説明

極小孔加工板及びその製造方法

【課題】レーザ加工により厚肉の金属板に極小孔を開けるとともに、バリ等の残骸により孔を塞ぐことがない極小孔加工板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金からなる板1に貫通状態に複数の孔2が形成されるとともに、これら孔2は、板1の表面3側の開口部4の内径dが10〜50μmで、裏面5側の開口部6の内径dが表面3側の内径dよりも大きいテーパ状に形成され、板1の少なくとも表面側にアルマイト被膜7が形成され、該アルマイト被膜7に孔2が開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の板に肉眼では目視しにくい極小孔を加工してなる極小孔加工板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末等のハウジングを構成する金属板の一部に多数の極小孔を開けて、通常の肉眼では極小孔を目視しにくいが、光を透過させることにより、極小孔の集合群により形成されるマークやロゴ等を表示させることができるようにしたものがある。
例えば特許文献1には、ソーラセルやバックライトの上面側に設けられる光透過性表示基板に関して、孔径が40〜70μmの小孔を金属膜に形成し、その金属膜を透明な樹脂板等よりなる透過性表示基板の表面に設けた構成とされたものが記載されている。この金属膜は、平滑なステンレス金属平板上で、小孔に相当する部分にスクリーン印刷等によりレジスト膜を印刷し、このレジスト膜から露出した部分に金属メッキを施した後、レジスト膜を除去し、ステンレス金属平板からメッキ膜を剥離することにより製造される。
【特許文献1】特開2002−23670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、金属膜として例えば30μm程度の厚さの薄肉のものに適用されており、厚肉の金属板には適用が困難である。また、この金属膜を目的の装置に組み込むには、透明な樹脂板等の補強板上に貼り付けた状態とする必要がある。
一方、孔開け技術として一般的なレーザ加工による方法の場合、厚肉の金属板に孔を開けることが可能であるが、孔径が比較的大きいとともに、レーザによって溶融した金属による付着物やバリ等が発生し易く、指で触れるなどにより、そのバリ等の残骸が極小孔を塞いでしまうおそれがある。径の大きい孔加工の場合は、バレル研磨等のバリ取り技術を採用することができるが、直径が数十μmの極小孔になると、その孔径を大きくしてしまうので適用することは困難である。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、レーザ加工により厚肉の金属板に極小孔を開けるとともに、バリ等の残骸により孔を塞ぐことのない極小孔加工板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の極小孔加工板は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる板に貫通状態に複数の孔が形成されるとともに、これら孔は、前記板の表面側の開口部の内径が10〜50μmで、裏面側の開口部の内径が前記表面側の内径よりも大きいテーパ状に形成され、前記板の少なくとも前記表面側にアルマイト被膜が形成され、該アルマイト被膜に前記孔が開口していることを特徴とする。
また、本発明の極小孔加工板の製造方法は、前記板の少なくとも表面側にアルマイト被膜を形成した後に、前記板の裏面側からレーザを多数回照射することにより前記孔を形成することを特徴とする。
【0006】
すなわち、板の表面側の開口部の径に対して裏面側の開口部の径の方が大きい縦断面がテーパ状となる孔とすることにより、板の表面側の一部の厚さの部分について極小孔となるように開口させたものである。この場合、アルミニウムの孔開け加工では、レーザによって溶融したアルミニウムが噴出して孔の周囲に付着し易い。また、表面側の開口部においては、レーザが突き抜けることによりバリが生じ易い。これら孔の周囲の付着物やバリは、指が触れるなどにより、孔内に倒されて孔を閉塞する原因となり易い。そこで、少なくとも表面側にアルマイト被膜を形成して、そのアルマイト被膜に孔が開口するようにしている。
【0007】
アルマイト被膜は、融点が2100℃、熱膨張係数が4.5×10の酸化膜であり、これに対してアルミニウムは融点が660℃、熱膨張係数が25×10であるので、これらの関係から、穿孔の際に局部的に母材が溶融し、表面側の開口内周縁の金属部分をアルマイト被膜が保持しながら開口することにより、バリのないシャープな開口とすることができる。すなわち、アルマイト被膜の穿孔直前に、前述した熱膨張係数の違いから、アルマイト被膜に円形のクラックが生じて、アルミニウムの溶融とともにアルマイト被膜が溶融金属に固体状態で円形の蓋をしたようにして瞬時に移動して孔が開くものと考えられる。このため、アルマイト被膜にはシャープな円形の孔が開口し、バリがほとんどない状態となる。
【0008】
また、本発明の極小孔加工板において、さらに前記孔の内周面にアルマイト被膜が形成されているとよい。
この場合、製造方法としては、前記孔を形成した後に、少なくとも前記孔の内周面にアルマイト被膜を形成するとよい。
【0009】
孔の内周面をアルマイト被膜で覆うことによって腐食等から保護することができることはもちろん、アルマイト被膜は透明又は半透明の被膜であるから、その被膜の部分で光を導くことができる。この場合、テーパ状の孔であるから、孔の内周面においては、そのテーパ面の全面で光を受けてテーパに沿って光を集めるようにして開口部へ導くことができ、その分、実際の孔径よりも大きい孔に相当する量の光を通過させることができる。したがって、目視困難な極小孔でも、十分な量の光を透過して、明るく表示させることができる。
【0010】
また、本発明の極小孔加工板において、前記板の裏面側に、前記孔の形成領域をその周囲の部分より薄肉にする座ぐり部が形成されている構成としてもよい。
座ぐり部によって孔形成領域が薄肉になって孔の深さが小さくなるので、孔の開口部を小さくし易いとともに、穿孔厚さが小さくなる分、バリの発生も少なくなる。
この場合、製造方法としては、前記孔を形成する前に、前記板の裏面側に、前記孔の形成領域をその周囲の部分より薄肉にする座ぐり部を形成する。
【0011】
さらに、本発明の極小孔加工板の製造方法において、前記孔を形成した後に、前記板の裏面側における孔の開口部周縁にバリ取り加工を施すようにしてもよい。
板の裏面側にはバリが発生する場合があるが、その場合はバリ取り加工をする。そのバリ取り加工としては、いわゆるキサゲ加工によりバリを機械的に除去する方法、複合電解研磨等による機械的、化学的、電気化学的作用の併用によって除去する方法等を採用することができる。
【0012】
また、本発明の極小孔加工板において、前記板の少なくとも前記表面側のアルマイト被膜の上に透明樹脂膜が形成されている構成としてもよい。
透明樹脂膜を形成することにより、その表面側の孔の開口部が透明樹脂で覆われた状態となり、若干の付着物が形成されていたとしても、孔内に入り込んで閉塞することがなくなる。また、指が触れて表面に油等の汚れが付着した場合でも、拭き取って除去することが可能である。
その製造方法としては、孔を形成した後に、前記板の少なくとも前記表面側に透明樹脂膜を形成することになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の極小孔加工板及びその製造方法によれば、板厚方向にテーパ状の孔としたことにより、表面側に極小孔の開口を形成することができ、また、表面側にアルマイト被膜を形成したことにより、穿孔時のバリの発生が抑制され、シャープな開口とすることができ、その後に孔を閉塞することがなく、しかも、孔の内周面にもアルマイト被膜を形成することにより、そのアルマイト被膜がテーパ状の孔の内周面で光を受けて開口部に導くので、目視できない極小の孔でも十分な量の光を透過させて、明るく表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る極小孔加工板及びその製造方法の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は本発明の第1実施形態を示しており、この第1実施形態の極小孔加工板(以下では単に板ということもある)1は、情報端末のハウジングの一部を構成する装飾板に適用されており、ハウジング内で装飾板の裏面側に配置されたLED等の光源の光を極小孔(以下では単に孔ということもある)2を通して外部に透過させるようになっている。
板1の素材はアルミニウム又はアルミニウム合金であり、極小孔2を形成する部分の板厚は0.1〜0.4mm、例えば0.2mmとされている。
【0015】
極小孔2は、所定の領域A内に、ピッチp=0.15〜0.5mmの相互間隔をおいて複数(例えば100個〜150個)形成されており、これら孔2の集合により、特定のマーク、文字、ロゴ等が表示されるようになっている。図2に示す例では簡略のため単純な矩形状の領域Aとしている。これら孔2は、貫通方向(板厚方向)に沿う縦断面がテーパ状に形成されており、板1の表面3側における孔2の開口部4よりも板1の裏面5側における孔2の開口部6の方が大きく形成されている。具体的には、板1の表面3側における孔2の開口部4の内径dが10〜50μmとされ、板1の裏面5側における孔2の開口部6の内径dは、表面3側の開口部4よりも25〜50μm大きく形成される。表面側の孔2の開口部4の内径が50μmを超えると、肉眼で認識できる大きさになるため、好ましくなく、内径が10〜50μmで、ピッチが0.15〜0.5mm程度に離れていれば、通常では肉眼で目視することは困難である。
【0016】
また、この孔2の内周面を含む板1の両面には、膜厚が2〜20μmのアルマイト被膜7が形成されている。このアルマイト被膜7は、透明又は半透明である。前述した孔2の内径寸法は、このアルマイト被膜7上の数値である。
なお、板1は、例えば0.4〜0.8mmの板厚のものに、図3に示すように、孔2の形成領域の裏側に座ぐり部8を形成することにより、孔2の形成領域を前述した薄肉(0.1〜0.4mm)の肉厚に形成したものとなっている。この図3ではアルマイト被膜7は省略している。
【0017】
このように構成される極小孔加工板1の製造方法について説明する。
アルミニウム又はアルミニウム合金の素材の板1の両面にアルマイト処理を施す。
このアルマイト処理は、電解液に板1を浸漬して、その板1を陽極として電気分解することにより、板1の表面を電気化学的に酸化させて、酸化アルミニウム(Al)からなるアルマイト被膜7を形成する方法である。電解液としては、硫酸、しゅう酸等が用いられる。このアルマイト処理では、板1を電解液に漬けて電流を流すと、板1の表面部分が酸化して、内部に浸透しつつ全体に酸化膜が形成される。したがって、処理前の板1の表面位置よりも若干入り込んだ位置からアルマイト被膜が形成される。このアルマイト被膜を後述の孔開け加工後のアルマイト被膜と区別して一次アルマイト被膜とし、符号7aで表す。なお、孔開け加工後のアルマイト被膜を二次アルマイト被膜とし、符号7bで表すものとする。
次に、板1の裏面側に孔2の形成領域Aよりも大きい座ぐり部8を形成することにより、孔2の形成領域Aの肉厚を薄くする。したがって、この座ぐり部8の内面ではアルマイト被膜7aのないアルミニウムの地が露出することになる。
【0018】
次に、レーザ加工によって下孔2aを開ける。このとき、レーザ光は板1の裏面5側(座ぐり部8を形成した側)から照射され、シャッタによりレーザの照射(ON)と停止(OFF)とが繰り返されることにより、断続的に照射される。
一方、加工対象の板1は、電動式のX−Yテーブル上に載置され、レーザの照射位置(孔開け位置)を孔2のピッチp分ずつ水平方向に移動しながら加工される。レーザの焦点位置をX−Yテーブル上の板1に固定して、X−Yテーブルを駆動し、各孔開け位置毎にシャッタを駆動して、各孔開け位置に1ショットずつ連続的にレーザを照射する。孔2の形成領域Aが小さい径(例えば25mm)の範囲であれば、X−Yテーブルにより板を移動することに代えて、レーザの照射方向をずらすようにしてもよい。
【0019】
すべての孔開け位置に1ショットずつレーザの照射が終わったら、次の2ショット目について焦点位置を移動し、同様にして孔開け位置をずらしながらON/OFFを繰り返して、すべての孔開け位置にレーザを照射する。この操作を一つの下孔2aに対して30〜50ショット繰り返すことにより、板1に貫通状態に下孔2aを開けることができる。一孔当たりのショット数が30ショット未満であると、1ショット当たりのエネルギーが強過ぎて、孔径が60μmより大きくなり易いため、好ましくない。このようにして多数のショットを各孔開け位置に連続的に照射して貫通状態に下孔2aを形成するが、全加工時間から一つの下孔2aの加工時間に換算すると、一孔当たり0.1〜0.2秒となる。
【0020】
その一つの下孔2aの加工の進捗をモデル的に示したのが図4である。まず、図4(a)に示すように、複数回レーザを照射し、そのショット毎にレーザの焦点位置を移動して孔(貫通するまでの途中の孔を符号Xで示す)を掘り進めていく。図4(b)は板厚の大部分について加工が進んだ状態を示しており、この状態では、残りわずかな肉厚を残してテーパ状に孔Xが形成される。また、孔Xの入り口側(レーザの入射側であり、板の裏面5側)の開口部の周辺には、溶融して孔Xから噴出したアルミニウムが円筒状にバリBとなって付着している。そして、この図4(b)に示す状態からさらに続けてレーザのショットを照射すると、わずかに残っていた肉厚の部分Cが穿孔され、図4(c)に示すように下孔2aとして貫通する。この孔開け加工の最終段階で、わずかな肉厚の部分Cを穿孔することになるので、その時の加工径を小さくすることができ、極小の下孔2aを形成することができるのである。
【0021】
また、この孔が貫通する際には、最後に残ったアルマイト被膜7aをレーザが突き抜けることになるが、このアルマイト被膜7aは、板材のアルミニウムに比べて融点が格段に高く(アルミニウムの融点が660℃に対してアルマイト被膜が2100℃)、また、熱膨張係数もアルミニウムの25×10に対して4.5×10と、極めて小さいことから、板材のアルミニウムを溶融してきたレーザ光は、残ったわずかなアルマイト被膜7aに対して円形にクラックを生じさせ、これを固体のまま溶融アルミニウムとともに突き飛ばすようにして穿孔することになる。したがって、アルマイト被膜7aには、バリのない鋭利な開口が形成される。
【0022】
次に、このようにして孔開け加工した板の裏面側に生じているバリBを除去して図4(d)に示すように平坦面にする。
このバリ取り加工としては、シャープな刃先による、いわゆるキサゲ加工と称される研削加工、複合電解研磨などの方法がある。
キサゲ加工は、シャープな刃先で機械的にバリBの付け根を切り取って除去するもので、離脱したバリは真空吸引等によって除去される。孔の周囲にできる円筒状のバリBの厚みは5〜20μm程度であり、高さが15〜60μmになっている関係から、破断面の少ないせん断による平滑な仕上がり面を得ることができる。
複合電解研磨は、硝酸及びりん酸の混合電解液によって機械的、化学的、電気化学的作用を併用して研磨するもので、表面の孔形状に影響を与えることなくバリを選択的に除去することができる。
【0023】
次に、この孔開け加工された板に再度アルマイト処理を施す。
このアルマイト処理により、座ぐり部8の内面及び孔の内周面、さらにはバリ取り加工によってアルミニウムの地が露出した孔の開口部周辺部にアルマイト被膜7bが形成され、孔開け加工の前に形成したアルマイト被膜7aと一体になって、図4(e)に示すように全体にアルマイト被膜7が形成される。先に形成した下孔2aは、アルマイト被膜7により覆われた孔2となる。
【0024】
このような工程を経て製造された極小孔加工板1は、その表面3側の孔2の開口部4が内径d=10〜50μm、ピッチがp=0.15〜0.5mmで形成されているので、肉眼では目視することは困難であり、通常ではほとんど認識することができない。この極小孔加工板2の裏面5側にLED等の光源を配置すると、その光は各孔2を通過して表面3側に照射され、これら孔2の集合群により形成されているマークや文字、ロゴ等の形状を板1の表面3に浮かび上がらせることができるものである。
【0025】
この場合、孔2は、裏面5側の開口部6の方が大きいテーパ状に形成されているとともに、その内周面に形成されているアルマイト被膜7が透明又は半透明であるので、板1の裏面5側に照射された光は、図1に矢印で示したように、孔2の中心部においては、表面3側の開口部4を経由してそのまま透過するが、この表面3側の開口部4よりも広い範囲でテーパ状の孔2の内周面にも照射されている。したがって、この孔2の内周面に照射された光は、その一部は、孔2の内周面全面に形成されているアルマイト被膜7の表面で反射を繰り返しながら表面3側に進行する。また、大部分は、アルマイト被膜7の中を通って板1の表面3側に導かれ、表面3側の開口部4の周辺部分から中央部の光とともに放射される。したがって、光の放射側の開口部4よりも広い開口部6から光を受け入れ、そのテーパ面の全面で受けてテーパ面に沿って光を集めるようにして開口部4から光が放射されることになり、その分、多くの量の光を通過させることができ、極小の孔2であっても、その孔径(開口部4の径d)よりも大きい孔に相当する量の光を通過させて、明るく表示することができるのである。
【0026】
なお、孔開け加工後に再度アルマイト処理する方法としたことにより、光を照射しない通常時の孔の内周面からの反射を抑制することができる。つまり、先に形成した一次アルマイト被膜7aがアルミニウム地と同じシルバー系の色調の場合は、再度アルマイト被膜を形成しなくても問題は少ないが、一次アルマイト被膜7aが黒色やその他の着色をした場合には、孔開けによってアルミニウム地が露出する孔の内周面で反射する光が目立つため、集団で孔があることが視認できるようになってしまう。この孔の内周面に、二次アルマイト被膜7bを形成することにより、孔の内周面からの反射を抑制し、孔の存在をわからなくすることができる。
【0027】
また、孔開け加工時のバリBとは別に、孔の周辺にレーザ加工時に飛散したスパッタ粒子が付着することがあるが、これを孔開け加工後のアルマイト処理の際の脱脂並びに硫酸水溶液中での電解処理により離脱除去することができ、アルマイト被膜7のクリーンな表面とすることができる。
さらに、キサゲ加工等によってアルミニウム地が露出した部分や座ぐり部の表面にもアルマイト被膜が形成されるため、腐食等から保護することができる。
【0028】
図5は本発明の第2実施形態を示している。この実施形態の極小加工板15は、孔開け加工後に、板15の表面側に、透明樹脂膜を形成したものである。したがって、この表面3側の孔2の開口部4は透明樹脂膜16によって覆われた状態となっており、若干のバリがあった場合でも、透明樹脂膜16に覆われるので、指で触る程度では孔2を塞ぐことはない。また、指の脂等により開口部4上に汚れが付着したとしても、透明樹脂膜16の表面であり、拭き取って除去することができる。透明樹脂膜16としては、UV塗膜、UVボンド、透明フィルムの熱圧着等によって形成することができる。
なお、板15の裏面5側にも透明樹脂膜を形成してもよく、その場合は、この極小孔加工板15の組み立て作業時等に作業員が板15の裏面に不用意に指で触れて孔2を閉塞してしまうことから防止することができる。また、この透明樹脂によって孔2を埋めてしまってもよい。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、アルマイト被膜に着色をしてもよい。また、前記実施形態では座ぐり部を形成したが、孔の形成領域の板厚が薄い場合は座ぐり部を形成しなくてもよい。その孔の形成領域の板厚は、薄い方がバリの発生は低減できるが、通常の取扱いにおいて変形しない程度の強度は必要であり、板材が純アルミニウム系の場合と、強度の大きいAl−Mg系とでは残厚も異なってくる。
【0030】
また、前記実施形態ではレーザによる孔開け加工後にバリ取り加工を行っているが、レーザ加工の際に不活性ガスでレーザ照射部をシールドすることにより、アルミニウムの酸化を抑制するようにしてもよく、これにより、バリ形成量を低減することができる。不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウムなどを用いることができる。特に板材がAl−Mg合金の場合は、Mgが活性で酸化され易いため、酸化物を多量に巻き込んだバリが生じ易い。そのバリは脆いため、その後の除去の際に孔に詰まるなどの不具合が生じるおそれがあるが、不活性ガスでシールドしながら孔開け加工することによりバリを抑制することができる。
その他、アルマイト被膜を形成する前に、板の表面側をブラスト処理等によって梨地模様にする、化学研磨等で光沢面にする、切削加工によって凹凸模様を形成するなどの加工を施してもよい
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る極小孔加工板の第1実施形態を示す要部の縦断面図である。
【図2】図1の極小孔加工板の表面から見た孔の形成領域の平面図である。
【図3】図2の孔の形成領域付近の縦断面図である。
【図4】図1の極小孔加工板の製造方法を(a)〜(e)に工程順に説明する縦断面図である。
【図5】本発明に係る極小孔加工板の第2実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 極小孔加工板(板)
2 極小孔(孔)
2a 下孔
3 表面
4 開口部
5 裏面
6 開口部
7 アルマイト被膜
7a 一次アルマイト被膜
7b 二次アルマイト被膜
8 座ぐり部
15 極小孔加工板(板)
16 透明樹脂膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる板に貫通状態に複数の孔が形成されるとともに、これら孔は、前記板の表面側の開口部の内径が10〜50μmで、裏面側の開口部の内径が前記表面側の内径よりも大きいテーパ状に形成され、前記板の少なくとも前記表面側にアルマイト被膜が形成され、該アルマイト被膜に前記孔が開口していることを特徴とする極小孔加工板。
【請求項2】
さらに前記孔の内周面にアルマイト被膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の極小孔加工板。
【請求項3】
前記板の裏面側に、前記孔の形成領域をその周囲の部分より薄肉にする座ぐり部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の極小孔加工板。
【請求項4】
前記板の少なくとも前記表面側のアルマイト被膜の上に透明樹脂膜が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の極小孔加工板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の極小孔加工板を製造する方法であって、
前記板の少なくとも表面側にアルマイト被膜を形成した後に、
前記板の裏面側からレーザを多数回照射することにより前記孔を形成することを特徴とする極小孔加工板の製造方法。
【請求項6】
前記孔を形成した後に、少なくとも前記孔の内周面にアルマイト被膜を形成することを特徴とする請求項5記載の極小孔加工板の製造方法。
【請求項7】
前記孔を形成する前に、前記板の裏面側に、前記孔の形成領域をその周囲の部分より薄肉にする座ぐり部を形成することを特徴とする請求項5又は6記載の極小孔加工板の製造方法。
【請求項8】
前記孔を形成した後に、前記板の裏面側における孔の開口部周縁にバリ取り加工を施すことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の極小孔加工板の製造方法。
【請求項9】
前記孔を形成した後に、前記板の少なくとも前記表面側に透明樹脂膜を形成することを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の極小孔加工板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−120051(P2010−120051A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296672(P2008−296672)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(591015197)株式会社アルテクノ (5)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)
【Fターム(参考)】