説明

棚板保持具形成方法及び棚板保持具

【課題】棚板に多少の厚み誤差があっても、挟持力を作用させることができる棚板保持具を、経済的に提供できるようにする。
【解決手段】棚板の縁部を厚み方向に挟み込み可能な挟持部5と、挟持部5を構成する一対の挟持片5A,5Bの間に凹部6を形成しつつ挟持片5A,5Bの基端部どうしを連結する連結部7とを有する棚板保持具Gを、金型11を用いたプラスチック成形法によって形成する棚板保持具形成方法であって、金型11を、凹部6の深さ方向に2分割に構成し、凹部6の開口側に位置させる第1金型11Aの金型温度が、凹部6の底側に位置させる第2金型11Bの金型温度より高くなるように温度制御して、両金型11の間にプラスチック材料を鋳込んで成形した後、鋳込まれた棚板保持具Gが自然収縮可能な時期に脱型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、壁に棚板を取り付けるのに使用することができる棚板保持具に関連した技術に関し、更に詳しくは、棚板の縁部を厚み方向に挟み込み可能な挟持部と、挟持部を構成する一対の挟持片の間に凹部を形成しつつ挟持片の基端部どうしを連結する連結部とを有する棚板保持具を、金型を用いたプラスチック成形法によって形成する棚板保持具形成方法、及び、その形成方法によって形成した棚板保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の棚板保持具に係わる技術としては、図7に示すように、挟持部5を構成する一対の挟持片5A,5Bどうしを、棚板2を挿入し得る離隔距離hをおいて並設し、棚板2をやや上向きの状態で壁1に取り付けることができる棚板保持具20があった(例えば、特許文献1参照)。
また、形成方法は、型成形によって一体成形(アルミニウム等)するものであった(例えば、特許文献1参照)。
但し、特許文献1のものは、アルミニウム製を例に挙げたものであり、本件のように、形成素材が金属より強度の低いプラスチックを使用する場合には、図7の挟持部5に補強のためのフランジ等を形成することで、使用材量を大きく増加させずに強度増加を図ることができる。
フランジ等を設けることで形状は複雑となり、金型を用いたプラスチック成形法においては、鋳込まれた製品の型抜けを考慮すると、中子を使用したり3分割の金型にすることが考えられるが、この場合は、コストアップになり易い。
よって、経済的に棚板保持具を形成するには、2分割金型を使用するのが好ましい。
2分割金型を使用する場合には、両挟持片5A,5Bの間に形成された凹部6の開口側に位置させる第1金型11Aと、凹部6の底側に位置させる第2金型11Bとを使用して形成するのが一般的に実施される。
この場合、両金型11A、11Bを合わせた状態で溶融鋳込材料を鋳込んだ後、その鋳込材料を両金型11A,11Bの間に保持したまま充分に冷却することで、脱型後に熱収縮による変形が発生するのを防止している。
また、脱型時には、両金型11A,11Bを前記凹部6の深さ方向に沿って離間させて脱型するものである。従って、脱型に伴う型抜けを可能とするためには、前記凹部6が奧広がりになってないことが必須であり、必然的に、前記一対の挟持片5A,5Bは、平行又はほぼ平行になる。
【0003】
【特許文献1】実開平4−95752号公報(段落番号〔0008〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の棚板保持具に係わる技術によれば、経済性を考慮して2分割金型を使用するものであるが、金型内に溶融鋳込材料を鋳込んだまま冷却養生を行う必要があるから、金型の拘束時間が長くなり、製造効率が低い問題点があった。
また、製品としては、一対の挟持片が、平行又はほぼ平行になるから、棚板の厚み寸法と両挟持片の間隔寸法とが一致している場合には挟持力を作用させることが可能であるが、棚板の厚み寸法の誤差で、前記挟持片の間隔寸法より小さいような場合、棚板の被挟持部と挟持片との間に隙間ができ、充分な挟持力を作用させ難くなる問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、棚板に多少の厚み誤差があっても、挟持力を作用させることができる棚板保持具を、経済的に提供できるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴手段は、棚板の縁部を厚み方向に挟み込み可能な挟持部と、挟持部を構成する一対の挟持片の間に凹部を形成しつつ挟持片の基端部どうしを連結する連結部とを有する棚板保持具を、金型を用いたプラスチック成形法によって形成する棚板保持具形成方法において、前記金型を、前記凹部の深さ方向に2分割に構成し、前記凹部の開口側に位置させる第1金型の金型温度が、前記凹部の底側に位置させる第2金型の金型温度より高くなるように温度制御して、前記両金型の間にプラスチック材料を鋳込んで成形した後、鋳込まれた棚板保持具が自然収縮可能な時期に脱型するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴手段によれば、前記金型を、前記凹部の深さ方向に2分割に構成し、前記凹部の開口側に位置させる第1金型の金型温度が、前記凹部の底側に位置させる第2金型の金型温度より高くなるように温度制御するから、両金型間に鋳込まれた製品の部分温度は、前記凹部の開口側の方が底側より高温の状態となり、その温度勾配を備えたまま固化し始める。
また、充分な冷却が行われる前の自然収縮可能な時期に脱型するから、脱型後の製品には、空気中への熱放出に伴う熱収縮変形が発生する。その際、製品の高温側の部分は、低温側の部分に比べて熱収縮量が大きくなり易い。
この現象は、凹部の底部分の厚み内においても見られ、図5に示すように、特に熱容量の大きな角K部分で、凹部6内周側表面の収縮量が大きく表れる。その変形によって、一対の挟持片5A,5Bは、基端側に比べて先端側どおしが近接する状態に変形し、製品としては、一対の挟持片5A,5B間隔が、先窄まりとなった形状となる(図5(b)参照)。
その結果、棚板2の厚み寸法が所定よりも小さいような場合でも、一対の挟持片5A,5Bの先端部どおしは棚板2の表裏面に当接して、充分な挟持力を作用させることができる。
そして、製造工程においては、従来のように、金型内で冷却が完了するまで養生するといったことを実施せず、早い時期に脱型するから、製造サイクルタイムの短縮化を図れる。
以上の結果、棚板に多少の厚み誤差があっても、挟持力を作用させることができる棚板保持具を、より経済的に提供できるようになる。
【0008】
本発明の第2の特徴手段は、前記両金型における前記一対の挟持片に対応する鋳込み面部分は、それぞれ型抜け方向に傾斜した抜け勾配をつけておくところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴手段によれば、本発明の第1の特徴手段による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、第1金型と第2金型とを離間方向に移動させて脱型する際に、製品が引っ掛かり難く、双方の鋳込み面部分での型抜けがスムースに実施でき、より効率的に製品の製造を行うことが可能となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記第1又は第2の特徴手段に記載の棚板保持具形成方法によって形成した棚板保持具であって、前記一対の挟持片どうしの離隔距離が、前記挟持片の基端部側より先端部側の方が小さく形成してあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、棚板の厚み寸法が所定よりも小さいような場合でも、一対の挟持片の先端部どおしは棚板の表裏面に当接して、充分な挟持力を作用させることができる。勿論、棚板の厚み寸法が所定の値である場合においても、一対の挟持片による強力な挟持力を棚板に作用させて、より確実な棚板保持を叶えることができる。
そして、形成方法が前記請求項1又は2に記載の方法であるから、中子を使用したり3分割の金型を使用せず、最もシンプルな金型構成によって棚板保持具を製造することができ、棚板保持具をローコストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0013】
図1〜4は、本発明の棚板保持具形成方法によって形成した棚板保持具の一実施形態品を示すもので、当該棚板保持具Gは、壁1に棚板2を取り付けるのに使用できるように構成されている。
【0014】
棚板保持具Gは、金型を用いたプラスチック成形法によって形成してあり、合成樹脂製の保持具本体3と、その保持具本体3の一部を覆う状態に取り付けられる合成樹脂製のカバー体4とを備えて構成されている(図3、図4参照)。
材質としては、前記棚板2を壁1に取り付けるに相応しい強度を発揮できるものであればよく、その条件に合うあらゆる種類の合成樹脂を使用することが可能である。
尚、本実施形態では、一例としてポリカーボネートによって形成してある。また、補強繊維を混入させることで強度増加を図ることも可能である。
【0015】
前記保持具本体3は、棚板2の縁部2aを厚み方向に挟み込み可能な挟持部5と、挟持部5を構成する一対の挟持片5A,5Bの間に凹部6を形成しつつ挟持片5A,5Bの基端部どうしを連結する連結部7との一体成形によって構成されている(図2、図3参照)。
また、前記連結部7、及び、前記一対の挟持片5A,5Bの内の下方側の挟持片5Bには、保持具本体3を壁1に取り付けるためのネジ挿通孔8がそれぞれ設けてある(図2、図4参照)。
【0016】
当該保持具本体3における両挟持片5A,5Bは、図4に示すように、壁1に取り付けた状態での突出量が、上方側の挟持片5Aより下方側の挟持片5Bの方が大きくなるように形成してある。
一方、前記一対の挟持片5A,5Bどうしの離隔距離hについては、図5(b)に示すように、前記挟持片5A,5Bの基端部側より先端部側の方が小さくなるように形成してある。具体的には、両挟持片5A,5Bの基端部側の離隔距離h1と、両挟持片5A,5Bの先端部側の離隔距離h2とが、h1>h2の関係を満たすように形成されている。
更に、前記基端部側の離間距離h1は、取付対象の棚板2の規格厚み寸法をもとにして設定してある。従って、凹部6内に棚板2を受け入れると、両挟持片5A,5Bの先端部側は棚板2によって押しひろげられ、略平行な状態となる(図4参照)。その際、作用反作用で、両挟持片5A,5Bによる挟持力を、棚板2に作用させることができ、強力に保持することができる。また、棚板2が規格厚み寸法より若干薄いような場合でも、両挟持片5A,5Bの弾性を利用して、棚板2を表裏から保持することができる。
【0017】
また、一対の挟持片5A,5Bは、側面視においては、略三角形の形状を示すが(図2、図3参照)、内部は中空に形成してあり、その中空部の開口は、成形金型の抜き方向となる壁側の対向面に形成されている(図4参照)。
前記下方側の挟持片5Bにおける前記凹部6に面する上面部5Baには、前記凹部6に受け入れた棚板2を固定するためのネジ挿通孔9が設けてある。また、前記上面部5Baの両側縁部は、図3に示すように、長手方向に沿ってそれぞれ切欠き部10を形成してある。この切欠き部10に、前記カバー体4に形成した上縁部の左右一対の係合部4aを沿わせてスライドすることで、カバー体4を保持具本体3に取り付けることができる。
尚、下方側の挟持片5Bの下端部には、前記カバー体4を取り付けた状態で外れ止めを図る係合部5Bbが形成してある。
【0018】
前記連結部7は、前述のとおり、保持具本体3を壁1に取り付けるためのネジ挿通孔8が形成してある(図4参照)。また、上方側の挟持片5Aとの境目に溝部7aを形成してあり、連結部7の可撓性の向上を図ってある。その結果、両挟持片5A,5Bどうしの可撓性も向上し、棚板2の保持を、より弾性的に行うことができるようになる。
【0019】
前記カバー体4は、前記下方側の挟持片5Bを覆える形状に形成してあり、図3に示すように、上縁部には、前記下方側の挟持片5Bの切欠き部10に係合する係合部4aが形成してあり、前記上面部5Baに沿う方向にスライドさせながら、前記係合部4aを切欠き部10に係合させることで取り付けることができる。
また、下方側の挟持片5Bの下端部に形成してある係合部5Bbに、カバー体4の内周面における下端部に形成した突起4bを係合させることで、カバー体4を外れ止め状態に取り付けることができる(図4参照)。
【0020】
次に、当該棚板保持具Gの形成方法について説明する
[1−1]2分割の金型11を用意する(図5参照)。
金型11は、前記凹部6の深さ方向に2分割に構成し、前記凹部6の開口側に位置させる第1金型11Aの金型温度が、前記凹部6の底側に位置させる第2金型11Bの金型温度より高くなるように温度制御する。また、両金型11における前記一対の挟持片5A,5Bに対応する鋳込み面部分は、それぞれ型抜け方向に傾斜した抜け勾配をつけておく。
[1−2]前記第1金型11A側から、両金型11間の鋳込み空間に溶融鋳込材料12を鋳込んで成形する(図5(a)参照)。
[1−3]鋳込まれた溶融鋳込材料12が固化した状態で、充分な冷却に至る前に脱型する。脱型された棚板保持具Gは、金型による拘束のない状態で自然冷却され、それに伴って熱変形を促進させる(図5(b)参照)。
この脱型後の自然冷却によって、前記一対の挟持片5の先端部側どうしが近接する方向に熱変形し、安定した形状に落ち着く。
【0021】
以上の工程によって前記棚板保持具Gを形成することができる。
【0022】
また、当該棚板保持具Gを使用した棚板取付手順を説明する(図1参照)。
[2−1]壁1に複数の保持具本体3を横間隔をあけてビス止めする。ビス止めは、図2に示すように、連結部7と下方側の挟持片5Bの各ネジ挿通孔8にビスを挿通して行う。
[2−2]各保持具本体3の凹部6に棚板2の縁部2aを挿入し、ネジ挿通孔9にビスを挿通して、棚板2を保持具本体3に固定する(図3参照)。
[3−3]各保持具本体3にカバー体4を取り付ける。
【0023】
本実施形態の棚板保持具に係わる技術によれば、壁1に対して簡単に迅速に棚板2を取り付けることができ、且つ、棚板2に多少の厚み誤差があっても、一対の挟持片による強力な挟持力を棚板に作用させて、より確実な棚板保持を叶えることができる。更には、カバー体を取り付けてあることでビス頭部を目隠しすることができ、意匠性を向上させることができる。
また、棚板保持具の製造に関しては、シンプルな金型構成によって迅速に成形できるから、棚板保持具をより経済的に提供できるようになる。
【0024】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0025】
〈1〉 棚板保持具Gは、先の実施形態で説明した保持具本体3とカバー体4との両方を備えたものに限るものではなく、例えば、保持具本体3のみの構成であってもよい。
また、壁1に棚板2を取り付けるために使用するものを説明したが、棚板2に対して当該棚板保持具Gを取り付けて、例えば、その棚板保持具Gに対して他物を吊り下げたり係止させたりする用途に用いることも可能である。それらを含めて棚板保持具と総称する。
〈2〉 棚板保持具の成形法は、特に限定されるものではなく、金型を使用したプラスチック成形法であればよい。
また、第1・第2金型11A,11Bの分割位置に関しては、製品の鋳込み空間内であればいずれの部分に設定してもよい。
〈3〉 第1・第2金型11A,11Bとの温度制御に関しては、手動によってヒーターの切換操作によって行ってもよいし、勿論、コンピュータ等の自動制御を行えるようにしてもよい。
〈4〉 棚板保持具の壁1への取付姿勢は、図1に示すように、壁1の中央部分に棚板2を取り付ける場合に限らず、図6に示すように、壁1の入隅部や、出隅部に取り付ける場合もある。また、図には示さないが、複数の棚板保持具によって一つの棚板2を取り付けることに限らず、一つの棚板保持具によって一つの棚板2を取り付けるように使用することもできる。
【0026】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】棚板保持具の取付状態を示す一部切欠き斜視図
【図2】保持具本体を示す斜視図
【図3】棚板保持具を示す斜視図
【図4】棚板保持具の取付状態を示す側面視断面図
【図5】金型への鋳込み状態と脱型状態を示す側面視概念断面図
【図6】棚板保持具による棚板の取付状態を示す上面図
【図7】従来の棚板保持具を示す側面視概念図
【符号の説明】
【0028】
2 棚板
2a 縁部
5 挟持部
5A 挟持片(上方側)
5B 挟持片(下方側)
6 凹部
7 連結部
11 金型
11A 第1金型
11B 第2金型
G 棚板保持具
h 離隔距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚板の縁部を厚み方向に挟み込み可能な挟持部と、挟持部を構成する一対の挟持片の間に凹部を形成しつつ挟持片の基端部どうしを連結する連結部とを有する棚板保持具を、金型を用いたプラスチック成形法によって形成する棚板保持具形成方法であって、
前記金型を、前記凹部の深さ方向に2分割に構成し、
前記凹部の開口側に位置させる第1金型の金型温度が、前記凹部の底側に位置させる第2金型の金型温度より高くなるように温度制御して、
前記両金型の間にプラスチック材料を鋳込んで成形した後、
鋳込まれた棚板保持具が自然収縮可能な時期に脱型する棚板保持具形成方法。
【請求項2】
前記両金型における前記一対の挟持片に対応する鋳込み面部分は、それぞれ型抜け方向に傾斜した抜け勾配をつけておく請求項1に記載の棚板保持具形成方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の棚板保持具形成方法によって形成した棚板保持具であって、
前記一対の挟持片どうしの離隔距離が、前記挟持片の基端部側より先端部側の方が小さく形成してある棚板保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−30104(P2010−30104A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193521(P2008−193521)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(504074994)アイワ金属株式会社 (1)
【Fターム(参考)】