構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具
【課題】 金属板と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層との結合を接着剤等で行うと化学的結合であるため、いま一つ信頼性がない。また、取り付け金具を取り付ける構造物の面に不陸があると取り付け面と取り付け金具とが所定の位置で同一面上に並ばず、樹脂系板材の取り付けに不具合を生じる。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層と小孔を有する金属板とにより、接着剤等の化学的結合によらないで取り付け金具を形成するとともに、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離が、この取り付け金具の周辺部フランジ下面との距離より大きく、かつ金具底面にバネ状物或いはゴム状物を有し、取り付け面と取り付け金具とが所定の位置で同一面上に配置可能とすることを特徴とする取り付け金具を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層と小孔を有する金属板とにより、接着剤等の化学的結合によらないで取り付け金具を形成するとともに、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離が、この取り付け金具の周辺部フランジ下面との距離より大きく、かつ金具底面にバネ状物或いはゴム状物を有し、取り付け面と取り付け金具とが所定の位置で同一面上に配置可能とすることを特徴とする取り付け金具を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築工事における防水・遮水工事及び補修・補強工事において、鏡面状態が確保されない構造物の壁面に熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法により取り付けるための取り付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートで構築された構造物の表面状態は、一般に平滑に仕上がつていると謳っていても不陸を有しており、その表面に硬質の樹脂系板材を取り付けるためには、当該板材に穿孔し、孔を通してボルト類等の金具で構造物に固定したり、当該板材の周縁部を嵌合部材を配置し、嵌合部材をボルト類等の金具で構造物に設置し、嵌合部材と構造物間の隙間間隔を調整しながら固定する方法が一般的である。
【0003】
また、構造物の屋根等の防水・遮水及び補修・補強のためには、施工の対象面に熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シートを取り付けるに当り、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層と金属板を組み合せた取り付け金具を用い、高周波誘導加熱法を応用する技術が以下の特許文献にも見られるように良く知られている。
【0004】
【特許文献1】第2971149号特許公報
【特許文献2】特公昭58−36705号特許公報
【特許文献3】特開平10−77722号公開特許公報
【特許文献4】特開2003−313995号公開特許公報
【0005】
この種の取り付け金具の多くは金属板の表面にホットメルト樹脂或いは接着剤をコーティングし、高周波誘導加熱法、熱風溶着法、熱鏝溶着法、或いは接着剤等を用いて固定したり、接着テープを貼り付けて、金属板と熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シートを溶着、固定してなっている。
【0006】
しかし、〔0002〕記載の穿孔方法による固定では、板に孔を開けるため孔の処理、取り付けるボルト類の頭が飛び出し、板材面の平滑性の阻害、遮断性の不具合発生の慢性的な危険性を有することがあり、嵌合部材を用いる場合では要求される板材の固定強度が高い場合には、小面積の板材を数多く取り付けなければならず、作業性が著しく悪くなり、かつ経済的にも多大な費用が必要となる。
【0007】
また、〔0003〕記載の高周波誘導加熱法を用いて樹脂系板材を固定しようとしても、不陸状態を排除することが不可能なコンクリート構造物の面に設置された取り付け金具の溶着面が、不陸の影響で複数の取り付け金具が同一平面上に並ばないことから、確実な溶着作業は不可能である。
【0008】
さらに〔0003〕〔0005〕記載の固定法では、金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との結合が化学的結合であるため、コーティングされたホットメルト樹脂或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透して金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との界面に達し、或いは同時に熱履歴を受け、金属板が酸化又は劣化を起こし、取り付け金具に結合した熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シートが剥離を起こす危険性があり、信頼性に欠ける。
【0009】
このような問題点を解決するため、特許文献4には金属製の基材に複数の貫通孔を穿設し、この貫通孔に熱可塑性樹脂を充填するとともに、基材の外表面を熱可塑性樹脂の被覆層で被覆し、表面側と裏面側の被覆層を前記貫通孔に充填した合成樹脂の連接部で連接した取り付け金具が提案されている。
【0010】
この提案によれば、ホットメルト樹脂或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透し金属面に達して起こる金属面の酸化、劣化により引き起こされる「取り付け金具に結合した熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シートの剥離」という問題点は解消する。
【0011】
前記特許文献2、3、4に記載の、高周波誘導加熱法による接合作業においては、取り付け金具の金属板が短時間で発熱、昇温し続け、金属板に接する熱可塑性樹脂が金属板接触界面から昇温し、熱可塑性樹脂層内を保護し取り付け金具の溶着面に接する熱可塑性樹脂系シートの溶着面が昇温して、溶着可能になる温度に達したのち、先に溶融している取り付け金具の溶着面の熱可塑性樹脂が一体化して溶着、固定する。しかしながら、比熱が大きく、熱伝導率が極めて小さい合成樹脂を金属板に積層した取り付け金具においては、熱可塑性樹脂系シートと溶着するための熱可塑性樹脂被覆厚みを出来うる限り薄くして、被溶着物である樹脂系シートの溶着界面の昇温時間を可能な限り短く出来ないと、先に溶融する金属板に接する熱可塑性樹脂が、過度の加温に晒され当該樹脂が変質、劣化する危険性が極めて大きくなる。
【0012】
しかしながら、特許文献4に記載されている、取り付け金具の金属板を被覆する熱可塑性樹脂の厚さが1−2mmの場合では、高周波誘導加熱法による接合作業を実施すると、金属板と被覆されている熱可塑性樹脂の界面が、高周波電流によって金属板に誘導された渦電流で発生する熱で焦げ、変質、劣化する欠陥が多発し、安定した溶着作業することが非常に困難である。
【0013】
また、特許文献4に記載の取り付け金具において、特許文献4に記載の防水シートが外部から受ける引張力は、取り付け金具裏面に配置されている、金属製の基材に穿設された複数の貫通孔周縁直上の熱可塑性樹脂断面で受けるため、裏面に用いる熱可塑性樹脂の固有強度と厚さと孔の金属板が占める面積で左右される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、これまでの取り付け金具は、設置した構造物面の不陸に対しての配慮は殆どされていない。実際に建造される或いは既存の構造物の面は平滑でなく不陸状態にあるため、構造物に設置された取り付け金具は構造物から一定距離の同一面にならず、特に硬質の樹脂系板材を取り付け金具で固定するとき、樹脂系板材に取り付け金具の溶着面が全面接触しなかったり、構造物面に設置された多数の金具と樹脂系板材間に間隙を生じたりして不具合が生じることがある。
【0015】
また、取り付けられた樹脂系板材或いは樹脂系シートに掛かる引張力は、取り付け金具に穿孔された孔に充填されている樹脂を介して、取り付け金具の溶着面の反対面に配置した可塑性樹脂層に伝達されるが、保持力は当該可塑性樹脂層の樹脂固有の強度特性と樹脂厚み及び取り付け金具の溶着面にある孔の総面積によって決まってしまう。このため樹脂厚を大きくしないと、高い把持力が期待できない。
【0016】
さらに、被溶着対象物の厚さが大きい場合、取り付け金具の溶着面に配置される熱可塑性樹脂層の厚みが厚いと、被溶着対象物の溶着面が溶着可能となる温度に達するまで長時間を必要とするため、取り付け金具の金属板に接している熱可塑性樹脂が過剰な熱を受け、容易に焦げる等の変質、劣化を起こす。
【0017】
本発明は、このような課題を以下述べるところにより解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するためつぎの手段を提供する。
【0019】
基本的には、構造物に、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するために、前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置され、かつ、前記の樹脂層に用いる樹脂と同じ樹脂が金属板の小孔に充填され、前記の樹脂層と小孔に充填されている熱可塑性樹脂とが一体となっている取り付け金具であって、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きいことを特徴とする、構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を提供する。
【0020】
さらに、取り付け金具の金属板の、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートと接する面に配置される樹脂層厚を0.05mmから0.5mm以下とすることが好ましい。
【0021】
上記取り付け金具は、複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置された熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層を積層することが好ましい。
【0022】
繊維層に用いる繊維の形態は織物、編物、積層布、不職布、繊維チップのどれでもよいが、特にメッシュ状の織物もしくは積層布が好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂を含有する樹脂層内に配置される繊維層の位置は、樹脂層内のどの位置でも良いが、金属板により近い位置が好ましい。
【0024】
上記取り付け金具は、上記取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物又はゴム状物が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
請求項1、請求項2及び請求項3において、この取り付け金具は、金属板と金属板の一面又は両面に配置された熱可塑性樹脂を含む樹脂層とが、金属板に形成されている多数の小孔に樹脂層が充填されて一体となっていて、かつ、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きいため、つぎの効果を発揮する。
【0026】
熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートの前記熱可塑性樹脂面を、構造物に設置された、前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置され、かつ、前記の樹脂層に用いる樹脂と同じ樹脂が金属板の小孔に充填され、前記の樹脂層と小孔に充填されている熱可塑性樹脂とが一体となっている取り付け金具は、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離が、当該取り付け金具の周辺部フランジ下面との距離より大きく形成されており、構造物に当該取り付け金具を設置したとき、フランジ下面と構造物との間に隙間ができるため、構造物の取り付け個所に不陸があって、取り付け金具設置時に構造物の面と当該取り付け金具とが平行になっていなくても、取り付け金具上の前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートのいずこかを押圧すると、当該取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面先端部を中心として取り付け金具が動き、当該金具の溶着面が前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートの被溶着面全面に完全に密着させることが出来る。
【0027】
当該取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物又はゴム状物が配置されているため、更につぎの様な効果を有する。
【0028】
構造物の不陸により、構造物に設置した複数の取り付け金具の溶着面が同一面上に並ばない場合には、さらに当該取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物あるいはゴム状物が配置することにより、取り付け金具上の前記樹脂系板材前記樹脂系板材又は樹脂系シートのいずこかを押圧することにより、取り付け金具の溶着面を同一平面上に整列させることができるため、全ての当該取り付け金具の溶着面が、高周波誘導加熱すると、金具の金属板に発生する渦電流による発熱で、金具の溶着面と、前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートの被溶着面が溶着する。この溶着作業を設置した全ての取り付け金具に実施することにより前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートは全ての取り付け金具と一体化させることが可能となる。
【0029】
しかしながら、取り付け金具の溶着面に配置される樹脂層の、取り付け金具の金属板との接触面に過剰な熱がかかり発生する焦げ等の変質、劣化を制御するために、請求項3に記載した、取り付け金具溶着面に配置される樹脂層を0.05mmから0.5mm以下に設定することにより、取り付け金具の金属板に渦電流により発生する熱を前記樹脂系板材又は樹脂系シートの被溶着面の樹脂へ短時間で伝達し、溶着可能な温度まで短時間に昇温させることが可能となり、取り付け金具の溶着面に配置された樹脂が過度の熱を受けず、焦げ等の変質、劣化を生じないので、制御可能な溶着作業が出来る。
【0030】
請求項4において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層を積層したので、つぎの効果を有する。
【0031】
本発明では、金属板と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層とは、積極的に接着させていない。
【0032】
これは、接着されている取り付け金具が、〔0008〕に記載した変質、劣化を経時的に受け、初期性能と長期供用後の性能が変わってしまう危険性を有するので、これを回避するためと、接着してあると外部から金属板にかかる引張力がかかった金属部分のみで受けなければならないのに対し、接着していないので、引張力がかかった部分だけでなく樹脂層の広い範囲に分散でき、かつ樹脂層が繊維層で補強されることにより、さらに力を広範囲に分散させ、単位面積当りの受ける力をより少なくすることができる。
【0033】
また、取り付け金具の金属板の孔の直径を増やすと、取り付けられた熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シート材により引張り力を受けた場合、金属板を介して連接されている貫通孔周縁直上の樹脂断面で受けるため、樹脂層は大きな厚みを必要とするが、連接されている樹脂層が繊維層で補強されていると、繊維層を介して引張力が広く分散されるため、圧倒的な強度の保持を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を以下図面に基き説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面円形の取り付け金具を示す平面図、図2は、図1のA−A断面図である。
【0036】
図2に示す取り付け金具10は、複数の小孔1aが表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層2aとからなり、金属板1と樹脂層2aとは熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填され、さらに小孔1aの上部に樹脂が盛り上がる状態になる様に一体に形成される。
【0037】
この取り付け金具10は、上面を樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例2】
【0038】
図4は、本発明に係る構造物に前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具を示す図3のB−B断面図である。
【0039】
図4において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層2a、樹脂層2bとからなり、金属板1と樹脂層2aと樹脂層2bとは同一樹脂で構成され、樹脂層2aと樹脂層2bとはそれぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形される。樹脂層2bの層厚は0.05mmから0.5mm以下に設定されている。
【0040】
この取り付け金具10は、上面を樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例3】
【0041】
図5は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図1と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具の図1のA−A断面図である。
【0042】
図5に示す取り付け金具10は、複数の小孔1aが表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aとからなり、金属板1と樹脂層2aとは熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に補強層として積層されており、さらに小孔1aの上部に樹脂が盛り上がる状態になる様に一体に形成される。
【実施例4】
【0043】
図6は、本発明に係る構造物に、前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図3と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具のB−B断面図である。
【0044】
図6において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aと、繊維層を有しない樹脂層2bとからなり、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に補強層として積層されて一体となっている。
【0045】
この取り付け金具10は、上面を熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例5】
【0046】
図7は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図3と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具のB−B断面図である。
【0047】
図7において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aと、繊維層8bが積層された樹脂層2bとからなり、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に、繊維層8bは取り付け金具の溶着面に配置される樹脂層2bの層中に、補強層として積層されて一体となっている。樹脂層2bの層厚は0.5mmである。
【0048】
この取り付け金具10は、上面を熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例6】
【0049】
つぎに、さらに別の実施例を説明する。
【0050】
図9は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面矩形の取り付け金具の図8のC−C断面図である。
【0051】
C−C断面図において、金属板、樹脂層、繊維層の表示は、図2,4,5,6,7と同様であり、省略してある。
【0052】
この取り付け金具11は、形状が矩形であり、上面を前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例7】
【0053】
図10は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形又は平面矩形の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層の表示は省略してある。
【0054】
この取り付け金具10或いは11は、取り付け金具10或いは11に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物14を配置固定してある。バネ状物14を配置してあることにより、取り付け金具10或いは11の構造物の取り付け個所に不陸があっても弾性を利用して構造物の表面と取り付け金具10或いは11を容易に同一平面上に位置させることができる。
【実施例8】
【0055】
図11は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形又は平面矩形の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層の表示は省略してある。
【0056】
この取り付け金具10或いは11は、取り付け金具10或いは11に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にゴム状物15を配置固定してある。ゴム状物15を配置してあることにより、取り付け金具10或いは11の構造物の取り付け個所に不陸があっても弾性を利用して構造物の表面と取り付け金具10或いは11を容易に同一平面上に位置させることができる。
【0057】
実施例7、8に示したバネ状物14、ゴム状物15は実施例1、2、3、4、5、6の金具のどれにでも付加することが出来る。
【0058】
このようにして、全体として構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を構成する。
【0059】
本発明に用いられる金属板は、導電性を有するものであればよく、たとえば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム、銅、その他合金類等であるが、特にステンレススチールのSUS430が好ましい。
【0060】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、たとえば、ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチレン−酢酸ビニル重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂/エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三重共重合体樹脂混合物、アイオノマー樹脂或いはエチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の樹脂素材或いはゴム素材等からの一種又は以上である。
【0061】
本発明に用いられる繊維は、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等合成繊維類、ガラス繊維等鉱物繊維、ステンレス繊維等金属繊維等である。
【0062】
本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具は、上述のようにしてなるのでつぎのようにして利用される。
【0063】
図12は、取り付け金具をコンクリート構造物の壁面に取り付けた状態を示す断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層の各層の表示は省略してある。
【0064】
まず、取り付け金具10をコンクリート構造物12の表面にコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン13を用いて構造物12の表面に平行になるように取り付ける。取り付け金具10を構造物12の表面に取り付けた後は、取り付け金具10の溶着面に熱可塑性樹脂系板材16又は熱可塑性樹脂系シートを沿わせて高周波誘導加熱を行う。
【0065】
熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートは、片面に熱可塑性樹脂層が設けられた熱硬化性樹脂、両面が熱可塑性樹脂或いは全体が熱可塑性樹脂である材料が適宜選ばれて用いられる。
【0066】
構造物12の表面に取り付け金具10又は11が取り付けられ、取り付け金具10又は11の溶着面に熱可塑性樹脂系板材16を添えた後、電流を流すと誘導電流コイルより磁力線が発生する。磁力線が熱可塑性樹脂系板材16又は熱可塑性樹脂系シートを透過して取り付け金具10又は11まで達する。取り付け金具10又は11内部で渦電流が発生し、発熱する。順次、熱可塑性樹脂系板材16又は熱可塑性樹脂系シート側へと発熱し、遅れて熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートが昇温する。取り付け金具10又は11の樹脂層と熱可塑性樹脂系板材16が溶融し、一体化した後、通電を停止し、冷却するので加圧すると融着完了する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層がない金具の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層を有す金具の平面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層が無く、下面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図6】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層を有し、下面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図7】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面、下面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図8】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面矩形の取り付け金具の外観図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための、底面にバネ状物を取り付けた別の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。
【図11】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための、底面にゴム状物を取り付けた別の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。
【図12】取り付け金具をコンクリート構造物の壁面に取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 金属板
1a 小孔
2a 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層
2b 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層
2c 樹脂層の一部
3 溶着面
4 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部
5 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴
6 フランジ
6a フランジ下面
7 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面
8a 繊維層
8b 繊維層
10 平面円形取り付け金具
11 平面矩形取り付け金具
12 コンクリート構造物
13 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン
14 バネ状物
15 ゴム状物
16 熱可塑性樹脂系板材
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築工事における防水・遮水工事及び補修・補強工事において、鏡面状態が確保されない構造物の壁面に熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法により取り付けるための取り付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートで構築された構造物の表面状態は、一般に平滑に仕上がつていると謳っていても不陸を有しており、その表面に硬質の樹脂系板材を取り付けるためには、当該板材に穿孔し、孔を通してボルト類等の金具で構造物に固定したり、当該板材の周縁部を嵌合部材を配置し、嵌合部材をボルト類等の金具で構造物に設置し、嵌合部材と構造物間の隙間間隔を調整しながら固定する方法が一般的である。
【0003】
また、構造物の屋根等の防水・遮水及び補修・補強のためには、施工の対象面に熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シートを取り付けるに当り、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層と金属板を組み合せた取り付け金具を用い、高周波誘導加熱法を応用する技術が以下の特許文献にも見られるように良く知られている。
【0004】
【特許文献1】第2971149号特許公報
【特許文献2】特公昭58−36705号特許公報
【特許文献3】特開平10−77722号公開特許公報
【特許文献4】特開2003−313995号公開特許公報
【0005】
この種の取り付け金具の多くは金属板の表面にホットメルト樹脂或いは接着剤をコーティングし、高周波誘導加熱法、熱風溶着法、熱鏝溶着法、或いは接着剤等を用いて固定したり、接着テープを貼り付けて、金属板と熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シートを溶着、固定してなっている。
【0006】
しかし、〔0002〕記載の穿孔方法による固定では、板に孔を開けるため孔の処理、取り付けるボルト類の頭が飛び出し、板材面の平滑性の阻害、遮断性の不具合発生の慢性的な危険性を有することがあり、嵌合部材を用いる場合では要求される板材の固定強度が高い場合には、小面積の板材を数多く取り付けなければならず、作業性が著しく悪くなり、かつ経済的にも多大な費用が必要となる。
【0007】
また、〔0003〕記載の高周波誘導加熱法を用いて樹脂系板材を固定しようとしても、不陸状態を排除することが不可能なコンクリート構造物の面に設置された取り付け金具の溶着面が、不陸の影響で複数の取り付け金具が同一平面上に並ばないことから、確実な溶着作業は不可能である。
【0008】
さらに〔0003〕〔0005〕記載の固定法では、金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との結合が化学的結合であるため、コーティングされたホットメルト樹脂或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透して金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との界面に達し、或いは同時に熱履歴を受け、金属板が酸化又は劣化を起こし、取り付け金具に結合した熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シートが剥離を起こす危険性があり、信頼性に欠ける。
【0009】
このような問題点を解決するため、特許文献4には金属製の基材に複数の貫通孔を穿設し、この貫通孔に熱可塑性樹脂を充填するとともに、基材の外表面を熱可塑性樹脂の被覆層で被覆し、表面側と裏面側の被覆層を前記貫通孔に充填した合成樹脂の連接部で連接した取り付け金具が提案されている。
【0010】
この提案によれば、ホットメルト樹脂或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透し金属面に達して起こる金属面の酸化、劣化により引き起こされる「取り付け金具に結合した熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シートの剥離」という問題点は解消する。
【0011】
前記特許文献2、3、4に記載の、高周波誘導加熱法による接合作業においては、取り付け金具の金属板が短時間で発熱、昇温し続け、金属板に接する熱可塑性樹脂が金属板接触界面から昇温し、熱可塑性樹脂層内を保護し取り付け金具の溶着面に接する熱可塑性樹脂系シートの溶着面が昇温して、溶着可能になる温度に達したのち、先に溶融している取り付け金具の溶着面の熱可塑性樹脂が一体化して溶着、固定する。しかしながら、比熱が大きく、熱伝導率が極めて小さい合成樹脂を金属板に積層した取り付け金具においては、熱可塑性樹脂系シートと溶着するための熱可塑性樹脂被覆厚みを出来うる限り薄くして、被溶着物である樹脂系シートの溶着界面の昇温時間を可能な限り短く出来ないと、先に溶融する金属板に接する熱可塑性樹脂が、過度の加温に晒され当該樹脂が変質、劣化する危険性が極めて大きくなる。
【0012】
しかしながら、特許文献4に記載されている、取り付け金具の金属板を被覆する熱可塑性樹脂の厚さが1−2mmの場合では、高周波誘導加熱法による接合作業を実施すると、金属板と被覆されている熱可塑性樹脂の界面が、高周波電流によって金属板に誘導された渦電流で発生する熱で焦げ、変質、劣化する欠陥が多発し、安定した溶着作業することが非常に困難である。
【0013】
また、特許文献4に記載の取り付け金具において、特許文献4に記載の防水シートが外部から受ける引張力は、取り付け金具裏面に配置されている、金属製の基材に穿設された複数の貫通孔周縁直上の熱可塑性樹脂断面で受けるため、裏面に用いる熱可塑性樹脂の固有強度と厚さと孔の金属板が占める面積で左右される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、これまでの取り付け金具は、設置した構造物面の不陸に対しての配慮は殆どされていない。実際に建造される或いは既存の構造物の面は平滑でなく不陸状態にあるため、構造物に設置された取り付け金具は構造物から一定距離の同一面にならず、特に硬質の樹脂系板材を取り付け金具で固定するとき、樹脂系板材に取り付け金具の溶着面が全面接触しなかったり、構造物面に設置された多数の金具と樹脂系板材間に間隙を生じたりして不具合が生じることがある。
【0015】
また、取り付けられた樹脂系板材或いは樹脂系シートに掛かる引張力は、取り付け金具に穿孔された孔に充填されている樹脂を介して、取り付け金具の溶着面の反対面に配置した可塑性樹脂層に伝達されるが、保持力は当該可塑性樹脂層の樹脂固有の強度特性と樹脂厚み及び取り付け金具の溶着面にある孔の総面積によって決まってしまう。このため樹脂厚を大きくしないと、高い把持力が期待できない。
【0016】
さらに、被溶着対象物の厚さが大きい場合、取り付け金具の溶着面に配置される熱可塑性樹脂層の厚みが厚いと、被溶着対象物の溶着面が溶着可能となる温度に達するまで長時間を必要とするため、取り付け金具の金属板に接している熱可塑性樹脂が過剰な熱を受け、容易に焦げる等の変質、劣化を起こす。
【0017】
本発明は、このような課題を以下述べるところにより解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するためつぎの手段を提供する。
【0019】
基本的には、構造物に、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するために、前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置され、かつ、前記の樹脂層に用いる樹脂と同じ樹脂が金属板の小孔に充填され、前記の樹脂層と小孔に充填されている熱可塑性樹脂とが一体となっている取り付け金具であって、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きいことを特徴とする、構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を提供する。
【0020】
さらに、取り付け金具の金属板の、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートと接する面に配置される樹脂層厚を0.05mmから0.5mm以下とすることが好ましい。
【0021】
上記取り付け金具は、複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置された熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層を積層することが好ましい。
【0022】
繊維層に用いる繊維の形態は織物、編物、積層布、不職布、繊維チップのどれでもよいが、特にメッシュ状の織物もしくは積層布が好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂を含有する樹脂層内に配置される繊維層の位置は、樹脂層内のどの位置でも良いが、金属板により近い位置が好ましい。
【0024】
上記取り付け金具は、上記取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物又はゴム状物が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
請求項1、請求項2及び請求項3において、この取り付け金具は、金属板と金属板の一面又は両面に配置された熱可塑性樹脂を含む樹脂層とが、金属板に形成されている多数の小孔に樹脂層が充填されて一体となっていて、かつ、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きいため、つぎの効果を発揮する。
【0026】
熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートの前記熱可塑性樹脂面を、構造物に設置された、前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置され、かつ、前記の樹脂層に用いる樹脂と同じ樹脂が金属板の小孔に充填され、前記の樹脂層と小孔に充填されている熱可塑性樹脂とが一体となっている取り付け金具は、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離が、当該取り付け金具の周辺部フランジ下面との距離より大きく形成されており、構造物に当該取り付け金具を設置したとき、フランジ下面と構造物との間に隙間ができるため、構造物の取り付け個所に不陸があって、取り付け金具設置時に構造物の面と当該取り付け金具とが平行になっていなくても、取り付け金具上の前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートのいずこかを押圧すると、当該取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面先端部を中心として取り付け金具が動き、当該金具の溶着面が前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートの被溶着面全面に完全に密着させることが出来る。
【0027】
当該取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物又はゴム状物が配置されているため、更につぎの様な効果を有する。
【0028】
構造物の不陸により、構造物に設置した複数の取り付け金具の溶着面が同一面上に並ばない場合には、さらに当該取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物あるいはゴム状物が配置することにより、取り付け金具上の前記樹脂系板材前記樹脂系板材又は樹脂系シートのいずこかを押圧することにより、取り付け金具の溶着面を同一平面上に整列させることができるため、全ての当該取り付け金具の溶着面が、高周波誘導加熱すると、金具の金属板に発生する渦電流による発熱で、金具の溶着面と、前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートの被溶着面が溶着する。この溶着作業を設置した全ての取り付け金具に実施することにより前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートは全ての取り付け金具と一体化させることが可能となる。
【0029】
しかしながら、取り付け金具の溶着面に配置される樹脂層の、取り付け金具の金属板との接触面に過剰な熱がかかり発生する焦げ等の変質、劣化を制御するために、請求項3に記載した、取り付け金具溶着面に配置される樹脂層を0.05mmから0.5mm以下に設定することにより、取り付け金具の金属板に渦電流により発生する熱を前記樹脂系板材又は樹脂系シートの被溶着面の樹脂へ短時間で伝達し、溶着可能な温度まで短時間に昇温させることが可能となり、取り付け金具の溶着面に配置された樹脂が過度の熱を受けず、焦げ等の変質、劣化を生じないので、制御可能な溶着作業が出来る。
【0030】
請求項4において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層を積層したので、つぎの効果を有する。
【0031】
本発明では、金属板と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層とは、積極的に接着させていない。
【0032】
これは、接着されている取り付け金具が、〔0008〕に記載した変質、劣化を経時的に受け、初期性能と長期供用後の性能が変わってしまう危険性を有するので、これを回避するためと、接着してあると外部から金属板にかかる引張力がかかった金属部分のみで受けなければならないのに対し、接着していないので、引張力がかかった部分だけでなく樹脂層の広い範囲に分散でき、かつ樹脂層が繊維層で補強されることにより、さらに力を広範囲に分散させ、単位面積当りの受ける力をより少なくすることができる。
【0033】
また、取り付け金具の金属板の孔の直径を増やすと、取り付けられた熱可塑性樹脂系板材や熱可塑性樹脂系シート材により引張り力を受けた場合、金属板を介して連接されている貫通孔周縁直上の樹脂断面で受けるため、樹脂層は大きな厚みを必要とするが、連接されている樹脂層が繊維層で補強されていると、繊維層を介して引張力が広く分散されるため、圧倒的な強度の保持を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を以下図面に基き説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面円形の取り付け金具を示す平面図、図2は、図1のA−A断面図である。
【0036】
図2に示す取り付け金具10は、複数の小孔1aが表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層2aとからなり、金属板1と樹脂層2aとは熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填され、さらに小孔1aの上部に樹脂が盛り上がる状態になる様に一体に形成される。
【0037】
この取り付け金具10は、上面を樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例2】
【0038】
図4は、本発明に係る構造物に前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具を示す図3のB−B断面図である。
【0039】
図4において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層2a、樹脂層2bとからなり、金属板1と樹脂層2aと樹脂層2bとは同一樹脂で構成され、樹脂層2aと樹脂層2bとはそれぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形される。樹脂層2bの層厚は0.05mmから0.5mm以下に設定されている。
【0040】
この取り付け金具10は、上面を樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例3】
【0041】
図5は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図1と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具の図1のA−A断面図である。
【0042】
図5に示す取り付け金具10は、複数の小孔1aが表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aとからなり、金属板1と樹脂層2aとは熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に補強層として積層されており、さらに小孔1aの上部に樹脂が盛り上がる状態になる様に一体に形成される。
【実施例4】
【0043】
図6は、本発明に係る構造物に、前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図3と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具のB−B断面図である。
【0044】
図6において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aと、繊維層を有しない樹脂層2bとからなり、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に補強層として積層されて一体となっている。
【0045】
この取り付け金具10は、上面を熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例5】
【0046】
図7は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図3と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具のB−B断面図である。
【0047】
図7において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aと、繊維層8bが積層された樹脂層2bとからなり、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に、繊維層8bは取り付け金具の溶着面に配置される樹脂層2bの層中に、補強層として積層されて一体となっている。樹脂層2bの層厚は0.5mmである。
【0048】
この取り付け金具10は、上面を熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例6】
【0049】
つぎに、さらに別の実施例を説明する。
【0050】
図9は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面矩形の取り付け金具の図8のC−C断面図である。
【0051】
C−C断面図において、金属板、樹脂層、繊維層の表示は、図2,4,5,6,7と同様であり、省略してある。
【0052】
この取り付け金具11は、形状が矩形であり、上面を前記熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例7】
【0053】
図10は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形又は平面矩形の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層の表示は省略してある。
【0054】
この取り付け金具10或いは11は、取り付け金具10或いは11に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物14を配置固定してある。バネ状物14を配置してあることにより、取り付け金具10或いは11の構造物の取り付け個所に不陸があっても弾性を利用して構造物の表面と取り付け金具10或いは11を容易に同一平面上に位置させることができる。
【実施例8】
【0055】
図11は、本発明に係る構造物に、熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形又は平面矩形の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層の表示は省略してある。
【0056】
この取り付け金具10或いは11は、取り付け金具10或いは11に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にゴム状物15を配置固定してある。ゴム状物15を配置してあることにより、取り付け金具10或いは11の構造物の取り付け個所に不陸があっても弾性を利用して構造物の表面と取り付け金具10或いは11を容易に同一平面上に位置させることができる。
【0057】
実施例7、8に示したバネ状物14、ゴム状物15は実施例1、2、3、4、5、6の金具のどれにでも付加することが出来る。
【0058】
このようにして、全体として構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を構成する。
【0059】
本発明に用いられる金属板は、導電性を有するものであればよく、たとえば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム、銅、その他合金類等であるが、特にステンレススチールのSUS430が好ましい。
【0060】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、たとえば、ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチレン−酢酸ビニル重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂/エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三重共重合体樹脂混合物、アイオノマー樹脂或いはエチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の樹脂素材或いはゴム素材等からの一種又は以上である。
【0061】
本発明に用いられる繊維は、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等合成繊維類、ガラス繊維等鉱物繊維、ステンレス繊維等金属繊維等である。
【0062】
本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具は、上述のようにしてなるのでつぎのようにして利用される。
【0063】
図12は、取り付け金具をコンクリート構造物の壁面に取り付けた状態を示す断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層の各層の表示は省略してある。
【0064】
まず、取り付け金具10をコンクリート構造物12の表面にコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン13を用いて構造物12の表面に平行になるように取り付ける。取り付け金具10を構造物12の表面に取り付けた後は、取り付け金具10の溶着面に熱可塑性樹脂系板材16又は熱可塑性樹脂系シートを沿わせて高周波誘導加熱を行う。
【0065】
熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートは、片面に熱可塑性樹脂層が設けられた熱硬化性樹脂、両面が熱可塑性樹脂或いは全体が熱可塑性樹脂である材料が適宜選ばれて用いられる。
【0066】
構造物12の表面に取り付け金具10又は11が取り付けられ、取り付け金具10又は11の溶着面に熱可塑性樹脂系板材16を添えた後、電流を流すと誘導電流コイルより磁力線が発生する。磁力線が熱可塑性樹脂系板材16又は熱可塑性樹脂系シートを透過して取り付け金具10又は11まで達する。取り付け金具10又は11内部で渦電流が発生し、発熱する。順次、熱可塑性樹脂系板材16又は熱可塑性樹脂系シート側へと発熱し、遅れて熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートが昇温する。取り付け金具10又は11の樹脂層と熱可塑性樹脂系板材16が溶融し、一体化した後、通電を停止し、冷却するので加圧すると融着完了する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層がない金具の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層を有す金具の平面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層が無く、下面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図6】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層を有し、下面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図7】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面、下面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図8】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面矩形の取り付け金具の外観図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための、底面にバネ状物を取り付けた別の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。
【図11】本発明に係る構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための、底面にゴム状物を取り付けた別の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。
【図12】取り付け金具をコンクリート構造物の壁面に取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 金属板
1a 小孔
2a 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層
2b 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層
2c 樹脂層の一部
3 溶着面
4 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部
5 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴
6 フランジ
6a フランジ下面
7 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面
8a 繊維層
8b 繊維層
10 平面円形取り付け金具
11 平面矩形取り付け金具
12 コンクリート構造物
13 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン
14 バネ状物
15 ゴム状物
16 熱可塑性樹脂系板材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するために、前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置され、かつ、前記の樹脂層に用いる樹脂と同じ樹脂が金属板の小孔に充填され、前記樹脂層と小孔に充填されている樹脂とが一体となっている取り付け金具であって、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きく、両者の距離の差は、コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン頭部の高さの皿部厚より大きいことを特徴とする構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートと接する金属板に配置される樹脂層の厚みが0.05mmから0.5mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項3】
複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置された熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層を積層したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項4】
取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物或いはゴム状物質が配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項1】
構造物に熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するために、前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置され、かつ、前記の樹脂層に用いる樹脂と同じ樹脂が金属板の小孔に充填され、前記樹脂層と小孔に充填されている樹脂とが一体となっている取り付け金具であって、この取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きく、両者の距離の差は、コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン頭部の高さの皿部厚より大きいことを特徴とする構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートと接する金属板に配置される樹脂層の厚みが0.05mmから0.5mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項3】
複数の小孔を有する金属板の片面又は両面に配置された熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層を積層したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項4】
取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物或いはゴム状物質が配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の構造物に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−112078(P2006−112078A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298903(P2004−298903)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
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