説明

棘突起間インプラントおよび埋込み方法

【課題】脊柱状態を治療するための医療デバイスおよびそれを埋め込む方法を提供する。
【解決手段】本明細書においては、脊柱状態を治療するための医療デバイスが記述されている。本発明の医療デバイスには、隣接する棘突起間に配置される、近位保持部材および遠位保持部材を有するスペーサが含まれており、遠位保持部材は、近位保持部材に対して、初期埋込み構成と最終ロック構成との間で回転させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は一般に脊柱状態の治療に関し、より詳細には隣接する棘突起間の埋込みのためのデバイスを使用した脊柱狭窄症の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]腰椎脊柱狭窄症による神経性間欠性は行症の臨床上の症候群は、腰および四肢の頻繁な疼痛源であり、歩行障害をもたらし、また、年配者における他の形態の障害の原因になっている。徴候的腰椎脊柱狭窄症の出現率および罹患率は確立されていないが、この状態は、65歳を超える患者の脊柱外科の最も頻繁な前兆である。
【0003】
[0003]腰椎脊柱狭窄症は、腰椎脊柱管が狭くなることを特徴とする棘の状態である。脊柱狭窄症の場合、脊柱管が狭くなって脊髄および脊髄神経を締めつけ、背中および脚の疼痛をもたらす。年間10,000人当たり約5人は、腰椎脊柱狭窄症に罹患すると推定されている。背中の疼痛のために内科医の手当てを求めている患者に関しては、約12%〜15%が腰椎脊柱狭窄症を有していると診断されている。
【0004】
[0004]腰椎脊柱狭窄症のための一般的な治療には、物理療法(姿勢の変化を含む)、投薬および場合によっては外科的処置がある。姿勢の変化および物理療法は、棘を屈曲させて圧迫を抑制し、かつ脊髄および脊髄神経のために利用することができる空間を広くするのに場合によっては有効であり、したがって締めつけられた神経の圧迫を軽減するのに有効である。NSAIDSなどの投薬および他の抗炎症性投薬は、疼痛を軽減するためにしばしば使用されているが、通常、疼痛の原因である脊柱圧迫に対処するためには、それらは有効ではない。
【0005】
[0005]外科的治療は、投薬または物理療法より侵略的であるが、適切な症例の場合、外科は、場合によっては腰椎脊柱狭窄症の症状の緩和を達成するための最良の方法である。外科的処置の主な目的は、中央脊柱管および神経孔の圧迫を抑制し、より広い空間を生成し、かつ脊髄神経根に対する圧迫を除去することである。腰椎脊柱狭窄症を治療するための最も一般的な外科的処置は、椎弓切除術および部分的な椎間関節切除術によって圧迫を直接取り除くことである。この手順の場合、棘にアクセスするために患者が切開されるため、一般的には患者に麻酔が施される。神経のためのより広い空間を生成するために、1つまたは複数の脊椎の板が除去される。椎間板を除去することも可能であり、また、隣接する脊椎を融合させて不安定な節を強くすることも可能である。報告されている圧迫除去椎弓切除術の成功率は65%を超えている。また、腰椎脊柱狭窄症の症状の著しい軽減は、これらの症例の多くで達成されている。
【0006】
[0006]別法としては、脊椎を伸延させ、椎骨節間の所望の分離を維持するために、脊椎の隣接する棘突起間に棘突起間デバイスを埋め込むことも可能である。このような棘突起間デバイスは、通常、それらの意図された目的のために機能するが、若干の改善が必要である。例えば、現在利用可能な多くの棘突起間デバイスは、様々な筋肉、靭帯、骨および他の組織が詰まっているその領域における空間が限定されているため、隣接する棘突起間に適切に配置する問題を抱えている。いくつかのデバイスには、後方−前方手法が必要である。これらのタイプのデバイスは、それらには棘突起間靭帯および棘上靭帯の両方を切断する必要があり、さもなければ隣接する棘突起の間の空間に内科医がアクセスすることができるよう、これらの靭帯を操作しなければならないため、望ましくない。いかなる外科的手順においても、患者の回復時間を最短化し、かつ外科的処置が成功する最大の機会を患者に提供するためには、周囲の組織に対する損傷が可能な限り最小化されることが望ましい。
【0007】
[0007]後方−前方手法を必要とする棘突起間デバイスが抱えている問題に鑑みて、横方向手法を許容するいくつかのデバイスが設計された。これらのデバイスのうちのいくつかは、直接後方−前方手法を必要とするこれらのデバイスに対する著しい改善である。しかしながら、隣接する棘突起間の空間に対する横方向手法を許容するデバイスであっても、それらのいくつかは依然として問題を抱えている。上で指摘したように、隣接する棘突起間の空間は限られている。したがって外科医にとっては、デバイスが空間の中に適切に配置されることが保証され、かつデバイスがその中に適切に配置された状態を維持することが保証されるようにデバイスを操作することは困難である。所望の空間に適切に配置された状態をデバイスが維持することを保証するためにデバイスの追加操作が必要である場合、この空間的な制限は、容易な挿入を妨げる要因になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]したがって棘突起間デバイスの改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明の棘突起間デバイスには、(i)隣接する棘突起間に配置されるように適合されたシャフト、および上方棘突起および下方棘突起の横方向の面に沿って配置されるように適合された遠位保持部材を有する主ボディ部分と、(ii)上方棘突起および下方棘突起の反対側の横方向の面に沿って配置されるように適合された近位保持部材が含まれている。また、上方棘突起と下方棘突起を係合させるためのダンパーリングを、近位保持部材と遠位保持部材の間の主ボディ部分のシャフトの周囲に配置することも可能である。近位保持部材は、主ボディ部分のシャフトの近位部分を配置することができる中央管腔を画定している中央部分を有している。シャフトの近位部分および中央管腔は、近位保持部材を主ボディ部分に対して回転させることができるように構成されている。遠位保持部材の長軸の長さは、隣接する棘突起が所望の間隔まで伸延した場合に、これらの隣接する棘突起間の距離より長いことが好ましい。遠位保持部材の短軸の長さは、隣接する棘突起が所望の間隔まで伸延した場合に、これらの隣接する棘突起間の距離に概ね等しいことが好ましい。
【0010】
[0010]本発明の棘突起間デバイスの構成が埋込み構成である場合、近位保持部材は、遠位保持部材の長軸の配向に対して実質的に垂直の方向にその長軸が延在するように配向される。棘突起間デバイスの構成がそのロックされた最終構成である場合、近位保持部材の長軸は、遠位保持部材の長軸と実質的に整列した平行の方向に延在する。シャフトの近位部分には、近位保持部材の中央管腔内に形成された相補部分と協同するロック機構の一部が含まれている。このロック機構は、近位保持部材および遠位保持部材の長軸が、互いに整列し、かつ平行である方向に延在している場合、近位保持部材が主ボディ部分に対してロックされることを保証する。したがってデバイスは、シャフトおよびダンパーリングが、隣接する棘突起間に配置され、かつ実質的に直角をなして矢状面を交差するよう、隣接する棘突起間の所定の位置に固定された状態を維持することができる。この位置では、遠位保持部材および近位保持部材の長軸が、矢状面および冠状平面に対して概ね平行で、かつ軸平面に対して概ね垂直の方向に延在するよう、遠位保持部材は、上方棘突起および下方棘突起の遠位面に沿って配置され、また、近位保持部材は、上方棘突起および下方棘突起の近位面に沿って配置される。
【0011】
[0011]本発明の棘突起間デバイスの構成が上で説明した埋込み構成の場合、遠位保持部材は、貫通する開口を生成するために切開された棘突起間靭帯を介して挿入される。そうすることにより横方向手法を使用して遠位保持部材に開口を通過させることができ、また、隣接する棘突起間の空間を通過させることができる。遠位保持部材は、遠位保持部材の長軸が軸平面に対して概ね平行になるように配向され、かつ矢状面および冠状平面に対して一定の角度をなして配向される。この配向では、短軸は、矢状面および冠状平面に対して概ね平行であり、かつ軸平面に対して概ね垂直である。これにより、隣接する棘突起間の空間中への本発明の棘突起間デバイスの運動が、遠位保持部材のその短軸に沿った寸法によって妨害されないことが保証される。したがって遠位保持部材は、周囲の組織に対する最小の破壊で、隣接する棘突起間の空間を通過することができる。重要なことには、棘上靭帯は、手順の間、妨害されない状態を維持する。デバイスを適切に配置するためには、場合によっては、隣接する棘突起の間の空間を最初に遠位保持部材の前縁に通過させなければならない。当然、所定の位置に適切に配置するためには、遠位保持部材の配向を調整することができなければならない。例えば、遠位保持部材は、埋込み手順の一部またはすべての間、(i)デバイスの縦軸の周り、(ii)その長軸の周り、および/または(iii)その短軸の周りに回転させることができなければならない。
【0012】
[0012]遠位保持部材が、隣接する棘突起の遠位面に隣接すると、遠位保持部材を近位保持部材に対して回転させることができる。この回転により、近位保持部材の長軸および遠位保持部材の長軸が、互いに概ね平行で、かつ矢状面および冠状平面に対して概ね平行であり、また、軸平面に対して概ね垂直である方向に延在するよう、遠位保持部材が近位保持部材に対してロックされる。上で指摘したように、遠位保持部材および近位保持部材の長軸は、隣接する棘突起間の距離より長い寸法を画定している。近位保持部材のその長軸に沿った寸法は、遠位保持部材のその長軸に沿った寸法より大きいことが好ましい。当然、近位保持部材と遠位保持部材の間の距離は、隣接する棘突起の遠位面と隣接する棘突起の近位面との間の距離よりわずかに長くしなければならない。このようにして、本発明の棘突起間デバイスは、近位保持部材および遠位保持部材によって所定の位置に保持され、また、脊柱が伸長している間、シャフトおよび/またはダンパーリングが、隣接する棘突起間の空間のへこみを防止している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】[0013]デバイスの遠位端から見た本発明の棘突起間デバイスの分解斜視図である。
【図2】[0014]デバイスの近位端から見た本発明の棘突起間デバイスの部分分解斜視図である。
【図3】[0015]埋込み構成の本発明の棘突起間デバイスの近位斜視図である。
【図4】[0016]ロックされた構成の本発明の棘突起間デバイスの遠位斜視図である。
【図5】[0017]ロックされた構成の本発明の棘突起間デバイスの近位斜視図である。
【図6】[0018]図3の線6−6に沿って取った本発明の棘突起間デバイスの横断面図である。
【図7】[0019]図3の線7−7に沿って取った本発明の棘突起間デバイスの横断面図である。
【図8】[0020]図5の線8−8に沿って取った本発明の棘突起間デバイスの横断面図である。
【図9】[0021]図5の線9−9に沿って取った本発明の棘突起間デバイスの横断面図である。
【図10】[0022]本発明の棘突起間デバイスの近位保持部材の端面図である。
【図11】[0023]本発明の棘突起間デバイスが埋め込まれることになる、隣接する棘突起間の空間内の切開された棘突起間靭帯を示す人体棘の一部の略図である。
【図12】[0024]本発明の棘突起間デバイスを埋め込む方法を示す、本発明の棘突起間デバイスおよび人体棘の一部の略図である。
【図13】[0024]本発明の棘突起間デバイスを埋め込む方法を示す、本発明の棘突起間デバイスおよび人体棘の一部の略図である。
【図14】[0024]本発明の棘突起間デバイスを埋め込む方法を示す、本発明の棘突起間デバイスおよび人体棘の一部の略図である。
【図15】[0024]本発明の棘突起間デバイスを埋め込む方法を示す、本発明の棘突起間デバイスおよび人体棘の一部の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0025]本明細書および特許請求の範囲に使用されているように、単数形の表現には、単数であることをコンテキストが明確に示していない限り、複数の当該対象が含まれている。したがって、例えば「部材」という用語には、単一の部材または複数の部材の組合せを意味することが意図されており、また、「材料」には、1つまたは複数の材料、あるいはそれらの組合せを意味することが意図されている。さらに、「近位」および「遠位」という単語は、それぞれ、患者の身体内に最初に挿入されるデバイスの尖端(つまり遠位端)を使用して患者の中に医療デバイスを挿入することになる手術者(例えば外科医、内科医、看護士、技術者、等々)に近づく方向および手術者から遠ざかる方向を意味している。したがって、例えば患者の身体内に最初に挿入されるデバイス端は、そのデバイスの遠位端であり、一方、患者の身体に最後に入るデバイス端は、そのデバイスの近位端である。
【0015】
[0026]本明細書および特許請求の範囲に使用されているように、「身体」という用語は、腰椎脊柱狭窄症を治療するために、あるいはデバイスのための埋込み方法を教示または実践するために本発明のデバイスが配置される位置に関連して使用される場合、哺乳動物の身体を意味している。例えば、身体は、患者の身体もしくは死体または患者の身体の一部あるいは死体の一部であってもよい。
【0016】
[0027]本明細書および特許請求の範囲に使用されているように、「平行」という用語は、通常の製造許容差または測定許容差あるいは同様の許容差に対して、2つの幾何学的構造(例えば2本の線、2つの平面、1本の線および1つの平面、湾曲した2つの表面、1本の線および湾曲した1つの表面、等々)の間の関係を記述しており、これらの2つの幾何学的構造は、それらが実質的に無限に延在する際に実質的に交差しない。例えば、本明細書において使用されているように、1本の線および湾曲した1つの表面が無限に延在する際に交差しない場合、その1本の線は、湾曲したその1つの表面に対して平行である、と言われる。同様に、1つの平らな表面(つまり二次元表面)が、1本の線に対して平行である、と言われる場合、その線に沿ったすべての点は、その表面の最も近い部分から実質的に同じ距離だけ間隔を隔てている。2つの幾何学的構造は、本明細書においては、例えばそれらが許容差内で互いに平行である場合のように、名目上、それらが互いに平行である場合、互いに「平行」である、あるいは互いに「実質的に平行」である、として記述される。このような許容差には、例えば製造許容差、測定許容差、等々を含むことができる。
【0017】
[0028]本明細書および特許請求の範囲に使用されているように、「垂直」、「直角をなす」および「直角」という用語は、2つの幾何学的構造(例えば2本の線、2つの平面、1本の線および1つの平面、湾曲した2つの表面、1本の線および湾曲した1つの表面、等々)の間の関係を記述しており、これらの2つの幾何学的構造は、少なくとも1つの平面内で約90度の角度で交差する。例えば、本明細書において使用されているように、1本の線および湾曲した1つの表面が1つの平面内で約90度の角度で交差する場合、その1本の線は、湾曲したその1つの表面に対して垂直である、直角をなしている、あるいは直角である、と言われる。2つの幾何学的構造は、本明細書においては、例えばそれらが許容差内で互いに90度である場合のように、名目上、それらが互いに90度である場合、互いに「垂直」である、「直角をなして」いる、「直角」である、あるいは「実質的に垂直」である、「実質的に直角をなして」いる、「実質的に直角」である、として記述される。このような許容差には、例えば製造許容差、測定許容差、等々を含むことができる。
【0018】
[0029]本発明の棘突起間デバイス10には、(i)隣接する棘突起間に配置されるように適合されたシャフト120、および上方棘突起および下方棘突起の横方向の面に沿って配置されるように適合された遠位保持部材110を有する主ボディ部分100と、(ii)上方棘突起および下方棘突起の反対側の横方向の面に沿って配置されるように適合された近位保持部材200が含まれている。また、遠位保持部材110と近位保持部材200の間の主ボディ部分100のシャフト120の周囲にダンパーリング20を配置することも可能である。シャフト120の近位部分は、ダンパーリング20を嵌合させることができる凹所領域を遠位保持部材110とシャフト120の近位部分の間に画定するために、シャフト120の残りの部分より大きい直径を有していることが好ましい。例えば図1を参照されたい。近位保持部材200には、近位保持部材200を主ボディ部分100に対して回転させることができるよう、主ボディ部分100のシャフト120の近位部分を配置することができる中央管腔225を画定している中央部分220が含まれている。
【0019】
[0030]遠位保持部材110には、遠位上部ウィング111および遠位下部ウィング112が含まれている。遠位上部ウィング111は、デバイス10が隣接する棘突起間の空間の中に適切に配置された場合に、ダンパーリング20の縦軸が矢状面に対して概ね直角をなすように上方棘突起の遠位面と係合するように適合されている。例えば図15を参照されたい。この位置では、遠位下部ウィング112は、下方棘突起の遠位面と係合するように適合されている。本明細書において示されているように、遠位保持部材110は、長軸がA1であり、また、短軸がA2である概ね楕円形の構成を有している。楕円形の構成であることが好ましいが、第1の方向に対して垂直の方向の寸法より小さい寸法を第1の方向に提供する限り、遠位保持部材110の形状には他の任意の幾何学形状を使用することができる。長軸A1に沿った遠位保持部材110の寸法は、隣接する棘突起が所望の間隔まで伸延した場合のそれらの間の距離より大きい。短軸A2に沿った遠位保持部材110の寸法は、隣接する棘突起が所望の間隔まで伸延した場合のそれらの間の距離に概ね等しいことが好ましい。
【0020】
[0031]シャフト120の近位部分には、近位保持部材200の中央管腔225内に配置されている相補キー230と協同するスロット130が含まれている。2つのスロット130は、シャフト120の近位部分に沿って、約180度隔てて配置されていることが好ましい。これらのスロット130は、遠位保持部材110の短軸A2に対して実質的に平行の方向に延在している1本の線に沿ってそれらが整列するよう、180度隔てて整列していることがよりいっそう好ましい。また、シャフト120の近位端に隣接する周囲には、複数のラグが間隔を隔てて配置されている。これらのラグは、2つのセットのラグに分割され、個々のセットがスロット130の対の間に配置されるよう、約180度隔てて配置されていることが好ましい。図に示されているように、上部ラグ151aおよび151bは、遠位上部ウィング111と概ね整列しており、一方、下部ラグ152aおよび152bは、遠位下部ウィング112と概ね整列している。さらに、概ね平らな表面135が、シャフト120の近位部分に沿って、約180度隔てて配置されており、平らな表面135の各々は、スロット130の各々の間の1つのセットのラグに隣接して配置されている。言い換えると、平らな表面135は、長軸A1に対して実質的に平行の方向に延在している1本の線に沿って実質的に整列している。
【0021】
[0032]近位保持部材200には、近位上部ウィング210および近位下部ウィング215、ならびに中央部分220および中央管腔225が含まれている。本明細書において示されているように、近位保持部材200は、長軸がA3であり、また、短軸がA4である概ね楕円形の構成を有している。近位保持部材200は円周バーとして形成されている。しかしながら、近位保持部材200は、遠位保持部材110と同様、固体構成を有することも可能である。また、遠位保持部材110も、近位保持部材200と同様、円周バーとして形成することができる。近位保持部材200の構成の場合、楕円形の構成であることが好ましいが、第1の方向に対して垂直の方向の寸法より小さい寸法を第1の方向に提供する限り、近位保持部材200の形状には他の任意の幾何学形状を使用することができる。長軸A3に沿った近位保持部材200の寸法は、隣接する棘突起が所望の間隔まで伸延した場合のそれらの間の距離より大きい。長軸A3に沿った近位保持部材200の長さは、長軸A1に沿った遠位保持部材110の長さより長いことが好ましい。このより大きい寸法により、外科医に視覚キューが提供され、したがって外科医は、どちらの末端が近位部分で、どちらの末端が遠位部分であるかを速やかに決定することができる。さらに、デバイスの埋込みを容易にするためには、遠位保持部材110は比較的小さいことが好ましい。通常、棘突起の遠位面には、外科医がデバイスを操作するための広い空間は存在していない。
【0022】
[0033]キー230は、中央管腔225の中に、スロット130に対して相補受入れ方式で形成されている。2つのこのようなキー230は、中央管腔225の中に形成され、かつ短軸A4に沿って約180度隔てて配置されていることが好ましい。そうすることにより、遠位保持部材110の長軸A1が近位保持部材200の長軸A3に対して垂直の方向に延在すると、キー230を平らな表面135に整列させることができる。
【0023】
[0034]環状溝250は、中央管腔225の近位部分に沿ってその内部表面に沿って形成されている。環状溝250は、ラグ151a、151b、152aおよび152bのためのガイドとして作用するように形成されている。したがってラグ151a、151b、152aおよび152bは環状溝250の中に嵌合し、かつ近位保持部材200が主ボディ部分100に対して主ボディ部分100の縦軸の周りに回転すると、溝250に沿って移動することができる。ラグ151a、151b、152aおよび152bは、デバイス10をアセンブリしている間、主ボディ部分100がシャフト120の縦軸に沿った方向に移動して近位保持部材200と係合する際の環状溝250の中へのラグ151a、151b、152aおよび152bの移動を容易にするために、先細りになった近位端を有していることが好ましい。ラグ151a、151b、152aおよび152bは、平らな表面135に対して実質的に直角をなしている遠位端を有していることが好ましい。それにより、デバイス10がアセンブルされると、ラグ151a、151b、152aおよび152bを環状溝250から除去することが困難であることが保証され、また、主ボディ部分100を近位保持部材200から除去することができる可能性が最小化される。さらに、ラグ151aおよび151bは、キー230の幅より少なくともわずかに大きい距離だけ離れている。同様に、ラグ152aおよび152bも、キー230の幅より少なくともわずかに大きい距離だけ離れている。それにより、アセンブリの間、キー230が平らな表面135に隣接するよう、キー230をラグ151a、151b、152aおよび152bを通り越して移動させることができる。平らな表面135は、キー230を許容するための中央管腔225の壁と、中央管腔225内に嵌合するためのシャフト120の近位部分との間に十分な空間を提供している。
【0024】
[0035]キー230およびスロット130は、キー230がスロット130の中にぴったりと嵌合するように構成されている。したがって、遠位保持部材110の長軸A1が、近位保持部材200の長軸A3と整列し、かつ長軸A3に対して平行である方向に延在するよう、主ボディ部分100が近位保持部材200に対して回転すると、キー230がスロット130の中に落下し、近位保持部材200を主ボディ部分100に対してロックする。これにより、デバイス10の構成がそのロックされた構成である場合、シャフト120およびダンパーリング20が、実質的に直角をなして矢状面を交差するように隣接する棘突起間に配置された状態で、デバイス10を隣接する棘突起間に配置することができることが保証され、遠位上部ウィング111および遠位下部ウィング112は、それぞれ上方棘突起および下方棘突起の遠位部分に沿って配置され、また、近位上部保持部材210および近位下部保持部材215は、それぞれ上方棘突起および下方棘突起の近位部分に沿って配置される。これにより、埋込み後におけるその位置からのデバイス10の移動が防止される。キーおよびスロットロック機構であることが好ましいが、ロック機構が(i)主ボディ部分100と近位保持部材200の間の相対回転を許容し、かつ(ii)遠位保持部材110の長軸A1が近位保持部材200の長軸A3の方向と同じ方向に延在するように、主ボディ部分100および近位保持部材200を互いに対してロックする限り、他のロック機構をデバイス10と共に使用することができる。
【0025】
[0036]デバイス10の構成が例えば図3に示されているように埋込み構成である場合、近位保持部材200は、長軸A3が遠位保持部材110の長軸A1の配向に対して実質的に垂直になるように、つまり長軸A3が長軸A1の方向に対して実質的に垂直の方向に延在するように配向される。デバイス10の構成が例えば図5に示されているようにそのロックされた最終構成である場合、近位保持部材200の長軸A3は、遠位保持部材110の長軸A1と実質的に整列した方向に延在し、つまり長軸A3は、長軸A1の方向に対して実質的に平行の方向に延在する。キー230およびスロット130のこの構造により、初期埋込み位置と最終ロック位置との間で、主ボディ部分100を近位保持部材200に対して時計方向または反時計方向のいずれかに約90度回転させることができる。
【0026】
[0037]棘突起間靭帯は、通常、図には示されていないが、単純な解剖刀、電気外科デバイス、等々などの切断器具を使用して切開され、デバイス10の遠位部分を通過させることができる適切な大きさの開口が棘突起間靭帯中に生成される。図11を参照されたい。これにより、横方向手法を使用して、隣接する棘突起間の空間にデバイス10を埋め込むことができる。ほとんどの場合、最初に、図には示されていないが伸延ツールを使用して、隣接する棘突起間の空間を伸延させ、追加空間および患者に対する疼痛緩和を提供する必要がある。伸延が十分であることを内科医が確認すると、隣接する棘突起間の空間にデバイス10を配置することができる。デバイス10は、異なる量の伸延/隣接する棘突起間に必要な異なる広さの空間に適応するために、異なる大きさにすることができる。
【0027】
[0038]デバイス10の構成が上で説明した埋込み構成である場合、遠位保持部材110は、棘突起間靭帯中に形成された開口を介して挿入される。図12を参照されたい。遠位保持部材110は、その長軸A1が軸平面に対して概ね平行になり、かつ短軸A2が矢状面および冠状平面に対して概ね平行になるように配向される。この配向では、長軸A1は、矢状面および冠状平面に対して平行でも、垂直でもない。図12を参照されたい。この配向では、隣接する棘突起間の空間を通るデバイス10の移動が、短軸A2に沿った遠位保持部材110の寸法によって妨害されることはない。したがって遠位保持部材110は、周囲の組織に対する最小の破壊で、隣接する棘突起間の空間を通過することができる。重要なことには、棘上靭帯は、手順の間、妨害されない状態を維持する。デバイス10を適切に配置するためには、場合によっては、長軸A1が矢状面および冠状平面に対して平行でも、垂直でもない状態で、隣接する棘突起の間の空間を最初に遠位保持部材の前縁に通過させなければならない。遠位保持部材110の前縁が棘突起間靭帯中に形成された空間を通過すると、インプラント10の縦軸に対して垂直の軸の周りにデバイス10を回転させることができ、したがってインプラント10の縦軸は、冠状平面および軸平面に対して平行になり、また、矢状面に対して垂直になる。図12と図13を比較されたい。また、これにより、近位保持部材200が、隣接する上方棘突起および下方棘突起の近位面に沿って配置され、長軸A3は、矢状面および冠状平面に対して概ね平行になり、また、軸平面に対して概ね垂直になる。当然、所定の位置に適切に配置するためには、手順の間、遠位保持部材110の配向を調整することができなければならない。例えば、遠位保持部材110は、埋込み手順の一部またはすべての間、(i)デバイス10の縦軸の周り、(ii)その長軸の周り、および/または(iii)その短軸の周りに回転させることができなければならない。デバイス10が配置される身体の解剖学的構造の個々の特性のため、場合によってはこれらの操作が必要である。
【0028】
[0039]図13および14に示されているように、遠位保持部材110が、隣接する棘突起の遠位面に隣接すると、遠位保持部材110を近位保持部材200に対して、主ボディ部分100の縦軸の周りに回転させることができる。遠位保持部材110は、時計方向または反時計方向のいずれかに回転させることができる。この回転により、近位保持部材200の長軸A3および遠位保持部材110の長軸A1が、それらが同じ方向に延在し、したがって互いに概ね平行で、かつ矢状面および冠状平面に対して概ね平行であり、また、軸平面に対して概ね垂直になるように配向されるよう、遠位保持部材110が近位保持部材200に対してロックされる。上で指摘したように、遠位保持部材110および近位保持部材200の長軸A1およびA3は、それぞれ、隣接する棘突起間の距離より長い寸法を画定しており、近位保持部材200の寸法の方が大きいことが好ましい。当然、近位保持部材200と遠位保持部材110の間の距離は、隣接する棘突起の遠位面と隣接する棘突起の近位面との間の距離よりわずかに長くしなければならない。このようにして、デバイス10は、近位保持部材200および遠位保持部材110によって所定の位置に保持される。
【0029】
[0040]デバイス10は、例えば、チタン、チタン合金、外科用スチール、生体適合金属合金、ステンレス鋼、ニチノール、プラスチック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、炭素繊維、超高分子量(UHMW)ポリエチレンおよび他の生体適合重合材料などの様々な生体適合材料を使用して構築することができる。デバイス10の材料は、例えば、骨の圧縮強さと同様またはそれより強い圧縮強さを有することができる。一実施形態では、隣接する2つの棘突起の間に配置されるダンパーリング20は、棘突起の骨の弾性係数より大きい弾性係数を有する材料から形成されている。他の実施形態では、ダンパーリング20は、主ボディ部分100および近位保持部材200を形成するために使用される材料の弾性係数より大きい弾性係数を有する材料から形成されている。例えばダンパーリング20は、骨の弾性係数より大きい弾性係数を有することができ、一方、主ボディ部分100および近位保持部材100は、骨の弾性係数より小さい弾性係数を有している。脊柱が延長部分に移動する際の衝撃を和らげるためには、ダンパーリング20は、シリコーンなどの迎合材料で形成されることが好ましい。
【0030】
[0041]以上、本発明の様々な実施形態について説明したが、それらは単に一例として提供されたものにすぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。棘突起間デバイスについての以上の説明は、余す所のないものであることを意図したものでも、あるいはデバイスの発明を限定することを意図したものでもない。当業者には多くの修正および変形形態が明らかであろう。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって定義されるものとする。
【符号の説明】
【0031】
10 棘突起間デバイス
20 ダンパーリング
100 主ボディ部分
110 遠位保持部材
111 遠位上部ウィング
112 遠位下部ウィング
120 シャフト
130 スロット
151a、151b 上部ラグ
152a、152b 下部ラグ
200 近位保持部材
210 近位上部ウィング
215 近位下部ウィング
220 中央部分
225 中央管腔
230 相補キー
250 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の保持部材と、
第2の保持部材を有し、前記第1の保持部材に対して第1の位置と第2の位置の間で回転させることができる主ボディ部分と
を備えたデバイス。
【請求項2】
前記主ボディ部分を前記第1の位置と前記第2の位置の間で約90度回転させることができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記主ボディ部分が、前記主ボディ部分の近位部分から遠位部分まで延在する縦軸を画定し、また、前記第2の保持部材が前記遠位部分に隣接している、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の位置では、前記主ボディ部分を前記第1の保持部材に対して回転させることができない、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の保持部材が前記第1の保持部材の表面積より小さい表面積を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の保持部材と前記第2の保持部材の間の前記主ボディ部分の周りに配置されたダンパーリングをさらに備えた、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の保持部材が第1の長軸および第1の短軸を画定し、また、前記第2の保持部材が第2の長軸および第2の短軸を画定し、前記第1の位置では、前記第1の長軸および前記第1の短軸が、前記第2の長軸および前記第2の短軸がそれぞれ延在する方向に対して概ね直角をなす方向に延在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の保持部材が第1の長軸および第1の短軸を画定し、また、前記第2の保持部材が第2の長軸および第2の短軸を画定し、前記第2の位置では、前記第1の長軸および前記第1の短軸が、前記第2の長軸および前記第2の短軸がそれぞれ延在する方向に対して概ね平行の方向に延在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第2の位置では前記第1の保持部材および前記主ボディ部分をロックするように適合されたロックをさらに備えた、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
中に中央管腔を画定している近位保持部材と、
遠位保持部材、ならびに前記遠位保持部材から近位方向に延在している近位部分および遠位部分を有するシャフトを有する主ボディ部分であって、前記近位部分が前記中央管腔の中に配置された主ボディ部分と、
前記中央管腔の中に配置された少なくとも1つのキーと
を備え、前記シャフトの前記近位部分が前記少なくとも1つのキーと係合するように適合された少なくとも1つのスロットを画定しているデバイス。
【請求項11】
前記近位保持部材が長軸および短軸を含み、かつ前記短軸に沿って約180度隔てて配置された2つのキーをさらに備えた、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記遠位保持部材が長軸および短軸を含み、前記シャフトの前記近位部分が、前記遠位保持部材の前記短軸に対して実質的に平行の線に沿って概ね整列している、約180度隔てた2つのスロットを中に画定している、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記シャフトの前記近位部分が、それぞれ前記2つのスロットの間に配置された概ね平らな2つの表面を画定している、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記シャフトの前記近位部分に隣接して配置された複数のラグをさらに備えた、請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
前記シャフトの前記近位部分に隣接して配置された複数のラグをさらに備え、前記複数のラグが前記概ね平らな表面に隣接している、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記中央管腔の周囲に、その近位部分に隣接して配置された環状溝をさらに備え、前記複数のラグが、前記環状溝の中に配置されるように、また、前記環状溝に対して移動させることができるように適合された、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記シャフトの周囲に配置されたダンパーリングをさらに備えた、請求項10に記載のデバイス。
【請求項18】
遠位保持部材が上方棘突起の遠位面および隣接する下方棘突起の遠位面に隣接するように棘突起間の空間を介して前記遠位保持部材を挿入するステップと、
前記上方棘突起の近位面および前記隣接する下方棘突起の近位面に隣接して近位保持部材を配向するステップと、
前記遠位保持部材を前記近位保持部材に対して、第1の位置と第2の位置の間で回転させるステップと、
前記遠位保持部材を前記近位保持部材に対してロックするステップであって、前記近位保持部材の長軸および前記遠位保持部材の長軸が、互いに実質的に平行であり、かつ矢状面および冠状平面に対して実質的に平行である方向に延在するステップと
を含む医療デバイスを埋め込む方法。
【請求項19】
前記遠位保持部材が前記近位保持部材に対して、前記第1の位置から前記第2の位置まで約90度回転する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記挿入ステップで、前記近位保持部材の前記長軸および前記遠位保持部材の前記長軸が互いに実質的に直角をなす方向に延在する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−92712(P2011−92712A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−239486(P2010−239486)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(508361243)カイフォン・ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ (30)
【Fターム(参考)】