説明

椅子

【課題】 座の前後位置の調節を行う操作が容易で、調節後の位置を安定的に保持でき、しかも背凭れ支持杆の傾動に肘掛けが邪魔にならないようにする。
【解決手段】 脚体3と、脚体3に固着された支基5と、支基5に左右方向の支軸8をもって前端部が枢着され、かつ支軸8より後方の部分に上向きの座支持杆11が設けられ、後下方に傾動可能とした背凭れ支持杆9と、背凭れ支持杆9に支持されて、支基5に対し前後方向に傾動可能な背凭れ6と、前部が支基5に前後方向に移動可能として支持され、かつ後部が座支持杆11に左右方向を向く軸をもって連結されたガイドレール13と、ガイドレール13に前後方向に摺動可能に装着された座7と、座7の下方において背凭れ支持杆9の下部における前向部に下端部が固着された肘掛け10とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
背凭れに寄り掛かる座者の荷重により、背凭れが後傾し、それに連動して、座が前後動するようになっている椅子は公知である。
本願出願人は、近年のOA機器の普及に対処して、たとえば机上のパソコンのキーボード使用時において、背凭れの後傾とは無関係に、背凭れや肘掛けに対する座の前後位置を微調節して、座者の座り心地を改善し、デスクワークの作業効率を向上させることを目的として、簡単な機構で、容易に座の前後位置の調節を行うことができる発明について、先に特許出願している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−136376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記目的と併せて、座の前後位置の調節を行う際に、その操作が容易であるとともに、調節後の位置を安定的に保持することができ、しかも背凭れ支持杆の傾動に肘掛けが邪魔となることがないようにした椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 脚体と、前記脚体に設けられた支持体と、前記支持体の両側において、左右1対の前端部が左右方向の支軸をもって支持体に枢着され、かつ前記支軸より後方において上向きの座支持杆が設けられ、後下方に傾動可能とした背凭れ支持杆と、背凭れ支持杆に支持され、背凭れ支持杆とともに後下方に傾動可能とした背凭れと、前部が前記支持体に前後方向に移動可能として支持され、かつ後部が前記座支持杆に左右方向を向く軸をもって連結され、前記背凭れ支持杆が後下方に傾動するのに伴って後下方に移動させられるようにした前後方向を向くガイドレールと、前記ガイドレールに前後方向に摺動可能に装着された座と、前記座の下方において前記背凭れ支持杆の下部における前向部に下端部が固着された肘掛けとを備えるものとする。
【0006】
このような構成によると、肘掛けの下端が背凭れ支持杆の下部における前向部に固着されているため、座を前後に摺動させても、それにともなって肘掛けが前後方向に移動することを防止することができるとともに、着座者による肘掛けへの負荷は、ガイドレールに伝わらない構造となっているため、ガードレールを変形させる虞もなく、かつ肘掛けが背凭れ支持杆とともに傾動するため、背凭れ支持杆の傾動に肘掛けが邪魔となることもない。
【0007】
(2) 上記(1)項において、肘掛けを、側面視ほぼL字状の背凭れ支持杆の前下方に傾斜する前向部の中間に設ける。
【0008】
このような構成によると、肘掛けを、側面視ほぼL字状の背凭れ支持杆の下部における前下方に傾斜する前向部の中間に起立させて設けることができる。
【0009】
(3) 上記(1)または(2)項において、ガイドレールの前部を、支持体に下部を枢着させた支持リンクの上端部に、左右方向を向く軸をもって枢着させて連結する。
【0010】
このような構成によると、背凭れ支持杆を後下方に傾動させると、それに連動して座が後下方向に移動する椅子が得られる。
【0011】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、座を、ガイドレールに前後方向に摺動可能に装着した可動レールに固着し、前記可動レールとガイドレールとの間に、座を前後方向の所望の位置に摺動させて調整した後に、その位置で固定するための位置調整装置を設ける。
【0012】
このような構成によると、座の前後位置を調節する際の操作を、一層容易にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、座の前後位置の調節を行う際に、その操作が容易であるとともに、調節後の位置を安定的に保持することができ、しかも背凭れ支持杆の傾動に肘掛けが邪魔となることがないようした椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の椅子の正面図である。
【図2】前記椅子の側面図である。
【図3】図1におけるIII〜III線横断面図である。
【図4】図1におけるIV〜IV線要部縦断面図である。
【図5】図3におけるV〜V線縦断面図である。
【図6】図3におけるVI〜VI線縦断面図である。
【図7】図2における破線長円内を外側上方から見た拡大斜視図である。
【図8】図7における位置調節装置の要部を分解して示す上方斜視図である。
【図9】図7におけるIX〜IX線縦断面図である。
【図10】図7におけるX〜X線縦断面図であり、レバー取手の係合部が、ガイドレールの被係合部に係合している状態を示す。
【図11】レバー取手の係合部と、ガイドレールの被係合部との係合が解除された状態を示す、図10と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、この椅子は、先端部にキャスタ1が設けられた5本の脚杆2を有する脚体3の中央に、ガススプリング(図示略)を備える伸縮式の脚柱4を立設し、脚柱4の上端に、支持体としての前後方向を向く箱型の支基5の後部を固着して形成されている。
図示はしていないが、支基5の内部には、背凭れ6及び座7の復帰用の付勢手段が設けられている。
【0017】
支基5の両側壁5a、5aより左右に突出する支軸8の両端部には、背凭れ6を支持する側面視前向L字状の左右1対の背凭れ支持杆9、9の前端部に設けた左右方向を向く支筒9a、9aが固嵌されており、背凭れ6及び背凭れ支持杆9は、支軸8と一体となって、後下方に傾動し得るようになっている。
左右の背凭れ支持杆9の下部における前下方に傾斜する前向部の中間には、肘掛け10の下端部における内向杆10aの先端が固着されている。
【0018】
左右の背凭れ支持杆9における支筒9aと肘掛け10との中間部には、上向きの座支持杆11が、一体的に設けられている。
【0019】
図3におけるV〜V線縦断面図である図5に示すように、前記各座支持杆11の上端部外側面には、横杆12で互いに連結された前後方向を向く左右1対のガイドレール13の後端部が、左右方向を向く枢軸14をもって連結されている。
【0020】
前記左右のガイドレール13、13の前端部は、図1、図2、および図3におけるVI〜VI線縦断面図である図6に示すように、支基5の両側壁5a、5aの前部に設けられた外向きの筒部15、15の外側に枢着された、上下方向を向く左右の支持リンク16、16の上端部内側面に、左右方向を向く横軸17をもって連結されている。このように、ガイドレール13の前後端を支持する座支持杆11と支持リンク16の2つの支持金具は、一方の支持金具をガイドレール13の内側側面に当接させ、他方の支持金具をガイドレール13の外側側面に当接させて支持されている。
【0021】
前記支持リンク16の下端部は、前記筒部15の外側に、左右方向を向く横軸18をもって枢着され、かつ筒部15内に設けられたねじりコイルばねにより、図2における反時計回りに付勢されている。
【0022】
これにより、背凭れ6及び背凭れ支持杆9、9を、支軸8を中心として後下方に傾動させると、そのときの背凭れ支持杆9、9と一体の座支持杆11、11の後傾により、座7の後部は後下方に移動させられ、かつそれに連動して、座7の前部も、左右の支持リンク16、16が、ねじりコイルばねの付勢力に抗して、後傾することにより、若干後下方に移動させられるようになっている。
【0023】
左右のガイドレール13、13には、座7の下面より突設した短寸の脚座19、19をもって、前後の端部が固着され、座7から離間した前後方向を向く左右1対の可動レール20、20が、前後方向に摺動可能に装着されている。
【0024】
図4に示すように、座7の前後端の下面より突設した短寸の脚座19、19には、上下方向の雌ねじ孔19aを貫設してあり、各脚座19の下面に、可動レール20の前後端部が、下方から挿入したボルト21によって螺着されている。
【0025】
ガイドレール13は、図5、図6に示すように、上端左右に外向きの鍔部13a、13aを有するU字状断面をなし、そのU字溝13bの内部中央に、その溝の深さのほぼ3分の2程度の高さの前後方向の支持片13cが立設されている。支持片13cの前後端部近傍には、図4に示すように、上向柱状のストッパー13d、13dが設けられている。
【0026】
可動レール20は、図5、図6に示すように、断面がやや横長のほぼ四角形の下辺に、逆台形状の嵌合部20aを突出させた形状をなし、かつ図4に示すように、前後方向の端部の近傍には、上下方向に貫通する前後に長いスライド孔20b、20bが穿設されている。
【0027】
ガイドレール13と可動レール20との間には、滑り抵抗の小さい摺動用シート22を介在させて、可動レール20がガイドレール13上を円滑に摺動し得るようにしてある。
【0028】
摺動用シート22は、断面が、上端左右に外向きの鍔部22a、22aを有する低寸のU字状をなし、左右の鍔部22a、22aを、ガイドレール13の左右の鍔部13a、13aの上面に載置して、ガイドレール13のU字溝13bの上部に嵌合させるとともに、その下面中央を、ガイドレール13の支持片13cをもって支持させ、かつ摺動用シート22の前後端部近傍に穿設した通孔22b、22bに、ガイドレール13のストッパー13dを挿通させることによって、ガイドレール13上に固定されている。
【0029】
可動レール20は、その下面に突設された逆台形状の嵌合部20aを、摺動用シート22のU字溝22c内に嵌合させるとともに、ガイドレール13の前後のストッパー13d、13dを、それぞれ前後のスライド孔20b、20bに貫通させ、次いで、ストッパー13d、13dに設けられた雌ねじ孔に、ボルト23、23を螺合させて取り付けられている。
【0030】
ボルト23、23の頭部23a、23aの直径は、可動レール20のスライド孔20bの幅よりも大きくして、可動レール20がガイドレール13から外れることがないようにしてある。
可動レール20は、スライド孔20bの長さの範囲内において、前後に円滑に摺動させることができる。
【0031】
ガイドレール13と可動レール20間には、座7を前後方向の所望位置に摺動させて調節した後に、その位置で固定するための位置調節装置が設けられている。
【0032】
図7は、図2における破線長円内を、外側上方から見た拡大斜視図である。
位置調節装置24は、ガイドレール13に設けられた被係合部25と、可動レール20 の前後方向のほぼ中央部に設けられた、前記被係合部25と係合する係合部26を有するレバー部材27とよりなっている。
【0033】
図8は、図7における位置調節装置24の要部を分解して示す上方斜視図である。
図9、図10は、それぞれ図7におけるIX〜IX線縦断面図、X〜X線縦断面図である。
【0034】
被係合部25は、ガイドレール13の外側側面13eに、上下方向の係合溝25aを前後方向に複数設けて形成されている。
【0035】
レバー部材27は、板状のレバー取手28と、その内側端に立設した取付板29と、この取付板29の上端に設けられた前後方向の回動軸30とよりなっている。
【0036】
レバー取手28の内側面28aには、前記被係合部25の一部の係合溝25aと係合する、前後方向に複数並設された歯状突起28bからなる係合部26が設けられている。レバー取手28の外側面28cは、取手として手を掛け易いように、外側に向けて突曲させてある。
【0037】
可動レール20の前後方向のほぼ中央部におけるレバー部材27の上方には、前記レバー取手28と対向させて、前記レバー取手28の外側面28cとほぼ同様の形状の固定取手31が、外側に向けて突設されている。可動レール20の上面における前記固定取手31が設けられている位置には、平面視長方形の凹部32が設けられ、この凹部32の底面33の外側端には、レバー取手28の回動軸30を挿通させるための前後方向に長い凹入孔34が設けられ、この凹入孔34の前後には、回動軸30の両端を、回動自在に支承するための断面半円状の支承孔35、35が設けられている。
【0038】
レバー取手28の回動軸30を前記支承孔35、35に嵌合させた後に、前記凹部32は、キャップ36で被覆される。このキャップ36の裏面の外方端近傍には、前記支承孔35、35を補完する下向きに開口する半円溝37が設けられており、この半円溝37は、前記支承孔35と相俟って、レバー取手28の回動軸30を位置安定よく回動自在に支持する。
【0039】
キャップ36は、ボルト38を各通孔39へ挿通して、前記凹部32における底面33の雌ねじ孔39aへ螺合することによって、固定されている。
【0040】
レバー取手28の上面の前後には、それぞれ、コイルばね40の下部を嵌入しうる係止筒41が設けられ、固定取手31の下面には、前記コイルばね40、40の上端を係止する係止凹孔42、42が設けられている。
【0041】
上下端が、それぞれ前記係止凹孔42と、係止筒41に嵌合係止されたコイルばね40、40の作用によって、レバー取手28は、図10に示すように、前後方向の回動軸30の回りに弾性付勢され、レバー取手28の係合部26は、ガイドレール13の被係合部25に係合している。
【0042】
座7の前後位置を調節するには、たとえば、固定取手31の上面に手の親指を当て、レバー取手28の下面にその他の指を当てて、図11に示すように、レバー取手28をコイルばね40、40に抗して、回動軸30の回りに回動させることにより、係合状態を解除し、可動レール20を、摺動用シート22を介して、ガイドレール13上を摺動させることにより、容易に座1の前後位置を調節することができる。
【0043】
位置を調節した後、レバー取手28から手を離すと、コイルばね40の弾性付勢の作用により、再びレバー取手28の係合部26は、ガイドレール13の被係合部25に係止し、座7は、その位置で固定される。
【符号の説明】
【0044】
1 キャスター
2 脚杆
3 脚体
4 脚柱
5 支基(支持体)
5a 側壁
6 背凭れ
7 座
8 支軸
9 背凭れ支持杆
9a 支筒
10 肘掛け
10a 内向杆
11 座支持杆
12 横杆
13 ガイドレール
13a 鍔部
13b U字溝
13c 支持片
13d ストッパー
13e 外側側面
14 枢軸
15 筒部
16 支持リンク
17、18横軸
19 脚座
19a 雌ねじ孔
20 可動レール
20a 嵌合部
20b スライド孔
21 ボルト
22 摺動用シート
22a 鍔部
22b 通孔
22c U字溝
23 ボルト
23a 頭部
24 位置調節装置
25 被係合部
25a 係合溝
26 係合部
27 レバー部材
28 レバー取手
28a 内側面
28b 歯状突起
28c 外側面
29 取付板
30 回動軸
31 固定取手
32 凹部
33 底面
34 凹入孔
35 支承孔
36 キャップ
37 半円溝
38 ボルト
39 通孔
39a 雌ねじ孔
40 コイルばね
41 係止筒
42 係止凹孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体と、
前記脚体に設けられた支持体と、
前記支持体の両側において、左右1対の前端部が左右方向の支軸をもって支持体に枢着され、かつ前記支軸より後方において上向きの座支持杆が設けられ、後下方に傾動可能とした背凭れ支持杆と、
前記背凭れ支持杆に支持され、背凭れ支持杆とともに後下方に傾動可能とした背凭れと、
前部が前記支持体に前後方向に移動可能として支持され、かつ後部が前記座支持杆に左右方向を向く軸をもって連結され、前記背凭れ支持杆が後下方に傾動するのに伴って後下方に移動させられるようにした前後方向を向くガイドレールと、
前記ガイドレールに前後方向に摺動可能に装着された座と、
前記座の下方において前記背凭れ支持杆の下部における前向部に下端部が固着された肘掛けとを備えることを特徴とする椅子。
【請求項2】
肘掛けを、側面視ほぼL字状の背凭れ支持杆の前下方に傾斜する前向部の中間に設けた請求項1記載の椅子。
【請求項3】
ガイドレールの前部を、支持体に下部を枢着させた支持リンクの上端部に、左右方向を向く軸をもって枢着させて連結した請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
座を、ガイドレールに前後方向に摺動可能に装着した可動レールに固着し、前記可動レールとガイドレールとの間に、座を前後方向の所望の位置に摺動させて調整した後に、その位置で固定するための位置調整装置を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−183360(P2012−183360A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−124282(P2012−124282)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【分割の表示】特願2011−223895(P2011−223895)の分割
【原出願日】平成14年7月22日(2002.7.22)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】