説明

概日リズム障害を治療するためのNPYY5受容体アンタゴニストの使用

哺乳動物において概日リズム障害を治療する方法であって、哺乳動物に、有効量のNPY Y5受容体アンタゴニストを投与することを含む方法。特に、概日リズムに及ぼす効果を高めるために提供される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は哺乳動物における概日リズム障害を治療する方法に関する。本明細書中に使用されている“概日リズム障害”なる用語は、概日リズムの崩壊に関連する障害と定義され、この概日リズム障害では環境信号に対するリズム同期性が乏しい。特に本発明は、哺乳動物において光の概日リズムに及ぼす影響を増大させ及び/又はこれらのリズムの振幅を増大させる方法であって、哺乳類に有効量のNPY Y5受容体アンタゴニストを投与することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
概日リズムとは、昼間と夜の環境周期と同期する動物の行動の周期的パターンであり、24時間の時間規模で起る。光への曝露が重要な要因である。ホルモンの合成と放出、体温、心臓血管機能、睡眠及び行動の周期を非限定的に含む生理的に重要な変化がこれらのリズムと関連する。多細胞動物においては単一のメカニズム、分子時計、がこれらの概日リズムを制御すると信じられている。ここに使われている“分子時計”なる語は、細胞のタイミング機構と定義され、分子レベルでの一連の出来事(遺伝子転写及び蛋白合成)がそれ自身24時間ベースで繰返し、リズムの振動とその結果としての動物行動の周期的パターンの主たる原因となる。ここに使われている“概日時計”なる語は、この様な生理的な機能のリズミカルな性質の主たる原因となる生体機構として定義され、“生体時計”なる語と互換性を持って使用される。
【0003】
ジェット機による旅行(ジェットラグ)(特に時間帯の間の)、人工光及び交代制勤務時間を含む現代の生活と技術のパターンは、内部概日時計との同期が乏しい。これらの現代のスケジュールの結果、性能劣化(performance degradation)が手の敏捷さの欠如、反射、記憶、冬季うつ病及び睡眠不足から来る全身倦怠感に現れることがある。
【0004】
概日リズムと関連する障害と症状の例としては、うつ病、単極性うつ病、双極性障害、季節性感情障害、気分変調、不安症、統合失調症、アルツハイマー病、レム(REM)睡眠障害、睡眠相前進症候群、睡眠相遅延症候群、非24時間睡眠覚醒障害、過眠症、睡眠様昏睡、ナルコレプシー、夜尿症、肥満症及び下肢静止不能症候群が挙げられる。
【0005】
ヒトにおいては、メラトニンレベルが概日時計により制御されているように見えることが知られている。メラトニンレベルが、睡眠と覚醒によって上昇したり下降したりすることが知られている。
【0006】
メラトニンの治療投薬により概日リズムキーマーカーを制御する試みが2003年1月9日に公開された米国特許出願公開第2003/0008912号に開示されている。
【0007】
概日リズム障害の治療に酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤を単独で又は選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)と共に使用されることがWO 00/71107に開示されている。
【0008】
概日時計の制御におけるメラトニン活性がある種の薬理的に特異的な高親和性受容体により伝達される。米国特許第6,037,131号がDNA受容体遺伝子を高親和性メラトニン受容体に対するプロモーター領域として使用することを開示している。
【0009】
米国特許第5,703,239号は、インダニル置換ピペリジンを概日リズムと関連する不安、うつ病及びいろいろな中枢神経系(CNS)障害の治療に有用なメラトニン作動薬として使用することを開示している。
【0010】
神経ペプチドY(NPY)、これは36個のアミノ酸のペプチド神経伝達物質である、は膵臓クラスの神経伝達物質/神経ホルモンの一員であり、CNSに存在し、NPY特異的受容体(例えば、Y1、Y2、Y5受容体)を経由して生体反応を仲介することが示されている。
【0011】
実験動物の研究において、NPYは、概日リズムの定期的なサイクルをシフトさせる光の自然な能力にかなり影響する。具体的には、正常なリズムの発生の前進として現わされる日中相のシフトは、NPY Y2受容体により仲介される。NPY Y1/Y5及びY5受容体は、夜間相をシフトさせる効果と関連することが示された(Yannielliら、J. Neurosci. 2001 (14): 5367-73)。
【0012】
米国特許第6,514,966号は肥満症及び関連する摂食障害の治療のためのNPY Y5アンタゴニストの使用を開示している。
WO 99/01128は、ある種の心臓血管病ならびに摂食障害の治療に有用なある種のNPY Y5受容体メディエーターを開示している。
WO 03/051356は、哺乳動物における光の相シフト効果を遮断するための選択されたNPY Y5アンタゴニストを提案している。
上記の特許及び特許出願は、本明細書中にその全てを援用される。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、光に対する概日リズム応答を調節するのに有効な量のNPY Y5受容体アンタゴニストを、哺乳動物に投与することによる哺乳動物において光に対する概日リズム応答を調節する方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、ヒトを含む哺乳動物に光効果を増大させる量のNPY Y5受容体アンタゴニストを投与することにより哺乳動物における概日リズムに及ぼす光の効果を増大させる方法を提供する。
【0015】
本発明の別の実施態様においては、概日リズムの調節、より具体的には、哺乳動物における概日リズムに及ぼす光の効果の増大は、哺乳動物に有効量の以下の:
【化1】

[式中、
Xは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、水素、シアノ、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C5-C6シクロアルキル、エステル、アミド、アリール及びヘテロアリールからなる群から選ばれる]
で表される式を有するのNPY Y5受容体アンタゴニスト、又はその医薬として許容される塩、媒和物又はプロドラッグ、或いは前述のいずれかを投与することにより達成される。
【0016】
好ましい実施態様においては、NPY Y5受容体アンタゴニストは以下の式:
【化2】

で表される化合物、又はその医薬として許容される塩、媒和物、又はプロドラッグ、或いは前述のもののいずれかである。
【0017】
本発明の別の実施態様においては、概日リズム応答をモジュレートする方法、より具体的には哺乳動物における概日リズム応答に及ぼす影響を増大する方法が提供され、本方法は以下の式:
【化3】

[式中、Aは、酸素又は水素であり、W、X、Y及びZは独立してN又はCR1(基中、R1は各場合において、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C6)アルコキシであってアミノ、モノ−又はジ(C1−C6)アルキルアミノ又は(C1−C6)アルコキシで置換された(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C3−C7)シクロアルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C3−C7)シクロアルキニル、ハロ(C1−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルコキシ、モノ及びジ(C1−C6)アルキルアミノ、アミノ(C1−C6)アルキル、並びにモノ−及びジ−(C1−C6)アルキルアミノ(C1−C6)アルキルから独立して選ばれる)である]
で表される化合物、又はその医薬として許容される塩、媒和物又はプロドラッグ、或いは前述のもののいずれかを投与することを含む。
【0018】
“概日リズムに及ぼす光の効果の増大”なる語は、哺乳動物において概日リズムに及ぼす光の相前進効果に関してNPYにより引起された遮断を逆転する式I及び式IIの化合物の能力を指す。
【0019】
好ましい実施態様においては、式IIの化合物は、以下の:
【化4】

で表される式を有する化合物である。
【0020】
本発明は、概日時計に及ぼすNPYの効果を遮断するのに有効な量のNPY Y5受容体を哺乳動物に投与することにより、ヒトを含む哺乳動物において概日リズム障害を治療する方法を提供する。
【0021】
上記概日リズム障害を治療する方法の一実施態様において、NPY Y5受容体は、概日リズム障害を患う前の哺乳動物に投与される。
【0022】
上記方法の別の実施態様においては、NPY Y5アンタゴニストを概日リズム障害にかかり易い又は概日リズム障害を患う危険性のある哺乳動物に投与する。
【0023】
本発明はまた、哺乳動物にある量のNPY Y5アンタゴニストを投与することによる哺乳動物における概日リズム障害を治療する方法が提供され、ここで当該アンタゴニストは以下の式:
【化5】

[式中、Xは塩素、臭素、弗素、沃素、トリフルオロメチル、水素、シアノ、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C5又はC6シクロアルキル、エステル、アミド、アリール及びヘテロアリールからなる群から選ばれる]
で表される式の化合物、又はその医薬として許容される塩、媒和物又はプロドラッグ、或いは前述のもののいずれかである。
【0024】
好ましい実施態様においては、NPY Y5アンタゴニストは、以下の式:
【化6】

で表される化合物、又はその医薬として許容される塩、媒和物又はプロドラッグ、或いは前述のいずれかのものである。
【0025】
本発明はさらに、哺乳動物にある量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することによる、哺乳動物における概日リズム障害を治療する方法を提供し、ここで当該アンタゴニストは、以下の式:
【化7】

[式中、Aは酸素又は水素であり;W、X、Y及びZは独立してN又はCR1(基中、R1は各場合において、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C6)アルコキシであってアミノ、モノ−又はジ(C1−C6)アルキルアミノ又は(C1−C6)アルコキシで置換された(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C3−C7)シクロアルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C3−C7)シクロアルキニル、ハロ(C1−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルコキシ、モノ及びジ(C1−C6)アルキルアミノ、アミノ(C1−C6)アルキル及びモノ−及びジ−(C1−C6)アルキルアミノ(C1−C6)アルキルから独立して選ばれる)である]
で表される化合物、又はその医薬として許容される塩、媒和物又はプロドラッグ、又は前述のいずれかである。
【0026】
好ましい実施態様においては、上記NPY Y5アンタゴニストは以下の式:
【化8】

で表される化合物、又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグ、或いは前述のいずれかである。
【0027】
不斉中心を有する化合物については、全ての光学異性体、ラセミ体及びこれらの混合物が本発明に包含される。
化合物がいろいろな互変異性型で存在する場合、本発明は特定の互変異性体のいずれにも限定されない。
【0028】
本発明は、光誘導性の概日周期のシフト(相前進又は相遅延)のNPYにより引起された遮断がNPY Y5受容体アンタゴニストにより逆転できるという発見と、NPY Y5アンタゴニスト自身で光による概日リズムのシフトを増大させるという発見に基いている。本発明の目的のために、“NMDA-誘導性”なる語は、N−メチル−D−アスパルタート(NMDA)を脳組織標本へ適用することによる自然光の相シフト効果をシミュレートするin vitro操作を指す。
【0029】
本発明の一実施態様においては、哺乳動物に式I又は式IIの化合物、好ましくは該化合物は式Ia又は式IIa、を哺乳動物に投与することにより光に対する概日リズム応答を調節する方法が提供される。
【0030】
別の実施態様においては、概日リズム応答の調節は、位相シフト、概日時計のリセット及び再同調の速度の増大を含む。
【0031】
本明細書中に使用されている“調節”なる語は、NPYにより引起された観察される遮断の制御及び/又は光の相シフト効果の制御を指す。概日リズム応答の調節は、相シフト、概日時計のリセット、再同調速度の増大及び概日リズムの振幅の変化を含む。本明細書中に使われている“概日時計のリセット”なる語は、現代の日常生活パターン及び/又は脳機能の生物学的異常の結果から生じる該日リズムの相及び/又は振幅を、太陽日の相と適正に同期された相及び/又は振幅に訂正するすべての作用を指す。
【0032】
“再同調の速度の増大”なる語は、体内時計を太陽日の現行の相に調節するのに必要な時間量を減少させるすべての作用を指す。
【0033】
“相シフト”は、相前進及び相遅延の両方を包含する。“相前進”は、概日リズムのパターンの早い時点へのシフトを指す。“相遅延”は、概日リズムのパターンの遅い時点へのシフトを指す。
【0034】
本明細書中で使用されている“概日リズムの振幅”なる語は、神経発火頻度についての図1で示される様に概日リズムに結び付けられる所定の生体活性の最低レベルと該活性の最高レベルの間の差を指す。
【0035】
殊に、本発明は、式I及び式IIのNPY-Y5アンタゴニスト化合物の投与によるNPYにより引起された遮断を逆転させる方法を含む。好ましくは、このNPY-Y5アンタゴニストは、式Ia又は式IIaの化合物である。なお、本発明は、概日相シフトに及ぼす光の効果を増大させる方法を含む。
【0036】
式I及び式IIの化合物に対するNPY-Y5により引起された遮断の証拠は下に述べるin vitro及びin vivoの方法により得られた。
【0037】
好ましい実施態様においては、式Iaの化合物は、in vitroにおいて、NPYにより引起される遮断の約70%の逆転を示し、式IIaの化合物は、in vitroにおいて、NPYにより引起される遮断の約95%の逆転を示す。
【0038】
別の好ましい実施態様においては、式IIaの化合物は、in vivoにおいて、NPYにより引起される遮断の約90%の逆転を示す。
【0039】
なお別の実施態様においては、式IIaの化合物は、NPYが存在しないと、in vivoにおいて、光誘導性相シフトを、光のみにより達成される相シフトの160%に増大させる。
【0040】
別の実施態様においては、本発明は、哺乳動物に有効な量の式I又は式IIの化合物を投与しNPYの効果を逆転させることを含む、哺乳動物における光誘導性相前進に及ぼすNPYの効果を逆転させる方法を含む。
【0041】
本発明の別の実施態様においては、概日リズム障害を治療する必要のある哺乳動物に治療的に有効な量の化合物(NPY Y5受容体に対し70%以上の遮断を提供する)を投与することを含む、概日リズム障害を治療する方法が提供される。好ましくは、該化合物は式I又は式IIの化合物であり、最も好ましくは、式Ia又は式IIaの化合物である。
【0042】
本発明はまた、概日リズム相障害の治療を必要とする哺乳動物に、NPY Y5受容体部位を効果的に遮断する化合物の治療上の効果的な量を投与することを含む概日リズム相障害を治療する方法を含む。好ましくは、化合物は式I及び式IIからなる群から選ばれ、最も好ましくは、化合物は式Ia及び式IIaから選ばれる。
【0043】
概日リズム障害は、現代の生活パターン及び脳機能における生物学的異常と関連する障害からなる。本発明により治療されると意図されているこれらの障害の例としては、ジェットラグ及び交代勤務と関連する障害、うつ病、単極性うつ病、双極性障害、季節性感情障害、気分障害、不安、精神分裂病、アルツハイマー病、レム(REM)睡眠障害、睡眠相前進症候群、睡眠相遅延症候群、非24時間睡眠覚醒障害、過眠症、睡眠様昏睡、ナルコレプシー、夜尿症、肥満症及び下肢静止不能症候群が挙げられる。
【0044】
一実施態様では、in vivoにおいて光誘導性相シフトを、光のみで達成される相シフトの200%に増大させる方法が提供される。
【0045】
別の実施態様においては、本発明は、ヒトを含む哺乳動物に光効果を増大させる量の概日リズム障害を治療するのに効果的なNPY Y5アンタゴニストを投与することを特徴とするヒトを含む哺乳動物における概日リズム障害を治療する方法を提供する。
【0046】
別の実施態様においては、本発明は、概日リズム相シフト障害を含む概日リズム障害を治療する方法を提供する。好ましくは、該相シフト障害は相シフト前進又は相シフト遅延を含む。
別の実施態様においては、概日リズム障害は概日リズムの振幅変化から構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
発明の詳細な説明
式I及び式IIの化合物は、WO 02/48152に記載され、参照される合成方法により調製できる。当該文献は、本明細書中にその全てを援用される。
【0048】
式Iの代表的化合物の例としては、非限定的に次のものが挙げられる:
1'-(4-t-ブチル-ピリジルカルバモイル)-スピロイソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン-3-オン、
1'-(4-イソプロピル-ピリジルカルバモイル)-スピロイソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン-3-オン、
1'-(4-トリフルオロメチル-ピリジルカルバモイル)-スピロイソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン-3-オン及びこれらの医薬として許容される塩。
【0049】
式IIの代表的化合物の例としては、非限定的に次のものが挙げられる:
1'-(1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-シアノ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-アセチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-カルボキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン・メチルエステル、
1'-(5'-ピリジン-3-イル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-メトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-クロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-トリフルオロメチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
【0050】
1'-(6-トリフルオロメチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(7-クロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-n-プロピルスルホニル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-シアノ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-アセチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-カルボキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、メチルエステル、
1'-(5'-ピラジン-2-イル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5'-ピリジン-3-イル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-トリフルオロメトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-メトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-クロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
6-ブロモ-7-クロロ-2-(スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン、
1'-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-メチルスルホニル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-オキサゾール-2-イル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5,6-ジフルオロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピラジン-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-トリフルオロメチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5,7-ジクロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5,6-ジメトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-トリフルオロメチルスルホニル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-(3,5-ジメチル-イソキサゾール-4-イル)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、
1'-(5-エトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン、及び
5-クロロ-2-(スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン、
及びこれらの医薬として許容される塩。
【0051】
性質が塩基性の式I及びIIの化合物は、様々な無機及び有機の酸と広範な異なる塩を形成できる。この様な塩は動物への投与のために医薬として許容されるものでなければならないが、実際には式I及びIIの化合物を反応混合物から医薬として許容されない塩として最初に単離し、ついで塩をアルカリ性薬品で処理して単に遊離塩基に転化し、ついで遊離塩基を医薬として許容される酸添加塩に転化する。本発明の塩基化合物の酸添加塩は、塩基化合物を水性溶媒又はメタノール又はエタノール等の有機溶媒中で実質的に当量の選択した鉱酸又は有機酸で処理することにより容易に調製される。溶媒を注意深く蒸発させると、望ましい固体塩が得られる。
【0052】
本発明の塩基化合物の医薬として許容される酸添加塩を調製するのに使われる酸は、毒性のない酸添加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素塩、硝酸塩、硫酸塩又は二硫酸塩、リン酸塩又は酸リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩又は酸クエン酸塩、コハク酸塩又は二コハク酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩及びパモ酸塩、 すなわち、1,1’-メチレン-ビス(2-ヒドロキシ-3-ナフトアート)塩等の薬理学的に許容されるアニオンを含む塩を形成する酸である。
【0053】
式I又はIIの化合物は、一つ又は二つ以上の他の治療薬剤、例えば、三環状抗うつ剤(例えば、アミトリプチリン、ドチエピン、ドキセピン、トリミプラミン、ブトリピリン(butripyline)、クロミプラミン、デシプラミン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、ノルトリプチリン又はプロトリプチリン)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えば、イソカルボキサジド、フェネルジン又はトラニルシクロプラミン(tranylcyclopramine))又は5-HT 再取り込み阻害薬(例えば、フルボキサミン、セルトラリン、フルオキセチン又はパロキセチン)などの異なる抗うつ剤と組み合わせて有利に使用されうる。化合物はまたドネペジル等のアセトコリンエステラーゼと使用できる。本発明は、式I及びIIの化合物又はこれらの生理学的に受入れられる塩又は溶媒和物を一つ又は二つ以上の他の治療薬剤と組合わせて使用することをカバーするということと理解すべきである。
【0054】
本発明の化合物は、一般に、有効成分が医薬品添加物又は担体と混合されている薬剤組成物として投与される。
活性の化合物又は有効成分は、経口、経口腔、筋肉内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内又は皮下)又は直腸の投与用に処方できるか、又は吸入又は吹送による投与に適した形態に処方できる。
【0055】
経口投与の適当な形態としては、錠剤、カプセル、粉末、顆粒及び経口溶液又は懸濁剤、舌下又は口腔の形態の投与が含まれる。固体組成物を錠剤形で調製する時には、主要医薬品添加物をゼラチン、澱粉、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はアラビアゴム等の医薬品添加物と混合する。錠剤は糖などの適当な物質で被覆して、所定の量の活性化合物が長期間にわたり放出される様にすることができる。
【0056】
経口投与用の液体製剤は、溶液、シロップ又は懸濁剤の形態でよい。この様な液体は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ)、乳化剤(例えば、レシチン)、非水性ビヒクル(例えば、エチルアルコール)及び保存剤(例えば、ソルビン酸)等の医薬として許容される成分を用いて通常の方法で調製できる。
【0057】
注射又は輸液による非経口投与用の製剤は、単位用量形態で、例えば、アンプル中に溶液又は油状又は水性ビヒクルの形態で提供できる。
【0058】
組成物はまた、座剤又は保留浣腸剤等の直腸製剤に処方できる。
【0059】
経鼻投与又は吸入投与のためには、化合物は、溶液又は懸濁剤の形で、ポンプスプレイ又は適当な圧縮された不活性ガスで加圧された容器から送達される。
【0060】
式I又はIIの化合物の使用と関連して、これらの化合物は、単独で又は医薬として許容される担体と一緒に投与できることに留意すべきである。この様な投与は、1回又は複数回の投薬で実行できる。より具体的には、組成物は、錠剤、カプセル、トローチ、硬いキャンディ、粉末、シロップ、水性懸濁剤、注入可能な溶液、エリキシル、シロップ等の形態で様々な医薬として許容される不活性担体と混合されても良い。
【0061】
本発明の活性化合物の上記の症状(例えば、うつ病)の治療のための平均的な成人への経口、非経口、又は口腔投与の提案される用量は、単位用量(これは例えば、一日1〜4回投与可能である)当り約0.1〜約200mgの活性成分である。
【0062】
平均の成人における上記の状態(例えば、偏頭痛)の治療用のエアロゾル製剤は、好ましくは、エアロゾルの各計量した投薬又は“一吹き(puff)”が約20〜約1000mgの本発明の化合物を含む様に調整する。エアロゾルについての全体の一日の用量は約10mg〜約100mgの範囲内にある。投与は1日に数回、例えば、2、3、4又は8回で、各回あたり例えば、1、2又は3回の投薬である。
【0063】
本発明のNPY Y5アンタゴニスト化合物の生物学的活性は、以下に述べる一連のin vitro及びin vivo実験室実験で決定された。実験動物においては、NPY Y5受容体のアンタゴニストは、外因的に適用されるNPYの光曝露により生じた相前進を減らす能力を遮断した。NPY Y5アンタゴニストはまた、外因性のNPYがない場合、光の相前進を生じさせる自然の能力を著しく改善した。ここに使用される“相前進”なる語は、概日リズムのパターンの早い時点へのシフトと定義され、図1に示される。
【実施例1】
【0064】
概日時計を含むと知られている視交叉上核(ここではSCNと略される)の脳切片標本中のニューロンから自発的な活動をサンプリングすることによりin vitro相前進を測定した。ここに使われている“脳切片標本”なる語は、プラスチックチェンバー中に置かれ、暖められ酸素が吹込まれているACSF(人工脳脊髄液)を供給されて完全に機能している脳の切片と定義される。SCN脳切片標本中のニューロンの自発的な活動の記録は、概日リズムを示す活動の24時間パターンを追跡する。N-メチル-D-アスパルタート(NMDA)(in vivoにおいて光により誘発される相前進を仲介する化合物)の適用の後、in vitroにおいてSCN中のニューロンはその発火のパターンをシフトさせ相前進を反映させる。NPYの適用は、NMDAにより引出される相前進を遮断する。式Ia及びIIaのNPY Y5アンタゴニストは、NPYのこれらの影響を遮断する。
【0065】
1.In vitro
動物及び組織標本。オスのゴールデンハムスター(LVG, Charles River、40〜60日齢)を、14時間の一定の明るさ及び10時間の一定の暗さの明:暗スケジュールの下、食物と水を自由にして飼った。用量超過のハロタン麻酔をハムスターに投与し、主観的昼の間に断頭した。視交叉上核(SCN)を含む視床下部の切片(500 μm)をガス―流体界面切片チェンバー(Medical Systems BSC with Haas top)に置き、125.2 mM NaCl, 3.8 mM KCl, 1.2 mM KH2PO4, 1.8 mM CaCl2, 1 mM MgSO4, 24.8 mM NaHCO3 及び10 mM グルコースを含む人工脳脊髄液(ASCF)に連続的に浴させた(1ml/min)。ACSF(pH 7.4)に抗生物質(ゲンタマイシン、50 mg/l)及び殺菌剤(アムフォテリシン、2 mg/l)を補充し、34.5℃に維持した。暖かい、酸素95%、二酸化炭素5%の加湿ガスを切片標本に連続的に供給した。
【0066】
電気生理学的研究。SCN細胞の細胞外単一ユニット活性をACSF を満たしたガラスマイクロピペット電極で検出し、油圧マイクロドライブを使って切片中を前進させた。信号をさらに増幅し、フィルターをかけ、オシロスコープ及びオーディオモニターで連続して監視した。データ収録ソフトウエア及び収録統計の計算用のオーダーダーメイドのプログラムを用いて、発火頻度を解析した。ここで用いられる“発火頻度”なる語は、記録の期間中にニューロンが活動電位を生じる頻度と定義され、ニューロンの活動のレベルを示している。1〜10Hzの範囲の発火頻度はSCNニューロンについては典型的である。各条件における多くの実験は、データを記録する人が処理について知らない“盲検”で記録された。各動物から一つの切片が記録された。総数で42切片が記録された。
【0067】
データ解析。データは最初に1h binsにグループ化し、分散解析試験を用いて他と異なるbinsが有るかどうか決定した。分散解析試験が、著しい差を示した場合は、15分のラグを置いて1時間の平均値を用いてデータを滑らかにした。このスムーザによる処理後の最高の平均発火頻度の1h binsの中央の時間をその切片のピーク発火頻度の時間とした。各切片の相前進を対照切片のピーク発火の平均時間に対して測定した。群間の有意差(p < 0.05)をBonferroni 法(全体対対照の比較に対して)を伴うANOVA検定により決定した。平均は±標準誤差で報告される。
【0068】
結果。対照実験を行なってドラッグ処理をしていないSCN脳切片におけるピーク発火頻度の時間を決定した(表1)。主観的夜遅く、これらの実験では光を照射する予定の3.5時間前に、光の効果を真似るためにNMDAを与えられた切片において、実験動物の四分の1において発火ピーク時間における相前進が観察された。NMDAを適用した5分後にNPY適用で処理した切片は、未処理の切片で観察されたのと同じような時間において発火頻度のピークを示し、相シフトがないことを示した。かくして、本実験により、NPYはNMDAによって引出される相前進を遮断することを確認する。
【0069】
NPY Y5アンタゴニスト(式Ia及びIIaの化合物)をNMDA及びNPYの適用の時間を中心として60分間、10 μMの濃度で切片を浸すACSF中に適用した。アンタゴニストのみの適用は、自発発火頻度相シフトを引起さなかった。アンタゴニストIa及びIbの薬効は次の表1にまとめられる。NMDAのみの実験と対比させて前進相における発火頻度ピークで示される様に、両アンタゴニストはNPYがNMDAで誘起された相シフトを遮断するのを妨ぐことができた。
【0070】
選択したNPY Y1受容体アンタゴニストは、NMDAの相リセット作用を変化させず、またNMDAにより誘起されたNPYの相前進におよぼす影響を変えなかった。
【0071】
【表1】

【0072】
実験条件:
相前進(h)が、対照(0.00 h)に対する薬剤処理切片のピーク神経発火頻度の発生の差として計算された。N=2〜6について、平均値±S.E.M.。
a. 薬剤が与えられていない対象実験。神経発火頻度のピークを0時間とする。
b. 動物の通常の明時間の開始予定の3.5時間前に、NPYが浴適用で与えられる、NPY単独実験。NPYの用量は、注射器により1滴(200 nl)で送達されるACSF中に2ng/mlである。対照実験と比較して、神経発火の相に影響がない。
c. 動物の通常の明時間の開始予定の3.5時間前に、NMDAが、浴適用で与えられる、NMDA単独実験。NMDAの用量は、注射器により1滴(200 nl)で送達されるACSF中に100 μMである。結果として、2.89hの相前進がある。
【0073】
d. 動物の通常の明時間の開始予定の3.5時間前に、NMDA及びNPYが浴適用で与えられる、NMDA+NPY実験。NMDAの用量は、注射器により1滴(200 nl)で送達されるACSF中に100μMである。NPYの用量は、注射器により1滴(200nl)で送達されるACSF中に2ng/mlである。NPYの投薬はNMDAの投薬より5分先行する。NPYによる、NMDAにより誘起された相前進の完全な遮断がある。
【0074】
e. 動物の通常の明時間の開始予定の3.5時間前に、NMDA及びNPY及び式IaのNPY Y5アンタゴニストが浴適用で与えられる、NMDA + NPY + 式Iaの実験。NMDAの用量は、注射器により1滴(200nl)で送達されるACSF中に100μMである。NPYの用量は、注射器により1滴(200nl)で送達されるACSF中に2ng/mlである。NPYの投薬はNMDAの投薬より5分先行する。式IaのNPY Y5アンタゴニストの用量は、NMDA及びNPYの適用時間のまん中で60分間浴適用で適用されるACSF中に10μMである。式IaのNPY Y5アンタゴニストによって、NMDAにより誘起された相前進に及ぼすNPYの影響の逆転があり、それはNMDA単独実験の相前進の70%に至る。
【0075】
f. 動物の通常の明時間の開始予定の3.5時間前に、式Iaの化合物が浴適用で与えられる、式IaのNPY Y5アンタゴニストのみの実験。式IaのNPY Y5アンタゴニストの用量は60分間の浴適用で適用されるACSF中に10μMである。対照実験と比較して、神経発火相に及ぼす影響がない。
【0076】
g. 動物達の通常の明時間の開始予定の3.5時間前に浴適用でNMDA及びNPY及び式IIaのNPY Y5アンタゴニストが与えられる、NMDA+NPY+式IIaの実験。NMDAの用量は、注射器により1滴(200nl)で送達されるACSF中に100μMである。NPYの用量は、注射器により1滴(200nl)で送達されるACSF中に2ng/mlである。NPYの投薬はNMDAの投薬より5分先行する。式IIaのNPY Y5アンタゴニストの投薬は、NMDA及びNPYの適用の時間のまん中における60分間の浴適用で適用されるACSF中に10μMである。式IIaのNPY Y5アンタゴニストによって、NMDAにより誘起された相前進に及ぼすNPYの影響の逆転があり、それはNMDA単独実験の95%に至る。
【0077】
h. 動物の通常の明時間の開始予定の3.5時間前に浴適用で式IIaの化合物が与えられる、式IIaのNPY Y5アンタゴニスト単独実験。式IIaのNPY Y5アンタゴニストの用量は60分浴適用において適用されるACSF中に10μMである。対照実験と比較して、神経発火相に及ぼす影響がない。
【0078】
2.In vivo
in vivo実験計画は、回転かご走行活動等の行動顕性リズムを記録し、この活性のパターンに相前進を生じさせることで知られる量の光に動物を曝すことを含む。ここに使われている“回転かご走行活動”なる語は、取り外せないように動物のケージ中に置かれ、動物が走りこむと回転される回転かごの回転として測定される身体活動として定義される。この様な行動の開始は、概日リズムにおけるよく考慮された時間のマーカーである。SCN中に直接向けられたカニューレを介したNPYの適用は、相前進を生じさせる光の能力を遮断する。式IIaのNPY Y5アンタゴニストはNPYのこれらの効果を遮断する。さらに、NPYがない場合に与えられると、式IIaのNPY Y5アンタゴニストは相前進を生じさせる光の能力を増大させる。
【0079】
手術。in vivo処理については、ハムスター(80-100 g)をネンブタール(80 mg/kg, i.p.)で深い麻酔にかけ、鎮痛薬(ブプレノルフィン、0.05 mg/kg, 皮下注射)を投与し、頭蓋を厳密に固定するために定位固定の装置に取付けた。ハムスターには、SCNに向けた25ゲージのステンレス鋼の導入カニューレを外科的に移植した。LD 14:10(14時間の明、10時間の暗)の下で一週間の回復の後、動物達はそれぞれ回転かごを備えたケージ(48 x 27 x 20 cm)に移された。ClockLab ハードウェア及びソフトウエア(Actimetrics, Evanston, IL)により回転かご走行活動を記録した。
【0080】
ドラッグ及び投与のルート。カニューレ注入の際、拘束により引起されるストレスを最小にするためにガス麻酔機械による酸素とイソフルラン混合物の投与により動物達を簡単に麻酔にかけた(麻酔の誘導に2.5%、麻酔の維持に1.5%のイソフルランを、鼻マスクを通して)。NPY(0.2 μl, 234 μM)をACSF中に溶解し、13.1 mmステンレス鋼注入カニューレ(30ゲージ)にポリエチレンチューブにより接続された1 μlハミルトン注射器を用いてカニューレを通して投与した。NPY Y5受容体アンタゴニスト(0.6 ml, 10 mg/kg)を32% 2-ヒドロキシプロピル-B-シクロデキストリンに溶解し、NPY及び/又は光刺激の30分前に皮下注射した。動物達を2本の白色蛍光管(フィリップス、モデル30T12)の下に置き、光パルス(5分、150lux)をそれぞれに照射した。光パルスの時期は、動物の暗期間中、光が通常照射される3.5時間前であるように選択した。
【0081】
安定なリズムを確立するために、動物達を少なくとも10日のLD(14時間の明、10時間の暗)の下に置き、ついで安全灯ランプ(Coastar, Inc.、1lux未満)により供給される一定の暗赤色光(DRL)の下で飼った。次の五つの処理を含む2セットの実験を釣合いの取れた計画で行なった。NPYのみ、NPY +光、光のみ、光 + NPY Y5アンタゴニスト、NPY + NPY Y5アンタゴニスト + 光。二つの処理の後(一つのみが光刺激を伴う)、動物達は先のLDサイクルに7ないし10日間再同期させ、ついで第二のセットの処理のために再び暗赤色光に曝した。このようにして、動物達は薄暗い赤色光の下で3週間を越えて過すことはなく、一つより大な光パルス又は全体で4処理より大な処理を受けなかった。
【0082】
データ解析。in vivo実験のために、ClockLab ソフトウエアバンドル(Actimetrics Software, Evanston, IL)でデータを自動的に集め解析した。処理を知らない二人の研究者が相前進の大きさを解析した。ANOVAとその後のStudent-Newman-Keul検定により統計解析を行なった。
【0083】
結果。式IIaのNPY Y5受容体アンタゴニストがすべてのin vivo研究について選ばれた。簡単に言えば、与えられた処理は次のようであった。光、NPY、光 + NPY、光 + NPY + NPY Y5受容体アンタゴニスト、光 + NPY Y5受容体アンタゴニスト及びNPY Y5受容体アンタゴニストのみ。表2に示す様に、結果は、NPYは光誘導性相前進を著しく遮断し、NPY Y5アンタゴニストがこの遮断を著しく逆転したということを示す。さらに、NPY Y5アンタゴニストは、光刺激の30分前に、単独で適用した場合にも光により誘起された相シフトを強力にした。適用したNPY Y5アンタゴニストのみも、NPYも、又は両者の組合わせもその概日時期における光刺激がないと回転かご走行リズムの相における変化を誘起しなかった。
【0084】
総合すると、これらの結果は、式IIaのNPY Y5アンタゴニストはカニューレから外因的に与えられるとNPYの影響を強く遮断するという結論を支持する。相前進を生じさせる光の本来の能力を増大させるその能力で示されている様に、式IIaのNPY Y5アンタゴニストはまた内生的なNPYの影響を遮断する。
【0085】
【表2】

【0086】
実験条件
相前進(h)を、光及び/又はドラッグ処理の組合わせに曝された動物達に対する暗赤色光中に置かれた動物達の走行行動開始の差として計算された。N=7〜12に対する平均±S.E.M.。
a. 動物の通常の明時間の開始予定の3時間前に動物達を光に曝す、光のみの実験。結果としての相前進は1.33 時間である。
b. 動物を式IIa のNPY Y5アンタゴニストで前処理し、動物の通常の明時間の開始予定の3時間前に動物達を光に曝す、式IIa + 光の実験。式IIaの化合物の用量は、光に曝す30分前に皮下注射で与えられる10 mg/kgである。式IIaの化合物による光誘導性相前進の増大があり、相前進の量は光のみの実験の160%に相当する。
【0087】
c. 動物達をNPYで前処理し、動物の通常の明時間の開始の3時間前に動物達を光に曝す、NPY + 光の実験。NPYの用量は、SCNの近くに配置されたカニューレに注射器により送達される0.2 μl の体積中に200 ng/nlである。光のみの実験で生じた相前進の遮断に比較して相前進の完全な遮断がある。
【0088】
d. 動物をNPY及び式IIa のNPY Y5アンタゴニストで前処理し、動物の通常の明時間の開始予定の3時間前に動物達を光に曝す、式IIa + NPY + 光の実験。NPYの用量は、光に曝す直前にSCNに近くに配置されたカニューレに注射器により送達される0.2 μl の体積中の200 ng/nlである。式IIaの化合物の用量は、光に曝す30分前に皮下注射で与えられる10 mg/kgである。式IIaの化合物による、光誘起相前進に及ぼすNPYの影響の著しい逆転があり、その量は光のみの実験の89%に相当する。
【0089】
e. 動物達に式IIaのNPY Y5アンタゴニストのみが与えられる、式IIaのみの実験。式IIaの化合物の用量は、動物の通常の明時間の開始予定の3.5時間前に皮下注射で与えられる10 mg/kgである。回転かご走行活動の相に影響はない。
【0090】
f. 動物にNPYのみが与えられる、NPYのみの実験。NPYの用量は、SCNの近くに置かれたカニューレに注射器により送達される0.2 μl の体積中の200 ng/nlである。回転かご走行活動の相に影響はない。
【0091】
g. 動物の通常の明時間の開始の3時間前に、動物達をNPY及び式IIaのNPY Y5アンタゴニストで処理する、式IIa + NPY の実験。NPYの用量は、SCNの近くに置かれたカニューレに注射器により送達される0.2 μl の体積中の200 ng/nlである。式IIaの化合物の用量は、NPYの30分前に皮下注射で与えられる10 mg/kgである。回転かご走行活動の相に影響はない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本明細書中で使用される用語の図による説明である。 SCNを含む脳の切片を名目上の“調製日”に採取した。それに続く夜の間、予定された光照射の3〜3.5時間前に、薬剤を浴槽に投与した。翌日の早朝、名目上の“実験日”に、神経の記録を開始をし、ピーク発火頻度が確定できるまで記録を続けた。このピークの早期の時点へのシフトを“相前進”と呼んだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において光に対する概日リズム応答を調節する方法であって、光に対する概日リズム応答の調節に有効な量のNPY Y5受容体アンタゴニストを哺乳動物に投与することによる、前記方法。
【請求項2】
哺乳動物において概日リズムに及ぼす光の効果を増大させる方法であって、光の効果を増大させる量のNPY Y5受容体アンタゴニストを、ヒトを含む哺乳動物に投与することによる、前記方法。
【請求項3】
前記NPY Y5アンタゴニストが、以下の式:
【化1】

[式中、Xは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、水素、シアノ、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C5-C6シクロアルキル、エステル、アミド、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選ばれる]
で表される化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記NPY Y5アンタゴニストが、以下の式:
【化2】

で表される化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記NPY Y5アンタゴニストが、以下の式:
【化3】

[式中、
Aは酸素又は水素であり;
W、X、Y及びZは、独立してN又はCR1(基中、R1は、各場合において水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C6)アルコキシであって、アミノ、モノ−若しくはジ(C1−C6)アルキルアミノ又は(C1−C6)アルコキシで置換されたもの、(C3−C7)シクロアルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C3−C7)シクロアルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C3−C7)シクロアルキニル、ハロ(C1−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルコキシ、モノ及びジ(C1−C6)アルキルアミノ、アミノ(C1−C6)アルキル、並びにモノ−及びジ−(C1−C6)アルキルアミノ(C1−C6)アルキルから独立して選ばれる)である]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、或いは前述のもののいずれかである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記NPY Y5アンタゴニストが、以下の式:
【化4】

で表される化合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ヒトを含む哺乳動物において概日リズム障害を治療する方法であって、概日リズム障害の治療に有効な光効果を増大させる量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記障害が、光誘導性の日周期進行のNPY遮断に関連する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記NPY遮断が、前記NPY Y5アンタゴニストにより逆転されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記調節が、式I又は式IIで表されるNPY−Y5アンタゴニストを投与することにより、NPYにより引起された遮断を逆転されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記式IのNPY−Y5アンタゴニストが式Iaの化合物であり、ここで当該式Iaの化合物が、in vitroにおいて、NPYにより引起された遮断の約70%の逆転を示す、請求項17に記載の方法。
【請求項12】
前記NPY-Y5アンタゴニストが、式IIaの化合物であり、ここで当該化合物が、in vitroにおいて、NPYにより引起された遮断の約95%の逆転を示す、請求項18に記載の方法。
【請求項13】
前記IIaの化合物が、in vivoにおいて、NPYにより引起された遮断の約90%の逆転を示す、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記NPY Y5アンタゴニストが、NPYがない場合にin vivoにおいて、光のみにより達成される光誘導性の相シフトを160%増大させる式II Aの化合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記NPY Y5アンタゴニストが、光のみにより達成されるin vivoにおける光誘導性の相シフトを200%増大させる、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−506728(P2007−506728A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527504(P2006−527504)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002996
【国際公開番号】WO2005/030208
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】