検出装置
【課題】PMセンサにより検出されたPM量をセンサの温度あるいはその周囲の排気温度や排気流量などに応じて補正することにより高精度にPM量を検出できる検出装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気管中のPM(粒子状物質)量を検出するPMセンサの出力値を取得したら(S10)、センサの素子温度や周囲の温度(S30、S40)、排気流量を検出して(S50)、これらの数値に基づいてPM検出値を補正する。これによりセンサの素子温度や周囲の温度の分布による熱泳動の影響や、温度によるPMの電気抵抗値の変化の影響を低減して、排気管中のPM量を高精度に反映した数値へと補正される。
【解決手段】内燃機関の排気管中のPM(粒子状物質)量を検出するPMセンサの出力値を取得したら(S10)、センサの素子温度や周囲の温度(S30、S40)、排気流量を検出して(S50)、これらの数値に基づいてPM検出値を補正する。これによりセンサの素子温度や周囲の温度の分布による熱泳動の影響や、温度によるPMの電気抵抗値の変化の影響を低減して、排気管中のPM量を高精度に反映した数値へと補正される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、内燃機関に対してすぐれた排気浄化性能が求められている。特にディーゼルエンジンにおいては、エンジンから排出される黒煙などのいわゆる排気微粒子(粒子状物質、PM:Particulate Matter)の除去が重要である。PMの除去の目的のために排気管の途中にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が装備されることが多い。
【0003】
排気中のPM量を検出する手段としてPMセンサがある。例えばDPF下流にPMセンサを配置した場合、PMセンサの検出値を用いてDPFが故障していることを検出できる。またDPF上流にPMセンサを配置した場合には、PMセンサの検出値からDPFに堆積するPM量を推定することが可能となる。例えば下記特許文献1では、排気管内にPMセンサを配置してDPF内のPM堆積量を推定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−60018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおりPMセンサを用いてDPFの故障検出やPM堆積量の推定を行う場合、当然PMセンサの精度が高いことが望まれる。しかしPMセンサの検出値はエンジンの運転条件などによって変化してしまい精度が低減する。
【0006】
PMセンサの代表的な構造は、図3に示されているとおり、絶縁体50と1対の電極51、52と電源54とを備える。PMが流通する排気管中にPMセンサ5を配置すると絶縁体50にPMが付着する。PMは導体なので、電極51、52間をつなぐまでPMが堆積すると電極間が電気的に導通状態となる。したがって電源54によって電極51、52間に電圧を供給すると電極51、52間に電流が流れる。より多くのPMが電極51、52間に堆積するほど、より多くの電流が流れる。よって電極間に流れる電流値によって絶縁体に堆積したPM量、さらには排気管中のPM量が検出(推定)できる。
【0007】
発明者は、PMセンサおよびその周囲の温度や排気流量、PMセンサ出力値などによって、PMセンサの検出値が影響を受けるとの知見を得ている。例えば図10に示されているように、温度が高い領域から温度が低い領域へ向けて粒子が力を受ける現象(熱泳動)の影響で、センサ素子(絶縁体)の周囲の温度分布によって絶縁体へのPMの付着量が異なりPMセンサの出力値が異なる。
【0008】
また図11に示されているように、排気流速が大きいと絶縁体にPMが付着しにくくなったり、一旦付着したPMが分離(離脱)する可能性が大きくなるので、PMセンサの出力値は排気流速の影響を受ける。堆積したPM量が多いほど、このPMの離脱は多いとみなされるので、PMセンサ出力値それ自身もPMセンサの出力値に影響を与える。さらに図12に示されているように、絶縁体の表面に堆積したPM層が有する電気抵抗値が温度により変化するとの知見も得ている。したがって例えばPMセンサの出力が電流値などの場合、PMセンサの出力がPM層の温度の影響を受ける。
【0009】
PMセンサの出力値から排気管中のPM量を知りたい場合、以上の影響はPMセンサの出力値から排除したい。したがって上記の影響を排除するように排気管中のPM量の検出値を適切に補正する方法を開発することが望まれる。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、PMセンサの温度あるいはその周囲の排気温度や排気流量、粒子状物質検出値などに応じて、排気管中のPM量の検出値を補正することにより高精度なPM量が検出できる検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明に係る検出装置は、内燃機関の排気通路を流通する排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、その前記排気温度検出手段によって検出された前記排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度のうちの少なくとも一方を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
これにより本発明に係る検出装置では、絶縁体上に1対の電極を配置した構成で、絶縁体に付着した粒子状物質によって導通状態となった電極間に電圧を印加して排気中の粒子状物質の量と相関を有する検出値を検出する際に、検出手段を通過する排気温度あるいは絶縁体の温度を用いて粒子状物質検出値を補正する。よって、検出手段の温度あるいはその周囲の温度分布による熱泳動や電気抵抗値の変化の影響を低減するように検出値を補正できる。したがって、熱泳動や電気抵抗値の変化の影響を受けずに、排気通路中の粒子状物質量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0013】
また本発明に係る検出装置は、排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちひとつと、前記絶縁体を通過する排気の流量を検出する排気流量検出手段と、その排気温度検出手段によって検出された前記排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度のうちの少なくとも一方と、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量と、を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
これにより本発明に係る検出装置では、絶縁体上に1対の電極を配置した構成で、絶縁体に付着した粒子状物質によって導通状態となった電極間に電圧を印加して排気中の粒子状物質の量と相関を有する検出値を検出する際に、検出手段を通過する排気温度あるいは絶縁体の温度、さらに排気流量を用いて粒子状物質検出値を補正する。よって、検出手段の温度あるいはその周囲の温度分布による熱泳動や電気抵抗値の変化の影響、さらには排気流量による付着や離脱の影響を低減するように粒子状物質検出値を補正できる。したがって、熱泳動や電気抵抗値の変化、付着や離脱のしやすさの影響を受けずに、排気通路中の粒子状物質量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0015】
また排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、前記絶縁体を通過する排気の流量を検出する排気流量検出手段と、前記絶縁体に付着した粒子状物質が絶縁体から脱離した量を検出する粒子状物質脱離量検出手段と、排気温度検出手段によって検出された前記排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度のうちの少なくとも一方と、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量と、前記粒子状物質脱離量検出手段で検出された前記粒子状物質脱離量と、を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
これにより本発明に係る検出装置では、絶縁体上に1対の電極を配置した構成で、絶縁体に付着した粒子状物質によって導通状態となった電極間に電圧を印加して排気中の粒子状物質量と相関を有する検出値を検出する際に、検出手段を通過する排気温度あるいは絶縁体の温度、さらに排気流量、粒子状物質脱離量を用いて検出値を補正する。よって、検出手段の温度あるいはその周囲の温度分布による熱泳動や電気抵抗値の変化の影響、さらには排気流量による付着や離脱の影響、絶縁体に付着した粒子状物質離脱量の影響を低減するように粒子状物質検出値を補正できる。したがって、熱泳動や電気抵抗値の変化、付着や離脱のしやすさの影響を受けずに、排気通路中の粒子状物質量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0017】
また、前記補正手段は、前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度から前記排気温度検出手段によって検出された排気温度を減算した数値が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値の変化速度を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第1副補正手段を備えたとしてもよい。
【0018】
これにより絶縁体の温度から排気温度を減算した数値が大きいほど、検出手段による前記粒子状物質検出値の変化速度を、粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正するので、絶縁体の温度から排気温度を減算した数値が大きいほど、熱泳動により絶縁体に付着する粒子状物質が少なくなる現象を打ち消すように粒子状物質検出値が補正される。したがって熱泳動の影響を低減するように補正されて、排気通路中の粒子状物質量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0019】
また前記補正手段は、前記排気温度検出手段によって検出された前記排気温度、あるいは前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度が高いほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記検出値を、前記粒子状物質の量がより少ないことを示す数値の側に補正する第2副補正手段を備えたとしてもよい。
【0020】
これにより排気温度あるいは絶縁体の温度が高いほど、検出値を、粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正するので、排気温度あるいは絶縁体温度が高いほど、絶縁体に堆積した粒子状物質の層の電気抵抗値が小さくなる現象を打ち消すように粒子状物質検出値が補正される。したがって電気抵抗値の変化の影響を低減するように補正されて、排気通路中の粒子状物質の量のみを反映した高精度な検出値を検出する検出装置が実現できる。
【0021】
また前記補正手段は、前記排気流量検出手段によって検出された前記排気流量が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値の変化速度を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第3副補正手段を備えたとしてもよい。
【0022】
これにより排気流量が大きいほど、前記粒子状物質検出値の変化速度を、粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正するので、排気流量が大きいほど、絶縁体に粒子状物質が付着しにくく、さらに一旦付着した粒子状物質が離脱しやすい現象を打ち消すように粒子状物質検出値が補正される。したがって付着や離脱の影響を低減するように補正されて、排気通路中の粒子状物質の量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0023】
また前記補正手段は、前記粒子状物質脱離量検出手段で検出された前記粒子状物質脱離量が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記検出値を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第4副補正手段を備えたとしてもよい。
【0024】
これにより検出手段による粒子状物質脱離量が大きいほど、前記粒子状物質検出値を、粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正するので、脱離による粒子状物質が減少する影響を打ち消すように、粒子状物質検出値が補正される。したがって離脱の影響を低減するように補正されて、排気通路中の粒子状物質の量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0025】
また前記排気温度検出手段は、前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、前記温度センサによって検出された前記排気通路温度と、前記排気流量検出手段によって検出された前記絶縁体を通過する排気流量と、前記絶縁体温度検出手段により検出された前記絶縁体温度と、を用いて、前記粒子状物質検出手段を通過する排気温度を算出する排気温度算出手段と、を備えたとしてもよい。
【0026】
これにより排気通路に設置された温度センサの検出値と排気流量と絶縁体の温度とから前記粒子状物質検出手段を通過する排気温度を算出するので、前記粒子状物質検出手段を通過する排気温度を直接検出しなくとも、精度のよい排気温度情報を得ることができる。したがって高精度な温度情報を用いて、熱泳動などの影響を低減するように粒子状物質検出値を補正することができる。
【0027】
また電気抵抗と電力手段とを備えて、その電力手段から電力を供給して前記電気抵抗を発熱することよって前記絶縁体を昇温する昇温手段を備え、前記絶縁体温度検出手段は、前記電気抵抗の抵抗値の変化によって前記絶縁体温度を検出する第1検出手段を備えたとしてもよい。
【0028】
これにより昇温手段によって絶縁体に付着した粒子状物質を燃焼することによって前記粒子状物質検出手段を再生することができ、さらにその電気抵抗値の変化から絶縁体の温度も算出することができる。したがって前記粒子状物質検出手段を再生する手段を利用することによって、絶縁体温度の検出も行える。
【0029】
また前記絶縁体温度検出手段は、前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、前記絶縁体を通過する排気流量を検出する排気流量検出手段と、前記温度センサによって検出された前記排気通路温度と前記排気流量検出手段によって検出された前記排気流量とを用いて、前記絶縁体温度を算出する第2検出手段と、を備えたとしてもよい。
【0030】
前記第2検出手段における前記絶縁体温度の算出には、例えば、物理現象に基づいた数式モデルを用いることもでき、これにより、直接検出する手段を省いて、簡素な構成により数式モデルによって粒子状物質検出手段の素子温度が算出できる。
【0031】
また前記粒子状物質脱離量検出手段は、前記粒子状物質検出手段によって検出された粒子状物質検出値と、前記絶縁体を通過する前記排気流量と、を用いて、前記粒子状物質脱離量を算出するとしてもよい。
【0032】
これにより粒子状物質検出値と排気流量を用いて粒子状物質脱離量を算出するので、高精度に粒子状物質脱離量を算出できる。したがって高精度な粒子状物質脱離量を用いて高精度な粒子状物質検出値へ補正する検出装置が実現できる。
【0033】
また前記内燃機関の筒内への燃料の噴射量を指令する指令手段と、前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気温度を計測する温度センサと、前記排気通路内の圧力を検出する排気通路圧力検出手段のうち少なくともひとつと、前記内燃機関の吸気通路を流通する吸気量を検出する吸気量検出手段と、を備え、前記排気流量検出手段は、前記指令手段によって指令された燃料噴射量と、前記温度センサによって検出された前記排気通路温度と、前記排気通路内圧力検出手段によって検出された前記排気通路圧力と、のうちの少なくともひとつと、前記吸気量検出手段によって検出された吸気量と、を用いて排気流量を算出するとしてもよい。
【0034】
これにより内燃機関の吸気量と燃料噴射量と排気通路温度と排気通路圧力とを用いて排気流量を算出するので、高精度に排気流量を算出できる。したがって高精度な排気流量を用いて高精度な粒子状物質検出値へ補正する検出装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明における検出装置の実施例における構成図。
【図2】DPFの配置例を示す図。
【図3】PMセンサの構造の例を示す図。
【図4】実施例1における検出処理のフローチャート。
【図5】実施例2における検出処理のフローチャート。
【図6】実施例3における検出処理のフローチャート。
【図7】PMセンサ出力補正係数と素子温度とカバー内温度との差分値の間の関係の例を示す図。
【図8】排気管PM流通量補正係数と排気流量の間の関係の例を示す図。
【図9】排気管PM流通量補正係数とPMセンサ出力値の間の関係の例を示す図。
【図10】熱泳動の影響を示す図。
【図11】排気流速の影響を示す図。
【図12】PM温度の影響を示す図。
【図13】粒子状物質検出値補正係数とPM温度の間の関係の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る検出システム1(システム、検出装置)の実施例における装置構成の概略図である。
【0037】
システム1は、ディーゼルエンジン2(エンジン)の排気管4中のPM量を検出するためのシステムである。エンジン2へ吸気(空気)を供給する吸気管3には、エアフロメータ30が装備されている。エアフロメータ30によって吸気量(例えば単位時間当たりの質量流量)が検出される。エンジン2の排気管4には、排気温センサ40とPMセンサ5とが配置されている。
【0038】
排気温センサ40は排気温度を検出する。PMセンサ5は排気中のPM量を検出する。そして以上のシステムを制御する電子制御装置6(ECU:Electronic Control Unit)が装備されている。ECU6は通常のコンピュータと同様の構造を有するとして、各種演算をおこなうCPUや各種情報の記憶を行うメモリ60を備えるとすればよい。
【0039】
図1では、DPFが省略されているとすればよい。DPFを装備する場合の例が図2に示されている。図2(a)の例は、DPF41を排気温センサ40とPMセンサ5の間に配置した例であり、図2(b)の例は、排気温センサ40およびPMセンサ5の下流に配置した例である。図2(a)の場合、PMセンサ5によってDPF41をすり抜けたPM量を検出することによって、DPF41の故障の有無が検出できる。図2(b)の場合、PMセンサ5によってDPF41に流入するPM量が検出できるので、DPF41におけるPM堆積量が推定できる。
【0040】
PMセンサ5の構造の例が図3に示されている。PMセンサ5は、板状の絶縁体であるセンサ素子50の上に1対の電極51、52が形成されている。そして全体が、例えば金属製のカバー53で覆われている。カバー53には多数の孔部が形成されていて、カバーの内側にPMが流入する。そしてPMは、自身が持つ粘着性によってセンサ素子50に付着、堆積していく。PMは導電性を有するので、センサ素子50上に堆積したPMによって電極51、52間が連結されると、電極51、52間が導通状態となる。
【0041】
電極51、52間には直流電源54によって電圧が印加されており、センサ素子50上に堆積したPMによって電極51、52間が導通状態となると、電極51、52間に電流が流れる。その電流値を電流計55によって計測し、センサ出力としてECU6へ出力する。
【0042】
PMセンサ5には、ヒータ56およびヒータ制御部57が装備されている。ヒータ56は例えばセンサ素子50の裏面に形成した金属線(導線、導体)とすればよい。ヒータ制御部57によってヒータ56に電流を流してヒータ56の電気抵抗によって昇温させて、これによりセンサ素子50表面に堆積したPMを燃焼して除去する。これによってPMセンサ5が再生される。
【0043】
ヒータ制御部57は、ヒータ56を流れる電圧値、電流値を検出することによって、両者の除算によってヒータ56の電気抵抗値を算出できるとする。周知のとおり電気抵抗値は温度によって変化する性質を有するので、ヒータ制御部57によってヒータ56の温度、すなわち近似的にセンサ素子50の温度が検出できる。ヒータ制御部57から電圧値、電流値をECU6へ送ってECU6で電気抵抗値さらにはヒータ56の温度を算出してもよい。
【0044】
あるいは排気温度と排気流量とからセンサ素子50の温度を算出するマップを予め作成しておいて、それを用いてセンサ素子50の温度を算出してもよい。排気温度は排気温センサ40で計測すればよい。排気流量の算出方法は後述する。またPMセンサ5は排気温度を検出するセンサ58を備える。排気温センサ58によってカバー53内部の温度を検出する。
【0045】
なお本実施例では、後述するようにカバー53内部の温度を検出するが、その検出方法は次の2つの方法のうちどちらを用いてもよい。第1の方法は、排気温センサ58を用いてカバー53内部の温度を直接検出する方法である。第2の方法は、排気温センサ40とセンサ素子50の温度とを用いてカバー53内部の温度を推定する方法である。この場合、排気温センサ40の検出値およびセンサ素子50の温度からカバー53内部の温度を算出する数式モデルを予め求めておいて、そのモデルを用いてカバー53内部の温度を算出する。第2の方法を用いる場合は排気温センサ58は装備しなくてもよい。
【0046】
以上の構成のもとでシステム1は、PMセンサ5の出力から、排気管4中のPM量を精度よく反映した数値を算出する。排気管4中のPM量を精度良く補正するポイントが図10から図12に示されている。
【0047】
図10は熱泳動による影響を示している。センサ素子50の周辺における排気温度分布が、センサ素子50のより遠くの温度が高く、より近くの温度が低い分布の場合、いわゆる熱泳動の影響によってPMはセンサ素子50の方へ向かう力を受ける。逆にセンサ素子50のより近くの温度が高く、より遠くの温度が低い場合、熱泳動の影響でPMはセンサ素子50から遠ざかる向きの力を受ける。
【0048】
前者の場合は後者の場合よりもセンサ素子50により多くのPMが堆積し、PMセンサの出力値は大きくなる。したがって排気管4中のPM量が同じでも、センサ素子50及びその周辺における温度分布が異なると、熱泳動の影響でPMセンサの出力値が異なる。したがって排気管4内のPM量のみを正確に反映した数値を得たい場合には、熱泳動の影響を打ち消したい。よって排気管4中のPM変化速度を、熱泳動の影響を打ち消すように補正する必要がある。
【0049】
図11には排気流速の影響が示されている。排気の流速が遅い場合と比較して、排気の流速が速い場合には、PMセンサ5のセンサ素子50に付着せずに、センサ素子50を通り過ぎるPMが多くなる。また排気の流速が速い場合には、一旦センサ素子50に付着したPMが排気によって再度センサ素子50から分離しやすいと考えられる。したがって、排気流速が速い場合には、その影響でPMセンサ出力が小さくなると考えられるので、それを打ち消すように補正する必要がある。
【0050】
図12には堆積したPM層の電気抵抗が示されている。図12のグラフは、縦軸がセンサ素子50に堆積したPM層による電極51、52間の電気抵抗値、横軸がそのPM層の温度である。同図のとおり、温度が高くなるにつれて、PM層による電極51、52間の電気抵抗値は低くなる。この現象の原因は以下のように推定される。
【0051】
温度が高いほどPMの各粒子は大きく振動する。したがってPMの各粒子間の接触面積が大きくなる。したがって各粒子間の接触部分を通って電流が流れる際に、電流の通る面積が大きくなるので、電流が流れやすくなり、PMセンサ5の出力が大きくなる。このことは電気抵抗値が小さくなることと等価である。したがって排気管4内のPM量を正確に反映した数値を得たい場合には、排気管4中のPM量に、温度変化による電気抵抗の変化の影響を打ち消す補正を施す必要がある。
【0052】
システム1では、以上の3つの現象の影響を打ち消すように排気管4中のPM量を補正する。その処理手順が図4に示されている。図4(および後述の図5、図6)の処理手順は予めプログラム化されて例えばECU6内のメモリ60に記憶されており、ECU6が自動的にそれを実行すればよい。
【0053】
図4の処理ではまず手順S10でECU6は、PMセンサ5の出力値を取得する。次にS20でECU6は、所定時間内に排気管4中の任意の軸方向直交断面を流通したPM流通量(排気管中PM流通量)を算出する。この算出は例えば、所定時間前後のPMセンサ検出値の変化量から排気管中PM流通量を予め求めておいた相関関係に基づいて算出すれば良い。理論的には、排気管中PM流通量がa倍になればPMセンサの検出値の単位時間あたりの変化量もa倍になるとみなされる。したがってPMセンサ出力値の変化量と排気管中PM流通量との間には相関関係がある。次にS30でセンサ素子50の温度を取得する。センサ素子50の温度は上述の方法で算出すればよい。次にS40でECU6は、センサ素子50周りの排気温度(あるいはカバー53内排気温度)を取得する。これは上述の2つの方法のいずれかを用いて取得すればよい。
【0054】
続いてS60でECU6は、排気管中流通PM量補正係数1(以下、係数1)を算出する。係数1(および後述の係数2、3)は、排気管中PM流通量に例えば乗算されるかたちで排気管PM流通量を補正する正の数値である。係数1は、上述の熱泳動の影響を補正するための係数である。係数1は例えばマップを用いて算出すればよく、そのマップの例が図7に示されている。
【0055】
図7は、縦軸に排気管中のPM量補正係数1、横軸にセンサ素子50の温度からカバー内排気温度を減算した数値をとっている。センサ素子50の温度はS30で、カバー内排気温度はS40で取得している。上述のとおり、素子温度からカバー内排気温度を減算した数値が大きいほど、熱泳動の影響で、排気管中PM流通量に対するPMセンサの出力増加が小さくなる。したがって素子温度からカバー内排気温度を減算した数値が大きいほど係数1を大きな(正の)数値とする。図7における縦軸、横軸の目盛りは使用する装置の特性などに応じて適切に定めればよい。
【0056】
熱泳動においては、素子温度からカバー内排気温度を減算した数値が大きいほど、センサ素子50からPMを遠ざける傾向がより大きくなる。この傾向を打ち消すために、図7に示された係数1を決定する曲線は下に凸、すなわち素子温度からカバー内排気温度を減算した数値が大きいほど、係数1の増加率(曲線の傾き)は大きくなっている。S60では、図7のマップを用いて係数1を算出する。
【0057】
続いてS90では、S60で算出した補正係数1を用いて、排気管中PM流通量を補正する(補正後排気管中PM流通量)。具体的には、S20で算出した排気管PM流通量にS60で算出した係数1を乗算すればよい。
【0058】
続いてS100では、S90で算出した補正後排気管中PM流通量を積算する。これにより、排気管4中を流通したPMの総量(粒子状物質検出値)を算出することができる。
【0059】
上記で算出された粒子状物質検出値を図12を考慮に入れて、補正してもよい。上述のとおり、センサ素子50の表面に堆積したPMの温度が高いほど、PM間を通る電流に対する電気抵抗が減少する。電気抵抗が減少するほどPMセンサ5の出力値である電流値は大きくなる。したがって、この影響を打ち消すために、センサ素子50の表面に堆積したPMの温度が高いほど、前記粒子状物質検出値が小さくなるように補正する。
【0060】
センサ素子50の表面に堆積したPMの温度は、例えばセンサ素子温度、あるいはカバー内温度(あるいは両数値の中間の数値、例えば平均値など)によって近似すればよい。したがってこの場合の係数を求めるマップは例えば図13のようになる。前記粒子状物質検出値は、図13に基づいて算出された補正値に例えば乗算するかたちで、前記粒子状物質検出値を補正することができる。
【0061】
次に実施例2を説明する。実施例1では、熱泳動の影響を打ち消すように排気管中PM流通量を補正したが、実施例2においては、熱泳動に加えて排気流速の影響も打ち消すように排気管中PM流通量を補正する。実施例2においても、図1から図3の装置構成を用いればよい。実施例2における処理手順が図5に示されている。図5において図4と同一符号の処理は図4と同じ処理を行えばよいので、重複する説明は省略する。
【0062】
図5の処理では、S50およびS70の処理が実行される。S50ではセンサ素子周りの排気流速を検出する。排気流速の算出方法は後述する。S70でECU6は、排気管中PM流通量補正係数2(以下、係数2)を算出する。係数2は、上述の排気流速の影響を打ち消すための補正係数である。係数2は例えばマップを用いて算出すればよく、そのマップの例が図8に示されている。
【0063】
図8は、縦軸に係数2、横軸に(単位時間当たりの)排気流量(排気流速)をとっている。上述のとおり、排気流速が大きいほど、排気管PM流通量に対するPMセンサの出力増加が小さくなる。したがって排気流速が大きいほど係数2を大きな数値とする。図8における縦軸、横軸の目盛りは使用する装置の特性などに応じて適切に定めればよい。
【0064】
上述のとおり、排気流速の影響においては、排気流速が大きいほど、センサ素子50にPMが付着しにくくなる傾向、センサ素子50からPMが離脱しやすくなる傾向がより大きくなる。この傾向を打ち消すために、図8に示された係数2を決定する曲線は下に凸、すなわち排気流速が大きいほど、係数2の増加率(曲線の傾き)は大きくなっている。S60では、図8のマップを用いて係数2を算出する。
【0065】
そして図5のS90では、S20で取得した排気管中PM流通量に、S60で算出した係数1を乗算し、さらにS70で算出した係数2を乗算する。さらに、S100で補正後排気中PM流通量を積算し、粒子状物質検出値を算出する。以上が図5の処理手順である。
【0066】
次に実施例3を説明する。実施例3においては、熱泳動、排気流速、に加えてセンサ素子50に付着したPMの離脱の影響も打ち消すように粒子状物質検出値を補正する。実施例3においても、図1から図3の装置構成を用いればよい。実施例3における処理手順が図6に示されている。図6において図4、図5と同一符号の処理は図4、図5と同じ処理を行えばよいので、重複する説明は省略する。
【0067】
図6の処理では、S110の処理が実行される。S110でECU6は、粒子状物質検出値補正係数(以下、係数3)を算出する。係数3は、上述の排気流速の影響でセンサ素子50の表面に堆積したPMが離脱することに関係する補正係数である。
【0068】
ここで、PMセンサ出力値が大きいほどセンサ素子50の表面により多くのPMが堆積しており、センサ素子により多くのPMが堆積しているほど、堆積状態から離脱するPMの量も多くなると考えられる。したがってPMセンサ出力値が大きいほど、センサ素子50から離脱するPM量が大きくなるので、係数3によってその影響を補正する。係数3は例えばマップを用いて算出すればよく、そのマップには図9の性質が用いられる。つまり上述の理由から、PMセンサの出力値が大きいほど係数3の値は大きくする。
【0069】
図6のS80では、そのマップから補正係数3を算出する。そして図6のS120では、S100で取得した粒子状物質検出値に、S110で算出した係数3を乗算し、補正後粒子状物質検出値を算出する。以上が実施例3である。
【0070】
上記実施例で用いられるセンサ素子周りの排気流速の算出方法を以下で説明する。ここで排気流速の算出には、例えば排気管中の単位時間あたりの体積流量(排気管流通排気体積流量)に係数を乗算すればよい。排気管流通排気体積流量の算出は、エアフロメータ31で計測した吸気の単位時間当たりの質量流量を排気の体積流量に変換する。排気管流通排気体積流量の算出は例えば、次の式(E1)にしたがって行う。
V(m3 /sec)
=[[G(g/sec)/28.8(g/mol)]
×22.4×10−3(m3 /mol)
+[Q(cc/sec)/207.3(g/mol)
×0.84(g/cc)×6.75]
×22.4×10−3(m3 /mol)]
×[Teg(K)/273(K)]
× [P0(kPa)/[P0(kPa)+dP(kPa)]] (E1)
【0071】
式(E1)において、V(m3 /sec)が排気管流通排気体積流量、G(g/sec)が吸気の単位時間当たりの質量流量、Teg(K)が排気温度、dP(kPa)が差圧、Q(cc/sec)が単位時間当たりの燃料噴射量をそれぞれ示している。G、Tegはそれぞれ、エアフロメータ30、排気温センサ40の計測値、そしてQはインジェクタへの噴射量の指令値とすればよい。
【0072】
式(E1)の右辺第1項は吸気の質量流量を体積流量に変換したものであり、第2項は、噴射燃料の燃焼による吸気から排気への増量分である。第2項中、0.84(g/cc)は軽油の代表的な液密度である。22.4×10−3(m3 /mol)は摂氏0度、1気圧(atm)での理想気体の1mol当たりの体積である。6.75は燃料噴射量1(mol)に対する排気のモル数の増加率である。
【0073】
増加率(6.75)は以下により得ている。軽油の組成は代表的には、C15H27.3(分子量207.3)と表され、燃焼は次の反応式(E2)で表される。したがって、燃料噴射量1(mol)に対し、排気は6.75(=(15+13.5)−21.75)倍のモル数となる。
C15H27.3+21.75O2 →15CO2 +13.5H2 O (E2)
【0074】
また、燃料噴射はECU6で決定される所定の噴射時期にのみ噴射され、間欠的な噴射となる。式(E1)中の燃料噴射量Qは、非噴射期間も合わせた平均的な燃料噴射量である。
【0075】
吸気の単位時間当たりの質量流量G(g/sec)はエアフロメータ30で計測すればよい。排気温度Teg(K)は排気温センサ40で計測すればよい。単位時間当たりの燃料噴射量Q(cc/sec)はECU6による噴射量の指令値を用いればよい。
【0076】
なお排気管流通体積流量は次の式(E3)で算出してもよい。式(E3)で算出される排気管流通体積流量は、DPF41の上流における排気流速であり、P0(kPa)が大気圧、dP(kPa)がDPF差圧である。DPF差圧は、例えばDPF41に差圧計を装備して計測すればよい。
V(m3 /sec)
=[[G(g/sec)/28.8(g/mol)]
×22.4×10−3(m3 /mol)
+[Q(cc/sec)/207.3(g/mol)
×0.84(g/cc)×6.75]
×22.4×10−3(m3 /mol)]
×[Teg(K)/273(K)]
× [P0(kPa)/[P0(kPa)+dP(kPa)]] (E3)
【0077】
上記実施例は、特許請求の範囲に記載された趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してよい。例えば上記では電流値を出力するPMセンサ5を用いたが、シャント(分流)抵抗を有して、電圧値を出力とするPMセンサでもよく、排気管中のPM量と相関を有する数値を出力するセンサであればよい。
【0078】
上記実施例で、電流計55が検出部を構成する。PMセンサ5が粒子状物質検出手段を構成する。S20、S30の手順とECU6とが温度検出手段を構成する。S70の手順とECU6とが補正手段を構成する。S50の手順とECU6とが第1副補正手段を構成する。S50の手順とECU6とが第2副補正手段を構成する。S60の手順とECU6とが第3副補正手段を構成する。
【0079】
またS65の手順とECU6とが第4副補正手段を構成する。排気温センサ40が温度センサを構成する。S30の手順とECU6とが算出手段を構成する。ヒータ56が昇温手段を構成する。ヒータ制御部57が第1検出手段を構成する。S20の手順とECU6とが第2検出手段を構成する。エアフロメータ30が吸気量検出手段を構成する。ECU6が指令手段を構成する。
【0080】
また、ヒータ56により、絶縁体50、及び電極51、52付近が昇温され、付着したPMが燃焼除去された直後、S100で算出される粒子状物質検出値は、ゼロ(0)に設定される。
【符号の説明】
【0081】
1 検出システム(検出装置)
2 ディーゼルエンジン(エンジン、内燃機関)
4 排気管(排気通路)
5 PMセンサ
41 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、内燃機関に対してすぐれた排気浄化性能が求められている。特にディーゼルエンジンにおいては、エンジンから排出される黒煙などのいわゆる排気微粒子(粒子状物質、PM:Particulate Matter)の除去が重要である。PMの除去の目的のために排気管の途中にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が装備されることが多い。
【0003】
排気中のPM量を検出する手段としてPMセンサがある。例えばDPF下流にPMセンサを配置した場合、PMセンサの検出値を用いてDPFが故障していることを検出できる。またDPF上流にPMセンサを配置した場合には、PMセンサの検出値からDPFに堆積するPM量を推定することが可能となる。例えば下記特許文献1では、排気管内にPMセンサを配置してDPF内のPM堆積量を推定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−60018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおりPMセンサを用いてDPFの故障検出やPM堆積量の推定を行う場合、当然PMセンサの精度が高いことが望まれる。しかしPMセンサの検出値はエンジンの運転条件などによって変化してしまい精度が低減する。
【0006】
PMセンサの代表的な構造は、図3に示されているとおり、絶縁体50と1対の電極51、52と電源54とを備える。PMが流通する排気管中にPMセンサ5を配置すると絶縁体50にPMが付着する。PMは導体なので、電極51、52間をつなぐまでPMが堆積すると電極間が電気的に導通状態となる。したがって電源54によって電極51、52間に電圧を供給すると電極51、52間に電流が流れる。より多くのPMが電極51、52間に堆積するほど、より多くの電流が流れる。よって電極間に流れる電流値によって絶縁体に堆積したPM量、さらには排気管中のPM量が検出(推定)できる。
【0007】
発明者は、PMセンサおよびその周囲の温度や排気流量、PMセンサ出力値などによって、PMセンサの検出値が影響を受けるとの知見を得ている。例えば図10に示されているように、温度が高い領域から温度が低い領域へ向けて粒子が力を受ける現象(熱泳動)の影響で、センサ素子(絶縁体)の周囲の温度分布によって絶縁体へのPMの付着量が異なりPMセンサの出力値が異なる。
【0008】
また図11に示されているように、排気流速が大きいと絶縁体にPMが付着しにくくなったり、一旦付着したPMが分離(離脱)する可能性が大きくなるので、PMセンサの出力値は排気流速の影響を受ける。堆積したPM量が多いほど、このPMの離脱は多いとみなされるので、PMセンサ出力値それ自身もPMセンサの出力値に影響を与える。さらに図12に示されているように、絶縁体の表面に堆積したPM層が有する電気抵抗値が温度により変化するとの知見も得ている。したがって例えばPMセンサの出力が電流値などの場合、PMセンサの出力がPM層の温度の影響を受ける。
【0009】
PMセンサの出力値から排気管中のPM量を知りたい場合、以上の影響はPMセンサの出力値から排除したい。したがって上記の影響を排除するように排気管中のPM量の検出値を適切に補正する方法を開発することが望まれる。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、PMセンサの温度あるいはその周囲の排気温度や排気流量、粒子状物質検出値などに応じて、排気管中のPM量の検出値を補正することにより高精度なPM量が検出できる検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明に係る検出装置は、内燃機関の排気通路を流通する排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、その前記排気温度検出手段によって検出された前記排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度のうちの少なくとも一方を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
これにより本発明に係る検出装置では、絶縁体上に1対の電極を配置した構成で、絶縁体に付着した粒子状物質によって導通状態となった電極間に電圧を印加して排気中の粒子状物質の量と相関を有する検出値を検出する際に、検出手段を通過する排気温度あるいは絶縁体の温度を用いて粒子状物質検出値を補正する。よって、検出手段の温度あるいはその周囲の温度分布による熱泳動や電気抵抗値の変化の影響を低減するように検出値を補正できる。したがって、熱泳動や電気抵抗値の変化の影響を受けずに、排気通路中の粒子状物質量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0013】
また本発明に係る検出装置は、排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちひとつと、前記絶縁体を通過する排気の流量を検出する排気流量検出手段と、その排気温度検出手段によって検出された前記排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度のうちの少なくとも一方と、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量と、を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
これにより本発明に係る検出装置では、絶縁体上に1対の電極を配置した構成で、絶縁体に付着した粒子状物質によって導通状態となった電極間に電圧を印加して排気中の粒子状物質の量と相関を有する検出値を検出する際に、検出手段を通過する排気温度あるいは絶縁体の温度、さらに排気流量を用いて粒子状物質検出値を補正する。よって、検出手段の温度あるいはその周囲の温度分布による熱泳動や電気抵抗値の変化の影響、さらには排気流量による付着や離脱の影響を低減するように粒子状物質検出値を補正できる。したがって、熱泳動や電気抵抗値の変化、付着や離脱のしやすさの影響を受けずに、排気通路中の粒子状物質量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0015】
また排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、前記絶縁体を通過する排気の流量を検出する排気流量検出手段と、前記絶縁体に付着した粒子状物質が絶縁体から脱離した量を検出する粒子状物質脱離量検出手段と、排気温度検出手段によって検出された前記排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度のうちの少なくとも一方と、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量と、前記粒子状物質脱離量検出手段で検出された前記粒子状物質脱離量と、を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
これにより本発明に係る検出装置では、絶縁体上に1対の電極を配置した構成で、絶縁体に付着した粒子状物質によって導通状態となった電極間に電圧を印加して排気中の粒子状物質量と相関を有する検出値を検出する際に、検出手段を通過する排気温度あるいは絶縁体の温度、さらに排気流量、粒子状物質脱離量を用いて検出値を補正する。よって、検出手段の温度あるいはその周囲の温度分布による熱泳動や電気抵抗値の変化の影響、さらには排気流量による付着や離脱の影響、絶縁体に付着した粒子状物質離脱量の影響を低減するように粒子状物質検出値を補正できる。したがって、熱泳動や電気抵抗値の変化、付着や離脱のしやすさの影響を受けずに、排気通路中の粒子状物質量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0017】
また、前記補正手段は、前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度から前記排気温度検出手段によって検出された排気温度を減算した数値が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値の変化速度を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第1副補正手段を備えたとしてもよい。
【0018】
これにより絶縁体の温度から排気温度を減算した数値が大きいほど、検出手段による前記粒子状物質検出値の変化速度を、粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正するので、絶縁体の温度から排気温度を減算した数値が大きいほど、熱泳動により絶縁体に付着する粒子状物質が少なくなる現象を打ち消すように粒子状物質検出値が補正される。したがって熱泳動の影響を低減するように補正されて、排気通路中の粒子状物質量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0019】
また前記補正手段は、前記排気温度検出手段によって検出された前記排気温度、あるいは前記絶縁体温度検出手段によって検出された前記絶縁体温度が高いほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記検出値を、前記粒子状物質の量がより少ないことを示す数値の側に補正する第2副補正手段を備えたとしてもよい。
【0020】
これにより排気温度あるいは絶縁体の温度が高いほど、検出値を、粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正するので、排気温度あるいは絶縁体温度が高いほど、絶縁体に堆積した粒子状物質の層の電気抵抗値が小さくなる現象を打ち消すように粒子状物質検出値が補正される。したがって電気抵抗値の変化の影響を低減するように補正されて、排気通路中の粒子状物質の量のみを反映した高精度な検出値を検出する検出装置が実現できる。
【0021】
また前記補正手段は、前記排気流量検出手段によって検出された前記排気流量が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値の変化速度を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第3副補正手段を備えたとしてもよい。
【0022】
これにより排気流量が大きいほど、前記粒子状物質検出値の変化速度を、粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正するので、排気流量が大きいほど、絶縁体に粒子状物質が付着しにくく、さらに一旦付着した粒子状物質が離脱しやすい現象を打ち消すように粒子状物質検出値が補正される。したがって付着や離脱の影響を低減するように補正されて、排気通路中の粒子状物質の量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0023】
また前記補正手段は、前記粒子状物質脱離量検出手段で検出された前記粒子状物質脱離量が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記検出値を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第4副補正手段を備えたとしてもよい。
【0024】
これにより検出手段による粒子状物質脱離量が大きいほど、前記粒子状物質検出値を、粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正するので、脱離による粒子状物質が減少する影響を打ち消すように、粒子状物質検出値が補正される。したがって離脱の影響を低減するように補正されて、排気通路中の粒子状物質の量を検出する高精度な検出装置が実現できる。
【0025】
また前記排気温度検出手段は、前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、前記温度センサによって検出された前記排気通路温度と、前記排気流量検出手段によって検出された前記絶縁体を通過する排気流量と、前記絶縁体温度検出手段により検出された前記絶縁体温度と、を用いて、前記粒子状物質検出手段を通過する排気温度を算出する排気温度算出手段と、を備えたとしてもよい。
【0026】
これにより排気通路に設置された温度センサの検出値と排気流量と絶縁体の温度とから前記粒子状物質検出手段を通過する排気温度を算出するので、前記粒子状物質検出手段を通過する排気温度を直接検出しなくとも、精度のよい排気温度情報を得ることができる。したがって高精度な温度情報を用いて、熱泳動などの影響を低減するように粒子状物質検出値を補正することができる。
【0027】
また電気抵抗と電力手段とを備えて、その電力手段から電力を供給して前記電気抵抗を発熱することよって前記絶縁体を昇温する昇温手段を備え、前記絶縁体温度検出手段は、前記電気抵抗の抵抗値の変化によって前記絶縁体温度を検出する第1検出手段を備えたとしてもよい。
【0028】
これにより昇温手段によって絶縁体に付着した粒子状物質を燃焼することによって前記粒子状物質検出手段を再生することができ、さらにその電気抵抗値の変化から絶縁体の温度も算出することができる。したがって前記粒子状物質検出手段を再生する手段を利用することによって、絶縁体温度の検出も行える。
【0029】
また前記絶縁体温度検出手段は、前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、前記絶縁体を通過する排気流量を検出する排気流量検出手段と、前記温度センサによって検出された前記排気通路温度と前記排気流量検出手段によって検出された前記排気流量とを用いて、前記絶縁体温度を算出する第2検出手段と、を備えたとしてもよい。
【0030】
前記第2検出手段における前記絶縁体温度の算出には、例えば、物理現象に基づいた数式モデルを用いることもでき、これにより、直接検出する手段を省いて、簡素な構成により数式モデルによって粒子状物質検出手段の素子温度が算出できる。
【0031】
また前記粒子状物質脱離量検出手段は、前記粒子状物質検出手段によって検出された粒子状物質検出値と、前記絶縁体を通過する前記排気流量と、を用いて、前記粒子状物質脱離量を算出するとしてもよい。
【0032】
これにより粒子状物質検出値と排気流量を用いて粒子状物質脱離量を算出するので、高精度に粒子状物質脱離量を算出できる。したがって高精度な粒子状物質脱離量を用いて高精度な粒子状物質検出値へ補正する検出装置が実現できる。
【0033】
また前記内燃機関の筒内への燃料の噴射量を指令する指令手段と、前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気温度を計測する温度センサと、前記排気通路内の圧力を検出する排気通路圧力検出手段のうち少なくともひとつと、前記内燃機関の吸気通路を流通する吸気量を検出する吸気量検出手段と、を備え、前記排気流量検出手段は、前記指令手段によって指令された燃料噴射量と、前記温度センサによって検出された前記排気通路温度と、前記排気通路内圧力検出手段によって検出された前記排気通路圧力と、のうちの少なくともひとつと、前記吸気量検出手段によって検出された吸気量と、を用いて排気流量を算出するとしてもよい。
【0034】
これにより内燃機関の吸気量と燃料噴射量と排気通路温度と排気通路圧力とを用いて排気流量を算出するので、高精度に排気流量を算出できる。したがって高精度な排気流量を用いて高精度な粒子状物質検出値へ補正する検出装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明における検出装置の実施例における構成図。
【図2】DPFの配置例を示す図。
【図3】PMセンサの構造の例を示す図。
【図4】実施例1における検出処理のフローチャート。
【図5】実施例2における検出処理のフローチャート。
【図6】実施例3における検出処理のフローチャート。
【図7】PMセンサ出力補正係数と素子温度とカバー内温度との差分値の間の関係の例を示す図。
【図8】排気管PM流通量補正係数と排気流量の間の関係の例を示す図。
【図9】排気管PM流通量補正係数とPMセンサ出力値の間の関係の例を示す図。
【図10】熱泳動の影響を示す図。
【図11】排気流速の影響を示す図。
【図12】PM温度の影響を示す図。
【図13】粒子状物質検出値補正係数とPM温度の間の関係の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る検出システム1(システム、検出装置)の実施例における装置構成の概略図である。
【0037】
システム1は、ディーゼルエンジン2(エンジン)の排気管4中のPM量を検出するためのシステムである。エンジン2へ吸気(空気)を供給する吸気管3には、エアフロメータ30が装備されている。エアフロメータ30によって吸気量(例えば単位時間当たりの質量流量)が検出される。エンジン2の排気管4には、排気温センサ40とPMセンサ5とが配置されている。
【0038】
排気温センサ40は排気温度を検出する。PMセンサ5は排気中のPM量を検出する。そして以上のシステムを制御する電子制御装置6(ECU:Electronic Control Unit)が装備されている。ECU6は通常のコンピュータと同様の構造を有するとして、各種演算をおこなうCPUや各種情報の記憶を行うメモリ60を備えるとすればよい。
【0039】
図1では、DPFが省略されているとすればよい。DPFを装備する場合の例が図2に示されている。図2(a)の例は、DPF41を排気温センサ40とPMセンサ5の間に配置した例であり、図2(b)の例は、排気温センサ40およびPMセンサ5の下流に配置した例である。図2(a)の場合、PMセンサ5によってDPF41をすり抜けたPM量を検出することによって、DPF41の故障の有無が検出できる。図2(b)の場合、PMセンサ5によってDPF41に流入するPM量が検出できるので、DPF41におけるPM堆積量が推定できる。
【0040】
PMセンサ5の構造の例が図3に示されている。PMセンサ5は、板状の絶縁体であるセンサ素子50の上に1対の電極51、52が形成されている。そして全体が、例えば金属製のカバー53で覆われている。カバー53には多数の孔部が形成されていて、カバーの内側にPMが流入する。そしてPMは、自身が持つ粘着性によってセンサ素子50に付着、堆積していく。PMは導電性を有するので、センサ素子50上に堆積したPMによって電極51、52間が連結されると、電極51、52間が導通状態となる。
【0041】
電極51、52間には直流電源54によって電圧が印加されており、センサ素子50上に堆積したPMによって電極51、52間が導通状態となると、電極51、52間に電流が流れる。その電流値を電流計55によって計測し、センサ出力としてECU6へ出力する。
【0042】
PMセンサ5には、ヒータ56およびヒータ制御部57が装備されている。ヒータ56は例えばセンサ素子50の裏面に形成した金属線(導線、導体)とすればよい。ヒータ制御部57によってヒータ56に電流を流してヒータ56の電気抵抗によって昇温させて、これによりセンサ素子50表面に堆積したPMを燃焼して除去する。これによってPMセンサ5が再生される。
【0043】
ヒータ制御部57は、ヒータ56を流れる電圧値、電流値を検出することによって、両者の除算によってヒータ56の電気抵抗値を算出できるとする。周知のとおり電気抵抗値は温度によって変化する性質を有するので、ヒータ制御部57によってヒータ56の温度、すなわち近似的にセンサ素子50の温度が検出できる。ヒータ制御部57から電圧値、電流値をECU6へ送ってECU6で電気抵抗値さらにはヒータ56の温度を算出してもよい。
【0044】
あるいは排気温度と排気流量とからセンサ素子50の温度を算出するマップを予め作成しておいて、それを用いてセンサ素子50の温度を算出してもよい。排気温度は排気温センサ40で計測すればよい。排気流量の算出方法は後述する。またPMセンサ5は排気温度を検出するセンサ58を備える。排気温センサ58によってカバー53内部の温度を検出する。
【0045】
なお本実施例では、後述するようにカバー53内部の温度を検出するが、その検出方法は次の2つの方法のうちどちらを用いてもよい。第1の方法は、排気温センサ58を用いてカバー53内部の温度を直接検出する方法である。第2の方法は、排気温センサ40とセンサ素子50の温度とを用いてカバー53内部の温度を推定する方法である。この場合、排気温センサ40の検出値およびセンサ素子50の温度からカバー53内部の温度を算出する数式モデルを予め求めておいて、そのモデルを用いてカバー53内部の温度を算出する。第2の方法を用いる場合は排気温センサ58は装備しなくてもよい。
【0046】
以上の構成のもとでシステム1は、PMセンサ5の出力から、排気管4中のPM量を精度よく反映した数値を算出する。排気管4中のPM量を精度良く補正するポイントが図10から図12に示されている。
【0047】
図10は熱泳動による影響を示している。センサ素子50の周辺における排気温度分布が、センサ素子50のより遠くの温度が高く、より近くの温度が低い分布の場合、いわゆる熱泳動の影響によってPMはセンサ素子50の方へ向かう力を受ける。逆にセンサ素子50のより近くの温度が高く、より遠くの温度が低い場合、熱泳動の影響でPMはセンサ素子50から遠ざかる向きの力を受ける。
【0048】
前者の場合は後者の場合よりもセンサ素子50により多くのPMが堆積し、PMセンサの出力値は大きくなる。したがって排気管4中のPM量が同じでも、センサ素子50及びその周辺における温度分布が異なると、熱泳動の影響でPMセンサの出力値が異なる。したがって排気管4内のPM量のみを正確に反映した数値を得たい場合には、熱泳動の影響を打ち消したい。よって排気管4中のPM変化速度を、熱泳動の影響を打ち消すように補正する必要がある。
【0049】
図11には排気流速の影響が示されている。排気の流速が遅い場合と比較して、排気の流速が速い場合には、PMセンサ5のセンサ素子50に付着せずに、センサ素子50を通り過ぎるPMが多くなる。また排気の流速が速い場合には、一旦センサ素子50に付着したPMが排気によって再度センサ素子50から分離しやすいと考えられる。したがって、排気流速が速い場合には、その影響でPMセンサ出力が小さくなると考えられるので、それを打ち消すように補正する必要がある。
【0050】
図12には堆積したPM層の電気抵抗が示されている。図12のグラフは、縦軸がセンサ素子50に堆積したPM層による電極51、52間の電気抵抗値、横軸がそのPM層の温度である。同図のとおり、温度が高くなるにつれて、PM層による電極51、52間の電気抵抗値は低くなる。この現象の原因は以下のように推定される。
【0051】
温度が高いほどPMの各粒子は大きく振動する。したがってPMの各粒子間の接触面積が大きくなる。したがって各粒子間の接触部分を通って電流が流れる際に、電流の通る面積が大きくなるので、電流が流れやすくなり、PMセンサ5の出力が大きくなる。このことは電気抵抗値が小さくなることと等価である。したがって排気管4内のPM量を正確に反映した数値を得たい場合には、排気管4中のPM量に、温度変化による電気抵抗の変化の影響を打ち消す補正を施す必要がある。
【0052】
システム1では、以上の3つの現象の影響を打ち消すように排気管4中のPM量を補正する。その処理手順が図4に示されている。図4(および後述の図5、図6)の処理手順は予めプログラム化されて例えばECU6内のメモリ60に記憶されており、ECU6が自動的にそれを実行すればよい。
【0053】
図4の処理ではまず手順S10でECU6は、PMセンサ5の出力値を取得する。次にS20でECU6は、所定時間内に排気管4中の任意の軸方向直交断面を流通したPM流通量(排気管中PM流通量)を算出する。この算出は例えば、所定時間前後のPMセンサ検出値の変化量から排気管中PM流通量を予め求めておいた相関関係に基づいて算出すれば良い。理論的には、排気管中PM流通量がa倍になればPMセンサの検出値の単位時間あたりの変化量もa倍になるとみなされる。したがってPMセンサ出力値の変化量と排気管中PM流通量との間には相関関係がある。次にS30でセンサ素子50の温度を取得する。センサ素子50の温度は上述の方法で算出すればよい。次にS40でECU6は、センサ素子50周りの排気温度(あるいはカバー53内排気温度)を取得する。これは上述の2つの方法のいずれかを用いて取得すればよい。
【0054】
続いてS60でECU6は、排気管中流通PM量補正係数1(以下、係数1)を算出する。係数1(および後述の係数2、3)は、排気管中PM流通量に例えば乗算されるかたちで排気管PM流通量を補正する正の数値である。係数1は、上述の熱泳動の影響を補正するための係数である。係数1は例えばマップを用いて算出すればよく、そのマップの例が図7に示されている。
【0055】
図7は、縦軸に排気管中のPM量補正係数1、横軸にセンサ素子50の温度からカバー内排気温度を減算した数値をとっている。センサ素子50の温度はS30で、カバー内排気温度はS40で取得している。上述のとおり、素子温度からカバー内排気温度を減算した数値が大きいほど、熱泳動の影響で、排気管中PM流通量に対するPMセンサの出力増加が小さくなる。したがって素子温度からカバー内排気温度を減算した数値が大きいほど係数1を大きな(正の)数値とする。図7における縦軸、横軸の目盛りは使用する装置の特性などに応じて適切に定めればよい。
【0056】
熱泳動においては、素子温度からカバー内排気温度を減算した数値が大きいほど、センサ素子50からPMを遠ざける傾向がより大きくなる。この傾向を打ち消すために、図7に示された係数1を決定する曲線は下に凸、すなわち素子温度からカバー内排気温度を減算した数値が大きいほど、係数1の増加率(曲線の傾き)は大きくなっている。S60では、図7のマップを用いて係数1を算出する。
【0057】
続いてS90では、S60で算出した補正係数1を用いて、排気管中PM流通量を補正する(補正後排気管中PM流通量)。具体的には、S20で算出した排気管PM流通量にS60で算出した係数1を乗算すればよい。
【0058】
続いてS100では、S90で算出した補正後排気管中PM流通量を積算する。これにより、排気管4中を流通したPMの総量(粒子状物質検出値)を算出することができる。
【0059】
上記で算出された粒子状物質検出値を図12を考慮に入れて、補正してもよい。上述のとおり、センサ素子50の表面に堆積したPMの温度が高いほど、PM間を通る電流に対する電気抵抗が減少する。電気抵抗が減少するほどPMセンサ5の出力値である電流値は大きくなる。したがって、この影響を打ち消すために、センサ素子50の表面に堆積したPMの温度が高いほど、前記粒子状物質検出値が小さくなるように補正する。
【0060】
センサ素子50の表面に堆積したPMの温度は、例えばセンサ素子温度、あるいはカバー内温度(あるいは両数値の中間の数値、例えば平均値など)によって近似すればよい。したがってこの場合の係数を求めるマップは例えば図13のようになる。前記粒子状物質検出値は、図13に基づいて算出された補正値に例えば乗算するかたちで、前記粒子状物質検出値を補正することができる。
【0061】
次に実施例2を説明する。実施例1では、熱泳動の影響を打ち消すように排気管中PM流通量を補正したが、実施例2においては、熱泳動に加えて排気流速の影響も打ち消すように排気管中PM流通量を補正する。実施例2においても、図1から図3の装置構成を用いればよい。実施例2における処理手順が図5に示されている。図5において図4と同一符号の処理は図4と同じ処理を行えばよいので、重複する説明は省略する。
【0062】
図5の処理では、S50およびS70の処理が実行される。S50ではセンサ素子周りの排気流速を検出する。排気流速の算出方法は後述する。S70でECU6は、排気管中PM流通量補正係数2(以下、係数2)を算出する。係数2は、上述の排気流速の影響を打ち消すための補正係数である。係数2は例えばマップを用いて算出すればよく、そのマップの例が図8に示されている。
【0063】
図8は、縦軸に係数2、横軸に(単位時間当たりの)排気流量(排気流速)をとっている。上述のとおり、排気流速が大きいほど、排気管PM流通量に対するPMセンサの出力増加が小さくなる。したがって排気流速が大きいほど係数2を大きな数値とする。図8における縦軸、横軸の目盛りは使用する装置の特性などに応じて適切に定めればよい。
【0064】
上述のとおり、排気流速の影響においては、排気流速が大きいほど、センサ素子50にPMが付着しにくくなる傾向、センサ素子50からPMが離脱しやすくなる傾向がより大きくなる。この傾向を打ち消すために、図8に示された係数2を決定する曲線は下に凸、すなわち排気流速が大きいほど、係数2の増加率(曲線の傾き)は大きくなっている。S60では、図8のマップを用いて係数2を算出する。
【0065】
そして図5のS90では、S20で取得した排気管中PM流通量に、S60で算出した係数1を乗算し、さらにS70で算出した係数2を乗算する。さらに、S100で補正後排気中PM流通量を積算し、粒子状物質検出値を算出する。以上が図5の処理手順である。
【0066】
次に実施例3を説明する。実施例3においては、熱泳動、排気流速、に加えてセンサ素子50に付着したPMの離脱の影響も打ち消すように粒子状物質検出値を補正する。実施例3においても、図1から図3の装置構成を用いればよい。実施例3における処理手順が図6に示されている。図6において図4、図5と同一符号の処理は図4、図5と同じ処理を行えばよいので、重複する説明は省略する。
【0067】
図6の処理では、S110の処理が実行される。S110でECU6は、粒子状物質検出値補正係数(以下、係数3)を算出する。係数3は、上述の排気流速の影響でセンサ素子50の表面に堆積したPMが離脱することに関係する補正係数である。
【0068】
ここで、PMセンサ出力値が大きいほどセンサ素子50の表面により多くのPMが堆積しており、センサ素子により多くのPMが堆積しているほど、堆積状態から離脱するPMの量も多くなると考えられる。したがってPMセンサ出力値が大きいほど、センサ素子50から離脱するPM量が大きくなるので、係数3によってその影響を補正する。係数3は例えばマップを用いて算出すればよく、そのマップには図9の性質が用いられる。つまり上述の理由から、PMセンサの出力値が大きいほど係数3の値は大きくする。
【0069】
図6のS80では、そのマップから補正係数3を算出する。そして図6のS120では、S100で取得した粒子状物質検出値に、S110で算出した係数3を乗算し、補正後粒子状物質検出値を算出する。以上が実施例3である。
【0070】
上記実施例で用いられるセンサ素子周りの排気流速の算出方法を以下で説明する。ここで排気流速の算出には、例えば排気管中の単位時間あたりの体積流量(排気管流通排気体積流量)に係数を乗算すればよい。排気管流通排気体積流量の算出は、エアフロメータ31で計測した吸気の単位時間当たりの質量流量を排気の体積流量に変換する。排気管流通排気体積流量の算出は例えば、次の式(E1)にしたがって行う。
V(m3 /sec)
=[[G(g/sec)/28.8(g/mol)]
×22.4×10−3(m3 /mol)
+[Q(cc/sec)/207.3(g/mol)
×0.84(g/cc)×6.75]
×22.4×10−3(m3 /mol)]
×[Teg(K)/273(K)]
× [P0(kPa)/[P0(kPa)+dP(kPa)]] (E1)
【0071】
式(E1)において、V(m3 /sec)が排気管流通排気体積流量、G(g/sec)が吸気の単位時間当たりの質量流量、Teg(K)が排気温度、dP(kPa)が差圧、Q(cc/sec)が単位時間当たりの燃料噴射量をそれぞれ示している。G、Tegはそれぞれ、エアフロメータ30、排気温センサ40の計測値、そしてQはインジェクタへの噴射量の指令値とすればよい。
【0072】
式(E1)の右辺第1項は吸気の質量流量を体積流量に変換したものであり、第2項は、噴射燃料の燃焼による吸気から排気への増量分である。第2項中、0.84(g/cc)は軽油の代表的な液密度である。22.4×10−3(m3 /mol)は摂氏0度、1気圧(atm)での理想気体の1mol当たりの体積である。6.75は燃料噴射量1(mol)に対する排気のモル数の増加率である。
【0073】
増加率(6.75)は以下により得ている。軽油の組成は代表的には、C15H27.3(分子量207.3)と表され、燃焼は次の反応式(E2)で表される。したがって、燃料噴射量1(mol)に対し、排気は6.75(=(15+13.5)−21.75)倍のモル数となる。
C15H27.3+21.75O2 →15CO2 +13.5H2 O (E2)
【0074】
また、燃料噴射はECU6で決定される所定の噴射時期にのみ噴射され、間欠的な噴射となる。式(E1)中の燃料噴射量Qは、非噴射期間も合わせた平均的な燃料噴射量である。
【0075】
吸気の単位時間当たりの質量流量G(g/sec)はエアフロメータ30で計測すればよい。排気温度Teg(K)は排気温センサ40で計測すればよい。単位時間当たりの燃料噴射量Q(cc/sec)はECU6による噴射量の指令値を用いればよい。
【0076】
なお排気管流通体積流量は次の式(E3)で算出してもよい。式(E3)で算出される排気管流通体積流量は、DPF41の上流における排気流速であり、P0(kPa)が大気圧、dP(kPa)がDPF差圧である。DPF差圧は、例えばDPF41に差圧計を装備して計測すればよい。
V(m3 /sec)
=[[G(g/sec)/28.8(g/mol)]
×22.4×10−3(m3 /mol)
+[Q(cc/sec)/207.3(g/mol)
×0.84(g/cc)×6.75]
×22.4×10−3(m3 /mol)]
×[Teg(K)/273(K)]
× [P0(kPa)/[P0(kPa)+dP(kPa)]] (E3)
【0077】
上記実施例は、特許請求の範囲に記載された趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してよい。例えば上記では電流値を出力するPMセンサ5を用いたが、シャント(分流)抵抗を有して、電圧値を出力とするPMセンサでもよく、排気管中のPM量と相関を有する数値を出力するセンサであればよい。
【0078】
上記実施例で、電流計55が検出部を構成する。PMセンサ5が粒子状物質検出手段を構成する。S20、S30の手順とECU6とが温度検出手段を構成する。S70の手順とECU6とが補正手段を構成する。S50の手順とECU6とが第1副補正手段を構成する。S50の手順とECU6とが第2副補正手段を構成する。S60の手順とECU6とが第3副補正手段を構成する。
【0079】
またS65の手順とECU6とが第4副補正手段を構成する。排気温センサ40が温度センサを構成する。S30の手順とECU6とが算出手段を構成する。ヒータ56が昇温手段を構成する。ヒータ制御部57が第1検出手段を構成する。S20の手順とECU6とが第2検出手段を構成する。エアフロメータ30が吸気量検出手段を構成する。ECU6が指令手段を構成する。
【0080】
また、ヒータ56により、絶縁体50、及び電極51、52付近が昇温され、付着したPMが燃焼除去された直後、S100で算出される粒子状物質検出値は、ゼロ(0)に設定される。
【符号の説明】
【0081】
1 検出システム(検出装置)
2 ディーゼルエンジン(エンジン、内燃機関)
4 排気管(排気通路)
5 PMセンサ
41 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路を流通する排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、
少なくとも前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、
前記排気温度検出手段によって検出された排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度のうちの少なくとも一方を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、
少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、
前記絶縁体を通過する排気の流量を検出する排気流量検出手段と、
前記排気温度検出手段によって検出された排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度のうちの少なくとも一方と、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量と、を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、
少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、
前記絶縁体を通過する排気の流量を検出する排気流量検出手段と、
前記絶縁体に付着した粒子状物質が絶縁体から脱離した量を検出する粒子状物質脱離量検出手段と、
前記排気温度検出手段によって検出された排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度のうちの少なくとも一方と、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量と、前記粒子状物質脱離量検出手段で検出された粒子状物質脱離量と、を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度から前記排気温度検出手段によって検出された排気温度を減算した数値が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値の変化速度を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第1副補正手段を備えた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記排気温度検出手段によって検出された排気温度、あるいは前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度が高いほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を、前記粒子状物質の量がより少ないことを示す数値の側に補正する第2副補正手段を備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値の変化速度を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第3副補正手段を備えた請求項2乃至5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記粒子状物質脱離量検出手段で検出された前記粒子状物質脱離量が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第4副補正手段を備えた請求項3に記載の検出装置。
【請求項8】
前記排気温度検出手段は、
前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、
前記温度センサによって検出された排気温度と、前記排気流量検出手段によって検出された前記絶縁体を通過する排気流量と、前記絶縁体温度検出手段により検出された絶縁体温度と、を用いて、前記粒子状物質検出手段を通過する排気温度を算出する排気温度算出手段と、
を備えた請求項1乃至7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
電気抵抗と電力手段とを備えて、その電力手段から電力を供給して前記電気抵抗を発熱することよって前記絶縁体を昇温する昇温手段を備え、
前記絶縁体温度検出手段は、前記電気抵抗の抵抗値によって前記絶縁体温度を検出する第1検出手段を備えた請求項1乃至8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記絶縁体温度検出手段は、
前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、
前記絶縁体を通過する排気流量を検出する排気流量検出手段と、
前記温度センサによって検出された排気温度と前記排気流量検出手段によって検出された排気流量とを用いて前記絶縁体温度を算出する第2検出手段と、を備えた請求項1乃至8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記粒子状物質脱離量検出手段は、
前記絶縁体を通過する排気流量を検出する排気流量検出手段と、
前記粒子状物質検出値と前記排気流量とを用いて、前記粒子状物質脱離量を算出する算出手段と、
を備えた請求項3に記載の検出装置。
【請求項12】
前記内燃機関の筒内への燃料の噴射量を指令する指令手段と、
前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、
前記排気通路内の圧力を検出する排気通路圧力検出手段と、のうち少なくともひとつと、
前記内燃機関の吸気通路を流通する吸気量を検出する吸気量検出手段と、
を備え、
前記排気流量検出手段は、前記指令手段によって指令された燃料噴射量と、前記温度センサによって検出された排気温度と、前記排気通路圧力検出手段によって検出された排気通路圧力と、のうちの少なくともひとつと、前記吸気量検出手段によって検出された吸気量と、を用いて排気流量を算出する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路を流通する排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、
少なくとも前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、
前記排気温度検出手段によって検出された排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度のうちの少なくとも一方を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、
少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、
前記絶縁体を通過する排気の流量を検出する排気流量検出手段と、
前記排気温度検出手段によって検出された排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度のうちの少なくとも一方と、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量と、を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
排気中に配置された絶縁体と、その絶縁体に少なくとも一部が当接するように配置された1対の電極と、その1対の電極間に電圧を印加して、前記絶縁体に付着して前記1対の電極間を電気的に導通させた排気中の粒子状物質の量と相関を有する数値である粒子状物質検出値を検出する検出部と、を備えた粒子状物質検出手段と、
少なくとも、前記粒子状物質検出手段を通過する排気の温度を検出する排気温度検出手段および前記絶縁体の温度を検出する絶縁体温度検出手段のうちのひとつと、
前記絶縁体を通過する排気の流量を検出する排気流量検出手段と、
前記絶縁体に付着した粒子状物質が絶縁体から脱離した量を検出する粒子状物質脱離量検出手段と、
前記排気温度検出手段によって検出された排気温度および前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度のうちの少なくとも一方と、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量と、前記粒子状物質脱離量検出手段で検出された粒子状物質脱離量と、を用いて、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度から前記排気温度検出手段によって検出された排気温度を減算した数値が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値の変化速度を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第1副補正手段を備えた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記排気温度検出手段によって検出された排気温度、あるいは前記絶縁体温度検出手段によって検出された絶縁体温度が高いほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を、前記粒子状物質の量がより少ないことを示す数値の側に補正する第2副補正手段を備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記排気流量検出手段によって検出された排気流量が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値の変化速度を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第3副補正手段を備えた請求項2乃至5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記粒子状物質脱離量検出手段で検出された前記粒子状物質脱離量が大きいほど、前記粒子状物質検出手段によって検出された前記粒子状物質検出値を、前記粒子状物質の量がより多いことを示す数値の側に補正する第4副補正手段を備えた請求項3に記載の検出装置。
【請求項8】
前記排気温度検出手段は、
前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、
前記温度センサによって検出された排気温度と、前記排気流量検出手段によって検出された前記絶縁体を通過する排気流量と、前記絶縁体温度検出手段により検出された絶縁体温度と、を用いて、前記粒子状物質検出手段を通過する排気温度を算出する排気温度算出手段と、
を備えた請求項1乃至7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
電気抵抗と電力手段とを備えて、その電力手段から電力を供給して前記電気抵抗を発熱することよって前記絶縁体を昇温する昇温手段を備え、
前記絶縁体温度検出手段は、前記電気抵抗の抵抗値によって前記絶縁体温度を検出する第1検出手段を備えた請求項1乃至8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記絶縁体温度検出手段は、
前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、
前記絶縁体を通過する排気流量を検出する排気流量検出手段と、
前記温度センサによって検出された排気温度と前記排気流量検出手段によって検出された排気流量とを用いて前記絶縁体温度を算出する第2検出手段と、を備えた請求項1乃至8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記粒子状物質脱離量検出手段は、
前記絶縁体を通過する排気流量を検出する排気流量検出手段と、
前記粒子状物質検出値と前記排気流量とを用いて、前記粒子状物質脱離量を算出する算出手段と、
を備えた請求項3に記載の検出装置。
【請求項12】
前記内燃機関の筒内への燃料の噴射量を指令する指令手段と、
前記排気通路に備えられて、排気通路を流通する排気の温度を計測する温度センサと、
前記排気通路内の圧力を検出する排気通路圧力検出手段と、のうち少なくともひとつと、
前記内燃機関の吸気通路を流通する吸気量を検出する吸気量検出手段と、
を備え、
前記排気流量検出手段は、前記指令手段によって指令された燃料噴射量と、前記温度センサによって検出された排気温度と、前記排気通路圧力検出手段によって検出された排気通路圧力と、のうちの少なくともひとつと、前記吸気量検出手段によって検出された吸気量と、を用いて排気流量を算出する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−150028(P2012−150028A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9500(P2011−9500)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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