説明

植物栽培用資材及び乾燥おからの生産方法

【課題】 製造が容易で低コストでありながら、植物の生育に優れると共に、環境への負荷も小さく、デザインの自由度が大きく取り扱いも容易で種々の目的に利用することができる植物栽培用資材を提供する。
【解決手段】 間伐材等の伐採木、樹皮、剪定枝等を粉砕、破砕等して所定サイズのチップ、ファイバー或いはパウダー状にした植物由来物質と、乾燥おからと、を、例えばミキサーなど或いは手作業などでよく混合した後、この混合したものに水溶性バインダー(エマルジョン接着剤)を添加し、例えばミキサーなど或いは手作業などで良く混合して、ペースト状にする。次に、このペースト状の混合物を、所定形状の型20に流し込み、油圧プレス等により所定に押し固めた後、型20から取り出し乾燥させることで、植物栽培用資材10を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を生育させるための植物栽培用資材に関する。より詳細には、植物を栽培するための培土などの代わりとして利用可能な資材に関する。また、本発明は、当該植物栽培用資材に利用されるのに適した乾燥おからの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物の肥料として廃有機材を利用することが行なわれているが、かかる廃有機材の一つとして豆腐の製造過程により得られるおからを利用した例が、例えば、特許文献1、特許文献2などにおいて提案されている。
【0003】
また、豆腐の製造過程で得られるおから(含水おから)は、水を多く含んでおり腐敗し易いため、その保管や運搬等の取り扱いを便利にするなどのために、含水おからに所定の処理を施して、乾燥おからを得て、これを種々の目的に利用することが行なわれている。例えば、特許文献3には、加熱ドラム等を用いておからを比較的高い温度状態におくことで、含水おからから乾燥おからを得る技術が提案されている。
【0004】
この一方で、近年、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和や、大気の浄化延いては環境保護などの観点から、建物の壁面、屋根・屋上などの上面、塀の側面などの緑化が行なわれている。このような緑化構造の一例として、例えば、特許文献4に記載されているようなものがある。
【特許文献1】特開2001−120054号公報
【特許文献2】特開2001−199780号公報
【特許文献3】特開2005−21770号公報
【特許文献4】特開2004−248550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献4に記載されているような緑化構造は、発泡体等を用いた軽量材からなる培土基盤を利用するものであるため、比較的高価であると共に、その生産過程においてエネルギを消費し有害物質等を排出するなど環境への負荷が比較的大きいといった実情がある。また、使用を終え廃棄などする際にも、産業廃棄物などとなるため、かかる点においても環境への負荷が大きいものである。
このため、製造が容易かつ安価で、環境への負担も小さい植物栽培用資材が望まれる。
【0006】
また、近年では、利用者の要求も多様化し、家庭の庭、建物のベランダ、屋上、壁面、塀などを種々の目的(美観、装飾、目隠し、日除けなど)で、或いは生垣などの代わりとして、植物栽培用資材を一つのユニット(植栽ユニット)として用いて緑化することが行なわれており、緑化に用いる植物も種々の植物(小樹木、草花、芝、コケ、セダム、果実など)が利用され、加えて季節毎に植栽ユニットを入れ替えたいといった要求等もあるのが実情である。
【0007】
更に、例えばオブジェや展示会等における宣伝媒体(例えば、花文字などを作り情報伝達媒体としても利用される)などとして、或いはアメニティ空間の創出などのために、植栽ユニットを利用するといったことも行なわれている。
【0008】
従って、このような多様化した要求に応えることができるように植栽ユニットにも、デザインの自由度が大きいことが要求される。また、搬入、搬出等を含め、その取り扱いが容易であることも要求される。
【0009】
更に、従来においては、生産効率等の向上のために、含水おからから乾燥おからを比較的短時間で得るという要求に応えるために、特許文献3に記載されているように、加熱ドラム等を用いておからを比較的高い温度状態におくことが行われている。
【0010】
しかし、かかる方法では加熱するためのエネルギを消費することになると共に、加熱のためのエネルギ源として石油、天然ガス等を利用する場合にはその燃焼の際に、また電気・ガスなどをエネルギ源とする場合には当該エネルギ源を生産する際に、有害物質を大気中に放出するため、環境への負荷が比較的大きいものである。
【0011】
従って、含水おからから乾燥おからを得る際においても、比較的短時間で、できる限り環境への負荷の小さい方法を見い出すことが望まれる。
【0012】
本発明は、上述した実情に鑑みなされたもので、製造が容易で低コストでありながら、植物の生育に優れると共に、環境への負荷も小さく、デザインの自由度が大きく取り扱いも容易で種々の目的に利用することができる植物栽培用資材を提供することを目的とする。また、当該植物栽培用資材に利用されるのに適した乾燥おからを、環境への負荷が小さく、比較的短時間で得ることができる生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このため、本発明に係る植物栽培用資材は、
所定サイズに調整されたチップ、ファイバー或いはパウダー状の植物由来物質と、
乾燥おからと、
水溶性バインダーと、
の少なくとも3つを混合し、当該混合物を所定の形状に固めて得られることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記乾燥おからは、豆腐の製造過程で得られるおからに、少なくとも酵母菌を添加して発酵させ、当該発酵による発熱を利用して所定に乾燥されたものであることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明において、前記植物由来物質は、伐採木、樹皮、剪定枝、葉、穀物、穀物の殻、果物、果物の皮、種子等の植物由来の物質に基づくものであることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、前記水溶性バインダーは、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤であることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明に係る植物栽培用資材は、前記混合物を所定圧力でプレス成形して得られることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記植物由来物質及び前記乾燥おからは、0.5×0.5mm〜3×3mm程度のふるい目を通過するサイズのものが主成分となるように調整されていることを特徴とすることができる。
【0019】
本発明に係る植物栽培用資材は、メッシュ状の包囲部材により囲われることを特徴とすることができる。
【0020】
本発明に係る植物栽培用資材は、前記混合物を所定の形状に固める際に、補強部材が入れ込まれることを特徴とすることができる。
【0021】
また、本発明に係る乾燥おからの生産方法は、
豆腐の製造過程で得られたおからに、少なくとも酵母菌を添加し、当該添加した酵母菌の作用により発酵させ、当該発酵による発熱を利用して前記おからを所定に乾燥させることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る乾燥おからの生産方法は、酵母菌の他に、活性酸素種を含む電解水、光触媒、発根促進剤、保湿剤、生育促進剤のうちの少なくとも1つが添加されることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、製造が容易で低コストでありながら、植物の生育に優れると共に、環境への負荷も小さく、かつデザインの自由度が大きく取り扱いも容易で種々の目的に利用することができる植物栽培用資材を提供することができる。また、当該植物栽培用資材に利用されるのに適した乾燥おからを、環境への負荷が小さく、比較的短時間で得ることができる乾燥おからの生産方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、ここで説明する実施の形態に限定して解釈されるものではない。
【0025】
本実施の形態に係る植物栽培用資材は、植物を栽培等するための培養土や培養基材などの代わりとして利用することができる植物(例えば、小樹木、草花、芝、コケ、セダム、果実、つる植物などのあらゆる植物)を生育可能な資材で、間伐材等の伐採木、樹皮、剪定枝、葉、穀物、穀物の殻、果物、果物の皮、種子等の植物由来の廃材(廃材でなくても良いことは勿論である)などを細かく破砕、粉砕等した小片状の植物チップ、ファイバー或いはパウダー(本発明に係る植物由来物質に相当。以下、植物チップ等とも称することもある)を主成分としている。
【0026】
間伐材や樹皮、街路樹や公園等の植栽の刈り込みや剪定によって生ずる剪定木などは有効利用されることなく、焼却処理などされるのが殆どであるが、本実施の形態では、このような植物由来の廃棄物を利用することができるため、低コスト化が図れ、更には焼却処理に伴うCOの排出を抑制でき環境への負荷を小さくすることができる。
【0027】
本実施の形態では、これらの植物由来物質を破砕機等を使用して小片状の植物チップ、ファイバー或いはパウダーにする。チップ、ファイバー或いはパウダーのサイズは、長さ0.5〜3mm程度、巾0.5〜3mm程度、厚さ0.5〜3mm程度のもの(すなわち、0.5×0.5mm〜3×3mm程度のふるい目を通過したもの)を利用することができるが、これに限定されるものではなく、より大きいサイズのものや小さいサイズのものを利用することもできる。
【0028】
このような植物チップ、ファイバー或いはパウダーなどは、園芸店などで市販されているものを利用することもできる。
【0029】
そして、本実施の形態に係る植物栽培用資材においては、上述した所定サイズに調整された植物チップ、ファイバー或いはパウダーなどの植物由来物質に、肥料としての乾燥おからが混合される。
【0030】
乾燥おからは、豆腐の製造過程で得られるおから(含水おから)を自然乾燥させたものや、加熱処理等を施すことで得られたものや、後述する本発明者が見い出した方法により得られたものなどであってよい。
【0031】
なお、乾燥おからは、含水おからに比べ、腐敗し難いため、植物栽培用資材の保存性(植物栽培用資材は販売等を目的として流通されることも可能であり、店頭や倉庫などで比較的長期間保存可能であることが要求される)や植物の生育の観点から含水おからに場合に比べて有利であり、植物栽培用資材に混合される肥料として好適である。また、含水おからは廃棄されるものも多いため、これを処理して得られる乾燥おからを利用することは、低コスト化及び環境への負荷を小さくできるという点で好適である。
【0032】
乾燥おからのサイズとしては、本実施の形態に係る植物栽培用資材の成分である植物チップ、ファイバー或いはパウダー等の中に均一に混合して分散させることができるように、0.5〜3mm程度のパウダー或いはファイバー状のもの(0.5×0.5mm〜3×3mm程度のふるい目を通過したもの)を用いることができる。
【0033】
なお、乾燥おからは、市販等されているものを利用することができるが、後述するような本発明者が種々の実験研究により見い出した手法により得られる乾燥おからを用いることが、植物の生育に優れ、より一層環境への負荷を小さくできる点で好ましい。
【0034】
ここで、本実施の形態においては、上述した植物由来物質と、乾燥おからと、を混合して植物栽培用資材を作るが、各成分を繋ぎ合わせるために、バインダー(接着剤)が用いられる。
【0035】
植物チップ等と、乾燥おからと、を繋ぐバインダーとしては、人体や植物などに対する悪影響が少なく、環境に優しい水溶性バインダー(エマルジョン接着剤)を用いることができるが、例えば、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤を利用することができる。また、例えば、酢酸ビニル樹脂系、エチレン酢ビ樹脂系エマルジョン接着剤等も利用することができる。
【0036】
ここで、本実施の形態に係る植物栽培用資材は、例えば、以下のようにして生産される。
(1)まず、上述した植物由来物質と、乾燥おからと、を、例えばミキサーなど或いは手作業などでよく混合して、これらがほぼ均一に分散した状態とする。
【0037】
(2)その後、この混合したものに水溶性バインダー(エマルジョン接着剤)を注ぐ或いは噴霧等の方法で添加し、例えばミキサーなど或いは手作業などで良く混合して、ペースト状にする。
【0038】
(3)次に、上記(2)において得られた、植物由来物質と、乾燥おからと、水溶性バインダーと、が良く混合されたペースト状の混合物を、所定形状の型20に流し込み(図1の(A)参照)、油圧プレス等により所定に押し固めた後(図1の(B)参照)、植物栽培用資材10を型20から取り出す(図1の(C)参照)。
【0039】
(4)上記(3)で型から取り出した後、乾燥させることで、本実施の形態に係る植物栽培用資材が得られることになる。但し、場合によっては、プレスせずに所定の形状に固めることも可能である。
【0040】
なお、図2に示すように、植物栽培用資材10を破損等から保護するため、或いは比較的高い強度が要求されるような場合には、成形後に、金属その他の材料からなるメッシュ(網目状)のような所定に内側と外側を連通させる開口を有する包囲部材30で、植物栽培用資材10の周囲を取り囲み、これを乾燥させるようにしても良い。この際、植物の植え付け性と、強度と、の両面を考慮してメッシュサイズは適宜に選択可能である。例えば、約10mm×10mm程度のふるい目から約50mm×50mmのふるい目のものを用いることができるが、それ以下であっても良いし、それ以上であって良いものである。なお、腐食防止等の観点から、包囲部材30の材料としては、ステンレス、アルミ、樹脂、或いは竹、木材などの他植物性ファイバーなどを利用することができる。
【0041】
更に、上記(3)で成形する際に、金属その他の材料からなるメッシュ(例えば、約10mm×10mm程度のふるい目から約50mm×50mmのふるい目のもの)のような補強部材を混合物中に入れ込むことも可能である。なお、腐食防止等の観点から、かかる補強部材の材料としては、ステンレス、アルミ、樹脂、合成樹脂或いは竹、木材などの他植物性ファイバーなどを利用することができる。
なお、補強部材の代わりに、或いは補強部材と共に、前記包囲部材30を成形の際に同時に入れ込むことも可能である。例えば、図3〜図6に示したステップ(STEP)1〜8を参照することで実行することができる。
【0042】
ところで、前記包囲部材や補強部材のメッシュは、壁面緑化等のユニットとして用いる場合などにおいて、壁面等に取り付けるためのフック等と容易に係合可能であり、別途フックと係合させるためのブラケット等を植物栽培用資材に設ける必要がないため便利である。
【0043】
このようにして製造された本実施の形態に係る植物栽培用資材は、植物チップ等に含まれるバクテリアなどの細菌による発熱反応が活発化して、例えば成形後約7日程度の所定の期間、比較的高温な状態となる。但し、当該所定の期間は、植物栽培用資材の置かれた環境に応じて変化するものであるため、前後するものである。
【0044】
このため、電気や燃料等を用いて積極的に乾燥処理を行わなくても、植物栽培用資材は自然に内部から良好に乾燥が促進されることになり、比較的長期に亘って腐敗等から保護されることができる。
【0045】
更に、このように比較的高温な状態に所定の期間置かれることから、本実施の形態に係る植物栽培用資材は、例えば、害虫が混入した場合や、卵を産みつけたような場合などでも、これらは殺傷等されるので、長期に亘って衛生的な状態を維持することが可能で、長期保存等の要求に応えることができるものである。
【0046】
なお、植物栽培用資材を前記所定の期間放置してから、植物栽培用資材に対して植物の植え付け等を行うことができる。
【0047】
ここで、上記(1)、(2)における各成分の混合に関しては、植物チップ等を70〜90重量パーセント(重量%) 程度、乾燥おからを5〜25重量パーセント(重量%)程度、バインダーを重量5〜25パーセント(重量%)程度の割合で混合することができ、その割合は要求(植物栽培用資材の使用態様、植え付けた植物の生育状態など)に応じて適宜に選択され得るものである。例えば、乾燥おからを多く含ませたり、強固な特性が要求される場合にはバインダーを多く含ませたりすることができる。
なお、バインダーは、混合の際に、適宜に水で2〜5倍程度に薄めて用いることができる。
【0048】
また、植物チップ等や乾燥おから以外の成分、例えば、湿潤剤、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥などの肥料などを要求に応じて混合させることもできる。なお、湿潤剤を配合することにより、保湿性を適宜に調整することができるため、使用場所等によって本実施の形態に係る植物栽培用資材で栽培される植物の生育に有利なものとなり得る。さらに、状況によっては、砂、土などが混入されることも許容されるものである。
【0049】
このようにして製造される植物栽培用資材は、要求に応じて種々の形状とすることができ、例えば、立方体形状等の多面体、円盤形状、三角錐、四角錐などの多角錐形状、円錐形状などに成形することが可能である。また、例えば、所定の形状に成形した後、カッター、ノコギリ等を用いて切断し、適宜の形状に形成することも可能で、デザインに対する自由度が高いものである。
【0050】
また、当該植物栽培用資材は、縦置き、横置きなども可能で、かかる観点からもデザインに対する自由度が高いものである。
【0051】
このため、多様化する利用者の要求に応じて、家庭の庭、建物のベランダ、屋上、壁面、塀などを種々の目的(美観、装飾、目隠し、日除け、または花壇、家庭菜園などの目的)で、或いは生垣などの代わりとして用いる場合に、本実施の形態に係る植物栽培用資材は好適である。なお、屋上やベランダ、庭などに敷き詰めて植物を栽培するような方法での利用も可能である。
【0052】
また、本実施の形態に係る植物栽培用資材は、植物チップ等を主成分とし、これに乾燥おからを混合したものを無害なバインダーで結合したものであるため、例えば、水を与えたり、雨に晒されたり、更には水中に置かれたり、浮輪等が取り付けられて水上に浮かべられたりしても、例えば泥水や有害物質などが流れ出すことがないため、周囲を汚損したり、環境へ悪影響を与える惧れを最小限に留めることができる。
【0053】
従って、都市部におけるヒートアイランド対策として行われる緑化に利用する場合や、展示会場などに置かれるような場合でも、建物の壁面や床面や屋上を汚したり、展示会場を汚損したりすることがなく、また建物の居住者や利用者を有害物質に晒してしまうような惧れがないため、本実施の形態に係る植物栽培用資材は緑化ユニットとして用いる場合に好適である。
【0054】
また、比較的比重の小さい植物チップ等を主成分としているため、土壌等を主成分としたものに比べて軽量化を図ることができる。
【0055】
更に、本実施の形態に係る植物栽培用資材は適当なサイズに形成或いは切断等することで、一人或いは二、三人の人間で運べる1つの塊(ブロック)として取り扱うことが可能であり、かかる場合には、取り扱いが容易で、複数の植物栽培用資材を保管したり、搬入したり、搬出したりする作業を効率良く迅速に行うことができるといった利点がある。
【0056】
従って、建物等への搬入搬出も容易で緑化する際の施工時間を短縮化できると共に、季節ごとの入れ替えなども容易である。更に、比較的短いインターバルで搬入搬出が行われるような展示会などにおけるオブジェとして或いは宣伝媒体などとして利用する場合にも有利なものとなる。
【0057】
ところで、本実施の形態に係る植物栽培用資材への植物の植え付けは、当該植物栽培用資材のどの面に対しても行うことができる。
【0058】
本実施の形態に係る植物栽培用資材に植物を植え付ける際には、草花などにおいては、例えば、ドリル等により表面に穴を複数開口し、当該開口した穴に根や種を植え付けることができる。
従って、植え付ける場所や花の色を考慮することで、例えば花文字など種々のデザインに対応することができる。
【0059】
更に、植物栽培用資材毎に植え付ける植物や花の色を変えることで、複数の植物栽培用資材を並べて配設しこれらを全体として見たときに、所定のデザイン(花文字なども含む)を構成するように、各植物栽培用資材を適宜配列することも可能である。
【0060】
また、芝やコケ等のように密集して育つ植物の場合には、ある程度生育したものを所定の大きさに取り出すなどして、これを本実施の形態に係る植物栽培用資材の表面に移植することで植え付けを行うことができる。
【0061】
ここで、図7〜図10に、本実施の形態に係る植物栽培用資材に植物を植え付けたものの利用例を示す。
図7は、本実施の形態に係る植物栽培用資材に植物を植え付けたものを縦横方向に複数並べて配設し、生垣などに利用した一例を示したものである。
図8は、本実施の形態に係る植物栽培用資材を対面する三角面を有する形状に成形或いは切断し、それに植物を植え付け、種々のデザインに対応可能とした一例を示したものである。
図9は、本実施の形態に係る植物栽培用資材に植物を植え付けたものを縦方向に複数並べて配設したものを複数列に並べ、正面方向から見たものである。
図10は、図9のものを、横方向から見たもので、前面及び裏面の両側に植物が植え付けられている様子を示したものである。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態に係る植物栽培用資材によれば、製造が容易で低コストでありながら、植物の生育に優れると共に、環境への負荷が小さく、かつデザインの自由度が大きく取り扱いも容易で種々の目的に利用することができる植物栽培用資材を提供することができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る植物栽培用資材の成分として利用するのに適した乾燥おからを、環境への負荷が小さくかつ比較的短時間で得ることができる処理方法(乾燥おからの生産方法)を、本発明者は種々の研究実験を繰り返すことで見い出した。
【0064】
ここで、本発明者が見出した処理方法について、以下に詳細に説明する。
まず、図11のステップ(Sと記す。以下、同様)1では、例えば、雨に晒されないような屋根を有し、かつ風通しのよい場所、或いは湿度温度等を適当に管理可能な室内などに、豆腐の製造過程で得られるおから(含水おから;ある程度自然乾燥したものも含む概念である)を搬入する。状況に応じて、当該おからの搬入後直ちにS2へ進むこともできるし(すなわち、当該S1を省略することもできる)、所定期間(例えば、数時間、数日間或いは腐敗等の生じない期間)留めて自然乾燥等させてから、S2へ進むことができる。
【0065】
S2では、回転ドラムミキサー等に含水おからを投入し、所定に含水おからを掻き混ぜて解す(撹拌する)。或いは、手作業で行う場合は、含水おからを所定に掻き混ぜて解しながら床面に広げて行く。
【0066】
S3では、回転ドラムミキサー内の含水おからに対して酵母菌を含む酵母エキスを添加し、含水おからと酵母エキスとを掻き混ぜて所定に混合する。或いは、手作業で行う場合は、S1で床面に広げた含水おからに対してスプレー等を用いて前記酵母エキスを噴霧等により添加し、含水おからと酵母エキスとを掻き混ぜて所定に混合する。
【0067】
なお、前記酵母エキスは、含水おからとの混合を良好なものとするために、適宜に水で希釈(例えば、水で10〜20倍程度に希釈)して利用することができる。また、酵母エキスの種類、量、希釈率などは、本発明の処理方法により得られる乾燥おからを用いた植物栽培用資材に植え付けた植物の生育具合いなどを観察して、適宜に選択・調整することができるものである。
【0068】
ここで、前記酵母エキスは、特に限定されるものではなく、錠剤、顆粒状のものを水に解いたものを用いることもでき、また市販の微生物培養酵母エキスや、食物添加用の酵母エキスなどを用いることができる。
【0069】
なお、前記酵母エキスには、植物ホルモンであるエチレンの生成を促進することによって植物が本来もっている病虫害抵抗力を高めるべく、環境に優しく、低コストで安全な活性酸素種を含む電解水が添加されることができる。また、光合成を促進するための光触媒(例えば酸化チタン)、発根促進剤(例えばメチオニン)、保湿剤或いは樹体維持/有効菌の生育促進剤(例えばトレハロー)などを添加することもできる。
【0070】
すなわち、このようなあるいはこれ以外の各種特性を有する物質を含む市販の酵母エキスを、本発明の処理方法により得られる乾燥おからを用いた植物栽培用資材に植え付けた植物の生育具合いなどを観察して、種々選択して利用することができる。
【0071】
S4では、S3で適宜に酵母エキスが混合されたおからを回転ドラムミキサー等から取り出して、或いは床面で混合した場合はそこから取り出して、所定の大きさ(例えば、0.5m〜1m四方)の金属製(例えば、アルミやステンレスなど)、木製、樹脂製、合成樹脂製等のメッシュ(メッシュサイズとしては、例えば10mm×10mm程度)の上に移動し、約50mm程度の高さに均す。
【0072】
S5では、S4で得られるメッシュ上に約50mmの高さで敷き詰められたおからと酵母菌エキスとを混合した混合物を、図12に示すように、複数段に所定間隙をもって(例えば、高さ方向において、混合物の上面と、下段にある混合物を載置したメッシュの下面と、の間に約50mmの空間を持つように)積み重ねて、所定に発酵させる。この発酵により含水おからは発熱し、その内側を含むおから全体で乾燥が促進される。
【0073】
なお、発酵場所としては、乾燥を促進するために、例えば、雨に晒されないような屋根を有しかつ風通しのよい場所、或いは湿度温度等を管理可能で適当に風を送ることができる室内などとすることができるが、上述のようにメッシュ上に載置し、これを複数段に積み重ねて置くことで、狭いスペースであっても比較的多量の混合物を一度に処理することができるため作業能率を高めることができる。
【0074】
このような状態で数日間(例えば約7日程度)おくと、含水おからは所定に発酵して温度が上昇し、乾燥が促進されると共に、植物の生育に適した成分(N:窒素、P:リン、K:カリなど)を有するようになる。
【0075】
S6では、S1からS5により得られた乾燥おからをメッシュの上から取り出す。
このようにして得られた乾燥おからは、本発明に係る植物栽培用資材に用いる乾燥おからとして適しており、また環境への負荷が小さくかつ比較的短時間で含水おからから得ることができるものである。
【0076】
なお、更に好ましい処理方法について、以下で説明する。
S7では、S6で取り出した乾燥おからと、S1の含水おから(発酵処理のなされていない含水おから)と、を、乾燥おからが容積で約50%〜70%程度となるように混合する。
【0077】
S8では、S2と同様に、S7で得られた乾燥おからと含水おからとを混合した混合物を回転ドラムミキサー等に投入し、掻き混ぜて解す。或いは、手作業で行う場合は、前記混合物を所定に掻き混ぜて解しながら床面に広げて行く。
【0078】
S9では、S3と同様に、回転ドラムミキサー内の前記混合物に対して酵母菌を含む酵母エキスを添加し、前記混合物と酵母エキスとを掻き混ぜて所定に混合する。或いは、手作業で行う場合は、床面に広げた前記混合物に対してスプレー等を用いて前記酵母エキスを噴霧し、前記混合物と酵母エキスとを掻き混ぜて所定に混合する。
なお、前記酵母エキスは、既述したものと同様のものを用いることができる。
【0079】
S10では、S9で適宜に酵母エキスを混合した前記混合物を回転ドラムミキサー等から取り出して、或いは床面で混合した場合はそこから取り出して、S4で説明したと同様に、所定の大きさ(例えば、0.5m〜1m四方)の金属製、木製、樹脂製等のメッシュ(ふるい目の大きさとしては、例えば10mm×10mm程度)の上に移動し、約50mm程度の高さに均す。
【0080】
S11では、S5で説明したと同様に、メッシュ上に約50mmの高さで敷き詰められたおからと酵母菌エキスとを混合した混合物を、図12に示すように、複数段に所定間隙(高さ方向において約50mm)をもって積み重ねて、所定に発酵させる。
【0081】
このような状態で数日間(例えば約7日程度)おくと、乾燥おからと含水おからとを混合した混合物は所定に発酵して温度が上昇し、乾燥が促進されると共に、植物の生育に適した成分(N:窒素、P:リン、K:カリなど)を有するようになる。なお、かかる場合は、既に一度発酵処理が施された乾燥おからが約50%〜70%含まれているため、より一層乾燥が早く、かつ、植物の生育により適した成分組成となる。
【0082】
S12では、S7からS11により得られた乾燥おからをメッシュの上から取り出す。
なお、S6及びS12で得られた乾燥おからは、本発明に係る植物栽培用資材に利用される場合には、植物チップ、ファイバー或いはパウダー中に均一に混合して分散させることができるように、0.5〜3mm程度のパウダー或いはファイバー状に粉砕、破砕等されることができる。
【0083】
上述したような処理方法により、含水おからから乾燥おからを得る場合には、酵母菌による発酵による発熱によって乾燥が促進されるため、電気や燃料等の化石燃料などに基づくエネルギを利用した加熱手段を用いる場合に比べて環境への負荷を最小に抑えながら、比較的短時間で植物の生育に重要な栄養素を多く含む乾燥おからを得ることが可能となる。
【0084】
また、本実施の形態に係る処理方法により得られる乾燥おからは、比較的高温に維持される発酵過程を経ているため、電気や燃料等の化石燃料などに基づくエネルギを用いて積極的に乾燥処理を行わなくても、自然に内部から十分に乾燥されることになり、比較的長期に亘って腐敗等から保護されると共に、例えば、含水おからに害虫が混入した場合や、卵を産みつけたような場合などでも、これらは殺傷等されるので、長期に亘って衛生的な状態を維持することが可能で、長期保存等の要求に応えることができるものである。
【0085】
なお、上述した処理方法により得られる本実施の形態に係る乾燥おからは、本実施の形態に係る植物栽培用資材の成分として利用する場合に適しているが、これに限定されるものではなく、一般的な植物の肥料としても有益である。
【0086】
特に、廃有機材である含水おからを利用するものであって経済的であると共に、その処理過程において環境への負荷が極めて小さく、かつ環境汚染等への悪影響がなく極めて環境に優しく安全な肥料として、その利用の拡大が期待されるものである。
【0087】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る一実施の形態に係る植物栽培用資材の製造工程の一部を説明するための図である。
【図2】同上実施の形態に係る植物栽培用資材のメッシュ状の包囲部材への収容を説明するための図である。
【図3】同上実施の形態に係る植物栽培用資材の製造工程(メッシュ状の包囲部材を入れ込む方法)を説明するための図である(STEP1、2)。
【図4】同上実施の形態に係る植物栽培用資材の製造工程(メッシュ状の包囲部材を入れ込む方法)を説明するための図である(STEP3、4)。
【図5】同上実施の形態に係る植物栽培用資材の製造工程(メッシュ状の包囲部材を入れ込む方法)を説明するための図である(STEP5、6)。
【図6】同上実施の形態に係る植物栽培用資材の製造工程(メッシュ状の包囲部材を入れ込む方法)を説明するための図である(STEP7、8)。
【図7】同上実施の形態に係る植物栽培用資材に植物を植え付けたものを縦横方向に複数並べて配設し、生垣などに利用した一例を示す図である。
【図8】同上実施の形態に係る植物栽培用資材を対面する三角面を有する形状に成形或いは切断し、それに植物を植え付け、種々のデザインに対応可能とした一例を示す図である。
【図9】同上実施の形態に係る植物栽培用資材に植物を植え付けたものを縦方向に複数並べて配設したものを複数列に並べ、正面方向から見たものである。
【図10】図9のものを、横方向から見たもので、前面及び裏面の両側に植物が植え付けられている様子を示したものである。
【図11】同上実施の形態に係る乾燥おからの生産方法を説明するためのフローチャートである。
【図12】同上実施の形態に係る乾燥おからの発酵・乾燥工程について一例を挙げて説明する図である。
【符号の説明】
【0089】
10 植物栽培用資材
20 型
30 包囲部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定サイズに調整されたチップ、ファイバー或いはパウダー状の植物由来物質と、
乾燥おからと、
水溶性バインダーと、
の少なくとも3つを混合し、当該混合物を所定の形状に固めて得られることを特徴とする植物栽培用資材。
【請求項2】
前記乾燥おからは、豆腐の製造過程で得られるおからに、少なくとも酵母菌を添加して発酵させ、当該発酵による発熱を利用して所定に乾燥されたものであることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培用資材。
【請求項3】
前記植物由来物質は、伐採木、樹皮、剪定枝、葉、穀物、穀物の殻、果物、果物の皮、種子等の植物由来の物質に基づくものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物栽培用資材。
【請求項4】
前記水溶性バインダーは、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の植物栽培用資材。
【請求項5】
前記混合物を所定圧力でプレス成形して得られることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の植物栽培用資材。
【請求項6】
前記植物由来物質及び前記乾燥おからは、0.5×0.5mm〜3×3mm程度のふるい目を通過するサイズのものが主成分となるように調整されていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の植物栽培用資材。
【請求項7】
メッシュ状の包囲部材により囲われることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の植物栽培用資材。
【請求項8】
前記混合物を所定の形状に固める際に、補強部材が入れ込まれることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の植物栽培用資材。
【請求項9】
豆腐の製造過程で得られたおからに、少なくとも酵母菌を添加し、当該添加した酵母菌の作用により発酵させ、当該発酵による発熱を利用して前記おからを所定に乾燥させることを特徴とする乾燥おからの生産方法。
【請求項10】
酵母菌の他に、活性酸素種を含む電解水、光触媒、発根促進剤、保湿剤、生育促進剤のうちの少なくとも1つが添加されることを特徴とする請求項9に記載の乾燥おからの生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−213372(P2009−213372A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58146(P2008−58146)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(308002049)
【Fターム(参考)】