説明

椅子式マッサージ機

【課題】 簡単な構造で、被施療者の体格に応じて施療子の背凭れ面からの前方突出量を自動的に規定できて良好な使用性を備える椅子式マッサージ機を提供する。
【解決手段】 椅子本体2の背凭れ部3の主体を構成する背凭れ基部4に、背凭れ部3の背凭れ面5に凭れた被施療者の背部に施療子6を当ててマッサージ施療を施す施療ユニット7を配備する。背凭れ面5の構成材と背凭れ基部4との間に弾性体8を介装して背凭れ面5を上記弾性体8の伸縮にて前後方向に位置可変にして、背凭れ面5の前後位置に応じて施療子6の背凭れ面5からの前方突出量を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子式マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、椅子本体の背凭れ部に、その背凭れ面に凭れた被施療者の背部に対して施療子を当ててマッサージ施療を施すための施療ユニットが配備された椅子式マッサージ機が知られている(たとえば特許文献1参照)。このような椅子式マッサージ機では、施療ユニットに施療子の前後位置設定機構を備えており、被施療者が上記前後位置設定機構を操作、作動させることで、施療子の前後位置が設定可能にされている。つまり、施療子を背凭れ面の前方突出量を大きくすると、背凭れ面に凭れた被施療者への施療子の押圧強さを強くできるのであり、被施療者の好みに応じた強さのマッサージ施療を可能にしている。
【0003】
しかしながら、施療ユニットに施療子の前後位置設定機構を備えることは、施療ユニットの構造の複雑化を招き、施療ユニット、ひいては椅子式マッサージ機のコストが高くなるという問題がある。また、被施療者においても、その体格によりおよそ好みの施療子の設定位置は決まってくるのであり、詳しくは、体格のよい(体重のある)人は施療子の背凭れ面からの突出量を大きく設定して比較的強めのマッサージ施療を好み、体格のわるい(体重のない)人は施療子の背凭れ面からの突出量を小さく設定して比較的弱めのマッサージ施療を好む傾向にあり、マッサージ機の使用のたびに前後位置設定機構を操作することは煩わしくて良好な使用性を有するとは言えない、という問題があった。
【特許文献1】特開2006−34635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構造で、被施療者の体格に応じて施療子の背凭れ面からの前方突出量を自動的に規定できて良好な使用性を備える椅子式マッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の椅子式マッサージ機にあっては、椅子本体2の背凭れ部3の主体を構成する背凭れ基部4に、背凭れ部3の背凭れ面5に凭れた被施療者の背部に施療子6を当ててマッサージ施療を施す施療ユニット7を配備し、背凭れ面5の構成材と背凭れ基部4との間に弾性体8を介装して背凭れ面5を上記弾性体8の伸縮にて前後方向に位置可変にし、背凭れ面5の前後位置に応じて施療子6の背凭れ面5からの前方突出量が変化して成ることを特徴とする。
【0006】
これによると、背凭れ面5の構成材と施療ユニット7を配備した背凭れ基部4との間に弾性体8を介装するという簡単な構成で、背凭れ面5に凭れる被施療者の体重に応じて圧縮する弾性体8によって、背凭れ面5の前後位置、ひいては施療子6の背凭れ面5からの前方突出量を、被施療者の体格に適した強さのマッサージ施療を施し得るように自動的に決定できるのであり、すなわち、体重のある被施療者には施療子6の背凭れ面5からの突出量が大きくなって比較的強めのマッサージ施療を施すと共に、体重のない被施療者には施療子6の背凭れ面5からの突出量が小さくなって比較的弱めのマッサージ施療を施すように自動的にできるのであり、従来のようにその使用のたびに施療ユニット7の施療子6の前後位置設定機構を設定操作するという煩わしさを解消し、良好な使用性を備えることができる。
【0007】
また、背凭れ面5を縁切りした状態で背凭れ基部4の前方を覆う前面カバー体9で構成し、弾性体8の一端を前面カバー体9に取り付けると共に、他端を背凭れ基部4に有した椅子本体2の本体フレーム14に取り付けたことも好ましい。
【0008】
これによると、弾性体8が、背凭れ基部4と縁切りした前面カバー体9と、背凭れ基部4に有した椅子本体2の本体フレーム14との間に介装されるので、弾性体8に被施療者の体重に応じた正確な圧縮動作を確保でき、被施療者の体格に適した強さのマッサージ施療をより正確に確保することができる。
【0009】
また、背凭れ面5を複数の区域10に区分けして各区域10ごとに背凭れ基部4との間に弾性体8をそれぞれ介装し、背凭れ面5の各区域10を個別に前後方向に位置可変にしたことも好ましい。
【0010】
これによると、背凭れ面5の各区域10を対応する各弾性体8によって個別に前後方向に位置可変にしたことで、上記各区域10における施療子6の背凭れ面5からの突出量を個別に決定できるのであり、被施療者の背部にある肩部位や腰部位などの各部位に、たとえば各部位の身体のラインに基づくような別個の強さのマッサージ施療を施すことができ、椅子式マッサージ機1の使用感を高めることができる。
【0011】
また、弾性体8をゴムで構成したり、バネで構成したりすることも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、簡単な構造で、被施療者の体格に応じて施療子の背凭れ面からの前方突出量を自動的に規定できて良好な使用性を備えることができる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
図1に本発明の実施の形態の例を示す。本例の椅子式マッサージ機1は、マッサージ施療の施される被施療者が座る椅子本体2を有している。椅子本体2は足載せ部11、座部12、肘掛部13、背凭れ部3を有して構成されている。詳しくは、足載せ部11は座部12の前側に配置され、肘掛部13は座部12の左右にそれぞれ配置され、背凭れ部3は座部12の後側に配置されている。椅子本体2には各部3,11〜13を連結する構造材としての本体フレーム14が設けられており、足載せ部11や背凭れ部3は本体フレーム14に設けた伸縮リンク等の回動機構15を介してそれぞれ傾倒自在に設けられている。背凭れ部3はその前面が椅子本体2に着座した被施療者の背部を凭れかける背凭れ面5となるが、背凭れ部3には上記背凭れ面5に凭れた被施療者の背部に施療子6を当ててマッサージ施療を施す施療ユニット7が配備されている。
【0015】
ここで、本例の背凭れ部3は、背凭れ部3の主体を構成して本体フレーム14に取り付けされた背凭れ基部4と、背凭れ基部4の前方を覆う前面カバー体9とで分割構成されている。背凭れ基部4には施療ユニット7が、背凭れ基部4内の本体フレーム14を構成する背凭れ部3の略上下に亙るレール材16に沿って上下に移動自在にして配備されている。なお、施療ユニット7はレール材16への走行ローラや施療子6に対する駆動部を内装したユニット本体17を有し、施療子6はユニット本体17から前方へ突出された状態で設けられている。背凭れ基部4に配備した施療ユニット7は、その施療子6が背凭れ面5から前方に突出可能にされている。なお、施療子6は背凭れ部3の被覆材(図示せず)を被せて外方には露出しないようにしてもよい。
【0016】
また、前面カバー体9は、その前面部が背凭れ面5とされ、前面部の周囲から後方へ突出する側面部が背凭れ基部4の側面部に重なるようにして、背凭れ基部4の前方に配置されている。そして、この前面カバー体9の背凭れ面5と背凭れ基部4との間には弾性体8が介装されている。本例では弾性体8は背凭れ部3内の上部及び下部における各左右箇所に計4つ設置しており、各弾性体8には同じバネ定数のコイル状のバネを用いているが、たとえばゴムによっても構成できる。したがって、背凭れ面5は前面カバー体9と共に、上記弾性体8の伸縮によって、背凭れ基部4への距離を変化させるように、前後方向に位置可変にされている。背凭れ基部4には施療ユニット7が配備されているので、上記のように背凭れ面5がその前後方向に位置を変化させると、ユニット本体17から前方に突出する施療子6における背凭れ面5からの前方突出量が変化することとなっている。
【0017】
つまり、被施療者が背凭れ面5に凭れかかると、被施療者の体重に基づく被施療者による背凭れ面5への荷重によって弾性体8が圧縮されて、背凭れ面5の前後位置、ひいては施療子6の背凭れ面5からの前方突出量が変化するようにされている。たとえば、被施療者が体重のある(体格のよい)人であれば、弾性体8が大きく圧縮されて背凭れ面5が後方へ大きく沈み込み、施療子6における背凭れ面5からの前方突出量が大きくなる。そして、前方突出量の大きい施療子6によると、被施療者の背部への押圧強さが強くなり、体格のよい被施療者が好む傾向にある比較的強めのマッサージ施療が施されるようになる。一方、被施療者が体重のない(体格のわるい)人であれば、弾性体8の圧縮量が小さくて背凭れ面5の後方への沈み込みも小さく、施療子6における背凭れ面5からの前方突出量が小さくなる。そして、前方突出量の小さい施療子6によると、被施療者の背部への押圧強さが弱くなり、体格のわるい被施療者が好む傾向にある比較的弱めのマッサージ施療が施されるようになる。
【0018】
このように、本例の椅子式マッサージ機1にあっては、背凭れ面5の構成材と施療ユニット7を配備した背凭れ基部4との間に弾性体8を介装するという簡単な構成で、背凭れ面5に凭れる被施療者の体重に応じて圧縮する弾性体8によって、背凭れ面5の前後位置、ひいては施療子6の背凭れ面5からの前方突出量を、被施療者の体格に適した強さのマッサージ施療を施し得るように自動的に決定できるのである。したがって、被施療者の好む強さのマッサージ施療を施すために、従来のように施療ユニット7に施療子6の前後位置設定機構を備えて構造の複雑化を招くようなことは回避できたものであり、椅子式マッサージ機1の構成を簡略にできてコストの低廉化を図ることができたのである。また、従来のようにその使用のたびに施療ユニット7の施療子6の前後位置設定機構を設定操作するという煩わしさを解消できたものであり、椅子式マッサージ機1に良好な使用性を備えることができたのである。
【0019】
また、図2には本発明の実施の形態の他例を示す。なお、先例と同様の部位については同符号を付して説明を省き、異なる部位につき説明をしていく。本例は、図2(a)のように、前面カバー体9の背凭れ面5と背凭れ基部4内の本体フレーム14(本例ではレール材16)との間に弾性体8を介装させた例である。詳しくは、図2(b)(c)のように、弾性体8を構成するコイル状のバネはその内部に座屈防止軸18を挿通させており、座屈防止軸18は、一端が背凭れ面5に固定され、他端がレール材16にストッパ18aによる抜け止めを伴って係止されている。
【0020】
このように、本例の椅子式マッサージ機1にあっては、弾性体8が、背凭れ基部4と縁切りした前面カバー体9と、背凭れ基部4に有した椅子本体2の本体フレーム14との間に介装されるので、弾性体8に被施療者の体重に応じた正確な圧縮動作を確保でき、被施療者の体格に適した強さのマッサージ施療をより正確に確保することができる、という利点をも有している。
【0021】
また、図3には本発明の実施の形態の更に他例を示す。本例は、背凭れ面5を複数の区域10に区分けするように前面カバー体9を分割して複数の分割カバー体19を形成し、各分割カバー体19ごとに背凭れ基部4との間に弾性体8をそれぞれ介装し、背凭れ面5の各区域10を個別に前後方向に位置可変にした例である。具体的に本例では、背凭れ面5は肩域10a、背中域10b、腰域10cの3つの区域10に区分けされ、前面カバー体9は各区域10に対応する肩部分割カバー体19a、背中部分割カバー体19b、腰部分割カバー体19cに分割されている。
【0022】
このように、背凭れ面5の各区域10を対応する各弾性体8によって個別に前後方向に位置可変にしたことで、上記各区域10における施療子6の背凭れ面5からの突出量を個別に決定できたものである。したがって、被施療者の背部にある肩部位や腰部位などの各部位に、たとえば各部位の身体のラインに基づくような別個の好適な強さのマッサージ施療を施すことができるのであって、椅子式マッサージ機1の使用感を向上できたものである。しかも、本例では各分割カバー体19は縁切りされた状態となっていて互いを拘束せず、上記被施療者の背部の各部位への体格に正確に基づいた好適な強さでのマッサージ施療を確保できたものである。
【0023】
ここで、図4のように、各区域10に対応した各弾性体8のバネ強さ(バネ定数)を各弾性体8の間で異ならせることも好ましい。たとえば図4(a)の例では、肩域10aに対応する肩用弾性体8a及び腰域10cに対応する腰用弾性体8cのバネ定数を、背中域10bに対応する背中用弾性体8bのバネ定数に比べ、小さく設定している。したがって、被施療者が背凭れ面5に凭れたときには、背凭れ面5の肩域10a及び腰域10cが背中域10bに比べて後方への沈み込みが大きくて、背中域10bに比べて肩域10a及び腰域10cでの施療子6の背凭れ面5からの突出量が大きくなり、被施療者の肩部位及び腰部位で背中部位に比べて強いマッサージ施療が行われるようにされている。なお、図4(b)の例は、肩用弾性体8a及び腰用弾性体8cのバネ定数を、背中用弾性体8bのバネ定数に比べて大きく設定してあり、先例と反対の効果、つまり被施療者の肩部位及び腰部位で背中部位に比べて弱いマッサージ施療が行われるようにされている。このように、各区域10に対応した各弾性体8のバネ強さ(バネ定数)を各自異ならせることによると、被施療者の背部にある肩部位や腰部位などの各部位に別個の好適な強さのマッサージ施療を狙って施すことができるのであって、椅子式マッサージ機1の使用感の更なる向上を図ることができるのである。
【0024】
なお、図示はしないが、複数の分割カバー体19に分割構成しない図1のような前面カバー体9において、背凭れ面5の各区域10に対応する弾性体8のバネ定数を異ならせてもよい。これによると、背凭れ面5の各区域10は他の区域10による拘束は多少受けるものの、被施療者の背部にある肩部位や腰部位などの各部位に別個の強さのマッサージ施療を施すことはできるのである。
【0025】
また、図5には本発明の実施の形態の更に他例を示す。本例では、背凭れ面5の構成材として、先例のような比較的剛性のある前面カバー体9の代わりに、背凭れ基部4の被覆材である弾性又は撓み性のあるシートカバー20で構成させている。そして、表面が背凭れ面5を構成する部位のシートカバー20の裏面と背凭れ基部4との間に弾性体8が介装されている。本例の場合、ゴム体である長尺ブロック状の一対の弾性体8が、背凭れ基部4の左右中央にある溝状の施療ユニット7の走行部21の左右両側縁に沿ってそれぞれ上下に亙るように配置されている。本例にあっても、先の図1の例と同様の作用効果を備えることができるのである。ここで、上記長尺ブロック状の一対の弾性体8は、図6のようにそれぞれ上下方向で複数箇所に分割して、各区域用弾性体8a〜8bにすることも好ましい。この例でも、先の図3の例と同様の作用効果を備えることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の例の椅子式マッサージ機であり、(a)は体格のよい被施療者の施療状態の概略側面図であり、(b)は体格のわるい被施療者の施療状態の概略側面図である。
【図2】実施の形態の他例の椅子式マッサージ機であり、(a)は背凭れ部の概略側面図であり、(b)(c)は要部の動作説明図である。
【図3】実施の形態の更に他例の椅子式マッサージ機における背凭れ部の概略側面図である。
【図4】実施の形態の更に他例の椅子式マッサージ機における背凭れ部の概略側面図であり、(a)は複数の弾性体間でバネ強さを異ならせた一例を説明する説明図であり、(b)は複数の弾性体間でバネ強さを異ならせた他例を説明する説明図である。
【図5】実施の形態の更に他例の椅子式マッサージ機の概略斜視図である。
【図6】実施の形態の更に他例の椅子式マッサージ機の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 椅子式マッサージ機
2 椅子本体
3 背凭れ部
4 背凭れ基部
5 背凭れ面
6 施療子
7 施療ユニット
8 弾性体
9 前面カバー体
10 区域
14 本体フレーム
19 分割カバー体
20 シートカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子本体の背凭れ部の主体を構成する背凭れ基部に、背凭れ部の背凭れ面に凭れた被施療者の背部に施療子を当ててマッサージ施療を施す施療ユニットを配備し、背凭れ面の構成材と背凭れ基部との間に弾性体を介装して背凭れ面を上記弾性体の伸縮にて前後方向に位置可変にし、背凭れ面の前後位置に応じて施療子の背凭れ面からの前方突出量が変化して成ることを特徴とする椅子式マッサージ機。
【請求項2】
背凭れ面を縁切りした状態で背凭れ基部の前方を覆う前面カバー体で構成し、弾性体の一端を前面カバー体に取り付けると共に、他端を背凭れ基部に有した椅子本体の本体フレームに取り付けたことを特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
背凭れ面を複数の区域に区分けして各区域ごとに背凭れ基部との間に弾性体をそれぞれ介装し、背凭れ面の各区域を個別に前後方向に位置可変にして成ることを特徴とする請求項1または2記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
上記弾性体をゴムで構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項5】
上記弾性体をバネで構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の椅子式マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−82418(P2009−82418A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255846(P2007−255846)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】