説明

植物マット用フレーム

【課題】植物マット全体に水をまんべんなく行き渡らせる給水が可能で、かつ水を飛散させることなく効率的な給水が可能な、縦横自由に架けたり自立させたりすることが出来る植物マット用フレームを提供する。
【解決手段】前面が開放された箱型の枠体であって底部に水溜部を設けたフレーム本体と、フレーム本体に収納した植物マットに水を吸収させるためにフレーム本体内に取り付けた給水体と、フレーム本体の外部から供給される水を給水体に供給するためにフレーム本体内に設けられた給水部と、フレーム本体に収納される植物マットを固定するためにフレーム本体の前面に嵌め込む化粧フレームとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性ポリマーを利用した植物マットを絵画や写真の額縁のように縦置きに保持するための植物マット用フレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、オフィス空間での室内緑化が注目されている。室内緑化は、オフィスの景観を向上させるとともに、疲れた目や心を癒す効果がある。スペースに余裕のないオフィスであっても、植物を身近に置くことによって、室内緑化の効果を期待することが出来る。
【0003】
現在、オフィスで身近に植物を導入するために通常行われているのは、鉢植えの植物を置くことである。しかし、スペースにあまり余裕のないオフィスに鉢植えを導入するには、以下のようないくつかの問題がある。
・鉢を置くスペースが必要である。鉢植えの植物は通常床に置かれ、卓上や壁面の緑化に利用するのはむずかしい。
・水やりの管理が必要であり、さらに水がこぼれないように受け皿などが必要である。
・鉢植えの植物では土がこぼれる可能性があり、オフィスを汚す心配がある。
・土を用いると、害虫の発生や、腐敗などによる悪臭の発生の心配がある。
【0004】
そこで、本願の発明者は、土の代わりに吸水性ポリマーを利用した植栽用マットに注目した。植栽用マットとは、繊維状又はスポンジ状の物質内部にジェル化した吸水性ポリマーを混入してマット状にしたものである。あらかじめ一定の大きさに切断されたこの植栽用マットに植物を植えて(植物を植えてから一定の大きさに切断してもよい)土を一切利用しないようにすれば、上記した問題を解決することが出来る可能性がある。
【0005】
植栽用マットに使用される植物用保水剤は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3などに記載されている。また、特許文献4では、高吸水性樹脂のジェル層と植物の根が絡み合って一体化した植物マットが提案されており、さらに特許文献4の図3において、この植物マットを額縁に納めて写真立てのように設置することが提案されている。このように、植栽用マットに植物を一体化させた植物マットを縦に置くことが出来るのは、吸水性ポリマーを使用しているからこそ可能になるものであり、卓上に写真立てのように置いたり、オフィスの壁面に絵の額縁のように架ければ、オフィスにおける緑化効果を見込めるだけでなく、外観的に非常に魅力的であり、装飾効果も高い。
【0006】
図1は、卓上用の植物マットを収納したフレームの例を示している。植栽用マットに植物3を植えこんだ矩形状の植物マット2をフレーム1内に納め、周囲に化粧フレーム12を嵌め込んで固定し、写真立て5を利用して卓上に置いたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号WO97/008938号公報
【特許文献2】国際公開番号WO1998/005196号公報
【特許文献3】特開2007−319029号公報
【特許文献4】特開2010−041999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
植物マットをフレームに納めて壁面に飾ったり卓上に縦置きしたりするためには、下記のようないくつかの問題を解決する必要がある。これらの問題は、主として、吸水性ポリマーを利用したジェルを用いることに起因している。
・フレームを用いて植物マットを壁や卓上に設置するためには、植栽用マットの厚さを薄くすることが望ましく、そうすると、水分の表面蒸散が大きく、保水期間が短くなる。
・フレームを室内の卓上や壁面に設置するので、水やりに際して周囲に水が飛散することは絶対に避ける必要がある。
・ジェル特有の問題として、植物マット中のジェルのある部位で吸収された水は、その部位から他の部位に浸透していくことはないので、マット全体に水を行きわたらせる給水方法が求められる。
・植物マットの継ぎ目のわずかな隙間が一番空気にふれやすく水分が蒸発しやすい。また、何種類かの植物を組み合わせて植栽した場合に、それぞれの種類により水を吸収する速さが異なることから、植物マットにおける水分の蒸発の度合いが場所により差を生じる。このような、場所による水分の蒸発の差を考慮した給水を行う必要がある。
・植物マットが劣化した場合に、簡単に交換できるようにすることが望ましい。
【0009】
なお、額縁タイプのフレームに納めた植物マットのサンプルはすでに作成されているが、水やりを確実に行うには、植物マットを一旦とりはずしてたらいなどに張った水に植物マット全体を浸すか、ホルダーに納めたまま表面全体に霧吹きなどで水を吹き付けるのが現状であり、効率が悪く手間がかかるとともに、水が周囲に飛散する心配がある。
【0010】
本願発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、本願発明の課題は、縦置きするための植物マット用フレームについて、植物マット全体に水をまんべんなく行き渡らせる給水が可能で、かつ水を飛散させることなく効率的な給水が可能な、植物マット用フレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明による植物マット用フレームは、前面が開放された箱型の枠体であって底部に水溜部を設けたフレーム本体と、フレーム本体に収納した植物マットに水を吸収させるためにフレーム本体内に取り付けた給水体と、フレーム本体の外部から供給される水を給水体に供給するためにフレーム本体内に設けられた給水部と、フレーム本体に収納される植物マットを固定するためにフレーム本体の前面に嵌め込む化粧フレームと、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明による植物マット用フレームは、植物マット全体に水をまんべんなく吸収させることか可能で、かつ水を飛散させることなく効率的な給水が可能である。また、植物マットが劣化した場合に化粧フレームをはずすだけで簡単に交換が出来る。さらに、卓上に写真立てのように設置したり、壁に額縁のように架けたりすることが可能なので、装飾効果が高い。従って、スペースに余裕のないオフィスの緑化の手段として導入効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、植物マットを収納したフレーム本体を写真立てを利用して設置した例を示す図である。
【図2】図2は、実施例1による植物マット用フレームを分解して模式的に示した図である。
【図3】図3は、実施例1による植物マット用フレームの断面図である。
【図4】図4は、実施例2による植物マット用フレームを分解して模式的に示した図である。
【図5】図5は、実施例2による植物マット用フレームの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による植物マット用フレームは、前面が開放された箱型の枠体であって底部に水溜部を設けたフレーム本体と、フレーム本体に収納した植物マットに水を吸収させるための給水体と、フレーム本体の外部から給水体に水を供給するための給水部と、フレーム本体に収納される植物マットを固定するためにフレーム本体の前面に嵌め込む化粧フレームとを備えている。以下、図面を参照して本発明の実施例1及び実施例2について説明する。
【0015】
<実施例1>
図2は、実施例1による植物マット用フレームを分解して模式的に示した図であり、図3は、実施例1による植物マット用フレームを、植物マット2を収納した状態(植物3は図示を省略)で切断して示す断面図である。
【0016】
植物マット用フレームは、植物マット2を収納するフレーム本体11と、フレーム本体11に植物マット2を圧接して収納するためにフレーム本体11の前面に嵌め込む化粧フレーム12とを備えている。
【0017】
フレーム本体11は、前面が開放された箱型の枠体であり、底部には横手方法に沿って形成された溝状の水溜部13が設けられている。フレーム本体11は、壁面にも設置できるように、出来るだけ軽量であり、かつ防水機能に富む材質で作成するのが望ましい。例えば、フレーム本体11の全体をウレタン樹脂で構成することが出来る。また、水溜部13は、フレーム本体11に給水した水がオーバーフローして、周囲に水がこぼれないように設けられている。水溜部13の内部に吸水性ポリマーを配置して、溢れそうになる水を吸収するようにすれば、よりオーバーフローを確実に防ぐことができる。吸水性ポリマーに吸収された水は腐敗を防ぐことができるので、吸収された水の腐敗によるにおいの発生も防ぐことができる。
【0018】
実施例1による植物マット用フレームでは、植物マット2に対する給水をフレーム本体11の上部から重力による落下により行うようにしている。図2に示した例では、フレーム本体11内の上部に給水タンク15を取り付け、フレーム本体11から貫通する給水口16を給水タンク15に設けている。また、植物マット2への給水は、給水タンク15に接続され、植物マット2の上部及び背面に沿うように配置されている給水チューブ17から行う。
【0019】
給水チューブ17は、しみ出しパイプまたはドリップチューブなど、適当な間隔で水がポタポタと点滴のように浸み出す孔が設けられている管状のものを使用することが出来る。給水チューブ17に設けられている孔の口径は、植物マット2に対する適度な給水量に応じて適度な大きさに設定する。
【0020】
植物マット2において、植物を植えるために使用する植栽用マット21は、吸水性の高いスポンジ状の物質(天然繊維、合成樹脂または合成繊維など)に吸水性ポリマーの粉末を一体化させて作成する。この植栽用マット21に、植物を密着させるように植え込み、2〜3か月順化養生したものを植物マット2として使用する。
【0021】
植物マット2は、吸水性ポリマーを使用しているため、一カ所で供給され吸収された水は植物マット2全体に行き渡ることはなく供給場所でのみ吸収しつくされてしまう。従って、実施例1では、植物マット2全体に水を吸収させるために、植物マット2の上方及び背面に給水チューブ17を這わせるようにして、給水チューブ17に設けられた複数の孔からしみだす水を植物マット2に吸収させるようにしている。
【0022】
なお、図2及び図3に示した例では、植物マット2が給水チューブ17を介してフレーム本体11の背面内部に当接するようになっているが、植物マット2の厚さが薄い場合に、同じ大きさの植栽用マット21をさらに給水チューブ17とフレーム本体11との間に挟むようにしてもよい。
【0023】
また、図2及び図3に示した例では、給水タンク15は、横手方向に沿って植物マット2の上部にわたるように設けられているが、給水タンク15の形状はこれに限定されるものではなく、フレーム本体11の上部から給水できるようであれば、配置する場所や形状に特に制限はない。同様に、給水口16も、給水タンク15に外部から給水しやすい個所であれば、配置する場所や形状に特に制限はない。給水タンク15にさらにボールタップ(定位水弁)を設けて給水量を調整出来るようにすれば、不足した水量を自動的に給水できるようになる。
【0024】
<実施例2>
図4は、実施例2による植物マット用フレームを分解して模式的に示した図であり、図5は、実施例2による植物マット用フレームを、植物マット2を収納した状態(植物3は図示を省略)で切断して示す断面図である。
【0025】
植物マット用フレームは、植物マット2を収納するフレーム本体11と、フレーム本体11に植物マット2を圧接して収納するためにフレーム本体11の前面に嵌め込む化粧フレーム12とを備えている。
【0026】
フレーム本体11は、前面が開放された箱型の枠体であり、底部に横手方法に沿って設けられた溝が水溜部13として機能する。フレーム本体11は、壁面にも設置できるように、出来るだけ軽量であり、かつ防水機能に富む材質で作成するのが望ましい。例えば、フレーム本体11の全体をウレタン樹脂で構成することが出来る。また、水溜部13は、フレーム本体11に供給した水を貯水するために設けられている。
【0027】
実施例2による植物マット用フレームでは、植物マット2に対する給水をフレーム本体11内部に配置された吸水性繊維等を用いて毛細現象により行うようにしている。図4に示した例では、フレーム本体11の上部に、フレーム本体11の外部から給水するための給水口18を設けている。給水口18から供給された水は、水溜部13に貯留される。また、植物マット2への給水は、一端が水溜部13に伸長されている複数の紐状や棒状で硬質の吸水性繊維19によって行われている。吸水性繊維19は、一定の間隔にて格子状に配置することにより、植物マット2の背面に沿うように配置されている。吸水性繊維19は、毛細現象により水溜部13に貯留されている水を吸水して、植物マット2全体に水を浸透させるようになっている。
【0028】
植物マット2において、植物を植えるために使用する植栽用マット21は、吸水性の高いスポンジ状の物質(天然繊維、合成樹脂または合成繊維など)に吸水性ポリマーの粉末を一体化させて作成する。この植栽用マット21に、植物を密着させるように植え込み、2〜3か月順化養生したものを植物マット2として使用する。
【0029】
植物マット2は、吸水性ポリマーを使用しているため、一カ所で供給され吸収された水は植物マット2全体に行き渡ることはなく供給場所でのみ吸収しつくされてしまう。そのため、植物マット2を吸水のために水溜部13の水に直接浸漬させると、浸漬した部分の吸水性ポリマーのみが吸水して膨張し、吸収された水は植物マットの他の部分に浸透していくことはない。従って、実施例2では、植物マット2全体に水を吸収させるために、植物マット2の背面に格子状に配置された吸水性繊維19を這わせるようにして、水溜部13から毛細管現象により吸水性繊維19が吸収した水を植物マット2に吸収させるようにしている。
【0030】
なお、図4及び図5に示した例では、植物マット2が吸水性繊維19を介してフレーム本体11の背面内部に当接するようになっているが、植物マット2の厚さが薄い場合に、同じ大きさの植栽用マット21をさらに吸水性繊維19とフレーム本体11との間に挟むようにしてもよい。
【0031】
また、図4及び図5に示した例では、給水口18を、フレーム本体11上部に横手方向に沿って設けた溝状の形状としているが、この形状に限定されるものではなく、フレーム本体11の外部から水溜部13に給水出来れば、形状や位置に特に制限はない。フレーム本体11内部の上部又は側面部に給水タンクを設けて、給水口から給水タンクに水を導入し、給水タンクから吸水性繊維19に対して水を供給するようにしてもよい。この場合、水溜部13は、給水された水のオーバーフローを防止するために機能する。
【0032】
さらに、吸水性繊維19の代わりに、吸水性繊維や吸水性スポンジや吸水性多孔質セラミック等により作成されたマット状の吸水体を使用することもできる。このマット状の吸水体を植物マットの背面に接するように配置して、水溜部13あるいは給水タンクから毛細管現象により吸収した水を植物マット全体に浸透させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明による植物マット用フレームは、オフィス空間のみならず、家庭内の空間や、病院・飲食店・販売店など、様々な空間において、スペースに余裕がなくても、フレームを縦横自由に架けたり自立させたりすることが出来、手軽に設置できる緑化用のツールとして効果が高い。
【符号の説明】
【0034】
1 植物マット用フレーム
2 植物マット
3 植物
5 写真立て
11 フレーム本体
12 化粧フレーム
13 水溜部
15 給水タンク
16 給水口
17 給水チューブ
18 給水口
19 吸水性繊維
21 植栽用マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開放された箱型の枠体であって底部に水溜部を設けたフレーム本体と、フレーム本体に収納した植物マットに水を吸収させるためにフレーム本体内に取り付けた給水体と、フレーム本体の外部から供給される水を給水体に供給するためにフレーム本体内に設けられた給水部と、フレーム本体に収納される植物マットを固定するためにフレーム本体の前面に嵌め込む化粧フレームと、を備えた、植物マット用フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−115224(P2012−115224A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269968(P2010−269968)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(595089190)習和産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】