説明

検知装置および処理システム

【課題】磁界中を通過する磁性体を検出する際の検出精度を向上させる。
【解決手段】磁性体付用紙P1を所持した利用者が、磁界を発生させるゲート100に侵入すると、当該磁界により磁性体に急峻な磁化反転が起きる。その結果、ゲート100内に設けられた検知コイル102にパルス電流が流れ、これに対して発生する特徴的な過渡応答を示す波形信号が端末装置300に出力される。端末装置300は、この波形と予め記憶されている複数の基準波形との相関係数を算出し、その算出した相関係数の平均値をさらに算出し、その平均値が閾値以上であるか否かを判定する。閾値以上である場合には、撮像装置400に利用者の撮像を行わせ、閾値未満である場合には、撮像を行わせない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置および処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機密情報の漏洩を防止するためのセキュリティシステムが開発されている。例えば、特許文献1に記載のセキュリティシステムでは、文書に磁性体がすき込まれ、この磁性体を検出することにより文書の持ち出しを検知している。より具体的には、文書を保管する保管室の入り口にゲートが設けられ、このゲートに交番磁界を発生させる。このゲートを磁性体が通過する際には磁界変化が発生し、この磁界変化に対応する信号が出力される。そして、その信号の波形と基準波形との相関係数が閾値以上だった場合には、文書の持ち出しが検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−151687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、磁界中を通過する磁性体を検出する際の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る検知装置は、磁界を発生する磁界発生手段と、発生した前記磁界により励磁された磁性体による当該磁界中の磁界変化を検知し、検知した磁界変化に対応した信号を出力する検知手段と、前記検知手段によって出力された信号を増幅して、過渡応答波形を表す波形信号を出力する増幅手段と、前記増幅手段によって出力された波形信号が表す過渡応答波形と、予め記憶された過渡応答波形の第1の基準波形との第1の相関係数を算出して出力する第1の算出手段と、前記増幅手段によって出力された波形信号が表す過渡応答波形と、予め記憶された過渡応答波形の第2の基準波形との第2の相関係数を算出して出力する第2の算出手段と、前記第1の算出手段によって出力された第1の相関係数と、前記第2の算出手段によって出力された第2の相関係数に基づいて値を算出する第3の算出手段と、前記第3の算出手段によって算出された値が予め定められた条件を満たす場合に、前記磁性体を検出したことを示す検出信号を出力する検出手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る検知装置は、請求項1に記載の構成において、前記第3の算出手段は、前記第1の算出手段によって出力された第1の相関係数と、前記第2の算出手段によって出力された第2の相関係数の平均値を算出し、前記検出手段は、前記第3の算出手段により算出された平均値が閾値以上である場合に、前記磁性体を検出したことを示す検出信号を出力することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る検知装置は、請求項1に記載の構成において、前記第3の算出手段は、前記第1の算出手段によって出力された第1の相関係数と、前記第2の算出手段によって出力された第2の相関係数との差を算出し、前記検出手段は、前記第3の算出手段により算出された差が閾値以下である場合に、前記磁性体を検出したことを示す検出信号を出力することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る検知装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成において、前記第1の基準波形は、前記磁界の第1の位相に対応する波形信号が表す基準波形であり、前記第2の基準波形は、前記磁界の、前記第1の位相とは異なる第2の位相に対応する波形信号が表す基準波形であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る検知装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の構成において、前記第1の基準波形は、前記磁性体を前記磁界発生手段に対して第1の位置に配置した場合に、前記検知手段により出力され、かつ、前記増幅手段により増幅されて出力される波形信号により表される波形であり、前記第2の基準波形は、前記磁性体を前記磁界発生手段に対して、前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置した場合に、前記検知手段により出力され、かつ、前記増幅手段により増幅されて出力される波形信号により表される波形であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る検知装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の構成において、前記第1の基準波形は、前記磁性体の長手方向を前記磁界発生手段に対して第1の方向に向けた場合に、前記検知手段により出力され、かつ、前記増幅手段により増幅されて出力される波形信号により表される波形であり、前記第2の基準波形は、前記磁性体の長手方向を前記磁界発生手段に対して、前記第1の方向とは異なる第2の方向に向けた場合に、前記検知手段により出力され、かつ、前記増幅手段により増幅されて出力される波形信号により表される波形であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に記載の処理システムは、請求項1乃至6のいずれかに記載の検知装置と、前記検知装置によって出力された検出信号に応じて予め定められた動作を行う動作手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜3に係る発明によれば、複数の基準波形を用いない構成と比較して、磁界中を通過する磁性体を検出する際の検出精度を向上させることができる。
請求項4に係る発明によれば、互いに位相の異なる複数の基準波形を用いない構成と比較して、磁界中を通過する磁性体を検出する際の検出精度をより向上させることができる。
請求項5に係る発明によれば、その出力時点の磁性体の位置がそれぞれ異なる複数の基準波形を用いない構成と比較して、磁界中を通過する磁性体を検出する際の検出精度をより向上させることができる。
請求項6に係る発明によれば、その出力時点の磁性体の長手方向の向きがそれぞれ異なる複数の基準波形を用いない構成と比較して、磁界中を通過する磁性体を検出する際の検出精度をより向上させることができる。
請求項7に係る発明によれば、複数の基準波形を用いない構成と比較して、磁界中を通過する磁性体を検出する際の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態であるセキュリティシステムの構成を示す図である。
【図2】ゲートの構成を示す図である。
【図3】端末装置の構成を示す図である。
【図4】撮像装置の構成を示す図である。
【図5】基材に磁性体ワイヤを埋め込んでなる磁性体付用紙を示す平面図である。
【図6】大バルクハウゼン効果を説明するための図である。
【図7】検知部の機能的構成を示した図である。
【図8】アンプによって出力される波形信号に与えられる特性を説明する図である。
【図9】基準紙の平面図である。
【図10】基準紙のゲートに対する位置及び向きを示す図である。
【図11】基準紙を図10に示されるように配置した場合に測定される波形を示す図である。
【図12】基準紙のゲートに対する位置及び向きを示す図である。
【図13】基準紙を図12に示されるように配置した場合に測定される波形を示す図である。
【図14】複写機を示す図である。
【図15】ゲート、端末装置、撮像装置および通知装置を示す図である。
【図16】端末装置の動作の処理を示すフロー図である。
【図17】基準波形と受信信号の波形との相関係数を示す図である。
【図18】基準波形と受信信号の波形との相関係数を示す図である。
【図19】基準波形と受信信号の波形との相関係数を示す図である。
【図20】相関係数の平均値を示す図である。
【図21】ゲート、端末装置および複写機を示す図である。
【図22】端末装置の動作の処理を示すフロー図である。
【図23】相関係数の最大値と最小値の差を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、ここでは、本発明における処理システムの一例として、機密文書の持ち出しを監視することを目的としたセキュリティシステムを挙げて説明するが、処理システムの目的はどのようなものであってもよい。
[A.構成]
図1は、本発明の一実施形態であるセキュリティシステム1が設置される部屋の平面図である。図1に示す保管室2には書類等が保管されており、その周囲は壁2Aによって囲まれている。この保管室2の壁2Aの外側は廊下3となっている。保管室2の壁2Aの一部には、開閉自在の一対のドア4が設けられ、このドア4を介して外部空間である廊下3に出入りができるようになっている。ドア4は壁2Aに対してヒンジで開閉自在に接続され、廊下3側に開くことができるようになっている。
ドア4のヒンジ接続部付近には、保管室2の室内に向かって延びる対向した2枚のパネル100a−1及び100a−2(以下、これらを区別しないときには単にパネル100aという)を有したゲート100が設けられており、保管室2を退出する利用者は、必ずこのパネル100a間を通過するようになっている。
【0015】
図2は、ゲート100の構成を示す図である。図2に示すように、ゲート100のパネル100a−1は、その内部に励磁コイル101−1を、パネル100a−2は励磁コイル101−2を備え(以下、これらを区別しないときには単に励磁コイル101という)、この励磁コイル101には、交流電源103が接続されている(図2において図示せず)。この交流電源103は、励磁コイル101に例えば1kHzの交流電流を流す。これにより、励磁コイル101の周囲には、交番磁界が形成される。
なお、本実施形態において、交流電源103は、常時励磁コイル101に交流電流を流しているため、ゲート100のパネル100aで挟まれた空間には常に交番磁界が形成されている。
この励磁コイル101は、本願発明の「磁界発生手段」の一例である。
【0016】
検知コイル102−1および検知コイル102−2(以下、これらを区別しないときには単に検知コイル102という)は、励磁コイル101に重ねられるようにして設けられた八の字状のコイルであり、貫通する磁力線の変化に応じた電流が流れる。検知コイル102−1と検知コイル102−2には、それぞれ検知部104−1と検知部104−2(以下、これらを区別しないときには単に検知部104という)が接続され、検知コイル102に流れる電流の大きさに応じた信号を出力する。
なお、検知コイル102に流れる電流は、検知コイル102を貫通する磁束が単位時間あたり急激に変化するほど大きな電流が流れる。なお、検知部104の詳細については後述する。
この検知コイル102は、本願発明の「検知手段」の一例である。
【0017】
図1に戻る。端末装置300は、ゲート100の検知部104から供給される信号に基づいて、撮像装置400を制御する。図3は端末装置300の構成を示す図である。図3に示すように、端末装置300はCPU(Central Processing Unit)301とROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303とを備え、CPU3
01はROM302に格納されている各種制御プログラムを読み出し、RAM303をワークエリアとして用いて各種制御プログラムを実行する。このCPU301は、本発明の「第1の算出手段」、「第2の算出手段」、「第3の算出手段」及び「検出手段」の一例である。
通信部305は通信回線との接続部に設けられており、通信回線を介して接続される装置と通信を行う。
【0018】
上述した撮像装置400は、図1に示すように、保管室2側からドア4を開いて退出する利用者に相対する廊下3の壁面に設けられており、ドア4の全体を撮像できる方向に固定されている。図4は撮像装置400の構成を示す図である。撮像装置400は、撮像を行う本体部401と撮像した画像データを記憶するレコーダ402とを備える。本体部401とレコーダ402はケーブルなどで接続されており、データが送受信されるようになっている。
【0019】
本体部401の内部には通信部410が設けられており、通信回線と接続されている。本体部401の撮像方向側の端には、固定レンズ490が設けられており、撮像方向の像から放射される光をCCDセンサ450上に集めて結像する。CCDセンサ450は、結像された像に対応するアナログ信号を画像処理部451に供給する。画像処理部451は供給されたアナログ信号をデジタルの画像データに変換して、レコーダ402に送る。レコーダ402は、画像処理部451から供給された画像データを記憶する。
【0020】
次に、説明を図1に戻す。図1に示す棚5は、保管室2内に設けられており、棚5内には多数の書類が収められている。この棚5内に収められている書類には通常の用紙P0と磁性体付用紙P1とがある。この磁性体付用紙P1は、例えばファイルに綴じられて、棚5に収納されている。用紙P0や磁性体付用紙P1には、それぞれ印刷等がなされており、資料として供されている。保管室2内にいる利用者は、磁性体付用紙P1やその他の用紙P0をファイルから取り出して、自由に持ち歩けるようになっている。
【0021】
ここで、磁性体付用紙P1の構成について説明する。磁性体付用紙P1は、一般的な紙の中に磁性体ワイヤ10が挿入されている(漉き込まれている)ものである。図5は、基材Sh1に磁性体ワイヤ10を埋め込んでなる磁性体付用紙P1を示す平面図である。基材Sh1は、通常の用紙と同様のものであり、その主な構成材料はパルプ繊維である。磁性体ワイヤ10は、例えば繊維状の磁性体であり、大バルクハウゼン効果を起こす特性を有している。この磁性体ワイヤ10の太さは磁性体付用紙P1の厚み以下であり、数本〜50本程度の磁性体ワイヤ10が基材Sh1の全面にわたって漉き込まれている。図1では、磁性体ワイヤ10を実線で示しているが、実際には、磁性体付用紙P1を光にかざした場合などには磁性体ワイヤ10の位置や形状がある程度視認できるようになっているものの、それ以外の場合には視認しづらいようになっている。さらに、磁性体付用紙P1の表面には、原稿の内容を表す文字や図形などの画像が形成されているため、磁性体ワイヤ10の位置や形状を視認するのはいっそう困難である。
【0022】
ここで、大バルクハウゼン効果について簡単に説明しておく。
図6は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。大バルクハウゼン効果は、図6(a)に示すようなB−H特性、つまりヒステリシスループがほぼ長方形で保磁力(Hc)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファス磁性体を、交番磁界中においた際に急峻な磁化反転が起きる現象である。このため、励磁コイルに交流電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中に磁性体を置くと、磁化反転時に、励磁された磁性体の近傍に配置した検知コイルにパルス状の電流が流れることとなる。例えば、励磁コイルにより図6(b)の上段に示すような波形の交番磁界を発生させた場合、検知コイルには、図6(b)の下段に示すような波形のパルス電流が流れることとなる。ただし、検知コイルに流れる電流には、交番磁界によって誘導される交流電流も含まれており、パルス電流は、この交流電流に重畳されて検出されることとなる。
【0023】
次に、検知部104の具体的構成について説明する。
図7は、検知部104の機能的構成を示した図である。検知コイル102−1の出力は、図7の中央に破線枠で示す検知部104−1のHPF(High-Pass Filter)1041−1、アンプ1042−1、ADC1043−1を介して出力されるようになっており、検知コイル102−2の出力は、図7の下部に破線枠で示す検知部104−2のHPF1041−2、アンプ1042−2、ADC1043−2を介して出力されるようになっている。なお、上述したとおり、検知コイル102−1と検知コイル102−2がそれぞれ出力する波形信号は、図6(b)の上段に示すような波形の交番磁界によって誘導される電流に図6(b)の下段に示すような波形のパルス電流が重畳された電流の波形信号である。
【0024】
HPF1041−1とHPF1041−2(以下、これらを区別しないときには単にHPF1041という)は、ハイパスフィルタであり、それぞれ、検知コイル102−1の出力と検知コイル102−2の出力から交番磁界によって誘導される電流、例えば、1kHzの電流成分を除去し、磁性体が起こす大バルクハウゼン効果によるパルス電流を通過させる。したがって、HPF1041−1とHPF1041−2を通過したパルス電流は、図6(b)の下段に示すような波形となる。
【0025】
アンプ1042−1とアンプ1042−2(以下、これらを区別しないときには単にアンプ1042という)は、それぞれ、HPF1041−1が通過させたパルス電流とHPF1041−2が通過させたパルス電流を増幅して波形信号を出力する。このとき、アンプ1042の特性は、パルス電流の入力に対していわゆるリンギングが発生するように調整されている。リンギングとは、方形波やパルス波などの急峻な変化をする信号が、回路網等を通過するときに生じる波形であり、過渡応答の一種である。
このアンプ1042は、本発明の「増幅手段」の一例である。
【0026】
ここで、図8は、アンプ1042によって出力される波形信号に与えられる特性を説明する図であり、図中実線の波形信号R0が、リンギングによる過渡応答波形を表しており、点線の波形が、励磁コイルによる交番磁界の波形である。図8の縦軸はアンプ1042によって出力される電流の電圧値から換算した磁場の強さを表している。また、図8の横軸は時刻を表している。ここで、Tは交番磁界の周期を表している。図8に示す交番磁界により発生する磁場の強さの絶対値が磁性体ワイヤ10の保磁力H0になる時刻に、磁性体ワイヤ10に急峻な磁化反転が生じるので、上述のパルス電流が生じる。図8に二点鎖線で示す補助線L1、L2は、磁場の強さがH0、−H0となる部分を示すものである。この補助線L1、L2と、交番磁界によって誘導される電流が示す曲線とが交わる時刻において、パルス電流は発生している。アンプ1042は、このパルス電流に応じて、波形信号R0を出力する。
【0027】
アンプ1042の特性は、パルス電流の入力に対して理想的な過答応答波形が発生するように調整されている。このアンプ1042により生じる理想的な波形信号R0について説明する。
アンプ1042による応答は2次比例要素を持つ。一般に、2次のステップ応答を示す伝達関数G(s)は次式(1)で表される。
【数1】

アンプ1042により生ずる波形信号R0は減衰振動であるので、上述した伝達関数G(s)を逆ラプラス変換し、tを時刻、ωnを固有周波数、ζを減衰率、φを定数とする
と、これを示す関数C(t)は次式(2)で表される。
【数2】

【0028】
アンプ1042により生じる波形信号R0において、時間t0は、交番磁界の1周期であるTの0.1倍となる、すなわち、t0=0.1・Tなる関係を持つ時間である。理想的な波形信号R0には、発生してからこの時間t0が経過するまでに、図8で示すとおり2周期の波形が含まれている。波形信号の包絡線は、図8において破線で示される包絡線D0である。この包絡線D0において磁場の強さは、波形信号が発生した時刻にはH0であり、波形信号が発生してから時間t0が経過した時刻には、H1となっているとすると、理想的な波形信号R0の場合、H1とH0には、H1=0.01・H0なる関係がある。すなわち、理想的な波形信号R0は、交番磁界の1周期に対して10分の1である時間t0に2周期を有し、かつ、その振幅は、時間t0が経過すると発生時の100分の1に減衰する波である。これらの特徴を満たすように、アンプ1042は調整されている。
【0029】
上述した端末装置300のROM302には、上記のような理想的な或る波形信号を、複数の時刻を示す時刻データとこれに対応する複数の振幅値からなるデータ列により、予め記憶している。予め記憶されたこの理想的な波形を、基準波形v(t)と呼ぶ。以下、この基準波形v(t)の測定方法について説明する。
【0030】
図9は、基準波形v(t)を測定する際に使用される基準紙P2の平面図である。同図に示されるように、基準紙P2は、基材Sh1上に磁性体ワイヤ10を配してなる。基材Sh1の特性は上述した通りである。サイズは例えばA4サイズである。磁性体ワイヤ10の特性は上述した通りである。長さは例えば25mmである。磁性体ワイヤ10は、その長手方向が、基材Sh1の長手方向と同一方向となるように配置され、長手方向に延びる同一直線上に3本の磁性体ワイヤ10が並べられた列が2列配置される。列を構成する磁性体ワイヤ10同士の長手方向の距離は等距離であり、2本の列は例えば35mm隔てられている。
なお、この基準紙P2はあくまで基準紙の一例であり、基材のサイズ、磁性体ワイヤの数及び配置方法は、実際に使用される磁性体付用紙の構成によって定められるものである。
【0031】
次に、基準波形v(t)を測定する際の、ゲート100に対する基準紙P2の位置及び向きについて説明する。図10は、基準紙P2の位置及び向きの一例を示す図である。図10(a)は、図2に示されるゲート100をZ(+)方向から見た図であり、図10(b)は、同ゲートをY(−)方向から見た図である。同図においてゲート100を構成するパネル100aは、Y方向の長さが60cmであり、Z方向の長さが140cmとなっている。また、パネル100a−1からパネル100a−2までの距離は、70cmとなっている。このゲート100に対し、基準紙P2は、その長手方向がY方向と一致するように配置される。このとき、基準紙P2の重心Gは、パネル100a−1とパネル100a−2の室内側の端部を結んだ線L3上に配置される。また、重心Gからパネル100a−1までのX方向の距離は35cmとなる。また、基準紙P2からパネル100aの接地点までのZ方向の距離は50cmとなる。
【0032】
図11は、図10に示されるように基準紙P2を配置した場合に測定される波形の一例を示す図である。同図の縦軸は磁場の強さを表す振幅値を示し、横軸は時間を示している。Tは交番磁界の周期を表している。この周期Tの1/128の長さを1データ分とおくと、区間t1は[25,75]と定義される。一方、区間t2は[85,135]と定義される。本実施形態では、この区間t1に属する部分波形R1と、区間t2に属する部分波形R2とを、それぞれ基準波形v1(t)、基準波形v2(t)として端末装置300のROM302に記憶する。
【0033】
図12は、基準紙P2の位置及び向きの他の例を示す図である。図12(a)は、図2に示されるゲート100をZ(+)方向から見た図であり、図10(b)は、同ゲートをY(+)方向から見た図である。同図におけるゲート100の構成は、図10のそれと同様である。このゲート100に対して基準紙P2は、その長手方向がZ方向と一致するように配置される。このとき、基準紙P2は、パネル100a−1とパネル100a−2の廊下3側の端部を結んだ線L4上に配置される。また、重心Gからパネル100a−1までのX方向の距離は35cmとなる。また、基準紙P2の重心Pからパネル100aの接地点までのZ方向の距離は50cmとなる。
【0034】
図13は、図12に示されるように基準紙P2を配置した場合に測定される波形の一例を示す図である。同図の縦軸は磁場の強さを表す振幅値を示し、横軸は時間を示している。Tは交番磁界の周期を表している。この周期Tの1/128の長さを1データ分とおくと、区間t3は[85,135]と定義される。本実施形態では、この区間t3に属する部分波形R3を基準波形v3(t)として端末装置300のROM302に記憶する。
【0035】
以上のように、本実施形態では、3つの基準波形v1(t)、v2(t)及びv3(t)(以下、これらを区別しないときには単に基準波形v(t)という)が端末装置300のROM302に記憶される。なお、記憶される基準波形の数は3つに限られず、2以上であればよい。
また、上記の説明において、図10及び図12を参照して説明したゲート100の構成は、あくまで一例であり、これ以外の構成も可能である。これは、基準波形v(t)を測定する際の基準紙P2の配置及び向きについても同様である。
【0036】
端末装置300のROM302には、基準波形v(t)の他に、閾値Rxが記憶される。この閾値Rxは、検知部104により検出された用紙が、磁性体付用紙P1であるか否かを、CPU301が判断するために用いられる値である。
【0037】
ADC1043−1とADC1043−2は、ADコンバータであり、それぞれ、アンプ1042−1の出力とアンプ1042−2の出力をディジタルデータに変換し、端末装置300へ出力する。
【0038】
次に、図1に示すように、保管室2の内部には、複写機200が設けられている。利用者は、棚5に収められている用紙P0や磁性体付用紙P1について、複写機200を用いて画像をコピーすることができるようになっている。
【0039】
図14は複写機200の構成を示す図である。複写機200は、通信回線との接続部に通信部250が設けられている。通信部250は、通信回線を介して信号を受け取ると、その信号を制御部260に供給する。制御部260は、複写機200の筐体内部に設けられており、複写機200全体の動作を制御する。操作部220は、利用者が操作する側に設けられ、コピー動作開始の指示や動作設定の入力などを受け付ける。画像読取部210は、複写機200の上方に設けられ、セットされた原稿の画像を読み取り、画像データに変換する。画像形成部230は、複写機200の内部に設けられ、画像読取部210が読み取った画像データをトナー像に変換し、第1給紙部240もしくは第2給紙部241のいずれかの給紙部から搬送された用紙にトナー像を転写し、排出する。
なお、本実施形態において、第2給紙部241には何も書かれていない白紙の磁性体付用紙P1を収納し、第1給紙部240には何も書かれていない白紙の用紙P0を収納する。
【0040】
図1に戻り、複写機200の操作部220を有する側には、ゲート110が設けられている。このゲート110は、複写機200の操作部220を有する側の両端付近から、複写機200を操作する利用者がいる方向に向かって延びる対抗した2枚のパネルを有している。このゲート110の構成は、上述したゲート100と同様であるため、同じ符号を付し、その説明を省略する。複写機200を使用する利用者は、必ずこのゲート110の空間部に位置するようになっている。
【0041】
端末装置310は、ゲート110から供給される信号に基づいて、上述した複写機200に用いる複写用紙を選択する制御を行う。なお、端末装置310は、上述した端末装置300と同様であるため、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
[B.動作]
次に、実施形態の動作について説明する。保管室2内にいる利用者により、棚5に収納されているファイルから磁性体付用紙P1が取り出され、ドア4から退出する動作について下記に説明する。
【0043】
利用者が磁性体付用紙P1を持って移動し、ゲート100内に入ると、ゲート100に形成されている交番磁界により、磁性体ワイヤ10に急峻な磁化反転が起きる。磁性体ワイヤ10の急峻な磁化反転により、ゲート100内の検知コイル102を貫通する磁束が変化して電流が流れる。検知部104は検知コイル102に流れる電流を検知し、検知した信号に応じた波形信号を端末装置300に出力する(図15参照)。
【0044】
図16は端末装置300の動作の処理を示すフロー図である。上述したように、端末装置300のROM302には、予め基準波形v(t)(具体的には、基準波形v1(t)、v2(t)及びv3(t))と閾値Rxが記憶されている。端末装置300のCPU301は、通信部305を通してゲート100の検知部104から出力された信号u(t)を受け取ると、受け取った信号u(t)の波形とこの基準波形v(t)との相関係数R(t)を算出する(ステップSA1)。具体的には、CPU301は、信号u(t)の波形と基準波形v1(t)との相関係数R1(t)を算出し、信号u(t)の波形と基準波形v2(t)との相関係数R2(t)を算出し、信号u(t)の波形と基準波形v3(t)との相関係数R3(t)を算出する(以下、区別しないときには単に相関係数R(t)という)。
【0045】
ここで、相関係数R(t)について説明する。基準波形v(t)と検知部104から出力された信号u(t)をそれぞれ実数値連続関数と置いた場合に、相関係数R(t)は、区間[0,t0]での積分を用いて表現すると、次式(3)で示される。
【数3】

【0046】
すなわち、相関係数R(t)は、ある時刻tにおいて、基準波形v(τ)と信号u(τ+t)の積(すなわち、v(τ)・u(τ+t))を定義域[0,t0]の範囲で積分した値を、それぞれを定義域[0,t0]の範囲で積分した値の積で割ったものである。この相関係数R(t)は時刻tの関数であり、−1以上1以下の実数値をとる。そして、R(t)が1に近い時刻tにおいて、v(t)とu(t)には正の相関があり、形状が近似していることがわかる。
【0047】
基準波形v1(t)の定義域は[25,75]であるから、CPU301は、この範囲で積分を行って相関係数R1(t)を算出する。一方、基準波形v2(t)の定義域は[85,135]であるから、CPU301は、この範囲で積分を行って相関係数R2(t)を算出する。一方、基準波形v3(t)の定義域は[85,135]であるから、CPU301は、この範囲で積分を行って相関係数R3(t)を算出する。
なお、相関係数R(t)を算出する際、基準波形v(t)の位相を、例えば±5データ分シフトさせてもよい。この場合、算出される相関係数の値は高くなり、磁性体の検出漏れが発生する確率が低くなる。
【0048】
図17〜19は、基準波形v(t)と信号u(t)の波形との相関係数R(t)の一例を示す図である。図17は、基準波形v1(t)との相関係数R1(t)の一例を示す図であり、図18は、基準波形v2(t)との相関係数R2(t)の一例を示す図であり、図19は、基準波形v3(t)との相関係数R3(t)の一例を示す図である。
【0049】
これらの図において、縦軸は相関係数を示し、横軸は、ゲート100に対する磁性体付用紙P1(又は、後述するジュラルミンケース)のY方向の位置(Y座標)を示している。ここで、Y座標が「10」であるとは、磁性体付用紙P1(又は、ジュラルミンケース)が、図10に示される補助線L3の位置から10cm、Y(+)方向に進んだ位置にあることを示している。同図の凡例に示されるXは、ゲート100に対する磁性体付用紙P1のX方向の位置(X座標)を示している。例えば、X座標が「5」であるとは、図10に示される例において、パネル100a−1からX(+)方向に5cm離れた位置に磁性体付用紙P1が存在することを示している。また、同図の凡例に示される「ジュラ」は、ジュラルミンケースを示している。
【0050】
また、これらの図における相関係数R(t)は、磁性体付用紙P1を、その長手方向がZ方向と一致するように傾けた状態でゲート100を通過させた場合に算出された値である。また、相関係数R(t)を算出するにあたっては、磁性体の検出漏れを防ぐ観点から、基準波形v(t)の位相を±7データ分シフトさせている。また、同図においては、グラフの煩雑化を避けるために、信号u(t)の振幅の最大値が基準波形v(t)の振幅の最大値の65%に満たない場合には、相関係数R(t)の値を「0」としている。
【0051】
これらの図に示される例によれば、磁性体付用紙P1については、いずれの基準波形v(t)に対しても、X座標の値にかかわらず、Y座標が「40」の場合に、1.0に近似する相関係数R(t)が算出されている。具体的には、0.93〜0.99の値が算出されている。これに対して、ジュラルミンケースの場合は、基準波形v1(t)及びv2(t)に対しては、0.69、0.76という値が算出される一方、基準波形v3(t)に対しては、0.91という相関係数R(t)が算出されている。すなわち、基準波形v3(t)に対しては、磁性体付用紙P1とジュラルミンケースの相関係数R(t)の差は、0.02〜0.08にすぎない。
【0052】
図16の説明に戻る。次に、端末装置300のCPU301は、ステップSA1で算出した相関係数R1(t)、R2(t)及びR3(t)の平均値を算出する(ステップSA2)。そして、CPU301は、ステップSA2で算出した平均値が閾値Rx(例えば0.85)以上であるか否かを判断する(ステップSA3)。この判断結果がNOである場合、すなわち、平均値が閾値Rx以上でない場合(ステップSA3;NO)には、端末装置300は待機状態になる(ステップSA1)。
【0053】
一方、この判断結果がYESである場合、すなわち、平均値が閾値Rx以上である場合には(ステップSA3:YES)、CPU301は磁性体を検出したことになるから、用紙が磁性体付用紙P1であると判断し、その旨の検出信号を通信回線を介して撮像装置400に送信することで、撮像を開始する制御を行う(ステップSA4)。
【0054】
図20は、ステップSA3において算出される平均値の一例を示す図である。同図における縦軸は相関係数を示し、横軸は、ゲート100に対する磁性体付用紙P1(又は、ジュラルミンケース)のY方向の位置(Y座標)を示している。同図の凡例に示されるXは、ゲート100に対する磁性体付用紙P1のX方向の位置(X座標)を示している。また、同図の凡例に示される「ジュラ」は、ジュラルミンケースを示している。また、同図における補助線L5は、閾値Rxの値(0.85)を示している。
【0055】
この図に示される例によれば、磁性体付用紙P1については、X座標の値にかかわらず、Y座標が「40」の場合に、閾値Rxを超える平均値が算出されている。これに対して、ジュラルミンケースの場合は、Y座標の値にかかわらず、平均値が0.79となり、閾値Rxを超えることはない。
【0056】
図16の説明に戻る。撮像装置400は、電源投入後の初期状態では撮像を行わないスタンバイ状態であるが、端末装置300から検出信号を受信して撮像を開始する制御が行われると、撮像を開始する。
詳細に説明すると、まず、固定レンズ490により、固定レンズ490の撮像方向にあるドア4周辺のエリアを撮像し、撮像された像はCCDセンサ450上に結像される。CCDセンサ450により結像された像は、アナログ信号として画像処理部451に出力される。CCDセンサ450は、たとえば毎秒30フレームについてこの動作を行う。画像処理部451は、供給されたアナログ信号をデジタルの画像データに変換し、この画像データをレコーダ402に出力して記憶させる。
以上の処理により、磁性体付用紙P1を持ってゲート100を通過してゆく利用者の映像が動画として撮像される。
【0057】
なお、端末装置300は、タイムカウント機能を備えており、予め定められた一定の時間が経過すると、撮像装置400に撮像の停止を指示する。これにより、撮像装置400は撮像を停止して、スタンバイ状態に戻る。この一定の時間は、予め利用者が撮像装置400の撮像範囲を通過するのに十分な時間を定めておくと、無駄な撮像情報をより減らすことができる。
【0058】
以上の処理により、磁性体付用紙P1が保管室2から持ち出されたときは、撮像装置400により磁性体付用紙P1を持ち出した利用者が撮像され、記録される。また、利用者がゲート100を通って用紙P0を持ち出そうとする場合は、ステップSA1の判定が「NO」となるので、上述した撮影や通報は行われない。
この結果、重要度の高い書類が持ち出されるときだけ、利用者の像が記憶されることになり、無駄な記憶容量を要しない。
【0059】
次に、保管室2内にいる利用者が、棚5に収められている磁性体付用紙P1を持ち出し、複写機200によりその画像をコピーするときの動作について説明する。複写機200を使用する利用者は、ゲート110のパネルに挟まれた空間に位置するようになっている。パネルからは、上述したゲート100と同様に交番磁界が形成されているため、例えば磁性体付用紙P1がゲート110内に持ち込まれると、磁性体ワイヤ10に急峻な磁化反転が起きる。これにより、ゲート110の内部に設けられた検知コイル102に電流が流れ、検知部104がその大きさに応じた信号を端末装置310に出力する(図15参照)。
【0060】
図22は、端末装置310の動作の処理を示すフロー図である。端末装置310のCPU301は、ゲート110の検知部104から出力された信号u(t)を受け取ると、受け取った信号u(t)の波形と基準波形v(t)との相関係数R(t)を算出する(ステップSB1)。具体的には、信号u(t)の波形と基準波形v1(t)との相関係数R1(t)を算出し、信号u(t)の波形と基準波形v2(t)との相関係数R2(t)を算出し、信号u(t)の波形と基準波形v3(t)との相関係数R3(t)を算出する。
【0061】
次に、端末装置300のCPU301は、ステップSB1で算出した相関係数R1(t)、R2(t)及びR3(t)の平均値を算出する(ステップSB2)。そして、CPU301は、ステップSB2で算出した平均値が閾値Rx以上であるか否かを判断する(ステップSB3)。この判断結果がNOである場合には(ステップSB3;NO)、端末装置300は待機状態になる(ステップSB1)。一方、この判断結果がYESである場合には(ステップSB3:YES)、CPU301は磁性体を検出したことになるから、用紙が磁性体付用紙P1であると判断し、複写機200にコピー開始の指示が入力されたときに、磁性体付用紙P1が収納されている側の給紙部を選択し、この部から給紙する制御を行う(ステップSB4)。
【0062】
複写機200は、端末装置300によって第2給紙部241から給紙する制御が行われると、第2給紙部241を給紙部として指定し、待機する。ここで、画像読取部210に、原稿となる磁性体付用紙P1がセットされ、操作部220にコピーを開始する指示が入力されると、磁性体付用紙P1の画像は画像読取部210により読み取られて画像データに変換される。この画像データは、画像形成部230によりトナー像に変換され、指定された第2給紙部241から給紙された磁性体付用紙P1に転写され、装置外に排出される。
これにより、複写機200により磁性体付用紙P1が原稿としてコピーされた場合は、その複写物も原稿と同様にして、磁性体付用紙P1に複写されることになる。
【0063】
以上の処理をまとめると、磁性体付用紙P1がゲート110を通過した後、複写機200の操作部220に動作を開始する指示が入力されると、複写される用紙は用紙P1が選択される。これにより、複写された用紙がドア4から持ち出されても、上述したように、撮像装置400により持ち出した利用者が撮像され記録される。また、利用者が用紙P0を棚から持ち出してコピーしようとする場合は、ステップSB3の判定が「NO」となり、複写機200は第1給紙部240を選択する。そして、複写機200にコピー操作が指示されると、原稿である用紙P0の画像は、普通紙である用紙P0に複写され、通常のコピーがなされる。
【0064】
[C.変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。また、これらの形態を組み合わせてもよい。
(1)上述した実施形態では、磁性体ワイヤ10がすきこまれた用紙を検出したが、検出する対象は用紙に限らない。例えば、磁性体ワイヤ10が付加された物品やプライスタグ、IDカードや複数の用紙を綴じるファイルなどを検出してもよい。また、上述した各実施形態では、検知部104の出力信号に基づいて撮像の状態や、複写用紙の選択などを制御したが、動作はこれに限らず、CPU301が算出する相関係数R(t)に基づいて予め設定された動作を選択して行うようにしてもよい。このような動作としては、電話による通報や、複写の許可・禁止の判断などが考えられる。
さらに、このような動作としては、これらのセキュリティに関連した動作ではなく、単に検出したことを報知するなどの、セキュリティに関連しない動作も考えられる。例えば、工場において、磁性体ワイヤ10を挿入した磁性体付用紙P1を製造する際に、製造した磁性体付用紙P1が正確に検出されるか否かをテストするときには、この動作としては、単なる報知で足りる。要するに、交番磁界中に置かれた磁性体を検出することが必要な種々の処理において、検知装置によって出力された検出信号に応じて予め定められた動作を行うのであれば、どのような動作であってもよい。
【0065】
例えば、「電話による通報」を、上述の動作として採用する場合には、以下のような実施形態となる。
図1の端末装置300には、破線で示したように、通信回線を介して通知装置500が接続されている。この通知装置500は、一般公衆回線を介して通信可能なモデム機能を有する。通知装置500は、端末装置300の制御に基づいて、一般公衆回線を介して通知先の電話番号に呼び出し信号を送り、電話が通話状態になると、予め記憶されている音声データを送信する。通知装置500は、通知先の電話番号として警備員が保有する携帯電話の電話番号を記憶しており、音声データとして予め「重要書類が持ち出されました」というデータを記憶している。
【0066】
端末装置300のCPU301は、検知部104により検出された用紙が磁性体付用紙P1であると判断すると、通知装置500に通知を開始する制御を行う。通知装置500は、端末装置300から通知を開始する制御が行われると、ケーブルなどでつながれた電話モジュラージャックから、一般公衆回線を介して、予め記憶している警備員の携帯電話の電話番号に呼び出し信号を送る。ここで、警備員が携帯電話を通話状態にすると、通知装置500は一般公衆回線を介して「重要書類が持ち出されました」という音声メッセージを送る。
【0067】
(2)上述の実施形態では、端末装置300のCPU301は、各基準波形v(t)と信号u(t)との相関係数R(t)を算出し、この相関係数R(t)の平均値が閾値Rx以上となる場合に、磁性体の検出を判別している。しかし、CPU301は、平均値の算出に代えて、相関係数R(t)の最大値と最小値との差の算出を行い、この差が閾値Ry未満の場合に磁性体の検出を判別することとしてもよい。
図23は、相関係数R(t)の最大値及び最大値の差の値の一例を示す図である。同図における縦軸は相関係数を示し、横軸は、ゲート100に対する磁性体付用紙P1(又は、ジュラルミンケース)のY方向の位置(Y座標)を示している。同図の凡例に示されるXは、ゲート100に対する磁性体付用紙P1のX方向の位置(X座標)を示している。また、同図の凡例に示される「ジュラ」は、ジュラルミンケースを示している。また、同図における補助線L6は、閾値Ryの値(0.15)を示している。
【0068】
同図に示される例によれば、磁性体付用紙P1については、X座標及びY座標の値にかかわらず、相関係数R(t)の最大値及び最大値の差が閾値Ry未満となっている。一方、ジュラルミンケースについては、Y座標の値にかかわらず、相関係数R(t)の最大値及び最大値の差が0.23となっており、閾値Rx未満となることはない。
【0069】
(3)上述の実施形態において、端末装置300のCPU301は、受信した信号u(t)の波形の振幅の最大値と、基準波形v(t)の振幅の最大値との比が閾値Rz(例えば、0.65)に満たない場合に、当該基準波形v(t)との相関係数R(t)の算出を省略してもよい。
【0070】
(4)上述した実施形態では、撮像装置400は、図1に示すように、保管室2側からドア4を開いて退出する利用者に相対する廊下3の壁面に1台設置したが、保管室2のゲート100を通る利用者を撮像する位置であれば、廊下3側の対面した壁面の左斜め前や、保管室2の左側の壁面など、その他の設置位置であってもかまわない。また、撮像装置400は、複数設けてもよい。また、上述した実施形態では、撮像装置400の制御は、通信回線を介して端末装置300が行ったが、撮像装置400の内部にCPUやROM、RAMなどを有した制御部を設け、この制御部により撮像装置400の動作を制御してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…セキュリティシステム、10…磁性体ワイヤ、100…ゲート、100a…パネル、100a−1…パネル、100a−2…パネル、101…励磁コイル、101−1…励磁コイル、101−2…励磁コイル、102…検知コイル、102−1…検知コイル、102−2…検知コイル、103…交流電源、104…検知部、104−1…検知部、1042…アンプ、1042−1…アンプ、1042−2…アンプ、110…ゲート、2…保管室、2A…壁、200…複写機、210…画像読取部、220…操作部、230…画像形成部、240…第1給紙部、241…第2給紙部、250…通信部、260…制御部、3…廊下、300…端末装置、301…CPU、302…ROM、303…RAM、305…通信部、310…端末装置、4…ドア、400…撮像装置、401…本体部、402…レコーダ、410…通信部、450…CCDセンサ、451…画像処理部、490…固定レンズ、5…棚、500…通知装置、1043−1…ADC、1043−2…ADC、D0…包絡線、1041…HPF、1041−1…HPF、1041−2…HPF、P0…用紙、P1…磁性体付用紙、P1…基準紙、R0…波形信号、Sh1…基材、t0…時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生する磁界発生手段と、
発生した前記磁界により励磁された磁性体による当該磁界中の磁界変化を検知し、検知した磁界変化に対応した信号を出力する検知手段と、
前記検知手段によって出力された信号を増幅して、過渡応答波形を表す波形信号を出力する増幅手段と、
前記増幅手段によって出力された波形信号が表す過渡応答波形と、予め記憶された過渡応答波形の第1の基準波形との第1の相関係数を算出して出力する第1の算出手段と、
前記増幅手段によって出力された波形信号が表す過渡応答波形と、予め記憶された過渡応答波形の第2の基準波形との第2の相関係数を算出して出力する第2の算出手段と、
前記第1の算出手段によって出力された第1の相関係数と、前記第2の算出手段によって出力された第2の相関係数に基づいて値を算出する第3の算出手段と、
前記第3の算出手段によって算出された値が予め定められた条件を満たす場合に、前記磁性体を検出したことを示す検出信号を出力する検出手段と
を具備することを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記第3の算出手段は、前記第1の算出手段によって出力された第1の相関係数と、前記第2の算出手段によって出力された第2の相関係数の平均値を算出し、
前記検出手段は、前記第3の算出手段により算出された平均値が閾値以上である場合に、前記磁性体を検出したことを示す検出信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記第3の算出手段は、前記第1の算出手段によって出力された第1の相関係数と、前記第2の算出手段によって出力された第2の相関係数との差を算出し、
前記検出手段は、前記第3の算出手段により算出された差が閾値以下である場合に、前記磁性体を検出したことを示す検出信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項4】
前記第1の基準波形は、前記磁界の第1の位相に対応する波形信号が表す基準波形であり、
前記第2の基準波形は、前記磁界の、前記第1の位相とは異なる第2の位相に対応する波形信号が表す基準波形である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の検知装置。
【請求項5】
前記第1の基準波形は、前記磁性体を前記磁界発生手段に対して第1の位置に配置した場合に、前記検知手段により出力され、かつ、前記増幅手段により増幅されて出力される波形信号により表される波形であり、
前記第2の基準波形は、前記磁性体を前記磁界発生手段に対して、前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置した場合に、前記検知手段により出力され、かつ、前記増幅手段により増幅されて出力される波形信号により表される波形である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の検知装置。
【請求項6】
前記第1の基準波形は、前記磁性体の長手方向を前記磁界発生手段に対して第1の方向に向けた場合に、前記検知手段により出力され、かつ、前記増幅手段により増幅されて出力される波形信号により表される波形であり、
前記第2の基準波形は、前記磁性体の長手方向を前記磁界発生手段に対して、前記第1の方向とは異なる第2の方向に向けた場合に、前記検知手段により出力され、かつ、前記増幅手段により増幅されて出力される波形信号により表される波形である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の検知装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の検知装置と、
前記検知装置によって出力された検出信号に応じて予め定められた動作を行う動作手段と
を具備することを特徴とする処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−168577(P2012−168577A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26397(P2011−26397)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】