説明

楽曲データ入力装置

【課題】 ユーザの意図するベロシティ値を入力するための入力用操作子の操作性を向上した楽曲データ入力装置の提供。
【解決手段】 入力用操作子へのユーザ操作強度に応じて決定されるベロシティ値を複数の異なる表示態様で表示する表示手段を設けておき、ユーザが入力用操作子の操作時に操作強度に応じて入力されるベロシティ値を視覚的に把握できるようにする。こうすることで、ユーザは意図と違うベロシティ値が入力された場合にすぐに気付くことができるようになる。また、入力用操作子を用いて楽曲データの入力だけでなくベロシティ情報の変更ができるようにする。こうすることによって、ユーザは楽曲データの入力操作と同様の操作態様によってベロシティ情報の変更操作を行うことができるので、手の位置や視線を入力用操作子から大きく動かさずに済み、スムーズにベロシティ情報の変更を行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザによる入力用操作子の操作に応じて生成した楽曲データを入力するための楽曲データ入力装置に関する。特に、押下型の入力用操作子に対するユーザの操作強度に応じた値にベロシティ値を設定して入力することが可能な楽曲データ入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、パーソナルコンピュータなどの電子機器に、デジタル信号での楽音の録音・編集・ミキシング等の楽曲制作機能を実現するアプリケーションプログラム(例えば、DAW(Digital Audio Workstationの略)ソフトウェアプログラムなど)をインストールしておき、コンピュータ上で該プログラムを動作させることにより曲作り(詳しくは、例えばMIDI等の楽曲データの生成)を誰でもが簡単に楽しむことのできるようになっている。こうしたプログラムを利用しての楽曲制作過程においてはドラムパートなどの打楽器パートのデータ打ち込みも行われるが、そうした打楽器パートなどの楽曲データ入力用の操作子としてパッド型(押下型)操作子を複数有してなる専用のコントローラが別途に用意されている。ユーザは前記コントローラを当該コンピュータに接続し、該コントローラのパッドを必要に応じて都度押下する(叩く)ことによって打楽器パートの楽曲データ入力を簡単に行うことができるようになっている。
【0003】
上記ユーザによるパッド操作に従う打楽器パート(例えばドラムパート)の楽曲データ入力を行う際には、ノートオンデータやノートオフデータの他に楽音制御パラメータとして楽音に強弱をつけるベロシティ値も入力されるが、このベロシティ値はユーザによる前記コントローラのパッドに対する操作強度に応じた値(例えば0〜127)に設定されるようになっている。一般的にベロシティ値は楽曲の表現力に多大な影響を与えるパラメータの1つであるが故に、適切なベロシティ値で楽曲データの入力を進めていきたいという要求がユーザ側にあった。
【0004】
従来では、パッドに対するユーザの操作強度に応じて当該パッドの直下(又は近傍)に配置されたLED(表示器)の輝度や表示色を変化させて前記操作されたパッドを点灯させるものを利用し、ユーザはこうしたパッド点灯時のLEDの輝度や表示色から意図どおりのベロシティ値が入力できたかを把握するようにしていた。こうしたパッドに対する操作強度に応じてLEDの輝度や表示色を変えて表示するものの一例を挙げると、例えば下記に示す特許文献1に記載の技術がある。
また、ユーザはパッドの操作強度を変えてみても意図どおりにベロシティ値を入力することがどうしてもできないような場合には、ユーザ操作強度に応じたベロシティ値を規定したベロシティカーブそのものを変更することによって意図どおりのベロシティ値の入力を可能にする必要がある。こうしたベロシティカーブそのものを変更することができるものの一例を挙げると、例えば下記に示す特許文献2に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-010812号公報
【特許文献2】特開2009-008827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1に記載された従来技術ではパッドの操作強度に応じてLEDの輝度や表示色などの表示態様を変化させてパッドを点灯するものであるが故に、ベロシティ値に関してはあくまでもパッドの操作強度に応じたLEDの点灯態様に基づいてのユーザによるいわば間接的な推測に過ぎず、ユーザはベロシティ値を直感的に把握することが難しかった。特に、ユーザ操作強度とベロシティ値が正比例関係にない場合に上記問題は顕著であった。
【0007】
また、上記した特許文献2に記載された従来技術では、ベロシティカーブの変更を入力操作子とは別途異なる位置に配置された専用スイッチの操作により行うようになっている。そのため、曲作りを行いながらベロシティカーブを変更したいような場合に、ユーザはどうしても入力操作子から一旦手や目を外さなければならず、そのことを原因に楽曲データの入力が滞って効率的な楽曲データ入力を行えない、という問題があった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ユーザによるパッドの操作強度に応じた値が入力されるベロシティ値に関し、ユーザがパッドを操作した時点ですぐに視覚的に確認することができ、さらには、意図したベロシティ値をうまく入力できないがためにベロシティカーブを変更したい場合に、ユーザが操作位置や目線を大きく移動させることなく容易にベロシティカーブを変更できるようにする楽曲データ入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る楽曲データ入力装置は、ユーザ操作強度とベロシティ値との対応関係を表すベロシティ情報を複数記憶する記憶手段と、ユーザ操作に応じて少なくともベロシティ値を含む楽曲データの生成を指示する入力用操作子と、複数の異なる表示態様での表示が可能な表示手段と、前記入力用操作子の操作に応じて、当該入力用操作子に対しユーザにより操作時に加えられたユーザ操作強度を検出する検出手段と、予め選択済みのベロシティ情報に基づいて、前記検出したユーザ操作強度に応じたベロシティ値を決定する決定手段と、前記決定したベロシティ値に基づき前記表示手段の表示態様を変更制御する制御手段とを備え、ユーザ指示に従って、前記入力用操作子を前記複数のベロシティ情報の中から前記ベロシティ値を決定する際に用いるベロシティ情報を選択する手段に割り当てることを特徴とする。
【0010】
本発明によると、予め選択済みのベロシティ情報に基づいてユーザにより操作時に加えられた入力用操作子に対するユーザ操作強度に応じてベロシティ値を決定し、該決定されたベロシティ値に基づき複数の異なる表示態様での表示が可能な表示手段の前記表示態様を変更制御する。このようにすると、ユーザは入力用操作子の操作強度に応じて決定されるベロシティ値の大きさを操作時に表示に従って直感的に確認することがしやすくなる。また、ベロシティ値決定のために操作される前記入力用操作子を、ユーザ指示に従って複数のベロシティ情報の中から前記ベロシティ値を決定する際に用いるベロシティ情報を選択する手段に割り当てることのできるようにした。これによれば、ユーザは楽曲データの入力操作と同様の操作態様によってベロシティ情報の変更操作を行うことができるようになるので、手の位置や視線を入力用操作子から大きく動かさずに済み、スムーズにベロシティ情報の変更を行うことができる。それに伴い、ユーザは効率的な楽曲データ入力を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、入力用操作子に対するユーザ操作強度に応じて決定されるベロシティ値に基づき、表示手段を異なる表示態様で表示する変更制御を行うようにしたことから、ユーザは入力用操作子の操作強度に応じて決定されるベロシティ値の大きさを操作時に表示に従ってすぐに確認することができる、という効果が得られる。さらには、入力用操作子を用いてベロシティカーブの変更を行うことのできるようにしたことから、ユーザは楽曲データの入力操作からベロシティカーブの変更操作に移行する際に、操作位置や目線を入力用操作子から大きく動かすことなく、スムーズにベロシティカーブの変更を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る楽曲データ入力装置を適用した楽曲制作システムの全体構成の一実施例を示すシステムブロック図である。
【図2】本発明に係る楽曲データ入力装置の一実施例を示すハード構成ブロック図である。
【図3】楽曲データ入力装置におけるパッド型の入力用操作子の一例を示す概念図である。
【図4】パッド操作処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図5】ベロシティカーブの具体例を説明するための概念図である。
【図6】ベロシティカーブ変更処理の一実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明に係る楽曲データ入力装置を適用した楽曲制作システムの概要について、図1を用いて説明する。図1は、この発明に係る楽曲データ入力装置を適用した楽曲制作システムの全体構成の一実施例を示したブロック図である。なお、楽曲制作システムとしてはこの図1に示す以外のものを有する場合もあるが、ここでは必要最小限の資源を用いた場合について説明する。
【0015】
図1に示す楽曲制作システムは、楽曲データ入力装置(以下、コントローラC)と、パーソナルコンピュータ(以下、コンピュータP)と、楽曲データ処理装置(ここでは一例として電子楽器D、デジタルミキサM、スピーカOを挙げている)とからなる。この楽曲制作システムでは、コントローラC及び楽曲データ処理装置(D,M,O)がそれぞれ通信インタフェースを介してコンピュータPに接続されており、コントローラCとコンピュータP間、コンピュータPと楽曲データ処理装置(D,M,O)間で各種データや信号等さらには各種情報を送受信することのできるようになっている。なお、前記コンピュータPはインターネットなどの通信ネットワークに接続されたサーバ装置であってもよい。
【0016】
コントローラCは楽曲データ入力のための専用装置であって、データ入力用にパッド型の入力用操作子を複数有する(後述する図3参照)。ユーザはこのコントローラCを前記コンピュータPに接続し、該コントローラCのパッドを必要に応じて押下する操作を行うことによって、例えばドラムパートの楽曲データをコンピュータPに対し入力することができる。すなわち、コントローラCはユーザのパッド操作に応じて予め各パッドに割り当て済みであるドラム音色の楽曲データを生成し、これをコンピュータPに送信する。
【0017】
コンピュータPには楽曲制作ソフトウェアプログラムF(上記DAWなど)がインストールされてなり、当該楽曲制作ソフトウェアプログラムFが動作されることによって、デジタル信号での楽音の録音・編集・ミキシング等の楽曲制作機能を実施することが可能となっている。この楽曲制作機能の実行時においては、当該コンピュータPの操作子がユーザによって操作されることに応じて例えば楽曲データを生成することのできるようになっているだけでなく、上述したように当該コンピュータPに接続された外部のコントローラCがユーザによって操作されることに応じて生成され送信されるドラムパートの楽曲データを取り込み(記憶し)、該取り込んだ楽曲データとコンピュータP側で生成した楽曲データとを組み合わせることで、ドラムパートの楽曲データを少なくとも含む1乃至複数パートからなる楽曲データを生成することができるようになっている。
【0018】
コンピュータPによって生成された1乃至複数パートからなる楽曲データ(又は当該楽曲データに基づき発生される楽音信号)は必要に応じて各楽曲データ処理装置(D,M,O)に送信され、各楽曲データ処理装置(D,M,O)に前記楽曲データ(又は楽音信号)を利用させることのできるようにしている。
【0019】
また、コンピュータPにはコントローラエディットソフトウェアプログラムEがインストールされてなり、当該コントローラエディットソフトウェアプログラムEが動作されることによって、ユーザは当該コンピュータPに接続されたコントローラCが有する複数の各パッドに割り当て済みの機能を(モードによって異なる)、当該コンピュータP側で確認することが可能となっている。すなわち、コンピュータPはディスプレイを備えており、コントローラCが有する複数のパッドそれぞれに割り当てられている、例えば「入力モード」時に各パッドの押下操作に応じて生成する楽曲データのドラム音色の種類や、「ベロシティカーブ変更モード」時に選択されるベロシティカーブに関する情報などを、前記ディスプレイに表示する。すなわち、コントローラC自体はディスプレイを有しておらずコントローラC側では自機の詳細な設定内容をユーザが確認できないため、コンピュータP側でコントローラCの詳細な設定内容をユーザが確認することのできるようにしている。なお、コンピュータPから、接続されたコントローラPの各パッドに割り当て済みの音色の変更や選択可能なベロシティカーブの変更などの機能変更を指示できるようになっていてもよい。
【0020】
なお、上述の楽曲制作ソフトウェアプログラムF及びコントローラエディットソフトウェアプログラムEはコンピュータソフトウェアの形態に限らず、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)によって処理されるマイクロプログラムの形態でも実施可能であり、またこの種のプログラムの形態に限らず、ディスクリート回路又は集積回路若しくは大規模集積回路等を含んで構成された専用のハードウェア装置の形態で実施してもよい。
【0021】
図2は、上記楽曲データ入力装置の一実施例を示すハード構成ブロック図である。図3は、上記楽曲データ入力装置の全体構成の一実施例を示す概念図である。図2に示すように、本実施例に示す楽曲データ入力装置(コントローラC)は、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータによって制御される。CPU1は、この装置全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、データ及びアドレスバス1Dを介してROM2、RAM3、検出回路4、表示回路6、通信インタフェース(I/F)8がそれぞれ接続されている。
【0022】
ROM2は、CPU1により実行あるいは参照される各種制御プログラムや各種データ等を格納する。RAM3は、CPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データなどを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを一時的に記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。
【0023】
操作子5は、ユーザによる例えば叩く操作の検出に応じて楽曲データを生成する入力用操作子であるパッド(5a)や、ユーザによる例えばタッチ操作の検出に応じて各種情報を出力する各種スイッチ(5b,5c)等からなる。検出回路4は、前記操作子5に対するユーザ操作の有無等を検出する。例えば、個々のパッド5aに対してユーザにより押下操作がなされた場合には、オン/オフとその時々の操作強度の検出出力を生じ得る。各種スイッチ(5b,5c)に対してユーザ操作が行われた場合には、オン/オフの検出出力を生じ得る。なお、前記パッド5aは楽曲データ生成に使用できるだけでなく、ベロシティカーブ(後述する図5参照)を選択する手段などとしても使用する。
【0024】
図3に示すように、コントローラCには入力用操作子として半透明の素材からなる薄板状の複数のパッド5aが設けられる。ここでは一例として、コントローラCのパネル上に、水平方向(図中の左右方向)に4個、垂直方向(図中の上下方向)に4個ずつ計16個のパッド5a「PAD1〜PAD16」をマトリックス状に並列配置したものを示してある。これら複数の各パッド5aの底部には図示を省略したタッチセンサ(例えば圧電センサ)が取り付けられており、このセンサによってそれぞれのパッド5aのオン/オフ操作(叩打)、さらには叩いた強さ(操作強度)を検出することができるようにしている。各パッド5aに対しては、例えばバスドラム、スネアドラム、ロータム、ハイタム、ハイハットクローズ、ハイハットオープンなどのドラム音色を任意に割り当てできるようになっている。したがって、図3に示すコントローラCからは、最大16種類のドラム音色による演奏が可能な楽曲データを生成することが可能となっている。
【0025】
また、コントローラCのパネル上には「PAD1〜PAD16」の各パッド5aの他に、図示のように「SW1」〜「SW4」の各スイッチ5b、「Knob」スイッチ5c等が適宜の位置に設けられていてよい。図3においてパッドの下方に配置されたこれらの各スイッチ5b,5cは、それぞれが所定の機能を受け持つ。例えば、音色バンクを切り替える機能、各種の「設定モード」に入る機能、各種の「設定モード」から抜ける機能、動作モードを切り替える機能、パラメータ値を編集する機能などを受け持つ。各スイッチ5b,5cの直下(又は近傍)には、後述する表示器7(例えばLED)が少なくとも1つ内蔵されている。
【0026】
表示回路6は、ユーザによる操作子5の操作に応じて表示器7(例えばLED)の点灯/消灯制御を行うものである。図3に示すように、LED7は複数のパッド5aそれぞれの直下(又は近傍)に複数個(ここでは2個のみを示すが、2個以上であってもよい)ずつ表示色の異なるものが配置されており、表示回路6はこの2個のLED7それぞれの点灯状態/消灯状態を組み合わせて制御することによって、パッド5a全体を少なくとも3色の表示色で点灯させることのできるようにしている。
【0027】
具体的には、一方に表示色が赤色のLED7を配置し、他方に表示色が緑色のLED7を配置する。この場合、どちらか一方のみを点灯した場合には「赤」色又は「緑」色にパッド5aが光ることになり、両方を同時に点灯した場合には「オレンジ」色にパッド5aが光ることになる。この実施例においては、ユーザは自らが押下操作したパッド5aが光った際のその表示色を参照することで、当該パッド5aの押下操作に応じて生成される楽曲データのベロシティ値を操作後すぐに確認することのできるようにしている(詳しくは後述する)。パッド5a全体を光らせることで、ユーザは楽曲データ入力操作時にパッド5aから目を離さなくてよいので、ベロシティ値の確認を行い易い。また、表示色を変えるようにLED制御を行うことで、ユーザが判別し易い。
【0028】
通信インタフェース(I/F)8は、例えば汎用又は専用の通信ケーブル、あるいはLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークに接続されており、該通信ケーブルや通信ネットワーク等を介してコンピュータPと接続され(図1参照)、当該コンピュータPとの間で楽曲データや各種信号さらには各種情報を送受信するためのインタフェースである。こうした通信インタフェース8は、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を具えていてよい。
【0029】
上述したように、ユーザはコントローラC側のパッド5aを叩くといった押下操作をすることによって、楽曲制作ソフトウェアプログラムFを起動中のコンピュータPに対してドラム音色の楽曲データを入力することができるようになっている。本実施形態では、ユーザが操作したパッド5aの表示色を従来とは異なり操作強度ではなくベロシティ値によって変えることで、ユーザがパッド操作に応じて入力された楽曲データのベロシティ値を操作のたびにすぐに確認することのできるようにしている。
【0030】
そこで、ユーザによるパッド5aの操作に応じて上記したようにベロシティ値の大きさに従ってLED(表示器7)の点灯制御を実現する「パッド操作処理」について、図4を用いて説明する。図4は、「パッド操作処理」の一実施例を示すフローチャートである。この「パッド操作処理」は、コントローラC上に配置された複数のパッド5aの少なくともいずれか1つに対するユーザによる何らかの操作が検出される度に、コントローラCのCPU1により実行される。
【0031】
ステップS1は、機器設定として入力モードに設定されているか否かを判定する。ここで、入力モードとはユーザによるパッド操作に応じた楽曲データ入力をコンピュータPに対して行うことのできる機器設定であり、例えばコントローラCの電源投入時における初期モードとして自動的に機器設定される。入力モードに設定されていないと判定した場合には(ステップS1のNO)、入力モード以外のモードに機器設定されているので、それらのモードに応じた機能を実行する(ステップS14)。入力モード以外のモードとしては、例えば「ベロシティカーブ変更モード」、「バンク設定モード」などがある。これらのモードに機器設定されていた場合には、パッド5aに対して各モードを実現する機能が割り当てられる。「ベロシティカーブ変更モード」の場合には各パッド5aに対して複数のベロシティカーブの中から1つを選択する機能が割り当てられるし(後述する図6参照)、「バンク設定モード」の場合には各パッド5aに対して複数の音色バンクの中から1つを選択する機能が割り当てられる。ステップS14の処理後、本処理を終了する。このように、入力モードに設定されていない場合にはコンピュータPに対して楽曲データは送信されない。
【0032】
一方、入力モードに設定されていると判定した場合には(ステップS1のYES)、ユーザによりパッド5aを押下する(叩く)操作つまりパッドオン操作が行われたか否かを判定する(ステップS2)。ユーザによるパッドオン操作が行われたと判定した場合には(ステップS2のYES)、ユーザによるパッドオン操作が直近になされた1乃至複数のパッド5aに関して、パッドオン操作時における当該パッド5aへの操作強度を検出する(ステップS3)。ステップS4は、予め選択済みの公知のベロシティカーブ(図5参照)に従って前記検出したパッドのユーザ操作強度に応じたベロシティ値を決定する。言いかえるなら、ユーザ操作強度をベロシティ値に変換する。ステップS5は、ユーザによるパッドオン操作が直近になされた1乃至複数のパッド5aに予め割り当て済みのドラム音色に関する、前記決定したベロシティ値を含むノートオンデータをコンピュータP(図1参照)に送信する。
【0033】
ここで、パッドのユーザ操作強度に応じたベロシティ値を決定(変換)するために用いられるベロシティカーブ(ベロシティ情報)の例を図5に示す。ベロシティカーブはコントローラCのROM2等に予め記憶していてもよいし、必要に応じてコンピュータPから取得したものをRAM3等に記憶してもよい。なお、図5に示した例ではベロシティカーブを16種類のみ示したが、より多くの種類のベロシティカーブが用意されていてもよいことは言うまでもない。
【0034】
1つ1つのベロシティカーブは、「No」と「名称」と「機能」とを有する。「No」は、個々のベロシティカーブに付与される固有番号である。「名称」は、各ベロシティカーブが有する「機能」の特徴を端的に表す名称などが付せられたものである。これら「No」及び「名称」は、ベロシティカーブを個別に識別するための情報である。「機能」はユーザ操作強度とベロシティ値との対応関係を表す情報であり(ここではグラフ化して示してある)、各グラフにおいて横軸がパッドに加えられたユーザ操作強度を表し縦軸がベロシティ値を表している。すなわち、左側の「No」1〜8までのベロシティカーブはユーザ操作強度の大きさによってベロシティ値が変化する対応関係を有するものであり、これらの各ベロシティカーブではユーザ操作強度の変化に応じたベロシティ値の変化態様が異なっている。他方、右側の「No」9〜16までのベロシティカーブはユーザ操作強度の大きさによらずベロシティ値が一定の対応関係を有するものであり、これらの各ベロシティカーブでは一定であるベロシティ値がそれぞれ異なっている(この例では16,32,48,64,80,96,112,127の各値)。
【0035】
図4の説明に戻って、ステップS6は、前記決定したベロシティ値が予め設定された第1設定値(第1の閾値)以上であるか否かを判定する。ベロシティ値が第1設定値以上であると判定した場合には(ステップS6のYES)、前記ユーザによりパッドオン操作が直近になされたパッド直下に設けられたLEDのうちの1つ(例えば点灯色が赤色のLED7、図3参照)を点灯する(ステップS7)。一方、ベロシティ値が第1設定値以上でないと判定した場合には(ステップS6のNO)、点灯色が赤色のLED7は点灯せずに消灯のままとする(ステップS8)。
【0036】
ステップS9は、前記決定したベロシティ値が予め設定された第2設定値(第2の閾値、ただし前記第1の閾値よりもある程度の幅を持って大きい値である)以下であるか否かを判定する。ベロシティ値が第2設定値以下であると判定した場合には(ステップS9のYES)、前記ユーザによりパッドオン操作が直近になされたパッド直下に設けられたLEDのうちの1つ(ここでは点灯色が緑色のLED7、図3参照)を点灯する(ステップS10)。一方、ベロシティ値が第2設定値以下でないと判定した場合には(ステップS9のNO)、点灯色が緑色のLED7は点灯せずに消灯のままとする(ステップS11)。その後、本処理を終了する。
【0037】
ここで、前記第1設定値及び第2設定値の具体例を示すと、例えば前記第1設定値はベロシティ値「43」であり、前記第2設定値はベロシティ値「84」である。そうであるならば、パッドのユーザ操作強度に応じたベロシティ値が「1」〜「42」であった場合には、第1設定値「43」以上でないことから赤色LED7は点灯されない一方で、第2設定値「84」以下であることから緑色LED7は点灯される。すなわち、パッドは緑色に光ることになる。
【0038】
また、パッドのユーザ操作強度に応じたベロシティ値が「43」〜「84」であった場合には、第1設定値「43」以上であることから赤色LED7は点灯され、また第2設定値「84」以下であることから緑色LED7も点灯される。すなわち、パッドは赤色と緑色が混じってオレンジ色に光ることになる。さらに、パッドのユーザ操作強度に応じたベロシティ値が「85」〜「127」であった場合には、第1設定値「43」以上であることから赤色LED7は点灯される一方で、第2設定値「84」以下でないことから緑色LED7は点灯されない。すなわち、パッドは赤色に光ることになる。
【0039】
上記ステップS2において、ユーザによりパッドオン操作でなくパッドオフ操作が行われたと判定した場合には(ステップS2のNO)、ユーザによりパッドオフ操作が直近になされたパッドに関し、当該パッドに予め割り当て済みのドラム音色のノートオフデータをコンピュータP(図1参照)に送信する(ステップS12)。ステップS13は、前記ユーザによりパッドオフ操作が直近になされたパッド直下に設けられているLED7全てを消灯する(ステップS13)。その後、本処理を終了する。
【0040】
以上のようにして、パッドのユーザ操作強度に応じて決定されるベロシティ値に応じて異なる色によってパッドを点灯させる。こうしたパッドの点灯色はユーザによるパッドオン操作にあわせてすぐに変化するので、これによりユーザはパッドの操作強度に応じて決定されたベロシティ値の大きさを操作時にすぐに確認することができるようになる。本実施例のように、従来のパッドへのユーザ操作強度に応じてではなくベロシティ値の大きさに応じて上記のようにして表示器(LED)の表示態様を変更制御することは、以下の点から特に重要である。
【0041】
ユーザはコントローラCからドラム音色の楽曲データ入力する際に、前もってベロシティカーブの変更を行うことができる(ステップS14参照)。ここで、図5に示した「No」9〜16までのベロシティカーブに変更された場合には、これらのベロシティカーブはユーザ操作強度の大きさによらずベロシティ値が一定であり、パッドに対する操作強度の大小に関わらず常に同じベロシティ値を出力できるので、ユーザは入力されるベロシティ値に特に気を遣う必要がない(強く叩いても弱く叩いても同じベロシティ値が設定される)。
【0042】
一方、図5に示した「No」1〜8までのベロシティカーブに変更された場合には、これらのベロシティカーブはユーザ操作強度の大きさによってベロシティ値が変化するものであり、またユーザ操作強度が同じであっても変更前とは異なるベロシティ値が出力されることから、ユーザは特に入力されるベロシティ値に気を遣う必要がある。しかし、上述したように、従来においてはパッドの操作強度に応じたLEDの点灯態様に基づいてユーザはベロシティ値を推測することしかできなかったために、ベロシティカーブ変更前と変更後とではユーザが正しくベロシティ値を推測することは難しい。そこで、本実施形態においては上述のステップS6〜S11の処理に従ってユーザ操作強度に応じてではなくベロシティ値に応じてLEDを点灯制御させ、該LEDの点灯態様に基づいてユーザがベロシティ値を確認することのできるようにしている。
【0043】
ベロシティカーブは、コントローラCのパッド操作に従って図5に示す多数のカーブの中から任意のカーブのものを選択することができるようになっていることは既に説明した。そこで、次にベロシティカーブの変更処理について説明する。図6は、ベロシティカーブ変更処理の一実施例を示すフローチャートである。当該処理は、機器設定としてベロシティカーブ変更モードに設定された場合に起動される。具体的には、「SW2」スイッチ5b(図3参照)が押されると「ベロシティカーブ変更モード」に設定され、押されている間は「ベロシティカーブ変更モード」に設定された状態が維持され、「SW2」スイッチ5bがリリースされると「ベロシティカーブ変更モード」が解除されて「入力モード」に戻る。
【0044】
ステップS21は、ベロシティカーブ変更モードであることを提示するために「ベロシティカーブ変更モード」設定用スイッチSW2の直下(又は近傍)に設けられたLED7を点灯する。また、予め記憶済みの複数のベロシティカーブを、各カーブに固有の番号(図5に示した「No」1〜16)と同じ番号のパッド5aに対して割り当てる。ステップS22は、現時点で設定(選択)済みのベロシティカーブを示す番号(「No」1〜16のいずれか1つ)と同じ番号のパッド直下(又は近傍)に設けられたLED7の少なくとも1つを点灯する。例えば赤色のLED7を点灯する。ステップS23は、いずれかのパッド5aへのユーザによる押下操作(パッドオン操作)が行われたか否かを判定する。いずれかのパッド5aへのユーザによるパッドオン操作が行われていないと判定した場合には(ステップS23のNO)、ステップS29の処理へジャンプする。一方、いずれかのパッド5aへのユーザによるパッドオン操作が行われたと判定した場合には(ステップS23のYES)、ユーザによりパッドオン操作されたパッド5aがいずれであるかを特定する(ステップS24)。
【0045】
ステップS25は、点灯中のパッド5aつまりは現時点で既に設定済みのベロシティカーブを選択するためのパッド5aが操作されたか否かを判定する。点灯中のパッド5aが操作されたと判定した場合には(ステップS25のYES)、ベロシティカーブの変更を行う必要がないのでステップS29の処理へジャンプする。一方、点灯中のパッド以外のパッド5aが操作されたと判定した場合には(ステップS25のNO)、点灯中のパッド5aのLED7を消灯する一方で(ステップS26)、操作されたパッド5aのLED7を点灯する(ステップS27)。そして、操作されたパッドの番号と同じ固有番号が割り当てられているベロシティカーブ(図5参照)を、ユーザによるパッド5aへの操作強度に応じたベロシティ値を決定する際(図4のステップS4参照)に用いるベロシティカーブとして変更設定する(ステップS28)。
【0046】
ステップS29は、ベロシティカーブ変更モードを終了する指示がなされたか否かを判定する。ベロシティカーブ変更モードを終了する指示としては、例えば入力モードへのモード変更操作などがある。ベロシティカーブ変更モードを終了する指示がなされていないと判定した場合には(ステップS29のNO)、ステップS23の処理に戻って上記ステップS23〜S28までの処理を繰り返す。一方、ベロシティカーブ変更モードを終了する指示がなされたと判定した場合には(ステップS29のYES)、点灯中のパッド5aつまりは現時点で設定されているベロシティカーブを選択するためのパッド5aのLED7を消灯すると共に(ステップS30)、ベロシティカーブ変更モードであることを提示するための「ベロシティカーブ変更モード」設定用スイッチのLED7を消灯する(ステップS31)。そして、ベロシティカーブ変更モードを終了して、前記ベロシティカーブ変更モードを終了する指示としてなされた操作に応じた処理、例えば前記モード変更操作に応じた入力モードへの移行処理などを実行する(ステップS32)。
【0047】
このように、ベロシティカーブ変更モードである場合には、楽曲データ入力用の操作子であったパッド5aが一時的にベロシティカーブ選択用の操作子として割り当てられ、ユーザはパッド5aを操作してベロシティカーブを変更することができるようにしている。これによれば、楽曲データ入力時と同じ操作態様でベロシティカーブを変更できるので、ユーザにとって操作がわかりやすく容易であるという利点がある。また、別途にベロシティカーブ選択用の操作子を設けておく必要がないので、コントローラCの小型化及びコスト削減に寄与する。
【0048】
以上、図面に基づいて実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な実施形態が可能であることは言うまでもない。例えば、上述した実施例では各パッド5aに割り当てられ得る音色をドラム音色としたがこれに限らず、マリンバやティンパニなどのような他の打楽器音色が割り当てられてもよい。また、これらの打楽器音でなくとも、例えばピアノ音色やギター音色などの通常のノーマル音色であってもよい。ノーマル音色が割り当てられた場合には、パッドを押下している間の音量変化(アフタータッチ、ホリゾンタルタッチ)に応じて表示器の表示態様を制御するようにするとよい。
【0049】
なお、楽曲データ入力用の操作子はパッドに限らず、鍵盤やボタンであってもよい。また、物理的操作子に限らず、タッチパネル式の表示器上に表示された仮想操作子であってもよい。ただし、その場合、タッチパネル式の表示器は単に画面がタッチされたことを検知できるだけでなく、画面を押されたときの強さを検知できるものであることは言うまでもない。
なお、ベロシティ値に応じた点灯制御を行う表示器としてパッドの直下(又は近傍)に配置されたLED7を例に挙げたがこれに限らず、別途用意されたディスプレイにレベルメーターのようなベロシティ値に応じた連続的な表示を行うようにしたものであってもよい。また、ベロシティ値に応じたLED7の点灯制御は赤、緑、オレンジの3段階のみに限らない。さらに、表示色でなく輝度であってもよいし、3個以上の複数のLED7の同時点灯数などであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…CPU、2…ROM、3…RAM、4…検出回路、5…操作子、5a…パッド、5b,5c…スイッチ、6…表示回路、7…表示器、8…通信インタフェース、1D…データ及びアドレスバス、C…コントローラ、D…電子楽器、E…コントローラエディットソフトウェアプログラム、F…楽曲制作ソフトウェアプログラム、M…デジタルミキサ、O…スピーカ、P…コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ操作強度とベロシティ値との対応関係を表すベロシティ情報を複数記憶する記憶手段と、
ユーザ操作に応じて少なくともベロシティ値を含む楽曲データの生成を指示する入力用操作子と、
複数の異なる表示態様での表示が可能な表示手段と、
前記入力用操作子の操作に応じて、当該入力用操作子に対しユーザにより操作時に加えられたユーザ操作強度を検出する検出手段と、
予め選択済みのベロシティ情報に基づいて、前記検出したユーザ操作強度に応じたベロシティ値を決定する決定手段と、
前記決定したベロシティ値に基づき前記表示手段の表示態様を変更制御する制御手段と
を備え、
ユーザ指示に従って、前記入力用操作子を前記複数のベロシティ情報の中から前記ベロシティ値を決定する際に用いるベロシティ情報を選択する手段に割り当てることを特徴とする楽曲データ入力装置。
【請求項2】
外部装置と接続する接続手段と、前記決定したベロシティ値を前記接続手段を介して接続された外部機器に対して送信する送信手段とをさらに備える請求項1に記載の楽曲データ入力装置。
【請求項3】
前記表示手段は前記入力用操作子と一体的に形成されてなり、当該入力用操作子の表示態様を変更するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の楽曲データ入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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