説明

検品装置、検品方法、コンピュータプログラム

【課題】 印刷と同期したリアルタイムな印刷物の検品システムにおいて、精度とパフォーマンスを両立した画像位置合わせ手段が求められる
【解決手段】 印刷原稿の複数の紙端を検知して斜行角度を計測する。位置ズレ補正のために、印刷データの印刷内容と、その印刷物の撮像データから特徴点を抽出し、特徴点同士のフィッティング処理を行うことで線形ズレ量を見積もる。その際、斜行角度を参照することでフィッティング処理時間の高速化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検品装置、検品方法、コンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
商業印刷において従来から、オフセット製版印刷機を用いて少品種大量印刷のオフセット印刷が行われてきた。また、最近では、電子写真方式やインクジェット方式の画像形成装置などのデジタル印刷機の高速化、高画質化を受けて、オンデマンド印刷(プリント・オン・デマンド、POD)が注目されている。 上記のようなオフセット印刷やオンデマンド印刷において、印刷物に不具合がないかどうか検査する検品処理の自動化が行われている。
【0003】
従来から、検査対象の印刷物をカメラやラインセンサなどのセンサから画像メモリに取り込んで、予め基準として設定されている基準画像と比較することによって検品処理が行われてきた。この検品処理において、センサから取り込まれる対象画像が検査対象である印刷物の搬送時の斜行ズレ、センサの光学的なズレなどの各種ズレによって歪んでいるため、センサから読み込んだ対象画像をそのまま基準画像と比較するだけでは、検査精度が低い。従って、両画像の位置合わせを行う必要がある。
【0004】
特許文献1では、印刷物の傾きを計測し、計測された傾きを回転パラメータとする一次変換によって位置合わせを行う。また、特許文献2では、対象画像と基準画像を分割し、分割基準画像との間でパターンマッチング処理を行い、このパターンマッチング処理の結果に基づき、位置合わせを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−89063
【特許文献2】特開2008−064486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
斜行ズレや光学的なズレは歪みなどの非線形成分を含んでおり、画像領域によってズレ量が異なる。そのため、対象画像を局所的な画像情報から一律に一次変換して補正する、特許文献1に記載の方法では、位置合わせの精度が低い。また、特許文献2に記載の位置合わせ方法で補正されるのは、シフト(平行移動)のズレ量であり、回転ズレや拡大縮小によるズレ量を補正することが出来ず、位置合わせの精度が低い。
【0007】
本発明は、回転ズレを考慮した画像間の位置合わせを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の検品装置は、元画像が印刷された印刷物を読み取った読み取り画像を取得する読み取り手段と、前記元画像を受信する受信手段と、前記印刷物の斜行の方向を示す斜行情報を取得する取得手段と、前記受信手段で受信された元画像からエッジ特徴を含むパッチ画像を抽出する抽出手段と、前記抽出手段で抽出されたパッチ画像を前記斜行情報に基づいて回転させ、当該回転されたパッチ画像に対応する前記読み取り画像の部分を探索することによって前記元画像の位置合わせを行う位置合わせ手段と、前記位置合わせ手段で位置合わせが行われた元画像と前記読み取り画像とを比較することで、前記印刷物の良否を判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
印刷物の検品装置において、回転ズレを考慮した画像位置合わせ処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】検品システムの構成を示すブロック図
【図2】検品システムの構成図
【図3】紙検知センサ
【図4】ラインセンサ
【図5】検品制御部ブロック図
【図6】各画像データとパッチの説明図
【図7】回転量見積もり手段の説明図
【図8】画像データの分割と分割された各ブロックのズレ量の説明図
【図9】リファレンス画像データとスキャン画像データの画像照合説明図
【図10】検品システムの処理のフローチャート
【図11】画像位置合わせ処理のフローチャート
【図12】パッチ間の回転量推定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0012】
図1は本実施例における、印刷と同期した検品システム(インライン検品システム)の構成を示すブロック図である。検品システム1は、印刷装置部10、印刷原稿読取部500、検品制御部600、印刷原稿排紙部700、フィニッシャ部800、排紙部1000から構成され、不図示のPCとネットワークなどで接続されている。図10は、検品システム1における各処理部での処理フロー図である。検品制御部600は、図10に示される処理フローを実行する。
【0013】
図2には、本実施例に係る検品システム1のハードウェア構成図が示されている。印刷装置部10は、画像読取部100、印刷装置操作部200、プリンタ部300、印刷装置制御部400から構成される。図10の処理フローについて図2を用いて説明する。
【0014】
ユーザは、印刷装置操作部200(UI)を用いて、印刷装置部10で実行する印刷ジョブの設定を行う(S100)。印刷ジョブには、後述の印刷原稿制御部における排紙モードの設定情報(排紙設定値)やフィニッシャ部800のフィニシング処理の設定情報(フィニシング設定値)が含まれている。また、この時、検品制御部600での印刷物の検品精度の設定もUI上で行われる。
【0015】
次に、印刷装置制御部400は、ステップS100で設定された印刷ジョブの実行制御を行い、設定された印刷ジョブと検品精度の設定情報(検品設定値)を検品制御部600へ送信し、印刷ジョブの各設定値をフィニッシャ部800へ送信する。(S101、S102)。本実施例において、検品設定値は、検査結果が良品判定であるか不良判定であるかを判定するための閾値とユーザが設定する各項目の設定値である。この閾値には、濃度差分、欠陥画像サイズといった項目がある。ユーザの設定する項目は、汚れや擦れ、スジといった検出対象欠陥の選択や、検査する上での解像度といった検査レベルの設定などがある。
【0016】
画像読取部100は、原稿搬送装置110で搬送された原稿画像を読み取る。原稿搬送装置110は、原稿トレイ111上にセットされた原稿を先頭ページから順に1枚ずつ搬送し、湾曲したパスを介して原稿台ガラス114の上へと搬送する。片面原稿を読取る方法としては、二種類の方法がある。まず一つ目の方法は、原稿台ガラス114上の読取位置R1へ原稿の後端を搬送し停止させ、スキャナユニット121を左から右へ移動させることにより、原稿の読取りを行う原稿固定読取モードがある。二つ目の方法は、原稿を一定の読取り速度で読取位置R1へ搬送し、スキャナユニット121を読取位置R1で固定したまま原稿の読取りを行う原稿搬送読取モードがある。前述した片面原稿を読取る二種類の方法では、読取った原稿が排紙トレイ112に排出される。両面原稿を読取る方法としては、スキャナユニット121で表面を読取り、原稿搬送装置110内に配置した光学ユニット113を使用して裏面を読取る方法がある。光学ユニット113内には図示しないイメージセンサおよび光源等が配置されている。
【0017】
レンズ122を介してイメージセンサ123により読取られた原稿の画像は、画像処理されて記憶装置430に格納されるとともに、印刷装置制御部400に転送される。印刷装置コントローラ部410は、プリンタ部300を制御するプリンタ制御部301と通信を行い、記憶装置430に格納されている画像データをシートに印刷する。また、PC2からPDLデータが入力された場合に、RIP部でRIP(Raster Image Processor)処理を施す(S103)。
【0018】
RIPデータは記憶装置430に格納され、プリンタ制御部301と通信を行い、画像データをシートに印刷する(S104)。プリンタ制御部301は、画像信号に応じたレーザ光を出力する。このレーザ光が感光ドラム302に照射されると、感光ドラム302上には静電潜像が形成される。感光ドラム302上の静電潜像は現像器303により現像され、感光ドラム302上の現像剤はカセット311、312、手差し給紙部313のいずれかから給送されたシートに転写部306で転写される。現像剤が転写されたシートは定着部304に導かれると、現像剤の定着処理が行われる。
【0019】
そして印刷されたシートは印刷装置部10から排出されて印刷原稿読取部500へ搬送される。また、このときに印刷装置コントローラ部410は、印刷画像の元となったデジタルデータ(例えばRIPデータ)とジョブの属性情報を検品制御部600へ送信する(S105)。定着部304を通過したシートを、図示しないフラッパにより、一旦、パス307からパス310に導き、シートの後端がパス307を抜けた後、シートをスイッチバックさせてパス308から排出ローラ305に導く。これにより、現像剤が転写された面を下向きの状態(フェイスダウン)にして排出ローラ305によりプリンタ部300から排出することが可能である。これを反転排紙という。このように、フェイスダウンで排出することにより、原稿搬送装置(画像読取部)100を用いて複数枚の原稿を読取った画像をプリントする場合など、先頭ページから正しいページ順で画像形成を行うことが可能である。なお、手差し給紙部313からOHPシートなどの硬いシートに画像形成を行う場合、パス307に導くことなく、現像剤が転写された面を上向きの状態(フェイスアップ)のままで排出ローラ305から排出する。また、シートの両面に画像形成を行う場合、シートを定着部304からパス307、パス310に導き、シートの後端がパス307を抜けた直後にシートをスイッチバックさせ、図示しないフラッパにより両面搬送パス309に導く。
【0020】
両面搬送パス309に導かれたシートに対し、再度、転写部306で静電潜像が転写され、定着部304で定着処理が施される。このように、転写部306から両面搬送パス309を経由して再び転写部306に戻る一巡のパスの中に、A4、B5等のハーフサイズ用紙が5枚入った状態でも搬送可能なように、パス長、ローラ配置、駆動系の分割がなされている。なお、これらの処理による排出ページ順は、奇数ページが下向きになるように排出されるので、両面コピー時のページ順を合わせることができる。排出ローラ305から排出された印刷出力物(印刷物)20は印刷原稿読取部500に送り込まれる。
【0021】
印刷原稿読取部500は、印刷原稿読取コントローラ部510、紙検知センサ511、ラインセンサ512を有する。まず、紙検知センサ511で送りこまれた印刷出力物20の検知を行う(S106)。紙検知センサ511は、図3に示すように、黒い紙搬送ベルト(搬送手段)513に対して白の印刷出力物20の紙端のエッジで印刷出力物20の有無を検知する。この時、印刷出力物20の有無を検知すると同時に、印刷出力物20の先頭の紙端の2つの隅の通過時間を計測する。
【0022】
印刷原稿読取コントローラ部510は、ステップS106で計測された通過時間および紙搬送ベルト513の搬送速度から、図3に示す印刷出力物20の斜行角度Θ514を計算する。この斜行角度Θ514は、斜行情報であり、印刷出力物20の斜行角度だけでなく、斜行方向も示す。のこのとき印刷原稿読取コントローラ部510は、斜行角度Θ514の情報を検品制御部600へ送信する(S107)。
【0023】
次に、紙の有無を検知した信号をトリガーに、印刷原稿読取コントローラ部510がラインセンサ512を制御して、図4に示すように印刷出力物20の画像データを読取る(S108)。印刷原稿読取コントローラ部510は、読取った画像データを、検品制御部600に送信する。画像データの読取後、印刷出力物20は印刷原稿排紙部700に搬送される。
【0024】
検品制御部600は、図5に示すように、検品コントローラ部610、画像処理部620、特徴点抽出部630、記憶装置640、位置合わせ処理部(位置合わせ手段)650、比較判定部(判定手段)660を有する。また、検品コントローラ部610は、画像処理部620、特徴点抽出部630、記憶装置640、位置合わせ処理部650、比較判定部660、印刷装置コントローラ部410、印刷原稿読取コントローラ部510、印刷原稿排紙コントローラ部710と接続する。
【0025】
検品コントローラ部610は、ユーザがステップS101にて印刷装置操作部200で設定した印刷ジョブの各設定値や検品設定値を受信して記憶装置640に格納する(S109)。続いて、検品コントローラ部610は、印刷装置コントローラ部410から、印刷画像の元となったRIPデータなどのデジタルデータ(リファレンス画像データ)、ジョブの属性情報、を受信して記憶装置640に格納する(S110)。なお、ここで検品コントローラ部610は、元画像(リファレンス画像データ)を受信する受信手段として機能する。リファレンス画像データ900の例を図6(a)に示す。リファレンス画像データには、印刷装置部10で行うジョブがコピージョブの場合は、イメージセンサ123で読取られた原稿の画像データ(ビットマップデータ)を用い、PDLジョブの場合はPDLデータがRIP処理されたRIPデータを用いる。何れの画像データも検品コントローラ部610で受信される。
【0026】
また検品コントローラ部610は、印刷原稿読取コントローラ部510から、ステップS107において計算した印刷出力物20の斜行角度Θ514の情報を受信して記憶装置640に格納する(S111)。ここで、検品コントローラ部610は印刷物(印刷出力物20)の斜行情報を取得する取得手段として機能する。
【0027】
さらに検品コントローラ部610は、ステップS108においてラインセンサ512が読取った印刷原稿画像データ(スキャン画像データ)を受信して記憶装置640に格納する(S112)。ここで検品コントローラ部610は、印刷物を読み取った読み取り画像(スキャン画像データ)を取得する読み取り手段として機能する。スキャン画像データ910の例を図6(b)に示す。
【0028】
また、検品コントローラ部610は、格納されたリファレンス画像データとスキャン画像データを用いて後述の処理S113〜S115の画像検査処理を制御し、その結果を印刷原稿排紙コントローラ部710に送信する(S116)。また、S116にて、検品コントローラ部610は、S109で受信され記憶装置640に格納された印刷ジョブの各設定値を印刷原稿排紙コントローラ部710に送信する。
【0029】
画像処理部620は、スキャン画像データとリファレンス画像データについて、比較、照合をするための前処理として画像処理を行う。具体的には、デスクリーン処理、解像度変換処理、色空間変換処理を行う。
【0030】
特徴点抽出部630では、画像処理部620で画像処理されたリファレンス画像データ900の画像の特徴点901を抽出する(S113)。ここでいう特徴点901とは図6(c)に示すような画像データのコーナーエッジ点(図6(c)の印字画像「A」の角に相当)を意味し、2方向のエッジベクトル(エッジ特徴)を持つ。このエッジ特徴を含む複数画素×複数画素の正方形のパッチ画像902をリファレンス画像データ900から抽出する。抽出方法は、例えばHarrisとStephensのコーナー検出アルゴリズムなど一般的な手法が挙げられる。ただし、抽出方法は、これに限られない。
【0031】
位置合わせ処理部650の行うS114の位置合わせ処理について、処理フローを図11に示す。
【0032】
まず、位置合わせ処理部650は、抽出されたリファレンス画像データ900内の特徴点901を含むパッチ画像902を用いて、スキャン画像データ910内の対応するパッチ画像912(図6(d))を探索することで、両パッチ画像間のシフト量(平行移動量)を計算して求める(S1141)。求めたシフト量は、後述のS1142にてアフィン変換パラメータを計算する際に用いられる。シフト量は以下の方法で求める。なお、S1141において求まるシフト量は1つだけでなく、リファレンス画像データ中の複数のパッチ画像に対して求まる複数のシフト量である。
【0033】
まず、位置合わせ処理部650は、特徴点抽出部630の抽出したパッチ画像902に対して、所定の角度(例えば0.1°)の回転処理を施す。位置合わせ処理部650は、この回転処理が施された画像と、パッチ画像902の位置に対応するスキャン画像データ910におけるパッチ画像との相関を求めて位置合わせを行う。相関を求める方法の一つとして、例えば、フーリエ変換を利用してパッチ画像間の相関を求める方法がある。具体的には、両パッチ画像に対してフーリエ変換を施して積をとり、この積に対して逆フーリエ変換を施すことで、両パッチ画像間の相関を求める。このようにして求まった相関は、パッチ画像間のそれぞれのシフト量とそのシフト量に対応した相関係数との相関関数として求まる。この相関関数において、パッチ画像どうしが一致するようなシフト量に対応した相関係数は、高い数値を有する。
【0034】
そして、位置合わせ処理部650は、この相関に基づいて、パッチ画像902に対応するパッチ画像(スキャン画像データ910における部分画像)912を探索し、パッチ画像902、912の中心座標の平行移動量をシフト量として求める。このような探索の結果、見つかったパッチ画像912は、位置ずれしたパッチ画像902がスキャンされたものである。なお、以降において、位置ずれしたパッチ画像902と見つかったパッチ画像912がほぼ一致していることを、フィッティングしていると称する。このシフト量の算出をリファレンス画像データ900中の他の複数の特徴点を含むパッチ画像に対しても行い、複数のパッチ画像間のシフト量を求める。以上がパッチ画像間のシフト量を求める方法である。なお、パッチ画像間の一致するようなシフト量を求めるために、フーリエ変換を利用して相関係数を求めたが、パッチ画像どうしが一致するようなシフト量を求める方法であればこの方法に限らなくても良い。
【0035】
以上のパッチ画像間のシフト量を計算する際に、パッチ画像902に対して回転処理を施しているが、これについて図7、図12を用いて詳述する。
【0036】
従来の回転処理を図7(a)に示す。従来では、リファレンス画像データのパッチ画像902に対して施される回転処理は、時計周りと反時計回りに交互に回転させるものであった。この時の回転処理の回転角は例えば0.1°ずつ大きくしていきフィッティング処理を行う。なお、フィッティング処理とは、フィッティングするようなパッチ画像902とパッチ画像912を見つける処理である。このフィッティング処理は、パッチ画像902に回転処理の施した画像(回転後の元画像)とスキャン画像データ中のパッチ画像の相関関数を求め、この相関関数における相関係数が相関の閾値以上となるパッチ画像912を探索する処理である。本実施例における相関関数の求め方は、上述した通りである。この相関係数が相関の閾値以上となる場合、フィッティング処理(位置合わせ処理)を完了し、閾値未満である場合、パッチ画像902をさらに回転させてフィッティング処理を継続する。相関係数が相関の閾値以上であることを、相関が相関の閾値以上であるともいい、相関係数が相関の閾値未満であることを、相関が相関の閾値未満であるともいう。
【0037】
図7(a)の例だと914〜917と4回の回転処理を行った後、パッチ画像912が求まることになる。なお、スキャン画像データ910中のパッチ画像912の中心から延びる矢印は、パッチ画像902の特徴点901に対応したエッジベクトルに対応するものである。
【0038】
一方、図7(b)、図12の処理フローは本実施例の手法であり、まず、位置合わせ処理部650は、記憶装置640に格納されている印刷出力物20の斜行角度Θ514を参照し、フィッティング処理のための回転方向を決定する(S11411)。
【0039】
本実施例では、フィッティング処理での回転方向の決定は、位置合わせ処理部650が斜行角度Θ514を参照し、印刷出力物20の斜行方向が時計回り方向か否かで判断する(S11413)。例えば、斜行角度Θ514の値から印刷出力物20が時計周りに斜行している場合、パッチ画像902を所定の角度(0.1°)ずつ時計周りにのみに回転させて、フィッティング処理を行う(S11414、S11416)。図7(b)の例だと918〜919と2回の回転処理で済むことになり、フィッティング処理の処理時間が低減される。印刷出力物20が反時計回りに斜行している場合は、パッチ画像902を0.1°ずつ反時計周りにのみに回転させて、フィッティング処理を行う(S11415、S11416)。すなわち、パッチ画像902は、斜行情報の示す斜行方向に回転される。
【0040】
以上の処理により従来よりも高速にフィッティング処理が完了する。
【0041】
次に位置合わせ処理部650は、S1141で求まった複数のシフト量に基づいて、リファレンス画像データ900とスキャン画像データ910との間の画像全体でのアフィン変換パラメータを計算する(S1142)。アフィン変換パラメータは、画像の回転量、拡大縮小率、シフト量で表現される。アフィン変換(2次元アフィン変換)は、入力画像gi(x、y)に対し、出力画像go(X、Y)とすると以下の式で表わされる。なお、アフィン変換パラメータは、反時計周りの回転量をΓ、拡大縮小率をk、主走査方向および副走査方向のシフト量をsおよびtで表される。
【0042】
【数1】

【0043】
位置合わせ処理部650について、次にリファレンス画像データ900とスキャン画像データ910をブロック単位に分割する(S1143)。図8に示した例ではページ画像データを3×5のブロックに分割する。位置合わせ処理部650は、前述の画像全体のアフィン変換パラメータを用いて、各ブロックのパッチ画像に対してアフィン変換を行い、パッチ画像ごとにアフィン変換前後のシフト量を求める。そしてこのシフト量とS1141で求まったシフト量との差(非線形歪み量)をパッチ画像ごとに求めて、これに基づき各ブロックの非線形歪み量を求める。パッチ画像を有さないブロックに対してはパッチ画像を有するブロックの非線形歪み量を補間することで、当該ブロックの非線形歪み量を求める(S1144)。図8(b)に各ブロックの非線形歪み量を示す。ここでは、各ブロックの非線形歪み量を簡易的にベクトルで表現している。この求まった非線形歪み量から、リファレンス画像データ900をスキャン画像データ910にブロックごとに位置合わせ処理を行う。
【0044】
比較判定部660では、位置合わせ処理部650にてブロック単位で位置合わせされたリファレンス画像データ940とスキャン画像データ910との画像照合を行う(S115)。
【0045】
画像照合では、図9に示すように、スキャン画像データ910の1画素を注目画素920とする。注目画素920と、注目画素920と同一座標の位置合わせ処理後のリファレンス画像データ940上の画素を中心とした含む正方領域内の各画素(参照画素930)と、画素比較を行う。ある参照画素930との差分データが一定値未満であれば、スキャン画像データ910の注目画素920が、位置合わせ処理後のリファレンス画像データ940の正方領域に存在し、注目画素が正しいデータであると判断する。全ての参照画素930との差分データが一定値以上であれば、スキャン画像データ910の注目画素920が、位置合わせ処理後のリファレンス画像データ940の正方領域に存在せず、注目画素が欠陥データであると判断する。このような画像照合を、スキャン画像データ910の全ての画素について行う。
【0046】
その後、欠陥データ数が、ユーザが印刷装置操作部200で設定した閾値未満であればスキャン画像データ910を良好と判定し、閾値以上であればスキャン画像データ910を不良と判定する。すなわち比較判定部660は、スキャン画像データの元となる印刷物の良否を判定する判定手段として機能する。比較判定部660は、この検査結果を、印刷原稿排紙コントローラ部710に送信する(S116)。
【0047】
印刷原稿排紙部700では、印刷原稿排紙コントローラ部710が、検品コントローラ部610からスキャン画像データの検査結果と排紙設定値を受信し(S117)、印刷原稿排紙部700に送り込まれた印刷出力物20の排紙制御を行う。
【0048】
印刷原稿排紙コントローラ部710は、S117で受信した検査結果が良品判定であれば(S118)、印刷出力物20を良品トレイ(OKトレイ)701へ排紙し(S119)、検査結果が不良判定であれば(S118)、印刷出力物20を不良トレイ(NGトレイ)702へ排紙するように排紙制御する(S120)。
【0049】
OKトレイ701に送り込まれた印刷出力物20は、S117にて受信された排紙設定値に応じて(S121)、排紙部1000へジョブが全て終わった後に排紙されるか、部数毎に排紙される(S122)。印刷原稿排紙コントローラ部710は排紙された印刷出力物20をフィニッシャ部800に搬送する。フィニッシャ部800はS101で送信された印刷ジョブの各設定値を受信し(S123)、受信した各設定値に基づいて、印刷出力物20に対して、裁断処理、綴じ処理、穴あけ処理、フォールディング処理等のフィニシング処理を行う(S124)。そして、フィニッシャ部800はフィニシング処理後の印刷出力物20を排紙部1000へ排紙する(S125)。
【0050】
以上が本実施例の説明である。本実施例の検品装置によれば、印刷物の斜行情報に基づき、フィッティング処理の回転方向を一意に決定するため、位置合わせ処理を高速化できる。
【0051】
なお、本実施例では、斜行情報の斜行角度の大きさによらず、フィッティング処理を行っていたが、斜行情報の斜行の角度が閾値を超えた場合、検品処理部はフィッティング処理を行わずにエラー処理を行う構成としても良い。ここでのエラー処理とは、印刷物を不良トレイ702へと排紙する処理である。エラー処理において、印刷装置操作部200に、印刷物の斜行によるエラーであることを示しても良いし、斜行によるエラー回数をカウントし、斜行によるエラーが多い場合、レジストローラが故障している可能性がある旨を印刷装置操作部200に表示しても良い。
【0052】
(実施例2)
実施例1では、特徴点を含むパッチ内のエッジベクトルのフィッティング処理の際、斜行角度Θ514の値から回転させる方向を決めていた。実施例2では、初めに斜行角度Θ514の値だけリファレンス画像データのエッジベクトルを回転させておく。そして、予め回転させたリファレンス画像データのエッジベクトルの回転位置を基準として、従来例と同様に時計周り方向、反時計回り方向の交互にフィッティング処理を行う。本実施例における回転量の推定処理フローについて図12(b)を用いて説明する。なお、特に断りがなければ、その他の構成については、実施例1と同様である。
【0053】
位置合わせ処理部650は、記憶装置640に格納されている印刷出力物20の斜行角度Θ514を参照し(S11421)、斜行角度Θ514だけリファレンス画像データのエッジベクトルを含むパッチを回転させる(S11422)。
【0054】
次に位置合わせ処理部650は、回転させたエッジベクトルがスキャン画像データのエッジベクトルと一致しているか否かを判断する(S11426)。ここでいうエッジベクトルどうしの一致とは実施例1で説明したとおりである。エッジベクトルどうしが一致していると判断された場合、位置合わせ処理部650は、回転量推定処理を終了する。また、エッジベクトルどうしが一致していないと判断された場合、直前のフィッティング処理で行ったリファレンス画像データのエッジベクトルの回転方向が反時計回りかどうかを判定する(S11423)。
【0055】
次にS11423で、位置合わせ処理部650は、回転方向が反時計回りであると判断された場合、リファレンス画像データのエッジベクトルを時計回り方向に0.1°回転するフィッティング処理を行い、処理をS11426へ進める。また、S11423で、回転方向が時計回りであると判断された場合、位置合わせ処理部650は、リファレンス画像データのエッジベクトルを反時計回り方向に0.1°回転するフィッティング処理を行い、処理をS11426へ進める。
【0056】
以上のフィッティング処理によって本実施例のエッジベクトルの回転量は推定される。
【0057】
本実施例によれば、実施例1と比べて、斜行角度測定の精度が高く、印刷装置部10の印刷時の用紙に対するズレ量が小さい場合に、より位置合わせ処理時間が短縮される。
【0058】
(その他の実施例)
なお、本発明の目的は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録したコンピュータ可読の記憶媒体を、システムあるいは装置に供給することによっても、達成される。また、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成される。
【0059】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0060】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0061】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現される。また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例が実現される場合も含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元画像が印刷された印刷物を読み取った読み取り画像を取得する読み取り手段と、
前記元画像を受信する受信手段と、
前記印刷物の斜行の方向を示す斜行情報を取得する取得手段と、
前記受信手段で受信された元画像からエッジ特徴を含むパッチ画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出されたパッチ画像を前記斜行情報に基づいて回転させ、当該回転されたパッチ画像に対応する前記読み取り画像の部分を探索することによって前記元画像の位置合わせを行う位置合わせ手段と、
前記位置合わせ手段で位置合わせが行われた元画像と前記読み取り画像とを比較することで、前記印刷物の良否を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする検品装置。
【請求項2】
前記印刷物を搬送する搬送手段を有し、
前記取得手段は、前記搬送手段で搬送される印刷物の端の通過時間を検出することで求まる前記斜行情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の検品装置。
【請求項3】
前記斜行情報は、前記印刷物の斜行の方向および斜行の角度を示す情報であって、
前記取得手段は、前記斜行情報の示す斜行の角度が閾値を超えた場合、前記位置合わせ手段による処理を行わず、エラー処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の検品装置。
【請求項4】
前記位置合わせ手段は、
前記斜行情報の示す斜行の方向に前記抽出されたパッチ画像を回転させ、当該回転されたパッチ画像と前記読み取り画像における部分画像との相関を求め、該相関が相関の閾値以上である場合、前記元画像の位置合わせを完了し、該相関が相関の閾値未満である場合、前記斜行情報の示す斜行の方向に当該回転されたパッチ画像をさらに回転させて位置合わせを行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の検品装置。
【請求項5】
前記位置合わせ手段は、
前記斜行情報の示す斜行の方向および斜行の角度に基づいて前記抽出されたパッチ画像を回転させ、当該回転されたパッチ画像と前記読み取り画像における部分画像との相関を求め、該相関が相関の閾値以上である場合、前記元画像の位置合わせを完了し、該相関が相関の閾値未満である場合、前記回転されたパッチ画像を所定の角度でさらに回転させて位置合わせを行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の検品装置。
【請求項6】
元画像が印刷された印刷物を読み取った読み取り画像を取得する読み取り手段と、
前記元画像を受信する受信手段と、
前記印刷物の斜行の方向を示す斜行情報を取得する取得手段と、
前記受信手段で受信された元画像を前記斜行情報に基づいて回転させることで当該元画像の位置合わせを行う位置合わせ手段と、
前記位置合わせが行われた元画像と前記読み取り画像とを比較することで、前記印刷物の良否を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする検品装置。
【請求項7】
読み取り手段が、元画像が印刷された印刷物を読み取った読み取り画像を取得する読み取り工程と、
受信手段が、前記元画像を受信する受信工程と、
取得手段が、前記印刷物の斜行の方向を示す斜行情報を取得する取得工程と、
位置合わせ手段が、前記受信工程で受信された元画像を前記斜行情報に基づいて回転させることで当該元画像の位置合わせを行う位置合わせ工程と、
判定手段が、前記位置合わせが行われた元画像と前記読み取り画像とを比較することで、前記印刷物の良否を判定する判定工程と、
を有することを特徴とする検品方法。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の各手段として、コンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−36815(P2013−36815A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171974(P2011−171974)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】