説明

案内レール調整冶具及び案内レール調整方法

【課題】案内レール調整冶具において、調整可能案内レールの位置調整を効率よく行えるようにすることである。
【解決手段】案内レール調整冶具70は、第1部材72と第2部材74とねじ部材76とを備える。第1部材72は、駆動ローラの軸方向片面に突き当てる第1平面部84と、調整可能案内レールの片面に突き当てる第2平面部86とを含む。第2部材74は、駆動ローラの軸方向他面に突き当てる第4平面部98を含む。ねじ部材76は、第1部材72に設けられたねじ孔にねじ結合する。第2部材74は、ねじ部材76の軸部110が挿通されるガイド孔を有する。第1部材72に、第1部材72の第2部材74に対する変位を案内するガイド部92を設ける。ねじ孔に対し軸部110のねじ部を進行させることにより、第1平面部84及び第4平面部98の間で駆動ローラを挟持可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの移動手すりを押圧する駆動ローラに対し、移動手すりの進行方向に隣り合う調整可能案内レールを、駆動ローラに対し位置調整するための案内レール調整冶具と、案内レール調整冶具を用いた案内レール調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの一種であるエスカレータは、トラスに設けられた移送手段により複数の踏段が移動自在に支持されており、踏段の両側には欄干が設けられている。また、欄干の上面等、表面には、踏段の移動に伴って循環移動する移動手すりが設けられている。移動手すりは、下側部分が欄干内側に案内されている。移動手すりは、ゴム等の材料により構成され、トラスに固定され、鉄等の金属等により構成された固定案内レールにより移動が案内されている。また、移動手すりは、欄干下側で、駆動ローラと押圧ローラとにより厚さ方向に押圧され、駆動ローラが、スプロケット、チェーン等を介して駆動装置により駆動されている。
【0003】
このように移動手すりは、欄干下側で駆動ローラに押圧される。このため、固定案内レールは、少なくとも駆動ローラ配置部分で途切れており、固定案内レールの長さ方向端部に隣接するように、「端末ガイド」と呼ばれ調整可能案内レールが固定されている。したがって、調整可能案内レールは、移動手すりの進行方向に隣り合っている。調整可能案内レールも、移動手すりを案内する機能を有する。調整可能案内レールは、樹脂製で、トラスに固定の固定部に対しボルト結合部によりねじ結合されている。
【0004】
調整可能案内レールは、樹脂製であるため、長期間の使用により摩耗し、交換の必要が生じる場合がある。また、調整可能案内レールの摩耗等により、移動手すりが進行方向に対し直交方向にずれる可能性もある。このような場合に、エスカレータの保守点検を行う作業者が、新しい調整可能案内レールを位置調整しながら固定部に固定したり、調整可能案内レールを位置調整する場合がある。
なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−149411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、上記のように、作業者が新しい調整可能案内レールを位置調整しながら固定部に固定したり、調整可能案内レールを位置調整する場合、その位置調整が誤っていると、調整可能案内レールの取付後、移動手すりを循環移動させた場合に、移動手すりが駆動ローラの軸方向側面に接触してしまう可能性がある。移動手すりが駆動ローラに接触することは、移動手すりの走行抵抗が大きくなったり、移動手すりの摩耗が生じる等のため、好ましくない。一方、案内レールの配置場所はトラスに設けられたデッキボード内の狭い空間で奥側が暗くなっており、奥側が見えにくい状況となっている。このため、従来は、駆動ローラの作業者から見て手前側面や奥側面と、調整可能案内レールの片側面との間の間隔を適切値に調整しながら作業を行っているが、このような作業は熟練や高い技術を要し、熟練度の低い作業者には時間がかかる作業となっている。このため、調整可能案内レールの調整を効率よく行える案内レール調整冶具及び案内レール調整方法の実現が望まれている。特許文献1には、このような調整可能案内レールの位置調整を効率よく行える手段は記載されていない。
【0007】
本発明の目的は、案内レール調整冶具及び案内レール調整方法において、調整可能案内レールの位置調整を効率よく行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る案内レール調整冶具は、乗客コンベアの移動手すりを押圧する駆動ローラに対し、移動手すりの進行方向に隣り合う調整可能案内レールを、駆動ローラに対し位置調整するための案内レール調整冶具であって、駆動ローラの軸方向片面に突き当てる第1駆動ローラ突き当て平面部と、第1駆動ローラ突き当て平面部と平行で、調整可能案内レールの片面に突き当てる案内レール突き当て平面部とを含む第1部材と、第1駆動ローラ突き当て平面部に対し平行で、駆動ローラの軸方向他面に突き当てる第2駆動ローラ突き当て平面部を含む第2部材と、ねじ部が設けられた軸部と、軸部の第2部材側に設けられた掴み部とを有するねじ部材と、第1部材及び第2部材の一方の部材に設けられ、ねじ部がねじ結合されるねじ孔と、第1部材及び第2部材の他方の部材に設けられ、軸部が挿通されるガイド孔と、第1部材の第2部材に対する変位を、ねじ部材の第1部材または第2部材に対する進行方向と平行な方向に案内するガイド部と、を備え、掴み部を回転し、ねじ孔に対しねじ部を進行させることにより、第1駆動ローラ突き当て平面部及び第2駆動ローラ突き当て平面部の間で駆動ローラを挟持可能としていることを特徴とする案内レール調整冶である。
【0009】
本発明に係る案内レール調整冶具によれば、調整可能案内レールの位置調整を行う際に、作業者から見て、駆動ローラの奥側面と調整可能案内レールの奥側側面との間の寸法を、要求される寸法に正確に規制できる。このため、駆動ローラの奥側面と、調整可能案内レールの奥側面との間の寸法等、駆動ローラに対する調整可能案内レールの、駆動ローラの軸方向に関する他の部分の寸法も、要求される寸法に正確に規制できる。このため、調整可能案内レールにより案内される移動手すりが、移動手すりの循環移動の際に駆動ローラに接触することがない。しかも、このような作業は、作業者の高い熟練度を要することなく、作業者が容易に短時間で行うことができる。このため、調整可能案内レールの位置調整を効率よく行える。
【0010】
また、本発明に係る案内レール調整冶具において、好ましくは、第1部材は、第1駆動ローラ突き当て平面部に対し直交する平面であって、駆動ローラの外周面に突き当てる第3駆動ローラ突き当て平面部を含む。
【0011】
また、本発明に係る案内レール調整冶具において、好ましくは、第1部材の案内レール突き当て平面部は、第1駆動ローラ突き当て平面部に対し、ねじ部材の軸方向に関して掴み部側にずれている。
【0012】
また、本発明に係る案内レール調整冶具において、好ましくは、ねじ部材は、第2部材または第1部材の、軸部の軸方向に向いた側面に突き当て可能なストッパを有する。
【0013】
また、本発明に係る案内レール調整冶具において、好ましくは、第1部材及び第2部材は、分離可能としている。
【0014】
また、本発明に係る案内レール調整方法は、上記の本発明に係る案内レール調整冶具を用いて、駆動ローラに対し調整可能案内レールを位置調整し、調整可能案内レールをトラスに固定された取り付け部に結合する案内レール調整方法であって、案内レール調整冶具の第1駆動ローラ突き当て平面部を駆動ローラの軸方向片面に突き当てた状態で、ねじ孔に対しねじ部を進行させることにより、第1部材と第2部材との間に駆動ローラを挟持させる駆動ローラ挟持工程と、案内レール突き当て平面部を調整可能案内レールの片面に突き当てるように、調整可能案内レールの位置調整をしながら、調整可能案内レールを取り付け部に結合する案内レール結合工程とを備えることを特徴とする案内レール調整方法である。
【0015】
また、本発明に係る案内レール調整方法は、上記の本発明に係る案内レール調整冶具を用いて、駆動ローラに対し調整可能案内レールを位置調整し、調整可能案内レールをトラスに固定された取り付け部に結合する案内レール調整方法であって、案内レール調整冶具の第1駆動ローラ突き当て平面部を駆動ローラの軸方向片面に突き当て、案内レール突き当て平面部を調整可能案内レールの片面に突き当てた状態で、ねじ孔に対しねじ部を進行させることにより、第1部材と第2部材との間に駆動ローラ及び調整可能案内レールを挟持させる駆動ローラ案内レール挟持工程と、調整可能案内レールを取り付け部に結合する案内レール結合工程とを備えることを特徴とする案内レール調整方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る案内レール調整冶具及び案内レール調整方法によれば、調整可能案内レールの位置調整を効率よく行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の案内レール調整冶具により調整可能案内レールを位置調整するエスカレータを示す略図である。
【図2】図1のエスカレータの上部を、一部断面にして示す拡大図である。
【図3】図2の断面で示した部分の拡大図である。
【図4】図3を斜め上方から斜め下方に見て、一部を省略して示す図である。
【図5】図4のA部拡大図である。
【図6】トラスに固定した調整可能案内レールと、移動レールとを示す、図5のB−B断面に対応する図である。
【図7】作業者が、調整可能案内レールの位置調整をしている様子を示す図である。
【図8】第1の実施の形態の案内レール調整冶具を示す斜視図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】本発明に係る第2の実施の形態の案内レール調整冶具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図9は、本発明の第1の実施の形態を示している
【0019】
まず、図1から図6を用いて、本実施の形態の案内レール調整冶具により調整可能案内レールを位置調整するエスカレータと、その細部とを説明する。図1に示すように、エスカレータは、建物内の上側階床と下側階床とにかけわたすようにトラス10を設けており、トラス10の上部に左右方向(図1の表裏方向)に離れた一対の欄干12を設けている。トラス10に、無端状のチェーン(図示せず)により連結された図示しない複数の踏段を移動自在に設けている。
【0020】
各欄干12の表面に、鉄等の金属等により構成された固定案内レール14が固定されており、固定案内レール14により、無端状の移動手すり16の移動が案内されている。移動手すり16は、断面C字形状を有する。また、移動手すり16は、固定案内レール14にしたがって、欄干12下側のデッキボード18内にも案内され、欄干12下側で、駆動ローラと押圧ローラとにより厚さ方向に押圧され、駆動ローラが、駆動装置により、スプロケット、チェーン等により構成する駆動機構を介して駆動されている。
【0021】
すなわち、図2、図3に示すように、トラス10の上側階床側の端部に、駆動装置を構成するモータ20と、モータ20の駆動を制御する制御盤(図示せず)とが設けられている。モータ20の回転軸に駆動スプロケット22が固定され、駆動スプロケット22と中間スプロケット24とにチェーン26がかけ渡されている。また、中間スプロケット24に一対の第2中間スプロケット28が固定されており、一対の第2中間スプロケット28からトラス10の左右方向(図2、図3の表裏方向)両側に一対設けられた設けられた手すり駆動装置30を構成する複数の従動スプロケット32及びテンションスプロケット34にチェーン36がかけ渡されている。
【0022】
各従動スプロケット32と同軸に駆動ローラ38が設けられており、駆動ローラ38が移動手すり16の厚さ方向片側(図2、図3の上側)に配置されている。また、駆動ローラ38と移動手すり16を介して対向するように、押圧ローラ40が、移動手すり16の厚さ方向他側(図2、図3の下側)に配置されている。駆動ローラ38は、トラス10に回転可能に支持されており、押圧ローラ40は、トラス10に回転可能で、かつ、移動手すり16の厚さ方向に変位可能に、トラス10に支持されている。各押圧ローラ40は、図示しない板ばね等の弾性部材により移動手すり16側に押圧されている。このため、モータ20が駆動されることにより、駆動ローラ38は駆動され、移動手すり16が循環駆動される。各手すり駆動装置30は、複数の従動スプロケット32、テンションスプロケット34、チェーン36、駆動ローラ38、及び押圧ローラ40を備える。このような手すり駆動装置30は、エスカレータの全長が長い場合には、移動手すり16の長さ方向複数個所を押圧し駆動するために、複数個所に設けられる場合もある。
【0023】
このように移動手すり16の少なくとも一部は、駆動ローラ38と押圧ローラ40とで押圧されるため、少なくともこの押圧部で固定案内レール14は途切れている。すなわち、図4に示すように、移動手すり16(図2、図3参照)の厚さ方向に見た場合に、固定案内レール14の不連続部42に手すり駆動装置30が配置されている。
【0024】
また、固定案内レール14と不連続部42との間に、端末ガイドと呼ばれる調整可能案内レール44が配置されている。すなわち、固定案内レール14の端部と対向するように調整可能案内レール44が設けられている。図5に示すように、調整可能案内レール44は、移動手すり16を押圧する駆動ローラ38に対し、移動手すり16の走行方向に隣り合っている。調整可能案内レール44は、固定案内レール14(図4)とともにトラス10(図1、図2)に固定している。
【0025】
具体的には、図6に示すように、トラス10に固定された取り付け部である取付板部46に、ボルト、ナット等を含むボルト結合部48により、調整可能案内レール44を結合固定している。調整可能案内レール44は、樹脂製で、矩形の平板形状を有する基板部52と、基板部52の幅方向(図6の左右方向、図5の上下方向)2個所位置から立設する係止板部54,56とを備える。係止板部54,56は、断面L字形で、基板部52の長さ方向(図6の表裏方向、図5の左右方向)全長にわたって設けられている。係止板部54,56の先端部は、係止板部54,56同士で互いに近づく方向に直角に曲げられた形状を有する。係止板部54,56は、ボルト結合部48の一端部(図6の下端部)に設けた、ナット等により構成する2つの片側挟持部58,60により厚さ方向両側から挟持されている。
【0026】
ボルト結合部48の他端部(図6の上端部)に設けた、ナット等により構成する2つの他側挟持部62,64により取付板部46を挟持することにより、取付板部46に調整可能案内レール44を結合固定している。ボルト結合部48を構成する軸部65は、取付板部に設けた孔部66に挿通させている。孔部66の調整可能案内レール44の基板部52の幅方向に関する寸法は、孔部66に挿通させた軸部65の寸法よりも大きくしている。このため、調整可能案内レール44を上記幅方向(図6の左右方向、図5の上下方向)にずらして位置調整しながら、取付板部46に固定することが可能となる。
【0027】
このような調整可能案内レール44には、図5、図6に示すように移動手すり16が下側から覆うように設けられる。この状態で、移動手すり16の幅方向(図5の上下方向、図6の左右方向)端部の内面は、調整可能案内レール44の基板部52の幅方向両端部に対向する。このため、移動手すり16の幅方向の移動は、調整可能案内レール44の基板部52により規制される。また、移動手すり16の開口端縁である、2つの端縁部68は、互いに幅方向に対向している。このため、図7に示すように、エスカレータの保守点検等を行う作業者が、調整可能案内レール44の位置調整を行いつつ、調整可能案内レール44を取付板部46に結合する際には、位置調整後に、調整可能案内レール44により案内される移動手すり16(図5、図6)が循環移動した場合に、移動手すり16の各端縁部68(図5、図6)が駆動ローラ38の軸方向端面に接触しないよう考慮する必要がある。移動手すり16の各端縁部68が駆動ローラ38の軸方向端面に接触することは、移動手すり16の走行抵抗が大きくなったり、移動手すり16の摩耗が生じる等のため、好ましくない。
【0028】
ただし、図7に示すように、調整可能案内レール44と駆動ローラ38とを配置する部分の空間は欄干下側のトラス10に設けられたデッキボード18内の狭い空間で、しかも奥側が暗い場合となっていることが多く、調整作業中に、調整可能案内レール44と駆動ローラ38との奥側面の位置関係を正確に確認することは難しい。このために、従来は、位置調整を行う際に、作業者から見て、駆動ローラ38の手前側面や奥側面と調整可能案内レール44の片側面との間の間隔を適切値に調整しながら作業を行っているが、このような作業は熟練や高い技術を要し、熟練度の低い作業者には時間がかかる作業となっている。このため、調整可能案内レール44の調整を効率よく行える案内レール調整冶具及び案内レール調整方法の実現が望まれている。
【0029】
これに対して、本実施の形態では、図8、図9に示す案内レール調整冶具70を用いて調整可能案内レール44の調整を行っている。すなわち、案内レール調整冶具70は、第1部材72と、第1部材72にスライド可能に支持された第2部材74と、ねじ部材76とを含む。第1部材72は、互いに直角に曲げ形成または結合された、それぞれ平板状の第1板部78及び第2板部80と、第2板部80の長さ方向一端寄りに結合された平板状の第3板部82とを備える。第1板部78及び第3板部82は、互いに平行に配置されている。
【0030】
第1板部78の厚さ方向片側面は、駆動ローラ38の軸方向片面である奥側面に突き当てる第1駆動ローラ突き当て平面部である第1平面部84を構成している。また、第3板部82の厚さ方向片側面は、第1平面部84と平行で、調整可能案内レール44の奥側面である片面に突き当てる案内レール突き当て平面部である第2平面部86を構成している。第2平面部86は、調整可能案内レール44の奥側(図9の上側)に配置される係止板部54の片面である、奥側面88に突き当てられる。なお、奥側、手前側は、作業者が調整可能案内レール44の位置調整を行う際の奥側、手前側をいう(以下、同じとする)。
【0031】
また、第2板部80の厚さ方向片側面は、第1平面部84に対し直交する平面であって、駆動ローラ38の外周面に突き当てる第3駆動ローラ突き当て平面部である、第3平面部90を構成している。また、第2板部80の片側(図8の下側)端部に、第2部材74の移動を案内するための一対のガイド部92を設けている。第1部材72は、例えば金属板等により構成している。
【0032】
第2部材74は、互いに直角に曲げ形成または結合された、それぞれ平板状の第4板部94及び第5板部96を備える。第4板部94は、第1部材72の第2板部80と重ね合わせるように対向配置し、第1部材72に設けた一対のガイド部92(図8)により第1部材72に対する移動を案内されている。第5板部96は、第1部材72の第1板部78に対し平行に配置されている。第5板部96の、第1板部78に対向する、厚さ方向片側面は、第1平面部84に対し平行で、駆動ローラ38の手前側面である、軸方向他面に突き当てる第2駆動ローラ突き当て平面部である、第4平面部98を構成している。
【0033】
また、第4板部94の長さ方向中間部に窓部100を設けるとともに、第4板部94の長さ方向に離れた2個所位置に片側挿通板部102と他側挿通板部104とを設けている。各挿通板部102は、第4板部94に対し直交する方向に伸びている。各挿通板部102,104に、ガイド孔を設けている。
【0034】
また、第1部材72を構成する第2板部80の長さ方向一部で、窓部100内側に対向する部分から、挿通板部102,104側に突出する突出板部106を設けている。突出板部106は、第2板部80に対し直交する方向に伸びている。突出板部106に貫通するねじ孔108を設けている。第2部材74は、例えば金属板等により構成している。
【0035】
また、ねじ部材76は、軸方向中間部にねじ部が設けられた軸部110と、軸部110の第2部材74側の端部に固定された掴み部112とを有する。図9に示すように、ねじ部は、軸部110の矢印Pで示す範囲部分に設けており、軸部110の先端部及び掴み部112側部分に、それぞれ外周面が円筒状の柱部を設けている。各柱部は、挿通板部102,104に設けたガイド孔に挿通し、ねじ部は、第1部材72に設けた突出板部106のねじ孔108に挿通し、ねじ結合している。
【0036】
なお、軸部110に設けた2つの柱部の一方または両方を省略し、省略した部分をねじ部とすることもできる。例えば、軸部110の全体をねじ部とすることもできる。このように構成するため、第1部材72に設けたガイド部92(図8)は、第1部材72の第2部材74に対する変位を、ねじ部材76の第1部材72及び第2部材74に対する進行方向(図9の上下方向)と平行な方向に案内する。また、第1部材72の第2平面部86は、第1平面部84に対し、ねじ部材76の軸方向に関して掴み部112側にずれている。
【0037】
また、掴み部112を回転し、ねじ孔108に対しねじ部を進行させることにより、第1平面部84及び第4平面部98の間で駆動ローラ38を、軸方向両側から挟持可能としている。また、軸部110の先端部に、第2部材74の、軸部110の軸方向に向いた側面に突き当て可能なストッパ114を設けている。ストッパ114は、例えば、軸部110にねじ結合したナット等のねじ部材により構成することもできる。このように構成した場合、第1部材72及び第2部材74は、軸部110からストッパ114を取り外すことで、分離可能となる。なお、第1部材72の第2板部80と、第2部材74の第4板部94との間に隙間を設けることもできる。
【0038】
このような案内レール調整冶具70を用いて、駆動ローラ38に対し調整可能案内レール44を位置調整し、調整可能案内レール44をトラス10(図1等)に固定された取付板部46(図6)に結合する案内レール調整方法は、駆動ローラ挟持工程と、案内レール結合工程とを備える。すなわち、駆動ローラ挟持工程は、作業者が、案内レール調整冶具70の第1部材72が有する第1平面部84を、駆動ローラ38の軸方向片面である奥側面116に重ね合わせるように突き当てる。また、第3平面部90を、駆動ローラ38の外周面に突き当てる。そして、この状態で、掴み部112を回転させ、ねじ孔108に対し軸部110に設けたねじ部を奥側に進行させる、すなわち、軸部110に対しねじ孔108を手前側に進行させることにより、ストッパ114が挿通板部102に押し付けられた状態で、この挿通板部102と突出板部106との間隔を広げ、第1部材72の第1板部78と第2部材74の第5板部96との間で駆動ローラ38を、軸方向両側から挟持する。
【0039】
また、その後に行う、案内レール結合工程は、第1部材72が有する第2平面部86を、調整可能案内レール44の奥側の係止板部54の奥側面88に重ね合わせるように突き当てる、いわゆるジャストタッチで突き当てるように、調整可能案内レール44の位置調整をする。この場合、調整可能案内レール44の取付板部46に対する結合をボルト結合部48(図6)等により緩めて、位置調整を行う。そしてこの位置調整をしながら、調整可能案内レール44を取付板部46に結合固定する。取付板部46に対する調整可能案内レール44の結合固定後、案内レール調整冶具70で、掴み部112を駆動ローラ38に対する挟持工程時と逆方向に回転させ、逆方向に軸部110をねじ孔108に対し進行させることにより、第1部材72の第1板部78と、第2部材74の第5板部96との間隔を広げて、案内レール調整冶具70を駆動ローラ38から取り外す。
【0040】
このような案内レール調整冶具70及び案内レール調整方法によれば、調整可能案内レール44の位置調整を行う際に、作業者から見て、駆動ローラ38の奥側面116と調整可能案内レール44の奥側の係止板部54の奥側面88との間の寸法L1を、要求される寸法に正確に規制できる。このため、駆動ローラ38の奥側面116と、調整可能案内レール44の基板部52の奥側面118との間の寸法L2等、駆動ローラ38に対する調整可能案内レール44の、駆動ローラ38の軸方向に関する他の部分の寸法も、要求される寸法に正確に規制できる。例えば寸法L2は、要求される寸法(例えば2〜3mm)に正確に規制できる。このため、基板部52により幅方向の移動を規制される移動手すり16の互いに対応する2つの端縁部68が、移動手すり16の循環移動の際に駆動ローラ38の軸方向両端面に接触することがない。
【0041】
しかも、このような作業は、作業者の高い熟練度を要することなく、作業者が容易に短時間で行うことができる。このため、調整可能案内レール44の位置調整を効率よく行える。特に、調整可能案内レール44が新品の場合には、寸法L1と、寸法L1に関係する他の寸法(L2等)がより精度よく規制される。このため、本実施の形態は、調整可能案内レール44を新品に交換する場合に有効である。なお、掴み部112の軸方向端面を第2部材74の手前側の挿通板部104に押し付けた状態でねじ部材76を回転させ、第1部材72と第2部材74との間で駆動ローラ38を挟持することもできる。この場合には、軸部110に設けたストッパ114を省略できる。
【0042】
また、ねじ部材76は、第2部材74の、軸部110の軸方向に向いた側面に突き当て可能なストッパ114を有する。このため、ねじ部材76が案内レール調整冶具70から不用意に脱落することを防止できるとともに、ストッパ114により第2部材74を押圧できる。
【0043】
また、第1部材72及び第2部材74を分離可能とした場合には、案内レール調整冶具70の持ち運び等、取り扱い作業が容易になる。
【0044】
なお、ねじ部材76をねじ結合するためのねじ孔は、第2部材74に設け、ねじ部材76案内用のガイド孔を第1部材72に設けることもできる。また、ねじ部材76に設けるストッパは、第2部材74または第1部材72の、軸部110の軸方向に向いた側面に突き当て可能であればよい。
【0045】
[第2の発明の実施の形態]
図10は、本発明に係る第2の実施の形態の案内レール調整冶具を示す断面図である。本実施の形態の案内レール調整冶具70aは、上記の第1の実施の形態の案内レール調整冶具70(図8、図9)において、第1部材72を構成する第2板部80に突出板部106(図8、図9)を形成せず、第3板部82にねじ部材76の軸部110に設けたねじ部をねじ結合するためのねじ孔120を形成している。
【0046】
また、第2部材74は、互いに直角に曲げ形成または結合された、それぞれ平板状の第4板部94及び第5板部96と、第4板部94に、第4板部94に対し直交する方向に結合された第6板部122とを備える。第6板部122は、第1部材72の第3板部82と平行に配置している。第2部材74の第4板部94は、第1部材72の第2板部80に対しガイド部92(図8参照)によりスライド可能に案内している。また、第6板部122にねじ部材76の軸部110を挿通するためのガイド孔124を設けている。掴み部112の軸方向端面は、第6板部122の手前側面を押圧可能としている。このため、ねじ部材76からストッパ114(図9参照)を省略している。
【0047】
すなわち、掴み部112を回転し、ねじ孔120に対し軸部110のねじ部を進行させることにより、掴み部112の軸方向端面を第6板部122の手前側面に押圧し、第1部材72に設けた第1平面部84及び第2部材74に設けた第4平面部98の間で駆動ローラ38を、軸方向両側から挟持可能としている。また、第1部材72と第2部材74とは、第1部材72からねじ部材76を取り外すことにより分離可能としている。
【0048】
また、第1部材72の第1板部78と第2部材74の第5板部96との間に駆動ローラ38を挟持した状態で、第1部材72の第3板部82と第2部材74の第6板部との間で2個の係止板部54,56を幅方向(図10の上下方向)両側から挟持可能としている。
【0049】
このような案内レール調整冶具70を用いた案内レール調整方法は、駆動ローラ案内レール挟持工程と、案内レール結合工程とを備える。すなわち、駆動ローラ案内レール挟持工程は、作業者が、案内レール調整冶具70の第1部材72が有する第1平面部84を、駆動ローラ38の軸方向片面である奥側面116に重ね合わせるように突き当てるとともに、第2平面部86を、調整可能案内レール44の奥側の係止板部54の奥側面88に重ね合わせるように突き当てる。この場合、調整可能案内レール44の取付板部46に対する結合をボルト結合部48(図6参照)等により緩めておく。
【0050】
そして、この状態で、掴み部112を回転させ、ねじ孔120に対しねじ部材76のねじ部を奥側に進行させることにより、掴み部112の軸方向端面を第2部材74の第6板部122に押し付けて、さらに掴み部112を回転させることにより、第1部材72の第1板部78と第2部材74の第5板部96との間で駆動ローラ38を、軸方向両側から挟持させるとともに、第1部材72の第3板部82と第2部材74の第6板部122との間で2個の係止板部54,56を幅方向両側から挟持する。
【0051】
また、その後に行う、案内レール結合工程は、調整可能案内レール44を取付板部46(図6参照)にボルト結合部48(図6参照)等により結合固定する。取付板部46に対する調整可能案内レール44の結合固定後、案内レール調整冶具70で、掴み部112を駆動ローラ38に対する挟持工程時と逆方向に回転させ、逆方向に軸部110を進行させることにより、第1部材72の第1板部78と第2部材74の第5板部96との間隔を広げて、案内レール調整冶具70を駆動ローラ38から取り外す。
【0052】
なお、本実施の形態では、第1部材72と第2部材74とにより、駆動ローラ38と調整可能案内レール44とを同時に挟持するようにしているが、上記の第1の実施の形態と同様に、第1部材72と第2部材74とにより駆動ローラ38のみを挟持し、この状態で調整可能案内レール44が挟持されないようにすることもできる。
【0053】
このような本実施の形態の場合も、調整可能案内レール44の位置調整を行う際に、作業者から見て、駆動ローラ38の奥側面116と調整可能案内レール44の奥側の係止板部54の奥側面88との間の寸法L1を、要求される寸法に正確に規制でき、調整可能案内レール44の位置調整を効率よく行える。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様であるため、第1の実施の形態と同等部分には同一符号を付して重複する説明及び図示を省略する。なお、上記の各実施の形態では、乗客コンベアがエスカレータである場合を説明したが、乗客コンベアを「動く歩道」、すなわち、水平方向に乗客を移動させる乗客移送装置とした場合も、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 トラス、12 欄干、14 固定案内レール、16 移動手すり、18 デッキボード、20 モータ、22 駆動スプロケット、24 中間スプロケット、26 チェーン、28 第2中間スプロケット、30 手すり駆動装置、32 従動スプロケット、34 テンションスプロケット、36 チェーン、38 駆動ローラ、40 押圧ローラ、42 不連続部、44 調整可能案内レール、46 取付板部、48 ボルト結合部、52 基板部、54,56 係止板部、58,60 片側挟持部、62,64 他側挟持部、66 孔部、68 端縁部、70,70a 案内レール調整冶具、72 第1部材、74 第2部材、76 ねじ部材、78 第1板部、80 第2板部、82 第3板部、84 第1平面部、86 第2平面部、88 奥側面、90 第3平面部、92 ガイド部、94 第4板部、96 第5板部、98 第4平面部、100 窓部、102 片側挿通部、104 他側挿通部、106 突出板部、108 ねじ孔、110 軸部、112 掴み部、114 ストッパ、116,118 奥側面、120 ねじ孔、122 124 ガイド孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの移動手すりを押圧する駆動ローラに対し、移動手すりの進行方向に隣り合う調整可能案内レールを、駆動ローラに対し位置調整するための案内レール調整冶具であって、
駆動ローラの軸方向片面に突き当てる第1駆動ローラ突き当て平面部と、第1駆動ローラ突き当て平面部と平行で、調整可能案内レールの片面に突き当てる案内レール突き当て平面部とを含む第1部材と、
第1駆動ローラ突き当て平面部に対し平行で、駆動ローラの軸方向他面に突き当てる第2駆動ローラ突き当て平面部を含む第2部材と、
ねじ部が設けられた軸部と、軸部の第2部材側に設けられた掴み部とを有するねじ部材と、
第1部材及び第2部材の一方の部材に設けられ、ねじ部がねじ結合されるねじ孔と、
第1部材及び第2部材の他方の部材に設けられ、軸部が挿通されるガイド孔と、
第1部材の第2部材に対する変位を、ねじ部材の第1部材または第2部材に対する進行方向と平行な方向に案内するガイド部と、を備え、
掴み部を回転し、ねじ孔に対しねじ部を進行させることにより、第1駆動ローラ突き当て平面部及び第2駆動ローラ突き当て平面部の間で駆動ローラを挟持可能としていることを特徴とする案内レール調整冶具。
【請求項2】
請求項1に記載の案内レール調整冶具において、
第1部材は、第1駆動ローラ突き当て平面部に対し直交する平面であって、駆動ローラの外周面に突き当てる第3駆動ローラ突き当て平面部を含むことを特徴とする案内レール調整冶具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の案内レール調整冶具において、
第1部材の案内レール突き当て平面部は、第1駆動ローラ突き当て平面部に対し、ねじ部材の軸方向に関して掴み部側にずれていることを特徴とする案内レール調整冶具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の案内レール調整冶具において、
ねじ部材は、第2部材または第1部材の、軸部の軸方向に向いた側面に突き当て可能なストッパを有することを特徴とする案内レール調整冶具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の案内レール調整冶具において、
第1部材及び第2部材は、分離可能としていることを特徴とする案内レール調整冶具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載の案内レール調整冶具を用いて、駆動ローラに対し調整可能案内レールを位置調整し、調整可能案内レールをトラスに固定された取り付け部に結合する案内レール調整方法であって、
案内レール調整冶具の第1駆動ローラ突き当て平面部を駆動ローラの軸方向片面に突き当てた状態で、ねじ孔に対しねじ部を進行させることにより、第1部材と第2部材との間に駆動ローラを挟持させる駆動ローラ挟持工程と、
案内レール突き当て平面部を調整可能案内レールの片面に突き当てるように、調整可能案内レールの位置調整をしながら、調整可能案内レールを取り付け部に結合する案内レール結合工程とを備えることを特徴とする案内レール調整方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載の案内レール調整冶具を用いて、駆動ローラに対し調整可能案内レールを位置調整し、調整可能案内レールをトラスに固定された取り付け部に結合する案内レール調整方法であって、
案内レール調整冶具の第1駆動ローラ突き当て平面部を駆動ローラの軸方向片面に突き当て、案内レール突き当て平面部を調整可能案内レールの片面に突き当てた状態で、ねじ孔に対しねじ部を進行させることにより、第1部材と第2部材との間に駆動ローラ及び調整可能案内レールを挟持させる駆動ローラ案内レール挟持工程と、
調整可能案内レールを取り付け部に結合する案内レール結合工程とを備えることを特徴とする案内レール調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−126619(P2011−126619A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284075(P2009−284075)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】