nm)を比較する。PEG−脂質を、LNP組成中、1mol%〜10mol%で変えた。PEG脂質含量の改変は、コレステロール含量の調整によって補った。LNPは、40:11.5:47.5:1(−x):1(+x)、(ここで、x=1〜9)のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなっていた。
【図18B】LNPシステムに対するPEG−脂質およびカチオン性脂質の影響を示す図。図18Bは、PFVおよびMF法によって調製されたLNPの、DLin−KC2−DMA含量(mol%)の関数としての平均粒径(nm)を比較する。カチオン性脂質は、40mol%〜70mol%で変えた。PEG−c−DMAは、1mol%で一定に維持し、DSPC−コレステロールを用いて0.25モル比を維持した。マイクロ流体ミキサー内の総流速は、2ml/minで維持した。siRNAを含有する25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mMの脂質−エタノール相。エラーバーは、動的光散乱によって測定される平均粒径の標準偏差を表す。
【図19】siRNA/脂質比(wt/wt)(ヌクレオチド(nucelotide)/ホスフェート(N/P)としても表される)の関数として、平均粒径(nm)およびカプセル封入(%)を比較することによって、粒子サイズおよびカプセル封入に対するsiRNA/脂質比の影響を示す図。アニオン交換スピンカラムを使用する遊離siRNAからのLNP懸濁液の分離によって求めたカプセル封入。LNPは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなっていた。マイクロ流体ミキサー内の総流速は、2ml/minで維持した。siRNAを含有する25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mM脂質−エタノール相。エラーバーは、動的光散乱によって測定される平均粒径の標準偏差を表す。
【図20A】低温透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した、マイクロ流体ミキサーによって調製されたPEG−脂質およびカチオン性脂質LNPシステムの形態を示す図。Cryo−TEMによって29K倍率でLNPを撮像した。図20Aは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMAからなる空のLNPの像である。
【図20B】低温透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した、マイクロ流体ミキサーによって調製されたPEG−脂質およびカチオン性脂質LNPシステムの形態を示す図。図20Bは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなるsiRNAを入れたLNPの像である。製剤は、エタノール相中20mM脂質でマイクロ流体ミキサーを使用して実施した。中に入っているLNP−siRNAおよび空の粒子を含有する1mol% PEG−c−DOMGは、同一の形態を示し、構造において極めて均質であった。スケールバーは、100nmを表す。
【図21】40mol%〜60mol%でLNP中のDLin−KC2−DMA含量を変えて、siRNA投与量(mg/kg)の関数として相対FVIIタンパク質レベル(%)を比較することによって、第VII因子マウスモデルにおけるマイクロ流体によって製造されたLNPのin vivoサイレンシング活性を示す図。1mol% PEG−c−DOMGおよび60mol% DLin−KC2−DMAを含有するLNPの製剤によって、代替アプローチを使用してこれまでに報告されたものと同様のFVIIサイレンシングが得られる。DLin−KC2−DMA含有LNPの遺伝子サイレンシングは、40mol%〜60mol%の範囲にわたって徐々に向上する。マウスへのLNP−siRNAの全身注射は、尾静脈注射によって実施した(n=用量レベルあたり3)。血液採取は、注射の24時間後に実施し、第VII因子レベルを比色アッセイによって調べた。LNP DSPC対コレステロール比は、0.2wt/wtで維持し、1mol% PEG−c−DOMGを含有していた。LNP siRNA対脂質比は、0.06wt/wtとした。
【図22A】マイクロ流体法によって調製された脂質ナノ粒子の低温電子顕微鏡検査を示す図。マイクロ流体によって調製された空の脂質ナノ粒子(40% DLinKC2−DMA、11.5% DSPC、47.5%コレステロール、1% PEG−c−DMA)は、固体コア構造を示す電子密度の高い内部を示した(図22A)。
【図22B】マイクロ流体法によって調製された脂質ナノ粒子の低温電子顕微鏡検査を示す図。POPCからなるサンプルは、水性コアベシクルに相当する密度の低い内部を示した(図22B)。
【図22C】マイクロ流体法によって調製された脂質ナノ粒子の低温電子顕微鏡検査を示す図。単層のPOPCによって囲まれたトリオレインの疎水性コアを有するPOPC/トリオレインを含有するシステムは、サンプルAと同様の電子密度の高い内部を示した(図22C)。
【図23】siRNAの存在下で(N/P=1)、またsiRNAの非存在下で(siRNAなし)製造されたLNPのエタノール/水性流速比の関数として平均粒径(nm)を比較することによって、マイクロ流体混合を使用してDLinKC2−DMA/PEG−脂質システム(90/10、mol/mol)を用いて調製された限界サイズLNPを示す図。製剤は、25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mM脂質−エタノール相を使用して実施した。粒子サイズは、動的光散乱によって決定し、数加重平均直径を報告する。
【図24A−24C】マイクロ流体混合を使用して、50% DLinKC2−DMA、45%コレステロールおよび5% PEG−c−DMA中でカプセル封入されたsiRNAの31P NMRを示す図。DSPCは、リン脂質から生じるリンシグナルが対立するのを避けるために省略した。無傷のLNPについて(図24A)または150mMの酢酸アンモニウムの添加後には(図24B)、siRNAからの31Pシグナルは検出できない。シグナルは、粒子を可溶化するための1% SDSの添加後にのみ検出できる(図24C)。
【図25】RNアーゼ保護アッセイの結果を示す電気泳動ゲルを示す図である図。siRNAは、マイクロ流体法(MF)またはPFVアプローチのいずれかを使用してカプセル封入するか、カプセル封入しないままとした。Triton X−100を加えて、脂質粒子を完全に可溶化し、溶解した。ゲル電気泳動を20%未変性ポリアクリルアミドゲルで実施し、CYBR−Safeを用いて染色することによってsiRNAを可視化した。
【図26】時間(秒)の関数としての脂質混合パーセントとして表される脂質混合融合アッセイの結果を示す図。LNPの最外層中に存在する曝露されたカチオン性脂質の量を評価するために、3つのLNPシステムを、siRNAの不在下で(siRNAなし)、N/P=4およびN/P=1で調製した。脂質アッセイは、pH5.5で実施して、カチオン性脂質のほぼ完全なイオン化を確実にし、LNPを、高度にアニオン性のDOPS/NBD−PE/Rh−PE(98:1:1モル比)ベシクルを含有するキュベットに注入することによって反応を開始した。
【図27】本発明の方法に従うマイクロ流体混合によって形成された、固体コアLNP siRNAシステムの模式図。
【図28A】マイクロ流体ミキサーを使用して調製された逐次脂質ナノ粒子組成物の関数としての平均粒径(nm)を示す図。
【図28B】マイクロ流体ミキサーを使用して調製された逐次脂質ナノ粒子組成物の関数としてのゼータ電位(mV)を示す図。
【図29】脂質ナノ粒子の逐次アセンブリーのための本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【図30】本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【図31】本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【図32】本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【図33】本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、治療薬を含有する脂質粒子、治療薬を含有する脂質粒子を製造するための方法およびデバイスならびに脂質粒子を使用して治療薬を送達する方法を提供する。
【0038】
[脂質粒子]
一態様では、本発明は、治療薬を含有する脂質粒子を提供する。脂質粒子は、1つまたは複数のカチオン性脂質、1つまたは複数の第2の脂質および1つまたは複数の核酸を含む。
【0039】
[カチオン性脂質] 脂質粒子は、カチオン性脂質を含む。本明細書において、用語「カチオン性脂質」とは、カチオン性であるか、またはpHが脂質のイオン化できる基のpKより低下するとカチオン性(プロトン化)になるが、高いpH値では徐々により中性になる脂質を指す。pKより低いpH値では、脂質は負に帯電した核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)と結合できる。本明細書において、用語「カチオン性脂質」は、pH低下時には正電荷を帯びる両性イオン脂質を含む。
【0040】
用語「カチオン性脂質」とは、生理学的pHなどの選択的pHで正味の正電荷を保持する任意のいくつかの脂質種を指す。このような脂質として、それだけには限らないが、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチル塩化アンモニウム(DODAC);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(DC−Chol)およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が挙げられる。さらに、本発明において使用できる、カチオン性脂質のいくつかの市販の調製物が利用可能である。これらとして、例えば、リポフェクチン(登録商標)(GIBCO/BRL、Grand Island、NY製の、DOTMAおよび1,2−ジオレオイル−sn−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)を備える市販のカチオン性リポソーム);リポフェクタミン(登録商標)(GIBCO/BRL製の、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)および(DOPE)を備える市販のカチオン性リポソーム);およびトランスフェクタム(登録商標)(Promega Corp.、Madison、WI製のエタノール中にジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)を備える市販のカチオン性脂質)が挙げられる。以下の脂質は、カチオン性であり、生理学的pHよりも下で正電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)。
【0041】
一実施形態では、カチオン性脂質は、アミノ脂質である。本発明において有用な適したアミノ脂質として、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるWO2009/096558に記載されるものが挙げられる。代表的なアミノ脂質として、1,2−ジリノレイオキシ−3−(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin−DAC)、1,2−ジリノレイオキシ−3−モルホリノプロパン(DLin−MA)、1,2−ジリノレオイル−3−ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2−ジリノレイルチオ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−S−DMA)、1−リノレオイル−2−リノレイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−2−DMAP)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin−TMA−Cl)、1,2−ジリノレオイル−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin−TAP−Cl)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−(N−メチルピペラジノ)プロパン(DLin−MPZ)、3−(N,N−ジリノレイルアミノ)−1,2−プロパンジオール(DLinAP)、3−(N,N−ジオレイルアミノ)−1,2−プロパンジオ(dio)(DOAP)、1,2−ジリノレイルオキソ−3−(2−N,N−ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin−EG−DMA)および2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−K−DMA)が挙げられる。
【0042】
適したアミノ脂質として、次式:
【化1】
【0043】
[式中、R1およびR2は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC10〜C24アルキル、任意に置換されたC10〜C24アルケニル、任意に置換されたC10〜C24アルキニルまたは任意に置換されたC10〜C24アシルであり;
R3およびR4は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC1〜C6アルキル、任意に置換されたC2〜C6アルケニルもしくは任意に置換されたC2〜C6アルキニルであるか、またはR3およびR4は結合して、4〜6個の炭素原子ならびに窒素および酸素から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有する任意に置換された複素環を形成し;
R5は、存在しないかまたは存在し、存在する場合は水素またはC1〜C6アルキルであり;
m、nおよびpは、同一であるかまたは異なり、独立に、0または1のいずれかであり、ただし、m、nおよびpは、同時に0ではなく;
qは、0、1、2、3または4であり;
YおよびZは、同一であるかまたは異なり、独立に、O、SまたはNHである]
を有するものが挙げられる。
【0044】
一実施形態では、R1およびR2は各々、リノレイルであり、アミノ脂質は、ジリノレイルアミノ脂質である。一実施形態では、アミノ脂質は、ジリノレイルアミノ脂質である。
【0045】
代表的な有用なジリノレイルアミノ脂質は、次式:
【化2】
【0046】
[式中、nは、0、1、2、3または4である]
を有する。
【0047】
一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−K−DMAである。一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−KC2−DMA(上記のDLin−K−DMA、ここで、nは2である)。
【0048】
その他の適したカチオン性脂質として、具体的に上に記載されるものに加えて、ほぼ生理学的pHで正味の正電荷を保持するカチオン性脂質、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N−N−トリエチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DOTAP−Cl);3β−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC−Chol)、N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N−2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(trifluoracetate)(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が挙げられる。さらに、例えば、リポフェクチン(DOTMAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)およびリポフェクタミン(DOSPAおよびDOPEを備える、GIBCO/BRLから入手可能)など、いくつかの市販のカチオン性脂質の調製物も使用してよい。
【0049】
カチオン性脂質は、脂質粒子中に、約30〜約95モルパーセントの量で存在する。一実施形態では、カチオン性脂質は、脂質粒子中に、約30〜約70モルパーセントの量で存在する。一実施形態では、カチオン性脂質は、脂質粒子中に、約40〜約60モルパーセントの量で存在する。
【0050】
一実施形態では、脂質粒子は、1つまたは複数のカチオン性脂質と、1つまたは複数の核酸のみを含む(「からなる」)。カチオン性脂質および核酸からなる本発明の脂質粒子の調製および特性決定は、例5に記載する。
【0051】
[第2の脂質] 特定の実施形態では、脂質粒子は、1つまたは複数の第2の脂質を含む。適した第2の脂質は、粒子の形成の際にその形成を安定化する。
【0052】
用語「脂質」とは、脂肪酸のエステルであり、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒には可溶性であることを特徴とする有機化合物の群を指す。脂質は、普通、少なくとも3つのクラス:(1)脂肪およびオイルならびに蝋を含む「単純脂質」;(2)リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」ならびに(3)ステロイドなどの「誘導脂質」に分けられる。
【0053】
適した安定化脂質として、中性脂質およびアニオン性脂質が挙げられる。
【0054】
[中性脂質] 用語「中性脂質」とは、生理学的pHで、無電荷または中性いずれかの両性イオンの形態で存在するいくつかの脂質種のいずれか1つを指す。代表的な中性脂質として、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリンおよびセレブロシドが挙げられる。
【0055】
例示的脂質として、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)およびジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(DOPE−mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチルPE、16−O−ジメチルPE、18−1−トランスPE、1−ステアロイル−2−オレオイル−ホスファチジル(phosphatidy)エタノールアミン(SOPE)および1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホ(phopho)エタノールアミン(トランスDOPE)が挙げられる。
【0056】
一実施形態では、中性脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である。
【0057】
[アニオン性脂質] 用語「アニオン性脂質」とは、生理学的pHで負に帯電している任意の脂質を指す。これらの脂質として、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−ドデカノイルホスファチジルエタノール−アミン、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N−グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイル(oleyol)ホスファチジルグリセロール(POPG)および中性脂質と結合しているその他のアニオン性修飾基が挙げられる。
【0058】
その他の適した脂質として、糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)が挙げられる。その他の適した第2の脂質として、ステロール、例えば、コレステロールが挙げられる。
【0059】
[ポリエチレングリコール−脂質] 特定の実施形態では、第2の脂質は、ポリエチレングリコール−脂質である。適したポリエチレングリコール−脂質として、PEG修飾されたホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾されたホスファチジン酸、PEG修飾されたセラミド(例えば、PEG−CerC14またはPEG−CerC20)、PEG修飾されたジアルキルアミン、PEG修飾されたジアシルグリセロール、PEG修飾されたジアルキルグリセロールが挙げられる。代表的なポリエチレングリコール−脂質として、PEG−c−DOMG、PEG−c−DMAおよびPEG−s−DMGが挙げられる。一実施形態では、ポリエチレングリコール−脂質は、N−[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]−1,2−ジミリスチルオキシ(dimyristyloxl)プロピル−3−アミン(PEG−c−DMA)である。一実施形態では、ポリエチレングリコール−脂質は、PEG−c−DOMG)である。
【0060】
特定の実施形態では、第2の脂質は、約1〜約10モルパーセントの量で脂質粒子中に存在する。一実施形態では、第2の脂質は、約1〜約5モルパーセントの量で脂質粒子中に存在する。一実施形態では、第2の脂質は、約1モルパーセントの量で脂質粒子中に存在する。
【0061】
[核酸] 本発明の脂質粒子は、核酸の全身または局所送達にとって有用である。本明細書に記載されるように、核酸は、脂質粒子の形成の際に脂質粒子中に組み込まれる。
【0062】
本明細書において、用語「核酸」は、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むものとする。最大50ヌクレオチドを含有する断片は、一般に、オリゴヌクレオチドと呼ばれ、より長い断片は、ポリヌクレオチドと呼ばれる。特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、20〜50ヌクレオチドの長さである。本発明の関連で、用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在する塩基、糖および糖間(主鎖)結合からなる、ヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーのポリマーまたはオリゴマーを指す。用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」はまた、同様に機能する天然に存在しないモノマーまたはその一部を備えるポリマーまたはオリゴマーを含む。このような修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、増強された細胞取り込みおよびヌクレアーゼの存在下での安定性の増大などの特性のために未変性の形態を上回って好ましいことが多い。オリゴヌクレオチドは、デオキシリボオリゴヌクレオチドまたはリボオリゴヌクレオチドとして分類される。デオキシリボオリゴヌクレオチドは、代替の非分岐ポリマーを形成するよう、この糖の5’および3’炭素でリン酸と共有結合によって結合しているデオキシリボース(deosyhbose)と呼ばれる5炭糖からなる。リボオリゴヌクレオチドは、5炭糖がリボースである同様の反復構造からなる。本発明による脂質粒子中に存在する核酸は、公知である核酸の任意の形態を含む。本明細書に使用される核酸は、一本鎖DNAもしくはRNAまたは二本鎖DNAもしくはRNAまたはDNA−RNAハイブリッドであり得る。二本鎖DNAの例として、構造遺伝子、制御領域および終結領域を含む遺伝子、ウイルスまたはプラスミドDNAなどの自己複製系が挙げられる。二本鎖RNAの例として、siRNAおよびその他のRNA干渉試薬が挙げられる。一本鎖核酸として、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNAおよび三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0063】
一実施形態では、ポリ核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、核酸は、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、shRNA、ncRNA、miRNA、予備縮合(pre-condensed)DNAまたはアプタマーである。
【0064】
用語「核酸」とはまた、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾ホスフェート−糖−主鎖オリゴヌクレオチド、その他のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体およびそれらの組合せを指し、一本鎖であっても、二本鎖であってもよく、または必要に応じて、二本鎖および一本鎖配列両方の部分を含有してもよい。
【0065】
本明細書において、用語「ヌクレオチド」とは、一般に、以下に定義される以下の用語を包含する:ヌクレオチド塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド類似体およびユニバーサルヌクレオチド。
【0066】
本明細書において、用語「ヌクレオチド塩基」とは、置換または非置換親芳香環(単数または複数)を指す。いくつかの実施形態では、芳香環(単数または複数)は、少なくとも1個の窒素原子を含有する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド塩基は、適切に相補的なヌクレオチド塩基とワトソン−クリックおよび/またはフーグスティーン水素結合を形成できる。例示的ヌクレオチド塩基およびその類似体として、それだけには限らないが、プリン、例えば、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、アデニン(A)、エテノアデニン、N6−2−イソペンテニルアデニン(6iA)、N6−2−イソペンテニル−2−メチルチオアデニン(2ms6iA)、N6−メチルアデニン、グアニン(G)、イソグアニン、N2−ジメチルグアニン(dmG)、7−メチルグアニン(7mG)、2−チオピリミジン、6−チオグアニン(6sG)ヒポキサンチンおよびO6−メチルグアニン;7−デアザ−プリン、例えば、7−デアザアデニン(7−デアザ−A)および7−デアザグアニン(7−デアザ−G);ピリミジン、例えば、シトシン(C)、5−プロピニルシトシン、イソシトシン、チミン(T)、4−チオチミン(4sT)、5,6−ジヒドロチミン、O4−メチルチミン、ウラシル(U)、4−チオウラシル(4sU)および5,6−ジヒドロウラシル(ジヒドロウラシル;D);インドール、例えば、ニトロインドールおよび4−メチルインドール;ピロール、例えば、ニトロピロール;ネブラリン;塩基(Y)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド塩基は、ユニバーサルヌクレオチド塩基である。さらなる例示的ヌクレオチド塩基は、Fasman、1989年、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、385〜394頁、CRC Press、Boca Raton、Fla.およびそれに引用される参考文献に見出すことができる。ユニバーサル塩基のさらなる例は、例えば、Loakes、N.A.R.2001年、第29巻:2437〜2447頁およびSeela N.A.R.2000年、第28巻:3224〜3232頁に見出すことができる。
【0067】
本明細書において、用語「ヌクレオシド」とは、ペントース糖のC−1’炭素と共有結合によって結合しているヌクレオチド塩基を有する化合物を指す。いくつかの実施形態では、結合は、複素芳香環窒素を介する。通常のペントース糖として、それだけには限らないが、1個または複数の炭素原子が、1つまたは複数の同一であるかまたは異なる−R、−OR、−NRRまたはハロゲン基で各々独立に置換されているペントースが挙げられ、ここで、各Rは、独立に、水素、(C1〜C6)アルキルまた(C5〜C14)アリールである。ペントース糖は、飽和または不飽和であり得る。例示的ペントース糖およびその類似体として、それだけには限らないが、リボース、2’−デオキシリボース、2’−(C1〜C6)アルコキシリボース、2’−(C5〜C14)アリールオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、2’,3’−ジデヒドロリボース、2’−デオキシ−3’−ハロリボース、2’−デオキシ−3’−フルオロリボース、2’−デオキシ−3’−クロロリボース、2’−デオキシ−3’−アミノリボース、2’−デオキシ−3’−(C1〜C6)アルキルリボース、2’−デオキシ−3’−(C1〜C6)アルコキシリボースおよび2’−デオキシ−3’−(C5〜C14)アリールオキシリボースが挙げられる。また、例えば、2’−O−メチル、4’−α−アノマーヌクレオチド、1’−α−アノマーヌクレオチド(Asseline (1991年)Nucl.Acids Res.第19巻:4067〜74頁)、2’−4’−および3’−4’−結合およびその他の「ロックド」または「LNA」、二環式糖修飾(WO98/22489;WO98/39352;WO99/14226)も参照のこと。「LNA」または「ロックド核酸」は、リボース環が、2’−酸素と3’−または4’−炭素間のメチレン結合によって制約されるように立体構造的にロックされたDNA類似体である。結合によって課される立体構造制限は、相補的配列の結合親和性を高め、このような二本鎖の熱安定性を高めることが多い。
【0068】
糖は、メトキシ、エトキシ、アリルオキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、メトキシエチル、アルコキシ、フェノキシ、アジド、アミノ、アルキルアミノ、フルオロ、クロロおよびブロモなどの2’−または3’位の修飾を含む。ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、天然D立体配置異性体(D型)、ならびにL立体配置異性体(L型)(Beigelman、米国特許第6,251,666号;Chu、米国特許第5,753,789号;Shudo、EP0540742;Garbesi(1993年)Nucl.Acids Res.第21巻:4159〜65頁;Fujimori(1990年)J.Amer.Chem.Soc.第112巻:7435頁;Urata、(1993年)Nucleic Acids Symposium Ser.第29巻:69〜70頁)を含む。核酸塩基がプリン、例えば、AまたはGである場合は、リボース糖は、核酸塩基のN9−位と結合している。核酸塩基が、ピリミジン、例えば、C、TまたはUである場合は、ペントース糖は、核酸塩基のN1−位と結合している(Kornberg and Baker、(1992年)DNA Replication、2.sup.nd Freeman編、San Francisco、Calif.)。
【0069】
ヌクレオシドの1個または複数のペントース炭素は、リン酸エステルで任意に置換された。いくつかの実施形態では、リン酸エステルは、ペントースの3’−または5’−炭素と結合している。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、ヌクレオチド塩基が、プリン、7−デアザプリン、ピリミジン、ユニバーサルヌクレオチド塩基、特定のヌクレオチド塩基またはその類似体であるものである。
【0070】
本明細書において、用語「ヌクレオチド類似体」とは、ペントース糖および/またはヌクレオチド塩基および/またはヌクレオシドの1個もしくは複数のリン酸エステルが、そのそれぞれの類似体で任意に置換された実施形態を指す。いくつかの実施形態では、例示的ペントース糖類似体は、上記のものである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド類似体は、上記のヌクレオチド塩基類似体を有する。いくつかの実施形態では、例示的リン酸エステル類似体として、それだけには限らないが、アルキルホスホネート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート、ボロノホスフェートが挙げられ、関連対イオンを含み得る。その他の核酸類似体および塩基として、例えば、介在核酸(Christensen and Pedersen、2002年に記載されるINA)およびAEGIS塩基(Eragen、米国特許第5,432,272号)が挙げられる。種々の核酸類似体のさらなる説明は、例えば、(Beaucageら、Tetrahedron49(10):1925頁(1993年)およびその中の参考文献;Letsinger,J.Org.Chem.第35巻:3800頁(1970年);Sprinzlら、Eur.J.Biochem.第81巻:579頁(1977年);Letsingerら、Nucl.Acids Res.第14巻:3487頁(1986年);Sawaiら、Chem.Lett.805頁(1984年)、Letsingerら、J.Am. Chem.Soc.第110巻:4470頁(1988年);およびPauwelsら、Chemica Scripta第26巻:141 91986))、ホスホロチオエート(Magら、Nucleic Acids Res.第19巻:1437頁(1991年);および米国特許第5,644,048号にも見出すことができる。その他の核酸(nucleic)類似体は、ホスホロジチオエート(Briuら、J.Am.Chem.Soc.第111巻:2321頁(1989年)、O−メチルホスホロアミダイト(phophoroamidite)結合(Eckstein、Oligonucleotides and Analogue:A Practical Approach、Oxford University Press参照のこと)、正の主鎖を有するもの(Denpcyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第92巻:6097頁(1995年);非イオン性主鎖(米国特許第5,386,023号、同5,386,023号、同5,637,684号、同5,602,240号、同5,216,141号および同4,469,863号、Kiedrowshiら、Angew.Chem.Intl.Ed. English第30巻:423頁(1991年);Letsingerら、J.Am.Chem.Soc.第110巻:4470頁(1988年);Letsingerら、Nucleoside & Nucleotide第13巻:1597頁(194):第2章および第3章、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Y.S.SanghuiおよびP.Dan Cook編;Mesmaekerら、Bioorganic & Medicinal Chem.Lett.第4巻:395頁(1994年);Jeffsら、J.Biomolecular NMR第34巻:17頁(1994年);Tetrahedron Lett.第37巻:743頁(1996年))および非リボース主鎖、例えば、米国特許第5,235,033号および同5,034,506号ならびに第6章および第7章、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Y.S.SanghuiおよびP.Dan Cook編に記載されるものを備える。1つまたは複数の炭素環式糖を含有する核酸もまた、核酸の定義内に含まれる(Jenkinsら、Chem.Soc.Rev.(1995年)169〜176頁参照のこと)。いくつかの核酸類似体がまた、Rawls、C & E News1997年6月2日、35頁に記載されている。
【0071】
本明細書において、用語「ユニバーサルヌクレオチド塩基」または「ユニバーサル塩基」とは、窒素原子を含有する場合も、含有しない場合もある芳香環部分を指す。いくつかの実施形態では、ユニバーサル塩基を、ペントース糖のC−1’炭素と共有結合によって結合して、ユニバーサルヌクレオチドを製造してもよい。いくつかの実施形態では、ユニバーサルヌクレオチド塩基は、別のヌクレオチド塩基と特異的に水素結合しない。いくつかの実施形態では、ユニバーサルヌクレオチド塩基は、特定の標的ポリヌクレオチド中、最大ですべてのヌクレオチド塩基を含めた、ヌクレオチド塩基と水素結合する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド塩基は、疎水性スタッキングによって同一核酸鎖上の隣接するヌクレオチド塩基と相互作用し得る。ユニバーサルヌクレオチドとして、それだけには限らないが、デオキシ−7−アザインドールトリホスフェート(d7AITP)、デオキシイソカルボスチリルトリホスフェート(dICSTP)、デオキシプロピニルイソカルボスチリルトリホスフェート(dPICSTP)、デオキシメチル−7−アザインドールトリホスフェート(dM7AITP)、デオキシImPyトリホスフェート(dImPyTP)、デオキシPPトリホスフェート(dPPTP)またはデオキシプロピニル−7−アザインドールトリホスフェート(dP7AITP)が挙げられる。このようなユニバーサル塩基のさらなる例は、中でも、米国特許出願第10/290672号および米国特許第6,433,134号に見出すことができる。
【0072】
本明細書において、用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は同義的に使用され、ヌクレオチド間リン酸ジエステル結合鎖、例えば、3’−5’および2’−5’、反転結合、例えば、3’−3’および5’−5’、分岐構造またはヌクレオチド間類似体によって連結された2’−デオキシリボヌクレオチド(DNA)およびリボヌクレオチド(RNA)を含めたヌクレオチドモノマーの一本鎖および二本鎖ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドは、H+、NH4+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+などといった会合している対イオンを有する。ポリヌクレオチドは、完全にデオキシリボヌクレオチドからなる場合もあり、完全にリボヌクレオチドからなる場合もあり、それらのキメラ混合物からなる場合もある。ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド間、核酸塩基および/または糖類似体からなる場合もある。ポリヌクレオチドのサイズは、通常、当技術分野で、オリゴヌクレオチドと呼ばれることが多い、数個の単量体の単位、例えば、3〜40個から数千の単量体のヌクレオチドの単位の範囲である。別に示されない限り、ポリヌクレオチド配列が表される場合にはいつも、ヌクレオチドは、左から右に5’から3’の順であり、別に断りのない限り、「A」は、デオキシアデノシンを表し、「C」は、デオキシシトシンを表し、「G」は、デオキシグアノシンを表し、「T」は、チミジンを表すと理解されよう。
【0073】
本明細書において、「核酸塩基」とは、核酸技術を利用するか、またはペプチド核酸技術を利用し、それによって、核酸と配列特異的に結合できるポリマーを作製する人にはよく知られている、天然に存在する、および天然に存在しない複素環式部分を意味する。適した核酸塩基の限定されない例として、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、シュードイソシトシン、2−チオウラシルおよび2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、N9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)およびN8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)が挙げられる。適した核酸塩基のその他の限定されない例として、Buchardtら(WO92/20702またはWO92/20703)の図2(A)および2(B)に示される核酸塩基が挙げられる。
【0074】
本明細書において、「核酸塩基配列」とは、核酸塩基含有サブユニットを備えるポリマーの、任意のセグメントまたは2以上のセグメントの凝集体(例えば、2以上のオリゴマーブロックの凝集体核酸塩基配列)を意味する。適したポリマーまたはポリマーセグメントの限定されない例として、オリゴデオキシヌクレオチド(例えば、DNA)、オリゴリボヌクレオチド(例えば、RNA)、ペプチド核酸(PNA)、PNAキメラ、PNA組合せオリゴマー、核酸類似体および/または核酸ミミックが挙げられる。
【0075】
本明細書において、「ポリ核酸塩基鎖」とは、核酸塩基サブユニットを備える完全な単一のポリマー鎖を意味する。例えば、二本鎖核酸の単一の核酸鎖は、ポリ核酸塩基鎖である。
【0076】
本明細書において、「核酸」とは、核酸塩基配列含有ポリマーまたはヌクレオチドもしくはその類似体から形成される主鎖を有するポリマーセグメントである。
【0077】
好ましい核酸は、DNAおよびRNAである。
【0078】
本明細書において、核酸はまた、核酸サブユニット(またはその類似体)だけでなく、2以上のPNAサブユニット(残基)を備える、任意のオリゴマーまたはポリマーセグメント(例えば、ブロックオリゴマー)を意味する「ペプチド核酸」または「PNA」を指す場合もあり、それだけには限らないが、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,539,082号、同5,527,675号、同5,623,049号、同5,714,331号、同5,718,262号、同5,736,336号、同5,773,571号、同5,766,855号、同5,786,461号、同5,837,459号、同5,891,625号、同5,972,610号、同5,986,053号および同6,107,470号においてペプチド核酸として言及または特許請求されるオリゴマーまたはポリマーセグメントのいずれかを含む。用語「ペプチド核酸」または「PNA」はまた、以下の刊行物に記載される核酸ミミックの2以上のサブユニットを備える任意のオリゴマーまたはポリマーセグメントにも適用されるべきである:Lagriffoulら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第4巻:1081〜1082頁(1994年);Petersenら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第6巻:793〜796頁(1996年);Diderichsenら、Tett.Lett.第37巻:475〜478頁(1996年);Fujiiら、Bioorg.Med.Chem.Lett.第7巻:637〜627頁(1997年);Jordanら、Bioorg.Med.Chem.Lett.7:687〜690頁(1997年);Krotzら、Tett.Lett.第36巻:6941〜6944頁(1995年);Lagriffoulら、Bioorg.Med.Chem.Lett.第4巻:1081〜1082頁(1994年);Diederichsen,U.、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第7巻:1743〜1746頁(1997年);Loweら、J.Chem.Soc. Perkin Trans.1、(1997年)1:539〜546頁;Lowe et J.Chem.Soc.Perkin Trans.11:547〜554頁(1997年);Loweら、J.Chem.Soc.Perkin Trans.第11巻:555〜560頁(1997年);Howarthら、J.Org.Chem.第62巻:5441〜5450頁(1997年);Altmann,K−Hら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第7巻:1119〜1122頁(1997年);Diederichsen,U.、Bioorganic & Med.Chem.Lett.、第8巻:165〜168頁(1998年);Diederichsenら、Angew.Chem.Int.Ed.、第37巻:302〜305頁(1998年);Cantinら、Tett.Lett.、第38巻:4211〜4214頁(1997年);Ciapettiら、Tetrahedron、第53巻:1167〜1176頁(1997年);Lagriffouleら、Chem.Eur.J.、3:912〜919頁(1997年);Kumarら、Organic Letters第3巻(9):1269〜1272頁(2001年);およびWO96/04000において開示されるShahらのPeptide−Based Nucleic Acid Mimics(PENAMS)。
【0079】
[脂質粒子特徴]
[形態] 本発明の脂質粒子は、その他の同様に構成された材料とは、その形態が異なり、実質的に固体のコアを有すると特徴付けられる。実質的に固体のコアを有する脂質粒子とは、内部に広がった水性領域を有さない、主に脂質である内部を有する粒子である。一実施形態では、広がった領域とは、粒子容積の半分を超える容積を有する連続する水性領域である。第2の実施形態では、広がった水性領域とは、粒子容積の25%超である。内部水性領域の範囲は、電子顕微鏡によって決定してもよく、低電子密度の領域として見える。さらに、固体コアナノ粒子の内部は、主に脂質であるので、粒子を構成する脂質あたりの粒子の水性含量(「トラップ容積」)は、同じ半径を有する単層二分子膜脂質ベシクルについて予測されるものよりも少ない。一実施形態では、トラップ容積は、同じ半径の単層二分子膜ベシクルについて予測されるものの50%未満である。第2の実施形態では、トラップ容積は、同じサイズの単層二分子膜ベシクルについて予測されるものの25%未満である。第3の実施形態では、トラップ容積は、粒子の総容積の20%未満である。一実施形態では、脂質あたりのトラップ容積は、脂質1マイクロモルあたり2マイクロリットル未満である。別の実施形態では、トラップ容積は、脂質1マイクロモルあたり1マイクロリットル未満である。さらに、ベシクルの半径が増大するにつれて、二分子膜脂質ベシクルの脂質あたりのトラップ容積は大幅に増大するが、固体コアナノ粒子の半径が増大するにつれて、脂質あたりのトラップ容積は大幅には増大しない。一実施形態では、脂質あたりのトラップ容積は、平均のサイズが直径20nmから直径100nmに増大するにつれ、50%未満増大する。第2の実施形態では、脂質あたりのトラップ容積は、平均のサイズが直径20nmから直径100nmに増大するにつれ、25%未満増大する。トラップ容積は、文献に記載される種々の技術を使用して測定できる。固体コアシステムは、粒子の内側に脂質を含有するので、脂質1モルあたりの、生じた所与の半径の粒子の総数は、二分子膜ベシクルシステムについて予測されるものより少ない。脂質1モルあたりの、生じた粒子の数は、中でも蛍光技術によって測定できる。
【0080】
本発明の脂質粒子はまた、電子顕微鏡によっても特性決定できる。実質的に固体のコアを有する本発明の粒子は、電子顕微鏡によって見られるように、電子密度の高いコアを有する。電子密度が高いとは、固体コア粒子の投影された領域(2−D低温EM像において見られるような)の内部50%の領域平均の電子密度が、粒子の外面での最大電子密度のx%未満ではない(x=20%、40%、60%)ように定義される。電子密度は、ナノ粒子を含有しない領域におけるバックグラウンド強度からの、対象の領域の像の強度の相違の絶対値として算出する。
【0081】
[粒子サイズ] 本発明の脂質粒子は、約15〜約300nmの直径(平均粒径)を有する。いくつかの実施形態では、脂質粒子は、約300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下または50nm以下の直径を有する。一実施形態では、脂質粒子は、約15〜約100nmの直径を有する。これらの粒子は、一般に、大きな粒子と比較して、in vivoでの循環寿命の増大を示す。一実施形態では、脂質粒子は、約15〜約50nmの直径を有する。これらの粒子は、血管系を免れることができるので有利である。一実施形態では、脂質粒子は、約15〜約20nmの直径を有する。これらの粒子は、核酸を含有する粒子の限界のサイズに近く;このような粒子は、単一のポリヌクレオチド(例えば、siRNA)を含み得る。
【0082】
本発明の脂質粒子は、そのサイズ分布において実質的に均質である。特定の実施形態では、本発明の脂質粒子は、約65〜約25%の平均粒径標準偏差を有する。一実施形態では、本発明の脂質粒子は、約60、50、40、35または30%の平均粒径標準偏差を有する。
【0083】
[カプセル封入効率] 本発明の脂質粒子は、カプセル封入効率によってさらに区別することができる。以下に記載するように、本発明の脂質粒子は、形成プロセスにおいて使用される核酸のほぼ100%が、粒子中にカプセル封入されるプロセスによって調製される。一実施形態では、脂質粒子は、形成プロセスにおいて使用される核酸の約90〜約95%が、粒子中にカプセル封入されるプロセスによって調製される。
【0084】
[脂質粒子を製造するためのマイクロ流体法]
一態様では、本発明は、治療薬を含有する脂質粒子を製造する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、
(a)第1の溶媒中に治療薬(例えば、ポリ核酸)を備える第1の流れを、マイクロチャネル中に導入することであって、マイクロチャネルは、マイクロチャネル中に導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する、ことと;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れをマイクロチャネルに導入して、層流条件下を流れる第1および第2の流れを提供することであって、脂質粒子形成材料は、イオン化できる脂質を備え、第1および第2の溶媒は、同一ではない、ことと;
(c)マイクロチャネルの第1の領域から、マイクロチャネルの第2の領域に、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れを流すことと;
(d)マイクロチャネルの第2の領域において層流条件下を流れる1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供することと
を含む。
【0085】
第1および第2の流れの内容物は、カオス的移流によって混合してもよい。一実施形態では、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合することは、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの濃度または相対混合速度を変更することを備える。上記の実施形態では、既知方法とは異なり、本方法は、混合後の希釈を含まない。
【0086】
本方法は、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を含有する第3の流れをさらに安定化するために、第3の流れを水性バッファーで希釈することを備えることをさらに含んでもよいが、必要ではない。一実施形態では、第3の流れを希釈することは、第2の混合構造中に、第3の流れおよび水性バッファーを流すことを含む。別の実施形態では、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を備える水性バッファーを透析して、第2の溶媒の量を低減する。
【0087】
第1の流れは、第1の溶媒中に治療薬を含む。適した第1の溶媒は、治療薬が可溶性であり、第2の溶媒と混和できる溶媒を含む。適した第1の溶媒として、水性バッファーが挙げられる。代表的な第1の溶媒として、クエン酸および酢酸バッファーが挙げられる。
【0088】
第2の流れは、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を含む。適した第2の溶媒として、イオン化できる脂質が可溶性であり、第1の溶媒と混和できる溶媒が挙げられる。適した第2の溶媒として、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酸およびアルコールが挙げられる。代表的な第2の溶媒として、水性エタノール90%が挙げられる。
【0089】
本発明の方法は、いくつかの点で、その他のマイクロ流体混合法から区別される。特定の既知方法が、同等または実質的に同等の割合の水性および有機溶媒(すなわち1:1)を必要とするが、本発明の方法は、一般に、1:1を越える水性対有機の溶媒比を使用する。特定の実施形態では、水性対有機の溶媒比は、約1:2である。特定の実施形態では、水性対有機の溶媒比は、約1:3である。特定の実施形態では、水性対有機の溶媒比は、約1:4である。特定のその他の実施形態では、水性対有機の溶媒比は、約1:5、約1:10、約1:50、約1:100またはそれ以上である。
【0090】
本発明の脂質粒子は、比較的迅速な混合および高い流速を利用するマイクロ流体プロセスにおいて形成されることが有利である。迅速な混合は、サイズ、均質性、カプセル封入効率を始めとする上記の有利な特性を有する脂質粒子を提供する。本発明の方法の実施において使用される混合速度は、約100μsec〜約10msecの範囲である。代表的な混合速度として、約1〜約5msecが挙げられる。流体力学的フロー絞り込み法は、比較的低い脂質容積で、比較的低い流速(例えば、5〜100μL/min)で作動するが、本発明の方法は、比較的高い脂質容積で、比較的高い流速で作動する。特定の実施形態では、単一の混合領域(すなわち、ミキサー)を組み込む方法については、流速は、約1mL/minである。ミキサーアレイ(例えば、10個のミキサー)を利用する本発明の方法については、40mL/minの流速が使用される(100個のミキサーには、流速400mL/min)。このように、本発明の方法は、容易に拡大縮小して、厳しい製造要求に必要な脂質粒子の量を提供できる。本発明の方法は、実現される有利な粒子サイズおよび均質性およびカプセル封入効率と相まって、脂質粒子を製造するための既知マイクロ流体法の不利点を克服する。脂質粒子を製造するための本発明の方法の1つの利点は、拡大縮小可能であることであり、これは、本方法が拡大縮小時に変わらないことおよび拡大縮小時に優れた対応があることを意味する。
【0091】
[脂質粒子を製造するためのマイクロ流体デバイス]
別の態様では、本発明は、核酸をカプセル封入している脂質粒子を製造するためのデバイスを提供する。一実施形態では、デバイスは、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の溶液を受け取るための第1の入口と;
(b)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れを提供するための第1の入口と流体連通している第1の入口マイクロチャネルと;
(c)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の溶液を受け取るための第2の入口と;
(d)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを提供するための第2の入口と流体連通している第2の入口マイクロチャネルと;
(e)第1および第2の流れを受け取るための第3のマイクロチャネルであって、層流条件下でマイクロチャネルに導入された第1および第2の流れを流すように適合されている第1の領域と、第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供するように適合されている第2の領域とを有する第3のマイクロチャネルと
を含む。
【0092】
一実施形態では、デバイスは、第3の流れを希釈して、安定化された、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を備える希釈流を提供するための手段をさらに含む。
【0093】
本発明のデバイスは、1つまたは複数のマイクロチャネル(すなわち、1ミリメートル未満の最大寸法を有するチャネル)を含むマイクロ流体デバイスである。一実施形態では、マイクロチャネルは、約20〜約300μmの流体力学直径を有する。上記のように、マイクロチャネルは、2つの領域を有する:層流条件下で、少なくとも2つの流れを受け取り、流すための第1の領域(例えば、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れ)。第1および第2の流れの内容物は、マイクロチャネルの第2の領域において混合される。一実施形態では、マイクロチャネルの第2の領域は、参照によりその全文が本明細書に明確に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0262223号に記載されるように、主要な流れの方向および本明細書に定義される少なくとも1つの溝または突起部を有する1つまたは複数の表面を有し、溝または突起部は、主要な方向と角度を形成する配向を有する(例えば、互い違いのヘリンボーン状ミキサー)。一実施形態では、マイクロチャネルの第2の領域は、浅浮き彫り構造を備える。最大混合速度を達成するためには、混合領域の前の過度の流体抵抗を避けることが有利である。したがって、本発明の一実施形態は、単一の混合チャネルに流体を送達するために1000ミクロンを超える寸法を有する非マイクロ流体チャネルが使用されるデバイスである。
【0094】
本発明のその他の態様では、第1および第2の流れを、その他のマイクロミキサーを用いて混合する。適したマイクロミキサーとして、液滴ミキサー、T−ミキサー、ジグザグミキサー、多層型ミキサーまたはその他のアクティブミキサーが挙げられる。
【0095】
第1および第2の流れの混合はまた、第1および第2の流れの濃度および相対流速を変更するための手段を用いて達成できる。
【0096】
別の実施形態では、核酸をカプセル封入している脂質粒子を製造するためのデバイスは、第1および第2の流れを受け取るためのマイクロチャネルを含み、マイクロチャネルは、層流条件下でマイクロチャネル中に導入された第1および第2の流れを流すように適合されている第1の領域と、第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供するように適合されている第2の領域とを有する。この実施形態では、上記の第1および第2のマイクロチャネル以外の手段によって、第1および第2の流れをマイクロチャネル中に導入する。
【0097】
最大混合速度を達成するためには、混合領域の前の過度の流体抵抗を避けることが有利である。したがって、本発明の一実施形態は、単一の混合チャネルに流体を送達するために1000ミクロンを超える寸法を有する非マイクロ流体チャネルが使用されるデバイスである。核酸をカプセル封入している脂質粒子を製造するためのこのデバイスは、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の溶液と、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の溶液の両方を受け取るための単一の入口マイクロチャネルと;
(b)第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供するように適合されている第2の領域と
を含む。
【0098】
このような実施形態では、第1および第2の流れは、単一の入口によって、またはマイクロ寸法を有さない1つもしくは2つのチャネル、例えば、1000μmを超える寸法(例えば、1500または2000μm以上)を有するチャネル(単数または複数)によってマイクロチャネル中に導入される。これらのチャネルは、隣接するまたは同心のマクロサイズチャネルを使用して入口マイクロチャネルに導入されてもよい。
【0099】
図1は、本発明の代表的な流体デバイスの概略図である。図1を参照すると、デバイス100は、第1の溶媒中に治療薬を備える第1の流れを受け取るための領域Aと、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える流れを受け取るための領域Bとを含む。第1および第2の流れは、領域C中に導入され、層流条件下を、領域Dに流れ、ここで迅速な混合が起こり、次いで、領域Eに流れ、ここで、最終生成物、治療薬を含有する脂質粒子がデバイスを出る。
【0100】
図2は、図1に示されるデバイスおよび方法を精緻化したものである、本発明の代表的な流体デバイスの概略図である。図2を参照すると、デバイス200は、マイクロチャネル中に第1の溶媒中に治療薬を備える第1の流れを受け取るための領域Aを含み、ここで、マイクロチャネルは、1つまたは複数の流れを流し(A−a)、導入し(A−b)、混合する(A−c)ように適合されている第1の領域を有し;第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを受け取るための領域Bを含み、ここで、マイクロチャネルは、1つまたは複数の流れを流し(B−a)、導入し(B−b)、混合する(B−c)ように適合されている第1の領域を有し;層流条件下(C−a)で領域Aおよび領域Bの流れを導入し、迅速に混合する(C−b)領域Cを含み;製剤が希釈、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象などのさらなる処理のために準備ができており、最終生成物、治療薬を含有する脂質粒子がデバイスを出る領域Dを含む。
【0101】
図3は、図2に示されるデバイスおよび方法を精緻化したものである、本発明の代表的な流体デバイスの概略図である。図3を参照すると、デバイス300は、第1の溶媒中に治療薬を備える第1の流れを受け取り、マイクロチャネル中に入る領域Aを含み、ここで、マイクロチャネルは、1つまたは複数の流れを流し(A−a)、導入し(A−b)、混合する(A−c)ように適合されている第1の領域を有し;第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを受け取るための領域Bを含み、ここで、マイクロチャネルは、1つまたは複数の流れを流し(B−a)、導入し(B−b)、混合する(B−c)ように適合されている第1の領域を有し;層流条件下(C−a)で領域Aおよび領域Bの流れを導入し、迅速に混合する(C−b)領域Cを含み;さらなる粒子形成材料、希釈、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象を始めとする任意のいくつかの材料を備える第3の流れを受け取るための領域Dを含み;層流条件下(E−a)で領域Cおよび領域Dの流れを導入し、迅速に混合する(E−b)領域Eを含み;製剤が、希釈、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象のようなさらなる処理のために準備ができており、最終生成物、治療薬を含有する脂質粒子がデバイスを出る領域Fを含む。
【0102】
図4は、本発明の別の代表的な流体デバイス(400)の概略図である。図5は、図4に示される代表的な流体デバイスの代表的なアレイの概略図である。
【0103】
図6は、本発明の別の代表的な流体デバイス(600)の概略図である。図6を参照すると、デバイス600は、混合チャネル610a、610bおよび610cを含む。図7は、図6に示される代表的な流体デバイスの代表的なアレイの概略図である。
【0104】
マイクロ流体デバイスでのナノ粒子の形成は、混合事象に関与する試薬容積と、漏出が生じる前にデバイスが耐えることができる限界背圧とによって制限される。単一の要素のヘリンボーン状ミキサーまたは多層型ミキサーは、液滴またはフロー絞り込みアプローチと比較して100〜1000倍の流速の増大を達成する。製造規模の処理量を達成するために、複数のミキサー要素を配置してもよい。一実施形態では、低インピーダンスバスチャネルを使用して個々のミキサー要素に各試薬を分配する。バスチャネルのインピーダンスが、ミキサー要素のインビーダンスと比較して無視できる程である場合は、各ミキサーの入口での個々の流速は同一である。複数のミキサー要素が並行して作動されるので、システムのインピーダンスが低下し、その結果、高い容積処理量が得られる。
【0105】
これは、単一ミキサー要素を使用して観察される混合特徴を、ミキサーアレイにおいて維持できるという利点を有する。一実施形態では、各ミキサーアレイ要素における混合は、複数の流れをマイクロチャネル中に導入することによって達成される。この場合には、流れは拡散によって混合する。流線の幅は、注入チャネルを通る相対流速を制御することによって(例えば、これらのチャネルの寸法を調整することによって(図5)変えてもよい。別の実施形態では、混合はカオス的移流によって達成される(互い違いのヘリンボーン状ミキサー、SHM)。図7に示されるように、アレイの各ミキサー要素が、一連のミキサーからなる場合もある。各アレイサブセットに要素を加えることによって、さらなる機能性を、マイクロ流体デバイスでインラインで統合することができる。このような機能性として、オンチップ希釈、透析、pH調整または組み合わされた流線、同一チャネルを共有する流れまたは多孔性材料によって互いに分離している流れを必要とするその他の事象を挙げることができる。一実施形態では、100%エタノールに10mM POPCを溶解し、各アレイサブセットの第1のミキサー要素においてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4と混合する。混合物をPBSを用いて2倍で希釈することによって、混合後に形成されるLNPを安定化する。
【0106】
表1は、単一のミキサーおよび10個の個々のミキサーからなるミキサーアレイで形成された粒子サイズ分布を比較する。単一のミキサーを通る総流速は、各交差点で50:50の混合比を用いて、4ml/minであり得る。容積処理量は、10台のミキサーを並行して作動させることによって10倍増大でき、その結果、40ml/minの総容積流速が得られる。アレイの処理量が、製造規模の合成に適していながら、LNP寸法が維持される。
【表1】
【0107】
任意の数の並行試薬入口、逐次混合チャンバーおよび分岐構造の任意の組合せを使用して、ナノ粒子形成プロセスを最適化できる。これは、異なる製剤プロセスを正確に制御でき、ナノ粒子製剤プロセスの複数の段階を統合できるという利点を有する。例として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:(a)独立した投入制御を可能にするための別個の(図8)または同一の(図9)試薬の組合せからなる2以上の入口の導入(使用は、投入試薬間の比などを変更する、投入試薬の流速の独立した制御を含む)(b)ナノ粒子試薬の逐次添加または製剤処理ステップを可能にする順序正しい2以上ミキサー(図10)(使用は、ナノ粒子の制御されたボトムアップアセンブリーのための順序正しい投入試薬の添加、希釈、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象のような製剤プロセスの組込みなどを含む;または(c)投入、混合チャンバーおよび分岐構造の任意の組合せ、図11および図12は、変動する数の並行試薬投入および分岐マイクロ流体構造を有する、2段階および3段階ミキサーを例示する(使用は、ナノ粒子試薬のチップ混合、ナノ粒子核生成および成長、オンチップ希釈、透析、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象を含む、製剤プロセスの複数の段階の組込みを含む。
【0108】
図13は、多層型ミキサーを有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図である。図13を参照すると、デバイス1300は、混合チャネル1310を含む。図14は、図14に示される多層型ミキサーのクローズアップ図である。
【0109】
上記のように、脂質マイクロ/ナノ粒子を製造する方法は、水中に脂質を分散させることによって大きな構造が形成され、続いて、100nmなどのポアサイズを有するポリカーボネートフィルターによって、あるいは、チップ超音波処理を使用して多層ベシクル(ミクロンサイズ範囲)を破壊する従来「トップダウン」アプローチであった。
【0110】
このようなバッチプロセスを欠いている1つの態様は、各脂質混合物構成要素の構造およびアセンブリーを正確に制御する能力である。特定の構成要素がその外部環境に曝されると容易に分解する場合には、またはターゲッティング目的で、特定のリガンドが粒子の外側に存在しなければならない場合には、これは特に重要である。例えば、治療薬に関しては、まず、特定の治療薬と結合するための正味の正または負の表面電荷を有する粒子を製造することが重要であり得る。次いで、その他の脂質材料を用いてこのような粒子をカプセル封入することによってアセンブリーを完了するために、またはその表面特徴を修飾するために、さらなる処理が必要である場合もある。これは、例えば、正味の中性な粒子を製造するための脂質の添加または機能上の目的のために粒子の外側に存在しなくてはならないターゲッティング分子の添加を含み得る。
【0111】
一実施形態では、脂質ナノ粒子を製造する方法は、電荷結合による脂質ナノ粒子の逐次アセンブリーおよび成長を含み、さらに、治療用低分子干渉RNA(siRNA)のカプセル封入を提供し得る。この方法を使用して、表面電荷特徴を正味の正から正味の負に完全に変更できる、逆もまた同様。
【0112】
約2の電荷比(正/負)を用いて、siRNA(負)をカプセル封入する脂質ナノ粒子を調製した。脂質は、90mol% DLin−KC2−DMA(正)および10mol% PEG−c−DMAを含んでいた。得られた粒子は、直径23nmであり(図28A)、約7mVの正ゼータ電位を有していた(図28B)。アニオン性脂質を、マイクロ流体混合によってカチオン性脂質に対して4倍過剰で組み込んだ。これは、33nmへの粒子サイズの増大および−14mVという負のゼータ電位へのシフトをもたらした。追加のカチオン性脂質のさらなる組み込み(これまでのDOPSに対して4倍過剰で)、次いで、DOPSの組み込みは、粒子サイズの継続した増大をおよび正味の正および正味の負のゼータ電位間の変更をもたらした。
【0113】
結果は、単一のマイクロ流体ミキサーにおいて混合し、回収し、次いで、マイクロミキサーに再投入して次の脂質成分を添加することによって得た。しかし、単一のマイクロ流体デバイスは、このような粒子を連続法で製造するよう設計できた(図29)。
【0114】
以下のデバイスは、マイクロミキサーに入る前の流体インピーダンスならびに脂質および水性流体間の相互作用を最小にする。
【0115】
図30は、本発明の代表的なデバイス3000および方法の模式図である。図30を参照すると、デバイス3000は、第1の溶媒中にポリ核酸を備える第1の流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Aおよび第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Bを含む。流れは、マイクロミキサー中で迅速な混合が起こる領域Cに導入され、次いで、最終的に領域D、最終生成物に導入される。
【0116】
図31は、本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図である。図31を参照すると、デバイス3100は、第1の溶媒中にポリ核酸を備える第1の流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Aおよび第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Bを含む。流れは、マイクロミキサー中で迅速な混合が起こる領域Cに導入され、次いで、最終的に領域D、最終生成物に導入される。
【0117】
図32は、本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図である。図32を参照すると、デバイス3200は、第1の溶媒中にポリ核酸を備える第1の流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Aと、第1の溶媒を備える第2の流れが領域Aのフローのシース流体として作用する領域Bと、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Cと、第2の溶媒を備える第2の流れが領域Cのフローのシース流体として作用する領域Dとを含む。流れは、マイクロミキサー中で迅速な混合が起こる領域Eに導入され、次いで、最終的に領域F、最終生成物に導入される。点線は、流体の界面を表す。
【0118】
図33は、本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図である。図33を参照すると、デバイス3300は、領域Aを含み、ここで、第1の溶媒中にポリ核酸を備える第1の流れおよび第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れがチャネルに同心性に流され、領域Bに導入され、ここで、マイクロミキサー中で迅速な混合が起こり、次いで、最終的に、最終生成物が得られる領域Cに導入される。領域Aでは、2種の流体は、横断面図に示されるように、物理的な障壁によって分離されても、またはシース流体によって分離されてもよい。
【0119】
[脂質粒子を使用して治療薬を送達する方法]
本発明の脂質粒子を使用して、in vitroまたはin vivoで細胞に治療薬を送達してもよい。特定の実施形態では、治療薬は核酸であり、これを、本発明の核酸−脂質粒子を使用して細胞に送達する。本方法および組成物は、このような治療から利益を得る任意の疾患または障害の治療のための任意の適した治療薬の送達に容易に適応させることができる。
【0120】
特定の実施形態では、本発明は、細胞に核酸を導入する方法を提供する。細胞への導入にとって好ましい核酸として、siRNA、miRNA、免疫刺激性オリゴヌクレオチド,プラスミド、アンチセンスおよびリボザイムがある。これらの方法は、本発明の粒子または組成物を、細胞内送達が起こるのに十分な時間の間、細胞と接触させることによって実施できる。
【0121】
通常の適用は、周知の手順を使用して、siRNAの細胞内送達を提供して、特定の細胞標的をノックダウンまたはサイレンシングすることを含む。あるいは、適用は、治療上有用なポリペプチドをコードするDNAまたはmRNA配列の送達を含む。このように、遺伝病の治療は、遺伝子産物の欠損または非存在を供給することによって提供される。本発明の方法は、in vitroで実施しても、ex vivoで実施しても、in vivoで実施してもよい。例えば、本発明の組成物はまた、当業者に公知である方法を使用してin vivoで細胞への核酸の送達のために使用してもよい。
【0122】
本発明の脂質粒子によるsiRNAの送達および遺伝子発現をサイレンシングすることにおけるその有効性を以下に記載する。
【0123】
医薬組成物は、in vivo投与のために、非経口的に(例えば、関節内に、静脈内に、腹膜内に、皮下にまたは筋肉内に投与されることが好ましい。特定の実施形態では、医薬組成物を、ボーラス注射によって静脈内に、または腹膜内に投与する。その他の投与経路として、局所(皮膚、眼、粘液膜)、経口、肺、鼻腔内、舌下、直腸および経膣が挙げられる。
【0124】
一実施形態では、本発明は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節する方法を提供する。これらの方法は、一般に、細胞を、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節できる核酸と会合している本発明の脂質粒子と接触させることを備える。本明細書において、用語「調節すること」とは、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を変更することを指す。調節することとは、増大させることもしくは増強することを意味し、または低下させることもしく低減することを意味する場合もある。
【0125】
関連する実施形態では、本発明は、対象に、対象においてポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、本発明の医薬組成物を提供することを備え、治療薬は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現できるプラスミドから選択され、siRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスRNAは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと特異的に結合するポリヌクレオチドまたはその相補体を備える、方法を提供する。
【0126】
さらなる態様では、本発明は、本発明の脂質粒子と、医薬上許容される担体または希釈液とを備える医薬組成物を提供する。代表的な医薬上許容される担体または希釈剤として、静脈内注射用の溶液(例えば、生理食塩水またはデキストロース)が挙げられる。組成物は、クリーム、軟膏、ゲル、懸濁液またはエマルジョンの形態をとってもよい。
【0127】
以下は、代表的なLNPシステム、LNPシステムを製造するためのデバイスおよび方法ならびに治療薬を送達するためにLNPを使用する方法の説明である。
【0128】
[迅速マイクロ流体混合によって、単分散脂質ナノ粒子の製造が可能となる]
脂質ナノ粒子の製剤は、カオス的移流を誘発し、中間レイノルズ数(24<Re<240)の制御された混合環境を提供するよう設計されたマイクロ流体ミキサー内で、脂質−エタノール溶液を、水性バッファーと迅速に混合することによって実施した(図15B)。マイクロ流体チャネルは、半サイクルの間に、ヘリンボーン構造の配向を変更し、局所回転の中心および伸長フローに周期的変化を引き起こすことによってカオス的フローを生成するヘリンボーンを含有する。
【0129】
デバイスの内の混合性能を調べるために、フルオレセインのpH感受性を使用し、これでは、2つの10μMフルオレセイン流、一方はpH8.88で蛍光、もう一方はpH5.15で非蛍光を混合した。混合が起こるのに必要なチャネル長(混合の程度>95%)は、0.8cmから1.0cmの間であるとわかった。これは、それぞれ、0.1ml/min、0.4ml/min、0.7ml/minおよび1.0ml/minの流速について、およそ45ms、10msおよび5msおよび3msの混合時間をもたらした。カオス的フローでは、ベクレ数で対数的にのみ増大する、混合長のわずかな相違が予測される(Pe=Ul/D、式中、Uは、流体速度であり、lは、断面図チャネル長であり、Dは、分子の拡散性である)。
【0130】
以下の代表的な製剤は、イオン化できるカチオン性脂質、6.7という見かけのpKaを有し、脂質を低pHでのsiRNAのカプセル封入にとって適したものにし、生理学的pHでほぼ中性のカチオン性表面電荷密度を提供するDLin−KC2−DMAを含む。モデルシステムとして、このLNP−siRNAスキームを使用して、LNP製剤に対する流速の効果を調べた。流速を高めるにつれ、混合時間が劇的に低下するので、脂質が水相に導入される速度が、その最終サイズおよび分散度に影響を及ぼすと予測した。図16Bは、チャネルあたり0.1ml/min〜1ml/minの同一流速を使用して、マイクロ流体ミキサーによって製造されたLNP−siRNAシステムの平均粒径を示す図である。バッファーは、0.06(wt/wt)のsiRNA/総脂質比をもたらすようにsiRNAを含有し、LNP混合物をバッファーに直接希釈して、エタノール含量をおよそ22vol%に低下させた。総流速を0.2ml/min〜2ml/minに増大させると粒子サイズは大幅に減少した。粒子サイズは、0.2ml/minの流速下で最大であり、LNPは、およそ40nmの限界サイズに達したと、数加重粒子直径から求められた。あるいは、エタノールおよび水性の流れの比を変更することによって混合時間も調整した。水性の流れの流速を増大させると、脂質の、水性の流れでのより速い希釈が実際に提供される。脂質−エタノールの流れを、0.5ml/minで一定に維持しながら、水性の流速を増大した結果、粒子サイズが減少した(図16C)。水性の流速を3倍増大した場合の、約70nmから35nmへの粒子サイズの実質的な低下は、エタノール含量を迅速に低下させることの重要性を強調する。
【0131】
これらのLNPは、脂質が、より水性の環境に遭遇すると自発的に形成すると予測されるので、脂質濃度の効果を調査することも重要であった。脂質濃度を増大するにつれ、LNPに組み込むために利用可能な脂質の量は増大するか、そうでなければ、さらなる粒子を形成すると予測される。これを、脂質濃度を、エタノール流中で10mMから50mMに増大しながらモニタリングした。脂質濃度のこの増大後に、約40nmから70nmへの平均粒径の増大を観察した(図17)。
【0132】
[迅速なマイクロ流体混合は、LNP−siRNAシステムの広い製剤範囲を提供する] カチオン性脂質の最近の改善によってLNPの効力は数倍高まったが、LNP組成を最適化することによってさらなる改善を提供できるということも明らかとなった。特に、その二分子膜不安定化能およびエンドソーム溶解能に影響を及ぼし得るか、または生理学的pHでのその循環挙動に影響を及ぼす可能性がある。例えば、少ないPEG−脂質および増大したカチオン性脂質を有する製剤は、肝臓の肝細胞を標的とするLNPシステムのin vivo有効性において著しい改善を示した。これは、第VII因子マウスモデルの最近の報告において観察され、最適化されたLNPにおいてED50のさらに5倍の低減を提供した。PEG−脂質は、微粒子の安定性にとって必要であるが、これらのLNPシステムの膜不安定化特性を弱め得る。予備形成ベシクル(PFV)法を用いると、5mol%未満のPEG−脂質を用いてLNPシステムを製造しようとする場合には困難に遭遇した。これは、おそらくは、LNP間の融合を増大させる、ベシクルの外側でのPEG含量が少ないことによる。さらに、予備形成脂質粒子の再構築およびsiRNAのカプセル封入にとって必要なインキュベーションステップには、30%(v/v)の範囲のエタノール溶液が必要である。この脂質の流動性の増大が、不安定性を促進し、予備形成脂質粒子のさらなる凝集および融合につながり得る。
【0133】
PEG−c−DMAを使用する、LNP−siRNAシステムを製造するためのマイクロ流体(MF)法の能力(迅速な混合時間および25%エタノール(v/v)を下回るLNPの希釈前の短い滞留)を、PEG−脂質含量を変更して調査した。DLin−KC2−DMA、DSPC、コレステロールおよびPEG−c−DMAの最初の組成(40:11.5:38.5:10mol/mol)を0.06(wt/wt)のsiRNA/総脂質比と共に使用した。さらなるコレステロールを使用して、PEG−c−DMAの量の減少を補填した。マイクロ流体アプローチを使用して、PEG−c−DMAを2mol%に用量設定することは、粒子サイズのわずかな増大にしかつながらなかった。PEGを1mol%へさらに減少させることは、約20nmから約40nmへの直径の増大につながった(図18A)。対照的に、PFV法を使用する平均粒径は、PEG−脂質含量を1mol%に減少させるにつれて、20nmから70nmへの粒子直径の一定の増大を示した。少量のPEG−脂質を用いてLNPを製造することに加えて、カチオン性脂質の量を変更することができることも注目される。DLin−KC2−DMAを40mol%から70mol%に増大するにつれ、マイクロ流体アプローチによって製造されたものについて、約40nmから70nmに粒子サイズの全般的な増大が観察された(図18B)。
【0134】
[マイクロ流体デバイスにおけるセルフアセンブリーによって、ほぼ完全なカプセル封入を伴うLNPが生成し得る] LNP−siRNAシステムの製造では、堅牢な過程は必ず、OGN製剤の高いカプセル封入パーセントを提供する。1mol% PEGを有するLNP−siRNA製剤を使用して、siRNA/総脂質比を0.01から0.2(wt/wt)に変更することによってsiRNAカプセル封入を評価した。LNP製剤は、この範囲にわたって100パーセントに迫るカプセル封入パーセントを達成した(図19)。0.21(wt/wt)のsiRNA/総脂質比に達した時点で、カチオン性脂質およびアニオン性siRNA間の電荷バランス(N/P=1)に対応して、カプセル封入が減少すると観察された(示されていないデータ)。この後者の傾向は、siRNAと複合体を形成し、LNP中にカプセル封入するのに必要なカチオン性電荷が不十分であることによると予測された。
【0135】
[形態] マイクロ流体および予備形成ベシクル法によって製造されたLNPをcryo−TEMを用いて可視化した。LNPの粒子サイズは、動的光散乱によって測定されたものと同様であった。40/11.5/47.5/1mol%のDLin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DOMGを含有し、0.06wt/wtのsiRNA対脂質比を有するLNP−siRNAシステムを、図20Aに示す。さらに、同一組成の空のLNPサンプルを図20Bに示す。製造された粒子は、主に球形であり、サイズが均質である。予備形成アプローチを用いて製剤され、同一の組成のLNPも撮像した。これらは、同様の特徴をマイクロ流体LNPと共有していたが、コーヒー豆状の構造などのその他の特徴も観察された。これらのLNPはまた、サイズが大きいことが動的光散乱結果から予測された。
【0136】
[マイクロ流体によって製造されたLNP siRNAシステムは、in vivoで高度に強力な遺伝子サイレンシング物質であり得る。] LNP siRNAシステムの、i.v.注射後にin vivoで遺伝子サイレンシングを誘導する能力を、第VII因子マウモデルを使用して調査した。DLin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DOMGを含有し、0.06(w/w)のsiRNA対脂質比を有する製剤を、マイクロ流体アプローチを使用して作製した。LNP−siRNAの投与は、尾静脈注射によって行った。0.2wt/wtのDSPC対コレステロール比を維持しながら、カチオン性脂質、DLin−KC2−DMAを30mol%〜60mol%に変更した。LNP中のカチオン性脂質含量を増大した結果、FVIIサイレンシングにおいて進行性の改善が得られた。最高の性能のLNPは、60mol% DLin−KC2−DMAを含有し、約0.03mg/kgで50% FVIIサイレンシングのための有効用量をもたらした(図21)。興味深いことに、70mol%へのさらなる増大は、60mol% DLin−KC2−DMA LNPを上回る有効性の観察可能な改善につながらなかったことに留意されたい。
【0137】
結果は、互い違いのヘリンボーン状ミキサーを含有するマイクロ流体デバイスを使用して、siRNAなどのOGNを効率的にカプセル封入できる、種々の脂質組成を有するLNPを作製できることおよび製造されたLNP siRNAシステムが、in vitroおよびin vivoの両方で優れた遺伝子サイレンシング能を示すことを実証する。
【0138】
本発明のマイクロ流体デバイスおよびシステムは、LNPおよび100nm以下のサイズのOGNを含有するLNP形成を可能にし、OGNカプセル封入100%を提供する。LNPの形成に関しては、混合速度および混合比は明確に、重要なパラメータである。エタノール−脂質溶液を水性バッファーと迅速に混合することは、溶解される脂質の溶解度を低下させる培地の極性の増大をもたらし、溶液から析出させて、ナノ粒子を形成させる。迅速な混合は、溶液に混合容積全体にわたる脂質ユニマーの高度に過飽和の状態を迅速に達成させ、迅速で、均質なナノ粒子の核生成をもたらす。ナノ粒子の核生成および成長の増大は、遊離脂質の周囲の液体を枯渇させ、それによって、遊離脂質の凝集によるその後の成長を制限する。この提案されている機序は、エタノール中の低濃度の脂質(減少した遊離脂質)がより小さいLNPをもたらし(図17参照のこと)、過飽和へのより迅速な、より均質なアプローチを引き起こす高い流速がより小さいLNPの形成につながり、水性対有機溶媒構成要素の相対比を増大することもより小さい粒子をもたらすという観察結果と一致する(図17)。
【0139】
マイクロ流体法によって製剤された本発明のLNP OGNシステムは、100%に迫るOGNカプセル封入効率を示す。アンチセンスOGNに対してPFV技術を使用するこれまでのcryo−TEM研究は、小さい多層ベシクルの存在を示しており、これは、カプセル封入が、予備形成ベシクルへのOGN吸着を含み、これが元のベシクルを包み込むさらなる予備形成ベシクルとの会合のための核生成点として働くという可能性につながる。対照的に、マイクロ流体法によって製造されたLNP OGN のcryo−TEM研究は、LNPシステムの大部分は、「固体コア」構造であることを示し、異なる機序のOGNカプセル封入が働いていることを示唆する。特に、これらの構造は、ナノ粒子アセンブリーの前またはそれと同時のsiRNAのカチオン性脂質モノマーとの会合と一致する。マイクロ流体法の、核酸組成物と無関係に100%に迫るようにアンチセンスおよびsiRNA OGNのカプセル封入効率を高める能力は、これまでに報告された方法を上回る大きな利点である。
【0140】
マイクロ流体法は、LNPを製造するための伝統的な押し出し手順、予備形成ベシクル法およびOGNカプセル封入のための自発的なベシクル形成法を含む3つの代替LNP合成技術を上回る利点を提供する。マイクロ流体法は、カチオン性脂質が存在する場合には、100nmのサイズ範囲またはそれより小さいLNPを提供し、低レベルの安定化PEG−脂質を用いてLNPが形成されることを可能にする。マイクロ流体法の不利点は、調製後にエタノールを除去する必要性、特定の脂質が、エタノールに比較的不溶性であるという事実および拡張性の可能性の問題に関する。マイクロ流体法は、カプセル封入効率における利点、PFVプロセスを使用しながら用いることは困難である高いカチオン性脂質含量および低いPEG−脂質レベルの使用、予備形成ベシクルを作製する必要性を取り除くことおよび装置の小さいデッドボリューム(1μl)のために損失がほとんどない、わずかに150μgのオリゴヌクレオチドを使用する小スケールバッチを製造する能力を提示する。
【0141】
OGNが入っているLNPシステムを作製するための、SVF「Tチューブ」手順と比較して、マイクロ流体法の利点は、予備形成ベシクルは必要ではないという点を除いてPFVプロセスについて示されたものと同様である。Tチューブの開口部は、直径およそ1.5mmであり、迅速な混合が起こるのに必要な速度を達成するのに高い流速(>1ml/s)を必要とする。マイクロミキサーは、かなり低い流速で、明確に定義された再現性のある条件下でLNP OGN製剤が起こることを可能にし、デッドボリュームによる損失を低減し、LNP最適化およびin vitro試験のための小スケールバッチのより直接的な調製を可能にする。
【0142】
LNP OGNシステムはスケールアップすることができる。1ml/minの最大流速を有するデバイスでは不十分である場合もあるが、単一のマイクロ流体チップは、約10mL/minの総流速を達成するために10個以上のマイクロミキサーを含有し得る。この技術の比較的安価な性質を考えると、いくつかのこのようなチップが並列で使用されることは実用的であり、単一の卓上機器から100ml/min以上の流速を可能にする可能性がある。さらに、複数の構成要素から正確にプログラム可能な製剤、合成製剤およびパラメータのスクリーニングおよび最適化において高度に有利であろう特性を可能にするために、このようなデバイスに上流流体ハンドリングを容易に組み込むことができる。
【0143】
[固体コアLNP]
LNP siRNA製剤の特定のモデルは、水性内部中、内側にsiRNAを有するLNPの二分子膜ベシクル構造を示唆する。しかし、いくつかの観察結果は、少なくともマイクロ流体混合アプローチによって作製されたLNP siRNAシステムについては、このようなモデルは不正確であると示唆する。例えば、マイクロ流体混合によって製造されたLNP siRNAシステムの低温電子顕微鏡検査は、ベシクル構造と一致した水性コアというよりも電子密度の高いコアの存在を示す。上記のように、LNP siRNAシステムの製剤は、日常的に100%に迫るsiRNAカプセル封入効率をもたらし得、50%の最大カプセル封入効率が予測される二分子膜構造と一致しない観察結果である。
【0144】
LNP siRNAシステムの構造を、種々の物理的および酵素的アッセイを使用して評価した。得られた結果は、これらのLNP siRNAシステムは、カチオン性脂質ならびに逆ミセルまたは関連構造に組織された脂質と複合体を形成しているsiRNAモノマーからなる固体コア内部を有することを示す。
【0145】
LNPシステムは、カプセル封入されたsiRNAの存在下および不在下で、cryo EMによって示されるように電子密度の高い固体コア構造を示す。マイクロ流体混合によって製造されたLNPシステムは、代替法によって作製されたLNP siRNAシステムについて示唆される水性コア構造とは対照的に、cryo EMによって可視化されるように電子密度の高いコアを示し、固体コアと一致する。これは、図22Aで示されるように、0.06siRNA/脂質(wt/wt)含量でsiRNAを含有するDLin−KC2−DMA/DSPC/Chol/PEG−脂質(40/11.5/47.5/1;mol/mol)からなるLNP siRNA製剤について確認され、4の、正電荷(完全にプロトン化したカチオン性脂質上)に対する負の電荷(siRNA上)N/P比に対応する。結果として、LNP中で、およそ75%のカチオン性脂質がsiRNAと複合体を形成していない。固体コアの電子密度の高い構造は、POPCからなるベシクルシステムの電子密度の低い内部(図22B)と対照的であり、POPC/トリオレイン(POPC/TO)LNPの電子密度の高い内部(図22C)と視覚的に同様である。マイクロ流体混合によって製造されたPOPC/TO LNP は、POPCの単層によって囲まれたTOの疎水性コアからなる。
【0146】
図22Aの興味深い特徴は、イオン化できるカチオン性脂質の75%は、siRNAと複合体を形成していないが、LNP siRNA粒子は全体として固体コア内部を示すということである。これは、カチオン性脂質は、siRNAと複合体を形成していない場合でさえも固体コア内部に貢献し得るということを示唆する。同一の脂質組成を有するがsiRNAを有さないLNPシステムを、マイクロ流体プロセスを使用して製剤し、cryo EMによって特性決定した。図22Bに示されるように、siRNAの不在下で電子密度の高いコアが観察され、これは、DLin−KC2−DMAなどのイオン化できるカチオン性脂質は、おそらくは、DSPCおよびコレステロールと組み合わせて、LNP内部において非層状の電子密度の高い構造をとり得るということを示す。
【0147】
LNP構造は、限界サイズ示し、これは、イオン化できるカチオン性脂質は、LNP内部において逆ミセル構造を形成することを示す。電子密度の高いLNPコアに対するカチオン性脂質の貢献は、このようなLNPシステムの分子構造はどのようなものであり得るかという問題を提起する。カチオン性脂質は、対イオンと会合して、逆ミセルなどの逆構造をとるということを提案することが論理的であり、アニオン性脂質との混合物中の六方晶系のHII相などの逆構造に対するこれらの脂質の傾向と一致する。さらに、これは、純粋なカチオン性脂質からなるLNPシステムは、本質的に、直径2〜3nmを有する逆ミセル内部を囲む2つの二分子膜の厚さである10nmの範囲の直径を有する限界サイズを示すはずであるということを示唆する。HII相中のホスファチジルエタノールアミンについて見られる水性チャネルの直径は、2.6nmである。マイクロ流体製剤プロセスは、迅速な混合動態を提供し、これがLNPシステムの限界サイズシステムの生成を駆動する。DLin−KC2−DMA/PEG−脂質システム(90/10、mol/mol)について達成され得る限界サイズを評価した。図23に示されるように、マイクロ流体法によって形成されたこれらのLNPでの動的光散乱による測定によって、粒子サイズは、直径およそ10nmである、すなわち、相当な水性コアまたはトラップ容積とは一致しない知見が確認される。
【0148】
関連する問題として、カチオン性脂質−siRNA複合体の構造に関わるものがある。やはり、siRNAオリゴヌクレオチドを囲むカチオン性脂質の歪んだ逆ミセルからなると想定することが論理的である。さらに、この逆ミセル中に含有されるsiRNAが、カチオン性脂質の内側の単層と、残りの脂質の外側の単層によって囲まれており、siRNAの寸法が直径2.6nm、長さ4.8nmであると仮定すると、これは15〜20nmの範囲の限界サイズを示唆する。これが実験結果と一致するかどうかを調べるために、1のN/P比に対応する、高レベルのsiRNAのDLin−KC2−DMAおよびPEG−脂質(90/10;mol/mol)からなるLNP siRNAシステムの限界サイズを調べた。図23に示されるように、siRNAを含めた結果、仮説と一致する、およそ21nmの直径の限界サイズシステムが得られた。
【0149】
カプセル封入されたsiRNAは、LNP中に固定される。siRNAがカチオン性脂質と複合体を形成し、LNP内の固体コア中に局在化される場合には、二分子膜ベシクルシステムの水性内部中で自由に動き回っている場合よりも可動性が低いと予測される。siRNAの可動性は、31P NMR技術を使用して探ることができる。特に、複合体形成されたsiRNAについては、限定された運動の平均化があり得、これが、リン酸態リンの大きな化学シフト異方性による極めて広い「固体状態」31P NMR共鳴につながることが予測される。使用される条件下では、このような共鳴は検出可能ではない。他方、siRNAが水性環境中を自由に動き回ることができる場合には、迅速な運動の平均化は、狭い、容易に検出可能31P NMRスペクトルにつながると予測される。この仮説を試験するために、リン脂質リンに起因する31P NMRシグナルから生じる複雑化の要因を排除するためにLNPの製剤からDSPCを省いた。図24Aに示されるように、脂質組成DLin−KC2−DMA/Chol/PEG−脂質(50/45/5mol%)を有し、siRNA(0.06siRNA/脂質;wt/wt)を含有する、LNP siRNAシステムについて、31P NMRシグナルは、カプセル封入されたsiRNAについて観察可能ではなく、LNPコア内の固定化と一致する。図24Cに示されるように、LNPを可溶化し、カプセル封入されたsiRNAを放出するよう界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(1%)を添加すると、狭い31P NMRシグナルが検出される。
【0150】
カプセル封入されたsiRNAは、外部のRNアーゼAによる分解から十分に保護される。siRNAの内部移行の試験は、siRNAがLNPコア中に隔離されていれば、外部から添加されたRNアーゼによる分解から十分に保護されるはずであるというものである。脂質組成DLin−KC2−DMA/DSPC/Chol/PEG−脂質(40/11/44/5mol%)を有するLNP siRNAシステムを、RNアーゼAとともにインキュベートして、カプセル封入されたsiRNA消化され得るかどうかを調べた。図25に示されるゲルにおいて示されるように、遊離siRNAは分解されるが、マイクロ流体法によって製造されたLNP粒子内に結合されたsiRNAは、完全に保護される(図25矢印)。また、図25に示されるように、LNPへの界面活性剤Triton X−100の添加は、LNPの溶解、siRNAの放出およびRNアーゼの存在下での分解をもたらす。
【0151】
カプセル封入されたsiRNAは、内部移行されたカチオン性脂質と複合体を形成する。LNP siRNAシステムの固体コアは、カチオン性脂質と複合体を形成しているカプセル封入されたsiRNAからなり、残りの脂質(カチオン性脂質、コレステロールおよびPEG−脂質)は、逆ミセルまたは同様の構造中のコア中に存在するか、またはLNPの外側に存在するのいずれかである。高siRNA含量について、本質的にすべてのカチオン性脂質が内部移行されたsiRNAと複合体を形成している場合、ほとんどのカチオン性脂質がLNPの外側に局在しないことが予測される。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイを開発して、外側のカチオン性脂質を調べた。アッセイには、高(自己消光)濃度のFRET対、NBD−PE/Rh−PEを含有した、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)からなる負に帯電したベシクルのLNPの調製が必要であった。次いで、負に帯電したDOPS LNPを、pH5.5のDLin−KC2−DMA/DSPC/Chol/PEG−脂質(40/11.5/47.5/1mol%)からなるLNP siRNAシステムとともにインキュベートした。DLin−KC2−DMAのpKaは、6.7であり、LNPの外側のほぼすべてのDLin−KC2−DMAはpH5.5で帯電し、負に帯電したDOPS LNPとの相互作用および潜在的には融合を促進する。融合は、NBD−PEおよびRh−PEプローブが脂質混合後に希釈されるので535nmのNBD−PE蛍光の増大として報告される。
【0152】
図26に示されるように、LNPシステムがsiRNAを含有しない場合には、実質的な融合が観察され、LNPシステムの外側の単層上に存在する相当な割合のDLin−KC2−DMAと一致する。しかし、LNPシステムが、4の正(カチオン性脂質)電荷対負(siRNA)N/P電荷比に対応する0.06(wt/wt)のsiRNA対脂質比でsiRNAを含有する場合には、融合は相当に減少し(図26)、1のN/Pを用いて調製されたLNP siRNAシステムについては、融合はほとんどまたは全く観察されなかったが、これは、LNP siRNAの外側にDLin−KC2−DMAがほとんどまたは全く存在しなかったことを示す。これは、高siRNA含量では、本質的にすべてのカチオン性脂質がsiRNAと複合体を形成し、LNP内部に隔離されるという仮説を支持する。
【0153】
結果は、LNP siRNAシステムの内部は、カチオン性脂質ならびに逆ミセルまたは関連構造に配置された脂質と複合体を形成しているsiRNAモノマーから構成される固体コアからなる証拠を提供する。これらの結果は、LNP siRNA構造のモデルを暗示し、達成され得る高いsiRNAカプセル封入効率の論理的根拠を提供し、特定の適用にとって適当な特性を有するLNP siRNAシステムを製造するための方法を示唆する。
【0154】
結果に基づくLNP siRNA構造のモデルを図27に示す。モデルは、カプセル封入されたsiRNAは、カチオン性脂質によって囲まれた歪んだ逆ミセル中に存在することおよび残りの脂質はアニオン性対イオンを囲む逆ミセルに組織され、最外の単層を構成することを提案する。
【0155】
モデルは、マイクロ流体混合製剤プロセスの際に、100%に迫るsiRNAカプセル封入効率が、どのように達成され得るかについての理解を提供する。カチオン性脂質が二分子膜の両側上に等しく分散されると仮定すると、最大50%のsiRNA内部移行が予測されるので、これは二分子膜システムにおけるsiRNAカプセル封入の大きな問題である。モデルは、LNP siRNAの大きさ、組成および表面電荷を容易に調整できる方法を提示する。サイズに関しては、限界サイズ構造は、粒子あたり1個のsiRNAモノマーを含有するものであることは明確であり、およそ15〜20nmの限界サイズを示唆する。このようなLNP siRNA粒子は、本発明のマイクロ流体法を使用して容易に達成される。siRNAのモノマーからなる限界サイズLNP siRNAシステムをビルディングブロックとして使用し、マイクロ流体混合技術を使用して、変動する組成および表面電荷のLNP siRNAシステムを達成できる可能性がある。予備形成限界サイズLNP siRNAの、負に帯電した脂質を含有するエタノー溶液との迅速な混合は、例えば、過剰のカチオン性脂質との相互作用をもたらし、内部逆ミセルコア構造および負に帯電した表面を生成すると予測され得る。
【0156】
本明細書に記載される本発明の脂質粒子は、列挙された構成要素を含む(すなわち、含む)。特定の実施形態では、本発明の粒子は、列挙された構成要素と、粒子(すなわち、本質的に列挙された構成要素からなる粒子)の特徴に影響を及ぼさないその他のさらなる構成要素とを含む。粒子の特徴に影響を及ぼすさらなる構成要素として、粒子の治療プロフィールおよび有効性を不利に変更するか、または影響を及ぼすさらなる治療薬などの構成要素、列挙された治療薬構成要素を可溶化する粒子の能力を不利に変更するか、または影響を及ぼすさらなる構成要素、列挙された治療薬構成要素のバイオアベイラビリティを増大する粒子の能力を不利に変更するか、または影響を及ぼすさらなる構成要素が挙げられる。その他の実施形態では、本発明の粒子は、列挙された構成要素のみを含む(すなわち、からなる)。
【0157】
以下の例は、例示目的で提供するものであって、特許請求される発明を制限するものではない。
【0158】
例
[材料]
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホセリン(DOPS)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(7−ニトロ−2−1,3−ベンゾキサジアゾール−4−イル)(NBD−PE)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(リサミンローダミンBスルホニル)(Rh−PE)は、Avanti Polar Lipids(Alabaster、AL)から入手した。4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)およびコレステロールは、Sigma(St Louis、MO)から入手した。N−[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]−1,2−ジミリスチルオキシル(dimyristyloxl)プロピル−3−アミン(PEG−C−DMA)は、AlCana Technologiesによって合成された。2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)は、BDHから入手した。酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムは、Fisher Scientific(Fair Lawn、NJ)から入手した。RNアーゼAは、Applied Biosystems/Ambion(Austin、TX)から入手した。第VII因子(FVII)を標的とするsiRNAおよび低GC陰性対照siRNAは、Invitrogen(Carlsbad、CA)から購入した。第VII因子siRNA:(配列番号1)5’−GGAUCAUCUCAAGUCUUACTT−3’(FVIIセンス)および(配列番号2)5’−GUAAGACUUGAGAUGAUCCTT−3’(FVIIアンチセンス)。DLin−KC2−DMAは、AlCana Technologies Inc.(Vancouver、BC)から入手した。
【0159】
例1
[LNPシステムの調製:予備形成ベシクル法]
この例では、予備形成ベシクル法を使用するLNP−siRNAシステムの調製を説明する。
【0160】
LNP siRNAシステムを、予備形成ベシクル法を使用して、図15Aに表され、N. Maurer、K.F. Wong、H. Stark、L. Louie、D. McIntosh、T. Wong、P. Scherrer、S. Semple and P.R. Cullis、Spontaneous Entrapment of Polynucleotides Upon Electrostatic Interaction With Ethanol Destabilized Cationic Liposomes: Formation of Small Multilamellar Liposomes、Biophys. J.;第80巻:2310〜2326頁(2001年)に記載されるように製造した。カチオン性脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG−脂質を、適当なモル比でエタノールに最初に可溶化した。次いで、脂質混合物を、ボルテックス処理しながら、水性バッファー(クエン酸または酢酸バッファー、pH4)に滴加し、30%(v/v)の最終エタノールおよび脂質濃度とした。次いで、水和した脂質を、室温で、Lipex Extruder(Northern Lipids、Vancouver、Canada)を使用して2枚重ねた80nmポアサイズのフィルター(Nuclepore)を通して5回押し出した。ベシクル懸濁液に、混合しながらsiRNA(30%エタノールを含有する同一の水溶液に可溶化した)を加えた。通常、0.06(wt/wt)の標的siRNA/脂質比を使用した。この混合物を、35℃で30分間インキュベートし、ベシクル再構築およびsiRNAのカプセル封入を可能にした。次いで、エタノールを除去し、50mMクエン酸バッファー、pH4.0に対する透析(12〜14k MWカットオフ、Spectrum medical機器)およびPBS、pH7.4に対する透析によって、外部のバッファーをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で置換した。
【0161】
例2
[LNPシステムの調製:マイクロ流体互い違いヘリンボーン状ミキサー]
この例では、マイクロ流体互い違いヘリンボーン状ミキサーを使用する本発明の代表的なLNP−siRNAシステムを説明する。
【0162】
[LNP−siRNA調製] オリゴヌクレオチド(siRNA)溶液をpH4.0の25mM酢酸バッファーで調製した。所望のオリゴヌクレオチド対脂質比および製剤濃度に応じて、0.3mg/ml総脂質〜1.9mg/ml総脂質の標的濃度で溶液を調製した。エタノール中に、適当なモル比でDLin−KC2−DMA、DSPC、コレステロールおよびPEG−脂質を含有する脂質溶液を調製し、25mM酢酸バッファーで希釈して90%(v/v)のエタノール濃度を達成した。図15Bは、この例において使用したマイクロ流体装置の概略図である。デバイスは、2つの入口、上記で調製された溶液の各々のためのものと、1つの出口とを有する。マイクロ流体デバイスをソフトリソグラフィー、エラストマーの微細加工されたマスターのレプリカモールディングによって製造した。デバイスは、200μmの幅および79μmの高さの混合チャネルを特徴とし、チャネルの最高部に31μmの高さおよび50μmの厚みの特長によって形成されるヘリンボーン状構造を有する。流体連結部は、シリンジと連結するための21G1ニードルに取り付けられた1/32” I.D.、3/32” O.D.チューブを用いて製造した。通常、両方の入口の流れに1mlシリンジを使用した。二重のシリンジポンプ(KD200、KD Scientific)を使用して、デバイスを通る流速を制御した。各流れの流速を0.1ml/min〜1ml/minで変更した。シリンジポンプは、マイクロ流体デバイスに2種の溶液を導入し(図15Bにおける入口aおよび入口b)、ここで、それらはY字路で接触する。この時点で拡散によって層流下でわずかな混合が起こるが、2種の溶液は、ヘリンボーン状構造に沿って通過するときに混合した状態になる。
【0163】
混合は、これらの構造中でカオス的移流によって起こり、層流の特徴的分離を次第に小さくさせ、それによって迅速な拡散を促進する。この混合は、ミリ秒時間スケールで起こり、その結果、脂質が、漸進的により水性の環境に移され、その溶解度が低下し、LNPの自発的な形成をもたらす。脂質組成物中にカチオン性脂質を含むことによって、オリゴヌクレオチド種の封入は、正に帯電した脂質頭部基と、負に帯電したオリゴヌクレオチドとの会合によって得られる。マイクロ流体デバイスにおける混合後、通常、LNP混合物を、2容積の撹拌バッファーを含有するガラスバイアル中に希釈した。最後に、50mMクエン酸バッファー、pH4.0に対する透析およびPBS、pH7.4に対する透析によってエタノールを除去する。バッファー溶液にオリゴヌクレオチドがない空のベシクルを同様に製造した。
【0164】
[LNP画像解析] 種々のpH値を有するフルオレセイン溶液の混合の蛍光イメージングによって混合時間を測定した。10x対物および1ラインあたり2スキャンを用いるカルマンフィルタモードを使用するオリンパス倒立共焦点顕微鏡を使用して像を集めた。チャネルの高さに沿って25の等間隔の切片をとり、組み合わせて総強度プロフィールを求めた。撮像された各位置について、流れの方向に沿って10の隣接するピクセル列の平均をとって、チャネルの幅に沿った強度プロフィールを得、これを使用して混合の程度を求めた。混合実験は、ナトリウムおよびリン酸イオン濃度の大きな差による液間電位差の形成を抑制するために0.5M NaClを補給した2種の10μMフルオレセイン溶液を用いて実施した。一方の溶液は、14mMのpH8.88のリン酸バッファーを含有していたが、もう一方は、1mMのpH5.15のリン酸バッファーを含有していた。最初に、pH5.15の溶液の蛍光の増大が、塩基性溶液中の蛍光のわずかな低下を圧倒し、総蛍光強度の2倍の増大をもたらす。混合の程度は、0.1ml/min、0.4ml/min、0.7ml/minおよび1.0ml/minの個々の流れの流速を使用してチャネルの長さに沿っておよそ2.1mm、6.2mmおよび10.1mmで求めた。
【0165】
[LNP特性決定] 粒子サイズは、Nicompモデル370サブミクロン粒子選別器(粒子サイジングシステム、Santa Barbara、CA)を使用して動的光散乱によって求めた。数加重および強度加重分布データを使用した。脂質濃度は、Wako Chemicals USA(Richmond、VA)製のコレステロールE酵素アッセイを使用して総コレステロールを測定することによって確認した。遊離siRNAの除去は、VivaPureD MiniHカラム(Sartorius Stedim Biotech GmbH、Goettingen、Germany)を用いて実施した。次いで、溶出物を75%エタノールに溶解し、260nmでの吸光度を測定することによってsiRNAを定量化した。カプセル封入効率は、脂質含量に対して正規化された、遊離オリゴヌクレオチド含量の除去の前後のオリゴヌクレオチドの比から求めた。
【0166】
[LNP低温透過型電子顕微鏡] サンプルは、穴の開いた炭素フィルムを有する標準電子顕微鏡グリッドに、3μLの、20〜40mg/mlの総脂質でLNPを含有するPBSを適用することによって調製した。Vitrobotシステム(FEI、Hillsboro、OR)を用いて吸い取ることによって過剰の液体を除去し、次いで、液体エタン中のLNP懸濁液をプランジ凍結して、ベシクルをアモルファス氷の薄いフィルムに迅速に凍結した。像は、低温条件下で、AMT HR CCDサイドマウントカメラを用いて29Kの倍率で取った。像のコントラストを増強するために5〜8μmのアンダーフォーカスを用いて低用量条件下で、FEI G20 Lab6 200kV TEM中のGatan70度クライオトランスファーホルダーを用いてサンプルを載せた。
【0167】
[FVII活性に対するLNP−siRNAのIn vivo活性] 6〜8週齢の雌のC57Bl/6マウスは、Charles River Laboratoriesから入手した。第VII因子siRNAを含有するLNP−siRNAを0.2μmフィルターを通して濾過し、使用の前に滅菌リン酸緩衝生理食塩水で必要な濃度に希釈した。製剤は、10ml/kgの容積で外側尾静脈を介して静脈内に投与した。24時間後、ケタミン//キシラジンを用いて動物に麻酔し、心穿刺によって血液を採取した。サンプルを血清に処理し(Microtainer Serum Separator Tubes; Becton Dickinson、NJ)、直ちに試験し、血清第VII因子レベルのその後の分析のために−70℃で保存した。すべての手順を、地方、州および連邦の規制に規定どおりに従って実施し、動物実験委員会(IACUC)によって承認された。
【0168】
血清第VII因子レベルは、比色分析Biophen VIIアッセイキット(Anaira)を使用して求めた。対照血清をプールし、段階希釈して(200%〜3.125%)、処理動物におけるFVIIレベルを算出するための較正曲線を製造した。処理動物から得た適当に希釈した血漿サンプル(n=投与量あたり3)および生理食塩水対照群(n=4)をBiophen VIIキットを製造業者の使用説明書に従って使用して分析した。分析は、96ウェル、平底、非結合性ポリスチレンアッセイプレート(Corning、Corning、NY)で実施し、405nmの吸光度を測定した。処理動物における第VII因子レベルは、段階希釈した対照血清を用いて作製した較正曲線から求めた。
【0169】
例3
[LNPシステム:固体コア]
この例では、固体コアを有する本発明の代表的なLNP−siRNAシステムの構造を説明する。
【0170】
[脂質ナノ粒子の調製] LNPは、上記のマイクロミキサーを使用して、エタノール中の所望の容積の脂質保存溶液を水相と混合することによって調製した。siRNAのカプセル封入のために、所望の量のsiRNAを、pH4の25mM酢酸ナトリウムバッファーと混合した。混合を促進するためにヘリンボーン状構造を含有するマイクロミキサーにおいて、当容積の脂質/エタノール相およびsiRNA/水相を組み合わせた。マイクロミキサーを出るとすぐに、酢酸ナトリウムバッファーを用いてエタノール含量を25%に迅速に希釈した。マイクロ混合を通る流速を、二重シリンジポンプ(Kd Scientific)を使用して調節した。次いで、脂質混合物を、50mM MES/ナトリウムクエン酸バッファー(pH6.7)中で4時間の透析と、それに続く、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中での一晩の透析に付した。
【0171】
[Cryo−EM] サンプルは穴の開いた炭素フィルムを有する標準電子顕微鏡グリッドに、3μLの、20〜40mg/mlの総脂質でLNPを含有するPBSを適用することによって調製した。Vitrobotシステム(FEI、Hillsboro、OR)を用いて吸い取ることによって過剰の液体を除去し、次いで、液体エタン中のLNP懸濁液をプランジ凍結して、ベシクルをアモルファスガラス様氷の薄いフィルムに迅速に凍結した。像は、低温条件下で、AMT HR CCDサイドマウントカメラを用いて29Kの倍率で取った。像のコントラストを増強するために5〜8umのアンダーフォーカスを用いて低用量条件下で、FEI G20 Lab6 200kV TEM中のGatan70度クライオトランスファーホルダーを用いてサンプルを載せた。
【0172】
[RNアーゼ保護アッセイ] 第VII因子siRNAは、マイクロ流体混合法を使用し、40% DLinKC2−DMA、11% DSPC、44%コレステロールおよび5% PEG−c−DMAを用いてカプセル封入した。1ugのsiRNAを、50uLの20mM HEPES(pH7.0)中の0.05ugのRNアーゼA(Ambion、Austin、TX)とともに37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、反応混合物の10uLのアリコートを、30uLのFA色素(脱イオン化ホルムアミド、TBE、PBS、キシレンシアノール、ブロモフェノールブルー、酵母tRNA)に加えて、RNアーゼ反応を停止した。20%未変性ポリアクリルアミドゲルを使用してゲル電気泳動を実施し、CYBR−Safe(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて染色することによって核酸を可視化した。
【0173】
[31P−NMR研究] 162MHzで作動するBruker AVII 400スペクトロメーターを使用してプロトンデカップリングされた31P NMRスペクトルを得た。パルス間減衰および64kHzのスペクトル幅を有する15μs、55度パルスを用いて、約104スキャンに対応する自由誘導減衰(FID)を得た。50Hzの線の広がりに対応する指数関数的な増大をFIDに適用し、その後フーリエ変換を行った。サンプル温度は、Bruker BVT3200温度ユニットを使用して調節した。測定は25℃で実施した。
【0174】
[FRET膜融合研究] LNP siRNAナノ粒子と、アニオン性DOPSベシクルとの間の融合を、蛍光共鳴エネルギー移動を使用する脂質混合アッセイによってアッセイした。脂質フィルムを適当なバッファーで直接再水和し、続いて、Lipex Extruderを使用して100nmポアサイズのポリカーボネートメンブレンを通して10回押し出すことによって、NBD−PEおよびRh−PE(各1mol%)を含有する標識したDOPSベシクルを調製した。40% DLinKC2−DMA、11.5% DSPC、47.5%コレステロール、1% PEG−c−DMAを含むLNPを、0、0.06および0.24のsiRNA対脂質比(D/L比、wt/wt)を用いて調製した。D/L=0.24は、等モル比の正(カチオン性脂質)対負(siRNA)電荷(N/P=1)に相当する。脂質混合実験を実施した。pH5.5に平衡化した10mM酢酸、10mM MES、10mM HEPES、130mM NaCl 2mLを含有する撹拌キュベット中に、標識されたDOPSベシクルおよび非標識LNPを1:2mol比で混合した。NBD−PEの蛍光を、連続低速撹拌下で、1×1cmキュベットを使用し、LS−55 Perkin Elmer蛍光光度計を使用し、465nmの励起および535nmの発光を使用してモニタリングした。脂質混合を、およそ10分間モニタリングし、その後、20μLの10% Triton X−100を加えて、すべての脂質ベシクルを破壊し、無限のプローブ希釈に相当するものとした。無限プローブ希釈のパーセンテージとしての脂質混合を方程式:を使用して求めた。脂質混合%=(F−Fo)/(Fmax−Fo)×100(式中、Fはアッセイの間の535nmの蛍光強度であり、Foは、初期蛍光強度であり、Fmaxは、Triton X−100の添加後の無限プローブ希釈での最大蛍光強度である。
【0175】
例4
[脂質ナノ粒子の逐次アセンブリー]
この例では、本発明の代表的な方法、脂質ナノ粒子を製造するための逐次アセンブリーを説明する。
【0176】
オリゴヌクレオチド(siRNA)溶液を、pH4.0の25mM酢酸バッファー中、1.31mg/mlで調製した。脂質混合物は、90mol%のカチオン性脂質(DLin−KC2−DMA)と10mol%のPEG−c−DMA(エタノールに溶解した10mM総脂質)とを含有するよう調製した。2種の溶液を、マイクロ流体ミキサーを総流速2ml/minで使用して混合し、pH4.0の25mM酢酸バッファーを用いて2倍に希釈して、エタノールを約23vol%に低下させ、最初の、すなわち、コアのナノ粒子を形成した。この最初の脂質粒子懸濁液をとり、メタノールに溶解したアニオン性脂質ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)を含有する別の脂質溶液と混合し、さらにおよそ25vol%溶媒(メタノールおよびエタノール)に希釈することによって逐次アセンブリーを実施した。第2の脂質、DOPSは、カチオン性脂質に対して約4xモル過剰で加えた。逐次アセンブリープロセスを、カチオン性脂質およびアニオン性脂質環を変更することによって反復した。
【0177】
粒子サイズは、Malvern Zetasizer Nano−ZS(Malvern Instruments Ltd、Malvern、Worcestershire、UK)を使用して動的光散乱によって求めた。数加重分布データを使用した。LNPシステムの表面電荷の尺度を提供するゼータ電位を、ディスポーサブルキャピラリーセル(DTS1060、Malvern Instruments Ltd.)を使用するMalvern Zetasizerを用いて測定した。LNPシステムを、25mM酢酸バッファー、pH4.0でおよそ0.3mg/ml総脂質に希釈した。
【0178】
例5
[代表的な脂質粒子の調製および特性決定]
この例では、カチオン性脂質と、核酸(DLin−KC2−DMA−siRNA)とのみからなる本発明の代表的な脂質粒子を説明する。
【0179】
siRNA溶液を、pH4.0の25mM酢酸バッファー中、0.38mg/mlで調製した。脂質溶液は、エタノール中、10mMの濃度でDLin−KC2−DMAを含有するよう調製した。siRNA対脂質比は、0.06(wt/wt)とした。各溶液を、等しい流速、2ml/minの総流速でマイクロ流体ミキサー中に投入した。サンプルを25mM酢酸バッファー、pH4.0を用いてさらに希釈し、エタノール含量を25vol%にした。
【0180】
粒子サイズは、Nicompモデル370サブミクロン粒子選別器(粒子サイジングシステム、Santa Barbara、CA、米国)を使用して動的光散乱によって求めた。サンプル測定は、25mM酢酸中で実施し、数加重分布データを使用した。粒子は、14.2nmの平均粒径、0.487の変動係数および1.93のχ2を有していた。
【0181】
例示的実施形態を示し、記載したが、当然のことではあるが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、それに種々の変法を行うことができる。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全文が参照により本明細書に明確に組み込まれる2009年11月4日に出願された米国仮出願第61/280,510号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
脂質ナノ粒子(LNP)は、最も臨床的に進んだ薬物送達システムであり、7種のLNPベースの薬物が規制承認を受けている。これらの承認薬は、抗癌薬などの小分子を含有し、「遊離」薬物と比較して、有効性の改善および/または毒性の低減を示す。LNP担体技術はまた、治療用タンパク質の発現のためのプラスミドまたは疾患進行の一因となっている遺伝子をサイレンシングするための低分子干渉RNA(siRNA)オリゴヌクレオチド(OGN)などの「遺伝子」薬の送達にも適用されている。siRNA OGNおよびその他の遺伝子薬の効率的なin vivo送達のための方法を考案することが、これらの薬剤の治療薬としての革新的な可能性を妨げる大きな問題となっている。
【0003】
遺伝子薬のカプセル封入および送達に必要なLNP技術およびカチオン性脂質の設計における最近の進歩によって、in vivo送達問題を解決するためのLNPシステムの可能性が強調されている。LNP−siRNAシステムは、静脈内(i.v.)注射後に、非ヒト霊長類を始めとする動物モデルにおいて、治療上関連する標的遺伝子のサイレンシングを誘導することがわかっており、現在、いくつかの臨床試験において評価中である。
【0004】
遺伝子薬を含有するLNPシステムを製剤するために、種々の方法が開発されている。これらの方法として、エタノールの存在下で、予め形成しておいたLNPを、OGNと混合することまたはエタノールに溶解した脂質を、OGNを含有する水性媒体と混合することが挙げられ、その結果、100nm以下の直径を有するLNPおよび65〜95%のOGNカプセル封入効率が得られる。これらの方法の両方とも、OGNのカプセル封入を達成するためのカチオン性脂質ならびに凝集および大きな構造の形成を阻害するためのポリ(エチレングリコール)(PEG)脂質の存在に依存している。サイズおよびOGNカプセル封入効率を始めとする、生じるLNPシステムの特性は、イオン強度、脂質およびエタノール濃度、pH、OGN濃度および混合速度などの種々の製剤パラメータに対して敏感である。一般に、混合の時点での関連脂質およびOGN濃度などのパラメータならびに混合速度は、現在の製剤手順を使用して制御することが困難であり、その結果、生じるLNPの特徴が、製剤内および製剤間で変動する。
【0005】
マイクロ流体デバイスは、温度、滞留時間および溶質濃度にわたって精密制御して、ナノリットルスケールで流体を制御可能に、迅速に混合する能力を提供する。制御された迅速なマイクロ流体混合は、これまでに無機ナノ粒子および微粒子の合成において適用されており、ナノ粒子の大規模製造においてマクロスケールシステムより優れたものであり得る。マイクロ流体2相液滴技術は、薬物送達のために単分散高分子微粒子を製造するために、または細胞、タンパク質もしくはその他の生体分子をカプセル封入するための大きなベシクルを製造するために適用されている。試薬の迅速な混合を提供するための、サイズが制御された単分散リポソームを作製するための流体力学的フロー絞り込み、一般的なマイクロ流体技術の使用が実証されている。この技術はまた、高分子ナノ粒子の製造において有用であると証明されており、これでは、バルク製造法と比較して、より小さい、より多くの単分散粒子が得られ、より高い小分子カプセル封入が得られる。
【0006】
遺伝子薬を含有するLNPシステムのための方法の開発における進歩にもかかわらず、治療材料を含有する脂質ナノ粒子ならびに治療材料を含有する改善された脂質ナノ粒子を調製するためのデバイスおよび方法に対する必要性は存在している。本発明は、この必要性を満たし、さらなる関連する利点を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、本発明は、核酸を備える脂質粒子を提供する。
【0008】
一実施形態では、脂質粒子は、(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と、(b)1つまたは複数の第2の脂質と、(c)1つまたは複数の核酸とを備え、ここで、脂質粒子は、本明細書において定義される、実質的に固体のコアを備える。
【0009】
一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−KC2−DMAである。特定の実施形態では、粒子は、約30〜約95モルパーセントのカチオン性脂質を備える。
【0010】
一実施形態では、第2の脂質は、PEG−c−DMAである。一実施形態では、第2の脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である。特定の実施形態では、粒子は、約1〜約10モルパーセントの第2の脂質を備える。
【0011】
核酸は、DNA、RNA、ロックド核酸、核酸類似体またはDNAもしくはRNAを発現できるプラスミドであり得る。
【0012】
別の実施形態では、脂質粒子は、(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と、(b)1つまたは複数の中性脂質と、(c)1つまたは複数のPEG−脂質と、(d)1つまたは複数のステロールと、(e)1つまたは複数の核酸とを備え、ここで、脂質粒子は、本明細書において定義される実質的に固体のコアを備える。一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−KC2−DMAである。一実施形態では、PEG−脂質は、PEG−c−DMAである。一実施形態では、中性脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である。一実施形態では、ステロールはコレステロールである。一実施形態では、核酸はsiRNAである。
【0013】
さらなる実施形態では、脂質粒子は、1つまたは複数のカチオン性脂質と、1つまたは複数の核酸とからなる。一実施形態では、脂質粒子は、本明細書において定義される実質的に固体のコアを備える。一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−KC2−DMAである。一実施形態では、核酸は、siRNAである。
【0014】
その他の態様では、本発明は、脂質粒子を使用するための方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、核酸を対象に投与するための方法であって、それを必要とする対象に本発明の脂質粒子を投与することを備える方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、核酸を細胞に導入するための方法であって、細胞を本発明の脂質粒子と接触させることを備える方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節するための方法であって、細胞を本発明の脂質粒子と接触させることを備え、核酸が、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節できる方法を提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、対象におけるポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、対象に本発明の脂質粒子を投与することを備え、核酸が、ポリペプチドの発現をサイレンシングまたは低減できる方法を提供する。
【0019】
その他の態様では、本発明は、脂質粒子を製造するための方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、核酸を含有する脂質粒子を製造する方法であって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れをマイクロ流体デバイスに導入することであって、デバイスは、デバイスに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物をマイクロ流体ミキサーを用いて混合するための第2の領域とを有する、ことと;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れをデバイスに導入して、層流条件下を流れる第1および第2の流れを提供することであって、デバイスは、マイクロチャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有し、脂質粒子形成材料はカチオン性脂質を含み、第1および第2の溶媒は同一ではない、ことと;
(c)デバイスの第1の領域からデバイスの第2の領域に、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れを流すことと;
(d)デバイスの第2の領域において層流条件を流れる、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質ナノ粒子を備える第3の流れを提供することと
を備える方法を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、核酸を含有する脂質粒子を製造する方法であって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れを、チャネルに導入することであって、デバイスは、チャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する、ことと;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを導入することであって、チャネルは、チャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する、ことと;
(c)チャネルの第1の領域からチャネルの第2の領域に、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れを、2つの流れの物理的分離を維持しながら流すことであって、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れは、チャネルの第2の領域に到達するまで混合しない、ことと;
(d)マイクロチャネルの第2の領域において層流条件下を流れる1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質ナノ粒子を備える第3の流れを提供することと
を備える方法を提供する。
【0022】
上記の方法の特定の実施形態では、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合することは、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの濃度または相対混合速度を変更することを備える。
【0023】
上記の方法の特定の実施形態では、方法は、第3の流れを水性バッファーで希釈することをさらに備える。特定の実施形態では、第3の流れを希釈することは、第3の流れおよび水性バッファーを第2の混合構造中に流すことを備える。
【0024】
上記の方法の特定の実施形態では、方法は、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える水性バッファーを透析して、第2の溶媒の量を低減することをさらに備える。
【0025】
上記の方法の特定の実施形態では、第1の溶媒は水性バッファーである。上記の方法の特定の実施形態では、第2の溶媒は水性アルコールである。
【0026】
上記の方法の特定の実施形態では、第1および第2の流れの内容物を混合することは、カオス的移流を備える。上記の方法の特定の実施形態では、第1および第2の流れの内容物を混合することは、マイクロミキサーを用いて混合することを備える。
【0027】
上記の方法の特定の実施形態では、核酸カプセル封入効率は、約90〜約100%である。
【0028】
上記の方法の特定の実施形態では、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの混合は、障壁によって第1の領域では防がれる。特定の実施形態では、障壁は、チャネル壁、シース流体または同心チューブである。
【0029】
本発明の別の態様では、脂質粒子を製造するデバイスが提供される。一実施形態では、本発明は、核酸をカプセル封入する脂質粒子を製造するデバイスであって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の溶液を受け取るための第1の入口と、
(b)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れを提供するための、第1の入口と流体連通している第1の入口マイクロチャネルと;
(c)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の溶液を受け取るための第2の入口と;
(d)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを提供するための、第2の入口と流体連通している第2の入口マイクロチャネルと;
(e)第1および第2の流れを受け取るための第3のマイクロチャネルであって、層流条件下でマイクロチャネルに導入された第1および第2の流れを流すように適合されている第1の領域と、第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を含む第3の流れを提供するように適合されている第2の領域とを有する第3のマイクロチャネルと
を備えるデバイスを提供する。
【0030】
一実施形態では、デバイスは、第3の流れを希釈して、カプセル封入された核酸を有する安定化された脂質粒子を備える希釈流を提供するための手段をさらに備える。特定の実施形態では、第3の流れを希釈するための手段は、マイクロミキサーを備える。
【0031】
一実施形態では、マイクロチャネルは、約20〜約300μmの流体力学直径を有する。
【0032】
一実施形態では、マイクロチャネルの第2の領域は、浅浮き彫り構造を備える。一実施形態では、マイクロチャネルの第2の領域は、主要な流れ方向および少なくとも1つの溝または突起部が画定されている1つまたは複数の表面を有し、溝または突起部は、主要な方向と角度を形成する配向を有する。一実施形態では、第2の領域は、マイクロミキサーを備える。
【0033】
特定の実施形態では、デバイスは、第1および第2の流れの流速を変更するための手段をさらに備える。
【0034】
特定の実施形態では、デバイスは、第1の領域において、1つまたは複数の第1の流れを、1つまたは複数の第2の流れから物理的に分離するのに有効な障壁をさらに備える
上記の態様および本発明の付随する利点の多くは、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解されると、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の代表的な流体デバイスの概略図。
【図2】図1に示されるデバイスを精緻化したものである本発明の代表的な流体デバイスの概略図。
【図3】図2に示されるデバイスを精緻化したものである本発明の代表的な流体デバイスの概略図。
【図4】本発明の代表的な流体デバイスおよび方法の概略図。
【図5】10個の図4に示される流体デバイスを備える本発明の代表的なアレイの概略図。
【図6】本発明の代表的な流体デバイスの概略図。
【図7】10個の図6に示される代表的な流体デバイスを備える本発明の代表的なアレイの概略図。
【図8】3つの入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス800は、混合チャネル810を含む)。
【図9】2つの入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス900は、混合チャネル910を含む)。
【図10】多数(n)の一連の入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス1000は、混合チャネル1010a、1010b、1010cおよび1010dを含む)。
【図11】3つの入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス1100は、混合チャネル1110a、1110bおよび1110cを含む)。
【図12】7つの入口および単一の出口を有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス1200は、混合チャネル1210a、1210b、1210cおよび1210dを含む)。
【図13】多層型ミキサーを有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図(デバイス1300は、混合チャネル1310を含む)。
【図14】図14に示される多層型ミキサーのクローズアップ図。
【図15A−15B】脂質ナノ粒子(LNP)を製造する本発明の代表的なマイクロ流体(MF)法の概略図:脂質−エタノールおよびsiRNA−水溶液を、マイクロ流体混合デバイスの入口にポンプで入れ;デバイス中のヘリンボーン状の特徴が、層流のカオス的移流を誘発し、脂質種を、水性流と迅速に混合させ、脂質ナノ粒子を形成させる。混合チャネルは、200μmの幅で79μmの高さである。ヘリンボーン状の構造は、31μmの高さで、50μmの厚さである。
【0036】
脂質ナノ粒子(LNP)を製造するための予備形成ベシクル(PFV)法の概略図示す図(a)脂質−エタノール溶液を、水溶液、pH4.0に加えると、その結果、ベシクル型粒子が形成され;(b)Lipex Extruderを使用して、室温で80nmポリカーボネートメンブレン(Nuclepore)を通して押し出すと、より均一な粒子分布が得られ;(c)ボルテックス処理をしながらsiRNA溶液を加え、35℃で30分間インキュベートすることによって、siRNAのカプセル封入が促進される。
【図16A】混合およびLNP粒子サイズに対するマイクロ流体デバイス中の流速の影響を示す図。2種の10μMフルオレセイン(pH8.8で蛍光、pH5.15で非蛍光)溶液を混合して完全に蛍光の溶液を製造する。図16Aは、平均流体速度および移動の長さ(0.2、0.8、1.4および2mL/min)から算出される混合時間(msec)の関数として、チャネル幅に沿った平均蛍光強度によって決定される混合の程度(%)を比較する。
【図16B】混合およびLNP粒子サイズに対するマイクロ流体デバイス中の流速の影響を示す図。図16Bは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなるLNPの平均粒径を、siRNAを含有する25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mM脂質−エタノール相と比較する。図16Bは、流速(mL/min)の関数としてLNPの平均粒径(nm)を比較する。
【図16C】混合およびLNP粒子サイズに対するマイクロ流体デバイス中の流速の影響を示す図。16Cは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなるLNPの平均粒径を、siRNAを含有する25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mM脂質−エタノール相と比較する。図16Cは、エタノール/水性流速比の関数としてLNPの平均粒径(nm)を比較する。エラーバーは、動的光散乱によって測定される平均粒径の標準偏差を表す。
【図17】エタノール(mM)中の脂質濃度の関数として平均粒径(nm)を比較することによってLNP粒子サイズに対する脂質濃度の影響を示す図。脂質濃度の増大の結果、平均粒径が増大する。マイクロ流体チップ中で混合されているエタノール相中の総脂質含量を10mM〜50mMで変えた。LNPは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなる。マイクロ流体ミキサーの内側の総流速は、2ml/minで維持した。エラーバーは、動的光散乱によって測定される平均粒径の標準偏差を表す。
【図18A】LNPシステムに対するPEG−脂質およびカチオン性脂質の影響を示す図。図18Aは、PFVおよびMF法によって調製されたLNPの、PEG−c−DMA含量(LNP中のmol%)の関数としての平均粒径(nm)を比較する。PEG−脂質を、LNP組成中、1mol%〜10mol%で変えた。PEG脂質含量の改変は、コレステロール含量の調整によって補った。LNPは、40:11.5:47.5:1(−x):1(+x)、(ここで、x=1〜9)のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなっていた。
【図18B】LNPシステムに対するPEG−脂質およびカチオン性脂質の影響を示す図。図18Bは、PFVおよびMF法によって調製されたLNPの、DLin−KC2−DMA含量(mol%)の関数としての平均粒径(nm)を比較する。カチオン性脂質は、40mol%〜70mol%で変えた。PEG−c−DMAは、1mol%で一定に維持し、DSPC−コレステロールを用いて0.25モル比を維持した。マイクロ流体ミキサー内の総流速は、2ml/minで維持した。siRNAを含有する25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mMの脂質−エタノール相。エラーバーは、動的光散乱によって測定される平均粒径の標準偏差を表す。
【図19】siRNA/脂質比(wt/wt)(ヌクレオチド(nucelotide)/ホスフェート(N/P)としても表される)の関数として、平均粒径(nm)およびカプセル封入(%)を比較することによって、粒子サイズおよびカプセル封入に対するsiRNA/脂質比の影響を示す図。アニオン交換スピンカラムを使用する遊離siRNAからのLNP懸濁液の分離によって求めたカプセル封入。LNPは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなっていた。マイクロ流体ミキサー内の総流速は、2ml/minで維持した。siRNAを含有する25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mM脂質−エタノール相。エラーバーは、動的光散乱によって測定される平均粒径の標準偏差を表す。
【図20A】低温透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した、マイクロ流体ミキサーによって調製されたPEG−脂質およびカチオン性脂質LNPシステムの形態を示す図。Cryo−TEMによって29K倍率でLNPを撮像した。図20Aは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMAからなる空のLNPの像である。
【図20B】低温透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した、マイクロ流体ミキサーによって調製されたPEG−脂質およびカチオン性脂質LNPシステムの形態を示す図。図20Bは、40:11.5:47.5:1のモル比のDlin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DMA、siRNA−総脂質比0.06wt/wtからなるsiRNAを入れたLNPの像である。製剤は、エタノール相中20mM脂質でマイクロ流体ミキサーを使用して実施した。中に入っているLNP−siRNAおよび空の粒子を含有する1mol% PEG−c−DOMGは、同一の形態を示し、構造において極めて均質であった。スケールバーは、100nmを表す。
【図21】40mol%〜60mol%でLNP中のDLin−KC2−DMA含量を変えて、siRNA投与量(mg/kg)の関数として相対FVIIタンパク質レベル(%)を比較することによって、第VII因子マウスモデルにおけるマイクロ流体によって製造されたLNPのin vivoサイレンシング活性を示す図。1mol% PEG−c−DOMGおよび60mol% DLin−KC2−DMAを含有するLNPの製剤によって、代替アプローチを使用してこれまでに報告されたものと同様のFVIIサイレンシングが得られる。DLin−KC2−DMA含有LNPの遺伝子サイレンシングは、40mol%〜60mol%の範囲にわたって徐々に向上する。マウスへのLNP−siRNAの全身注射は、尾静脈注射によって実施した(n=用量レベルあたり3)。血液採取は、注射の24時間後に実施し、第VII因子レベルを比色アッセイによって調べた。LNP DSPC対コレステロール比は、0.2wt/wtで維持し、1mol% PEG−c−DOMGを含有していた。LNP siRNA対脂質比は、0.06wt/wtとした。
【図22A】マイクロ流体法によって調製された脂質ナノ粒子の低温電子顕微鏡検査を示す図。マイクロ流体によって調製された空の脂質ナノ粒子(40% DLinKC2−DMA、11.5% DSPC、47.5%コレステロール、1% PEG−c−DMA)は、固体コア構造を示す電子密度の高い内部を示した(図22A)。
【図22B】マイクロ流体法によって調製された脂質ナノ粒子の低温電子顕微鏡検査を示す図。POPCからなるサンプルは、水性コアベシクルに相当する密度の低い内部を示した(図22B)。
【図22C】マイクロ流体法によって調製された脂質ナノ粒子の低温電子顕微鏡検査を示す図。単層のPOPCによって囲まれたトリオレインの疎水性コアを有するPOPC/トリオレインを含有するシステムは、サンプルAと同様の電子密度の高い内部を示した(図22C)。
【図23】siRNAの存在下で(N/P=1)、またsiRNAの非存在下で(siRNAなし)製造されたLNPのエタノール/水性流速比の関数として平均粒径(nm)を比較することによって、マイクロ流体混合を使用してDLinKC2−DMA/PEG−脂質システム(90/10、mol/mol)を用いて調製された限界サイズLNPを示す図。製剤は、25mM酢酸バッファー、pH4と混合した10mM脂質−エタノール相を使用して実施した。粒子サイズは、動的光散乱によって決定し、数加重平均直径を報告する。
【図24A−24C】マイクロ流体混合を使用して、50% DLinKC2−DMA、45%コレステロールおよび5% PEG−c−DMA中でカプセル封入されたsiRNAの31P NMRを示す図。DSPCは、リン脂質から生じるリンシグナルが対立するのを避けるために省略した。無傷のLNPについて(図24A)または150mMの酢酸アンモニウムの添加後には(図24B)、siRNAからの31Pシグナルは検出できない。シグナルは、粒子を可溶化するための1% SDSの添加後にのみ検出できる(図24C)。
【図25】RNアーゼ保護アッセイの結果を示す電気泳動ゲルを示す図である図。siRNAは、マイクロ流体法(MF)またはPFVアプローチのいずれかを使用してカプセル封入するか、カプセル封入しないままとした。Triton X−100を加えて、脂質粒子を完全に可溶化し、溶解した。ゲル電気泳動を20%未変性ポリアクリルアミドゲルで実施し、CYBR−Safeを用いて染色することによってsiRNAを可視化した。
【図26】時間(秒)の関数としての脂質混合パーセントとして表される脂質混合融合アッセイの結果を示す図。LNPの最外層中に存在する曝露されたカチオン性脂質の量を評価するために、3つのLNPシステムを、siRNAの不在下で(siRNAなし)、N/P=4およびN/P=1で調製した。脂質アッセイは、pH5.5で実施して、カチオン性脂質のほぼ完全なイオン化を確実にし、LNPを、高度にアニオン性のDOPS/NBD−PE/Rh−PE(98:1:1モル比)ベシクルを含有するキュベットに注入することによって反応を開始した。
【図27】本発明の方法に従うマイクロ流体混合によって形成された、固体コアLNP siRNAシステムの模式図。
【図28A】マイクロ流体ミキサーを使用して調製された逐次脂質ナノ粒子組成物の関数としての平均粒径(nm)を示す図。
【図28B】マイクロ流体ミキサーを使用して調製された逐次脂質ナノ粒子組成物の関数としてのゼータ電位(mV)を示す図。
【図29】脂質ナノ粒子の逐次アセンブリーのための本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【図30】本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【図31】本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【図32】本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【図33】本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、治療薬を含有する脂質粒子、治療薬を含有する脂質粒子を製造するための方法およびデバイスならびに脂質粒子を使用して治療薬を送達する方法を提供する。
【0038】
[脂質粒子]
一態様では、本発明は、治療薬を含有する脂質粒子を提供する。脂質粒子は、1つまたは複数のカチオン性脂質、1つまたは複数の第2の脂質および1つまたは複数の核酸を含む。
【0039】
[カチオン性脂質] 脂質粒子は、カチオン性脂質を含む。本明細書において、用語「カチオン性脂質」とは、カチオン性であるか、またはpHが脂質のイオン化できる基のpKより低下するとカチオン性(プロトン化)になるが、高いpH値では徐々により中性になる脂質を指す。pKより低いpH値では、脂質は負に帯電した核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)と結合できる。本明細書において、用語「カチオン性脂質」は、pH低下時には正電荷を帯びる両性イオン脂質を含む。
【0040】
用語「カチオン性脂質」とは、生理学的pHなどの選択的pHで正味の正電荷を保持する任意のいくつかの脂質種を指す。このような脂質として、それだけには限らないが、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチル塩化アンモニウム(DODAC);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(DC−Chol)およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が挙げられる。さらに、本発明において使用できる、カチオン性脂質のいくつかの市販の調製物が利用可能である。これらとして、例えば、リポフェクチン(登録商標)(GIBCO/BRL、Grand Island、NY製の、DOTMAおよび1,2−ジオレオイル−sn−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)を備える市販のカチオン性リポソーム);リポフェクタミン(登録商標)(GIBCO/BRL製の、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)および(DOPE)を備える市販のカチオン性リポソーム);およびトランスフェクタム(登録商標)(Promega Corp.、Madison、WI製のエタノール中にジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)を備える市販のカチオン性脂質)が挙げられる。以下の脂質は、カチオン性であり、生理学的pHよりも下で正電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)。
【0041】
一実施形態では、カチオン性脂質は、アミノ脂質である。本発明において有用な適したアミノ脂質として、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるWO2009/096558に記載されるものが挙げられる。代表的なアミノ脂質として、1,2−ジリノレイオキシ−3−(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin−DAC)、1,2−ジリノレイオキシ−3−モルホリノプロパン(DLin−MA)、1,2−ジリノレオイル−3−ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2−ジリノレイルチオ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−S−DMA)、1−リノレオイル−2−リノレイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−2−DMAP)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin−TMA−Cl)、1,2−ジリノレオイル−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin−TAP−Cl)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−(N−メチルピペラジノ)プロパン(DLin−MPZ)、3−(N,N−ジリノレイルアミノ)−1,2−プロパンジオール(DLinAP)、3−(N,N−ジオレイルアミノ)−1,2−プロパンジオ(dio)(DOAP)、1,2−ジリノレイルオキソ−3−(2−N,N−ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin−EG−DMA)および2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−K−DMA)が挙げられる。
【0042】
適したアミノ脂質として、次式:
【化1】
【0043】
[式中、R1およびR2は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC10〜C24アルキル、任意に置換されたC10〜C24アルケニル、任意に置換されたC10〜C24アルキニルまたは任意に置換されたC10〜C24アシルであり;
R3およびR4は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC1〜C6アルキル、任意に置換されたC2〜C6アルケニルもしくは任意に置換されたC2〜C6アルキニルであるか、またはR3およびR4は結合して、4〜6個の炭素原子ならびに窒素および酸素から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有する任意に置換された複素環を形成し;
R5は、存在しないかまたは存在し、存在する場合は水素またはC1〜C6アルキルであり;
m、nおよびpは、同一であるかまたは異なり、独立に、0または1のいずれかであり、ただし、m、nおよびpは、同時に0ではなく;
qは、0、1、2、3または4であり;
YおよびZは、同一であるかまたは異なり、独立に、O、SまたはNHである]
を有するものが挙げられる。
【0044】
一実施形態では、R1およびR2は各々、リノレイルであり、アミノ脂質は、ジリノレイルアミノ脂質である。一実施形態では、アミノ脂質は、ジリノレイルアミノ脂質である。
【0045】
代表的な有用なジリノレイルアミノ脂質は、次式:
【化2】
【0046】
[式中、nは、0、1、2、3または4である]
を有する。
【0047】
一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−K−DMAである。一実施形態では、カチオン性脂質は、DLin−KC2−DMA(上記のDLin−K−DMA、ここで、nは2である)。
【0048】
その他の適したカチオン性脂質として、具体的に上に記載されるものに加えて、ほぼ生理学的pHで正味の正電荷を保持するカチオン性脂質、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N−N−トリエチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DOTAP−Cl);3β−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC−Chol)、N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N−2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(trifluoracetate)(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が挙げられる。さらに、例えば、リポフェクチン(DOTMAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)およびリポフェクタミン(DOSPAおよびDOPEを備える、GIBCO/BRLから入手可能)など、いくつかの市販のカチオン性脂質の調製物も使用してよい。
【0049】
カチオン性脂質は、脂質粒子中に、約30〜約95モルパーセントの量で存在する。一実施形態では、カチオン性脂質は、脂質粒子中に、約30〜約70モルパーセントの量で存在する。一実施形態では、カチオン性脂質は、脂質粒子中に、約40〜約60モルパーセントの量で存在する。
【0050】
一実施形態では、脂質粒子は、1つまたは複数のカチオン性脂質と、1つまたは複数の核酸のみを含む(「からなる」)。カチオン性脂質および核酸からなる本発明の脂質粒子の調製および特性決定は、例5に記載する。
【0051】
[第2の脂質] 特定の実施形態では、脂質粒子は、1つまたは複数の第2の脂質を含む。適した第2の脂質は、粒子の形成の際にその形成を安定化する。
【0052】
用語「脂質」とは、脂肪酸のエステルであり、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒には可溶性であることを特徴とする有機化合物の群を指す。脂質は、普通、少なくとも3つのクラス:(1)脂肪およびオイルならびに蝋を含む「単純脂質」;(2)リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」ならびに(3)ステロイドなどの「誘導脂質」に分けられる。
【0053】
適した安定化脂質として、中性脂質およびアニオン性脂質が挙げられる。
【0054】
[中性脂質] 用語「中性脂質」とは、生理学的pHで、無電荷または中性いずれかの両性イオンの形態で存在するいくつかの脂質種のいずれか1つを指す。代表的な中性脂質として、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリンおよびセレブロシドが挙げられる。
【0055】
例示的脂質として、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)およびジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(DOPE−mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチルPE、16−O−ジメチルPE、18−1−トランスPE、1−ステアロイル−2−オレオイル−ホスファチジル(phosphatidy)エタノールアミン(SOPE)および1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホ(phopho)エタノールアミン(トランスDOPE)が挙げられる。
【0056】
一実施形態では、中性脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である。
【0057】
[アニオン性脂質] 用語「アニオン性脂質」とは、生理学的pHで負に帯電している任意の脂質を指す。これらの脂質として、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−ドデカノイルホスファチジルエタノール−アミン、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N−グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイル(oleyol)ホスファチジルグリセロール(POPG)および中性脂質と結合しているその他のアニオン性修飾基が挙げられる。
【0058】
その他の適した脂質として、糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)が挙げられる。その他の適した第2の脂質として、ステロール、例えば、コレステロールが挙げられる。
【0059】
[ポリエチレングリコール−脂質] 特定の実施形態では、第2の脂質は、ポリエチレングリコール−脂質である。適したポリエチレングリコール−脂質として、PEG修飾されたホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾されたホスファチジン酸、PEG修飾されたセラミド(例えば、PEG−CerC14またはPEG−CerC20)、PEG修飾されたジアルキルアミン、PEG修飾されたジアシルグリセロール、PEG修飾されたジアルキルグリセロールが挙げられる。代表的なポリエチレングリコール−脂質として、PEG−c−DOMG、PEG−c−DMAおよびPEG−s−DMGが挙げられる。一実施形態では、ポリエチレングリコール−脂質は、N−[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]−1,2−ジミリスチルオキシ(dimyristyloxl)プロピル−3−アミン(PEG−c−DMA)である。一実施形態では、ポリエチレングリコール−脂質は、PEG−c−DOMG)である。
【0060】
特定の実施形態では、第2の脂質は、約1〜約10モルパーセントの量で脂質粒子中に存在する。一実施形態では、第2の脂質は、約1〜約5モルパーセントの量で脂質粒子中に存在する。一実施形態では、第2の脂質は、約1モルパーセントの量で脂質粒子中に存在する。
【0061】
[核酸] 本発明の脂質粒子は、核酸の全身または局所送達にとって有用である。本明細書に記載されるように、核酸は、脂質粒子の形成の際に脂質粒子中に組み込まれる。
【0062】
本明細書において、用語「核酸」は、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むものとする。最大50ヌクレオチドを含有する断片は、一般に、オリゴヌクレオチドと呼ばれ、より長い断片は、ポリヌクレオチドと呼ばれる。特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、20〜50ヌクレオチドの長さである。本発明の関連で、用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在する塩基、糖および糖間(主鎖)結合からなる、ヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーのポリマーまたはオリゴマーを指す。用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」はまた、同様に機能する天然に存在しないモノマーまたはその一部を備えるポリマーまたはオリゴマーを含む。このような修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、増強された細胞取り込みおよびヌクレアーゼの存在下での安定性の増大などの特性のために未変性の形態を上回って好ましいことが多い。オリゴヌクレオチドは、デオキシリボオリゴヌクレオチドまたはリボオリゴヌクレオチドとして分類される。デオキシリボオリゴヌクレオチドは、代替の非分岐ポリマーを形成するよう、この糖の5’および3’炭素でリン酸と共有結合によって結合しているデオキシリボース(deosyhbose)と呼ばれる5炭糖からなる。リボオリゴヌクレオチドは、5炭糖がリボースである同様の反復構造からなる。本発明による脂質粒子中に存在する核酸は、公知である核酸の任意の形態を含む。本明細書に使用される核酸は、一本鎖DNAもしくはRNAまたは二本鎖DNAもしくはRNAまたはDNA−RNAハイブリッドであり得る。二本鎖DNAの例として、構造遺伝子、制御領域および終結領域を含む遺伝子、ウイルスまたはプラスミドDNAなどの自己複製系が挙げられる。二本鎖RNAの例として、siRNAおよびその他のRNA干渉試薬が挙げられる。一本鎖核酸として、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNAおよび三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0063】
一実施形態では、ポリ核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、核酸は、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、shRNA、ncRNA、miRNA、予備縮合(pre-condensed)DNAまたはアプタマーである。
【0064】
用語「核酸」とはまた、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾ホスフェート−糖−主鎖オリゴヌクレオチド、その他のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体およびそれらの組合せを指し、一本鎖であっても、二本鎖であってもよく、または必要に応じて、二本鎖および一本鎖配列両方の部分を含有してもよい。
【0065】
本明細書において、用語「ヌクレオチド」とは、一般に、以下に定義される以下の用語を包含する:ヌクレオチド塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド類似体およびユニバーサルヌクレオチド。
【0066】
本明細書において、用語「ヌクレオチド塩基」とは、置換または非置換親芳香環(単数または複数)を指す。いくつかの実施形態では、芳香環(単数または複数)は、少なくとも1個の窒素原子を含有する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド塩基は、適切に相補的なヌクレオチド塩基とワトソン−クリックおよび/またはフーグスティーン水素結合を形成できる。例示的ヌクレオチド塩基およびその類似体として、それだけには限らないが、プリン、例えば、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、アデニン(A)、エテノアデニン、N6−2−イソペンテニルアデニン(6iA)、N6−2−イソペンテニル−2−メチルチオアデニン(2ms6iA)、N6−メチルアデニン、グアニン(G)、イソグアニン、N2−ジメチルグアニン(dmG)、7−メチルグアニン(7mG)、2−チオピリミジン、6−チオグアニン(6sG)ヒポキサンチンおよびO6−メチルグアニン;7−デアザ−プリン、例えば、7−デアザアデニン(7−デアザ−A)および7−デアザグアニン(7−デアザ−G);ピリミジン、例えば、シトシン(C)、5−プロピニルシトシン、イソシトシン、チミン(T)、4−チオチミン(4sT)、5,6−ジヒドロチミン、O4−メチルチミン、ウラシル(U)、4−チオウラシル(4sU)および5,6−ジヒドロウラシル(ジヒドロウラシル;D);インドール、例えば、ニトロインドールおよび4−メチルインドール;ピロール、例えば、ニトロピロール;ネブラリン;塩基(Y)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド塩基は、ユニバーサルヌクレオチド塩基である。さらなる例示的ヌクレオチド塩基は、Fasman、1989年、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、385〜394頁、CRC Press、Boca Raton、Fla.およびそれに引用される参考文献に見出すことができる。ユニバーサル塩基のさらなる例は、例えば、Loakes、N.A.R.2001年、第29巻:2437〜2447頁およびSeela N.A.R.2000年、第28巻:3224〜3232頁に見出すことができる。
【0067】
本明細書において、用語「ヌクレオシド」とは、ペントース糖のC−1’炭素と共有結合によって結合しているヌクレオチド塩基を有する化合物を指す。いくつかの実施形態では、結合は、複素芳香環窒素を介する。通常のペントース糖として、それだけには限らないが、1個または複数の炭素原子が、1つまたは複数の同一であるかまたは異なる−R、−OR、−NRRまたはハロゲン基で各々独立に置換されているペントースが挙げられ、ここで、各Rは、独立に、水素、(C1〜C6)アルキルまた(C5〜C14)アリールである。ペントース糖は、飽和または不飽和であり得る。例示的ペントース糖およびその類似体として、それだけには限らないが、リボース、2’−デオキシリボース、2’−(C1〜C6)アルコキシリボース、2’−(C5〜C14)アリールオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、2’,3’−ジデヒドロリボース、2’−デオキシ−3’−ハロリボース、2’−デオキシ−3’−フルオロリボース、2’−デオキシ−3’−クロロリボース、2’−デオキシ−3’−アミノリボース、2’−デオキシ−3’−(C1〜C6)アルキルリボース、2’−デオキシ−3’−(C1〜C6)アルコキシリボースおよび2’−デオキシ−3’−(C5〜C14)アリールオキシリボースが挙げられる。また、例えば、2’−O−メチル、4’−α−アノマーヌクレオチド、1’−α−アノマーヌクレオチド(Asseline (1991年)Nucl.Acids Res.第19巻:4067〜74頁)、2’−4’−および3’−4’−結合およびその他の「ロックド」または「LNA」、二環式糖修飾(WO98/22489;WO98/39352;WO99/14226)も参照のこと。「LNA」または「ロックド核酸」は、リボース環が、2’−酸素と3’−または4’−炭素間のメチレン結合によって制約されるように立体構造的にロックされたDNA類似体である。結合によって課される立体構造制限は、相補的配列の結合親和性を高め、このような二本鎖の熱安定性を高めることが多い。
【0068】
糖は、メトキシ、エトキシ、アリルオキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、メトキシエチル、アルコキシ、フェノキシ、アジド、アミノ、アルキルアミノ、フルオロ、クロロおよびブロモなどの2’−または3’位の修飾を含む。ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、天然D立体配置異性体(D型)、ならびにL立体配置異性体(L型)(Beigelman、米国特許第6,251,666号;Chu、米国特許第5,753,789号;Shudo、EP0540742;Garbesi(1993年)Nucl.Acids Res.第21巻:4159〜65頁;Fujimori(1990年)J.Amer.Chem.Soc.第112巻:7435頁;Urata、(1993年)Nucleic Acids Symposium Ser.第29巻:69〜70頁)を含む。核酸塩基がプリン、例えば、AまたはGである場合は、リボース糖は、核酸塩基のN9−位と結合している。核酸塩基が、ピリミジン、例えば、C、TまたはUである場合は、ペントース糖は、核酸塩基のN1−位と結合している(Kornberg and Baker、(1992年)DNA Replication、2.sup.nd Freeman編、San Francisco、Calif.)。
【0069】
ヌクレオシドの1個または複数のペントース炭素は、リン酸エステルで任意に置換された。いくつかの実施形態では、リン酸エステルは、ペントースの3’−または5’−炭素と結合している。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、ヌクレオチド塩基が、プリン、7−デアザプリン、ピリミジン、ユニバーサルヌクレオチド塩基、特定のヌクレオチド塩基またはその類似体であるものである。
【0070】
本明細書において、用語「ヌクレオチド類似体」とは、ペントース糖および/またはヌクレオチド塩基および/またはヌクレオシドの1個もしくは複数のリン酸エステルが、そのそれぞれの類似体で任意に置換された実施形態を指す。いくつかの実施形態では、例示的ペントース糖類似体は、上記のものである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド類似体は、上記のヌクレオチド塩基類似体を有する。いくつかの実施形態では、例示的リン酸エステル類似体として、それだけには限らないが、アルキルホスホネート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート、ボロノホスフェートが挙げられ、関連対イオンを含み得る。その他の核酸類似体および塩基として、例えば、介在核酸(Christensen and Pedersen、2002年に記載されるINA)およびAEGIS塩基(Eragen、米国特許第5,432,272号)が挙げられる。種々の核酸類似体のさらなる説明は、例えば、(Beaucageら、Tetrahedron49(10):1925頁(1993年)およびその中の参考文献;Letsinger,J.Org.Chem.第35巻:3800頁(1970年);Sprinzlら、Eur.J.Biochem.第81巻:579頁(1977年);Letsingerら、Nucl.Acids Res.第14巻:3487頁(1986年);Sawaiら、Chem.Lett.805頁(1984年)、Letsingerら、J.Am. Chem.Soc.第110巻:4470頁(1988年);およびPauwelsら、Chemica Scripta第26巻:141 91986))、ホスホロチオエート(Magら、Nucleic Acids Res.第19巻:1437頁(1991年);および米国特許第5,644,048号にも見出すことができる。その他の核酸(nucleic)類似体は、ホスホロジチオエート(Briuら、J.Am.Chem.Soc.第111巻:2321頁(1989年)、O−メチルホスホロアミダイト(phophoroamidite)結合(Eckstein、Oligonucleotides and Analogue:A Practical Approach、Oxford University Press参照のこと)、正の主鎖を有するもの(Denpcyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第92巻:6097頁(1995年);非イオン性主鎖(米国特許第5,386,023号、同5,386,023号、同5,637,684号、同5,602,240号、同5,216,141号および同4,469,863号、Kiedrowshiら、Angew.Chem.Intl.Ed. English第30巻:423頁(1991年);Letsingerら、J.Am.Chem.Soc.第110巻:4470頁(1988年);Letsingerら、Nucleoside & Nucleotide第13巻:1597頁(194):第2章および第3章、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Y.S.SanghuiおよびP.Dan Cook編;Mesmaekerら、Bioorganic & Medicinal Chem.Lett.第4巻:395頁(1994年);Jeffsら、J.Biomolecular NMR第34巻:17頁(1994年);Tetrahedron Lett.第37巻:743頁(1996年))および非リボース主鎖、例えば、米国特許第5,235,033号および同5,034,506号ならびに第6章および第7章、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Y.S.SanghuiおよびP.Dan Cook編に記載されるものを備える。1つまたは複数の炭素環式糖を含有する核酸もまた、核酸の定義内に含まれる(Jenkinsら、Chem.Soc.Rev.(1995年)169〜176頁参照のこと)。いくつかの核酸類似体がまた、Rawls、C & E News1997年6月2日、35頁に記載されている。
【0071】
本明細書において、用語「ユニバーサルヌクレオチド塩基」または「ユニバーサル塩基」とは、窒素原子を含有する場合も、含有しない場合もある芳香環部分を指す。いくつかの実施形態では、ユニバーサル塩基を、ペントース糖のC−1’炭素と共有結合によって結合して、ユニバーサルヌクレオチドを製造してもよい。いくつかの実施形態では、ユニバーサルヌクレオチド塩基は、別のヌクレオチド塩基と特異的に水素結合しない。いくつかの実施形態では、ユニバーサルヌクレオチド塩基は、特定の標的ポリヌクレオチド中、最大ですべてのヌクレオチド塩基を含めた、ヌクレオチド塩基と水素結合する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド塩基は、疎水性スタッキングによって同一核酸鎖上の隣接するヌクレオチド塩基と相互作用し得る。ユニバーサルヌクレオチドとして、それだけには限らないが、デオキシ−7−アザインドールトリホスフェート(d7AITP)、デオキシイソカルボスチリルトリホスフェート(dICSTP)、デオキシプロピニルイソカルボスチリルトリホスフェート(dPICSTP)、デオキシメチル−7−アザインドールトリホスフェート(dM7AITP)、デオキシImPyトリホスフェート(dImPyTP)、デオキシPPトリホスフェート(dPPTP)またはデオキシプロピニル−7−アザインドールトリホスフェート(dP7AITP)が挙げられる。このようなユニバーサル塩基のさらなる例は、中でも、米国特許出願第10/290672号および米国特許第6,433,134号に見出すことができる。
【0072】
本明細書において、用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は同義的に使用され、ヌクレオチド間リン酸ジエステル結合鎖、例えば、3’−5’および2’−5’、反転結合、例えば、3’−3’および5’−5’、分岐構造またはヌクレオチド間類似体によって連結された2’−デオキシリボヌクレオチド(DNA)およびリボヌクレオチド(RNA)を含めたヌクレオチドモノマーの一本鎖および二本鎖ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドは、H+、NH4+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+などといった会合している対イオンを有する。ポリヌクレオチドは、完全にデオキシリボヌクレオチドからなる場合もあり、完全にリボヌクレオチドからなる場合もあり、それらのキメラ混合物からなる場合もある。ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド間、核酸塩基および/または糖類似体からなる場合もある。ポリヌクレオチドのサイズは、通常、当技術分野で、オリゴヌクレオチドと呼ばれることが多い、数個の単量体の単位、例えば、3〜40個から数千の単量体のヌクレオチドの単位の範囲である。別に示されない限り、ポリヌクレオチド配列が表される場合にはいつも、ヌクレオチドは、左から右に5’から3’の順であり、別に断りのない限り、「A」は、デオキシアデノシンを表し、「C」は、デオキシシトシンを表し、「G」は、デオキシグアノシンを表し、「T」は、チミジンを表すと理解されよう。
【0073】
本明細書において、「核酸塩基」とは、核酸技術を利用するか、またはペプチド核酸技術を利用し、それによって、核酸と配列特異的に結合できるポリマーを作製する人にはよく知られている、天然に存在する、および天然に存在しない複素環式部分を意味する。適した核酸塩基の限定されない例として、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、シュードイソシトシン、2−チオウラシルおよび2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、N9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)およびN8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)が挙げられる。適した核酸塩基のその他の限定されない例として、Buchardtら(WO92/20702またはWO92/20703)の図2(A)および2(B)に示される核酸塩基が挙げられる。
【0074】
本明細書において、「核酸塩基配列」とは、核酸塩基含有サブユニットを備えるポリマーの、任意のセグメントまたは2以上のセグメントの凝集体(例えば、2以上のオリゴマーブロックの凝集体核酸塩基配列)を意味する。適したポリマーまたはポリマーセグメントの限定されない例として、オリゴデオキシヌクレオチド(例えば、DNA)、オリゴリボヌクレオチド(例えば、RNA)、ペプチド核酸(PNA)、PNAキメラ、PNA組合せオリゴマー、核酸類似体および/または核酸ミミックが挙げられる。
【0075】
本明細書において、「ポリ核酸塩基鎖」とは、核酸塩基サブユニットを備える完全な単一のポリマー鎖を意味する。例えば、二本鎖核酸の単一の核酸鎖は、ポリ核酸塩基鎖である。
【0076】
本明細書において、「核酸」とは、核酸塩基配列含有ポリマーまたはヌクレオチドもしくはその類似体から形成される主鎖を有するポリマーセグメントである。
【0077】
好ましい核酸は、DNAおよびRNAである。
【0078】
本明細書において、核酸はまた、核酸サブユニット(またはその類似体)だけでなく、2以上のPNAサブユニット(残基)を備える、任意のオリゴマーまたはポリマーセグメント(例えば、ブロックオリゴマー)を意味する「ペプチド核酸」または「PNA」を指す場合もあり、それだけには限らないが、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,539,082号、同5,527,675号、同5,623,049号、同5,714,331号、同5,718,262号、同5,736,336号、同5,773,571号、同5,766,855号、同5,786,461号、同5,837,459号、同5,891,625号、同5,972,610号、同5,986,053号および同6,107,470号においてペプチド核酸として言及または特許請求されるオリゴマーまたはポリマーセグメントのいずれかを含む。用語「ペプチド核酸」または「PNA」はまた、以下の刊行物に記載される核酸ミミックの2以上のサブユニットを備える任意のオリゴマーまたはポリマーセグメントにも適用されるべきである:Lagriffoulら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第4巻:1081〜1082頁(1994年);Petersenら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第6巻:793〜796頁(1996年);Diderichsenら、Tett.Lett.第37巻:475〜478頁(1996年);Fujiiら、Bioorg.Med.Chem.Lett.第7巻:637〜627頁(1997年);Jordanら、Bioorg.Med.Chem.Lett.7:687〜690頁(1997年);Krotzら、Tett.Lett.第36巻:6941〜6944頁(1995年);Lagriffoulら、Bioorg.Med.Chem.Lett.第4巻:1081〜1082頁(1994年);Diederichsen,U.、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第7巻:1743〜1746頁(1997年);Loweら、J.Chem.Soc. Perkin Trans.1、(1997年)1:539〜546頁;Lowe et J.Chem.Soc.Perkin Trans.11:547〜554頁(1997年);Loweら、J.Chem.Soc.Perkin Trans.第11巻:555〜560頁(1997年);Howarthら、J.Org.Chem.第62巻:5441〜5450頁(1997年);Altmann,K−Hら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第7巻:1119〜1122頁(1997年);Diederichsen,U.、Bioorganic & Med.Chem.Lett.、第8巻:165〜168頁(1998年);Diederichsenら、Angew.Chem.Int.Ed.、第37巻:302〜305頁(1998年);Cantinら、Tett.Lett.、第38巻:4211〜4214頁(1997年);Ciapettiら、Tetrahedron、第53巻:1167〜1176頁(1997年);Lagriffouleら、Chem.Eur.J.、3:912〜919頁(1997年);Kumarら、Organic Letters第3巻(9):1269〜1272頁(2001年);およびWO96/04000において開示されるShahらのPeptide−Based Nucleic Acid Mimics(PENAMS)。
【0079】
[脂質粒子特徴]
[形態] 本発明の脂質粒子は、その他の同様に構成された材料とは、その形態が異なり、実質的に固体のコアを有すると特徴付けられる。実質的に固体のコアを有する脂質粒子とは、内部に広がった水性領域を有さない、主に脂質である内部を有する粒子である。一実施形態では、広がった領域とは、粒子容積の半分を超える容積を有する連続する水性領域である。第2の実施形態では、広がった水性領域とは、粒子容積の25%超である。内部水性領域の範囲は、電子顕微鏡によって決定してもよく、低電子密度の領域として見える。さらに、固体コアナノ粒子の内部は、主に脂質であるので、粒子を構成する脂質あたりの粒子の水性含量(「トラップ容積」)は、同じ半径を有する単層二分子膜脂質ベシクルについて予測されるものよりも少ない。一実施形態では、トラップ容積は、同じ半径の単層二分子膜ベシクルについて予測されるものの50%未満である。第2の実施形態では、トラップ容積は、同じサイズの単層二分子膜ベシクルについて予測されるものの25%未満である。第3の実施形態では、トラップ容積は、粒子の総容積の20%未満である。一実施形態では、脂質あたりのトラップ容積は、脂質1マイクロモルあたり2マイクロリットル未満である。別の実施形態では、トラップ容積は、脂質1マイクロモルあたり1マイクロリットル未満である。さらに、ベシクルの半径が増大するにつれて、二分子膜脂質ベシクルの脂質あたりのトラップ容積は大幅に増大するが、固体コアナノ粒子の半径が増大するにつれて、脂質あたりのトラップ容積は大幅には増大しない。一実施形態では、脂質あたりのトラップ容積は、平均のサイズが直径20nmから直径100nmに増大するにつれ、50%未満増大する。第2の実施形態では、脂質あたりのトラップ容積は、平均のサイズが直径20nmから直径100nmに増大するにつれ、25%未満増大する。トラップ容積は、文献に記載される種々の技術を使用して測定できる。固体コアシステムは、粒子の内側に脂質を含有するので、脂質1モルあたりの、生じた所与の半径の粒子の総数は、二分子膜ベシクルシステムについて予測されるものより少ない。脂質1モルあたりの、生じた粒子の数は、中でも蛍光技術によって測定できる。
【0080】
本発明の脂質粒子はまた、電子顕微鏡によっても特性決定できる。実質的に固体のコアを有する本発明の粒子は、電子顕微鏡によって見られるように、電子密度の高いコアを有する。電子密度が高いとは、固体コア粒子の投影された領域(2−D低温EM像において見られるような)の内部50%の領域平均の電子密度が、粒子の外面での最大電子密度のx%未満ではない(x=20%、40%、60%)ように定義される。電子密度は、ナノ粒子を含有しない領域におけるバックグラウンド強度からの、対象の領域の像の強度の相違の絶対値として算出する。
【0081】
[粒子サイズ] 本発明の脂質粒子は、約15〜約300nmの直径(平均粒径)を有する。いくつかの実施形態では、脂質粒子は、約300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下または50nm以下の直径を有する。一実施形態では、脂質粒子は、約15〜約100nmの直径を有する。これらの粒子は、一般に、大きな粒子と比較して、in vivoでの循環寿命の増大を示す。一実施形態では、脂質粒子は、約15〜約50nmの直径を有する。これらの粒子は、血管系を免れることができるので有利である。一実施形態では、脂質粒子は、約15〜約20nmの直径を有する。これらの粒子は、核酸を含有する粒子の限界のサイズに近く;このような粒子は、単一のポリヌクレオチド(例えば、siRNA)を含み得る。
【0082】
本発明の脂質粒子は、そのサイズ分布において実質的に均質である。特定の実施形態では、本発明の脂質粒子は、約65〜約25%の平均粒径標準偏差を有する。一実施形態では、本発明の脂質粒子は、約60、50、40、35または30%の平均粒径標準偏差を有する。
【0083】
[カプセル封入効率] 本発明の脂質粒子は、カプセル封入効率によってさらに区別することができる。以下に記載するように、本発明の脂質粒子は、形成プロセスにおいて使用される核酸のほぼ100%が、粒子中にカプセル封入されるプロセスによって調製される。一実施形態では、脂質粒子は、形成プロセスにおいて使用される核酸の約90〜約95%が、粒子中にカプセル封入されるプロセスによって調製される。
【0084】
[脂質粒子を製造するためのマイクロ流体法]
一態様では、本発明は、治療薬を含有する脂質粒子を製造する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、
(a)第1の溶媒中に治療薬(例えば、ポリ核酸)を備える第1の流れを、マイクロチャネル中に導入することであって、マイクロチャネルは、マイクロチャネル中に導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する、ことと;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れをマイクロチャネルに導入して、層流条件下を流れる第1および第2の流れを提供することであって、脂質粒子形成材料は、イオン化できる脂質を備え、第1および第2の溶媒は、同一ではない、ことと;
(c)マイクロチャネルの第1の領域から、マイクロチャネルの第2の領域に、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れを流すことと;
(d)マイクロチャネルの第2の領域において層流条件下を流れる1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供することと
を含む。
【0085】
第1および第2の流れの内容物は、カオス的移流によって混合してもよい。一実施形態では、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合することは、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れの濃度または相対混合速度を変更することを備える。上記の実施形態では、既知方法とは異なり、本方法は、混合後の希釈を含まない。
【0086】
本方法は、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を含有する第3の流れをさらに安定化するために、第3の流れを水性バッファーで希釈することを備えることをさらに含んでもよいが、必要ではない。一実施形態では、第3の流れを希釈することは、第2の混合構造中に、第3の流れおよび水性バッファーを流すことを含む。別の実施形態では、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を備える水性バッファーを透析して、第2の溶媒の量を低減する。
【0087】
第1の流れは、第1の溶媒中に治療薬を含む。適した第1の溶媒は、治療薬が可溶性であり、第2の溶媒と混和できる溶媒を含む。適した第1の溶媒として、水性バッファーが挙げられる。代表的な第1の溶媒として、クエン酸および酢酸バッファーが挙げられる。
【0088】
第2の流れは、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を含む。適した第2の溶媒として、イオン化できる脂質が可溶性であり、第1の溶媒と混和できる溶媒が挙げられる。適した第2の溶媒として、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酸およびアルコールが挙げられる。代表的な第2の溶媒として、水性エタノール90%が挙げられる。
【0089】
本発明の方法は、いくつかの点で、その他のマイクロ流体混合法から区別される。特定の既知方法が、同等または実質的に同等の割合の水性および有機溶媒(すなわち1:1)を必要とするが、本発明の方法は、一般に、1:1を越える水性対有機の溶媒比を使用する。特定の実施形態では、水性対有機の溶媒比は、約1:2である。特定の実施形態では、水性対有機の溶媒比は、約1:3である。特定の実施形態では、水性対有機の溶媒比は、約1:4である。特定のその他の実施形態では、水性対有機の溶媒比は、約1:5、約1:10、約1:50、約1:100またはそれ以上である。
【0090】
本発明の脂質粒子は、比較的迅速な混合および高い流速を利用するマイクロ流体プロセスにおいて形成されることが有利である。迅速な混合は、サイズ、均質性、カプセル封入効率を始めとする上記の有利な特性を有する脂質粒子を提供する。本発明の方法の実施において使用される混合速度は、約100μsec〜約10msecの範囲である。代表的な混合速度として、約1〜約5msecが挙げられる。流体力学的フロー絞り込み法は、比較的低い脂質容積で、比較的低い流速(例えば、5〜100μL/min)で作動するが、本発明の方法は、比較的高い脂質容積で、比較的高い流速で作動する。特定の実施形態では、単一の混合領域(すなわち、ミキサー)を組み込む方法については、流速は、約1mL/minである。ミキサーアレイ(例えば、10個のミキサー)を利用する本発明の方法については、40mL/minの流速が使用される(100個のミキサーには、流速400mL/min)。このように、本発明の方法は、容易に拡大縮小して、厳しい製造要求に必要な脂質粒子の量を提供できる。本発明の方法は、実現される有利な粒子サイズおよび均質性およびカプセル封入効率と相まって、脂質粒子を製造するための既知マイクロ流体法の不利点を克服する。脂質粒子を製造するための本発明の方法の1つの利点は、拡大縮小可能であることであり、これは、本方法が拡大縮小時に変わらないことおよび拡大縮小時に優れた対応があることを意味する。
【0091】
[脂質粒子を製造するためのマイクロ流体デバイス]
別の態様では、本発明は、核酸をカプセル封入している脂質粒子を製造するためのデバイスを提供する。一実施形態では、デバイスは、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の溶液を受け取るための第1の入口と;
(b)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れを提供するための第1の入口と流体連通している第1の入口マイクロチャネルと;
(c)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の溶液を受け取るための第2の入口と;
(d)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを提供するための第2の入口と流体連通している第2の入口マイクロチャネルと;
(e)第1および第2の流れを受け取るための第3のマイクロチャネルであって、層流条件下でマイクロチャネルに導入された第1および第2の流れを流すように適合されている第1の領域と、第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供するように適合されている第2の領域とを有する第3のマイクロチャネルと
を含む。
【0092】
一実施形態では、デバイスは、第3の流れを希釈して、安定化された、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を備える希釈流を提供するための手段をさらに含む。
【0093】
本発明のデバイスは、1つまたは複数のマイクロチャネル(すなわち、1ミリメートル未満の最大寸法を有するチャネル)を含むマイクロ流体デバイスである。一実施形態では、マイクロチャネルは、約20〜約300μmの流体力学直径を有する。上記のように、マイクロチャネルは、2つの領域を有する:層流条件下で、少なくとも2つの流れを受け取り、流すための第1の領域(例えば、1つまたは複数の第1の流れおよび1つまたは複数の第2の流れ)。第1および第2の流れの内容物は、マイクロチャネルの第2の領域において混合される。一実施形態では、マイクロチャネルの第2の領域は、参照によりその全文が本明細書に明確に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0262223号に記載されるように、主要な流れの方向および本明細書に定義される少なくとも1つの溝または突起部を有する1つまたは複数の表面を有し、溝または突起部は、主要な方向と角度を形成する配向を有する(例えば、互い違いのヘリンボーン状ミキサー)。一実施形態では、マイクロチャネルの第2の領域は、浅浮き彫り構造を備える。最大混合速度を達成するためには、混合領域の前の過度の流体抵抗を避けることが有利である。したがって、本発明の一実施形態は、単一の混合チャネルに流体を送達するために1000ミクロンを超える寸法を有する非マイクロ流体チャネルが使用されるデバイスである。
【0094】
本発明のその他の態様では、第1および第2の流れを、その他のマイクロミキサーを用いて混合する。適したマイクロミキサーとして、液滴ミキサー、T−ミキサー、ジグザグミキサー、多層型ミキサーまたはその他のアクティブミキサーが挙げられる。
【0095】
第1および第2の流れの混合はまた、第1および第2の流れの濃度および相対流速を変更するための手段を用いて達成できる。
【0096】
別の実施形態では、核酸をカプセル封入している脂質粒子を製造するためのデバイスは、第1および第2の流れを受け取るためのマイクロチャネルを含み、マイクロチャネルは、層流条件下でマイクロチャネル中に導入された第1および第2の流れを流すように適合されている第1の領域と、第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された治療薬を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供するように適合されている第2の領域とを有する。この実施形態では、上記の第1および第2のマイクロチャネル以外の手段によって、第1および第2の流れをマイクロチャネル中に導入する。
【0097】
最大混合速度を達成するためには、混合領域の前の過度の流体抵抗を避けることが有利である。したがって、本発明の一実施形態は、単一の混合チャネルに流体を送達するために1000ミクロンを超える寸法を有する非マイクロ流体チャネルが使用されるデバイスである。核酸をカプセル封入している脂質粒子を製造するためのこのデバイスは、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の溶液と、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の溶液の両方を受け取るための単一の入口マイクロチャネルと;
(b)第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供するように適合されている第2の領域と
を含む。
【0098】
このような実施形態では、第1および第2の流れは、単一の入口によって、またはマイクロ寸法を有さない1つもしくは2つのチャネル、例えば、1000μmを超える寸法(例えば、1500または2000μm以上)を有するチャネル(単数または複数)によってマイクロチャネル中に導入される。これらのチャネルは、隣接するまたは同心のマクロサイズチャネルを使用して入口マイクロチャネルに導入されてもよい。
【0099】
図1は、本発明の代表的な流体デバイスの概略図である。図1を参照すると、デバイス100は、第1の溶媒中に治療薬を備える第1の流れを受け取るための領域Aと、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える流れを受け取るための領域Bとを含む。第1および第2の流れは、領域C中に導入され、層流条件下を、領域Dに流れ、ここで迅速な混合が起こり、次いで、領域Eに流れ、ここで、最終生成物、治療薬を含有する脂質粒子がデバイスを出る。
【0100】
図2は、図1に示されるデバイスおよび方法を精緻化したものである、本発明の代表的な流体デバイスの概略図である。図2を参照すると、デバイス200は、マイクロチャネル中に第1の溶媒中に治療薬を備える第1の流れを受け取るための領域Aを含み、ここで、マイクロチャネルは、1つまたは複数の流れを流し(A−a)、導入し(A−b)、混合する(A−c)ように適合されている第1の領域を有し;第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを受け取るための領域Bを含み、ここで、マイクロチャネルは、1つまたは複数の流れを流し(B−a)、導入し(B−b)、混合する(B−c)ように適合されている第1の領域を有し;層流条件下(C−a)で領域Aおよび領域Bの流れを導入し、迅速に混合する(C−b)領域Cを含み;製剤が希釈、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象などのさらなる処理のために準備ができており、最終生成物、治療薬を含有する脂質粒子がデバイスを出る領域Dを含む。
【0101】
図3は、図2に示されるデバイスおよび方法を精緻化したものである、本発明の代表的な流体デバイスの概略図である。図3を参照すると、デバイス300は、第1の溶媒中に治療薬を備える第1の流れを受け取り、マイクロチャネル中に入る領域Aを含み、ここで、マイクロチャネルは、1つまたは複数の流れを流し(A−a)、導入し(A−b)、混合する(A−c)ように適合されている第1の領域を有し;第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを受け取るための領域Bを含み、ここで、マイクロチャネルは、1つまたは複数の流れを流し(B−a)、導入し(B−b)、混合する(B−c)ように適合されている第1の領域を有し;層流条件下(C−a)で領域Aおよび領域Bの流れを導入し、迅速に混合する(C−b)領域Cを含み;さらなる粒子形成材料、希釈、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象を始めとする任意のいくつかの材料を備える第3の流れを受け取るための領域Dを含み;層流条件下(E−a)で領域Cおよび領域Dの流れを導入し、迅速に混合する(E−b)領域Eを含み;製剤が、希釈、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象のようなさらなる処理のために準備ができており、最終生成物、治療薬を含有する脂質粒子がデバイスを出る領域Fを含む。
【0102】
図4は、本発明の別の代表的な流体デバイス(400)の概略図である。図5は、図4に示される代表的な流体デバイスの代表的なアレイの概略図である。
【0103】
図6は、本発明の別の代表的な流体デバイス(600)の概略図である。図6を参照すると、デバイス600は、混合チャネル610a、610bおよび610cを含む。図7は、図6に示される代表的な流体デバイスの代表的なアレイの概略図である。
【0104】
マイクロ流体デバイスでのナノ粒子の形成は、混合事象に関与する試薬容積と、漏出が生じる前にデバイスが耐えることができる限界背圧とによって制限される。単一の要素のヘリンボーン状ミキサーまたは多層型ミキサーは、液滴またはフロー絞り込みアプローチと比較して100〜1000倍の流速の増大を達成する。製造規模の処理量を達成するために、複数のミキサー要素を配置してもよい。一実施形態では、低インピーダンスバスチャネルを使用して個々のミキサー要素に各試薬を分配する。バスチャネルのインピーダンスが、ミキサー要素のインビーダンスと比較して無視できる程である場合は、各ミキサーの入口での個々の流速は同一である。複数のミキサー要素が並行して作動されるので、システムのインピーダンスが低下し、その結果、高い容積処理量が得られる。
【0105】
これは、単一ミキサー要素を使用して観察される混合特徴を、ミキサーアレイにおいて維持できるという利点を有する。一実施形態では、各ミキサーアレイ要素における混合は、複数の流れをマイクロチャネル中に導入することによって達成される。この場合には、流れは拡散によって混合する。流線の幅は、注入チャネルを通る相対流速を制御することによって(例えば、これらのチャネルの寸法を調整することによって(図5)変えてもよい。別の実施形態では、混合はカオス的移流によって達成される(互い違いのヘリンボーン状ミキサー、SHM)。図7に示されるように、アレイの各ミキサー要素が、一連のミキサーからなる場合もある。各アレイサブセットに要素を加えることによって、さらなる機能性を、マイクロ流体デバイスでインラインで統合することができる。このような機能性として、オンチップ希釈、透析、pH調整または組み合わされた流線、同一チャネルを共有する流れまたは多孔性材料によって互いに分離している流れを必要とするその他の事象を挙げることができる。一実施形態では、100%エタノールに10mM POPCを溶解し、各アレイサブセットの第1のミキサー要素においてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4と混合する。混合物をPBSを用いて2倍で希釈することによって、混合後に形成されるLNPを安定化する。
【0106】
表1は、単一のミキサーおよび10個の個々のミキサーからなるミキサーアレイで形成された粒子サイズ分布を比較する。単一のミキサーを通る総流速は、各交差点で50:50の混合比を用いて、4ml/minであり得る。容積処理量は、10台のミキサーを並行して作動させることによって10倍増大でき、その結果、40ml/minの総容積流速が得られる。アレイの処理量が、製造規模の合成に適していながら、LNP寸法が維持される。
【表1】
【0107】
任意の数の並行試薬入口、逐次混合チャンバーおよび分岐構造の任意の組合せを使用して、ナノ粒子形成プロセスを最適化できる。これは、異なる製剤プロセスを正確に制御でき、ナノ粒子製剤プロセスの複数の段階を統合できるという利点を有する。例として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:(a)独立した投入制御を可能にするための別個の(図8)または同一の(図9)試薬の組合せからなる2以上の入口の導入(使用は、投入試薬間の比などを変更する、投入試薬の流速の独立した制御を含む)(b)ナノ粒子試薬の逐次添加または製剤処理ステップを可能にする順序正しい2以上ミキサー(図10)(使用は、ナノ粒子の制御されたボトムアップアセンブリーのための順序正しい投入試薬の添加、希釈、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象のような製剤プロセスの組込みなどを含む;または(c)投入、混合チャンバーおよび分岐構造の任意の組合せ、図11および図12は、変動する数の並行試薬投入および分岐マイクロ流体構造を有する、2段階および3段階ミキサーを例示する(使用は、ナノ粒子試薬のチップ混合、ナノ粒子核生成および成長、オンチップ希釈、透析、pH調整またはナノ粒子合成に必要なその他の事象を含む、製剤プロセスの複数の段階の組込みを含む。
【0108】
図13は、多層型ミキサーを有する本発明の代表的な流体デバイスの概略図である。図13を参照すると、デバイス1300は、混合チャネル1310を含む。図14は、図14に示される多層型ミキサーのクローズアップ図である。
【0109】
上記のように、脂質マイクロ/ナノ粒子を製造する方法は、水中に脂質を分散させることによって大きな構造が形成され、続いて、100nmなどのポアサイズを有するポリカーボネートフィルターによって、あるいは、チップ超音波処理を使用して多層ベシクル(ミクロンサイズ範囲)を破壊する従来「トップダウン」アプローチであった。
【0110】
このようなバッチプロセスを欠いている1つの態様は、各脂質混合物構成要素の構造およびアセンブリーを正確に制御する能力である。特定の構成要素がその外部環境に曝されると容易に分解する場合には、またはターゲッティング目的で、特定のリガンドが粒子の外側に存在しなければならない場合には、これは特に重要である。例えば、治療薬に関しては、まず、特定の治療薬と結合するための正味の正または負の表面電荷を有する粒子を製造することが重要であり得る。次いで、その他の脂質材料を用いてこのような粒子をカプセル封入することによってアセンブリーを完了するために、またはその表面特徴を修飾するために、さらなる処理が必要である場合もある。これは、例えば、正味の中性な粒子を製造するための脂質の添加または機能上の目的のために粒子の外側に存在しなくてはならないターゲッティング分子の添加を含み得る。
【0111】
一実施形態では、脂質ナノ粒子を製造する方法は、電荷結合による脂質ナノ粒子の逐次アセンブリーおよび成長を含み、さらに、治療用低分子干渉RNA(siRNA)のカプセル封入を提供し得る。この方法を使用して、表面電荷特徴を正味の正から正味の負に完全に変更できる、逆もまた同様。
【0112】
約2の電荷比(正/負)を用いて、siRNA(負)をカプセル封入する脂質ナノ粒子を調製した。脂質は、90mol% DLin−KC2−DMA(正)および10mol% PEG−c−DMAを含んでいた。得られた粒子は、直径23nmであり(図28A)、約7mVの正ゼータ電位を有していた(図28B)。アニオン性脂質を、マイクロ流体混合によってカチオン性脂質に対して4倍過剰で組み込んだ。これは、33nmへの粒子サイズの増大および−14mVという負のゼータ電位へのシフトをもたらした。追加のカチオン性脂質のさらなる組み込み(これまでのDOPSに対して4倍過剰で)、次いで、DOPSの組み込みは、粒子サイズの継続した増大をおよび正味の正および正味の負のゼータ電位間の変更をもたらした。
【0113】
結果は、単一のマイクロ流体ミキサーにおいて混合し、回収し、次いで、マイクロミキサーに再投入して次の脂質成分を添加することによって得た。しかし、単一のマイクロ流体デバイスは、このような粒子を連続法で製造するよう設計できた(図29)。
【0114】
以下のデバイスは、マイクロミキサーに入る前の流体インピーダンスならびに脂質および水性流体間の相互作用を最小にする。
【0115】
図30は、本発明の代表的なデバイス3000および方法の模式図である。図30を参照すると、デバイス3000は、第1の溶媒中にポリ核酸を備える第1の流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Aおよび第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Bを含む。流れは、マイクロミキサー中で迅速な混合が起こる領域Cに導入され、次いで、最終的に領域D、最終生成物に導入される。
【0116】
図31は、本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図である。図31を参照すると、デバイス3100は、第1の溶媒中にポリ核酸を備える第1の流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Aおよび第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Bを含む。流れは、マイクロミキサー中で迅速な混合が起こる領域Cに導入され、次いで、最終的に領域D、最終生成物に導入される。
【0117】
図32は、本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図である。図32を参照すると、デバイス3200は、第1の溶媒中にポリ核酸を備える第1の流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Aと、第1の溶媒を備える第2の流れが領域Aのフローのシース流体として作用する領域Bと、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える流れが大きな幅(>2mm)のチャネル中に入る領域Cと、第2の溶媒を備える第2の流れが領域Cのフローのシース流体として作用する領域Dとを含む。流れは、マイクロミキサー中で迅速な混合が起こる領域Eに導入され、次いで、最終的に領域F、最終生成物に導入される。点線は、流体の界面を表す。
【0118】
図33は、本発明の代表的なデバイスおよび方法の模式図である。図33を参照すると、デバイス3300は、領域Aを含み、ここで、第1の溶媒中にポリ核酸を備える第1の流れおよび第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れがチャネルに同心性に流され、領域Bに導入され、ここで、マイクロミキサー中で迅速な混合が起こり、次いで、最終的に、最終生成物が得られる領域Cに導入される。領域Aでは、2種の流体は、横断面図に示されるように、物理的な障壁によって分離されても、またはシース流体によって分離されてもよい。
【0119】
[脂質粒子を使用して治療薬を送達する方法]
本発明の脂質粒子を使用して、in vitroまたはin vivoで細胞に治療薬を送達してもよい。特定の実施形態では、治療薬は核酸であり、これを、本発明の核酸−脂質粒子を使用して細胞に送達する。本方法および組成物は、このような治療から利益を得る任意の疾患または障害の治療のための任意の適した治療薬の送達に容易に適応させることができる。
【0120】
特定の実施形態では、本発明は、細胞に核酸を導入する方法を提供する。細胞への導入にとって好ましい核酸として、siRNA、miRNA、免疫刺激性オリゴヌクレオチド,プラスミド、アンチセンスおよびリボザイムがある。これらの方法は、本発明の粒子または組成物を、細胞内送達が起こるのに十分な時間の間、細胞と接触させることによって実施できる。
【0121】
通常の適用は、周知の手順を使用して、siRNAの細胞内送達を提供して、特定の細胞標的をノックダウンまたはサイレンシングすることを含む。あるいは、適用は、治療上有用なポリペプチドをコードするDNAまたはmRNA配列の送達を含む。このように、遺伝病の治療は、遺伝子産物の欠損または非存在を供給することによって提供される。本発明の方法は、in vitroで実施しても、ex vivoで実施しても、in vivoで実施してもよい。例えば、本発明の組成物はまた、当業者に公知である方法を使用してin vivoで細胞への核酸の送達のために使用してもよい。
【0122】
本発明の脂質粒子によるsiRNAの送達および遺伝子発現をサイレンシングすることにおけるその有効性を以下に記載する。
【0123】
医薬組成物は、in vivo投与のために、非経口的に(例えば、関節内に、静脈内に、腹膜内に、皮下にまたは筋肉内に投与されることが好ましい。特定の実施形態では、医薬組成物を、ボーラス注射によって静脈内に、または腹膜内に投与する。その他の投与経路として、局所(皮膚、眼、粘液膜)、経口、肺、鼻腔内、舌下、直腸および経膣が挙げられる。
【0124】
一実施形態では、本発明は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節する方法を提供する。これらの方法は、一般に、細胞を、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節できる核酸と会合している本発明の脂質粒子と接触させることを備える。本明細書において、用語「調節すること」とは、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を変更することを指す。調節することとは、増大させることもしくは増強することを意味し、または低下させることもしく低減することを意味する場合もある。
【0125】
関連する実施形態では、本発明は、対象に、対象においてポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、本発明の医薬組成物を提供することを備え、治療薬は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現できるプラスミドから選択され、siRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスRNAは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと特異的に結合するポリヌクレオチドまたはその相補体を備える、方法を提供する。
【0126】
さらなる態様では、本発明は、本発明の脂質粒子と、医薬上許容される担体または希釈液とを備える医薬組成物を提供する。代表的な医薬上許容される担体または希釈剤として、静脈内注射用の溶液(例えば、生理食塩水またはデキストロース)が挙げられる。組成物は、クリーム、軟膏、ゲル、懸濁液またはエマルジョンの形態をとってもよい。
【0127】
以下は、代表的なLNPシステム、LNPシステムを製造するためのデバイスおよび方法ならびに治療薬を送達するためにLNPを使用する方法の説明である。
【0128】
[迅速マイクロ流体混合によって、単分散脂質ナノ粒子の製造が可能となる]
脂質ナノ粒子の製剤は、カオス的移流を誘発し、中間レイノルズ数(24<Re<240)の制御された混合環境を提供するよう設計されたマイクロ流体ミキサー内で、脂質−エタノール溶液を、水性バッファーと迅速に混合することによって実施した(図15B)。マイクロ流体チャネルは、半サイクルの間に、ヘリンボーン構造の配向を変更し、局所回転の中心および伸長フローに周期的変化を引き起こすことによってカオス的フローを生成するヘリンボーンを含有する。
【0129】
デバイスの内の混合性能を調べるために、フルオレセインのpH感受性を使用し、これでは、2つの10μMフルオレセイン流、一方はpH8.88で蛍光、もう一方はpH5.15で非蛍光を混合した。混合が起こるのに必要なチャネル長(混合の程度>95%)は、0.8cmから1.0cmの間であるとわかった。これは、それぞれ、0.1ml/min、0.4ml/min、0.7ml/minおよび1.0ml/minの流速について、およそ45ms、10msおよび5msおよび3msの混合時間をもたらした。カオス的フローでは、ベクレ数で対数的にのみ増大する、混合長のわずかな相違が予測される(Pe=Ul/D、式中、Uは、流体速度であり、lは、断面図チャネル長であり、Dは、分子の拡散性である)。
【0130】
以下の代表的な製剤は、イオン化できるカチオン性脂質、6.7という見かけのpKaを有し、脂質を低pHでのsiRNAのカプセル封入にとって適したものにし、生理学的pHでほぼ中性のカチオン性表面電荷密度を提供するDLin−KC2−DMAを含む。モデルシステムとして、このLNP−siRNAスキームを使用して、LNP製剤に対する流速の効果を調べた。流速を高めるにつれ、混合時間が劇的に低下するので、脂質が水相に導入される速度が、その最終サイズおよび分散度に影響を及ぼすと予測した。図16Bは、チャネルあたり0.1ml/min〜1ml/minの同一流速を使用して、マイクロ流体ミキサーによって製造されたLNP−siRNAシステムの平均粒径を示す図である。バッファーは、0.06(wt/wt)のsiRNA/総脂質比をもたらすようにsiRNAを含有し、LNP混合物をバッファーに直接希釈して、エタノール含量をおよそ22vol%に低下させた。総流速を0.2ml/min〜2ml/minに増大させると粒子サイズは大幅に減少した。粒子サイズは、0.2ml/minの流速下で最大であり、LNPは、およそ40nmの限界サイズに達したと、数加重粒子直径から求められた。あるいは、エタノールおよび水性の流れの比を変更することによって混合時間も調整した。水性の流れの流速を増大させると、脂質の、水性の流れでのより速い希釈が実際に提供される。脂質−エタノールの流れを、0.5ml/minで一定に維持しながら、水性の流速を増大した結果、粒子サイズが減少した(図16C)。水性の流速を3倍増大した場合の、約70nmから35nmへの粒子サイズの実質的な低下は、エタノール含量を迅速に低下させることの重要性を強調する。
【0131】
これらのLNPは、脂質が、より水性の環境に遭遇すると自発的に形成すると予測されるので、脂質濃度の効果を調査することも重要であった。脂質濃度を増大するにつれ、LNPに組み込むために利用可能な脂質の量は増大するか、そうでなければ、さらなる粒子を形成すると予測される。これを、脂質濃度を、エタノール流中で10mMから50mMに増大しながらモニタリングした。脂質濃度のこの増大後に、約40nmから70nmへの平均粒径の増大を観察した(図17)。
【0132】
[迅速なマイクロ流体混合は、LNP−siRNAシステムの広い製剤範囲を提供する] カチオン性脂質の最近の改善によってLNPの効力は数倍高まったが、LNP組成を最適化することによってさらなる改善を提供できるということも明らかとなった。特に、その二分子膜不安定化能およびエンドソーム溶解能に影響を及ぼし得るか、または生理学的pHでのその循環挙動に影響を及ぼす可能性がある。例えば、少ないPEG−脂質および増大したカチオン性脂質を有する製剤は、肝臓の肝細胞を標的とするLNPシステムのin vivo有効性において著しい改善を示した。これは、第VII因子マウスモデルの最近の報告において観察され、最適化されたLNPにおいてED50のさらに5倍の低減を提供した。PEG−脂質は、微粒子の安定性にとって必要であるが、これらのLNPシステムの膜不安定化特性を弱め得る。予備形成ベシクル(PFV)法を用いると、5mol%未満のPEG−脂質を用いてLNPシステムを製造しようとする場合には困難に遭遇した。これは、おそらくは、LNP間の融合を増大させる、ベシクルの外側でのPEG含量が少ないことによる。さらに、予備形成脂質粒子の再構築およびsiRNAのカプセル封入にとって必要なインキュベーションステップには、30%(v/v)の範囲のエタノール溶液が必要である。この脂質の流動性の増大が、不安定性を促進し、予備形成脂質粒子のさらなる凝集および融合につながり得る。
【0133】
PEG−c−DMAを使用する、LNP−siRNAシステムを製造するためのマイクロ流体(MF)法の能力(迅速な混合時間および25%エタノール(v/v)を下回るLNPの希釈前の短い滞留)を、PEG−脂質含量を変更して調査した。DLin−KC2−DMA、DSPC、コレステロールおよびPEG−c−DMAの最初の組成(40:11.5:38.5:10mol/mol)を0.06(wt/wt)のsiRNA/総脂質比と共に使用した。さらなるコレステロールを使用して、PEG−c−DMAの量の減少を補填した。マイクロ流体アプローチを使用して、PEG−c−DMAを2mol%に用量設定することは、粒子サイズのわずかな増大にしかつながらなかった。PEGを1mol%へさらに減少させることは、約20nmから約40nmへの直径の増大につながった(図18A)。対照的に、PFV法を使用する平均粒径は、PEG−脂質含量を1mol%に減少させるにつれて、20nmから70nmへの粒子直径の一定の増大を示した。少量のPEG−脂質を用いてLNPを製造することに加えて、カチオン性脂質の量を変更することができることも注目される。DLin−KC2−DMAを40mol%から70mol%に増大するにつれ、マイクロ流体アプローチによって製造されたものについて、約40nmから70nmに粒子サイズの全般的な増大が観察された(図18B)。
【0134】
[マイクロ流体デバイスにおけるセルフアセンブリーによって、ほぼ完全なカプセル封入を伴うLNPが生成し得る] LNP−siRNAシステムの製造では、堅牢な過程は必ず、OGN製剤の高いカプセル封入パーセントを提供する。1mol% PEGを有するLNP−siRNA製剤を使用して、siRNA/総脂質比を0.01から0.2(wt/wt)に変更することによってsiRNAカプセル封入を評価した。LNP製剤は、この範囲にわたって100パーセントに迫るカプセル封入パーセントを達成した(図19)。0.21(wt/wt)のsiRNA/総脂質比に達した時点で、カチオン性脂質およびアニオン性siRNA間の電荷バランス(N/P=1)に対応して、カプセル封入が減少すると観察された(示されていないデータ)。この後者の傾向は、siRNAと複合体を形成し、LNP中にカプセル封入するのに必要なカチオン性電荷が不十分であることによると予測された。
【0135】
[形態] マイクロ流体および予備形成ベシクル法によって製造されたLNPをcryo−TEMを用いて可視化した。LNPの粒子サイズは、動的光散乱によって測定されたものと同様であった。40/11.5/47.5/1mol%のDLin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DOMGを含有し、0.06wt/wtのsiRNA対脂質比を有するLNP−siRNAシステムを、図20Aに示す。さらに、同一組成の空のLNPサンプルを図20Bに示す。製造された粒子は、主に球形であり、サイズが均質である。予備形成アプローチを用いて製剤され、同一の組成のLNPも撮像した。これらは、同様の特徴をマイクロ流体LNPと共有していたが、コーヒー豆状の構造などのその他の特徴も観察された。これらのLNPはまた、サイズが大きいことが動的光散乱結果から予測された。
【0136】
[マイクロ流体によって製造されたLNP siRNAシステムは、in vivoで高度に強力な遺伝子サイレンシング物質であり得る。] LNP siRNAシステムの、i.v.注射後にin vivoで遺伝子サイレンシングを誘導する能力を、第VII因子マウモデルを使用して調査した。DLin−KC2−DMA/DSPC/コレステロール/PEG−c−DOMGを含有し、0.06(w/w)のsiRNA対脂質比を有する製剤を、マイクロ流体アプローチを使用して作製した。LNP−siRNAの投与は、尾静脈注射によって行った。0.2wt/wtのDSPC対コレステロール比を維持しながら、カチオン性脂質、DLin−KC2−DMAを30mol%〜60mol%に変更した。LNP中のカチオン性脂質含量を増大した結果、FVIIサイレンシングにおいて進行性の改善が得られた。最高の性能のLNPは、60mol% DLin−KC2−DMAを含有し、約0.03mg/kgで50% FVIIサイレンシングのための有効用量をもたらした(図21)。興味深いことに、70mol%へのさらなる増大は、60mol% DLin−KC2−DMA LNPを上回る有効性の観察可能な改善につながらなかったことに留意されたい。
【0137】
結果は、互い違いのヘリンボーン状ミキサーを含有するマイクロ流体デバイスを使用して、siRNAなどのOGNを効率的にカプセル封入できる、種々の脂質組成を有するLNPを作製できることおよび製造されたLNP siRNAシステムが、in vitroおよびin vivoの両方で優れた遺伝子サイレンシング能を示すことを実証する。
【0138】
本発明のマイクロ流体デバイスおよびシステムは、LNPおよび100nm以下のサイズのOGNを含有するLNP形成を可能にし、OGNカプセル封入100%を提供する。LNPの形成に関しては、混合速度および混合比は明確に、重要なパラメータである。エタノール−脂質溶液を水性バッファーと迅速に混合することは、溶解される脂質の溶解度を低下させる培地の極性の増大をもたらし、溶液から析出させて、ナノ粒子を形成させる。迅速な混合は、溶液に混合容積全体にわたる脂質ユニマーの高度に過飽和の状態を迅速に達成させ、迅速で、均質なナノ粒子の核生成をもたらす。ナノ粒子の核生成および成長の増大は、遊離脂質の周囲の液体を枯渇させ、それによって、遊離脂質の凝集によるその後の成長を制限する。この提案されている機序は、エタノール中の低濃度の脂質(減少した遊離脂質)がより小さいLNPをもたらし(図17参照のこと)、過飽和へのより迅速な、より均質なアプローチを引き起こす高い流速がより小さいLNPの形成につながり、水性対有機溶媒構成要素の相対比を増大することもより小さい粒子をもたらすという観察結果と一致する(図17)。
【0139】
マイクロ流体法によって製剤された本発明のLNP OGNシステムは、100%に迫るOGNカプセル封入効率を示す。アンチセンスOGNに対してPFV技術を使用するこれまでのcryo−TEM研究は、小さい多層ベシクルの存在を示しており、これは、カプセル封入が、予備形成ベシクルへのOGN吸着を含み、これが元のベシクルを包み込むさらなる予備形成ベシクルとの会合のための核生成点として働くという可能性につながる。対照的に、マイクロ流体法によって製造されたLNP OGN のcryo−TEM研究は、LNPシステムの大部分は、「固体コア」構造であることを示し、異なる機序のOGNカプセル封入が働いていることを示唆する。特に、これらの構造は、ナノ粒子アセンブリーの前またはそれと同時のsiRNAのカチオン性脂質モノマーとの会合と一致する。マイクロ流体法の、核酸組成物と無関係に100%に迫るようにアンチセンスおよびsiRNA OGNのカプセル封入効率を高める能力は、これまでに報告された方法を上回る大きな利点である。
【0140】
マイクロ流体法は、LNPを製造するための伝統的な押し出し手順、予備形成ベシクル法およびOGNカプセル封入のための自発的なベシクル形成法を含む3つの代替LNP合成技術を上回る利点を提供する。マイクロ流体法は、カチオン性脂質が存在する場合には、100nmのサイズ範囲またはそれより小さいLNPを提供し、低レベルの安定化PEG−脂質を用いてLNPが形成されることを可能にする。マイクロ流体法の不利点は、調製後にエタノールを除去する必要性、特定の脂質が、エタノールに比較的不溶性であるという事実および拡張性の可能性の問題に関する。マイクロ流体法は、カプセル封入効率における利点、PFVプロセスを使用しながら用いることは困難である高いカチオン性脂質含量および低いPEG−脂質レベルの使用、予備形成ベシクルを作製する必要性を取り除くことおよび装置の小さいデッドボリューム(1μl)のために損失がほとんどない、わずかに150μgのオリゴヌクレオチドを使用する小スケールバッチを製造する能力を提示する。
【0141】
OGNが入っているLNPシステムを作製するための、SVF「Tチューブ」手順と比較して、マイクロ流体法の利点は、予備形成ベシクルは必要ではないという点を除いてPFVプロセスについて示されたものと同様である。Tチューブの開口部は、直径およそ1.5mmであり、迅速な混合が起こるのに必要な速度を達成するのに高い流速(>1ml/s)を必要とする。マイクロミキサーは、かなり低い流速で、明確に定義された再現性のある条件下でLNP OGN製剤が起こることを可能にし、デッドボリュームによる損失を低減し、LNP最適化およびin vitro試験のための小スケールバッチのより直接的な調製を可能にする。
【0142】
LNP OGNシステムはスケールアップすることができる。1ml/minの最大流速を有するデバイスでは不十分である場合もあるが、単一のマイクロ流体チップは、約10mL/minの総流速を達成するために10個以上のマイクロミキサーを含有し得る。この技術の比較的安価な性質を考えると、いくつかのこのようなチップが並列で使用されることは実用的であり、単一の卓上機器から100ml/min以上の流速を可能にする可能性がある。さらに、複数の構成要素から正確にプログラム可能な製剤、合成製剤およびパラメータのスクリーニングおよび最適化において高度に有利であろう特性を可能にするために、このようなデバイスに上流流体ハンドリングを容易に組み込むことができる。
【0143】
[固体コアLNP]
LNP siRNA製剤の特定のモデルは、水性内部中、内側にsiRNAを有するLNPの二分子膜ベシクル構造を示唆する。しかし、いくつかの観察結果は、少なくともマイクロ流体混合アプローチによって作製されたLNP siRNAシステムについては、このようなモデルは不正確であると示唆する。例えば、マイクロ流体混合によって製造されたLNP siRNAシステムの低温電子顕微鏡検査は、ベシクル構造と一致した水性コアというよりも電子密度の高いコアの存在を示す。上記のように、LNP siRNAシステムの製剤は、日常的に100%に迫るsiRNAカプセル封入効率をもたらし得、50%の最大カプセル封入効率が予測される二分子膜構造と一致しない観察結果である。
【0144】
LNP siRNAシステムの構造を、種々の物理的および酵素的アッセイを使用して評価した。得られた結果は、これらのLNP siRNAシステムは、カチオン性脂質ならびに逆ミセルまたは関連構造に組織された脂質と複合体を形成しているsiRNAモノマーからなる固体コア内部を有することを示す。
【0145】
LNPシステムは、カプセル封入されたsiRNAの存在下および不在下で、cryo EMによって示されるように電子密度の高い固体コア構造を示す。マイクロ流体混合によって製造されたLNPシステムは、代替法によって作製されたLNP siRNAシステムについて示唆される水性コア構造とは対照的に、cryo EMによって可視化されるように電子密度の高いコアを示し、固体コアと一致する。これは、図22Aで示されるように、0.06siRNA/脂質(wt/wt)含量でsiRNAを含有するDLin−KC2−DMA/DSPC/Chol/PEG−脂質(40/11.5/47.5/1;mol/mol)からなるLNP siRNA製剤について確認され、4の、正電荷(完全にプロトン化したカチオン性脂質上)に対する負の電荷(siRNA上)N/P比に対応する。結果として、LNP中で、およそ75%のカチオン性脂質がsiRNAと複合体を形成していない。固体コアの電子密度の高い構造は、POPCからなるベシクルシステムの電子密度の低い内部(図22B)と対照的であり、POPC/トリオレイン(POPC/TO)LNPの電子密度の高い内部(図22C)と視覚的に同様である。マイクロ流体混合によって製造されたPOPC/TO LNP は、POPCの単層によって囲まれたTOの疎水性コアからなる。
【0146】
図22Aの興味深い特徴は、イオン化できるカチオン性脂質の75%は、siRNAと複合体を形成していないが、LNP siRNA粒子は全体として固体コア内部を示すということである。これは、カチオン性脂質は、siRNAと複合体を形成していない場合でさえも固体コア内部に貢献し得るということを示唆する。同一の脂質組成を有するがsiRNAを有さないLNPシステムを、マイクロ流体プロセスを使用して製剤し、cryo EMによって特性決定した。図22Bに示されるように、siRNAの不在下で電子密度の高いコアが観察され、これは、DLin−KC2−DMAなどのイオン化できるカチオン性脂質は、おそらくは、DSPCおよびコレステロールと組み合わせて、LNP内部において非層状の電子密度の高い構造をとり得るということを示す。
【0147】
LNP構造は、限界サイズ示し、これは、イオン化できるカチオン性脂質は、LNP内部において逆ミセル構造を形成することを示す。電子密度の高いLNPコアに対するカチオン性脂質の貢献は、このようなLNPシステムの分子構造はどのようなものであり得るかという問題を提起する。カチオン性脂質は、対イオンと会合して、逆ミセルなどの逆構造をとるということを提案することが論理的であり、アニオン性脂質との混合物中の六方晶系のHII相などの逆構造に対するこれらの脂質の傾向と一致する。さらに、これは、純粋なカチオン性脂質からなるLNPシステムは、本質的に、直径2〜3nmを有する逆ミセル内部を囲む2つの二分子膜の厚さである10nmの範囲の直径を有する限界サイズを示すはずであるということを示唆する。HII相中のホスファチジルエタノールアミンについて見られる水性チャネルの直径は、2.6nmである。マイクロ流体製剤プロセスは、迅速な混合動態を提供し、これがLNPシステムの限界サイズシステムの生成を駆動する。DLin−KC2−DMA/PEG−脂質システム(90/10、mol/mol)について達成され得る限界サイズを評価した。図23に示されるように、マイクロ流体法によって形成されたこれらのLNPでの動的光散乱による測定によって、粒子サイズは、直径およそ10nmである、すなわち、相当な水性コアまたはトラップ容積とは一致しない知見が確認される。
【0148】
関連する問題として、カチオン性脂質−siRNA複合体の構造に関わるものがある。やはり、siRNAオリゴヌクレオチドを囲むカチオン性脂質の歪んだ逆ミセルからなると想定することが論理的である。さらに、この逆ミセル中に含有されるsiRNAが、カチオン性脂質の内側の単層と、残りの脂質の外側の単層によって囲まれており、siRNAの寸法が直径2.6nm、長さ4.8nmであると仮定すると、これは15〜20nmの範囲の限界サイズを示唆する。これが実験結果と一致するかどうかを調べるために、1のN/P比に対応する、高レベルのsiRNAのDLin−KC2−DMAおよびPEG−脂質(90/10;mol/mol)からなるLNP siRNAシステムの限界サイズを調べた。図23に示されるように、siRNAを含めた結果、仮説と一致する、およそ21nmの直径の限界サイズシステムが得られた。
【0149】
カプセル封入されたsiRNAは、LNP中に固定される。siRNAがカチオン性脂質と複合体を形成し、LNP内の固体コア中に局在化される場合には、二分子膜ベシクルシステムの水性内部中で自由に動き回っている場合よりも可動性が低いと予測される。siRNAの可動性は、31P NMR技術を使用して探ることができる。特に、複合体形成されたsiRNAについては、限定された運動の平均化があり得、これが、リン酸態リンの大きな化学シフト異方性による極めて広い「固体状態」31P NMR共鳴につながることが予測される。使用される条件下では、このような共鳴は検出可能ではない。他方、siRNAが水性環境中を自由に動き回ることができる場合には、迅速な運動の平均化は、狭い、容易に検出可能31P NMRスペクトルにつながると予測される。この仮説を試験するために、リン脂質リンに起因する31P NMRシグナルから生じる複雑化の要因を排除するためにLNPの製剤からDSPCを省いた。図24Aに示されるように、脂質組成DLin−KC2−DMA/Chol/PEG−脂質(50/45/5mol%)を有し、siRNA(0.06siRNA/脂質;wt/wt)を含有する、LNP siRNAシステムについて、31P NMRシグナルは、カプセル封入されたsiRNAについて観察可能ではなく、LNPコア内の固定化と一致する。図24Cに示されるように、LNPを可溶化し、カプセル封入されたsiRNAを放出するよう界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(1%)を添加すると、狭い31P NMRシグナルが検出される。
【0150】
カプセル封入されたsiRNAは、外部のRNアーゼAによる分解から十分に保護される。siRNAの内部移行の試験は、siRNAがLNPコア中に隔離されていれば、外部から添加されたRNアーゼによる分解から十分に保護されるはずであるというものである。脂質組成DLin−KC2−DMA/DSPC/Chol/PEG−脂質(40/11/44/5mol%)を有するLNP siRNAシステムを、RNアーゼAとともにインキュベートして、カプセル封入されたsiRNA消化され得るかどうかを調べた。図25に示されるゲルにおいて示されるように、遊離siRNAは分解されるが、マイクロ流体法によって製造されたLNP粒子内に結合されたsiRNAは、完全に保護される(図25矢印)。また、図25に示されるように、LNPへの界面活性剤Triton X−100の添加は、LNPの溶解、siRNAの放出およびRNアーゼの存在下での分解をもたらす。
【0151】
カプセル封入されたsiRNAは、内部移行されたカチオン性脂質と複合体を形成する。LNP siRNAシステムの固体コアは、カチオン性脂質と複合体を形成しているカプセル封入されたsiRNAからなり、残りの脂質(カチオン性脂質、コレステロールおよびPEG−脂質)は、逆ミセルまたは同様の構造中のコア中に存在するか、またはLNPの外側に存在するのいずれかである。高siRNA含量について、本質的にすべてのカチオン性脂質が内部移行されたsiRNAと複合体を形成している場合、ほとんどのカチオン性脂質がLNPの外側に局在しないことが予測される。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイを開発して、外側のカチオン性脂質を調べた。アッセイには、高(自己消光)濃度のFRET対、NBD−PE/Rh−PEを含有した、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)からなる負に帯電したベシクルのLNPの調製が必要であった。次いで、負に帯電したDOPS LNPを、pH5.5のDLin−KC2−DMA/DSPC/Chol/PEG−脂質(40/11.5/47.5/1mol%)からなるLNP siRNAシステムとともにインキュベートした。DLin−KC2−DMAのpKaは、6.7であり、LNPの外側のほぼすべてのDLin−KC2−DMAはpH5.5で帯電し、負に帯電したDOPS LNPとの相互作用および潜在的には融合を促進する。融合は、NBD−PEおよびRh−PEプローブが脂質混合後に希釈されるので535nmのNBD−PE蛍光の増大として報告される。
【0152】
図26に示されるように、LNPシステムがsiRNAを含有しない場合には、実質的な融合が観察され、LNPシステムの外側の単層上に存在する相当な割合のDLin−KC2−DMAと一致する。しかし、LNPシステムが、4の正(カチオン性脂質)電荷対負(siRNA)N/P電荷比に対応する0.06(wt/wt)のsiRNA対脂質比でsiRNAを含有する場合には、融合は相当に減少し(図26)、1のN/Pを用いて調製されたLNP siRNAシステムについては、融合はほとんどまたは全く観察されなかったが、これは、LNP siRNAの外側にDLin−KC2−DMAがほとんどまたは全く存在しなかったことを示す。これは、高siRNA含量では、本質的にすべてのカチオン性脂質がsiRNAと複合体を形成し、LNP内部に隔離されるという仮説を支持する。
【0153】
結果は、LNP siRNAシステムの内部は、カチオン性脂質ならびに逆ミセルまたは関連構造に配置された脂質と複合体を形成しているsiRNAモノマーから構成される固体コアからなる証拠を提供する。これらの結果は、LNP siRNA構造のモデルを暗示し、達成され得る高いsiRNAカプセル封入効率の論理的根拠を提供し、特定の適用にとって適当な特性を有するLNP siRNAシステムを製造するための方法を示唆する。
【0154】
結果に基づくLNP siRNA構造のモデルを図27に示す。モデルは、カプセル封入されたsiRNAは、カチオン性脂質によって囲まれた歪んだ逆ミセル中に存在することおよび残りの脂質はアニオン性対イオンを囲む逆ミセルに組織され、最外の単層を構成することを提案する。
【0155】
モデルは、マイクロ流体混合製剤プロセスの際に、100%に迫るsiRNAカプセル封入効率が、どのように達成され得るかについての理解を提供する。カチオン性脂質が二分子膜の両側上に等しく分散されると仮定すると、最大50%のsiRNA内部移行が予測されるので、これは二分子膜システムにおけるsiRNAカプセル封入の大きな問題である。モデルは、LNP siRNAの大きさ、組成および表面電荷を容易に調整できる方法を提示する。サイズに関しては、限界サイズ構造は、粒子あたり1個のsiRNAモノマーを含有するものであることは明確であり、およそ15〜20nmの限界サイズを示唆する。このようなLNP siRNA粒子は、本発明のマイクロ流体法を使用して容易に達成される。siRNAのモノマーからなる限界サイズLNP siRNAシステムをビルディングブロックとして使用し、マイクロ流体混合技術を使用して、変動する組成および表面電荷のLNP siRNAシステムを達成できる可能性がある。予備形成限界サイズLNP siRNAの、負に帯電した脂質を含有するエタノー溶液との迅速な混合は、例えば、過剰のカチオン性脂質との相互作用をもたらし、内部逆ミセルコア構造および負に帯電した表面を生成すると予測され得る。
【0156】
本明細書に記載される本発明の脂質粒子は、列挙された構成要素を含む(すなわち、含む)。特定の実施形態では、本発明の粒子は、列挙された構成要素と、粒子(すなわち、本質的に列挙された構成要素からなる粒子)の特徴に影響を及ぼさないその他のさらなる構成要素とを含む。粒子の特徴に影響を及ぼすさらなる構成要素として、粒子の治療プロフィールおよび有効性を不利に変更するか、または影響を及ぼすさらなる治療薬などの構成要素、列挙された治療薬構成要素を可溶化する粒子の能力を不利に変更するか、または影響を及ぼすさらなる構成要素、列挙された治療薬構成要素のバイオアベイラビリティを増大する粒子の能力を不利に変更するか、または影響を及ぼすさらなる構成要素が挙げられる。その他の実施形態では、本発明の粒子は、列挙された構成要素のみを含む(すなわち、からなる)。
【0157】
以下の例は、例示目的で提供するものであって、特許請求される発明を制限するものではない。
【0158】
例
[材料]
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホセリン(DOPS)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(7−ニトロ−2−1,3−ベンゾキサジアゾール−4−イル)(NBD−PE)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(リサミンローダミンBスルホニル)(Rh−PE)は、Avanti Polar Lipids(Alabaster、AL)から入手した。4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)およびコレステロールは、Sigma(St Louis、MO)から入手した。N−[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]−1,2−ジミリスチルオキシル(dimyristyloxl)プロピル−3−アミン(PEG−C−DMA)は、AlCana Technologiesによって合成された。2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)は、BDHから入手した。酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムは、Fisher Scientific(Fair Lawn、NJ)から入手した。RNアーゼAは、Applied Biosystems/Ambion(Austin、TX)から入手した。第VII因子(FVII)を標的とするsiRNAおよび低GC陰性対照siRNAは、Invitrogen(Carlsbad、CA)から購入した。第VII因子siRNA:(配列番号1)5’−GGAUCAUCUCAAGUCUUACTT−3’(FVIIセンス)および(配列番号2)5’−GUAAGACUUGAGAUGAUCCTT−3’(FVIIアンチセンス)。DLin−KC2−DMAは、AlCana Technologies Inc.(Vancouver、BC)から入手した。
【0159】
例1
[LNPシステムの調製:予備形成ベシクル法]
この例では、予備形成ベシクル法を使用するLNP−siRNAシステムの調製を説明する。
【0160】
LNP siRNAシステムを、予備形成ベシクル法を使用して、図15Aに表され、N. Maurer、K.F. Wong、H. Stark、L. Louie、D. McIntosh、T. Wong、P. Scherrer、S. Semple and P.R. Cullis、Spontaneous Entrapment of Polynucleotides Upon Electrostatic Interaction With Ethanol Destabilized Cationic Liposomes: Formation of Small Multilamellar Liposomes、Biophys. J.;第80巻:2310〜2326頁(2001年)に記載されるように製造した。カチオン性脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG−脂質を、適当なモル比でエタノールに最初に可溶化した。次いで、脂質混合物を、ボルテックス処理しながら、水性バッファー(クエン酸または酢酸バッファー、pH4)に滴加し、30%(v/v)の最終エタノールおよび脂質濃度とした。次いで、水和した脂質を、室温で、Lipex Extruder(Northern Lipids、Vancouver、Canada)を使用して2枚重ねた80nmポアサイズのフィルター(Nuclepore)を通して5回押し出した。ベシクル懸濁液に、混合しながらsiRNA(30%エタノールを含有する同一の水溶液に可溶化した)を加えた。通常、0.06(wt/wt)の標的siRNA/脂質比を使用した。この混合物を、35℃で30分間インキュベートし、ベシクル再構築およびsiRNAのカプセル封入を可能にした。次いで、エタノールを除去し、50mMクエン酸バッファー、pH4.0に対する透析(12〜14k MWカットオフ、Spectrum medical機器)およびPBS、pH7.4に対する透析によって、外部のバッファーをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で置換した。
【0161】
例2
[LNPシステムの調製:マイクロ流体互い違いヘリンボーン状ミキサー]
この例では、マイクロ流体互い違いヘリンボーン状ミキサーを使用する本発明の代表的なLNP−siRNAシステムを説明する。
【0162】
[LNP−siRNA調製] オリゴヌクレオチド(siRNA)溶液をpH4.0の25mM酢酸バッファーで調製した。所望のオリゴヌクレオチド対脂質比および製剤濃度に応じて、0.3mg/ml総脂質〜1.9mg/ml総脂質の標的濃度で溶液を調製した。エタノール中に、適当なモル比でDLin−KC2−DMA、DSPC、コレステロールおよびPEG−脂質を含有する脂質溶液を調製し、25mM酢酸バッファーで希釈して90%(v/v)のエタノール濃度を達成した。図15Bは、この例において使用したマイクロ流体装置の概略図である。デバイスは、2つの入口、上記で調製された溶液の各々のためのものと、1つの出口とを有する。マイクロ流体デバイスをソフトリソグラフィー、エラストマーの微細加工されたマスターのレプリカモールディングによって製造した。デバイスは、200μmの幅および79μmの高さの混合チャネルを特徴とし、チャネルの最高部に31μmの高さおよび50μmの厚みの特長によって形成されるヘリンボーン状構造を有する。流体連結部は、シリンジと連結するための21G1ニードルに取り付けられた1/32” I.D.、3/32” O.D.チューブを用いて製造した。通常、両方の入口の流れに1mlシリンジを使用した。二重のシリンジポンプ(KD200、KD Scientific)を使用して、デバイスを通る流速を制御した。各流れの流速を0.1ml/min〜1ml/minで変更した。シリンジポンプは、マイクロ流体デバイスに2種の溶液を導入し(図15Bにおける入口aおよび入口b)、ここで、それらはY字路で接触する。この時点で拡散によって層流下でわずかな混合が起こるが、2種の溶液は、ヘリンボーン状構造に沿って通過するときに混合した状態になる。
【0163】
混合は、これらの構造中でカオス的移流によって起こり、層流の特徴的分離を次第に小さくさせ、それによって迅速な拡散を促進する。この混合は、ミリ秒時間スケールで起こり、その結果、脂質が、漸進的により水性の環境に移され、その溶解度が低下し、LNPの自発的な形成をもたらす。脂質組成物中にカチオン性脂質を含むことによって、オリゴヌクレオチド種の封入は、正に帯電した脂質頭部基と、負に帯電したオリゴヌクレオチドとの会合によって得られる。マイクロ流体デバイスにおける混合後、通常、LNP混合物を、2容積の撹拌バッファーを含有するガラスバイアル中に希釈した。最後に、50mMクエン酸バッファー、pH4.0に対する透析およびPBS、pH7.4に対する透析によってエタノールを除去する。バッファー溶液にオリゴヌクレオチドがない空のベシクルを同様に製造した。
【0164】
[LNP画像解析] 種々のpH値を有するフルオレセイン溶液の混合の蛍光イメージングによって混合時間を測定した。10x対物および1ラインあたり2スキャンを用いるカルマンフィルタモードを使用するオリンパス倒立共焦点顕微鏡を使用して像を集めた。チャネルの高さに沿って25の等間隔の切片をとり、組み合わせて総強度プロフィールを求めた。撮像された各位置について、流れの方向に沿って10の隣接するピクセル列の平均をとって、チャネルの幅に沿った強度プロフィールを得、これを使用して混合の程度を求めた。混合実験は、ナトリウムおよびリン酸イオン濃度の大きな差による液間電位差の形成を抑制するために0.5M NaClを補給した2種の10μMフルオレセイン溶液を用いて実施した。一方の溶液は、14mMのpH8.88のリン酸バッファーを含有していたが、もう一方は、1mMのpH5.15のリン酸バッファーを含有していた。最初に、pH5.15の溶液の蛍光の増大が、塩基性溶液中の蛍光のわずかな低下を圧倒し、総蛍光強度の2倍の増大をもたらす。混合の程度は、0.1ml/min、0.4ml/min、0.7ml/minおよび1.0ml/minの個々の流れの流速を使用してチャネルの長さに沿っておよそ2.1mm、6.2mmおよび10.1mmで求めた。
【0165】
[LNP特性決定] 粒子サイズは、Nicompモデル370サブミクロン粒子選別器(粒子サイジングシステム、Santa Barbara、CA)を使用して動的光散乱によって求めた。数加重および強度加重分布データを使用した。脂質濃度は、Wako Chemicals USA(Richmond、VA)製のコレステロールE酵素アッセイを使用して総コレステロールを測定することによって確認した。遊離siRNAの除去は、VivaPureD MiniHカラム(Sartorius Stedim Biotech GmbH、Goettingen、Germany)を用いて実施した。次いで、溶出物を75%エタノールに溶解し、260nmでの吸光度を測定することによってsiRNAを定量化した。カプセル封入効率は、脂質含量に対して正規化された、遊離オリゴヌクレオチド含量の除去の前後のオリゴヌクレオチドの比から求めた。
【0166】
[LNP低温透過型電子顕微鏡] サンプルは、穴の開いた炭素フィルムを有する標準電子顕微鏡グリッドに、3μLの、20〜40mg/mlの総脂質でLNPを含有するPBSを適用することによって調製した。Vitrobotシステム(FEI、Hillsboro、OR)を用いて吸い取ることによって過剰の液体を除去し、次いで、液体エタン中のLNP懸濁液をプランジ凍結して、ベシクルをアモルファス氷の薄いフィルムに迅速に凍結した。像は、低温条件下で、AMT HR CCDサイドマウントカメラを用いて29Kの倍率で取った。像のコントラストを増強するために5〜8μmのアンダーフォーカスを用いて低用量条件下で、FEI G20 Lab6 200kV TEM中のGatan70度クライオトランスファーホルダーを用いてサンプルを載せた。
【0167】
[FVII活性に対するLNP−siRNAのIn vivo活性] 6〜8週齢の雌のC57Bl/6マウスは、Charles River Laboratoriesから入手した。第VII因子siRNAを含有するLNP−siRNAを0.2μmフィルターを通して濾過し、使用の前に滅菌リン酸緩衝生理食塩水で必要な濃度に希釈した。製剤は、10ml/kgの容積で外側尾静脈を介して静脈内に投与した。24時間後、ケタミン//キシラジンを用いて動物に麻酔し、心穿刺によって血液を採取した。サンプルを血清に処理し(Microtainer Serum Separator Tubes; Becton Dickinson、NJ)、直ちに試験し、血清第VII因子レベルのその後の分析のために−70℃で保存した。すべての手順を、地方、州および連邦の規制に規定どおりに従って実施し、動物実験委員会(IACUC)によって承認された。
【0168】
血清第VII因子レベルは、比色分析Biophen VIIアッセイキット(Anaira)を使用して求めた。対照血清をプールし、段階希釈して(200%〜3.125%)、処理動物におけるFVIIレベルを算出するための較正曲線を製造した。処理動物から得た適当に希釈した血漿サンプル(n=投与量あたり3)および生理食塩水対照群(n=4)をBiophen VIIキットを製造業者の使用説明書に従って使用して分析した。分析は、96ウェル、平底、非結合性ポリスチレンアッセイプレート(Corning、Corning、NY)で実施し、405nmの吸光度を測定した。処理動物における第VII因子レベルは、段階希釈した対照血清を用いて作製した較正曲線から求めた。
【0169】
例3
[LNPシステム:固体コア]
この例では、固体コアを有する本発明の代表的なLNP−siRNAシステムの構造を説明する。
【0170】
[脂質ナノ粒子の調製] LNPは、上記のマイクロミキサーを使用して、エタノール中の所望の容積の脂質保存溶液を水相と混合することによって調製した。siRNAのカプセル封入のために、所望の量のsiRNAを、pH4の25mM酢酸ナトリウムバッファーと混合した。混合を促進するためにヘリンボーン状構造を含有するマイクロミキサーにおいて、当容積の脂質/エタノール相およびsiRNA/水相を組み合わせた。マイクロミキサーを出るとすぐに、酢酸ナトリウムバッファーを用いてエタノール含量を25%に迅速に希釈した。マイクロ混合を通る流速を、二重シリンジポンプ(Kd Scientific)を使用して調節した。次いで、脂質混合物を、50mM MES/ナトリウムクエン酸バッファー(pH6.7)中で4時間の透析と、それに続く、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中での一晩の透析に付した。
【0171】
[Cryo−EM] サンプルは穴の開いた炭素フィルムを有する標準電子顕微鏡グリッドに、3μLの、20〜40mg/mlの総脂質でLNPを含有するPBSを適用することによって調製した。Vitrobotシステム(FEI、Hillsboro、OR)を用いて吸い取ることによって過剰の液体を除去し、次いで、液体エタン中のLNP懸濁液をプランジ凍結して、ベシクルをアモルファスガラス様氷の薄いフィルムに迅速に凍結した。像は、低温条件下で、AMT HR CCDサイドマウントカメラを用いて29Kの倍率で取った。像のコントラストを増強するために5〜8umのアンダーフォーカスを用いて低用量条件下で、FEI G20 Lab6 200kV TEM中のGatan70度クライオトランスファーホルダーを用いてサンプルを載せた。
【0172】
[RNアーゼ保護アッセイ] 第VII因子siRNAは、マイクロ流体混合法を使用し、40% DLinKC2−DMA、11% DSPC、44%コレステロールおよび5% PEG−c−DMAを用いてカプセル封入した。1ugのsiRNAを、50uLの20mM HEPES(pH7.0)中の0.05ugのRNアーゼA(Ambion、Austin、TX)とともに37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、反応混合物の10uLのアリコートを、30uLのFA色素(脱イオン化ホルムアミド、TBE、PBS、キシレンシアノール、ブロモフェノールブルー、酵母tRNA)に加えて、RNアーゼ反応を停止した。20%未変性ポリアクリルアミドゲルを使用してゲル電気泳動を実施し、CYBR−Safe(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて染色することによって核酸を可視化した。
【0173】
[31P−NMR研究] 162MHzで作動するBruker AVII 400スペクトロメーターを使用してプロトンデカップリングされた31P NMRスペクトルを得た。パルス間減衰および64kHzのスペクトル幅を有する15μs、55度パルスを用いて、約104スキャンに対応する自由誘導減衰(FID)を得た。50Hzの線の広がりに対応する指数関数的な増大をFIDに適用し、その後フーリエ変換を行った。サンプル温度は、Bruker BVT3200温度ユニットを使用して調節した。測定は25℃で実施した。
【0174】
[FRET膜融合研究] LNP siRNAナノ粒子と、アニオン性DOPSベシクルとの間の融合を、蛍光共鳴エネルギー移動を使用する脂質混合アッセイによってアッセイした。脂質フィルムを適当なバッファーで直接再水和し、続いて、Lipex Extruderを使用して100nmポアサイズのポリカーボネートメンブレンを通して10回押し出すことによって、NBD−PEおよびRh−PE(各1mol%)を含有する標識したDOPSベシクルを調製した。40% DLinKC2−DMA、11.5% DSPC、47.5%コレステロール、1% PEG−c−DMAを含むLNPを、0、0.06および0.24のsiRNA対脂質比(D/L比、wt/wt)を用いて調製した。D/L=0.24は、等モル比の正(カチオン性脂質)対負(siRNA)電荷(N/P=1)に相当する。脂質混合実験を実施した。pH5.5に平衡化した10mM酢酸、10mM MES、10mM HEPES、130mM NaCl 2mLを含有する撹拌キュベット中に、標識されたDOPSベシクルおよび非標識LNPを1:2mol比で混合した。NBD−PEの蛍光を、連続低速撹拌下で、1×1cmキュベットを使用し、LS−55 Perkin Elmer蛍光光度計を使用し、465nmの励起および535nmの発光を使用してモニタリングした。脂質混合を、およそ10分間モニタリングし、その後、20μLの10% Triton X−100を加えて、すべての脂質ベシクルを破壊し、無限のプローブ希釈に相当するものとした。無限プローブ希釈のパーセンテージとしての脂質混合を方程式:を使用して求めた。脂質混合%=(F−Fo)/(Fmax−Fo)×100(式中、Fはアッセイの間の535nmの蛍光強度であり、Foは、初期蛍光強度であり、Fmaxは、Triton X−100の添加後の無限プローブ希釈での最大蛍光強度である。
【0175】
例4
[脂質ナノ粒子の逐次アセンブリー]
この例では、本発明の代表的な方法、脂質ナノ粒子を製造するための逐次アセンブリーを説明する。
【0176】
オリゴヌクレオチド(siRNA)溶液を、pH4.0の25mM酢酸バッファー中、1.31mg/mlで調製した。脂質混合物は、90mol%のカチオン性脂質(DLin−KC2−DMA)と10mol%のPEG−c−DMA(エタノールに溶解した10mM総脂質)とを含有するよう調製した。2種の溶液を、マイクロ流体ミキサーを総流速2ml/minで使用して混合し、pH4.0の25mM酢酸バッファーを用いて2倍に希釈して、エタノールを約23vol%に低下させ、最初の、すなわち、コアのナノ粒子を形成した。この最初の脂質粒子懸濁液をとり、メタノールに溶解したアニオン性脂質ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)を含有する別の脂質溶液と混合し、さらにおよそ25vol%溶媒(メタノールおよびエタノール)に希釈することによって逐次アセンブリーを実施した。第2の脂質、DOPSは、カチオン性脂質に対して約4xモル過剰で加えた。逐次アセンブリープロセスを、カチオン性脂質およびアニオン性脂質環を変更することによって反復した。
【0177】
粒子サイズは、Malvern Zetasizer Nano−ZS(Malvern Instruments Ltd、Malvern、Worcestershire、UK)を使用して動的光散乱によって求めた。数加重分布データを使用した。LNPシステムの表面電荷の尺度を提供するゼータ電位を、ディスポーサブルキャピラリーセル(DTS1060、Malvern Instruments Ltd.)を使用するMalvern Zetasizerを用いて測定した。LNPシステムを、25mM酢酸バッファー、pH4.0でおよそ0.3mg/ml総脂質に希釈した。
【0178】
例5
[代表的な脂質粒子の調製および特性決定]
この例では、カチオン性脂質と、核酸(DLin−KC2−DMA−siRNA)とのみからなる本発明の代表的な脂質粒子を説明する。
【0179】
siRNA溶液を、pH4.0の25mM酢酸バッファー中、0.38mg/mlで調製した。脂質溶液は、エタノール中、10mMの濃度でDLin−KC2−DMAを含有するよう調製した。siRNA対脂質比は、0.06(wt/wt)とした。各溶液を、等しい流速、2ml/minの総流速でマイクロ流体ミキサー中に投入した。サンプルを25mM酢酸バッファー、pH4.0を用いてさらに希釈し、エタノール含量を25vol%にした。
【0180】
粒子サイズは、Nicompモデル370サブミクロン粒子選別器(粒子サイジングシステム、Santa Barbara、CA、米国)を使用して動的光散乱によって求めた。サンプル測定は、25mM酢酸中で実施し、数加重分布データを使用した。粒子は、14.2nmの平均粒径、0.487の変動係数および1.93のχ2を有していた。
【0181】
例示的実施形態を示し、記載したが、当然のことではあるが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、それに種々の変法を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と;
(b)1つまたは複数の第2の脂質と;
(c)1つまたは複数の核酸と
を備え、固体コアを備える脂質粒子。
【請求項2】
前記カチオン性脂質が、アミノ脂質である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記カチオン性脂質が、DODAC、DOTMA、DDAB、DOTAP、DOTAP−Cl、DC−Chol、DOSPA、DOGS、DOPE、DODAP、DODMA、DODMAおよびDMRIEからなる群から選択される、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
前記カチオン性脂質が、次式を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の粒子:
【化1】
式中、R1およびR2は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC10〜C24アルキル、任意に置換されたC10〜C24アルケニル、任意に置換されたC10〜C24アルキニルまたは任意に置換されたC10〜C24アシルであり;
R3およびR4は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC1〜C6アルキル、任意に置換されたC2〜C6アルケニルもしくは任意に置換されたC2〜C6アルキニルであるか、またはR3およびR4は結合して、4〜6個の炭素原子ならびに窒素および酸素から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有する任意に置換された複素環を形成し;
R5は、存在しないかまたは存在し、存在する場合は水素またはC1〜C6アルキルであり;
m、nおよびpは、同一であるかまたは異なり、独立に、0または1のいずれかであり、ただし、m、nおよびpは、同時に0ではなく;
qは、0、1、2、3または4であり;
YおよびZは、同一であるかまたは異なり、独立に、O、SまたはNHである。
【請求項5】
前記カチオン性脂質が、ジリノレイルアミノ脂質である、請求項1から4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
前記カチオン性脂質が、DLin−KC2−DMAである、請求項1から5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
約30〜約95モルパーセントのカチオン性脂質を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
前記第2の脂質が、PEG修飾されたホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾されたホスファチジン酸、PEG修飾されたセラミド、PEG修飾されたジアルキルアミン、PEG修飾されたジアシルグリセロール、PEG修飾されたジアルキルグリセロールからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
前記第2の脂質が、PEG−c−DOMG、PEG−c−DMAおよびPEG−c−DMGからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項10】
前記第2の脂質がPEG−c−DMAである、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項11】
前記第2の脂質が中性脂質である、請求項1から10のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項12】
前記第2の脂質が、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリンおよびセレブロシドからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項13】
前記第2の脂質が、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリンおよびセレブロシドからなる群から選択される中性脂質である、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項14】
前記第2の脂質が、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項15】
前記第2の脂質がステロールである、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項16】
約1〜約10モルパーセントの第2の脂質を備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項17】
前記核酸が、DNA、RNA、ロックド核酸、核酸類似体またはDNAもしくはRNAを発現できるプラスミドである、請求項1から16のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項18】
前記核酸が、ssDNAまたはdsDNAである、請求項1から17のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項19】
前記核酸が、siRNAまたはマイクロRNAである、請求項1から17のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項20】
前記核酸が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1から19のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項21】
(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と;
(b)中性脂質と;
(c)PEG−脂質と;
(d)ステロールと;
(e)1つまたは複数の核酸と
を備え、固体コアを備える脂質粒子。
【請求項22】
前記カチオン性脂質が、DLin−KC2−DMAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項23】
前記PEG−脂質が、PEG−c−DMAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項24】
前記中性脂質が、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である、請求項21に記載の粒子。
【請求項25】
前記ステロールがコレステロールである、請求項21に記載の粒子。
【請求項26】
前記核酸がsiRNAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項27】
(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と;
(b)1つまたは複数の核酸と
からなり、固体コアを備える脂質粒子。
【請求項28】
前記カチオン性脂質が、DLin−KC2−DMAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項29】
前記核酸がsiRNAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項30】
核酸を対象に投与するための方法であって、それを必要とする対象に、請求項1から29のいずれか一項に記載の脂質粒子を投与することを備える方法。
【請求項31】
核酸を細胞に導入するための方法であって、細胞を請求項1から29のいずれか一項に記載の脂質粒子と接触させることを備える方法。
【請求項32】
標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節するための方法であって、細胞を請求項1から29のいずれか一項に記載の脂質粒子と接触させることを備え、前記核酸が標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節できる方法。
【請求項33】
対象におけるポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、対象に請求項1から29のいずれか一項に記載の脂質粒子を投与することを備え、前記核酸がポリペプチドの発現をサイレンシングまたは低減できる方法。
【請求項34】
核酸を含有する脂質粒子を製造するための方法であって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れをマイクロ流体デバイスに導入することと、
ここで、前記デバイスは、前記デバイスに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記1つまたは複数の流れの内容物をマイクロ流体ミキサーを用いて混合するための第2の領域とを有する;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを前記デバイスに導入して、層流条件下を流れる第1および第2の流れを提供することと、
ここで、前記デバイスは、前記マイクロチャネルに導入される1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有し、前記脂質粒子形成材料はカチオン性脂質を含み、前記第1および第2の溶媒は同一ではない;
(c)前記デバイスの前記第1の領域から前記デバイスの前記第2の領域に、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れを流すことと;
(d)前記デバイスの前記第2の領域において層流条件下を流れる、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質ナノ粒子を備える第3の流れを提供することと
を備える方法。
【請求項35】
核酸を含有する脂質粒子を製造するための方法であって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れをチャネルに導入することと、
ここで、デバイスは、前記チャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを導入することと、
ここで、前記チャネルは、前記チャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する;
(c)前記チャネルの前記第1の領域から前記チャネルの前記第2の領域に、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れを、前記2つの流れの物理的分離を維持しながら流すことと、
ここで、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れは、前記チャネルの前記第2の領域に到達するまで混合しない;
(d)前記マイクロチャネルの前記第2の領域において層流条件下を流れる、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質ナノ粒子を備える第3の流れを提供することと、
を備える方法。
【請求項36】
前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合することが、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの濃度または相対混合速度を変更することを備える、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記第3の流れを水性バッファーで希釈することをさらに備える、請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第3の流れを希釈することが、前記第3の流れおよび水性バッファーを第2の混合構造中に流すことを備える、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える前記水性バッファーを透析して、前記第2の溶媒の量を低減することをさらに備える、請求項34から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の溶媒が水性バッファーである、請求項34から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の溶媒が水性アルコールである、請求項34から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記核酸が、DNA、RNA、ロックド核酸、核酸類似体またはDNAもしくはRNAを発現できるプラスミドである、請求項34から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記アミノ脂質が、次式を有する、請求項34から42のいずれか一項に記載の方法:
【化2】
式中、R1およびR2は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC10〜C24アルキル、任意に置換されたC10〜C24アルケニル、任意に置換されたC10〜C24アルキニルまたは任意に置換されたC10〜C24アシルであり;
R3およびR4は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC1〜C6アルキル、任意に置換されたC2〜C6アルケニルもしくは任意に置換されたC2〜C6アルキニルであるか、またはR3およびR4は結合して、4〜6個の炭素原子ならびに窒素および酸素から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有する任意に置換された複素環を形成し;
R5は、存在しないかまたは存在し、存在する場合は水素またはC1〜C6アルキルであり;
m、nおよびpは、同一であるかまたは異なり、独立に、0または1のいずれかであり、ただし、m、nおよびpは、同時に0ではなく;
qは、0、1、2、3または4であり;
YおよびZは、同一であるかまたは異なり、独立に、O、SまたはNHである。
【請求項44】
前記第2の流れが、第2の脂質をさらに備える、請求項34から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第1および第2の流れの内容物を混合することが、カオス的移流を備える、請求項34から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1および第2の流れの内容物を混合することが、マイクロミキサーを用いて混合することを備える、請求項34から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
核酸カプセル封入効率が、約90〜約100%である、請求項34から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの混合が、障壁によって前記第1の領域では防がれる、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記障壁が、チャネル壁、シース流体または同心チューブである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項34から49のいずれか一項に記載の方法によって製造される脂質粒子。
【請求項51】
核酸をカプセル封入する脂質粒子を製造するためのデバイスであって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の溶液を受け取るための第1の入口と、
(b)前記第1の溶媒中に前記核酸を備える第1の流れを提供するための、前記第1の入口と流体連通している第1の入口マイクロチャネルと;
(c)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の溶液を受け取るための第2の入口と;
(d)前記第2の溶媒中に前記脂質粒子形成材料を備える第2の流れを提供するための、前記第2の入口と流体連通している第2の入口マイクロチャネルと;
(e)前記第1および第2の流れを受け取るための第3のマイクロチャネルであり、層流条件下で前記マイクロチャネルに導入された前記第1および第2の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供するように適合されている第2の領域とを有する第3のマイクロチャネルと
を備えるデバイス。
【請求項52】
前記第3の流れを希釈して、カプセル封入された核酸を有する安定化された脂質粒子を備える希釈流を提供するための手段をさらに備える、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
前記マイクロチャネルが、約20〜約300μmの流体力学直径を有する、請求項51または52に記載のデバイス。
【請求項54】
前記マイクロチャネルの前記第2の領域が、浅浮き彫り構造を備える、請求項51から53のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項55】
前記マイクロチャネルの前記第2の領域が、主要な流れ方向および少なくとも1つの溝または突起部が画定されている1つまたは複数の表面を有し、前記溝または突起部が前記主要な方向と角度を形成する配向を有する、請求項51から54のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項56】
前記第2の領域がマイクロミキサーを備える、請求項51から55のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項57】
前記第1および第2の流れの流速を変更するための手段をさらに備える、請求項51から56のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項58】
前記第3の流れを希釈するための手段が、マイクロミキサーを備える、請求項52から57のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項59】
前記第1の領域において、前記1つまたは複数の第1の流れを、前記1つまたは複数の第2の流れから物理的に分離するのに有効な障壁をさらに備える、請求項52から58のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項1】
(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と;
(b)1つまたは複数の第2の脂質と;
(c)1つまたは複数の核酸と
を備え、固体コアを備える脂質粒子。
【請求項2】
前記カチオン性脂質が、アミノ脂質である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記カチオン性脂質が、DODAC、DOTMA、DDAB、DOTAP、DOTAP−Cl、DC−Chol、DOSPA、DOGS、DOPE、DODAP、DODMA、DODMAおよびDMRIEからなる群から選択される、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
前記カチオン性脂質が、次式を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の粒子:
【化1】
式中、R1およびR2は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC10〜C24アルキル、任意に置換されたC10〜C24アルケニル、任意に置換されたC10〜C24アルキニルまたは任意に置換されたC10〜C24アシルであり;
R3およびR4は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC1〜C6アルキル、任意に置換されたC2〜C6アルケニルもしくは任意に置換されたC2〜C6アルキニルであるか、またはR3およびR4は結合して、4〜6個の炭素原子ならびに窒素および酸素から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有する任意に置換された複素環を形成し;
R5は、存在しないかまたは存在し、存在する場合は水素またはC1〜C6アルキルであり;
m、nおよびpは、同一であるかまたは異なり、独立に、0または1のいずれかであり、ただし、m、nおよびpは、同時に0ではなく;
qは、0、1、2、3または4であり;
YおよびZは、同一であるかまたは異なり、独立に、O、SまたはNHである。
【請求項5】
前記カチオン性脂質が、ジリノレイルアミノ脂質である、請求項1から4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
前記カチオン性脂質が、DLin−KC2−DMAである、請求項1から5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
約30〜約95モルパーセントのカチオン性脂質を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
前記第2の脂質が、PEG修飾されたホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾されたホスファチジン酸、PEG修飾されたセラミド、PEG修飾されたジアルキルアミン、PEG修飾されたジアシルグリセロール、PEG修飾されたジアルキルグリセロールからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
前記第2の脂質が、PEG−c−DOMG、PEG−c−DMAおよびPEG−c−DMGからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項10】
前記第2の脂質がPEG−c−DMAである、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項11】
前記第2の脂質が中性脂質である、請求項1から10のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項12】
前記第2の脂質が、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリンおよびセレブロシドからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項13】
前記第2の脂質が、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリンおよびセレブロシドからなる群から選択される中性脂質である、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項14】
前記第2の脂質が、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項15】
前記第2の脂質がステロールである、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項16】
約1〜約10モルパーセントの第2の脂質を備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項17】
前記核酸が、DNA、RNA、ロックド核酸、核酸類似体またはDNAもしくはRNAを発現できるプラスミドである、請求項1から16のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項18】
前記核酸が、ssDNAまたはdsDNAである、請求項1から17のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項19】
前記核酸が、siRNAまたはマイクロRNAである、請求項1から17のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項20】
前記核酸が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1から19のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項21】
(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と;
(b)中性脂質と;
(c)PEG−脂質と;
(d)ステロールと;
(e)1つまたは複数の核酸と
を備え、固体コアを備える脂質粒子。
【請求項22】
前記カチオン性脂質が、DLin−KC2−DMAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項23】
前記PEG−脂質が、PEG−c−DMAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項24】
前記中性脂質が、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である、請求項21に記載の粒子。
【請求項25】
前記ステロールがコレステロールである、請求項21に記載の粒子。
【請求項26】
前記核酸がsiRNAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項27】
(a)1つまたは複数のカチオン性脂質と;
(b)1つまたは複数の核酸と
からなり、固体コアを備える脂質粒子。
【請求項28】
前記カチオン性脂質が、DLin−KC2−DMAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項29】
前記核酸がsiRNAである、請求項21に記載の粒子。
【請求項30】
核酸を対象に投与するための方法であって、それを必要とする対象に、請求項1から29のいずれか一項に記載の脂質粒子を投与することを備える方法。
【請求項31】
核酸を細胞に導入するための方法であって、細胞を請求項1から29のいずれか一項に記載の脂質粒子と接触させることを備える方法。
【請求項32】
標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節するための方法であって、細胞を請求項1から29のいずれか一項に記載の脂質粒子と接触させることを備え、前記核酸が標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節できる方法。
【請求項33】
対象におけるポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、対象に請求項1から29のいずれか一項に記載の脂質粒子を投与することを備え、前記核酸がポリペプチドの発現をサイレンシングまたは低減できる方法。
【請求項34】
核酸を含有する脂質粒子を製造するための方法であって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れをマイクロ流体デバイスに導入することと、
ここで、前記デバイスは、前記デバイスに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記1つまたは複数の流れの内容物をマイクロ流体ミキサーを用いて混合するための第2の領域とを有する;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを前記デバイスに導入して、層流条件下を流れる第1および第2の流れを提供することと、
ここで、前記デバイスは、前記マイクロチャネルに導入される1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有し、前記脂質粒子形成材料はカチオン性脂質を含み、前記第1および第2の溶媒は同一ではない;
(c)前記デバイスの前記第1の領域から前記デバイスの前記第2の領域に、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れを流すことと;
(d)前記デバイスの前記第2の領域において層流条件下を流れる、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質ナノ粒子を備える第3の流れを提供することと
を備える方法。
【請求項35】
核酸を含有する脂質粒子を製造するための方法であって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の流れをチャネルに導入することと、
ここで、デバイスは、前記チャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する;
(b)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の流れを導入することと、
ここで、前記チャネルは、前記チャネルに導入された1つまたは複数の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記1つまたは複数の流れの内容物を混合するための第2の領域とを有する;
(c)前記チャネルの前記第1の領域から前記チャネルの前記第2の領域に、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れを、前記2つの流れの物理的分離を維持しながら流すことと、
ここで、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れは、前記チャネルの前記第2の領域に到達するまで混合しない;
(d)前記マイクロチャネルの前記第2の領域において層流条件下を流れる、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質ナノ粒子を備える第3の流れを提供することと、
を備える方法。
【請求項36】
前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの内容物を混合することが、前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの濃度または相対混合速度を変更することを備える、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記第3の流れを水性バッファーで希釈することをさらに備える、請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第3の流れを希釈することが、前記第3の流れおよび水性バッファーを第2の混合構造中に流すことを備える、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える前記水性バッファーを透析して、前記第2の溶媒の量を低減することをさらに備える、請求項34から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の溶媒が水性バッファーである、請求項34から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の溶媒が水性アルコールである、請求項34から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記核酸が、DNA、RNA、ロックド核酸、核酸類似体またはDNAもしくはRNAを発現できるプラスミドである、請求項34から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記アミノ脂質が、次式を有する、請求項34から42のいずれか一項に記載の方法:
【化2】
式中、R1およびR2は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC10〜C24アルキル、任意に置換されたC10〜C24アルケニル、任意に置換されたC10〜C24アルキニルまたは任意に置換されたC10〜C24アシルであり;
R3およびR4は、同一であるかまたは異なり、独立に、任意に置換されたC1〜C6アルキル、任意に置換されたC2〜C6アルケニルもしくは任意に置換されたC2〜C6アルキニルであるか、またはR3およびR4は結合して、4〜6個の炭素原子ならびに窒素および酸素から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有する任意に置換された複素環を形成し;
R5は、存在しないかまたは存在し、存在する場合は水素またはC1〜C6アルキルであり;
m、nおよびpは、同一であるかまたは異なり、独立に、0または1のいずれかであり、ただし、m、nおよびpは、同時に0ではなく;
qは、0、1、2、3または4であり;
YおよびZは、同一であるかまたは異なり、独立に、O、SまたはNHである。
【請求項44】
前記第2の流れが、第2の脂質をさらに備える、請求項34から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第1および第2の流れの内容物を混合することが、カオス的移流を備える、請求項34から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1および第2の流れの内容物を混合することが、マイクロミキサーを用いて混合することを備える、請求項34から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
核酸カプセル封入効率が、約90〜約100%である、請求項34から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記1つまたは複数の第1の流れおよび前記1つまたは複数の第2の流れの混合が、障壁によって前記第1の領域では防がれる、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記障壁が、チャネル壁、シース流体または同心チューブである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項34から49のいずれか一項に記載の方法によって製造される脂質粒子。
【請求項51】
核酸をカプセル封入する脂質粒子を製造するためのデバイスであって、
(a)第1の溶媒中に核酸を備える第1の溶液を受け取るための第1の入口と、
(b)前記第1の溶媒中に前記核酸を備える第1の流れを提供するための、前記第1の入口と流体連通している第1の入口マイクロチャネルと;
(c)第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を備える第2の溶液を受け取るための第2の入口と;
(d)前記第2の溶媒中に前記脂質粒子形成材料を備える第2の流れを提供するための、前記第2の入口と流体連通している第2の入口マイクロチャネルと;
(e)前記第1および第2の流れを受け取るための第3のマイクロチャネルであり、層流条件下で前記マイクロチャネルに導入された前記第1および第2の流れを流すように適合されている第1の領域と、前記第1および第2の流れの内容物を混合して、カプセル封入された核酸を有する脂質粒子を備える第3の流れを提供するように適合されている第2の領域とを有する第3のマイクロチャネルと
を備えるデバイス。
【請求項52】
前記第3の流れを希釈して、カプセル封入された核酸を有する安定化された脂質粒子を備える希釈流を提供するための手段をさらに備える、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
前記マイクロチャネルが、約20〜約300μmの流体力学直径を有する、請求項51または52に記載のデバイス。
【請求項54】
前記マイクロチャネルの前記第2の領域が、浅浮き彫り構造を備える、請求項51から53のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項55】
前記マイクロチャネルの前記第2の領域が、主要な流れ方向および少なくとも1つの溝または突起部が画定されている1つまたは複数の表面を有し、前記溝または突起部が前記主要な方向と角度を形成する配向を有する、請求項51から54のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項56】
前記第2の領域がマイクロミキサーを備える、請求項51から55のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項57】
前記第1および第2の流れの流速を変更するための手段をさらに備える、請求項51から56のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項58】
前記第3の流れを希釈するための手段が、マイクロミキサーを備える、請求項52から57のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項59】
前記第1の領域において、前記1つまたは複数の第1の流れを、前記1つまたは複数の第2の流れから物理的に分離するのに有効な障壁をさらに備える、請求項52から58のいずれか一項に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A−15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23】
【図24A−24C】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A−15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23】
【図24A−24C】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2013−510096(P2013−510096A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537274(P2012−537274)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001766
【国際公開番号】WO2011/140627
【国際公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(508282568)ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001766
【国際公開番号】WO2011/140627
【国際公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(508282568)ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (4)
【Fターム(参考)】
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