説明

椅子

【課題】ユーザが特に意識することなく最適な着座姿勢を取ることができる椅子を得る。
【解決手段】背面部102と座面部101を有する椅子であって、座面部101を下方に押す力を加えると座面部101と背面部102との角度を減少させる連動手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス等で使用される椅子(いす)として、背もたれ、すなわち、背面部にもたれかかると、背面部に連動して座面部が動作する椅子が提供されている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
【0003】
図18は、従来の椅子の構成を示す図である。
【0004】
図18において、113は従来の椅子におけるベース部であり、図示されない支柱、キャスター等を備え、床面上に載置され、椅子全体及び椅子に着座するユーザの重量を支えるようになっている。
ベース部113の上端には、ユーザが着座する座面部114が、関節部を介して、回動可能に取り付けられている。また、ベース部113の途中には、背面部115を支持する第1のリンク112が、関節部を介して、回動可能に取り付けられている。
座面部114と第1のリンク112とは、関節部を介して両者に回動可能に取り付けられた第2のリンク111によって連結されている。
【0005】
椅子に着座したユーザが背面部115にもたれかかると、背面部115を支持する第1のリンク112は、関節部を軸に、ベース部113に対して回転する。また、座面部114は、第2のリンク111によって第1のリンク112に連結されているので、第1のリンク112と連動して、関節部を軸に、ベース部113に対して回転する。
つまり、背面部を後傾させた量に応じて、座面部が所定の量だけ後傾する機構となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2000−505677号公報
【特許文献2】特許第4037438号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wilkhahnホームページ、“Modus:Function”[online]、[平成18年6月15日検索]、インターネット<http://www.wilkhahn.co.jp/products/working/modus/function.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の椅子においては、背面部115に力を加えない限り座面部114が動作しないので、ユーザは必ずしも最適な着座姿勢を取ることができなかった。
【0009】
すなわち、座面部114に着座したユーザがその背中を、初期状態における背面部115の座面部114に対する傾斜角度よりも大きく傾斜させないと、座面部114が動作しないようになっている。
したがって、例えば、座面部114に着座したユーザが机に向かって作業を行うような場合のように、背面部115にもたれかからない場合には、座面部114の角度が変化しないので、ユーザは必ずしも最適な着座姿勢を取ることができなかった。
例えば、ユーザが机に向かうような前傾姿勢で着座しているときは、背面部115にもたれかからないため、背面部115が腰へフィットせず、着座者の姿勢が崩れてしまっていた。
またユーザは、着座時に腰が背面部にフィットするように座面部に深く着座することが望ましいが、座面部が低く、座面部の奥行きの長い椅子に着座する為には腰に負担がかかり、はじめから深く着座することは困難であった。
【0010】
そのため、ユーザが特に意識することなく最適な着座姿勢を取ることができる椅子が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る椅子は、背面部と座面部を有する椅子であって、前記座面部を下方に押す力を加えると前記座面部と前記背面部との角度を減少させる連動手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る椅子によれば、ユーザが着座するとこれに連動して背面部と座面部の角度が減少してユーザの背中にフィットするので、着座時にユーザの着座姿勢を最適に保つことができる。
これにより、座り心地のよい椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図2】ユーザが座面部101に着座して背面部102にもたれかかるときの各部の変化を示す図である。
【図3】実施の形態2に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図4】実施の形態3に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図5】ユーザが座面部101に着座して背面部102にもたれかかるときの各部の変化を示す図である。
【図6】実施の形態4に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図7】実施の形態5に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図8】係止片120周辺の透過斜視図である。
【図9】係止片120と第1ストッパ121が接触して周辺部材の回転を止める様子を示す側面模式図である。
【図10】実施の形態6に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図11】係止片120周辺の透過斜視図である。
【図12】係止片120と第2ストッパ122が接触して周辺部材の回転を止める様子を示す側面模式図である。
【図13】実施の形態1〜2に係る椅子400と、実施の形態3〜6にかかる椅子400との差異を説明する図である。
【図14】実施の形態7に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図15】実施の形態8に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図16】実施の形態10に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図17】実施の形態11に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
【図18】従来の椅子の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。ここでは椅子400の構成を説明するために必要な部分のみを示した。以下では、始めに椅子400の全体的な構成を説明し、その後に椅子400のリンク機構の詳細について説明する。
【0015】
椅子400は、座面部101と背面部102を備える。
座面部101は、ユーザが着座するクッションなどの緩衝部材と、これを支持するリンクにより構成されている。
背面部102は、ユーザがもたれかかるクッションなどの緩衝部材と、これを支持するリンクにより構成されている。
以下の説明では、座面部101と背面部102のそれぞれの緩衝部材については特に言及せず、周辺の部材との間の接続関係などのリンク機構について説明する。
【0016】
座面部101は、着座するユーザの側面に相当する部分が上方に盛り上がっている。その盛り上がった部分は、背面部102と接続されている。
【0017】
ベース部103は、椅子400の自重および座面部101に座るユーザの体重を支える役割を果たす。
第1関節部201は、例えばヒンジジョイントで構成され、座面部101とベース部103を接続するとともに、座面部101を第1関節部201を支点として回動可能とする。つまり、座面部101は、第1関節部201を支点として上下方向に揺動可能となっている。第1関節部201は、回転ばねなどの弾性力を付与する第1弾性抵抗手段301が設けられている。
【0018】
背面部102は、座面部101に座るユーザの背中を後方から支持する。
背面部102は、後述する第2関節部202により、ユーザの側面に相当する位置で座面部101と接続されている。さらには、後述の第1リンク151と、後述の第4関節部204を介して接続されている。
【0019】
第2関節部202は、例えばヒンジジョイントで構成され、上述の座面部101と、背面部102の背もたれから前方に向かって所定距離離れた位置に回動可能に配置されている。
この第2関節部202の位置は、ユーザが座面部101に着座したときに、ユーザの股関節の位置に概ね相当するようになっている。
【0020】
上述の背面部102には、後述の第4関節部204を介して、第1リンク151が回動可能に接続されている。
第2弾性抵抗手段302は、例えば圧縮コイルバネなどで構成され、第1リンク151に沿った方向に弾性力を生じさせる機能を有する。具体的な動作は、後述の図2で説明する。
第4関節部204は、例えばヒンジジョイントで構成され、背面部102と第1リンク151を回動可能に接続する。
【0021】
ベース部103には、適当な接続機構を介して第3関節部203が接続されており、第3関節部203は第1リンク151と接続されている。
この接続機構は、第3関節部203とベース部103の間の距離を調整する役割も同時に果たす。第3関節部203とベース部103の間の距離を取る必要がなければ、この接続機構は第3関節部203そのものであってもよい。
【0022】
以上、本実施の形態1に係る椅子400の構成について説明した。
次に、椅子400の座面部101にユーザが着座するときの各部の動作を説明する。
【0023】
図2は、ユーザが座面部101に着座して背面部102にもたれかかるときの各部の変化を示す図である。ここでは、図1に示す各部のうち、説明に必要な部分のみを抜粋して記載した。
【0024】
図2(a)は、ユーザが座面部101に着座する前の状態を示す。同図に示す状態は、図1に示す各部の状態と同様である。
【0025】
図2(b)は、ユーザが座面部101に着座し、背面部102にもたれかかる前の状態を示す。以下、図2(a)から図2(b)に至る過程を説明する。
【0026】
(1)ユーザが座面部101に着座すると、座面部101は、第1関節部201を支点として沈み込むように回転する。
(2)座面部101が沈み込むにともなって、第2関節部202は下方へ移動する。
背面部102は、座面部101と第2関節部202により回動可能に接続されており、さらに背面部102は、第3関節部を介してベース部に回動可能に接続された第1リンク151と第4関節部204で回動可能に接続されている。
つまり、第1関節部、第2関節部、第3関節部、第4関節部を支点としたリンク機構を形成しているため、このリンク機構の特性により背面部102の動作が決定する。
【0027】
(3)ここで、図13(a)におけるr1およびr2が、
r1=r2
かつ
r1//r2
であれば、
前記リンク機構は平行リンク機構となって、座面部101が沈み込むことによる第2関節部202の下方への移動距離と、第4関節部204の下方への移動距離は等しくなる。
このため、背面部102の傾きは着座前から一定に保たれる。
【0028】
(4)また、座面部101が沈み込むにともなって、座面部101とベース部103の間の角度が小さくなり、第1弾性抵抗手段301によって、これに抵抗する方向の弾性力が生じる。
(5)ユーザの体重とこれらの弾性力が釣り合った時点で座面部101の回転が止まり、沈み込みが止まる。
【0029】
(6)この時点で、ユーザの座り込み姿勢が定まる。着座前と比較して、座面部101は第1関節部201を支点として沈み込むように回転し、一方背面部102の傾きは着座前から一定に保たれるため、結果として座面部101と背面部102の間の角度が狭まり、ユーザにとっては背面部102が自動的に背中に近づいてきてフィットするかのような効果を発揮する。即ち、ユーザが座面部101に着座するのみで最適な着座姿勢が得られるという効果が得られる。
【0030】
以上、ユーザが座面部101に着座する際の各部の動作を説明した。
【0031】
図2(c)は、ユーザが座面部101に着座した後、背面部102にもたれかかった際の状態を示す。以下、図2(b)から図2(c)に至る過程を説明する。
【0032】
(7)ユーザが背面部102にもたれかかると、背面部102は、第2関節部202を支点として、図2の正面から見て右回りに回転することになる。
【0033】
(8)背面部102が右回りに回転すると、第4関節部204が図2の正面から見て略左方向(ユーザの正面方向)に移動する。
(9)これにともなって、第2弾性抵抗手段302が押圧され、図2の右方向(ユーザの背面方向)に向けた弾性力が生じる。
(10)ユーザが背面部102にもたれかかる力とこの弾性力が釣り合った時点で、背面部102の傾きが止まり、ユーザの背もたれ姿勢が定まる。
【0034】
(11)さらにユーザが背面部102を後傾させ、第2弾性抵抗手段302に、第1リンク151を単なるリンクとみなせる程度以上の弾性力が発生した場合は、リンク機構の働きにより、第1関節部201に発生する座面部101を押し上げるトルクが増大する。これにより、座面部101は第1関節部201を支点に左回りに回転する。結果として、座面部101と背面部102が形成する角度が広がって、リクライニング動作時のユーザの股関節の伸展量が増大し、高い開放感を生む姿勢を保つことができる。
(12)ユーザが立ち上がるときは、第1弾性抵抗手段301の働きによって座面部101が下方からユーザを押し上げてこれをサポートする。
【0035】
以上、椅子400の座面部101にユーザが着座するときの各部の動作を説明した。
また、本実施の形態1に係る椅子400は、着座から立ち上がりまでの1連の動作を以下の(1)〜(4)のようにしてサポートすることができる。
【0036】
(1)座面部101が前傾し、座面部101の後縁部がはね上がっているので、ユーザは着座の初期段階から座面部に支持されることとなり、ユーザの身体、特に腰への負担が減少する。
また、着座前は見かけ上座面部の奥行きが短くなるので、着座位置があわせやすく、座面部の奥側へ深く着座することが可能となり、正しい姿勢で着座できる。
このとき、座面部が前傾しているにもかかわらず、背面部の角度は地面に対してほぼ垂直になっているので、着座の際に背中があわせやすい。
(2)ユーザが着座すると、座面部101と背面部102が形成する角度が狭められ、ユーザの背中に背面部102が自動的にフィットする。
(3)背面部102を後傾させると、座面部と背面部がユーザの姿勢に応じて変化し、ユーザの姿勢を最適に保つ。
また、前記第2弾性抵抗手段302の弾性係数を、リクライニング途中で第1リンク151が単なるリンクとみなせる程度以上の反発弾性力が発生するように選択する場合は、背面部を後傾させると座面部101が押し上げられ、座面部と背面部の開角度が大きくなり、体を伸ばしたリラックス姿勢を取ることも可能となる。
(4)ユーザが立ち上がるときは、第1弾性抵抗手段301の働きによって座面部101が下方からユーザを押し上げてこれをサポートする。
【0037】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
本実施の形態2に係る椅子400は、第1関節部201に粘性抵抗を付与する第1粘性抵抗手段401、および第2弾性抵抗手段302に粘性抵抗を付与する第2粘性抵抗手段402を備える。
その他の構成は、実施の形態1の図1で説明したものと同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0038】
第1粘性抵抗手段401は、第1弾性抵抗手段301に回転速度が加わったときに、これを緩衝する機能を有する。
第2粘性抵抗手段402は、第2弾性抵抗手段302に伸縮速度が加わったときに、これを緩衝する機能を有する。
第1粘性抵抗手段401と第2粘性抵抗手段402は、例えばオイル式のショックアブソーバで構成することができる。
【0039】
本実施の形態2に係る椅子400は、第1粘性抵抗手段401を備えているので、ユーザが座面部101に着座したときの沈み込みを緩やかにすることができ、柔らかな座り込み感を提供することができる。
【0040】
また、本実施の形態2に係る椅子400は、第2粘性抵抗手段402を備えているので、ユーザが背面部102にもたれかかったときの倒れ込みを緩やかにすることができ、柔らかな背もたれ感を提供することができる。
なお、リンク機構において、r1、r2、第1弾性抵抗手段、第1粘性抵抗手段、第2弾性抵抗手段、第2粘性抵抗手段等を適当に選択することによって、着座時およびリクライニング時のユーザと背面部とのフィット感を最適に選択することが可能となることはいうまでもない。
【0041】
実施の形態3.
図4は、本発明の実施の形態3に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
実施の形態1で説明した機能を発揮する為には、r1=r2としなければならないが、これに伴ってベース部103の長さを所定以上大きくとらなければならず、座面部の高さを一般的な椅子と同様にすることが困難である。
そこで、本発明の実施の形態3では座面部の下部の機構を小型化し、座面部の高さを一般的な椅子と同様にすることを可能とするリンク機構を導入する。
ここでは椅子400の構成を説明するために必要な部分のみを示した。以下では、始めに椅子400の全体的な構成を説明し、その後に椅子400のリンク機構の詳細について説明する。
【0042】
椅子400は、座面部101と背面部102を備える。
以下の説明では、座面部101と背面部102の周辺の部材との間の接続関係などのリンク機構について説明する。
【0043】
座面部101は、着座するユーザの側面に相当する部分が上方に盛り上がっている。その盛り上がった部分は、背面部102と接続されている。
座面部101の底面は、第2リンク152で下方から支持されている。第2リンク152の一端と座面部101は、第5関節部205で接続されている。
【0044】
ベース部103は、椅子400の自重および座面部101に座るユーザの体重を支える役割を果たす。
第1関節部201は、例えばヒンジジョイントで構成され、座面部101とベース部103を接続するとともに、座面部101を第1関節部201を支点として回動可能とする。つまり、座面部101は、第1関節部201を支点として上下方向に揺動可能となっている。第1関節部201は、回転ばねなどの弾性力を付与する手段を有していない。座面部101に座るユーザの体重は、後述するリンク機構が椅子400に弾性を付与することによって支えられる。
【0045】
背面部102は、座面部101に座るユーザの背中を後方から支持する。
背面部102は、後述する第2関節部202により、ユーザの側面に相当する位置で座面部101と接続されている。さらには、後述の第1リンク151と、後述の第4関節部204を介して接続されている。
【0046】
第2関節部202は、例えばヒンジジョイントで構成され、上述の座面部101と、背面部102の背もたれから前方に向かって所定距離離れた位置に回動可能に配置されている。
この第2関節部202の位置は、ユーザが座面部101に着座したときに、ユーザの股関節の位置に概ね相当するようになっている。
【0047】
以上、椅子400の全体的な構成を説明した。
次に、椅子400のリンク機構について説明する。このリンク機構は、全体としては座面部101の下方に配置され、背面部102とベース部103を接続する。
【0048】
第5関節部205は、例えばヒンジジョイントで構成され、座面部101の底面側と第2リンク152を回動可能に接続する。
【0049】
第2リンク152の他端には、第6関節部206を介して第3リンク153が接続されている。
第3リンク153は、例えば3つの関節部を持つ金属板で構成され、一端に第6関節部206を備え、他端に後述の第3関節部203及び後述の第7関節部207とを備えている。なお本実施例の第3リンク153は略三角形となっているが、形状は楕円等、他の形状でも構わない。また第3リンク153の材質は3つの関節部の位置関係を保つものであれば樹脂、セラミック等、金属以外の材質でも構わない。
【0050】
上述のベース部103には、適当な接続機構を介して、第3関節部203が接続されている。この接続機構は、第3関節部203とベース部103の間の距離を調整する役割も同時に果たす。第3関節部203とベース部103の間の距離を取る必要がなければ、この接続機構は第3関節部203そのものであってもよい。
第3関節部203には、第3関節部203に回転方向の弾性力を付与する第3弾性抵抗手段303が設けられている。第3弾性抵抗手段303は、例えばねじりバネなどで構成することができる。
【0051】
上述の背面部102には、後述の第4関節部204を介して、第1リンク151が回動可能に接続されている。
第1リンク151は、座面部101の下方に、座面部101と略平行に配置されており、一端は第4関節部204を介して背面部102と接続されている。
第2弾性抵抗手段302は、例えば圧縮コイルバネなどで構成され、第1リンク151に沿った方向に弾性力を生じさせる機能を有する。具体的な動作は、後述の図5で説明する。
第4関節部204は、例えばヒンジジョイントで構成され、背面部102と第1リンク151を回動可能に接続する。
【0052】
第1リンク151の他端は、第7関節部207を介して第3リンク153と回動可能に接続されている。
【0053】
以上、椅子400のリンク機構について説明した。
次に、椅子400の座面部101にユーザが着座するときの各部の動作を説明する。
【0054】
図5は、ユーザが座面部101に着座して背面部102にもたれかかるときの各部の変化を示す図である。ここでは、図4に示す各部のうち、説明に必要な部分のみを抜粋して記載した。
【0055】
図5(a)は、ユーザが座面部101に着座する前の状態を示す。同図に示す状態は、図4に示す各部の状態と同様である。
【0056】
図5(b)は、ユーザが座面部101に着座し、背面部102にもたれかかる前の状態を示す。以下、図5(a)から図5(b)に至る過程を説明する。
【0057】
(1)ユーザが座面部101に着座すると、座面部101は、第1関節部201を支点として沈み込むように回転する。このとき、座面部101の底面側を支持する第2リンク152には、下方向の力が作用する。
(2)第2リンク152は、第6関節部206を介して第3リンク153に接続されている。また、第3リンクは第3関節部を介してベース部103に回動可能に接続されている。
【0058】
(3)このため、第3リンク153が第3関節部203を中心に図5の正面から見て右回りの方向に回転する。これに伴い、第3関節部203も、図5の正面から見て右回りに回転する。
(4)第3関節部203が右回りに回転すると、第3弾性抵抗手段303に左回りの弾性力が発生し、第3リンク153を左回りに戻し、第2リンク152を上方へ押し上げる向きに力が作用する。
【0059】
(5)ユーザの体重とこの弾性力による力が釣り合った時点で座面部101の沈み込みが止まる。
【0060】
(6)第1リンク151は、第3リンク153が第3関節部203を中心に右回りに回転するにともない、第7関節部207および第4関節部204を介して背面部102を後方に向けて押圧する。
これにともなって、背面部102は第2関節部202を中心に、図5の左回りに回転する。また、座面部101と背面部102の間の角度が狭まる。
この時点で、ユーザの着座姿勢が定まる。
これにより、座面部101に着座したユーザにとっては、背面部102が背中に近づいてきて自動的にフィットするかのような効果が得られる。即ち、ユーザは座面部101に着座するのみで最適な着座姿勢が得られ、着座姿勢を調整するために背面部102を押す必要はない。
【0061】
以上、ユーザが座面部101に着座する際の各部の動作を説明した。
【0062】
図5(c)は、ユーザが座面部101に着座した後、背面部102にもたれかかった際の状態を示す。以下、図5(b)から図5(c)に至る過程を説明する。
【0063】
(7)ユーザが背面部102にもたれかかると、背面部102は、第2関節部202を回転中心とし、図5の正面から見て右回りに回転することになる。
【0064】
(8)背面部102が右回りに回転すると、第4関節部204は図5の正面から見て略左方向(ユーザの正面方向)に移動する。
(9)これにともなって、第2弾性抵抗手段302が圧縮され、図5の右方向(ユーザの背面方向)に向けた弾性力が生じる。
(10)ユーザが背面部102にもたれかかる力とこの弾性力が釣り合った時点で、背面部102の傾きが止まり、ユーザの背もたれ姿勢が定まる。
【0065】
(11)なお、図5(b)の状態において、ユーザが座面部101に着座した際に、背中が背面部102に接した状態で着座する場合は、ユーザの背中が背面部102を押す力と第1リンク151が背面部102を押す力が対向し、第2弾性抵抗手段302を圧縮する。
これによって第2弾性抵抗手段302に生じた弾性力等が背面部102を後方に押す力と、ユーザの背中が背面部102を押す力とが釣り合った時点で、背面部102の位置、すなわちユーザの着座姿勢が定まる。
【0066】
(12)また、第2弾性抵抗手段302の弾性係数を調整し、ユーザが背面部102にもたれかかって後傾させた際に、第1リンク151を単なるリンクとみなせる程度以上の弾性力を発生するように調整した場合は、リンク機構の働きにより、第1関節部201に発生する座面部101を押し上げるトルクが増大する。これにより、座面部101は第1関節部201を支点に左回りに回転する。結果として、座面部101と背面部102が形成する角度が広がって、リクライニング動作時のユーザの股関節の伸展量が増大し、高い開放感を生む姿勢を保つことができる。
以上の動作により、背面部102と座面部101が連動して動作することになる。
【0067】
(13)ユーザが座面部101から立ち上がる際には、第3弾性抵抗手段303の働きによって第2リンク152が座面部101を下方から押し上げ、立ち上がり動作を下方から補助する効果が生じる。
【0068】
以上、椅子400の座面部101にユーザが着座するときの各部の動作を説明した。
なお、説明の容易の観点から、図4〜図5ではリンク機構を椅子400の側面から目視できるように記載したが、必要に応じて、リンク機構をケーシングなどで覆い、機構部分をユーザが視認できないようにしてもよい。
【0069】
また、リンク機構は、椅子400から取り外すことができるようにモジュール化し、椅子用リンク機構として単体で設計、製造、修理、交換等ができるように構成することもできる。
この椅子用リンク機構には、座面部101、ベース部102、その他の周辺部材を含めることもできる。いずれの周辺部品を椅子用リンク機構に含めるかは、椅子用リンク機構のモジュール化の程度等に合わせて、適宜定めればよい。
【0070】
以上のように、本実施の形態3に係る椅子400では、図5(b)〜図5(c)で説明したように、座面部101と背面部102は、ユーザが着座するにともなって連動して変化するようになっている。
したがって、ユーザは常に最適な着座姿勢をとることができる。
【0071】
また、本実施の形態3に係る椅子400は、座面部101の下方に、図4〜図5で説明したリンク機構を備えている。
このリンク機構が備える第3弾性抵抗手段303や第2弾性抵抗手段302の弾性係数を調整することにより、座面部101を沈み込ませたり背面部102を傾けたりするときに必要な力の強さを調整することができる。
これにより、椅子400の座り心地や使用感を任意に調整することができる。
【0072】
また、本実施の形態3に係る椅子400では、背面部102は第2関節部202を中心として回転する。
第2関節部202は、座面部101に着座するユーザの股関節に概ね相当する位置にあるため、背面部102を、ユーザの股関節を中心として回転させることができる。
そのため、背面部102の回転動作を、人体構造に好適に適合させ、良好な着座感を提供することができる。
【0073】
また、本実施の形態1に係る椅子400は、着座から立ち上がりまでの1連の動作を以下の(1)〜(4)のようにしてサポートすることができる。
【0074】
(1)座面部101が前傾しているので、ユーザは着座の初期段階から座面部に支持されることとなり、ユーザの身体、特に腰への負担が減少する。
また、着座前は見かけ上座面部の奥行きが短くなるので、着座位置があわせやすく、座面部の奥側へ深く着座することが可能となり、正しい姿勢で着座できる。
このとき、座面部が前傾しているにもかかわらず、背面部の角度は地面に対してほぼ垂直になっているので、着座の際に背中があわせやすい。
(2)ユーザが着座すると、背面部102がユーザの背中に自動的にフィットする。
(3)背面部102を後傾させると、座面部と背面部がユーザの姿勢に応じて変化し、ユーザの姿勢を最適に保つ。
また、前記第2弾性抵抗手段302の弾性係数を、リクライニング途中で第1リンク151が単なるリンクとみなせる程度以上の反発弾性力が発生するように選択する場合は、背面部を後傾させると座面部101が押し上げられ、座面部と背面部の開角度が大きくなり、体を伸ばしたリラックス姿勢を取ることも可能となる。
(4)ユーザが立ち上がるときは、座面部101が下方からユーザを押し上げてこれをサポートする。
【0075】
実施の形態4.
図6は、本発明の実施の形態4に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
本実施の形態4に係る椅子400は、第3関節部203に粘性抵抗を付与する第3粘性抵抗手段403、および第2弾性抵抗手段302に粘性抵抗を付与する第2粘性抵抗手段402を備える。
その他の構成は、実施の形態3の図4で説明したものと同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0076】
第3粘性抵抗手段403は、第3弾性抵抗手段303に回転速度が加わったときに、これを緩衝する機能を有する。
第2粘性抵抗手段402は、第2弾性抵抗手段302に伸縮速度が加わったときに、これを緩衝する機能を有する。
第3粘性抵抗手段403と第2粘性抵抗手段402は、例えばオイル式のショックアブソーバで構成することができる。
【0077】
第3粘性抵抗手段403と第2粘性抵抗手段402は、実施の形態3で説明した椅子用リンク機構の一部として構成することもできる。
【0078】
本実施の形態4に係る椅子400は、第3粘性抵抗手段403を備えているので、ユーザが座面部101に着座したときの沈み込みを緩やかにすることができ、柔らかな座り込み感を提供することができる。
【0079】
また、本実施の形態4に係る椅子400は、第2粘性抵抗手段402を備えているので、ユーザが背面部102にもたれかかったときの倒れ込みを緩やかにすることができ、柔らかな背もたれ感を提供することができる。
【0080】
実施の形態5.
実施の形態3〜4では、第3弾性抵抗手段303が第3関節部203に付与する弾性力を用いて、座面部101に上向きの反発力を付与し、座面部101がユーザの体重に対して抵抗するように構成した。
ただし、座面部101に極端に重い載置物を載せたりしたときなどは、第3弾性抵抗手段303の弾性力がこれに耐えられず、第3関節部203等が回転許容範囲を超えて回転し、破損してしまう可能性がある。
そこで、本発明の実施の形態5では、座面部101等が下方に沈み込む範囲を一定範囲内に制限する構成を説明する。
【0081】
図7は、本実施の形態5に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
本実施の形態5に係る椅子400は、実施の形態3〜4で説明した構成に加えて、新たに係止片120、第1ストッパ121を備える。その他の構成は、実施の形態3〜4と同様である。
なお、図7では、実施の形態3で説明した図4の構成に加えて、上述の各部を備えた例を図示した。以下では、図7を用いて上述の各部を説明する。
【0082】
係止片120は、第3リンクの前方の端部、第7関節部207付近から椅子400の前方に向かって突出した板状の部材で構成されている。後述の図8で、改めて詳細を説明する。
第1ストッパ121は、円柱状のゴム片で構成されており、ベース部103の内側(図7の右側)、係止片120の上側に配置されている。
【0083】
図8は、係止片120周辺の透過斜視図である。ここでは、係止片120周辺を椅子400の前面斜め下から見た図を示す。
係止片120は、ベース部103よりも前方に突出した板状に構成されている。
ベース部103の内側、係止片120の上側には、第1ストッパ121が配置されている。
【0084】
ユーザが座面部101に着座すると、第3リンクが、図7の正面から見て右回りに回転する。係止片120は、この回転にともなって、同様に図7の正面から見て右回りに回転する。
ただし、係止片120の上側には、第1ストッパ121が配置されているため、係止片120が図8の上向きに回転可能な範囲は、第1ストッパ121が存在する位置までに限定される。
【0085】
第3リンクの回転に伴って、第3関節部203、第6関節部206、および第7関節部207も同様に回転する。
そのため、係止片120が第1ストッパ121と接触して回転が止められた時点で、周辺部材も、図8の上向きにそれ以上回転することができない。
したがって、第2リンク152や座面部101の沈み込みがこの時点で止まり、ユーザの座り込み位置が定まるのである。
【0086】
図9は、係止片120と第1ストッパ121が接触して周辺部材の回転を止める様子を示す側面模式図である。
【0087】
図9(a)は、ユーザが座面部101に着座する前の状態を示す。同図に示す状態は、図7に示す各部の状態と同様である。
【0088】
図9(b)は、ユーザが座面部101に着座し、背面部102にもたれかかる前の状態を示す。以下、各部の動作について説明する。
【0089】
(1)ユーザが座面部101に着座すると、図5(b)で説明したように、第3リンクとともに第3関節部203、第6関節部206、および第7関節部207等の各構成部材が図9の正面から見て右回りに回転する。
(2)各構成部材が回転するにともなって、係止片120も右回りに回転する。
【0090】
(3)各構成部材および係止片120が一定程度回転すると、係止片120が第1ストッパ121と接触する。
(4)係止片120と第1ストッパ121の働きにより、各構成部材は右回りにそれ以上回転することができない。
(5)したがって、座面部101の沈み込みも、この時点で停止する。
【0091】
以上、係止片120と第1ストッパ121の働きについて説明した。
なお、本実施の形態5では、部材の保護等の観点から、第1ストッパ121を円柱状ゴムで構成したが、必ずしも円柱状ゴムでなくとも、係止片120の回転を止めることができる部材であれば、その他の部材を用いることもできる。
【0092】
以上のように、本実施の形態5では、係止片120と第1ストッパ121を設け、第3関節部203が右回りに所定範囲まで回転した際に、係止片120と第1ストッパ121が接触して回転を制止するように構成されている。
そのため、例えば極端に重い載置物を座面部101に載せた場合でも、各部が許容範囲を超えて回転して破損等してしまうおそれがない。
【0093】
実施の形態6.
本発明の実施の形態6では、座面部101の下方から上方に向けて一定の初期反発力をあらかじめ付与しておき、ユーザが座面部101に着座したときの着座感を調整する構成について説明する。
【0094】
図10は、本実施の形態6に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
本実施の形態6に係る椅子400は、実施の形態5で説明した構成に加えて、新たにプリテンショナ130、第2ストッパ122を備える。その他の構成は、実施の形態5と同様である。
なお図10では、記載の都合の観点から、一部の符号を省略したことを付言しておく。
【0095】
プリテンショナ130は、第2リンク152を押し上げる方向(図10の上方)に、第3弾性抵抗手段303を所定量回転させる手段である。
プリテンショナ130の一部は、第3弾性抵抗手段303の遠心方向に突出した突起物で形成されている。
プリテンショナ130の残りの部分は、この突起物を、ベース部103の正面(図10の正面から見て左側)から奥(図10の正面から見て右側)へ向けて、押し込みネジ等の手段を用いて所定量押圧する。
プリテンショナ130の動作の詳細は、後述の図12で改めて説明する。
【0096】
第2ストッパ122は、円柱状のゴム片で構成され、ベース部103の内側(図10の右側)、係止片120を下から支える位置に配置されている。
第2ストッパ122の働きの詳細は、後述の図12で改めて説明する。
【0097】
図11は、係止片120周辺の透過斜視図である。ここでは、係止片120周辺を椅子400の前面斜め下から見た図を示す。
実施の形態5で説明した図8と異なるのは、係止片120の下側に第2ストッパ122が配置されている点である。第2ストッパ122の働きにより、係止片120の下向きの回転は、所定範囲内に制限される。
【0098】
図12は、係止片120と第2ストッパ122が接触して周辺部材の回転を止める様子を示す側面模式図である。
【0099】
図12(a)は、ユーザが座面部101に着座する前の状態を示す。同図に示す状態は、図10に示す各部の状態と同様である。以下、各部の動作について説明する。
【0100】
(1)プリテンショナ130の押し込みネジ部分を図12の右方向に向けて押し込むと、押し込みネジが第3弾性抵抗手段から突出した突起部分を押圧し、第3リンク153を第3関節部203を中心に図12の正面から見て左回りの方向に回転する回転力が加わる。
(2)その結果、図12の矢印に示す方向に力が加わり、第3リンク153が第3関節部203を支点として回転するため、第2リンク152が下方から押し上げられる方向に力が作用する。そのため、ユーザが座面部101に着座する初期状態から、下方からの抵抗力が作用することになるので、この抵抗力を調整することにより、着座感を調整することができる。
【0101】
(3)プリテンショナ130の作用によって、図12の矢印に示す方向に圧力が加わると、係止片120や周辺部材が下向き(図12の正面から見て左回り)に回転する。この回転を所定範囲内で制止するため、適当な位置に第2ストッパ122を配置しておき、係止片120と接触させる。
(4)係止片120と第2ストッパ122が接触した時点で、係止片120とその周辺部材の回転が止まる。この時点で、座面部101等の位置が定まる。
【0102】
(5)プリテンショナ130の押し込みネジ部分をさらに押し込むと、係止片120やその周辺部材はそれ以上回転しないが、第3弾性抵抗手段303はさらに回転することになる。そのため、第3弾性抵抗手段303の弾性力が高まり、ユーザが座面部101に着座した際に、第2リンク152を介して座面部101を下方から押し上げる力が増す。
(6)即ち、プリテンショナ130の押し込みネジ部分の押し込み量を調整することによって、ユーザが座面部101に着座したときに下方から受ける抵抗力を調整し、着座感を調整することができるのである。
【0103】
以上のように、本実施の形態6では、プリテンショナ130を用いて第3弾性抵抗手段303に初期弾性力を付与し、第2リンク152や座面部101を下方から押し上げる力を作用させる。
これにより、ユーザが座面部101に着座したときに抵抗力を与え、着座感を変化させることができる。
【0104】
また、本実施の形態6は、第2ストッパ122を用いて、係止片120とその周辺部材の下向きの回転を所定範囲内に制限する。
これにより、プリテンショナ130が第3弾性抵抗手段303に初期弾性力を付与して回転させても、第2ストッパ122の位置に応じて回転が止まるので、座面部101等の初期位置を任意に調整することができる。
【0105】
また、本実施の形態6では、プリテンショナ130の押し込みネジの押し込み量を調整することにより、第3弾性抵抗手段303の初期弾性力を調整し、ユーザが座面部101に着座したときの抵抗力を調整することができる。
これにより、座面部101の着座感を任意に調整することができる。また、押し込みネジの押し込み量は、容易に調整することができるので、ユーザがこれを自ら調整して所望の着座感を得ることもできる。
【0106】
次に、実施の形態1〜2に係る椅子400と、実施の形態3〜6に係る椅子400とが同様の効果を発揮することについて、次の図13を用いて説明する。
【0107】
図13は、実施の形態1〜2に係る椅子400と、実施の形態3〜6に係る椅子400との差異を説明する図である。ここでは実施の形態1の図1を図13(a)で例示したが、実施の形態2についても同様である。そして実施の形態3の図4を図13(b)で例示したが、実施の形態4〜6についても同様である。また、記載の都合上、各部の符号を省略した。
【0108】
図13(a)では実施の形態1の図1で示した構造、図13(b)では実施の形態3の図4で示した構造をそれぞれ比較のために示した。
図13(a)(b)に示すr2がともに等しい場合、図13(a)におけるr1を下記(式1)のように定める。
【0109】
r1=(r3/r4)r5 ・・・(式1)
【0110】
上記(式1)のようにr3、r4、r5を定めれば、θ1の変位に対するθ2の変位が図13(a)と図13(b)でほぼ等しくなる。これにより、実施の形態1と同様に、ユーザが座面部101に着座するのみで、背面部102がユーザの背中に自動的にフィットするかのような効果を得ることができる。
一般的に、実施の形態1の図1において示した構造の椅子を製造する場合、第2関節部202と第4関節部204の距離にて表されるr2の大きさを所定以上小さくすることは困難である。
つまり、前述のように第2関節部202は、ユーザが座面部101に着座したときに、ユーザの股関節の位置に概ね相当するように、座面部101および背面部102から所定の距離をとる必要がある。さらに第4関節部204は、背面部102と同様に第3関節部203を中心に回転する。すなわち、ユーザが姿勢を変化させる際に背面部102が傾動するに伴って、第3関節部203を中心に回転する。この際に第4関節部204と座面部101の下端とが干渉しないよう第4関節部204の位置を決定する必要がある。よって、一般的な部材を用いて本リンク機構を成立させる為には、r2の大きさを所定以上小さくすることは困難となる。
ここで、実施の形態1で説明した機能を発揮する為には、r1の大きさ、すなわち第1関節部201と第3関節部203の距離をr1=r2としなければならないが、これに伴ってベース部103の長さをr2以上に大きくとらなければならない。これを満たすベース部103の長さは、一般的な椅子の脚やキャスターを含めたベース部の寸法に比較して大となり、座面部の高さを一般的な椅子と同様にすることが困難である。
そこで、前記リンク機構を導入し、(式1)に示す変換を行うことによって、図1の形態とほぼ同様の機能を実現する。これにより、座面部の下部の機構を小型化し、座面部の高さを一般的な椅子と同様にすることを可能にした。
【0111】
実施の形態1〜2では、第1関節部201に第1弾性抵抗手段301を設けた例を説明したが、第3関節部203に第3弾性抵抗手段303を備えている構成を採用しても、実施の形態1と同様の効果を発揮する。
さらには、第1弾性抵抗手段301と第3弾性抵抗手段303を併用してもよい。
【0112】
また、実施の形態3〜6において、第3関節部203に第3弾性抵抗手段303を設けることに代えて、実施の形態1と同様に、第1関節部201に第1弾性抵抗手段301を設けてもよい。
さらには、第3弾性抵抗手段303と第1弾性抵抗手段301を併用してもよい。
これらの構成を採用した場合でも、実施の形態3〜6と同様の効果を発揮することができる。
【0113】
以上のように、実施の形態1〜2では、椅子400に弾性力を付与するリンク機構の構成が簡易であるため、部品コスト等の削減を図ることができる。
ただし、図13で説明した距離r1を十分に大きく取る必要があるため、これらに制約があるか否かなどを考慮したうえで、実施の形態1〜2の構成と実施の形態3〜6の構成のいずれを採用するかを適宜定めるとよい。
即ち、リンク機構を複雑化しても椅子400全体のサイズを小型化したい場合は実施の形態3〜6で説明した構成を採用し、リンク機構を簡易化することを優先する場合は実施の形態1〜2で説明した構成を採用するとよい。
【0114】
実施の形態7.
図14は、本発明の実施の形態7に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
本実施の形態7に係る椅子は、実施の形態1で説明した構成における背面部102の側面の一部を椅子400の前方に張り出して第2関節部202と接続した。
本実施の形態7に係る椅子400の動作は、実施の形態1と同様である。
【0115】
なお、実施の形態2に係る椅子400の構成において、図14と同様に、背面部102の側面の一部を椅子400の前方に張り出す構成を採用してもよい。この場合の椅子400の動作も、各実施の形態と同様である。
【0116】
実施の形態8.
図15は、本発明の実施の形態8に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
本実施の形態8に係る椅子は、実施の形態3で説明した構成における背面部102の側面の一部を椅子400の前方に張り出して第2関節部202と接続した。
本実施の形態8に係る椅子400の動作は、実施の形態3と同様である。
【0117】
なお、実施の形態4〜6に係る椅子400の構成において、図15と同様に、背面部102の側面の一部を椅子400の前方に張り出す構成を採用してもよい。この場合の椅子400の動作も、各実施の形態と同様である。
【0118】
実施の形態9.
以上の実施の形態1〜8において、第2関節部202に回転方向の弾性力を付与する第4弾性抵抗手段304を設けてもよい。これにより、第2弾性抵抗手段302と併せて、ユーザが背面部102にもたれかかるときの抵抗力を調整することができる。また、第3弾性抵抗手段303と併せてユーザが着座するときの抵抗力を調整することができる。
さらには、第4弾性抵抗手段304に回転速度が加わった際にこれを緩衝する第4粘性抵抗手段404を設けてもよい。
【0119】
実施の形態10.
図16は、本発明の実施の形態10に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
実施の形態1に係る椅子400では、第1関節部201に回転方向の弾性を付与する第1弾性抵抗手段301を設けたが、代わりに第3関節部203に回転方向の弾性を付与する第3弾性抵抗手段303を設けても実施の形態1と同等の効果を得ることが可能である。
さらに、実施の形態2に係る椅子400では、第1関節部201に粘性抵抗を付与する第1粘性抵抗手段401を設けたが、代わりに第3関節部203に粘性抵抗を付与する第3粘性抵抗手段403を設けても実施の形態2と同等の効果を得ることが可能である。
なお、図1、図3、図14で示した構成の下で、第3関節部203に第3弾性抵抗手段303を設けてもよいし、第3粘性抵抗手段403を設けてもよい。
図16においては、第1関節部、第2関節部、第3関節部、第1リンクの全てに弾性抵抗手段および粘性抵抗手段を設けた場合を図示したが、これら全ての関節部および第1リンクに抵抗手段を設ける必要はなく、椅子の仕様に合わせて弾性抵抗手段もしくは粘性抵抗手段のいずれか一方または両方を適宜選択すればよい。
【0120】
実施の形態11.
図17は、本発明の実施の形態11に係る椅子400の構成を示す側面模式図である。
実施の形態3に係る椅子400では、第3関節部203に回転方向の弾性を付与する第3弾性抵抗手段303を設けたが、代わりに第1関節部201に回転方向の弾性を付与する第1弾性抵抗手段301を設けても実施の形態3と同等の効果を得ることが可能である。
さらに、実施の形態4に係る椅子400では、第3関節部203に粘性抵抗を付与する第3粘性抵抗手段403を設けたが、代わりに第1関節部201に粘性抵抗を付与する第1粘性抵抗手段401を設けても実施の形態4と同等の効果を得ることが可能である。
なお、図4、図6、図7、図10、図15で示した構成の下で、第1関節部201に第1弾性抵抗手段301を設けてもよいし、第1粘性抵抗手段401を設けてもよい。
図17においては、第1関節部、第2関節部、第3関節部、第1リンクの全てに弾性抵抗手段および粘性抵抗手段を設けた場合を図示したが、これら全ての関節部および第1リンクに抵抗手段を設ける必要はなく、椅子の仕様に合わせて弾性抵抗手段もしくは粘性抵抗手段のいずれか一方または両方を適宜選択すればよい。
【0121】
以上の実施の形態1〜11において、各リンク機構は必ずしも直線リンクで構成する必要はない。
【0122】
なお、以上の実施の形態1〜11で用いた図面は、構成を説明するための模式図であり、実際の椅子400の各部サイズ等を正確に表したものではないことを付言しておく。
【符号の説明】
【0123】
101:座面部、102:背面部、103:ベース部、151:第1リンク、152:第2リンク、153:第3リンク、120:係止片、121:第1ストッパ、122:第2ストッパ、130:プリテンショナ、201:第1関節部、202:第2関節部、203:第3関節部、204:第4関節部、205:第5関節部、206:第6関節部、207:第7関節部、301:第1弾性抵抗手段、302:第2弾性抵抗手段、303:第3弾性抵抗手段、304:第4弾性抵抗手段、401:第1粘性抵抗手段、402:第2粘性抵抗手段、403:第3粘性抵抗手段、404:第4粘性抵抗手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面部と座面部を有する椅子であって、
前記座面部を下方に押す力を加えると前記座面部と前記背面部との角度を減少させる連動手段を備えた
ことを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記座面部を支持するベース部と、
前記座面部と前記ベース部を上下方向に揺動可能に接続する第1関節部と、
前記背面部と前記座面部を回動可能に接続する第2関節部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記第1関節部は、
前記座面部の前方端部と前記ベース部の上方端部を接続する
ことを特徴とする請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記連動手段は、
前記背面部と前記ベース部を接続するリンク機構である
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記リンク機構と前記ベース部を回動可能に接続する第3関節部と、
前記リンク機構と前記背面部を回動可能に接続する第4関節部と、
を備えたことを特徴とする請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記リンク機構は、
前記座面部と前記ベース部との角度の変化に応じて、
前記座面部と前記背面部との角度を制御すること
を特徴とする請求項4または請求項5記載の椅子。
【請求項7】
前記連動手段は、
前記背面部と前記ベース部を接続する第1リンクと、
前記第1リンクと前記ベース部を回動可能に接続する第3関節部と、
前記第1リンクと前記背面部を回動可能に接続する第4関節部と、
を備えたことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の椅子。
【請求項8】
前記連動手段は、
前記背面部に一端が接続される第1リンクと
前記座面部に一端が接続される第2リンクと、
前記第1リンクと前記第2リンクの他端がそれぞれ接続される第3リンクと、
前記ベース部と前記第3リンクを回動可能に接続する第3関節部と、
前記第1リンクと前記背面部を回動可能に接続する第4関節部と、
前記座面部と前記第2リンクを回動可能に接続する第5関節部と、
前記第2リンクと前記第3リンクを回動可能に接続する第6関節部と、
前記第1リンクと前記第3リンクを回動可能に接続する第7関節部と、
を備えたことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の椅子。
【請求項9】
前記第1リンクに弾性抵抗を付与する第2弾性抵抗手段
を備えたことを特徴とする請求項7または請求項8記載の椅子。
【請求項10】
前記第1リンクに粘性抵抗を付与する第2粘性抵抗手段
を備えたことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の椅子。
【請求項11】
前記第3関節部に回転方向の弾性抵抗を付与する第3弾性抵抗手段
を備えたことを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の椅子。
【請求項12】
前記第3関節部に回転方向の粘性抵抗を付与する第3粘性抵抗手段
を備えたことを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれかに記載の椅子。
【請求項13】
前記第1関節部に回転方向の弾性抵抗を付与する第1弾性抵抗手段を備えた
ことを特徴とする請求項2ないし請求項12のいずれかに記載の椅子。
【請求項14】
前記第1関節部に回転方向の粘性抵抗を付与する第1粘性抵抗手段を備えた
ことを特徴とする請求項2ないし請求項13のいずれかに記載の椅子。
【請求項15】
前記第2関節部に回転方向の弾性抵抗を付与する第4弾性抵抗手段
を備えたことを特徴とする請求項2ないし請求項14のいずれかに記載の椅子。
【請求項16】
前記第2関節部に回転方向の粘性抵抗を付与する第4粘性抵抗手段
を備えたことを特徴とする請求項2ないし請求項15のいずれかに記載の椅子。
【請求項17】
前記背面部に後傾方向の力を加えると前記座面部を押し上げる押上手段を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の椅子。
【請求項18】
前記背面部に後傾方向の力を加えると、前記連動手段を動作させることにより前記座面部を押し上げる手段を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれかに記載の椅子。
【請求項19】
前記背面部に後傾方向の力を加えると、前記背面部と前記座面部が形成する角度を広げる向きに前記座面部を傾ける手段を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の椅子。
【請求項20】
前記座面部は、力を加えていない初期状態で水平面に対して前傾した姿勢で固定されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項19のいずれかに記載の椅子。
【請求項21】
前記連動手段は、前記座面部に力が加わり前記座面部が略水平になる状態において、前記背面部の水平面に対する角度を、前記初期状態の前記背面部の水平面に対する角度と略同一に保持する
ことを特徴とする請求項20に記載の椅子。
【請求項22】
前記連動手段は、前記座面部に力が加わり前記座面部が略水平になる過程において、前記背面部を前記座面部の回転に伴い下方へ移動させるとともに、前記背面部の水平面に対する角度を、前記初期状態の前記背面部の水平面に対する角度と略同一に保持する
ことを特徴とする請求項20または請求項21に記載の椅子。
【請求項23】
ユーザが前記座面部から立ち上がる際に下方から前記座面部を押し上げてこれを補助する手段を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし請求項22のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−227324(P2010−227324A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78705(P2009−78705)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】