説明

棒状化粧料及び棒状化粧品

【課題】繰り出し容器の横断面の形状に関わらず、使用感及び外観性を良好に維持できる棒状化粧料を、提供すること。
【解決手段】棒状化粧品100は、繰り出し容器3の筒体40に棒状化粧料2を収容しており、棒状化粧料2は、少なくとも、固形油分と、液状又は半固形油分と、を含有しており、固形油分を20〜35重量%含有しており、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しており、液状又は半固形油分中にアボカド油を含有している、ことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、リップライナー、リップクリーム等の棒状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状化粧料は、一般に、棒状化粧料用の繰り出し容器の筒体内に収容されて、棒状化粧品として使用される。
【特許文献1】特開2007−176900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、棒状化粧品における棒状化粧料は、良好な使用感、例えば、「滑りのよさ」、「付きの良さ」等が要求され、また、繰り出し容器の筒体から繰り出して使用されるために、外観性を良好に維持できることも要求される。
しかしながら、棒状化粧品における棒状化粧料は、通常、固形油分と、液状又は半固形油分とを必須の構成成分として含有しており、この固形油分中のパラフィンワックスの含有量が増えると、特に、固形油分中のパラフィンワックス含量が50重量%以上になると、使用感に問題があった。また、更に、上記筒体の横断面が楕円形状等の非円形形状を有している場合には、棒状化粧料を筒体から繰り出して使用する際に、棒状化粧料の周面に、「剥がれ」、「陥没」、及び「割れ」、という不具合が発生し、外観性が損なわれることがあった。
【0004】
本発明は、繰り出し容器の横断面の形状に関わらず、使用感及び外観性を良好に維持できる棒状化粧料を、提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の棒状化粧料は、少なくとも、固形油分と、液状又は半固形油分と、を含有しており、固形油分を20〜35重量%含有しており、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上、好ましくは75重量%、より好ましくは90重量%以上、含有しており、更に、液状又は半固形油分中にアボカド油を含有している、ことを特徴としている。
【0006】
本発明の棒状化粧品は、棒状化粧料を収容するための筒体と、筒体内に収容された棒状化粧料を筒体から繰り出すための繰り出し機構と、を備えた繰り出し容器と、筒体内に収容された棒状化粧料と、を備えた、棒状化粧品において、棒状化粧料が、筒体内に摺接可能に嵌合しており、少なくとも、固形油分と、液状又は半固形油分と、を含有しており、固形油分を20〜35重量%含有しており、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上、好ましくは75重量%、より好ましくは90重量%以上、含有しており、更に、液状又は半固形油分中にアボカド油を含有している、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の棒状化粧料によれば、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しているにも関わらず、液状又は半固形油分中にアボカド油を含有しているので、使用感を良好に維持できる。しかも、本発明の棒状化粧料によれば、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しているので、横断面非円形形状の筒体を有する繰り出し容器に収容し、そこから、繰り出して使用する際においても、周面に剥がれが生じるのを防止でき、及び/又は、周面に陥没が生じるのを防止でき、及び/又は、割れが生じるのを防止できる。すなわち、繰り出し容器の横断面の形状に関わらず、外観性を良好に維持できる。
【0008】
本発明の棒状化粧品によれば、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しているにも関わらず、液状又は半固形油分中にアボカド油を含有しているので、使用感を良好に維持できる。しかも、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しているので、繰り出して使用する際において、周面に剥がれが生じるのを防止でき、及び/又は、周面に陥没が生じるのを防止でき、及び/又は、割れが生じるのを防止できる。すなわち、繰り出し容器の横断面の形状に関わらず、外観性を良好に維持できる。。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の棒状化粧料は、少なくとも、固形油分と、液状又は半固形油分と、を含有しており、固形油分を20〜35重量%含有しており、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しており、液状又は半固形油分中にアボカド油を含有している。
【0010】
本発明に利用できるパラフィンワックスとしては、石油から得た固形の炭化水素類の混合物(例えば、C1634〜C4082の混合物であって、その主成分がC2042〜C3062である混合物等)が挙げられる。その平均分子量は、300〜500程度である。また、その融点は、通常は40〜70℃程度であり、好ましくは50〜70℃程度であり、より好ましくは60〜70℃程度である。本発明におけるパラフィンワックスとしては、化粧料の成分として通常使用されているものを特に制限なく使用することができる。市販品を使用してもよく、市販品としては、例えば、PARAFFIN WAX SP、精製パラフィンワックス、パラフィン、Paraffin wax(いずれも商品名)等が挙げられ、これらは、岩瀬コスファ(株)、日興リカ(株)、新日本石油(株)、日本精蝋(株)等から入手可能である。
【0011】
本発明に利用できるアボカド油としては、アボカド(別名:ワニナシ、Persea gratissima Gaertn)の果実から採取される油であって、化粧料の成分として通常使用されている油を、特に制限なく使用することができる。市販品を使用してもよく、市販品としては、例えば、ABO−1、Avocado Butter、AEC Avocado Butter、ESP Avocado Butter、Avocado Butter−Ultra Refined、Avo−Prill Persea Butter Prima、精製アボカド油、アボカド油、クロピュア アボガド、AVOCADO OIL EXTRA、NIKKOL精製アボカド油、Huile D‘Avocat(いずれも商品名)等が挙げられ、これらは、日光ケミカルズ(株)、日本油脂(株)、(株)アイ・ティー・オー、Jan Dekker、エスペリス、INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES、A&E Connock、EarthSupplied Products、Naturactiva、Biochemica International、SNOI、Lipo、CRODA等から入手可能である。棒状化粧料中のアボカド油の含有量は、良好な使用感を付与する観点から、5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%である。なお、アボカド油としては、良好な使用感を付与する観点から、水添アボカド油を使用するのが好ましい。
【0012】
本発明の棒状化粧料は、一般には、円柱状の形態を有しており、したがって、横断面真円形状を有している。
【0013】
しかしながら、近年では、横断面が、真円以外の、例えば楕円形状等の非円形形状を有する、棒状化粧料も、使用されるようになってきている。図1は、横断面楕円形状を有する棒状化粧料2の外観斜視図である。図2は、図1のII−II断面矢視図である。図2に示されるように、棒状化粧料2の横断面21は、楕円形状を有している。すなわち、棒状化粧料2は、横断面楕円形状を有している。棒状化粧料2の楕円形状は、図2に示されるように、長径寸法L及び短径寸法Sを有している。そして、楕円形状の扁平率は、式(A)によって算出した場合に、0.05〜0.8であり、好ましくは0.1〜0.6であり、より好ましくは0.2〜0.5である。
【0014】
扁平率=(長径寸法L−短径寸法S)/長径寸法L …… 式(A)
【0015】
固形油分としては、固体油脂、ロウ類、炭化水素系ワックス、高級アルコール、シリコーンワックス等を、使用できる。
・固体油脂の具体例としては、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油、硬化油、パーム油、硬化ヤシ油、モクロウ核油等が、挙げられる。
・ロウ類の具体例としては、カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ジョジョバロウ、セラックロウ、コメヌカロウ等が、挙げられる。
・炭化水素系ワックスの具体例としては、ポリエチレンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が、挙げられる。
・高級アルコールの具体例としては、ベヘニルアルコール、セタノール、バチルアルコール等が、挙げられる。
【0016】
液状又は半固形油分としては、液体油脂類、炭化水素油、エステル油、鎖状シリコーン油、環状シリコーン油、トリグリセリン、フッ素変性油等を、使用できる。
・液体油脂類の具体例としては、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、茶実油、コメヌカ油、胚芽油、落花生油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油等が、挙げられる。また、これらに水素添加等の処理を施したものは、形状が液体から半固形や固形に変わるものもあるが、液体油脂類と同様に利用できる。
・炭化水素油の具体例としては、スクワラン、流動パラフィン、ポリブテン、ワセリン等が、挙げられる。
・エステル油の具体例としては、ラノリン、イソステアリン酸イソセチル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2−ヘキシルデシル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソプロピルミリステート、2−オクチルドデシルオレエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2−エチルヘキシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等が、挙げられる。
・鎖状シリコーン油の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が、挙げられる。
・環状シリコーン油の具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が、挙げられる。
【0017】
なお、本発明の棒状化粧料は、固形油分、及び、液状又は半固形油分、の他に、用途に応じた有効成分や種々の添加剤を含有してもよい。
【0018】
例えば、本発明の棒状化粧料が口唇用化粧料である場合には、有効成分とは、口唇皮膚に対して所望の作用効果を期待して配合される成分を言う。ここで、所望の作用効果としては、(a)口唇のひびわれ、口唇のただれ、口唇炎、口角炎等を、治療すること、(b)日焼けによるしみ・そばかすを防止すること、(c)日やけ・雪やけ後のほてりを鎮静化すること、(d)口唇を清浄にすること、(e)口唇を保護すること、(f)口唇の乾燥を防止すること、(g)口唇の荒れを防止すること、(h)キメを整えること、(i)口唇に潤いを与えること、(j)口唇を滑らかにすること、(k)口唇を健やかに保つことが、挙げられる。有効成分の具体例としては、抗炎症成分(グリチルレチン酸ステアリル、サリチル酸等)、ビタミン成分(トコフェロール酢酸エステル、ビタミンA油等)、保湿成分(ヒアルロン酸ナトリウム、ハチミツ、ローヤルゼリーエキス等)、紫外線吸収成分(パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル等)、鎮痛成分(メントール等)、その他抗菌成分、抗ウイルス成分等が、挙げられる。
【0019】
添加剤としては、本発明の棒状化粧料の効果を損なわない限り、種々の、着色剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、滑沢剤、pH調整剤、矯味剤(甘味剤を含む)、矯臭剤(香料を含む)等を、使用できる。
【0020】
本発明の棒状化粧料において、固形油分の含有量は、20〜35重量%である。何故なら、固形油分の含有量が少なすぎる場合には、棒状に成形するのが困難であり、また、固形油分の含有量が多すぎる場合には、成形後の棒状化粧料が硬くなりすぎるからである。
【0021】
本発明の棒状化粧料は、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有している。この構成は、棒状化粧料が横断面非円形形状を有する場合に、特に有効である。すなわち、この含有量が、50重量%より少ない場合には、横断面非円形形状の棒状化粧料を繰り出し容器において使用する際に、棒状化粧料の表面に剥がれや陥没が生じたり、棒状化粧料に割れが生じたりするが、50重量%以上の場合には、そのような剥がれ等の内の少なくとも1つを防止できるからである。なお、固形油分中にパラフィンワックスが全く含有されていない場合には、剥がれ等が顕著に生じる。本発明の棒状化粧料の固形油分は、パラフィンワックスを、75重量%以上、好ましくは90重量%以上、含有しているのが、好ましい。特に、本発明の棒状化粧料の固形油分は、パラフィンワックスを100重量%含有するのが好ましい。すなわち、本発明の棒状化粧料の固形油分は、パラフィンワックスのみからなっているのが好ましい。この場合には、剥がれ、陥没、及び割れ、という不具合の全てを防止できる。一方、本発明の棒状化粧料の固形油分が、パラフィンワックスと、他の固形油分成分と、を含有する場合には、パラフィンワックスの好ましい含有量は、他の固形油分成分に応じて異なる傾向にある。例えば、
・パラフィンワックスとセレシンワックスとを含有する場合には、パラフィンワックスの含有量は90重量%以上がより好ましい。
・パラフィンワックスとキャンデリラロウとを含有する場合には、パラフィンワックスの含有量は50重量%以上で十分に好ましい。
・パラフィンワックスとミツロウとを含有する場合には、パラフィンワックスの含有量は50重量%以上で十分に好ましい。
・パラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスとを含有する場合には、パラフィンワックスの含有量は75重量%以上がより好ましい。
【0022】
そして、本発明の棒状化粧料は、液状又は半固形油分中にアボカド油を含有している。アボカド油は、保湿性が優れているので、本発明の棒状化粧料の使用感を良好に維持できる。「使用感」とは、例えば、「滑りの良さ」、「付きの良さ」、「好感度」等を言う。
【0023】
上述した本発明の棒状化粧料は、次の工程(1)、(2)をこの順に経て製造される。
(1)少なくとも、固形油分と、液状又は半固形油分と、を加熱溶解して液状化粧料を製造する、化粧料製造工程。
(2)液状化粧料を、筒状の型内に充填し、冷却して棒状に固化させる、成形工程。
なお、化粧料製造工程において、固形油分の含有量は20〜35重量%であり、固形油分はパラフィンワックスを50重量%以上含有しており、液状又は半固形油分はアボカド油を含有している。また、化粧料製造工程では、必要に応じて、上述した有効成分や添加剤を含有させてもよい。
【0024】
なお、上記製造方法において、筒状の型が横断面楕円形状を有している場合には、横断面楕円形状の棒状化粧料2が得られる。
【0025】
そして、上述した本発明の棒状化粧料は、一般に、繰り出し容器に収容されて、棒状化粧品として使用される。図3〜図8は、本発明の棒状化粧料が横断面楕円形状を有する場合の棒状化粧品を示している。図3は、本発明の棒状化粧品100の外観斜視図である。図4は、棒状化粧品100の使用状態の斜視図である。図5は、図3のV−V断面矢視図である。図6は、図3のVI−VI断面矢視図である。図7は、図3の平面図である。図8は、図3の底面図である。棒状化粧品100は、棒状化粧料2と繰り出し容器3とを備えている。繰り出し容器3は、棒状化粧料2を収容するための筒体40と、筒体40内に収容された棒状化粧料2を筒体40から繰り出すための繰り出し機構50と、筒体40を塞ぐキャップ60と、を備えている。キャップ60は、筒体40に対して着脱可能である。なお、繰り出し容器3は、一般的には、ABS、AS、ポリプロピレン等の硬質の合成樹脂で構成されるが、具体的には、棒状化粧料2の構成成分との相互作用等の製剤的特徴や、生産性等も、考慮して適宜選択された、材料で、構成される。また、本発明の製造方法を採用する場合においては、繰り出し容器3は、耐熱性等を考慮して、ポリプロピレンで構成されることが好ましい。
【0026】
筒体40は、横断面楕円形状を有している。棒状化粧料2は、筒体40内に摺接可能に嵌合している。
【0027】
繰り出し機構50は、基台51及び回転軸52を備えている。基台51は、棒状化粧料2が充填される凹部511を有している。回転軸52は、底部に露出しているダイヤル521と、筒体40内にダイヤル521から真っ直ぐに延びた中軸522と、を有している。中軸522は、表面に多数の溝523を有している。基台51は、中軸522の溝523に螺合しており、中軸522が回転すると、中軸522に沿って上下動するようになっている。したがって、繰り出し機構50によれば、ダイヤル521が回転されることによって、中軸522が回転し、それに伴って、基台51が棒状化粧料2を伴って筒体40内を上下動し、それにより、棒状化粧料2が繰り出される。
【0028】
棒状化粧品100は、図4に示されるように、筒体40内の棒状化粧料2を、繰り出し機構50によって筒体40から繰り出しながら使用に供されるようになっている。ここで、「繰り出す」とは、棒状化粧料2を筒体40に対して「出し入れする」ことを意味する。
【0029】
上述した棒状化粧品100は、次の工程(1)、(2)をこの順に経て製造される。
(1)少なくとも、固形油分と、液状又は半固形油分と、を加熱溶解して液状化粧料を製造する、化粧料製造工程。
(2)液状化粧料を、横断面楕円形状の筒体40内に充填し、冷却して棒状に固化させる、成形工程。
なお、化粧料製造工程において、固形油分の含有量は20〜35重量%であり、固形油分はパラフィンワックスを50重量%以上含有しており、液状又は半固形油分はアボカド油を含有している。また、化粧料製造工程では、必要に応じて、上述した有効成分や添加剤を含有させてもよい。
【0030】
なお、筒体40が横断面真円形状を有している場合には、円柱状の棒状化粧料を収容した棒状化粧品が得られる。
【0031】
上述した棒状化粧品100の製造方法によれば、筒体40内に棒状化粧料2が直接に形成されるので、棒状化粧品100の生産性を向上できる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、表中の成分の配合量の単位は、特に記載のない場合には、全て重量%(w/w%)である。
【0033】
[棒状化粧料及び棒状化粧品の製造方法]
以下の表1に示される「固形油分」と「液状又は半固形油分」とを、75〜85℃で加熱溶解して液状化粧料を製造し(化粧料製造工程)、この液状化粧料を、繰り出し容器の横断面真円形状の筒体内に充填し、冷却して棒状に固化させた(成形工程)。これにより、横断面真円形状の棒状化粧料及び棒状化粧品を同時に得た。なお、棒状化粧料の寸法は、直径寸法:12mm、全長:35mmである。
【0034】
また、以下の表2〜7に示される「固形油分」と「液状又は半固形油分」とを、75〜85℃で加熱溶解して液状化粧料を製造し(化粧料製造工程)、この液状化粧料を、繰り出し容器3の筒体40内に充填し、冷却して棒状に固化させた(成形工程)。これにより、横断面楕円形状の棒状化粧料2及び棒状化粧品100を同時に得た。なお、棒状化粧料2の寸法は、長径寸法L:18mm、短径寸法S:10mm、扁平率:0.44、全長:35mmである。
【0035】
また、表1〜7においては、固形油分の含有量が20〜35重量%であり、固形油分がパラフィンワックスを50重量%以上含有しており、液状又は半固形油分がアボカド油を含有している、例を、実施例として示し、それ以外を比較例として示している。
【0036】
[評価試験]
得られた棒状化粧品における棒状化粧料について、「使用感試験」及び「外観試験」を行った。
【0037】
(1)使用感試験
表1に示される実施例1及び比較例1について、使用感試験を行った。
具体的には、棒状化粧料を、11人の成人女性の唇に、使用してもらい、「滑りの良さ」、「付きの良さ」、「好感度」について、主観的に判断してもらった。表1は、その結果を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1からわかるように、実施例1では、液状又は半固形油分が水添アボカド油を含有しているので、使用感の全てが良好である。したがって、以下に示す実施例2〜15も、水添アボカド油を含有しているので、使用感の全てが良好であると、推測できる。
【0040】
(2)外観試験
表2〜7に示される実施例2〜15及び比較例2〜11について、外観試験を行った。
具体的には、棒状化粧料2の全長を、筒体40から1回繰り出した後に、「剥がれ」、「陥没」、及び「割れ(折れ)」、という不具合の有無を、目視で観察した。なお、「1回繰り出す」とは、1回出し入れすることを意味する。
【0041】
なお、表2〜表7の不具合の欄において、「0/3」のように分数で示されている値は、「該当サンプル数/全サンプル数」を意味する。例えば、「陥没」における「0/3」は、3個のサンプルの内、陥没の生じたサンプルが0個であることを意味する。また、「剥がれ(面積)」における「0%」は、棒状化粧料2の周面において、剥がれた面積が周面の全面積に対して0%であることを意味する。また、「剥がれ」における「0/5」は、全サンプル5個の内、剥がれが生じたサンプルが0個であることを意味する。
【0042】
【表2】

【0043】
表2において、実施例2〜5と比較例2〜4とを対比するとわかるように、本発明の棒状化粧料2中の固形油分の含有量は、20〜35重量%である必要がある。比較例1では、固形油分の含有量が少ないので、成形性が不良であり、比較例2では、固形油分の含有量が多いので、棒状化粧料2が硬くなりすぎている。そして、実施例2〜5では、固形油分中のパラフィンワックス含有量が100%であるので、「剥がれ」、「陥没」、及び「割れ(折れ)」が、全く発生していない。
【0044】
【表3】

【0045】
表3において、実施例6〜9と比較例5〜8とを対比するとわかるように、本発明の棒状化粧料2では、固形油分がパラフィンワックスを含有している必要がある。比較例5〜8では、固形油分がパラフィンワックス以外の成分からなっているため、不具合が顕著である。
【0046】
【表4】

【0047】
表4からわかるように、本発明の棒状化粧料2では、固形油分が、パラフィンワックス以外の成分として、セレシンを10〜50重量%含有してもよい。この場合でも、「剥がれ」、「陥没」、及び「割れ」、という不具合を防止できる。
【0048】
【表5】

【0049】
表5からわかるように、本発明の棒状化粧料2では、固形油分が、パラフィンワックス以外の成分として、キャンデリラロウを50重量%含有してもよい。この場合でも、「剥がれ」、「陥没」、及び「割れ」、という不具合を防止できる。
【0050】
【表6】

【0051】
表6からわかるように、本発明の棒状化粧料2では、固形油分が、パラフィンワックス以外の成分として、ミツロウを50重量%含有してもよい。この場合でも、「剥がれ」、「陥没」、及び「割れ」、という不具合を防止できる。
【0052】
【表7】

【0053】
表7からわかるように、本発明の棒状化粧料2では、固形油分が、パラフィンワックス以外の成分として、マイクロクリスタリンワックスを10〜25重量%含有してもよい。この場合でも、「剥がれ」、「陥没」、及び「割れ」、という不具合を良好に防止できる。
【0054】
なお、上述したように、棒状化粧料は、「固形油分」及び「液状又は半固形油分」以外に、「有効成分」や「添加剤」を含有してもよく、そのような実施例を表8、9に示す。これらの実施例の、棒状化粧料及び棒状化粧品も、表1〜7の例と同様に製造した。すなわち、表8、9に示される「固形油分」と「液状又は半固形油分」と「有効成分」と「添加剤」とを、75〜85℃で加熱溶解して液状化粧料を製造し(化粧料製造工程)、この液状化粧料を、繰り出し容器の、横断面真円形状又は横断面非円形形状(例えば、横断面楕円形状)の筒体内に充填し、冷却して棒状に固化させた(成形工程)。これにより、棒状化粧料及び棒状化粧品を同時に得た。
【0055】
【表8】

【0056】
【表9】

【0057】
表8、9に示される実施例16〜23によっても、上述した実施例と同様の効果を発揮できる。すなわち、実施例16〜23によれば、繰り出し容器の筒体の横断面の形状に関わらず、液状又は半固形油分が水添アボカド油を含有しているので、使用感の全てが良好である。
【0058】
更に、繰り出し容器の筒体が横断面楕円形状である場合は、実施例16〜23によれば、固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しているので、棒状化粧料2を繰り出し容器3の筒体40から繰り出して使用する際においても、周面に剥がれが生じるのを防止でき、及び/又は、周面に陥没が生じるのを防止でき、及び/又は、割れが生じるのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の棒状化粧料は、繰り出し容器の横断面の形状に関わらず、使用感及び外観性及びを良好に維持できるので、産業上の利用価値が大である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の棒状化粧料の外観斜視図である。
【図2】図1のII−II断面矢視図である。
【図3】本発明の棒状化粧品の外観斜視図である。
【図4】図3の棒状化粧品の使用状態の斜視図である。
【図5】図3のV−V断面矢視図である。
【図6】図3のVI−VI断面矢視図である。
【図7】図3の平面図である。
【図8】図3の底面図である。
【符号の説明】
【0061】
100 棒状化粧品 2 棒状化粧料 21 横断面 3 繰り出し容器 40 筒体 50 繰り出し機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、固形油分と、液状又は半固形油分と、を含有しており、
固形油分を20〜35重量%含有しており、
固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しており、
液状又は半固形油分中にアボカド油を含有している、ことを特徴とする棒状化粧料。
【請求項2】
棒状化粧料中にアボカド油を5〜15重量%含有している、請求項1記載の棒状化粧料。
【請求項3】
アボカド油が水添アボカド油である、請求項1又は2記載の棒状化粧料。
【請求項4】
横断面非円形形状を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の棒状化粧料。
【請求項5】
棒状化粧料を収容するための筒体と、筒体内に収容された棒状化粧料を筒体から繰り出すための繰り出し機構と、を備えた繰り出し容器と、
筒体内に収容された棒状化粧料と、
を備えた、棒状化粧品において、
棒状化粧料が、
筒体内に摺接可能に嵌合しており、
少なくとも、固形油分と、液状又は半固形油分と、を含有しており、
固形油分を20〜35重量%含有しており、
固形油分中にパラフィンワックスを50重量%以上含有しており、
液状又は半固形油分中にアボカド油を含有している、ことを特徴とする棒状化粧品。
【請求項6】
棒状化粧料中にアボカド油を5〜15重量%含有している、請求項5記載の棒状化粧品。
【請求項7】
アボカド油が水添アボカド油である、請求項5又は6に記載の棒状化粧品。
【請求項8】
上記筒体の横断面形状が、非円形形状である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の棒状化粧品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−269880(P2009−269880A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123496(P2008−123496)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】