説明

構造体ユニット

【課題】低コストで施工性がよく設計のし易い構造体ユニットを提供する。
【解決手段】本発明では、異なる2つの長さのレール部材を組み合わせ移動棚3A〜3Iが移動する経路7を形成するレールユニット20を備え、第1のレール部材20Aの長さを500ミリとし、第2のレール部材20Bの長さを300ミリとし、これらを組み合わせることで経路7を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動棚の設置場所に用いる構造体ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
書籍、資料、荷物などの物品を収納する移動式の棚(以下、「移動棚」と記す)は、設置場所の床、天井あるいは壁面に設けられたパネル部材の間に配置されたレール部材内を車輪が走行することでレール部材に沿って移動可能とされている。このような移動棚の経路やパネル部材は、設置場所のレイアウトや移動棚の数、施工主の要望になどに応じて、その都度設計して施工している。移動棚の施工方法に関しては、例えば特許文献1が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特許第2996058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の施工手法においては、レール部材やパネル部材を設置場所毎に設計しているので、レール部材やパネル部材を現場で切断して長さを調整するので、端材が多く、時間も要し、施工コスト上昇の一要因となっている。また、あらゆる状態を想定して様々な長さのレール部材やパネル部材を用意することも考えられるが、これではレール部材やパネル部材の種類が多くなり、選定に時間がかかるとともに、量産によるコストメリットが得られにくい。
【0005】
本発明は、低コストで施工性がよく設計のし易い構造体ユニットを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明者らは、最小の種類で無駄なく移動棚の設置場所の施工を可能とするのに、レール部材の長さの組み合わせに着目した。すなわち、長さの異なるレール部材を組み合わせてユニット化し、組み合わせによる経路の変更ピッチを極力短くし、その変更ピッチを一定にすれば、少ない種類のレール部材で経路を構成でき、レール部材の量産によるコストメリットを出せるとともに、設計、施工もし易くなると考えた。
【0007】
そこで、本発明は、移動棚の設置場所に用いる構造体ユニットであって、異なる2つの長さのレール部材を組み合わせ前記移動棚が移動する経路を形成するレールユニットを備え、第1のレール部材の長さが500ミリであり、第2のレール部材の長さが300ミリとし、これらを組み合わせることで経路を形成するようにした。
【0008】
このようなレールユニットにおいては、経路の全長をL、第1のレール部材の全長をA、第2のレール部材の全長をB、第1のレール部材の本数をn1、第2のレール部材の本数をn2、全長L≧1000ミリとした場合、1=L/(An1+Bn2)の式で第2のレール部材と第2のレール部材の本数を算出する。
【0009】
上記構造体ユニットは、第1及び第2のレール部材と同一の長さのパネル部材を有し、各パネル部材を同一サイズのレール部材に沿うように配置して平面体を構成するようにした。
【0010】
上記構造体ユニットにおいて、平面体は、設置場所の床、天井または壁面の何れか1つを構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、500ミリの長さを有する第1のレール部材と300ミリの長さを有する第2のレール部材を組み合わせたレールユニットで移動棚の経路を形成するので、1000ミリを超える経路においては、300ミリのレール部材の本数を変えることで、100ミリの変更ピッチで経路設計を行うことができるようになり、設計時間や施工時間の短縮、レール部材の種類を少なくできるので量産化を図れ、材料コストや施工コストを大幅に低減することができる。
【0012】
本発明によれば、第1及び第2のレール部材と同一の長さのパネル部材を有し、各パネル部材を同一サイズのレール部材に沿うように配置して平面体を構成するので、レール部材だけでなく、300ミリのパネル部材の枚数を変えることで、100ミリの変更ピッチで平面体の設計を行うことができるようになり、設計時間や施工時間の短縮、パネル部材の種類も少なくできるので量産化を図れ、材料コストや施工コストを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて順次説明する。図1は、本発明の一実施の形態である構造体ユニットを備えた書庫の平面図である。同図において書庫1は、固定棚2A,2B、各固定棚2A,2B間に配置された移動棚3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3H,3Iを有している。
【0014】
各固定棚2A,2Bは互いに向き合う面に間口を有しており、各間口面には物品を収納するための複数のラック部が形成されている。各固定棚2A,2Bはそれぞれ左右対称の形状を呈しており、各ラック部が向き合うように構成されている。
【0015】
各移動棚3A〜3Iは全て同じ形状を呈しており、図2及び図3に移動棚3Aを代表して示すように、各移動棚3A〜3Iは上部に複数のラック部3bを有する棚部3aを有し、下部に複数の棚用車輪3dをそれぞれ有する複数の台車部3cを有している。本実施形態において、ラック部3bは6列4段に配置され、各移動棚3A〜3Iの両間口面の双方にラック部3bが設けられている。棚部3aの間口面から見た両側部及び各ラック部3b間の下部には7個の台車部3cが取り付けられており、各台車部3cにはそれぞれ2個の棚用車輪3dが支軸3eによってそれぞれ回転自在に支持されている。各棚用車輪3dは、それぞれフランジを有さないフラットな同一の円筒形状を呈しているが、無論フランジを有するものを用いても良い。
【0016】
各移動棚3A〜3Iは、経路7上をその間口面と直交する方向に個別に移動され、各移動棚3A〜3Iのうちの任意の2つの移動棚間には、図4に示す通路23が形成される。図4において、矢印Aは各移動棚の移動方向を示す。
【0017】
次に本発明の主要部となる構造体ユニットの構成とその設置や設計について説明する。本形態では、最小の種類で無駄なく経路7及び平面体となる設置床面15を構成するのに、長さの異なるレール部材とパネル部材を組み合わせることに着目した。すなわち、経路7は図4に示すように、異なる2つの長さのレール部材となる第1のレール部材20Aと第2のレール部材20Bを組み合わせたレールユニット20で構成されている。設置床面15は図4に示すように、異なる2つの長さのパネル部材となる第1のパネル部材30Aと第2のパネル部材30Bを組み合わせたパネルユニット30で構成されている。第1のレール部材20Aと第1のパネル部材30A、及び第2のレール部材20Bと第2のパネル部材30Bとは、それぞれ同一サイズに設定されている。設置床面15は、第1及び第2のパネル部材30A、30Bを同一サイズの第1及び第2のレール部材20A、20Bに沿うように躯体床面6上に配置するとこで構成されている。
【0018】
本形態では、レール部材の組み合わせによる経路7の変更ピッチを極力短くし、その変更ピッチを一定にするような第1のレール部材20Aと第2のレール部材20Bの全長と組み合わせ本数を模索したところ、図5に示すように組み合わせに辿り着いた。この組み合わせは、第1のパネル部材30Aと第2のパネル部材30Bにも適用される。
【0019】
それは、レール部材20Aの全長を500ミリ、第2のレール部材20Bの全長を300ミリとした場合、経路全長Lに応じて経路に使用する第1のレール部材20Aの本数と第2のレール部材20Bの本数を変更することで、100ミリピッチで経路全長Lを変更可能に構成できること点である。
【0020】
すなわち、経路7の全長をL、第1のレール部材20Aの全長をA、第2のレール部材20Bの全長をB、第1のレール部材20Aの本数をn1、第2のレール部材20Bの本数をn2、経路全長L≧1000ミリとした場合、経路全長Lを満たす第1のレール部材20Aと第2のレール部材20Bの使用本数、言い換えると組み合わせパターンを次の式1により算出することができる。
【0021】
1=L/(An1+Bn2)・・・・(式1)
この点についてさらに説明を進めると、例えば経路全長Lが2000ミリの場合には、A=全長500ミリの第1のレール部材20Aを4本使用することで、経路全長Lを満たすことができる。つまり500ミリで割り切れる経路全長Lの場合には、全長300ミリの第2のレール部材20Bを使用することなく、単一種類のレール部材で経路7を形成することができる。無論これはパネル部材30A,30Bにより設置床面15を形成する場合にも有効なことである。
【0022】
これに対し、1000ミリを超える経路全長L、例えば2000ミリ<経路全長L<3000ミリの場合、第1のレール部材20A単独使用で経路7を形成することはできないため、第2のレール部材20Bをどのように組み合わせていくのかが重要な要素となる。
【0023】
そこで、このような場合には、経路全長Lの端数を何本の第2のレール部材20Bで満たすことが出来るかを求め、その後に第1のレール部材20Aの本数を求めるようにした。例えば経路全長Lが2100ミリの場合、端数の100ミリが無くなれば全長500ミリの第1のレール部材20Aを用いることが出来る。しかし100ミリのレール部材は無いので、ここでは300ミリの第2のレール部材20Bを2本用いると、その全長は600ミリとなり、
経路全長2100ミリ−第2のレール部材全長600ミリ=1500ミリとなり、1500ミリ/第1のレール部材20Aの全長500ミリ=3となり、第1のレール部材20Aの本数が3本であることが算出できる。
【0024】
各レール部材の本数となるn1、n2は式2により求められる。
【0025】
L/500ミリ=X...Y・・・・(式2)
ここで、全長300ミリの第2のレール部材20Bの本数n2を算出すると、
次のようになる。
【0026】
Y=0 n2=0 (式3)
Y=100:(Y+ 500ミリ/300ミリ=2) n2=2本 (式4)
Y=200:(Y+1000ミリ/300ミリ=4) n2=4本 (式5)
Y=300:(Y+ 500ミリ/300ミリ=1) n2=1本 (式6)
Y=400:(Y+ 500ミリ/300ミリ=3) n2=3本 (式7)
つまり、経路全長Lの端数が100ミリ、600ミリの場合には式4を、
端数が200ミリ、700ミリの場合には式5を、
端数が300ミリ、800ミリの場合には式6を、
端数が400ミリ、900ミリの場合には式7を、
それぞれ用いることで第2のレール部材20Bの本数n2を求めることができる。
【0027】
次に、全長500ミリの第1のレール部材20Aの本数n1を算出すると、次のようになる。
【0028】
n2=0・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・n1=X (式8)
n2=1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・n1=X (式9)
n2=2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・n1=X−1(式10)
n2=3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・n1=X−1(式11)
n2=4・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・n1=X2 (式12)
このように算出した経路全長Lに対する第1のレール部材20Aと第2のレール部材20Bとの関係をまとめたものが図5となる。
【0029】
つまり、図5のような一覧を予め作成しておき、これを見ながら経路設計をすることで経路7に使用する第1のレール部材20Aと第2のレール部材20Bの使用本数を容易に算出することができるので、設計時間を短縮することができ、設計コストを低減することができる。無論、図5から経路7に使用する第1のレール部材20Aと第2のレール部材20Bの使用本数が算出されることは、これら2つのレール部材と同一サイズの第1のパネル部材30Aと第2のパネル部材30Bの使用枚数が算出されることになり、この点からも設計時間を短縮することができ、設計コストを低減することができる
施工する場合には、使用するレール部材やパネル部材の種類が少なく、施工場所での長さ調整も不要となるので、施工時間の短縮を図れるとともに端材の発生がなくなる。また、レール部材やパネル部材の種類が少ないので量産化を図り易くなり、材料コストや施工コストを大幅に低減することができる。
【0030】
本形態では、各式で算出した値を図5に示すように一覧にして設計などに用いるようにしたが、経路配置などの施工図面はパソコンなどの情報処理装置で作成することが多いので、上記各式をパソコンなどに予め設定しておき、経路全長を入力するとこで、第1のレール部材20Aと第2のレール部材20Bの本数や第1のパネル部材30Aと第2のパネル部材20Bの枚数を算出するようにしてもよい。この場合、より設計時間の短縮や設計変更に対して迅速に対応することができるようになる。
【0031】
本形体では、レール部材20A、20B及びパネル部材30A、30Bを躯体床面6上に設置して経路7及び平面体として設置床面15を形成したが、経路7や平面体としては、躯体天井や躯体壁部に配置して、それぞれ設置天井及び設置壁面を構成する形態としても無論かまわない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態である経路を備えた物流装置の平面図である。
【図2】移動棚の概略構成を示す正面図である。
【図3】移動棚の概略構成を示す側面図である。
【図4】経路を構成するレールユニット及びパネルユニットの概略構成を示す側面図である。
【図5】経路全長と経路に使用する第1のレール部材及び第2のレール部材の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
3A〜3I 移動棚
7 経路
15 平面体
20 レールユニット
20A 第1のレール部材
20B 第2のレール部材
30 パネルユニット
30A 第1のパネル部材
30B 第2のパネル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動棚の設置場所に用いる構造体ユニットであって、
異なる2つの長さのレール部材を組み合わせ前記移動棚が移動する経路を形成するレールユニットを備え、
第1のレール部材の長さが500ミリであり、第2のレール部材の長さが300ミリであることを特徴とする構造体ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の構造体ユニットにおいて、
前記経路の全長をL、第1のレール部材の全長をA、第2のレール部材の全長をB、第1のレール部材の本数をn1、第2のレール部材の本数をn2、全長L≧1000ミリとした場合、
1=L/(An1+Bn2)の式で
第1のレール部材と第2のレール部材の使用本数を算出することを特徴とした構造体ユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載の構造体ユニットにおいて、
第1及び第2のレール部材と同一の長さのパネル部材を有し、各パネル部材を同一サイズのレール部材に沿うように配置して平面体を構成することを特徴とする構造体ユニット。
【請求項4】
請求項3記載の構造体ユニットにおいて、
前記平面体は、設置場所の床、天井または壁面の何れか1つを構成することを特徴とする構造体ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−178657(P2008−178657A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170905(P2007−170905)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000163833)金剛株式会社 (31)
【Fターム(参考)】