説明

椎間の診断用および処置用機器

【課題】低侵襲性で能動的にガイドされ、後線維輪の内面に直接かつ安定した進入をもたらす椎間板の修復および診断機器であって、後線維輪から意図せずに出て行くことなく脊髄を傷めない機器を提供する。
【解決手段】前進器、プッシュロッド、又はアクチュエータは、中空送出カニューレによって軸方向に移動可能に支持され、柔軟なプローブ部材20に結合される。プローブ部材の遠位端に接続するプローブチップ80を有する。プローブ部材は、湾曲した経路または曲面を有するスロットから出て、カニューレの縦軸に対して30〜150度の角度で前進できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、椎間板の診断および治療を行うための機器および機器装備と、その方法に関する。
【背景技術】
【0002】
椎間板は、脊椎の抑制された柔軟性を可能にしながら機械的負荷を吸収するという重要な役割を演ずる。椎間板は、強靭な網状線維輪に取り囲まれた軟質の中心髄核からなる。ヘルニアは、この線維輪が弱くなる結果引き起こされる。症候性ヘルニアは、線維輪が弱いために髄核が脊髄および神経根に向かって後方に膨隆しまたは漏れたときに生じる。ヘルニアの最も一般的な症状には、圧迫された神経に沿う放散痛および下背痛が含まれ、そのどちらも患者を不自由にする可能性がある。ヘルニア、およびその結果生じるリハビリしにくい症状は、診断の平均年齢が低いことから米国では医療上重大な問題である。事実、ヘルニアと診断された米国内の患者の80%超が、59歳未満である。
【0003】
線維輪の厚さ、通常は髄核で占められている椎間板空間の内部寸法、脊椎の端板および線維輪の側壁に関係する輪状開口および病変の位置に関する情報によって、椎間板の状態の正確な診断および治療が容易になる。たとえば、人工髄核の移植または線維輪の増強が必要な医療処置は、そのような移植片を正確に寸法決めするためにこれらの情報に応じて異なる。特に後線維輪の内壁に沿った線維輪および髄核の組織の処置を行うための、安全で信頼性があり低侵襲性の方法および機器もまた重要である。たとえば線維輪や髄核の組織は、一般に、他のタイプのプロテーゼを挿入するための経路を空にするため、もしくは椎間板切除術の一部として、人工椎間板の移植中に除去または処置される。
【特許文献1】米国特許第4,439,423号明細書
【特許文献2】米国特許第5,437,661号明細書
【特許文献3】米国特許第5,772,661号明細書
【特許文献4】米国特許出願番号09/642,450号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線維輪の断裂または髄核のヘルニアを患っている、腰椎、頚椎、および胸椎の椎間板の、外科的治療専用の器具が開発されている。これらの器具は当技術分野で周知である。しかし従来技術の機器は、完全な椎間板切除術(部分的な椎間板切除またはわずかな組織除去とは対照的に)および椎骨固定移植片の設置を含めた特定の処置用に設計されている。したがってこれらの機器は、精密で侵襲性の低い手法で線維輪および髄核の組織に処置を施すのに使用することができない。さらにそのような機器は、一般に、前方からのアプローチ、すなわち腹部からのアプローチを使用して椎間板に進入するよう設計されている。前方からの外科的アプローチによって椎間板に直接進入することができるが、腹部器官に対する侵襲性が高い。したがって、手術は一般により複雑になり、時間がかかる。直接的な後方からのアプローチは、脊髄およびこれを取り囲む骨保護鞘が各椎骨板の直前に位置しているので、解剖学上実現可能ではない。後側方からのアプローチは、これらの方法の中で最も侵襲性が低いが、椎間板およびその内部への進入が制限され間接的になる。関係する外科的必要性に応じ、化学的髄核分解(たとえば米国特許第4,439,423号公報)、レーザ(たとえば米国特許第5,437,661号公報)、徒手、集束エネルギー、超音波破壊(たとえば米国特許第5,772,661号公報)、関節鏡検査、および内視鏡検査を含めた経皮的な椎間板組織の処置のいくつかの方法が利用可能である。
【0005】
内視鏡の機器装備は、過去25年間にわたり開発されてきたもので、目視、潅注、吸引、および切断が可能である。ヌクレオトーム(nucleotomes)などの自動経皮吸引が可能なプローブ、またはデブレダー(debreders)などの円筒形収容型回転切断手段は、大量の椎間板組織を効率的に除去することができる。チップのプロフィルをさまざまにすることによって、組織切除の量および方向、ならびに周囲組織が損傷する可能性を制御する。これらの機器は、機器装備を収容するカニューレのサイズと、椎体および脊椎の繊細な組織周辺での操作能力によって制約を受けやすい。
【0006】
脊椎に使用される手動器具も周知であり、カニューレを介して挿入することができ、または手で自由に導入することができる。これらのチップは、少量の材料を摘むことが可能なブレード、バー、骨鉗子、キューレット、または鉗子様「捕捉器具」でよい。これらの機器装備がさまざまな組織に進入することができる程度まで、これらの機器は触覚フィードバックおよび制御を行う。しかし、前側方からの脊髄へのアプローチを使用する場合、これらの器具は一般に、隣接する椎骨の層状および棘状の突起によって余儀なくされた間接的なアプローチにより制約を受け、したがって、組織への進入は実質的に妨げられる。
【0007】
いくつかの椎間板機器は、椎間板の内面を穿孔しないようにまたは逸れないように、柔軟なチップを持たせた状態で設計されている。残念ながらそのようなチップは、最初に手術の必要性を招いた病的組織ではなく、健康な椎間板組織のみから逸れる。したがって、そのような機器装備が線維輪から出て、周囲組織および脊髄に相当な損傷を与える可能性がある。また、椎間板内の離れた位置に進入することが可能ないくつかの機器装備の柔軟なプローブチップでは、その機器が椎間板に受動的に導入されまたは椎間板内を手探り状態で「曲がりくねりながら進む」ので、直接的な制御を犠牲にすることによってのみそのような進入が可能になる。したがって、椎間板内での繊細かつ精密な作業は、そのような機器では不可能である。
【0008】
その他の欠点として、従来技術の機器および方法は一般に、周囲組織に対して侵襲性および破壊性があり、しばしば椎間板の感染を引き起こし神経根に損傷を与える。さらにそのような機器は、侵襲性の低い手法で、後線維輪に沿って椎間板物質に精密な処置を施すことができない。したがって椎間板内で、特に後線維輪に沿ってかつ輪状層板同士の間で繊細かつ精密な作業を行うことが可能な、椎間板の診断および処置を行うための機器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般に、椎間板の診断および治療を行うための機器および機器装備と、その方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、低侵襲性で能動的に導入される椎間板の修復および診断機器を提供する。この機器は、後線維輪の内面に直接かつ安定して進入することができ、後線維輪から誤って出ることがなく、脊髄に損傷を与えることがない。当業者なら、この機器は椎間板への適用例に限定されるものではなく、診断、修復、または治療のために低侵襲性で能動的に導入される機器が求められる医療処置を含むことが理解されよう。これらの処置には、関節鏡、内視鏡、および血管内での適用例が含まれるが、これらに限定するものではない。さらに当業者なら、多くの実施形態で、本発明を経皮的にまたは腔内的に使用できることを理解するであろう。
【0010】
本発明のさまざまな実施形態は、触覚フィードバックによってまたは能動的な目視を介して、導入することができる。また、さまざまな実施形態を、MRI、超音波、または蛍光透視を含めた医療用画像技術と合わせて使用することができる。さらに、放射線不透過または選択的な放射線不透過性を有する本発明のいくつかの実施形態は、誘導を行いかつ/または器官または組織の測定を容易にするための画像形成方法と合わせて使用することができる。
【0011】
本発明のさまざまな実施形態は、線維輪または髄核内での機器の作業終端を能動的に制御することができるので、特に有利である。さらに、いくつかの実施形態は、後方からの外科的アプローチを使用して、線維輪の後部に進入することができる。さまざまな実施形態では、側方、前方、反対側の側方から最終的には後線維輪に向かって逸れるように、機器を円周方向に慎重に前進させて後線維輪へ進入させることが、回避される。このような進入の回避は、線維輪内での機器の作業終端が円周方向に逸れることによって、機器のチップが後線維輪の亀裂を通過し脊髄へと向かうので、有利である。また、典型的な後方からの外科的アプローチにより円周方向に慎重に前進させることによって、最終的には、チップを直接脊髄に通して突出させるのに十分大きい病変を含む後線維輪面に対して垂直にチップが向けられるので、上述のように回避することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、脊椎を治療するための機器が提供される。この機器は、縦軸を持つ細長いガイドを含む。このガイドによって、軸方向に移動可能なアクチュエータが支持される。プローブはアクチュエータと共に移動可能であり、逸らせ曲面はガイドによって支持される。アクチュエータが軸方向に動くことによって、プローブは逸らせ曲面に沿って前進し、ガイドの長手方向の進入に対してある角度でガイドから離れて延びる。
【0013】
本発明の一実施例で、ガイドは、その内部に少なくとも1つの内腔が延びている細長い管状体を含む。アクチュエータは、ガイドの少なくとも一部の内部を延びる。プローブは、アクチュエータに取着された細長い柔軟な本体を含んでよい。プローブは、非線形に片寄らせることができる。一実施形態では、プローブはニッケルチタン合金を含む。
【0014】
本発明の別の態様によれば、脊椎内の椎間板を治療する方法が提供される。この方法は、線維輪内の少なくとも一部を抜けるように機器を前進させるステップを含む。プローブは、線維輪の一部に沿った第1の方向で、機器から横方向に前進する。
【0015】
本発明の一適用例では、プローブを前進させるステップが、線維輪の隣接する(輪状層板)層同士の間にプローブを前進させることを含む。本発明の別の実施形態では、プローブを前進させるステップが、線維輪と髄核の間で線維輪の内面に沿ってプローブを前進させることを含む。この方法はさらに、プローブを位置決めし直して、そのプローブを線維輪の第2の部分に沿った第2の方向に前進させるステップを含んでよい。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、この方法は追加として、送出機器により媒体を椎間板へと導入するステップを含む。一適用例では、媒体は、X線透視を可能にする造影剤を含む。媒体は、代わりにまたは追加として、薬剤および/または髄核増強物質を含んでよい。この方法は追加として、椎間板にプロテーゼを導入するステップを含んでよい。プロテーゼは、プッシュロッドを送出機器の内腔から手前に引き込み、内腔を通して椎間板にプロテーゼを導入することによって、導入することができる。
【0017】
したがって本発明は、当業者に理解されるように、椎骨板の線維輪および/または髄核への低侵襲性進入経路を提供する。この経路を利用して、診断および治療処置を含めた広くさまざまな処置のいずれかを行うことができ、そのいくつかを以下に明らかにする。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態は、新しい椎間板の処置および診断機器を提供する。
【0019】
本明細書で開示する1つまたは複数の実施形態は、線維輪の厚さ、および通常は髄核で占められる椎間板の空間の内部寸法を測定するための、便利で信頼性ある正確な方法を提供する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態は、外科医がさまざまな移植片および道具を寸法決めしてそれらを椎間板内に容易に導入することができるようにするため、さまざまな椎間板の寸法を決定するのに有用な機器を提供する。
【0021】
さまざまな実施形態は、線維輪の開口を通した処置を提供する。処置には、椎間板組織の切開、切除、またはアブレーションが含まれるが、これらに限定されない。開口は、輪状切除などの単一の医原性の孔、生来の孔、または線維輪の病変であってもよい。
【0022】
本発明の1つまたは複数の態様は、移植片またはその他の器具の挿入に備え、椎間板組織を調製しまたは椎間板組織に処置を施す。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態は、侵襲性を最小限に抑えた状態で、かつ脊髄またはその近位にあるその他の感受性ある領域に向かって機器が後線維輪の外側を意図せずに通過する危険性を最小限に抑えた状態で、椎間板組織の診断をして処置を施す。
【0024】
本発明のさまざまな態様では、輪状切除を介して、線維輪の内面に直接進入することが可能である。
【0025】
本発明のさまざまな態様は、椎間板の処置および診断を行う機器であって、この機器の作業終端の移動方向が線維輪の層板に平行である機器を提供する。
【0026】
この開示は、整形外科に関する参考文献、用語、および規約を利用する。したがって、本発明の特定の実施形態を使用することができる環境の理解に役立てるために、いくつかの背景的な図および記述を含む。この記述および上述の特許請求の範囲で、「前(方)」および「後(方)」、「上(位)」および「下(位)」という用語は、解剖学におけるそれらの標準的な用法によって定義され、すなわち前方とは身体または器官の正(腹)面に向かう方向であり、後方とは身体または器官の裏(背)面に向かう方向であり、上位は上向き(頭部に向かう)、下位はより低い位置(足に向かう)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の好ましい実施形態について以下に図面を参照して説明する。
【0028】
本発明の一態様では、遠位端および近位端を有する中空送出カニューレなどのガイドが提供される。ガイドは、外科医によって生成されたような小さい輪状切除部に適合するように、あるいは線維輪に自然に生じた孔または病変部を通るように寸法決めされる。前進器、プッシュロッド、またはアクチュエータは、ガイドによって軸方向に移動可能に支持され、柔軟なプローブ部材に結合される。柔軟なプローブ部材は、前進器に接続された近位端と、プローブチップに接続されまたはプローブチップ内に形成された遠位端を有する。
【0029】
プローブは、カニューレ内での前進器の軸方向の移動により、カニューレから遠位端に向かって外向きに前進可能である。図示される実施形態では、プローブ部材は、カニューレの遠位端に位置付けられた、湾曲した経路または逸らせ曲面を有するスロットから出て、そこから外向きに、一般にはカニューレの縦軸に対して約30〜約150度の角度で前進することができる。したがって、カニューレの遠位端が十分な深さで輪状切除部の適正に挿入された場合、プローブは、輪状層板に平行な経路に沿って、かつ輪状層板の表面に沿ってまたは輪状層板間を移動する。プローブは、前進器の動作を逆にすることによって(たとえば近位方向への引込み)引き込むことができる。
【0030】
プローブが前進した距離を測定するための手段は、プローブおよびカニューレに関連付けられる。カニューレを通して視認できまたはカニューレの近くで視認可能な前進器に付された校正表示など、さまざまな測定表示のいずれかを使用することができる。輪状切除部または病変内をカニューレが前進した距離を測定するためのインジケータを含めてもよい。たとえば、校正済みの深さストッパを、滑動可能に調節することができるやり方で、送出カニューレに付加することができる。
【0031】
プローブ部材の遠位端にあるプローブチップは、プローブに一体化した部片でよく、チップとプローブは単一構造になる。あるいは、チップを解放可能にまたは永久的にプローブに固定することができる。チップは、組織を切断することなく強制的に剥離できるように(鈍的剥離)鋭利でなくてよく、または鋭利な剥離ブレード面(鋭的剥離)が得られるように鋭利にすることができる。
【0032】
チップは、カニューレの縦軸に向かって後ろ向きになるよう後方に湾曲させるやり方で、かつその逆方向に向いている縁部を鋭利にしてそれが引込まれるときに切除または鋭的剥離が容易になるように、構成してもよい。この湾曲した形状は、不均一なまたは劣化した線維輪組織が存在する場合であっても、前進するときに線維輪を穿孔しにくい鈍的プロフィルを生成するのにも役立つ。あるいは、湾曲した切除チップまたはブレードは、オフ角で線維輪にまたは椎骨端板に向かって前進した場合であっても鈍的正面プロフィルが得られるように、凹形の後面および凸形の前面を有する多面型鋭匙として形成することができる。
【0033】
別の実施形態では、チップは、アブレーション要素を収容するよう構成することができる。この要素は、隣接する組織に対する望ましくない損傷を最小限に抑えるために、プローブおよび/またはチップの特定の表面で優先的に絶縁することができる。たとえば、線維輪の内面に面しているプローブまたはチップの表面を絶縁して、線維輪、髄核、および椎骨端板内での望ましくない移動またはそれらの内部の他の部分に対する損傷を防止することができる。代わりに、アブレーションエネルギーはプローブチップの絶縁面に面した端板または組織ではなく、プローブチップに隣接した標的組織に向けられる。
【0034】
図1Aは、椎体の横軸Mに沿った軸方向の図であり、椎体の上位に椎間板315がある。軸Mは、解剖学的構造における機能的脊椎単位の前方(A)および後方(P)の向きを示す。椎間板315は、中心髄核を(NP)320を取り囲む線維輪(AF)310を含む。この図には、左370および右370’横棘突起と後棘突起380も示されている。
【0035】
図1Bは、2つの隣接する椎体350(上位)と350’(下位)の正中線を通る矢状軸Nに沿った、矢状切断面である。椎間板の空間355は、2つの椎体の間に形成され、椎間板315を含み、これが椎体を支持して緩衝作用を及ぼし、これら2つの椎体を互いに対してまたその他の隣接する機能的脊椎単位に対して動かすことが可能になる。
【0036】
椎間板315は、椎間板の空間の縁部内に完全に入るように、通常はNP320を取り囲んで閉じ込める外部AF310からなる。軸Mは、機能的脊椎単位の前(A)後(P)方向に延びる。椎骨は、椎間関節360及び、神経孔395を形成する上位390および下位390’椎弓根も含む。
【0037】
図2aを参照すると、機器10を片手で操作できるように、すなわち親指、人差し指、および薬指を利用して機器10を位置決めし、プローブ部材20を前進させまた引き込むことができるように、機器10、カニューレハンドル35、およびリングハンドル45が位置決めされている。しかし、本明細書の開示を勘案して当業者に明らかにされるように、トリガ、スライダスイッチ、回転ノブ、またはその他のアクチュエータを含めたさまざまな近位ハンドピースのいずれかを代わりに使用し、それによってプローブ20を前進させまた引き込むことができる。
【0038】
図5では、カニューレハンドル35が、外部送出カニューレ30の近位端32に固定されている。外部送出カニューレ30は、近位端32から、円板内チップ50を備えた遠位端34まで延びる。送出カニューレ30は、論じられるように、プッシュロッド40が軸方向に往復移動するためのガイドとして機能する。したがって送出カニューレ30は、プッシュロッド40を受容するための中心内腔を内部に有する細長いチューブの形として設けることができる。あるいはこのガイドは、プッシュロッドがガイドと同軸上を移動しまたはガイドと平行して移動する実施形態で、非管状構造を含んでよい。
【0039】
送出カニューレ30は、医療機器の技術分野で周知のさまざまな技法のいずれかに従って製造することができる。一実施形態で、カニューレ30は、ステンレス鋼やその他の医療品級の金属などの金属チューブを含む。あるいはカニューレ30は、ポリマー押出し成形品であって、たとえば高密度ポリエチレン、PTFE、PEEK、PEBAX、または医療機器の技術分野で周知のその他の材料などを含んでよい。
【0040】
一般に、送出カニューレ30の軸方向の長さは、皮膚を通した経皮的または小切開アクセスから所望の治療部位に到達するのに十分なものになる。約10センチメートルから約30センチメートルの範囲内の長さが企図され、ほとんどの後側方からの進入経路に関しては、近位端32から遠位端34までの長さが約14〜約20センチメートルの範囲内になる。この長さは、意図される進入経路および患者のサイズに応じてさまざまにすることができる。
【0041】
送出カニューレ30の外径は、本明細書に開示する意図される機能を実現するのに必要な大きさ以下であることが好ましい。一般に、外径は1センチメートル未満であることが好ましい。本発明の典型的な実施形態では、送出カニューレ30の外径は約5ミリメートル以下である。
【0042】
図6を参照すると、プッシュロッドまたは前進器40は、近位端44および遠位端46を有する細長い本体42を含む。プッシュロッド40は、構成材料および所望の物理的一体性に応じて、必要な場合は中実なロッドまたは管状構成要素を含んでよい。一実施形態で、プッシュロッド40は、ステンレス鋼やその他の適切な材料などの中実な金属ロッドを含む。あるいは、さまざまな知られている医療品級ポリマーのいずれかを使用したポリマー押出し成形品を使用することができる。
【0043】
プッシュロッド40は、送出カニューレ30の長さ全体にわたって延びるように寸法決めすることが好ましく、したがってプローブ20は、リングハンドル45がカニューレハンドル35またはその他の停止面に接触したときに円板内チップ50から完全に延びるようになる。
【0044】
機器10は、さまざまな目的のいずれかのため、機器10の近位端が遠位端と流体連絡するよう配置するために、任意選択で、1つまたは複数の軸方向に延びる内腔を備えることができる。たとえば、1つまたは複数の内腔は、プッシュロッド40内を延びてよい。それに代えてまたはそれに加えて、プッシュロッド40の外径を送出カニューレ30の内径よりも小さく寸法決めして、カテーテルの技術分野で十分理解されるように輪状空間を生成することができる。第1の内腔は、処置中にプローブ20および機器10の遠位端が進行する状態が容易に視覚化されるよう、放射線不透過色素を導入するために利用することができる。第1の内腔または第2の内腔は、生理食塩液などのさまざまな媒体のいずれか、あるいは、ステロイドなどの抗炎症薬や、成長因子であってたとえばTNfα拮抗薬、抗生物質、および機能性タンパク質、さらにキモパパインなどの酵素など、さまざまな薬剤のいずれかを含むキャリアを導入するのに利用することができる。内腔は、処置の最中または終わりに、髄核などの物質を吸引しかつ/または髄核増強物質を導入するのにも利用することができる。
【0045】
図7を参照すると、機器10の遠位端34の断面が示されている。遠位端34は、軸方向に移動可能なプローブ部材20と、外部送出カニューレ30と、前進器または内部プッシュロッド40とを含む。送出カニューレ30の円板内チップ50の近位には、湾曲した経路またはスロット60がある。経路またはスロット60は、前進器40によってプローブ部材20が湾曲したスロット60から外向きに前進して椎間板315に入るときに、後線維輪310の層板にほぼ平行な通路でプローブ部材20を逸らすように働く、湾曲した遠位逸らせ曲面を含む。
【0046】
カニューレ30の遠位端34は、プローブ20が逸れる形態に応じて、さまざまな構造のいずれかを備えてよい。図示する実施形態では、遠位端34は、内部に逸らせ曲面62を含んだキャップ52を備える。キャップ52は、本明細書の別の箇所で特定されたポリマー材料のいずれかから成形し、接着結合、締り嵌め、またはその他従来の固定技法によって遠位端34に固定することができる。キャップ52は、キャップ52の遠位端を構成することができる非外傷性遠位面50を有し、あるいは、キャップ52で支持されるシリコーンなどの非外傷性材料のコーティングまたは層を含んでよい。
【0047】
所望の遠位チップのデザインに応じ、さまざまな代替の逸らせ曲面を使用することができる。たとえば、遠位成形キャップ52をなくし、代わりに管状カニューレ30の内面によって逸らせ曲面を形成することができる。これは、遠位端34上の2つの対向する軸方向のリボンが分離されるように、カニューレ30の遠位端34から近位方向に延びる2つの対向する軸方向スロットを設けることによって、実現できる。これらのリボンのうち第1のリボンは切断して除去し、一方、第2のリボンはカニューレ30の中心軸を横断するように湾曲させて、湾曲した逸らせ曲面を設ける。
【0048】
あるいは逸らせ曲面を、ある特定の状況ではなくすことができる。たとえば図7に示す処置では、図示される線維輪の表面に沿ってまたは線維輪の内部にプローブを前進させるため、対応する角度でプローブ20が機器から出る必要がある所望の治療面に対し、ある角度で後線維輪の欠損部に機器を挿通する(たとえば所望の治療面内にまたはその治療面に平行に)。しかし図7に見られるように、反時計回りにおよそ80〜90度、線維輪内の進入通路を動かすことによって、線維輪の後方内面またはその他の所望の治療面と同一平面にまたは平行に、機器10の縦軸を位置決めすることができる。この向きでは、プローブが望み通りにカニューレ30の端部から軸方向に進出して、その後行われる線維輪のパッチ移植用の空間を切り開く。
【0049】
本発明の前述の軸方向進出形態は、生来存在する欠損部を通して利用することができる。しかし軸方向進出機器は、医原性進入の縦軸が、生来の欠損部が存在する平面から実質的に平行になるように(たとえば約+/−20度以下)、生来の欠損部から間隔を空けて線維輪に生成された医原性の進入経路の場合において、より用途を見出しやすい。
【0050】
別の代替例として、機器10の近位端での曲げ制御操作に応答して、プローブ20を横方向に曲げることができる。たとえばある構造のプローブ20は、前進器40またはその他の軸方向支持器の遠位端から延びる、柔軟な金属またはポリマーリボンを含む。プローブ20には、軸方向に延びるステアリング要素が取着されている。一般にステアリング要素は、プローブ20の遠位端付近に取着されることになる。前進器40に対するステアリング要素の軸に沿った近位方向または遠位方向の動きにより、プローブ20は横方向に逸れることになる。
【0051】
逸らせ曲率半径は、本明細書の開示から当業者に理解されるように、さまざまな方法で制御することができ、たとえばプローブ20の横方向の柔軟性を変化させたり、プローブ20へのステアリング要素の取着点を変化させることによって制御することができる。圧縮に比べて引張り状態での機器の物理的要件が異なることに起因して、ステアリング要素がプルワイヤまたはリボンである場合には、プローブ20に対するプルワイヤの軸に沿った近位方向への引込みによってプローブ20が横方向に逸れるように、機器の断面を最小限にすることができる。横方向への逸れは、近位ハンドピースの機構によってまたは臨床医によってプローブが所望の湾曲した経路に従うように、遠位方向に前進する程度に合わせて調整することができる。このため近位ハンドピースには、臨床医が遠位方向(横方向)への前進と同様に逸れを制御できるように、スライダスイッチや回転レバーまたはノブなどのさまざまな制御器のいずれかを備えることができる。
【0052】
代替の構造では、プローブは、カニューレまたはその他のガイド30の遠位端34から軸方向に進出するが、それ自体のバイアス下で側方弓状に移動し、後線維輪またはその他の所望の表面に沿って滑動する。これは、ニチノール(Nitinol)などのニッケルチタン合金からプローブを構成し、側方に予め曲がった向きに取り付けることによって実現することができる。プローブは、カニューレ30内で軸方向に抑制されるが、カニューレ30の遠位端の開口から遠位方向に前進するにつれ、それ自体のバイアス下で側方に延びる。
【0053】
図示される実施形態のプローブ部材20は、超弾性ニッケルチタン合金から、または著しく塑性変形することなく逸らせ曲面62によって十分逸らすことができるように、適切な剛性および歪み特性を有する任意のその他の材料から形成することができる。プローブ部材20は、細長いシート、チューブ、ロッド、ワイヤなどから形成することができる。プローブ20は、片側円形、半円形、中空、および長方形を含むがこれらに限定することのない、さまざまな断面幾何形状に構成してもよい。
【0054】
プローブ部材20の遠位端のプローブチップ80は、線維輪310と髄核320の間を切開し、繊維輪310の層同士を切開し、または髄核内部を切開するのに使用することができる。プローブチップ80は、プローブ部材20と同じ材料で、または鋭利ではない丸みを帯びた面を切断しまたは示すのに適した別の材料で構成することができる。プローブチップ80を形成するプローブ部材20の遠位縁の鋭利な面は、生成された空間に移植片を挿入できるように、経路を切開するのに使用することができる。同様に、鋭利ではないチッププロフィルは、輪状層板を分離しまたは分裂させて、線維輪310と髄核320との間にまたは髄核320そのものの内部に開口空間を生成するのに使用することができる。
【0055】
プローブチップ80は、図11Aおよび11Bに示すように、逆向きのカーブを備えてもよい。この構造では、椎間板内に展開したときに、凹面が機器の縦軸に面している。チップ82は、それが引き込まれるときに切除または鋭的剥離が容易になるように、鋭利にすることができる。この湾曲形状は、不均一なまたは変性した線維輪組織の存在下であっても、前進するときに線維輪310を穿孔する危険性を低減させるため、鋭利ではないプロフィルにするのにも役立つことになる。湾曲チップ80は、図13Aおよび13Bに示すように、プローブ部材20が椎間板内を通過するたびに除去することが望まれる材料の量に応じて、さまざまな半径または形状のいずれかで形成することができる。あるいは、切除チップ80またはブレードは、図15Aおよび15Bに示すように、線維輪310内にまたは椎骨端板350に向かってオフ角で前進する場合であっても、鋭利ではない凸形正面プロフィルが示されるように、内部に空洞を有する多面凹型鋭匙81として形成することができる。また、そのような鋭匙81の表面積が増すと、椎間板組織の除去をさらに容易にするのに役立つ。
【0056】
図7は、機器10の遠位端を、後線維輪300の欠損部に挿通した状態を示す。あるいは機器10は、後側部、側部、または前部線維輪300の欠損部に挿通することができる。これら代替の位置では、プローブチップ80は、線維輪310の種々の領域の層板に平行に前進することができる。湾曲した遠位プローブチップ80の多くの利点の1つは、本発明のいくつかの実施形態で示されるように、外部カニューレ30に対してプローブがその引込み状態にある場合に、チップのプロフィルが最小限になることである。この場合、図7に示すように、湾曲したチップ80は円板内チップ50の遠位端を取り囲むように嵌合し、機器10のサイズまたはプロフィルは最小限にしか増大しない。このため、機器10の遠位端を適正に挿入するのに必要な線維輪300の欠損部のサイズが、最小限に抑えられる。
【0057】
図11および13に示されるように、機器10の円板内チップ50を挿入させるのに必要な線維輪欠損部または輪状切除部300のサイズを増大させることなく、さまざまな幾何形状のチップ80を使用することができる。たとえば、図13のプローブチップ80の半径が大きいことは、椎間板に機器10を適正に挿入する場合、これに対応してより大きい輪状切除部300を必要とすることなく、円板内チップ50から前進したときにより鋭利ではない切開プロフィルになることを示す。プローブチップ80の非鋭利度が高まるにつれ、プローブ20の剛性が増すことが望ましい。この剛性は、プローブ20を形成するためにより厚い材料またはより硬質の材料を使用すること、あるいはプローブ20の長さに沿った湾曲断面形状を使用することを含むことができ、またはこれらに限定されない、さまざまな方法で高めることができる。これらの技法は、プローブ20の長さの全てまたは一部を堅くするのに使用することができる。
【0058】
プローブチップ80は、図17Aおよび17Bに示すように、組織のアブレーションを行うためのアブレーションユニットに結合してもよい。アブレーションユニットは、好ましくはプローブ部材20の、椎間板内部に面する側であってプローブチップ80の近位に取着することができる。この構成では、プローブ部材20が、アブレーションユニットとは反対の向き、すなわち線維輪の内面に面した向きでの望ましくないアブレーションを最小限に抑える機械および熱障壁として働く。アブレーションは、光(レーザ)、単極または両極構成での高周波または電磁放射、プローブの抵抗加熱、超音波などを含めるがこれらに限定することのない、さまざまなエネルギー送出技法のいずれかを使用して行うことができる。
【0059】
図17に、両極性高周波ユニットの実施形態を示す。プローブ部材20には、当技術分野で知られているように、電力および制御線91を直接付着することができる。これらのワイヤは、前進器40およびカニューレ30に付加されまたはそれらに連絡する外部電源および制御ユニットにRF要素90を接続するように働く。これらの要素90は、それらの間に電流電導を引き起こすのに役立ち、プローブチップ80の領域内の組織の抵抗加熱が行われる。これらの要素90は、機器10の遠位プローブチップ80の近くに示されているが、プローブ20に沿ってかつ/またはプローブチップ80上の任意の場所に位置決めすることができる。2個の要素90のみ示されているが、プローブ20の全長に沿ったさまざまな場所に数多くの要素を位置決めして、個々に作動させあるいは2つ一組でまたは群をなして多重使用することができ、それによって、椎間板組織内に所望の温度プロフィルまたはアブレーションをもたらすことができる。
【0060】
プローブ20には、蒸気およびアブレーションされた物質用あるいは流体または気体注入用の逃がし経路が得られるように、チューブ92が取着されている。これらの流体または気体は、組織の伝導特性を変化させるために加えることができ、またはさまざまな薬物、薬剤、遺伝子、または遺伝子ベクター、あるいは所望の治療効果をもたらすその他の物質を含むことができる。チューブ92は、単一の遠位オリフィスを備えた状態が示されている。あるいはチューブの側面は、処置上の必要に応じて、組織内での流体または気体の拡がりが増大するように、あるいは同様にそのような物質が除去されるように、任意の数の穴またはチャネルを含むことができる。側面の穴、または機器10の近位端に連絡するその他のアパーチャを配置するために、必要に応じて軸方向の内腔が設けられる。アブレーションユニットは、プローブ部材20が組織内を前進して空洞を生成するときに作動させることができ、またはプローブ部材20が所望の距離だけ前進した後、このプローブ部材20を引き込むときに作動させることができる。さらに、アブレーションユニット90に供給される電力は、椎間板内のより均一な空洞をアブレーションするために、プローブ部材20の瞬間速度に従ってさまざまにすることができる。
【0061】
椎間板内の組織を切開し、切除し、あるいはアブレーションするにしても、機器10は、さまざまな円板内移植片または薬剤のいずれかを挿入することができる空洞または切開領域を生成することによって、移植処置の一部として使用することができる。この領域は、輪状層310同士の間または輪状層310の内部でよく、または線維輪310と髄核320の間でよい。この領域は、髄核の一部または全体を含むことができる。椎間板組織の増加量は、椎間板内において、プローブチップを種々の深さで繰り返し前進させ引き込むことにより除去することができる。円板内移植片は、別個の機器装備を使用して独立に、プローブ20に沿って、プローブ内を通るように、またはプローブ20の周りに挿入することができる。適切な移植片には、とりわけDevices and Methods of Vertebral Disc Augumentationという名称の、2000年8月18日に出願された米国特許出願番号09/642,450に開示されているものが含まれ、その開示の全体を参照することにより本明細書に援用する。
【0062】
図7、8、9、および10は、線維輪300の輪状切除部または欠損部内に配置された機器10の実施形態を示し、これは線維輪310の厚さを測定するのに使用することができる。図7で、円板内チップ50によって画定されたカニューレ30の遠位部分は、プローブ20が後線維輪310の前縁をわずかに越えて挿入される深さだけ、輪状切除部または欠損部300に挿通されている。図8では、プローブ部材20がカニューレ30から出て前進し、円板内チップ50の湾曲した通路60内の逸らせ曲面によって、機器10にほぼ垂直な角度に逸らされており、それによってプローブ部材20は、後線維輪310の内面に平行に前進する。この使用法では、プローブ20は数ミリメートルだけ外向きに前進すればよい。
【0063】
図9では、プローブ20が後線維輪310に接触するまで、機器10が輪状切除部300から近位方向に引き込まれている。図10では、滑動可能に調節することができる深さストッパ70がカニューレ30によって支持され、このストッパが後線維輪310の外面に接触するまでかつプローブ部材20が後線維輪310の内面に接触するまで、遠位方向(前方)に前進する。深さストッパ70は、輪状切除部300に隣接する線維輪組織または椎体表面に接触させることによって機能し、触覚フィードバックまたはX線透視での視覚化によって決定されるように、カニューレ30の椎間板へのさらなる進入が妨げられる。図4は、深さストッパ調節ノブ105と、校正測定表示100と、深さストッパ70を示す。カニューレ30または深さストッパ70には、プローブ部材20が出て行く点での円板内チップ50と深さストッパ70との間の距離を決定することができるように、校正測定値100でマークを付けることができる。この距離は、輪状切除部300に隣接する線維輪の厚さに相当する。
【0064】
図18は、線維輪300の輪状切除部または欠損部内に配置されて、後線維輪の内面と前線維輪の内面との距離によって画定された髄核空間の前後方向の寸法を決定するのに使用される、機器10の実施形態を示す。この場合、プローブ部材20と調節可能な深さストッパ70は、完全に引き込まれる。本明細書で述べる前後方向の測定を行うことのみ目的とする実施形態では、プローブ20と前進器40とを完全になくすことができる。機器10の円板内チップ50は、前線維輪の内面に到達して円板内チップ50のさらなる進行が妨げられるまで、線維輪300の輪状切除部または欠損部内を前進する。このように機器10は、椎間板の内部幾何形状の触覚フィードバックを行うために使用する。次いで調節可能な深さストッパ70を、線維輪または椎体の近位外面に向かって遠位方向に前進させ、カニューレなどの機器の近位端に関する校正を介して、到達した最大深さを読み取ることができる。組織の距離を測定し表示するには、電子的なまたはその他の手段を使用することもできる。この測定値から後線維輪の厚さの値を差し引いて、後線維輪の内面と前線維輪の内面との距離を得ることができる。
【0065】
図19および20は、線維輪300の輪状切除部または欠損部内に配置されて、線維輪の左側方内面と右側方内面との距離を決定するのに使用される、機器10の実施形態を示す。線維輪310の左側面と右側面との距離を測定する際、後線維輪の内壁をわずかに越える程度に円板内チップ50を挿入し、前進器40からの触覚フィードバックによって側面がさらなる前進を阻止しているこが示されるようになるまで、プローブチップ80を、椎間板平面内で湾曲した通路60から外に前進させ、すなわち端板に平行に前進させる。次いでこの距離を決定するには、カニューレを通してまたはカニューレの近くから視認される、前進器40の校正表示を使用することができる。
【0066】
図20に示すように、プローブ部材20が完全に引き込まれている間、機器10を180度回転させ、同じ動作を横方向で行うことにより、内部側面間の全距離を得ることができる。この方法は、深さストッパ70を調節することによって、椎間板内のさまざまな深さで繰り返すことができる。椎間板の内部に戦略的に問合せをするためにプローブ部材20を使用する同様の方法は、椎骨端板同士の距離と、輪状切除部300から端板までの相対距離とを寸法決めするのに使用することができる。前述の測定の全ては、図示される鋭匙形状のチップ、または髄核の破壊を最小限に抑える鋭匙なしの鋭利ではない非外傷性のチップを使用して行うことができる。
【0067】
深さストッパ70は、別の円板内器具または移植片の配置と共に、椎間板内の空間の切開または切除を調整するのに使用してもよい。この方法は、線維輪の内面に沿って移植片を配置するのに特に有用と考えられる。深さストッパ70または軟質/骨性組織位置合わせ構造は、線維輪あるいは1つまたは複数の椎体の一部に係合しまたはそこに単に接触させることができ、プローブまたは椎間板内移植片がばらつきなく展開するように、機器を位置合わせして安定させるのに役立てることができる。位置合わせ構造は、カニューレと同軸にしまたは中心からずらすことができ、カニューレから外向きに延びる1つまたは複数の突起または「足」として具体化することができる。上記測定技法のいずれかによって決定された線維輪の厚さは、輪状層板に沿って移植片を配置するのに使用されるその他の移植器具に、深さストッパ位置合わせ構造を設定するのに使用することができる。一例として、機器10を使用して、後線維輪が7mmの厚さであると測定された場合、深さストッパは、移植器具の椎間板への貫通が7mmになるように、または7mmに相当する別の深さになるように、移植器具上に設定することができる。このようにすると、後線維輪の内面に沿って機器10により予め椎間板内に切開された空間に、この移植機器で配置された移植片を挿入することができる。
【0068】
プローブ20は、さまざまな方法のいずれかにおいて、円板内移植片を配置する一部として使用することができる。プローブ20の1つの有利な使用は、プローブ20が椎間板の空間内の所望の位置に入ったら、前進器40からプローブ20を切り離すことによって実現することができる。次いで移植片は、プローブ20に沿って、プローブ20の後ろを経て、またプローブ20の前を経て、この所望の位置に通すことができる。次いでプローブ20を、椎間板空間から除去することができる。
【0069】
上記測定技法は、椎間板空間からの髄核の完全な切除を行うのに使用してもよい。たとえば、上述の切除またはアブレーションチップは、髄核の側縁まで椎間板内に繰り返し通すことができる。このプロセスは、深さストッパによって決定された後線維輪の内面から前線維輪の内面まで、ディスク内のさまざまな深さで繰り返すことができる。
【0070】
本発明について、その好ましい実施形態を参照しながら特に図示し記述してきたが、当業者なら、上述の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形および詳細にさまざまな変化を加えることができることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】機能的脊髄単位345の一般的な解剖学的構造を示す横断面図である。
【図1B】機能的脊髄単位345の一般的な解剖学的構造を示す矢状断面図である。
【図1C】同じ機能的脊髄単位であって、その線維輪には、輪状切除術を施した場合のように医原的に生成された欠損、または自然に生じた欠損がある状態を示す図である。
【図2A】本発明による機器の正面図である。
【図2B】本発明による機器の側面図である。
【図3】機器の遠位端の等角図である。
【図4】深さ測定表示、深さ停止調節ノブ、および深さ停止本体を含む、機器の深さ停止構成要素の側面図である。
【図5】送出カニューレ、カニューレハンドル、および円板内チップの側面図である。
【図6】リングハンドルを備えた前進器の側面図である。
【図7】円板内チップを輪状切除内に位置決めした機器の断面図である。プローブと深さストッパはどちらも引き込まれ、機器の遠位端は、後線維輪の前面を越えた深さまで挿入されている。
【図8】上記図7の開始位置から前進させた機器のプローブを示す図である。
【図9】プローブが後線維輪の内面に置かれた状態の、機器の円板内チップを示す図である。
【図10】深さストッパが後線維輪の後面まで前進した状態の機器を示す図である。
【図11A】プローブチップの変形例を示す、機器の円板内チップの側面図である。この変形例では、リバースカーブチップの後縁が鋭利である。
【図11B】同じ円板内チップであって、プローブがその初期引込み位置から前進した状態を示す図である。
【図12】図11Aおよび11Bのプローブの平面図であって、まだ形をなしていない状態を示す図である。プローブは、形をなす前の様子を示し、平らなシート状の材料から形成した場合には、1つの縁部に沿って鋭利にする。
【図13A】機器の円板内チップの側面図であり、プローブチップの変形例を示す図である。この変形例では、リバースカーブチップの遠位端が、図11a〜bに示すプローブよりも機器の遠位端からさらに遠くに離れている。
【図13B】同じ機器であって、プローブがその初期引込み位置から前進した状態を示す図である。
【図14】図13Aおよび13Bのプローブの平面図であって、まだ形をなしていない状態を示す図である。プローブの遠位端を形成するリバースカーブは、平らなシート状の材料から形成した場合の形をなす前の様子を示す図である。
【図15A】プローブチップの変形例の側面図である。この変形例では、リバースカーブのチップが、そのカーブの両側に2つの追加のフランジ材料を有する。チップ要素の組合せにより鋭匙が形成される。
【図15B】同じ機器であって、プローブがその初期引込み位置から前進した状態を示す図である。
【図16】図15Aおよび15Bのプローブの平面図であって、形をなしていない状態を示す図である。プローブの遠位端を形成する2つの側部フランジおよびリバースカーブは、平らなシート状の材料で形成した場合の形をなす前の状態が示されている。
【図17A】本発明の実施形態の機器の、遠位端を示す平面図である。
【図17B】本発明の実施形態の機器の、遠位端の側面図である。プローブは、プローブの遠位端近くに取り付けられたアブレーションユニット、制御ワイヤ、およびチューブを含む。機器のアンビルは、その中央領域で材料を除去して、チューブおよび制御ワイヤを機器内に引き込むことができるようになされている。
【図18】椎間板の横断面図であり、機器を使用して、後線維輪の輪状切除から内面までの前後方向の距離を測定する状態を示す図である。
【図19】椎間板の横断面図であって、プローブが輪状切除から横方向に遠く離れた隅まで前進した状態を示す図である。
【図20】椎間板の横断面図であって、プローブが輪状切除から横方向に近くの隅まで前進した状態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端および近位端を有する中空の送出カニューレであって、線維輪内の医原性の孔または自然に生じた病変に適合するよう寸法決めされた中空の送出カニューレと、
前記カニューレに収容されたプローブ部材に結合された前進器であって、前記プローブ部材が、前記前進器に接続された近位端と、プローブチップに接続された遠位端とを有し、前記プローブ部材が、前記カニューレの前記遠位端から外向きに前進することができるものである前進器と、
前記カニューレの前記遠位端内にある湾曲した通路であって、前記プローブ部材が、前記通路内を移動し、そこからカニューレの縦軸に対して30〜150度の角度で外向きに前進することができる、湾曲した通路と
を含む機器。
【請求項2】
プローブが前進した距離を測定する手段であって、前記前進器に結合された手段と、
前記カニューレに結合された、前記輪状切除部または前記病変内をカニューレが前進した距離を測定するための手段と
をさらに含む、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記プローブ部材が非円形断面幾何形状を有する、請求項1に記載の機器。
【請求項4】
前記プローブ部材が、前記チップの近くで前記プローブ部材に結合されたアブレーション要素を有する、請求項1に記載の機器。
【請求項5】
前記プローブ部材がニチノールを含む、請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記チップが、非鋭利形状のチップ、鋭利なチップ、鋭匙形状のチップ、およびのみ形状のチップからなる群から選択される、請求項1に記載の機器。
【請求項7】
前記チップが、椎間板の内部に面するように後ろ向きに湾曲している、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
前記プローブチップが、縦軸に対して下向きに湾曲し、プローブが展開するときに椎間板の内面が湾曲面にのみ曝されるよう、挿入機器に面するまで廻り込んでいる、請求項1に記載の機器。
【請求項9】
身体組織に処置を施す方法であって、前記組織が、同じかまたは異なる身体組織の画定可能な外層によって包封され、
前記外層に開口を位置付けるステップと、
中空カニューレの遠位端を、前記開口内に、前記外層を通過する点まで挿入するステップであって、前記カニューレが、近位端および遠位端を有しかつ細長い縦軸を有し、前記カニューレが、プローブ部材に結合された前進器を滑動可能に収容し、前記プローブ部材が、前記前進器に接続された近位端を有し、前記プローブ部材の前記遠位端がチップに接続され、前記プローブ部材の前記遠位端が、前記カニューレ内の前記前進器の縦方向の運動を介して、前記カニューレの前記遠位端にある湾曲したスロットを通して前進しかつ後退することができるものであるステップと、
カニューレ内で前進器を前進させ、前記カニューレの長軸に対して30〜150度の間の角度で、湾曲した通路から外向きにプローブ部材を前進させ、プローブチップが、前記組織と前記組織の画定可能な外層との交差部分に平行に移動して組織に処置を施すステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記カニューレをガイドするステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カニューレが触覚フィードバックによってガイドされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カニューレが、聴覚信号または視覚画像によってガイドされる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記聴覚信号が超音波によって得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記視覚画像が、磁気共鳴映像法、超音波、およびX線透視法からなる群から選択される方法によって得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記開口が、自然に生じた孔または医原性の孔である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
椎間板内の組織に処置を施す方法であって、
第1の軸に沿って椎間板に挿入機器を挿入するステップと、
前記第1の軸を実質的に横断する第2の軸に沿って、椎間板内の挿入機器から横方向に、プローブチップを有するプローブを展開するステップと
前記組織を横断してまたは通して前記プローブチップを延ばすことにより組織に処置を施すステップと
を含む方法。
【請求項17】
請求項1の機器を体腔または組織に挿入するステップと、
前記体腔または組織を横断してまたは通してプローブチップを延ばすステップと、
前記体腔または組織の寸法を測定するステップと
を含む、体腔または組織を測定する方法。
【請求項18】
縦軸を有する細長いガイドと、
前記ガイドに支持された、軸方向に移動可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータと共に移動可能なプローブと、
前記ガイドに支持された逸らせ曲面と、
を含み、
前記アクチュエータの軸方向の動きによって、プローブが、前記縦軸からある角度で逸らせ曲面に沿って前進する、
脊椎を治療するための機器。
【請求項19】
前記ガイドが、内部を延びる少なくとも1つの内腔を有する細長い管状本体を含む、請求項18に記載の脊椎を治療するための機器。
【請求項20】
前記アクチュエータが、前記ガイドの少なくとも一部の内部を延びる、請求項19に記載の脊椎を治療するための機器。
【請求項21】
前記プローブが、前記アクチュエータに取着された細長い柔軟な本体を含む、請求項18に記載の脊椎を治療するための機器。
【請求項22】
前記プローブが、非線形形状にバイアスされる、請求項21に記載の脊椎を治療するための機器。
【請求項23】
前記プローブがニッケルチタン合金を含む、請求項21に記載の脊椎を治療するための機器。
【請求項24】
線維輪内の少なくとも一部の距離だけ機器を前進させるステップと、
線維輪の一部に沿った第1の方向で、前記機器から横方向にプローブを前進させるステップと
を含む、脊椎内の椎間板で処置を施す方法。
【請求項25】
第1の停止面を表面に備える細長い本体と、第2の停止面を表面に備える軸方向に移動可能な要素とを有する測定機器を提供するステップと、
前記機器を、線維輪の開口に通して前進させるステップと、
前記第1の停止面を、線維輪の第1の面に接触させるステップと、
前記第2の停止面を、第2の解剖学的構造に接触させるステップと、
前記第1の停止面と前記第2の停止面との距離を決定して、椎間板内の寸法を測定するステップと
を含む、椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項26】
前記第1の面が、線維輪の近位外面である、請求項25に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項27】
前記第2の面が、線維輪の前方内面である、請求項25に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項28】
前記第2の面が、線維輪の後方内面である、請求項25に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項29】
前記距離を決定するステップが、線維輪の厚さを決定することを含む、請求項25に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項30】
前記距離を決定するステップが、髄核空間の前後方向の寸法を決定することを含む、請求項25に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項31】
前記距離を決定するステップが、髄核空間の前後方向の寸法と線維輪の後部壁面の厚さとの和を求めることを含む、請求項25に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項32】
前記距離を決定するステップが、測定機器表面の距離の視覚表示を観察することを含む、請求項25に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項33】
前記第2の停止面を接触させるステップが、前記後線維輪に沿った第1の方向で前記機器から横方向に前記第2のストッパを前進させることを含む、請求項25に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。
【請求項34】
前記第2の停止面を接触させるステップが、前記後線維輪に沿った第2の方向で前記機器から横方向に前進させることを含む、請求項33に記載の椎間板内の寸法を測定する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−111538(P2007−111538A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284312(P2006−284312)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【分割の表示】特願2003−504824(P2003−504824)の分割
【原出願日】平成14年6月13日(2002.6.13)
【出願人】(502057511)イントリンジック セラピューティックス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】