説明

極端紫外光源装置

【課題】レーザビームが照射されなかったターゲット物質を有効活用することが可能なEUV光源装置を提供する。
【解決手段】このEUV光源装置は、EUV光の生成が行われるEUV生成チャンバ1と、EUV生成チャンバ1内にターゲット物質として液体状の金属を供給するターゲット物質供給部2と、EUV生成チャンバ1内に供給されたターゲット物質にレーザ光を照射することによりプラズマを発生させるレーザ光源5と、プラズマから放射されるEUV光を集光する集光ミラー10と、EUV生成チャンバ1内に供給されたターゲット物質の内のレーザ光が照射されなかったターゲット物質を精製するためのターゲット物質精製槽22とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等を露光するために用いられる極端紫外光を発生するLPP(Laser Produced Plasma)型の極端紫外(Extreme Ultra Violet:EUV)光源装置においてEUV生成チャンバ内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質を再利用することが可能な極端紫外光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィも微細化が急速に進展しており、次世代においては、100〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(catadioptric system)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、レーザビームをターゲットに照射することによって生成するプラズマを用いたLPP(laser produced plasma)光源と、放電によって生成するプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源には、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点がある。そのため、LPP光源は、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
図5は、一般的なLPP型EUV光源装置の構成を示す模式図である。このEUV光源装置は、ノズル101が配置されたプラズマ発生室102と、レーザ光源103と、レーザ光をプラズマ発生室102に導光する伝播光学系(例えば、レンズ104)と、排気ポンプ105とを含んでいる。以下、伝播光学系としてレンズを例示して説明する。
ノズル101は、加圧供給される液体又は気体のターゲット物質を噴射することにより、レーザ光照射点107を通るターゲット噴流を形成する。ターゲット物質として、錫(Sn)等の常温において固体の物質を用いる場合には、ノズルの上流側に、ターゲット物質を加熱液化させる機構を設けることもある。また、キセノン(Xe)等の常温において気体の物質を用いる場合には、ノズルの上流側に、ターゲット物質を加圧冷却することにより液化させる機構を設けることもある。
【0005】
また、ノズル101にピエゾ素子106を設け、ノズル101を振動させながら液体のターゲット物質を噴射させることにより、ターゲット物質の液滴(ドロップレット)108を形成することができる。即ち、レイリーの微小擾乱の安定性理論によれば、速度vで流れる直径dのターゲット噴流を、周波数fで振動させることにより擾乱させるときに、ターゲット噴流に生じた振動の波長λ(λ=v/f)が所定の条件(例えば、λ/d=4.51)を満たす場合に、均一な大きさの液滴108が、周波数fで繰り返して形成される。そのときの周波数fは、レイリー周波数と呼ばれる。
【0006】
レーザ光源103は、所定の繰り返し動作周波数でレーザ光を出力する。レーザ光源103から出力されたレーザ光は、レンズ104によってレーザ光照射点107に集光され、ターゲット噴流やドロップレットを照射する。それにより、ターゲット物質がプラズマ化してEUV光を放射する。なお、図5には、レーザ光を照射された結果、プラズマ生成に寄与した液滴の跡108aが示されている。このようにして生成されたEUV光は、例えば、半導体装置の露光を行う場合には、波長13nm〜14nmの光を高反射率で反射するMo(モリブデン)−Si(シリコン)膜が形成された曲面型集光ミラーによって集められ、反射ミラー光学系によって露光装置へ導光される。ここで、EUV光は、物質による吸収や物質との相互作用が大きいので、EUV光を減衰させないために、EUV光を露光装置等に導光する光学系や露光装置内部の投影光学系には、反射型が用いられる。
【0007】
排気ポンプ105は、プラズマ発生室102内を排気することにより所望の圧力に維持すると共に、ターゲット物質の蒸発ガス109等の不要な物質を排出する。プラズマ発生室102内には、ガス化したターゲット物質によるEUV光の吸収やミラー等の光学系の汚染を防止するために、例えば、ターゲット物質としてキセノン(Xe)を用いる場合には、0.1Pa程度の高真空が要求される。
【0008】
ところで、通常、均一な液滴を形成するためにノズル101に与えられる振動の周波数fは、照射レーザ光が出力される周波数の数倍から数十倍となる。例えば、LPP型EUV光源装置において一般に用いられるレーザにおける繰り返し動作周波数は、100kHz程度であるのに対し、直径約20μmの液滴を形成する場合に、振動により液滴が生成される周波数fは約1〜2MHzとなる。そのため、生成された液滴108の多く(約90%以上)は、レーザ光が照射されることなくレーザ光照射点107を通過してしまう。また、レーザ光が照射された液滴108から飛散した粒子が次にレーザ光が照射される液滴108に影響を与えることがないように、意図的にレーザ光を照射する間隔を広くする場合もある。
【0009】
このような液滴(残留ターゲット物質)110は、ターゲット物質回収筒111によって回収され、メンテナンス等のためにプラズマ発生室102を開放した際に取り出され、廃棄されることが一般的であった。しかしながら、ランニングコストの低減や環境保護等のため、回収されたターゲット物質を廃棄することなく有効活用することが望まれている。
【0010】
関連する技術として、特許文献1には、ターゲット物質として金属微粒子と希ガスとを混合した微粒子混合ガスターゲットを用いたレーザプラズマX線源において、レーザビームが照射されなかった微粒子混合ガスターゲットをターゲット回収装置で回収した後に、分離器によって金属微粒子と希ガスを分離し、分離した金属微粒子及び希ガスを微粒子タンク及びガスボンベに戻してリサイクルする技術が掲載されている。しかしながら、特許文献1に掲載されたレーザプラズマX線源は、ターゲット物質として金属微粒子と希ガスとを混合した微粒子混合ガスターゲットを用いたものであり、ターゲット物質として液体金属を用いたものではない。
【特許文献1】特開平10−221499号公報(第7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、レーザビームが照射されなかったターゲット物質を有効活用することが可能な極端紫外光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る極端紫外光源装置は、ターゲット物質にレーザビームを照射することにより極端紫外光を発生する光源装置であって、極端紫外光の生成が行われる極端紫外光生成チャンバと、極端紫外光生成チャンバ内にターゲット物質として液体状の金属を供給するターゲット物質供給手段と、極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質にレーザビームを照射することによりプラズマを発生させるレーザ光源と、プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光光学系と、極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質を精製してターゲット物質供給手段に供給するターゲット物質精製手段とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーザビームが照射されなかったターゲット物質を有効活用することができるので、ランニングコストの低減、環境保護等を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る極端紫外(extreme ultra violet:EUV)光源装置の構成の概要を模式的に示す図である。本実施形態は、本発明を、ターゲット物質をドロップレットとして供給するLPP(Laser Produced Plasma)型EUV光源装置に適用したものである。なお、本発明を、ターゲット物質を連続流れ(ターゲット噴流)として供給するEUV光源装置に適用することも可能である。
【0015】
このLPP型EUV光源装置は、EUV光の生成が行われる真空のEUV生成チャンバ1と、ターゲット(標的)を照射するためのレーザ光8を出射するレーザ光源5とを含んでいる。EUV生成チャンバ1には、ターゲット物質供給部2と、排気ポンプ7とが設置されている。
【0016】
ターゲット物質供給部2は、ターゲット物質を貯蔵するターゲットリザーバ2cを有している。ターゲットリザーバ2cは、ノズル2aを有しており、ノズル2aには、ピエゾ素子2bが設けられている。ピエゾ素子2bには、ピエゾ素子2bに供給される駆動信号を発生するピエゾドライバ3が接続されている。
【0017】
ノズル2aは、ターゲット物質をEUV生成チャンバ1内に向けて噴射する。本実施形態においては、ターゲット物質として加熱液化した錫(Sn)を用いている。なお、ターゲット物質として、錫(Sn)に代えて、公知の様々な材料(例えば、リチウム(Li)、インジウム(In)等)を用いることができる。
【0018】
ピエゾ素子2bは、ピエゾドライバ3から供給される駆動信号に基づいて伸縮することにより、ノズル2aに所定の周波数fの振動を与える。このように、ノズル2aを介して、ノズル2aから噴射されるターゲット物質の流れ(ターゲット噴流)を擾乱させることにより、繰り返して滴下するターゲット物質の液滴11を生成することができる。即ち、ターゲット噴流の速度をv、ターゲット噴流に生じた振動の波長をλ(λ=v/f)、ターゲット噴流の直径をdとした場合に、所定の条件(例えば、λ/d=4.51)を満たすときに、均一な大きさの理想的な液滴が形成される。このターゲット噴流に生じさせる擾乱の周波数fは、レイリー周波数と呼ばれている。実際には、λ/d=3〜8程度であれば、ほぼ均一な大きさの液滴が形成される。EUV光源装置において一般的に用いられるノズルから噴射されるターゲット噴流の速度vは50m/s〜100m/s程度であるので、直径が20μm程度の液滴を形成する場合に、ノズルに与えるべき周波数は、1MHz〜2MHz程度となる。
【0019】
また、EUV生成チャンバ1の一部には、レーザ光8を透過させる窓4が設けられている。さらに、EUV生成チャンバ1の外部には、レーザ光源5から出射されたレーザ光8がターゲット物質を照射するように、該レーザ光8を集束する集光光学系(集光レンズ)6が設置されている。
【0020】
レーザ光源5から出射したレーザ光8は、集光レンズ6によって集光され、EUV生成チャンバ1内のレーザ光照射点9を所定の繰り返し動作周波数(例えば、100kHz)で照射する。このようなEUV生成チャンバ1において、液滴11が、レーザ光照射点9を通過する際にレーザ光8を照射されると、ターゲット物質がプラズマ化してEUV光が放射される。このようにして生成されたEUV光は、例えば、モリブデン(Mo)−シリコン(Si)膜が形成された反射光学系(ここでは、集光ミラー10)によって集光され、所定の方向(図1においては、図の手前方向)に導かれる。
【0021】
排気ポンプ7は、EUV生成チャンバ1内を所望の真空度に維持すると共に、生成された液滴11の表面から蒸発した蒸発ガスを外部に排出する。
【0022】
ところで、上記したように、均一な液滴を形成するためにノズル2aに与えられる振動の周波数fは、照射レーザ光が出力される周波数の数倍から数十倍となる。例えば、LPP型EUV光源装置において一般に用いられるレーザにおける繰り返し動作周波数は、100kHz程度であるのに対し、直径約20μmの液滴を形成する場合に、振動により液滴が生成される周波数fは約1〜2MHzとなる。そのため、生成された液滴11の多く(約90%以上)は、レーザ光が照射されることなくレーザ光照射点9を通過してしまう。また、レーザ光が照射された液滴11から飛散した粒子が次にレーザ光が照射される液滴11に影響を与えることがないように、意図的にレーザ光を照射する間隔を広くする場合もある。
【0023】
このような液滴(残留ターゲット物質)12は、EUV生成チャンバ1内の図中下部に配置されたターゲット物質捕集部13内に落下して捕集される。ターゲット物質捕集部13の図中上方の開口を広くすることで、ターゲット物質の捕集をより容易にすることができる。ターゲット物質捕集部13の図中下方の開口は、EUV生成チャンバ1の図中下方に設けられたゲートバルブ21によって封鎖されており、ターゲット物質捕集部13に捕集されたターゲット物質は、ゲートバルブ21が開かれたときに、ターゲット物質捕集部13の図中下方の開口からEUV生成チャンバ1の外部に配置されたターゲット物質精製槽22に落下する。ターゲット物質捕集部13の図中下方の開口を狭くすることで、ゲートバルブ21のサイズを小さくすることができ、それにより、ゲートバルブ21が開かれたときのEUV生成チャンバ1の真空度の低下を小さくすることができる。
【0024】
EUV生成チャンバ1内が排気ポンプ7により排気(真空引き)されているので、ターゲット物質捕集部13に捕集されたターゲット物質の冷却要因としては、輻射及び気化熱に略限られる。そのため、ターゲット物質捕集部13に捕集されたターゲット物質が完全に固化してしまうことは少ないと考えられる。なお、ターゲット物質捕集部13に捕集されたターゲット物質が完全に固化してしまうことを防止するため、ターゲット物質捕集部13にヒータを設けるようにしても良い。
【0025】
また、後に説明するようにターゲット物質精製槽22内には溶融液化したターゲット物質が貯蔵されており、ゲートバルブ21が開かれたときに、ターゲット物質精製槽22内のターゲット物質(ここでは、錫(Sn))が蒸発したガスがEUV生成チャンバ1内に多少流入することも考えられるが、錫(Sn)の蒸気圧は非常に低いため、EUV生成チャンバ1内の環境に深刻な影響を与えることはない。また、ゲートバルブ21の開放は、メンテナンス等のためのEUV生成チャンバ1の開放とは独立して行うことができるので、ターゲット物質捕集部13に捕集されたターゲット物質をターゲット物質精製槽22に落下させるためにEUV生成チャンバ1を開放する必要がなく、段取りや作業に費やす時間を低減することが可能である。
【0026】
ターゲット物質捕集部13からEUV生成チャンバ1の外部に落下したターゲット物質は、ターゲット物質精製槽22に貯蔵される。ターゲット物質精製槽22には、温度センサ23、ヒータ制御部24、及び、ヒータ25が設けられており、ヒータ制御部24は、温度センサ23からの温度測定信号に基づいて、ターゲット物質精製槽22内のターゲット物質の温度が所望の温度となるように、ヒータ25を制御する。
【0027】
なお、ターゲット物質の温度をターゲット物質の融点以上且つ不純物の融点以下の温度とすることが好適である。これにより、ターゲット物質と不純物とを分離することが可能となる。例えば、ターゲット物質が錫(Sn)であり、EUV生成チャンバ1内の残留ガス中に酸素、水分、油分が微量混入している場合には、液滴12が酸化し、液滴12の表層において微量の酸化錫(SnO又はSnO)が不純物として生成され得る。錫(Sn)の融点が約231°Cであり、比重が約7.2であるのに対し、酸化錫の融点は約1600°C以上であり、比重は約6.3(SnO)〜約6.9(SnO)であるので、ターゲット物質精製槽22内に収容されたターゲット物質を約231°C以上且つ約1600°C以下に加熱することで、錫(Sn)のみを溶融液化させて、不純物である酸化錫を溶融液化された錫の液面付近に浮遊させることができる。そして、ターゲット物質精製槽22内に貯蔵されたターゲット物質の内の液面付近以外の高純度の部分を精製ターゲット物質流入管35〜配管37を介してターゲット物質供給部2に供給することで、再び液滴11にすることができる。
【0028】
また、ターゲット物質の内の液面付近以外の高純度の部分を容易に採取できるようにするため、本実施形態においては、ターゲット物質精製槽22内に、図中上方に凸状のドーム26を配置しており、精製ターゲット物質流入管35は、その開口(ターゲット物質流入口)がドーム26内に位置するように、配置されている。先に説明したように、不純物はターゲット物質の内の液面付近に浮遊するので、ターゲット物質流入口がドーム26内に位置するように精製ターゲット物質流入管35を配置することで、浮遊する不純物が精製ターゲット物質流入管35のターゲット物質流入口から流入することを抑止することができる。
【0029】
さらに、ターゲット物質精製槽22の壁面のドーム26の開口よりも高い位置には、ターゲット物質の液面を計測するための液面センサ27が設けられており、ターゲット物質の液面が液面センサ27よりも高い場合に、バルブ開閉部28は、不活性ガス供給部31とターゲット物質精製槽22との間を開閉するバルブ33、及び、配管37を開閉するバルブ36を開き、排気ポンプ32とターゲット物質精製槽22との間を開閉するバルブ34を閉じる。これにより、不活性ガス供給部31から不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar)等)がターゲット物質精製槽22内に供給され、供給された不活性ガスによりターゲット物質が加圧され、加圧されたターゲット物質が精製ターゲット物質流入管35〜配管37を介してターゲット物質供給部2に供給される。この時同時に、排気ポンプ70を動作させ、バルブ開閉部28が排気ポンプ70とターゲットリザーバ2cとの間を開閉するバルブ71を開くことにより、ターゲットリザーバ2c内を排気しておくと、ターゲット物質精製槽22内の不活性ガスへの加圧は最小で済む。一定量のターゲット物質がターゲット物質精製槽22からターゲットリザーバ2cに投入されたら、バルブ開閉部28がバルブ36及びバルブ71を閉じ、排気ポンプ70を停止させ、バルブ開閉部28が不活性ガス供給部31とターゲットリザーバ2cとの間を開閉するバルブ72を開き、所定圧までターゲットリザーバ2cに不活性ガスを注入する。こうする事で、ターゲットリザーバ2c内の圧力を一定に保つ事が出来、ひいては、ノズル2aからのターゲット物質噴出時の圧力を一定に保つ事が出来る。
【0030】
ターゲット物質精製槽22からターゲットリザーバ2c内へのターゲット物質供給中は、ターゲットリザーバ2c内のターゲット物質に掛かる圧力が変動する為、レーザ光源5のレーザ発振を止め、EUV発生を中断しておく事が望ましい。なお、このターゲット物質供給中にEUV生成チャンバ1内にターゲット物質が放出されてしまっても、本発明により回収・再利用できる為問題は無い。
【0031】
なお、ターゲット物質の液面が液面センサ27よりも低い場合には、バルブ開閉部28は、バルブ33、36を閉じる。これにより、ターゲット物質の液面付近に浮遊する不純物が精製ターゲット物質流入管35〜配管37を介してターゲット物質供給部2に供給されることを防止することができる。
【0032】
また、ターゲット物質捕集部13に捕集されたターゲット物質をターゲット物質精製槽22に落下させるためにゲートバルブ21を開く場合には、バルブ開閉部28は、バルブ33、36を閉じ、バルブ34を開く。これにより、ターゲット物質精製槽22内が排気され、ターゲット物質精製槽22内の不活性ガスやターゲット物質精製槽22内のターゲット物質が蒸発したガスがゲートバルブ21を介してEUV生成チャンバ1内に流入することを抑止することができる。
【0033】
なお、配管37内の精製ターゲット物質を保温するために、配管37にヒータを設けるようにしても良い。さらに、精製ターゲット物質を不活性ガスの圧力でターゲット物質供給部2に供給するのではなく、ポンプ等で供給するようにしても良い。
【0034】
本実施形態に係るEUV光源装置によれば、レーザ光が照射されなかったターゲット物質を精製してターゲット物質供給部2に供給し再利用することができる。これにより、ランニングコストの低減や環境保護等の実現が可能となる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係るEUV光源装置の構成の概要を模式的に示す図である。本実施形態に係るEUV光源装置は、先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置において、液滴(残留ターゲット物質)12を冷却するための冷却手段をEUV生成チャンバ1内に更に具備することとしたものである。
【0036】
図2に示すように、EUV生成チャンバ1内には、液滴(残留ターゲット物質)12が通過するためのターゲット物質冷却チャンバ40が配置されている。ターゲット物質冷却チャンバ40の図中上部には、バルブ43を介して不活性ガス供給部41が連結され、この不活性ガス供給部41から不活性ガスがターゲット物質冷却チャンバ40内に供給される。なお、不活性ガスとしては、EUV光透過率が高く且つコスト的に安価なガス(例えば、アルゴン(Ar)等)が好適である。このように、ターゲット物質冷却チャンバ40内に不活性ガスを供給し、この不活性ガスと液滴(残留ターゲット物質)12とを接触させて、液滴(残留ターゲット物質)12の熱を不活性ガスに熱移動させることで、液滴(残留ターゲット物質)12を容易に冷却固化させることができる。
【0037】
ターゲット物質冷却チャンバ40の図中下部には、バルブ44を介して排気ポンプ42が連結され、この排気ポンプ42によって、ターゲット物質冷却チャンバ40内の不活性ガスが排気される。これにより、不活性ガスがターゲット物質冷却チャンバ40からEUV生成チャンバ1に漏出することを低減することができる。
【0038】
また、ターゲット物質冷却チャンバ40の内壁には、EUV生成チャンバ1内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質が通過するための開口をそれぞれ有する開口板40a〜40dが取り付けられている。これらの開口板40a〜40dを設けることで、開口板40a〜40dを設けない場合よりも、不活性ガスがターゲット物質冷却チャンバ40からEUV生成チャンバ1に漏出することをより低減することができる。
【0039】
開口板40dの開口は、開口板40cの開口より小さく、開口板40cの開口は、開口板40bの開口より小さく、開口板40bの開口は、開口板40aの開口より小さい。従って、開口板40dの開口部における不活性ガスの密度は、開口板40cの開口部における不活性ガスの密度より大きく、開口板40cの開口部における不活性ガスの密度は、開口板40bの開口部における不活性ガスの密度より大きくなる。これにより、液滴(残留ターゲット物質)12は、ターゲット物質冷却チャンバ40内を進行する程より強く冷却されることになる。
【0040】
なお、開口板40dの開口を開口板40cの開口より小さくし、開口板40cの開口を開口板40bの開口より小さくし、開口板40bの開口を開口板40aの開口より小さくしているのは、次の理由による。液滴(残留ターゲット物質)12がターゲット物質冷却チャンバ40に入射した直後は、液滴(残留ターゲット物質)12の実際の軌道が想定される軌道(設計軌道)より或る程度ずれることが起こり得る一方、液滴(残留ターゲット物質)12がターゲット物質冷却チャンバ40内を進行するに従って、液滴(残留ターゲット物質)12の軌道が不活性ガスの流れにより修正されるからである。
【0041】
また、開口板40a〜40dは、液滴(残留ターゲット物質)12の進行方向に向かって傾斜した形状を有している。このように開口板40a〜40dが傾斜した形状を有することとしているのは、万が一、ターゲット物質冷却チャンバ40内を進行する液滴(残留ターゲット物質)12が開口板40a〜40dに衝突してしまった場合であっても、衝突により発生した飛沫が不活性ガス流によってターゲット物質捕集部13に落下し易くするためである。また、開口板40dの傾斜は、開口板40cの傾斜より小さく、開口板40cの傾斜は、開口板40bの傾斜より小さく、開口板40bの傾斜は、開口板40aの傾斜より小さい。このように開口板40a〜40dの傾斜を変化させているのは、次の理由による。液滴(残留ターゲット物質)12は、ターゲット物質冷却チャンバ40内を進行するに従って、徐々に冷却され固体になる。従って、液滴(残留ターゲット物質)12がターゲット物質冷却チャンバ40内の下流(図中下方向)において開口板に衝突してしまった場合であっても、衝突により飛沫が発生し難いので、、ターゲット物質冷却チャンバ40内の下流(図中下方向)に配置された開口板の傾斜を小さくしても問題がない。その一方、ターゲット物質冷却チャンバ40内の下流(図中下方向)に配置された開口板の傾斜を小さくすることで、装置全体をコンパクトにすることができるためである。
【0042】
次に、本実施形態に係るEUV光源装置の効果について、先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置と比較しながら説明する。
先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置(図1参照)においては、液滴(残留ターゲット物質)12を冷却固化せずにターゲット物質捕集部13により捕集している。しかしながら、蒸気圧が低いとはいえ、溶融した金属(ターゲット物質)を真空中(EUV生成チャンバ1内)に放置すれば、蒸発したターゲット物質により集光ミラー10が汚染されることが起こり得る。また、ターゲット物質がEUV光源装置の構成部材と接触して固着してしまうことが起こり得る場合には、ターゲット物質が接触する可能性がある部材を加熱しておく必要が生じることも考えられる。そのような場合には、加熱機構、断熱機構が多数必要となり、装置全体のコストの増大を招くことになる。
【0043】
一方、本実施形態に係るEUV光源装置によれば、液滴(残留ターゲット物質)12を冷却固化することで、蒸発したターゲット物質により集光ミラー10が汚染されることを防止することができる。また、溶融したターゲット物質がEUV光源装置の構成部材と接触して固着してしまうことを防止でき、効率的な回収が可能となる。また、ターゲット物質を固化してしまえば、簡単な機械機構でターゲット物質を移動することが可能であり、移動の過程で加熱する必要をなくすこともできる。
【0044】
なお、ここでは、ターゲット物質冷却チャンバ40、不活性ガス供給部41、及び、排気ポンプ42を用いて液滴(残留ターゲット物質)12を冷却固化することとしているが、他の装置を用いて液滴(残留ターゲット物質)12を冷却固化するようにしても良い。
【0045】
図3は、液滴(残留ターゲット物質)12を冷却固化する他の構成例を示す図である。
図3に示すように、このターゲット物質を冷却固化するための装置は、ターゲット物質捕集部51と、板52と、クーラ53と、ワイパー54とを具備する。
【0046】
板52は、液滴(残留ターゲット物質)12の軌道上且つターゲット物質捕集部51内に、傾斜を設けて配置されている。板52には、クーラ53が取り付けられており、板52に付着した液滴(残留ターゲット物質)12は、冷却固化される。ワイパー54は、板52上を摺動可能に配置されており、このワイパー54を摺動させることで、板52上において冷却固化されたターゲット物質を板52から剥離して、ターゲット物質精製槽22(図2参照)に供給することが可能である。
【0047】
図4は、液滴(残留ターゲット物質)12を冷却固化する他の構成例を示す図である。
図4に示すように、このターゲット物質を冷却固化するための装置は、ターゲット物質冷却槽61と、ワイパー62と、ゲートバルブ63と、冷媒リザーバ64と、フィルタ65と、ゲート66と、ターゲット物質捕集部67と、ポンプ68とを具備する。
【0048】
ターゲット物質冷却槽61は、液滴(残留ターゲット物質)12の軌道上に配置され、その内部には、冷媒が注入されている。ターゲット物質冷却槽61に入射した液滴(残留ターゲット物質)12は、冷媒により冷却固化される。その後、ゲートバルブ63を開放すると、ターゲット物質冷却槽61内の冷媒は、冷媒リザーバ64内に排水され、冷却固化されたターゲット物質は、フィルタ65上に残留する。次いで、ゲート66を開放し、ワイパー62を摺動させることで、フィルタ65上に残留したターゲット物質をターゲット物質捕集部67に取出すことができ、その後、ターゲット物質捕集部67内のターゲット物質をターゲット物質精製槽22(図2参照)に供給することが可能である。また、ポンプ68は、冷媒リザーバ64内に排水された冷媒をターゲット物質冷却槽61に再び注入する。これにより、冷媒を繰返し利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、半導体ウエハ等を露光する極端紫外光を発生するLPP型EUV光源装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るLPP型EUV光源装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るLPP型EUV光源装置の構成を示す模式図である。
【図3】液滴(残留ターゲット物質)を冷却固化する装置の他の例の構成を示す模式図である。
【図4】液滴(残留ターゲット物質)を冷却固化する装置の他の例の構成を示す模式図である。
【図5】一般的なLPP型EUV光源装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0051】
1…EUV生成チャンバ、2…ターゲット物質供給部、2a…ノズル、2b、106…ピエゾ素子、3…ピエゾドライバ、4…窓、5、103…レーザ光源、6…集光レンズ、7、32、42、70、105…排気ポンプ、8…レーザ光、9…レーザ光照射点、10…集光ミラー、11、108…液滴、12、110…液滴(残留ターゲット物質)、13、51、67…ターゲット物質捕集部、21、63…ゲートバルブ、22…ターゲット物質精製槽、23…温度センサ、24…ヒータ制御部、25…ヒータ、26…ドーム、27…液面センサ、28…バルブ開閉部、31、41…不活性ガス供給部、33、34、36、43、44、71、72…バルブ、35…精製ターゲット物質流入管、37…配管、40…ターゲット物質冷却チャンバ、40a〜40d、52…板、53…クーラ、54、62…ワイパー、61…ターゲット物質冷却槽、64…冷媒リザーバ、65…フィルタ、66…ゲート、68…ポンプ、101…ノズル、102…プラズマ発生室、104…レンズ、111…ターゲット物質回収筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質にレーザビームを照射することにより極端紫外光を発生する光源装置であって、
極端紫外光の生成が行われる極端紫外光生成チャンバと、
前記極端紫外光生成チャンバ内にターゲット物質として液体状の金属を供給するターゲット物質供給手段と、
前記極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質にレーザビームを照射することによりプラズマを発生させるレーザ光源と、
前記プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光光学系と、
前記極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質を精製して前記ターゲット物質供給手段に供給するターゲット物質精製手段と、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項2】
前記ターゲット物質精製手段が、
前記極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質を貯蔵するターゲット物質槽と、
前記ターゲット物質槽内のターゲット物質を加熱溶融する加熱手段と、
前記加熱手段によって過熱溶融されたターゲット物質を前記ターゲット物質供給手段に供給するための配管と、
を具備する、請求項1記載の極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記ターゲット物質精製手段が、前記ターゲット物質槽を加圧する加圧手段を更に具備する、請求項2記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
前記ターゲット物質供給手段が、ターゲット物質を貯蔵するターゲットリザーバを有しており、
前記ターゲット物質精製手段が、前記加圧手段が前記ターゲット物質槽を加圧するときに前記ターゲットリザーバを減圧する減圧手段を更に具備する、請求項3記載の極端紫外光源装置。
【請求項5】
前記ターゲット物質精製手段が、前記ターゲット物質槽内の不純物をターゲット物質から分離する不純物分離手段を更に具備する、請求項2〜4のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項6】
前記不純物分離手段が、上方向に凸状のドーム形状を有する部材である、請求項5記載の極端紫外光源装置。
【請求項7】
前記極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質を捕集して前記ターゲット物質精製手段に供給するターゲット物質捕集手段を更に具備する、請求項1〜6のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項8】
前記極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質を冷却して前記ターゲット物質精製手段に供給するターゲット物質冷却手段を更に具備する、請求項1〜7のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項9】
前記ターゲット物質冷却手段が、
前記極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質が通過するターゲット物質冷却チャンバと、
前記ターゲット物質冷却チャンバ内を通過しているターゲット物質を冷却するためのガスを前記ターゲット物質チャンバ内に供給するガス供給手段と、
前記ターゲット物質冷却チャンバ内に供給されたガスを排気するガス排気手段と、
を具備する、請求項8記載の極端紫外光源装置。
【請求項10】
前記ターゲット物質冷却チャンバ内に配置され、ターゲット物質が通過する開口を有する少なくとも1つの開口板を更に具備する、請求項9記載の極端紫外光源装置。
【請求項11】
前記開口板が、ターゲット物質の進行方向に向かって傾斜した形状を有する、請求項10記載の極端紫外光源装置。
【請求項12】
複数の前記開口板を具備し、
前記複数の開口板の各々の開口が、当該開口板のターゲット物質の進行方向において隣接する開口板の開口よりも大きく、前記複数の開口板の各々の傾斜が、当該開口板のターゲット物質の進行方向において隣接する開口板の傾斜よりも大きい、請求項11記載の極端紫外光源装置。
【請求項13】
前記ターゲット物質冷却手段が、
前記極端紫外光生成チャンバ内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質の軌道上に配置された部材と、
前記部材に付着したターゲット物質を冷却固化するためのクーラと、
前記部材上において冷却固化されたターゲット物質を前記部材から剥離するための剥離手段と、
を具備する、請求項8記載の極端紫外光源装置。
【請求項14】
前記ターゲット物質冷却手段が、
前記チャンバ内に供給されたターゲット物質の内のレーザビームが照射されなかったターゲット物質を冷却固化するための冷媒が注入されたターゲット物質冷却槽と、
前記ターゲット物質冷却槽内の冷媒を排出する排出手段と、
冷媒によって冷却固化されたターゲット物質を残留させるターゲット物質残留部材と、
前記ターゲット物質残留部材上に残留したターゲット物質を前記ターゲット物質精製手段に供給するための供給手段と、
を具備する、請求項8記載の極端紫外光源装置。
【請求項15】
前記排出手段によって排出された冷媒を前記ターゲット物質冷却槽に注入する注入手段を更に具備する、請求項14記載の極端紫外光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−226462(P2008−226462A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58229(P2007−58229)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】