説明

検診用内視鏡

【課題】装置コストをかけることなく、使用後の内視鏡を確実に洗浄消毒しながら多数の内視鏡検査を短いサイクルで効率よく行うことができる検診用内視鏡を提供すること。
【解決手段】観察機能と照明機能が設けられていない誘導ユニット30と、撮像素子16とライトガイド22とが先端部13に設けられた観察ユニット10とが、別体として各々独立して設けられ、誘導ユニット30には、観察ユニット誘導路31と、観察ユニット10の先端部分13に対し固定及び固定解除自在で可撓性挿入管部32の最先端部分36に水密に着脱自在な先端キャップ40とが設けられ、観察ユニット10の先端部分13を観察ユニット誘導路31内から前方に引き出した状態で観察ユニット10の先端部分13に先端キャップ40を固定してから、先端キャップ40を誘導ユニット30の可撓性挿入管部32の最先端部分36に水密に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は検診用内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は一般に、内視鏡観察像を撮像するための撮像素子と照明用のライトガイドの射出端部とが可撓性挿入管の先端に設けられて、術者が手で保持するための硬質の保持部が可撓性挿入管部の基端に連結された構成になっている。
【0003】
しかし、そのような内視鏡は一回使用する度に洗浄消毒をする必要があるので、大勢の被検者を次から次と短時間で検査しなければならない集団的な検診を行おうとすると、洗浄消毒に時間をとられてうまくいかず、次から次と内視鏡検査を行うためには高価な内視鏡を多数準備する必要が生じる。
【0004】
そこで従来は、挿入部可撓管に透明なシースを着脱自在に被覆して、そのシースを内視鏡検査毎に使い捨てにすることにより、洗浄消毒の手間を省くことができるようにしたシース付き内視鏡が各種考案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−126012
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなシース付き内視鏡の場合、内視鏡の挿入部可撓管を被覆するシースが一回の使用毎に廃棄されることになるので、大勢の被検者を検査する検診では多量のシースが廃棄物として発生してしまい、地球環境的に好ましくない。
【0006】
また、極薄のシリコンゴム等で形成されるシースはピンホールが発生したり使用中に破損したりする場合があり、それによって内視鏡が汚染されて患者間感染が発生するおそれもある。
【0007】
本発明は、高額な装置コストをかけることなく、使用後の内視鏡を確実に洗浄消毒しながら多数の内視鏡検査を短いサイクルで効率よく行うことができる検診用内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の検診用内視鏡は、可撓性挿入管部の基端に術者が手で保持するための硬質の保持部が連結された構成を有していて観察機能と照明機能が設けられていない誘導ユニットと、内視鏡観察像を撮像するための撮像素子と照明用のライトガイドの射出端部とが先端部に設けられた観察ユニットとが、別体として各々独立して設けられ、誘導ユニットには、保持部側から観察ユニットの可撓性ケーブル部の先端寄りの領域を挿脱できるように可撓性挿入管部内に配置された観察ユニット誘導路と、外部に対して水密な透明窓を備えていて観察ユニット誘導路内に通された観察ユニットの先端部分に対し固定及び固定解除自在であって可撓性挿入管部の最先端部分に水密に着脱自在な先端キャップとが設けられ、観察ユニットの先端部分を観察ユニット誘導路内から前方に引き出した状態で観察ユニットの先端部分に先端キャップを固定してから、先端キャップを誘導ユニットの可撓性挿入管部の最先端部分に水密に取り付けることができるようにしたものである。
【0009】
なお、誘導ユニットには、可撓性挿入管部の先端付近に形成された屈曲自在な湾曲部を保持部からの遠隔操作で屈曲させることができる湾曲機構が設けられ、観察ユニットには湾曲機構が設けられていなくてもよい。
【0010】
また、先端キャップが、観察ユニットの先端部分に螺合により固定されるようにしてもよく、或いは、観察ユニットの先端部分に案内溝と係合ピンとの係合により固定されるようにしてもよい。また、先端キャップ全体が弾力性のある部材で形成されていて、先端キャップが弾力的に変形させられて観察ユニットの先端部分に固定されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、観察機能と照明機能が設けられていない誘導ユニットに設けられた観察ユニット誘導路に、撮像素子と照明用のライトガイドの射出端部とが設けられた観察ユニットの先端寄りの領域を挿脱して使用することができるので、多数の内視鏡検査を次から次と行う場合でも観察ユニットを洗浄消毒する必要がなく、誘導ユニットのみを複数準備しておけばよいので、高額な装置コストをかけることなく、使用後の内視鏡を確実に洗浄消毒しながら多数の内視鏡検査を短いサイクルで効率よく行うことができる。
【0012】
そして本発明では、観察ユニットの先端部分を観察ユニット誘導路内から前方に引き出した状態で観察ユニットの先端部分に先端キャップを固定してから、先端キャップを誘導ユニットの可撓性挿入管部の最先端部分に取り付けることにより、観察ユニットの先端部分を誘導ユニットの先端部分に容易に固定して、スムーズに使用状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
可撓性挿入管部の基端に術者が手で保持するための硬質の保持部が連結された構成を有していて観察機能と照明機能が設けられていない誘導ユニットと、内視鏡観察像を撮像するための撮像素子と照明用のライトガイドの射出端部とが先端部に設けられた観察ユニットとが、別体として各々独立して設けられ、誘導ユニットには、保持部側から観察ユニットの可撓性ケーブル部の先端寄りの領域を挿脱できるように可撓性挿入管部内に配置された観察ユニット誘導路と、外部に対して水密な透明窓を備えていて観察ユニット誘導路内に通された観察ユニットの先端部分に対し固定及び固定解除自在であって可撓性挿入管部の最先端部分に水密に着脱自在な先端キャップとが設けられ、観察ユニットの先端部分を観察ユニット誘導路内から前方に引き出した状態で観察ユニットの先端部分に先端キャップを固定してから、先端キャップを誘導ユニットの可撓性挿入管部の最先端部分に水密に取り付けることができる。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図4は、本発明の第1の実施例の検診用内視鏡の内視鏡検査前の状態の全体構成を示しており、観察及び照明機能を有する観察ユニット10と、観察/照明機能を有していない誘導ユニット30とが別体として各々独立して設けられている。
【0015】
そのうちの誘導ユニット30には、観察ユニット10を挿通ガイドするための観察ユニット誘導路31が設けられ、観察ユニット10の基端には、光源装置を兼用するビデオプロセッサ1に接続されるコネクタ部11が設けられている。2は、ビデオプロセッサ1から出力される映像信号により内視鏡観察像を表示するモニタテレビである。
【0016】
観察ユニット10は、図5に示されるように、全体が柔軟で細長い可撓性ケーブル部12の先端部13に、観察窓14と照明窓15が先端面に並んで設けられて、観察窓14から取り込まれた内視鏡観察像を撮像するための固体撮像素子16と、照明窓15から放射される照明光を伝達するための照明用のライトガイド22の射出端部とが先端部13内に配置されている。また、先端部13の外周面には雄ねじ18が形成されている。
【0017】
可撓性ケーブル部12の基端に連結されたコネクタ部11には、固体撮像素子16から出力される撮像信号の送出等の電気信号の授受をビデオプロセッサ1との間で行うための信号コネクタ17と、ビデオプロセッサ1に内蔵されている光源ランプから出力された照明光を受けてライトガイド22の入射端部に入射させるためのライトガイドコネクタ19とが併設されて、ビデオプロセッサ1のコネクタ受けに対し接脱(即ち、接続及び取り外し)自在に構成されている。
【0018】
可撓性ケーブル部12内には、固体撮像素子16(厳密には固体撮像素子16の駆動回路等)と信号コネクタ17とを電気的に接続する信号ケーブル21と前出のライトガイド22とが全長にわたり挿通配置されていて、配管チューブや操作ワイヤ等は挿通されていない。また、先端部13とコネクタ部11との間には、操作部又は保持部の類や遠隔操作により屈曲する湾曲部等は設けられていない。
【0019】
誘導ユニット30は、図6に示されるように、被検者の体内に挿入される柔軟な可撓性挿入管部32の基端に、術者が手で保持するための硬質の保持部33が連結された構成を有しており、可撓性挿入管部32の先端付近に形成された屈曲自在な湾曲部34を保持部33からの遠隔操作で屈曲させることができる湾曲機構が設けられている。35は、そのような湾曲操作を行うための湾曲操作ノブである。なお、湾曲機構の具体的な構成は公知のものなのでその詳細な説明は省略する。
【0020】
観察ユニット誘導路31は、観察ユニット10の可撓性ケーブル部12の先端寄りの領域(例えば、先端寄りの半部)を挿脱自在なように保持部33に入口が開口形成され、保持部33内から可撓性挿入管部32内を経て、可撓性挿入管部32の最先端部に連結された先端部本体36内に達していて、その大半は可撓性チューブで形成されている。
【0021】
先端部本体36の先端面には、観察ユニット誘導路31の先端開口31aが形成されていて、その先端開口31aを外部に対して水密に塞ぐ透明窓41を備えた先端キャップ40が先端部本体36に対し着脱自在に設けられている。37は、先端部本体36の外周部と先端キャップ40の内周部との間をシールするように先端部本体36の外周部に装着されたOリングである。
【0022】
図7は、そのような誘導ユニット30の先端部本体36に先端キャップ40が取り付けられた状態を示している。38は、湾曲部34を屈曲させるために保持部33側から牽引操作される湾曲操作ワイヤである。
【0023】
先端キャップ40は、例えば硬質プラスチック材等で形成されていて、先端部本体36の外周に形成された円周溝39に対して係脱自在な係合突起42が、開口端近傍の内周面から内方に突出形成されている。
【0024】
その結果、先端キャップ40の開口端付近を弾性変形させることにより係合突起42を円周溝39に対し係止及び離脱させることができ、係止状態においては、透明窓41が観察ユニット誘導路31の先端開口31aの正面に位置し、Oリング37のシール作用により観察ユニット誘導路31が外部に対して水密に遮蔽された状態になる。
【0025】
先端キャップ40の透明窓41の内側位置には、観察ユニット10の先端部13の外周に形成されている雄ねじ部18に対し螺合自在な雌ねじ部43が、観察ユニット誘導路31の先端開口31aと真っ直ぐに連なる状態に形成されている。
【0026】
図8は、使用状態にセットされた検診用内視鏡を示しており、観察ユニット10の可撓性ケーブル部12の先端寄りの領域が誘導ユニット30の観察ユニット誘導路31内に挿入されて、観察ユニット10の可撓性ケーブル部12の先端部13は、図1に示されるように誘導ユニット30の先端に取り付けられた先端キャップ40内に固定され、先端キャップ40を介して誘導ユニット30の先端部本体36に固定された状態になっている。
【0027】
図2と図3は、観察ユニット10の先端部13を誘導ユニット30の先端部本体36に固定する作業手順を示しており、まず、図2に示されるように、先端キャップ40が誘導ユニット30から取り外された状態で誘導ユニット30の観察ユニット誘導路31に観察ユニット10を通し、観察ユニット10の先端部13を観察ユニット誘導路31の先端開口31aから前方に引き出す。
【0028】
そしてその状態で、図3に示されるように、観察ユニット10の先端部13に形成された雄ねじ部18と先端キャップ40に形成された雌ねじ部43とを螺合させることにより、観察ユニット10の先端部13に先端キャップ40を固定し、それから、図1に示されるように、先端キャップ40を誘導ユニット30の先端部本体36に水密に取り付ける。
【0029】
観察ユニット10の可撓性ケーブル部12は例えば外径サイズが数mm程度で長さが1〜2mに達する非常に細くて長いものなので、その先端部13を誘導ユニット30の先端部本体36に固定する作業は非常に困難なものになりがちであるが、本発明の構成を採ることにより、観察ユニット10の先端部13を誘導ユニット30の先端部本体36に容易に固定することができる。
【0030】
このようにして、図1に示されるように、観察ユニット10の観察窓14と照明窓15とが誘導ユニット30の透明窓41の内面に当接した状態にしたら、照明窓15から放射された照明光に照らされた体内の様子を観察窓14から取り込まれた像で観察しながら、誘導ユニット30の湾曲部34を保持部33側からの遠隔操作で適宜屈曲させ、先端部本体36を所望の部位へ誘導して、観察ユニット10が被検者やその体内の粘液等に全く触ることなく内視鏡観察を行うことができる。
【0031】
内視鏡観察が終わって、誘導ユニット30を観察ユニット10と共に被検者の体外に引き出したら、図9に示されるように、観察ユニット10を誘導ユニット30の観察ユニット誘導路31内から抜き出し、誘導ユニット30のみを新たな誘導ユニット30′と交換して、新たな誘導ユニット30′の観察ユニット誘導路31に観察ユニット10を挿入することで直ぐに次の内視鏡検査を行うことができる。
【0032】
そして、次の検査を行っている間に使用済の誘導ユニット30を洗浄消毒することができ、誘導ユニット30には、熱や水分等に弱い固体撮像素子16やライトガイド22等が内蔵されていないので、短時間で効果的に洗浄消毒を行うことができる。
【0033】
図10は、本発明の第2の実施例を示しており、観察ユニット10の先端部13にL字状に形成された案内溝29と先端キャップ40の内周部に突出形成された係合ピン49との係合により、観察ユニット10の先端部13に先端キャップ40を固定できるようにしたものである。その他の構成は前述の第1の実施例と同様であり、第1の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0034】
また、先端キャップ40全体を弾力性のある部材で形成して、先端キャップ40を弾力的に変形させることで先端キャップ40が観察ユニット10の先端部13に固定されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施例の検診用内視鏡の先端部分の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の検診用内視鏡の使用準備手順を示す側面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の検診用内視鏡の使用準備手順を示す側面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の検診用内視鏡の内視鏡検査前の状態の全体構成を示す略示図である。
【図5】本発明の第1の実施例の観察ユニットの全体構成図である。
【図6】本発明の第1の実施例の誘導ユニットの全体構成図である。
【図7】本発明の第1の実施例の誘導ユニットの先端部分の側面断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例の検診用内視鏡が使用状態にセットされた状態の全体構成を示す略示図である。
【図9】本発明の第1の実施例の検診用内視鏡による内視鏡検査が終了した直後の状態の全体構成を示す略示図である。
【図10】本発明の第2の実施例の検診用内視鏡の使用準備状態の先端部分の側面断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ビデオプロセッサ
10 観察ユニット
11 コネクタ部
12 可撓性ケーブル部
13 先端部
14 観察窓
15 照明窓
16 固体撮像素子
17 信号コネクタ
18 雄ねじ部
19 ライトガイドコネクタ
21 信号ケーブル
22 ライトガイド
29 案内溝
30 誘導ユニット
31 観察ユニット誘導路
32 可撓性挿入管部
33 保持部
34 湾曲部
35 湾曲操作ノブ
36 先端部本体(最先端部分)
39 円周溝
40 先端キャップ
41 透明窓
42 係合突起
43 雌ねじ部
49 係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性挿入管部の基端に術者が手で保持するための硬質の保持部が連結された構成を有していて観察機能と照明機能が設けられていない誘導ユニットと、内視鏡観察像を撮像するための撮像素子と照明用のライトガイドの射出端部とが先端部に設けられた観察ユニットとが、別体として各々独立して設けられ、
上記誘導ユニットには、
上記保持部側から上記観察ユニットの可撓性ケーブル部の先端寄りの領域を挿脱できるように上記可撓性挿入管部内に配置された観察ユニット誘導路と、
外部に対して水密な透明窓を備えていて上記観察ユニット誘導路内に通された上記観察ユニットの先端部分に対し固定及び固定解除自在であって上記可撓性挿入管部の最先端部分に水密に着脱自在な先端キャップとが設けられ、
上記観察ユニットの先端部分を上記観察ユニット誘導路内から前方に引き出した状態で上記観察ユニットの先端部分に上記先端キャップを固定してから、上記先端キャップを上記誘導ユニットの可撓性挿入管部の最先端部分に水密に取り付けることができるようにしたことを特徴とする検診用内視鏡。
【請求項2】
上記誘導ユニットには、上記可撓性挿入管部の先端付近に形成された屈曲自在な湾曲部を上記保持部からの遠隔操作で屈曲させることができる湾曲機構が設けられ、上記観察ユニットには湾曲機構が設けられていない請求項1記載の検診用内視鏡。
【請求項3】
上記先端キャップが、上記観察ユニットの先端部分に螺合により固定される請求項1又は2記載の検診用内視鏡。
【請求項4】
上記先端キャップが、上記観察ユニットの先端部分に案内溝と係合ピンとの係合により固定される請求項1又は2記載の検診用内視鏡。
【請求項5】
上記先端キャップ全体が弾力性のある部材で形成されていて、上記先端キャップが弾力的に変形させられて上記観察ユニットの先端部分に固定される請求項1又は2記載の検診用内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−183380(P2009−183380A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24735(P2008−24735)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】