説明

植物性繊維含有ボード部材の製造方法

【課題】意匠面における意匠性が向上された植物性繊維含有ボード部材の製造方法を提供する。
【解決手段】植物性繊維と熱可塑性樹脂とを含む基材12と、基材12の少なくとも一部が薄肉化されて構成されるヒンジ6とを備え、ヒンジ6に沿って基材12の一方の面側を谷として折り曲げ可能なラッゲージマット4を製造する方法であって、基材12の両板面を加熱する加熱工程と、基材12の一方の面を表面とし、他方の面を裏面として、加熱工程後、基材12の表面のうちヒンジ6とされる部位を押圧して溝状の表面側凹部26を形成すると共に、基材12の裏面のうちヒンジ6とされる部位を押圧して溝状の裏面側凹部22を形成することでヒンジ6とされる部位を薄肉化する薄肉化工程とを備える。薄肉化工程では、裏面側凹部22の底端部22aの幅に比して表面側凹部26の底端部26aの幅が小さくなるように表面側凹部26と裏面側凹部22とを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む基材と、当該基材の少なくとも一部が薄肉化されて構成されるヒンジと、を備える植物性繊維含有ボード部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を含む基材と、その基材の一部が薄肉化されて構成されるヒンジとを備えるボード部材が知られている。このようなボード部材は、ヒンジに沿って基材が折り曲げられ、例えば車両のトランク内に載置されるラッゲージマットとして利用される。このようなボード部材の従来例として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
また、近年では、熱可塑性樹脂に加え植物性繊維を含む基材を備える植物性繊維含有ボード部材が知られている。植物性繊維とは、植物由来の繊維材料のことであり、植物性繊維としては、ケナフ繊維、ジュート繊維等が使用される。このような植物性繊維含有ボード部材は、天然繊維を使用することにより地球環境にとって有効なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−12505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒンジは基材の一部が薄肉化されて構成されるため、ヒンジには折り曲げ時に大きな応力が加わることとなる。上記の植物性繊維含有ボード部材において基材に薄肉化によるヒンジを設けた場合、折り曲げ時にヒンジに大きな応力が加わることにより、ヒンジに沿って白化が生じ、さらに、ヒンジに沿って繊維材料の毛倒れが生じる虞がある。これにより、意匠面とされるボード部材の表面の意匠性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みて創作されたものである。本発明は、意匠面における意匠性が向上された植物性繊維含有ボード部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される技術は、植物性繊維と熱可塑性樹脂とを含む基材と、前記基材の少なくとも一部が薄肉化されて構成されるヒンジと、を備え、該ヒンジに沿って前記基材の一方の面側を谷として折り曲げ可能な植物性繊維含有ボード部材を製造する方法であって、前記基材の両板面を加熱する加熱工程と、前記基材の前記一方の面を表面とし、前記基材の他方の面を裏面として、前記加熱工程後の前記基材の前記表面のうち前記ヒンジとされる部位を押圧して溝状の表面側凹部を形成すると共に、前記加熱工程後の前記基材の前記裏面のうち前記ヒンジとされる部位を押圧して溝状の裏面側凹部を形成することで前記ヒンジとされる部位を薄肉化する薄肉化工程と、を備え、該薄肉化工程では、前記裏面側凹部の底端部の幅に比して前記表面側凹部の底端部の幅が小さくなるように前記表面側凹部と前記裏面側凹部とを形成する。
【0008】
上記の製造方法によると、薄肉化工程において基材の表面と裏面の両面に凹部を形成することにより、折り曲げ時にヒンジに加わる応力が低減された植物性繊維含有ボード部材を製造することができる。さらに、基材の表面側凹部の底端部の幅を裏面側凹部の底端部の幅より小さいものとすることで、基材の表面側を谷としてヒンジに沿って折り曲げ可能とすると共に、折り曲げ時に裏面側凹部において応力が加わる部分よりも表面側凹部において応力が加わる部分を小さくすることでき、意匠面とされる基材の表面において表面側凹部の白化が低減された植物性繊維含有ボード部材を製造することができる。これにより、意匠面における意匠性が向上された植物性繊維含有ボード部材を製造することができる。
【0009】
前記薄肉化工程では、前記基材を前記表面側凹部及び前記裏面側凹部が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに前記表面側凹部がV字状又はU字状となるように該表面側凹部を形成してもよい。
【0010】
表面側凹部は、折り曲げ時にその底端部に応力が加わるため、底端部において白化が生じ易い。この製造方法によると、表面側凹部の底端部が面状に形成されている場合に比して表面側凹部における白化を生じる部分を小さくすることができる。これにより、意匠面における意匠性が一層向上された植物性繊維含有ボード部材を製造することができる。
【0011】
前記薄肉化工程の前に、前記加熱工程後の前記基材の前記表面に表皮材を貼り合わせる表皮材貼り合わせ工程をさらに備え、前記薄肉化工程では、前記表皮材のうち前記ヒンジとされる部位を押圧して表皮材凹部を形成し、該表皮材を介して前記表面側凹部を形成すると共に、前記基材を前記表面側凹部及び前記裏面側凹部が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに前記表皮材凹部の底端部が前記基材の前記表面より表面側に位置するように該表皮材凹部を形成してもよい。
【0012】
表面側凹部及び表皮材凹部が深くまで形成されていると、基材の表面側を谷として折り曲げ難くなる。上記の製造方法によると、表面側凹部を浅く形成することができ、基材の表面側を谷として折り曲げ易い植物性繊維含有ボード部材を製造することができる。
【0013】
前記薄肉化工程では、前記基材を前記表面側凹部及び前記裏面側凹部が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに前記表面側凹部の開口縁部が前記裏面側凹部の側壁部と重畳する範囲内とされるように前記表面側凹部及び前記裏面側凹部を形成してもよい。
【0014】
この製造方法によると、基材における表面側凹部と裏面側凹部の水平位置をほぼ同じ位置とすることができる。これにより、ヒンジに沿って折り曲げ易い植物性繊維含有ボード部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示される技術によると、意匠面における意匠性が向上された植物性繊維含有ボード部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】車両2の後方の概略図を示す。
【図2】実施形態1に係るラッゲージマット4の全体を表した概略図を示す。
【図3】折り曲げ前の状態における、ラッゲージマット4のヒンジ6の断面図を示す。
【図4】折り曲げ後の状態における、ラッゲージマット4のヒンジ6の断面図を示す。
【図5】ラッゲージマット4の製造方法における加熱工程の断面図を示す。
【図6】ラッゲージマット4の製造方法における薄肉化工程の断面図を示す。
【図7】折り曲げ前の状態における、実施形態2に係るラッゲージマット104のヒンジ106の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
図面を参照して実施形態1を説明する。図1は、車両2の後方の概略図を示している。図1に示すように、車両2の側方にはトランク2aが設けられている。トランク2a内には、ラッゲージマット4(植物性繊維含有ボード部材の一例)が載置されている。ラッゲージマット4は、その上に荷物等を載置する際に床材としての役割を果たすと共に、トランク2a内の美観を整えるための役割を果たしている。なお、トランク2aは、その開口部2bの面積(開口面積)が収容内部のトランク床部2bの面積よりも小さく構成されている。
【0018】
図2は、ラッゲージマット4の全体を表した概略図を示している。図2に示すように、ラッゲージマット4には、主床部8aと、一対の側方床部8bと、ヒンジ6と、前方埋没部8a1と、側方埋没部8b1とが設けられている。主床部8aは、一対の側方床部8bの間に隣接して設けられている。ヒンジ6は、ラッゲージマット4の一部がその厚み方向に押圧されて圧縮されることにより薄肉化された部位であり、主床部8aと側方床部8bとの間に平面視略直線状に設けられている。前方埋没部8a1は、主床部8aの前方の一部が埋没して形成されたものである。側方埋没部8b1は、側方床部8bの一部が埋没して形成されたものである。
【0019】
ラッゲージマット4は、トランク2aに対して出し入れする際に、トランク2aの開口部2bの面積が床部2cの面積よりも小さく構成されているため、そのヒンジ6に沿って表面側(図2の紙面手前側)に折り曲げた状態で出し入れされる。具体的には、主床部8aに対し、側方床部8bが主床部8a側に(例えば車幅方向に対して略垂直となるように)折り曲げられる。そして、トランク2a内にラッゲージマット4が収容されると、折り曲げられた部位が元に戻され、ラッゲージマット4が広げられた状態でトランク床部2cの表面に載置される。従って、ラッゲージマット4は、その表面が意匠面とされる。
【0020】
続いて、ラッゲージマットの構成及びヒンジの構成について説明する。図3は、図2のA−A断面の断面図(折り曲げ前の状態における、ラッゲージマット4のヒンジ6の断面図)であって、ラッゲージマット4をヒンジ6が略直線状に延びる方向と直交する断面で切断したときの断面構成を示している。図4は、折り曲げ後の状態における、ラッゲージマット4のヒンジ6の断面図を示しており、図3に対応する断面の断面構成を示している。
【0021】
ラッゲージマット4は、図3に示すように、基材12と表皮材14とにより構成されている。表皮材14は、基材12の表面に貼り合わされており、例えば不織布によって形成されている。基材12は、熱可塑性樹脂と、植物性繊維とが混合されて形成されている。具体的には、ポリプロピレン(PP)と、ケナフ繊維とが約1:1の割合で含まれている。ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)を用いることができる。ケナフ繊維以外の植物性繊維としては例えば、綿、麻、サイザル、ジュート等から採取した植物性繊維を用いることができる。
【0022】
図3及び図4に示すように、基材12には、ラッゲージマット4のヒンジ6を構成する部位に、表面側凹部26と、裏面側凹部22が設けられている。表面側凹部26は、基材の表面の一部が表側から裏側に向かって凹んだ部位であり、裏面側凹部22は基材12の裏面の一部が裏側から表側に向かって凹んだ部位である。表面側凹部26の深さは約0.5mmとされている。裏面側凹部22の深さは約1.8mmとされている。また、表皮材14の表面には、ラッゲージマット4のヒンジ6を構成する部位に、表皮材凹部24が設けられている。表皮材凹部24は、表皮材14の表面の一部が表側から裏側に向かって凹んだ部位である。表皮材凹部の深さは約0.5mmとされている。表面側凹部26と裏面側凹部22と表皮材凹部24はA−A断面視において重畳するように、ヒンジ6に沿って溝状に形成されている。これらの凹部により、基材12が薄肉化され、ヒンジ6が構成されている。なお、基材12の厚みは約2.8mmであり、ヒンジ6においてはその厚みが約0.5mmとなるまで圧縮されている。
【0023】
表面側凹部26と表皮材凹部24は、図3の断面図に示すように、いずれも断面視V字状を成している。従って、表面側凹部26と表皮材凹部24の最も深い部分である底端部26a、24aは、ヒンジ6に沿って平面視線状(断面視においては点)となっている。一方、裏面側凹部22は、断面視台形状を成している。従って、裏面側凹部22の最も深い部分である底端部22aは、ヒンジ6に沿って平面視面状(断面視においては線状)となっている。このため、図3に示す断面図において、表面側凹部26の底端部26aの幅は、裏面側凹部22の底端部22aの幅に比して小さいものとなっている。底端部の幅がこのような関係となっていると、底端部の幅が小さい側(表面側)を谷として基材12を折り曲げ易くなる。さらに、底端部の幅が小さいほど、ラッゲージマット4の折り曲げ時に応力が加わる部分を小さくすることができるので、白化が生じる部分を低減させることができ、意匠性を向上させることができる。
【0024】
表皮材凹部24の底端部24aは、図3に示すように、基材12の表面12aより表面側(表皮材14の裏面より表面側)に位置している。表皮材凹部24の底端部24aと基材12とがこのような位置関係となっていると、表皮材凹部24の深さを浅いものとすることができる。表皮材凹部24の深さを浅くすることで、表皮材凹部24の両側壁部に沿った面同士が成す角度を大きくすることができる。ここで、ラッゲージマット4をヒンジ6に沿って折り曲げる場合には、ヒンジ6に沿った凹部の両側面同士が接触するまでラッゲージマット4を折り曲げることができる。本実施形態に係るラッゲージマット4では、裏面側凹部22の両側壁部22cが、その両側壁部22cに沿った面同士が成す角度が約60°となるような傾斜となっている。一方で、表皮材凹部24は、その深さが浅く形成されていることで、両側壁部に沿った面同士が成す角度が60°より大きな角度、具体的には90°以上の角度となっている。このため、ラッゲージマット4を、表面側を谷としてヒンジ6に沿って90°より大きな折り曲げ角度で折り曲げることができる。
【0025】
表面側凹部26及び裏面側凹部22は、その開口縁部26b、22bを起点としてそれぞれ形成されている。そして、裏面側凹部22では、開口縁部22bと底端部22aとの間が側壁部22cとなっている。ここで、図3に示すように、表面側凹部26の開口縁部26bの水平位置は裏面側凹部22の開口縁部22bより内側(底端部22a側)に位置している。即ち、表面側凹部26の開口縁部26aは、断面視において裏面側凹部22の側壁部22cと重畳する範囲内に位置している。表面側凹部26の開口縁部26aと裏面側凹部22の側壁部22cとがこのような位置関係となっていると、基材12における表面側凹部26と裏面側凹部22の水平位置をほぼ同じ位置とすることができ、ラッゲージマット4をヒンジ6に沿って折り曲げ易くすることができる。
【0026】
ラッゲージマット4を折り曲げる場合、図4に示すように、ヒンジ6に沿って折り曲げることができる。そして、上記したように、表面側凹部26及び表皮材凹部24はその深さが浅いものとされているので、ラッゲージマット4を基材の表面側を谷として90°を超える角度まで折り曲げることができる。このため、ラッゲージマット4は、トランク2a内に収容する際に収容し易いものとなっている。
【0027】
続いて、ラッゲージマット4の製造方法について説明する。図5は、ラッゲージマット4の製造方法における加熱工程の断面図を示している。図6は、ラッゲージマット4の製造方法における薄肉化工程の断面図を示している。本方法では、まず、加熱工程を行う。加熱工程では、図5に示すように、上側加熱機34と下側加熱機32との間に基材12をセットし、基材12の両板面を加熱する。加熱工程における加熱温度は170℃〜230℃とする。
【0028】
次に、表皮材貼り合わせ工程を行う。表皮材貼り合わせ工程では、図6に示すように、基材12の表面に表皮材14を重ね合わせ、表皮材14を貼り合わせる。次に、薄肉化工程を行う。薄肉化工程では、図6に示すように、加熱工程によって加熱された基材12を、下型52と上型54の間に載置して冷間プレスする。下型52は、下型ステージ42の表面に設けられており、その表面の一部には、表側に突出する下側押圧部62が形成されている。下側押圧部62は、裏面側凹部22を形成するための型となるものであり、その輪郭は基材12の裏面に形成される裏面側凹部22の輪郭と一致している。また、下型52の表面の一部であって下側押圧部62の外側には、埋没部形成凹部52aが形成されている。一方、上側54は、上型ステージ44の裏面に設けられており、その裏面の一部には、裏側に突出する上側押圧部64が形成されている。上側押圧部64は、表面側凹部26及び表皮材凹部24を形成するための型となるものであり、その輪郭は基材12の表面及び表皮材14の表面に形成される表面側凹部26及び表皮材凹部24の輪郭と一致しており、先端がV字状に尖った形状を成している。また、上型54の表面の一部であって上側押圧部62の外側には、埋没部形成凸部54aが形成されている。
【0029】
薄肉化工程では、具体的には、まず、基材12のヒンジ6とされる部位を下側押圧部62の位置と一致させるように、加熱工程後の基材12を下側押圧部62の表面に載置する。次に、基材12のヒンジ6とされる部位を上側押圧部62の位置と一致させるように上型の位置をセットし、上型54を下方へ下ろしていく。すると、まず、埋没部形成凸部54aが表皮材14の表面の一部と接触し、上型54が下降するに連れて、表皮材14及び基材12が埋没部形成凸部54aによって押圧されていく。基材12の裏面側に押圧された表皮材14及び基材12は、埋没部形成凸部52a内に押し出される。これにより、表皮材14の一部及び基材12の一部が賦形され、側方埋没部8b1が形成される。なお、上型54には、前方側(図6の紙面奥側)に図示しない他の埋没部形成凸部が形成されており、上型54が下降することにより、この埋没部形成凸部によって表皮材14の前方側の一部及び基材12の前方側の一部が賦形され、前方埋没部8a1が形成される。
【0030】
また、上型54が下降すると、上側押圧部64の先端が表皮材14の表面まで到達する。上型54がさらに下降すると、上側押圧部64によって表皮材14の表面の一部が押圧され、これにより、下側押圧部62によって基材12の裏面の一部も押圧され始める。上側押圧部64によって押圧された表皮材14の表面の一部及び基材12の表面の一部は、圧縮され、これにより、上側押圧部64の輪郭に沿って断面視V字状の表皮材凹部24及び表面側凹部26が形成される。一方、下側押圧部62によって押圧された基材12の裏面の一部は、圧縮され、これにより、下側押圧部62の輪郭に沿って断面視台形状の裏面側凹部22が形成される。
【0031】
以上の工程により、ラッゲージマット4を製造することができる。上記の製造方法により製造されたラッゲージマット4は、表面側を谷としてヒンジ6に沿って折り曲げることができる。さらに、ラッゲージマット4の折り曲げ時に表面側凹部26及び表皮材凹部24において応力が加わる部分が小さいので、表面側凹部26及び表皮材凹部24の白化を抑制することができ、意匠面における意匠性を向上させることができる。
【0032】
以上のように本実施形態に係るラッゲージマット4の製造方法では、薄肉化工程において基材12の表面と裏面の両面に凹部を形成することにより、折り曲げ時にヒンジ6に加わる応力が低減されたラッゲージマット4を製造することができる。さらに、基材12の表面側凹部26の底端部26aの幅を裏面側凹部22の底端部22aの幅より小さいものとすることで、基材12の表面側を谷としてヒンジ6に沿って折り曲げ可能とすると共に、折り曲げ時に裏面側凹部22において応力が加わる部分よりも表面側凹部26において応力が加わる部分を小さくすることでき、意匠面とされる基材12の表面において表面側凹部26の白化が低減されたラッゲージマット4を製造することができる。これにより、意匠面における意匠性が向上されたラッゲージマット4を製造することができる。
【0033】
また、本実施形態に係るラッゲージマット4の製造方法では、薄肉化工程において、基材12を表面側凹部26及び裏面側凹部22が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに表面側凹部26がV字状となるように表面側凹部26を形成する。ここで、表面側凹部26及び表皮材凹部24は、折り曲げ時にその底端部26a、24aに応力が加わるため、底端部26a、24aにおいて繊維材料の毛倒れや白化が生じ易い。上記の製造方法によると、表面側凹部26の底端部が面状に形成されている場合に比して表面側凹部26及び表皮材凹部24における毛倒れや白化を生じる部分を小さくすることができる。これにより、意匠面における意匠性が一層向上されたラッゲージマット4を製造することができる。
【0034】
また、本実施形態に係るラッゲージマット4の製造方法では、薄肉化工程の前に、加熱工程後の基材の表面に表皮材14を貼り合わせる表皮材貼り合わせ工程をさらに備え、薄肉化工程では、表皮材14のうちヒンジとされる部位を押圧して表皮材凹部24を形成し、表皮材14を介して表面側凹部26を形成する。さらに、基材を表面側凹部26及び裏面側凹部22が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに表皮材凹部24の底端部が基材12の表面より表面側に位置するように表皮材凹部24を形成する。このため、表面側凹部26を浅く形成することができ、基材12の表面側を谷として折り曲げ易いラッゲージマット4を製造することができる。
【0035】
また、本実施形態に係るラッゲージマット4の製造方法では、薄肉化工程では、基材12を表面側凹部26及び裏面側凹部22が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに表面側凹部26の開口縁部が裏面側凹部22の側壁部と重畳する範囲内とされるように表面側凹部26及び裏面側凹部22を形成する。このため、基材12における表面側凹部26と裏面側凹部22の水平位置をほぼ同じ位置とすることができる。これにより、ヒンジ6に沿って折り曲げ易いラッゲージマット4を製造することができる。
【0036】
<実施形態2>
図面を参照して実施形態2を説明する。図7は、折り曲げ前の状態における、実施形態2に係るラッゲージマット104のヒンジ106の断面図を示しており、実施形態1の図3と対応する断面図である。実施形態2は、表面側凹部126及び表皮材凹部124の断面形状が、実施形態1のものと異なっている。その他の構成については実施形態1と同じであるため、構造、作用、および効果の説明は省略する。なお、図7において、図3の参照符号に数字100を加えた部位は、実施形態1で説明した部位と同一である。
【0037】
実施形態2に係るラッゲージマット104では、図7に示すように、ラッゲージマット104をヒンジ106が略直線状に延びる方向と直交する断面で切断したときの断面構成において、表面側凹部126及び表皮材凹部124がいずれも断面視U字状を成している。この場合、表面側凹部126及び表皮材凹部124の底端部126a、124aは、断面視U字状を成す表面側凹部126及び表皮材凹部124のうちの最も深い部分となるので、断面視V字状の場合と同様に、ヒンジ106に沿って平面視線状に形成されている。このため、表面側凹部126の底端部126aの幅は、裏面側凹部122の底端部122aの幅に比して小さいものとされている。このように、表面側凹部126が断面視U字状を成している場合であっても、基材112の表面側凹部126の底端部126aの幅を裏面側凹部122の底端部122aの幅より小さいものとすることができ、意匠面における意匠性が向上されたラッゲージマット104を実現することができる。
【0038】
上記の各実施形態の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の各実施形態では、表面側凹部の底端部がヒンジに沿って平面視線状に形成されている構成を採用したが、表面側凹部の底端部が裏面側凹部の底端部のように面状とされた構成を採用してもよい。この場合であっても、表面側凹部の底端部の幅が裏面側凹部の底端部の幅よりも小さいものとされていれば、ヒンジに沿って折り曲げる際に裏面側凹部に加わる応力よりも表面側凹部に加わる応力が小さいラッゲージマットを実現することができる。
【0039】
(2)上記の各実施形態以外にも、表面側凹部及び裏面側凹部を形成する方法及び表皮材凹部を形成する方法等については、適宜に変更可能である。
【0040】
(3)上記の各実施形態以外にも、ラッゲージマット全体におけるヒンジの配置、形状等については、適宜に変更可能である。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0042】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
2:車両、2a:トランク、2b:開口部、2c:トランク床部、4:ラッゲージマット、6:ヒンジ、8a:主床部、8b:側方床部、12:基材、12a:(基材の)表面、12b:(基材の)裏面、14:表皮材、22:裏面側凹部、22a:(裏面側凹部の)底端部、22b:(裏面側凹部の)開口縁部、22c:(裏面側凹部の)側壁部、24:表皮材凹部、24a:(表皮材凹部の)底端部、24b:(表皮材凹部の)開口縁部、26:表面側凹部、26a:(表面側凹部の)底端部、32:下側加熱機、34:上側加熱機、42:下型ステージ、44:上型ステージ、52:下型、54:上型、62:下側押圧部、64:上側押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性繊維と熱可塑性樹脂とを含む基材と、前記基材の少なくとも一部が薄肉化されて構成されるヒンジと、を備え、該ヒンジに沿って前記基材の一方の面側を谷として折り曲げ可能な植物性繊維含有ボード部材を製造する方法であって、
前記基材の両板面を加熱する加熱工程と、
前記基材の前記一方の面を表面とし、前記基材の他方の面を裏面として、前記加熱工程後の前記基材の前記表面のうち前記ヒンジとされる部位を押圧して溝状の表面側凹部を形成すると共に、前記加熱工程後の前記基材の前記裏面のうち前記ヒンジとされる部位を押圧して溝状の裏面側凹部を形成することで前記ヒンジとされる部位を薄肉化する薄肉化工程と、を備え、
該薄肉化工程では、前記裏面側凹部の底端部の幅に比して前記表面側凹部の底端部の幅が小さくなるように前記表面側凹部と前記裏面側凹部とを形成することを特徴とする植物性繊維含有ボード部材の製造方法。
【請求項2】
前記薄肉化工程では、前記基材を前記表面側凹部及び前記裏面側凹部が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに前記表面側凹部がV字状又はU字状となるように該表面側凹部を形成することを特徴とする請求項1に記載の植物性繊維含有ボード部材の製造方法。
【請求項3】
前記薄肉化工程の前に、前記加熱工程後の前記基材の前記表面に表皮材を貼り合わせる表皮材貼り合わせ工程をさらに備え、
前記薄肉化工程では、前記表皮材のうち前記ヒンジとされる部位を押圧して表皮材凹部を形成し、該表皮材を介して前記表面側凹部を形成すると共に、前記基材を前記表面側凹部及び前記裏面側凹部が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに前記表皮材凹部の底端部が前記基材の前記表面より表面側に位置するように該表皮材凹部を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物性繊維含有ボード部材の製造方法。
【請求項4】
前記薄肉化工程では、前記基材を前記表面側凹部及び前記裏面側凹部が溝状に延びる方向と直交する断面において断面視したときに前記表面側凹部の開口縁部が前記裏面側凹部の側壁部と重畳する範囲内とされるように前記表面側凹部及び前記裏面側凹部を形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の植物性繊維含有ボード部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−126013(P2012−126013A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279403(P2010−279403)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】