説明

植物栽培基盤材、植物栽培用容器、それらの製造方法及び芝基盤材の敷設方法

【課題】芝の生育がよく、紙や稲藁から安価で簡単に得られる植物栽培基盤材を提供する。また、軽量で破損しない植木鉢などの植物栽培用容器を提供する。
【解決手段】稲藁或いは裁断した稲藁スサを水に浸漬して発酵させて得た稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して該裁断紙を一部溶解し、該一部溶解物6’に稲藁スサ7を加えて混練しこの混練物11を成形型に入れて乾燥し植物栽培基盤材をあるいは該混練物11を成形型入れて脱水しつつ圧縮し乾燥して植物栽培用容器を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器、及びそれらの製造方法並びに芝基盤材の敷設方法更には植物の育成方法や栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、建物の屋上緑化には、軽量なこともあって苔や芝生を用いることが盛んに研究されている。中でも、芝は苔よりもボリュームがあるので、様々なタイプのものが開発されている。また、法面やゴルフ場などの芝張りにも、様々な工夫が施されている。
【0003】
例えば、古紙や裁断くず等を再生処理して得た故紙パルプに粘着剤や接着剤を混練して所定厚みの基布を形成し、その基布に植生材料(芝)を貼着した張芝体(特許文献1)とか、天然繊維や紙、パルプなどの天然素材の繊維の集合体で加工された開口率5〜60%の網状で厚み5〜40mmの芝養生マット(特許文献2)とか、紙を乾式で破砕または粉砕して得られる綿状パルプと種子とが混在する播種・成育床用材料(特許文献3)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−178441号公報
【特許文献2】特開平05−000025号公報
【特許文献3】特開平06−141622公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらは、いずれも故紙などを利用して芝の種子などを含有させて裸地などに施工するものである。このうち、前二者は古紙などを接着剤で固めるものであり、芝の種子は古紙等と一体化されて施工されるものである。又後者は、綿状の古紙などと種子が混合されており、いずれも種子状態で提供される。従って、これらは芝の発芽や生育に時間が掛かる難点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、鋭意研究した結果、これらの欠点がなく芝の生育が非常に優れた植物栽培基盤材を開発することに成功した。また、植物の育成や生育に適した軽量の植物栽培用容器を開発した。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器は、古紙などの裁断紙を、稲藁を水に浸漬して発酵させて得た稲藁発酵液に浸漬したのち、稲藁スサを加えて混練した後成形し、次いで乾燥したものである。
【0008】
裁断紙を稲藁発酵液に数〜十数日(4〜14日)程度浸漬して放置した後、ハンドミキサーや混練機で混練すると、裁断紙は形状を崩して膨潤し或いは直径5mm位のボール状となる。液は粘性をもつようになる。この膨潤した裁断紙のみを成形して乾燥した場合、崩れやすいので、稲藁スサを加える。この稲藁スサは、新たに裁断してつくるのが好ましいが、稲藁発酵液作成に使用したものを用いてもよい。後者は柔らかくなる。尚、裁断紙に稲藁発酵液を入れると、3日位で泡立って発酵状態となる。
【0009】
裁断紙は、新聞紙、週刊誌、雑誌、事務用紙、レポート用紙などを3〜8mm幅長さ3〜8cm程度に裁断したものである。尚、上記混練物中に水溶性の接着剤を混入しておくと、植物栽培基盤材や植物栽培用容器の乾燥後強度が増す。
【0010】
稲藁発酵液の代わに水を用いた場合は、数10日以上掛かっても裁断紙は溶解せず、また裁断紙同志が接着することもない。これに対し、稲藁発酵液を用いた場合は、理由は明らかでないが数日で裁断紙の一部が溶解し、また裁断紙の接着も見られる。これにより、裁断紙の絡みが行われてしっかりした植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器が得られることになる。また、稲藁発酵液が養分になるのか芝や栽培した植物の生育も良好になる。
【0011】
本発明の植物栽培基盤材は、底面或いは底面と側面から脱水できる薄形容器に、前記した裁断紙の一部溶解物に稲藁スサを加えて混練したものを充填して成型し、脱型後乾燥或いはある程度乾燥した後脱型して乾燥して製造するものである。或る程度乾燥してから脱型すると変形が無い。この植物栽培基盤材は、例えば、カット芝を乗せて散水・養生し、これを屋上や庭園など芝生を敷設したい箇所に敷設する。またこの植物栽培基盤材に適宜な孔を開けたものを地面に配置し、該孔に苗木を挿入してから散水すると、簡単に植林が出来る。
【0012】
或いは、この植物栽培基盤材の底面或いは上面に窪みや突状などの凹凸を設け、その上に平板状の植物栽培基盤材を載せて芝等を敷設すると、平板状の植物栽培基盤材の下面に空洞部ができて、屋上緑化に使用した場合に、断熱効果がより大きくなる。勿論、窪みや凹凸のあるものでも、カット芝を栽培することができる。
【0013】
脱水できるザルやカゴなどの湾曲状容器に、前記した裁断紙の一部溶解物に稲藁スサを加えて混練したものを充填して成型し、脱型後乾燥或いはある程度乾燥した後脱型して乾燥すると、植木鉢状や深皿状の植物栽培用容器が得られる。これには、先ず、外型となる湾曲状容器に混練物を入れ、次に内型となる湾曲状容器で押さえるようにして脱水した後脱型後乾燥する。
【0014】
底面或いは底面と側面から脱水できる箱形や逆錐台形などの容器の中央部に筒状の型を置き、両者の間隙に請求項1の混練物を充填して成型し、脱型後乾燥或いはある程度乾燥した後脱型して乾燥すると、肉厚なブロック状の植物栽培用容器が得られる。この場合、先ず、箱形や逆錐台形などの容器に混練物を入れ、次いでその中央部に、筒状の型を押し込むようにして成形し、ある程度乾燥してから型を外して乾燥させると、中央部の型崩れがなく良好なものが得られる。
【0015】
成型用容器に、麻布などの補強材を敷いたのち、前記した混練物を充填して成型乾燥すると、補強された植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器が得られる。
【0016】
本発明では、まず稲藁発酵液を作る必要がある。稲藁発酵液は、例えば大きなポリバケツに稲藁或いは稲藁スサ40L程度を投入し、これに水10〜30Lを投入して数日〜数十日(季節により異なり、冬季は2週間〜20日程度夏季は1週間〜10日程度以上)間放置しておき、その上澄み液を取ったものである。放置期間中に、数回攪拌すると反応が良好になる。上澄み液を取ったあとの藁はまた水を加え放置しておくと、稲藁発酵液が得られる。3回程度これを繰り返すと藁の繊維が次第に消滅してくる。尚、稲藁を水に長期間(1〜3月以上)漬けておいてもよい。漬ける期間が長くなると、稲藁に付着しているナットウ菌(バチルス菌)の増殖がより盛んになる。しかし、1週間以上程度でも実用上、十分な菌の発生が見られる。
【0017】
この稲藁発酵液の20〜40Lを、同様に大きなポリバケツに入れた40L程度の裁断紙に加え、数日〜十数日(冬季で1〜2週間、夏季で4〜10日程度)放置し、或いは数回攪拌すると、裁断紙の一部が溶解し始める。この状態で、一部溶解物に稲藁スサを一部溶解物1に対して稲藁スサ0.1〜2の割合で加えて混練し、この混練物を型に入れて成形乾燥すると、植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器が得られる。
【0018】
型は、植物栽培基盤材の場合、底面或いは底面と側面から脱水できる薄形容器とする。基盤材の底や上面に窪みや突状などの凹凸ができるように、容器の底に凹凸や凸状や凹状の溝を設けておいてもよい。芝を栽培する場合、型に入れて湿った状態の物の上にカット芝を置いて加圧して乾燥するようにしてもよい。この場合、取り扱いに注意しないと型崩れするおそれがある。型に入れて脱水したスサ発酵液は再度回収して使用する。
【0019】
尚、型を置くまえに、下に型よりも幾分大きくカットしたネットや織物などを敷いておくと脱水乾燥が良好に行われる。型の寸法は自由にきめられるが、20〜30cm四方程度で厚みが20〜40mm程度のものが使いやすい。植物栽培基盤材の製造に必要な混練物の流し込み量は、20〜40mm程度の厚みになるように、手や道具で掻き均し、押圧する。1〜数日たってから型を外し、ネットの両端をもって乾燥場所に移動させる。厚みにもよるが、1〜2週間程度でほぼ完全に乾燥する。尚、稲の苗を育てる育苗箱(幅28cm程度、長さ55cm程度、深さ2〜3cm程度)も、型として理想的である。
【0020】
このようにして得られた植物栽培基盤材は、アスファルト、コンクリート、鉄板、木板などの基材の上に並べ、その上からカット芝を乗せて散水する。十分な散水で、乾燥していた基盤材が吸水して重量が増すので、カット芝を乗せた基盤材は動かない。吸水した基盤材は、保水性が大きいので、吸水した水分の蒸発を緩やかにし、芝への給水も長期間継続する。
【0021】
栽培期間は、気温によっても変わってくるが、おおよそ2〜3カ月で5〜6cm程度に生育する。基盤材への給水は、雨水等でほぼ十分であるが、屋根など乾燥が激しい箇所では時々散水するとよい。
【0022】
植物栽培用容器の場合の型は、脱水できるザルやカゴ状などの湾曲状容器を内外型とするか、底面或いは底面と側面から脱水できる箱形や逆錐台形などの容器の中央部に筒状の型を置くタイプが考えられる。これらを用いると、植木鉢状や深皿状、ブロック状の植物栽培容器が得られる。前者の場合、脱水できるザルやカゴなどの湾曲状容器を外型としそれより小さい湾曲状容器を内型として形成する。まず、外型の中に、適当量の混練物を入れ、次に内型を押し込んで脱水させて成形する。次に、ある程度乾燥した後、内外の型を外して乾燥させると、植木鉢状のものが得られる。後者では、箱形や逆錐台形などの容器に適当量の混練物を入れ、次に中央部に筒状の型を押し込んで空隙部を作るようにして成型し、ある程度乾燥してから脱型して乾燥させると、ブロック状のものが得られる。
【0023】
植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器を形成する成型用容器に、麻布などの補強材を敷いたのち、混練物を充填して成型乾燥すると、湿っても型崩れしない補強された植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器が得られる。
【0024】
尚、植物栽培用容器には、土や来待石粉末を造粒して乾燥或いは焼成した栽培土、或いは請求項1の稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解したものを造粒した軽量栽培土を充填して、植物を栽培することができる。後二者の造粒品は水を10〜30%含むことができるので、時々水を霧吹きで与える程度で十分に植物を生育させることができる。この容器は軽量で、落としても破損しないし、使用後は焼却処分ができる優れたものである。植物栽培用容器の底にアルミホイルやフイルムなどの遮水材を敷くか、或いは植物栽培用容器に遮水性の塗料を塗布すると水漏れを防ぐことができる。
【0025】
稲藁スサに加えて、おが屑や籾殻、ゼオライト、炭の粉末などの吸水材を一部溶解物1に対して0.1〜0.3の割合で加えて混練し、この混練物を型に入れて成形乾燥すると乾燥が早まる利点がある。稲藁発酵液を作る場合、稲藁或いは稲藁スサとともに籾殻を稲藁の半分乃至1/4程度程度加えると、発酵が幾分早まる利点がある(通常1〜3週間程度が2〜3割程度早くなる)。また、夏場の乾燥に対しては、前記混練物に対しておが屑や籾殻などを加えると、これらの含水による植物栽培基盤材の乾燥を防ぐ効果がある。量が少ないと効果がないし、多すぎると植物栽培基盤材を移動する場合に崩れたりするので、上記範囲で適宜割合にする必要がある。植物栽培基盤材を作る場合に、混練物に肥料(即効性、遅効性)を添加してもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明は、稲藁或いは裁断した稲藁或いは更に籾殻を水に浸漬して発酵させて得た稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解し、該一部溶解物に前記稲藁発酵液を作った稲藁スサ或いは新規に作った稲藁スサを加えて混練した後成形し、次いで乾燥した植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器及びそれらの製造方法である。また、この植物基盤材をアスファルトやコンクリートなどの基材の上に並べその上からカット芝を乗せるとともに散水する芝の育成方法、及び、植物栽培用容器を植木鉢とし、土や来待石粉末を造粒して乾燥或いは焼成した栽培土、或いは請求項1の稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解したものを造粒した軽量栽培土を充填して、植物を栽培する植物の栽培方法である。
【0027】
従って、
(1)稲藁或いは稲藁スサを水に浸漬して発酵させて得た稲藁発酵液に数〜十数日間裁断紙を浸漬するだけで、裁断紙は一部溶解膨潤してボール状となる。そして、これに稲藁スサを混練して成形して乾燥すると、簡単に植物栽培基盤材や植物栽培用容器が得られる。そして、この植物栽培基盤材や植物栽培用容器は、稲藁発酵液の養分もあって植物の成長に好ましいものである。
(2)材料は、古新聞や雑誌などの廃物と水、それに稲藁であり、安価に得られる。
(3)稲藁発酵液の中に接着剤を混入しておくと、裁断紙や稲藁スサの接合がより強固になる。
(4)本発明の植物栽培基盤は、ネットや織物を付けたまま或いはこれらを除去したのち、土やコンクリート面にそのまま、或いは裏面側に接着材を塗布して石やコンクリート面に接着したりする。これにより、確実にコンクリート打設面や地面に植物栽培基盤材或いはこれに芝を育成した芝基盤材を設けることができる。
(5)本発明の植物栽培基盤材は乾燥しており、不安定な場所では接着剤によって固定したり、更にはカット芝を防鳥ネットや防虫ネットで抑えることで、芝が基盤材に活着し易くするとともに、風その他飛散による人為的な事故を防ぐことができる。また、本発明の植物栽培基盤材は軽量であることから、運搬が容易であり、且つ散水することにより芝の成長を促し、機材の有する保水性で芝の乾燥を防ぐ利点もある。
(6)本発明の植物栽培用容器は、軽量であり、落としても破損しないし、廃棄する場合も焼却ができるうえ、栽培土壌として軽量で保水性に優れた来待石の粉末の造粒品や焼成品、或いは裁断紙を一部溶解したものを造粒した軽量栽培土を用いれば、全体が軽量化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の稲藁発酵液を製造する状態の一例を示す一部を破断した正面図であり、(a)は稲藁スサと籾殻に水を加えた時の状態を示し、(b)は2週間程度経った状態を示す。(実施例1)
【図2】裁断紙に稲藁発酵液を加えた状態の一例を示す一部を正面図であり、(a)は裁断紙に稲藁発酵液を加えた時の状態、(b)は10日程度経過後の状態を示す。(実施例1)
【図3】型に裁断紙の一部溶解物と稲藁スサの混練物を入れた状態の斜視図である。(実施例1)
【図4】型を外した状態の一部溶解物と稲藁スサの混練物を示す斜視図である。(実施例1)
【図5】一部溶解物と稲藁スサの混練物を乾燥場へ移動させる状態の側面図である。(実施例1)
【図6】乾燥した植物栽培基盤材にカット芝を乗せた状態の側面図である。(実施例2)
【図7】カット芝を乗せた植物栽培基盤材に散水する状態を示す斜視図である。(実施例2)
【図8】トタン屋根等凹凸がある場所に芝を育成した植物栽培基盤材を接着する状態の側面図である。(実施例3)
【図9】(a)は、上面に複数(図では3本)の突状18を設けた植物栽培基盤材、(b)は上面に多数の窪みを設けた植物栽培基盤材を示す斜視図である。(実施例4)
【図10】(a)は図9(a)の植物栽培基盤材の上に図6に示す植物栽培基盤材を載せた状態のX−X線(図9(a))断面図、(b)は図9(b)の植物栽培基盤材の上に図6に示す植物栽培基盤材を載せた状態のY−Y線(図9(b))断面図である。(実施例4)
【図11】植木鉢状或いは深鉢状の植物栽培用容器の作り方を示すもので(a)は大きい湾曲状容器に混練物を充填し、その上から小さい湾曲状容器を押しつける状態の正面図、(b)は圧縮した状態の正面図、(c)は上下の湾曲状容器を脱型した状態の正面図である。(実施例5)
【図12】図11に示す植物栽培用容器に補強材を取り付けるもので、(a)は大きい湾曲状容器に補強材を被せて混練物11を充填する状態の正面図、(b)はその上から小さい湾曲状容器を押しつける状態の正面図、(c)は圧縮した状態の側面図、(d)は上下の湾曲状容器を脱型した状態の正面図である。(実施例6)
【図13】(a)は逆錐台形容器に混練物を充填した状態の正面図、(b)は筒状の型を押し込んで空隙部を作る状態の正面図、(c)はブロック状の植物栽培容器を示す斜視図、(d)は植物栽培容器の植栽用の孔に、造粒品を入れて植物を植えた状態の正面図である。(実施例7)
【発明を実施するための形態】
【0029】
稲藁或いは裁断した稲藁スサを水に浸漬して発酵させて得た稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解し、該一部溶解物に稲藁スサを加えて混練した後成形し、次いで乾燥する。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、本発明に使用する稲藁発酵液1を製造する場合の一例を示す。まず、50L程度の容量のプラスチック容器2に、稲藁スサ3を30Lと籾殻4を10L投入し、これに水20Lを加えて約8日程度放置しておく。この期間は冬季と夏期では異なるが、8日は春〜夏の数値である。内容物は時々攪拌する。そうすると、次第に水に色が付き、図1(b)に示すように、1週間経過すると褐色透明な稲藁発酵液1が得られる。尚、稲藁スサのみの場合、同じく40L程度を使用するが、この場合には稲藁発酵液は10日(春〜夏)程度で得られる。
【0031】
この稲藁発酵液1の30Lを、図2(a)に示すように同様に大きなポリバケツ5に入れた40L程度の裁断紙6に加え、4〜14日程度放置しておくと、裁断紙6の一部が溶解し始める(図2(b))。この状態で、一部溶解物6′に対して稲藁スサ7を0.1〜2の割合で加えて混練し、この混練物を型に入れて成形乾燥すると、植物栽培基盤材12が得られる(図3、図4)。図3は、裁断したネット8の上に、発泡プラスチックの枠9内に角柱10を4本組み入れたもので成形枠を作り、その中に脱水した一部溶解物6′と稲藁スサ7を混練した混練物11を投入して掻き均す。成形枠の寸法は、例えば、縦250mm:横200mm、厚み30mm程度である。型に入れて脱水した稲藁発酵液1は再度回収して使用する。成形枠として、育苗箱(幅28cm程度、長さ55cm程度、深さ2〜3cm程度)を使用してもよい。
【0032】
次に、この混練物11を成形枠から取り外す(図4)。そして、図5に示すように、ネット8ごと持ち上げて室内などの乾燥場所へ移動する。ここで、約1〜2週間乾燥して植物栽培基盤材12としたのち、保存する。尚、上記混練物に、0.1〜3%程度のボンドなどの水溶性接着剤を混ぜて使用すると丈夫な植物栽培基盤材12が得られる。
【実施例2】
【0033】
本発明の植物栽培基盤材12は、例えば図6のようにして使用する。まず、芝などを生やしたい場所に、植物栽培基盤材12を並べ、その上からカット芝13をのせて散水14する(図7)。十分な散水で乾燥していた植物栽培基盤材12が吸水して重量が増すので、カット芝13を乗せた植物栽培基盤材12は動かない。吸水した植物栽培基盤材12は保水性能が大きいので、吸水した水分の蒸発を緩やかにし、芝への給水を長期間継続する。そして、2〜3ケ月もすると、芝が植物栽培基盤材に根づき、成長を始める。或いは、庭や畑、コンクリート敷地などで芝或いは他の植物例えば苔や野草等を栽培しようとする場合、広い面にこの植物栽培基盤材12を敷設し、ここにカット芝やカット苔、牧草、野草そのた植物の苗や種を撒き、散水する。そうすると、植物栽培基盤材12の保水性で当分水をやらなくても植物は成長する。
【実施例3】
【0034】
図8は、本願の植物栽培基盤材12をトタン屋根等の凹凸の面15に施工する状態を示す。まず、図8(a)のトタン屋根15の凸部15aに、接着材16を塗布し、この部分にカットした植物栽培基盤材12aを接着する(図8(b))。そして、この部分にカット芝13aを張り、その上から屋根全体を覆うように防鳥ネット17を張り、カット芝13aを押さえる(図8(c))。
【0035】
次に、図8(d)のように、凹部の防鳥ネット17の上から、植物栽培基盤材12を張り、次いで図8(e)のように植物栽培基盤材12の上からカット芝13bを張り、散水して、トタン屋根の屋上緑化を完成する。
【実施例4】
【0036】
図9(a)に示す植物栽培基盤材12′は、上面に複数(図では3本)の突状18を設けている。また、図9(b)に示す植物栽培基盤材12′′は、上面に多数の窪み19を設けている。これらは、前記した植物栽培基盤材12と異なり、カット芝13を載置栽培することはないが、これらの上に、図10(a)或いは図10(b)に示すように通常の植物栽培基盤材12を載せて屋根上などに載置すると、上面の凹条部分や窪みが空洞部(空気層)18′、19′となり、断熱効果を更に向上させる。これらの植物栽培基盤材12′、12′′に、カット芝13を載置栽培してもよい。
【実施例5】
【0037】
次に、図11は、植木鉢状或いは深鉢状の植物栽培用容器の作り方を示す。まず、図11(a)に示すように、大きい方のザル20(或いはカゴ)などの、脱水できる湾曲状容器に、実施例1と同様にして裁断紙の一部溶解物6′と稲藁スサ7を混合した混練物11を充填し、その上から図11(B)に示すように小さい方のザル21(或いはカゴ)を押しつけて混練物11を脱水しつつ圧縮する。そして、1〜2日経って幾分混練物11が幾分乾燥した段階で、上下のザル20、21を外し、5日〜10日程度乾燥させると、図11(c)に示すような植木鉢状或いは深鉢状の植物栽培用容器22が得られる。乾燥日数は容器の厚みにより決まる。尚、植物栽培用容器22の形状は、ザルやカゴ20、21の形状によって決まる。
【実施例6】
【0038】
図12は、前記例の植物栽培用容器22に、補強材を取り付けた例を示す。まず、図12(a)のように、大きい方のザル20(或いはカゴ)などの、脱水できる湾曲状容器に、適宜大きさに裁断した麻布や不織布(でき得れば、天然繊維の)などの補強材23を被せ、その上から前記した混練物11を充填し、更にその上から図12(b)に示すように小さい方のザル21(或いはカゴ)を押しつけて混練物11を脱水しつつ圧縮する。その際、補強材23の縁は内側に折り畳んで混練物11で上から押さえ、図12(c)に示すようにする。この状態で、1〜2日経って幾分混練物11が乾燥した段階で、上下のザル20、21を外し、5日〜10日程度乾燥させると、図12(d)に示すように、外側が補強材23で補強された植木鉢状或いは深鉢状の植物栽培用容器24が得られる。乾燥日数は容器の厚みにより決まる。この場合も、植物栽培用容器24の形状は、ザルやカゴ20、21の形状によって決まる。
【実施例7】
【0039】
図13は、他の植物栽培用容器の例を示す。まず、図13(a)に示すように、底面から脱水できる逆錐台形の容器25に、前記した混練物11を充填し押圧する。混練物11の余分な水(稲藁発酵液1)は容器25の底の排水孔26から排出される。排出された稲藁発酵液1は、再利用することができる。次に、図13(b)に示すように、その中央部に筒状の型27を押し込んで空隙部を作るようにして成型し、ある程度乾燥して(2〜5日)から脱型して2〜3週間乾燥すると、図13(c)に示すような肉厚なブロック状の植物栽培容器28が得られる。ある程度乾燥してから脱型するので、中央部の型崩れが生じない。そして、中央部の空隙部が植栽用の孔29となる。
【0040】
このブロック状の植物栽培容器28は、図13(d)に示すように、その植栽用の孔29に、栽培土や豆石30(来待石粉末を造粒して乾燥或いは焼成した造粒物)、或いは紙豆石(請求項1の稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解したものを造粒した軽量造粒物)を充填し、植物31を栽培する。後二者の造粒物は水を10〜30%含むことができるので、時々水を霧吹きで与える程度で十分に植物を生育させることができる。
【0041】
尚、植木鉢状或いは深鉢状の植物栽培用容器22及びブロック状の植物栽培容器28には、共に、前記来待石粉末を造粒して乾燥或いは焼成した栽培土や、
請求項1の稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解したものを造粒した軽量栽培土或いは通常の栽培土を充填して、植物を栽培することができる。これらの容器は、軽量で、落としても破損しないし、使用後は焼却処分ができる優れたものである。植物栽培用容器の内外の底にアルミホイルやフイルムなどの遮水材を敷いたり貼ったりして、或いは植物栽培用容器に遮水性の塗料を塗布することで水漏れを防ぐことができる。
【0042】
ブロック状の植物栽培容器28の場合も、実施例1に示す植物栽培基盤材12の場合も、成型用容器に、麻布や不織布などの補強材を敷いたのち、前記した混練物を充填して成型乾燥すると、湿っても型崩れしない補強された植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
古新聞や古雑誌などと水及び稲藁が原料であるため安価大量に得られるとともに、得られた植物栽培基盤材は軽量でどこでも固定でき、芝などの植物体の栽培基盤として優れたものである。また、植物栽培用容器は、軽量でしかも焼き物と異なり落としても丈夫で破損することがないうえ、不要になれば焼却処分できる利点がある。また、土壌として来待石粉末の造粒品や焼成品、稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解したものを造粒したものを用いれば、保水性や通気性にも優れ、植物の生育に理想的なものである。
【符号の説明】
【0044】
1 稲藁発酵液
2 プラスチック容器
3 稲藁スサ
4 籾殻
5 ポリバケツ
6 裁断紙
6′ 一部溶解物
7 稲藁スサ
8 裁断したネット
9 発泡プラスチックの枠
10 角柱
11 一部溶解物と稲藁スサの混練物
12 植物栽培基盤材
13 カット芝
13a カット芝
14 散水
15 トタン屋根
16 接着材
17 防鳥ネット
12′ 植物栽培基盤材
12′′植物栽培基盤材
18 突状
19 窪み
18′ 空洞部(空気層)
19′ 空洞部(空気層)
20 大きいザル
21 小さいザル
22 植木鉢状或いは深鉢状の植物栽培用容器
23 補強材
24 補強された植木鉢状或いは深鉢状の植物栽培用容器
25 逆錐台形の容器
26 排水孔
27 筒状の型
28 肉厚なブロック状の植物栽培容器
29 植栽用の孔
30 豆石
31 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稲藁或いは裁断した稲藁スサを水に浸漬して発酵させて得た稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解し、該一部溶解物に稲藁スサを加えて混練した後成形し、次いで乾燥したことを特徴とする植物栽培基盤材、或いは植物栽培用容器。
【請求項2】
稲藁或いは裁断した稲藁スサの代わりに、稲藁の半分乃至1/4程度の籾殻を用いて得た稲藁発酵液を用いるものである、請求項1記載の植物栽培基盤材、或いは植物栽培用容器。
【請求項3】
底面或いは底面と側面から脱水できる薄形容器に、請求項1の混練物を充填して成型し、脱型して乾燥或いはある程度乾燥してから脱型して乾燥してなる請求項1記載の平板状の植物栽培基盤材。
【請求項4】
底面或いは上面に、窪みや突状などの凹凸を設けたものである、請求項3記載の平板状の植物栽培基盤材。
【請求項5】
脱水できるザルやカゴなどの湾曲状容器に、請求項1の混練物を充填し、同じく湾曲状容器を押しつけて成型し、脱型して乾燥或いはある程度乾燥してから脱型して乾燥してなる請求項1記載の植木鉢状或いは深皿状の植物栽培用容器。
【請求項6】
底面或いは底面と側面から脱水できる箱形や逆錐台形などの容器に、請求項1の混練物を充填し、中央部に筒状の型を押し込んで空隙部を作るようにして成型し、脱型して乾燥或いはある程度乾燥してから脱型して乾燥してなる請求項1記載のブロック状の植物栽培容器。
【請求項7】
成型用容器に、麻布などの補強材を敷いたのち、請求項1の混練物を充填して成型し、脱型後乾燥或いはある程度乾燥してから脱型して乾燥したものである、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6記載の植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器。
【請求項8】
稲藁或いは稲藁スサ40Lに対して水10〜30Lを投入して数日〜数十日間放置して稲藁発酵液を得るとともに、該発酵液の20〜40Lに対して裁断紙40Lを投入して数日〜十数日放置して裁断紙を一部溶解し、該一部溶解物に稲藁スサを一部溶解物1に対して稲藁スサ0.1〜2の割合で加えて混練し、この混練物を型に入れて成形乾燥することを特徴とする植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器の製造方法。
【請求項9】
稲藁スサに加えて、おが屑や籾殻、ゼオライト、炭粉末などの吸水材を一部溶解物1に対して0.1〜0.3の割合で加えて混練し、この混練物を型に入れて成形乾燥するものである、請求項8記載の植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器の製造方法。
【請求項10】
混練物に、0.1〜3%程度の水溶性接着剤を混入するものである、請求項8又は請求項9記載の植物栽培基盤材或いは植物栽培用容器の製造方法。
【請求項11】
アスファルト、コンクリート、鉄板、木板などの基材の上に、請求項1の植物栽培基盤材を並べ、その上からカット芝を乗せるとともに散水することを特徴とする芝の育成方法。
【請求項12】
屋上や庭園など芝生を敷設したい箇所に、請求項11で得られた育成芝の芝基盤材、或いは請求項1で得られた植物栽培基盤材にカット芝をのせたものを敷設し、散水することを特徴とする芝基盤材の敷設方法。
【請求項13】
トタン屋根等凹凸のある箇所など施工面が不安定な箇所に育成芝やカット芝を乗せた芝基盤材を敷設する場合には接着剤を使用するが、凹凸のある箇所では凸部に接着材を塗布した後凸部の寸法に裁断した芝基盤材を固定するとともに凹部にも接着材を塗布し、次いで凸部の芝基盤材もろとも屋根等全体をネットで覆うとともに、凹部に芝基盤材を固定することを特徴とする凹凸箇所など施工面が不安定な箇所への芝基盤材の敷設方法。
【請求項14】
窪みを成形した請求項1の植物基盤材の窪みに植物苗を植えて散水することを特徴とする植物苗の育成方法。
【請求項15】
請求項1記載の植物栽培用容器を植木鉢とし、土、来待石粉末を造粒して乾燥或いは焼成した栽培土或いは請求項1の稲藁発酵液に裁断紙を浸漬して裁断紙を一部溶解したものを造粒した軽量栽培土を充填して、植物を栽培するものである、植物の栽培方法。
【請求項16】
植物栽培用容器の底にアルミホイルやフイルムなどの遮水材を敷くか、或いは植物栽培用容器の一部に遮水性の塗料を塗布するものである、請求項15記載の植物の栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−263883(P2010−263883A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71875(P2010−71875)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(501249261)株式会社日本海技術コンサルタンツ (17)
【Fターム(参考)】