説明

検体前処理システム

【課題】複数の検体前処理装置が所定順序で順次起動する場合において、起動不良が発生した場合にその事態を的確に判定できるようにする。
【解決手段】分注装置14,16,18はそれぞれ順番に起動する。ホストコントローラ12は、最後の分注装置の起動完了後の電流値を参照し、起動不良の有無等を判定する。あるいは、各分注装置の立ち上がり毎に個別的に電流値が参照され、起動不良が判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検体前処理システムに関し、特に複数の検体前処理装置の起動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
検体前処理装置は、例えば、複数の分注装置で構成され、あるいは、遠心分離装置、開栓装置、分注装置で構成される。システム立ち上げ時に、それらの複数の装置の電源を一度に投入すると、電源ライン上に瞬時に大電流が流れ、元電源あるいは各装置内の電源ユニットに過大な負荷が生じたり、電源ラインの電圧が不安定となったりする問題が指摘されている。そこで、複数の装置を順番に立ち上げることが望まれる。なお、特許文献1には、検体前処理装置についての言及は認められないが、複数の電子機器(電源回路)を順番に起動することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−369378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の検体前処理装置を順番に起動する場合において、特定の検体前処理装置が何らかの不具合によって起動されなかった場合(あるいは起動不良が生じた場合)、それよりも後順位の検体前処理装置へ起動指令が与えられなくなる。そのような状態が生じた場合、その状況を把握して、必要に応じて起動不良が発生した装置を特定して、迅速に対処することが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、複数の検体前処理装置を順次起動する場合において、起動不良となった状況を的確に判定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、共通の電源ラインから電力の供給を受ける複数の検体前処理装置と、前記複数の検体前処理装置の起動を制御する電源管理部と、を含み、前記複数の検体前処理装置は、前記電源管理部が起動指令を発生すると、所定の順番で順次起動する起動リレーを遂行し、前記電源管理部は、前記電源ラインの電流値を検出する検出部と、前記検出された電流値に基づいて、前記複数の検体前処理装置における起動不良を判定する判定部と、を有することを特徴とする検体前処理システムに関する。
【0007】
上記構成によれば、電源管理部の起動指令に応じて複数の検体前処理装置が順次起動し、つまり起動リレーを遂行する。その場合、起動不良(立ち上がり不良、セットアップ不良)が発生すると、当該事態が判定部によって判定される。その場合、検出部が検出した電源ラインを流れる電流値が参照される。つまり、起動不良が生じると、それが電流値の異常(例えば定格電流値からの逸脱)として認識される。例えば各検体前処理装置からの起動完了信号あるいは最終段の検体前処理装置からの起動完了信号によって立ち上がりの確認を行うことも可能であるが、電流値のモニタリングによればより確実にその判定、確認を行える。特に、最終段の検体前処理装置からの起動完了信号の有無に基づいて判定を行う場合には、異常時に信号が発生しないことをもってそれを判断することになるため、信号伝送上のエラー等と起動不良とを弁別困難であるが、上記構成によれば電流値を参照するので確実である。最終的な電流値を参照して起動不良の有無あるいは台数を特定することもできるし、各装置の立ち上がり時点での電流値を個別的に参照して起動不良を判定することもできる。なお、電源ラインは、予め接続対象が既知となっているシステム専用電源ラインであるのが望ましい。
【0008】
望ましくは、前記判定部は、前記所定の順番における最後の検体前処理装置の起動後であって安定化が見込まれるタイミングで前記判定を実行する。各検体前処理装置の起動直後には突入電流が生じて安定した判定を行えないため、そのような過渡的な現象を経過した安定期において電流値のモニタリングを行うのが望ましい。
【0009】
望ましくは、前記判定部は、前記最後の検体前処理装置の起動後に当該最後の検体前処理装置から起動確認信号が出力されない場合に前記判定を実行する。望ましくは、前記判定部は前記所定の順番における各検体前処理装置の起動後であって安定化が見込まれるタイミングで前記判定を逐次的に実行する。この構成によれば個別的に速やかに起動不良を判定できる。望ましくは、前記判定部は、前記各検体前処理装置ごとに、時間軸上において1又は複数の判定タイミングを設定し、且つ、電流値軸上において判定幅を設定する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、複数の検体前処理装置を順次起動する場合において、起動不良を確実に特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1には、本発明に係る検体前処理システムの好適な実施形態が示されている。図1に示される検体前処理システムは、電源ライン10、ホストコントローラ12、複数の分注装置14,16,18等を有している。
【0013】
電源ライン10はいわゆる商用電源ラインであって、2本の電力線間には交流100Vが印加されている。ホストコントローラ12は、本実施形態において、電源管理部として機能し、システム全体の起動時点において起動指令を発生する。また、ホストコントローラ12は複数の分注装置14,16,18についての起動不良を判定する機能を有する。電源ライン10上には、電流値をモニタリングするためのカレントトランスとしての電流センサ32が設けられている。つまり、電源ライン10を流れる電流の電流値は電流センサ32によってモニタリングすることが可能である。
【0014】
複数の分注装置14,16,18は本実施形態において互いに同一の構成を有している。もちろん、互いに異なる構成を有していてもよい。各分注装置14,16,18は、電源ユニット(パワーサプライユニット)20,22,24と、ユニットコントローラ26,28,30とを有している。電源ユニット20,22,24は電源ライン10から電力供給を受けており、装置内において必要となる複数のDC電圧を生成している。また電源ユニット20,22,24によりユニットコントローラ26,28,30が電力の供給を受けている。ユニットコントローラ26,28,30は分注動作の制御を行っているものである。なお、各分注装置は、血液や尿等のサンプル(親検体)を吸引して、複数の子検体を生成する分注処理を実行する装置である。
【0015】
ホストコントローラ12から起動信号が与えられると、電源ユニット20が最初に起動動作を実行し、分注装置14の起動が完了した後に電源ユニット20から電源ユニット22に対して起動指令が与えられる。そして、この動作が分注装置16及び分注装置18においても同様に実行される。すなわち、ホストコントローラ12を上流として、複数の電源ユニット20,22,24が起動リレーを遂行しており、このように複数の分注装置14,16,18の起動タイミングをそれぞれ時間的にシフトさせることにより、電源ライン10に対して瞬時に大きな負荷が集中して発生することが回避されている。例えば、それぞれの分注装置14,16,18は大型の分注装置であり、システム全体としては例えば5分あるいは10分程度の時間をもって立ち上がり動作が完了することになる。ちなみに、電源ユニット24は、分注装置18の立ち上がり完了時点で確認信号をホストコントローラ12に対して出力している。ホストコントローラ12はその確認信号の受領が一定期間内に発生した場合にはシステム全体として正常に起動動作が完了したことを判定する。その一方において、そのような判定と並行して電流値のモニタリングも行われており、電流値の観点からも起動不良が判定されている。これについて図2を用いて説明する。
【0016】
図2において、(A)はホストコントローラ12の動作を示しており、(B)は電源ユニット20の動作を示しており、(C)は電源ユニット22の動作を示しており、(D)は電源ユニット24の動作を示している。ちなみに縦軸は時間軸である。
【0017】
S101において、ホストコントローラ12からセットアップ指示すなわち起動指示が出力されると、その指示が電源ユニット20に与えられ、S102において分注装置14がセットアップ動作を実行する。S103でそのセットアップの完了が確認されると、電源ユニット20から電源ユニット22に向けて起動指示が与えられる(S103)。S104ではその起動指示を受けた電源ユニット22がセットアップ動作を実行し、S105においてそのセットアップの完了が確認されると、電源ユニット22から電源ユニット24へ起動指示が与えられる(S105)。S106では、起動指示を受けた電源ユニット24がセットアップ動作を実行し、S107においてその動作の完了が確認されると、電源ユニット24からホストコントローラ12に対して起動完了の確認信号が出力される。
【0018】
すると、S108において、ホストコントローラ12はその確認信号を受領し、S109において電流値に基づく起動診断が実行される。具体的には、上述した電流センサによって検出された電流値が参照され、その電流値がシステム全体としての定格値を中心とした一定の範囲内に納まってるか否かが判断される。電流値が適正でない場合は、いずれかの装置において起動不良が発生しているものとみなして起動不良の判定を行う(S109)。そして、それがS110においてユーザーあるいはシステム管理者に報知されることになる。
【0019】
ちなみに、本実施形態において、ホストコントローラ12は、S101においてセットアップの指示を出したタイミングでタイマーを起動させており、そのタイマーによって計測される時間が所定時間を超えるまでにS108の受領確認がなされない場合には起動不良を判定している。
【0020】
ちなみに、上述したように、S109の段階でシステム全体としての起動不良の有無あるいは程度を診断するようにしてもよいが、符号200,202,204で示されるように、各分注装置の起動後における安定期間において電流値のモニタリングを行うことにより、各分注装置の起動不良を個別的に判断するようにしてもよい。このような構成によれば、起動不良が発生した時点で速やかにそれを判定できるという利点がある。
【0021】
図3には起動不良の判定方法の一例が示されている。横軸は時間軸であり、縦軸は電流値を示している。T1のタイミングで1番目の分注装置に対して起動指令が与えられ、T2のタイミングで2番目の分注装置に対して起動指令が与えられ、T3において3番目の分注装置に対して起動指令が与えられている。符号216,218,220は起動指令が与えられた直後における突入電流の発生期間すなわち過渡的な電流が生じる不安定期間を示している。本実施形態においては、そのような不安定な期間を越えた以降の期間あるいはタイミングに判定条件210,212,214が設定されている。各判定条件210,212,214は時間軸方向の幅W1,W2,W3と、電流値の軸方向の幅D1,D2,D3とで定義されており、時間軸上においてある所定の時点で電流値の参照及び評価を行うようにしてもよいし、それぞれの期間W1,W2,W3の全体に渡ってくり返し電流値のモニタリングを行うようにしてもよい。電流値の軸方向の幅D1,D2,D3は段階的に起動する分注装置の台数から見込まれる定格電流値を基準として上下方向に例えば数%あるいは10%の範囲をもったエリアとして定義されており、その範囲内に実際の電流値が納まっている場合には起動が正常であると判断される。その一方その範囲外に実際の電流値が存在している場合には起動不良が判定されることになる。
【0022】
例えば、符号210で示される判定条件において起動不良が判定された場合には、第1番目の分注装置における起動不良と認識でき、判定条件212において起動不良が認識された場合には2番目の分注装置における起動不良であると判定でき、これは3番目の分注装置についても同様である。このような判断方法を用いれば、各分注装置毎に個別的な起動不良の判定を行って、起動不良が生じた時には速やかにその事態を把握して、それを報知することによって起動不良に迅速に対処できるという利点がある。もちろん、上述したように最終段の分注装置の立ち上がり完了時点で電流値の判定を行うようにしてもよい。いずれにしても、多面的な判断を行うことによりシステム全体としての動作信頼性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る検体前処理システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示すシステムの動作例を示すタイミングチャートである。
【図3】電流値に基づいた起動不良の判定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10 電源ライン、12 ホストコントローラ、14,16,18 分注装置、20,22,24 電源ユニット(パワーサプライユニット)、26,28,30 ユニットコントローラ、32 電流センサ(カレントトランス)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の電源ラインから電力の供給を受ける複数の検体前処理装置と、
前記複数の検体前処理装置の起動を制御する電源管理部と、
を含み、
前記複数の検体前処理装置は、前記電源管理部が起動指令を発生すると、所定の順番で順次起動する起動リレーを遂行し、
前記電源管理部は、
前記電源ラインの電流値を検出する検出部と、
前記検出された電流値に基づいて、前記複数の検体前処理装置における起動不良を判定する判定部と、
を有することを特徴とする検体前処理システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記判定部は、前記所定の順番における最後の検体前処理装置の起動後であって安定化が見込まれるタイミングで前記判定を実行する、
ことを特徴とする検体前処理システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、
前記判定部は、前記最後の検体前処理装置の起動後に当該最後の検体前処理装置から起動確認信号が出力されない場合に前記判定を実行する、
ことを特徴とする検体前処理システム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記判定部は前記所定の順番における各検体前処理装置の起動後であって安定化が見込まれるタイミングで前記判定を逐次的に実行する、
ことを特徴とする検体前処理システム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、
前記判定部は、前記各検体前処理装置ごとに、時間軸上において1又は複数の判定タイミングを設定し、且つ、電流値軸上において判定幅を設定する、
ことを特徴とする検体前処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−318819(P2007−318819A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142321(P2006−142321)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】