説明

極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法、およびそれによる凹版印刷用原版

【課題】極細線を有する凹版印刷原版の成作方法、およびそれによる凹版印刷原版の提供。
【解決手段】印刷原板にポジタイプのフォトレジスタを所定厚さ塗布する第1工程、所定パターンを描画されたフォトマスクを原板のフォトレジスタに被せる第2工程、該フォトマスクを介してフォトレジスタに紫外線または電子ビームを所定条件にて照射し、フォトレジスタの照射部を硬化させる第3工程、フォトマスクを開放し、非照射フォトレジスタ部を所定条件により除去する第4工程とを備え、フォトマスクの描画の線幅が10〜30μmであり、またフォトレジスタの所定厚さが1〜30μm、前記照射時間が15〜200秒であり、実用的尺度において、従来の標準照射時間の5〜20倍である凹版印刷用原版の作成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主として凹版印刷に使用される極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法、およびそれによる凹版印刷用原版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷技術は世紀以前より面々と引き継がれて発達してきたが、近年特にIC技術の発展と共に繊細画像の作成精度向上が図られ、印刷線幅も数μmオーダーから1μmの印刷が可能となり、さらには0.1μmオーダの実現が図られている。
極細線の印刷技術は、IC技術分野ばかりでなく、電磁波シールド技術、携帯電話用アンテナ分野等応用範囲が広く、各所において積極的な研究が進められている。
特に、導電性を付与した極細線については多くの研究がなされている。(例えば、特許文献1、2参照)
【特許文献1】特開2004−055566号公報
【特許文献2】特開2003−306792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、市場要求として、より極細線の鮮明な印刷画像を求める傾向が強くなりており、このためには印刷原版における、より極細の線による版が必要であり、この実現が強く求められてきた。
本願発明は、これらの要求に応えるものとして、基本的に従来の原版製作工程、設備を大幅に変更することなしに、極めて容易で、且つ経済的な凹版印刷用原版の作成方法、およびそれによる凹版印刷用原版を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法は、
1) 凹版印刷用原版の作成方法であって、印刷原板に解像度の高いポジタイプのフォトレジスタを所定厚さ塗布する第1工程、所定パターンを描画されたフォトマスクを原板に被せる第2工程、該フォトマスクを介してフォトレジスタに紫外線または電子ビームを標準照射条件に対し増大された所定条件にて照射し、前記フォトレジスタの照射部を焼き付け硬化させる第3工程、フォトマスクを開放し、非照射された前記所定パターン部よりフォトレジスタを所定条件により除去する第4工程とを備えたものである。
【0005】
2) 上述1)いおいて、前記フォトマスクの描画が線幅10〜50μmの細線を有し、フォトレジスタの所定厚さが1〜30μmであり、且つ、前記極細線の線幅を0.1〜10μmとしたものであり、
3) 上述の1)または2)において、前記焼き付け硬化させる増大された所定条件は、照射条件における照射時間を15〜200秒としたものであり、
4) 上述1)または2)における、前記焼き付け硬化させる増大された所定条件における照射時間を、実用的尺度において、従来の標準照射時間の5〜20倍としたものであり、
5) 上述1)〜4)において、前記非照射されたフォトレジスタ部を除去する所定条件を、先端形状が10μmR以下の極細繊維によって構成された回転ブラシにより、ブラッシング相対速度0.3〜3cm/秒にて極めて軽度のブラッシング研磨行うものであり、
6) 上述1)〜5)において、前記極細繊維のブラシの材料が、メラミン、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、硬質ナイロンの各樹脂の群より選ばれたものであり、
【0006】
また、本発明の凹版印刷用原版は、
7) 上述1)〜6)に記載の極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法により作成されたものである。
【0007】
前述のごとく、本発明は、凹版印刷用原版における従来の極細線に対し、より極細な極細線の作成を、従来の原版作成手法、および設備を大幅に変えることなく実現するものであり、フォトレジスタの厚さhと紫外線または電子ビ−ムによる焼き付け硬化時間tを適度に選択することにより容易に作成するところに特徴がある。
従って、図1は、本発明の凹版印刷用原版の作成工程の流れ図であるが、工程の順序そのものは基本的に従来のものと変わらない。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、従来の原版作成手法、および設備を大幅に変えることなしに、市場の要求に合った、より極細の線を有する凹版印刷用原版を容易に、且つ経済的に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の、極細線の鮮明な印刷画像は、基本的に原版の凹部の深さhが微少である凹版により可能となる。すなわち、極細線の印刷可能な線幅tは、基本的に凹版の凹部巾b、凹部深さhにほぼ比例しており、凹版の凹部深さhは0.1〜30μmであることにより、極細線巾tが1〜10μmの凹版作成が可能となる。
【0010】
図1は、凹版印刷用原版の作成工程の流れ図である。
図において、OP1はAl合金製の凹版印刷用原板へのフォトレジスタ塗布工程、OP2はフォトマスク被覆工程、OP3は紫外線(以下、UVという)または電子ビーム(以下EBという)照射工程(焼付け硬化処理工程),OP4は非照射部除去工程である。
また、図2は、図1におけるOP3のUVまたは電子ビーム照射工程における凹版印刷用原版の断面を示す参考図である。
図3は、図2におけるA部分の拡大参考図である。
図において、1は凹版原版、2はフォトマスク、3は描画像、31は焼付け硬化部、32は非焼付け硬化部、33は当初の焼付け硬化ライン、34は所定照射時間後の焼き付け硬化ラインである。
【0011】
凹版原版には通常使用されているアルミ合金製凹版原板1を用いる。該凹版原版1の表面に、フォトレジスタ2を通常の手法により所定厚さ1〜30μm塗布する。
フォトレジスタ2には解像度の高いポジタイプのフォトレジスタを使用することが望ましい。
該フォトレジスタ2の表面にコンピュータシステムにより所定パターンの描画像21を描画されたフォトマスク3を原板に被覆する。
該フォトマスク3を介してフォトレジスタにUVまたはEBを、通常の標準照射条件に対し増大された所定条件、すなわち照射時間を15〜200secとして照射する。これは実用的尺度においては、従来の標準照射条件における照射時間の約5〜20倍として照射する。
【0012】
本発明は、このUVまたはEBの照射時間を、従来の通常の標準照射条件に対して大幅に条件アップするところに、その特徴ポイントが存在する。
すなわち、照射時間を大幅にアップすることによりフォトマスク2を介したフォトレジスタ3の焼付け硬化部分31と非焼付け硬化部分32との境界線である焼付け硬化ラインは、当初の焼付け硬化ライン33から、その照射時間の延長と共にフォトマスク2の描画像21の内側にまで照射の影響がおよび、従って、非焼付け硬化部分32は細減化され、所定照射時間後焼付け硬化ライン34に後退する。
【0013】
照射後、フォトマスク2を取り除き、直ちに前記非焼付け硬化部分32のフォトレジスタ除去処理工程を施行する。この場合、除去に使用する工具は、先端形状が0.1μmR以下の極細繊維により構成された回転ブラシであり、回転ブラシの周速度および送り速度による相対ブラッシング速度が約0.3〜3cm/secにてブラシ先端の軽接触により行う。
ブラシの材質は、比較的強度、耐熱性の高い合成樹脂材であれば特には選ばないが、メラミン、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、硬質ナイロンの各樹脂の群より選ぶことが好ましい。殊にメラミン樹脂は、先端による切削性もよく短時間での除去が可能で好ましい。
【0014】
基本的に上記作業条件による工程により、本発明の目的とする極細線用凹版原版を作成することができる。
【実施例】
【0015】
本発明の1実施例を下記に示す。
凹版原板:
300mm×300mm×1mm アルミ合金原板(表面粗さHmax0.5S)
フォトレジスタ: ポジタイプ(東レ製)
厚さh;1〜5μm(A)、5〜10μm(B)、10〜20μm(C)
、50〜70μm(D)
フォトマスク: プラスチックフィルム(厚さhm0.1mm)
描画像;線幅30μm×高さ2μm×ピッチ0.2mm 平行線
UV照射条件: メタルハライドランプ3KW
照射距離H;500mm、
照射時間t;15、30、60、100、200sec
非照射部除去条件:メラミン樹脂針状繊維ブラシ 単位[mm]
外経D×長さL×針状繊維直径d×針状繊維長さl×針状先端半径r×ピッチp
(100×350×0.1×35×10μmR×0.15)
相対ブラッシング速度v: 1.5cm/sec
【0016】
第1工程においてフォトレジスタ塗布厚みhを上記A〜Dの5段階のものを準備し、同一仕様のフォトマスク2を密着被覆後、UV照射条件(照射時間)の変化に伴う描画像21、特に線幅の変化につき比較テストした。
図4は、本実施例における、フォトレジスタ塗布厚みh、UV照射条件(照射時間)の変化と描画像21、特にその線幅の変化につき比較テストした結果を示す。
【0017】
図4の結果より、フォトレジスタ厚さhが1〜5μm(A)の場合はUV照射時間を長くしても、線幅bは20%程度の変化であり、5〜10μm(B)の場合は、線幅変化は60%程度、10〜20μm(C)では70%程度とUV照射時間を長くすると明らかに線幅への影響がみられる。しかし、50〜70μm(D)の場合は、短時間で線幅そのものの精度悪化が著しくなり、望ましくない。
【0018】
従って、本発明の要旨である、UV照射条件を変化させることによる、描画像の線幅微細化に関しては、フォトレジスタ2の厚さおよびUV照射時間にある適正範囲があることがわかった。 フォトレジスタ2の厚さは5〜30μm、好ましくは5〜20μmであり、UV照射時間は70〜200sec、好ましくは100〜150secである。
【0019】
本実施例による、凹原版を使用してオフセット印刷を行った結果、上記の条件D以外の凹版原版において、所望の印刷結果を得ることができた。
なお、本実施例は、上記の特定の条件につき行ったものであり、特許請求の範囲において他の条件を妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本願発明の凹版原版により極細線の印刷が可能となり、さらに磁性粉の適用によりアンテナ、電磁波遮断チップ等の微少化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の極細線を有する凹版印刷用原版の作成工程の流れ図である。
【図2】図1における、OP3工程における状態を説明するための断面参考図である。
【図3】図2における部分拡大参考図である。
【図4】本実施例における、フォトレジスタ塗布厚みh、UV照射条件(照射時間)と凹版描画線幅との関係をテストした結果を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 凹版原板
2 フォトマスク
21 描画像
3 フォトレジスタ
31 焼付け硬化部
32 非焼付け部
33 当初焼付け硬化ライン
34 所定照射時間後の焼付け硬化ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹版印刷用原版の作成方法であって、印刷原板に解像度の高いポジタイプのフォトレジスタを所定厚さ塗布する第1工程、所定パターンを描画されたフォトマスクを原板に被せる第2工程、該フォトマスクを介してフォトレジスタに紫外線または電子ビームを標準照射条件に対し増大された所定条件にて照射し、前記フォトレジスタの照射部を焼き付け硬化させる第3工程、フォトマスクを開放し、非照射された前記所定パターン部よりフォトレジスタを所定条件により除去する第4工程とを備えた、極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法。
【請求項2】
前記フォトマスクの描画が線幅10〜50μmの細線を有し、フォトレジスタの所定厚さが1〜30μmであり、且つ、前記極細線の線幅が0.1〜10μmよりなることを特徴とする請求項1に記載の極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法。
【請求項3】
前記焼き付け硬化させる増大された所定条件は、照射条件における照射時間が15〜200秒であることを特徴とする請求項1または2に記載の極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法。
【請求項4】
前記焼き付け硬化させる増大された所定条件における照射時間が、実用的尺度において、従来の標準照射時間の5〜20倍であるであることを特徴とする請求項1または2に記載の極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法。
【請求項5】
前記非照射されたフォトレジスタ部を除去する所定条件は、先端形状が10μmR以下の極細繊維によって構成された回転ブラシにより、相対ブラッシング速度0.3〜3cm/秒にて行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法。
【請求項6】
前記極細繊維のブラシの材料が、メラミン、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、硬質ナイロンの各樹脂の群より選ばれたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれか1項記載の極細線を有する凹版印刷用原版の作成方法により作成された凹版印刷用原版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−184439(P2006−184439A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376541(P2004−376541)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(503157319)
【Fターム(参考)】