桟橋構築用足場及び桟橋構築方法
【課題】杭式桟橋を施工する際に、杭打ちまでに大掛かりで時間を要する作業を必要とすることなく、杭打ちの精度を向上させ、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減し、高所作業の危険性を低減することを可能とすること。
【解決手段】桟橋構築工事の際に使用される桟橋構築用足場であって、桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用され、前記桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部と、前記係止部を前記桟橋完成部分に係止した時に、前記桟橋未完成部分に向けて延びる延長部と、を備えていることを特徴とする桟橋構築用足場である。
【解決手段】桟橋構築工事の際に使用される桟橋構築用足場であって、桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用され、前記桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部と、前記係止部を前記桟橋完成部分に係止した時に、前記桟橋未完成部分に向けて延びる延長部と、を備えていることを特徴とする桟橋構築用足場である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭式桟橋の構築作業時に使用される桟橋構築用足場及びこの足場を使用する桟橋構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳地等において杭式桟橋を施工する場合、既に完成している桟橋部分を足場として、未だ完成していない桟橋部分を支持する杭を先行打ちし、この杭と完成桟橋部分とに未完成部分の主桁をかけることにより桟橋を構築している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような従来の施工方法では、桟橋完成部分だけを足場として次の杭を先行打ちするため、杭の打設位置を正確に調整するのが難しく、杭打ちの精度が悪い。そのため、例えば一旦杭打ちしてから、その杭の向きや高さを再調整しなければならない必要が生じ、手間や時間がかかるばかりでなく、危険な高所作業が必要になるという問題がある。
【0004】
上記した問題点に鑑みて、本願出願人は下記特許文献2に記載の発明を提案している。
この発明は、桟橋完成部分から、杭頭固定用管が予め設置された延長すべき桟橋未完成部分の主桁を片持ち状に張り出し、当該桟橋未完成部分の主桁に沿うように当該桟橋未完成部分の主桁の張り出し先端部と桟橋完成部分との間にかけ渡された線材を、当該桟橋未完成部分の主桁とほぼ並行になるようにして張力調整することによって当該桟橋未完成部分の主桁を調整するとともに保持し、前記桟橋未完成部分の主桁に設置された杭頭固定用管を介して管状杭を杭打ちする杭式桟橋施工方法である。
【0005】
この発明は、上記従来技術と比較して、桟橋未完成部分を支持する杭打ち精度を向上することができ、高所作業も低減することが可能である点において優れたものである。
しかしながら、この発明において使用される桟橋未完成部分の主桁は、桟橋の全幅と略同じ幅を有し、主桁としての高い剛性を必要とし、更に杭頭固定用管を備えているため、重量物となる。そのため、この主桁を片持ち状に張り出して精度良く確実に保持するためには大掛かり且つ慎重な作業を必要とし、杭打ちを行うまでに時間を要することとなり、作業効率の面では好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4567080号公報
【特許文献2】特許第3043320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来の施工方法の問題点を解決すべくなされたものであって、杭式桟橋を施工する際に、杭打ちまでに大掛かりで時間を要する作業を必要とすることなく、杭打ちの精度を向上させ、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減し、高所作業の危険性を低減することが可能である、桟橋構築用足場及びこの足場を使用する桟橋構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、桟橋構築工事の際に使用される桟橋構築用足場であって、桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用され、前記桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部と、前記係止部を前記桟橋完成部分に係止した時に、前記桟橋未完成部分に向けて延びる延長部と、を備えていることを特徴とする桟橋構築用足場に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記係止部は、間隔をあけて形成された左右一対の係止部材からなり、前記延長部は、前記左右一対の係止部材の夫々から互いに平行に延びる左右一対の延長部材からなるとともに、該左右一対の延長部材同士を連結する連結部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の桟橋構築用足場に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の桟橋構築用足場を使用する桟橋構築方法であって、桟橋完成部分に対して前記桟橋構築用足場の係止部を係止することにより、該桟橋構築用足場を前記桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して設置する足場設置工程と、設置された桟橋構築用足場の延長端部近傍において管状の杭を上下方向にガイドしながら地面に立設する杭立設工程と、立設された杭の頭部を、前記桟橋構築用足場の延長部の上面と略同じ高さで切断する杭頭切断工程と、前記切断された杭頭に、円筒の上部に平板が取り付けられた杭頭キャップを被せて固定する杭頭キャップ固定工程と、前記杭頭キャップの平板上に横桁を固定する横桁固定工程と、前記横桁の上部に主桁を固定して前記桟橋完成部分の主桁と連結する主桁固定工程と、前記桟橋構築用足場を取り外す足場撤去工程と、を備えていることを特徴とする桟橋構築方法に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記足場設置工程において、複数の前記桟橋構築用足場を桟橋完成部分の幅方向に並べて設置することを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記杭立設工程が、前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、ロータリーテーブルマシンを設置するテーブルマシン設置工程と、前記ロータリーテーブルマシンに掘削用ロッドを挿通し、該掘削用ロッドを利用して地面を削孔する削孔工程と、前記削孔工程により形成された孔に、前記管状の杭を建て込む杭建込工程と、からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記杭立設工程が、前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、杭回転防止機構を備えた回転防止導材を設置する導材設置工程と、前記回転防止導材に、クレーンにより吊り下げられた油圧式掘進機にて上端部を保持された前記管状の杭を挿通し、前記油圧式掘進機により前記管状の杭を地面に打ち込む杭打設工程と、からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記杭立設工程が、前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、導材を設置する導材設置工程と、前記導材に、クレーンにより吊り下げられたバイブロハンマにて上端部を保持された前記管状の杭を挿通し、前記バイブロハンマにより前記管状の杭を地面に打ち込む杭打設工程と、からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用されるため、桟橋未完成部分において杭を打設する際の足場として使用することができるとともに、延長部を地面に杭を打設する際の導材として使用することができることから、杭打ちの精度を向上させることが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。また、高所作業の危険性を低減することも可能となる。
更に、前記桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部を備えているため、桟橋構築用足場を、クレーンにより吊り下げて下降させることにより係止部を桟橋完成部分に対して係止させることができるとともに、クレーンにより吊り上げて上昇させることにより係止を解除することができる。そのため、桟橋構築用足場の設置及び撤去を大掛かりな作業を必要とせずに容易に且つ迅速に行うことが可能となり、作業効率を大きく向上させることができる。
また、撤去した桟橋構築用足場は、同じ現場で桟橋延長のための工程で繰り返し使用できるだけでなく別の現場でも再利用することができるため、施工コストを削減することも可能となる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、前記係止部は、間隔をあけて形成された左右一対の係止部材からなり、前記延長部は、前記左右一対の係止部材の夫々から互いに平行に延びる左右一対の延長部材からなるとともに、該左右一対の延長部材同士を連結する連結部材を備えていることから、桟橋構築用足場を軽量且つ高剛性に形成することが可能であるとともに、桟橋完成部分に対して確実に固定することができる。また、連結部材が、地面に杭を打設する際の導材として作用させることが可能であることから、杭打ちの精度を向上させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、桟橋構築用足場を桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して設置し、設置された桟橋構築用足場の延長端部近傍において管状の杭を上下方向にガイドしながら地面に立設することから、杭打ちまでに大掛かりで時間を要する作業を必要とすることなく、杭打ちの精度を向上させることが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。また、高所作業の危険性を低減することも可能となる。
更に、立設された杭の頭部を桟橋構築用足場の延長部の上面と略同じ高さで切断し、切断された杭頭に円筒の上部に平板が取り付けられた杭頭キャップを被せて固定し、杭頭キャップの平板上に横桁を固定し、横桁の上部に主桁を固定して桟橋完成部分の主桁と連結することから、桟橋構築用足場を利用して各作業を安全に効率良く行うことができ、主桁及び横桁を精度良く確実に固定することが可能となる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、足場設置工程において、複数の桟橋構築用足場を桟橋完成部分の幅方向に並べて設置することから、1つの桟橋構築用足場の重量を減らすことができる。そのため、桟橋構築用足場の設置を大掛かりな作業を必要とせずに容易に作業性良く実施することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部にロータリーテーブルマシンを設置し、ロータリーテーブルマシンに掘削用ロッドを挿通し、該掘削用ロッドを利用して地面を削孔し、形成された孔に管状の杭を建て込むことにより杭を立設することから、杭打ちを精度良く行うことが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に杭回転防止機構を備えた回転防止導材を設置し、回転防止導材にクレーンにより吊り下げられた油圧式掘進機にて上端部を保持された管状の杭を挿通し、油圧式掘進機により管状の杭を地面に打ち込むことにより杭を立設することから、杭打ちを精度良く行うことが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に導材を設置し、導材にクレーンにより吊り下げられたバイブロハンマにて上端部を保持された管状の杭を挿通し、バイブロハンマにより管状の杭を地面に打ち込むことにより杭を立設することから、杭打ちを精度良く行うことが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る桟橋構築用足場の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(足場設置工程)を示す図である。
【図3】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭立設工程の第1の方法における削孔工程)を示す図である。
【図4】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭立設工程の第1の方法における杭建込工程)を示す図である。
【図5】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭立設工程の第2の方法における杭打設工程)を示す図である。
【図6】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭立設工程の第3の方法における杭打設工程)を示す図である。
【図7】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭頭切断工程)を示す図である。
【図8】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭頭キャップ固定工程)を示す図である。
【図9】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(横桁固定工程)を示す図である。
【図10】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(主桁固定工程)を示す図である。
【図11】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(足場撤去工程)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る桟橋構築用足場及び桟橋構築方法の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る桟橋構築用足場の一例を示す斜視図である。
本発明に係る桟橋構築用足場(1)は、桟橋構築工事の際に使用される足場であって、後述するように、桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用される。(図2〜図11参照)
【0024】
桟橋構築用足場(1)は、桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部(2)と、係止部(2)を桟橋完成部分に対して係止した時に上記桟橋を延長すべき方向(以下、延長方向と略)に向けて略水平方向に延びるように設置される延長部(3)とを備えている。
桟橋構築用足場(1)は、例えば鋼材から形成される。
【0025】
係止部(2)は、所定間隔をあけて形成された左右一対の係止部材(2a)(2b)からなる。左右一対の係止部材(2a)(2b)の間隔は、例えば1500mmに設定することができるが、これに限定されるものではない。設置する桟橋構築用足場(1)の数は、桟橋完成部分の幅方向の橋脚の数に応じて設定することができる。基本的には、橋脚数をNとしたとき、桟橋構築用足場(1)の数はN−1に設定される。つまり、桟橋構築用足場(1)は橋脚数が2つ(1組)の場合には1つ設置され、橋脚数が3つ(2組)の場合には桟橋幅方向に2つ並べて設置される。
各係止部材(2a)(2b)は、互いに平行に上下方向に延びる、長さが異なる2本の縦材と、これら2本の縦材の上端部同士を連結する横材とからなる。2本の縦材と横材で囲まれる空間(5)に桟橋完成部分の横桁が嵌まることにより、桟橋完成部分に対して係止部(2)が係止される。
【0026】
延長部(3)は、左右一対の係止部材(2a)(2b)の夫々から互いに平行に延びる左右一対の延長部材(3a)(3b)からなる。より具体的には、延長部(3)の一端部は、係止部材(2a)(2b)の長い方の縦材(2c)の下方寄り位置に、該縦材に対して直角方向に延びるように連結されている。
延長部材(3a)(3b)は、上材と、下材と、上材と下材とを繋ぐ繋ぎ材とからなるトラス構造を有している。これにより、軽量でありながら高強度を実現している。
延長部材(3a)(3b)の上材の上面には、リング状の掛止部(6)が設けられている。掛止部(6)には、桟橋構築用足場(1)と桟橋完成部分とを繋ぐチェーンブロックの一端が掛止される。これにより、桟橋構築用足場(1)が前下がりに傾斜する(先端が下がる)ことを防ぐことができる。
【0027】
左右一対の延長部材(3a)(3b)は、連結部材(4)により連結されている。
連結部材(4)は、延長部材(3a)(3b)に対して直角方向に延び、且つ前記延長方向に間隔をあけて互いに平行に配置された複数本の部材からなる。連結部材(4)は、延長部材(3a)(3b)の上材同士を連結する上部連結部材と、下材同士を連結する下部連結部材とからなる。これら上部連結部材と下部連結部材は、上下方向に並んで配置されているため、杭を上下方向にガイドする導材として機能することができる。
【0028】
次に、本発明に係る桟橋構築方法について、図2〜図11を参照しながら説明する。
<1.足場設置工程>
先ず、桟橋完成部分(A)に対して桟橋構築用足場(1)の係止部(2)を係止することにより、桟橋構築用足場(1)を桟橋完成部分(A)から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分(B)に向けて延長するように片持ち状に張り出して設置する。(図2参照)
具体的には、桟橋完成部分(A)に配置したクレーン(7)により桟橋構築用足場(1)を吊り上げた後、係止部材(2a)(2b)の空間(5)(図1参照)に桟橋完成部分の横桁が嵌まるまで桟橋構築用足場(1)を下降させることにより、桟橋完成部分(A)に対して桟橋構築用足場(1)の係止部(2)を係止する。続いて、チェーンブロック(8)の一端を桟橋構築用足場(1)の掛止部(6)に掛止し、他端を桟橋完成部分(A)に掛止することにより、チェーンブロック(8)にて桟橋完成部分(A)と桟橋構築用足場(1)を連結する。
設置する桟橋構築用足場(1)の数は、1つでも複数でもよく、桟橋完成部分(A)の幅(換言すれば構築される桟橋の幅)に応じて適宜設定される。例えば、桟橋構築用足場(1)の幅を桟橋完成部分の幅と略同じとした場合には1つでよく、桟橋構築用足場(1)の幅を桟橋完成部分の幅の約半分とした場合には2つ並べて使用する。図2では2つの桟橋構築用足場(1)を桟橋の幅方向(紙面垂直方向)に並べて設置している様子が示されている。
【0029】
<2.杭立設工程>
足場設置工程により設置された桟橋構築用足場(1)の延長端部近傍において、管状の杭(鋼管杭等)を上下方向にガイドしながら地面に立設する。
この杭立設工程は、1種類の方法には限定されず、施工現場の状況に応じて複数種類の方法を使い分けることが可能である。以下、代表的な方法を3つ例示する。
【0030】
<2−1.第1の方法>
第1の方法では、杭立設工程が、テーブルマシン設置工程と削孔工程と杭建込工程からなる。
テーブルマシン設置工程では、桟橋構築用足場(1)の延長端部近傍の上部に、ロータリーテーブルマシン(9)を設置する。
削孔工程では、図3に示すように、設置されたロータリーテーブルマシン(9)に掘削用ロッド(10)を挿通し、掘削用ロッド(10)を利用して地面を削孔する。具体的には、ビッドとエアハンマを備えた公知のダウンザホールハンマ用の掘削用ロッド(10)をロータリーテーブルマシン(9)に挿通し、掘削用ロッド(10)の回転によるビッドの回転とエアハンマによる打撃を利用して地面を掘削する。
杭建込工程では、図4に示すように、鋼管杭等の管状の杭(11)をクレーンにより吊り下げて、削孔工程により形成された穴に建て込む。このとき、桟橋構築用足場(1)が管状の杭(11)を上下方向にガイドする導材の役割を果たす。
【0031】
<2−2.第2の方法>
第2の方法では、杭立設工程が、導材設置工程と杭打設工程からなる。
導材設置工程では、桟橋構築用足場(1)の延長端部近傍の上部に、杭回転防止機構を備えた回転防止導材(12)を設置する。回転防止導材(12)は、図5において矢印で右下に引き出された拡大平面図に示すように、鋼管杭等の管状の杭(11)が挿通される円形の穴の周囲に沿って3つの回転防止ローラ(13)を備えている。回転防止ローラ(13)は、杭(11)を前記穴に挿通した時に杭の外周に沿って密接する鼓形状のローラである。これにより、回転防止ローラ(13)は、杭(11)を前記穴に挿通した時に水平軸回りに回転して杭(11)を上下方向にガイドするとともに、杭(11)自体の回転を防止することができる。
杭打設工程では、図5に示すように、回転防止導材(12)に、クレーンにより吊り下げられた油圧式掘進機(吊オーガー)(14)にて上端部を保持された杭(11)を挿通し、油圧式掘進機(14)により杭(11)を地面に打ち込む。
【0032】
<2−3.第3の方法>
第3の方法では、杭立設工程が、導材設置工程と杭打設工程からなる。
導材設置工程では、桟橋構築用足場(1)の延長端部近傍の上部に、杭(11)を上下方向にガイドする導材(15)を設置する。
杭打設工程では、図6に示すように、導材(15)に、クレーンにより吊り下げられたバイブロハンマ(バイブロフォンサ)(16)にて上端部を保持された杭(11)を挿通し、バイブロハンマ(16)により杭(11)を地面に打ち込む。
【0033】
上記第1〜第3の方法により立設された杭(11)は、根入れ部にモルタルを充填することにより地面に固定する。
【0034】
<3.杭頭切断工程>
杭立設工程により立設された杭(11)の頭部(11a)を、桟橋構築用足場(1)の延長部(3)の上面と略同じ高さで切断して撤去する。(図7参照)
【0035】
<4.杭頭キャップ固定工程>
桟橋構築用足場(1)の延長部(3)の上面に沿って手摺(17)を取り付け、杭頭切断工程により切断された杭(11)の頭部に、杭頭キャップ(18)を被せて固定する。(図8参照)
杭頭キャップ(18)は、図8において矢印で右下に引き出された拡大正面図に示すように、円筒(18a)の上部に平板(18b)が取り付けられた構造を有している。円筒(18a)の周方向に沿って設けられた複数のボルト穴にボルト(21)を螺合し、ボルトの先端で杭(11)の外周面を押さえることにより、杭頭に杭頭キャップ(18)を固定する。
【0036】
<5.横桁固定工程>
杭頭キャップ固定工程により杭頭に固定された杭頭キャップ(18)の平板(18b)上に横桁(19)をボルト等により固定する。(図9参照) 横桁(19)は、図9において矢印で右下に引き出された拡大平面図に示すように例えばH形鋼からなり、長さ方向が上記延長方向と直角方向(桟橋幅方向)となるように固定する。
【0037】
<6.主桁固定工程>
横桁固定工程により固定された横桁(19)の上部に、H形鋼等からなる主桁(20)をボルト等により固定する。主桁(20)は、長さ方向が上記延長方向となるように固定し、主桁(20)の端部を桟橋完成部分(A)の主桁(A1)と連結する。(図10参照)
【0038】
<7.足場撤去工程>
桟橋構築用足場(1)をクレーンにより吊り上げて撤去し、覆工板(21)を設置する。(図11参照) 撤去した桟橋構築用足場(1)は、桟橋を更に延長する際に再度使用する。
【0039】
<8.梁連結工程>
上記工程により立設された杭(11)と桟橋完成部分(A)の杭(A2)を、桟橋完成部分(A)と同様に梁(図示略)により連結することにより、桟橋完成部分が延長された状態となる。
【0040】
その後、延長された桟橋完成部分に対して、上記した足場設置工程から梁連結工程を繰り返すことにより、所要長さの桟橋を構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る桟橋構築用足場及び桟橋構築方法は、山岳地等の精度良く杭打ちを行うことが困難な現場において杭式桟橋を施工するために好適に利用される。
【符号の説明】
【0042】
1 桟橋構築用足場
2 係止部
2a 係止部材
2b 係止部材
3 延長部
4 連結部材
9 ロータリーテーブルマシン
10 掘削用ロッド
11 杭
12 回転防止導材
14 油圧式掘進機(吊オーガー)
15 導材
16 バイブロハンマ
18 杭頭キャップ
18a 円筒
18b 平板
19 横桁
20 主桁
A 桟橋完成部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭式桟橋の構築作業時に使用される桟橋構築用足場及びこの足場を使用する桟橋構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳地等において杭式桟橋を施工する場合、既に完成している桟橋部分を足場として、未だ完成していない桟橋部分を支持する杭を先行打ちし、この杭と完成桟橋部分とに未完成部分の主桁をかけることにより桟橋を構築している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような従来の施工方法では、桟橋完成部分だけを足場として次の杭を先行打ちするため、杭の打設位置を正確に調整するのが難しく、杭打ちの精度が悪い。そのため、例えば一旦杭打ちしてから、その杭の向きや高さを再調整しなければならない必要が生じ、手間や時間がかかるばかりでなく、危険な高所作業が必要になるという問題がある。
【0004】
上記した問題点に鑑みて、本願出願人は下記特許文献2に記載の発明を提案している。
この発明は、桟橋完成部分から、杭頭固定用管が予め設置された延長すべき桟橋未完成部分の主桁を片持ち状に張り出し、当該桟橋未完成部分の主桁に沿うように当該桟橋未完成部分の主桁の張り出し先端部と桟橋完成部分との間にかけ渡された線材を、当該桟橋未完成部分の主桁とほぼ並行になるようにして張力調整することによって当該桟橋未完成部分の主桁を調整するとともに保持し、前記桟橋未完成部分の主桁に設置された杭頭固定用管を介して管状杭を杭打ちする杭式桟橋施工方法である。
【0005】
この発明は、上記従来技術と比較して、桟橋未完成部分を支持する杭打ち精度を向上することができ、高所作業も低減することが可能である点において優れたものである。
しかしながら、この発明において使用される桟橋未完成部分の主桁は、桟橋の全幅と略同じ幅を有し、主桁としての高い剛性を必要とし、更に杭頭固定用管を備えているため、重量物となる。そのため、この主桁を片持ち状に張り出して精度良く確実に保持するためには大掛かり且つ慎重な作業を必要とし、杭打ちを行うまでに時間を要することとなり、作業効率の面では好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4567080号公報
【特許文献2】特許第3043320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来の施工方法の問題点を解決すべくなされたものであって、杭式桟橋を施工する際に、杭打ちまでに大掛かりで時間を要する作業を必要とすることなく、杭打ちの精度を向上させ、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減し、高所作業の危険性を低減することが可能である、桟橋構築用足場及びこの足場を使用する桟橋構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、桟橋構築工事の際に使用される桟橋構築用足場であって、桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用され、前記桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部と、前記係止部を前記桟橋完成部分に係止した時に、前記桟橋未完成部分に向けて延びる延長部と、を備えていることを特徴とする桟橋構築用足場に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記係止部は、間隔をあけて形成された左右一対の係止部材からなり、前記延長部は、前記左右一対の係止部材の夫々から互いに平行に延びる左右一対の延長部材からなるとともに、該左右一対の延長部材同士を連結する連結部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の桟橋構築用足場に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の桟橋構築用足場を使用する桟橋構築方法であって、桟橋完成部分に対して前記桟橋構築用足場の係止部を係止することにより、該桟橋構築用足場を前記桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して設置する足場設置工程と、設置された桟橋構築用足場の延長端部近傍において管状の杭を上下方向にガイドしながら地面に立設する杭立設工程と、立設された杭の頭部を、前記桟橋構築用足場の延長部の上面と略同じ高さで切断する杭頭切断工程と、前記切断された杭頭に、円筒の上部に平板が取り付けられた杭頭キャップを被せて固定する杭頭キャップ固定工程と、前記杭頭キャップの平板上に横桁を固定する横桁固定工程と、前記横桁の上部に主桁を固定して前記桟橋完成部分の主桁と連結する主桁固定工程と、前記桟橋構築用足場を取り外す足場撤去工程と、を備えていることを特徴とする桟橋構築方法に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記足場設置工程において、複数の前記桟橋構築用足場を桟橋完成部分の幅方向に並べて設置することを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記杭立設工程が、前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、ロータリーテーブルマシンを設置するテーブルマシン設置工程と、前記ロータリーテーブルマシンに掘削用ロッドを挿通し、該掘削用ロッドを利用して地面を削孔する削孔工程と、前記削孔工程により形成された孔に、前記管状の杭を建て込む杭建込工程と、からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記杭立設工程が、前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、杭回転防止機構を備えた回転防止導材を設置する導材設置工程と、前記回転防止導材に、クレーンにより吊り下げられた油圧式掘進機にて上端部を保持された前記管状の杭を挿通し、前記油圧式掘進機により前記管状の杭を地面に打ち込む杭打設工程と、からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記杭立設工程が、前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、導材を設置する導材設置工程と、前記導材に、クレーンにより吊り下げられたバイブロハンマにて上端部を保持された前記管状の杭を挿通し、前記バイブロハンマにより前記管状の杭を地面に打ち込む杭打設工程と、からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用されるため、桟橋未完成部分において杭を打設する際の足場として使用することができるとともに、延長部を地面に杭を打設する際の導材として使用することができることから、杭打ちの精度を向上させることが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。また、高所作業の危険性を低減することも可能となる。
更に、前記桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部を備えているため、桟橋構築用足場を、クレーンにより吊り下げて下降させることにより係止部を桟橋完成部分に対して係止させることができるとともに、クレーンにより吊り上げて上昇させることにより係止を解除することができる。そのため、桟橋構築用足場の設置及び撤去を大掛かりな作業を必要とせずに容易に且つ迅速に行うことが可能となり、作業効率を大きく向上させることができる。
また、撤去した桟橋構築用足場は、同じ現場で桟橋延長のための工程で繰り返し使用できるだけでなく別の現場でも再利用することができるため、施工コストを削減することも可能となる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、前記係止部は、間隔をあけて形成された左右一対の係止部材からなり、前記延長部は、前記左右一対の係止部材の夫々から互いに平行に延びる左右一対の延長部材からなるとともに、該左右一対の延長部材同士を連結する連結部材を備えていることから、桟橋構築用足場を軽量且つ高剛性に形成することが可能であるとともに、桟橋完成部分に対して確実に固定することができる。また、連結部材が、地面に杭を打設する際の導材として作用させることが可能であることから、杭打ちの精度を向上させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、桟橋構築用足場を桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して設置し、設置された桟橋構築用足場の延長端部近傍において管状の杭を上下方向にガイドしながら地面に立設することから、杭打ちまでに大掛かりで時間を要する作業を必要とすることなく、杭打ちの精度を向上させることが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。また、高所作業の危険性を低減することも可能となる。
更に、立設された杭の頭部を桟橋構築用足場の延長部の上面と略同じ高さで切断し、切断された杭頭に円筒の上部に平板が取り付けられた杭頭キャップを被せて固定し、杭頭キャップの平板上に横桁を固定し、横桁の上部に主桁を固定して桟橋完成部分の主桁と連結することから、桟橋構築用足場を利用して各作業を安全に効率良く行うことができ、主桁及び横桁を精度良く確実に固定することが可能となる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、足場設置工程において、複数の桟橋構築用足場を桟橋完成部分の幅方向に並べて設置することから、1つの桟橋構築用足場の重量を減らすことができる。そのため、桟橋構築用足場の設置を大掛かりな作業を必要とせずに容易に作業性良く実施することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部にロータリーテーブルマシンを設置し、ロータリーテーブルマシンに掘削用ロッドを挿通し、該掘削用ロッドを利用して地面を削孔し、形成された孔に管状の杭を建て込むことにより杭を立設することから、杭打ちを精度良く行うことが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に杭回転防止機構を備えた回転防止導材を設置し、回転防止導材にクレーンにより吊り下げられた油圧式掘進機にて上端部を保持された管状の杭を挿通し、油圧式掘進機により管状の杭を地面に打ち込むことにより杭を立設することから、杭打ちを精度良く行うことが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に導材を設置し、導材にクレーンにより吊り下げられたバイブロハンマにて上端部を保持された管状の杭を挿通し、バイブロハンマにより管状の杭を地面に打ち込むことにより杭を立設することから、杭打ちを精度良く行うことが可能となり、杭打ち後に杭の向きや高さを再調整する手間や時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る桟橋構築用足場の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(足場設置工程)を示す図である。
【図3】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭立設工程の第1の方法における削孔工程)を示す図である。
【図4】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭立設工程の第1の方法における杭建込工程)を示す図である。
【図5】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭立設工程の第2の方法における杭打設工程)を示す図である。
【図6】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭立設工程の第3の方法における杭打設工程)を示す図である。
【図7】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭頭切断工程)を示す図である。
【図8】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(杭頭キャップ固定工程)を示す図である。
【図9】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(横桁固定工程)を示す図である。
【図10】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(主桁固定工程)を示す図である。
【図11】本発明に係る桟橋構築方法の一工程(足場撤去工程)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る桟橋構築用足場及び桟橋構築方法の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る桟橋構築用足場の一例を示す斜視図である。
本発明に係る桟橋構築用足場(1)は、桟橋構築工事の際に使用される足場であって、後述するように、桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用される。(図2〜図11参照)
【0024】
桟橋構築用足場(1)は、桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部(2)と、係止部(2)を桟橋完成部分に対して係止した時に上記桟橋を延長すべき方向(以下、延長方向と略)に向けて略水平方向に延びるように設置される延長部(3)とを備えている。
桟橋構築用足場(1)は、例えば鋼材から形成される。
【0025】
係止部(2)は、所定間隔をあけて形成された左右一対の係止部材(2a)(2b)からなる。左右一対の係止部材(2a)(2b)の間隔は、例えば1500mmに設定することができるが、これに限定されるものではない。設置する桟橋構築用足場(1)の数は、桟橋完成部分の幅方向の橋脚の数に応じて設定することができる。基本的には、橋脚数をNとしたとき、桟橋構築用足場(1)の数はN−1に設定される。つまり、桟橋構築用足場(1)は橋脚数が2つ(1組)の場合には1つ設置され、橋脚数が3つ(2組)の場合には桟橋幅方向に2つ並べて設置される。
各係止部材(2a)(2b)は、互いに平行に上下方向に延びる、長さが異なる2本の縦材と、これら2本の縦材の上端部同士を連結する横材とからなる。2本の縦材と横材で囲まれる空間(5)に桟橋完成部分の横桁が嵌まることにより、桟橋完成部分に対して係止部(2)が係止される。
【0026】
延長部(3)は、左右一対の係止部材(2a)(2b)の夫々から互いに平行に延びる左右一対の延長部材(3a)(3b)からなる。より具体的には、延長部(3)の一端部は、係止部材(2a)(2b)の長い方の縦材(2c)の下方寄り位置に、該縦材に対して直角方向に延びるように連結されている。
延長部材(3a)(3b)は、上材と、下材と、上材と下材とを繋ぐ繋ぎ材とからなるトラス構造を有している。これにより、軽量でありながら高強度を実現している。
延長部材(3a)(3b)の上材の上面には、リング状の掛止部(6)が設けられている。掛止部(6)には、桟橋構築用足場(1)と桟橋完成部分とを繋ぐチェーンブロックの一端が掛止される。これにより、桟橋構築用足場(1)が前下がりに傾斜する(先端が下がる)ことを防ぐことができる。
【0027】
左右一対の延長部材(3a)(3b)は、連結部材(4)により連結されている。
連結部材(4)は、延長部材(3a)(3b)に対して直角方向に延び、且つ前記延長方向に間隔をあけて互いに平行に配置された複数本の部材からなる。連結部材(4)は、延長部材(3a)(3b)の上材同士を連結する上部連結部材と、下材同士を連結する下部連結部材とからなる。これら上部連結部材と下部連結部材は、上下方向に並んで配置されているため、杭を上下方向にガイドする導材として機能することができる。
【0028】
次に、本発明に係る桟橋構築方法について、図2〜図11を参照しながら説明する。
<1.足場設置工程>
先ず、桟橋完成部分(A)に対して桟橋構築用足場(1)の係止部(2)を係止することにより、桟橋構築用足場(1)を桟橋完成部分(A)から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分(B)に向けて延長するように片持ち状に張り出して設置する。(図2参照)
具体的には、桟橋完成部分(A)に配置したクレーン(7)により桟橋構築用足場(1)を吊り上げた後、係止部材(2a)(2b)の空間(5)(図1参照)に桟橋完成部分の横桁が嵌まるまで桟橋構築用足場(1)を下降させることにより、桟橋完成部分(A)に対して桟橋構築用足場(1)の係止部(2)を係止する。続いて、チェーンブロック(8)の一端を桟橋構築用足場(1)の掛止部(6)に掛止し、他端を桟橋完成部分(A)に掛止することにより、チェーンブロック(8)にて桟橋完成部分(A)と桟橋構築用足場(1)を連結する。
設置する桟橋構築用足場(1)の数は、1つでも複数でもよく、桟橋完成部分(A)の幅(換言すれば構築される桟橋の幅)に応じて適宜設定される。例えば、桟橋構築用足場(1)の幅を桟橋完成部分の幅と略同じとした場合には1つでよく、桟橋構築用足場(1)の幅を桟橋完成部分の幅の約半分とした場合には2つ並べて使用する。図2では2つの桟橋構築用足場(1)を桟橋の幅方向(紙面垂直方向)に並べて設置している様子が示されている。
【0029】
<2.杭立設工程>
足場設置工程により設置された桟橋構築用足場(1)の延長端部近傍において、管状の杭(鋼管杭等)を上下方向にガイドしながら地面に立設する。
この杭立設工程は、1種類の方法には限定されず、施工現場の状況に応じて複数種類の方法を使い分けることが可能である。以下、代表的な方法を3つ例示する。
【0030】
<2−1.第1の方法>
第1の方法では、杭立設工程が、テーブルマシン設置工程と削孔工程と杭建込工程からなる。
テーブルマシン設置工程では、桟橋構築用足場(1)の延長端部近傍の上部に、ロータリーテーブルマシン(9)を設置する。
削孔工程では、図3に示すように、設置されたロータリーテーブルマシン(9)に掘削用ロッド(10)を挿通し、掘削用ロッド(10)を利用して地面を削孔する。具体的には、ビッドとエアハンマを備えた公知のダウンザホールハンマ用の掘削用ロッド(10)をロータリーテーブルマシン(9)に挿通し、掘削用ロッド(10)の回転によるビッドの回転とエアハンマによる打撃を利用して地面を掘削する。
杭建込工程では、図4に示すように、鋼管杭等の管状の杭(11)をクレーンにより吊り下げて、削孔工程により形成された穴に建て込む。このとき、桟橋構築用足場(1)が管状の杭(11)を上下方向にガイドする導材の役割を果たす。
【0031】
<2−2.第2の方法>
第2の方法では、杭立設工程が、導材設置工程と杭打設工程からなる。
導材設置工程では、桟橋構築用足場(1)の延長端部近傍の上部に、杭回転防止機構を備えた回転防止導材(12)を設置する。回転防止導材(12)は、図5において矢印で右下に引き出された拡大平面図に示すように、鋼管杭等の管状の杭(11)が挿通される円形の穴の周囲に沿って3つの回転防止ローラ(13)を備えている。回転防止ローラ(13)は、杭(11)を前記穴に挿通した時に杭の外周に沿って密接する鼓形状のローラである。これにより、回転防止ローラ(13)は、杭(11)を前記穴に挿通した時に水平軸回りに回転して杭(11)を上下方向にガイドするとともに、杭(11)自体の回転を防止することができる。
杭打設工程では、図5に示すように、回転防止導材(12)に、クレーンにより吊り下げられた油圧式掘進機(吊オーガー)(14)にて上端部を保持された杭(11)を挿通し、油圧式掘進機(14)により杭(11)を地面に打ち込む。
【0032】
<2−3.第3の方法>
第3の方法では、杭立設工程が、導材設置工程と杭打設工程からなる。
導材設置工程では、桟橋構築用足場(1)の延長端部近傍の上部に、杭(11)を上下方向にガイドする導材(15)を設置する。
杭打設工程では、図6に示すように、導材(15)に、クレーンにより吊り下げられたバイブロハンマ(バイブロフォンサ)(16)にて上端部を保持された杭(11)を挿通し、バイブロハンマ(16)により杭(11)を地面に打ち込む。
【0033】
上記第1〜第3の方法により立設された杭(11)は、根入れ部にモルタルを充填することにより地面に固定する。
【0034】
<3.杭頭切断工程>
杭立設工程により立設された杭(11)の頭部(11a)を、桟橋構築用足場(1)の延長部(3)の上面と略同じ高さで切断して撤去する。(図7参照)
【0035】
<4.杭頭キャップ固定工程>
桟橋構築用足場(1)の延長部(3)の上面に沿って手摺(17)を取り付け、杭頭切断工程により切断された杭(11)の頭部に、杭頭キャップ(18)を被せて固定する。(図8参照)
杭頭キャップ(18)は、図8において矢印で右下に引き出された拡大正面図に示すように、円筒(18a)の上部に平板(18b)が取り付けられた構造を有している。円筒(18a)の周方向に沿って設けられた複数のボルト穴にボルト(21)を螺合し、ボルトの先端で杭(11)の外周面を押さえることにより、杭頭に杭頭キャップ(18)を固定する。
【0036】
<5.横桁固定工程>
杭頭キャップ固定工程により杭頭に固定された杭頭キャップ(18)の平板(18b)上に横桁(19)をボルト等により固定する。(図9参照) 横桁(19)は、図9において矢印で右下に引き出された拡大平面図に示すように例えばH形鋼からなり、長さ方向が上記延長方向と直角方向(桟橋幅方向)となるように固定する。
【0037】
<6.主桁固定工程>
横桁固定工程により固定された横桁(19)の上部に、H形鋼等からなる主桁(20)をボルト等により固定する。主桁(20)は、長さ方向が上記延長方向となるように固定し、主桁(20)の端部を桟橋完成部分(A)の主桁(A1)と連結する。(図10参照)
【0038】
<7.足場撤去工程>
桟橋構築用足場(1)をクレーンにより吊り上げて撤去し、覆工板(21)を設置する。(図11参照) 撤去した桟橋構築用足場(1)は、桟橋を更に延長する際に再度使用する。
【0039】
<8.梁連結工程>
上記工程により立設された杭(11)と桟橋完成部分(A)の杭(A2)を、桟橋完成部分(A)と同様に梁(図示略)により連結することにより、桟橋完成部分が延長された状態となる。
【0040】
その後、延長された桟橋完成部分に対して、上記した足場設置工程から梁連結工程を繰り返すことにより、所要長さの桟橋を構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る桟橋構築用足場及び桟橋構築方法は、山岳地等の精度良く杭打ちを行うことが困難な現場において杭式桟橋を施工するために好適に利用される。
【符号の説明】
【0042】
1 桟橋構築用足場
2 係止部
2a 係止部材
2b 係止部材
3 延長部
4 連結部材
9 ロータリーテーブルマシン
10 掘削用ロッド
11 杭
12 回転防止導材
14 油圧式掘進機(吊オーガー)
15 導材
16 バイブロハンマ
18 杭頭キャップ
18a 円筒
18b 平板
19 横桁
20 主桁
A 桟橋完成部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桟橋構築工事の際に使用される桟橋構築用足場であって、
桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用され、
前記桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部と、
前記係止部を前記桟橋完成部分に係止した時に、前記桟橋未完成部分に向けて延びる延長部と、
を備えていることを特徴とする桟橋構築用足場。
【請求項2】
前記係止部は、間隔をあけて形成された左右一対の係止部材からなり、
前記延長部は、前記左右一対の係止部材の夫々から互いに平行に延びる左右一対の延長部材からなるとともに、該左右一対の延長部材同士を連結する連結部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の桟橋構築用足場。
【請求項3】
請求項1又は2記載の桟橋構築用足場を使用する桟橋構築方法であって、
桟橋完成部分に対して前記桟橋構築用足場の係止部を係止することにより、該桟橋構築用足場を前記桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して設置する足場設置工程と、
設置された桟橋構築用足場の延長端部近傍において管状の杭を上下方向にガイドしながら地面に立設する杭立設工程と、
立設された杭の頭部を、前記桟橋構築用足場の延長部の上面と略同じ高さで切断する杭頭切断工程と、
前記切断された杭頭に、円筒の上部に平板が取り付けられた杭頭キャップを被せて固定する杭頭キャップ固定工程と、
前記杭頭キャップの平板上に横桁を固定する横桁固定工程と、
前記横桁の上部に主桁を固定して前記桟橋完成部分の主桁と連結する主桁固定工程と、
前記桟橋構築用足場を取り外す足場撤去工程と、
を備えていることを特徴とする桟橋構築方法。
【請求項4】
前記足場設置工程において、複数の前記桟橋構築用足場を前記桟橋完成部分の幅方向に並べて設置することを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法。
【請求項5】
前記杭立設工程が、
前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、ロータリーテーブルマシンを設置するテーブルマシン設置工程と、
前記ロータリーテーブルマシンに掘削用ロッドを挿通し、該掘削用ロッドを利用して地面を削孔する削孔工程と、
前記削孔工程により形成された孔に、前記管状の杭を建て込む杭建込工程と、
からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法。
【請求項6】
前記杭立設工程が、
前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、杭回転防止機構を備えた回転防止導材を設置する導材設置工程と、
前記回転防止導材に、クレーンにより吊り下げられた油圧式掘進機にて上端部を保持された前記管状の杭を挿通し、前記油圧式掘進機により前記管状の杭を地面に打ち込む杭打設工程と、
からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法。
【請求項7】
前記杭立設工程が、
前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、導材を設置する導材設置工程と、
前記導材に、クレーンにより吊り下げられたバイブロハンマにて上端部を保持された前記管状の杭を挿通し、前記バイブロハンマにより前記管状の杭を地面に打ち込む杭打設工程と、
からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法。
【請求項1】
桟橋構築工事の際に使用される桟橋構築用足場であって、
桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して使用され、
前記桟橋完成部分に対して上方から係止可能な係止部と、
前記係止部を前記桟橋完成部分に係止した時に、前記桟橋未完成部分に向けて延びる延長部と、
を備えていることを特徴とする桟橋構築用足場。
【請求項2】
前記係止部は、間隔をあけて形成された左右一対の係止部材からなり、
前記延長部は、前記左右一対の係止部材の夫々から互いに平行に延びる左右一対の延長部材からなるとともに、該左右一対の延長部材同士を連結する連結部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の桟橋構築用足場。
【請求項3】
請求項1又は2記載の桟橋構築用足場を使用する桟橋構築方法であって、
桟橋完成部分に対して前記桟橋構築用足場の係止部を係止することにより、該桟橋構築用足場を前記桟橋完成部分から桟橋を延長すべき桟橋未完成部分に向けて延長するように片持ち状に張り出して設置する足場設置工程と、
設置された桟橋構築用足場の延長端部近傍において管状の杭を上下方向にガイドしながら地面に立設する杭立設工程と、
立設された杭の頭部を、前記桟橋構築用足場の延長部の上面と略同じ高さで切断する杭頭切断工程と、
前記切断された杭頭に、円筒の上部に平板が取り付けられた杭頭キャップを被せて固定する杭頭キャップ固定工程と、
前記杭頭キャップの平板上に横桁を固定する横桁固定工程と、
前記横桁の上部に主桁を固定して前記桟橋完成部分の主桁と連結する主桁固定工程と、
前記桟橋構築用足場を取り外す足場撤去工程と、
を備えていることを特徴とする桟橋構築方法。
【請求項4】
前記足場設置工程において、複数の前記桟橋構築用足場を前記桟橋完成部分の幅方向に並べて設置することを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法。
【請求項5】
前記杭立設工程が、
前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、ロータリーテーブルマシンを設置するテーブルマシン設置工程と、
前記ロータリーテーブルマシンに掘削用ロッドを挿通し、該掘削用ロッドを利用して地面を削孔する削孔工程と、
前記削孔工程により形成された孔に、前記管状の杭を建て込む杭建込工程と、
からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法。
【請求項6】
前記杭立設工程が、
前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、杭回転防止機構を備えた回転防止導材を設置する導材設置工程と、
前記回転防止導材に、クレーンにより吊り下げられた油圧式掘進機にて上端部を保持された前記管状の杭を挿通し、前記油圧式掘進機により前記管状の杭を地面に打ち込む杭打設工程と、
からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法。
【請求項7】
前記杭立設工程が、
前記桟橋構築用足場の延長端部近傍の上部に、導材を設置する導材設置工程と、
前記導材に、クレーンにより吊り下げられたバイブロハンマにて上端部を保持された前記管状の杭を挿通し、前記バイブロハンマにより前記管状の杭を地面に打ち込む杭打設工程と、
からなることを特徴とする請求項3記載の桟橋構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−162862(P2012−162862A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22096(P2011−22096)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(596109273)株式会社高知丸高 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(596109273)株式会社高知丸高 (17)
【Fターム(参考)】
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