説明

極端紫外光発生方法及び極端紫外光光源装置

【課題】従来のように電極に大きな熱負荷を与えず、かつ、高精度な制御を必要することなく、EUV放射のロングパルス化を実現すること。
【解決手段】チャンバ1の内部に設けられた第1、第2の電極2a,2b間にパルス電力を供給し電極間に放電チャンネルを形成する。また、レーザ源7から放出されるレーザビームL1が高温プラズマ原料8に照射され、イオン密度が1017〜1020cm-3程度の低温プラズマガスが、電極2a,2b間に形成されている細い放電チャンネルに供給される。低温プラズマガスに放電が作用し電子温度が上昇して高温プラズマとなりEUV放射が開始される。放電チャンネルには上記低温プラズマガスが連続的に供給されるので、ピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果が繰り返し行われEUV放射が継続する。このEUV放射はEUV集光鏡4により集光され、EUV光取出部5より出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長13〜14nm、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)光を放出するための極端紫外光発生方法および極端紫外光光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、その製造用の投影露光装置においては解像力の向上が要請されている。その要請に応えるため、露光用光源の短波長化が進められ、エキシマレーザ装置に続く次世代の半導体露光用光源として、波長13〜14nm、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)光を放出する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置ともいう)が開発されている。
【0003】
EUV光源装置において、EUV光を発生させる方法はいくつか知られているが、そのうちの一つにEUV放射種の加熱励起により高温プラズマを発生させ、このプラズマから放射されるEUV光を取り出す方法がある。
このような方法を採用するEUV光源装置は、高温プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式EUV光源装置とDPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式EUV光源装置とに大きく分けられる。(例えば非特許文献1参照)
LPP方式EUV光源装置は、固体、液体、気体等のターゲットをパルスレーザで照射して発生する高温プラズマからのEUV放射光を利用するものである。
一方、DPP方式EUV光源装置は、電流駆動によって生成した高温プラズマからのEUV放射光を利用するものである。
【0004】
また、近年は、EUV発生用高温プラズマ原料(以下、高温プラズマ原料ともいう)に対し、レーザビームの照射による気化と、放電に基づく大電流による加熱とを組み合わせて高温プラズマを生成し、当該高温プラズマからEUV放射を発生させる方式が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。以下この方式をLAGDPP(Laser Assisted Gas Discharge ProducedPlasma)方式と称する。
【0005】
上記した各方式のEUV光源装置において、波長13.5nmのEUV光を放出する放射種、すなわち、高温プラズマ原料として、現在10価前後のXe(キセノン)イオンが知られているが、より強い放射強度を得るための高温プラズマ原料としてLi(リチウム)イオンとSn(錫)イオンが注目されている。例えば、Snは、高温プラズマを発生させるための入力エネルギーに対する波長13.5nmのEUV光放射強度の比である変換効率がXeより数倍大きい。
【0006】
次に、図20を用いて、上記した各方式に基づくEUV放射にいたるメカニズムを簡単に説明する。
図20は、高温プラズマ原料(図20では例として燃料固体と記載されている)が、どのような状態変化の経路をとってEUV放射の条件を満足する条件に達するかを示す図である。
同図において、縦軸はイオン密度(cm-3)であり、横軸は電子温度(eV)である。同図は、縦軸を下方向に進むと、高温プラズマ原料は膨張してイオン密度が減少し、上方向に進むと圧縮されイオン密度が増加することを示している。また、横軸を右方向に進むと、高温プラズマ原料は加熱されて電子温度が上昇することを示している。
【0007】
LPP方式では、例えばSnやLiといった高温プラズマ原料の固体や液体等のターゲット(図20左上に燃料固体として示す。固体状態においては、SnやLiといった金属のイオン密度はおよそ1022cm-3であり、電子温度は1eV以下である)に対して強いレーザビームを照射する。レーザビームが照射された高温プラズマ原料は、例えば電子温度が300eVを越えるまで一気に加熱されて気化し、高温プラズマが生成される。生成された高温プラズマは膨張して、やがて高温プラズマ内のイオン密度は1017〜1020cm-3程度、電子温度が20〜30eV程度となる。このような状態に到達した高温プラズマからは、EUVが放射される。(図20の経路1)
すなわち、LPP方式では、レーザビームで加熱されて生成したプラズマが膨張することにより、当該プラズマは、上記したようなEUV放射条件(すなわち、イオン密度1017〜1020cm-3、電子温度が20〜30eV)を充足する。
【0008】
一方、DPP方式では、例えば内部に電極が配置された放電容器内をガス状の高温プラズマ原料雰囲気とし、当該雰囲気中の電極間において放電を発生させて初期プラズマを生成する。
例えば高温プラズマ原料であるSnは、スタナン(SnH4 )という気体状態で放電容器内に供給され、放電により初期プラズマが形成される。初期プラズマにおけるイオン密度は、例えば、1016cm-3程度、電子温度は、例えば、1eV以下程度であり、上記したようなEUV放射条件(すなわち、イオン密度1017〜1020cm-3、電子温度が20〜30eV)を充足していない(図20のピンチの初期状態)。
ここで、放電により電極間を流れる直流電流の自己磁場の作用により、上記した初期プラズマは放電流路径方向に収縮される。これにより初期プラズマの密度は高くなり、プラズマ温度も急激に上昇する。このような作用を、以下ピンチ効果と称する。ピンチ効果による加熱によって、高温となったプラズマのイオン密度は1017〜1020cm-3、電子温度は20〜30eV程度に到達し、この高温プラズマからEUVが放射される。(図20の経路2)
すなわち、DPP方式では、生成したプラズマが圧縮されることにより、当該プラズマは、上記したようなEUV放射条件(すなわち、イオン密度1017〜1020cm-3、電子温度が20〜30eV)を充足する。
【0009】
また、LAGDPP方式では、固体や液体等のターゲット(高温プラズマ原料)に対してレーザビームを照射し、原料を気化してガス状の高温プラズマ原料雰囲気(初期プラズマ)を生成する。DPP方式同様、初期プラズマにおけるイオン密度は、例えば、1016cm-3程度、電子温度は、例えば、1eV以下程度であり、上記したようなEUV放射条件(すなわち、イオン密度1017〜1020cm-3、電子温度が20〜30eV)を充足していない(図20のピンチの初期状態)。その後、放電電流駆動による圧縮と加熱によって、高温となったプラズマのイオン密度は1017〜1020cm-3、電子温度は20〜30eV程度に到達し、この高温プラズマからEUVが放射される。
LAGDPPの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されている。いずれも、レーザ照射にて高温プラズマ原料を気化して「冷たいプラズマ」を生成し、放電電流によるピンチ効果を用いて高温プラズマを生成し、当該高温プラズマからEUVを放射させることが記載されている。すなわち、従来例によれば、LAGDPP方式における放電電流駆動による加熱は、DPP方式と同様、ピンチ効果が利用されている。すなわち、図20において、経路3→経路2を経由してEUV放射条件を充足する高温プラズマが形成される。
【0010】
LPP方式の場合、高温プラズマ原料にレーザビームを照射して生成された高温プラズマは短時間のうちに膨張が進み冷却される。したがって、EUV放射条件に達した高温プラズマは、短時間(例えば10ns)の内に冷却されてEUV放射条件を充足しなくなり、プラズマからのEUV放射が停止する。
一方、DPP方式やLAGDPP方式の場合は、上記したように、放電電極間にパルス状の放電電流が流れ、高温プラズマ原料の初期プラズマは、ピンチ効果により圧縮加熱されてEUV放射条件に達する。
しかし、放電流路径方向に収縮された高温プラズマは、放電電流の急速な減少に伴い短時間の内に放電流路方向に急激に膨張してピンチ効果が消失し、密度が低下するとともに冷却される。その結果、放電領域におけるプラズマは、EUV放射条件を充足しなくなるので、プラズマからのEUV放射が停止する。
【0011】
なお、電極間における放電は、比較的広い領域でのレーザトリガによる真空アーク放電から開始され、高温プラズマ原料料供給にともないガス放電(ピンチ放電も含む)に移行する。その後、放電コラム(プラズマ柱)が形成されるが、本明細書では「放電領域」とは、そのすべての放電現象を含む空間と定義する。
また、上記の放電領域内において、放電が放電コラム(プラズマ柱)の成長にともない内部の電流密度が増大しガス放電へと移行する際、放電コラムの中で放電駆動電流が支配的に流れている電流密度の高い空間領域を「放電チャンネル」(以下では放電経路あるいは放電電流経路ともいう)と定義する。
【0012】
次に、EUV放射のロングパルス化について説明する。
上記したように、EUV放射は短時間の内にパルス状に発生する。よって、エネルギー変換効率は著しく小さい。半導体露光用光源としてEUV光源装置を使用する場合、EUV光源装置には、できるだけ高効率と高出力を両立した稼動が求められる。高効率のEUV発生条件を長時間維持することができれば高効率高出力のEUV光源が可能となる。結果として、発光パルス幅のロングパルス化が期待される。
特許文献4、特許文献5には、DPP方式のEUV発生装置において、EUV放射をロングパルス化する方法が開示されている。以下、特許文献4、5に基づき、従来のロングパルス化方法について、図21、図22を用いて説明する。
図21、図22は、いずれも、放電開始からの経過時間に対して、(a)プラズマ電流I、(b)プラズマ柱の半径r、(c)EUV放射出力の関係を示した図であり、横軸に時間、縦軸にプラズマ電流I、プラズマ柱の半径r、EUV放射出力を示すものである。 特許文献4、5におけるEUV放射のロングパルス化は、DPP方式のEUV発生装置において、プラズマの加熱および圧縮工程と高温高圧状態の維持工程とを分離して制御することにより実現される。
【0013】
従来のDPP方式においては、図21に示すように、一対の電極間に形成された一様なプラズマ柱の内部を流れるプラズマ電流Iの波形は、放電開始後時間経過とともに増加し、ピークを過ぎると減少する波形である。以下、理解を容易にするため、電流Iの波形を正弦波形とする。
プラズマ電流Iの増大とともにプラズマの加熱および圧縮が発生する。すなわち、発生したプラズマ柱の半径rは、プラズマ電流Iが流れるにつれてピンチ効果により徐々に小さくなり、プラズマ電流Iの値がピークを越えて下がり始めた時に最小になる。
プラズマ電流Iの波形のピーク近傍で、プラズマ温度およびイオン密度が所定の範囲内(例えば図20に示すように、電子温度が5〜200eV、イオン密度が1017〜1020cm-3程度)に到達している期間Aの間、EUV放射が発生する。
しかしながら、プラズマ電流Iの波形のピークを過ぎると、電流値が時間経過とともに減少するので、ピンチ効果も弱まり、プラズマが膨張しプラズマ温度が低下する。膨張するプラズマは大きな運動エネルギーを有し、放電領域から速やかに離脱する。
結果として、EUV放射は終了する。EUV放射の持続時間は、例えば、わずか10ns程度である。
【0014】
一方、特許文献4、5に記載の方法は、一対の電極間を流れるプラズマ電流Iの波形が図22に示すような波形となるように構成するものである。すなわち、プラズマ電流Iの波形を、放電開始後時間経過とともに増加し、ピークを過ぎた近傍(例えば、プラズマがピンチされてEUV放射が開始する時点近傍)で、さらに時間経過とともに増加するようにしたものである。
図22に示すように、プラズマ電流Iの波形は、加熱電流波形部(M)とそれに続く閉じ込め電流波形部(N)とからなるように構成される。加熱電流波形部(M)は、図21に示すプラズマ電流Iの波形とある時点まで同等である。図22では、理解を容易にするために、加熱電流波形部(M)は正弦波形として示される。
【0015】
加熱電流波形部(M)の期間内では、プラズマ電流Iの増大とともにプラズマの加熱および圧縮が発生する。すなわち、発生したプラズマの半径rは、プラズマ電流Iが流れるにつれてピンチ効果により徐々に小さくなり、プラズマ電流Iの値がピークを越えて下がり始めた時に最小になる。プラズマ電流Iの波形のピーク近傍で、プラズマ温度およびイオン密度が所定の範囲内(例えば図20に示すように、電子温度が5〜200eV、イオン密度が1017〜1020cm-3程度)に到達し、EUV放射が発生する。
EUV放射が発生後、プラズマ電流Iの波形は、閉じ込め電流波形部(N)に移行する。
上記したように、ピンチ効果により圧縮されたプラズマは、大きな運動エネルギーにて膨張しようとする。ここで、プラズマ電流Iの強さを大きくして自己磁場の作用を強力にすると、膨張しようとするプラズマを圧縮状態に維持することが可能となる。
【0016】
上記したようなピンチ状態にあるプラズマの圧力をPpp、プラズマの密度をnpp、ボルツマン係数をk、プラズマの温度をTppとするとき、ピンチ状態のプラズマの圧力Pppは、nppkTppに比例する。
pp∝nppkTpp (1)
一方、プラズマ電流Iが作る自己磁場Bによる圧縮圧力PB は、真空中の透磁率をμ0 、プラズマ半径をrとするとき、
B =μ0 2 /2πr (2)
となる。ここで、
B ≧Ppp (3)
なる条件を満たせば、プラズマはピンチ状態が維持される。ここで、ピンチ状態のプラズマは、プラズマ密度nppおよびプラズマ温度Tppが大きい高密度高温プラズマとなっているので、(3)式を成立するためには、プラズマ電流Iを大きくする必要がある。
【0017】
すなわち、プラズマがピンチされてからプラズマ電流Iを増大させて、その後電流値を一定に維持することにより、ピンチ効果を維持して、プラズマ温度およびイオン密度が所定の範囲内にある状態(プラズマ半径が小さい状態)を維持する。
理論的には、プラズマ温度およびイオン密度が所定の範囲内にある状態が維持されている間(図22の期間B)は、EUV放射は継続される。すなわち、EUV放射のロングパルス化が可能となる。
図22では、プラズマがピンチされてプラズマ半径が最小となる時点を、加熱電流波形部(M)から閉じ込め電流波形部(N)への移行点とした例が示されている。
【0018】
なお、実際には、加熱電流波形部(M)のピークを越えるような電流値ピークを維持する閉じ込め電流波形部(N)を有するプラズマ電流Iであっても、流体不安定性の成長によるプラズマ柱の崩壊などの理由により高温プラズマを長時間圧縮した状態で維持するのは難しい。そのため、閉じ込め電流波形部(N)はやがて時間の経過とともに減少し、ピンチ効果も弱まり、プラズマが膨張し、プラズマ温度が低下する。結果として、EUV放射は終了する。特許文献4の例では、EUV出力の維持時間(高温プラズマの維持時間)を30ns程度にロングパルス化することができたと記載されている。
【0019】
図23は、特許文献4、5に記載されたEUV放射のロングパルス化方法を実現するためのDPP方式EUV光源装置の構成例である。
放電容器であるチャンバ1内に、原料供給・排気ユニット12より高温プラズマ原料が導入される。高温プラズマ原料は、チャンバ1内の高温プラズマ発生部3で波長13.5nmのEUV放射を放出する放射種を形成するための原料であり、例えば、キセノン(Xe)やSn蒸気などである。導入された高温プラズマ原料はチャンバ1内を流れてガス排出口6に到達する。
原料供給・排気ユニット12は、真空ポンプ等の排気手段(不図示)を有しており、排気手段は、チャンバのガス排出口6と接続されている。
すなわちガス排出口6に到達した高温プラズマ原料は、原料排気・供給ユニット12が具える排気手段により排気される。
【0020】
チャンバ1内にはリング状の第1の主放電電極(カソード)2aと第2の主放電電極(アノード)2bとが絶縁材2cを介して配置される。チャンバ1は導電材で形成された第1の主放電電極側の第1の容器1aと、同じく導電材で形成された第2の主放電電極側の第2の容器1bから構成される。これらの第1の容器1aと第2の容器1bとは、上記絶縁材により分離、絶縁されている。
チャンバ1の上記第2の容器1bと第2の主放電電極2bは接地され、上記第1の容器1aと第1の主放電電極2aには、高電圧パルス発生部11からおよそ−5kV〜−20kVの電圧が印加される。その結果、リング状の第1、第2の各主放電電極2a,2b間の高温プラズマ発生部3には、放電が発生し、上記したようなピンチ効果により高温プラズマが生成され、この高温プラズマから波長13.5nmのEUV放射が発生する。発生したEUV放射は、第2の主放電電極2b側に設けられたEUV集光鏡4により反射され、EUV光取出部5より図示しない照射部に出射される。
【0021】
ところで、図22の(a)に示すプラズマ電流(放電電流)波形は、例えば、以下のようにして得られる。正弦波形を有する電流に、他の正弦波形ではない他の電流を重畳させる。すなわち、加熱電流波形部(M)を有する電流に、加熱電流波形部(M)とは異なるパターンの電流を重畳して、閉じ込め電流波形部(N)を形成する。
このような電流波形を得るために、高電圧パルス発生部11を、例えば、図23のように独立したスイッチング素子SW1、SW2を有する放電回路部を並列に構成する。
【0022】
図23に示す高電圧パルス発生部11は、コンデンサC1、スイッチSW1の直列回路からなる放電回路部A1と、コンデンサC2、スイッチSW2の直列回路から放電回路部A2とが、負荷(第1の主放電電極2a、第2の主放電電極2b)に対して並列に接続されて構成される。ここで、高電圧電源CHはコンデンサC1,C2を充電するためのものである。また、コイルL1は、コンデンサC1の寄生インダクタンスおよびコンデンサC1、スイッチSW1、負荷が作る回路ループのインダクタンスを合成したインダクタンス成分を表している。同様に、コイルL2は、コンデンサC2の寄生インダクタンスおよびコンデンサC2、スイッチSW2、負荷が作る回路ループのインダクタンスを合成したインダクタンス成分を表している。また、各ダイオードD1 、D2 は、各コンデンサC1、C2に蓄えられた電気エネルギーが負荷にのみに移行するように電流方向を規制するためのものである。
【0023】
図23に示す高電圧パルス発生部は、以下のように動作する。まず高電圧電源CHにより、各ダイオードD1 、D2 を介して各放電回路部のコンデンサC1,C2を充電する。次に、放電回路部1の第1のスイッチSW1をONにして第1のコンデンサC1に蓄えられた電気エネルギーを第1の主放電電極2a、第2の主放電電極2b間に印加して放電を開始する。このとき、第1の放電電極2aと第2の放電電極2b間に流れる電流は、プラズマのピンチに用いられる。すなわち、ピンチ効果によるジュール加熱によって、高密度高温プラズマが生成される。この電流は、図22(a)の波形においては加熱電流波形部(M)に相当する。
【0024】
次いでプラズマのピンチ効果により波長13.5nmのEUV光の放出が開始した時点で、放電回路部A2の第2のスイッチSW2をONにして第2のコンデンサC2に蓄えられた電気エネルギーを第1の主放電電極2a、第2の主放電電極2b間に印加にすると、第1の放電電極2aと第2の放電電極2b間に流れる電流に、第2のコンデンサC2からの電流が加算される。この電流が高温高密度プラズマのピンチ状態を維持するための電流として用いられる。図22(a)の波形においては、閉じ込め電流波形部(N)に相当する。
なお、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2の制御、原料供給・排気ユニット12の制御は、メインコントローラ21により行われる。メインコントローラ21は、露光機の制御部22からの動作指令信号に基づき、上記制御要素を制御する。
【0025】
【非特許文献1】「リソグラフィ用EUV(極端紫外)光源研究の現状と将来展望」J.PlasmaFusionRes.Vol.79.No.3,P219−260,2003年3月
【特許文献1】特表2007−515741号公報
【特許文献2】特表2007−505460号公報
【特許文献3】国際公開第2005/101924パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/120942パンフレット
【特許文献5】特開2007−123138号公報
【特許文献6】特表2002−504746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上記した従来技術のEUV放射のロングパルス化方法において、特許文献4、5に示されるEUV放射のロングパルス化は、DPP方式のEUV発生装置において、プラズマの加熱および圧縮工程と高温高圧状態の維持工程とを分離して制御することにより実現される。
すなわち、プラズマのピンチ状態を維持するために、図22(a)に示すように、従来のDPP方式と比較して、プラズマがピンチ状態に到達後のプラズマ電流Iの値が、プラズマがピンチ状態に到達する前のプラズマ電流Iの値より大きくなるように、放電空間にエネルギーを供給する必要がある。
【0027】
EUV放射の終了後、放電空間に供給したエネルギーは熱に変換される。従来のロングパルス化方法を採用したDPP方式のEUV発生装置においては、プラズマのピンチ状態を維持するために、ロングパルス化技術を採用しない一般的なDPP方式より大きな放電電流が流れる。そのため、このようなEUV発生装置では、従来のDPP方式のEUV発生装置と比較して、電極への熱入力が大きくなってしまう。そのため、電極の一部が溶融、蒸発し、もしくはスパッタされてデブリとなり、当該デブリがEUV集光鏡にダメージを与えるという問題が発生しやすくなる。
【0028】
また、プラズマのピンチ状態を維持するために、図22(a)に示すようにプラズマ電流Iの波形を変化させる必要がある。ここで、図22(a)に示すプラズマ電流Iの波形の加熱電流波形部(M)によって、プラズマが高温の状態にピンチされている時間は約10nsであり、ピンチ状態を維持するためには、この期間内にプラズマ電流Iの波形の閉じ込め電流波形部(N)が生成されるようにプラズマ電流Iを流す必要がある。
すなわち、電流波形の閉じ込め電流波形部(N)が生成するための電流を流す時間の許容誤差は約10ns以下としなければならず、スイッチSW1,SW2の動作タイミングの同期には、高精度な制御が要求される。
【0029】
本発明は上記のような事情を鑑みなされたものであって、その課題は、従来のように電極に大きな熱負荷を与えず、かつ、高精度な制御を必要することなく、EUV放射のロングパルス化を実現することが可能な極端紫外光発生方法および極端紫外光光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の極端紫外光発生方法(EUV放射発生方法)は、基本的にはDPP方式を採用する。しかし、従来のようにピンチ効果によるプラズマの圧縮状態を維持するために大電流を放電領域に流すことなく、上記したようなEUV放射条件(すなわち、イオン密度1017〜1020cm-3、電子温度が20〜30eV程度)を充足する高温プラズマを維持して、EUV放射のロングパルス化を実現するものである。
【0031】
図1を用いて、本発明のDPP方式における高温プラズマ生成について説明する。なお、図1の縦軸と横軸は図20と同様である。
放電領域外に配置された固体や液体の高温プラズマ原料(図1では、例として燃料固体と記載されている)に対して、エネルギービームを照射する。エネルギービームとしては、例えば、レーザビームを使用する。以下、レーザビームを例にとって説明する。
レーザビームが照射された固体や液体の高温プラズマ原料は、加熱されて気化し、放電領域のあらかじめ形成されている放電チャンネルに達する。ここで、気化した高温プラズマ原料は、放電領域に達した時のプラズマ内のイオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度の低温プラズマガスとなるように、レーザビームの照射エネルギーを適宜設定しておく。すなわち、高温プラズマ原料にレーザビームを照射することにより、プラズマ内のイオン密度はEUV放射条件を充足するが電子温度が低温であるような低温プラズマガスを形成する。(図1の経路(I))
【0032】
上記低温プラズマが、電極間の放電領域にあらかじめ形成されている放電チャンネルに供給され、当該低温プラズマが放電電流により加熱される。ここで、低温プラズマガスのイオン密度に関しては既にEUV放射条件を充足しているので、従来のDPP方式のようなピンチ効果による圧縮の効果は小さくてよい。すなわち、電極間を流れる電流は、主として低温プラズマの加熱のみに寄与する。加熱によりプラズマの電子温度が20〜30eVに到達し、EUV放射条件となった高温プラズマからEUVが放射される(図1の経路(II))。
【0033】
ここで、上記した低温プラズマガスを、あらかじめ電極間に形成しておいた放電チャンネルに連続的に供給することにより、EUV放射のロングパルス化を実現することが可能となる。以下、図2、図3を用いて、ロングパルス化方法について説明する。
なお、図2はマルチピンチ方式、図3は非ピンチ方式の場合をそれぞれ示す。
【0034】
図2はマルチピンチ方式の場合のプラズマ電流、低温プラズマ半径、EUV放射を説明する図である。
電極間に電力を供給し、t=t0 の時点で(トリガをかけることにより)真空放電が開始し電流が流れ始め、放電チャンネル(放電電流経路)が形成される(図2(a))。電流Iが後述する閾値Ipに到達した時点tpにおいて、放電チャンネルの断面サイズは、電流の自己磁場の影響を受け細くなっている。
一方、上記した時点tpにおいて、レーザビームが照射され気化した高温プラズマ原料(すなわち、EUV放射条件に相当するイオン密度であって電子温度の低い低温プラズマガス)が放電領域を流れる細い放電チャンネルに選択的に到達するようにする。
ここで、電流の閾値Ipは、電流の自己磁場による圧縮圧力をPB 、プラズマの圧力Pp とするとき、
B ≫Pp (4)
となるように設定される。すなわち、自己磁場により低温プラズマガスを十分圧縮可能な電流値としておく。
なお、上記閾値Ipは、低温プラズマガス(プラズマ内のイオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)の電子温度を20〜30eVもしくはそれ以上に加熱することが可能なエネルギーを有する電流値でもある。
【0035】
上記した細い放電チャンネルに選択的に供給される低温プラズマは、上記したように、固体または液体状の高温プラズマ原料にレーザビームを照射することにより生成される。レーザビームの照射条件は、放電領域外に配置された高温プラズマ原料から放電領域までの距離等に基づき適宜設定される。照射エネルギーは、固体または液体状の高温プラズマ原料を気化させるが、電子温度をあまり上昇させない程度のエネルギーであり(※図1に示すように、レーザ照射により電子温度は若干上昇している)、例えば105 W/cm2 〜1016W/cm2 の範囲である。
このようなレーザビームを固体または液体状の高温プラズマ原料に照射することにより、EUV放射条件に相当するイオン密度であって電子温度の低い高温プラズマ原料(低温プラズマガス)を、10μs程度の期間連続的に電極間に供給することができる。
一般に、従来のDPP方式、LAGDPP方式における放電持続時間は、2μs程度である。すなわち、従来の放電持続時間と比較すると、上記した低温プラズマガスの供給は定常的な連続供給と見なすことができる。
【0036】
低温プラズマガスが上記した細い放電チャンネルに選択的に到達するように、レーザビームの照射条件、高温プラズマ原料の配置等の条件を適宜調整する。このような調整により、指向性が良好な気化した高温プラズマ原料(低温プラズマガス)フローを構成して、当該フローが細い放電チャンネル付近に集中して供給されるよう設定する。このように構成することにより、低温プラズマガスが細い放電チャンネルに対して選択的に連続供給される。
なお、固体または液体の高温プラズマ原料を放電領域内に配置したのでは、放電によるエネルギーが高温プラズマ原料に直接作用し、高温プラズマ原料を気化させる条件が刻々と変化する。そのため、EUV放射条件に相当するイオン密度であって電子温度の低い低温プラズマガスを細い放電チャンネルに対して選択的に連続供給することができない。
【0037】
細い放電チャンネルに供給された低温プラズマガスは、閾値Ip以上の値の電流によるピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果により加熱されて高温プラズマとなり、この高温プラズマからEUVが放射される。
ここで、EUVの放射は、図1の(II)の経路を経て実現されるので、ピンチ効果による圧縮作用は小さく、自己磁場による閉じ込め効果とジュール加熱による加熱工程が占める割合が大きくなる。すなわち、従来のDPP方式、LAGDPP方式のような大電流ではなく、比較的小電流を放電領域に流してもEUV放射が可能となる。また、従来のように、放電電流の高速短パルス化を実施せずとも、効率的にプラズマにエネルギーを入力(すなわち、加熱)することが可能となる。よって、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能となる。
【0038】
さて、圧縮されていた上記高温プラズマは、最大圧縮直後に放電チャンネル軸方向のプラズマ密度勾配に沿って押し出され、主として放電チャンネルの軸方向に離脱する。同時に放電チャンネルは径方向に広がり、その結果、急激に放電チャンネル内部のプラズマ密度と電子温度が下がる。従来はこの時点でEUV放射が終了していた。
しかしながら、上記したように、放電チャンネルの周囲には、低温プラズマガスの定常流が存在するので、放電チャンネル内のプラズマ密度が下がった空間に、時間差なく低温プラズマガスが供給されてくる。よって、放電チャンネルの径がそれほど広がらないうちに、ピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果により、放電チャンネルが再び細くなり、低温プラズマガスが加熱され、上記したようなメカニズムでEUV放射が継続する。(図2の(b)(c))
【0039】
このようなピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果の繰り返しは、放電電流が継続している間持続する。
なお、上記したように、本発明においては電流の高速短パルス化を必要としないので、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能となる。すなわち、連続的にピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果の繰り返しを長期間維持することができるので、EUV放射のロングパルス化を実現することができる。なお、連続的なピンチ効果を利用する本方式を、以下、マルチピンチ方式と呼ぶことにする。
【0040】
従来のピンチ効果を利用したDPP方式は、低いイオン密度の高温プラズマ原料ガスが放電領域に供給される。(図1のピンチの初期状態)。低密度ガスは、放電容器(放電領域)全体に一様に充満している。低密度ガス雰囲気で放電によって生成する初期プラズマによる放電チャンネルは初期状態では放電容器の径程度に太いので、ピンチ効果により放電チャンネルを細くし、初期プラズマを高温プラズマとするためには、大パワーの電流パルスが必要となる。また、放電によるプラズマへのエネルギー入力効率を高くするためには、放電電流の高速短パルス化が行わなければならない。従って、EUV放射は1回のピンチ効果をもって終了し、EUV放射のパルス幅はせいぜい200ns程度となる。(図20の経路2)
【0041】
また、従来のDPP方式では、1回目のピンチが終了し、放電チャンネル内部のプラズマ密度が下がった領域に、放電容器内の低密度ガス(高温プラズマ原料)が侵入してくるので、放電チャンネルは太くなり、1回目のピンチ効果における初期状態のときの放電チャンネルの径まで戻る。よって、仮にマルチピンチを実施しようとすると、1回目のピンチのときと同様、大電流が必要となる。実際は、上記したように、放電電流は高速短パルスであるので、1回目のピンチ終了後の残り時間で、2回目のピンチを実施することは不可能となる。
LAGDPP方式においても、ピンチ効果を使用しており、図20の経路3を経て、経路2を経由してEUV放射が発生する。すなわち、高温プラズマ原料へのレーザ照射により、低密度の高温プラズマ原料ガスが放電領域に供給される。
以下、DPP方式のときと同様、低密度ガス雰囲気で放電により初期プラズマが生成され、ピンチ効果により初期プラズマを高温プラズマとするために、大パワーの電流パルスが必要となり、また、放電電流の高速短パルス化を実現する必要がある。よって、EUV放射は1回のピンチ効果をもって終了する。
【0042】
また、特許文献3にあるように、LAGDPP方式では、レーザビームの照射による高温プラズマ原料ガスの放出後に放電を発生させているので、加熱されずに放電領域から離脱する高温プラズマ原料ガスの割合が大きくなり、効率的ではない。
すなわち、従来のDPP方式、LAGDPP方式において、EUV放射のロングパルスを実現するためには、特許文献4もしくは特許文献5のように、プラズマの加熱および圧縮工程と圧縮維持工程とを分離して制御し、プラズマがピンチ状態に到達後のプラズマ電流の値が、プラズマがピンチ状態に到達する前のプラズマ電流の値より大きくなるように、放電空間にエネルギーを供給するような方法を採用せざるを得ない。
【0043】
ところで、電流の自己磁場による圧縮圧力をPB 、プラズマの圧力Pp とするとき、電流の閾値を、
B ≧Pp (5)
となるような値Ip2に設定し、自己磁場により低温プラズマガスを弱く圧縮する(低温プラズマガスが膨張してイオン密度が減少しない程度に維持される)ような電流値とした場合においても、EUV放射のロングパルス化を実現できる。
なお、上記閾値Ip2は、低温プラズマガス(プラズマ内のイオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)の電子温度を20〜30eVもしくはそれ以上に加熱することが可能なエネルギーを有する電流値でもある。
【0044】
図3は非ピンチ方式の場合のプラズマ電流、低温プラズマ半径、EUV放射を説明する図であり、以下、図3を用いて非ピンチ方式について説明する。
電極間に電力が供給され、t=t0 の時点で放電が開始し電流が流れ始める(図3(a))。電流Iが閾値Ip2に到達した時点tpにおいて、放電チャンネルの断面サイズは、電流の自己磁場の影響を受け細くなっている。なお、マルチピンチ効果を使用する場合の電流の閾値Ipと上記閾値Ip2を比較すると、Ip>Ip2となるので、放電チャンネルの断面サイズは、マルチピンチ効果を使用する場合よりは大きい。
一方、上記した時点tpにおいて、マルチピンチ効果を使用する場合と同様、EUV放射条件に相当するイオン密度であって電子温度の低い低温プラズマガスが放電領域を流れる細い放電チャンネルに選択的に到達するようにする。なお、上記と同様、低温プラズマガスは、細い放電チャンネルに対して選択的に連続供給されるように構成する。
【0045】
細い放電チャンネルに供給された低温プラズマガスは、閾値Ip2以上の値の電流により、ほとんど圧縮されることなく、当該低温プラズマガスが膨張してイオン密度が減少しない程度に維持された状態で加熱されて高温プラズマとなり、この高温プラズマからEUVが放射される。すなわち、低温プラズマガスのイオン密度は当初からEUV放射条件を満足しているので、イオン密度を維持しながら加熱することにより、EUVの放射が実現される、(図1の(II)の経路)
よって、従来のDPP方式、LAGDPP方式のような大電流ではなく、比較的小電流を放電領域に流してもEUV放射が可能となる。また、従来のように、放電電流の高速短パルス化を実施せずとも、効率的にプラズマにエネルギーを入力(すなわち、加熱)することが可能となる。よって、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能となる。
【0046】
ここで、放電チャンネルの周囲には低温プラズマガスの定常流が存在するので、放電チャンネルには、所定のイオン密度を有する低温プラズマガスが定常的に供給される。よって、放電電流が継続している間、放電チャンネル内で低温プラズマガスの加熱が維持され、EUV放射が継続する。(図3の(b)(c))
この場合においても、電流の高速短パルス化を必要としないので、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能となる。すなわち、連続的な低温プラズマガスの加熱および高温プラズマの生成を長期間維持することができるので、EUV放射のロングパルス化を実現することができる。
本方式では、電流の閾値Ip2を、自己磁場により低温プラズマガスを弱く圧縮する(低温プラズマガスが膨張してイオン密度が減少しない程度に維持される)ような電流値としているので、低温プラズマは、見かけ上収縮せずに加熱されて、高温プラズマとなる。よって、本方式を以下、非ピンチ方式と呼ぶことにする。
【0047】
ここで、前述したマルチピンチ方式であるか非ピンチ方式であるかは、駆動電流値が同じであれば放電チャンネルの太さにより定まり、放電電極の形状、照射するレーザ光のビーム径等を選択して、放電チャンネルが細くなるようにすればマルチピンチ方式となり、放電チャンネルが太くなるようにすれば非ピンチ方式となる。
なお、非ピンチ方式においては、放電チャンネルの径がマルチピンチ方式よりも大きいので、高温プラズマのサイズもマルチピンチ方式より大きくなる。すなわち、EUV放射源としてのサイズがマルチピンチ方式より大きくなるので、本発明を露光用EUV光源装置に適用する場合は、非ピンチ方式よりもマルチピンチ方式を採用したほうが、EUV放射源のサイズをより小さくできるので好ましい。
【0048】
EUV光の取り出しをマルチピンチ方式で行う場合、同等のエネルギー変換効率で同等のEUV出力を1回のピンチで取り出す場合と比べて、一回のピンチにおけるピークパワー入力が小さくなる。従って、電極へのピークパワー入力を抑えることが可能になり、電極のスパッタリングによるデブリ発生を低減させることができる。また、一回のピンチにおけるEUVの発光に寄与するイオンの数は少ない。従って光源サイズを小さくできるので、露光光学系の設計において有利になる。
【0049】
以上のように、本発明においては、以下のようにしてEUV放射のロングパルス化を実現する。
(i)あらかじめ、放電領域に細い放電チャンネルを生成する。
(ii)放電領域外で、固体または液体の高温プラズマ原料にエネルギービームを照射して気化させ、EUV放射条件に相当するイオン密度あって電子温度の低い低温プラズマガス(図1の燃料蒸気:イオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)を形成する。
(iii)そして、放電電流の値が所定の閾値(IpまたはIp2)に到達した時点で、上記低温プラズマガスが上記細い放電チャンネルに到達するように、細い放電チャンネルに対して、選択的に低温プラズマガスの定常流を供給する。その結果、低温プラズマに放電が作用して電子温度が上昇し、図1の経路IIを通過して、EUV放射条件を満たした高温プラズマが形成されEUV放射が発生する。
(iv)ここで、あらかじめ形成した放電チャンネルに対して低温プラズマガスを供給するので、放電電流パルスは大電流・高速短パルスである必要はなく、電流パルスを従来の電流パルスより立ち上がりの遅いロングパルスとしても差し支えない。EUV放射は、ある程度細い放電チャンネルが持続する間、継続する。よって、放電電流パルスが従来のDPP方式、LAGDPP方式より長くなるように放電回路を構成して放電電流パルスをロングパルス化することにより、細い放電チャンネルの持続時間を従来と比較して長くすることが可能となり、その結果EUV放射のロングパルス化が実現される。
(v)なお、マルチピンチ方式とし、電流の閾値をIpとなるように設定したときは、放電電流パルスが継続している時間内において、細い放電チャンネルの径は脈動するものの相対的に細い状態に保たれたまま、低温プラズマのピンチが繰り返し行われ、EUV放射が発生する。
また、非ピンチ方式として、電流の閾値をIp2となるように設定したときは、放電電流パルスが継続している時間内において、細い放電チャンネルの径はマルチピンチ方式の場合よりは太いものの相対的に細い状態に保たれたまま、低温プラズマの加熱が持続し、EUV放射に必要なプラズマの温度および密度が維持されて、EUV放射が発生する。
なお、非ピンチ方式においては、前述したように、放電チャンネルの径がマルチピンチ方式よりも大きいので、高温プラズマのサイズもマルチピンチ方式より大きくなる。
【0050】
以上に基づき、本発明においては、次のようにして前記課題を解決する。
(1)放電領域外で、原料に原料気化用エネルギービームを照射して気化させ、該気化させた原料ガスに放電によってエネルギーを注入して高温プラズマを生成し、該高温プラズマから極端紫外光を発生させる方法において、放電領域に放電経路(放電チャンネル)を形成し、該形成された放電経路に、前記気化させた原料ガスを供給して、高温プラズマを生成する。
(2)上記(1)において、放電経路(放電チャンネル)に放電経路固定用エネルギービームを照射し、該エネルギービームにより放電経路を固定する。
(3)上記(1)(2)において、放電経路(放電チャンネル)に供給される原料ガスのイオン密度を、極端紫外光放射条件におけるイオン密度にほぼ等しくし(イオン密度1017〜1020cm-3)、放電により、上記原料ガスを極端紫外光放射条件を満たす温度まで加熱し、連続的に200ns以上の極端紫外光を発生させる。
(4)上記(1)(2)(3)において、放電を、電極間に電流パルスを供給することにより発生させ、該電流パルスが供給されている期間を含む、該電流パルスの幅より長い期間、上記原料ガスを上記放電経路(放電チャンネル)に供給する。
(5)上記(1)(2)(3)(4)において、エネルギービームとしてレーザビームを用いる。
(6)容器と、この容器内に設けられ、所定距離だけ離間した一対の電極と、該電極にパルス電力を供給するパルス電力供給手段と、上記電極間に形成された放電経路に、極端紫外光を放射させるための気化された原料ガスを供給する原料供給手段と、上記放電経路で生成される高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光光学手段と、上記集光される極端紫外光を取り出す極端紫外光取出部とを有する極端紫外光光源装置において、上記パルス電力供給手段により、上記電極間に1μs以上のパルス電力を供給して放電経路(放電チャンネル)を形成する。上記原料供給手段は、上記放電経路外の空間であって、気化された原料が放電経路に到達できる空間内に配置された原料にエネルギービームを照射して、該原料を気化させるエネルギービーム照射手段を備え、上記放電経路(放電チャンネル)に、イオン密度が極端紫外光放射条件におけるイオン密度にほぼ等しい原料ガスを供給する。
(7)上記(6)において、第2のエネルギービーム照射手段を設け、上記放電経路(放電チャンネル)に、第2のエネルギービーム照射手段から放電経路固定用エネルギービームを照射して、該エネルギービームにより放電経路(放電チャンネル)を固定する。
(8)上記(6)(7)において、始動用の原料を上記電極の近くに配置し、放電に先立って始動用の原料を上記放電が発生する領域に供給する。
(9)上記(6)(7)(8)において、エネルギービームとしてレーザビームを用いる。
【発明の効果】
【0051】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)予め放電領域に細い放電チャンネルを生成し、放電領域外から、この細い放電チャンネルに対してEUV放射条件に相当するイオン密度あって電子温度の低い低温プラズマガスの定常流を選択的に供給し、低温プラズマガスに放電を作用させ、図1の経路IIを経由させEUV放射条件を満たす高温プラズマを形成し、EUV放射を発生させているので、放電電流は従来のDPP方式、LAGDPP方式のような大電流である必要はなく、比較的小電流を放電領域に流してもEUV放射が可能となる。
また、従来のように、放電電流の高速短パルス化を実施せずとも、効率的にプラズマにエネルギーを入力することが可能となる。よって、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能となる。
(2)EUV放射は、ある程度細い放電チャンネルが持続する間継続する。よって、放電電流パルスが従来のDPP方式、LAGDPP方式より長くなるように放電回路を構成して放電電流パルスをロングパルス化することにより、細い放電チャンネルの持続時間を従来と比較して長くすることが可能となり、その結果EUV放射のロングパルス化が実現される。
本発明において、放電チャンネルの継続時間を少なくとも1μs以上にしたとき、放電チャンネルが継続する時間を確実に200nsより長くすることができる。すなわち、放電チャンネルの継続時間を1μs以上に設定すると、確実にEUV放射の継続時間を、従来のEUV放射の継続時間(200ns)より長くすることが可能となる。
(3)放電電流が従来のDPP方式、LAGDPP方式のような大電流である必要はなく、また、放電電流の高速短パルス化を実施する必要はない。従って、電極に与える熱負荷を従来と比較して小さくすることが可能となり、デブリの発生を抑制することが可能となる。
(4)従来のロングパルス化技術のように、高温プラズマのピンチ状態を維持するようにプラズマ電流波形を制御する必要がないので、放電空間に大電流を流す必要がない。また、ピンチ効果を維持するために、プラズマ電流の波形を変化させる必要がないので、高精度な同期制御や電流制御を必要としない。
(5)放電経路(放電チャンネル)に放電経路固定用エネルギービームを照射し、該エネルギービームにより放電経路を固定することにより、EUV放射の発生点の位置安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
まず、本発明の基本構成例について説明する。以下では(1)本発明のEUV発生方法を実施するEUV光源装置の基本構成例、(2)本発明のEUV発生手順、(3)エネルギービーム(レーザビーム)の照射タイミング、(4)原料供給システム、(5)整流機構、(6)電極位置、高温プラズマ原料供給位置、エネルギービーム(レーザビーム)照射位置の相互関係、(7)原料気化用エネルギービームのエネルギー、について説明する。以下、エネルギービームとしてはレーザビームを例に取って説明するが、エネルギービームが電子ビームなどであってもよい。
【0053】
(1)本発明のEUV発生方法を実施するEUV光源装置の基本構成例
図4に、本発明に基づくEUV光源装置の基本構成例を示す。
同図において、放電容器であるチャンバ1の内部に第1の電極2aおよび第2の電極2bが設置されている。例えば、第1の電極2aはカソードであり、第2の電極2bはアノードであって、第2の電極2bは接地される。すなわち、両電極間には、負極性の高電圧が印加される。
両電極には、パルス電力供給手段13が接続される。パルス電力供給手段13は、両電極間にパルス幅の長い電流を流すために、例えば、PFN(Pulse Forming Network)回路方式が採用される。
【0054】
また、上記した一対の電極の近傍ではあるが放電領域外に、高温プラズマ原料8が設置される。高温プラズマ原料8としては、例えば、スズ(Sn)、リチウム(Li)等の金属が用いられる。これらは、固体であっても液体であってもよい。図4では、高温プラズマ原料8が固体金属である例を模式的に示している。
低温プラズマ(気化した高温プラズマ原料)を生成するために、レーザ源7が用いられる。レーザ源7から放出されるレーザビームL1は、チャンバ1内部に導光され固体もしくは液体の高温プラズマ原料8に照射される。レーザの照射エネルギーは、固体または液体状の高温プラズマ原料を気化させるが、電子温度をあまり上昇させない程度のエネルギーであり、例えば105 W/cm2 〜1016W/cm2 の範囲である。
高温プラズマ原料8にレーザビームが照射されると、高温プラズマ原料8の少なくとも一部が気化し、低温プラズマガス8’となって噴出する。照射するレーザビームの条件を適宜設定することにより、例えば、固体状の高温プラズマ原料8から10μs程度の期間、連続的に気化した高温プラズマ原料(低温プラズマガス8’)が噴出される。
【0055】
上記したように、低温プラズマガスは、プラズマ内のイオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度の状態で、あらかじめ電極間において形成されている放電チャンネルに対して選択的に供給するように構成される。
なお、放電チャンネルは放電電流の自己磁場で細くなっている。一般に、レーザビームの照射により、固体材料もしくは液体材料から噴出する材料蒸気は、三次元方向に膨張しながら進行する。よって、高温プラズマ原料8から噴出する低温プラズマガスは、図示を省略した整流機構により、指向性のよい定常流へと整流される。なお、整流機構の例は後で述べる。
【0056】
(2)本発明のEUV発生手順
図5に示すタイミングチャートを用いて、本発明におけるEUV生成方式を説明する。例として、マルチピンチ方式を例に取る。
まず、一対の電極2a,2b間にパルス電力を印加するパルス電力供給手段13のスイッチング手段(例えば、IGBT)にトリガ信号が入力(時点Td)し(図5の(a))、スイッチング手段はon状態となる。
それに伴い、電極間電圧が上昇する(図5の(b))。そして電圧がある閾値Vpに到達した時点T1(=Td+Δtd)で放電を発生させる(図5の(c))。放電発生は、図4で図示を省略した放電始動手段の動作により行われる。この閾値Vpは、放電が発生したときに流れる放電電流の値が閾値Ip以上(もしくは、非ピンチ方式の場合Ip2以上)となる場合の電圧値である。すなわち、閾値Vp未満で放電が発生した場合、放電電流のピーク値は、閾値IpもしくはIp2に到達しない。
【0057】
時点T1より電極間で放電電流が流れ始め、放電チャンネルが形成される。そして、Δti経過した時点(T1+Δti)にて、放電電流の値は、閾値Ipに到達する。この閾値Ipは、上記したように、電流の自己磁場による圧縮圧力をPB 、プラズマの圧力Pp とするとき、PB ≫Pp (前記(4)式)となるように設定される。すなわち、自己磁場により低温プラズマガスを十分圧縮可能な電流値となる。
なお、上記閾値Ipは、低温プラズマガス(プラズマ内のイオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)の電子温度を20〜30eVもしくはそれ以上に加熱することが可能なエネルギーを有する電流値でもある。
また、時点(T1+Δti)において、放電領域を流れる放電チャンネルの径は十分細くなっている。
【0058】
この時点(T1+Δti)以降にEUV放射条件に相当するイオン密度あって電子温度の低い低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達しているように、レーザビームが放電領域外に配置された高温プラズマ原料へ照射される(図5の(d))。レーザビームが高温プラズマ原料に照射された時点から低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するまでの時間をΔtgとするとき、時点(T1+Δti−Δtg)もしくはそれ以降の時点T2でレーザビームは高温プラズマ原料に照射される。図5では、時点T2=T1+Δti−Δtgの場合を示している。
時点(T1+Δti=T2+Δtg)から時間τheat後に、低温プラズマガスに放電が作用し電子温度は20〜30eVに到達して高温プラズマとなり、当該高温プラズマからのEUV放射が開始される(図5の(e))。
【0059】
細い放電チャンネルには上記EUV放射条件に相当するイオン密度あって電子温度の低い低温プラズマガスが連続的に供給されているので、ピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果が繰り返し行われる。よって、細い放電チャンネルの径は、細くなったり広くなったり脈動状の挙動を示すが相対的に細い状態に保たれる。すなわち、低温プラズマのピンチが繰り返し行われ、EUV放射が継続する。
放電領域にて発生したEUV放射は、EUV集光鏡4により反射され、EUV光取出部5より図示しない照射部に出射される。
【0060】
ここで、従来のピンチ効果を利用したDPP方式、LAGDPP方式では、EUV放射が維持する時間は、例えば、200ns以下であるので、電流値がIpである放電チャンネルが継続する時間が、細い放電チャンネルに低温プラズマガスの一部が到達する時点(T1+Δti=T2+Δtg)から(200ns+τheat)以上継続するように、パルス電力供給手段13および一対の電極(第1の電極2aおよび第2の電極2b)からなる放電回路を設定することにより、従来のピンチ効果を利用したDPP方式、LAGDPP方式と比較してEUV放射のロングパルス化を実現することが可能となる。
【0061】
従来のピンチ効果を利用したDPP方式、LAGDPP方式では、放電チャンネルの継続時間は長くとも1μs以下であり、さらに、初期プラズマをピンチしてEUV放射が継続する時間(図2の期間A)は長くとも200ns以下であった。
発明者らの実験による検証の結果、本発明においては、放電チャンネルの継続時間を少なくとも1μs以上にしたとき、電流値がIp以上またはIp2以上である放電チャンネルが継続する時間を確実に200nsより長くすることができることが判明した。すなわち、放電チャンネルの継続時間を1μs以上に設定すると、確実にEUV放射の継続時間を、従来のEUV放射の継続時間(200ns)より長くすることが可能となった。
なお非ピンチ方式の場合も閾値をIp2となるように設定すれば、上記と同様のメカニズムでEUV放射のロングパルス化が実現されるので、詳細な説明は省略する。
【0062】
本発明では、プラズマのピンチ状態を維持するようにプラズマ電流波形を制御する特許文献4、5におけるEUV放射のロングパルス化方法のように、放電空間に大電流を流す必要がない。また、ピンチ効果を維持するために、図22(a)に示すようにプラズマ電流Iの波形を変化させる必要がないので、本方式における放電電流(プラズマ電流)波形は変極点を有さない。
【0063】
(3)エネルギービーム(レーザビーム)の照射タイミング
上記したEUV発生手順では、放電電流の値が閾値Ipに到達した時点以降に低温プラズマガスの少なくとも一部が細い放電チャンネルに到達しているように、レーザビームが高温プラズマ原料へ照射されるタイミングを設定している。
ここで、放電発生後放電電流の値が閾値Ipに到達する時点以前に低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達している場合(ケースA)、あるいは、放電発生前に低温プラズマガスの少なくとも一部が、放電後に放電チャンネルが生成される領域に到達している場合(ケースB)を考える。
ケースAやケースBにおいては、放電電流の値が閾値Ipに到達するまでは、低温プラズマの加熱が十分に行われず、結果として、EUV発光に寄与しない低温プラズマの割合が増えることになり、EUV放射効率が低下してしまう。
【0064】
また、ケースAやケースBにおいては、放電電流の値が閾値Ipに到達するまでの間に放電後放電チャンネルが生成される領域に、定常流として選択的に供給された高温プラズマ原料である低温プラズマガスが膨張して密度が低下してしまう。よって、放電領域における高温プラズマ原料の密度は、図20のピンチの初期条件に近づく。このような状態においては放電チャンネルの径が太くなるので、放電チャンネルを細くして高温プラズマとするためには、放電電流としては大電流が必要となる。
特に、ケースBにおいては、放電前に低温プラズマガスが供給されるので、膨張して密度が低下した高温プラズマ原料ガスのガス放電により放電チャンネルが形成され、放電チャンネルの径はケースAよりも太くなる。よって、放電チャンネルを細くし、ピンチ効果により初期プラズマを高温プラズマとするためには、DPP方式と同様、ある程度大パワーで、高速短パルスの電流パルスが必要となる(図20の経路2に近くなる)。
【0065】
本発明においては、上記したように、放電チャンネルの継続時間を長くするように放電回路を形成しているので、ケースBにおいて必要とされる電流パルスを実現することは困難となる。
よって、少なくとも放電が開始したあと(ケースA)、好ましくは、図5に示すように、放電電流の値が閾値Ipに到達した時点以降に低温プラズマガスの少なくとも一部が細い放電チャンネルに到達しているように、レーザビームが高温プラズマ原料へ照射されるタイミングを設定することが重要となる。
【0066】
(4)原料供給システム
上記したように、本発明は、高温プラズマ原料にレーザビーム等のエネルギービームを照射して、EUV放射条件に相当するイオン密度あって電子温度の低い低温プラズマガス(プラズマ内のイオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)を生成し当該低温プラズマを放電領域に供給する。図4では、高温プラズマ原料が固体金属である例を模式的に示しているが、上記したように、高温プラズマ材料は液体状態でもよい。
固体状の高温プラズマ原料を用いて低温プラズマガスを放電領域に供給する原料供給システムの構成例としては、例えば図4に模式的に示すように、放電領域の近傍の所定領域に固体金属(例えば、Sn)を設置してレーザビームを照射するように構成する。
その他の例としては、ワイヤー状に成形した高温プラズマ原料を2組のリールを用いて、レーザビームが照射されたとき生成される低温プラズマガスが所定領域に到達できる空間に供給して、当該ワイヤー状の高温プラズマ原料にレーザビームを照射するように構成する。
【0067】
一方、液体状の高温プラズマ原料を用いて低温プラズマガスを放電チャンネルに供給する原料供給システムの構成例としては、例えば、液体状の高温プラズマ原料、ドロップレット状にして、レーザビームが照射されたとき生成される低温プラズマガスが所定領域に到達できる空間に向けて滴下して供給し、上記ドロップレット状の高温プラズマ原料が上記空間に到達したときレーザビームを当該ドロップレット状の高温プラズマ原料に照射するように構成する。
なお、固体状の高温プラズマ原料を用いる例として、特許文献4に記載されているように、電極自体を固体の高温プラズマ原料(例えば、Li)で構成し、当該電極にレーザビームを照射して低温プラズマガスを生成し当該低温プラズマガスを放電チャンネルに供給することも考えられる。
【0068】
また、液体状の高温プラズマ原料を用いる例として、特許文献2に記載されているような構造が考えられる。すなわち、電極を回転電極構造とし、加熱された溶融金属(metal melt)である液体状高温プラズマ原料をコンテナに収容する。そして回転電極の一部(周辺部)が液体状高温プラズマ原料を収容する上記コンテナの中に浸されるように配置する。そして、電極を回転させることにより、電極の周辺部表面に付着した液体状高温プラズマ原料が放電領域に輸送される。この輸送された液体状高温プラズマ原料にレーザビームを照射することにより低温プラズマガスが生成され、当該低温プラズマが放電チャンネルに供給される。
しかしながら、この構成は高温プラズマ原料を放電領域内に配置するものであり、このような方式に基づく低温プラズマガスの生成および放電チャンネルへの供給は、以下の理由で好ましくない。
特許文献2、4に記載されている構成の場合、レーザビームが電極表面に照射した際に生成されるプラズマ(あるいは中性蒸気)が媒介となって放電が開始される。よって、低温プラズマガスの供給は放電に先立って行われることになり、上記したようにEUV発光に寄与しない低温プラズマの割合が増えることになり、EUV放射効率が低下してしまう。
【0069】
また、放電前に低温プラズマガスが供給されるので、膨張して密度が低下した高温プラズマ原料ガス放電により放電チャンネルが形成され、放電チャンネルの径は太くなる。よって、放電チャンネルを細くして高温プラズマを形成するためには、ある程度大パワーの電流が必要となってしまう。
また、低温プラズマガスの放電チャンネルへの供給は、レーザビームの照射による供給に加えて、放電の進展に伴う駆動電流による電極の温度上昇で電極自身(あるいは、電極に付着している液体状高温プラズマ原料)が蒸発することによる供給もある。
よって、低温プラズマガスのパラメータは放電電流に依存して時々刻々変化し、EUV放射の出力は変動する。また、放電中の放電チャンネルの変動により、高温プラズマの位置が変動してしまい、見かけ上高温プラズマのサイズが大きくなってしまう。
上記した不具合は、高温プラズマ原料と電極とが一体化し、低温プラズマガスの供給がレーザビームの照射と放電電流(プラズマ電流)の両方に依存することになるために発生するものである。
【0070】
よって、本発明においては、高温プラズマ原料と電極とは別体であって、低温プラズマガスの供給がレーザビームの照射のみに依存し、放電電流から独立している。すなわち、図4に示す構成例やその他既述の構成例(ワイヤ状、ドロップレット状)のように、低温プラズマガスの供給制御と電極間を流れる駆動電流の制御とが互いに独立であるように、原料供給システムを構成する。
【0071】
(5)整流機構
上記したように、低温プラズマガスは、電極間で放電が発生後、放電電流の自己磁場で細くなった放電チャンネルに対して選択的に供給するように構成される。通常、レーザビームの照射により固体材料もしくは液体材料から噴出する材料蒸気は、三次元方向に膨張しながら進行する。よって、固体もしくは液体の高温プラズマ原料にレーザビームを照射して低温プラズマガスを噴出させる際は、噴出する低温プラズマガスのフローを整流して、指向性が良好なフローを構成し、当該フローが細い放電チャンネル付近に集中して連続供給されるよう設定する。以下、整流機構の例について述べる。
【0072】
図6は、整流機構として、高温プラズマ原料のレーザビーム照射位置に原料噴出用の管状ノズルを取り付けた例を示す。ここで、図6は管状ノズルを使用した場合の概念図である。図6(a)に示すように、レーザビームL1は、管状ノズル9aの貫通孔を通過する。管状ノズル9aを通過したレーザビームが高温プラズマ原料8に照射されると、高温プラズマ原料8は気化し、低温プラズマガス8’を生成する。
図6(b)に示すように、低温プラズマガス8’は、管状ノズル9aを通過し、管状ノズル9aより噴出する。
管状ノズル9aより噴出する低温プラズマガス8’は、管状ノズル9aにより噴射角度が制限される。そのため、指向性が良好な低温プラズマガスフローを放電チャンネルに選択的に連続供給することが可能となる。
なお、管状ノズルの形状は、図6に示すような直管形状に限るものではない。例えば、図7に示す概念図のように、ノズル内部の一部に狭窄部9cを設けた高速噴射用ノズル9bの形状でもよい。
【0073】
図7(a)に示すように、レーザビームL1は、高速噴射用ノズル9bの貫通孔を通過する。高速噴射用ノズル9bを通過したレーザビームが高温プラズマ原料8に照射されると、高温プラズマ原料8は気化し、低温プラズマガス8’を生成する。
ここで、高速噴射用ノズル9b内部に狭窄部9cが設けられているので、当該狭窄部9cと、高温プラズマ原料8のレーザビームL1が照射される部分との間の空間(図7(b)の圧力上昇部9d)内は、低温プラズマガス8’により圧力が急激に上昇する。そして、図7(b)に示すように、低温プラズマガス8’は、狭窄部9cの開口部分から加速され、かつ、指向性のよい高速ガス流として噴射される。
ここで、高速ガス流の噴射方向は高速噴射用ノズル9bの方向に依存する。すなわち、気化原料の進行方向はレーザビームの高温プラズマ原料への入射方向には依存しない。
なお、狭窄部9cの開口は断面積が小さいので、レーザビームが高温プラズマ原料8に照射されない時間が長いと、高温プラズマ原料8が固化し、開口が閉塞してしまうことも考えられる。よって、図7(c)に示すように、高温プラズマ原料8が高速噴射用ノズル9b内部で固化しないように、高速噴射用ノズルをヒータ9e等で加熱してもよい。
【0074】
管状ノズル9a、高速噴射用ノズル9bは、できるだけ高温プラズマ原料8に近接した方が、より効果的である。
特に、高速噴射用ノズル9bは、圧力上昇部9dを構成する必要があるので、高速噴射用ノズル9b内部に狭窄部9dと、高温プラズマ原料8のレーザビームL1が照射される部分との間の空間は、できるだけ気密な空間として構成することが望ましい。例えば、図8に示すように、高温プラズマ原料8を収容する原料収容部9fと高速噴射用ノズル9bとを一体に構成した原料供給ユニット10を使用することが好ましい。
【0075】
なお、整流機構は上記した例に限定されるものではない。例えば、固体状の高温プラズマ原料8において、図9(a)(b)のように、レーザビームL1が照射される位置に予め凹部8aを形成するようにしてもよい。
レーザビームL1が高温プラズマ原料8の凹部8aに照射されると、高温プラズマ原料8は気化し、低温プラズマガス8’が生成される。ここで、凹部8aより噴出する低温プラズマガス8’は当該凹部8aの壁状ノズルにより噴射角度が制限される。そのため、指向性が良好な低温プラズマガスフローを放電チャンネルに選択的に連続供給することが可能となる。
【0076】
(6)電極位置、高温プラズマ原料位置、エネルギービーム(レーザビーム)照射位置の相互関係
上記したように、本発明においては、レーザビームによって低温プラズマガスを放電チャンネルに到達させる。その位置関係の例を、図10に示す。
図10は、上記位置関係を説明するための概略構成図である。なお、理解を容易にするために、高温プラズマ原料8は模式的に円で示し、整流機構は省略してある。
図10に示す例では、板状の一対の電極2a,2bが所定間隔離間して配置される。放電チャンネルは一対の電極2a,2bの離間空間に位置する放電領域内に生成される。
レーザビームL1の高温プラズマ原料8への照射により気化し、生成された低温プラズマガス8’は、レーザビームが入射する方向側に広がる。そのため、レーザビームL1を、高温プラズマ原料8の放電領域に対面する面に対して照射することにより、低温プラズマガス8’は、放電領域に生成される放電チャンネルに供給される。
【0077】
上記電極2a,2bの光出射側には、EUV集光鏡4が配置される。このEUV集光鏡4は、光軸が一方向となるように集光方向を設定する斜入射光学系を構成する場合が多い。このような斜入射光学系を構成するには、一般に、複数枚の薄い凹面ミラーを入れ子状に高精度に配置した構造のEUV集光鏡が用いられる。
このような構造のEUV集光鏡は光軸に略一致した支柱および当該支柱から放射状に伸びる支持体により、上記した複数枚の薄い凹面ミラーが支持される。
ここで、レーザビームの照射により放電チャンネルに供給された低温プラズマガスのうち、高温プラズマ形成に寄与しなかったものの一部、あるいは、高温プラズマ形成の結果分解生成する原子状ガスのクラスタの一部は、デブリとしてEUV光源装置内の低温部と接触し、堆積する。例えば、高温プラズマ原料がSnの場合、低温プラズマ形成に寄与しなかったものの一部、あるいは、プラズマ形成の結果分解生成する原子状ガスのSn、Snx といった金属クラスタの一部は、デブリとしてEUV光源装置内の低温部と接触しスズ鏡を作る。
【0078】
ここで、図10(b)に示すように、高温プラズマ原料8が一対の電極2,2bに対してEUV集光鏡4を臨まない空間側に供給された場合、レーザビームL1は、低温プラズマガス8’が放電チャンネルに供給されるように、EUV集光鏡4側から高温プラズマ原料8に対して照射される。
この場合、レーザビームL1の照射により生成した低温プラズマガス8’は、放電チャンネルおよびEUV集光鏡4の方向に広がる。すなわち、高温プラズマ原料8へのレーザビームL1の照射、および、電極間2a,2bで発生する放電により、EUV集光鏡4に対してデブリが放出される。デブリがEUV集光鏡4に堆積した場合、EUV集光鏡4の13.5nmに対する反射率が低下し、EUV光源装置の装置性能が劣化してしまう。
【0079】
そこで、図10(a)に示すように、高温プラズマ原料8を一対の電極2a,2bとEUV集光鏡4との間の空間であり、かつ、放電領域近傍の空間に対して配置することが好ましい。
このように配置された高温プラズマ原料8に対し、レーザビームL1を上記のように高温プラズマ原料表面の放電領域に面する側に対して照射すると、低温プラズマガス8’は放電領域の方向に広がるが、EUV集光鏡4の方向に広がらない。
すなわち、上記したように高温プラズマ原料8の位置、および、レーザビームL1の照射位置を設定することにより、デブリがEUV集光鏡4に進行するのを抑制することが可能となる。
【0080】
ここで、所定距離だけ離間する一対の電極2a,2bが、図11に示すように柱状である場合を考える。ここで、図11(a)は上面図、図11(b)は正面図である。
この場合は、高温プラズマ原料8を、光軸に対して垂直な平面上の空間であり、かつ、放電領域近傍に対して配置し、レーザビームL1を光軸と垂直な方向から高温プラズマ原料8に対して照射するようにしても、低温プラズマガス8’はEUV集光鏡4の方向には広がらない。よって、高温プラズマ原料8へのレーザビームの照射、および、電極2a,2b間で発生する放電により生成するデブリは、EUV集光鏡4に対してほとんど進行しない。
なお、当然ながら、所定距離だけ離間する一対の電極2a,2bが柱状である場合においても、図10に示すように、高温プラズマ原料8を、一対の電極2a,2bとEUV集光鏡4との間の空間であり、かつ、放電領域近傍の空間に対して配置してもよい。
【0081】
(7)原料気化用エネルギービームのエネルギー
レーザビームが高温プラズマ原料に照射された時点から低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するまでの時間Δtgは、放電チャンネルとレーザビームが照射される高温プラズマ原料との距離、および、低温プラズマガスが広がる速度により求められる。
ここで、放電チャンネルとレーザビームが照射された高温プラズマ原料との距離は、レーザビームの照射時における放電チャンネルと高温プラズマ原料の位置および高温プラズマ原料へのレーザビームの照射方向に依存する。
一方、上記したように、レーザビームの照射により生成した低温プラズマガスは、レーザビームが入射した側に所定の速度で広がる。上記所定の速度は、高温プラズマ原料に照射するレーザビームの照射エネルギーに依存する。
【0082】
結局、レーザビームが高温プラズマ原料に照射された時点から低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するまでの時間Δtgは、放電チャンネルと高温プラズマ原料の位置、高温プラズマ原料へのレーザビームの照射方向、レーザビームの照射エネルギーに依存し、これらのパラメータを適宜設定することにより、所定の時間に設定される。
【0083】
以上説明したように、本発明のEUV発生方法は、予め、放電領域に細い放電チャンネルを生成し、放電領域外から、この細い放電チャンネルに対してEUV放射条件に相当するイオン密度あって電子温度の低い低温プラズマガス(イオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)の定常流を選択的に供給する。
ここで、低温プラズマガスの供給タイミングは、放電電流の値が所定の閾値(IpまたはIp2)に到達した時点以降で、低温プラズマガス(イオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)が細い放電チャンネルに到達するように設定する。 その結果、低温プラズマガスに放電が作用し、図1の経路IIを通過してEUV放射条件を満たす高温プラズマが形成されEUV放射が発生する。
【0084】
ここで、放電チャンネルに対して低温プラズマガスを供給し、EUVの放射は、図1の(II)の経路を経て実現されるので、放電電流は従来のDPP方式、LAGDPP方式のような大電流である必要はなく、比較的小電流を放電領域に流してもEUV放射が可能となる。また、従来のように、放電電流の高速短パルス化を実施せずとも、効率的にプラズマにエネルギーを入力することが可能となる。よって、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能となる。
EUV放射は、ある程度細い放電チャンネルが持続する間継続する。よって、放電電流パルスが従来のDPP方式、LAGDPP方式より長くなるように放電回路を構成して放電電流パルスをロングパルス化することにより、細い放電チャンネルの持続時間を従来と比較して長くすることが可能となり、その結果EUV放射のロングパルス化が実現される。
【0085】
マルチピンチ方式において、閾値Ipは、電流の自己磁場による圧縮圧力をPB 、プラズマの圧力Pp とするとき、前記(4)式に示したようにPB ≫Pp となるように設定される。
すなわち、閾値Ipは自己磁場により低温プラズマガスを十分圧縮可能な電流値となる。なお、上記閾値Ipは、低温プラズマガスの電子温度を20〜30eVもしくはそれ以上に加熱することが可能なエネルギーを有する電流値でもある。ここで、放電電流の値がIpとなった時点において、放電領域を流れる放電チャンネルの径は十分細くなっている。
【0086】
細い放電チャンネルへの低温プラズマガスの連続的な供給により、ピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果が繰り返し行われる。このとき、細い放電チャンネルの径は、細くなったり広くなったり脈動状の挙動を示すが相対的に細い状態に保たれる。
このような低温プラズマガスのピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果の繰り返しは、放電電流が継続している間持続する。
上記したように、本発明では、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能であり、連続的なピンチもしくは自己磁場による閉じ込め効果を長期間維持することができるので、EUV放射のロングパルス化を実現することができる(マルチピンチ方式)。
【0087】
また、非ピンチ方式において、閾値Ip2は、前記(5)式に示したようにPB ≧Pp となるように設定される。すなわち、閾値Ip2は自己磁場により低温プラズマガスを弱く圧縮する(低温プラズマガスが膨張してイオン密度が減少しない程度に維持される)電流値となる。なお、上記閾値Ip2は、低温プラズマガスの電子温度を20〜30eVもしくはそれ以上に加熱することが可能なエネルギーを有する電流値でもある。ここで、放電電流の値がIp2となった時点において、放電領域を流れる放電チャンネルの径は細くなっている。
【0088】
細い放電チャンネルへの低温プラズマガスの連続的な供給により、低温プラズマガスは、膨張してイオン密度が減少しない程度に維持された状態で加熱されて高温プラズマとなり、この高温プラズマからEUVが放射される。
このような低温プラズマガスのイオン濃度を維持しながら加熱は、放電電流が継続している間持続する。上記したように、本発明では、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能であり、低温プラズマの加熱を持続してEUV放射に必要なプラズマの温度および密度を長期間維持することができるので、EUV放射のロングパルス化を実現することができる(非ピンチ方式)。
なお、非ピンチ方式においては、放電チャンネルの径がマルチピンチ方式よりも大きいので、高温プラズマのサイズもマルチピンチ方式より大きくなる。
【0089】
発明者らの実験による検証の結果、本発明においては、放電チャンネルの継続時間を少なくとも1μs以上にしたとき、電流値がIp以上またはIp2以上である放電チャンネルが継続する時間を確実に200nsより長くすることができることが判明した。すなわち、放電チャンネルの継続時間を1μs以上に設定すると、確実にEUV放射の継続時間を、従来のEUV放射の継続時間(200ns)より長くすることが可能となった。
上記したように、放電電流は従来のDPP方式、LAGDPP方式のような大電流である必要はなく、また、放電電流の高速短パルス化を実施する必要はない。従って、電極に与える熱負荷を従来と比較して小さくすることが可能となり、デブリの発生を抑制することが可能となる。
また、本発明においては、従来のロングパルス化技術のように、高温プラズマのピンチ状態を維持するようにプラズマ電流波形を制御する必要がないので、放電空間に大電流を流す必要がない。また、ピンチ効果を維持するために、プラズマ電流の波形を変化させる必要がないので、高精度な電流制御を必要としない。すなわち、本方式における放電電流(プラズマ電流)波形は変極点を有さない。
【0090】
また、低温プラズマガスの供給制御と電極間を流れる駆動電流の制御とが互いに独立であるように、原料供給システムを構成することが好ましい。
このように構成することにより、低温プラズマの供給が放電電流(プラズマ電流)の影響を受けないので、EUV放射の安定性が向上する。
さらには、高温プラズマ原料を一対の電極とEUV集光鏡との間の空間に配置(もしくは供給)し、レーザビームを高温プラズマ原料表面の放電領域に面する側に対して照射することが望ましい。
このようにすることにより、低温プラズマガスは放電領域の方向に広がるが、EUV集光鏡の方向に広がらない。よって、デブリがEUV集光鏡に進行するのを抑制することが可能となる。
【0091】
以下、本発明のEUV光源装置の具体的な構成例について説明する。
(1)実施例1
図12、図13に、本発明の極端紫外光(EUV)発生方法を採用したEUV光源装置の実施例1の構成例を示す。
図12は上記EUV光源装置の概略構成図であり、EUV放射は同図右側から取り出される。図13は、図12における電力供給手段の構成例である。
図12に示すEUV光源装置は、放電容器であるチャンバ1を有する。チャンバ1内には、上記した低温プラズマガスにパワーを入力して高温プラズマを生成する放電部20、および、高温プラズマから放出されるEUV光を集光して、チャンバ1に設けられたEUV光取出部5より図示を省略した露光装置の照射光学系へ導くEUV光集光部40を有する。チャンバ1は排気装置17と接続されていて、チャンバ1内部はこの排気装置により減圧雰囲気とされる。
【0092】
以下、各部の構成について説明する。
(a)放電部
放電部20は、金属製の円盤状部材である第1の放電電極20aと、同じく金属製の円盤状部材である第2の放電電極20bとが絶縁材20cを挟むように配置された構造である。第1の放電電極20aの中心と第2の放電電極20bの中心とは略同軸上に配置され、第1の放電電極20aと第2の放電電極20bは、絶縁材20cの厚みの分だけ離間した位置に固定される。ここで、第2の放電電極20bの直径は、第1の放電電極20aの直径よりも大きい。なお、第1の放電電極20aと第2の放電電極20bは回転するので、以下では、回転電極と呼ぶこともある。
【0093】
第2の放電電極20bには、モータ20dの回転シャフト(回転軸)20eが取り付けられている。ここで、回転シャフト20 eは、第1の放電電極20aの中心と第2の放電電極20bの中心が回転シャフト20eの略同軸上に位置するように、第2の放電電極20bの略中心に取り付けられる。
回転シャフト20eは、例えば、メカニカルシール20hを介してチャンバ1内に導入される。メカニカルシール20hは、チャンバ1内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転シャフト20eの回転を許容する。
第2の放電電極20bの下側には、例えばカーボンブラシ等で構成される第1の摺動子20fおよび第2の摺動子20gが設けられている。第2の摺動子20gは第2の放電電極20bと電気的に接続される。一方、第1の摺動子20fは第2の放電電極20bを貫通する貫通孔20iを介して第1の放電電極20aと電気的に接続される。
なお、図示を省略した絶縁機構により、第1の放電電極20aと電気的に接続される第1の摺動子20fと第2の放電電極20gとの間では絶縁破壊が発生しないように構成されている。
【0094】
第1の摺動子20fと第2の摺動子20gは摺動しながらも電気的接続を維持する電気接点であり、パルス電力供給手段13と接続される。パルス電力供給手段13は、第1の摺動子20f、第2の摺動子20gを介して、第1の放電電極20aと第2の放電電極20bとの間に電力を供給する。
すなわち、モータ20dが動作して第1の放電電極20aと第2の放電電極20bとが回転していても、第1の放電電極20aと第2の放電電極20bとの間には、第1の摺動子20f、第2の摺動子20gを介して、パルス電力供給手段13より電力が印加される。
【0095】
パルス電力供給手段13は、図13に示すように、PFN回路部を含み、負荷である第1の放電電極20aと第2の放電電極20bとの間に、例えば、比較的パルス幅の長いパルス電力を印加する。なお、電力供給手段13から第1の摺動子20f、第2の摺動子20gとの配線は、図示を省略した絶縁性の電流導入端子を介してなされる。電流導入端子は、チャンバ1に取り付けられ、チャンバ1内の減圧雰囲気を維持しつつ、電力供給手段から第1の摺動子、第2の摺動子との電気的接続を可能とする。
金属製の円盤状部材である第1の放電電極20a、第2の放電電極20bの周辺部は、エッジ形状に構成される。後で示すように、電力供給手段13より第1の放電電極20a、第2の放電電極20bに電力が印加されると、両電極のエッジ形状部分間で放電が発生する。放電が生ずると、両電極は高温となるので、第1の放電電極20a、第2の放電電極20bは、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル等の高融点金属からなる。また、絶縁材20cは、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド等からなる。
EUV放射を発生させるために放電を発生させる際、第1および第2の放電電極20a,20bを回転させる。これにより、両電極において放電が発生する位置はパルス毎に変化する。よって、第1および第2の放電電極20a,20bが受ける熱的負荷は小さくなり、放電電極の磨耗スピードが減少し、放電電極の長寿命化が可能となる。
【0096】
あらかじめ放電領域に放電チャンネルを形成するために、具体的には電極間に真空アーク放電を発生させる。そこで、真空アーク放電を発生させるための始動用原料として固体Snや固体Liが、放電電極20bに供給される。原料供給は、予め、溝部に固体Snや固体Liを配置するようにしてもよいし、図12に示すように、始動用原料供給ユニット14より供給するようにしてもよい。ここで、始動用原料は、電極間で放電を発生させ、細い放電チャンネルを生成するためのものであり、EUV放射への寄与は殆どない。
【0097】
原料供給ユニットを用いる場合、例えば、特許文献2に記載されているように、原料供給ユニットを原料となるSnやLiを加熱により液化させるような構造とし、この液化した原料を第2の放電電極20bの溝部が通過するように構成してもよい。この場合、EUV光源装置は、原料供給ユニットが下側に、EUV光取出し部が上側に位置するように構成される。すなわち、図12に示すEUV光源装置を、反時計周りに90度回転した構成となる。
あるいは、原料供給ユニットは、固形のSnやLiを定期的に第2の放電電極20bの溝部に供給するように構成してもよい。
第2の放電電極20bの溝部に配置もしくは供給されたSnまたはLiは、第2の放電電極20bの回転により放電部20におけるEUV光出射側であるEUV光集光部40側に移動する。
【0098】
(b)電力供給手段
図13に電力供給手段13の等価回路の構成例を示す。図13に示す電力供給手段13の等価回路は、充電器CH1、固体スイッチSW、コンデンサCとコイルLの組をn段に縦続接続したLC分布定数回路構成のPFN回路部、スイッチSW1とから構成される。 電力供給手段の動作例は以下の通りである。まず、充電器CH1の設定充電電圧が所定値Vinに調整される。そして、固体スイッチSWがonとなったとき、PFN回路部を構成するn個のコンデンサCが充電され、スイッチSW1がonになると第1の主放電電極、第2の主放電電極間に電圧が印加される。
その後、電極間で放電が発生すると、電極間に電流が流れる。ここで、各コンデンサCと負荷とが作る回路ループは、それぞれインダクタンスが異なるので、各回路ループを流れる電流の周期は互いに相違する。電極間を流れる電流は各回路ループを流れる電流を重畳したものであるので、結果的に、電極間には、パルス幅の長い電流パルスが流れる。
【0099】
(c)低温プラズマガス供給手段
図12において、低温プラズマガスを供給する手段は、高温プラズマ原料8、この高温プラズマ原料8にレーザビームL1を照射するレーザ源7、レーザビームが照射された高温プラズマ原料8から噴出される低温プラズマガスを指向性のよい定常流に整流する整流手段である高速噴射用ノズル9bとから構成される。
高温プラズマ原料8は、後で述べるEUV集光鏡4の光軸に対して略垂直な平面上の空間であって、第1の放電電極20a、第2の放電電極間20bの放電領域の近くに配置される。高速噴射用ノズル9bは、ノズルから噴出される低温プラズマガスが、放電領域内の細い放電チャンネルが生成される領域へ選択的に供給されるように、配置が設定される。
このように高温プラズマ原料8および高速噴射用ノズル9bを配置することにより、放電チャンネルに供給される低温プラズマガスは、EUV集光鏡4の方向には広がらない。よって、高温プラズマ原料8へのレーザビームL1の照射、および、電極間で発生する放電により生成するデブリは、EUV集光鏡4に対してほとんど進行しない。
【0100】
高速噴射用ノズル9bは、図7(a)に示したように内部に狭窄部が設けられた筒状の部材である。高速噴射用ノズル内を通過したレーザビームL1が高温プラズマ原料8に照射されると、高温プラズマ原料8は気化し、低温プラズマガスを生成する。ここで、高速噴射用ノズル9b内部に狭窄部が設けられているので、当該狭窄部と、高温プラズマ原料のレーザビームが照射される部分との間の空間内は、低温プラズマガスにより圧力が急激に上昇する。そして、低温プラズマガスは、狭窄部の開口部分から加速され、かつ、指向性のよい高速ガス流として噴射される。ここで、高速ガス流の噴射方向は、高速噴射用ノズルの方向に依存する。すなわち、気化原料の進行方向は、レーザビームの高温プラズマ原料への入射方向には依存しない。
【0101】
レーザ源7から放出されるレーザビームL1は、集光手段7a、チャンバ1に設けられた入射窓部7bを介して、高温プラズマ原料8に入射される。
ここで、レーザビームL1は、当該レーザビームの一部が第2の放電電極20bに供給された始動用原料を照射し、レーザビームL1の残りが高温プラズマ原料8に照射されるようにアライメントされる。ここで、上記したように、第2の放電電極20bの直径は、第1の放電電極20aの直径よりも大きい。よって、レーザビームL1は、第1の放電電極20aの側面を通過して第2の放電電極20bに供給された始動用原料に照射されるように容易にアライメントすることができる。
【0102】
ここで、レーザビームL1の一部を始動用原料に照射するのは、電極間で放電を開始させ、細い放電チャンネルを形成するためである。
電力供給手段13より第1の主放電電極20a、第2の主放電電極20b間に電圧が印加され、電極間電圧が閾値Vpに到達した時点(前記図5のTd+Δtd)で第2の電極20bに供給された始動用原料8”にレーザビームL1が照射されると、始動用原料8”が気化して電極間に電流が流れ始め放電が発生する。始動用原料8”は、電極間を流れる電流による加熱により、気化および加熱が進行し、プラズマとなる。電極間を流れる放電電流が増大するにつれ、放電領域に生成される放電チャンネルは、上記した放電電流による自己磁場から受ける影響が大きくなり、細くなる。すなわち、始動用原料8”に照射されるレーザビームL1の一部は、放電始動手段(レーザトリガ手段)として機能し、細い放電チャンネルの生成に寄与する。
上記したような構成により、レーザビームL1は、放電始動手段(レーザトリガ手段)ならびに低温プラズマガス供給手段の構成要素として兼用される。
【0103】
(d)EUV放射集光部
放電部20により放出されるEUV放射は、EUV放射集光部40に設けられた斜入射型のEUV集光鏡4により集光され、チャンバ1に設けられたEUV光取出部5より図示を省略した露光装置の照射光学系へ導かれる。
EUV集光鏡4は、例えば、径の異なる回転楕円体、または、回転放物体形状のミラーを複数枚具える。これらのミラーは、同一軸上に、焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置され、例えば、ニッケル(Ni)等からなる平滑面を有する基体材料の反射面側に、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、およびロジウム(Rh)などの金属膜を緻密にコーティングすることで、0°〜25°の斜入射角度のEUV光を良好に反射できるように構成されている。
なお、図12において、放電部20がEUV光集光部40より大きいように示されているが、これは理解を容易にするためであり、実際の大小関係は図12の通りではない。実際は、EUV光集光部40が放電部20より大きい。
【0104】
(e)デブリトラップ
上記した放電部20とEUV光集光部40との間には、EUV集光鏡4のダメージを防ぐために、高温プラズマと接する第1、第2の放電電極20a,20bの周辺部が高温プラズマによってスパッタされて生成する金属粉等のデブリや、放射種であるSnまたはLiに起因するデブリ等を捕捉してEUV光のみを通過させるためのデブリトラップが設置される。
図12に示すEUV光源装置においては、デブリトラップとしてホイルトラップ16が採用されている。ホイルトラップ16については、例えば、特許文献6に「フォイルトラップ」として記載されている。ホイルトラップは、高温プラズマから放射されるEUVを遮らないように、高温プラズマ発生領域の径方向に設置される複数のプレートと、そのプレートを支持するリング状の支持体とから構成されている。ホイルトラップは、放電部とEUV集光鏡との間に設けられる。ホイルトラップ内は、周囲の雰囲気より圧力が増加しているので、ホイルトラップを通過するデブリは、当該圧力の影響により運動エネルギーを減少する。よって、EUV集光鏡にデブリが衝突する際のエネルギーが減少して、EUV集光鏡のダメージを減少させることが可能となる。
【0105】
以下、図14、図15を用いて、上記したEUV光源装置の動作について説明する。例として、マルチピンチ方式を例に取る。
EUV光源装置の制御部21は、時間データΔtdを記憶している。
Δtdは、電力供給手段13のスイッチング手段であるSW1にトリガ信号が入力した時点(時刻Td)から、スイッチング手段SW1がon状態とって電極間電圧が閾値Vpに到達するまでの時間である。
一般に、放電電極に印加される電圧Vが大きいと、放電電極間の電圧波形の立ち上がりは速くなる。よって、上記したΔtdは、放電電極に印加される電圧Vに依存することになる。EUV光源装置の制御部21は、予め実験等で求めた電圧Vと時間Δtdとの関係をテーブルとして記憶している。
更に、制御部21は、パルス電力供給手段13のスイッチング手段であるスイッチSW1に主トリガ信号が出力される時点から、スイッチング手段がonとなる時点までの遅延時間d1を記憶している。
【0106】
まず、EUV光源装置の制御部からのスタンバイ指令が、排気装置、始動用原料供給ユニット、モータに送信される(図14のステップS101、図15のS201)。
スタンバイ指令を受信した、排気装置17、並びに、始動用原料供給ユニット14は動作を開始する。すなわち、排気装置17が動作し、チャンバ内が減圧雰囲気となる。また、モータ20dが動作して、第1の放電電極(回転電極)20a、第2の放電電極(回転電極)20bが回転する。更に、始動用原料供給ユニット14は、放電始動用原料の第2の放電電極20bへの供給を開始する。以下、上記した動作状態を総称してスタンバイ状態と呼ぶ(図14のステップS102、図15のS202)。
EUV光源装置の制御部21は、露光装置の制御部22にスタンバイ完了信号を送信する(図14のステップS103、図15のS203)。
スタンバイ完了信号を受信した露光装置の制御部22より、EUV光源装置の制御部21は、発光指令を受信する。なお、EUV放射の強度を露光装置側がコントロールする場合、本発光指令には、EUV放射の強度データも含まれる。(図14のステップS104、図15のS204)。
【0107】
EUV光源装置の制御部21は、充電制御信号を電力供給指令手段の充電器CH1に送信する。充電制御信号は、例えば、放電開始タイミングデータ信号等からなる。上記したように、露光装置の制御部22からの発光指令にEUV放射の強度データが含まれる場合、PFN回路部の各コンデンサCの充電電圧データ信号も上記充電制御信号に含まれる。 例えば、予め、EUV放射強度と各コンデンサCへの充電電圧との関係が実験等により求められ、両者の相関を格納したテーブルが作成される。EUV光源装置の制御部21は、このテーブルを記憶しており、露光装置の制御部22から受信した発光指令に含まれるEUV放射の強度データに基づき、テーブルよりPFN回路部の各コンデンサCの充電電圧データを呼び出す。そして呼び出した充電電圧データに基づき、EUV光源装置の制御部21は、各コンデンサCへの充電電圧データ信号を含む充電制御信号を電力供給手段13の充電器CH1に送信する(図14のステップS105、図15のS205)。
充電器CH1は上記したように各コンデンサCの充電を行う。(図14のステップS106)。
【0108】
EUV光源装置の制御部21は、電力供給手段13のスイッチSW1に主トリガ信号を出力するタイミングを基準として、レーザ源7へのトリガ信号の送出タイミングを計算する。上記タイミングは、予め記憶している時間データΔtd、d1に基づき決定する(図14のステップS107、図15のS206)。
なお、実際は、電力供給手段13のスイッチSW1に主トリガ信号が入力しスイッチSW1がonとなる時点Tdを基準として、レーザビームL1が照射される時間TLを設定することが望ましい。
本実施例では、電力供給手段13のスイッチング手段に主トリガ信号を出力する時点Td´から、当該主トリガ信号をパルス電力供給手段13のスイッチング手段に入力してスイッチング手段13がonとなる時点Tdまでの遅延時間d1を予め求めておく。そして、電力供給手段のスイッチング手段13に主トリガ信号を出力した時点Td´を上記遅延時間d1で補正して、スイッチング手段がonとなる時点Tdを求める。
【0109】
一方、トリガ信号が送出された時点TL´からレーザビームL1が照射されるまでの遅延時間d2は、レーザ源7がQスイッチ式Nd+ −YAGレーザの場合、nsオーダーと無視できる程小さいので、ここでは考えない。
すなわち、電力供給手段13のスイッチSW1に主トリガ信号を出力した時点Td´を基準として、レーザ源7へのトリガ信号の送出タイミングTL´を設定することにより、電力供給手段13のスイッチSW1に主トリガ信号が入力しスイッチSW1がonとなる時点Tdを基準としたレーザビームL1が照射される時間TLの設定が実現される。
【0110】
主トリガ信号を送信する時点を基準(時刻Td´)とするとき、レーザ源7へのトリガ信号の送出タイミングTL´は以下のように求められる。
上記したように、レーザビームL1は放電始動手段(レーザトリガ手段)として機能させるので、電極間電圧が閾値Vpに到達した時間以降に照射される必要がある。レーザビームL1が照射されるタイミングTLは、パルス電力供給手段13のスイッチング手段がonとなる時点Tdを基準としたとき、
TL≧Td+Δtd (6)
となる。よって、主トリガ信号を送信する時点Td´を基準としたときのレーザ源の動作を制御するレーザ源へのトリガ信号の送出タイミングTL´は
TL´+d2≧(Td´+d1)+Δtd (7)
となる。ここで、遅延時間d2は無視できる程小さいので、トリガ信号の送出タイミングTL´は
TL´≧Td´+d1+Δtd (8)
となる。
【0111】
本実施例では、TL´=Td´+d1+Δtd…(9)とする。
なお、電極間電圧が確実に閾値Vpを越えた時点で、レーザビームL1が照射されるように、レーザビームが照射される時点を、Δtdより幾分遅延させてもよい。この遅延時間をαと定義し、式(9)を変形すると、
TL´=Td´+d1+Δtd+α (10)
となる。
【0112】
一方、レーザビームL1は低温プラズマガス供給手段としても機能する。すなわち、放電電流の値が閾値Ipに到達した時点で、低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達しているように、レーザビームL1は高温プラズマ原料へ照射される必要がある。
【0113】
ここで閾値Ipは、上記したように、電流の自己磁場による圧縮圧力をPB 、プラズマの圧力Pp とするとき、PB ≫Pp (前記(4)式)となるように設定される。すなわち、自己磁場により低温プラズマガスを十分圧縮可能な電流値となる。
なお、上記閾値Ipは、低温プラズマガス(プラズマ内のイオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)の電子温度を20〜30eVもしくはそれ以上に加熱することが可能なエネルギーを有する電流値でもある。
レーザビームの照射時点TLが放電開始時点T1となり、放電開始後、電極間を流れる電流の大きさが閾値Ipに到達するまでの時間をΔtiとするとき、時点(T1+Δti)において、放電領域を流れる放電チャンネルの径は十分細くなっている。
【0114】
放電電流の値が閾値Ipに到達した時点で、低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達しているようにするためには、レーザビームが高温プラズマ原料に照射された時点から低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するまでの時間をΔtgとするとき、
T1+Δti≦TL+Δtg (11)
T1=TLなので、
Δti≦Δtg (12)
となるように、Δtgを設定しておく必要がある。すなわち、上式が成立するように、放電チャンネルと高温プラズマ原料8の位置、高温プラズマ原料8へのレーザビームの照射方向、レーザビームの照射エネルギーといったパラメータを予め適宜設定しておく。
本実施例では、理解を容易にするために
Δti=Δtg (13)
となるように上記パラメータが適宜設定されているものとする。
【0115】
なお、放電電流の値が確実に閾値Ipを越えた時点で、低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達しているように、放電開始から放電電流の値が閾値Ipに到達する時点(T1+ΔTi)より、レーザビーム照射から低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達する時点を幾分遅延させるようにしてもよい。この遅延時間をβと定義し、式(14)を変形すると、
T1+Δti+β=TL+Δtg (15)
T1=TLなので、
Δti+β=Δtg (16)
となる。すなわち、上式が成立するように、放電チャンネルと高温プラズマ原料8の位置、高温プラズマ原料8へのレーザビームの照射方向、レーザビームの照射エネルギーといったパラメータを予め適宜設定する。
【0116】
EUV光源装置の制御部21は、各コンデンサCの充電が安定するまでの時間であるチャージャ充電安定時間tstが経過した時点以降の時点Td´を設定し、当該時点Td´時点において、パルス電力供給手段13のスイッチSW1に対して主トリガ信号を送信する(図14のステップS108、図15のS205、S207)。
EUV光源装置の制御部21は、ステップS109で設定した、時点Td´を基準としたときのトリガ信号を送信するタイミングTL´で、トリガ信号をレーザ源7へ送信する(図14のステップS109、図15のS210)。
ステップS108おいて主トリガ信号が送出され、当該主トリガ信号が電力供給手段13のスイッチSWに入力されてから遅延時間d1経過すると、スイッチSW1(例えば、IGBT)がonとなる(図15のS207、S208)。
スイッチSW1がonとなると、第1の放電電極20a、第2の放電電極20b間の電圧が立ち上がり、時間Δtd後に、電極間電圧が閾値Vpに到達する。上記したように、この閾値Vpは、放電が発生したときに流れる放電電流の値が閾値Ip以上となる場合の電圧値である(図15のS208、S209)。
【0117】
上記したように、ステップS107において、(9)式に基づくタイミングTL´で、トリガ信号がレーザ源7へ送出される。その結果、電極間電圧が閾値Vpに到達した時点(Td+Δtd)以降の時点TLにおいてレーザビームL1が第2の電極20bに供給された始動用原料8”ならびに高温プラズマ材料8に照射される(図15のS210、S211)。
レーザビームが第2の電極20bに供給された始動用原料8”に照射されると、放電、並びに、始動用原料ガスのプラズマが発生し、電極20a,20b間を流れる放電電流の増大に伴い細い放電チャンネルが形成される。上記したように、トリガ信号送出時点TL´、レーザビーム放出時点TL、放電発生時点T1は、ほぼ同一時点と見なすことができる。また、実際上、レーザビームL1が始動用原料8”に照射される時点、レーザビームL1が高温プラズマ原料8に照射される時点も、時点TL´、TL、T1とほぼ同一時点と見なすことができる。
放電開始後、Δti経過した時点で、放電電流の大きさが上記した閾値Ipに達する(図15のS211、S212)。
【0118】
一方、レーザビームL1が始動用原料8”に照射されるのとほぼ同時に、レーザビームは高温プラズマ原料8に照射される。レーザビームが照射された高温プラズマ原料8からは、高速噴射用ノズル9bを介して、低温プラズマガスの指向性のよい定常流が細い放電チャンネルに対して噴出する。低温ガスの少なくとも一部は、放電電流の値が閾値Ipに到達した時点(T1+Δti)以降において、細い放電チャンネルに到達する(図15のS212、S213)。
なお、上記したように、放電開始後、電極間を流れる電流の大きさが閾値Ipに到達するまでの時間をΔtiと、レーザビームが高温プラズマ原料に照射された時点から低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するまでの時間Δtgは等しくなるように設定されている。
【0119】
時点(T1+Δti=T1+Δtg)から時間τheat後に、低温プラズマガスの電子温度は20〜30eVに到達して高温プラズマとなり、当該高温プラズマからのEUV放射が開始される。(図14のステップS110、図15のS211)。
細い放電チャンネルには低温プラズマガスが連続的に供給されているので、ピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果が繰り返し行われる。よって、細い放電チャンネルの径は、細くなったり広くなったり脈動状の挙動を示すが相対的に細い状態に保たれる。すなわち、低温プラズマのピンチが繰り返し行われ、EUV放射が継続する。
【0120】
ここで、従来のピンチ効果を利用したDPP方式、LAGDPP方式では、EUV放射が維持する時間は、例えば、200ns以下であるので、電流値がIp以上である放電チャンネルが継続する時間が、細い放電チャンネルに低温プラズマガスの一部が到達する時点(T1+Δti=TL+Δtg)から(200ns+τheat)以上継続するように、パルス電力供給手段および一対の電極(第1の電極20aおよび第2の電極20b)からなる放電回路を設定することにより、従来のピンチ効果を利用したDPP方式、LAGDPP方式と比較してEUV放射のロングパルス化を実現することが可能となる。
高温プラズマから放射されたEUV放射は、ホイルトラップ16を通過して集光空間に配置された斜入射型のEUV集光鏡4により集光され、チャンバ1に設けられたEUV光取出部より図示を省略した露光装置の照射光学系へ導かれる。
【0121】
本実施例のEUV発生方法においては、上記したように、予め放電領域に生成したに細い放電チャンネルに低温プラズマガスの定常流を選択的に供給しているので、従来と比較してパルス幅が長く、また、比較的電流値の小さい電流を放電領域に流してもEUV放射が可能となる。
EUV放射は、ある程度細い放電チャンネルが持続する間継続するので、放電電流パルスが従来のDPP方式、LAGDPP方式より長くなるように放電回路を構成して放電電流パルスをロングパルス化することにより、細い放電チャンネルの持続時間を従来と比較して長くすることが可能となり、その結果EUV放射のロングパルス化が実現される。
【0122】
また、放電電流の値が閾値Ipに到達した時点以降に低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するように設定することにより、低温プラズマガスのピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果が繰り返し行われる。このような繰り返しは、放電電流が継続している間持続する。本実施例では、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能であり、連続的なピンチ効果を長期間維持することができるので、EUV放射のロングパルス化を実現することができる(マルチピンチ方式)。
なお、放電電流に閾値をIp2に設定すると、低温プラズマガスは、膨張してイオン密度が減少しない程度に維持された状態で加熱されて高温プラズマとなる。このような低温プラズマガスのイオン濃度を維持しながら加熱は、放電電流が継続している間持続する。 本実施例では、放電電流パルスを従来と比較して長く設定することが可能であり、低温プラズマの加熱を持続してEUV放射に必要なプラズマの温度および密度を長期間維持することができるので、EUV放射のロングパルス化を実現することができる(非ピンチ方式)。
【0123】
本実施例では、比較的電流値の小さい電流を放電領域に流すことができるので、電極に与える熱負荷を従来と比較して小さくすることが可能となり、デブリの発生を抑制することが可能となる。
また、従来のロングパルス化技術のように、高温プラズマのピンチ状態を維持するようにプラズマ電流波形を制御する必要がないので、放電空間に大電流を流し、かつ、ピンチ効果を維持するために放電電流の波形を変化させる必要がない。よって、高精度な電流制御を必要としない。
特に本実施例においては、レーザビームを放電始動手段(レーザトリガ手段)ならびに低温プラズマガス供給手段の構成要素として兼用している。そのため、別途、放電始動手段を構成する必要がなく、装置をコンパクトに構成することが可能となる。
【0124】
(2)実施例2
実施例1においては、放電の始動は高温プラズマ原料の気化用のレーザビームの一部を第2の放電電極の始動用原料へ照射することにより行っている。放電開始後、始動用原料から細い放電チャンネルが形成される。その後、放電電流の値が所定の閾値に到達した時点以降に低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するように設定することにより、比較的細い放電チャンネルの径がある範囲内に維持されて、マルチピンチ方式によるEUV放射や非ピンチ方式によるEUV放射が行われる。
ここで、始動用原料から放出されるガスの量は微量であり、始動用原料から形成された放電チャンネルは、真空アーク放電の放電チャンネルである。このような放電チャンネルに低温プラズマガスが選択的に供給されると、真空アーク放電はガス放電へと移行する。すなわち、EUV放射時の放電チャンネルはガス放電の放電チャンネルである。
【0125】
ここで、放電始動時の真空アーク放電は、第2の放電電極における始動用原料のレーザビーム照射位置の近傍に形成されるものの位置の安定性に乏しい。EUV放射を繰り返し発生させるマルチピンチ方式の場合、レーザビームの始動用原料への照射位置を一定に保持したとしても、真空アーク放電が発生する位置、すなわち、真空アーク放電の放電チャンネルの位置は、EUV放射毎にばらつく。
真空アーク放電の放電チャンネルの位置がばらつくと、結果的には、EUV放射時のガス放電の放電チャンネルの位置も安定しないことになる。そのため、EUV放射の安定性が乏しくなる。
【0126】
実施例2に示すEUV発生方式は、このような課題を改善するものである。
具体的には、図16に示すように、上記したような放電始動手段(レーザトリガ手段)による放電開始直後に、レーザトリガ手段に使用された第1のレーザビームL1とは異なる第2のレーザビームL2を、放電領域の所定の位置に集光する。上記所定の位置とは、例えば、第1の放電電極20aと第2の放電電極20bとの間の空間において、第1のレーザビームL1の一部が始動用原料8”に照射される位置の近傍の位置である。
ここで、第2のレーザビームL2の焦点近傍では、電子放出により導電率が増加している。よって、放電チャンネルCHの位置は、レーザ焦点を設定した位置に画定される。すなわち、真空アーク放電の位置は、第2のレーザビームL2により画定される。そのため、実施例1に示すEUV放射方式を採用したEUV光源装置と比較すると、EUV放射の発生点の位置安定性が向上する。
【0127】
図17に、本発明のEUV発生方法を採用したEUV光源装置の実施例2の構成例を示す。
図17は上記EUV光源装置の概略構成図であり、EUV放射は同図右側から取り出される。
図17に示すEUV光源装置は、実施例1のEUV発生方法を採用した、図12に示すEUV光源装置に、真空アーク時の放電チャンネル位置を画定する第2のレーザビームL2を放出する第2レーザ源15、ハーフミラー7cを追加したものである。
すなわち、第2のレーザビームL2の放射手段以外の構成要素は実施例1のものと同等であるので、ここでは、第2のレーザビームL2の放射手段についてのみ説明する。
なお、実施例1において示した高温プラズマ原料8を照射するレーザビームL1は、実施例2に示す真空アーク時の放電チャンネル位置を画定する第2レーザビームL2とは相違する。よって、理解を容易にするために、実施例2においては高温プラズマ原料8を気化させるために照射するレーザビームを第1のレーザビームL1と称することにする。
【0128】
上記したように、第1のレーザビームL1は、放電始動手段(レーザトリガ手段)ならびに低温プラズマガス供給手段の構成要素として兼用される。第1レーザ源7から放出される第1のレーザビームL1は、ハーフミラー7cで折り返され、集光手段7a、チャンバ1に設けられた入射窓部7bを介して、高温プラズマ原料8に入射される。ここで、第1のレーザビームL1は、当該第1のレーザビームL1の一部が第2の放電電極2bに供給された始動用原料8”を照射し、第1のレーザビームL1の残りが高温プラズマ原料8に照射されるようにアライメントされる。
真空アーク時の放電チャンネル位置を画定する第2レーザビームL2は第2のレーザ源15から放出される。第2のレーザビームL2の波長は、上記したハーフミラー7cを透過する波長域に設定される。すなわち、第2レーザ源15から放出される第2のレーザビームL2は、ハーフミラー7cを透過し、集光手段7a、チャンバ1に設けられた入射窓部7bを介して、放電空間の所定の位置に集光される。
【0129】
略45度に傾けて配置したハーフミラー7cに対し、波長をハーフミラーの反射波長に設定した第1のレーザビームL1を反射させる。そして、波長をハーフミラー7cの透過波長に設定した第2のレーザビームL2のハーフミラー7cへの入射方向を、第1のレーザビームL1の反射方向とほぼ同じ方向にすることにより、チャンバ1に設ける入射窓部7bを1つにすることが可能となる。
第1のレーザビームL1を放出する第1のレーザ源7、第2のレーザビームを放出する第2のレーザ源15としては、例えば、Qスイッチ式ND+ −YAGレーザ装置が用いられる。第1のレーザビームL1の波長、第2のレーザビームL2の波長のいずれか一方は、例えば、波長変換素子により波長変換される。
【0130】
以下、図18、図19を用いて、上記したEUV光源装置の動作について説明する。例として、マルチピンチ方式を例に取る。
EUV光源装置の制御部21は、時間データΔtd、ΔtLを記憶している。
Δtdは、パルス電力供給手段13のスイッチング手段であるSW1にトリガ信号が入力した時点(時刻Td)から、スイッチング手段がon状態とって電極間電圧が閾値Vpに到達するまでの時間である。一方、ΔtLは、第1のレーザビームが照射される時点から第2のレーザビームが照射されるまでの遅延時間である。
【0131】
一般に、放電電極に印加される電圧Vが大きいと、放電電極間の電圧波形の立ち上がりは速くなる。よって、上記したΔtdは、放電電極に印加される電圧Vに依存することになる。EUV光源装置の制御部21は、予め実験等で求めた電圧Vと時間Δtdとの関係をテーブルとして記憶している。
更に、制御部21は、パルス電力供給手段13のスイッチング手段であるスイッチSW1に主トリガ信号が出力される時点からスイッチング手段がonとなる時点までの遅延時間d1を記憶している。
【0132】
まず、EUV光源装置の制御部21からのスタンバイ指令が、排気装置17、始動用原料供給ユニット14、モータ20dに送信される(図18のステップS301、図19のS401)。
スタンバイ指令を受信した、排気装置17、並びに、始動用原料供給ユニット14は動作を開始する。すなわち、排気装置17が動作し、チャンバ1内が減圧雰囲気となる。また、モータ20dが動作して、第1の放電電極(回転電極)20a、第2の放電電極(回転電極)20bが回転する。更に、始動用原料供給ユニット14は、放電始動用原料8”の第2の放電電極20bへの供給を開始する。以下、上記した動作状態を総称してスタンバイ状態と呼ぶ(図18のステップS302、図19のS402)。
EUV光源装置の制御部21は、露光装置の制御部22にスタンバイ完了信号を送信する(図18のステップS303、図19のS403)。
スタンバイ完了信号を受信した露光装置の制御部22より、EUV光源装置の制御部21は、発光指令を受信する。なお、EUV放射の強度を露光装置側がコントロールする場合、本発光指令には、EUV放射の強度データも含まれる。(図18のステップS304、図19のS404)。
【0133】
EUV光源装置の制御部21は、充電制御信号を電力供給手段13の充電器CH1に送信する。充電制御信号は、例えば、放電開始タイミングデータ信号等からなる。上記したように、露光装置の制御部22からの発光指令にEUV放射の強度データが含まれる場合、PFN回路部の各コンデンサCの充電電圧データ信号も上記充電制御信号に含まれる。 例えば、予め、EUV放射強度と各コンデンサCへの充電電圧との関係が実験等により求められ、両者の相関を格納したテーブルが作成される。EUV光源装置の制御部21は、このテーブルを記憶しており、露光装置の制御部22から受信した発光指令に含まれるEUV放射の強度データに基づき、テーブルよりPFN回路部の各コンデンサCの充電電圧データを呼び出す。そして呼び出した充電電圧データに基づき、EUV光源装置の制御部21は、各コンデンサCへの充電電圧データ信号を含む充電制御信号を電力供給手段13の充電器CH1に送信する(図18のステップS305、図19のS405)。
充電器CH1は上記したように各コンデンサCの充電を行う。(図18のステップS306)。
【0134】
EUV光源装置の制御部21は、電力供給手段13のスイッチSW1に主トリガ信号を出力するタイミングを基準として、第1レーザ源7への第1トリガ信号の送出タイミングを計算する。上記タイミングは、予め記憶している時間データΔtd、d1に基づき決定する。また、EUV光源装置の制御部21は、算出した第1トリガ信号の送出タイミングと、予め記憶している時間データΔtLに基づき、第2レーザ源15への第2トリガ信号の送出タイミングを計算する(図18のステップS307、図19のS406)。
なお、実際は、パルス電力供給手段13のスイッチSW1に主トリガ信号が入力しスイッチSW1がonとなる時点Tdを基準として、第1のレーザビームL1が照射される時間TL1を設定することが望ましい。
本実施例では、パルス電力供給手段13のスイッチング手段に主トリガ信号を出力する時点Td´から、当該主トリガ信号がパルス電力供給手段13のスイッチング手段に入力されスイッチング手段がonとなる時点Tdまでの遅延時間d1を予め求めておく。そして、上記電力供給手段13のスイッチング手段に主トリガ信号を出力した時点Td´を上記遅延時間d1で補正して、スイッチング手段がonとなる時点Tdを求める。
【0135】
一方、第1トリガ信号が送出された時点TL1´から第1のレーザビームが照射されるまでの遅延時間d2は、第1のレーザ源がQスイッチ式Nd+ −YAGレーザの場合、nsオーダーと無視できる程小さいので、ここでは考えない。
すなわち、電力供給手段13のスイッチSW1に主トリガ信号を出力した時点Td´を基準として、第1レーザ源7へのトリガ信号の送出タイミングTL1´を設定することにより、電力供給手段13のスイッチSW1に主トリガ信号が入力しスイッチSW1がonとなる時点Tdを基準とした第1のレーザビームが照射される時間TL1の設定が実現される。
【0136】
主トリガ信号を送信する時点を基準(時刻Td´)とするとき、レーザ源7へのトリガ信号の送出タイミングTL1´は以下のように求められる。
上記したように、第1のレーザビームL1は放電始動手段(レーザトリガ手段)として機能させるので、電極間電圧が閾値Vpに到達した時間以降に照射される必要がある。第1のレーザビームL1が照射されるタイミングTL1は、パルス電力供給手段13のスイッチング手段がonとなる時点Tdを基準としたとき、TL1≧Td+Δtd…(17)となる。
よって、主トリガ信号を送信する時点Td´を基準としたときの第1レーザ源7の動作を制御する第1レーザ源7への第1トリガ信号の送出タイミングTL1´は、TL1´+d2≧(Td´+d1)+Δtd…(18)となる。
ここで、遅延時間d2は無視できる程小さいので、第1トリガ信号の送出タイミングTL´は、TL1´≧Td´+d1+Δtd…(19)となる。
本実施例では、TL1´=Td´+d1+Δtd…(20)とする。
なお、電極間電圧が確実に閾値Vpを越えた時点で、第1のレーザビームが照射されるように、第1のレーザビームが照射される時点を、Δtdより幾分遅延させてもよい。この遅延時間をαと定義し、式(19)を変形すると、
TL1´=Td´+d1+Δtd+α…(21)となる。
【0137】
一方、本実施例では、真空アーク放電の放電チャンネルの位置を画定させるために、第2のレーザビームL2を放電領域の所定の位置に集光する。上記所定の位置とは、例えば、第1の放電電極20aと第2の放電電極20bとの間の空間において、第1のレーザビームL1の一部が始動用原料8”に照射される位置の近傍の位置である。
ここで、第2のレーザビームL2は、真空アーク放電の放電チャンネルの位置を画定させるものであるため、第2のレーザビームL2の照射タイミングTL2は、放電開始後に設定する必要がある。一方、放電が開始して電流が増加し、ある程度放電チャンネルが確立してしまったあとに第2のレーザビームを照射しても、放電チャンネルの位置を画定することは困難となる。すなわち、第2のレーザビームは、放電開始後であって、放電チャンネルが確立する前の時点TL2で上記所定の位置に照射する必要がある。
【0138】
ここで、実際上、第1のレーザビームL1の放出時点TL1は、第1のレーザビームL1が第2の電極20bの始動用原料8”に照射されて放電発生する放電発生時点T1とほぼ同一時点と見なすことができる。上記したように、第1トリガ信号が送出された時点TL1´から第1のレーザビームL1が照射されるまでの遅延時間d2は無視できる程小さいので、結局、第1トリガ信号送出時点TL1´、第1レーザビーム放出時点TL1、放電発生時点T1は、ほぼ同一時点と見なすことができる。
よって、第2のレーザビームL2の放出時点TL2は、第1トリガ信号送出時点TL1´を基準として設定される。
ここで、第2トリガ信号が送出された時点TL2´から第2のレーザビームL2が照射されるまでの遅延時間d3は、第2のレーザ源がQスイッチ式Nd+ −YAGレーザの場合、nsオーダーと無視できる程小さいので、ここでは考えない。すなわち、第1トリガ信号送出時点TL1´を基準として、第2トリガ信号送出時点TL2´を適宜設定することにより、レーザビームの放出時点TL2を設定することが可能となる。
【0139】
上記したように、EUV光源装置の制御部21は、第1のレーザビームL1が照射される時点から第2のレーザビームL2が照射されるまでの遅延時間ΔtLを記憶している。よって、第2トリガ信号送出時点TL2´は、以下の式で求められる。
TL2´=TL1´+ΔtL (22)
ここで、式(22)に式(20)を代入することにより、第2トリガ信号送出タイミングTL2´を、主トリガ信号を送信する時点Td´を基準として求めることができる。
TL2´=Td´+d1+Δtd+ΔtL (23)
なお、電極間電圧が確実に閾値Vpを越えた時点で、第1のレーザビームL1が照射されるように設定した場合は、第2トリガ信号送出タイミングは、式(22)に式(21)を代入することにより、主トリガ信号を送信する時点Td´を基準として求められる。
TL2´=Td´+d1+Δtd+ΔtL+α (24)
【0140】
第2トリガ信号の送出タイミングTL2´を上記のように設定することにより、第2のレーザビームは、放電開始後であって、放電チャンネルが確立する前の時点TL2で、上記所定の位置に集光される。放電チャンネルの位置は、レーザ焦点を設定した位置に画定される。すなわち、真空アーク放電の位置は、第2のレーザビームにより画定される。
【0141】
ところで、第1のレーザビームL1は低温プラズマガス供給手段としても機能する。すなわち、放電電流の値が閾値Ipに到達した時点で、低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達しているように、第1のレーザビームは高温プラズマ原料へ照射される必要がある。
【0142】
ここで閾値Ipは、上記したように、電流の自己磁場による圧縮圧力をPB 、プラズマの圧力Pp とするとき、PB ≫Pp (前記(4)式)となるように設定される。すなわち、自己磁場により低温プラズマガスを十分圧縮可能な電流値となる。
なお、上記閾値Ipは、低温プラズマガス(プラズマ内のイオン密度が1017〜1020cm-3程度、電子温度が1eV以下程度)の電子温度を20〜30eVもしくはそれ以上に加熱することが可能なエネルギーを有する電流値でもある。
第1のレーザビームの照射時点TL1が放電開始時点T1となり、放電開始後、電極間を流れる電流の大きさが閾値Ipに到達するまでの時間をΔtiとするとき、時点(T1+Δti)において、放電領域を流れる放電チャンネルの径は十分細くなっている。
【0143】
放電電流の値が閾値Ipに到達した時点で、低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達しているようにするためには、第1のレーザビームが高温プラズマ原料に照射された時点から低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するまでの時間をΔtgとするとき、
T1+Δti≦TL1+Δtg (25)
T1=TL1なので、
Δti≦Δtg (26)
となるように、Δtgを設定しておく必要がある。すなわち、上式が成立するように、放電チャンネルと高温プラズマ原料の位置、高温プラズマ原料への第1のレーザビームの照射方向、第1のレーザビームの照射エネルギーといったパラメータを予め適宜設定しておく。
本実施例では、理解を容易にするために
Δti=Δtg (27)
となるように上記パラメータが適宜設定されているものとする。
【0144】
なお、放電電流の値が確実に閾値Ipを越えた時点で、低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達しているように、放電開始から放電電流の値が閾値Ipに到達する時点(T1+ΔTi)より、第1のレーザビーム照射から低温プラズマガスの少なくとも一部が選択的に細い放電チャンネルに到達する時点を幾分遅延させるようにしてもよい。この遅延時間をβと定義し、式(22)を変形すると、
T1+Δti+β=TL1+Δtg (28)
T1=TL1なので、
Δti+β=Δtg (29)
となる。すなわち、上式が成立するように、放電チャンネルと高温プラズマ原料の位置、高温プラズマ原料へのレーザビームの照射方向、レーザビームの照射エネルギーといったパラメータを予め適宜設定する。
【0145】
EUV光源装置の制御部21は、各コンデンサCの充電が安定するまでの時間であるチャージャ充電安定時間tstが経過した時点以降の時点Td´を設定し、当該時点Td´時点において、高圧発生手段のスイッチSW1に対して主トリガ信号を送信する(図18のステップS308、図19のS405、S407)。
ついで、EUV光源装置の制御部21は、ステップS307で設定した、時点Td´を基準としたときの第1トリガ信号を送信するタイミングTL1´で、第1トリガ信号をレーザ源へ送信する。また、時点Td´を基準としたときの第2トリガ信号を送信するタイミングTL2´で、第2トリガ信号を第2のレーザ源15へ送信する。(図18のステップS309、図19のS410、S412)。
【0146】
ステップS308おいて主トリガ信号が送出され、当該主トリガ信号が電力供給手段13のスイッチSW1に入力されてから遅延時間d1経過すると、スイッチSW1(例えば、IGBT)がonとなる(図19のS407、S408)。
スイッチSW1がonとなると、第1の回転電極20a、第2の回転電極20b間の電圧が立ち上がり、時間Δtd後に、電極間電圧が閾値Vpに到達する。上記したように、この閾値Vpは、放電が発生したときに流れる放電電流の値が閾値Ip以上となる場合の電圧値である(図19のS408、S409)。
上記したように、ステップS309において、(20)式に基づくタイミングTL1´で、第1トリガ信号が第1レーザ源へ送出される。その結果、電極間電圧が閾値Vpに到達した時点(Td+Δtd)以降の時点TL1において、第1のレーザビームが第2の電極に供給された始動用原料8”ならびに高温プラズマ材料8に照射される(図19のS410、S411)。
【0147】
第1のレーザビームL1が第2の電極20bに供給された始動用原料8”に照射されると、放電、並びに、始動用原料ガスのプラズマが発生し、電極間を流れる放電電流の増大に伴い細い放電チャンネルが形成される。
上記したように、第1トリガ信号送出時点TL1´、第1レーザビーム放出時点TL1、放電発生時点T1は、ほぼ同一時点と見なすことができる。また、実際上、第1のレーザビームL1が始動用原料8”に照射される時点、第1のレーザビームL1が高温プラズマ原料8に照射される時点も、時点TL´、TL、T1とほぼ同一時点と見なすことができる。
また、上記したように、ステップS309において、(23)式に基づくタイミングTL2´で、第2トリガ信号が第2レーザ源15へ送出される。その結果、放電開始時点T1後であって、放電チャンネルが確立する前の時点TL2で上記所定の位置に第2のレーザビームL2が集光される。放電チャンネルの位置は、レーザ焦点を設定した位置に画定される。すなわち、真空アーク放電の位置は、第2のレーザビームL2により画定される(図19のS412、S413)。
放電開始後、Δti経過した時点で、放電電流の大きさが上記した閾値Ipに達する(図19のS411、S414)。
【0148】
一方、第1のレーザビームL1が始動用原料8”に照射されるのとほぼ同時に、第1のレーザビームL1は高温プラズマ原料8に照射される。第1のレーザビームL1が照射された高温プラズマ原料8からは、高速噴射用ノズルを介して、低温プラズマガスの指向性のよい定常流が細い放電チャンネルに対して噴出する。低温ガスの少なくとも一部は、放電電流の値が閾値Ipに到達した時点(T1+Δti)以降において、細い放電チャンネルに到達する(図19のS414、S415)。
なお、上記したように、放電開始後、電極間を流れる電流の大きさが閾値Ipに到達するまでの時間をΔtiと、レーザビームL1が高温プラズマ原料に照射された時点から低温プラズマガスの少なくとも一部が放電チャンネルに到達するまでの時間Δtgは等しくなるように設定されている。
【0149】
時点(T1+Δti=T1+Δtg)から時間τheat後に、低温プラズマガスの電子温度は20〜30eVに到達して高温プラズマとなり、当該高温プラズマからのEUV放射が開始される。(図18のステップS310、図19のS416)。
細い放電チャンネルには低温プラズマガスが連続的に供給されているので、ピンチ効果もしくは自己磁場による閉じ込め効果が繰り返し行われる。よって、細い放電チャンネルの径は、細くなったり広くなったり脈動状の挙動を示すが相対的に細い状態に保たれる。すなわち、低温プラズマのピンチが繰り返し行われ、EUV放射が継続する。
【0150】
ここで、従来のピンチ効果を利用したDPP方式、LAGDPP方式では、EUV放射が維持する時間は、例えば、200ns以下であるので、電流値がIp以上である放電チャンネルが継続する時間が、細い放電チャンネルに低温プラズマガスの一部が到達する時点(T1+Δti=TL+Δtg)から(200ns+τheat)以上継続するように、パルス電力供給手段および一対の電極(第1の電極および第2の電極)からなる放電回路を設定することにより、従来のピンチ効果を利用したDPP方式、LAGDPP方式と比較してEUV放射のロングパルス化を実現することが可能となる。
高温プラズマから放射されたEUV放射は、ホイルトラップ16を通過して集光空間に配置された斜入射型のEUV集光鏡4により集光され、チャンバ1に設けられたEUV光取出部5より図示を省略した露光装置の照射光学系へ導かれる。
【0151】
本実施例のEUV発生方法においては、実施例1のEUV発生方法と同様、マルチピンチ方式、非ピンチ方式により、EUV放射のロングパルス化を実現することができる。
また、電極に与える熱負荷を従来と比較して小さくすることが可能となり、デブリの発生を抑制することが可能となる。さらに、従来のロングパルス化技術のように、放電空間に大電流を流し、かつ、ピンチ効果を維持するために放電電流の波形を変化させる必要がない。すなわち、高精度な電流制御を必要としない。
特に本実施例においては、第1のレーザビームL1とは異なる第2のレーザビームL2を、放電領域の所定の位置に集光する。上記所定の位置とは、例えば、第1の放電電極20aと第2の放電電極20bとの間の空間において、第1のレーザビームL1の一部が始動用原料8”に照射される位置の近傍の位置である。
これにより、真空アークの放電チャンネルの位置を、レーザ焦点を設定した位置に画定することができる。すなわち、真空アーク放電の位置を、第2のレーザビームL2により画定することにより、実施例1に示すEUV放射方式を採用したEUV光源装置と比較して、EUV放射の発生点の位置安定性が向上させることができる。
【0152】
なお、ガス放電の放電チャンネル位置を画定する第2のレーザビームL2のパルス幅は、ある程度短パルスであることが望ましい。第2のレーザビームL2のパルス幅が短パルスであると、第2のレーザビームのピークパワーが大きくなる。すなわち、第2のレーザビームL2が集光される領域のイオンのドリフトが小さくなり、かつ、電離度が大きくなる。よって、放電チャンネルの径はより細くなり、しかも放電チャンネルの境界が明確となる。上記パルス幅は、例えば、1ns以下が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明において高温プラズマ原料がEUV放射の条件を満足する条件に達するまでの経路を説明する図である。
【図2】本発明のロングパルス化(マルチピンチ方式)方法を説明する図である。
【図3】本発明のロングパルス化(非ピンチ方式)方法を説明する図である。
【図4】本発明に基づくEUV光源装置の基本構成例を示す図である。
【図5】本発明におけるEUV生成方式を説明するタイムチャートである。
【図6】本発明における整流機構の例を示す図(1)である。
【図7】本発明における整流機構の例を示す図(2)である。
【図8】本発明における整流機構の例を示す図(3)である。
【図9】本発明における整流機構の例を示す図(4)である。
【図10】電極位置、高温プラズマ原料位置、エネルギービーム(レーザビーム)照射位置の位置関係を示す図(1)である。
【図11】電極位置、高温プラズマ原料位置、エネルギービーム(レーザビーム)照射位置の位置関係を示す図(2)である。
【図12】本発明の極端紫外光(EUV)発生方法を採用したEUV光源装置の実施例1の構成例を示す図である。
【図13】電力供給手段の等価回路の構成例を示す図である。
【図14】実施例1の動作を示すフローチャートである。
【図15】実施例1の動作を示すタイムチャートである。
【図16】本発明の実施例2を説明する図である。
【図17】本発明の極端紫外光(EUV)発生方法を採用したEUV光源装置の実施例2の構成例を示す図である。
【図18】実施例2の動作を示すフローチャートである。
【図19】実施例2の動作を示すタイムチャートである。
【図20】高温プラズマ原料がEUV放射の条件を満足する条件に達するまでの経路を説明する図である。
【図21】従来のDPP方式のEUV発生装置におけるプラズマ電流I、プラズマ柱の半径r、EUV放射出力の関係を示す図である。
【図22】従来のDPP方式のEUV発生装置においてロングパルス化した場合のプラズマ電流I、プラズマ柱の半径r、EUV放射出力の関係を示す図である。
【図23】EUV放射のロングパルス化方法を実現するための従来のDPP方式EUV光源装置の構成例
【符号の説明】
【0154】
1 チャンバ
2a 第1の電極
2b 第2の電極
4 EUV集光鏡
5 EUV光取出口
7 第1のレーザ源
8 高温プラズマ原料
8” 低温プラズマガス
9a 管状ノズル
9b 高速噴射ノズル
13 パルス電力供給手段
14 始動用原料供給ユニット
15 第2のレーザ源
16 ホイルトラップ
17 排気装置
20a 第1の放電電極
20b 第2の放電電極
20c 絶縁材
20d モータ
20e 回転シャフト
20f 第2の摺動子
20g 第1の摺動子
20h メカニカルシール
21 制御部
22 露光機の制御部
L1,L2 レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電領域外で、原料に原料気化用エネルギービームを照射して気化させ、該気化させた原料ガスに放電によってエネルギーを注入して高温プラズマを生成し、該高温プラズマから極端紫外光を発生させる方法において、
放電領域に放電経路を形成し、該形成された放電経路に、前記気化させた原料ガスを供給して、高温プラズマを生成する
ことを特徴とする極端紫外光発生方法。
【請求項2】
上記放電経路に放電経路固定用エネルギービームを照射し、該エネルギービームにより放電経路を固定する
ことを特徴とする請求項1に記載の極端紫外光発生方法。
【請求項3】
上記放電経路に供給される原料ガスのイオン密度は、極端紫外光放射条件におけるイオン密度にほぼ等しく、
放電により、上記原料ガスを極端紫外光放射条件を満たす温度まで加熱し、連続的に200ns以上の極端紫外光を発生させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の極端紫外光発生方法。
【請求項4】
上記放電は、電極間に電流パルスを供給することにより発生するものであって、該電流パルスが供給されている期間を含む、該電流パルスの幅より長い期間、上記原料ガスを上記放電経路に供給する
ことを特徴とする請求項1,2または請求項3に記載の極端紫外光発生方法。
【請求項5】
上記エネルギービームがレーザビームである
ことを特徴とする請求項1,2,3または請求項4に記載の極端紫外光発生方法。
【請求項6】
容器と、この容器内に設けられ、所定距離だけ離間した一対の電極と、該電極にパルス電力を供給するパルス電力供給手段と、
上記電極間に形成された放電経路に、極端紫外光を放射させるための気化された原料ガスを供給する原料供給手段と、
上記放電経路で生成される高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光光学手段と、
上記集光される極端紫外光を取り出す極端紫外光取出部とを有する極端紫外光光源装置であって、
上記パルス電力供給手段は、上記電極間に1μs以上のパルス電力を供給して放電経路を形成し、
上記原料供給手段は、
上記放電経路外の空間であって、気化された原料が放電経路に到達できる空間内に配置された原料にエネルギービームを照射して、該原料を気化させるエネルギービーム照射手段を備え、上記放電経路に、イオン密度が極端紫外光放射条件におけるイオン密度にほぼ等しい原料ガスを供給する
ことを特徴とする極端紫外光光源装置。
【請求項7】
第2のエネルギービーム照射手段を備え、
上記放電経路に、第2のエネルギービーム照射手段から放電経路固定用エネルギービームを照射して、該エネルギービームにより放電経路を固定する
ことを特徴とする請求項6に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項8】
始動用の原料を上記電極の近くに配置し、放電に先立って始動用の原料を上記放電が発生する領域に供給する
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項9】
上記エネルギービームがレーザビームである
ことを特徴とする請求項6,7または請求項8に記載の極端紫外光光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−87807(P2009−87807A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257442(P2007−257442)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】