説明

構内無線通信システム

【課題】 携帯機に対する位置検知精度を向上した構内無線通信システムを提供する。
【解決手段】 構内無線通信システムは、サービスエリア内にて分割された通信エリア毎に配置された無線基地局10a、10b、…と、各通信エリア内にて無線基地局10a、10b、…と無線接続する携帯機20a、20b、…と、無線基地局10a、10b、…同士を接続制御する主装置30とを備えている。主装置30は、携帯機20a、20b、…の位置を特定する場合、無線基地局10a、10b、…の電波の送出を順次停止しながら各無線基地局10a、10b、…に接続されている携帯機20a、20b、…を検索し、携帯機位置検索テーブルを作成する。位置表示端末装置は、上記携帯機位置検索テーブルに基づいて携帯機20a、20b、…の位置を特定し、地図上に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構内無線通信システムに係り、特に携帯機の位置検知精度を向上した構内無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広い敷地を有する工場等においては、コードレス電話システム(PHS)等の構内無線通信システムが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。上記構内無線通信システムは、サービスエリア内にて分割された通信エリア毎に配置された複数の無線基地局と、上記各通信エリア内にて無線基地局の一つと無線接続する携帯機と、上記無線基地局同士を接続制御する主装置により構成されている。
【0003】
上記主装置は、各携帯機がどの無線基地局と接続しているかを認識し、その無線基地局の通信エリア内を携帯機が存在している場所として特定している。
【特許文献1】特開2001−25055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の構内無線通信システムは、各携帯機がどの無線基地局と接続しているかを認識し、その無線基地局の通信エリア内を携帯機が存在している場所として特定しているので、携帯機に対する位置検知精度は無線基地局の電波が届く通信エリアの範囲となり、無線基地局の通信エリア内のどのあたりに携帯機が存在しているかまでは特定することができなかった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、携帯機に対する位置検知精度を向上し得る構内無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、構内無線通信システムにおけるサービスエリア内にて分割された通信エリア毎に配置された複数の無線基地局と、前記各通信エリア内にて前記無線基地局の一つと無線接続する携帯機と、前記無線基地局同士を接続制御すると共に前記携帯機の位置を特定する機能を備えた主装置と、前記主装置により特定された前記携帯機の位置を表示する位置表示端末装置とを具備し、前記主装置は、前記携帯機の位置を特定する場合、前記無線基地局の電波の送出を順次停止しながら当該各無線基地局に接続される携帯機を検索し、前記検索した携帯機が接続可能な無線基地局の重複する通信エリアから当該携帯機の位置を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各通信エリアに配置された無線基地局の電波の送出を順次停止しながら当該各無線基地局に接続される携帯機を検索することにより、検索した携帯機が接続可能な無線基地局の通信エリアから当該携帯機の位置を高精度で特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明一実施形態に係る例えばコードレス電話システム(PHS)等の構内無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0009】
図1に示す構内無線通信システムは、サービスエリア内にて分割された通信エリア毎に配置された無線基地局10a、10b、…と、各通信エリア内にて無線基地局10a、10b、…と無線接続する携帯機20a、20b、…と、上記無線基地局10a、10b、…同士を接続制御する主装置30とを備えている。
【0010】
上記無線基地局10a、10b、…は、それぞれ制御部11と、各種データ例えば無線基地局10a、10b、…毎に識別された識別データ等を記憶するメモリ12とを有している。無線基地局10a、10b、…は、定期的に当該識別データを携帯機20a、20b、…に通知する。
【0011】
携帯機20a、20b、…は、制御部21と、各種データ例えば当該携帯機20a、20b、…が存在する通信エリアに該当する無線基地局10a、10b、…の識別データ等を記憶するメモリ22とを備えている。
【0012】
主装置30は、各無線基地局10a、10b、…毎に接続制御する無線基地局用回路31a、31b、…と当該主装置30全体を制御する例えばCPU等の制御部32と、各種データ例えば各携帯機20a、20b、…の位置データ(識別データ)や各無線基地局10a、10b、…の識別データ等を記憶するメモリ33とを備えている。上記制御部32は、主装置30全体を制御すると共に、無線基地局用回路31a、31b、…を介して無線基地局10a、10b、…の動作を制御する機能、例えば詳細を後述するように電源をオン/オフして送出電波を制御し、これにより各無線基地局10a、10b、…と接続される携帯機20a、20b、…の位置を特定する機能を備えている。
【0013】
そして、上記主装置30には、位置表示端末装置35が接続される。この位置表示端末装置35は、例えばパーソナルコンピュータを用いて構成され、構内の地図データを予め記憶していると共に、各無線基地局10a、10b、…、10nの通信エリア40a、40b、…、40nを上記地図データに対応付けて記憶しており、上記制御部32で特定された携帯機20a、20b、…の位置を例えば地図の形態で表示する。
【0014】
図2は、主装置30に接続された無線基地局10a、10b、…と、各無線基地局10a、10b、…の通信エリア40a、40b、…との関係を示したものである。各無線基地局10a、10b、…の通信エリア40a、40b、…は、各無線基地局10a、10b、…を中心としてその周囲に略円形に形成され、一部の領域が重複している。
【0015】
上記のように構成された構内無線通信システムにおいて、各携帯機20a、20b、…による位置登録は、近い位置に存在する無線基地局10a、10b、…を介して行われる。この場合、携帯機20a、20b、…は複数の無線基地局に対して接続可能な状態であっても、電波条件の良い無線基地局を介して位置登録が行われる。主装置30は、携帯機20a、20b、…の位置登録によってメモリ33内に図3に示す携帯機位置登録テーブル51を作成し、各携帯機20a、20b、…の位置を識別している。
【0016】
上記携帯機位置登録テーブル51には、無線基地局10a、10b、…、10nの識別データと、各無線基地局10a、10b、…、10nに登録された携帯機20a、20b、…の識別データがそれぞれ対応して書き込まれる。
【0017】
主装置30は、通常の状態では上記携帯機位置登録テーブル51を使用し、各携帯機20a、20b、…の位置を識別して通信制御を行っている。
【0018】
次に、緊急時等において、携帯機20a、20b、…の位置を高精度で特定する場合における制御部32の処理動作を図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0019】
今、例えば図2に示すように携帯機20aが無線基地局10a〜10cの通信エリア40a〜40cが重複するエリア41に位置し、無線基地局10aに接続しているものとする。携帯機20a、20b、…は、上記通信エリア40a〜40cが重複するエリア41に位置している場合、無線基地局10a〜10cの何れとも接続が可能である。
【0020】
制御部32は、携帯機20a、20b、…の位置を高精度で特定する場合、図4に示すように先ず無線基地局10aに接続されている携帯機を検索する(ステップA1)。この検索により無線基地局10aには携帯機20aが接続されていることが検知される。
【0021】
制御部32は、無線基地局10aに対する検索を終了すると、所定時間後、例えば数十秒後に上記無線基地局10aに電源を切断するように制御命令を出力して無線基地局10aの電波の送出を停止する(ステップA2)。無線基地局10aからの電波の送出が停止すると、携帯機20aは無線基地局10aとの接続が遮断されるので、他の接続可能な無線基地局10bあるいは無線基地局10cと接続する。今、無線基地局10bに対して携帯機20aが接続したものとする。
【0022】
制御部32は、上記無線基地局10aの電源を遮断した状態で、次の無線基地局10bに接続されている携帯機を検索し(ステップA3)、携帯機20aが接続してきたことを検知すると、所定時間後(例えば数十秒後)に上記無線基地局10bの電源を遮断し、無線基地局10bの電波の送出を停止する(ステップA4)。この時点では、無線基地局10a、10bが電波の送出を停止した状態となっている。携帯機20aは、上記無線基地局10a、10bからの電波の送出が停止し、無線基地局10bとの接続が遮断されると、他の接続可能な無線基地局10cと接続する。
【0023】
制御部32は、上記無線基地局10a、10bの電源を遮断した状態で、次の無線基地局10cに接続されている携帯機を検索し(ステップA5)、携帯機20aが接続してきたことを検知すると、所定時間後(例えば数十秒後)に上記無線基地局10cの電源を遮断し、無線基地局10cの電波の送出を停止する(ステップA6)。この時点では、無線基地局10a〜10cが電波の送出を停止した状態となっている。
【0024】
制御部32は、以下同様にして無線基地局10a、10b、…の電源を順次遮断し、無線基地局10n−1に接続されている携帯機の検索を行った後、上記無線基地局10n−1の電源を遮断して電波の送出を停止し(ステップA7)、最終的に無線基地局10nに接続されている携帯機の検索を行う(ステップA8)。
【0025】
そして、上記各無線基地局10a、10b、…、10nの検索結果に基づいて図5に示す携帯機位置検索テーブル61をメモリ33内に作成する(ステップA9)。
【0026】
上記携帯機位置検索テーブル61は、携帯機登録エリア62及び接続基地局登録エリア63からなり、携帯機登録エリア62に各携帯機20a、20b、…の識別データが書き込まれ、接続基地局登録エリア63に携帯機20a、20b、…が接続可能な無線基地局10a、10b、…の識別番号が書き込まれる。
【0027】
上記検索処理の結果、携帯機位置検索テーブル61には、各携帯機20a、20b、…に対し、それぞれ接続可能な無線基地局10a、10b、…、10nが登録される。
【0028】
制御部32は、上記携帯機位置検索テーブル61により、各携帯機20a、20b、…が接続可能な無線基地局10a、10b、…、10nを識別し、その通信エリア40a、40b、…、40nの重複エリアによって各携帯機の位置を特定する。図2の例では、無線基地局10a、10b、10cによって携帯機20aの接続が検知されているので、その通信エリア40a、40b、40cが重複するエリア41内に携帯機20aが位置しているものと特定することができる。
【0029】
そして、上記制御部32により特定された各携帯機20a、20b、…の位置データは、位置表示端末装置35へ送られて画面上に表示される。
【0030】
位置表示端末装置35は、構内の地図データを予め記憶しており、制御部32により特定された携帯機20a、20b、…の位置を表示画面に地図の形態で表示する。従って、ユーザーは、位置表示端末装置35の表示画面から携帯機20a、20b、…の位置を直ちに確認することができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、全ての無線基地局10a、10b、…を検索して各携帯機20a、20b、…の位置を特定する場合について示したが、緊急時等において特定の携帯機、例えば携帯機20aの位置を特定する場合には、その携帯機20aが位置登録されている無線基地局とその周辺の基地局を検索することにより携帯機20aの位置を特定することができる。従って、この場合には全ての無線基地局10a、10b、…、10nを検索する必要はなく、短時間の検索処理で携帯機の位置を高精度で特定することができる。
【0032】
また、上記実施形態では、携帯機20a、20b、…の位置を特定する際、無線基地局10a、10b、…の電源を遮断して電波の送出を停止するようにしたが、電源を遮断せずに電波の送出のみを停止するようにしても良い。
【0033】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明一実施形態に係る構内無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態において、主装置に接続された無線基地局と、各無線基地局の通信エリアとの関係を示す図である。
【図3】同実施形態における携帯機位置登録テーブルの構成例を示す図である。
【図4】同実施形態において、携帯機の位置を高精度で特定する場合の制御部の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】同実施形態における携帯機位置検索テーブルの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10a〜10n…無線基地局、11…無線基地局の制御部、12…無線基地局のメモリ、20a、20b、…、…携帯機、21…携帯機の制御部、22…携帯機のメモリ、30…主装置、31a、31b、…、…無線基地局用回路、32…主装置の制御部、33…主装置のメモリ、35…位置表示端末装置、40a、40b、…、…通信エリア、51…携帯機位置登録テーブル、61…携帯機位置検索テーブル、62…携帯機登録エリア、63…接続基地局登録エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構内無線通信システムにおけるサービスエリア内にて分割された通信エリア毎に配置された複数の無線基地局と、前記各通信エリア内にて前記無線基地局の一つと無線接続する携帯機と、前記無線基地局同士を接続制御すると共に前記携帯機の位置を特定する機能を備えた主装置と、前記主装置により特定された前記携帯機の位置を表示する位置表示端末装置とを具備し、
前記主装置は、前記携帯機の位置を特定する場合、前記無線基地局の電波の送出を順次停止しながら当該各無線基地局に接続される携帯機を検索し、前記検索した携帯機が接続可能な無線基地局の重複する通信エリアから当該携帯機の位置を特定することを特徴とする構内無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−206960(P2009−206960A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48326(P2008−48326)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】