説明

案内された音響波により動作する構成素子

導波に適する層システム(9)を有する、案内された音響波により動作する構成素子が提供される。この層システムは、圧電層(1)、その上に配置された電極(3)および誘電層(2)を有し、誘電層は比較的低い音響インピーダンスZaoを備える。層システム(9)は、比較的音響インピーダンスZa2の高い調整層(32,51)を有し、Za2/Zao > 1.5である。調整層は少なくとも1つの間隔領域(55)においては圧電層(1)から離間されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
案内された容積波により動作する構成素子は、例えば刊行物DE10325281A1、US2005/0099091 A1およびUS6046656から公知である。
【0002】
解決すべき課題は、案内された音響波により動作する構成素子が、低い温度特性を特徴とするようにすることである。
【0003】
導波に適する層システムを含む、案内された音響波により動作する構成素子が提供される。この層システムは、圧電層、その上に配置された電極および誘電層を有し、誘電層は比較的低い音響インピーダンスZaoを備える。この層システムは、比較的高い音響インピーダンスZa2を備える調整層を有する。ここでは:Za2/Za0 > 1.5が成り立つ。少なくとも1つのスペース領域では、調整層が圧電層から離間されている。スペース領域とは、調整層と圧電層との間で所定の最小間隔が維持される領域である。
【0004】
この最小間隔は例えば50nmである。有利な変形実施例では最小間隔は80nmである。
【0005】
調整層は圧電層から有利には、音響インピーダンスが1.5 Za0より小さい層によって離間されている。この層は構成に応じて、電極層または誘電層により形成することができる。
【0006】
調整層の音響インピーダンスは有利には圧電層の音響インピーダンスよりも大きい。層システムでは調整層が有利には、もっとも音響インピーダンスの高い層である。
【0007】
電極は第1の電極層を有し、この第1の電極層は圧電層と調整層との間に配置される。第1の電極層の音響インピーダンスZa1に対しては有利には、0.5 < Za1/Za0 < 1.5が成り立つ。
【0008】
有利な実施形態によれば、Za2/Za0 > 2.5である。有利な実施形態によれば、0.5 < Za1/Za0 < 2.5である。
【0009】
調整層は音響波の音響反射に非常に影響する。構成素子に励振すべき音響波の音響反射に対して決定的である調整層の、圧電層に対する高さを調整することにより、音響波の垂直方向エネルギープロフィールが有利に調整される。これにより中央周波数の高い電気機械的結合と低い温度経過に関して構成素子に所定の特性を達成することができる。
【0010】
以下、本発明の構成素子の有利な構成を説明する。ここでは圧電層を簡単にピエゾ層と称する。
【0011】
導電性構成素子構造は、電極とこれに導電的に接続されたコンタクト面とを有する。
【0012】
電極はストライプとして構成されており、これは構成素子内で励振すべき音響波の伝播方向に対して垂直に伸長している。電極構成体は少なくとも1つの電気音響変換器を実現する。音響波は変換器内で順次連続する2つの電極間で励振される。これらの電極は異なる電位に接続されている。
【0013】
層システムはコア領域と2つの外套層を有し、2つの外套層の間にコア領域が配置されている。外套層内での伝搬速度はコア領域内での伝搬速度よりも速い。
【0014】
コア領域とそれぞれの外套層との間の伝搬速度の差は例えば20%またはそれ以上とすることができる。このような層システムの層シーケンスは案内される音響波に対する導波体として適し、音響波は層のアライメントに対して平行に、かつ音響波が励振された変換器のストライプ状電極に対して垂直に伝播する。
【0015】
圧電層は有利には導波体の外套層の1つを形成する。外套層も層結合体を有することができ、この層結合体は有利には比較的薄く、例えばλ以下に構成された圧電層と、別の層、または例えばSi基板である基板を有する。
【0016】
コア領域は変形実施例ではただ1つの層により、すなわち調整層により形成される。コア領域は別の変形実施例では、調整層と少なくとも1つの別の層、例えば音響波速度の低い誘電層を備える層シーケンスを有する。
【0017】
最小の伝播速度は、音響波がもっぱら収束されるコア領域に見られる。この領域は変形実施例では、もっぱら調整層により形成され、この調整層はこの場合、有利には関連する層ないしは貫通する層として構成されている。ここで調整層は上下に配置された複数の部分層を有することができ、電極層を含むか、またはこれを形成することができる。しかし調整層はこの場合でも、例えば電極の形状に相応して構造化することができる。
【0018】
コア領域は別の変形実施例では、調整層と誘電層または少なくとも誘電層の領域を含む。調整層は例えば、電極の形状に相応して構造化された構造を有する。コア領域は例えば調整層と誘電層の領域からなる相互に離間した構造体を有し、この構造体は調整層構造体の間に形成される中間室を充填する。
【0019】
調整層は変形実施例では、少なくとも1つの変換器および/または反射器の領域に、この層のストライプ状の中断部が音響的反射器を形成するように構造化されている。なぜなら調整層の各不連続部でインピーダンス変化が生じ、したがって音響波の少なくとも一部が反射されるからである。この中断部は音響波の伝播方向に対して垂直に伸長しており、電極の上方または電極間に配置することができる。この不連続部配置の周期性は有利には、それぞれの変換器または反射器の電極における周期性と実質的に同じである。
【0020】
誘電層における音響波の伝搬速度は変形実施例では2つの外套層における伝搬速度よりも小さい。誘電層における音響波の伝搬速度は別の変形実施例では調整層におけるよりも大きい。すなわち有利には、調整層が外套層の1つ、またはこの外套層の少なくとも部分層を形成することができるように選択されている。
【0021】
音響波案内領域は導波体のコア領域を形成し、コア領域に対して音響的伝播速度が高い2つの導波体外套層の間に配置されている。伝搬速度は外套層においては、調整層におけるよりも、および場合により誘電層におけるよりも高い。この外套層の一方の層は圧電層により、他方の層は後で説明するカバー層により形成される。
【0022】
調整層は有利な変形実施例では、音響インピーダンスの高い少なくとも1つの金属層を有する。個の金属層は例えばタングステン、モリブデン、金等を含有する。
【0023】
調整層は複数の異なる部分層によって形成することができ、これらの部分層はすべて高い音響インピーダンスを有し、1つの層結合体を形成する。ただ1つの調整層の代わりに複数の調整層を設けることもできる。これらの調整層はインピーダンス Z<Za2 の低い層によって相互に分離されている。複数の調整層がある場合、構成に応じてすべてを導電性またはすべてを電気絶縁性とすることができる。調整層の少なくとも1つを導電性とし、調整層の別の少なくとも1つを電気絶縁性にすることも可能である。
【0024】
誘電層は変形実施例では、比較的に高い音響インピーダンスを有し、これは例えば圧電層の音響インピーダンスよりも20%大きくすることができる。この場合、導波体のコア領域は調整層と誘電層によって形成される。
【0025】
誘電層は変形実施例では、比較的に低い音響インピーダンスZa1を有し、これは例えば調整層の音響インピーダンスよりも少なくとも20%小さい。インピーダンスZa1は圧電層のインピーダンスZa0と実質的に等しいか、または小さい。この場合、導波体の第2の金属層は誘電層によって形成することができる。択一的に導波体の第2の金属層は、誘電層と別の層との結合体を有する。この別の層は高い音響的速度を有し、調整層の音響的速度よりも少なくとも10%高い。
【0026】
コア領域は変形実施例では層シーケンスを有する。この層シーケンスは終端層は低い伝播速度を有し、終端層の間に配置された少なくとも1つの層は比較的に高い伝播速度を有する。このようにして音響波プロフィールのさらなる適合が可能である。これは例えば調整層が貫通して構成され、電気絶縁性の場合である。
【0027】
GBAWにより動作するGBAWの音響エネルギーは、音響波が励振される領域で、すなわち圧電層と電極との境界面でもっぱら収束され、両方向で垂直に減衰する。この減衰は、垂直方向での速度プロフィールを決定する導波構造体によって達成される。
【0028】
調整層を圧電層から所定の間隔をおいて適切に位置決めすることにより、音響波のエネルギー密度分布の最大値、すなわち誘電層と圧電層の境界面から誘電層の内側へスライドすべき材料の最大偏向度が達成される。
【0029】
音響波は一部が圧電層で、一部が誘電層で案内される。エネルギー密度分布は、圧電層を伝播する音響波の成分、ならびに誘電層を伝播する音響波の成分を決定する。
【0030】
音響波のエネルギー密度分布は、圧電層と調整層との間隔に依存する。この間隔を増大することにより、誘電層内の音響波成分を増大することができる。このことにより比較的高い電気機械的結合を保証するエネルギー密度分布を調整することができ、同時に比較的低い温度特性も達成される。
【0031】
調整層は有利には導電性である。調整層は、択一的に電気絶縁性であってもよい。
【0032】
電極は圧電層と誘電層の間に埋め込まれている。誘電層は電極を覆い、変形実施例では圧電層と接続している。
【0033】
別の変形実施例では電極が、絶縁特性を備える調整層によって覆われている。この場合、各電極は間隔領域を規定する。したがって複数の間隔領域が存在する。間隔領域の外側、すなわち電極間にある領域では、調整層が圧電層の上に直接載置している。この場合、電極と調整層を含む層シーケンスが圧電層と誘電層の間に配置される。
【0034】
調整層が導電性であれば、電極は有利には2つの電極層を有し、これらの電極層は調整層によって形成される。この場合、第1の電極層は音響インピーダンスの比較的低い層であり、第2の電極層は音響インピーダンスの比較的高い層である。第2の電極層として用いられる調整層は有利には第1の電極層に相応して構造化されている。
【0035】
第1の電極層は圧電層と第2の電極層との間に配置されており、したがって第2の電極層は圧電層から離間されている。第1の電極層の厚さは有利には少なくとも50nmである。有利な変形実施例ではこの厚さは100nm以上である。
【0036】
第2の電極層は、第1の電極層と誘電層の間に埋め込まれている。
【0037】
第1の電極層は有利には、圧電層の表面に直接配置されている。この第1の電極層は、圧電層と調整層との間の導電性スペーサエレメントとして用いられる。この第1の電極層は上記のように導電性、または別の変形実施例では絶縁性とすることができる。ここで調整層は電極と誘電層の間に配置され、そこに有利には埋め込まれている。
【0038】
択一的に誘電層を、調整層と圧電層の間に配置することもできる。この場合、調整層は誘電層と後で説明するカバー層との間に配置される。
【0039】
調整層は有利には、弾性定数に関して圧電層とは反対の温度特性を有する。これにより構成素子の特に低い温度特性を調整することができる。
【0040】
さらに圧電層と調整層との間の間隔は低い温度特性を達成するために重要である。第1の電極層の高さは、調整層と圧電層の温度特性に応じて有利には、中央周波数に関して構成素子に全体で、例えば最大で25ppb/Kの非常に低い温度特性が調整されるように選択される。
【0041】
比較的軽い第1の電極層は有利にはアルミニウムまたはAl合金、例えばAlCuからなる層を有する。択一的にこのために、音響インピーダンスがZa2より小さい任意の金属を使用することができる。例えば第1の電極層の音響インピーダンスは最大で2 Zaoであり、有利な変形実施例では最大で1.5 Zaoである。
【0042】
比較的重い第2の電極層、または電極の上に配置される絶縁性調整層により、任意の軽い電極層を例えば第1の電極層として使用することができる。なぜなら音響反射に対して十分なインピーダンス変化がとりわけ調整層だけによって補償されるからである。
【0043】
比較的重い第2の電極層は有利には金属性タングステンまたはモリブデンを含有する。択一的に音響インピーダンスが1.5 Zaoより大きい他の金属も考えられる。この関連でとりわけ金または金合金も考えられる。
【0044】
電極はさらに少なくとも1つの別の層、例えば銅層またはTi層を含有することができる。この層は高い導電性を有するか、または圧電層と第1の電極層との間、または第1の電極層と第2の電極層との間の接着促進層として適する。
【0045】
誘電層の厚さは有利には波長のオーダーにある。しかし波長より大きくても良い。この厚さは有利な変形実施例では、例えば約1GHzに対して設計された構成素子の場合、数μmから7μmであるか、または波長の最大で5倍である。
【0046】
調整層の使用により、とりわけ調整層を備える多層電極の使用により、構成素子の温度特性を調整することができるから、誘電層を特に薄く構成することができる。その利点は、構成素子の高さが低いことである。
【0047】
誘電層は、有利にはSiO2を含有している択一的に、弾性定数に関して負の温度特性を有する任意の誘電材料も考えられる。これは例えばTeO2である。
【0048】
圧電層は単結晶圧電サブストレートの形態で存在することができ、その厚さは少なくとも波長の10倍である。圧電サブストレートは有利にはLiTaO3またはLiNbO3を含有し、高い電気機械的結合の得られるカットアングルを備える。
【0049】
圧電層は択一的に薄い成長層により形成することができ、この成長層は比較的厚い非圧電成長サブストレート上に配置される。
【0050】
層システムは変形実施例ではカバー層を有し、このカバー層は有利には非導電性層または絶縁サブストレートにより形成される。誘電層はカバー層と圧電サブストレートの間に配置されている。カバー層は、その厚さが少なくとも波長の10倍であるサブストレートによって形成することができる。
【0051】
カバー層は変形実施例では、ケイ素元素を含有するサブストレートと、絶縁性パッシブ化層とを有し、パッシブ化層によりSiサブストレート内のスルーコンタクト開口部が内張されている。有機ポリマーもカバー層に対する材料として、または部分的に導電性のサブストレートのパッシブ化部として考えられる。
【0052】
前記の構成素子を、概略的でありかつ縮尺通りでない図に基づいて説明する。部分断面図に示されている。
図1は、多層電極を備えるGBAW構成素子を示し、この多層電極は圧電層から離間した調整素を有する。
図2は、図1に示した構成素子の変形実施例を示し、ここでは調整層が2つの比較的軽い電極層の間に配置されている。
図3は、調整層が圧電層と誘電層の間に配置されているGBAW構成素子を示す。
図4は、図3に示した構成素子の変形実施例を示し、ここでは調整層が誘電層とカバー層との間に配置されている。
図5は、調整層が切欠部を有するGBAW構成素子を示す。
図6は、図5に示した構成素子の変形実施例を示し、ここでは切欠部を有する調整層が誘電層とカバー層との間に配置されている。
図7は、GBAW構成素子に使用された変換器の平面図である。
【0053】
図1にはGBAWにより動作し、導波層システム9を備える構成素子が示されている。この構成素子は、圧電層1、この圧電層の上に配置された電極3、誘電層2およびカバー層4を有する。
【0054】
電極3は図7に示した電気音響変換器に配属されており、この変換器では音響波が励振される。音響波は、電極に対して垂直の側方平面内を伝播する。
【0055】
変換器には、相互に導電性に接続された第1の電極と、相互に導電性に接続された第2の電極が交互の順序で配置されている。順次連続する電極の左エッジまたは択一的に右エッジの間隔はピッチdとして示されている。ここで有利比はλ=2dである。
【0056】
複数の順次連続する、場合により導電性に相互に接続された電極は、音響反射器の少なくとも一部も形成する。この反射器内では音響波励振は行われない。反射器は例えば音響トラックの制限に用いられる。しかし音響波に対して部分的に透過性の反射器は変換器内に配置することもできる。反射器の領域内でも、上記の特性を備える調整層を使用するのが有利である。
【0057】
誘電層2は、圧電層1とカバー層4との間に配置されている。この誘電層は電極3を覆い、圧電層1と接続している。したがって電極3は層1,2の間に埋め込まれている。
【0058】
電極はそれぞれ第1の電極層31と第2の電極層32を有し、第2の電極層はタングステン、タングステン合金、または高い音響インピーダンスを有する他の層からなり、調整層を形成する。第1の電極層31は、圧電層1と第2の電極層32との間に配置されている。
【0059】
第1の電極層31の厚さ、または第2の電極層32と圧電層1との間隔は有利には少なくとも35nmである。第2の電極層32の厚さは有利には少なくとも0.04λ、すなわち0.08dである。
【0060】
第2の電極層32は、第1の電極層と同じ基本面積を備える非導電性調整層により置換することができる。非導電性調整層の厚さは有利には少なくとも0.04λ、すなわち0.08dである。
【0061】
図2には、図1に示した構成素子の変形実施例が示されており、ここでは調整層、この場合は第2の電極層32が2つの比較的軽い電極層31、33の間に配置されている。電極層31,33は同じ材料から形成することができる。しかし上側電極層33は、電極層31および32の導電材料とは異なる導電材料を含有することもできる。
【0062】
電極層33は、有利には他の電極層を上回る導電性を有する。
【0063】
この層は有利にはAlおよび/またはCuを含有する。変形実施例ではこの層は第1の電極層31と比較的重い電極層32との間に配置することができる。
【0064】
図3には、GBAW構成素子が示されており、この構成素子では非導電性調整層51が電極を覆っており、それ以外は圧電層1を以て終端している。
【0065】
図4には、GBAW構成素子が示されており、この構成素子では誘電層2が圧電層1と調整層51との間に配置されている。調整層51は、誘電層2とカバー層4との間に配置されている。調整層はこの場合、有利には絶縁性である。
【0066】
調整層32,51は層システム9内で最も高い音響インピーダンスを有する。これに隣接する層(図1と4では圧電層1と誘電層2、図5では誘電層2とカバー層4)は比較的低いインピーダンスを有し、したがってこれらは調整層と共に導波体を形成する。
【0067】
誘電層2の厚さは有利には0.5λと5λの間である。有利な変形実施例ではこの厚さは少なくともλである。この場合、音響波は誘電層内で減衰する。したがってこれに続く層、とりわけカバー層4は所望の音響波伝播に比較的小さな影響しか及ぼさず、したがって導波体には属さない。この場合、層システムは1つのインピーダンス変化だけを備える非対称導波体である。カバー層はこの場合、これは導波の実現には不要であるから、他の構成素子特性の実現のために使用することができる。カバー層は変形実施例では、構成素子のパッシブ化のために、湿気に対する保護として、またはケーシングの安定性を高めるために、構成素子のケーシングの構成部材として使用することができる。
【0068】
図1から4の変形実施例では、カバー層4は例えばSi、ガラス、SiO2、またはSiNを含有することができる。図1,2および3の変形実施例では、誘電層2の厚さが十分であり、その厚さが少なくとも波長と同じであれば、カバー層4を省略することができる。
【0069】
図5にはGBAW構成素子が示されており、この構成素子では調整層51が有利には音響トラック内に切欠部53を有する。この音響トラックには変換器の電極3が配置されている。この切欠部は例えば電極3の上方にあり、有利にはこの電極に沿って伸長する。調整層51のこのようなストライプ状の切欠部は、他の電極の上にも形成することができる。調整層のこの切欠部によって、音響波に対して付加的な反射個所が形成される。このようにして有利には音響反射と音響波のエネルギー分布が調整される。音響波は付加的な反射個所で反射され、これにより同じように構造化された調整層が、その下の電極なしで音響波に対する反射器を形成することができる。この電極さえも反射器では省くことができる。
【0070】
切欠部53は、電極3と同じように有利には実質的に周期的な構成を形成する。構成に応じて、切欠部53は電極の上方に配置することも、または音響波伝播方向を基準にしてずらして、例えば電極間の投影面に配置することもできる。
【0071】
切欠部53を有する調整層51、有利には図6のように誘電層2とカバー層4との間に配置される。
【0072】
調整層32,51は、変形実施例では図1,2,4および5に従い構造化されている。これに対して図3と4の変形実施例では、調整層51は大面積の関連する層として形成されており、変換器の電気音響的なアクティブ領域内に中断部を有していない。
【0073】
調整層32,51は少なくとも1つの間隔領域で圧電層1から離間されている。この間隔領域は、図1,2の変形実施例では調整層32に対して第1の電極層31により規定されている。
【0074】
図3では、調整層51に対する間隔領域55が電極3により規定されている。間隔領域55の外側、すなわち電極3間にある領域では、調整層が圧電層1の上に直接載置している。
【0075】
図4から6では、間隔領域が調整層51に対して誘電層2により規定されている。
【0076】
構成素子の別の実施形態では、層1,2,4および51の少なくとも1つが、電極3の導電接続のために、またはこれと結合された接触面との導電接続のために音響トラックの外で構造化されている。これにより電極は、GBAW構成素子の露出表面にある端子面と導電接続する。構成素子は図面に図示しない別の層を有することができる。
【0077】
少なくとも1つの別の調整層を設けることができる。例えば第1の調整層を電極層32または別の導電層により形成することができる。第2の調整層は有利な変形実施例では第1の調整層から、例えば誘電層2により離間されている。調整層の構成に関しては、図に示した実施形態の任意の組合わせが可能である。
【0078】
第2の調整層は有利には絶縁性である。この調整層は、択一的に導電性であってもよい。
各調整層は基本的に複数の異なる部分層から形成することができる。このことは圧電層1、誘電層2およびカバー層4に対しても当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、多層電極を備えるGBAW構成素子を示し、この多層電極は圧電層から離間した調整素を有する。
【図2】図2は、図1に示した構成素子の変形実施例を示し、ここでは調整層が2つの比較的軽い電極層の間に配置されている。
【図3】図3は、調整層が圧電層と誘電層の間に配置されているGBAW構成素子を示す。
【図4】図4は、図3に示した構成素子の変形実施例を示し、ここでは調整層が誘電層とカバー層との間に配置されている。
【図5】図5は、調整層が切欠部を有するGBAW構成素子を示す。
【図6】図6は、図5に示した構成素子の変形実施例を示し、ここでは切欠部を有する調整層が誘電層とカバー層との間に配置されている。
【図7】図7は、GBAW構成素子に使用された変換器の平面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 圧電層
2 誘電層
3 電極
31 第1の電極層
32 調整層、第2の電極層と同じ
33 別の電極層
4 カバー層
51 調整層、第2の電極層とは異なる
53 調整層内の切欠部
55 間隔層
9 層システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内された音響波により動作する構成素子であって、
側方平面に導波に適した層システム(9)を有し、
該層システムは圧電層(1)と、該圧電層の上に配置された、音響波励振のための電極(3)と、音響インピーダンスZaoの誘電層とを備え、
前記層システム(9)は、音響インピーダンスZa2の調整層(32,51)を備え、
ここで: Za2/Zao > 1.5であり、
少なくとも1つの間隔領域(55)で前記調整層(32,51)は前記圧電層(1)から離間されている、ことを特徴とする構成素子。
【請求項2】
請求項1記載の構成素子であって、
Za2/Zao > 2.5が成り立つ構成素子。
【請求項3】
請求項1または2記載の構成素子であって、
前記電極(3)は第1の電極層(31)を有し、該第1の電極層は前記圧電層(1)と前記調整層(32,51)との間に配置されており、
第1の電極層(31)の音響インピーダンスZa1に対しては、0.5 < Za1/Za0 < 1.5が成り立つ構成素子。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項記載の構成素子であって、
ここで、Za1 < Za2である構成素子。
【請求項5】
請求項3記載の構成素子であって、
前記第1の電極層(31)は少なくとも50nmの厚さである構成素子。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項記載の構成素子であって、
前記電極(3)は前記圧電層(1)と前記誘電層(2)の間に埋め込まれている構成素子。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項記載の構成素子であって、
前記誘電層(2)は、前記調整層(51)と前記圧電層(1)の間に配置されている構成素子。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項記載の構成素子であって、
前記調整素子(32,51)は絶縁性である構成素子。
【請求項9】
請求項8記載の構成素子であって、
前記調整層(51)は、少なくとも1つの間隔領域(55)の外で圧電層(1)と接続されている構成素子。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか一項記載の構成素子であって、
前記調整素子(32,51)は導電性である構成素子。
【請求項11】
請求項3、4または10記載の構成素子であって、
前記調整素子(32,51)は第2の電極層であり、
前記第1の電極層(31)は、前記圧電層(1)と前記第2の電極層との間に配置されている構成素子。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項記載の構成素子であって、
前記誘電層(2)は、弾性定数に関して圧電層(1)とは反対の温度特性を有する構成素子。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項記載の構成素子であって、
前記誘電層(2)はSiO2を含有する構成素子。
【請求項14】
請求項3から13までのいずれか一項記載の構成素子であって、
前記第1の電極層(31)の高さは、構成素子内の温度特性が最大で25ppb/Kであるように調整されている構成素子。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項記載の構成素子であって、
前記層システム(9)はカバー層(4)を有し、
前記誘電層(2)は、前記カバー層(4)と前記圧電層(1)の間に配置されている構成素子。
【請求項16】
請求項15記載の構成素子であって、
前記カバー層(4)は前記誘電層(2)により形成されている構成素子。
【請求項17】
請求項15記載の構成素子であって、
前記カバー層(4)はケイ素元素を含有する構成素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−516968(P2009−516968A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541582(P2008−541582)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/DE2006/002034
【国際公開番号】WO2007/059741
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】