説明

検査用基紙および検査方法

【課題】表面側に塗布層を有する検査の対象とする塗布フィルムの裏面に空気巻き込みによるトンネルを生じることなく均質に密着して貼り合わせることができ、好ましい検査体が形成され、塗布層の有無および均質性の判別性を明瞭に判別できる検査用基紙およびそれを用いた検査方法を提供する。
【解決手段】実質的に不透明な基材層の表面に、質量平均分子量(Mw)が20万〜300万であるアクリル系高分子量重合体と質量平均分子量(Mw)が500〜3000であるアクリル系低分子量重合体とを配合して成るアクリル系粘着剤層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機能層などの塗布層を有する塗布フィルムの検査用基紙に関し、詳しくは、検査の対象とする塗布フィルムの裏面(検査の対象とする塗布層のある面と反対の面)に、空気を巻き込むことによるトンネルを生じることなく均質に密着して貼り合わせることができることにより好ましい検査体が形成されるため、塗布層の有無および塗布層の塗斑、表面の擦り傷などの有無(均質性)を明瞭に判別できる検査用基紙およびそれを用いた検査方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明における被検査体としての塗布フィルムは、透明フィルムを基材フィルムとしてその表面に実質的に透明な塗布層を設けたものをいう。かかる塗布フィルムとしては、特に限定されないが、塗布層が光散乱層、防眩層などの光学機能層である光学フィルムの場合は、その塗布層の有無や均質性がそれを組み込んだ光学システムの特性に大きく影響する。かかる塗布フィルムに塗布層(光学機能層)が設けられているかどうか(塗布層の有無)、また、その塗布層の塗斑や擦り傷の有無(塗布層の均質性)は、光学システムの特性に大きく影響する。しかしながら、これらの塗布フィルムは、実質的には透明であり、肉眼では容易に視認することができず、また、特に塗布フィルムの塗布層の厚さが薄いため、塗布層の有無および均質性を判別することはきわめて困難である。
【0003】
塗布フィルムの基材表面に設けられた塗布層の厚さ斑の状態の検出方法として、従来、例えば、液晶ガラス基板表面に塗布されたレジストの膜厚むらなど、被検体上の薄膜の厚さに対して波長幅が広くコヒーレンス長が小さい光束の照明光を照射し該被検体からの第1の画像IAと、被検体上の薄膜の厚さに対して波長幅が狭くコヒーレンス長が大きい光束の照明光を照射し該被検体からの第2の画像IBをそれぞれ撮像素子9で撮像し、これら第1の画像IAと第2の画像IBを画像処理部15に取り込むとともに、これら第1および第2の画像IA、IBの間で所定の演算を実行し、被検体の下地の影響を消去した画像ICを生成することにより、膜厚むらのみを確実に検出できる方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載の検出方法は厚さ斑を精密に測定するために精密な光学装置を使用する方法であり、簡易に利用することはできない。
【0004】
簡易に塗布フィルム面の塗り斑などの欠陥を簡易に検査する方法として、従来、対象とする塗布フィルムを斜めに透視したり、あるいは裏面に黒紙などを重ね合わせ検査してきた。しかしながら、対象とする塗布フィルムの裏面に黒紙などを重ねても、フィルムと黒紙との界面に空気層が残存するため、あるいは黒紙などの表面における反射光により全体が白っぽくなるため、塗布層の有無および均質性の評価は十分ではなかった。そのため、その改良方法として、上記の黒紙などの表面に粘着剤層を設けて対象とする塗布フィルムの裏面に貼り付けて密着させて空気層を排除し、上記の空気層による影響を回避する方法が試されている。
【0005】
上記の粘着剤層を介在させて対象とする塗布フィルムの裏面に黒紙などを貼り合わせる検査方法は、基本的には対象とする塗布フィルムの裏面と黒紙表面との間の空気層は排除できるものの、貼り合わせが実質的に手貼りとなって対象とする塗布フィルム裏面と黒紙の粘着剤層との間に空気を巻き込んでトンネル状の非密着部(以下、単にトンネルと略記する)が生じ易く、きれいに密着させることができなくなるため、塗布層の有無および均質性の精確な判定は困難となる。特に検査面積が大面積である場合はトンネルの悪影響がさらに顕著である。そして、上記のトンネルが生じた場合それらを除くために塗布フィルムと検査用基紙とを一旦剥離し、再度貼り合わせようとすると、剥離力が過大なため被検査の塗布フィルムに折れ皺が発生したり、著しい場合はいわゆる糊残りが生じて、被検査体の塗布フィルムの商品価値を損なうこともある。
【0006】
また、被検査体としての光学シートの表面に貼り合わせ、その状態で異物などの欠陥を透視で検査を行うことができ、剥離後に接着剤やハードコート剤を塗工した時の塗工外観が良好な光学シート保護用粘着フィルムが提案されている(特許文献2)。この保護用粘着フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムの片面に架橋型アクリル系粘着剤などの粘着剤層を設けてなり、全光線透過率が80%以上であり、かつ、粘着剤層をガラス面に貼り付け100℃1分間処理して剥離した後のガラス面の水接触角変化が初期に対し30度以内であることを特徴としたものである。しかし、この保護用粘着シートは基材が透明フィルムであるため、本発明の場合の様に透明フィルムに実質的に透明な塗布層を設けた塗布フィルムの透明な塗布層の有無や塗り斑を検査しても実質的に判別できない。仮に、この粘着フィルムの基材を不透明基材に変更して不透明な粘着フィルムとしても、これを被検査体である塗布フィルムの裏面に手作業で貼り合わせようとする場合、前記の場合と同様に、貼り合わせ界面に空気を巻き込んで、いわゆるトンネルが生じ易く、実用的でない。
【特許文献1】特開平10−213552号公報
【特許文献2】特開2002−173650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を回避し、検査の対象とする塗布フィルムの裏面に空気巻き込みによるトンネルを生じることなく均質に密着して貼り合わせして好ましい検査体を形成できることにより塗布層の有無および均質性が明瞭に判別でき、さらに好ましくは、貼り合わせた面を剥離したとき、粘着剤成分が移行して塗布フィルム裏面を汚染したり、糊残りなどにより不透明化が生じない、検査用基紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の要旨は、実質的に不透明な基材層の表面に、アルキル基部分の炭素数が3〜12のアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタアクリレートから成る群から選ばれた1種または2種以上のモノマー95〜99.9質量%と、官能基を含有する共重合性モノマー0.1〜5質量%とを含有するモノマー組成物を共重合した質量平均分子量(Mw)が20万〜300万であるアクリル系高分子量重合体100質量部に対して、アルキル基部分の炭素数が3〜12のアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタアクリレートから成る群から選ばれたモノマー100質量%を含有するモノマー組成物を重合または共重合した質量平均分子量(Mw)が500〜3000であるアクリル系低分子量重合体100〜300質量部を配合して成るアクリル系粘着剤層を有することを特徴とする検査用基紙に存する。
【0009】
本発明の第二の要旨は、上記の検査用基紙を塗布フィルムの裏面に貼り付け、塗布層側に現れる干渉縞により塗布フィルムの塗布層の有無および均質性を判別することを特徴とする塗布フィルムの検査方法。
【発明の効果】
【0010】
透明フィルムを基材フィルムとしてその表面に塗布層、例えば光散乱層、防眩層などの光学機能を有する塗布層を形成した塗布フィルムなど、検査の対象とする塗布フィルムの裏面に空気を巻き込むことによるトンネルを生じることなく均質に密着して貼り合わせることができることにより、好ましい検査体が形成されるため、塗布層の有無および均質性は、その程度に応じて生じる干渉縞のパターン形状およびその程度を観察することにより、塗布フィルムの色相および裏面からの光に邪魔されることなしに容易に且つ精度よく判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の検査用基紙は、基材層の表面に、粘着剤層が積層されて成る。この基材層は、検査の対象である塗布フィルムの機能層である塗布層の有無および均質性の判定精度を改善するための光学的背景を構成する層である。
【0012】
(基材層)
上記の検査用基紙を構成する基材層の素材としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂類の他、ポリオレフィン樹脂類、ポリアミド樹脂類、ポリカーボネート樹脂類、ポリイミド樹脂類、アクリル系樹脂類、ポリ塩化ビニル系樹脂類などのプラスチック類、またはそれらの2種以上の混合樹脂、セロハン類、紙類、木質、金属及び陶器板を挙げることができる。
【0013】
上記の基材層の形状は、目的とする塗布フィルムの塗布層の有無および均質性評価のための裏貼り又は基台として使用できるものであれば特に排除されず、例えば10μm程度の薄いフィルムから、10mmまたはそれ以上の板状であってもよく、また、別の観点から可撓性材料であってもよく、可撓性が無い又はほとんど無い剛直性材料であってもよく、検査環境に応じて適宜選択することができるが、塗布フィルムの製造現場など、不特定の場所において随時使用する場合には、取り扱い性の観点および価格の観点から可撓性がある二軸延伸ポリエステルフィルムが実用的である。その厚さは、通常10〜500μm、実用的には50〜200μm程度である。また、判別性の観点から、全体として不透明または光学濃度が大きい方がよく、たとえば2以上、好ましくは4以上である。また、上記の基材層の表面反射率は小さい方が好ましく、たとえば、20%以下であり、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下である。表面反射率が20%より大きい場合は、反射光が邪魔になり塗布層の有無および塗斑による干渉縞による紋様の判別が困難になる。また、その基材層表面の色相は、塗布フィルムの色相により選択されるが、上記の干渉縞による紋様が判別し易いものが好ましい。
【0014】
上記の基材層の色相を黒色またはその他の色相に着色する方法としては、基材層を構成する材料内部にカーボンブラック微粒子、その他の色相の微粒子および/または顔料を基材層樹脂に混練する方法、および、基材層表面にカーボンブラック微粒子、その他の色相の微粒子および/または顔料の含有層を形成する方法が挙げられる。一回あたりの生産量が少ない場合又は色相の種類が多い場合は後者の塗布層を形成する方法が実用的であり、また、後者の方法で得られた基材は、一般に表面の反射率を小さくすることができる。以下、基材層を構成する材料として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その表面にカーボンブラック微粒子の含有層を形成する場合の例により説明する。
【0015】
上記のカーボンブラック微粒子の含有層の形成方法は、特に限定されないが、通常、カーボンブラック微粒子を混合し分散させた黒色のバインダー樹脂液を塗布し、乾燥して形成される。上記のバインダー樹脂としては特に限定されず、公知の樹脂を使用することができるが、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル−ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、アクリル−ポリオール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などと、ポリイソシアネート類、エポキシ類またはメラミン類とを組み合わせたものが挙げられ、中でも主成分樹脂としてアクリルポリオールと硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を併用したものを好適に挙げることができる。
【0016】
また、上記のカーボンブラック微粒子の粒径は、通常、平均粒子径として10〜500nmのものが挙げられるが、20〜50nmの比較的微細なものが好ましい。上記の塗料の固形分中に含有されるカーボンブラック微粒子の含有量は、通常5〜70質量%程度であり、中でも30〜60質量%のものが使用しやすい。カーボンブラック微粒子の含有層の厚さは、反射率および光遮蔽性の観点から通常2μm以上とされるが、10μm以下で十分であり、10μmを超えても効果はあまり向上せず、経済的に不利となる。実用的には4〜6μmである。
【0017】
以上のようにして製造された基材層シート表面が後述の粘着剤層との接着性において低い場合は、その表面には、必要により易接着化処理、例えばコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理などの表面処理および/またはアンカーコート処理を行うことができる。
【0018】
(粘着剤層)
上記の粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系高分子量重合体に対して、アクリル系低分子量重合体を配合して成る。
【0019】
上記のアクリル系高分子量重合体は、質量平均分子量(Mw)が通常、20万〜300万であり、好ましくは50〜200万である。20万未満の場合は粘着剤としての凝集力が不十分であり、300万を超える場合は重合反応が困難であるばかりでなく、粘度が高くなりすぎて、粘着剤主剤として使用し難い。上記の高分子量重合体は、アルキル(メタ)アクリレート(アルキルアクリレート及び/又はメタアクリルアクリレートを指す。以下同様とする)からなる主成分モノマーおよび官能基を含有する共重合性モノマー組成物を共重合して製造することができる。
【0020】
(高分子量重合体)
上記のアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基部分の炭素数が3〜12のものであり、炭素数が4〜10のものがより好ましい。かかるモノマーとしては、具体的には、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの2種以上を併用してもよい。これらのモノマーの配合比は、全モノマー組成物中で95〜99.9質量%であり、好ましくは97〜99質量%である。上記のモノマーを2種類以上併用する場合は、その1種類(主モノマーのみ)で70質量%以上となるのが好ましく、さらにその70質量%以上となるモノマーはブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートであるのがより好ましい。
【0021】
上記の官能基含有共重合性モノマーとして、カルボキシル基含有ビニルモノマー及びヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。上記のカルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、入手容易性や、重合反応性の観点から、通常、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。また、上記のヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、そのアルキル基部分の炭素数が1〜12のものであり、例えば、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これら官能基含有共重合性モノマーの配合量は、粘着力および凝集力のバランスの観点から、全共重合モノマー成分に対して0.1〜5質量%、好ましくは1〜3質量%とされる。
【0022】
なお、本発明においては、上記のアルキル(メタ)アクリレートの一部をその他の共重合性モノマーに置き代えることができる。上記のその他の共重合性モノマーとして、例えば、アルキル基部分の炭素数は1または2のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、酢酸ビニルなどのビニルモノマー等が挙げられる。上記のその他の共重合性モノマーは、通常、10質量%以下、好ましくは3質量%以下の範囲でかつ本発明の目的を損なわない範囲で、配合することが出来る。
【0023】
上記のアクリル系高分子量重合体は、上記の各モノマー成分を溶剤に溶解して濃度が30〜50質量%程度の反応溶液とし、重合開始剤および必要に応じてさらに連鎖移動触媒を添加した後、通常、加熱重合して製造することができる。
【0024】
上記の重合開始触媒としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウリルパーオキサイド、クメンパーオキサイド等のパーオキサイド類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物などを例示することができる。かかる重合開始触媒は、全共重合モノマー100質量部に対して、通常、0.05〜2.0質量部、実用的には0.1〜0.5質量部とされる。
【0025】
上記の連鎖移動触媒としては、通常、チオール類が使用され、具体的には、たとえば、n−ドデカンチオール等を例示することができる。かかる連鎖移動触媒は、全共重合モノマー100質量部に対して、通常、0.01〜0.5質量部、実用的には0.1〜0.5質量部とされる。
【0026】
上記の各成分の溶解に使用される溶媒としては、例えば、n−ペンタン、トルエン、ベンゼン、n−ヘキサン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、及びそれらの混合物等が挙げられ、通常、酢酸エチル、トルエン又はその混合物が汎用される。必要により本発明の目的に支障がない範囲でメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類を10質量%程度以下の範囲で混合することができる。
【0027】
上記の共重合反応の条件は、特に限定されるものではないが、通常、反応系内を不活性ガスで置換し、冷却器を使用して還流させつつ40〜80℃で、通常5〜15時間、実用的には10時間程度反応が継続される。また、上記の不活性ガスとしては、経済性の観点から、通常、窒素ガスが汎用される。反応は、通常、随時反応液成分をモニターして、溶液濃度、ラジカル開始剤添加量、連鎖移動剤添加量、反応温度、反応時間などを調節して、重合体成分の質量平均分子量が制御される。
【0028】
(低分子量重合体)
前記のアクリル系低分子量重合体は、以下の点を除いて前記のアクリル系高分子量重合体の製造の場合と同様に製造される。すなわち、その違いは、目標とする質量平均分子量を500〜3000、好ましくは1000ないし2500とする点にある。そして、特に、剥離後の粘着剤成分の移行による汚染を回避するためには、前記の高分子量重合体に使用したものと同一のもの(2種類以上併用する場合はその主モノマー)を使用するのが好ましい。また、上記の質量平均分子量が500未満である場合は粘着剤成分が被着体表面に移行しやすく、粘着後に剥離したときに被着体表面を汚染し易い。また、3000を超える場合は可塑剤的効果が低下する。
【0029】
上記の質量平均分子量を上記の範囲に調節するには、溶液濃度、ラジカル開始剤添加量、連鎖移動剤添加量、反応温度、反応時間などを調節する方法が挙げられる。例えば、上記のラジカル開始剤添加量は、高分子量重合体の場合より多量に、例えば1〜5質量部、好ましくは2〜3質量部を使用し、また、連鎖移動剤添加量は、全共重合モノマー100質量部に対して、例えば1〜8質量部、好ましくは2〜5質量部とし、且つ反応時間は比較的短く、例えば3〜8時間とする。また、重合するモノマー成分を分割添加、例えば、一定時間に均等滴下する方法などを採用することができる。なお、本発明においては、前記の高分子量重合体の場合と同様に、上記のアクリル(メタ)アクリレートの一部、すなわち10質量%以下、好ましくは3質量%以下の範囲でかつ本発明の目的を損なわない範囲で、前記のその他の共重合性モノマーに置き代えることができる。
【0030】
本発明の光学用検査用基紙を構成する粘着剤層を形成するのに使用するアクリル系粘着剤溶液は、前記の質量平均分子量(Mw)が20万〜300万であるアクリル系高分子量重合体溶液に、前記の質量平均分子量(Mw)が500〜3000のアクリル系低分子量重合体溶液を、前者の固形分100質量部に対して後者の固形分が100〜300質量部、好ましくは100〜200質量部となるように配合し、さらに、これに反応溶媒として使用しうる溶媒を追加して、通常固形分が、通常、20〜40質量%、実用的には25〜35質量%に調整して得られる。このようにして得られるアクリル系粘着剤には、それを構成する高分子量重合体分子間を架橋するために、通常、さらに、架橋剤を添加する。上記の架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、多価金属キレート化合物およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0031】
上記のイソシアネート系架橋剤は、大きく分けると、脂肪族系と芳香族系に分けられ、芳香族系のものには、一部水素添加したものも含まれるが、本発明においては、それらのいずれも使用することができる。かかるイソシアネート系架橋剤としては、例えば、TDI−TMP(トルイレンジイソシアネート−トリメチルプロパンアダクト)、HMDI−ビューレットタイプ、HMDI−イソシアヌレート、HMDI−TMPアダクト(ヘキサメチレンジイソシアネート−トリメチルプロパンアダクト)、XDI−TMPアダクト(キシリレンジイソシアネート−トリメチルプロパンアダクト)などのイソシアネート系化合物が挙げられる。
【0032】
上記のエポキシ化合物としては、エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N´,N´−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等を挙げることができる。
【0033】
前記の多価金属キレート化合物としては、アルミニウム、鉄、錫、亜鉛、チタンなどの多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エステルに配位している化合物等を挙げることができる。
【0034】
上記のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤および多価金属キレート化合物の添加量は、高分子量アクリル系重合体100質量部に対し、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3.0質量部である。
【0035】
本発明のアクリル系粘着剤においては、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他に、必要に応じて光安定剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料などの添加剤を添加することができる。
【0036】
前記の基材層の表面に積層される粘着剤層は、前記のアクリル系粘着剤溶液を前記の基材層表面に塗布し、乾燥して得られる。上記の粘着剤溶液の塗布量は、通常、乾燥後の厚さが10〜100μm、実用的には25〜50μmとされる。上記の塗布方法は、公知の方法でよいが、具体例としては、ローラ塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、あるいはメイヤーバーなどを用いた塗布方法が挙げられる。また、その粘着剤層の厚さ(2層以上から成る場合はその全厚さ)は、通常、10〜500μm、好ましくは20〜100μm、実用的には20〜50μmである。塗布後の乾燥条件は、通常80〜150℃の温風中で0.5〜2分、好ましくは100〜130℃の温風中で40秒〜1.5分である。
【0037】
上記の検査用基紙の粘着剤層の表面には、取り扱い状の便利のため、離型性フィルムを積層することができる。かかる離型性フィルムとしては、公知のものを利用することができるが、例えば、プラスチックフィルムの表面にシリコーン系離型剤を塗布したものを挙げることができるが、上記の粘着剤層の粘着力が低いことから、ポリオレフィン系フィルム等、粘着性が小さいフィルムを未処理のまま使うことができる場合もある。
【0038】
以上の様にして得られた検査用基紙は、粘着剤層の架橋を進めるため、養生するのが好ましい。かかる養生条件は、特に限定されないが、通常、30〜50℃において1〜10日間、好ましくは40〜50℃において3〜7日とされる。
【0039】
以下に、本発明の第二の要旨である検査用基紙による塗布フィルムの検査方法について説明する。
上記のようにして得られる本発明の検査用基紙は、離型層が積層されている場合はこれを剥離して粘着剤層の粘着面を露出させ、この粘着面を検査対象の塗布フィルムの裏面に貼り合わせることにより、塗布フィルムの塗布層の有無および均質性を明瞭に評価することができる。その具体的方法としては、例えば、被検査用の塗布フィルムを裏面側が上向きになるように載置し、検査用基紙が当該塗布フィルムの上方に来るように位置決めし、その一方の端部の粘着剤層を当該塗布フィルム面に接合し他端を浮き上がらせた状態から徐々に全面を貼合して検査体を形成し、この検査体を裏返して被検査用の塗布フィルムの塗布層側からその表面の塗布層上により生ずる干渉縞の紋様のパターン形状およびその程度を評価する。
【0040】
上記の接合の際、手動回転ローラ等により上方から押圧しつつ接合して各被検査用の塗布フィルムと検査用基紙との間にトンネルを巻き込まないように留意するのが好ましいが、検査対象の塗布フィルムが工程途中で空中に浮いている状態または塗布層が粘着性であるため裏面側を上向きに載置できない場合は、表面が離型性の板材により塗布層側から支えつつ、塗布フィルムの裏面に、直接検査用基紙をその粘着剤層を介して貼り付けることもできる。
【0041】
上記の検査方法における判定方法は、一般に塗布部と被塗布部との境界領域など塗布層の厚さが急激に変化する部分では、各縞間の間隔が狭く比較的明瞭な筋状干渉縞が生じること、塗布面内では塗布斑が大きい場合および小さい場合それぞれ間隔が「狭い又は広い」の違いはあるがリング状の干渉縞が生じること、また、非塗布面では干渉縞が生じないことから、これらの干渉縞のパターン及びその形状により、塗布層の有無、塗布層の均質の状態を明瞭に判定することができる。本発明の検査用基紙は、その干渉縞のパターン及びその形状を明瞭に表示することができる。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、以下に示す実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、本実施例において、検査用基紙の評価は以下の方法によった。
【0043】
(光学濃度)
TD−904型マクベス濃度計(サカタインクス株式会社製)を用いて、フィルターとしてオルソを使用して測定した。
(表面反射率)
MSC−P型多光分光測色計(スガ試験機株式会社製)を使用して測定し、波長550nmにおける値で代表した。
【0044】
(エアー抜け性)
離型性シートを剥離した検査用基紙から長さ200mm、幅20mmの寸法に裁断した試験片の露出した粘着剤層表面の長さ方向の一方の先端辺部のみを、裏面を上向きとして水平に置いた被検査用の塗布フィルムの上面に貼合し、その他端を指先で摘んで緊張した状態で被検査用フィルムの基材層(ルミラー100T60、東レ株式会社製、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)上面の上方150mmの位置に持ち上げた後、指先から手離して全面を重ね合わせた。そして全面が貼り合わさったときの検査用基紙と塗布フィルム基材層裏面間に空気巻き込みによるトンネルの有無を観察し、無かった場合、及び、トンネルが生じても指先による押圧により周辺部へ移動させて除去できた場合を○、トンネルが残って除去できなかった場合を×とした。
【0045】
(リワーク性・・易剥離性)
離型性シートを剥離した検査用基紙の粘着剤層表面に、被検査用の塗布フィルムの基材層の裏面を、末端で剥離口が残るようにして圧着して積層した。この積層体から、JIS Z 0237号の粘着力試験方法に準じて、幅25mmの短冊状試験片を採取し、23℃で30分間放置して得られる試験片について、島津製作所製AUTOGRAPH AGS−50Dを用い、検査用基紙の層を掴む剥離角度90度、剥離速度毎分300mm条件で剥離して粘着剤層と被検査用の塗布フィルムとの間の剥離強度を測定し、各3試験片の測定値の平均値を易剥離性とした。
【0046】
(リワーク性・・被着体非汚染性)
さらに上記の剥離後の被検査用の塗布フィルムの基材層の剥離面への粘着剤成分の移行の有無を目視で観察し、基材層の剥離面が全く汚染されていない場合を○、粘着剤成分の移行が認められた場合を△、明らかに粘着剤が認められた場合を×と評価した。
【0047】
(塗斑判別性)
露出した粘着剤層を上向きにして載置した検査用基紙の表面に、塗布部の側端部、塗布面内に引っ掻き傷および意図的に生じさせた顕著な塗布斑部を有する被検査用の塗布フィルムを貼り合わせ、塗布フィルム表面に現れる干渉縞の紋様が、注視しないでも容易に視認できた場合を◎、少し注視すれば明らかに視認できた場合を○、よく注視しないと見落とす程度の場合を△、検査用基紙の密着性が不完全なために判定できない場合を×とした。なお、判定しない場合は「−」とした。
【0048】
(被検査用の塗布フィルムの作製)
ポリエステル系樹脂(バイロン200、東洋紡績株式会社製)溶液(メチルエチルケトン50:トルエン50混合溶媒で固形分を10質量%に希釈したもの)を、A4版大に切断した100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー100T60、東レ株式会社製)表面に、乾燥後の厚さが約0.5μmとなるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃の熱風中で乾燥して被検査用フィルムを得た。この被検査用フィルムの塗布部分の一部に、上記の混合溶媒をスポイトから1滴落として顕著な塗斑部を意図的に形成し、さらに、他の塗布部分に擦り傷の代表として針先を用いて擦り傷の代表として一筋の引っ掻き傷を設けた。
【0049】
[実施例1]
(検査用基紙の基材層)
カーボンブラック微粒子含有樹脂液(VMD−795黒、大日精化株式会社製)30質量部とイソシアネート系硬化剤(VMD硬化剤、大日精化株式会社製)3.0質量部にトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶媒6.2質量部を添加し、よく攪拌してカーボンブラック微粒子含有塗料を調製し、この塗料を、グラビヤロールを使用して厚さ75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー75T60、東レ株式会社製)に乾燥後の厚さが5μmとなるようにコートし、100℃の熱風中で1分間乾燥し、表面が黒色の基材層用黒色フィルムを得た。得られた基材層用黒色フィルムについて、光学濃度および表面反射率を測定した。その光学濃度は4.76、表面反射率(波長550μm)は5.01%であった。
【0050】
(アクリル系高分子量重合体の調製)
1L容の還流冷却器、攪拌機、温度計および滴下ロートが設置された丸底フラスコ中で、モノマー成分としてn−ブチルアクリレート98質量部および2−ヒドロキシエチルメタアクリレート2質量部とを、溶剤として酢酸エチル150質量部を用いて溶解し、さらに反応開始剤としてBPOを0.1質量部および連鎖移動剤としてn−ドデカンチオール0.02質量部とを加え、窒素置換環境下に攪拌しながら、冷却器を利用して還流しつつ加熱して室温から80℃まで昇温させた後その温度を維持し、さらに、7時間後に反応開始剤としてBPOの0.02質量部を追加し、10時間後に加熱を止めて攪拌しつつ放冷して固形分約40質量%を含むアクリル系高分子量重合体の溶液を得た。得られた重合体の質量平均分子量は、GPC法で測定したところ80万であった。
【0051】
(アクリル系低分子量重合体の調製)
1L容の還流冷却器、攪拌機、温度計および滴下ロートが設置された丸底フラスコ中で、最初に、溶剤としてトルエン120質量部および連鎖移動剤としてn−ドデカンチオール5質量部とを加え、窒素置換環境下に攪拌しながら冷却器を利用して還流しつつ加熱して室温から80℃まで昇温させた後、溶剤としてのトルエン30質量部に反応開始剤としてBPOを2.5質量部およびモノマー成分として、n−ブチルアクリレート98質量部およびエチルアクリレート2質量部との混合物を溶解し、浴温度を維持しつつ4時間かけて均等に滴下して全量を添加し、その後さらに4時間反応を続けた後、加熱を止めて攪拌しつつ放冷して固形分約40質量%を含むアクリル系低分子量重合体の溶液を得た。得られた重合体の質量平均分子量は、上記のGPC法で測定したところ、1820であった。
【0052】
(粘着剤溶液の調合)
上記のアクリル系高分子量重合体溶液とアクリル系低分子量重合体溶液とを固形分質量比で100:100の割合で配合し、さらに酢酸エチルとトルエンとを質量比で1:1に配合された混合溶媒を追加し、この合計300質量部の重合体に対して、さらに架橋剤として75質量%濃度のトルイレンジイソシアネート・トリメチロールプロパンアダクト溶液(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業株式会社製)を5.7質量部添加し、よく攪拌して重合体を30質量%含有するアクリル系粘着剤溶液を得た。
【0053】
この粘着剤溶液を、基材層としての上記の黒色フィルム表面のカーボンブラック微粒子含有塗料層表面に、乾燥後の厚さが35μmになるように塗布し、100℃の熱風中で1分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した後、離型層として離型性シート(厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にシリコーン処理したもの)の離型性表面を向かい合わせて積層し、検査用基紙を得た。
【0054】
得られた検査用基紙を用いて、前記の評価方法により、上記の被検査用塗布フィルムについてリワーク性(易剥離性および被着体非汚染性)、エアー抜け性、および塗斑判別性について評価し、それらの結果を検査用基紙の主な作製条件と共に表1に示した。
【0055】
[実施例2]
実施例1において、カーボンブラック微粒子含有塗料を塗布した黒色フィルムの代わりに、厚さ75μmの黒色無機質微粒子練り込みタイプフィルム(ルミラー75X30タイプ、東レ株式会社製)を使用した。他は、実施例1の場合と同様にこのフィルムについて光学濃度および表面反射率を測定した。その光学濃度は4.26、表面反射率(波長550μm)は8.37%であった。次いで、実施例1と同様にして、粘着剤層を積層し、離型層を積層して、検査用基紙を得た。得られた検査用基紙を用いて、実施例1と同様に、前記の被検査用フィルムについてリワーク性(易剥離性および被着体非汚染性)、エアー抜け性、および塗斑判別性について評価し、それらの結果を検査用基紙の主な作製条件と共に表1に示した。
【0056】
[実施例3]
実施例1のアクリル系高分子量重合体において、モノマー成分を、2−エチルヘキシルアクリレート97質量部および2−ヒドロキシエチルメタアクリレート3質量部に変更したこと以外は、実施例1の場合と同様にしてアクリル系高分子量重合体を得た。得られた重合体の質量平均分子量は、GPC法で測定したところ65万であった。また、実施例1のアクリル系低分子量重合体において、モノマー成分を、2−エチルヘキシルアクリレート100質量部のみに変更したこと以外は、実施例1の場合と同様にしてアクリル系低分子量重合体を得た。得られた重合体の質量平均分子量は、GPC法で測定したところ1650であった。次いで、上記のアクリル系高分子量重合体溶液とアクリル系低分子量重合体溶液とを固形分質量比で100:200の割合で配合し、以下、実施例1と同様にして、架橋剤を添加して30質量%濃度のアクリル系粘着剤溶液を得、検査用基紙を作製し、得られた検査用基紙を用いて、前記の評価方法により、上記の被検査用フィルムについてリワーク性(易剥離性および被着体非汚染性)、エアー抜け性、および塗斑判別性について評価し、それらの結果を検査用基紙の主な作製条件と共に表1に示した。
【0057】
[実施例4]
実施例1において、モノマー成分を、n−ブチルアクリレート75質量部、2−エチルヘキシルアクリレート22質量部および2−ヒドロキシエチルメタアクリレート3質量部に変更したこと以外は、実施例1の場合と同様にしてアクリル系高分子量重合体を得た。得られた重合体の質量平均分子量は、GPC法で測定したところ72万であった。また、実施例1において、モノマー成分を、n−ブチルアクリレート76質量部および2−エチルヘキシルアクリレート24質量に変更したこと以外は、実施例1の場合と同様にしてアクリル系低分子量重合体を得た。得られた重合体の質量平均分子量は、GPC法で測定したところ1450であった。以下、実施例1と同様にして、粘着面が離型フィルムで被覆された粘着性表面保護フィルムを得た。次いで、上記のアクリル系高分子量重合体溶液とアクリル系低分子量重合体溶液とを固形分質量比で100:200の割合で配合し、以下、実施例1と同様にして、架橋剤を添加して30質量%濃度のアクリル系粘着剤溶液を得、検査用基紙を作製し、得られた検査用基紙を用いて、前記の評価方法により、上記の被検査用フィルムについてリワーク性(易剥離性および被着体非汚染性)、エアー抜け性、および塗斑判別性について評価し、それらの結果を検査用基紙の主な作製条件と共に表1に示した。
【0058】
[実施例5]
実施例1において、モノマー成分中の2−ヒドロキシエチルメタクリレートを、アクリル酸2質量部に変更したこと以外は、実施例1の場合と同様にしてアクリル系高分子量重合体を得た。得られた重合体の質量平均分子量は、GPC法で測定したところ82万であった。また、アクリル系低分子量重合体は、実施例1において得られたものを使用した。次いで、上記のアクリル系高分子量重合体溶液とアクリル系低分子量重合体溶液とを固形分質量比で100:200の割合で配合し、以下、実施例1と同様にして、架橋剤を添加してアクリル系粘着剤溶液を得、検査用基紙を作製し、得られた検査用基紙を用いて、前記の評価方法により、上記の被検査用フィルムについてリワーク性(易剥離性および被着体非汚染性)、エアー抜け性、および塗斑判別性について評価し、それらの結果を検査用基紙の主な作製条件と共に表1に示した。
【0059】
[実施例6]
アクリル系高分子量重合体としては、実施例1で得られたものを使用した。また、アクリル系低分子量重合体は、実施例4においてn−ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートの質量比を50:50に変更した以外は実施例4と同様にして得た。得られた低分子量重合体の質量平均分子量は、GPC法で測定したところ1700であった。上記のアクリル系高分子量重合体溶液とアクリル系低分子量重合体溶液とを固形分質量比で100:200の割合で配合し、架橋剤を添加して30質量%濃度のアクリル系粘着剤溶液を得、次いで、実施例1の場合と同様にして、検査用基紙を作製し、得られた検査用基紙を用いて、前記の評価方法により、上記の被検査用フィルムについてリワーク性(易剥離性および被着体非汚染性)、エアー抜け性、および塗斑判別性について評価し、それらの結果を検査用基紙の主な作製条件と共に表1に示した。
【0060】
[比較例1]
アクリル系高分子量重合体としては、実施例1で得られたものを使用し、アクリル系低分子量重合体は配合しないで、以下実施例1と同様にして、上記のアクリル系高分子量重合体溶液のみに架橋剤を添加して30質量%濃度のアクリル系粘着剤溶液を得、次いで、実施例1の場合と同様にして、検査用基紙を作製し、得られた検査用基紙を用いて、前記の評価方法により、上記の被検査用フィルムについてリワーク性(易剥離性および被着体非汚染性)、エアー抜け性、および塗斑判別性について評価し、それらの結果を検査用基紙の主な作製条件と共に表1に示した。
【0061】
[比較例2]
アクリル系高分子量重合体としては、実施例1で得られたものを使用した。また、アクリル系低分子量重合体としては、最初に、溶剤としてトルエン150質量部のみに反応開始剤としてBPOを2.0質量部および連鎖移動剤としてn−ドデカンチオール3.0質量部とを加えて1L容の三口丸底フラスコ中で、窒素置換環境下に攪拌しながら加熱して40℃から80℃まで昇温させた後、モノマー成分として、n−ブチルアクリレート98質量部およびエチルアクリレート2質量部との混合物を4時間かけて均等に滴下して全量を添加し、その後さらに4時間反応を続けた後、加熱を止めて攪拌しつつ放冷して固形分約40質量%を含むアクリル系低分子量重合体組成物の溶液を得た。得られた重合体の質量平均分子量は、GPC法で測定したところ7400であった。以下実施例1と同様にして、上記のアクリル系高分子量重合体溶液とアクリル系低分子量重合体溶液とを固形分質量比で100:100の割合で配合し、架橋剤を添加して30質量%濃度のアクリル系粘着剤溶液を得、次いで、実施例1の場合と同様にして、検査用基紙を作製し、得られた検査用基紙を用いて、前記の評価方法により、上記の被検査用フィルムについてリワーク性(易剥離性および被着体非汚染性)、エアー抜け性、および塗斑判別性について評価し、それらの結果を検査用基紙の主な作製条件と共に表1に示した。
【0062】

* 1・・粘着力が著しく高く、剥離が困難で、リワーク性としては不十分。
* 2・・被検査用塗布フィルムの裏面に検査用基紙を均質に密着できない為、精確な検査不可。
【0063】
(実施例および比較例による評価のまとめ)
上記の表1に記載した結果から明らかなように、各実施例では、質量平均分子量が20万〜300万のアクリル系高分子量重合体と質量平均分子量が500〜3000の低分子量重合体とを固形分質量比で100:100〜100:300の割合で配合した粘着剤は、粘着力が低く、剥離したときの被着体への汚染が無く、いわゆるリワーク性が優れており、しかも、貼り付けの際に保護フィルムと被着体表面との間に空気を巻き込まない、いわゆる、エアー抜け性も優れていた。また、実施例6では、可塑剤的成分としての低分子量重合体の分子量は適切であり且つ配合量も十分であるため粘着力が低く剥離性は良く、検査自体は良好に行うことができた。但し、検査後に検査用基紙を剥離したところ、高分子量重合体と可塑剤的成分である低分子量重合体とのモノマー組成の差が大きいため相溶性が不十分であり、僅かに粘着剤成分が被検査体である塗布フィルムに移行して汚染が生じており、検査後の塗布フィルムは商品としては、好ましいものではなかった。
これに対して、比較例1では、貼り付けの際生じたトンネルを解消するために一旦剥離して再度貼り付けたところ、粘着剤成分に低分子量重合体を配合しないため、粘着力が著しく高く、粘着力が高すぎてリワーク性として劣るばかりでなく、エヤー抜け性も劣っており、被検査用塗布フィルムの裏面に検査用基紙を均質に密着できない為、精確な検査ができなかった。また、比較例2では、生じたトンネルを解消するために一旦剥離して再度貼り付けたところ、アクリル系低分子量重合体の質量平均分子量が7400と高いため可塑剤的効果が乏しく、粘着力が比較的高く剥離性が劣っており、エヤー抜け性も不完全であり、被検査用塗布フィルムの裏面に検査用基紙を均質に密着できず、さらに、貼り直し部分の透明性がやや低下し、精確な検査ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の検査用基紙は、その粘着剤層を介して被検査用塗布フィルムの裏面に空気を巻き込んでトンネル状の非密着部を生じること無く密着して貼り合わせることができ、万が一トンネル状非密着部を生じた場合でも当該部を押圧することにより被検査用塗布フィルムの端部に移動させて消滅させることができ、トンネルを含まないように密着して貼り合わせることができることにより好ましい検査体が形成されるため、被検査用塗布フィルムの光学機能層などの塗布層の有無および均質性の判別が明瞭にでき、その産業上の効果は大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に不透明な基材層の表面に、アルキル基部分の炭素数が3〜12のアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタアクリレートから成る群から選ばれた1種または2種以上のモノマー95〜99.9質量%と、官能基を含有する共重合性モノマー0.1〜5質量%とを含有するモノマー組成物を共重合した質量平均分子量(Mw)が20万〜300万であるアクリル系高分子量重合体100質量部に対して、アルキル基部分の炭素数が3〜12のアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタアクリレートから成る群から選ばれたモノマー100質量%を含有するモノマー組成物を重合または共重合した質量平均分子量(Mw)が500〜3000であるアクリル系低分子量重合体100〜300質量部を配合して成るアクリル系粘着剤層を有することを特徴とする検査用基紙。

【請求項2】
アクリル系粘着剤のアクリル系高分子量重合体およびアクリル系低分子量重合体を構成するアクリレート及び/又はメタアクリレート成分のそれぞれ70質量%以上が、同一のモノマーであることを特徴とする請求項1に記載の塗布フィルムの検査用基紙。

【請求項3】
アクリル系粘着剤のアクリル系高分子量重合体およびアクリル系低分子量重合体を構成するアクリレート及び/又はメタアクリレート成分のそれぞれ70質量%以上が、共にブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の検査用基紙。

【請求項4】
粘着剤層の表面にさらに離型性シートが積層されて成ることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の検査用基紙。

【請求項5】
基材層の表面色相が黒色であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の検査用基紙。

【請求項6】
基材層表面がカーボンブラック微粒子を主成分とする塗布層であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の検査用基紙。

【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の検査用基紙を塗布フィルムの裏面に貼り付け、塗布層側に現れる干渉縞により被検査体である塗布フィルムの塗布層の有無および均質性を判別することを特徴とする塗布フィルムの検査方法。


【公開番号】特開2006−225451(P2006−225451A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38511(P2005−38511)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】