説明

極細長繊維不織布の製造方法

【課題】ニードルパンチ法による極細長繊維不織布の製造方法において、目付が変化するのを抑制し、高目付人工皮革用極細長繊維不織布を製造する方法を提供することにある。
【解決手段】極細化可能剥離分割型複合繊維を紡出、高速牽引してネット上に捕集して得られた薄層繊維シート状物をエンボスカレンダーで熱処理し、2枚以上積層後にニードルパンチ交絡処理及び極細化処理をその順序で行って極細長繊維不織布とする製造方法において、下記要件を満足することを特徴とする極細長繊維不織布の製造方法。
a)薄層繊維シート状物1枚の目付が20〜45g/mであること。
b)エンボスカレンダー処理後の薄層繊維シートの剛軟度値を3〜6cmとすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離分割型複合繊維を人工皮革用極細長繊維不織布とする製造方法に関するものである。更に詳しくは品位、目付、密度の安定した人工皮革用極細長繊維不織布を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工皮革は靴、ボール、鞄、家具・車輌、衣料など広い用途に使用されているが、各用途においてその加工性の優れたものが望まれている。その一方法として分割極細繊維の熱収縮による高密度の不織布が提案され、特に銀面人工皮革においてはこれらの高密度不織布を使用することにより近年、大幅にその加工性が向上している。これらの人工皮革用高密度極細長繊維不織布を製造する方法として、スパンボンド紡糸法による製造方法が提案されており、紡出した繊維をネットコンベアー上に捕集した後、繊維同士をエンボスカレンダーロールで点熱圧着させて不織布用の薄層繊維シートを成形し、ニードルパンチや高圧水流により繊維を交絡する方法が提案されている。その中で高圧水流法は設備が高価であり、高目付、高密度不織布の場合内部まで交絡し難いという欠点がある。そのため人工皮革用のように比較的高目付の場合ニードルパンチ法で行うことが好ましく、これまで多くの方法が提案されている。(例えば特許文献1、特許文献2)
【0003】
確かに提案の方法で繊維同士の交絡は達成できるものの、しかしながら、長時間生産する場合、経時的に繊維同士のニードルパンチでの交絡性が変わり、結果的に不織布の目付、密度が変動するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−69821号公報
【特許文献2】特開2005−171430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、ニードルパンチ法による高目付極細長繊維不織布の製造方法において、不織布目付が変化するのを抑制し、品質の安定した人工皮革用極細長繊維不織布を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記方法により安定化できることを見出した。即ち本発明によれば、
極細化可能剥離分割型複合繊維(以下単に剥離分割型複合繊維と略称する場合がある)を紡出、高速牽引してネット上に捕集して得られた長繊維シート状物をエンボスカレンダーで熱処理し、2枚以上積層した後、ニードルパンチ交絡処理長繊維不織布とし、その後極細化処理する極細長繊維不織布の製造方法において、下記要件を満足することを特徴とする極細長繊維不織布の製造方法。
a)長繊維シート状物1枚の目付が20〜45g/mであること。
b)エンボスカレンダー処理後の長繊維シートの剛軟度値を3〜6cmとすること。
より好ましくは、
長繊維シートの重ね合わせ枚数が2〜16枚であり、ニードルパンチ交絡処理長繊維不織布の目付が200〜300g/mである高目付極細長繊維不織布の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
剥離分割型複合繊維を紡出後エンボスカレンダー処理した長繊維シート状物を、2枚以上重ね合わせた後にニードルパンチ交絡処理を行ってその後極細化処理を行う極細長繊維不織布の製造方法において、
エンボスカレンダーで熱処理した長繊維シート状物の目付と剛軟度を特定値範囲とすることにより、ニードルパンチ工程での繊維の交絡性を制御することができ、安定した高目付、高密度の人工皮革用極細長繊維不織布とすることができ、弾力性と腰感に優れた人工皮革とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、紡出後エンボスカレンダー処理した長繊維シート状物(薄層長繊維シート状物と呼ぶ場合がある)を、2枚以上重ね合わせた後にニードルパンチ交絡処理を行ってその後極細化処理を行う極細長繊維不織布の製造方法である。
【0009】
本発明で用いられる剥離分割型の複合繊維としては、機械的衝撃及び/又は溶剤処理などの化学的処理でそれぞれの成分からなる極細繊維に剥離分割できるものであれば特に限定されないが、繊維を製造する際の工程管理および生産性からポリエステル系重合体とポリアミド系重合体とから構成されることが好ましい。好ましく用いられるポリアミド系重合体としては、例えばナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12等があげられる。一方、ポリエステル系重合体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びこれらを主成分とする共重合ポリエステル等があげられる。中でもナイロン−6/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせが生産安定性、コスト等の面から好ましい。
【0010】
剥離分割型複合繊維の複合形態としては、例えばポリエステル系重合体とポリアミド系
重合体の接合界面の少なくとも一部分が繊維断面円周に到達しており、機械的処理等によ
り各成分に剥離分割できる形態となっていることが好ましい。また、お互いに一方成分が
他方成分によって所定数に分割されている形態であることが、剥離分割性の点で望ましい
。中でも、1成分が他成分間に放射状に配置されている断面形状が好ましい。さらには
、繊維断面円周に占める一成分の重合体の円弧長(B)に対する他成分の重合体の円弧長
(A)の比率(以下、重合体成分円弧長比(A/B)と称する)を0.1〜2.0の範囲
、さらに好ましくは0.2〜1.5の範囲となるよう2成分を配置することが好ましい。
重合体成分円弧長比(A/B)が大きいと、開繊性が低下し、不織布の目付け斑および強
度低下が発生する傾向にある。一方、重合体成分円弧長比(A/B)が小さいと、剥離分
割処理時、外部応力が2成分の接合界面へ充分に負荷されなくなり剥離分割が困難となる
傾向にある。
【0011】
本発明で用いる剥離分割型の複合繊維の分割数は4〜48個、より好ましくは8〜24
個であることが好ましい。分割数が多すぎると不織布にした際に未分割の繊維が増加し、
風合いが悪くなる傾向にある。剥離分割型複合繊維の一方成分の全体に対する複合割合は
、30〜70重量%の範囲、特に40〜60重量%の範囲であることが好ましい。
【0012】
このような剥離型複合繊維全体の断面形状は、丸断面形状、多葉断面形状、多角形形状
等任意であり、また中空部を有する形態であってもよい。中空部を有する断面形状のもの
では2成分の接合界面長さが短くなるので、剥離分割性がより向上する。
【0013】
また剥離分割型複合繊維の単糸繊度は1〜10dtexとするのが好ましい。剥離分割
型複合繊維の単糸繊度が1dtex未満であると紡糸時に糸切れが発生し易くなる。剥離
分割型複合繊維の単糸繊度が10dtexより大きくなると、剥離分割後の繊度をより細
くするのが難しくなる。そしてこの複合繊維の剥離分割処理後の単糸繊度は、0.01〜
0.60dtexの範囲が好ましい。0.01dtex未満のものは、剥離分割が困難と
なったり、剥離分割後の繊維があまりにも細いため繊維間で膠着が生じたりする傾向が出
てくる。また0.60dtexを超えると繊維が太すぎるため、均一で微細な不織布が得
られ難くなる。
【0014】
さらに、本発明においては、上記2成分の重合体の少なくとも一成分に、開繊前に、重合体全重量に対して0.3〜3.0重量%のポリアルキレングリコール類を含有させることが好ましい。紡糸工程での細化時および繊維補集時に発生する多大な静電気を大幅に抑制し、均一な開繊状態で繊維をウェブ状に捕集することができ、さらに2成分間の剥離を促進する効果がある。
【0015】
ポリアルキレングリコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロックまたはランダム共重合体などを挙げる事ができる。ポリアルキレングリコール類の平均分子量としては5000〜50000の平均分子量のものが容易に入手でき、紡糸安定性も良いので好ましい。
【0016】
ポリアルキレングリコール類の各繊維形成重合体への添加は、任意の方法を採用するこ
とができるが、ポリアルキレングリコール類の耐熱性および溶融紡糸性等の点から、該繊
維形成重合体チップとポリアルキレングリコール類とを混合後溶融紡糸する方法が望まし
い。
【0017】
本発明で用いられる薄層長繊維シート状物は、紡糸口金より吐出された上記のような剥離分割型複合繊維からなるものである。例えば剥離分割型複合繊維を、エジェクターやエアサッカーなど高速牽引流体により2000〜8000m/分、より好ましくは3000〜6000m/分の速度で索引・細化し、開繊しながら多孔補集面上に補集することによって得ることが出来る薄層長繊維シート状物であることが好ましい。その際、コロナ放電や接触帯電等の処理を行うと、開繊性はより向上する。
【0018】
この際の薄層長繊維シート状物の目付けは20〜45g/mであることが必要である。20g/m未満であると形状をシート状に保ちにくい傾向にある。45g/mを超える場合は十分な開繊が行われず、不織布の風合いが悪くなる傾向にある。より好ましくは25〜40g/mである。
【0019】
このようにして得られた薄層長繊維シート状物は、エンボスカレンダー熱処理により未延伸糸である薄層長繊維シート状物の収縮率を調整し、最終製品の風合いや密度をコントロールする。また通常、目付けが少ないほど開繊状態は良いが、シート状の形状が保たれないという相反する傾向にあるが、熱処理(熱接着)によってこの問題を解決することができる。
【0020】
本発明はエンボスカレンダー熱処理後の薄層長繊維シート状物の剛軟度が経時的に変化し、後工程の二ドルパンチ工程で交絡状況に変動が生じ、最終的に極細長繊維不織布の目付け変動を生じることを見出したことに基づくものであり、エンボスカレンダー熱処理後の薄層長繊維シート状物の剛軟度を3〜6cmとすることが必要である。より好ましくは3〜4cmである。エンボスカレンダーの接圧を10〜25kg/cm、より好ましくは14〜18kg/cmの範囲で変化させ剛軟度を調整することが好ましい。
【0021】
さらにはこのエンボスカレンダーロールには柄があることが好ましく、接着の強い部分と弱い部分を作ることで風合いを保ちながら高密度とすることが容易となる。柄入りロールとしては200〜400メッシュのエンボス用のロール等を用いることができる。繊維を構成する成分、工程通過時の薄層長繊維シート状物の温度にもよるが、エンボスカレンダーロールの温度は60〜150℃であることが、さらには80〜120℃であることが好ましい。
【0022】
最終的に人工皮革用不織布として必要な目付けとするためには、このようにして得られた薄層長繊維シート状物を公知のクロスレイヤーのような積層装置を用いて複数枚積層する。このとき、目付けが20〜45g/mの薄層長繊維シート状物を2〜20枚、好ましくは2〜16枚積層させ、その後公知のニードルパンチ処理して繊維同士を交絡させ交絡不織布を作成する。
【0023】
本発明の製造方法で用いることのできるニードル針としては、バーブの数、バーブの深さを使用する用途に応じて適用することが好ましい。バーブ数やバーブ深さが大きすぎると繊維抵抗が大きくなり繊維の切断が起こりやすくなるばかりか、ニードル針の折れや脱落が発生し、不織布中に異物が混入するという問題がある。一般的に交絡の効率と表面の平滑性から1〜9バーブのニードル針を使い分けることが好ましく行われる。
【0024】
ニードル針による交絡条件としては、交絡密度(打ち込み密度、ペネレイト数とも呼ぶことがある)は50〜2000本/cmであることが必要であり、さらには400〜1000本/cmであることが好ましい。
【0025】
ニードルパンチ交絡処理長繊維不織布の目付が200〜300g/mであることが以後の極細化工程、熱収縮工程を通して人工皮革用高密度不織布とする上で好ましい。200g/m未満であれば強度が不足し、300g/mを超える場合は内部の極細化が難しく、人工皮革として硬く風合いの面で好ましくない。
【0026】
次に、この交絡処理不織布を剥離分割極細化処理する。基本的には、分割が確実に遂行できれば特に制限されず、機械的な分割処理としては、ローラー間で加圧する方法、超音波処理を行う方法、衝撃を与える方法、揉み処理をする方法などの公知の方法を用いることができる。化学的な分割処理としては、該剥離分割型複合繊維を構成する少なくても1成分を膨潤させるような薬液に浸漬処理するなどの従来公知の方法を用いることができる。又機械的分割処理と化学的分割処理を併用することが好ましい。ただし、本発明において好ましい態様である熱による基材の収縮処理を、分割処理に引き続き施す場合には、繊維の分割が遂行される前に熱がかかるような分割処理方法は採用しないことが好ましい。分割極細化処理後に熱収縮処理することが好ましい。
【0027】
本発明の分割極細化処理後、熱収縮処理を行うことによって、極細長繊維不織布内部の粗大空隙を排除し、均一で緻密な構造を生起させるために有効である。該極細長繊維不織布を収縮性能の異なる長繊維から構成するのであれば、一方の成分が熱収縮性を有している複合繊維とすることが緻密な構造とするためにも好ましく、該熱収縮性を有する成分と他方の成分との熱水中での熱収縮率の差は5〜50%であることが好ましく、特に10〜30%であることが好ましい。
【0028】
なお、ここでいう熱収縮率は長繊維を0.056g/texの荷重下で30分間熱水中で収縮処理したときの収縮率から求められ、ここで収縮率は((収縮処理前の長さ−収縮処理後の長さ)/(収縮処理前の長さ))×100(%)で求められる。
【0029】
該長繊維不織布を70〜100℃の温水中および/または80〜140℃の乾熱中で、
緩やかに20秒〜10分間程度収縮処理を施し、該不織布を面積収縮率で10〜50%と
なるように収縮させることが好ましい。面積収縮率が小さい場合には、十分な緻密性が得
にくく、また面積収縮率が大きすぎる場合には、緻密になりすぎ逆に硬くなり風合いが低
下する傾向にある。この面積収縮率は、〔(収縮前の長繊維不織布面積−収縮後の長繊維
不織布面積)/(収縮前の長繊維不織布面積)〕×100(%)で求められる。
【0030】
熱収縮後好ましくは表面プレス等を行って厚さを調整し、最終的な極細長繊維不織布の目付を300〜500g/m、密度を0.30g/m以上とすることが好ましく、この範囲であれば人工皮革用として用いた場合強度、伸度、ソフト性と腰、耐久性等満足するものとなる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例における各項目は、次の方法で測定した。
【0032】
(1) 紡糸経過時間
紡糸工程において、繊維を紡出するための口金の吐出孔からポリマーを吐出開始した時間をゼロとした時のある時点での経過時間を表し、測定方法は、ストップウォッチにて計測した。
【0033】
(2) エンボスカレンダーロール接圧
油圧式エンボスカレンダーロール設備における制御盤面にあるエンボスカレンダーロール圧指示値をある紡糸経過時間毎に読む。
【0034】
(3) 薄層長繊維シート剛軟度
形成した薄層繊維シートから短冊状試片(2cm×5cm)を切り出し、剛軟度測定器の水平部分から傾斜部分に向かって試片を移動させた時に、試片の先端部分が曲がって傾斜部分に沿って横たわった時点における水平部分の試片の移動距離をもって剛軟度とした。単位はcmで、試片の硬さが硬いほど剛軟度の値は高くなり、柔らかいほど剛軟度は低くなる。
【0035】
(4) 不織布目付、密度
目付:各紡糸時間に不織布から29.6cm×21cmの大きさの目付測定用試験片を切断し、質量天秤にて、試験片の重量測定を行い、g/mに換算した。
密度:厚み測定器(株大栄科学精器製作所、商品名:PEACOCKモデルH)を使用し、試料1cmあたり180gの荷重を加えた状態で測定した厚さを用いて、目付/厚さで密度を算出した。
【0036】
(5)人工皮革用基材の評価
分割処理後の不織布(人工皮革用基材)について、不織布密度、弾力性、腰感(基材を指で押した場合に反発性を受ける感触)など、人工皮革品質を決める重要な風合い評価を実施し、下記の基準により人工皮革用基材として適しているか判定を実施した。
判定○・・・人工皮革用基材として十分な密度を有し、弾力性と腰感に優れている
判定△・・・ 〃 〃 を有さず、弾力性と腰感がやや劣る
判定×・・・ 〃 〃 を有さず、弾力性と腰感が劣っている
【0037】
[実施例1]
まず、ポリエステル系とポリアミド系の極細化可能剥離分割型複合繊維からなる長繊維不織布の作製を行った。すなわち第1成分としてポリエチレンテレフタレート、第2成分として、ナイロン対比重量比が2重量%のポリエチレングリコールを添加した6−ナイロンを用いてエクストルーダーにて溶融後、口金より吐出し、エジェクターにて高速牽引した後、16分割タイプの多層貼り合わせ型断面をもつ剥離分割型の複合繊維からなる長繊維不織布をネットコンベアーで捕集した。両成分の容積比率は55:45であり、両成分は交互に配列しており、配列数は16であった。また、剥離分割前の繊維の繊度は3.3dtexであった。ネットコンベアー上で繊維を捕集して目付36g/mの薄層繊維シートを作製後、エンボスカレンダーロールにて接圧14kg/cmに調整し、繊維同士を熱点接着し、クロスレイヤーにて8枚薄層繊維シートを重ね合わせた。その後、ニードル機にて9バーブのニードル針により700本/cm、1バーブのニードル針で500本/cmのペネレイト数にて繊維を交絡させて、不織布を作製した。実施例1の実施時点での紡糸経過時間は、4.0時間、この時点でのエンボスカレンダーロールを通過した薄層繊維シートの剛軟度は、4.0cm、作製した不織布の目付は255g/m、密度は0.19g/mであった。次に、作製した不織布を機械式揉み機(カーチグリアーノ社製揉み加工機)にて剥離分割処理を行い、引き続き、不織布を75℃の熱水中に60秒間、浸漬遊泳させて収縮させ、その後、スリット式減圧脱水機で水分を除去し、熱風乾燥機で乾燥して、人工皮革用極細長繊維不織布を得た。得られた基材の目付は429g/m、密度0.33g/cmと人工皮革基材として十分な密度を有し、弾力性と腰感が優れた人工皮革用基材として最適なもので評価判定は○であった。
【0038】
[実施例2]
ネットコンベアー上で繊維を捕集して目付36g/mの薄層繊維シートを作製後、エンボスカレンダーロールの接圧を16kg/cmに調整変更し、その変更時点での紡糸経過時間が、8.0時間である以外は、実施例1と同様の方法で人工皮革用基材を作製した。この時点でのエンボスカレンダーロールを通過した薄層繊維シートの剛軟度は、3.0cm、作製した不織布の目付は、257g/m、密度は0.18g/mであった。以後実施例1と同様に行った。得られた人工皮革用極細長繊維不織布の目付は413g/m、密度0.32g/cmと人工皮革基材として十分な密度を有し、弾力性と腰感が優れた人工皮革用基材として最適なもので評価判定は○であった。得られた物性は表1参照。
【0039】
[実施例3]
ネットコンベアー上で繊維を捕集して目付36g/mの薄層繊維シートを作製後、エンボスカレンダーロールの接圧を18kg/cmに調整変更し、その変更時点での紡糸経過時間が、12時間である以外は、実施例1と同様の方法で人工皮革用基材を作製した。この時点でのエンボスカレンダーロールを通過した薄層繊維シートの剛軟度は、3.0cm、作製した不織布の目付は、260g/m、密度は0.19g/mであった。以後実施例1と同様に行った。得られた人工皮革用極細長繊維不織布の目付は436g/m、密度0.33g/cmと人工皮革基材として十分な密度を有し、弾力性と腰感が優れた人工皮革用基材として最適なもので評価判定は○であった。得られた物性は表1参照。
【0040】
[比較例1]
ネットコンベアー上で繊維を捕集して目付36g/mの薄層繊維シートを作製後、エンボスカレンダーロールの接圧を18kg/cmに調整し、調整時点での紡糸経過時間が、4.0時間である以外は、実施例1と同様の方法で人工皮革用基材を作製した。この時点でのエンボスカレンダーロールを通過した薄層繊維シートの剛軟度は、7.0cmと非常に硬く、作製した不織布の目付は、215g/m、密度は0.16g/mと低いものであった。以後実施例1と同様に行った。得られた人工皮革用極細長繊維不織布目付は278g/m、、密度0.23g/cmと十分な密度を有さず、弾力性や腰感が劣る人工皮革用基材としては不十分なものであった。得られた物性は表1参照。
【0041】
[比較例2]
比較例1に続いて、ネットコンベアー上で繊維を捕集して目付36g/mの薄層繊維シートを作製後、エンボスカレンダーロールの接圧は、18kg/cm一定のままで継続して不織布の作製を行い、この時点での紡糸経過時間が、8.0時間である以外は、実施例1と同様の方法で人工皮革用基材を作製した。この時点でのエンボスカレンダーロールを通過した薄層繊維シートの剛軟度は、6.5cmと硬く、作製した不織布の目付は、239g/m、密度は0.17g/mであった。以後実施例1と同様に行った。得られた人工皮革用極細長繊維不織布の目付は325g/m、密度0.26g/cmと十分な密度を有さず、弾力性や腰感がやや劣る人工皮革用基材としては不十分なものであった。得られた物性は表1参照。
【0042】
[実施例4]
さらに、比較例2に続いて、ネットコンベアー上で繊維を捕集して目付36g/mの薄層繊維シートを作製後、エンボスカレンダーロールの接圧は、18kg/cm一定のままで継続して不織布の作製を行い、この時点での紡糸経過時間が、12時間である以外は、実施例1と同様の方法で人工皮革用基材を作製した。この時点でのエンボスカレンダーロールを通過した薄層繊維シートの剛軟度は、3.0cmと柔らかくなり、作製した不織布の目付は、258g/m、密度は0.20g/mであった。以後実施例1と同様に行った。得られた人工皮革用極細長繊維不織布の目付は403g/m、密度0.31g/cmと人工皮革基材として十分な密度を有し、弾力性と腰感が優れた人工皮革用基材として最適なもので評価判定は○であった。得られた物性は表1参照。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により高目付、高密度極細長繊維不織布の安定した製造が可能となり、人工皮革用基材としては靴、ボール、鞄、家具・車輌、衣料など広い用途に使用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離分割型複合繊維を紡出、高速牽引してネット上に捕集して得られた長繊維シート状物をエンボスカレンダーで熱処理し、2枚以上積層した後、ニードルパンチ交絡処理長繊維不織布とし、その後極細化処理する極細長繊維不織布の製造方法において、下記要件を満足することを特徴とする極細長繊維不織布の製造方法。
a)長繊維シート状物1枚の目付が20〜45g/mであること。
b)エンボスカレンダー処理後の長繊維シートの剛軟度値を3〜6cmとすること。
【請求項2】
エンボスカレンダー処理後の長繊維シートの積層枚数が2〜20枚である請求項1記載の極細長繊維不織布の製造方法。
【請求項3】
ニードルパンチ交絡処理長繊維不織布の目付が200〜300g/mである請求項1〜2いずれかに記載の極細長繊維不織布の製造方法。
【請求項4】
エンボスカレンダーロールの接圧が14〜18kg/cmである請求項1〜3いずれかに記載の極細長繊維不織布の製造方法。
【請求項5】
剥離分割型複合繊維がポリアミド系重合体を一成分、ポリエステル系重合体を他の一成分とする剥離分割型複合繊維である請求項1〜4いずれかに記載の極細長繊維不織布の製造方法。

【公開番号】特開2009−197375(P2009−197375A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42839(P2008−42839)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(303000545)帝人コードレ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】