説明

極低温用鋼材およびその製造方法

【課題】破壊靭性に優れた極低温用鋼材、その製造方法およびそれを適用したLNGタンクを提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.3%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Ni:5.0%を超え10.0%未満、Al:0.002〜0.08%、N:0.0015〜0.0040%を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼材であって、板厚tの(1/4)t位置での残留γ量が3.0体積%以上であり、かつ次の(1)式で示される値が1.3以上であり、さらに1%の塑性歪を−165℃の環境下で受けたときの残留γ量の減少率が25%以下であることを特徴とする極低温用鋼材。σy,−165℃/σy,RT・・・・・・(1)式:ここで、σy,−165℃は−165℃における降伏強度[MPa]を、そして、σy,RTは常温における降伏強度[MPa]を、それぞれ表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靭性に優れた極低温用鋼材およびその製造方法並びに当該鋼材を適用したLNGタンクに関する。なお、極低温用とは、−60℃以下の極低温環境での用途を意味する。本発明は、特に−165℃のLNG温度環境での用途を主なターゲットとしている。
【背景技術】
【0002】
LPGやLNGなどの液化ガスを貯蔵する極低温貯槽タンクを製造するための鋼材には、安全性確保の面から優れた破壊靱性が求められる。すなわち、極低温下であっても、脆性破壊が発生しにくい特性に加えて、万が一、脆性き裂が発生しても構造物全体の崩壊を阻止するために、き裂伝ぱを停止させる特性(アレスト特性)に優れることが求められる。
【0003】
従来から、LNGタンクに使用される鋼材としては、主として約9%のNiを含有する鋼(9%Ni鋼)が使用されてきた。9%Ni鋼にはLNG温度(−165℃)における母材および溶接継手の脆性破壊伝播停止特性(以下、アレスト特性という)などの特性が求められる。このような特性を付与するために、P、Sをはじめとする不純物の低減、Cの低減、3段熱処理法 [焼入(Q)、2相域焼入(L)、焼戻(T)]など、様々な改善が行われてきた。
【0004】
さらに、特許文献1〜3にみるごとく、近年の原料高の影響から9%Ni鋼よりも少ないNi含有量で、9%Ni鋼と同等の性能を有する鋼材も開発されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2007/34576
【特許文献2】WO 2007/80645
【特許文献3】WO 2007/80646
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、LPGやLNGなどの液化ガスを貯蔵する極低温貯槽タンクを製造するための鋼材には、安全性確保の面から優れた破壊靱性が求められる。特に、日本のような地震の多発国に地上式LNGタンクを建設することを想定すると、地震を経てもなおタンクが健全であることが求められる。LNG地上式貯槽指針(JGA指-108-02,(社)日本ガス協会 ガス工作物等技術基準調査委員会)によれば、タンクの内槽の目標性能として、レベル2地震動(想定しうる範囲内で最大規模の地震を指す。)を受けても変形残留は許容するが液密性及び機密性が保持されることが掲げられている。つまり、タンクの内槽材は板厚を貫通する破壊を許容することができない。そして、レベル2地震動ほどの大きな外力が付与されると内槽材やアニュラープレートには大きな塑性変形を受けることも想定でき、この耐破壊性能として極めてレベルの高い特性が求められることになる。
【0007】
本発明は、このような要求に応えるものであって、レベル2地震動を受けてもタンクの内槽の液密性及び機密性が保持されることができるだけの破壊靭性に優れた極低温用鋼材およびその製造方法並びに当該鋼材を適用したLNGタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは、極低温用鋼材を製造する上で求められる特性を維持しつつ合理的な製造方法を指向することは極めて重要であるとの認識の下に、確保したい耐破壊性能を明らかにし、それらの特性を左右する金属組織上のパラメータを明確化することとした。目標とする金属組織が明確になることで、それらを達成するのに必要最低限の製造方法を自由に設計することが可能となり、遂には合理的な製造方法を確立することができるからである。
【0009】
本発明者等は、当該用途の前提として必要と考えられる化学成分の範囲において、すなわち、特に低温靭性に有効なNi含有量5〜10%の範囲において、広範な試作試験を実施し、求められる特性との比較検討を行った。その結果、以下の(a)〜(f)に示す知見を得た。
【0010】
(a) 低温貯槽タンク用材料が地震力を受けた際に液密性および機密性を保持させるのに必要な特性は、(i)脆性破壊発生特性と、(ii)脆性き裂伝ぱ停止特性(アレスト特性)である。
【0011】
(b) これらの特性を向上させるためには、特定の成分範囲のもとで、残留γ(オーステナイト)の組織を鋼材中に3.0体積%以上確保する必要があり、塑性変形を受けてもその絶対量が確保される必要がある。そして、この残留γの組織は極めて高い脆性き裂伝ぱ停止機能を有するから、この残留γの組織が分散していることにより材料の脆性き裂伝ぱ停止特性は飛躍的に高くなる。ここで、残留γは、鋼材の板厚tの(1/4)t位置で測定すると板厚全域の平均的な位置での評価を得ることができる。なお、残留γの含有量はX線回折法により評価できる。
【0012】
(c) 地震時に少しでも塑性変形量を小さくとどめるためには、使用温度である極低温下で降伏強度を高く保つ必要がある。極低温下における降伏強度は、常温における降伏強度の1.3倍以上であれば有効である。すなわち、次の(1)式で示される値が1.3以上であればよい。
σy,−165℃/σy,RT ・・・・・・(1)式
ここで、σy,−165℃は−165℃における降伏強度[MPa]を、そして、σy,RTは常温における降伏強度[MPa]を、それぞれ表す。
【0013】
(d) 脆性破壊発生特性と脆性き裂伝ぱ停止特性を両立させるためには、1%の塑性歪を−165℃の環境下で受けたときの残留γ量の減少率が25%以下であればよい。なお、残留γが塑性変形を受けてもその組織の多くを残すためには、残留γの幾何学的形態が球形に近い方が望ましい。具体的には、数量規定としてアスペクト比が3.5以下であることが望ましい。
【0014】
(e) また、これらの組織を有する鋼材とするための製造方法は特に限定されるものではないが、加熱条件や圧延条件の管理を適切に行うことで、加熱炉の占有時間を短くするような制御が可能である。加熱時間を短時間化することは、経済性のみならず、温室効果ガス排出抑制の観点でも重要となる。すなわち、鋼塊の加熱はなるべく低温で行うのが望ましく、また加熱時間も短い方が望ましい。なお、加熱温度が低温である場合には加熱時間は長時間でも許容できるが、逆に加熱温度が高温の場合には長時間の加熱時間は組織の粗大化を招くため許容できない。本発明者らは、種々実験を行った結果、鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、以下の(2)式および(3)式を満足すればよいことが分かった。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
【0015】
(f) さらに、圧延面では、圧延の最終仕上パスの圧下量を大きくとることが望ましい。これにより鋼材組織の細粒化が達成される。本発明者らはこの圧下量の規定を形状比として規定できることを見出した。すなわち、750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが次の(4)式を満足するように鋼塊を圧延すればよい。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
【0016】
本発明は、上記の知見を基礎としてなされたものであり、下記の(1)〜(6)の極低温用厚鋼板および(7)〜(10)の極低温用鋼材の製造方法並びに(11)〜(12)の当該鋼材を適用したLNGタンクをその要旨とする。
【0017】
(1) 質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.3%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Ni:5.0%を超え10.0%未満、Al:0.002〜0.08%、N:0.0015〜0.0040%を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼材であって、板厚tの(1/4)t位置での残留γ量が3.0体積%以上であり、かつ次の(1)式で示される値が1.3以上であり、さらに1%の塑性歪を−165℃の環境下で受けたときの残留γ量の減少率が25%以下であることを特徴とする極低温用鋼材。
σy,−165℃/σy,RT ・・・・・・(1)式
ここで、σy,−165℃は−165℃における降伏強度[MPa]を、そして、σy,RTは常温における降伏強度[MPa]を、それぞれ表す。
【0018】
(2) Feの一部に代えて、質量%で、Cu:2.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下およびB:0.005%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)の極低温用鋼材。
【0019】
(3) Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下およびTi:0.1%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)の極低温用鋼材。
【0020】
(4) Feの一部に代えて、質量%で、Sn:0.50%以下を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかの極低温用鋼材。
【0021】
(5) Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.004%以下、Mg:0.002%以下およびREM:0.002%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかの極低温用鋼材。
【0022】
(6) 板厚tの(1/4)t位置での残留γの平均アスペクト比が3.5以下であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかの極低温用鋼材。
【0023】
(7) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載された化学組成を有する鋼塊に、下記の工程を施すことを特徴とする極低温用鋼材の製造方法。
[工程1]鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
[工程2]750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように鋼塊を圧延して鋼材を得る工程。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
[工程3]次の(5)式を満足する冷却速度RA(℃/s)で鋼材を室温まで冷却する工程。
RA≧3・・・・・・・・・(5)式
ここで、RAは冷却時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
【0024】
(8) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載された化学組成を有する鋼塊に、下記の工程を施すことを特徴とする極低温用鋼材の製造方法。
[工程1]鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
[工程2]750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように鋼塊を圧延して鋼材を得る工程。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
[工程3]次の(5)式を満足する冷却速度RA(℃/s)で鋼材を室温まで冷却する工程。
RA≧3・・・・・・・・・(5)式
ここで、RAは冷却時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
[工程4][Ac点+80℃]以下の温度で鋼材を焼戻す工程。
【0025】
(9) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載された化学組成を有する鋼塊に、下記の工程を施すことを特徴とする極低温用鋼材の製造方法。
[工程1]鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
[工程2]750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように鋼塊を圧延して鋼材を得る工程。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
[工程3’]鋼材を室温まで冷却する工程。
[工程3’’]Ac点以上かつ900℃以下の温度で鋼材を再加熱する工程。
[工程3’’’]次の(6)式を満足する冷却速度RH(℃/s)で鋼材を焼入れする工程。
RH≧3・・・・・・・・・(6)式
ここで、RHは焼入れ時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
[工程4][Ac点+80℃]以下の温度で鋼材を焼戻す工程。
【0026】
(10) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載された化学組成を有する鋼塊に、下記の工程を施すことを特徴とする極低温用鋼材の製造方法。
[工程1]鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
[工程2]750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように鋼塊を圧延して鋼材を得る工程。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
[工程3]次の(5)式を満足する冷却速度RA(℃/s)で鋼材を室温まで冷却する工程。
RA≧3・・・・・・・・・(5)式
ここで、RAは冷却時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
[工程3’’]Ac点以上かつ900℃以下の温度で鋼材を再加熱する工程。
[工程3’’’’]鋼材を焼入れする工程。
[工程4][Ac点+80℃]以下の温度で鋼材を焼戻す工程。
【0027】
(11) 上記(1)〜(6)のいずれかの極低温用鋼材を内槽部材に適用したことを特徴とするLNGタンク。
【0028】
(12) 上記(1)〜(6)のいずれかの極低温用鋼材をアニュラープレートに適用したことを特徴とするLNGタンク。
【発明の効果】
【0029】
レベル2地震動を受けてもタンクの内槽の液密性及び機密性が保持されることができるだけの破壊靭性に優れた極低温用鋼材およびその製造方法並びに当該鋼材を適用したLNGタンクを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】三面スリットシャルピー試験片のフルサイズの場合の一例である。左側に正面図と平面図、そして右側にスリット部分の断面図(側面図)を示す(単位mm)。なお、スリット幅はグラインダーカット:0.4mmによる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明にかかる極低温用鋼材およびその製造方法並びに当該鋼材を適用したLNGタンクに関して、その要件毎に詳細に説明する。なお、含有量に関する「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
【0032】
(A)化学組成に関して
C:0.01〜0.12%
Cは、母材の強度確保のために必要な元素である。その含有量が0.01%未満では必要な強度が確保できないだけでなく、FL(Fusion Line)でのラス形成が不十分になってFL近傍のHAZ(Heat Affected Zone)の靭性も低下するので、Cを0.01%以上含有させる必要がある。一方、その含有量が0.12%を超えると、HAZ、なかでもFL近傍のHAZの靭性劣化が著しくなる。したがって、Cの含有量は0.01〜0.12%とする。なお、Cの好ましい下限は0.03%、好ましい上限は0.09%である。
【0033】
Si:0.01〜0.3%
Siは、脱酸剤として必要な元素である。この効果を得るにはSiを0.01%以上含有させる必要がある。一方、本発明鋼の場合、Siは焼入れままマルテンサイトの焼戻し過程と大いに関連があり、Siの含有量が0.3%を超えると、溶接冷却過程において過飽和に固溶しているマルテンサイト中からのセメンタイトへの分解析出反応を抑制して自己焼戻し(Self-tempering)を遅延させることによって、あるいは島状マルテンサイトを増加させることによって、溶接部の靭性を低下させる。よって、Si含有量は0.01〜0.3%とする。なお、溶接部の靭性向上の観点からは、Si含有量はできるだけ少ない方がよい。Siの好ましい下限は0.02%、より好ましい下限は0.03%である。Siの好ましい上限は0.15%、より好ましい上限は0.10%である。
【0034】
Mn:0.4〜2.0%
Mnは、脱酸剤として、また、母材の強度と靭性確保およびHAZの焼入性確保のために必要な元素である。Mnの含有量が0.4%未満ではこれらの効果が得られないだけでなく、HAZにフェライトサイドプレートが生成してラス形成が不十分になり、溶接部の靭性が低下するので、Mnの含有量は0.4%以上とする。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、中心偏析による板厚方向での母材特性の不均一をもたらす。よって、Mnの含有量は0.4〜2.0%とする。Mnの好ましい下限は0.5%、より好ましい下限は0.6%である。Mnの好ましい上限は1.5%、より好ましい上限は1.1%である。
【0035】
P:0.05%以下
Pは、不純物として鋼中に存在し、粒界に偏析して靭性を低下させる原因となる。Pの含有量が0.05%を超えると、溶接時に高温割れを招くため、Pの含有量を0.05%以下とする。なお、Pの含有量はできるだけ小さくするのがよく、Pの好ましい含有量は0.03%以下である。
【0036】
S:0.008%以下
Sは、不純物として鋼中に存在し、多すぎると中心偏析を助長したり、脆性破壊の原因となる延伸形状のMnSが多量に生成したりする原因となる。Sの含有量が0.008%を超えると、母材およびHAZの機械的性質が劣化する。Sの含有量はできるだけ小さくするのがよいため、下限は特に規定しない。なお、Sの好ましい含有量は0.003%以下である。
【0037】
Ni:5.0%を超え10.0%未満
Niは低温用鋼として靭性を確保するために必要な最も基本的な元素である。低温用鋼として靭性を確保するためには5.0%を超えるNiの含有量が必要である。Niの含有量が多ければ多いほど高い低温靭性が得られるが、その分コストアップの要因となるので、Niの含有量の上限は10.0%未満とする。したがって、Niの含有量のターゲットは5.0%を超え10.0%未満とする。なお、低温靭性の確保およびコスト抑制の観点から、Niの好ましい下限は5.5%、より好ましい下限は6.0%である。Niの好ましい上限は9.3%、より好ましい上限は8.0%である。
【0038】
Al:0.002〜0.08%
Alは、一般的には脱酸剤として含有させる元素であるが、本発明鋼の場合には、Siと同様に、マルテンサイトの自己焼戻し(Self-tempering)を遅延させる働きを有するため、Alの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。しかしながら、Alの含有量が0.002%未満では十分な脱酸効果が得られない。一方、Alの含有量が0.08%を超えて過剰になると、前述したSiと同様に、溶接冷却過程において過飽和にCを固溶したマルテンサイトからのセメンタイトへの分解析出反応を抑制し、溶接部の靭性を低下させる。したがって、Alの含有量は0.002〜0.08%とする。Alの好ましい下限は0.005%、より好ましい下限は0.010%である。Alの好ましい上限は0.05%、より好ましい上限は0.04%である。
【0039】
N:0.0015〜0.0040%
Nは、オーステナイトの安定化に寄与する元素である。また、Alと結合してAlNとなり加熱時のオーステナイト粒の微細化に効果を発揮する。これらの効果を得るには0.0015%以上含有させる必要がある。しかしながら、Nの含有量が0.0040%を超えるとHAZ靭性の悪化の原因となる。したがって、Nの含有量は0.0015〜0.0040%とする。Nの好ましい下限は0.0020%である。Nの好ましい上限は0.0035%である。
【0040】
本発明に係る低温用厚鋼板は、上記の成分のほか、残部がFeと不純物からなるものである。ここで、不純物とは、厚鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0041】
本発明に係る低温用厚鋼板は、上記の成分の外に、Cu、Cr、Mo、V、B、Nb、Ti、Sn、Ca、MgおよびREMのうちの1種または2種以上をさらに含有してもよい。
【0042】
Cu:2.0%以下
Cuは、必要に応じて含有させることができる。Cuを含有させると、母材の強度を向上させることができる。しかしながら、この含有量が2.0%を超えると、Ac点以下の温度に加熱されたHAZの靭性を劣化させるので、Cuの含有量は2.0%以下とする。好ましい上限は1.3%である。なお、Cuによる母材の強度向上効果を安定的に発現させるためには、Cuを0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましいCuの下限は0.2%である。
【0043】
Cr:1.5%以下
Crは、必要に応じて含有させることができる。Crを含有させると、耐炭酸ガス腐食性と焼入性を向上させることができる。しかしながら、この含有量が1.5%を超えると、HAZの硬化の抑制が難しくなるだけでなく、耐炭酸ガス腐食性向上効果が飽和するので、Crの含有量を1.5%以下とする。好ましい上限は1.0%である。なお、Crによる耐炭酸ガス腐食性と焼入性の向上効果を安定的に発現させるためには、Crを0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましいCrの下限は0.1%である。
【0044】
Mo:0.5%以下
Moは、必要に応じて含有させることができる。Moを含有させると、母材の強度と靱性を向上させる効果がある。しかしながら、この含有量が0.5%を超えると、HAZの硬度が高まり、靱性と耐SSC性を損なうので、Moの含有量を0.5%以下とする。好ましい上限は0.3%である。なお、Moによる母材の強度と靱性を向上させる効果を安定的に発現させるためには、Moを0.02%以上含有させることが好ましい。より好ましいMoの下限は0.05%である。
【0045】
V:0.1%以下
Vは、必要に応じて含有させることができる。Vを含有させると、主に焼戻し時の炭窒化物析出により母材の強度を向上させる効果がある。しかしながら、この含有量が0.1%を超えると、母材強度の性能向上効果が飽和し、靱性劣化を招くので、Vの含有量を0.1%以下とする。好ましい上限は0.08%である。なお、Vによる母材の強度を向上させる効果を安定的に発現させるためには、Vを0.015%以上含有させることが好ましい。より好ましいVの下限は0.02%である。
【0046】
B:0.005%以下
Bは、必要に応じて含有させることができる。Bを含有させると母材の強度を向上させる効果がある。しかしながら、この含有量が0.005%を超えると、粗大な硼化合物の析出を招いて靭性を劣化させるので、Bの含有量を0.005%以下とする。好ましい上限は0.004%である。なお、Bによる母材の強度を向上させる効果を安定的に発現させるためには、Bを0.0003%以上含有させることが好ましい。より好ましいBの下限は0.001%である。
【0047】
Nb:0.1%以下
Nbは、必要に応じて含有させることができる。Nbを含有させると、組織を微細化して低温靭性を向上させる効果がある。しかしながら、この含有量が0.1%を超えると、粗大な炭化物や窒化物を形成し、靭性を低下させるので、Nbの含有量を0.1%以下とする。好ましい上限は0.08%である。なお、Nbによる低温靭性を向上させる効果を安定的に発現させるためには、Nbを0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましいNbの下限は0.02%である。
【0048】
Ti:0.1%以下
Tiは、必要に応じて含有させることができる。Tiを含有させると、主に脱酸元素として利用するが、Al,Ti,Mnからなる酸化物相を形成させ組織を微細化する効果がある。しかしながら、この含有量が0.1%を超えると、形成される酸化物がTi酸化物、あるいはTi−Al酸化物となって分散密度が低下し、特に小入熱溶接部熱影響部における組織を微細化する能力が失われるので、Tiの含有量を0.1%以下とする。好ましい上限は0.07%である。なお、Tiによる組織を微細化する効果を安定的に発現させるためには、Tiを0.02%以上含有させることが好ましい。より好ましいTiの下限は0.03%である。
【0049】
Sn:0.50%以下
Snは、Sn2+となって溶解し、酸性塩化物溶液中でのインヒビター作用により腐食を抑制する作用を有する。また、Fe3+を速やかに還元させ、酸化剤としてのFe3+濃度を低減する作用を有することにより、Fe3+の腐食促進作用を抑制するので、高飛来塩分環境における耐候性を向上させる。また、Snには鋼のアノード溶解反応を抑制し耐食性を向上させる作用がある。この効果を得るためにSnを含有させてもよい。ただし、Snを0.50%を超えて含有させると、その効果は飽和する。このため、Snを含有させる場合には、その含有量を0.50%以下とする。好ましい上限は0.30%である。なお、Snによる上記の効果を安定的に発現させるため、Snを0.03%以上含有させることが好ましい。より好ましいSnの下限は0.05%である。
鋼中にSnとCuを同時に含有する場合、鋼板製造する際に圧延割れが発生しやすくなる。これを防止するために、Snを添加した場合には、Cu含有量を0.2%未満に、かつCu含有量の比(Cu/Sn比)を 1.0以下とすることが好ましい。
【0050】
Ca:0.004%以下
Caは、必要に応じて含有させることができる。Caを含有させると、鋼中のSと反応して溶鋼中で酸硫化物(オキシサルファイド)を形成する。この酸硫化物はMnSなどと異なって、圧延加工で圧延方向に伸びることがないため、圧延後も球状であり、延伸した介在物の先端などを割れの起点とする溶接割れや水素誘起割れを抑制する効果がある。しかしながら、この含有量が0.004%を超えると、靱性の劣化を招くことがあるので、Caの含有量を0.004%以下とする。好ましい上限は0.003%である。なお、Caによる溶接割れや水素誘起割れを抑制する効果を安定的に発現させるためには、Caを0.0003%以上含有させることが好ましい。より好ましいCaの下限は0.0005%である。
【0051】
Mg:0.002%以下
Mgは、必要に応じて含有させることができる。Mgを含有させると、微細なMg含有酸化物を生成するので、γ粒径の微細化に効果がある。しかしながら、この含有量が0.002%を超えると、酸化物が多くなりすぎて延性低下をもたらすことがあるので、Mgの含有量を0.002%以下とする。好ましい上限は0.001%である。なお、Mgによるγ粒径の微細化効果を安定的に発現させるためには、Mgを0.0002%以上含有させることが好ましい。より好ましいMgの下限は0.0004%である。
【0052】
REM:0.002%以下
REM(希土類元素)は、必要に応じて含有させることができる。REMを含有させると、溶接熱影響部の組織を微細化し、またSを固定する効果がある。REMを過剰に含有させると、介在物を形成するので清浄度を低下させるが、REMの添加によって形成される介在物は、比較的靱性劣化への影響が小さいため、REMの含有量が0.002%以下であれば含有させても母材の靱性の低下は許容できる。したがって、REMの含有量を0.002%以下とする。好ましい上限は0.001%である。なお、REMによる溶接熱影響部の組織の微細化効果とSの固定効果を安定的に発現させるためには、REMを0.0002%以上含有させることが好ましい。より好ましいREMの下限は0.0003%である。
【0053】
ここで、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素のうちの1種または2種以上を含有させることができる。なお、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
【0054】
(B)金属組織に関して
(B−1) 板厚tの(1/4)t位置の残留γ量が3.0体積%以上であること
厚鋼板中の残留γは厚鋼板の脆性き裂伝ぱ停止特性の向上に寄与する。この結果、極低温環境下での靭性の向上効果が期待できる。この効果を得るには鋼中の残留γ量が3.0体積%以上存在することが必要である。
残留γ量の上限は特に規定するものではないが、残留γが多く存在しすぎると降伏応力が低下するおそれがあるので、残留γ量は15.0体積%以下とするのが好ましい。より好ましくは10.0体積%以下である。ここで、板厚tの(1/4)t位置の残留γ量を評価するのは、板厚全域の平均的な位置での評価をするためである。
【0055】
(B−2)1%の塑性歪を−165℃の環境下で受けても残留γの減少率が25%以下であること
一般にα(フェライト)組織中の残留γは準安定状態にあり塑性変形を受けることでマルテンサイト変態しやすい状況にある。残留γは脆性破壊発生特性や伝ぱ停止特性向上のために分散しているものであるから、地震を受けた後に消失してしまっては、所望の耐破壊特性が発揮されないことを意味する。この残留γ量の減少率が25%以内であれば、初期の特性がほぼ維持できていると考えることができる。なお、減少率は低いほどよく0%であればなお良い。
なお、残留γはその形状により安定度が異なり、残留γが球状であるほどその状態は安定する。したがって、残留γのアスペクト比は小さい方がよく、残留γの平均アスペクト比を3.5以下とすることが好ましい。
【0056】
(C)降伏強度比に関して
降伏強度試験を低温度で行うと、低温での降伏点は常温での降伏点に比べ上昇する。この上昇度が大きいほど、極低温環境下で十分高い靭性を得ることができる。すなわち、常温の降伏点に対して極低温環境下での降伏点の比が大きいと、極低温環境下で破壊安全性に優れる鋼材が得られる。
具体的には、後述する実施例の表3に示されるデータに基づいて、次の(1)式で示される値をパラメータとして、液体窒素温度(−196℃)における靭性(Vノッチシャルピー吸収エネルギーvE−196)との相関を調査した。この結果、次の(1)式で示される値が1.3以上である場合に、LNG貯槽温度(−165℃)よりもさらに低温である液体窒素温度(−196℃)において、液体窒素温度(−196℃)における靭性(Vノッチシャルピー吸収エネルギーvE−196)が高い値を示し、耐破壊安全性に優れることが分かった。
σy,−165℃/σy,RT ・・・・・・(1)式
ここで、σy,−165℃は−165℃における降伏強度[MPa]を、そして、σy,RTは常温における降伏強度[MPa]を、それぞれ表す。
【0057】
また、この事実は、一方で耐破壊安全性に優れるか否かの判断基準ともなりえるので、本発明は極低温用鋼材の耐破壊安全性の判別方法としても把握することができる。
【0058】
すなわち、「質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.3%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Ni:5.0%を超え10.0%未満、Al:0.002〜0.08%、N:0.0015〜0.0040%を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼材であって、板厚tの(1/4)t位置での残留γ量が3.0体積%以上であり、かつ1%の塑性歪を−165℃の環境下で受けたときの残留γ量の減少率が25%以下である極低温用鋼材の適合品判定方法であって、次の(1)式で示される値が1.3以上であるときに適合品と判定することを特徴とする耐破壊安全性に優れた低温用厚鋼板の適合品判定方法。
σy,−165℃/σy,RT ・・・・・・(1)式
ここで、σy,−165℃は−165℃における降伏強度[MPa]を、そして、σy,RTは常温における降伏強度[MPa]を、それぞれ表す。」
として、本発明を把握することができる。もちろん、上記の成分の外に、Cu、Cr、Mo、V、B、Nb、Ti、Sn、Ca、MgおよびREMうちの1種または2種以上をさらに含有してもよい。
【0059】
(D)製造方法に関して
本発明に係る極低温用鋼材は、以下に示す工程を経て製造することができる。ただし、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0060】
なお、鋼塊については、格別にその鋳造条件を規定するものではない。造塊−分塊スラブを鋼塊として用いてもよいし、連続鋳造スラブを用いてもよい。製造効率、歩留りおよび省エネルギーの観点からは、連続鋳造スラブを用いることが好ましい。
【0061】
(D−1)鋼塊の加熱工程(工程1)
鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
【0062】
具体的には、鋼塊の加熱温度Tr(℃)は加熱炉における均熱帯の温度を用いればよく、そして、加熱時間t(hr)は鋼塊が均熱帯に在炉している時間を用いればよい。なお、Ac点は次の(a)式に基づいて計算した値を用いればよい。
Ac点=897.3−271.1×C+43.7×Si−17×Mn+117.8×P+15.95×S−40.8×Cu−22.3×Ni−6.5×Cr+6.5×Mo+65.8×V+145.2×Nb+56.9×Al+88.5×Ti−17968.4×B+121.8×N・・・(a)式
ここで、式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
【0063】
加熱工程は鋼材の組織を大きく左右する。前述のように加熱温度が高温ほど組織の粗大化が進むので、高い加熱温度は好ましくない。通常、加熱工程では、加熱炉に挿入後徐々に鋼塊温度が上昇し、均熱帯の温度を超えた後、鋼塊温度が均熱帯の温度に定常化する、いわゆるオーバーシュートが起こりうる。オーバーシュートの発生で鋼塊温度が均熱帯の温度より50℃超となると、鋼塊の組織の粗大化が進み意図する組織が得られなくなる場合がある。このため、オーバーシュートする温度を50℃以下に制御することが好ましい。すなわち、加熱工程では、鋼塊がTr(℃)で安定する前の鋼塊の最高到達温度TOSを[Tr+50](℃)以下に抑制することが好ましい。
【0064】
加熱温度は、組織をオーストナイト変態させるためAc点以上とする必要がある。なお、加熱温度を850℃以上にすることが好ましい。850℃以上の鋼塊は変形抵抗が小さく、次工程である熱間圧延工程で使用するロールへの負荷はそれほど大きくならないからである。一方、加熱温度は1000℃以下にすることが好ましい。1000℃以下での加熱であれば、十分な加熱時間を確保することができ、より均熱化した鋼塊を得ることができるからである。
【0065】
このように、加熱工程は鋼の組織を最も左右する工程であるため、厳密な制御が必要である。
【0066】
(D−2)圧延工程(工程2)
熱間圧延工程では、加熱した鋼塊の圧延を行う。具体的には、粗圧延と仕上圧延に分けて圧延すればよい。
【0067】
加熱した鋼塊に対する粗圧延においては、粗圧延終了時の鋼塊厚さが成品厚さ(鋼材厚さ)の3〜8倍になるまで圧下するのが好ましい。粗圧延終了後の鋼塊厚さを成品厚さの3倍以上となるように圧下すると、つづく仕上圧延において十分な圧下をすることができるので、成品厚鋼板の靱性を向上させることができる。一方、粗圧延終了後の鋼塊厚さを成品厚さの8倍以下となるように圧下すると、つづく仕上圧延での仕上温度(仕上圧延が終了する温度)を750℃以上に制御しやすくなる。
【0068】
仕上圧延では、このようにして粗圧延が行われた鋼塊に対し、冷却することなく引き続き、圧下を行って所定の板厚の成品とする。この仕上圧延では、仕上温度が750℃以下となるようにして圧延を行う。仕上圧延温度を750℃以下とするのは、圧延時に変形帯を積極的に組織中に導入することにより最終組織の有効結晶粒径を微細化するためである。また、仕上温度は650℃以上とすることが好ましい。仕上温度が650℃以上であれば、変形抵抗が小さく圧延し易いからである。なお、圧延中の温度は被圧延材である鋼塊または鋼材の表面温度を測定すればよい。圧延工程で最も重要なのは、最終仕上パスの圧下量の規定である。最終仕上パスの圧下量を大きくすれば、変形帯の導入が積極的になされ、最終的に生成する残留γを多く残し、アスペクト比を小さくするのに効果的である。そのため、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように圧延する。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
【0069】
(D−3)冷却工程(工程3、工程3’)
冷却工程では、仕上圧延をした圧延後の鋼材を冷却する。圧延後の鋼材の冷却速度は速い方が良い。具体的には、圧延後の冷却時の冷却速度が遅くなることにより、最終組織の有効結晶粒径が粗大化することを防ぐために、次の(5)式を満足する冷却速度RA(℃/s)で鋼材を室温まで冷却するのが好ましい。
RA≧3・・・・・・・・・(5)式
ここで、RAは冷却時の板厚中心部、すなわち、板厚tの(1/2)t位置における冷却速度(℃/s)を表す。
【0070】
なお、後述する焼入工程(D−5)を実施する場合、焼入れ時の板厚中心部における冷却速度RHを3℃/s以上とすれば、極低温用鋼材として十分な量の残留γ量を得ることができるので、この冷却工程での板厚中心部における冷却速度RAは3℃/s未満でもよい。
【0071】
(D−4)再加熱工程(工程3’’)
後述する焼入工程(D−5)を実施する場合には、鋼材を焼入温度まで再加熱する必要がある。焼入れ温度は、Ac点以上かつ900℃以下の温度とするのが好ましい。Ac点以上とすることによって残留γの増加を見込むことができるが、900℃を超える温度で加熱すると組織が粗大化するからである。ここで、Ac点とは、パーライトからオーステナイトへの変態が完了する温度である。なお、焼入れ工程を実施しない場合には、再加熱工程は不要である。
【0072】
(D−5)焼入工程(工程3’’’、工程3’’’’)
焼入工程は必要に応じて実施することができる。上述した再加熱工程を経た後に焼入れをすることになるが、その組織を微細化し、初期残留γを増加させるために、次の(6)式を満足する冷却速度RH(℃/s)で鋼材を焼入れするのが好ましい。
RH≧3・・・・・・・・・(6)式
ここで、RHは焼入れ時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
【0073】
なお、冷却工程での冷却では、冷却速度RAを3℃/s以上とすることができない場合があるが、このような場合には、焼入工程での冷却速度RHを3℃/s以上とすることが残留γ量を増加させるための有効な手段となる。
【0074】
一方、冷却工程での冷却で、板厚中心部における冷却速度RAを3℃/s以上とした場合には、極低温用鋼材として十分な量の残留γ量を得ることができているので、この焼入工程での板厚中心部における冷却速度RHは3℃/s未満でもよい。
【0075】
焼入処理の方法はスプレー法など手段を問わない。また、冷却停止温度は200℃以下とすることが好ましい。
【0076】
(D−6)焼戻工程(工程4)
焼戻し工程は必要に応じて実施することができる。焼戻しにより鋼材に生じたマルテンサイト中の歪みを除去することができる。焼戻しを実施する場合には、[Ac点+80℃]以下の温度で行う。焼戻しをこの温度域で行うのは、マルテンサイト組織を高靭性化することと残留γ量を増加させることができるためである。なお、効果的に歪み除去効果を得るためには、500℃以上とすることが好ましい。
【実施例1】
【0077】
表1に示す化学組成を有する41種類の鋼種からなる厚さ300mmの鋼塊(スラブ)を準備し、表2に示す条件にて、加熱・圧延・加速冷却などをおこなって仕上げ、その後、場合により熱処理を実施している。板厚は6〜50mmの鋼材である。得られた各鋼材からは、JISZ2201に規定される10号引張試験片もしくは5号引張試験片または板厚tの(1/4)tの位置より4号試験片を採取した。方向は圧延直角方向である。また、JISZ2202に規定されるVノッチ試験片を圧延方向より採取した。板厚が10mm以下のものについては、サブサイズ試験を用いた。常温および−165℃での引張試験と−196℃におけるシャルピー衝撃試験を行い、引張強さ(TS:MPa)、降伏強さ(YS:MPa)および吸収エネルギー(vE-196:J(3本の平均値))を調べた。吸収エネルギーについてはサブサイズ試験片とフルサイズ試験片の比較を容易にするため、単位面積あたりの吸収エネルギーに換算した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
さらに、脆性き裂伝ぱ特性を評価するため、図1に示す三面スリットシャルピー試験片を板厚tの(1/2)tの位置より採取した。板厚が10mm以下の材料については、Vノッチと同様のサブサイズ試験片に加工した。吸収エネルギーはVノッチ試験片同様単位面積あたりの数値に換算している。
【0081】
脆性破壊発生特性を調べるため、BS7448 part1に準拠したCTOD試験片もL方向より採取した。板厚は全厚試験片であり、B×2B試験片を用い、試験方法などもBS規格に準拠している。
【0082】
残留γについては、板厚tの(1/4)t位置から、残留γ測定用試験片を採取しX線回折により、残留γ量(体積%)を測定した。また、アスペクト比は、L方向およびZ方向に平行で、かつC方向に垂直な面で、光学顕微鏡を用いて残留γ粒の大きさを鋼材のZ方向およびL方向にそれぞれ、平均切片長さとして測定し、「L方向での平均切片長さ/Z方向での平均切片長さ」から求めた。アスペクト比は、残留γ粒を電子写真として取り込み、画像解析装置で処理することによって算出することができる。
【0083】
以上の試験結果を表3にまとめて示す。
【0084】
【表3】

【0085】
なお、特性良否の判断基準は以下の通りである。
YS:590MPa以上、
TS:690MPa以上、
単位面積あたりのVノッチシャルピー吸収エネルギー:1.25J/mm2以上、
単位面積あたりの三面スリットシャルピー吸収エネルギー:0.125J/mm2以上、
限界CTOD値:0.1mm以上。
【0086】
表3に示す特性評価結果からわかるように、化学組成が本発明で規定する範囲内である鋼No.1〜35を使用し適切な条件で製造を行ったTest No.1-a〜1-eおよび2〜35の鋼材は、室温下の降伏強度に対する極低温下での降伏強度の上昇率が大きく、残留γ量を3.0体積%以上に調整することが可能で、塑性変形を受けても残留γ量の減少率は小さい。このため、強度、脆性き裂発生特性(Vノッチシャルピー吸収エネルギー、限界CTOD値)、アレスト特性(三面スリットシャルピー吸収エネルギー)が目標範囲を満足する。
【0087】
これらに対して、Test No.1-fの鋼材は製造方法が適切でなく、最終仕上げパスの形状比が1未満だったため、残留γ量も少なく、変形後の残留γ量の減少量が大きく、さらに室温下の降伏強度に対する極低温下での降伏強度の上昇率が小さくなった。このため、強度を満足できず、さらにアレスト特性(三面スリットシャルピー吸収エネルギー)と脆性亀裂発生特性(限界CTOD値)も低いものとなった。
【0088】
Test No.1-gの鋼材は製造方法が適切でなく、(1)式で示される値が1.3を下回ったため、変形後の残留γ量の減少量が大きく、室温下の降伏強度に対する極低温下での降伏強度の上昇率が小さくなった。このため、降伏強度を満足できず、脆性亀裂発生特性(限界CTOD値)も低いものとなった。
【0089】
Test No.1-hの鋼材は製造方法が適切でなく、(1)式で示される値が1.3を下回ったため、残留γ量も少なく、変形後の残留γ量の減少量が大きく、さらに室温下の降伏強度に対する極低温下での降伏強度の上昇率が小さくなった。このため、脆性亀裂発生特性(限界CTOD値)が低いものとなった。
【0090】
Test No.36の鋼材はC含有量が、Test No.37の鋼材はSi含有量が、Test No.38の鋼材はMn含有量が、それぞれ高すぎるため、変形後の残留γ量の減少量が大きく、室温下の降伏強度に対する極低温下での降伏強度の上昇率が小さくなった。このため、アレスト特性(三面スリットシャルピー吸収エネルギー)と脆性亀裂発生特性(限界CTOD値)も低いものとなった。
【0091】
Test No.39の鋼材はNi含有量が高すぎるので、仕上圧延温度も高くなり、変形後の残留γ量の減少量が大きく、室温下の降伏強度に対する極低温下での降伏強度の上昇率が小さくなった。このため、アレスト特性(三面スリットシャルピー吸収エネルギー)と脆性亀裂発生特性(限界CTOD値)も低いものとなった。
【0092】
Test No.40の鋼材はAl含有量が、そしてTest No.41の鋼材はN含有量が高すぎるため、残留γ量も少なく、変形後の残留γ量の減少量が大きく、さらに室温下の降伏強度に対する極低温下での降伏強度の上昇率が小さくなった。このため、引張強度を満足できず、さらにアレスト特性(三面スリットシャルピー吸収エネルギー)と脆性亀裂発生特性(限界CTOD値)も低いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明にかかる極低温用鋼材は、レベル2地震動を受けてもタンクの内槽の液密性及び機密性が保持されることができるだけの破壊靭性に優れている。すなわち、極低温下であっても、脆性破壊が発生しにくい特性に加えて、万が一、脆性き裂が発生しても構造物全体の崩壊を阻止するために、き裂伝ぱを停止させる特性(アレスト特性)を有している。そして、本発明にかかる極低温用鋼材は、LNGタンク、特にLNGタンクの内槽部材やアニュラープレートに好適に使用でき、LNPタンクの信頼性を上げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.3%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Ni:5.0%を超え10.0%未満、Al:0.002〜0.08%、N:0.0015〜0.0040%を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼材であって、板厚tの(1/4)t位置での残留γ量が3.0体積%以上であり、かつ次の(1)式で示される値が1.3以上であり、さらに1%の塑性歪を−165℃の環境下で受けたときの残留γ量の減少率が25%以下であることを特徴とする極低温用鋼材。
σy,−165℃/σy,RT ・・・・・・(1)式
ここで、σy,−165℃は−165℃における降伏強度[MPa]を、そして、σy,RTは常温における降伏強度[MPa]を、それぞれ表す。
【請求項2】
Feの一部に代えて、質量%で、Cu:2.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下およびB:0.005%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の極低温用鋼材。
【請求項3】
Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下およびTi:0.1%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の極低温用鋼材。
【請求項4】
Feの一部に代えて、質量%で、Sn:0.50%以下を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の極低温用鋼材。
【請求項5】
Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.004%以下、Mg:0.002%以下およびREM:0.002%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の極低温用鋼材。
【請求項6】
板厚tの(1/4)t位置での残留γの平均アスペクト比が3.5以下であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の極低温用鋼材。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれかに記載された化学組成を有する鋼塊に、下記の工程を施すことを特徴とする極低温用鋼材の製造方法。
[工程1]鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
[工程2]750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように鋼塊を圧延して鋼材を得る工程。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
[工程3]次の(5)式を満足する冷却速度RA(℃/s)で鋼材を室温まで冷却する工程。
RA≧3・・・・・・・・・(5)式
ここで、RAは冷却時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれかに記載された化学組成を有する鋼塊に、下記の工程を施すことを特徴とする極低温用鋼材の製造方法。
[工程1]鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
[工程2]750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように鋼塊を圧延して鋼材を得る工程。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
[工程3]次の(5)式を満足する冷却速度RA(℃/s)で鋼材を室温まで冷却する工程。
RA≧3・・・・・・・・・(5)式
ここで、RAは冷却時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
[工程4][Ac点+80℃]以下の温度で鋼材を焼戻す工程。
【請求項9】
請求項1から5までのいずれかに記載された化学組成を有する鋼塊に、下記の工程を施すことを特徴とする極低温用鋼材の製造方法。
[工程1]鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
[工程2]750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように鋼塊を圧延して鋼材を得る工程。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
[工程3’]鋼材を室温まで冷却する工程。
[工程3’’]Ac点以上かつ900℃以下の温度で鋼材を再加熱する工程。
[工程3’’’]次の(6)式を満足する冷却速度RH(℃/s)で鋼材を焼入れする工程。
RH≧3・・・・・・・・・(6)式
ここで、RHは焼入れ時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
[工程4][Ac点+80℃]以下の温度で鋼材を焼戻す工程。
【請求項10】
請求項1から5までのいずれかに記載された化学組成を有する鋼塊に、下記の工程を施すことを特徴とする極低温用鋼材の製造方法。
[工程1]鋼塊の加熱温度Tr(℃)と加熱時間t(hr)が、次の(2)式および(3)式を満足するように鋼塊を加熱する工程。
t×exp(Tr/270000000)≦580 ・・・・・・・・(2)式
Ac点≦Tr ・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Trは鋼塊の加熱温度(℃)を、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そしてAc点はフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度を、それぞれ表す。
[工程2]750℃以下の仕上温度にて、最終仕上パスの形状比Γが(4)式を満足するように鋼塊を圧延して鋼材を得る工程。
Γ=2×(R×(H1−H2))1/2/(H1+H2)≧1.0 ・・・(4)式
ここで、Γは最終仕上パスの形状比、Rは下側ワークロールの半径、H1は入側肉厚、そしてH2は出側肉厚を、それぞれ表す。
[工程3]次の(5)式を満足する冷却速度RA(℃/s)で鋼材を室温まで冷却する工程。
RA≧3・・・・・・・・・(5)式
ここで、RAは冷却時の板厚中心部における冷却速度(℃/s)を表す。
[工程3’’]Ac点以上かつ900℃以下の温度で鋼材を再加熱する工程。
[工程3’’’’]鋼材を焼入れする工程。
[工程4][Ac点+80℃]以下の温度で鋼材を焼戻す工程。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれかに記載の極低温用鋼材を内槽部材に適用したことを特徴とするLNGタンク。
【請求項12】
請求項1から6までのいずれかに記載の極低温用鋼材をアニュラープレートに適用したことを特徴とするLNGタンク。

【図1】
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【公開番号】特開2013−14811(P2013−14811A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149684(P2011−149684)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】