説明

極性化合物の重合方法

【課題】極性化合物の重合方法を提供すること。
【解決手段】A):式(I)



(式中、Rは、アルキル基、アリール基又は;アルキル基もしくはアリール基で置換されたシリル基を表し、R〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
で表される有機ケイ素化合物からなる開始剤と
(B):カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、ホスホリル基又はピリジル基と共役した炭素−炭素二重結合を有する極性化合物と
(C):フッ素、アジド、シアニド、カルボキシラート又はこれらの共役酸との塩を対アニオンとするオニウム化合物;アルカリ金属フッ化物;アルカリ金属重フッ化物;及びルイス酸から選ばれる少なくとも1種の共触媒
とを接触させることを特徴とする極性化合物の重合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性化合物の重合方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、ホスホリル基又はピリジル基と共役した炭素−炭素二重結合を有する極性化合物の重合法において、新規重合触媒系を用いる重合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル酸誘導体、例えばアクリル酸、メタクリル酸のエステル、ニトリル、アミド、α−ニトロオレフィン、ビニルスルホン、ならびにビニルホスホン酸誘導体などは工業的にはほとんどラジカル重合によって製造される。このラジカル重合はフリーラジカルを形成する開始剤によって開始され、得られるポリマーは極めて広い分子量分布を有する。
【0003】
一方狭い分子量分布でアクリル酸誘導体の重合体を製造する方法としてアニオン重合が公知であり、開始剤としてリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;アルキルアルカリ金属類、グリニャール試薬;アルカリ金属アルコラート類などが一般的に用いられているが、これらの反応剤は極めて高い反応性を有する反面、化学的に不安定で保存・取り扱いが容易ではない。特に極少量の水分で失活しやすく、また空気と接触すると発火の危険性もある。また、副反応を抑制するために零下数十度で反応を実施する必要があり、モノマーへ導入できる官能基も限られるなど制限の非常に大きいものであった。
【0004】
上記欠点を解決するためにグループトランスファー重合で知られているアクリル酸誘導体の重合が非特許文献1及び特許文献1などに報告され、空気中安定で取り扱いが改善された開始剤を用いることにより室温以上での反応実施が可能となった。グループトランスファー重合に用いられる開始剤は一般にケテンシリルアセタールであり、このものは水分に不安定であったが、特許文献2、3及び非特許文献2でアリルシラン、アルキニルシラン、プロパルギルシラン及びトリチルシランを開始剤とする重合方法が報告され、保存・取り扱いが容易な開始剤による重合も可能であることが示されたが、使用できる有機ケイ素化合物に限りがあった。
【0005】
グループトランスファー重合で得られるポリマーの末端構造は開始剤の構造が導入されるため、炭素−炭素二重結合を有し保存・取り扱いが容易な開始剤として有機ケイ素化合物を温和な条件で重合反応に用いることができれば、マクロモノマーとして有用な末端に炭素−炭素二重結合を有する重合体を製造することができる。
【特許文献1】US4414372
【特許文献2】特公平6−18807
【特許文献3】特開平2−233705
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.1983,105,5706.
【非特許文献2】Polymer Preprint 2000,41,204.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル、ホスホリル基又はピリジル基と共役した炭素−炭素二重結合を有する極性化合物の重合方法において、新規重合触媒系を用いる重合方法であって、温和な条件下、取り扱い容易な開始剤を用いることにより片末端に炭素−炭素二重結合を有する極性化合物の重合体が製造できるという優れた特徴を有する極性化合物の重合方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、



(式中、Rは、アルキル基、アリール基又は;アルキル基もしくはアリール基で置換されたシリル基を表し、R〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
で表される有機ケイ素化合物からなる開始剤と
(B):カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、ホスホリル基又はピリジル基と共役した炭素−炭素二重結合を有する極性化合物と
(C):フッ素、アジド、シアニド、カルボキシラート又はこれらの共役酸との塩を対アニオンとするオニウム化合物;アルカリ金属フッ化物;アルカリ金属重フッ化物;及びルイス酸から選ばれる少なくとも1種の共触媒
とを接触させることを特徴とする極性化合物の重合方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、取り扱い容易な開始剤を用い、温和な条件下、片末端に炭素−炭素二重結合を有する極性化合物の重合方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられる(A)成分である式(I)で示される有機ケイ素化合物において、R,R,R,Rで表されるアリール基としてはベンゼン環を含む縮環構造をもつ化合物が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
これらのアリール基は置換されていても良く、その置換基としては公知のケテンシリルアセタールを開始剤とするグループトランスファー重合を阻害しない置換基であれば特に制限は無い。
すなわち水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオ基などの酸性水素を有し、グループトランスファー重合を阻害する官能基を除いた官能基が挙げられ、好ましくはアルデヒド基、フッ素を除くハロゲン化アルキル基、トシル基、メシル基などの脱離性の基を有するアルキル基など求電子反応を起こしやすい基を除いた官能基が挙げられ、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などのC1−C10のアルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルエチル基、ペンタフルオロエチルエチル基、パーフルオロヘキシルエチル基などのC1−C10のフルオロアルキル基、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、ナフチル基、メシチル基などのC6−C10のアリール基、アリル基、ビニル基、2−プロペニル基、2−スチリル基などのC2−C10のアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基などのC1−C10のアルコキシ基、フェノキシ基、4−トリルオキシ基、ナフチルオキシ基、メシチルオキシ基などのC6−C10のアリールオキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などのC2−C12の炭化水素二置換アミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基などのC1−C10の炭化水素置換チオ基、ジメチルフォスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジブチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基などのC2−C12の炭化水素二置換ホスフィノ基などが挙げられる。
【0010】
,R,R,Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などのC1−C10のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基である。これらのアリール基は置換されていても良く、その置換基としては公知のケテンシリルアセタールを開始剤とするグループトランスファー重合を阻害しない置換基であれば特に制限は無い。すなわち水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオ基などの酸性水素を有し、グループトランスファー重合を阻害する官能基を除いた官能基が挙げられ、好ましくはアルデヒド基、フッ素を除くハロゲン化アルキル基、トシル基、メシル基などの脱離性の基を有するアルキル基など求電子反応を起こしやすい基を除いた官能基が挙げられ、具体的にはフッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルエチル基、ペンタフルオロエチルエチル基、パーフルオロヘキシルエチル基などのC1−C10のフルオロアルキル基、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、ナフチル基、メシチル基などのC6−C10のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基などのC1−C10のアルコキシ基、フェノキシ基、4−トリルオキシ基、ナフチルオキシ基、メシチルオキシ基などのC6−C10のアリールオキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などのC2−C12の炭化水素二置換アミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基などのC1−C10の炭化水素置換チオ基、ジメチルフォスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジブチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基などのC2−C12の炭化水素二置換ホスフィノ基などが挙げられる。
【0011】
式(I)で示される有機ケイ素化合物において、Rで表されるアルキル基もしくはアリール基で置換されたシリル基とはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルtert−ブチルシリル基、ジメチルフェニル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、が挙げられ好ましくはトリメチルシリル基が挙げられる。
【0012】
式(I)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては、
ビニルトリメチルシラン、1−トリメチルシリルヘキセン、1−トリメチルシリルオクテン、1−トリメチルシリル−1−フェニルエチレン、1−トリメチルシリル−2−フェニルエチレン、ビニル−tert−ブチルジメチルシラン、1−tert−ブチルジメチルシリルヘキセン、1−tert−ブチルジメチルシリルオクテン、1−tert−ブチルジメチルシリル−2−フェニルエチレン、ビニルトリス(トリメチルシリル)シラン、1−トリス(トリメチルシリル)シリルヘキセン、1−トリス(トリメチルシリル)シリルオクテン、1−トリス(トリメチルシリル)シリル−2−フェニルエチレンなどが挙げられ、好ましくはビニルトリス(トリメチルシリル)シラン、1−トリス(トリメチルシリル)シリル−2−フェニルエチレンが挙げられる。
【0013】
本発明に用いられる、(B):カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、ホスホリル基又はピリジル基と共役した炭素−炭素二重結合を有する極性化合物とは、具体的にはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、などのメタクリル酸エステル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル類、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換不飽和アミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、ニトロエテン、1−ニトロシクロヘキセンなどのα−ニトロオレフィン類、ビニルメチルスルホン、ビニルフェニルスルホン、ビニルスルホン酸エチルエステルなどのビニルスルホン類、ビニルホスホン酸ジエチルエステルなどのビニルホスホン類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのビニルピリジン類などが挙げられ、好ましくはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル類、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換不飽和アミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのビニルピリジン類等が挙げられる。これらの極性化合物は単独で又は併用して用いることができる。
【0014】
本発明に用いられる(C)成分の共触媒のうち、フッ素、アジド、シアニド、カルボキシラート又はこれらの共役酸との塩を対アニオンとするオニウム化合物、アルカリ金属フッ化物もしくはアルカリ金属重フッ化物の具体例としては、テトラブチルアンモニウム フルオライド、テトラエチルアンモニウム フルオライド、テトラメチルアンモニウム フルオライド、テトラブチルアンモニウム シアニド、テトラエチルアンモニウム シアニド、テトラメチルアンモニウム シアニド、テトラブチルアンモニウム アセテート、テトラブチルアンモニウム ベンゾエート、テトラブチルアンモニウム m−クロロベンゾエート、テトラブチルアンモニウム ビベンゾエート、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム ジフルオロトリメチルシリケート、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム アジド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム シアニド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム ビフルオライド、テトラブチルアンモニウム ビフルオライド、テトラブチルアンモニウム 三フッ化 二水素などのオニウム化合物、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、などの金属フッ化物及び重フッ化カリウムを挙げることができる。
【0015】
また、ルイス酸の具体例としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、ジイソブチルアルミニウムオキサイド、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素−エーテル錯体、塩化第一スズ、塩化第二スズ、四塩化チタンなどを挙げることができる。
【0016】
アルカリ金属フッ化物を用いる場合は、クラウンエーテル類を併用することによって共触媒としての作用を高めることができる。
【0017】
上記のうちでも共触媒として特に好ましいものはオニウム化合物が挙げられ、より好ましくはテトラブチルアンモニウム フルオライド、テトラエチルアンモニウム フルオライド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム ビフルオライド、テトラエチルアンモニウム シアニド、テトラブチルアンモニウム アセテート、テトラブチルアンモニウム ベンゾエート、テトラブチルアンモニウム m−クロロベンゾエート、テトラブチルアンモニウム ビベンゾエート、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム ジフルオロトリメチルシリケート、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム ビフルオライド、テトラブチルアンモニウム ビフルオライド、テトラブチルアンモニウム 三フッ化 二水素等であり、さらに好ましいものとしてフッ素アニオン及びその共役酸との塩を対アニオンとするオニウム化合物が挙げられ、具体的にはテトラブチルアンモニウム フルオライド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム ビフルオライド、テトラブチルアンモニウム ビフルオライドが挙げられ、最も好ましくはテトラブチルアンモニウム フルオライドが挙げられる。
【0018】
本発明の重合方法において、(A)成分の開始剤の使用量は、(B)成分の極性化合物1モルに対し、1モル以下であり、好ましくは0.001〜0.1モルである。
(C)成分の共触媒の使用量は、(A)成分の開始剤1モルに対し、0.001〜1モルであり、好ましくは0.01〜1モルの範囲である。
【0019】
本発明の重合方法において、反応温度は、通常、約−80℃〜150℃の温度で行うことができ、好ましくは0℃〜120℃、より好ましくは室温〜100℃の範囲である。また、本発明の重合方法は0.1〜50atmの圧力下で実施することができるが、通常は大気圧下で十分である。
【0020】
本発明の重合方法は、一般に溶液中において実施することが望ましいが、重合反応に供する(B)成分の極性化合物が重合条件下液体である場合には特に溶媒を用いる必要はない。(B)成分の極性化合物が重合条件下で固体である場合には、(A)成分の開始剤及び(C)成分の共触媒が有効に作用するのに十分な量の溶媒を用いる必要がある。溶媒を用いる場合は通常、(B)成分の極性化合物の濃度が0.01重量%以上、好ましくは10重量%でかつ反応系が常温で液体状態を保つのに必要な量の溶媒を用いる。
【0021】
適当な溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、などの炭化水素系溶媒、その他酢酸エチル、N,N―ジメチルアセトアミド、N,N―ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホトリアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒及びこれらの混合溶媒を挙げることができ、好ましくはエーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、炭化水素系溶媒及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0022】
本発明における(A)成分の開始剤は水分に対して安定であるが、本発明の重合方法は実質的に無水条件で実施することが好ましく、反応系に存在する水分は(C)成分の共触媒の仕込みモル以下に抑える必要がある。水分が共触媒の濃度を超えて存在すると、重合反応の進行は困難であり、共触媒の濃度以下であっても相当量の水分が存在すると高分子量の重合体を得ることは難しい。したがって、本発明の重合方法により高分子量の重合体を製造するためには使用する溶媒、開始剤、極性化合物、共触媒などを予め十分に脱水しておくことが必要である。
【0023】
また、本発明の重合方法は、水分の侵入を防ぐために十分に乾燥した雰囲気中において実施することが重要であり、このような雰囲気として例えば乾燥空気、乾燥した窒素、アルゴンなどの不活性ガスの雰囲気を挙げることができ、好ましくは乾燥した不活性ガス雰囲気が使用される。
【0024】
本発明の重合方法においては、(A)開始剤、(B)極性化合物、(C)共触媒の反応系への添加順序は特に制限されず、いずれの添加順序によっても重合反応は進行する。重合反応を容易に制御できる点で、開始剤と共触媒の有機溶媒溶液中に極性化合物又はその溶液を添加するあるいは開始剤の有機溶媒溶液中に共触媒及び極性化合物又はその溶液を併注する方法が好ましい。
【0025】
本発明の重合方法により2つ以上の極性化合物を使用してブロック共重合体を製造する場合には、まず、第一の極性化合物を開始剤及び共触媒を用いて重合した後、得られた重合体溶液に第二の極性化合物をそのまま又は適当な有機溶媒、通常は反応溶媒と同じ溶媒に溶解した溶液として添加すればよい。
【0026】
本発明の重合方法における重合反応を停止させるためには、水、アルコール、カルボン酸などの酸性水素を有する化合物を反応系に添加すればよく、通常はメタノール、エタノールなどのアルコールを使用する。この酸性水素を有する化合物は、反応系中の開始剤のモル数以上、好ましくは開始剤と共触媒の合計モル数以上の量を添加する。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
1−トリス(トリメチルシリル)シリル−2−フェニルエチレンとテトラブチルアンモニウム フルオライド(TBAF)によるポリメチルメタクリレートの製造
TBAF・3HO(261mg/1mmol)を30分減圧乾燥し、無水THF10mLに溶解し、0.1M TBAF溶液を調製した。
乾燥した窒素雰囲気下、1−トリス(トリメチルシリル)シリル−2−フェニルエチレン(0.175g/0.5mmol)及びメチルメタクリレート(2.6mL/50mmol)の無水THF3mL溶液に0.1M TBAF溶液(0.25mL/0.025mmol)を加えた。30分後に反応溶液を20mLのTHFで希釈し、200mLのメタノール中へ加え、重合体を沈殿、凝固させることにより回収し、白色粉末状のポリメチルメタクリレート2.14g(収率79.9%)を得た。得られたポリメチルメタクリレートのポリスチレン換算重量平均分子量Mw=54,000、 Mw/Mn=1.9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A):式(I)



(式中、Rは、アルキル基、アリール基又は;アルキル基もしくはアリール基で置換されたシリル基を表し、R〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
で表される有機ケイ素化合物からなる開始剤と
(B):カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、ホスホリル基又はピリジル基と共役した炭素−炭素二重結合を有する極性化合物と
(C):フッ素、アジド、シアニド、カルボキシラート又はこれらの共役酸との塩を対アニオンとするオニウム化合物;アルカリ金属フッ化物;アルカリ金属重フッ化物;及びルイス酸から選ばれる少なくとも1種の共触媒
とを接触させることを特徴とする極性化合物の重合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)で表される有機ケイ素化合物におけるRが、トリメチルシリル基である請求項1に記載の極性化合物の重合方法。

【公開番号】特開2008−189830(P2008−189830A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26566(P2007−26566)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】