説明

植物精油を配置した足白癬の予防と治療のための靴インソール

【課題】患者数が多く再発しやすい足白癬に対し、効果が確実で安全性が高く、かつ安価で簡便な予防と治療のための器材を患者に提供する。
【解決手段】趾間型の足白癬に対しては、患部が足裏方面に限定されている場合は、少なくともその部分にあたる靴インソールに植物精油を配置すれば十分な効果を得ることができる。しかしながら、患部が足甲方面にも広がっている場合は、靴インソールにカバーを加え、双方に植物精油を配置して初めて効果を確実にすることができる。また、患部の近傍にあたる靴インソールの部分およびカバーに、本体とは別の材質の生地を張り付け、それに植物精油を配置することにより抗白癬菌効果をさらに高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は白癬菌により発症する足白癬を予防または治療するための方法および器材に関する。
【背景技術】
【0002】
白癬菌は角化した皮膚の組織、すなわち角質層や毛髪および爪に侵入・発育し、局所の感染(白癬)を引き起こす。白癬はあらゆるヒトの疾患の中でもっとも罹患率が高く、ほぼ世界のすべての地域において人口の10%以上が常時罹患しているといわれ、日本においても患者数は1千万人を超えると推定されている。患者数がもっとも多いのが足白癬で俗に「水虫」といわれ、その中で最も高頻度にみられるのは趾間型であって、とくに第4趾と第5趾の間がもっとも多い。白癬の治療は爪白癬における内服を除き、一般的には薬剤を直接患部に接触させる、いわゆる外用塗布剤によってなされているが、白癬は治療薬に対する抵抗性が強く再発を繰り返しやすい。さらに白癬菌は一部のヒトやペット動物に常在し、容易に別のヒトに再感染を起こす。これらの特性から白癬の罹患率は依然として高い水準に留まっている。白癬はトリコフィトン属、エピデルモフィトン属、ミクロスポルム属の真菌による感染によって引き起こされるが、起因菌としてはTrichophyton rubrum、T.mentagrophytes、Epidermophyton floccusumの順に多い。
【0003】
抗白癬菌活性のある植物精油を直接患部に接触させず、その蒸気を利用して足白癬を予防または治療するための方法および器材についてはすでに公開されているものがある(特許公開2000−128800、水虫の感染予防および/又は治療法およびその器材)。しかしながら植物精油の蒸気について、その配置個所からの有効範囲を詳細に調べ、それに基づいて植物精油の配置を工夫し、足白癬に対する予防または治療効果を確実に発揮させることができる靴インソールについてはこれまで報告されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、患者数がもっとも多い足白癬の予防と治療のために、抗白癬菌活性のある植物精油の配置を工夫し、安全性が高く効果があり、かつ安価で簡便な靴インソールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
白癬菌は好気性で皮膚の表層近くに生育する。植物精油蒸気の主成分は疎水性で低分子量のテルペン系化合物であり、容易に皮膚表層に浸透して白癬菌に到達する。また白癬菌の菌体および胞子は親油性が高く、疎水性の植物精油成分をよく吸着、吸収する。こうして白癬菌に吸収された植物精油成分はその生育を抑制し、さらには殺菌して効果を発揮する。しかしながら植物精油成分が蒸発して配置個所から離れた白癬患部に到達し、その場で効果的な抗白癬菌活性を発揮するためには両者の距離がある範囲に限られており、それについてこれまで詳細に検討されてこなかった。本発明者らはプラスチック製のヒト足型を作成し、それに浅い穴を数カ所開けて白癬菌が生育した寒天培地を埋め込み、靴下とさらに植物精油を配置した靴インソールを敷いた皮靴を履かせてモデル実験を試みた。その結果、植物精油の配置個所から白癬患部までの距離が1.5cm以内であれば予防と治療に十分な効果が発揮されるが、それ以上の距離では必ずしも十分な効果が得られないことを見出し本発明に至った。なお本発明における植物精油とは、ハーブなどの植物材料から水蒸気蒸留、圧搾または溶媒抽出によって得られた芳香性油状物質をいう。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、足白癬に対し抗白癬菌活性のある植物精油蒸気が効果を発揮するよう植物精油の配置を工夫した靴インソールであって、それを使用することにより足白癬の効果的な予防ないしは治療が可能である。また安全性が高く安価で簡便であり、患者が日常的に使用することが容易である。それらによって再発しやすい足白癬の予防および治療に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、抗白癬菌活性のある植物精油を、十分な効果が得られるよう配置を工夫した靴インソールである。もっとも多い足白癬は趾間型であるが、その患部が足裏方面に限局されている場合は、少なくともそれにあたる領域を含む部分に植物精油を配置した靴インソールをもって予防ないし治療が可能である。
しかしながら患部が足甲方面にも広がっている場合はその近傍にも植物精油を配置する必要があり、その方法の一つが植物精油を添加した足甲のカバーである。また実施例に示す通り、精油蒸気を下方に拡散させる方が上方に拡散させる場合よりも抗菌効果を発揮しやすく、カバーを加えることは一層効果的である。またカバーは靴インソール本体から容易に着脱できるものが望ましく、それによって効果が落ちた旧いカバーを新しいものに交換し、再び高い効果を得ることができる。すなわち足白癬の患部の広がりに応じてそれに相応しい靴インソールを選ぶことが肝心であり、それによって足白癬の確実な予防ないしは治療が可能になる。
【0008】
本発明で使用できる植物精油は抗菌効果のあるものであれば利用可能であるが、とくに強い抗白癬菌活性を有する例として以下のものがあげられる。クローブ油、オレガノ油、ティートリー油、ラベンダー油、ゼラニウム油、シソ油。これらの中から1種類または複数の植物精油を選び、靴インソールおよびカバーに配置する。場合によっては、芳香がありかつ消臭効果がある植物精油、たとえばペパーミント油などを同時に加えてもよい。
【0009】
本発明で使用する植物精油の配置は、白癬患部近傍にあたる領域を含む靴インソールの部分およびカバーにスプレーで噴霧することにより容易におこなうことができる。スプレーの方法としては、植物精油を適度な濃度で含ませてた溶液スプレー、植物精油を直接液化ガスに溶解したエアゾルスプレーなどが利用可能である。植物精油を配置する靴インソールの部分およびカバーには、本体とは別の材質の生地を張り付けて植物精油の保持能力を改善し、それによってさらに効果を高めることができる。
また本発明で使用する植物精油はマイクロカプセル化して靴インソールおよびカバーに散布して配置してもよく、それによって効果の持続性を改善させることができる。
【実施例】
【0010】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0011】
実施例1.接種した白癬菌の小分生子数と生育後のコロニーサイズ
【0012】
帝京大学医真菌研究センターに保存されている白癬菌T.mentagrophytes TIMM2789を種菌として用い、それを1/10サブロー・グルコース斜面培地に接種し、27℃、1週間培養すると菌が生育し小分生子を生成する。小分生子が生成した培地に0.05%ツイーン80含有の生理食塩水を加えて懸濁し、小分生子を含む上澄みを調製する。その上澄みを生理食塩水を用いて希釈し、含まれる小分生子を以下の数になるよう調整する。10、10、10、10、10、10cells/ml。
サブロー・グルコース寒天培地を滅菌シャーレ(直径8.5cm、栄研化学、東京)に分注して作成した平板に、数を調整した小分生子浮遊液100μlをそれぞれ接種し、コンラージ棒で均一に塗り広げる。27℃、2日間培養後、菌糸が均一に発育した部分の平板をコルクボーラーNO.3(内径7mm)で打ち抜き、菌糸が付着した寒天ブロックを切り出す。
初発の分生子数が同じ平板から菌糸が生育した寒天ブロック3個を切り出し、それらを栄研滅菌1号角シャーレ(230×80×15.5mm)にサブロー寒天培地65mlを分注して作成した平板に、それぞれ菌糸面を上にして置き、27℃、4日間培養する。
【0013】
初発の小分生子数と、同じ分生子数から生育した3個のコロニーの平均サイズを表1に示す。初発の小分生子数とコロニーの平均サイズは正相関を示し、それらを片対数グラフにプロットして検量線を作成した。とくに小分生子数が10〜10の間では直線関係が得られた。すなわちコロニーサイズを測定することにより初発の生菌数を推定することが可能になった。
【0014】
【表1】

【0015】
実施例2.密閉箱を用いた植物精油蒸気の抗白癬菌活性の測定
【0016】
密閉箱として内容積1.3lの硬質プラスチック箱(Jalee,Ltd.東京)を用い、その中に滅菌ガラス皿(直径9cm)を入れ、滅菌濾紙(直径8cm)を敷いて滅菌水3mlを添加する。この上に白癬菌が生育した3個の寒天ブロック(小分生子数10を接種して培養した平板から調製)を菌糸面を上にして置く。滅菌濾紙(直径9cm)を折り目と直角に交わる直径が8:2になるように折り、大きい部分を滅菌ガラス皿に垂直に立てる。立てた部分の先端に一定量の植物精油を塗布するが、その量が20mg以下の場合は予め酢酸エチルに溶解し、それを植物精油が一定量になるよう塗布する。
このように白癬菌と植物精油を入れて箱を密閉し、27℃、24時間保管する。その後3個の寒天ブロックを取り出し、別に1号角シャーレに調製したサブロー寒天培地平板に菌糸面を上に移し(シャーレ1枚に寒天ブロック6個)、27℃、4日間培養する。ブロックから生育した白癬菌のコロニーサイズをノギスを用いてそれぞれ測定し、3個の測定値の平均から実施例1で作成した検量線によって生菌数を算出する。さらに精油蒸気で曝露して残った生菌数を、無処置群の生菌数で除して100を掛け、得られた菌生存率(%)を計算し、その数値をもって抗白癬菌活性を表した。
【0017】
表2に菌生存率で表した各植物精油の抗白癬菌沽性を示す。もっとも少量で強い効果を示したのはオレガノ油であり、ついでクローブ油、シソ油、ゼラニウム油、ラベンダー油、ティートリー油の順であったが、いずれも顕著な効果を発揮した。
【0018】
【表2】

【0019】
実施例3.植物精油蒸気の抗白癬菌活性に対する拡散方向の影響
【0020】
植物精油蒸気の抗白癬菌活性に対する拡散方向の影響について、実施例2と同様、密閉箱を用いる方法によって調べた。すなわち下方に拡散する蒸気の効果を調べる場合は、密閉箱の中に白癬菌の生育した寒天ブロックを置いたガラス皿を入れ、その上に金網を設置し、植物精油を塗布した濾紙をガラス皿の真上に置いた。上方に拡散する蒸気の効果を調べる場合は、設置した金網の上に寒天ブロックを入れたガラス皿を置き、その真下に植物精油を塗布した濾紙を置いた。3ないし24時間、27℃で保管し、寒天ブロックを取り出して白癬菌生存率を調べた。その結果を表3に示す。
【0021】
オレガノ油の例で示すと、距離が同じでも、3時間の曝露では下方拡散の方が強い活性を示した(生存率が低かった)。しかしながら曝露が24時間になると生存率が著しく低下し、両者の差は検出できなくなった。ティートリー油の例で示すと、上方拡散の場合、距離が短い方が活性が強かった。しかしながら下方拡散の方がさらに強い活性を示した。シソ油の場合、本実験の添加量では強い活性を示し、拡散方向による差は検出できなかった。以上をまとめると、植物精油の添加量および曝露時間を同一に設定した場合、蒸気の下方拡散の方が上方拡散よりも強い活性を示す。また、植物精油配置個所と白癬菌までの距離が近い方が強い活性を示す。
【0022】
【表3】

【0023】
実施例4.足型モデルおよび靴を用いた植物精油蒸気の抗白癬菌活性の評価
【0023】
数カ所穴(直径1cm、深さ1cm)を開けた硬質プラスチック製の足型モデルを作成し、滅菌後、その穴にそれぞれ脱脂綿を厚さ5mmになるよう詰め、滅菌水を注入する(白癬菌の乾燥を防ぐため)。その上に白癬菌の生育した寒天ブロックを菌糸面を外側にして入れ、市販ナイロン製ソックスを履かせて、牛皮製短靴に収めた。靴インソールにもコルクボーラーNO.2(内径10mm)で穴を開け、植物精油を添加したペーパーディスク(直径8mm)を置いて予め短靴に敷いた。足型モデルと靴インソールの穴は、精油蒸気効果の距離による影響が定量的に評価できるよう、精油配置個所と白癬菌との距離が一定になるようそれぞれ調整して開けた。靴インソールに添加した各種植物精油の量は、密閉箱による試験結果を基に靴内容積を仮に1lと仮定してそれぞれ決定した。
白癬菌と植物精油を収めた靴は、27℃、6ないし24時間保管し、足型モデルから白癬菌の付着した寒天ブロックを取り出し、新たに調製したサブロー寒天培地平板(1号角シャーレ)に移した。実施例2および3と同様、寒天ブロックは、27℃、4日間培養し、生育したコロニーサイズから初発の生菌数を算出し、無処置群の生菌数と併せ計算して菌生存率(%)を求め、それをもって効果の指標とした。菌生存率(%)は10%以下をもって有効と判定した。
【0024】
実施例4.1.足型モデルの甲側に白癬菌を置いた場合の試験
【0025】
この試験では足型モデルの甲側、足指付け根付近の2筒所に白癬菌の生育した寒天ブロックを置いた。またティートリー油(8または20μg/ペーパーディスク)、オレガノ油(1または5μg/ペーパーディスク)、クローブ油(2または10μg/ペーパーディスク)、ゼラニウム油(4または20μg/ペーパーディスク)をそれぞれ同じ水準で添加したペーパーディスク2枚を靴インソールの足指付け根付近に配置した。結果はいずれの植物精油を用いても有効と判定される効果は得られなかった。すなわち密閉箱の試験から期待された結果とは異なり、足の甲側の白癬患部に対しては靴インソールに配置した植物精油は効果を発揮し難いものと考えられた。
【0026】
実施例4.2.足型モデルの裏側に白癬菌を置いた場合の試験1
【0027】
本試験では裏側に3穴をもつ足型モデル(図1A)を用い、足指付け根部分に2箇所、土踏まず部分に1箇所、それぞれに白癬菌の生育した寒天ブロックを置いた。植物精油は足指付け根部分の寒天ブロックにあたるよう靴インソール2箇所に配置した。なお植物精油配置箇所から土踏まず部分の寒天ブロックまでの距離は12cmに設定した。結果を表4に示す。低用量の場合、6時間曝露では全ての精油が無効であったが、高用量(低用量の10倍)にするとティートリー油、オレガノ油では足指付け根部分の白癬菌に対し効果を発揮した。24時間曝露ではオレガノ油を除いた他の精油は、いずれも低用量で効果を発揮した。しかしながら土踏まず部分の白癬菌に対しては全ての精油が無効であった。以上の結果は、精油が白癬菌の近傍に配置されてはじめて効果を発揮することを示している。
【0028】
【表4】

【0029】
実施例4.3.足型モデルの裏側に白癬菌を置いた場合の試験2
【0030】
本試験では、試験1と同様に裏側に3穴をもつ足型モデルを用いたが、植物精油の配置方法を変更した。すなわち靴インソールのつま先部分にその形に合わせて切り抜いた約40cmの濾紙片を置き、その全体に酢酸エチルに溶かした精油を均一に塗布した。試験結果を表5に示す。足指付け根部分の白癬菌に対しては、低用量のオレガノ油を除いて全ての精油が低用量でも効果を発揮した。しかしながら精油を塗布した濾紙片の末端から約7cm離れた土踏まず部分の白癬菌に対しては全ての精油が高用量でも効果がなかった。以上の結果は、精油を白癬菌にあたる狭い範囲にスポット的に配置するのではなく、その範囲を含む数10cmの面積に精油を配置しても効果を発揮すること、しかしながら精油と白癬菌の距離が離れ過ぎると効果が認められなくなることを示している。
【0031】
【表5】

【0032】
実施例4.4.足型モデルの裏側に白癬菌を置いた場合の試験3
【0033】
本試験では裏側の足指付け根部分を中心に8穴をもつ足型モデル(図1B)を用い、それぞれに白癬菌の生育した寒天ブロックを置いた。植物精油は設定した添加量をペーパーディスク3枚にそれぞれ塗布し、靴インソールの足指付け根付近を中心に3箇所配置した。インソールを敷いた革靴に靴下を履かせた足型モデルを入れ、それを27℃、24時間保管し効果を判定した。試験結果を表6に示す。試験した全ての精油は、配置した個所から離れた位置に置いた白癬菌を除き、近傍の白癬菌全てに対し有効であった。例えばティートリー油の場合は、精油配置個所の真上に置いた白癬菌、NO. 、 、 の他、配置個所近くに置いた白癬菌、NO.2、3、5、6に対しても有効であった。しかしながら距離が離れた白癬菌、NO.8に対しては有効な効果は得られなかった。また、とくにシソ油は強い抗白癬菌効果を発揮した。白癬菌と精油配置個所の距離を調べ、それぞれの距離を効果と結びつけて判定すると、両者の距離が1.5cm以内であればその効果は確実に有効と評価された。それよりも離れた場合は必ずしも有効な効果は得られなかった。以上の結果から、本試験のように比較的少ない精油の用量で有効な効果を得るためには、精油配置個所と白癬菌との距離を1.5cm以内に収めることが必要と結論した。
【0034】
【表6】

【0035】
実施例5.1.靴インソールに植物精油を噴霧した場合の足形モデルによる評価1
【0036】
以下の方法によりスプレー用の製剤を調製した。それぞれティートリー油3.5%、ラベンダー油3.5%、ゼラニウム油1.0%、ペパーミント油2.0%を含むブレンド精油を予め調製し、それぞれ70%エタノール80%、イソプロパノール15%、グリセリン5%より成る混合溶媒に5%濃度に溶解した。この製剤を靴インソールの先端部分(約25cm)にスプレーした後、靴インソールを室温で5分間風乾し革靴に敷いた。1回の噴霧量は0.8mlとし、2から5回それぞれ噴霧した。本試験では裏側に3穴をもつ足型モデル(図1A)を用い、それぞれの穴に生育した白癬菌の寒天ブロックを置き、靴下を履かせた。それを靴インソールを敷いた革靴に入れ、27℃、24時間保管して効果を判定した。試験結果を表7に示す。先端部分でより抗白癬菌効果が強く、また噴霧回数が増えるに伴って効果が強まった。
【0037】
【表7】

【0038】
実施例5.2.靴インソールに植物精油を噴霧した場合の足形モデルによる評価2
【0039】
本実験に用いた靴インソールは、本体の先端部分にアルミホイルを間に挟んで濾紙(約25 )を敷き、周辺部をホチキスで留めて使用した。スプレー用の製剤は実施例5.1と同様に調製した。この製剤を濾紙にスプレーした後、靴インソールを室温で5分間風乾し革靴に敷いた。スプレー用製剤の噴霧量および回数、用いた足型モデルおよび保管条件は実施例5.1と同様にした。試験結果を表8に示す。先端部分での抗白癬菌効果は実施例5.1の結果に比較して著しく強まった。この結果は植物精油を保持する生地の材質により抗白癬菌効果を大きく改善することが可能であることを示している。またインソールを靴に収める前に噴霧する方が、植物精油は限定して配置され、より好ましい効果が得られた。
【0040】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、足白癬に対し抗白癬菌活性のある植物精油蒸気が実際に効果を発揮するよう植物精油の配置を工夫した靴インソールであって、それを使用することにより足白癬の効果的な予防ないし治療が可能になる。また本発明は安全性が高く安価で簡便であり、患者が日常的に使用することが容易である。以上の理由により、本発明は患者数が多く再発しやすい足白癬の予防および治療に寄与することが可能であり、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】Aは裏側に3穴を持つ足型モデルとそれを収めた牛皮製短靴の写真である(実施例4.2および4.3において使用)。Bは裏側に8穴を持つ足型モデルとそれを収めた牛皮製短靴の写真である(実施例4.4において使用)。
【符号の説明】
【0043】
図1のAおよびBの数字は足型モデルに開けた穴の番号を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗白癬菌活性を有する植物精油を、直接皮膚に接触させることなく患部または感染を防ぎたい部位から1.5cm以内の領域に配置し、それによって足白癬の治療または予防をおこなうことを特徴とする靴インソール
【請求項2】
請求項1において、少なくとも足指およびその付け根にあたる領域を含む部分に抗白癬菌活性を有する植物精油を配置し、それによって足白癬の治療または予防をおこなうことを特徴とする靴インソール
【請求項3】
請求項1および2において、抗白癬菌活性を有する植物精油を配置する領域に本体とは別の材質の生地を張り付け、それによって足白癬の治療または予防おこなうことを特徴とする靴インソール
【請求項4】
請求項1、2および3において、足指の付け根からつま先までの足の甲側を被うカバーを有する靴インソールであって、カバーにも抗白癬菌活性を有する植物精油を配置することを特徴とする足白癬の治療または予防のための靴インソール
【請求項5】
請求項4において、カバーが交換可能なものであり、かつ本体とは別の材質の生地を張り付けて抗白癬菌活性を有する植物精油を配置し、それによって足白癬の治療または予防をおこなうことを特徴とする靴インソール
【請求項6】
請求項1、2、3、4および5において、抗白癬菌活性を有する植物精油として、クローブ油、オレガノ油、ティートリー油、ラベンダー油、ゼラニウム油およびシソ油の中から少なくとも1種類を選んで配置することを特徴とする足白癬の予防と治療のための靴インソール

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−68933(P2007−68933A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291713(P2005−291713)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(501239103)
【出願人】(391039966)株式会社フットテクノ (8)
【Fターム(参考)】