説明

植物におけるGNTIII発現

【課題】植物におけるGnTIII発現の提供。
【解決手段】本発明は、糖蛋白質を含有する組換えバイオ医薬蛋白質又は医薬組成物の製造のための、経費効率が良く及び夾雑物の恐れのない工場のように使用されるトランスジェニック植物におけるこれらの糖蛋白質プロセッシングの分野に関する。本発明は、通常植物には存在しない哺乳類GnTII(EC2.4.1.144)Iを提供する機能性哺乳類酵素を含む植物を提供し、該植物は、追加的に少なくとも通常植物には存在しない第二の哺乳類蛋白質又はそれらの機能性断片を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、植物における哺乳類N-アセチルグルコサミニル-転移酵素III(GnTIII)の酵素の発現、並びにバイセクト型(bisected)オリゴ糖及び増加した量の末端GlcNAc残基を伴う糖蛋白質の生成におけるその使用に関する。本発明は更に、GnTIIIの触媒部位並びにゴルジ装置及び/又は小胞体(ER)蛋白質の膜貫通ドメイン又はER残留シグナルを含む修飾されたGNTIIIを含むハイブリッド蛋白質、並びに免疫原性キシロース及びフコース残基を欠いているオリゴ糖を伴う糖蛋白質の生成におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
N-アセチルグルコサミニル転移酵素(GlcNAc-転移酵素)は、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基が、典型的N-連結されたグリカンのトリマンノシルコア構造のマンノースのひとつに付加された「分岐された」酵素である。ほとんど又は全く配列相同性がない少なくとも6種のGlcNAc-転移酵素が知られている。これらのGlcNAc転移酵素は、異なる蛋白質構造に加え、異なる酵素特性及び基質特異性も有する。全て、細胞質ドメイン、膜貫通アンカー、及び触媒ドメインを伴う細胞外ステム領域を伴う典型的II型膜貫通蛋白質である。
【0003】
注目すべきGlcNAc-転移酵素は、GlcNAc-転移酵素III(GnTIII)である。GnTIIIは、UDP-Nアセチルグルコサミン:β-D-マンノシドβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニル-転移酵素III(EC2.4.1.144)としても知られており、これは、細胞糖蛋白質の複合型N-連結されたグリカン内に、バイセクトしているGlcNAc残基が挿入されている(総説については、Taniguchiら、「A glycomic approach to the identification and characterization of glycoprotein function in cells transfection with glycosyltransferase genes」、Proteomics、1: 239247 (2001)参照)。GnTIIIは、GlcNAcを、β(1,4)リンケージを介してN-連結されたグリカンのトリマンノシルコア構造のβ-連結されたマンノースに付加する。GnTIIIは、雌鶏輸卵管において最初に同定された(Narasimhan S.、「Control of glycoprotein synthesis. UDP-GlcNAc:glycopeptide β4-Nacetyl blucosaminyl transferase III, an enzyme in hen oviduct which adds GlcNAc in β1,4 linkage to the β-linked mannose of the trimannosyl core of N-glycosyl oligosaccharides」、The Journal of Biological Chemistry、257: 10235-10242 (1982))が、ラット肝臓癌、ヒト血清、肝臓、並びに肝臓癌及び肝硬変患者の肝臓癌組織のような様々な型においても、高レベルの活性が報告されている(Ishibashiら、「N-acetylglucosaminyl transferase III in human serum and liver and hepatoma tissues: increased activity in liver cirrhos and hepatoma patients」、Clinical Chimica Acta、185:325 (1989);Narishimhanら、「Expression of N-acetylglucosaminyl transferase III in hepatic nodules during rat liver carcinogenesis promoted by orotic acid」、Journal of Biological Chemistry、263: 1273-1281 (1988);Nishikawaら、「Determination of N-acetylglucosaminyl transferases III, IV and V in normal and hepatoma tissus of rats」、Biochimica et Biophysica Acta、1035: 313-318 (1990);Pascaleら、「Expression of N-acetylglucosaminyl transferase III in hepatic nodules generated by different models of rat liver carcinogenesis」、Carcinogenesis、10: 961964 (1989))。糖蛋白質上のバイセクト型オリゴ糖は、抗体-依存性細胞傷害(ADCC)に関与している。ADCCは、抗体-標的化された細胞に対する溶解性攻撃であり、及びリンパ球受容体の抗体定常領域(Fc)への結合により引き起こされる。GnTIII活性を欠いている組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)生産的細胞株におけるGnTIIIの制御された発現は、最適化されたADCC活性を伴うバイセクト型オリゴ糖による抗体を生じた(Daviesら、「Expression of GnTIII in a recombinant anti-CD20 CHO production cell line: expression of antibodies with altered glycoforms leads to an increase in ADCC through higher affinity for FcγRIII」、Biotechnology and Bioengineering、74: 288-294 (2001);Umanaら、「Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody-dependent cellular cytotoxic activity」、Nature Biotechnology、17: 176-180 (1999))。ADCC活性は、組換え抗体上に存在するFc領域-会合したバイセクトされた複合オリゴ糖のレベルと良く相関している(Umanaら、「Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody-dependent cellular cytotoxic activity」、Nature Biotechnology、17: 176-180 (1999))。GnTIII活性から生じるバイセクトされているGlcNAc残基は、GlcNAc-転移酵素II及びα1,6-フコシルトランスフェラーゼのような他のグリコシルトランスフェラーゼは最早作用しないが、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼは作用するように、糖鎖のコンホメーションに影響を及ぼす(Tanigichiら(2001))。CHO細胞におけるGnTIIIの過剰発現は、致命的である。
【0004】
CHO細胞のような典型的哺乳類生産的細胞株とは対照的に、トランスジェニック植物は一般に、治療的蛋白質の安全な生産システムとして認識される。しかし、植物糖蛋白質は、オリゴ糖構造が、それらの哺乳類由来のものとは、いくつかの点で異なる。これらは、末端ガラクトース及びシアル酸を欠き、追加のコアキシロース、及び(α-1,6)の代わりに、(α-1,3)に異なるように連結されたコアフコースを有する。CHO及び他の医薬生産的細胞株のように、これらは完全にバイセクト型オリゴ糖も欠いている。植物は、共通のコア構造GN2M3GN2を作成する能力を有するが、主にM3 GN2変種が認められ、このことはヘキソサミニダーゼによる末端GNの除去を示している。
【0005】
N-連結されたグリカンの生合成は、脂質連結されたオリゴ糖部分(Glc3Man9GlcNAc2-)の合成を開始し、これは小胞体(ER)において新生ポリペプチド鎖へ一括して(en bloc)移行される。ER及びシスゴルジ区画におけるエキソグリコシダーゼによる一連のトリミング反応により、いわゆる「高マンノース」(Man9GlcNAc2からMan5GlcNAc2)グリカンが形成される。引き続き、複合型グリカンの形成は、GnTIによるMan5GlcNAc2への第一のGlcNAcの移行により始まり、及びマンノシダーゼII(ManII)により更にトリミングされ、GlcNAcMan3GlcNAc2を形成する。複合グリカン生合成は、いくつかの他のグリコシルトランスフェラーゼの作用下で、GnTIIにより第二のGlcNAc残基に加え他の単糖残基の、GlcNAcMan3GlcNAc2上への、ゴルジ体(装置)における移行を伴う分泌経路を介して、糖蛋白質がプロセッシングされる間も継続する。植物及び哺乳類は、複合グリカンの形成に関して異なる。植物において、複合グリカンは、GlcNAc-1に連結されたα(1,6)-フコース残基の代わりに、Man3に連結されたβ(1,2)-キシロース残基及び/又はGlcNAc1に連結されたα(1,3)-フコース残基の存在により特徴付けられる(Lerouge, P.ら、「N-glycoprotein biosynthesis in plants: recent developments and future trends」、Plant Mol Biol、38: 31-48 (1998))。対応するキシロシル(XylT)及びフコシル(FucT)転移酵素をコードしている遺伝子は、単離されている(Strasser R、「Molecular cloning and functional expression of β1, 2-xylosyl transferase cDNA from Arabidopsis thaliana」、FEBS Lett.、472: 105-8 (2000);Leiter, H.ら、「Purification, cDNA cloning, and expression of GDP-L-Fuc: Asn-linked GlcNAc α 1,3-fucosyl transferase from mung beans」、J. Biol Chem、274: 21830 (1999))。キシロース及びフコースエピトープは、植物を治療的糖蛋白質の生成に使用する場合に問題となり得る高い免疫原性及び潜在的にはアレルギー性であることが知られている。更に多くのアレルギー患者の血液血清はこれらのエピトープに対するIgEを含み、このことは、特にこれらの患者にキシロース及びフコースを含む組換え蛋白質による治療のリスクを生じる。加えて、血清中のこの糖質に対するIgEは、植物抽出物を使用するin vitro試験において偽陽性反応を引き起こすことがあり、その理由はこれらの糖質に特異的なIgEは、アレルギー反応に関係していない証拠があるからである。植物は、β(1,4)ガラクトシルトランスフェラーゼも、α(2,6)シアル酸転移酵素も有さず、及びその結果植物グリカンは、哺乳類グリカンにおいては認められることが多いβ(1,4)ガラクトース及び末端α(2,6)NeuAc残基を欠いている(Vitale及びChrispeels、「Transient N-acetylglucosamine in the biosynthesis of phytohemagglutinin: attachment in the Golgi apparatus and removal in protein bodies」、J. Cell Biol、99: 133-140 (1984);Lerouge, P.ら、「N-glycoprotein biosynthesis in plants: recent developments and future trends」、Plant Mol Biol、38: 31-48 (1998))。
【0006】
最終グリカン構造は、それらの生合成に関連した酵素の単なる(mere)存在により決定されるのみではなく、様々な酵素反応の特異的配列により大きく左右される。後者は、ER及びゴルジを通じてのこれらの酵素の個別の配列決定及び相対的位置により制御され、これは転移酵素の決定及び転移酵素が運命づけられる(destine)サブ-ゴルジ区画の特異的特徴の相互作用により仲介される。ハイブリッド分子を使用する多くの試験は、いくつかのグリコシルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインは、それらのサブ-ゴルジの選別において中心的役割を果たすことを確定した(Grabenhorst E.ら、J. Biol.Chem.、274: 36107-36116 (1999);Colley, K.、Glycobiology、7: 1-13 (1997);Munro, S.、Trends Cell Biol.、8: 11-15 (1998);Gleeson P.A.、Histochem. Cell Biol.、109: 517-532 (1998))。
【0007】
製薬産業において使用される哺乳類生産的細胞株と同様に、植物で生成される糖蛋白質は、GnTIII活性を欠いている。植物は、GnTIII活性を欠くのみではなく、GnTIII-様配列も完全に失っている。加えて植物は、GnTIV、GnTV及びGnTVI配列も、更にはシアル酸残基も欠いている(植物を含む通常使用される細胞発現システムの主なグリコシル化の特性の総説は、Jenkinsら、「Getting the glycosylation right: implications for the biotechnology industry」、Nature Biotechnology、14: 975-979 (1996))。しかしながら、植物は、非常に強力な生成システムである。植物は一般に、安全なものとして受入れられ、及びヒトへの感染性粒子を含まない。植物生成は、容易に拡張可能であり、及びN-連結グリコシル化は制御することができる(Bakkerら、「Galactose-extended glycans of antibodies produced by transgenic plants」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、98: 2899-2904 (2001))。
【0008】
β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼに関するヒト遺伝子の導入時に、ガラクトシル化された組換えモノクローナル抗体(Mab)を産生するトランスジェニックタバコ植物が、報告されている(hGal T;Bakkerら、「Galactose-extended glycans of antibodies produced by transgenic plants」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、98: 2899-2904 (2001);国際公開公報第01/31044号及び国際公開公報第01/31045号)。
【0009】
治療的糖蛋白質は、それらのグリコシル化パターンの変更により改善することができる(Daviesら、「Expression of GnTIII in a recombinant anti-CD20 CHO production cell line: expression of antibodies with altered glycoforms leads to an increase in ADCC through higher affinity for FcγRIII」、Biotechnology and Bioengineering、74: 288-294 (2001);Umanaら、「Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody-dependent cellular cytotoxic activity」、Nature Biotechnology、17: 176-180 (1999);Fukutaら、「Remodeling of sugar chain structures of human interferon-γ」、Glycobiology、10: 421-430 (2000);Misaizuら、「Role of antennary structure of N-linked sugar chains in renal handling of recombinant human erythropoietin」、Blood、86: 4097-4104 (1995);Sburlatiら、「Synthesis of bisected glycoforms of recombinant IFN-β by overexpression of β-1,4-N-acetylglucosaminyl -tranferase III in Chinese Hamster Ovary cells」、Biotechnology Prog.、14: 189-192 (1998))。例えば、EPOのより高いオリゴ糖アンテナリティ(antennarity)は、低下した腎濾過に起因した、増大したin vivo活性につながる(Misaizuら、「Role of antennary structure of N-linked sugar chains in renal handling of recombinant human erythropoietin」、Blood、86: 4097-4104 (1995))。このような優れたグライコフォームの生合成は、ふたつの方法論による正常生産的細胞株の「標準」グリコシル化機構により実現することができる。第一は、精製時の特異的グライコフォームの豊富化により、及び第二は、ポリペプチド鎖中の変異の導入による。後者は、糖蛋白質内のグリコシル化部位のシフトを可能にし、これによりアクセス可能性の差の結果として、異なるグリコシル化パターンを生じる。補完的経路は、生産的細胞株それ自身の遺伝子操作による。新規グリコシル化パターンは、生産的細胞株におけるグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子及びグリコシダーゼ遺伝子の発現を通じて得ることができる。これらの遺伝子は、細胞糖蛋白質のグリカンへの及びそこからの特異的糖質の付加又は除去のいずれかをもたらす酵素をコードしている。いくつかのグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子は、グライコフォーム生合成を操作するためにCHO細胞に導入される。これらのひとつはGnTIIIである。グリコシルトランスフェラーゼGnTIIIは、N-連結されたグリカンの分枝に関連し、及びバイセクトされているGlcNAc残基を生じる。CHO細胞及び他の生産的細胞株は、典型的にはGnTIII活性を欠いている(Stanley, P.及びC.A. Campbell、「A dominant mutation to ricin resistance in chinese hamster ovary cells induces UDP-GlcNAc: glycopeptide β-4-N-acetylglucosaminyl- transferase III activity」、Journal of Biological Chemistry、261: 13370-13378 (1984))。CHOにおけるGnTIIIの発現は、予想されるようなバイセクトされた複合オリゴ糖を生じるが、過剰発現は、増殖阻害を生じ、及び細胞に対し毒性がある。同様に、トリアンテナリティ糖鎖を導入する別のグリコシルトランスフェラーゼであるGnTVの過剰発現も、増殖阻害を生じ、これはグリコシルトランスフェラーゼ過剰発現の一般的特徴であり得ることを示唆している(Umanaら、「Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody-dependent cellular cytotoxic activity」、Nature Biotechnology、17: 176-180 (1999))。
従って、ヒト適合性の非-免疫原性のバイセクトされたオリゴ糖を伴う糖蛋白質を植物において生成する手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、植物における哺乳類N-アセチルグルコサミニル-転移酵素III(GnTIII)酵素の発現、並びにバイセクト型オリゴ糖及び増加した量の末端GlcNAc残基を伴う糖蛋白質の生成におけるその使用に関する。本発明は更に、GnTIIIの触媒部位並びにゴルジ装置及び/又は小胞体(ER)蛋白質の膜貫通ドメイン又はER残留シグナルを含む修飾されたGNTIIIを含むハイブリッド蛋白質、並びに免疫原性キシロース及びフコース残基を欠いているオリゴ糖を伴う糖蛋白質生成におけるその使用に関する。
【0011】
ひとつの態様において、本発明は、哺乳類UDP-Nアセチルグルコサミン:β-D-マンノシドβ(1,4)-Nアセチルグルコサミニル転移酵素(GnTIII)酵素(ヌクレオチド配列:配列番号:1、Genbank寄託番号AL022312 (Dunham, I.ら、Nature、402: 489-495 (1999));蛋白質配列:配列番号:2、Genbank寄託番号Q09327)を含む又は発現している植物宿主システムを企図し、ここで該GnTIIIは、該植物宿主システムにおいて存在する糖蛋白質の複合型N-連結されたグリカン中にバイセクト型N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を挿入する。
本発明の具体的態様において、植物宿主システムは更に、バイセクト型オリゴ糖、特にガラクトース残基を含む、異種糖蛋白質又はそれらの機能性断片を含む。GnTIIIは、該異種糖蛋白質上にバイセクト型N-GlcNAc残基を挿入する。
【0012】
ひとつの態様において、本発明は、バイセクト型オリゴ糖を含む異種糖蛋白質を発現している植物宿主系(システム)を得る方法を企図する。ひとつの態様において、この方法は、異種糖蛋白質を発現している植物を、該GnTIIIを発現している植物と交配すること、該交配からの後代を収穫すること、並びに該異種糖蛋白質を発現し及び哺乳類GnTIIIを発現している所望の後代植物を選択することを含む。あるいは、該植物宿主システムは、植物又はその一部への、該哺乳類GnTIIIをコードしている核酸及び該異種糖蛋白質をコードしている核酸の導入、並びに該異種糖蛋白質を発現し及び通常植物には存在しない哺乳類GnTIIIを発現している植物又はその一部の単離により得ることもできる。更に本発明は、前述の手法のいずれかを用い植物宿主システムを得ること、及び更に該異種糖蛋白質を単離することを含む、該植物から該異種糖蛋白質を得る方法に関する。
【0013】
別の態様において、国際公開公報第01/21045号(本明細書に参照として組入れられている)に開示されたように、本発明の植物宿主システムは更に、通常植物には存在しないN-グリカン生合成を提供する機能性哺乳類酵素を含み、これにより例えば、ガラクトースの付加によりN-連結されたグリカンを伸長する能力を提供することが企図されている。別の態様において、本発明は更に、植物宿主システムを企図し、ここで該植物宿主システムは、植物が、輸送体蛋白質もしくは酵素(例えば、哺乳類蛋白質)のような機能性蛋白質又はそれらの機能性断片を含み、ここで該蛋白質は、N-グリカン生合成を提供するような植物を、該哺乳類GnTIIIを含む植物と交配することを含む。別の態様において、本発明は、例えば、該交配から後代を収穫すること、及び輸送体蛋白質もしくは酵素のような該機能性蛋白質又はそれらの機能性断片を発現している所望の後代植物を選択することを企図する。更に別の態様において、本発明は、発現された蛋白質が、N-グリカン生合成及び哺乳類GnTIIIを提供することを企図する。より更なる別の態様において、本発明は、植物宿主システムを企図し、ここでGnTIIIをコードしている核酸及び機能性蛋白質(例えば、輸送体もしくは酵素[例えば、哺乳類]又はそれらの機能性断片)をコードしている核酸は、N-グリカン生合成を提供し、並びに機能性蛋白質又はそれらの機能性断片を発現している該植物又はそれらの一部が単離され、N-グリカン生合成及び該哺乳類GnTIIIを提供する。本発明は、いずれか特定の理論又は機序に限定されるものではないが、そのような組合せは、異種糖蛋白質のガラクトシル化を増加すると考えられる。加えて、ひとつの態様において、GnTIII及びGaITのようなN-グリコシル化を提供する他の蛋白質は、ひとつの形質転換ベクターにより同時に導入することもできることが企図されている。
【0014】
ひとつの態様において、本発明は、該異種糖蛋白質(ここで、該異種糖蛋白質は増大したガラクトシル化を有する)を発現することを含む植物宿主システム、並びに該植物宿主細胞システム及び該異種糖蛋白質を得る方法を企図する。別の態様において、植物宿主細胞システムは、植物が哺乳類GnTIII及び機能性蛋白質(例えば、通常植物においては認められないN-グリカン生合成を提供する、輸送体もしくは酵素[例えば、哺乳類]又はそれらの機能性断片)を含むような植物を、異種糖蛋白質を含むいずれかの植物と交配すること、並びにその後該後代植物を選択することにより得ることができる。更に別の態様において、該異種糖蛋白質は、1)該GnTIII、2)通常植物においては認められない、N-グリカン生合成を提供する該機能性蛋白質又は酵素、及び3)該異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を、該植物又はそれらの一部へ導入すること、並びに該核酸配列を発現している該植物又はそれらの一部を単離することにより得ることができることが企図されている。本発明の別の態様において、異種糖蛋白質は、植物宿主システムから単離又は精製されることが企図されている。
【0015】
本発明のひとつの態様において、ハイブリッド蛋白質が企図され、ここでこのハイブリッド蛋白質は、1)哺乳類GnTIIIの触媒部分を含む単離されたハイブリッド蛋白質、及び2)例えば真核細胞の小胞体又はゴルジ装置由来の蛋白質の膜貫通部分を含む。別の態様において、本発明は、ER内の該GnTIIIの残留のためのKDELのような残留シグナルを含む修飾された哺乳類GnTIIIも企図する。更に別の態様において、本発明は、1)該ハイブリッド蛋白質及び該修飾された哺乳類GnTIII、2)該核酸配列を含むベクター、及び3)該配列を含む植物宿主システムをコードしている核酸配列を企図する。ひとつの態様において、これらのハイブリッド蛋白質及び修飾されたGnTIIIは、小胞体(ER)及び/又はゴルジ装置中のGnTIII活性の再局在化に作用することがある。別の態様において、本発明は、例えば、該ハイブリッド蛋白質又は修飾されたGnTIIIをコードしている配列の、植物又はそれらの一部への導入により、これらのハイブリッド蛋白質及び修飾されたGnTIII蛋白質を得る方法を企図する。本発明は、いずれか特定の理論又は機序に限定されるものではないが、そのような再局在化の結果として、バイセクトしているGlcNAcは、反応のN-グリカン生合成配列中に早期に導入され、これにより引き続きの酵素反応が妨害され、及び結果的に、植物宿主システム(例えば、本発明の植物宿主システム)において発現された異種蛋白質は、キシロース及びフコースを欠損し、並びに増加した量の末端GlcNAcを有すると考えられる。従って本発明のひとつの態様は、該1)ハイブリッド蛋白質又は該修飾されたGnTIIIを含む植物を、該異種蛋白質を含む植物と交配すること、並びに2)該所望の後代を選択することを含む、異種糖蛋白質を発現している植物宿主システム(ガラクトースによりN-連結されたグリカンを伸長する能力を有する該植物宿主システム)を提供する方法を企図する。別の態様において、本発明は、1)該修飾されたGnTIII又は該ハイブリッド蛋白質及び該異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を、植物又はそれらの一部に導入すること、並びに2)ガラクトースによりN-連結されたグリカンを伸長する能力を伴う異種糖蛋白質を発現している該植物又はそれらの一部を単離することを企図する。更に別の態様において、本発明は、該所望の異種糖蛋白質を得る方法を企図しており、該方法は、該糖蛋白質を、該植物又はそれらの一部から単離することを含む。
【0016】
ひとつの態様において、本発明は、植物-由来の糖蛋白質又はそれらの機能性断片を、医薬組成物(例えば、抗体、ホルモン、ワクチン抗原、酵素など)の製造に使用することを企図する。別の態様において、本発明は、糖蛋白質又はそれらの機能性断片を含有する医薬組成物を、ここで提供することを企図する。
【0017】
ひとつの態様において、本発明は、GntIIIの変種又は変異体を企図する。用語「変種」及び「変異体」は、ポリペプチドに関して使用される場合は、1個又は複数のアミノ酸が、他の通常は関連したポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を意味する。別の態様において、本発明は、「保存的」変化を有する変種を企図しており、ここで置換されたアミノ酸は、類似した構造特性又は化学特性を有する。保存的アミノ酸置換のひとつの型は、同様の側鎖を有する残基の相互交換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、ロイシン及びイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリン及びトレオニンであり;アミド-含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニン及びヒスチジンであり;並びに、イオウ-含有側鎖を有するアミノ酸群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換は、以下である:バリン(V)−ロイシン(L)−イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)−チロシン(Y)、リシン(K)−アルギニン(R)、アラニン(A)−バリン(V)、及びアスパラギン(N)−グルタミン(Q)。
【0018】
更に別の態様において、本発明は、「非保存的」変化(例えば、グリシンのトリプトファンとの交換)を有する変種を企図する。同様の小さい変動は、アミノ酸欠失もしくは挿入(すなわち、付加)、又は両方を含んでもよい。多くのアミノ酸残基のどれがどのように、生物学的活性を無くすことなく、置換、挿入又は欠失されるかを示す指針は、例えばDNAStarソフトウェアのような、当該技術分野において周知のコンピュータプログラムを用い見つけることができる。変種は、機能アッセイにおいて試験することができる。保存的及び非-保存的の両変種について、好ましい変種は、10%未満、好ましくは5%未満、及びさらにより好ましくは2%未満の変化(置換、欠失などのいずれか)を有する。
【0019】
ひとつの態様において、本発明は、哺乳類UDP-N-アセチルグルコサミン:β-Dマンノシドβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニル転移酵素(GnTIII)酵素(又はそれらの部分もしくは変種、ここで該GnTIIIは、該植物宿主システムに存在する糖蛋白質の複合型N-連結されたグリカンにバイセクトしているN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を挿入する)を含む、植物宿主(細胞)システムを企図している。別の態様において、本発明は、該GnTIIIが、ヒトGnTIIIである植物宿主を企図する。更に別の態様において、本発明は、該システムが植物の一部である植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、該システムが、細胞、葉、胚芽、カルス、茎、果皮、プロトプラスト、根、塊茎、穀粒、胚乳及び胚からなる群より選択される植物の一部である植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、該システムは全植物である植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、更に異種糖蛋白質(又はそれらの機能性断片)を含む植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、該異種糖蛋白質の蛋白質が、抗体、又はそれらの断片(例えば、Fc、Fv、Fab、Fab2)を含む植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、該異種糖蛋白質又はそれらの機能性断片が、バイセクト型オリゴ糖を含む植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、該異種糖蛋白質(又はそれらの機能性断片)が、ガラクトース残基でバイセクト型グリカンを含む植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、該植物はタバコ植物である植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、更にN-グリカン生合成を提供する輸送体又は(哺乳類)酵素(又はそれらの機能性断片)からなる群より選択される機能性蛋白質を含む植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、該酵素が、(ヒト)β-1,4ガラクトシルトランスフェラーゼである植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、更に増加した数のガラクトース残基を有する異種糖蛋白質を含む植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、哺乳類GnTIII蛋白質をコードしている核酸配列を含む植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、哺乳類GnTIII蛋白質をコードしている核酸配列を含むベクターを含む、植物宿主システムを企図する。更に別の態様において、本発明は、N-グリカン生合成を提供する輸送体又は(哺乳類)酵素(又はそれらの機能性断片)からなる群より選択される機能性蛋白質をコードしている核酸配列を含む、植物宿主を企図する。
【0020】
ひとつの態様において、本発明は、a)異種糖蛋白質を発現している植物を交配すること、b)該交配からの後代を収穫すること、及びc)所望の後代植物(該異種糖蛋白質を発現し、及び通常植物には存在しない哺乳類GnTIIIを発現している)を選択することを含む、(バイセクト型オリゴ糖を有する異種糖蛋白質を発現している植物宿主システムを得る)方法を企図する。別の態様において、本発明は、該所望の後代植物が、バイセクト型オリゴ糖を有する該異種糖蛋白質の蛋白質を発現するような、本方法を企図する。更に別の態様において、本発明は、該植物宿主システムはトランスジェニック植物である本方法を企図する。
【0021】
ひとつの態様において、本発明は、a)植物宿主システムへ通常植物には存在しないGnTIIIをコードしている核酸配列、及び異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を導入すること、並びにb)該異種糖蛋白を単離することを含む、バイセクト型オリゴ糖を有する異種糖蛋白質を得る方法を企図する。別の態様において、本発明は、該核酸配列が、植物細胞に導入され、及び該植物細胞が、植物へ再生されるこの方法を企図する。更に別の態様において、本発明は、植物への通常植物には存在しないGnTIIIをコードしている(核)酸配列及び異種糖蛋白質(glycopraxein)をコードしている核酸配列を含むベクターで、該植物宿主システムを形質転換することにより、該核酸配列が植物宿主システムへ導入される、同じ方法を企図する。更に別の態様において、本発明は、植物へ通常植物には存在しないGnTIIIをコードしている核酸配列及び異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を含むベクターで、該植物宿主システムを形質転換することにより、該核酸配列が植物宿主システムへ導入される方法を企図する。更に別の態様において、本発明は、植物宿主システムへの通常植物には存在しないGnTIIIをコードしている核酸配列を含むベクター、並びに異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を含むベクターにより、該植物を形質転換することにより、該核酸配列が植物宿主システムへ導入される、方法を企図する。更に別の態様において、本発明は、再生された植物を栽培することを含む、バイセクト型オリゴ糖を有する異種糖蛋白質を得る方法を企図する。
【0022】
ひとつの態様において、本発明は、a)植物宿主システムを栽培すること(該植物が収穫可能な段階に達するまで)、並びにb)該植物を収穫すること(並びに、分別された植物材料を得るために分別すること、及び、c)該糖蛋白質を該分別された植物材料から少なくとも部分的に単離すること)を含む、所望の糖蛋白質(又はそれらの機能性断片)を得る方法を企図する。別の態様において、本発明は、企図された方法により入手可能な植物を企図する。
【0023】
ひとつの態様において、本発明は、N-グリカン生合成を提供する輸送体もしくは(哺乳類)酵素又はそれらの機能性断片のような機能性蛋白質を含む植物を、請求項5記載の植物と交配すること、該交配からの後代を収穫すること、並びにN-グリカン生合成を提供する輸送体もしくは(哺乳類)酵素又はそれらの機能性断片のような該機能性蛋白質及び該哺乳類GnTIIIを発現している所望の後代植物を選択することを含む、N-グリカン生合成を提供する輸送体もしくは(哺乳類)酵素又はそれらの機能性断片からなる群より選択される機能性蛋白質及び哺乳類GnTIIIを含む、植物宿主システムを得る方法を企図する。別の態様において、本発明は、企図に従い得られたトランスジェニック植物を企図する。
【0024】
ひとつの態様において、本発明は、GnTIIIをコードしている核酸配列、及び該異種糖蛋白質を発現している該植物宿主システムへの通常植物には存在しない輸送体もしくは(哺乳類)酵素又はそれらの機能性断片をコードしている配列からなる群より選択される配列を導入すること、並びに該糖蛋白質を単離することを含む、植物宿主システムにおいて発現された異種糖蛋白質のガラクトシル化を増加する方法を企図する。
【0025】
ひとつの態様において、本発明は、バイセクト型オリゴ糖を含む植物由来の糖蛋白質を企図する。
ひとつの態様において、本発明は、所望の糖蛋白質又はそれらの機能性断片を作成するための、本発明により企図された植物宿主システムの使用を企図する。別の態様において、本発明は、該糖蛋白質又はそれらの機能性断片が、バイセクト型オリゴ糖を含むことを企図する。更に別の態様において、本発明は、本発明により企図された方法により得られた植物-由来の糖蛋白質又はそれらの機能性断片を企図する。更に別の態様において、本発明は、医薬組成物製造に関して本発明により企図された、糖蛋白質又はそれらの機能性断片を企図する。更に別の態様において、本発明は、本発明により企図されたような糖蛋白質又はそれらの機能性断片を含有する組成物を企図する。
【0026】
ひとつの態様において、本発明は、GnTIIIの活性部位及び蛋白質の膜貫通領域を含む単離されたハイブリッド蛋白質を企図し、該蛋白質は真核細胞の小胞体又はゴルジ装置に常在している。別の態様において、本発明は、真核細胞の小胞体又はゴルジ装置に常在する該蛋白質は、酵素である、本発明の蛋白質を企図する。更に別の態様において、本発明は、真核細胞の小胞体又はゴルジ装置に常在する該蛋白質は、グリコシルトランスフェラーゼである、本発明の蛋白質を企図する。更に別の態様において、本発明は、真核細胞の小胞体又はゴルジ装置に常在する該蛋白質は、マンノシダーゼI、マンノシダーゼII、GnTI、GnTII、XylT及びFucTからなる群より選択されるグリコシルトランスフェラーゼである、本発明の蛋白質を企図する。更に別の態様において、本発明は、真核細胞の小胞体又はゴルジ装置に常在する該蛋白質は、植物蛋白質である、本発明の蛋白質を企図する。更に別の態様において、本発明は、本発明の蛋白質をコードしている単離された核酸配列を企図する。更に別の態様において、本発明は、本発明の単離された核酸配列を含むベクターを企図する。更に別の態様において、本発明は、本発明の単離された核酸配列を含む植物を企図する。更に別の態様において、本発明は、更に異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を含む本発明の植物(複数)を企図する。
【0027】
ひとつの態様において、本発明は、a)トランスジェニック植物を、本発明の植物と交配すること、b)該交配から後代を収穫すること、並びにc)所望の後代植物(該組換え蛋白質を発現し、及び通常植物には存在しない(哺乳類)N-グリカン生合成に関与した、機能性(哺乳類)酵素を発現する)を選択することを含む、(ガラクトースによりN-連結されたグリカンを伸長する能力を伴う異種糖蛋白質を発現することが可能なトランスジェニック植物を提供するための)方法を企図する。
【0028】
ひとつの態様において、本発明は、本発明の核酸配列、及び該異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を導入することを含む、ガラクトースによりN-連結されたグリカンを伸長する能力を伴う異種糖蛋白質を発現することが可能なトランスジェニック植物を提供する方法を企図する。
ひとつの態様において、本発明は、a)i)植物細胞、及びii)GNTIII酵素をコードしている核酸を含む発現ベクターを提供すること;並びに、b)該発現ベクターを、該植物細胞へ、該酵素が発現されるような条件下で導入することを含む、方法を企図する。別の態様において、本発明は、GNTIIIをコードしている該核酸は、配列番号:1の核酸配列を含む方法を企図する。
【0029】
ひとつの態様において、本発明は、a)i)植物細胞、ii)GNTIII酵素をコードしている核酸を含む第一の発現ベクター、及びiii)異種糖蛋白質をコードしている核酸を含む第二の発現ベクターを提供すること;並びに、b)該第一及び第二の発現ベクターを、該植物細胞へ、該ハイブリッド酵素及び該異種蛋白質が発現されるような条件下で導入することを含む、方法を企図する。別の態様において、本発明は、該異種蛋白質が、抗体又は抗体断片である方法を企図する。
【0030】
ひとつの態様において、本発明は、a)i)第一の発現ベクターを含む第一の植物であり、該第一のベクターがGNTIII酵素をコードしている核酸を含むもの、及びii)第二の発現ベクターを含む第二の植物であり、該第二のベクターが、異種蛋白質をコードしている核酸を含むものを提供すること;並びに、b)該第一の植物及び該第二の植物を交配し、該ハイブリッド酵素及び該異種蛋白質を発現している後代を作成することを含む、方法を企図する。
ひとつの態様において、本発明は、第一及び第二の発現ベクターを含む植物を企図し、該第一のベクターは、GNTIII酵素をコードしている核酸を含み、該第二のベクターは、異種蛋白質をコードしている核酸を含む。別の態様において、本発明は、該異種蛋白質は、抗体又は抗体断片であるものを企図する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】対照タバコ植物の葉から単離されたN-連結されたグリカン。
【図1B】ヒトGnTIIIで形質転換された選択されたGnTM-17タバコ植物の葉から単離されたN-連結されたグリカンの、MALDI-TOF質量スペクトルを示す。構造については表1を参照のこと。
【図2】図2は、ManI、GnTI、ManII、及びGnTIIの連続作用下での、高マンノース型グリカン(M9)の複合型グリカンへのプロセッシングを示す。これは、どのグリカン構造が、反応の連鎖において異なる点でのGalT及び/又はGnTIIIの作用につながるかも示している。フコシルトランスフェラーゼ及びキシロシルトランスフェラーゼにより触媒される反応は、示さない。コアGlcNAc(Gn)は示さない。Gn=GlcNAc、Gnb=バイセクトされているGlcNAc、G=ガラクトース及びM=マンノース。
【図3】図3A及び3Bは、(A)免疫原性キシロース及びフコースを欠いているガラクトシル化されたバイセクト型グリカンを効率的に作成するための、グリカン修飾酵素をコードしている遺伝子を保持するT-DNA構築体、並びに、(B)抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子を保持するT-DNA構築体を示している。TmXyl=キシロシルトランスフェラーゼの膜貫通ドメイン、TmGnTI=GnTの膜貫通ドメイン、P=プロモーター、R=選択マーカー、L=抗体軽鎖及びH=抗体重鎖。
【図4A】図4A及び4Bは、c-mycタグを含むGnTIIIのヌクレオチド配列(配列番号:1、図4Aの下線部分)及び蛋白質配列(配列番号:2、図4Bの下線部分)を示す。保存的アミノ酸置換を受けることができる残基は、「定義」の項に定義している。
【図4B】図4A及び4Bは、c-mycタグを含むGnTIIIのヌクレオチド配列(配列番号:1、図4Aの下線部分)及び蛋白質配列(配列番号:2、図4Bの下線部分)を示す。保存的アミノ酸置換を受けることができる残基は、「定義」の項に定義している。
【図5A】図5A及び5Bは、(A)プラスミドpDAB4005のマップ、及び(B)プラスミドpDAB4005(配列番号:8)のヌクレオチド配列を示す。
【図5B−1】図5A及び5Bは、(A)プラスミドpDAB4005のマップ、及び(B)プラスミドpDAB4005(配列番号:8)のヌクレオチド配列を示す。
【図5B−2】図5A及び5Bは、(A)プラスミドpDAB4005のマップ、及び(B)プラスミドpDAB4005(配列番号:8)のヌクレオチド配列を示す。
【図5B−3】図5A及び5Bは、(A)プラスミドpDAB4005のマップ、及び(B)プラスミドpDAB4005(配列番号:8)のヌクレオチド配列を示す。
【図5B−4】図5A及び5Bは、(A)プラスミドpDAB4005のマップ、及び(B)プラスミドpDAB4005(配列番号:8)のヌクレオチド配列を示す。
【図5B−5】図5A及び5Bは、(A)プラスミドpDAB4005のマップ、及び(B)プラスミドpDAB4005(配列番号:8)のヌクレオチド配列を示す。
【図5B−6】図5A及び5Bは、(A)プラスミドpDAB4005のマップ、及び(B)プラスミドpDAB4005(配列番号:8)のヌクレオチド配列を示す。
【図6A】図6A及び6Bは、(A)プラスミドpDAB7119のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7119(配列番号:9)のヌクレオチド配列を示す。
【図6B−1】図6A及び6Bは、(A)プラスミドpDAB7119のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7119(配列番号:9)のヌクレオチド配列を示す。
【図6B−2】図6A及び6Bは、(A)プラスミドpDAB7119のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7119(配列番号:9)のヌクレオチド配列を示す。
【図6B−3】図6A及び6Bは、(A)プラスミドpDAB7119のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7119(配列番号:9)のヌクレオチド配列を示す。
【図6B−4】図6A及び6Bは、(A)プラスミドpDAB7119のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7119(配列番号:9)のヌクレオチド配列を示す。
【図6B−5】図6A及び6Bは、(A)プラスミドpDAB7119のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7119(配列番号:9)のヌクレオチド配列を示す。
【図6B−6】図6A及び6Bは、(A)プラスミドpDAB7119のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7119(配列番号:9)のヌクレオチド配列を示す。
【図7A】図7A及び7Bは、(A)プラスミドpDAB8504のマップ、及び(B)プラスミドpDAB8504(配列番号:10)のヌクレオチド配列を示す。
【図7B−1】図7A及び7Bは、(A)プラスミドpDAB8504のマップ、及び(B)プラスミドpDAB8504(配列番号:10)のヌクレオチド配列を示す。
【図7B−2】図7A及び7Bは、(A)プラスミドpDAB8504のマップ、及び(B)プラスミドpDAB8504(配列番号:10)のヌクレオチド配列を示す。
【図7B−3】図7A及び7Bは、(A)プラスミドpDAB8504のマップ、及び(B)プラスミドpDAB8504(配列番号:10)のヌクレオチド配列を示す。
【図7B−4】図7A及び7Bは、(A)プラスミドpDAB8504のマップ、及び(B)プラスミドpDAB8504(配列番号:10)のヌクレオチド配列を示す。
【図8A】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−1】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−2】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−3】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−4】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−5】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−6】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−7】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−8】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−9】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図8B−10】図8A及び8Bは、(A)プラスミドpDAB7113のマップ、及び(B)スプライシング部位を含むプラスミドpDAB7113(配列番号:11)のヌクレオチド配列を示す。
【図9】図9A及び9Bは、対照及びGnTIIIトウモロコシ由来の糖蛋白質のMALDI-TOF質量分析を示す。(A)対照トウモロコシ、及び(B)選択されたGnTIII-トウモロコシのカルスから単離された糖蛋白質のN-グリカンの質量スペクトルの比較。GnTIIIトウモロコシは、ヒトGnTIII遺伝子配列による形質転換により得、及び選択は、E-PHAを使用するレクチンブロッティングにより行った。図9A及び9Bに含まれたデータの解釈については表3を参照のこと。
【図10】図10は、c-mycタグを伴わないGntIIIの完全ヌクレオチド配列を示す(配列番号:7)。
【図11】図11は、対照及びGnTIIIトウモロコシ-2由来の糖蛋白質のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。構造及び略号については表4参照のこと。
【図12】図12は、GntIII遺伝子の発現に起因した、変更されたレクチン結合に関する、トランスジェニックメイズカルスの試料の代表的ブロットを示す。
【図13】図13は、c-mycエピトープ発現に関する、トランスジェニックメイズカルスの試料の代表的ブロットを示す。
【図14】図14A及び14Bは、(A)対照及び(B)GnTIIIトウモロコシ植物由来の糖蛋白質のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
用語「蛋白質」及び「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して結合されたアミノ酸を含む化合物を意味し、互換的に使用される。遺伝子によりコードされた「蛋白質」又は「ポリペプチド」は、コードされたアミノ酸配列に限定されないが、蛋白質の翻訳後修飾を含む。
用語「糖蛋白質」は、セリン又はトレオニンのOH基を介して(Oグリコシル化)か、又はアスパラギンのアミドNH2を介して(Nグリコシル化)結合したかのいずれかの、糖部分に共有結合された蛋白質を意味する。「糖蛋白質」は、例えば、ほとんどの分泌蛋白質(血清アルブミンは主な例外である)及び形質膜の外面に曝された蛋白質を含むが、これらに限定されるものではない。認められる糖残基は、マンノース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、フコース及びシアル酸を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
用語「アミノ酸配列」は、本明細書において、蛋白質分子のアミノ酸配列を意味し、「アミノ酸配列」及び「ポリペプチド」又は「蛋白質」のような類似用語は、アミノ酸配列を、列挙された蛋白質分子に関連した完全な未変性のアミノ酸配列に限定することは意味しない。更に、「アミノ酸配列」は、蛋白質をコードしている核酸配列から推定することができる。
用語「部分」は、蛋白質に関する場合(「所定の蛋白質の部分」など)、その蛋白質の断片を意味する。これらの断片は、4個のアミノ酸残基から全アミノ配列から1個のアミノ酸を取り除いたものまでの範囲であることができる。
【0034】
用語「キメラ」は、ポリペプチドに関して使用される場合、互いにクローニングされ、及び翻訳後に単独ポリペプチド配列として作用する、異なる遺伝子から得られた2種又はそれよりも多いコード配列の発現産物を意味する。キメラポリペプチドは、「ハイブリッド」ポリペプチドとも称される。これらのコード配列は、生物の同じ種から又は異なる種から得られたものを含む。
用語「融合」は、ポリペプチドに関して使用される場合、外因性蛋白質断片(融合パートナー)に結合した関心のある蛋白質を含むキメラ蛋白質を意味する。融合パートナーは、関心のあるポリペプチドの溶解度を増強すること、更には組換え融合ポリペプチドを宿主細胞から又は上清から又は両方から精製することができるよう「アフィニティタグ」を提供することを含む、様々な機能を利用することができる。望ましいならば、融合パートナーは、精製後に関心のある蛋白質から除去することができる。
【0035】
用語「相同体」又は「相同」は、ポリペプチドに関して使用される場合、ふたつのポリペプチド間の高度の配列同一性、又は三次元構造の高度の類似性もしくは活性部位及び作用機序の間の高度の類似性を意味する。好ましい態様において、相同体は、参照配列との、60%よりも多い配列同一性、より好ましくは75%よりも多い配列同一性、更により好ましくは90%よりも多い配列同一性を有する。
ポリペプチドに適用される用語「実質的に同一」は、ふたつのペプチド配列が、デフォルトのギャップ重みを使用するプログラムGAP又はBESTFITなどにより、任意に並置された場合に、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性又はそれよりも多い(例えば、99%の配列同一性)を共有する。同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換により異なることが好ましい。
【0036】
用語「変種」及び「変異体」は、ポリペプチドに関して使用される場合、1個又は複数のアミノ酸が、通常は関連したポリペプチドである他のものと異なるアミノ酸配列を意味する。変種は、「保存的」変化を有し、ここで置換されたアミノ酸は、類似の構造特性又は化学特性を有する。保存的アミノ酸置換のひとつの型は、類似した側鎖を有する残基の相互交換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、ロイシン及びイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリン及びトレオニンであり;アミド-含有側鎖を有するを有するアミノ酸群は、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニン及びヒスチジンであり;並びに、イオウ-含有側鎖を有するアミノ酸群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換は、以下である:バリン(V)−ロイシン(L)−イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)−チロシン(Y)、リシン(K)−アルギニン(R)、アラニン(A)−バリン(V)、及びアスパラギン(N)−グルタミン(Q)。より稀には、変種は、「非-保存的」変化を含むことができる(例えば、グリシンのトリプトファンとの交換)。同様の小さい変動は、アミノ酸欠失もしくは挿入(すなわち、付加)、又は両方を含んでもよい。多くのアミノ酸残基のどれがどのように、生物学的活性を無くすことなく、置換、挿入又は欠失されるかを示す指針は、例えば、DNAStarソフトウェアのような、当該技術分野において周知のコンピュータプログラムを用い見つけることができる。変種は、機能アッセイにおいて試験することができる。好ましい変種は、10%未満、好ましくは5%未満、及び更により好ましくは2%未満の変化(置換、欠失などのいずれか)を有する。
【0037】
用語「ドメイン」は、ポリペプチドに関して使用される場合、独自の構造及び/又は機能特性を有するポリペプチドの小部分を意味し;典型的には、この特徴は多様なポリペプチドについて類似している。この小部分は、典型的には、連続アミノ酸を含むが、これは調和して作用するアミノ酸又は折畳みもしくは他の立体配置のために密に近接しているアミノ酸を含んでもよい。
【0038】
用語「遺伝子」は、RNA、又はポリペプチドもしくはその前駆体(例えば、プロインスリン)の生成に必要であるコード配列を含む核酸(例えば、DNA又はRNA)配列を意味する。機能性ポリペプチドは、完全長コード配列、又はポリペプチドの所望の活性又は機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限りは、コード配列の一部によりコードされ得る。用語「部分」は、遺伝子に関して使用される場合、その遺伝子の断片を意味する。これらの断片は、数個のヌクレオチド(例えば、10個のヌクレオチド)から、全遺伝子配列から1個のヌクレオチドを取り除いたものまでのサイズ範囲であることができる。従って、「少なくとも遺伝子の部分を含むヌクレオチド」は、遺伝子の断片又は全遺伝子を含むことができる。
【0039】
用語「遺伝子」は、構造遺伝子のコード領域を包含し、及びいずれかの末端において約1kbの距離で5'及び3'の両末端のコード領域に隣接して位置した配列を含み、その結果この遺伝子は、完全長mRNAの長さに相当する。コード領域の5'側に位置し及びmRNA上に存在する配列は、5'側非-翻訳配列と称される。コード領域の3'側又は下流に位置しmRNA上に存在する配列は、3'側非-翻訳配列と称される。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNA及びゲノム形の両方を包含している。ゲノム形又は遺伝子クローンは、「イントロン」又は「介在領域」又は「介在配列」と称される非-コード配列により中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントであり;イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含むことができる。イントロンは、核又は一次転写産物から除去又は「スプライシング」され;その結果、イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物には存在しない。mRNAは、発生期のポリペプチドにおいて配列又はアミノ酸の順番を特定するために翻訳時に機能する。
【0040】
イントロンを含むことに加え、遺伝子のゲノム形は、RNA転写産物上に存在する配列の5'及び3'の両末端に位置した配列も含む。これらの配列は、「フランキング」配列又は領域と称される(これらのフランキング配列は、mRNA転写産物に存在する非-翻訳配列の5'又は3'側に位置する。)。この5'側フランキング領域は、遺伝子の転写を制御するか又は影響を及ぼすプロモーター及びエンハンサーのような調節配列を含むことができる。3'側フランキング領域は、転写の終結、転写後切断及びポリアデニル化を指示する配列を含むことができる。
【0041】
用語「異種」は、遺伝子に関して使用される場合、その天然の環境ではない(すなわち、人工的に変更されている)因子をコードしている遺伝子を意味する。例えば、異種遺伝子は、別の種に導入されたひとつの種からの遺伝子を含む。異種遺伝子は、いずれかの方法(例えば、突然変異された、複数のコピーが付加された、未変性でないプロモーター又はエンハンサー配列に連結されたなど)により変更されている生物に対し天然の遺伝子も含む。異種遺伝子は、遺伝子のcDNA形を含む遺伝子配列も含むことができ;このcDNA配列は、センス方向(mRNAを作成)又はアンチ-センス方向(mRNA転写産物に相補的であるアンチ-センスRNA転写産物を作成)のいずれかで発現され得る。異種遺伝子配列は、典型的には、その異種遺伝子によりコードされた蛋白質の遺伝子もしくは染色体の遺伝子配列には天然には会合されていることが認められない、又は天然には認められない染色体の部分と会合されている(例えば、遺伝子が通常には発現されない遺伝子座で発現された遺伝子)ようなプロモーターのような、調節エレメントを含むヌクレオチド配列に結合されている点で、異種遺伝子は、内因性遺伝子とは区別される。
【0042】
「異種糖蛋白質」は、植物宿主システム以外の種に起源を持つ糖蛋白質である。糖蛋白質は、抗体、ホルモン、増殖因子、及び増殖因子受容体、抗原、サイトカイン及び血液産物を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
「植物宿主システム」は、植物細胞、植物器官及び/もしくは植物組織を含むが、これらに限定されるものではない、植物又はそれらの一部を含むことができるが、これらに限定されるものではない。この植物は、その胚芽が、ひとつの子葉又は種子の葉(seed leaf)を有する開花植物であり、並びにユリ、牧草(grass)、ズィー・メイズ(Zea mays)、コメ、オート麦、小麦及びオオ麦を含む穀粒、ラン、アヤメ、タマネギ及びヤシを含むが、これらに限定されるものではない、単子葉植物(単子葉類)であることができる。あるいは植物は、タバコ(Nicotiana)、トマト、ジャガイモ、マメ(例えば、アルファルファ及びダイズ)、バラ、ヒナギク、サボテン、スミレ及びウキクサを含むが、これらに限定されるものではない、双子葉植物(双子葉類)であることができる。この植物は、Physcomitrella patensを含むが、これらに限定されるものではないコケであることもできる。本発明は更に、植物又はそれらの一部へ該GnTIIIをコードしている核酸を導入し、並びに該GnTIIIを発現し、並びに該GnTIIIを発現している該植物又はそれらの一部を単離することによる、植物宿主システムにおいて該バイセクト型GlcNAcを得る方法にも関する。
【0044】
用語「着目のあるヌクレオチド配列」又は「着目のある核酸配列」は、いずれかのヌクレオチド配列(例えば、RNA又はDNA)を意味し、その操作は、当業者により何らかの理由(例えば、疾患治療、改善された品質の付与など)で望ましいと判断することができる。このようなヌクレオチド配列は、構造遺伝子のコード配列(例えば、レポーター遺伝子、選択マーカー遺伝子、癌遺伝子、薬物耐性遺伝子、増殖因子など)、及びmRNA又は蛋白質産物をコードしていない非-コード調節配列(例えば、プロモーター配列、ポリアデニル化配列、終結配列、エンハンサー配列及び他の類似の配列)を含むが、これらに限定されるものではない。本発明は、1種又は複数のハイブリッド酵素と共に、関心のあるヌクレオチド配列によりコードされた異種蛋白質を発現している宿主細胞を企図している。
【0045】
用語「構成(造)的」は、遺伝子又はヌクレオチド又は核酸配列に関して使用される場合、最終発現産物は、蛋白質(例えば、酵素又は構造蛋白質)、rRNA、sRNA、tRNAなどである遺伝子又はヌクレオチド又は核酸配列を意味する。
用語「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」又は「核酸」は、2個又はそれよりも多いデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、好ましくは3個よりも多い、通常は10個よりも多いもので構成された分子を意味する。正確なサイズは、多くの要因により左右され、オリゴヌクレオチドの最終的機能又は用途によっても左右されるであろう。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、又はそれらの組合せを含むいずれかの方法で作成することができる。
【0046】
用語「遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」又は特定のポリペプチドを「コードしている核酸配列」は、遺伝子のコード領域を含む核酸配列又は別の表現をすると遺伝子産物をコードしている核酸配列を意味する。このコード領域は、cDNA、ゲノムDNA又はRNA形のいずれで存在してもよい。DNA形で存在する場合、オリゴヌクレオチドは、一本鎖(すなわち、センス鎖)又は二本鎖であることができる。エンハンサー/プロモーター、スプライシング接合部、ポリアデニル化シグナルなどの適当な制御エレメントは、転写を適切に開始させ及び/又は転写一次産物RNAを正確にプロセッシングするのに必要であるならば、遺伝子のコード領域に密接して配置することができる。あるいは、本発明の発現ベクターにおいて利用されるコード領域は、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライシング接合部、介在配列、ポリアデニル化シグナルなどを、又は内因性及び外因性の両方の制御エレメントの組合せを含むことができる。
【0047】
用語「組換え」は、核酸分子に関して使用される場合、分子生物学的技術により互いに接合される核酸のセグメントにより構成される核酸分子を意味する。用語「組換え」は、蛋白質又はポリペプチドに関して使用される場合は、組換え核酸分子を用い発現される蛋白質分子を意味する。
【0048】
本明細書において使用される用語「相補的」又は「相補性」は、塩基対則に関連したヌクレオチド配列に関して使用される。例えば、配列5'-AGT-3'は、配列5'-ACT-3'と相補的である。相補性は、「部分的」又は「全体」であることができる。「部分的」相補性は、1個又は複数の核酸塩基が、塩基対則に従い合致していないことである。核酸間の「全体」又は「完全」な相補性は、各々及び全ての核酸塩基が他方の塩基に、塩基対則に従い合致していることである。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に有意な作用を有する。
本明細書において使用される核酸配列の「相補体」は、その核酸が核酸配列の核酸と全体の相補性を示しているヌクレオチド配列を意味する。例えば、本発明は、配列番号:1の相補体を企図している。
【0049】
核酸に関して使用される用語「相同性」は、相補性の程度を意味する。部分的相同性(すなわち部分的同一性)又は完全な相同性(すなわち完全な同一性)であってよい。部分的に相補的な配列は、完全に相補的な配列が、標的核酸にハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害し、並びに機能性の用語「実質的に相同」を用いることを意味する。完全に相補的配列の標的配列へのハイブリダイゼーションの阻害は、低ストリンジェンシーの条件下で、ハイブリダイゼーションアッセイ(サザン又はノーザンブロット、液中ハイブリダイゼーションなど)を用いて試験しても良い。実質的に相同な配列又はプローブ(すなわち、関心のある別のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチド)は、低ストリンジェンシー条件下で完全に相同な配列の標的との結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)と競合し及び阻害するであろう。これは、低ストリンジェンシー条件は、非-特異的結合を可能にするものであり;低ストリンジェンシー条件は、ふたつの配列の他方への結合が、特異的(すなわち、選択的)相互作用であることを意味している。非-特異的結合が存在しないことは、相補性の部分的程度さえも欠いている(例えば、約30%未満の同一性)第二の標的の使用により試験することができ;非-特異的結合の非存在において、このプローブは、第二の非-相補的標的にハイブリダイズしないであろう。
【0050】
cDNA又はゲノムクローンのような二本-鎖核酸配列に関して使用される場合、用語「実質的に相同」は、後述のような低ストリンジェンシー条件下で、二本-鎖核酸配列のいずれかの鎖又は両鎖にハイブリダイズすることができるいずれかのプローブを意味する。
一本-鎖核酸配列に関して使用される場合、用語「実質的に相同」は、後述のような低ストリンジェンシー条件下で、一本-鎖核酸配列にハイブリダイズすることができるいずれかのプローブを意味する。
【0051】
2種又はそれよりも多いポリヌクレオチドの間の配列関係を説明するために、下記の用語が使用される:「参照配列」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」及び「実質的に同一」。「参照配列」は、配列比較のための基本として使用される定義された配列であり;参照配列は、比較的大きい配列のサブセット、例えば、配列表において与えられた完全長cDNA配列のセグメントであるか、又は完全な遺伝子配列を含んでもよい。一般に、参照配列は、少なくとも20ヌクレオチド長、しばしば少なくとも25ヌクレオチド長、及び多くは少なくとも50ヌクレオチド長である。ふたつのポリヌクレオチドは、各々、(1)ふたつのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の部分)を含み、並びに(2)更に、ふたつのポリヌクレオチド間で相異なる配列を含んでもよいので、ふたつ(又はそれよりも多い)ポリヌクレオチドの配列比較は、典型的には配列類似性の局所領域を同定及び比較するための、「比較ウインドウ」にわたるふたつのポリヌクレオチドの配列の比較により行われる。本明細書において使用される「比較ウインドウ」は、少なくとも20個のコンティグヌクレオチド位置の概念上のセグメントを意味し、ここでポリヌクレオチド配列は、少なくとも20個のコンティグヌクレオチドの参照配列と比較することができ、並びにここで比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列の部分は、ふたつの配列の最適な並置のために、参照配列(これは、付加又は欠失は含まない。)と比べ20%又はそれ未満の付加又は欠失(すなわちギャップ)を含むことができる。比較ウインドウを並置するための配列の最適並置は、Smith及びWatermanのローカルホモロジーアルゴリズム[Smith及びWaterman、Adv. Appl Math.、2:482 (1981)]により、Needleman及びWunschのホモロジーアラインメントアルゴリズム[Needleman及びWunsch、J. Mol Biol.、48:443 (1970)]により、Pearson及びLipmanの類似性法検索[Pearson及びLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.)、85:2444 (1983)]により、これらのアルゴリズムのコンピュータを使う実行(GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、マジソン、WI)により、又は検分により行うことができ、並びに様々な方法により作成されたベストアラインメント(すなわち、比較ウインドウにわたる相同性の最高割合を生じる)が選択される。用語「配列同一性」は、比較ウインドウにわたりふたつのポリヌクレオチド配列が同一であることを意味する(すなわち、ヌクレオチド毎を基に)。用語「配列同一性の割合」は、比較のウインドウにわたりふたつの最適に並置した配列を比較し、合致した位置の数を得るために両配列において同一核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U又はI)が生じる位置の数を決定し、合致した位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数(すなわちウインドウサイズ)で除算し、並びに結果を100倍することにより計算し、配列同一性の百分率を得る。本明細書において使用される用語「実質的な同一性」は、ポリヌクレオチド配列の特徴を意味し、ここでこのポリヌクレオチドは、少なくとも20ヌクレオチド位置の比較ウインドウについて、多くは少なくとも25〜50ヌクレオチドのウインドウについて、参照配列と比較し、少なくとも85%配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%配列同一性、より一般には少なくとも99%配列同一性を有する配列を含み、ここで配列同一性の割合は、比較ウインドウにわたり参照配列の合計20%又はそれ未満である欠失又は付加を含むことができるポリヌクレオチド配列の参照配列との比較により計算される。参照配列は、比較的大きい配列のサブセット、例えば、本発明において特許請求される組成物の完全長配列のセグメントであることができる。
【0052】
用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸の対形成を意味する。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション強度(すなわち、核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関与した条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのTm、及び核酸内のG:C比のような要因の影響を受ける。その構造内に相補的核酸対を含む単独の分子は、「自己-ハイブリダイズ」したと称される。
【0053】
用語「Tm」は、核酸の「融解温度」を意味する。融解温度は、二本-鎖核酸分子の集団が一本鎖へと半分に解離し始める温度である。核酸のTmの計算式は、当該技術分野において周知である。標準の参考文献に示されるように、核酸が1M NaCl水溶液中にある場合、Tm値の簡単な概算は、式:Tm=81.5+0.41(%G+C)により算出することができる(例えば、Anderson及びYoung、「Quantitative Filter Hybridization」、Nucleic Acid Hybridization、[1985]参照)。別の参考文献は、Tmの計算を説明するのに構造に加え配列特性を採用するより精巧なコンピュータ処理を含む。
【0054】
用語「ストリンジェンシー」は、その下で核酸ハイブリダイゼーションが行われる、温度、イオン強度、及び有機溶媒のような他の化合物の存在の条件を意味する。「高ストリンジェンシー」条件により、相補的塩基配列の頻度が高い核酸断片間でのみ、核酸塩基対形成が生じる。従って「低」ストリンジェンシー条件は、相補的配列の頻度は通常低いので、遺伝的に多様である生物に由来した核酸が必要であることが多い。
核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合「低ストリンジェンシー条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが使用される場合には、5X SSPE (43.8g/l NaCl, 6.9g/l NaH2PO4(H2O及び1.85g/l EDTA, NaOHでpH7.4に調節)、0.1%SDS、5X Denhardt試薬[50X Denhardtは500ml中に以下を含む:5g Ficoll (タイプ400、Pharmacia社)、5g BSA(フラクションV;Sigma社)]及び100μg/ml変性したサケ精子DNAからなる溶液中で、42℃で結合又はハイブリダイズし、その後5X SSPE、0.1%SDSを含有する溶液中で42℃で洗浄するものと同等の条件を含む。
【0055】
核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合「中等度のストリンジェンシー条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが使用される場合には、5X SSPE (43.8g/l NaCl, 6.9g/l NaH2PO4(H2O及び1.85g/l EDTA, NaOHでpH7.4に調節)、0.5%SDS、5X Denhardt試薬及び100μg/ml変性したサケ精子DNAからなる溶液中で、42℃で結合又はハイブリダイズし、その後1.0X SSPE、1.0%SDSを含有する溶液中で42℃で洗浄するものと同等の条件を含む。
核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合「高ストリンジェンシー条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが使用される場合には、5X SSPE (43.8g/l NaCl, 6.9g/l NaH2PO4(H2O及び1.85g/l EDTA, NaOHでpH7.4に調節)、0.5%SDS、5X Denhardt試薬及び100μg/ml変性したサケ精子DNAからなる溶液中で、42℃で結合又はハイブリダイズし、その後0.1X SSPE、1.0%SDSを含有する溶液中で42℃で洗浄するものと同等の条件を含む。
【0056】
低ストリンジェンシー条件を含む多くの同等の条件を使用することができることが良く知られており;プローブの長さ及び性質(DNA、RNA、塩基組成)並びに標的の性質(DNA、RNA、塩基組成、溶液中に存在又は固定されているかなど)並びに塩及び他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、デキストラン硫酸、ポリエチレングリコールの有無)のような要因が考察され、並びにこのハイブリダイゼーション溶液は、先に列記した条件と異なるが同等である、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションの条件を作成するために変動しても良い。加えて、当該技術分野は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイゼーションを促進する条件(例えば、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄工程の温度の上昇、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの使用など)を知っている。
【0057】
加えて、関心のあるハイブリダイゼーション条件に関連するハイブリダイゼーション条件に関して使用される場合に用語「同等」は、ハイブリダイゼーション条件及び関心のあるハイブリダイゼーション条件が、同じ範囲の%相同性を有する核酸配列のハイブリダイゼーションを生じることを意味する。例えば、関心のあるハイブリダイゼーション条件が、第一の核酸配列の、第一の核酸配列と50%〜70%相同性を有する他の核酸配列とのハイブリダイゼーションを生じる場合、その後別のハイブリダイゼーション条件は、この他のハイブリダイゼーション条件が、同じく第一の核酸配列と50%〜70%の相同性を有する他方の核酸配列と、第一の核酸配列のハイブリダイゼーションを生じる場合に、関心のあるハイブリダイゼーション条件と同等であると言われる。
【0058】
核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合、当該技術分野は、多くの同等の条件を低又は高ストリンジェンシー条件のいずれかを含むように使用することができることが良く知られており;プローブの長さ及び性質(DNA、RNA、塩基組成)並びに標的の性質(DNA、RNA、塩基組成、溶液中に存在又は固定されているかなど)並びに塩及び他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、デキストラン硫酸、ポリエチレングリコールの有無)のような要因が考察され、並びにこのハイブリダイゼーション溶液は、先に列記した条件と異なるが同等である、低又は高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションのいずれかの条件を作成するために変動しても良い。
【0059】
遺伝子に関して使用される用語「野生型」は、天然の給源から単離された遺伝子の特徴を有する遺伝子を意味する。遺伝子産物に関して使用される場合、用語「野生型」は、天然の給源から単離された遺伝子産物の特徴を有する遺伝子産物を意味する。対象に適用される用語「天然の」は、対象を自然状態に見つけることができるという事実を意味する。例えば、自然状態で給源から単離することができる生物(ウイルスを含む)内に存在し、並びに実験室において人工的に意図的に修飾されていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、天然である。野生型遺伝子は、最も頻繁には集団において観察され及びその結果遺伝子の「正常」又は「野生型」の形と恣意的に称されるような遺伝子であることが多い。対照的に、遺伝子及び遺伝子産物に関する場合、用語「修飾された」又は「変異体」は、各々、野生型遺伝子又は遺伝子産物と比べ、配列及び/又は機能特性に修飾を示す(すなわち、特徴が変更された)遺伝子又は遺伝子産物を意味する。天然の変異体は、単離することができることが注目され;これらは野生型遺伝子又は遺伝子産物と比べ変更された特性を有するという事実により同定される。
従って、用語「変種」及び「変異体」は、ヌクレオチド配列に関して使用される場合、他のもの、通常は関連したヌクレオチド酸(nucleotide acid)配列と、1個又は複数のヌクレオチドが異なる核酸配列を意味する。「変動」は、ふたつの異なるヌクレオチド配列間の差異であり;典型的には、ひとつの配列は参照配列である。
【0060】
用語「多型性の座」は、集団のメンバー間で変動を示す集団に存在する遺伝子座を意味する(すなわち、もっとも一般的対立遺伝子が0.95未満の頻度を有する)。従って「多型」は、集団中の2種又はそれよりも多い変種型の特徴の存在を意味する。「一塩基多型」(又はSNP)は、少なくとも2個の異なるヌクレオチドの一方により占拠され得る単独の塩基の遺伝子座を意味する。対照的に「単型性の座」は、集団のメンバー間で変動がほとんど又は全く認められない遺伝子座を意味する(一般に、集団の遺伝子プール内で最も一般的な対立遺伝子の頻度は0.95を超える座である。)。
【0061】
「フレームシフト変異」は、蛋白質をコードしている構造DNA配列の正しい読み枠内の変化を生じるような、通常1個のヌクレオチド(又は2もしくは4個のヌクレオチド)の挿入又は欠失から生じる、ヌクレオチド配列の変異を意味する。変更された読み枠は、通常翻訳されたアミノ酸配列が変化又は切断されることを生じる。
「スプライシング変異」は、正しいRNAスプライシングに影響することに、遺伝子発現に影響する何らかの変異を意味する。スプライシング変異は、スプライシング部位を変更するイントロン-エキソン境界の変異に起因することがある。
【0062】
用語「検出アッセイ」は、配列又は変種核酸配列(例えば、特定の遺伝子、例えばGnTIII遺伝子、配列番号:1、図4Aの所定の対立遺伝子の変異又は多型)の存在又は非存在を検出するアッセイ、もしくは特定の蛋白質(例えば、GnTIII、配列番号:2、図4B)の存在又は非存在、もしくは特定の蛋白質の構造又は活性又は作用(例えば、GnTIII活性)を検出するアッセイ、もしくは特定の蛋白質(例えば、N-連結されたグリカン)のグリコシル化部分を検出するアッセイ、もしくは特定の蛋白質の変種の存在又は非存在を検出するアッセイを意味する。
【0063】
用語「アンチセンス」は、そのデオキシリボヌクレオチド残基の配列が、DNA二重鎖のセンス鎖のデオキシリボヌクレオチド残基の方向に関して、5'から3'方向へと逆であるデオキシリボヌクレオチド配列を意味する。DNA二重鎖の「センス鎖」は、その天然の状態で「センスmRNA」へ細胞により転写されるDNA二重鎖の鎖を意味する。従って「アンチセンス」配列は、DNA二重鎖の非-コード鎖と同じ配列を有する配列である。用語「アンチセンスRNA」は、標的一次転写産物又はmRNAの全て又は部分と相補的であり、並びにその一次転写産物又はmRNAのプロセッシング、輸送及び/又は翻訳との干渉により、標的遺伝子の発現を妨害するような、RNA転写産物を意味する。アンチセンスRNAの相補性は、特異的遺伝子転写産物のいずれかの部分、すなわち5'非-コード配列、3'非-コード配列、イントロン、又はコード配列であることができる。加えて本明細書において使用されるアンチセンスRNAは、遺伝子発現を妨害するアンチセンスRNAの効率を増加するリボザイム配列の領域を含むことができる。「リボザイム」は、触媒的RNAを意味し、及び配列-特異的エンドリボヌクレアーゼを含む。「アンチセンス阻害」は、標的蛋白質の発現を妨害することが可能であるアンチセンスRNA転写産物の生成を意味する。
【0064】
「増幅」は、鋳型特異性が関与する核酸複製の特別な場合である。これは、非-特異的鋳型複製(すなわち、鋳型に依存するが特定の鋳型には依存しない複製)とは対照的である。鋳型特異性は、ここで複製の忠実性(すなわち、適切なポリヌクレオチド配列の合成)及びヌクレオチド(リボ-又はデオキシリボ-)特異性とは区別される。鋳型特異性は、「標的」特異性に関して説明されることが多い。標的配列は、それらが他の核酸から選別されるという意味において「標的」である。増幅技術は、この選別に関して主にデザインされている。
【0065】
鋳型特異性は、ほとんどの増幅技術において、酵素の選択により実現される。増幅酵素は、それらが使用される条件下で、核酸の不均質な混合物中の核酸の特異的配列のみを処理する酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAは、このレプリカーゼの特異的鋳型である(Kacianら、Proc. Natl. Acad. Sci.USA、69:3038 (1972))。他の核酸は、この増幅酵素では複製されないであろう。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素は、それ独自のプロモーターについてストリンジェントな特異性を有する(Chamberlainら、Nature、228:227 (1970))。T4 DNAリガーゼの場合、この酵素は、ふたつのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを連結せず、ここでオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質と鋳型の間には、ライゲーション接合部にミスマッチが存在する(Wu及びWallace、Genomics、4:560 (1989))。最後に、Taq及びPfuポリメラーゼは、高温で機能するそれらの能力により、結合した配列について高い特異性を示すことが認められ、その結果、プライマーと定義され;高温は、標的配列とハイブリダイゼーションし及び非-標的配列とハイブリダイゼーションしないプライマーにとって好ましい熱力学的条件を生じる(H.A.Erlich(編集)、PCR Technology、Stock-ton Press社、1989)。
【0066】
用語「増幅可能な核酸」は、いずれかの増幅法により増幅することができる核酸を意味する。「増幅可能な核酸」は、通常「試料鋳型」を含むことが企図される。
用語「試料鋳型」は、「標的」(以下に定義)の存在について分析される試料を起源とする核酸を意味する。対照的に、「バックグラウンド鋳型」は、試料中に存在してもしなくてもよい、試料鋳型以外の核酸を意味するように使用される。バックグラウンド鋳型は、ほとんどの場合(inadvertent)である。これは、キャリーオーバーの結果であるか、又は試料から精製除去されたと考えられる核酸夾雑物の存在に起因することがある。例えば、検出されるべきもの以外の生物由来の核酸は、被験試料中のバックグラウンドとして存在することがある。
【0067】
用語「プライマー」は、核酸鎖と相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導されるような条件(すなわち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下、並びに適当な温度及びpH)下に配置された場合に、合成の開始点として作用することが可能である、精製された制限消化物として天然に生じるか又は合成により生成されたかのいずれかの、オリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは、好ましくは増幅効率を最大化するために一本鎖化されるが、代わりに二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは最初に、その鎖を分離するように処理され、その後伸長産物の調製に使用される。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成をプライミングするのに十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマー給源及び方法を含む、多くの要因に左右されるであろう。
【0068】
用語「プローブ」は、別の関心のあるオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることが可能である、精製された制限消化物として天然に生じるか又は合成的、組換え的もしくはPCR増幅により作成されるかの、オリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列)を意味する。プローブは、一本-鎖又は二本-鎖化することができる。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定及び単離において有用である。本発明において使用されるプローブは、いずれかの「レポーター分子」により標識され、その結果酵素(例えば、ELISAに加え、酵素-ベースの組織化学アッセイ)、蛍光、放射性、及び発光システムを含むが、これらに限定されるものではないいずれかの検出システムにおいて検出可能であることが企図される。本発明は、いずれか特定の検出システム又は標識に限定されることは意図されていない。
【0069】
ポリメラーゼ連鎖反応に関して使用される場合用語「標的」は、ポリメラーゼ連鎖反応に使用されるプライマーにより結合された核酸の領域を意味する。従って、「標的」は、他の核酸配列から選別されるように求められる。「セグメント」は、標的配列内の核酸の領域として定義される。
【0070】
用語「ポリメラーゼ連鎖反応」("PCR")は、K.B. Mullisの米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,965,188号に開示された方法を意味し、これはクローニング又は精製することなく、ゲノムDNA混合物中の標的配列のセグメントの濃度を増加する方法である。標的配列を増幅するこのプロセスは、非常に過剰のふたつのオリゴヌクレオチドプライマーの、所望の標的配列を含有するDNA混合物への導入、それに続く正確な配列のDNAポリメラーゼの存在下でのサーマルサイクルからなる。これらふたつのプライマーは、それらの二本鎖標的配列の各々の鎖について相補的である。増幅を実行するために、この混合物は変性され、及びその後プライマーは、標的分子内のそれらの相補的配列へとアニーリングされる。アニーリング後、これらのプライマーは、ポリメラーゼにより伸長され、相補鎖の新規対を形成する。高濃度の所望の標的配列の増幅されたセグメントを得るために、変性、プライマーアニーリング、及びポリメラーゼ伸長の工程は、何回も繰り返すことができる(すなわち、変性、アニーリング及び伸長は、「サイクル」を構成し;多くの「サイクル」であることができる)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、互いに関係するプライマーの相対位置により決定され、その結果この長さは、制御可能なパラメータである。このプロセスの繰返しの局面により、この方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」(以後PCR)と称される。標的配列の所望の増幅されたセグメントは混合物中の優勢な配列(濃度に関して)であるので、これらは「PCR増幅」と称される。
【0071】
PCRにより、いくつかの様々な方法(例えば、標識プローブとのハイブリダイゼーション;ビオチン化されたプライマーの組込み、その後のアビジン-酵素複合体検出;dCTP又はdATPのような、32P-標識したデオキシヌクレオチド三リン酸の増幅セグメントへの組込み)により、ゲノムDNA中の特異的標的配列の1個のコピーを、検出可能なレベルにまで増幅することが可能である。ゲノムDNAに加え、いずれかのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列を、プライマー分子の適当なセットにより増幅することができる。特にそれ自身PCRプロセスにより分泌される増幅されたセグメントは、引き続きのPCR増幅にとってのそれら自身効果的鋳型である。
【0072】
用語「PCR産物」、「PCR断片」及び「増幅産物」は、変性、アニーリング、及び伸長のPCR工程の2回又はそれよりも多いサイクルの完了後に得られる化合物の混合物を意味する。これらの用語は、1種又は複数の標的配列の1種又は複数のセグメントが増幅する場合を包含している。
用語「増幅試薬」は、プライマー、核酸鋳型、及び増幅酵素以外の、増幅に必要な試薬(デオキシリボヌクレオシド三リン酸、緩衝液など)を意味する。典型的には、増幅試薬は、他の反応成分と共に、反応容器(試験官、マイクロウェルなど)に配置及び含まれる。
【0073】
用語「逆転写酵素」又は「RT-PCR」は、出発材料がmRNAであるPCRの型を意味する。出発mRNAは、相補的DNA又は「cDNA」へ、逆転写酵素を用い酵素的に転換される。その後cDNAは、「PCR」反応の「鋳型」として使用される。
用語「遺伝子発現」は、遺伝子の「転写」による(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素作用を介した)、遺伝子にコードされた遺伝子情報のRNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、又はsnRNA)への転換、並びにmRNAの「翻訳」による、蛋白質への転換のプロセスを意味する。遺伝子発現は、そのプロセスの多くの段階で調節することができる。「アップレギュレーション」又は「活性化」は、遺伝子発現産物(すなわち、RNA又は蛋白質)の生成を増加する調節を意味するのに対し、「ダウンレギュレーション」又は「抑制」は、生成を減少する調節を意味する。アップ-レギュレーション又はダウン-レギュレーションに関与した分子(例えば、転写因子)は、各々、「アクチベーター」及び「リプレッサー」と称される。
【0074】
用語「機能可能な組合せ」、「機能可能な順番」及び「機能的に連結された」は、所定の遺伝子の転写及び/又は所望の蛋白質分子の合成を指示することが可能な核酸分子が作成されるような、核酸配列の連結を意味する。この用語は、機能性蛋白質が作成されるような方式でのアミノ酸配列の連結も意味する。
用語「調節エレメント」は、核酸配列の発現の一部の局面を制御する遺伝エレメントを意味する。例えば、プロモーターは、連結されたコード領域の転写の開始を促進する調節エレメントである。別の調節エレメントは、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、停止シグナルなどである。
【0075】
真核生物の転写制御シグナルは、「プロモーター」及び「エンハンサー」エレメントを含む。プロモーター及びエンハンサーは、転写に関連した細胞蛋白質と特異的に相互作用するDNA配列の短いアレイからなる(Maniatisら、Science、236:1237 (1987))。プロモーター及びエンハンサーエレメントは、酵母、昆虫、哺乳類及び植物細胞の遺伝子を含む、様々な真核生物給源から単離される。プロモーター及びエンハンサーエレメントは、ウイルスからも単離されており、及び類似の制御エレメント、例えばプロモーターは、原核生物においても認められている。特定のプロモーター及びエンハンサーの選択は、関心のある蛋白質の発現に使用される細胞によって決まる。一部の真核プロモーター及びエンハンサーは、広範な宿主範囲を有するが、他は限定された細胞型のサブセットにおいて機能する(総説については、Vossら、Trends Biochem. Sci.、11:287 (1986);及び、Maniatisら、前掲(1987)参照)。
【0076】
用語「プロモーターエレメント」、「プロモーター」又は「プロモーター配列」は、DNAポリマーコード領域の5'末端(すなわち前側)に配置されたDNA配列を意味する。天然に知られているほとんどのプロモーターの位置は、転写領域の前に置かれている。プロモーターは、遺伝子の発現を活性化する、スイッチとして機能する。遺伝子が活性化されたならば、転写される又は転写に参加すると称される。転写は、遺伝子からのmRNAの合成に関与する。従って、プロモーターは、転写調節エレメントとして役立ち、及び遺伝子のmRNAへの転写を開始する部位も提供する。
【0077】
プロモーターは、組織特異的又は細胞特異的であることができる。プロモーターに適用される用語「組織特異的」とは、異なる組織型(例えば根)において関心のある同じヌクレオチド配列の発現が相対的に存在しないような、組織の特定型(例えば、花弁)に対する関心のあるヌクレオチド配列の選択的発現を指示することが可能であるプロモーターを意味する。プロモーターの組織特異性は、例えば、レポーター構築体を作出するためのレポーター遺伝子のプロモーター配列への機能的連結、レポーター構築体の植物ゲノムへの導入、その結果としての得られるトランスジェニック植物の各組織へのレポーター構築体の組込み、並びにトランスジェニック植物の様々な組織におけるレポーター遺伝子の発現の検出(例えば、レポーター遺伝子によりコードされたmRNA、蛋白質、又は蛋白質活性の検出)により評価することができる。他の組織のレポーター遺伝子の発現レベルに対する1種又は複数の組織におけるレポーター遺伝子のより大きい発現レベルの検出は、このプロモーターが、より大きい発現レベルが検出された組織に特異的であることを示している。プロモーターに適用される用語「細胞型特異的」は、同じ組織内の異なる細胞型における同じ関心のあるヌクレオチド配列の発現の非存在と比べ、細胞の特異的型における関心のあるヌクレオチド配列の選択的発現を指示することが可能であるプロモーターを意味する。プロモーターに適用される用語「細胞型特異的」は、単独の組織内の領域における関心のあるヌクレオチド配列の選択的発現を促進することが可能なプロモーターも意味する。プロモーターの細胞型特異性は、例えば免疫組織化学染色のような、当該技術分野において周知の方法を用い評価してもよい。簡単に述べると、組織切片を、パラフィンに包埋し、及びパラフィン切片を、その発現はプロモーターにより制御される関心のあるヌクレオチド配列によりコードされたポリペプチド産物に特異的である一次抗体と反応させる。一次抗体に特異的である標識された(例えば、ペルオキシダーゼ複合した)二次抗体を、切片化した組織に結合させ、及び特異的結合(例えば、アビジン/ビオチン)を、顕微鏡により検出する。
【0078】
プロモーターは、構成的又は調節可能であることができる。用語「構成的」はプロモーターに関する場合、プロモーターが、刺激(例えば、熱ショック、化学物質、光など)の非存在下で機能的に連結された核酸配列の転写を指示することが可能であることを意味する。典型的には、構成的プロモーターは、実質的にあらゆる細胞及び組織における導入遺伝子の発現を指示することが可能である。対照的に、「調節可能な」プロモーターは、刺激(例えば、熱ショック、化学物質、光など)の存在下で、機能的に連結された核酸配列の転写レベルを指示することが可能であり、これは刺激の非存在下では機能的に連結された核酸配列の転写レベルが異なる。
【0079】
細菌に関して用語「感染する」及び「感染」は、標的生物学的試料(例えば、細胞、組織など)を、その結果細菌に含まれる核酸配列が標的生物学的試料の1個又は複数の細胞に導入されるような条件下で、細菌と同時-インキュベーションすることを意味する。
用語「アグロバクテリウム(Agrobacterium)」は、クラウンゴールを形成する、土壌性のグラム陰性桿状植物病原菌を意味する。用語「アグロバクテリウム」は、菌株アグロバクテリウム・ツメファシエンス(これは典型的には感染植物においてクラウンゴールを形成する)、及びアグロバクテリウム・リゾゲン(これは感染した宿主植物において毛状根疾患を生じる)を含むが、これらに限定されるものではない。植物細胞のアグロバクテリウムによる感染は、一般に、感染した細胞によるオパイン生成(例えば、ノパリン、アグロパイン、オクトパインなど)を生じる。従って、ノパリン生成を引き起こすアグロバクテリウム株(例えば、菌株LBA4301、C58、A208)は、「ノパリン-型」アグロバクテリアと称され;オクトパイン生成を引き起こすアグロバクテリウム株(例えば、菌株LBA4404、Ach5、B6)は、「オクトパイン-型」アグロバクテリアと称され;並びに、アグロパイン生成を引き起こすアグロバクテリウム株(例えば、菌株EHA105、EHA101、A281)は、「アグロパイン-型」アグロバクテリアと称される。
【0080】
用語「調節領域」は、プロモーターの直ぐ下流に位置し、遺伝子の翻訳開始部の直前で終わる、遺伝子の5'側の転写されたが翻訳されない領域を意味する。
用語「プロモーター領域」は、DNAポリマーのコード領域の直ぐ上流の領域を意味し、及び典型的には長さが約500bp〜4kbの間であり、好ましくは長さが約1〜1.5kbである。
【0081】
対照的に「誘導性」プロモーターは、刺激(例えば、熱ショック、化学物質、光など)の存在下での機能的に連結された核酸配列の転写レベルを指示することが可能であり、これは刺激の非存在下での機能的に連結された核酸配列の転写レベルとは異なる。
用語「調節エレメント」は、核酸配列(複数)の発現の一部の局面を制御する遺伝的エレメントを意味する。例えばプロモーターは、機能的に連結されたコード領域の転写開始を促進する調節エレメントである。他の調節エレメントは、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなどである。
【0082】
エンハンサー及び/又はプロモーターは、「内因性」又は「外因性」又は「異種」であることができる。「内因性」エンハンサー又はプロモーターは、ゲノムの所定の遺伝子に天然に連結されたものである。「外因性」又は「異種」のエンハンサー又はプロモーターは、遺伝子転写が連結されたエンハンサー又はプロモーターにより指示されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技術)により、遺伝子に並立して配置されるものである。例えば、第一の遺伝子との機能可能な組合せにおける内因性プロモーターは、単離、除去、及び第二の遺伝子との機能可能な組合せに配置し、これにより第二の遺伝子との機能可能な組合せの「異種のプロモーター」を作出することができる。様々なこのような組合せが、企図されている(例えば、第一及び第二の遺伝子は同じ種に、又は異なる種に由来することができる)。
【0083】
核酸配列の相対位置に関して使用される場合用語「天然に連結された」又は「天然に位置した」は、その核酸配列が、天然に相対位置に存在することを意味する。
発現ベクターに関する「スプライシングシグナル」は、真核宿主細胞における組換え転写産物のより高いレベルの発現を生じることが多い。スプライシングシグナルは、転写一次産物RNAからのイントロンの除去を媒介し、スプライシングドナー及びアクセプター部位からなる(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring HarborLaboratory Press社、ニューヨーク[1989]、16.7-16.8頁)。通常使用されるスプライシングドナー及びアクセプター部位は、SV40の16S RNA由来のスプライシング接合部である。
【0084】
真核細胞における組換えDNA配列の効率的発現は、得られる転写産物の効率的終結及びポリアデニル化を指示するシグナルの発現を必要とする。転写終結シグナルは、一般にポリアデニル化シグナルの下流に認められ、及び長さ数百のヌクレオチドである。本明細書において使用される用語「ポリ(A)部位」又は「ポリ(A)配列」は、発生期のRNA転写産物の終結及びポリアデニル化の両方を指示するDNA配列を意味する。組換え転写産物の効率的ポリアデニル化は、ポリ(A)尾部を欠く転写産物は不安定であり及び容易に分解されるので、望ましい。発現ベクターにおいて使用されるポリ(A)シグナルは、「異種」又は「内因性」であることができる。内因性ポリ(A)シグナルは、ゲノム内の所定の遺伝子のコード領域の3'末端に天然に認められるものである。異種のポリ(A)シグナルは、ひとつの遺伝子から単離され及び他の遺伝子の3'側に位置するものである。通常使用される異種ポリ(A)シグナルは、SV40ポリ(A)シグナルである。SV40ポリ(A)シグナルは、237bpのBamHI/BclI制限断片上に含まれ、並びに終結及びポリアデニル化の両方を指示する(Sambrook、前掲、16.6-16.7頁)。
【0085】
用語「ベクター」は、適当な制御エレメントに会合された場合複製することが可能であり、並びに遺伝子配列を細胞へ及び/又は細胞間で転移することができる、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ビリオン又は類似の遺伝子エレメントのような、いずれかの遺伝子エレメントを意味する。従って、この用語は、クローニングビヒクル及び発現ビヒクルに加え、ウイルスベクターを含む。
【0086】
本明細書において使用される用語「発現ベクター」は、所望のコード配列(又は複数のコード配列)−例えば、以下により詳細に説明されるハイブリッド酵素(複数)のコード配列(複数)−、並びに特定の宿主細胞又は生物における機能的に連結されたコード配列の発現に必要な適当な核酸配列を含む、組換えDNA分子である。原核生物における発現に必要な核酸配列は、プロモーター、オペレーター(任意に)、及びリボソーム結合部位を、時には他の配列と共に含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、並びに終結及びポリアデニル化シグナルを利用することが分かっている。本発明は、特定の発現ベクター又は特定のエレメントを伴う発現ベクターに限定されることは意図されていない。
【0087】
用語「トランスフェクション」は、外来DNAの細胞への導入を意味する。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈法、DEAE-デキストラン-媒介型トランスフェクション、ポリブレン-媒介型トランスフェクション、ガラスビーズ、電気穿孔、微量注入、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、ウイルス感染、遺伝子銃(すなわち、微粒子衝撃)などを含む、様々な当該技術分野において公知の手段により実現することができる。
用語「安定したトランスフェクション」又は「安定してトランスフェクションされた」とは、外来DNAの、トランスフェクションされた細胞のゲノムへの導入及び組込みを意味する。用語「安定したトランスフェクタント」は、ゲノムDNA中に安定して組込まれた外来DNAを有する細胞を意味する。
【0088】
用語「一過性トランスフェクション」又は「一過性にトランスフェクションされた」は、そこで外来DNAはトランスフェクションされた細胞のゲノムへの組込みには失敗している、外来DNAの細胞への導入を意味する。外来DNAは、数日間トランスフェクションされた細胞の核内に留まる。この間に、この外来DNAは、染色体における内因性遺伝子の発現を強制する調節制御が施される。用語「一過性のトランスフェクタント」は、外来DNAを取込んでいるが、このDNAの組込みには失敗した細胞を意味する。
【0089】
用語「リン酸カルシウム共沈」は、核酸を細胞へ導入する技術を意味する。核酸が、リン酸カルシウム-核酸共沈殿として存在する場合に、細胞による核酸の取込みが増強される。Graham及びvan der Ebの当初の技術(Graham及びvan der Eb、Virol.、52:456 (1973))は、いくつかのグループにより、特定の細胞型にとって条件を最適化するように改変されている。当該技術分野はこれらの多くの改変を良く知っている。
【0090】
用語「衝撃を加える」、「衝撃」及び「遺伝子銃衝撃」は、標的生物学的試料中の細胞の細胞膜を損傷するように作用し及び/又は粒子を標的生物学的試料中に侵入するために、標的生物学的試料(例えば、細胞、組織など)へ向けて粒子を加速するプロセスを意味する。遺伝子銃衝撃法は、当該技術分野において公知であり(例えば、米国特許第5,584,807号、その内容は本明細書に参照として組入れられている。)、及び市販されている(例えば、ヘリウムガス-起動式微量注入加速器(PDS-1000/He, BioRad社)。
用語「マイクロ損傷」は、植物組織に関して使用される場合は、その組織に微視的損傷を導入することを意味する。マイクロ損傷は、例えば、ここで説明された粒子衝撃により実現される。
【0091】
本明細書において使用される用語「植物」は、植物の発達のいずれかの段階に存在する構造へと大きく分化する複数の植物細胞を意味する。このような構造は、果実、茎頂、茎、葉、花弁などを含むが、これらに限定されるものではない。用語「植物組織」は、分化した及びしていない植物の組織を含み、これは根、茎頂、葉、花粉、種子、腫瘍組織及び培養物中の様々な種類の細胞(例えば、単独細胞、プロトプラスト、胚芽、カルス、プロトコーム様球体(PLB)など)を含むが、これらに限定されるものではない。植物組織は、植物における、器官培養、組織培養又は細胞培養におけるものであることができる。同様に「植物細胞(複数)」は、培養物中の細胞であるか、又は植物の一部であることができる。
【0092】
用語「トランスジェニック」は、細胞に関して使用される場合、導入遺伝子を含む細胞、又はそのゲノムが導入遺伝子の導入により変更された細胞を意味する。用語「トランスジェニック」は、細胞、組織又は植物に関して使用される場合、各々、導入遺伝子を含む、細胞、組織又は植物を意味し、ここで組織の1個又は複数の細胞は、導入遺伝子(例えば、本発明のハイブリッド酵素(複数)をコードしている遺伝子)を含み、又は植物は、そのゲノムが導入遺伝子の導入により変更されている。トランスジェニック細胞、組織及び植物は、本明細書に説明されたような方法による、核酸(通常DNA)を含む「導入遺伝子」の標的細胞への導入、又はヒトの介入による導入遺伝子の標的細胞染色体への組込みを含む、いくつかの方法により作成される。
【0093】
本明細書において使用された用語「導入遺伝子」は、細胞ゲノムへ、実験的操作により導入された核酸配列を意味する。導入遺伝子は、「内因性DNA配列」、又は「異種のDNA配列」(すなわち、「外来DNA」)であることができる。用語「内因性DNA配列」は、天然の配列に関して修飾(例えば、点変異、選択マーカー遺伝子の存在、又は他の同様の修飾)を含まない限りは、導入された細胞に天然に認められるヌクレオチド配列を意味する。用語「異種DNA配列」は、天然には連結していない、又は天然には異なる位置で連結されているような核酸配列に連結された、又は連結し始めるように操作された、ヌクレオチド配列を意味する。異種DNAは、それが導入される細胞にとって内因性ではないが、別の細胞から得られる。異種DNAは、何らかの修飾を含む内因性DNA配列も含む。必ずしもではないが一般に、異種DNAは、それが発現される細胞により、通常生成されないRNA及び蛋白質をコードしている。異種DNAの例は、レポーター遺伝子、転写及び翻訳調節配列、選択マーカー蛋白質(例えば、薬剤耐性を付与する蛋白質)、又は他の同様のエレメントを含む。
用語「外来遺伝子」は、実験操作により、細胞のゲノムに導入されるいずれかの核酸(例えば、遺伝子配列)を意味し、これは導入された遺伝子が天然の遺伝子に関して何らかの修飾(例えば、点変異、選択マーカー遺伝子の存在、又は他の同様の修飾)を含む限りは、その細胞に認められる遺伝子配列を含んでもよい。
【0094】
本明細書において使用される用語「形質転換」は、導入遺伝子の細胞への導入を意味する。細胞の形質転換は、安定しているか又は一過性であることができる。用語「一過性形質転換」又は「一過性に形質転換された」は、宿主細胞ゲノムへの導入遺伝子の組込みは存在しない、1個又は複数の導入遺伝子の細胞への導入を意味する。一過性形質転換は、例えば、1種又は複数の導入遺伝子によりコードされたポリペプチドの存在を検出する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、検出される。あるいは、一過性形質転換は、ここに説明されたような導入遺伝子(例えば、uid A遺伝子)によりコードされた蛋白質(例えば、β-グルクロニダーゼ)の活性の検出により、検出することができる(例えば、GUS酵素の存在で青色沈殿を生じるX-gluc染色による、GUS酵素活性の組織化学アッセイ;及び、GUS-Lightキット(Tropix社)を使用するGUS酵素活性の化学発光アッセイ)。用語「一過性形質転換体」は、1種又は複数の導入遺伝子が一過性に取込まれた細胞を意味する。対照的に、用語「安定した形質転換」又は「安定して形質転換された」は、1種又は複数の導入遺伝子の細胞のゲノムへの導入及び組込みを意味する。細胞の安定した形質転換は、1個又は複数の導入遺伝子と結合することが可能である核酸配列による細胞のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションにより検出することができる。あるいは、細胞の安定した形質転換は、導入遺伝子配列を増幅するための細胞のゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応により検出することもできる。用語「安定した形質転換体」は、ゲノムDNAへ安定して組込まれた1種又は複数の導入遺伝子を有する細胞を意味する。従って、安定した形質転換体は、一過性形質転換体と、安定した形質転換体からのゲノムDNAは、1種又は複数の導入遺伝子を含むが、一過性形質転換体からのゲノムDNAは、導入遺伝子を含まない点で区別される。
【0095】
用語「宿主細胞」は、異種遺伝子の複製及び/又は転写及び/又は翻訳が可能であるいずれかの細胞を意味する。従って、「宿主細胞」は、in vitro又はin vivoに配置される、いずれかの真核又は原核細胞(例えば、E. coliのような細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞、及び昆虫細胞)を意味する。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック動物内に位置することができる。
【0096】
用語「形質転換体」又は「形質転換された細胞」は、初代形質転換された細胞及び転移の回数とは関係なくその細胞に由来した培養物を含む。全ての後代は、偶然又は不注意による変異のために、DNA含有物が正確に同一でなくともよい。当初の形質転換された細胞のスクリーニングとして同じ機能を有する変異体後代は、形質転換体の定義に含まれる。
【0097】
用語「選択マーカー」は、選択マーカーが発現される細胞に、抗生物質又は薬物に対する抵抗性を付与する活性、又は検出することができる特性(例えば、発光又は蛍光)の発現を付与する活性を有する酵素をコードしている遺伝子を意味する。選択マーカーは、「正」又は「負」であることができる。正の選択マーカーの例は、G413及びカナマイシンに対する抵抗性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子、並びに抗生物質ヒグロマイシンに対する抵抗性を付与する細菌ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hyg)を含む。負の選択マーカーは、その発現が、適当な選択培地において増殖される場合にその細胞にとって細胞毒性である酵素活性をコードしている。例えば、HSV-tk遺伝子は、負の選択マーカーとして一般に使用される。ガンシクロビル又はアシクロビルの存在下で増殖された細胞におけるHSV-tk遺伝子の発現は、細胞毒性であり;その結果、ガンシクロビル又はアシクロビルを含有する選択培地における細胞増殖は、機能性HSV TK酵素の発現が可能な細胞を選択する。
【0098】
用語「レポーター遺伝子」は、アッセイされ得る蛋白質をコードしている遺伝子を意味する。レポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ(例えば、de Wetら、Mol. Cell. Biol.、7:725 (1987)及び米国特許第6,074,859号;第5,976,796号;第5,674,713号;及び、第5,618,682号参照;全て本明細書に参照として組入れられている。)、緑色蛍光蛋白質(例えば、GenBank寄託番号U43284;多くのGFP変種が、CLONTECH Laboratories社、パロアルト、CAから市販されている)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びホースラディッシュペルオキシダーゼを含むが、これらに限定されるものではない。
【0099】
用語「過剰発現」は、正常又は形質転換されない生物における生成レベルを超えるトランスジェニック生物における遺伝子産物の生成を意味する。用語「同時抑制(cosuppression)」は、外来及び内因性の両遺伝子の発現の抑制を生じる、内因性遺伝子と実質的相同性を有する外来遺伝子の発現を意味する。ここで使用されるように、用語「変更されたレベル」は、正常又は形質転換されない生物とは異なる量又は割合でのトランスジェニック生物における遺伝子産物(複数)の生成を意味する。
【0100】
用語「サザンブロット分析」及び「サザンブロット」及び「サザン」は、DNAがサイズに従い分離又は断片化されているアガロース又はアクリルアミドゲル上でのDNA分析、それに続くゲルからニトロセルロースもしくはナイロン膜のような固形支持体へのDNAの転写を意味する。その後固定されたDNAは、標識されたプローブに曝され、使用したプローブに相補的なDNA種が検出される。このDNAは、電気泳動の前に、制限酵素により切断してもよい。電気泳動後、DNAは、固形支持体への転写前又はその間に、部分的に脱プリン化及び変性される。サザンブロットは、分子生物学の標準の道具である(J. Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press社、NY、9.31-9.58頁、1989)。
【0101】
用語「ノーザンブロット分析」又は「ノーザンブロット」及び「ノーザン」は、サイズに従いRNAを分別するために、アガロースゲル上のRNA電気泳動によるRNA分析、その後のゲルからニトロセルロースもしくはナイロン膜のような固形支持体へのRNAの転写を意味する。その後固定されたRNAは、標識されたプローブによりプロービングされ、使用したプローブに相補的なRNA種を検出する。ノーザンブロットは、分子生物学の標準の道具である(J. Sambrookら、前掲、7.39-7.52頁、1989)。
【0102】
用語「ウェスタンブロット分析」及び「ウェスタンブロット」及び「ウェスタン」は、ニトロセルロースもしくは膜のような支持体上に固定された蛋白質(複数)(又はポリペプチド)の分析を意味する。少なくとも1種の蛋白質を含有する混合物は、最初にアクリルアミドゲル上で分離され、次に分離された蛋白質は、ゲルからニトロセルロースもしくはナイロン膜のような固形支持体へ移される。固定された蛋白質は、少なくとも1種の関心のある抗原に対する反応性を有する少なくとも1種の抗体に曝露される。結合した抗体は、放射標識された抗体の使用を含む、様々な方法により検出される。
【0103】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体(すなわち、エピトープ)と接触する抗原部分を意味する。蛋白質又は蛋白質断片が、宿主動物の感作に使用される場合、この蛋白質の多くの領域は、蛋白質上の所定の領域又は三次元構造に特異的に結合する抗体の産生を誘導することができ;これらの領域又は構造は、抗原決定基と称される。抗原決定基は、抗体結合に関して無傷の抗原(すなわち、免疫応答の惹起に使用される「免疫原」)と競合することができる。
【0104】
用語「単離された」は、「単離された核酸配列」のように核酸に関して使用される場合、同定され、並びにその天然の給源においては通常会合されているような1種又は複数の他の成分から分離された(例えば、その核酸を含む細胞から分離された、もしくは少なくとも1種の夾雑核酸から分離された、もしくは1種又は複数の蛋白質、1種又は複数の脂質から分離された)核酸配列を意味する。単離された核酸は、天然に認められるものとは異なる形又は状況で存在する核酸である。対照的に、単離されない核酸は、それらが天然に存在する状態で発見されるDNA及びRNAのような核酸である。例えば、所定のDNA配列(例えば、遺伝子)は、隣接する遺伝子に近接する宿主細胞染色体上に認められ;特異的蛋白質をコードしている特異的mRNA配列のような、RNA配列は、複数の蛋白質をコードしている多くの他のmRNAを伴う混合物としての細胞において認められる。しかし例えば、配列番号:1を含む単離された核酸配列は、一例として、核酸配列が天然の細胞のものとは異なる染色体又は染色体外の位置にあるか、又はさもなければ天然に認められるものとは異なる核酸配列に隣接しているような、例えば、配列番号:1を通常含むような細胞中のそのような核酸配列を含む。単離された核酸配列は、一本鎖又は二本鎖型で存在してもよい。単離された核酸配列が、蛋白質発現のために利用される場合は、核酸配列は、最低でも、センス又はコード鎖の少なくとも一部を含むであろう(すなわち、核酸配列は一本鎖であることができる。)。あるいは、これは、センス及びアンチ-センス鎖の両方を含んでもよい(すなわち、核酸配列は二本鎖であることができる。)。
【0105】
用語「精製された」は、それらの天然の環境(又はそれらの天然の環境の成分)から取り除かれた、単離された又は分離された核酸又はアミノ酸配列のいずれかの分子を意味する。従って「単離された核酸配列」は、精製された核酸配列であることができる。「実質的に精製された」分子は、天然にはそれらが会合されている他の成分を、少なくとも60%非含有、好ましくは少なくとも75%非含有、及びより好ましくは少なくとも90%非含有である。ここにおいて使用されるように、用語「精製された」又は「精製する」は、試料からの夾雑物の除去も意味する。夾雑蛋白質の除去は、試料中の関心のあるポリペプチドの割合の増加を生じる。別の例において、組換えポリペプチドは、植物、細菌、酵母、又は哺乳類宿主細胞において発現され、及びポリペプチドは、宿主細胞蛋白質の除去により精製され;これにより試料中の組換えポリペプチドの割合は、増加する。本発明は、精製された(実質的に精製されたを含む)及び精製されないの両方のハイブリッド酵素(複数)を企図している。
【0106】
用語所定のポリヌクレオチド配列又はポリペプチドを「含有する組成物」は、所定のポリヌクレオチド配列又はポリペプチドを含有するあらゆる組成物を広範に意味する。この組成物は、水溶液を含むことができる。GnTIIIをコードしているポリヌクレオチド配列又はそれらの断片を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。この場合、GnTIIIコードしているポリヌクレオチド配列は、典型的には、塩(例えば、NaCl)、界面活性剤(例えば、SDS)、及び他の成分(例えば、Denhardt溶液、乾燥ミルク、サケ精子DNAなど)を含有する水溶液中で使用される。
【0107】
用語「被験化合物」は、疾患、疾病、病気、又は体の機能の障害を治療又は予防するために、さもなければ試料の生理的又は細胞の状態を変更するために使用することができる、いずれかの化学実体、医薬、薬物などを意味する。被験化合物は、公知の及び可能性のある治療的化合物の両方を含む。被験化合物は、本発明のスクリーニング法を使用するスクリーニングにより治療的であると決定することができる。「公知の治療的化合物」は、そのような治療又は予防において有効であることが示された(例えば、動物試験又はヒトへの投与による予備試験(prior experience)により)治療的化合物を意味する。
【0108】
本明細書において使用される用語「反応」は、アッセイに関して使用される場合、検出可能なシグナルの発生(例えば、レポーター蛋白質の蓄積、イオン濃度の増加、検出可能な化学生成物の蓄積)を意味する。
用語「試料」は、最も広範な意味で使用される。ひとつの意味において、これは、動物細胞又は組織を意味する。別の意味において、これは、いずれかの給源から得られた標本又は培養物、更には生物学的試料及び環境試料を含むことを意味する。生物学的試料は、植物又は動物(ヒトを含む)から得ることができ、並びに液体、固形物、組織、及び気体を包含している。環境試料は、地表物質(surface matter)、土壌、水、及び産業試料などの環境材料を含む。これらの例は、本発明に適用可能な試料の種類を限定するように構築されるものではない。
【0109】
用語「融合蛋白質」は、少なくともひとつの一部又は部分は第一の蛋白質に由来し、及び別の一部又は部分は、第二の蛋白質に由来する蛋白質を意味する。用語「ハイブリッド酵素」は、少なくともひとつの一部又は部分は、第一の種に由来し、及び別の一部又は部分は第二の種に由来する、機能性酵素である融合蛋白質を意味する。本発明の好ましいハイブリッド酵素は、少なくともひとつの一部又は部分は、植物に由来し、及び別の一部又は部分は哺乳類(例えばヒト)に由来する機能性グリコシルトランスフェラーゼ(又はそれらの部分)である。
【0110】
用語「細胞への導入」は、核酸(例えば、ベクター)の状況において、当該技術分野が「形質転換」又は「トランスフェクション」又は「形質導入」と称するものを含むことが意図される。細胞の形質転換は、安定しているか又は一過性であることができ−並びに本発明は、一方で、安定した発現であり、及び他方で単に一過性の発現が存在するような条件下での、ベクターの導入を企図している。用語「一過性の形質転換」又は「一過性に形質転換された」は、導入遺伝子の宿主細胞ゲノムへの組込みが存在しない、1種又は複数の導入遺伝子の細胞への導入を意味する。一過性の形質転換は、例えば、1種又は複数の導入遺伝子によりコードされたポリペプチドの存在を検出する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により検出することができる。あるいは、一過性の形質転換は、導入遺伝子(例えば、抗体遺伝子)によりコードされた蛋白質の活性(例えば、抗体の抗原結合)を測定することにより、検出することができる。用語「一過性の形質転換体」は、1種又は複数の導入遺伝子が一過性に組込まれている細胞を意味する。対照的に、用語「安定した形質転換」又は「安定して形質転換された」は、1種又は複数の導入遺伝子の細胞ゲノムへの導入及び組込みを意味する。細胞の安定した形質転換は、1種又は複数の導入遺伝子に結合することが可能である核酸配列による細胞ゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションにより、検出することができる。あるいは、細胞の安定した形質転換は、導入遺伝子配列を増幅するための、細胞ゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により検出することもできる。用語「安定した形質転換体」は、1種又は複数の導入遺伝子がゲノムDNAに安定して組込まれている細胞を意味する。従って、安定した形質転換体は、一過性の形質転換体から識別されるのに対し、安定した形質転換体からのゲノムDNAは、1種又は複数の導入遺伝子を含み、一過性形質転換由来のゲノムDNAは、導入遺伝子を含まない。
【0111】
「バイセクト型オリゴ糖」は、例えば2個のマンノース基及びオリゴ糖のマンノース残基に結合した別の糖質部分を含むオリゴ糖として定義される。バイセクト型オリゴヌクレオチドの例は、表1に示している。
【0112】
発明の詳細な説明
本発明の植物宿主細胞において発現されたGnTIII(例えば、配列番号:1、図4A)は、哺乳類GnTIIIである。具体的態様において、GnTIIIは、ヒトGnTIII(例えば、配列番号:2、図4B)である。GnTIIIは同じく、具体的態様において、哺乳類GnTIIIのアミノ酸配列と80%の同一性、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、及び最も好ましくは少なくとも約97%(以後「相同ポリペプチド」と称す)であり、これは該哺乳類GnTIIIの活性を定性的に維持している。クエリーアミノ酸配列に対し少なくとも、例えば、95%の「同一性」であるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、対象ポリペプチド配列が平均して、クエリーアミノ酸配列の各100個のアミノ酸につき最大5個のアミノ酸変更を含み得る以外は、クエリー配列と同一である。別の表現をすると、クエリーアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列中のアミノ酸残基の最大5%が、別のアミノ酸で挿入、欠失又は置換されてよい。これらの参照配列の変更は、参照アミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置、又は参照配列内の残基中で個別にもしくは参照配列内の1個又は複数の相接基のいずれかにおいて散在された、これらの末端位置の間のどこかで生じることができる。
【0113】
クエリー配列(本発明の配列)及び対象配列の間の最良の全体の合致を決定する好ましい方法は、グローバル配列アラインメントとも称され、これはBrutlagらのアルゴリズムを基にしたFASTDBコンピュータプログラムを用い決定することができる(Com. App. Biosci.、6:237-245 (1990))。配列アラインメントにおいて、クエリー配列及び対象配列は、両方ともヌクレオチド配列又は両方ともアミノ酸配列のいずれかである。該グローバル配列アラインメントの結果は、%同一性である。FASTDBアミノ酸アラインメントに使用される好ましいパラメータは、以下である:マトリックス=PAM0、k-tuple=2、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ=20、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ウインドウサイズ=配列長、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウインドウサイズ=500、又はいずれかのより短い対象アミノ酸配列長。
【0114】
対象配列が、内部欠失ではなく、N-又はC-末端欠失のために、クエリー配列よりも短い場合には、結果に手作業による補正を行わなければならない。これは、FASTDBプログラムは、グローバル%同一性を計算する場合には、対象配列のN-及びC-末端切断には対処しないためである。クエリー配列と比べ、N-及びC-末端が切断された対象配列に関して、その%同一性は、対応する対象残基とはマッチ/アラインされない、対象配列のN-及びC-末端であるクエリー配列の残基数の計算により、クエリー配列の総塩基の%として、補正される。残基がマッチ/アラインされるかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。その後この%は、%同一性から減算され、特定のパラメータを用いる前記FASTDBプログラムにより算出され、最終%同一性スコアに到達する。この最終%同一性スコアは、本発明の目的のために使用されるものである。クエリー配列とマッチ/アラインされない、対象配列のN-及びC-末端に対する残基のみが、%同一性スコアの手作業による調節の目的のために考察される。すなわち、クエリー残基のみが、対象配列の最も遠いN-及びC-末端残基の外側に位置する。
【0115】
本発明の植物宿主システムにおいて発現されたGnTIIIは、哺乳類GnTIIIのアミノ酸配列をコードしている核酸配列と少なくとも80%同一性、好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約97%(以後「相同ポリペプチド」と称す)を有する核酸配列によりコードされており、これらは該哺乳類GnTIIIの活性を定性的に維持している。この核酸配列は、RNA又はDNA配列であることができる。
【0116】
本発明の参照ヌクレオチド配列に対する95%「同一性」を有するポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列が、そのポリペプチドをコードしている参照ヌクレオチド配列の各100個のヌクレオチド当り平均して最大5個の点変異を含む以外は、参照配列と同一である。別の表現をすると、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%の同一性のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列のヌクレオチドの最大5%は、欠失又は別のヌクレオチドにより置換され得るか、又は参照配列の総ヌクレオチドの最大5%までの多くのヌクレオチドは、参照配列に挿入することができる。クエリー配列は、ここで説明された、全配列、ORF(オープンリーディングフレーム)、又は特定されたいずれかの断片であることができる。
【0117】
実際的な問題として、特定の核酸分子又はポリペプチドは、本発明のヌクレオチド配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一性であるかどうかは、公知のコンピュータプログラムを用い通常のように決定することができる。クエリー配列(本発明の配列)と、グローバル配列アラインメントとも称される対象配列の間の最良の全体のマッチを決定する好ましい方法は、Brutlagらのアルゴリズムを基礎としたFASTDBコンピュータプログラムを用い決定することができる(Comp. App. Biosci、6:237-245 (1990))。配列アラインメントにおいて、クエリー配列及び対象配列は、両方ともDNA配列である。RNA配列は、U(ウリジン)をT(チミン)に転換することにより、比較することができる。該グローバル配列アラインメントの結果は、%同一性である。%同一性を計算するためのDNA配列のFASTDBアラインメントにおいて使用される好ましいパラメータは以下である:マトリックス=Unitary、k-tuple=4、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ=30、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウインドウサイズ=500、又はいずれかのより短い対象アミノ酸配列長。
【0118】
本発明は、該哺乳類GnTIIIをコードしている核酸配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含している。ポリヌクレオチドの一本-鎖型が、温度及び溶液イオン強度の適当な条件下で他のポリヌクレオチドへアニーリングすることができる場合は、このポリヌクレオチドは、他のポリヌクレオチドに「ハイブリダイズ」する(Sambrookら、前掲参照)。温度及びイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。相同核酸の予備スクリーニングのために、温度42℃に相当する低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件を使用することができる(例えば、5xSSC、0.1%SDS、0.25%ミルク、及びホルムアミドなし;又は、40%ホルムアミド、5xSSC、0.5%SDS)。中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、比較的高い温度55℃に相当し、例えば40%ホルムアミド、5x又は6xSCCを伴う。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、最高温度65℃に相当し、例えば50%ホルムアミド、5x又は6xSCCを伴う。ハイブリダイゼーションは、ふたつの核酸が、相補的配列を含むことを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが可能である。核酸ハイブリダイゼーションのための適当なストリンジェンシーは、核酸の長さ及び相補性の程度、当該技術分野において周知の変数に応じて決まる。ふたつのヌクレオチド配列間の類似性又は相同性の程度が大きければ大きい程、そのような配列を有する核酸のハイブリッドに関するTm(融解温度)値が大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対安定性(比較的高いTmに相当)は、下記の順に低下する:RNA:RNA、DNA:DNA、DNA:DNA。
【0119】
植物宿主システムにおけるGnTIII及び他の異種蛋白質の発現
ひとつの態様において、哺乳類GnTIII又は他の異種蛋白質、例えば異種糖蛋白質又は哺乳類グリコシルトランスフェラーゼなどをコードしている核酸は、適当な発現ベクター、すなわち挿入されたコード配列の転写及び翻訳に必要なエレメントを含むベクター、又はRNAウイルスベクターの場合は、複製及び翻訳に必要なエレメント、更には選択マーカーを含むベクターへ挿入することができる。これらは、プロモーター領域、シグナル配列、5'非翻訳配列、構造遺伝子がそれに備えられ(equip)ているかどうかに応じて開始コドン、並びに転写及び翻訳終結配列を含むが、これらに限定されるものではない。このようなベクターを得る方法は、当該技術分野において公知である(総説については国際公開公報第01/29242号を参照)。
【0120】
植物における発現に適したプロモーター配列は、例えば国際公開公報第91/198696号のように、当該技術分野において説明されている。これらは、例えばノパリンシンテターゼ及びオクトパインシンテターゼのプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)19S及び35Sプロモーター並びにゴマノハグサ(figwort)モザイクウイルス(FMV)35プロモーター(米国特許第6,051,753号)のような、非-構成的プロモーター又は構成的プロモーターを含む。使用されるプロモーターは、例えば、胚乳、糊粉層、胚芽、果皮、茎、葉、穀粒、塊茎、根などを標的とする組織特異的プロモーターである。
【0121】
シグナル配列は、適当である場合蛋白質のプロセッシング及び転位を可能にする。このシグナルは、植物に由来するか、又は非-植物シグナル配列であることができる。シグナルペプチドは、発生期のポリペプチドを小胞体へ向かわせ、ここでこのポリペプチドは引き続き翻訳後修飾を受ける。シグナルペプチドは、当業者は慣習的に同定することができる。これらは典型的には、三部分構造を有し、N-末端に正帯電したアミノ酸、その後疎水性領域及び次に低下した疎水性領域内に切断部位を伴う。
【0122】
転写末端は、慣習的に転写開始調節領域の反対側である。これは、転写開始領域に、又は異なる遺伝子から会合することができ、並びに発現を増強するように選択することができる。例は、アグロバクテリウムTiプラスミド由来のNOSターミネーター及びコメα-アミラーゼターミネーターである。ポリアデニル化尾部を追加してもよい。例は、アグロバクテリウムオクトパインシンテターゼシグナル(Gielenら、EMBO J.、3:835-846 (1984))又は同じ種のノパリンシンターゼ(Depickerら、Mol. Appl. Genet.、1:561-573 (1982))を含むが、これらに限定されるものではない。
【0123】
異種蛋白質の転写を増加し及び/又は最大化するために、エンハンサーを含んでもよい。これらは、ペプチド輸送(export)シグナル配列、コドン使用頻度、イントロン、ポリアデニル化、及び転写終結部位を含むが、これらに限定されるものではない(国際公開公報第01/29242号参照)。
【0124】
マーカーは、除草剤耐性及び原核細胞選択マーカーを含む。このようなマーカーは、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、及びスペクチノマイシンなどの抗生物質に対する耐性を含む。具体例は、ストレプトマイシン耐性をコードしているストレプトマイシンホスホトランスフェラーゼ(spt)遺伝子、カナマイシン又はゲネチシン耐性をコードしているネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptIl)遺伝子、ヒグロマイシン耐性をコードしているヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)遺伝子を含むが、これらに限定されるものではない。
【0125】
構築されたベクターは、当該技術分野において公知の手法を用い、植物宿主システムへ導入することができる(総説については国際公開公報第01/29242号及び国際公開公報第01/31045号参照)。これらのベクターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスベクターに相同の領域、A.ツメファシエンス由来のT-DNA境界領域を含む、中間植物形質転換プラスミドに修飾されてもよい。あるいは、本発明の方法で使用されるベクターは、アグロバクテリウムベクターであることができる。ベクターを導入する方法は、微量注入、小ビーズもしくは粒子のいずれかのマトリックス内の核酸を伴う小さい粒子による高速衝撃貫通(velocity ballistic penetration)、又は表面及び電気穿孔を含むが、これらに限定されるものではない。このベクターを、植物細胞、組織又は器官へ導入することができる。具体的態様において、一旦異種の遺伝子の存在が確認されたならば、植物は、当該技術分野において公知の方法を用い再生される。
【0126】
哺乳類GnTIIIの使用
哺乳類GnTIIIの発現は、糖蛋白質上のバイセクトされたN-グリカンへつながる。バイセクトされたN-グリカンは、一部の哺乳類糖蛋白質の生物学的活性にとって重要である。特に、バイセクトされたモノクローナル抗体は、増強されたADCC(抗体-依存型細胞毒性)を有する。バイセクトされた構造の導入は、糖蛋白質の新規又は最適化された機能及び増加したバイオアベイラビリティにつながり、例えば、アンテナリティ型の増加は、低下した腎クリアランスのために、半減期を増大する。従って、本発明は、バイセクトしているオリゴ糖、特にバイセクトしているGlcNAc残基を有する該異種糖蛋白質を含む植物宿主システム、及び該糖蛋白質を生成する方法を指示する。
【0127】
更に、植物におけるGnTIIIの発現は、野生型植物と比べた末端GlcNAcの劇的増加につながる(植物N-グリカンは、哺乳類N-グリカンと比べてはるかに少ないGlcNAc残基を含む。)。植物糖蛋白質又は植物により作出された組換え糖蛋白質のN-グリカンのより多くのGlcNAc残基は、糖蛋白質の哺乳類N-グリカンに類似している。植物N-グリカン(及びMabのような植物-作出した組換え糖蛋白質)内のバイセクト型GlcNAcの導入は、植物におけるGnTIII発現のために、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼによる分解からN-グリカンを保護するように見える。より多くのGlcNAc残基は、末端ガラクトースを追加する、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)のより多くのアクセプター基質を意味する。GAITなどのガラクトシルトランスフェラーゼのような、N-グリカン生合成を提供する、もしくはGaIT植物とGnTIII植物において交配する、又はその逆である、GnTIII並びに輸送体もしくは(哺乳類)酵素又はそれらの機能性断片のような機能性蛋白質の同時-発現は、これらの植物において産生された糖蛋白質の増加したガラクトシル化につながる。従って本発明は、該哺乳類GnTIII及び該機能性蛋白質を含む植物宿主システムに関し;植物宿主システムは更に、該哺乳類GnTIII及び該機能性蛋白質を含まない植物宿主システムにより産生された異種糖蛋白質と比べ、増加したガラクトシル化を伴う異種糖蛋白質を含み、該植物宿主システムを提供する方法及び該糖蛋白質を提供する方法に関する。
【0128】
商業的に関心のある目的に合わせた糖蛋白質を生成する安定して形質転換された植物の作出は、GnTIII、任意にN-グリコシル化修飾酵素をコードしているヌクレオチド配列、及び商業的に関心のある異種糖蛋白質をコードしているヌクレオチド配列の両方を含むベクターを含むアグロバクテリウム株による植物細胞又は組織の接種により、もしくは電気穿孔、微量注入、小ビーズもしくは粒子のいずれかのマトリックス内の核酸を伴う小さい粒子による高速衝撃貫通、又は表面及び電気穿孔のような前記手法により、確立することができる。あるいは、商業的に関心のある目的に合わせた糖蛋白質を生成する安定して形質転換された植物は、各々GnTIII、任意に他のN-グリコシル化修飾酵素をコードしているヌクレオチド配列、及び商業的に関心のある糖蛋白質をコードしているヌクレオチド配列のいずれかを含むベクターを運搬する2種又はそれよりも多いアグロバクテリウム株の同時接種(同時形質転換)、又は植物細胞又は組織の該ベクターによる直接の同時形質転換により作出することができる。あるいは、商業的に関心のある目的に合わせた糖蛋白質を作成する安定して形質転換された植物は、修飾されたN-グリコシル化を伴う植物の、商業的に関心のある蛋白質をコードしているヌクレオチド配列を発現している植物による交配(複数)により作出される。これらの手法の全てにおいて、ベクターは、選択剤に対する抵抗性を付与するヌクレオチド配列を含むこともできる。
【0129】
N-グリコシル化、GnTIIIに関連した蛋白質の及び商業的に関心のある糖蛋白質又はポリペプチドの満足した発現を得るために、これらのヌクレオチド配列を、当業者に公知の宿主植物の特異的転写及び翻訳機構に適合することができる。例えば、コード領域のサイレント変異は、コドン使用頻度を改善するために導入することができ、並びに特異的プロモーターは、関連する植物組織の該遺伝子の発現を起動するために使用することができる。発生的に調節される又は自由自在に誘導することができるプロモーターを使用し、例えば、圃場から植物組織が収穫され及び制御された条件に晒された後のみ、適当な時点での発現を確実にすることができる。これらの全ての場合において、グリコシル化修飾蛋白質の及び商業的に関心のある糖蛋白質の発現カセットの選択は、該糖蛋白質への所望の翻訳後修飾を可能にするために、同じ細胞で発現するようにされなければならない。
【0130】
前述のように、具体的態様において、本発明の方法において使用することができる植物は、タバコ植物、又は少なくともNicotiana属に関連した植物であるが、しかしArabidopsis thalianaもしくはズィー・メイズ、又はそれらに関連した植物などの、他の比較的容易に形質転換可能な植物の本発明のための使用も特に提供される。組換え糖蛋白質の作成のために、ウキクサ(duckweed)の使用は、具体的利点を提供する。この植物は、一般に小さく、及び栄養出芽を通じて無性再生する。しかしながら、ほとんどのウキクサ種は、根、茎、花、種子及び葉状体を含むはるかに大きい植物の全ての組織及び器官を有する。ウキクサは、そこから容易に収穫することができる簡単な液体溶液の表面上の自由な浮水植物として、安価に及び非常に迅速に生育することができる。これらは、栄養-豊富な廃水において成長することもでき、廃水を再使用のために清浄化する間に同時に、価値のある産物を生じる。特に医薬用途に関連するウキクサは、封じ込められ及び制御された条件下で、室内で生育することができる。安定して形質転換されたウキクサは、例えば、N-グリコシル化修飾酵素をコードしている1種又は複数の関心のあるヌクレオチド配列及び/又は商業的に興味深い異種糖蛋白質をコードしている遺伝子を含む(バイナリー)ベクターの各々を含むアグロバクテリウム株の(同時)-接種後、組織又は細胞から再生することができる。ウキクサ植物は、例えば、Spirodella属、Wolffia属、Wolffiella、又はLemna属、Lemna minor、Lemna miniscula及びLemna gibbaを含む。更にPhyscomitrella patensのようなコケは、封じ込められた条件下で、安価に生育することができという利点を提供する。加えて、Physcomitrella patensの半数体ゲノムは、比較的容易に操作することができる。
【0131】
トマト果実における発現も、具体的利点を提供する。トマトは、封じ込められ及び制御された条件下で、温室内で容易に生育することができ、並びにトマト果実バイオマスは、大量に一年を通じて連続して収穫することができる。関心のある糖蛋白質を含有している水様画分は、トマト果実の残余から容易に分離することができ、このことは容易に糖蛋白質を精製することを可能にする。トウモロコシの穀粒、ジャガイモの塊茎、及びナタネもしくはヒマワリの種子を含むが、これらに限定されるものではない他の作物の貯蔵器官における発現も、魅力的代替品であり、収穫及び処理技術が所定の位置にある器官内に大きいバイオマスを提供する。花蜜における発現は、花蜜から分泌される糖蛋白質の純度及び均一性に関する具体的利点を提供する。
【0132】
あるいは、異種糖蛋白質を含む植物は、GnTIII及び任意に少なくとも1種の機能性哺乳類蛋白質、例えば、通常植物には存在しないN-グリカン生合成を提供する輸送体又は酵素を含む本発明の植物と交配され、該交配から後代が収穫され、並びに該異種糖蛋白質を発現し及び通常植物には存在しない哺乳類-様N-グリカン生合成に関連したGnTIII及び任意に機能性(哺乳類)酵素を発現している所望の後代植物が選択される。このプロセスは、交配受粉として知られている。好ましい態様において、本発明は、更にバイセクトしているオリゴ糖、特にガラクトース残基及び/又は増加したガラクトシル化を含む該組換え蛋白質を発現している所望の後代植物の選択を含む、本発明の方法を提供する。現在このような植物が提供され、本発明は、特に該糖蛋白質又はそれらの機能性断片がバイセクトしているオリゴ糖及び/又は増加したガラクトシル化を含むような、所望の糖蛋白質又はそれらの機能性断片を作成する、トランスジェニック植物の使用も提供する。
【0133】
本発明は追加的に、例えば、十分なバイオマスが生育し、収益性のある収穫が可能になる時である、該植物が収穫可能な段階に達するまで、本発明の植物を栽培し、その後当該技術分野において確立された技術で該植物を収穫し、及び当該技術分野において公知の確立された技術で該植物を分別し、分別された植物材料を得、並びに該分別された植物材料から該糖蛋白質を少なくとも一部単離することを含む、所望の糖蛋白質又はそれらの機能性断片を得る方法を提供する。所望の蛋白質の存在は、当該技術分野において公知の方法を用いスクリーニングすることができ、好ましくは、生物学的活性部位が、検出可能なシグナルを生成する方法で検出される、スクリーニングアッセイを使用する。このシグナルは、直接的又は間接的に作成することができる。このようなアッセイの例は、ELISA又はラジオイムノアッセイを含む。
【0134】
GnTIIIの発現に起因したバイセクト型GlcNAc残基の導入も、例えばβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼのような活性グリコシダーゼ「ブロッキング」、並びに他の糖類(「他の」引き続きのグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子により起動される)のN-連結されたグリカンへの付加、例えばフコシル化、キシロシル化の防止により、N-グリカンからの糖類の除去(分解)の防止のために使用することができる。局在化を制御することにより(例えば、他の細胞下標的化シグナルを提供することにより)、及び/又は発現レベルを制御することにより(例えば、独立したトランスジェニック植物においてレベルを変動するか又は異なるプロモーターを使用することにより)、グライコフォーム組成を変更することができる。従って、組換え糖蛋白質を含む植物の糖蛋白質中のバイセクトしているGlcNAc残基の導入は、活性α1,3フコシルトランスフェラーゼによりブロックすることによりα-1,3-フコースの、α-1,4-フコシルトランスフェラーゼをブロックすることによりα-1,4-フコースの、β-1,2-キシロシルトランスフェラーゼをブロックすることによりβ-1,2-キシロースの、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをブロックすることによりβ-1,3-ガラクトースの組込みを阻止し、並びに特にβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼの活性をブロックすることにより末端GlcNAc残基が、及びβ-1,4ガラクトシダーゼをブロックすることにより末端β-1,4-ガラクトース(国際公開公報第01/31045号に開示されたように、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現により付加)が、N-グリカンに付加された糖類を、除去/分解する。従ってこの方法において、GnTIIIの制御された発現及びバイセクトしているGlcNAc残基の制御された導入を用い、グライコフォーム組成物を操縦し(steer)及び/又はグライコフォーム不均一性を制限する。
【0135】
修飾されたGnTIII及びGnTIIIハイブリッド蛋白質
本発明は更に、哺乳類GnTIIIの触媒部分及び蛋白質の膜貫通部分を含む単離されたハイブリッド蛋白質に関し、該蛋白質は、真核細胞の小胞体又はゴルジ装置に常在する。本発明は、修飾された哺乳類GnTIIIにも関し、ここで膜貫通ドメインは、除去されるが、ERにおける該GnTIIIの残留のためのKDELのような残留シグナルを含んでいる。
【0136】
第一の酵素の膜貫通部分及び第二の酵素の触媒部分を含むハイブリッド酵素をコードしている核酸配列は、下記のように得ることができる。膜貫通部分をコードしている配列は、第二の酵素から除去され、第二酵素のC-末端部分をコードしている核酸配列を含む核酸配列を残留し、これは触媒部位を包含している。第一の酵素の膜貫通部分をコードしている配列は、単離されるか、又はPCRにより得られ、第二の酵素のC-末端部分を含む配列をコードしている配列に連結される。
【0137】
蛋白質、特にER内に保持されているガラクトシルトランスフェラーゼ、マンノシダーゼ及びN-アセチルグルコサミン転移酵素のような酵素をコードしている核酸配列は、膜貫通断片をコードしている配列の除去、及びそれのメチオニン(翻訳開始)コドンとの置換、並びにガラクトシルトランスフェラーゼの最後のコドンと停止コドンの間へのKDEL(アミノ酸残基配列:リシン-アスパラギン酸-グルタミン酸-ロイシン)をコードしている配列のようなER残留シグナルをコードしている核酸配列の挿入により得ることができる(Rothman、1987)。
【0138】
発現の制御に加え、GnTIII活性の再局在化は、小胞体(ER)又はゴルジ装置膜中に常在する他のグリコシルトランスフェラーゼ又は酵素/蛋白質の膜貫通ドメインとの、GnTIIIの酵素的部分をコードしている遺伝子配列の融合体を作成することによるか、又はER内の残留のためのKDELのような、しかしこれに限定されるものではない、いわゆる残留シグナルの付加により、制御することもできる。このような再局在化は、組換え糖蛋白質を含む糖蛋白質のN-連結されたグリカンへの特異的糖類の付加及びこれらの除去の防止を変更する。
【0139】
例えば、GnTI(TmGnTI)、マンノシダーゼII(TmManII)、キシロシルトランスフェラーゼ(TmXyl)又はα-1,3フコシルトランスフェラーゼ(TmFuc)であるが、これらに限定されるものではないものによる、GnTIIIの膜貫通ドメインの交換は、より早期のGnTIII発現及び図2の20〜22位でバイセクトされているGlcNAcの導入を可能にする。このことは、引き続きのキシロシルトランスフェラーゼ及びフコシルトランスフェラーゼのようなグリコシルトランスフェラーゼの基質に対する作用を防止し、これはXyl及びFucを欠いているグライコフォームにつながる。重要なことに、β-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)の作用による末端ガラクトースの付加は、GalTのバイセクトされているGlcNAc-同時-発現により阻害されないこと(Bakkerら、「Galactose-extended glycans of antibodies produced by transgenic plants」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、98:2899-2904 (2001))は、図2の20、21及び22に注釈された矢印の右側に示されるように構造類似性を生じる。免疫原性キシロース及びフコース残基の欠落にもかかわらず、これらの構造は、複合型グリカンへのプロセッシングされたただひとつのアームを有する。同じく他のアームへの転換を可能にするために、GnTIIIの再配置に加え、マンノシダーゼII(ManII)及びGnTIIも、グリカンプロセッシング配列内により早期に作用するように、ゴルジ内に再配置される。これは、いくつかの方法で確立することができる。例えば、それらの代表的膜貫通ドメインをGnTI(TmGnTI)のそれにより交換することにより、これは、図2の5に示された位置への再配置を生じる。代わりに、ManII及びGnTIIの両方は、膜貫通ゴルジ標的化ドメインを除去し、及び残余の酵素断片をC-末端ER残留シグナル(例えば、アミノ酸残基KDEL)と共に供給することにより、ERへ再局在化することができる。GalTを発現している植物(Bakkerら、「Galactose-extended glycans of antibodies produced by transgenic plants」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、98:2899-2904 (2001))に加え、GnTIII(例えば、TmXyl-GnTIII)、ManII(例えば、TmGnTI-ManII)及びGnTII(例えば、TmGnTI-GnTII)の再配置変種は、その後(than)関心のある組換え糖蛋白質を発現している植物と交配することができるか(図3)、又は、抗体をコードしている遺伝子のような、関心のある糖蛋白質をコードしている遺伝子により再形質転換することができる。これは、キシロース及びフコースを欠いている末端ガラクトース残基を伴うバイセクト型グリカンを有する組換え糖蛋白質の生成を可能にする。形質転換法及び交配(同時-受粉)法は、先に説明されている。
【0140】
別の態様において、マンノシダーゼII(TmManII-GnTIII)又はキシロシルトランスフェラーゼ(Tmxyl-GnTIII)の膜貫通ドメインを伴うGnTIIIは、TmXyl-GalT、TmGnTI-GnTII、TmGnTI-ManIIと組合せた。この組合せは、関連した遺伝子の同時発現又は交配-受粉による組合せのいずれかにより得ることができ、並びにコア配列にキシロース及びフコースを欠いているトリマンノシルコア上にバイセクト型GlcNAc残基を有する及び末端ガラクトースを有する組換え糖蛋白質を含む糖蛋白質につながる。
【実施例】
【0141】
実施例
GnTIIIの植物への導入の植物糖蛋白質のグリカン上のバイセクト型オリゴ糖の出現に対する作用が、評価される。GnTIIIに関するヒト遺伝子は、クローニングされ、並びにタグを付けた融合蛋白質の発現の分析のためのC-末端c-mycタグが提供され、及び全体がタバコ内の導入のための植物調節エレメントの制御下に配置される。GnTIIIは、植物において発現されること、及び発現は、内因性植物糖蛋白質上にバイセクト型オリゴ糖構造を生じることが示されている。少なくとも2個のGlcNAc残基を含むN-グリカンの量は、正常タバコ植物において認められるものと比べ2倍以上多い。驚くべきことに、内因性植物糖蛋白質の単離されたグリカンのマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)分析から明らかであるように、GnTIIIの発現も、複合型N-グリカン分解産物の顕著な減少を生じる。これらのデータは、N-グリカン上のバイセクトされた構造の導入を生じるタバコ中のGnTIIIの発現は、グリカンをβ-N-アセチルヘキサミニダーゼによる分解から保護することを示唆している。β-N-アセチルヘキサミニナーゼは、典型的にはトリマンノシルコア(Man-α-1-3及びMan-α-1-6)上に存在するGlcNAc-β1-2リンケージ中でもとりわけ非還元末端GlcNAcに及びβ-N-アセチルグルコサミン(GalNAC)切断に対し、広範な特異性を有する。
【0142】
実施例1 プラスミド及び植物形質転換
PACクローンRP5-1104E15 GnTIII(配列番号:1、図4A)を、Pieter J. de Jong, Children's Hospital Oakland Research Institute(CHORI)から入手し、及びSanger Centerを通じて求め、クローンセットHBRC_1.scの一部を入手した。このクローンは、ホモ・サピエンス、男性の血液が起源であり、http://www.sanger.ac.uk/Teams/Team63/CloneRequest/から求めることができる(ヒト染色体22q12.3-13.1由来;The Wellcome Trust Sanger Institute, Wellcome Trust Genome Campus, Hinxton, Cambridge,CB 10 1 SA, 英国;www.sanger.ac.uk)。
【0143】
GnTIIIのヒト遺伝子を、該PACクローンから、AccuTaq LA DNAポリメラーゼ(Sigma Aldrich社)及びプライマーGNT3F (5'atactcgagttaacaatgaagatgagacgct-3;配列番号:3)及びGNT3Rmyc (5'-tatggatcctaattcagatcctcttctgagatgag;配列番号:4)を用いるPCRにより、クローニングした。オリゴ類は、Eurogentec社(ベルギー)から得た。PCRは、PerkinElmer Cetus 480サーマルサイクラー(ABI/PE)上で、製造業者の指示に従いAccuTaqポリメラーゼにとって最適条件を用い行った。得られた断片を、pBluescribe SK+ (Stratagene社、ラホヤ、CA、USA)のEcoRV部位にクローニングし、配列を確認した。配列決定は、本質的に説明されているような蛍光標識したジデオキシヌクレオチド法(Sangerら、「DNA sequencing with the dideoxy chain-terminating inhibitors」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、74:5463-5467 (1977))を用いて行い、及び反応混合物を、Applied Biosystem社370A又は380自動DNAシークエンサー上で試行した。データは、ウェブ上で自由に利用可能な様々なソフトウェアモジュールを使用し解析し、並びにデータベース上に存在するヒトGnTIIIのDNA配列を比較した。
【0144】
C-末端c-mycタグを伴うGnTIII遺伝子を含む1.6kb HpaI/BamHI断片は、引き続きpUCAP35SのSma/BglII部位にクローニングし(Van Engelenら、「Coordinate expression of antibody subunit genes yields high levels of functional antibodies in roots of transgenic tabacco」、Plant Molecular Biology、26:1701-1710 (1994))、pAMV-GnTIIIと称した。修飾されたGnTIII遺伝子を伴うカリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV35S) 20プロモーター発現カセットを、引き続き、バイナリーベクターpBINPLUS中にAscI/PacI断片としてクローニングし(Van Engelenら、「Coordinate expression of antibodies subunit genes yields high levels of functional antibodies in roots of transgenic tabacco」、Plant Molecular Biology、26:1701-1710 (1994))、pBINPLUSGnTIIIを生じ、電気穿孔によりアグロバクテリウム・ツメファシエンス株Ag10に導入した。Nicotiana tabacum変種Samsun NNの形質転換は先に説明された(Horschら、「A simple and general method for transferring genes into plants」、Science、227:1229-1231 (1985))。前述のように、16種の独立したトランスジェニック植物を選択し、温室で成熟まで生育した。葉材料を、GnTIII(配列番号:2、図4B)の発現及び内因性細胞糖蛋白質のグリカン組成について分析した。
【0145】
実施例2 発現分析
タバコ葉の総蛋白質抽出物を、既報のように調製した(Bakkerら、「Galactose-extended glycans of antibodies produced by transgenic plants」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、98:2899-2904 (2001))。試料に存在する蛋白質の量を、ウシ血清アルブミンを標準として用いるBradford法により推定した(Bradford, M.M.、「A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding」、Anal Biochem、72:248-254 (1976))。一定量の蛋白質試料を、還元条件下で10又は12%SDS-PAGEゲル(Bio-Rad社)上に流した。Rainbowカラー分子量蛋白質マーカーは、Amersham社から得た。ウェスタンブロット分析を、本質的に説明されたように行った(Bakkerら、「Galactose-extended glycans of antibodies produced by transgenic plants」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、98:2899-2904 (2001))。分離した蛋白質を、ニトロセルロース(BA85、Schleicher及びSchuell又はTrans-Blot Transfer Medium、Bio-Rad社)に、Bio-Radミニトランスブロット電気泳動式移動セルを用い、3[シクロヘキシルアミノ]-1-プロパンスルホン酸(CAPS)緩衝液中で60分間かけて移した。GnTIII-c-myc融合蛋白質の発現を、ペルオキシダーゼ標識したc-myc抗体を用いる、アフィノブロッティングにより分析した。内因性タバコ糖蛋白質のバイセクトしているオリゴ糖の導入は、ビオチン化した赤血球凝集フィトヘマグルチニン(E-PHA;Vector Laboratories社)と一緒のインキュベーションにより可視化した。検出は、LumiAnalystソフトウェア(ver.3.0)を使用するLumi-Imager F1装置(Boehringer Mannheim社、マンハイム、独国)上で、Roche社(Roche Diagnostics社、マンハイム、独国)のLumi-Lightウェスタンブロット基質を使用する増強された化学発光により行った。
【0146】
実施例3 マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析
グリカン構造の分析のために、細胞蛋白質を、ヒトGnTIIIで形質転換した選択された植物のタバコ葉から単離した(GnTIII-17)。蛋白質単離及びN-グリカン調製は、既報のように行った(Elbersら、2001)。N-グリカンを、多孔質でない黒鉛化したカーボンブラックカラム(Carbograph Ultra Clean Tubes、Alltech Associates社)上で脱塩し、その後説明されたように質量分析した。MALDI-TOFスペクトルは、Micromass社(マンチェスター、英国)のTof spec E MALDI-TOF質量分析装置において測定した。質量分析は、本質的に既報のように、2,5-ジヒドロキシ安息香酸をマトリックスとして使用し行った(Elbersら、2001)。
【0147】
ヒトGnTIIIの発現は、N. tabacumの内因性糖蛋白質へバイセクトされているN-グリカンを導入する。ヒトGnTIIIは、構成的CaMV35Sプロモーター制御下で、C-末端c-mycタグに融合された完全なコード配列を収容するcDNAを含むバイナリーベクターpBINPLUSGnTIIIのアグロバクテリウム-媒介した形質転換により、タバコ植物に導入した。カナマイシン耐性について選択された60種の独立したトランスジェニック茎頂を得、これらを、c-myc抗体を用いGnTIII-c-myc融合蛋白質の発現について分析した。分析は、全て、様々なレベルで遺伝子を発現したことを明らかにした。14種を選択し、植え付け、温室に移した。c-myc抗体を用いGnTIII-c-myc融合蛋白質の高発現について選択されたひとつの植物(GnTIII-17)を、ビオチン化したレクチンE-PHAとの特異的結合アッセイを使用する内因性タバコ糖蛋白質のN-グリカン上のバイセクト型GlcNAc残基の出現について分析した。蛋白質のSDS-PAGEを抽出し、ニトロセルロースに転写した後、ビオチン化したレクチンE-PHAとの特異的結合アッセイを用い分析し、GnTIII-17の内因性タバコ糖蛋白質は、バイセクト型オリゴ糖を含むのに対し、対照タバコのそれは含まないことを明らかにした。GnTIII-17は、MALDI-TOFによるグリカン構造の更なる詳細な分析のために、温室で繁殖させた。
【0148】
実施例4 野生型及び選択されたトランスジェニックGnTIII-17タバコ植物におけるオリゴ糖分布及びバイセクト型複合オリゴ糖のレベル
内因性糖蛋白質を、対照タバコ植物及び選択されたGnTIII-17植物の若葉から単離し、ヒトGnTIII発現の糖蛋白質にN-連結されたグリカンの構造に対する作用について詳細に調べた。MALDI-TOFを用いる、対照野生型タバコ植物の葉に存在する糖蛋白質から単離されたN-グリカンの構造の植物GnTIII-17由来のものとの比較を、図1に示した。MALDI-TOFは、N-グリカンのプール(グライコフォーム)における様々な分子種の検出を可能にし、並びにd、Man5からn、Man9の範囲の高-マンノース(Man)-型N-グリカンの及び切断構造a、XM3GN2からm、GN3FXM3GN2までの成熟N-グリカンの(M+Na)+付加体に割当てられたイオン混合を示した。(構造については表1参照;データの要約は表2参照)。対照植物(図1A)で特徴付けられたN-グリカンに加え、植物GnTIII-17(図1B)からのグリカン混合物のMALDI-TOF MSは、ヒトGnTIII酵素の作用から生じるN-連結されたグリカンに割当てられた少なくとも2種のイオンを示した(比較については表1及び表2参照)。これらのオリゴ糖GN3XM3GN2(i)及びGN3FXM3GN2(k)は、各々、集団の8%及び31%を示し、N-連結されたグリカンのトリマンノシルコア構造の3個のマンノースのひとつに連結された3個のGlcNAc残基を含む。
【0149】
ここで行ったようなMALDI-TOFによるグリカン構造の分析は、マンノースにβ(1,2)-又はβ(1,4)-連結されたGlcNAc残基の間を識別することはできない。従って、構造GN2XM3GN2及びGN2FXM3GN2は、バイセクトしているオリゴ糖を有するかどうか又はどの程度有するかは、明らかではなかった。これらの構造は、正常及びバイセクト型オリゴ糖の混合物又は単独の化合物であることを明らかにするためには、追加実験が必要である。
【0150】
GnTIIIを過剰発現しているCHO細胞で観察された致死性を考慮し(Umanaら、「Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody-dependent cellular cytotoxic activity」、Nature Biotechnology、17:176-180 (1999))、著しい量のバイセクト型グリカンを有するトランスジェニック植物は、表現型では正常であるように見え、及び完全に稔性である(交配-受粉及び自家-受粉することができる)ことは、驚くべきことであった。
【0151】
実施例5 タバコにおけるヒトGnTIIIの発現はN-グリカンをD-Nアセチルヘキサアミニダーゼによる分解から保護し及び末端N-グルコサミニル化は2倍よりも多いように見える
抽出物のMALDI-TOF分析は、ここでグライコフォーム集団の少なくとも40%は、GnTIII酵素の作用により、細胞タバコ蛋白質の複合型N-連結されたグリカンにおけるバイセクトしているGlcNAcを有することを明確に示した。野生型タバコの約30%と比べ、GnTIII-17の内因性糖蛋白質の複合型N-連結されたグリカンの集団の70%よりも多くが、2又は3個の末端GlcNAc残基を有する(表1)。タバコにおけるGnTIIIの発現時にバイセクト型複合型N-連結されたグリカンの少なくとも40%の観察された新規合成(図1B、表1及び表2)は、FXM3GN2(b、30%から4%)及びGNFXM3GN2(f、10から2%)の大きい消失並びにGN2FXM3GN2(j、29%から19%)の程度の小さい消失と同時に起こる。加えて、GN2XM3GN2(h)の野生型タバコの4%からGnTIII-17の14%への著しい増加も同時に起こる。GnTIII植物における後者のGN2XM3GN2(h)が、N-連結されたグリカンのトリマンノシルコアのβ-連結されたマンノースに連結された第二のGlcNAcを有し、これはGnTIII活性の結果であるか、もしくはトリマンノシルコアの第二のα-連結されたマンノースに連結された第二のGlcNAcを有するかどうかは、依然調べられるべきである(前記参照)。
【0152】
GnTI活性を欠いているシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)変異体は、内因性糖蛋白質のN-グリカン内にキシロース及びフコース残基を含まないので、野生型タバコ植物のN-連結されたグリカンの40%を占める糖質a、b及びcは、GnTI活性後に内因性タバコ糖蛋白質の成熟グリカンから生じることが予想される分解産物である(Von Schaewenら、「Isolation of a mutant Arabidopsis plant that lacks N-acetylgulucosaminyl transferase I and is unable to synthesize golgi-modified complex N-linked glycans」、Plant Physiology、102:1109-1118 (1993))。GNXM3GN2及びXM3GN2の閾値低下(12%>4%)と一緒の、GnTIII-17のこれらの構造における1/7の減少(40%>6%)は、バイセクト型GlcNAcの導入は、成熟N-連結されたグリカンを内因性グリコシダーゼ、特に末端GlcNAcを除去するβ-Nアセチルヘキソサミニダーゼによる分解から保護することを示唆している。成熟した完全長N-連結されたグリカンの分解から生じると予想されるN-連結されたグリカンの総量は、1/5に減少する(52%から10%)。
【0153】
実施例6 メイズ形質転換のためのベクター構築及びDNA調製
ヒトGNTIII遺伝子を、その3'c-myc免疫検出タグと共に、プラスミドpAMV-GNTIIIから、下記の方法によるPCRにより得た。各々、hGNTIII遺伝子の5'末端及び3'末端に相同なプライマーMS20及びMS19を設計し、並びにPmeI部位及び停止コドンをこの遺伝子の3'末端に追加して合成した。
MS20(5' NcoI部位):5'-CCATGGTGATGAGACGCTAC-3' (配列番号:5)
MS19(3' 停止及びPmeI部位の追加):5'-GTTTAAACCTAGGATCCTAATTCAGATCCTCT-3' (配列番号:6)。
【0154】
正確なサイズのPCR産物を同定するためのゲル電気泳動後、1.6kbpのPCR産物を、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen社、バレンシア、CA)を用いゲルから回収した。Zmubi/GUS/per5カセットを含むプラスミド4005(配列番号:8参照)(図5A及び5B)(Christensenら、Plant Molec. Biol.、18:675-689 (1992))を、NcoI及びPmeIで消化し、GUS遺伝子を放出し、このベクター断片を、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen社、バレンシア、CA)によりゲルから回収した。
NcoI及びPmeIによる消化後、PCR-由来のhGNTIII断片を、pDAB4005のNcoI及びPmeI消化後のベクター断片左側に連結し、中間体プラスミドpDAB7119を作成した(配列番号:9)(図6A及び6B)。中間体プラスミドpDAB7119を、SpeI及びSphIにより切断し、hGNTIII植物発現カセットを放出し、これをT4 DNAポリメラーゼで処理し、平滑末端を作成した。
【0155】
RB7 MAR配列を含むプラスミドpDAB8504(配列番号:10)(図7A及び7B)を、SrfIにより消化し、T4 DNAポリメラーゼにより平滑末端とした。ウシ小腸ホスファターゼによる処理後、処理した8504断片及びhGNTIII植物発現カセットを連結し、プラスミドpDAB 7113(配列番号:10)を作成し(図8A及び8B参照)、これは下記のようにRB7 MAR配列に隣接して関心のある遺伝子及び選択マーカーを含む:RB7 MAR // Zmubiプロモーター/hGNTIII/per5 3'UTR // コメアクチンプロモーター (D.McElroyら、「Isolation of an efficient actin promoter for use in rice toransformation」、The Plant Cell、2:163-171 (1990))/PAT/ Zmリパーゼ3'UTR // RB7 MAR。
【0156】
このGNTIII配列の完全性は、配列決定によりチェックし(Big Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction、Applied Biosystems社、フォスターシティ、CA)、及びヒトGNTIII酵素をコードしていることを確認した。1個の塩基変化G384→384が認められたが、しかしこの置換は、コードされたアミノ酸プロリン128には影響を及ぼさなかった。
プラスミドpDAB7113を、培地(LB+amp)2Lで増殖し、Qiagen Plasmid Gigaキットにより精製し、植物細胞形質転換のために精製したプラスミド5mgを作成した。
【0157】
実施例7 メイズ細胞の形質転換
プラスミドpDAB7113を、本質的にこれらの引用例に記されたような、ウィスカ-媒介したDNA導入により、下記のように、メイズ細胞へ導入した(Frame, B.ら、「Production of fertile transgenic maize plants by silicon carbide whisker-mediated transformation」、Plant J.、6:941-948 (1994);Thompson, J.ら、「Maize transformation utilizing silicon carbide whiskers: a review」、Euphytica、85:75-80 (1995);P. Song、C. Q. Cai、M. Skokut、B.Kosegi、及びJ. Petolino、「Quantitative real-time PCR as a screening tool for estimating transgene copy number in Whiskers-derived transgenic maize」、Plant Cell Rep.、20:948-954 (2002);両方とも、本明細書に参照として組入れられている。)。
【0158】
胚形成のメイズ浮遊細胞培養物を、G-N6培地(ショ糖30gm/L、イノシトール100mg/L及び2,4-D 2mg/Lを含有するN6培地)上で継代し、翌日ウィスカ媒介した形質転換を行った。この実験の翌日、細胞を、マンニトール及びソルビトールを各0.2M含有するG-N6培地と共に30分間振盪することにより、浸透圧調節物質で前処理した。細胞36mlを、G-N6培地50mlが入った250mlの遠心管に移し、これに、培地中の5%(w/v)シリコンカーバイドウィスカ懸濁液(Silar SC-9、Advanced Composite Materials, Greer, S.C.)の8.1mlを、1mg/mlプラスミド溶液(TE緩衝液中)170μlと共に添加した。細胞、ウィスカ及びDNAを含む遠心管を、改良型Red Devilブランドのペンキミキサー上で、10秒間激しく攪拌した。その後ウィスカした細胞を、追加の浸透圧調節物質レベルの半分を伴う培地中で2時間振盪した。ウィスカした細胞を、滅菌したブフナー漏斗上での濾過により回収し、濾紙を、半固形G-N6培地上に1週間配置した。1週間後、濾紙を、ハービエース(市販の配合物20%ビアラホス、明治製菓、東京、日本)1mg/Lを含有する半固形G-N6培地に移した。2週間後、これらの細胞を、濾紙から除去し、7gm/LのSeaplaqueアガロース(BioWhittaker社、ロックランド、ME)を含有する溶融したG-N6+1mg/Lハービエース(G-N6+1H)培地と混合し、G-N6+1H固形培地上に播種させた。プレートを、30℃で暗所において培養した。選択剤に対し耐性のあるコロニーを、包埋(embedding)後5〜7週間で回収し、個々に新鮮なG-N6+1H培地に移し、更に組織質量を増加した。
【0159】
実施例8 挿入されたDNAのコピー数の分子分析
各トランスジェニック単離体からの組織を、凍結乾燥装置において個別に凍結乾燥し、及びDNAを標準方法(DNAeasy 96植物用キット、Qiagen社)により抽出した。挿入されたトランスジェニックDNAのコピー数を、Third Wave Technologies社(Third Wave Technologies社、マジソン、WI、twt.com)から入手可能なInvader Operatingシステムにより推定した。Third Wave Technologies社により、PAT選択マーカーに特異的なプライマーを設計し、及びそのコピー数を、内因性メイズα-チューブリン遺伝子のゲノムDNAコピー数と比べて推定した。
【0160】
実施例9 GntIII遺伝子発現に起因した変更されたレクチン結合のための試験トランスジェニックメイズカルス
100個の個別に単離された独自のトランスジェニック事象(event)からのカルス試料を、下記のように抽出した。各事象からの試料を、各ウェルに鉄及びタングステン製のビーズがはいった96-ウェルクラスターチューブボックス(Costar 1.2mlポリプロピレン、蓋付き)中で新たに凍結した。抽出緩衝液(25mMリン酸ナトリウム、pH6.6、100mM NaCl、30mM硫酸水素ナトリウム、1%v/v TritonX-100)450μlを、各ウェルに添加し、試料のボックスを、Kleco Bead Mill上で最高速度で3分間粉砕した。このプレートを、2500rpmで10分間遠心した(4℃)。抽出物を、96-ウェルの深いウェルプレートに移し、貯蔵のために凍結した。個々の事象のこれらの抽出物について、全てのスクリーニングアッセイを行った。
【0161】
蛋白質分析(マイクロタイタープレートプロトコール、BioRad社500-0006)を行い、各抽出物の総蛋白質を決定した。1試料につき25ug蛋白質を、20ulの負荷緩衝液に負荷した(Laemmli,U.K.、Nature、277:680 (1970))。ゲル(4〜20% Criterion PAGEゲル、12+2ウェル、BioRad社345-0032)を、Tris/グリシン/SDSランニング緩衝液(BioRad社161-077)中で65mAで電気泳動した。転写緩衝液(ランニング緩衝液+20%v/vメタノール)中に10分間浸漬した後、これらのゲルを、半乾燥ブロッター(150mA/1.5時間)を用いニトロセルロース膜に転写した。これらの膜を、ブロッキング緩衝液(20mM Tris、144mM NaCl、0.5%v/v Tween20、10%w/v無脂肪粉末ミルク)中で室温で30分間インキュベーションし、その後ブロッキング緩衝液を除去し、ブロッキング緩衝液中の一次検出用レクチン(インゲンマメのヘマグルチニンE、ビオチン化された、Vector Laboratories B-1125)2.5ug/mlと置き換えた。一次検出用レクチンを、膜上で1時間室温でインキュベーションした。一次検出溶液を除去し、膜をブロッキング緩衝液で1回すすぎ、ブロッキング緩衝液中の、二次検出溶液(アビジン-HRP、BioRad社170-6528、1:5000)と、質量検出マーカー剤(StrepTactin-HRP、BioRad社161-0380、1:10000)を添加した。二次検出試薬を、膜上で、1時間室温でインキュベーションした。一次及び二次試薬のブロッキング工程期間に、これらの溶液を、ブロット上で混合した。その後二次検出試薬を除去し、膜を0.5%Tween 20を含有するTris緩衝した生理食塩水(20mM Tris、144mM NaCl)で、10分間各3回及び更に5分間で1回すすいだ。過剰なすすぎ液を流し捨てた後、このブロットを、基質ECL(Pierce社34080)に1分間浸漬し、過剰なECL溶液を排液し、及びこの膜をフィルムに曝した。トランスジェニックカルス抽出物上のこのバイセクトしているグリカン-検出するレクチン試薬による可視化された新規糖蛋白質バンドを識別するために、各ゲルに陰性対照を含んだ。
【0162】
E-PHA結合に関する陽性試験結果(表5)は、0(陰性)、1(1+、弱い)、2(2+、中等度に強い)又は3(3+、最強等級)と評価した。2又は3と評価した事象のカルスを選択し、質量分析用の試料を作成した。試料25、26、33、48、55、56及び59をプールし、グリカン下部構造のMALDI-TOF分析のための蛋白質抽出物を作成した。ゲルブロット例(図12)は、試料19から27を示す。
【0163】
実施例10 c-mycエピトープ発現に関する試験トランスジェニックメイズカルス
100個の個別に単離した独自のトランスジェニック事象由来のカルス試料を、以下のように抽出した。各事象からの試料を、各ウェル中に鉄及びタングステン製ビーズが入った96-ウェルクラスターチューブボックス(Costar 1.2mlポリプロピレン製、蓋付き)中で新たに凍結した。各ウェルに抽出緩衝液(25mMリン酸ナトリウム、pH6.6、100mM NaCl、30mM硫酸水素ナトリウム、1%v/v TritonX-100)450ulを追加し、この試料ボックスを、Kleco Bead Mill上で最高速度で、3分間粉砕した。このプレートを、2500rpmで10分間遠心した(4℃)。抽出物を、96-ウェルの深いウェルプレートに移し、貯蔵のために凍結した。全てのスクリーニングアッセイを、個々の事象のこれらの抽出物について行った。
【0164】
蛋白質分析(マイクロタイタープレートプロトコール、BioRad社500-0006)を行い、各抽出物の理論的蛋白質を決定した。1試料につき25ug蛋白質を、20ulの負荷緩衝液に負荷した(Laemmli,U.K.、Nature、277:680 (1970))。ゲル(4〜20% Criterion PAGEゲル、12+2ウェル、BioRad社345-0032)を、Tris/グリシン/SDSランニング緩衝液(BioRad社161-077)中で65mAで電気泳動した。転写緩衝液(ランニング緩衝液+20%v/vメタノール)中に10分間浸漬した後、これらのゲルを、半乾燥ブロッター(150mA/1.5時間)を用いニトロセルロース膜に転写した。これらの膜を、ブロッキング緩衝液(20mM Tris、144mM NaCl、0.5%v/v Tween20、10%w/v乾燥ミルク)中で室温で30分間インキュベーションし、その後ブロッキング緩衝液を除去し、ブロッキング緩衝液中の一次検出用試薬マウス抗-c-mycクローン9E10(sigma社M5546)の1ug/mlと置き換えた。1時間室温でインキュベーションした後、一次検出用試薬を除去し、膜をブロッキング緩衝液で1回すすいだ。ブロッキング緩衝液中の、二次検出用試薬抗-マウス-HRP(BioRad社170-6516)の1:10,000と分子量マーカー検出試薬(StrepTactin-HRP、BioRad社161-0380)の1:10,000を添加し、その後膜上で、1時間室温でインキュベーションした。一次及び二次試薬のブロッキング工程期間中に、この溶液を、ブロット上で混合した。その後二次検出試薬を除去し、膜を0.5%Tween 20を含有するTris緩衝した生理食塩水(20mM Tris、144mM NaCl)で、10分間各3回及び更に5分間1回すすいだ。過剰なすすぎ液を排水した後、膜を、ECL試薬(Pierce社34080)に1分間浸漬し、排水し、及びこの膜をフィルムに曝した。
【0165】
先に詳述したように、個別の事象1-100由来のカルス試料を、c-mycエピトープの発現についてスクリーニングした。その後試料3、11、12、26、31、55及び64を分析し、推定分子量範囲50〜55kDにバンドが存在することを示した。これらのカルス試料はプールし、MALDI-TOFによるグリカン分析のための蛋白質試料を作成した。代表的ブロットは、図13に示す。
【0166】
実施例11 グリカンの質量スペクトル分析のための抽出物の調製
試料を、E-PHAを使用するレクチンブロッティングを基にしたGnTIII導入遺伝子発現について陽性と試験したいくつかのメイズカルス事象の一緒にしたカルスから調製した。カルス組織を、新たに収集し、-80℃で凍結保存し、その後液体窒素中で細かい粉末に粉砕した。秤量した試料を、抽出緩衝液(5mM EDTA、0.5mM PMSF、20mM硫酸水素ナトリウム、150mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4、及び0.4mM PVPP可溶性MW40,000)に添加し、30分間4℃で攪拌した。5000xGで4℃で遠心後、上清を収集した。硫酸アンモニウム及び洗浄用緩衝液(5mM EDTA、150mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4)を、上清に添加し、硫酸アンモニウム最終濃度20%(w/v)を実現した。5000xGで4℃で5分間遠心後、上清を新たなチューブへ移し、追加の硫酸アンモニウムと洗浄用緩衝液を添加し、硫酸アンモニウム最終濃度60%(w/v)を実現した。この調製物を、4℃で一晩攪拌し、その後10,000xGで20分間遠心した。このペレットを、5mlの洗浄用緩衝液中に回収し、-80℃で凍結し、その後4℃で乾燥するまで凍結乾燥した。試料を、グリカン分析のために実験施設に送付した。
【0167】
実施例12 トランスジェニックカルス組織からのメイズ植物再生
形質転換したカルスからの植物再生のために、組織を、MS基本塩及びビタミン(Murashige T.及びF. Skoog、Physiol Plant、15:473-497 (1962))、30g/lショ糖、5mg/l 6-ベンジルアミノプリン(BA)、0.025mg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、1mg/lハービエース(市販の配合物20%ビアラホス、明治製菓、東京、日本)、及び2.5g/l Gelrite、pH5.7を含有する再生培地上に置いた。培養物を、光下で生育した。茎頂が長さ1〜3cmに到達した時点で、これらを、SH基本塩及びビタミン(Schenk R.及びA.C. Hildebrandt、Can J Bot、50:199-204 (1972))、10g/lショ糖、1g/l myo-イノシトール、及び2.5g/l Gelrite、pH5.8を含有する容器に移した。
【0168】
植物を、GNTIIIの発現について、レクチンE-PHAの内因性蛋白質への変更された結合により、スクリーニングした。その後試料を、前記実施例9に説明したように、E-PHA結合についてスクリーニングした。蛋白質抽出物及び20%/60%硫酸アンモニウム沈殿を、カルス試料について、下記実施例13に説明した通りに、調製した。23種の独立した事象から再生された各植物由来のひとつの植物を、GNTIII遺伝子の発現の結果について、レクチンブロッティングによりスクリーニングした。4種の事象が、E-PHA結合に関する陽性シグナルを生じた。これらの4種の事象は、カルス段階で試験し、陽性であった。これらの4種の事象から再生された植物は、プールし、MALDI-TOFによるグリカン分析のための蛋白質抽出物を作成した。
【0169】
実施例13 野生型及び選択されたトランスジェニックトウモロコシカルスにおけるオリゴ糖分布及びバイセクト型複合オリゴ糖のレベル
内因性糖蛋白質を、対照トウモロコシカルス、及びE-PHAを用いるレクチンブロッティングを基に選択されたGnTIIを発現しているトウモロコシカルスから単離した。加えて本発明は、c-mycタグ付けした試料の抽出も企図している。E-PHA及びc-mycタグ付き試料は、前記定義の項に定義したように、カルス、植物細胞、植物組織又は植物全体であることができる。カルス中に存在する糖蛋白質から単離されたN-グリカンの構造の比較は、図9A及び9Bに示された。MALDI-TOFは、N-グリカンのプール(グライコフォーム)中の様々な分子種の検出を可能にし、d、Man5からl、Man8の範囲の高-マンノース(Man)-型N-グリカンの、及びa、XM3GN2からm、bGN3FXM3GN2の切断構造の成熟N-グリカンの、(M+Na)+付加体に割当てられたイオンの混合を示した(表3参照)。対照カルスにおいて特徴付けられたN-グリカン(図9A)に加え、GnTIIIを発現している選択されたトウモロコシカルス由来のグリカン混合物のMALDI-TOF MS(図9B)は、ヒトGnTIII酵素の作用から生じるN-連結されたグリカンに割当てられた少なくとも1種のイオンを示した(比較のために表3参照)。オリゴ糖GN3XM3GN2(m)は、この集団の20%を示し、及びN-連結されたグリカンのトリマンノシルコア構造の3個のマンノースのひとつに各々連結された3個のGlcNAc残基を含む。ここで行ったMALDI-TOFによるグリカン構造の分析は、マンノースにβ(1,2)-又はβ(1,4)-連結されたGlcNAc残基の間を識別することができない。従って、構造GN2XM3GN2 (h)及びGN2FXM3GN2 (k)は、バイセクトしているオリゴ糖を有するかどうか又はどの程度有するかは、明らかではなかった。形質転換されない対照トウモロコシ細胞と比較したGnTIIIトウモロコシ細胞における数は両方とも増加した。これらの構造は、正常及びバイセクト型オリゴ糖の混合物又は単独の化合物であることを明らかにするためには、追加実験が必要である。
【0170】
GnTIIIトウモロコシにおける糖構造m(bGN3FXM3GN2)の新たな出現に加え、対照及びGnTIIIトウモロコシのグライコフォームの比較から、表3に示されたように、高-マンノース型N-グリカン(M4及びより高)を収容する構造の量は、1/2に低下し(19%から7%)、これはほとんどGnTIIIトウモロコシの対照トウモロコシに対するM4-含有するN-グリカンの減少(合計10%から1%)が原因であることは明らかである。加えて、2種又はそれよりも多いGlcNAc残基を有するグライコフォームの量は、16%から42%(対照対GnTIII)に増加している。
【0171】
下記実験において、内因性糖蛋白質を、対照トウモロコシカルスから単離し、ウェスタンブロッティングによるc-mycタグ配列の存在の分析を基にGnTIIIを発現しているトウモロコシカルスを選択した。カルスに存在する糖蛋白質から単離されたN-グリカンの構造の比較は、表4に示した。MALDI-TOFは、N-グリカンのプール(グライコフォーム)における様々な分子種の検出を可能にし、並びにd、Man5からn、Man8の範囲の高-マンノース(Man)-型N-グリカンの及び対照トウモロコシにおける切断構造a、XM3GN2からk、GN2FXM3GN2までの成熟N-グリカンの(M+Na)+付加体に割当てられたイオン混合を示した。
【0172】
驚くべきことに、GnTIIIを発現しているトランスジェニックトウモロコシにおいて(表4、GnTIII-2)、3種のアイソフォームのみが検出された:FXM3GN2 (b;全体の9%を占める)、GN2FXM3GN2/bGN2FXM3GN2 (k;38%)及びbGN3FXM3GN2 (m;54%)。構造k (GN2FXM3GN2/bGN2FXM3GN2)は、バイセクトしているオリゴ糖を有するかどうか又はどの程度有するかは、明らかではなかった。その存在は、GnTIIIトウモロコシにおいて、対照トウモロコシと比べ、有意に増加した。これらの構造は、正常及びバイセクト型オリゴ糖の混合物又は単独の化合物であることを明らかにするためには、追加実験が必要である。
【0173】
GnTIIIトウモロコシにおける糖構造m(bGN3FXM3GN2)(54%)の新規出現に加え、表4にまとめたように、対照及びGnTIIIトウモロコシのグライコフォームの比較から、高-マンノース型N-グリカン(M4及びより高)を収容する構造の量は、GnTIIIトウモロコシにおいて、対照トウモロコシに対しほぼゼロに低下されることが明らかである。更に、2又はそれよりも多い(3)GlcNAc残基を持つN-グリカンの総量は、16から92%(対照対GnTIII)に増加し、これはバイセクト型GlcNAc残基の導入が、トランスジェニックGnTIIIタバコについて先にみとめられたような内因性ヘキソサミニダーゼによる分解からグリカンを保護することを示唆している。
加えてMALDI-TOF質量分析データ(図11)は、バイセクト型GlcNAc構造を明らかにしている。
【0174】
実施例14 野生型及び選択されたトランスジェニックトウモロコシ植物におけるオリゴ糖分布及びバイセクト型複合オリゴ糖レベル
内因性糖蛋白質は、対照トウモロコシ植物葉、及びE-PHAを用いるウェスタンブロッティング又はレクチンブロッティングによるc-mycタグ配列の存在に関する分析を基に選択されたGnTIIIを発現している選択されたトウモロコシ植物葉から単離した。葉中に存在する糖蛋白質から単離されたN-グリカンの構造の比較は、表6に示した。MALDI-TOFは、N-グリカン(グライコフォーム)の様々な分子種の検出を可能にし、f、Man6からh、Man8の範囲の高-マンノース(Man)-型N-グリカンの、並びに対照トウモロコシ植物における、a、XM3GN2からg、GN2FXM3GN2の切断構造の成熟N-グリカンの、及びトランスジェニックGnTIIIトウモロコシ植物におけるi、bGN3FXM3GN2までの、(M+Na)+付加体に割当てられたイオンの混合を示した。
【0175】
対照植物において特徴付けられたN-グリカン(図A)に加え、GnTIIIを発現している選択されたトウモロコシ植物由来のグリカン混合物のMALDI-TOF MS(図B)は、ヒトGnTIII酵素の作用から生じるN-連結されたグリカンに割当てられた少なくとも1種のイオンを示した(比較のために表6参照)。このオリゴ糖GN3XM3GN2(i)は、この集団の15%を示し、及びN-連結されたグリカンのトリマンノシルコア構造の3個のマンノースのひとつに各々連結された3個のGlcNAc残基を含む。ここで行ったMALDI-TOFによるグリカン構造の分析は、マンノースにβ(1,2)-又はβ(1,4)-連結されたGlcNAc残基の間を識別することができない。従って、構造GN2FXM3GN2 (g)は、バイセクトしているオリゴ糖を有するかどうか又はどの程度有するかは、明らかではなかった。これは、GnTIIIトウモロコシにおいて、対照トウモロコシ植物に比べ増加している(23%対5%対照)。これらの構造は、正常及びバイセクト型オリゴ糖の混合物又は単独の化合物であることを明らかにするためには、追加実験が必要である。これに加えて表6に示したように、対照及びGnTIIIトウモロコシ植物のグライコフォームの比較から、FXM3GN2を収容する構造の量は1/2に減少され(59から30)、及び2個またはそれよりも多いGlcNAc残基を有するグライコフォームの量は、5から38%(対照対GnTIII)に増加することが明らかである。
【0176】
加えて、図14は、対照トウモロコシ(A)及び選択されたGnTIII-トウモロコシ植物の葉から単離された糖蛋白質のN-グリカンのMALDI-TOF質量スペクトルの比較を示している。GnTIIIトウモロコシ植物は、ヒトGnTHI遺伝子配列による形質転換から得、及び選択は、c-mycタグ又はE-PHAレクチンのいずれかを使用するウェスタンブロッティングにより行った。構造及び略号に関しては、表6参照のこと。
【0177】
本発明は、本明細書に説明された、特定の方法、プロトコール、細胞株、ベクター、及び試薬などに限定されず、変動されることが理解される。本明細書において使用された技術用語は、具体的態様のみを説明する目的で使用され、並びに本発明の範囲を制限することは意図していないことも理解される。本明細書に使用され及び添付された「特許請求の範囲」内で、別所に明確に記されない限りは、単数形("a"、"an"及び"the")は、複数の意味を含むことは注意されなければならない。
【0178】
別所に定義しない限りは、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野の通常の業者により通常理解されるような意味を有する。
【0179】
本明細書において説明され及び請求された発明は、本明細書において説明された具体的態様により範囲が制限されるものではなく、これらの態様は、本発明のいくつかの局面を例証することが意図されている。いずれか同等の態様は、本発明の範囲内で意図されている。実際、本明細書に示され及び説明されているそれに追加される本発明の様々な変更は、前記説明から当業者には明らかであろう。このような変更も、添付された「特許請求の範囲」の範囲内に収まることが意図されている。
様々な参考文献が本明細書に引用され、それらの開示もその全体が本明細書に参照として組入れられている。
【0180】
【表1】

【0181】
【表2】

【0182】
【表3】

【0183】
【表4】

【0184】
【表5】

【0185】
【表6】

【0186】
【表7】

【0187】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類UDP-N-アセチルグルコサミン:β-Dマンノシドβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニル転移酵素(GnTIII)の酵素を含む、植物宿主細胞系。
【請求項2】
前記GnTIIIが、ヒトGnTIIIである、請求項1記載の植物宿主系。
【請求項3】
前記系が、植物の一部である、請求項1記載の植物宿主系。
【請求項4】
前記系が、細胞、葉、胚芽、カルス、茎、果皮、プロトプラスト、根、塊茎、穀粒、胚乳及び胚からなる群より選択される植物の部分である、請求項1記載の植物宿主系。
【請求項5】
前記系が、植物全体である、請求項1記載の植物宿主系。
【請求項6】
異種糖蛋白質を更に含む、請求項1記載の植物宿主系。
【請求項7】
前記異種糖蛋白質の蛋白質が、抗体又はその断片を含む、請求項5記載の植物宿主系。
【請求項8】
前記異種糖蛋白質又はそれらの機能性断片が、バイセクト型オリゴ糖を含む、請求項5記載の植物宿主系。
【請求項9】
前記異種糖蛋白質が、ガラクトース残基を伴うバイセクト型グリカンを含む、請求項5記載の植物宿主系。
【請求項10】
前記植物が、タバコ植物である、請求項1記載の植物宿主系。
【請求項11】
N-グリカン生合成を提供する輸送体及び酵素からなる群より選択される機能性蛋白質を更に含む、請求項1記載の植物宿主系。
【請求項12】
前記酵素が、(ヒト)β-1,4ガラクトシルトランスフェラーゼである、請求項11記載の植物宿主系。
【請求項13】
増加したガラクトース残基数を有する異種糖蛋白質を更に含む、請求項11記載の植物宿主系。
【請求項14】
哺乳類GnTIII蛋白質をコードする核酸配列を含む植物宿主系。
【請求項15】
哺乳類GnTIII蛋白質をコードする核酸配列を含むベクターを含む植物宿主系。
【請求項16】
N-グリカン生合成を提供する輸送体及び酵素からなる群より選択される機能性蛋白質をコードしている核酸配列を更に含む、請求項15記載の植物宿主系。
【請求項17】
a)異種糖蛋白質を発現している植物を、請求項5記載の植物と交配する工程、b)該交配から後代を収穫する工程、及びc)所望の後代植物を選択する工程を含む、方法。
【請求項18】
前記所望の後代植物が、バイセクト型オリゴ糖を有する該異種糖蛋白質の蛋白質を発現する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記植物宿主系が、トランスジェニック植物である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
通常植物には存在しないGnTIIIをコードしている核酸配列、及び異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を植物宿主系に導入する工程、並びに該異種糖蛋白質を単離する工程を含む、バイセクト型オリゴ糖を有する異種糖蛋白質の取得方法。
【請求項21】
前記核酸配列が、植物細胞へ導入され、及び該植物細胞が植物へ再生される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記核酸配列が、該植物宿主系を、通常植物には存在しないGnTIIIをコードする(核)酸配列、及び異種糖蛋白質(glycopraxein)をコードしている核酸配列を含むベクターにより形質転換することにより、該植物宿主系に導入される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記核酸配列が、該植物宿主系の、通常植物には存在しないGnTIIIをコードする核酸配列、及び異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を含むベクターによる形質転換により、植物宿主系へ導入される、請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記核酸配列が、該植物の、通常植物には存在しないGnTIIIをコードしている核酸配列を含むベクター、及び異種糖蛋白質をコードしている核酸配列を含むベクターによる形質転換により、植物宿主系へ導入される、請求項20記載の方法。
【請求項25】
請求項21から得た再生された植物を栽培することを含む、バイセクト型オリゴ糖を有する異種糖蛋白質の取得方法。
【請求項26】
a)請求項6記載の植物宿主系を栽培する工程、並びにb)該植物を収穫し及び分別する工程を含む、所望の糖蛋白質の取得方法。
【請求項27】
請求項19記載の方法により入手可能な植物。
【請求項28】
a)N-グリカン生合成を提供する輸送体又は酵素からなる群より選択される機能性蛋白質を含む植物を、請求項5記載の植物と交配する工程、b)該交配から後代を収穫する工程、及びc)所望の後代を選択する工程を含む、植物宿主系を得る方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法により得られる、トランスジェニック植物。
【請求項30】
a)該異種糖蛋白質を発現している該植物宿主システムに、GnTIIIをコードする核酸配列、及び通常は植物に存在しない輸送体又は酵素からなる群より選択される配列を導入する工程、並びにb)該糖蛋白質を単離する工程を含む、植物宿主系において発現された異種糖蛋白質のガラクトシル化を増加する方法。
【請求項31】
バイセクト型オリゴ糖を含む、植物由来の糖蛋白質。
【請求項32】
所望の糖蛋白質又はそれらの機能性断片を作成するために、請求項1〜16記載の植物宿主系を使用する方法。
【請求項33】
前記糖蛋白質又はそれらの機能性断片が、バイセクト型オリゴ糖を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
請求項19記載の方法により得られた、植物-由来の糖蛋白質又はそれらの機能性断片。
【請求項35】
医薬組成物の製造のための、請求項31記載の糖蛋白質又はそれらの機能性断片の使用方法。
【請求項36】
請求項31記載の糖蛋白質又はそれらの機能性断片を含有する組成物。
【請求項37】
GnTIIIの活性部位及び蛋白質の膜貫通領域を含む単離されたハイブリッド蛋白質であり、該蛋白質が、真核細胞の小胞体又はゴルジ体に常在する蛋白質。
【請求項38】
真核細胞の小胞体又はゴルジ体に常在する該蛋白質が、酵素である、請求項37記載の蛋白質。
【請求項39】
真核細胞の小胞体又はゴルジ体に常在する該蛋白質が、グリコシルトランスフェラーゼである、請求項37記載の蛋白質。
【請求項40】
真核細胞の小胞体又はゴルジ体に常在する該蛋白質が、マンノシダーゼI、マンノシダーゼII、GnTI、GnTII、XylT及びFucTからなる群より選択されるグリコシルトランスフェラーゼである、請求項37記載の蛋白質。
【請求項41】
真核細胞の小胞体又はゴルジ体に常在する該蛋白質が、植物蛋白質である、請求項37記載の蛋白質。
【請求項42】
請求項31記載の蛋白質をコードしている単離された核酸配列。
【請求項43】
請求項42記載の単離された核酸配列を含むベクター。
【請求項44】
請求項42記載の単離された核酸配列を含む植物。
【請求項45】
更に、異種糖蛋白質をコードする核酸配列を含む、請求項44記載の植物。
【請求項46】
ガラクトースによりN-連結されたグリカンを伸長する能力を伴う異種糖蛋白質を発現することが可能であるトランスジェニック植物を提供する方法であり:
トランスジェニック植物を、請求項44記載の植物と交配する工程、該交配からの後代を収穫する工程、並びに該組換え蛋白質を発現し及び通常植物には存在しない(哺乳類)N-グリカン生合成に関与した機能性(哺乳類)酵素を発現している所望の後代植物を選択する工程を含む、前記方法。
【請求項47】
ガラクトースによりN-連結されたグリカンを伸長する能力を伴う異種糖蛋白質を発現することが可能であるトランスジェニック植物を提供する方法であり、請求項42記載の核酸配列及び該異種糖蛋白質をコードする核酸配列を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項48】
a.i)植物細胞、及びii)GNTIII酵素をコードする核酸を含む発現ベクターを提供する工程;並びに
b. 該発現ベクターを、該植物細胞に、該酵素が発現されるような条件下で導入する工程を含む、方法。
【請求項49】
GNTIIIをコードしている該核酸が、配列番号:1の核酸配列を含む、請求項22記載の方法。
【請求項50】
a.i)植物細胞、ii)GNTIII酵素をコードしている核酸を含む第一の発現ベクター、及びiii)異種糖蛋白質をコードしている核酸を含む第二の発現ベクターを提供する工程;並びに
b.該第一及び第二の発現ベクターを、該植物細胞へ、該ハイブリッド酵素及び該異種蛋白質が発現される条件下で導入する工程を含む、方法。
【請求項51】
前記異種蛋白質が、抗体又は抗体断片である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
a)i)第一の発現ベクターを含む第一の植物であり、該第一のベクターがGNTIII酵素をコードしている核酸を含むもの、及びii)第二の発現ベクターを含む第二の植物であり、該第二のベクターが、異種蛋白質をコードする核酸を含むものを提供する工程;並びに
b)該第一の植物及び該第二の植物を交配し、該ハイブリッド酵素及び該異種蛋白質を発現している後代を作成する工程を含む、方法。
【請求項53】
第一及び第二の発現ベクターを含む植物であり、該第一のベクターが、GNTIII酵素をコードしている核酸を含み、該第二のベクターが、異種蛋白質をコードしている核酸を含む、前記植物。
【請求項54】
前記異種蛋白質が、抗体又は抗体断片である、請求項53記載の植物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B−1】
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【図5B−2】
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【図5B−3】
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【図5B−4】
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【図5B−5】
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【図5B−6】
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【図6A】
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【図6B−1】
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【図6B−2】
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【図6B−3】
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【図6B−4】
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【図6B−5】
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【図6B−6】
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【図7A】
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【図7B−1】
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【図7B−2】
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【図7B−3】
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【図7B−4】
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【図8A】
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【図8B−1】
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【図8B−2】
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【図8B−3】
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【図8B−4】
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【図8B−5】
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【図8B−6】
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【図8B−7】
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【図8B−8】
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【図8B−9】
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【図8B−10】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−279383(P2010−279383A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177955(P2010−177955)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2003−576608(P2003−576608)の分割
【原出願日】平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願人】(510090760)
【Fターム(参考)】