説明

植物の茎の皮剥装置

【課題】 イタドリやフキなど植物の茎を食材として提供する際、その茎の表皮を剥ぎ取る必要があるが、これをなるだけ人手に頼ることなく機械的に処理できる装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 固定された軸パイプ1を軸心として回転する回転ローラー2と、それにセットされた歯車3及び動力伝達プーリー5から構成した植物の茎の皮剥装置を基本構成として提供する。それぞれの軸パイプ1にはEより吸引力を与え、その軸パイプ1に施した吸引窓1aから回転ローラー2の吸引口2aに吸引力を伝達する。また動力伝達プーリー5からの回転動力は、歯車5を介して回転ローラー2が同回転数で互いに逆回転するようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山菜であるイタドリ(虎杖)やフキ(蕗)等の茎、並びにサツマイモ(薩摩芋)の葉の付け根の茎やヅイキの茎等、あらゆる植物の茎を食する時は、ほとんどの場合その表皮を取り除く必要がある。しかしながら、これらの作業は人手による大変な労力と、それぞれの植物の茎が持つ特有の刺激成分により、手の肌荒れなどを引き起こすこともあり厄介である。従って、これらの課題を解決し、日本古来の食文化の持つ風味豊かな食材として安価に提供する為に、この茎の表皮を剥離することを目的とした装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イタドリやフキ並びにサツマイモやズイキ等の植物の茎を食材として利用する場合、茎の表皮は堅いため食には適さず取り除く必要がある。従来はこれらの表皮を剥ぎ取る作業の機械はおろか道具すら満足のいくものが無い状況で、一本一本を全て手作業に頼っているのが現状である。従って、作業性は極度に悪く、しかもイタドリ等は酸味が多いため手の肌荒れに繋がり、ズイキ等は肌に刺激を受け痒みを伴う等不快感も生じる。しかしながら、これらを解決する為の装置の提案はこれまで見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
昔紙の原料となる楮の皮剥などは、茎ごと一旦蒸し釜で蒸して端の部分を少し茎から皮を剥がし、後は割竹の間に茎を挟み込んで、しごきながら剥離してゆく方法がよく見かけられた。
【0004】
しかし、この方法では茎の柔らかいイタドリやフキ並びにサツマイモやズイキ等の茎には不向きであり、しかも楮の皮と比較すると皮の円周方向の張力が弱いため、このような方法で一気に剥ぎ取ることは不可能である。
【0005】
従って、皮の張力が円周方向より遙かに強い茎の軸方向に剥離する必要があり、しかも全周同時になるだけ人の手に頼ることなく、また茎に傷を付ける刃物など一切使用せず、自動でこれら茎の表皮を除去する方法が望まれる。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解消するため、茎端面全周の表皮を少しだけ剥離し、その剥離された表皮をある構造物体に空気の負圧を与えて吸着させ、その構造物体を物理的に移動さすことで、順次皮を茎から引き剥がすことができる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、一方の先端を塞いだ2本の固定軸パイプを設け、それぞれに回転するローラーを出来るだけ少ない嵌めあいで嵌め込み、その回転ローラーの軸方向中央部分に所定の幅で回転ローラー円周上全面に空気の吸引口を多数穿ち、その吸引口全面が接触する軸パイプの相対する近接部分に、それぞれ任意の円弧幅で吸引窓を設け、それぞれの回転ローラーを等速逆回転させると共に、それぞれの軸パイプの他方から掃除機などで吸引するよう一体化して配置し構成した、植物の茎の皮剥装置を基本構成として提供する。
【0008】
具体的には、一方の先端を塞いだパイプ状の2本の軸パイプ両端を、両軸が水平かつ平行になるようにある間隔でしっかりと固定し、その両軸の他端からは掃除機などの吸引装置で吸引できるようにしてある。
【0009】
一方、その軸パイプに出来るだけ少ない嵌めあいで嵌め込まれる2個の回転ローラーは、その軸方向の中央部分に当該植物の茎の大きさに応じた半円状のくぼみを全周に渡って設け、2個のローラーを近接させたとき円弧を形成するようにしてある。
【0010】
その半円状のくぼみの部分全面には、軸穴に向かって多数の吸引口を穿ち、吸引力を伝達出来るようにしてある。
【0011】
また、2本の軸パイプには、その回転ローラーのくぼみ部分に設けた多数の吸引口が軸パイプと接する部分で、かつ軸パイプと軸パイプの外周が一番接近している位置に、円周方向に対して適切な幅の吸引窓を設け、吸引力を回転ローラーの吸引口に導くようにしてある。
【0012】
更に、回転ローラーには、それぞれに同じ歯数の歯車を取り付けかみ合わせてあり、どちらかの回転ローラーに回転動力を伝えることにより、お互いが同じ回転数で逆回りするようにしてある。
【0013】
上記構成の本発明によれば、対象とする植物の茎の一端面全周の皮を少しだけ剥ぎ起こし、2個の相対する回転ローラーの吸引口を持つ円弧状の部分に差し込むと、皮は軸パイプに設けた吸引窓を回転ローラーの吸引口が通過する間は回転ローラーに吸着されたまま回転するため、茎より剥ぎ取られ、かつ茎はその弾みで自然に皮を剥ぎ取られたまま抜け出て行くこととなる。
【0014】
剥ぎ取られた皮は、軸パイプに施された吸引窓を回転ローラーの吸引口が通過する間は回転ローラーと共に吸着されたまま回転するが、前記吸引窓を過ぎると回転ローラーの吸引口は吸着力を失うため、回転ローラーから離れてゆくこととなり処理ができる。
【0015】
以下図面を用いて本発明にかかる植物の茎の皮剥装置について具体的な実施形態の一例を説明する。図1は皮剥機として一体化した植物の茎の皮剥装置の平面図で、図2は図1におけるA−A線に沿う断面のB矢視図、図3は図2におけるC−C線に沿う軸パイプ断面のC矢視図である。1は回転の軸となる軸パイプ、2は軸パイプを軸として回転する回転ローラー、3は回転ローラーと共に回転する歯車、5は一方の軸に動力を伝達する動力伝達プーリー、7は軸パイプを固定する軸パイプ締付け金具、9は軸パイプを固定する軸パイプ固定台である。
【0016】
軸パイプ1は、一方の先端は塞がれ、他方の端からは矢印のE方向に向けて掃除機などで吸引できる様になっている。また図2と図3の1aは、両軸パイプの相近接する部分のそれぞれに設けた吸引力を伝達するための吸引窓である。
【0017】
回転ローラー2は、中央部分に半円状のくぼみを全周にわたって設け、その全面に図1と図2に示す2aなる吸引口を多数穿ち、軸パイプ1を軸心として回転する。
【0018】
歯車3は、両者とも同形同歯数の歯車で、それぞれの回転ローラーに歯車セットボルト4でセットされており、回転ローラーそれぞれが同数で逆回転するように作用する。
【0019】
動力伝達プーリー5は、どちらか片方の回転ローラーにプーリーセットボルト6でセットされており、装置に回転動力を伝達する。
【0020】
軸パイプ固定台9には、軸パイプ締付け金具7及び軸パイプ締付けボルト8で、軸パイプ1が水平かつ平行に固定されている。
【0021】
かかる一体化された植物の茎の皮剥装置によれば、表皮を剥ぎ取ろうとする種類の茎の一端面から、全周にわたって少しだけ表皮を剥ぎ起こし、その部分を図1に示す回転ローラー2の中心部にある円形部分に差し入れる。
【0022】
その際、軸パイプ1のEは掃除機などに連結して強力に吸引させており、その吸引力は軸パイプ1の吸引窓1a及び回転ローラー2の吸引口2aを通して、図1に示す回転ローラー2の中心部にある円形部分にも伝わっている。
【0023】
また回転ローラー2は、軸パイプ固定台9及び軸パイプ締付け金具7並びに軸パイプ締付けボルト8により、水平かつ平行に固定された軸パイプ1を軸心として、動力伝達プーリー5及び歯車3を介して茎を引き込む方向に回転させている。
【0024】
従って、図1に示す回転ローラー2の中心部にある円形部分に茎が差し込まれた際、予め茎の一部の剥ぎ取られた表皮が、回転ローラー2の多数の吸引口2aにそれぞれ吸着されたまま軸パイプ1に施された吸引窓1aを通過するまで回転するので、表皮は茎から剥ぎ取られる。
【0025】
これら一連の動作により、表皮は茎から順次剥ぎ取られ、軸パイプ1に施された吸引窓1aを回転ローラー2の吸引口2aが通過した後は、吸引力圏外に至るため回転ローラー2から離れて行き始末される。
【0026】
また茎の表皮を回転ローラー2で巻き取りながら剥離して行くため、茎も自然に回転ローラー2の回転と共に送り出されて行く。
【発明の効果】
【0027】
以上記載した本発明によれば、目的とする植物の茎の全長にわたり表皮を剥離したい場合、その茎の一端面全周の表皮を少しだけ剥ぎ起こし、回転するローラー間の挿入口に差し込むだけで、後は自動的に全長の表皮を剥ぎ取り、表皮の剥ぎ取られた茎は挿入口の反対側へ排出されるため、ほとんど人手に頼ることなく植物の茎の表皮剥離作業ができる。
【0028】
従って、かなりの労力が軽減されると共に、それぞれの植物が持つ固有の刺激成分から手などの皮膚を守ることに繋がり、植物の茎を食材として提供する場合などの大幅なコストダウンとなり、イタドリなどの山菜が従来になく市場性を帯びて中山間地域の産業興しにも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる植物の茎の皮剥装置に関する平面図で、歯車部分のみ断面表示。
【図2】図1のA−A線に沿う断面のB矢視図
【図3】図2のC−C線に沿う軸パイプ断面のD矢視図
【符号の説明】
【0030】
1…軸パイプ
2…回転ローラー
3…歯車
4…歯車セットボルト
5…動力伝達プーリー
6…プーリーセットボルト
7…軸パイプ締付け金具
8…軸パイプ締付けボルト
9…軸パイプ固定台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吸引力を用いた植物の茎の皮剥装置。
【請求項2】
空気の吸引口を設けた回転ローラーに、植物の茎の皮を吸着しながら剥離させる請求項1に記載の皮剥装置。
【請求項3】
空気の吸引口を設けた回転ローラーの固定軸心パイプより、間歇的に当該ローラーの吸引口に空気の流れを開口せしめることを特徴とする請求項2に記載の皮剥装置。
【請求項4】
空気の吸引口を設けた回転ローラー単体、もしくは複数個設けたことを特徴とする請求項3に記載の皮剥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−202497(P2007−202497A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26445(P2006−26445)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(300062821)パシフィックソフトウェア開発株式会社 (2)
【Fターム(参考)】