栽培棚循環移動装置
【課題】複数の栽培棚を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚が干渉しないようにする。
【解決手段】複数の栽培棚2が接続され、その循環経路が環状をなす複数の無端搬送体3A〜3Cと、無端搬送体3A〜3Cを駆動することにより、栽培棚2を循環移動させる駆動機構4とを備える。そして、互いに隣接する栽培棚2が異なる無端搬送体3A〜3Cに接続されており、駆動機構4が複数の無端搬送体3A〜3Cを個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮する。
【解決手段】複数の栽培棚2が接続され、その循環経路が環状をなす複数の無端搬送体3A〜3Cと、無端搬送体3A〜3Cを駆動することにより、栽培棚2を循環移動させる駆動機構4とを備える。そして、互いに隣接する栽培棚2が異なる無端搬送体3A〜3Cに接続されており、駆動機構4が複数の無端搬送体3A〜3Cを個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の栽培棚を循環移動させる栽培棚循環移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物栽培装置に用いられる栽培棚移動装置としては、例えば特許文献1、2に示すように、栽培棚を吊下げて鉛直方向に沿って循環移動させるもの、又は例えば特許文献3に示すように、平面方向に沿って複数の栽培棚を循環移動させるものが考えられている。
【0003】
これらの循環移動装置では、左右1組の共通の無端搬送体に全ての栽培棚を接続している。この構成では、循環経路における屈曲部又は曲線部において互いに隣接する栽培棚が接触しないように、ある程度間隔を空けて配置する必要がある。
【0004】
しかしながら、循環経路上に配置される栽培棚は限られており、上記屈曲部又は曲線部における接触を考慮して栽培棚を配置すると、1つの循環移動装置により循環移動できる栽培棚が一層少なく制限されてしまい、効率良く植物を育成することが難しいという問題がある。
【0005】
また、1つ1つの栽培棚を小型化することによって密に配置して、循環経路における屈曲部又は曲線部において接触しにくくすることも考えられるが、栽培棚が小型化してしまうため、これも植物の育成の効率化に不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開昭58−198232号公報
【特許文献2】 特開昭60−227609号公報
【特許文献3】 特開昭63−49027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、複数の栽培棚を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚が干渉しないようにすることをその主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る栽培棚循環移動装置は、複数の栽培棚を循環移動させる栽培棚循環移動装置であって、複数の栽培棚が接続され、それら栽培棚の循環経路が略同一となるように並設され、その循環経路が環状をなす複数の無端搬送体と、前記複数の無端搬送体を駆動することにより、複数の栽培棚を循環移動させる駆動機構と、を備え、互いに隣接する栽培棚が、異なる無端搬送体に接続されており、前記駆動機構が、前記複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮し、前記複数の無端搬送体の循環経路上において互いに隣接する栽培棚が接触しないようにすることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、複数の栽培棚を複数の無端搬送体に分担させて循環移動するように構成し、その複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮しているので、循環経路上において、互いに隣接する栽培棚が接触することを防止することができる。つまり、循環経路上において、互いに隣接する栽培棚の間隔が狭くなる例えば屈曲部又は曲線部において、その互いに隣接する栽培棚の間隔を拡大することができる。したがって、循環経路上において複数の栽培棚を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚が干渉しないようにすることができる。また、栽培棚を循環移動することにより、光合成のための外部からの光を各栽培棚に万遍無く当てることができるようになる。また、栽培棚を移動させることにより、光合成とともに植物の葉の表面に形成される境界層を外部から強制的に風を当てることなく効率良く乱すことができ、葉に二酸化炭素の供給を効率良く行うことができる。また、栽培棚を移動させることによって、植物が揺れ動くことになり、植物ホルモン(エチレン)の分泌を促進し、日光不足における徒長を防止することもできる。
【0010】
循環経路上において栽培棚が接触しないようにするためには、栽培棚が曲線移動するよりも直進移動することが望ましく、この観点から互いに隣接する栽培棚の接触する可能性のある部分を可及的に少なくするためには、前記複数の無端搬送体の循環経路が略矩形環状をなすものであり、前記駆動機構が、前記複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮し、前記循環経路の四隅において互いに隣接する栽培棚が接触しないようにすることが望ましい。
【0011】
無端搬送体の構成を簡単にするためには、前記無端搬送体が、四隅に配置されたスプロケットによりその循環経路が略矩形環状とされる無端チェーンから構成されていることが望ましい。
【0012】
各無端搬送体が、左右一対の無端チェーンと、当該左右一対の無端チェーンに水平に架け渡され、前記栽培棚を揺動自在に吊持する複数の支持部材と、を備えていることが望ましい。これならば、循環移動において吊り下げられた栽培棚が揺動することになり、植物の葉の表面に形成される境界層を外部から強制的に風を当てることなく効率良く乱すとともに、植物が揺れ動き植物ホルモン(エチレン)の分泌を促進することができるという効果を一層顕著にすることができる。
【0013】
駆動機構の具体的な実施の態様としては、前記駆動機構が、複数の無端搬送体毎の移動速度を調整することによって互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮するものであることが望ましい。ここで移動速度を調整することには、無端搬送体の移動を停止させることを含む。
【0014】
循環経路における四隅における栽培棚の接触を一括して解消できるようにするためには、前記循環経路の各辺において、異なる無端搬送体に接続された栽培棚の配列パターンが循環方向に沿って同一であることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、複数の栽培棚を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚が干渉しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の一実施形態に係る栽培棚循環移動装置の概略構成図である。
【図2】 同実施形態の循環経路の隅部を模式的に示す拡大図である。
【図3】 同実施形態の無端搬送体の構成を示す模式図である。
【図4】 同実施形態の駆動スプロケット及びその近傍の構成を示す模式図である。
【図5】 同実施形態の栽培棚循環移動装置の動作を示す模式図である。
【図6】 同実施形態の栽培棚循環移動装置の動作を示す模式図である。
【図7】 変形実施形態に係る駆動機構を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図8】 変形実施形態に係る駆動機構の第1の歯車機構を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図9】 変形実施形態に係る駆動機構の第2の歯車機構を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図10】 変形実施形態に係る駆動機構の第3の歯車機構を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図11】 その他の実施形態に係る駆動機構を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る栽培棚循環移動装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る栽培棚循環移動装置100は、植物を栽培するための植物栽培装置に用いられるものであって、植物が植えられた1又は複数の栽培用トレーBTが載置される複数の栽培棚2を鉛直平面に沿って立体的に循環移動させるものである。
【0019】
具体的にこのものは、図1に示すように、栽培用トレー載置平板を有する複数の栽培棚2が接続され、それら複数の栽培棚2を搬送するための複数の無端搬送体3と、それら複数の無端搬送体3を回転駆動することにより、複数の栽培棚2を循環移動させる駆動機構4と、前記複数の無端搬送体3及び駆動機構4が設けられる枠体5と、を具備している。なお、本実施形態の栽培棚循環移動装置100は、前記複数の無端搬送体3及びその無端搬送体3に対応する駆動機構4を1つの循環移動機構とすると、この循環移動機構を水平方向(図1の紙面上奥行方向)に1又は複数列有している。また、枠体5の下部には、循環経路において下部に位置する栽培棚2と接触して、当該栽培棚2上に載置された栽培トレーBTに養液を供給するための養水供給機構6が設けられている。
【0020】
本実施形態の無端搬送体3は、図2〜図4に示すように、3つの無端搬送体3A〜3Cからなり、各無端搬送体3A〜3Cに接続された複数の栽培棚2の循環経路が略同一となるように並設されている。また、各無端搬送体3A〜3Cの循環経路は、略矩形環状となるように構成されている。
【0021】
各無端搬送体3A〜3Cは、左右一対の無端チェーン31と、当該左右一対の無端チェーン31に水平に架け渡され、栽培棚2が揺動自在に吊下げられる支持部材32と、を備えている。そして、左右一対の無端チェーン31は、四隅に配置されたスプロケット41によりその形状(循環経路に対応)が略矩形状となるように構成されている(図1参照)。これにより、無端チェーン31に接続される栽培棚2の循環経路が略矩形環状となる。また、支持部材32には、図3に示すように、栽培棚2の例えば長手方向の一端及び他端が吊下げられる。栽培棚2が支持部材32に吊り下げられた状態において、その栽培トレー載置平板の上面は略水平となる。
【0022】
各無端搬送体3A〜3Cにはそれぞれ複数の栽培棚2が接続されている。第1の無端搬送体3Aには、第1の栽培棚群2Aが接続され、第2の無端搬送体3Bには、第2の栽培棚群2Bが接続され、第3の無端搬送体3Cには、第3の栽培棚群2Cが接続される。そして、互いに隣接する栽培棚2が、異なる無端搬送体3A、3B又は3Cに接続されるように配置されている。つまり、図1に示すように、第1の栽培棚群2Aを構成する栽培棚2の隣には、第2又は第3の栽培棚群2B、2Cを構成する栽培棚2が配置される。
【0023】
また、略矩形環状をなす循環経路の各辺において、異なる無端搬送体3A〜3Cに接続された栽培棚2の配列パターンが、循環方向に沿って同一となるように配置されている(図1参照)。例えば、循環経路の各辺において、循環方向に沿った配列パターンが、第1の栽培棚群2Aを構成する栽培棚2、第2の栽培棚群2Bを構成する栽培棚2、第3の栽培棚群2Cを構成する栽培棚2、…の順番となるように1つずつ交互に配置されるように構成されている。このように構成することで、循環経路において、各四隅には、同一の栽培棚群2A、2B又は2Cに属する栽培棚2が差し掛かることになる(図1においては第3の栽培棚群2C)。
【0024】
駆動機構4は、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cを個別に駆動するものであり、その構成は、図1に示すように、各無端搬送体3A〜3C毎に対応して四隅に設けられたスプロケット41と、循環経路の底辺中央部において各無端搬送体3A〜3C毎に対応して設けられた駆動スプロケット42と、当該駆動スプロケット42を回転させる駆動モータ43と、この駆動モータ43を制御するCPU、メモリ等からなる例えばPC等の制御部44と、を備えている。また、この駆動機構4は、各無端搬送体3A〜Cを個別に駆動するために、駆動モータ43の回転が伝達される駆動スプロケット42を切り替える切替機構(不図示)を備えている。
【0025】
なお、図2および図3に示すように、各無端搬送体3A〜3Cに対応するスプロケット41A〜41Cは、その径が異なり、同心円状に設けられて回転中心が同一となるように配置されている。この構成により、第1の無端搬送体3Aの内部に第2の無端搬送体3Bが位置し、第2の無端搬送体3Bの内部に第3の無端搬送体3Cが位置する。これによって、循環移動機構の幅方向のサイズを小型化することができる。また、各無端搬送体3A〜3Cに対応する駆動スプロケット42A〜42Cもその径が異なり、同心円状に設けられて回転中心が同一となるように配置されている。なお、図3等に示す符号45A〜45Cは、無端搬送体3A〜3C毎に設けられ、特に支持部材32をガイドするため、支持部材32の両端に設けられた転動体321に接触するガイドレールである。
【0026】
そして、この駆動機構4は、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3Bおよび第3の無端搬送体3Cを独立して駆動可能であり、前記複数の無端搬送体3A〜3Cの循環経路の四隅において互いに隣接する栽培棚2が接触しないように互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮する。このとき、互いに隣接する栽培棚2が、異なる栽培棚群2A〜2Cに属し、異なる無端搬送体3A〜3Cに接続されていることから、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cを独立して駆動することにより、循環経路上の全ての互いに隣接する栽培棚2の間隔を調整することができる。
【0027】
具体的に駆動機構4は、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cの回転移動速度を調整することによって、互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮する。より詳細には、駆動機構4は、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cのいずれか1つを回転移動させると共に、その他の無端搬送体3A〜3Cを停止することによって、互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮する。
【0028】
次にこのように構成した栽培棚循環移動装置100の動作について図5及び図6を参照して説明する。なお、図5の栽培棚循環移動装置100は、循環経路の各辺に3つの栽培棚2が配置されている場合を示しているが、これに限られない。また、図5において、太線で示した栽培棚群が回転移動し、点線で示されている栽培棚群が停止している。また、表示Aは第1の栽培棚群2A、表示Bは第2の栽培棚群2B、表示Cは第3の栽培棚群2Cを示している。
【0029】
稼働時において、駆動機構4は、図5に示すように、複数の無端搬送体3A〜3Cのそれぞれを順番に移動させる。つまり、駆動機構4は、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cを停止させた状態で、第1の無端搬送体3Aを回転し、第1の無端搬送体3Aに接続された栽培棚2が所定距離移動した後に停止する(図6参照)。ここで、所定距離とは、循環経路の四隅及びその近傍において、互いに隣接する栽培棚2が接触を回避できる距離であり、栽培棚2のサイズまたは四隅での回転半径(スプロケットの半径)等により定まる。
【0030】
次に駆動機構4は、第1の無端搬送体3A及び第3の無端搬送体3Cを停止させた状態で、第2の無端搬送体3Bを回転し、第2の無端搬送体3Bに接続された栽培棚2が所定距離移動した後に停止する。その後、第1の無端搬送体3A及び第2の無端搬送体3Bを停止させた状態で、第3の無端搬送体3Cを回転し、第3の無端搬送体3Cに接続された栽培棚2が所定距離移動した後に停止する。第3の無端搬送体3Cを停止した後、再び第1の無端搬送体3Aを移動させる。このように動作することによって、循環経路の四隅において互いに隣接する栽培棚2の接触を防止することができる。
【0031】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る栽培棚循環移動装置100によれば、複数の栽培棚2を複数の無端搬送体3A〜3Cに分担させて循環移動するように構成し、さらにその複数の無端搬送体3A〜3Cを個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮しているので、循環経路上において、互いに隣接する栽培棚2が接触することを防止することができる。つまり、循環経路上において、互いに隣接する栽培棚2の間隔が狭くなる四隅において、その互いに隣接する栽培棚2の間隔を拡大することができる。したがって、循環経路上において複数の栽培棚2を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚2を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚2が干渉しないようにすることができる。
【0032】
また、栽培棚2を循環移動することにより、光合成のための外部からの光を各栽培棚2に万遍無く当てることができるようになる。また、栽培棚2を移動させることにより、光合成とともに植物の葉の表面に形成される境界層を外部から強制的に風を当てることなく効率良く乱すことができ、葉に二酸化炭素の供給を効率良く行うことができる。
【0033】
さらに、栽培棚2を移動させることによって、植物が揺れ動くことになり、植物ホルモン(エチレン)の分泌を促進し、日光不足における徒長を防止することもできる。
【0034】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0035】
例えば、前記実施形態では、無端搬送体が無端チェーンにより構成されているが、その他無端ワイヤや無端ベルト等を用いて構成しても良い。
【0036】
駆動機構4に関して言うと前記実施形態では、コンピュータ制御により第1〜第3の無端搬送体3A〜3Cを個別に駆動しているが、第1〜第3の無端搬送体3A〜3Cを機械的に駆動するようにしても良い。この場合、駆動機構4の構成としては、前記実施形態に示すように、各無端搬送体3A〜3C毎に対応して四隅に設けられたスプロケット41と、循環経路の底辺中央部において各無端搬送体3A〜3C毎に対応して設けられた駆動スプロケット42と、駆動モータ43との他に、駆動モータ43からの回転を個別に第1〜第3の無端搬送体3A〜3Cに伝達する歯車機構46を備えている。
【0037】
この歯車機構46は、駆動モータ43の駆動軸43Rに連結された第1〜第3のタイミング歯車461A〜461Cと、当該各タイミング歯車461A〜461Cの回転を駆動スプロケット42A〜42Cに伝達する第1〜第3の伝達歯車群462A〜462Cと、を備えている。第1〜第3のタイミング歯車461A〜461Cは、駆動モータ43の駆動軸43Rに各回転軸が一致するように連結された同一径をなすものである。そして、各タイミング歯車461A〜461Cには、栽培棚2の所定移動距離に対応して歯が形成されており、本実施形態では、3つのタイミング歯車を有することから、各タイミング歯車461A〜461Cの歯が1/3円弧上に形成されている。また、それらのタイミング歯車461A〜461Cは、各タイミング歯車461A〜461Cの歯が順に120度ずれるように設けられている。第1〜第3の伝達歯車群462A〜462Cは、各タイミング歯車461A〜461Cと各駆動スプロケット42A〜42Cとの間に設けられて、タイミング歯車461A〜461Cの回転を駆動スプロケット42A〜42Cに伝達する2つの伝達歯車により形成されている。
【0038】
次にこのように構成した駆動機構4の動作について説明する。
駆動モータ43が回転することにより駆動軸43Rに連結された第1〜第3のタイミング歯車461A〜461Cが回転する。
ここで、初めに第1の無端搬送体3Aが回転すると仮定した場合、図8に示すように、第1〜第3のタイミング歯車461A〜461Cが回転して、第1のタイミング歯車461Aの歯が第1の伝達歯車群462Aに噛み合い、第1のタイミング歯車461Aが120度回転するまで第1の伝達歯車群462Aを回転させる。これにより回転した第1の伝達歯車群462Aにより駆動スプロケット42Aが回転し、第1の無端搬送体3Aが所定距離移動する。なお、このとき、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cに動力を伝える第2のタイミング歯車461B及び第3のタイミング歯車461Cは、歯のない部分が伝達歯車群462B、462Cに接触して回転するため、動力が駆動スプロケット42B、42Cに伝達されず、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cは移動しない。
【0039】
上記のとおり、第1のタイミング歯車461Aが120度回転した後に、図9に示すうように、第2のタイミング歯車461Bが第2の伝達歯車群462Bに噛み合い、第2のタイミング歯車461Bが120度回転するまで第2の伝達歯車群462Bを回転させる。これにより回転した第2の伝達歯車群462Bにより駆動スプロケット42Bが回転し、第2の無端搬送体3Bが所定距離移動する。なお、このとき、第1の無端搬送体3A及び第3の無端搬送体3Cに動力を伝える第1のタイミング歯車461A及び第3のタイミング歯車461Cは、歯のない部分が伝達歯車群462A、462Cに接触して回転するため、動力が駆動スプロケット42A、42Cに伝達されず、第1の無端搬送体3A及び第3の無端搬送体3Cは移動しない。
【0040】
次に、第2のタイミング歯車461Bが120度回転した後に、第3のタイミング歯車461Cが第3の伝達歯車群462Cに噛み合い、第3のタイミング歯車461Cが120度回転するまで第3の伝達歯車群462Cを回転させる。これにより回転した第3の伝達歯車群462Cにより駆動スプロケット42Cが回転し、第3の無端搬送体3Cが所定距離移動する。なお、このとき、第1の無端搬送体3A及び第2の無端搬送体3Bに動力を伝える第1のタイミング歯車461A及び第2のタイミング歯車461Bは、歯のない部分が伝達歯車群462A、462Bに接触して回転するため、動力が駆動スプロケット42A、42Bに伝達されず、第1の無端搬送体3A及び第2の無端搬送体3Bは移動しない。
【0041】
このように、第3のタイミング歯車461Cが120度回転した後には、第1のタイミング歯車461Aが第1の伝達歯車群461Aに噛み合うことになり、再び第1の無端搬送体3Aが移動する。以上の動作を繰り返すことによって、複数の栽培棚2が循環移動されることになる。
【0042】
なお、駆動機構4が機械的に無端搬送体3A〜3Cを駆動する方式としては、上記のようにタイミング歯車461を用いる構成の他に、図11に示すように、タイミングチェーン463を用いることもできる。なお、図11においては第1の無端搬送体3Aを移動させるためのタイミングチェーン463のみを示している。これにより、栽培棚2の移動距離を歯車の大きさに制限されない構成とすることができる。このタイミングチェーン463は、伝達歯車群462Aと噛み合って無端搬送体3Aを移動させるための伝達部463Pと、伝達歯車群462Aと噛み合わずその歯車群462Aを回転させない非伝達部463Q(図11中のハッチング部分)とを備えている。なお、非伝達部463Qにおいても内側は動力歯車464と噛み合うように構成していることは言うまでもない。動力歯車464は駆動モータ43の駆動軸に連結されている。
【0043】
また、前記実施形態の栽培棚循環移動装置は、鉛直平面に沿って立体的に循環移動させるものであったが、その他水平方向に沿って循環移動させるもの、鉛直方向及び水平方向を組み合わせた経路上を循環移動させるもの、又は傾斜した平面上を循環移動させるものであっても良い。
【0044】
さらに、前記実施形態の循環経路は、側面視において略矩形状環状をなすものであったが、その他、側面視において円環状、楕円環状又は多角環状であっても良いし、側面視において門形状又は半円形状をなすものであっても良い。
【0045】
その上、前記実施形態の無端搬送体では支持部材に栽培棚を吊下げるように取り付けられているが、その他例えば栽培棚の栽培トレー載置平板の上面が水平となるように連結されていれば良い。
【0046】
加えて、前記実施形態では、3つの無端搬送体を用いて3つの栽培棚群に分けて複数の栽培棚を循環移動させているが、2つ以上の無端搬送体を用い、その無端搬送体に対応する2つ以上の栽培棚群に分割して、各栽培棚群をそれぞれ異なる無端搬送体に接続し、互いに隣接する栽培棚が、異なる無端搬送体に接続されたものであるように配置すれば同様の効果を得ることができる。
【0047】
さらに加えて、前記実施形態の栽培棚は、1又は複数の栽培用トレーが載置されるものであったが、栽培棚に直接植物が植えられるものであっても良い。
【0048】
また、駆動機構に関して言うと、前記実施形態では駆動機構が各無端搬送体を順繰りに回転移動させるように動作して、複数の無端搬送体のいずれか1つのみを回転移動及びするようにしているが、その他、例えば四隅に差し掛かる栽培棚と、その後ろの栽培棚との間隔を広げるように無端搬送体を回転させるものであれば良い。例えば、四隅に差し掛かる栽培棚の直後の栽培棚が接続された無端搬送体のみを停止させて、その他の栽培棚が接続された無端搬送体を回転移動させるようにしても良い。
【0049】
さらに、前記実施形態の駆動機構は、複数の無端搬送体を1つの駆動モータにより回転移動させるものであったが、その他、各無端搬送体毎に駆動モータを設けるようにしても良い。この場合、駆動スプロケットは、別個に設けられることになる。
【0050】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
100 ・・・栽培棚循環移動装置
BT ・・・栽培用トレー
2 ・・・栽培棚
3、3A〜3C・・・無端搬送体
31 ・・・無端チェーン
32 ・・・支持部材
4 ・・・駆動機構
41 ・・・スプロケット
42 ・・・駆動用スプロケット
5 ・・・枠体
6 ・・・養液供給機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の栽培棚を循環移動させる栽培棚循環移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物栽培装置に用いられる栽培棚移動装置としては、例えば特許文献1、2に示すように、栽培棚を吊下げて鉛直方向に沿って循環移動させるもの、又は例えば特許文献3に示すように、平面方向に沿って複数の栽培棚を循環移動させるものが考えられている。
【0003】
これらの循環移動装置では、左右1組の共通の無端搬送体に全ての栽培棚を接続している。この構成では、循環経路における屈曲部又は曲線部において互いに隣接する栽培棚が接触しないように、ある程度間隔を空けて配置する必要がある。
【0004】
しかしながら、循環経路上に配置される栽培棚は限られており、上記屈曲部又は曲線部における接触を考慮して栽培棚を配置すると、1つの循環移動装置により循環移動できる栽培棚が一層少なく制限されてしまい、効率良く植物を育成することが難しいという問題がある。
【0005】
また、1つ1つの栽培棚を小型化することによって密に配置して、循環経路における屈曲部又は曲線部において接触しにくくすることも考えられるが、栽培棚が小型化してしまうため、これも植物の育成の効率化に不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開昭58−198232号公報
【特許文献2】 特開昭60−227609号公報
【特許文献3】 特開昭63−49027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、複数の栽培棚を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚が干渉しないようにすることをその主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る栽培棚循環移動装置は、複数の栽培棚を循環移動させる栽培棚循環移動装置であって、複数の栽培棚が接続され、それら栽培棚の循環経路が略同一となるように並設され、その循環経路が環状をなす複数の無端搬送体と、前記複数の無端搬送体を駆動することにより、複数の栽培棚を循環移動させる駆動機構と、を備え、互いに隣接する栽培棚が、異なる無端搬送体に接続されており、前記駆動機構が、前記複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮し、前記複数の無端搬送体の循環経路上において互いに隣接する栽培棚が接触しないようにすることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、複数の栽培棚を複数の無端搬送体に分担させて循環移動するように構成し、その複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮しているので、循環経路上において、互いに隣接する栽培棚が接触することを防止することができる。つまり、循環経路上において、互いに隣接する栽培棚の間隔が狭くなる例えば屈曲部又は曲線部において、その互いに隣接する栽培棚の間隔を拡大することができる。したがって、循環経路上において複数の栽培棚を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚が干渉しないようにすることができる。また、栽培棚を循環移動することにより、光合成のための外部からの光を各栽培棚に万遍無く当てることができるようになる。また、栽培棚を移動させることにより、光合成とともに植物の葉の表面に形成される境界層を外部から強制的に風を当てることなく効率良く乱すことができ、葉に二酸化炭素の供給を効率良く行うことができる。また、栽培棚を移動させることによって、植物が揺れ動くことになり、植物ホルモン(エチレン)の分泌を促進し、日光不足における徒長を防止することもできる。
【0010】
循環経路上において栽培棚が接触しないようにするためには、栽培棚が曲線移動するよりも直進移動することが望ましく、この観点から互いに隣接する栽培棚の接触する可能性のある部分を可及的に少なくするためには、前記複数の無端搬送体の循環経路が略矩形環状をなすものであり、前記駆動機構が、前記複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮し、前記循環経路の四隅において互いに隣接する栽培棚が接触しないようにすることが望ましい。
【0011】
無端搬送体の構成を簡単にするためには、前記無端搬送体が、四隅に配置されたスプロケットによりその循環経路が略矩形環状とされる無端チェーンから構成されていることが望ましい。
【0012】
各無端搬送体が、左右一対の無端チェーンと、当該左右一対の無端チェーンに水平に架け渡され、前記栽培棚を揺動自在に吊持する複数の支持部材と、を備えていることが望ましい。これならば、循環移動において吊り下げられた栽培棚が揺動することになり、植物の葉の表面に形成される境界層を外部から強制的に風を当てることなく効率良く乱すとともに、植物が揺れ動き植物ホルモン(エチレン)の分泌を促進することができるという効果を一層顕著にすることができる。
【0013】
駆動機構の具体的な実施の態様としては、前記駆動機構が、複数の無端搬送体毎の移動速度を調整することによって互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮するものであることが望ましい。ここで移動速度を調整することには、無端搬送体の移動を停止させることを含む。
【0014】
循環経路における四隅における栽培棚の接触を一括して解消できるようにするためには、前記循環経路の各辺において、異なる無端搬送体に接続された栽培棚の配列パターンが循環方向に沿って同一であることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、複数の栽培棚を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚が干渉しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の一実施形態に係る栽培棚循環移動装置の概略構成図である。
【図2】 同実施形態の循環経路の隅部を模式的に示す拡大図である。
【図3】 同実施形態の無端搬送体の構成を示す模式図である。
【図4】 同実施形態の駆動スプロケット及びその近傍の構成を示す模式図である。
【図5】 同実施形態の栽培棚循環移動装置の動作を示す模式図である。
【図6】 同実施形態の栽培棚循環移動装置の動作を示す模式図である。
【図7】 変形実施形態に係る駆動機構を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図8】 変形実施形態に係る駆動機構の第1の歯車機構を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図9】 変形実施形態に係る駆動機構の第2の歯車機構を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図10】 変形実施形態に係る駆動機構の第3の歯車機構を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図11】 その他の実施形態に係る駆動機構を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る栽培棚循環移動装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る栽培棚循環移動装置100は、植物を栽培するための植物栽培装置に用いられるものであって、植物が植えられた1又は複数の栽培用トレーBTが載置される複数の栽培棚2を鉛直平面に沿って立体的に循環移動させるものである。
【0019】
具体的にこのものは、図1に示すように、栽培用トレー載置平板を有する複数の栽培棚2が接続され、それら複数の栽培棚2を搬送するための複数の無端搬送体3と、それら複数の無端搬送体3を回転駆動することにより、複数の栽培棚2を循環移動させる駆動機構4と、前記複数の無端搬送体3及び駆動機構4が設けられる枠体5と、を具備している。なお、本実施形態の栽培棚循環移動装置100は、前記複数の無端搬送体3及びその無端搬送体3に対応する駆動機構4を1つの循環移動機構とすると、この循環移動機構を水平方向(図1の紙面上奥行方向)に1又は複数列有している。また、枠体5の下部には、循環経路において下部に位置する栽培棚2と接触して、当該栽培棚2上に載置された栽培トレーBTに養液を供給するための養水供給機構6が設けられている。
【0020】
本実施形態の無端搬送体3は、図2〜図4に示すように、3つの無端搬送体3A〜3Cからなり、各無端搬送体3A〜3Cに接続された複数の栽培棚2の循環経路が略同一となるように並設されている。また、各無端搬送体3A〜3Cの循環経路は、略矩形環状となるように構成されている。
【0021】
各無端搬送体3A〜3Cは、左右一対の無端チェーン31と、当該左右一対の無端チェーン31に水平に架け渡され、栽培棚2が揺動自在に吊下げられる支持部材32と、を備えている。そして、左右一対の無端チェーン31は、四隅に配置されたスプロケット41によりその形状(循環経路に対応)が略矩形状となるように構成されている(図1参照)。これにより、無端チェーン31に接続される栽培棚2の循環経路が略矩形環状となる。また、支持部材32には、図3に示すように、栽培棚2の例えば長手方向の一端及び他端が吊下げられる。栽培棚2が支持部材32に吊り下げられた状態において、その栽培トレー載置平板の上面は略水平となる。
【0022】
各無端搬送体3A〜3Cにはそれぞれ複数の栽培棚2が接続されている。第1の無端搬送体3Aには、第1の栽培棚群2Aが接続され、第2の無端搬送体3Bには、第2の栽培棚群2Bが接続され、第3の無端搬送体3Cには、第3の栽培棚群2Cが接続される。そして、互いに隣接する栽培棚2が、異なる無端搬送体3A、3B又は3Cに接続されるように配置されている。つまり、図1に示すように、第1の栽培棚群2Aを構成する栽培棚2の隣には、第2又は第3の栽培棚群2B、2Cを構成する栽培棚2が配置される。
【0023】
また、略矩形環状をなす循環経路の各辺において、異なる無端搬送体3A〜3Cに接続された栽培棚2の配列パターンが、循環方向に沿って同一となるように配置されている(図1参照)。例えば、循環経路の各辺において、循環方向に沿った配列パターンが、第1の栽培棚群2Aを構成する栽培棚2、第2の栽培棚群2Bを構成する栽培棚2、第3の栽培棚群2Cを構成する栽培棚2、…の順番となるように1つずつ交互に配置されるように構成されている。このように構成することで、循環経路において、各四隅には、同一の栽培棚群2A、2B又は2Cに属する栽培棚2が差し掛かることになる(図1においては第3の栽培棚群2C)。
【0024】
駆動機構4は、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cを個別に駆動するものであり、その構成は、図1に示すように、各無端搬送体3A〜3C毎に対応して四隅に設けられたスプロケット41と、循環経路の底辺中央部において各無端搬送体3A〜3C毎に対応して設けられた駆動スプロケット42と、当該駆動スプロケット42を回転させる駆動モータ43と、この駆動モータ43を制御するCPU、メモリ等からなる例えばPC等の制御部44と、を備えている。また、この駆動機構4は、各無端搬送体3A〜Cを個別に駆動するために、駆動モータ43の回転が伝達される駆動スプロケット42を切り替える切替機構(不図示)を備えている。
【0025】
なお、図2および図3に示すように、各無端搬送体3A〜3Cに対応するスプロケット41A〜41Cは、その径が異なり、同心円状に設けられて回転中心が同一となるように配置されている。この構成により、第1の無端搬送体3Aの内部に第2の無端搬送体3Bが位置し、第2の無端搬送体3Bの内部に第3の無端搬送体3Cが位置する。これによって、循環移動機構の幅方向のサイズを小型化することができる。また、各無端搬送体3A〜3Cに対応する駆動スプロケット42A〜42Cもその径が異なり、同心円状に設けられて回転中心が同一となるように配置されている。なお、図3等に示す符号45A〜45Cは、無端搬送体3A〜3C毎に設けられ、特に支持部材32をガイドするため、支持部材32の両端に設けられた転動体321に接触するガイドレールである。
【0026】
そして、この駆動機構4は、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3Bおよび第3の無端搬送体3Cを独立して駆動可能であり、前記複数の無端搬送体3A〜3Cの循環経路の四隅において互いに隣接する栽培棚2が接触しないように互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮する。このとき、互いに隣接する栽培棚2が、異なる栽培棚群2A〜2Cに属し、異なる無端搬送体3A〜3Cに接続されていることから、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cを独立して駆動することにより、循環経路上の全ての互いに隣接する栽培棚2の間隔を調整することができる。
【0027】
具体的に駆動機構4は、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cの回転移動速度を調整することによって、互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮する。より詳細には、駆動機構4は、第1の無端搬送体3A、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cのいずれか1つを回転移動させると共に、その他の無端搬送体3A〜3Cを停止することによって、互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮する。
【0028】
次にこのように構成した栽培棚循環移動装置100の動作について図5及び図6を参照して説明する。なお、図5の栽培棚循環移動装置100は、循環経路の各辺に3つの栽培棚2が配置されている場合を示しているが、これに限られない。また、図5において、太線で示した栽培棚群が回転移動し、点線で示されている栽培棚群が停止している。また、表示Aは第1の栽培棚群2A、表示Bは第2の栽培棚群2B、表示Cは第3の栽培棚群2Cを示している。
【0029】
稼働時において、駆動機構4は、図5に示すように、複数の無端搬送体3A〜3Cのそれぞれを順番に移動させる。つまり、駆動機構4は、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cを停止させた状態で、第1の無端搬送体3Aを回転し、第1の無端搬送体3Aに接続された栽培棚2が所定距離移動した後に停止する(図6参照)。ここで、所定距離とは、循環経路の四隅及びその近傍において、互いに隣接する栽培棚2が接触を回避できる距離であり、栽培棚2のサイズまたは四隅での回転半径(スプロケットの半径)等により定まる。
【0030】
次に駆動機構4は、第1の無端搬送体3A及び第3の無端搬送体3Cを停止させた状態で、第2の無端搬送体3Bを回転し、第2の無端搬送体3Bに接続された栽培棚2が所定距離移動した後に停止する。その後、第1の無端搬送体3A及び第2の無端搬送体3Bを停止させた状態で、第3の無端搬送体3Cを回転し、第3の無端搬送体3Cに接続された栽培棚2が所定距離移動した後に停止する。第3の無端搬送体3Cを停止した後、再び第1の無端搬送体3Aを移動させる。このように動作することによって、循環経路の四隅において互いに隣接する栽培棚2の接触を防止することができる。
【0031】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る栽培棚循環移動装置100によれば、複数の栽培棚2を複数の無端搬送体3A〜3Cに分担させて循環移動するように構成し、さらにその複数の無端搬送体3A〜3Cを個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚2の間隔を相対的に拡縮しているので、循環経路上において、互いに隣接する栽培棚2が接触することを防止することができる。つまり、循環経路上において、互いに隣接する栽培棚2の間隔が狭くなる四隅において、その互いに隣接する栽培棚2の間隔を拡大することができる。したがって、循環経路上において複数の栽培棚2を可及的に密に配置しながらも、それら栽培棚2を循環移動させる際に、互いに隣接する栽培棚2が干渉しないようにすることができる。
【0032】
また、栽培棚2を循環移動することにより、光合成のための外部からの光を各栽培棚2に万遍無く当てることができるようになる。また、栽培棚2を移動させることにより、光合成とともに植物の葉の表面に形成される境界層を外部から強制的に風を当てることなく効率良く乱すことができ、葉に二酸化炭素の供給を効率良く行うことができる。
【0033】
さらに、栽培棚2を移動させることによって、植物が揺れ動くことになり、植物ホルモン(エチレン)の分泌を促進し、日光不足における徒長を防止することもできる。
【0034】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0035】
例えば、前記実施形態では、無端搬送体が無端チェーンにより構成されているが、その他無端ワイヤや無端ベルト等を用いて構成しても良い。
【0036】
駆動機構4に関して言うと前記実施形態では、コンピュータ制御により第1〜第3の無端搬送体3A〜3Cを個別に駆動しているが、第1〜第3の無端搬送体3A〜3Cを機械的に駆動するようにしても良い。この場合、駆動機構4の構成としては、前記実施形態に示すように、各無端搬送体3A〜3C毎に対応して四隅に設けられたスプロケット41と、循環経路の底辺中央部において各無端搬送体3A〜3C毎に対応して設けられた駆動スプロケット42と、駆動モータ43との他に、駆動モータ43からの回転を個別に第1〜第3の無端搬送体3A〜3Cに伝達する歯車機構46を備えている。
【0037】
この歯車機構46は、駆動モータ43の駆動軸43Rに連結された第1〜第3のタイミング歯車461A〜461Cと、当該各タイミング歯車461A〜461Cの回転を駆動スプロケット42A〜42Cに伝達する第1〜第3の伝達歯車群462A〜462Cと、を備えている。第1〜第3のタイミング歯車461A〜461Cは、駆動モータ43の駆動軸43Rに各回転軸が一致するように連結された同一径をなすものである。そして、各タイミング歯車461A〜461Cには、栽培棚2の所定移動距離に対応して歯が形成されており、本実施形態では、3つのタイミング歯車を有することから、各タイミング歯車461A〜461Cの歯が1/3円弧上に形成されている。また、それらのタイミング歯車461A〜461Cは、各タイミング歯車461A〜461Cの歯が順に120度ずれるように設けられている。第1〜第3の伝達歯車群462A〜462Cは、各タイミング歯車461A〜461Cと各駆動スプロケット42A〜42Cとの間に設けられて、タイミング歯車461A〜461Cの回転を駆動スプロケット42A〜42Cに伝達する2つの伝達歯車により形成されている。
【0038】
次にこのように構成した駆動機構4の動作について説明する。
駆動モータ43が回転することにより駆動軸43Rに連結された第1〜第3のタイミング歯車461A〜461Cが回転する。
ここで、初めに第1の無端搬送体3Aが回転すると仮定した場合、図8に示すように、第1〜第3のタイミング歯車461A〜461Cが回転して、第1のタイミング歯車461Aの歯が第1の伝達歯車群462Aに噛み合い、第1のタイミング歯車461Aが120度回転するまで第1の伝達歯車群462Aを回転させる。これにより回転した第1の伝達歯車群462Aにより駆動スプロケット42Aが回転し、第1の無端搬送体3Aが所定距離移動する。なお、このとき、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cに動力を伝える第2のタイミング歯車461B及び第3のタイミング歯車461Cは、歯のない部分が伝達歯車群462B、462Cに接触して回転するため、動力が駆動スプロケット42B、42Cに伝達されず、第2の無端搬送体3B及び第3の無端搬送体3Cは移動しない。
【0039】
上記のとおり、第1のタイミング歯車461Aが120度回転した後に、図9に示すうように、第2のタイミング歯車461Bが第2の伝達歯車群462Bに噛み合い、第2のタイミング歯車461Bが120度回転するまで第2の伝達歯車群462Bを回転させる。これにより回転した第2の伝達歯車群462Bにより駆動スプロケット42Bが回転し、第2の無端搬送体3Bが所定距離移動する。なお、このとき、第1の無端搬送体3A及び第3の無端搬送体3Cに動力を伝える第1のタイミング歯車461A及び第3のタイミング歯車461Cは、歯のない部分が伝達歯車群462A、462Cに接触して回転するため、動力が駆動スプロケット42A、42Cに伝達されず、第1の無端搬送体3A及び第3の無端搬送体3Cは移動しない。
【0040】
次に、第2のタイミング歯車461Bが120度回転した後に、第3のタイミング歯車461Cが第3の伝達歯車群462Cに噛み合い、第3のタイミング歯車461Cが120度回転するまで第3の伝達歯車群462Cを回転させる。これにより回転した第3の伝達歯車群462Cにより駆動スプロケット42Cが回転し、第3の無端搬送体3Cが所定距離移動する。なお、このとき、第1の無端搬送体3A及び第2の無端搬送体3Bに動力を伝える第1のタイミング歯車461A及び第2のタイミング歯車461Bは、歯のない部分が伝達歯車群462A、462Bに接触して回転するため、動力が駆動スプロケット42A、42Bに伝達されず、第1の無端搬送体3A及び第2の無端搬送体3Bは移動しない。
【0041】
このように、第3のタイミング歯車461Cが120度回転した後には、第1のタイミング歯車461Aが第1の伝達歯車群461Aに噛み合うことになり、再び第1の無端搬送体3Aが移動する。以上の動作を繰り返すことによって、複数の栽培棚2が循環移動されることになる。
【0042】
なお、駆動機構4が機械的に無端搬送体3A〜3Cを駆動する方式としては、上記のようにタイミング歯車461を用いる構成の他に、図11に示すように、タイミングチェーン463を用いることもできる。なお、図11においては第1の無端搬送体3Aを移動させるためのタイミングチェーン463のみを示している。これにより、栽培棚2の移動距離を歯車の大きさに制限されない構成とすることができる。このタイミングチェーン463は、伝達歯車群462Aと噛み合って無端搬送体3Aを移動させるための伝達部463Pと、伝達歯車群462Aと噛み合わずその歯車群462Aを回転させない非伝達部463Q(図11中のハッチング部分)とを備えている。なお、非伝達部463Qにおいても内側は動力歯車464と噛み合うように構成していることは言うまでもない。動力歯車464は駆動モータ43の駆動軸に連結されている。
【0043】
また、前記実施形態の栽培棚循環移動装置は、鉛直平面に沿って立体的に循環移動させるものであったが、その他水平方向に沿って循環移動させるもの、鉛直方向及び水平方向を組み合わせた経路上を循環移動させるもの、又は傾斜した平面上を循環移動させるものであっても良い。
【0044】
さらに、前記実施形態の循環経路は、側面視において略矩形状環状をなすものであったが、その他、側面視において円環状、楕円環状又は多角環状であっても良いし、側面視において門形状又は半円形状をなすものであっても良い。
【0045】
その上、前記実施形態の無端搬送体では支持部材に栽培棚を吊下げるように取り付けられているが、その他例えば栽培棚の栽培トレー載置平板の上面が水平となるように連結されていれば良い。
【0046】
加えて、前記実施形態では、3つの無端搬送体を用いて3つの栽培棚群に分けて複数の栽培棚を循環移動させているが、2つ以上の無端搬送体を用い、その無端搬送体に対応する2つ以上の栽培棚群に分割して、各栽培棚群をそれぞれ異なる無端搬送体に接続し、互いに隣接する栽培棚が、異なる無端搬送体に接続されたものであるように配置すれば同様の効果を得ることができる。
【0047】
さらに加えて、前記実施形態の栽培棚は、1又は複数の栽培用トレーが載置されるものであったが、栽培棚に直接植物が植えられるものであっても良い。
【0048】
また、駆動機構に関して言うと、前記実施形態では駆動機構が各無端搬送体を順繰りに回転移動させるように動作して、複数の無端搬送体のいずれか1つのみを回転移動及びするようにしているが、その他、例えば四隅に差し掛かる栽培棚と、その後ろの栽培棚との間隔を広げるように無端搬送体を回転させるものであれば良い。例えば、四隅に差し掛かる栽培棚の直後の栽培棚が接続された無端搬送体のみを停止させて、その他の栽培棚が接続された無端搬送体を回転移動させるようにしても良い。
【0049】
さらに、前記実施形態の駆動機構は、複数の無端搬送体を1つの駆動モータにより回転移動させるものであったが、その他、各無端搬送体毎に駆動モータを設けるようにしても良い。この場合、駆動スプロケットは、別個に設けられることになる。
【0050】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
100 ・・・栽培棚循環移動装置
BT ・・・栽培用トレー
2 ・・・栽培棚
3、3A〜3C・・・無端搬送体
31 ・・・無端チェーン
32 ・・・支持部材
4 ・・・駆動機構
41 ・・・スプロケット
42 ・・・駆動用スプロケット
5 ・・・枠体
6 ・・・養液供給機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の栽培棚を循環移動させる栽培棚循環移動装置であって、
複数の栽培棚が接続され、それら栽培棚の循環経路が略同一となるように並設され、その循環経路が環状をなす複数の無端搬送体と、
前記複数の無端搬送体を駆動することにより、複数の栽培棚を循環移動させる駆動機構と、を備え、
互いに隣接する栽培棚が、異なる無端搬送体に接続されており、
前記駆動機構が、前記複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮し、前記複数の無端搬送体の循環経路上において互いに隣接する栽培棚が接触しないようにする栽培棚循環移動装置。
【請求項2】
前記複数の無端搬送体の循環経路が略矩形環状をなすものであり、
前記駆動機構が、前記複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮し、前記循環経路の四隅において互いに隣接する栽培棚が接触しないようにする請求項1記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項3】
前記無端搬送体が、四隅に配置されたスプロケットによりその循環経路が略矩形環状とされる無端チェーンから構成されている請求項1又は2記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項4】
各無端搬送体が、左右一対の無端チェーンと、当該左右一対の無端チェーンに水平に架け渡され、前記栽培棚を揺動自在に吊持する支持部材と、を備えている請求項1、2又は3記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項5】
前記駆動機構が、複数の無端搬送体毎の移動速度を調整することによって互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮するものである請求項1、2、3又は4記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項6】
前記循環経路の各辺において、異なる無端搬送体に接続された栽培棚の配列パターンが循環方向に沿って同一である請求項1、2、3、4又は5記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項1】
複数の栽培棚を循環移動させる栽培棚循環移動装置であって、
複数の栽培棚が接続され、それら栽培棚の循環経路が略同一となるように並設され、その循環経路が環状をなす複数の無端搬送体と、
前記複数の無端搬送体を駆動することにより、複数の栽培棚を循環移動させる駆動機構と、を備え、
互いに隣接する栽培棚が、異なる無端搬送体に接続されており、
前記駆動機構が、前記複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮し、前記複数の無端搬送体の循環経路上において互いに隣接する栽培棚が接触しないようにする栽培棚循環移動装置。
【請求項2】
前記複数の無端搬送体の循環経路が略矩形環状をなすものであり、
前記駆動機構が、前記複数の無端搬送体を個別に駆動して、互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮し、前記循環経路の四隅において互いに隣接する栽培棚が接触しないようにする請求項1記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項3】
前記無端搬送体が、四隅に配置されたスプロケットによりその循環経路が略矩形環状とされる無端チェーンから構成されている請求項1又は2記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項4】
各無端搬送体が、左右一対の無端チェーンと、当該左右一対の無端チェーンに水平に架け渡され、前記栽培棚を揺動自在に吊持する支持部材と、を備えている請求項1、2又は3記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項5】
前記駆動機構が、複数の無端搬送体毎の移動速度を調整することによって互いに隣接する栽培棚の間隔を相対的に拡縮するものである請求項1、2、3又は4記載の栽培棚循環移動装置。
【請求項6】
前記循環経路の各辺において、異なる無端搬送体に接続された栽培棚の配列パターンが循環方向に沿って同一である請求項1、2、3、4又は5記載の栽培棚循環移動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−87563(P2011−87563A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260427(P2009−260427)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【特許番号】特許第4465541号(P4465541)
【特許公報発行日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(509288389)
【出願人】(509287474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【特許番号】特許第4465541号(P4465541)
【特許公報発行日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(509288389)
【出願人】(509287474)
【Fターム(参考)】
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