説明

様々な特性を備えた人工的補充用の編成部

本発明は、複数のシートにより形成された配置に基づき一体的に構成された、透かし織りの人工的補充用の編成部(1)であって、編成部の生産の方向に、連続的な仕方で、中央バンド(2)と、この中央バンド(2)の両側に沿う2つの横バンド(3)とを有し、前記中央バンド(2)における、前記編成部の弾性は、前記横バンド(3)の各々における前記編成部の弾性よりも大きい、編成部(1)において、この編成部は、i)少なくとも前記中央バンド(2)の全表面に延びており、網目のあるシートであり、第1の織布を規定している少なくとも2つのベースシートすなわち、前面ベースシートと背面ベースシートと、ii)前記背面ベースシートの後ろで、前記横バンドのそれぞれの表面のみに渡って延びている少なくとも2つの補助シートとを具備し、これら補助シートは、部分的な横糸の網目のないシートであり、第2の織布を規定している、編成部(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な特性を備えた人工的補充用の編成部に関し、特に様々な機械的な強度と密度とを、この編成部の少なくとも1次元すなわち1方向の広がりに備え、特に女性における脱出症とも呼ばれている骨盤底異常の治療において、前記編成部から切り取られたバンド又はテープの形式で特に用いることができる人工的補充用の編成部に関する。この補強材は、また、女性の腹圧性尿失禁の治療における尿道の支持のためのテープを準備するために用いられることができる。
【背景技術】
【0002】
脱出症の外科的な治療は、脱出された器官を支持するためのインプラントの形式の補強材の使用を含んでいる。このインプラントの中央の部分は、この器官の領域の中に配置され、この器官を支持するためにこの器官と接触し得る一方、前記インプラントの横部分は、腹壁(abdominal wall)、閉塞筋膜(obturator membrane)、仙骨の岬骨、仙骨と坐骨との靭帯又は恥骨に、例えば、かすがい(staple)又は縫合糸により、又は単純な組織固定(tissue anchoring)により固定されている。
【0003】
既知の方法において、このような支持インプラントは、複数の必要に直面しなければならない。そして、特に、支持インプラントは、全ての方向に適当な機械的な強度を有していなければならず、生体親和性であり、柔軟であり、その上、いくぶんかの弾性を有していなければならない。これらの支持インプラントは、好ましくは、器官を支持しているそれらの中央部において多孔質で非攻撃的(non-aggressive)でなければならない。これら支持インプラントは、縫合されることができなければならない。最後に、これら支持インプラントは、患者の組織に適合されていることが望ましい。
【0004】
一方で、尿道下の領域の解剖学的な構造に一致させるためであり、他方で用いられている外科的な技術に一致させるためである布地手段が既知である。
【0005】
文献WO 01/52750及びWO 02/28312は、透かし織り(openwork)の編成部を有している尿道下の支持テープを記述しており、この編成部は、前記テープの表面全体に渡る、糸からなる2つのシートから構成されている。形成されている編成部は、一様であり、このテープは、このように、このテープの表面全体に渡って、すなわち、テープの中央部と端部との両方において、多孔性、密度、弾性及び機械的強度の同一の特性を有している。
【0006】
脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するための外科的な技術は、支持される器官の下に位置され、筋肉と腱膜との中の離れたところに留められることを意図されている横端部よりも広い中央部を有している補強材を用いることが増えてきた。これらの別々の部分の期待される機械的な及び生物学的な特性は、異なっている。
【0007】
端部において、これらの支持インプラントは、ほぐれ又は巻きがなく、1cmのオーダの狭いテープに切られることができなければならない。「巻き」によって、本出願の文脈においては、テープのその長さに沿った張力の下での長手方向の軸の周りの自発的な巻き上がりを意味している。これらインプラントは、この形式で十分な機械的な特性、特に強度の特性、を保持しなければならず、一方で、同時に、可能な限り複数の粒子、すなわち糸の複数の端部の解放を、これらインプラントが引っ張られた(stressed)時に制限し、これらインプラントは、機械的に安定な組織固定を可能にしなければならない。
【0008】
対照的に、尿道又は脱出した器官を支持する部分である、前記インプラントの中央部においては、このインプラントが、この部分において最小限度の密度、最大限の多孔性、大きな柔軟性、引裂き強さ、巻きに対する抵抗を有していることが特に重要である。この部分は、端部におけるよりも重要ではない細いテープに切られることを意図されていない。その理由は、この中央部は、支持される器官と多分接触し得るため、この中央部は、好ましくは、浸食の危険を最小限にするために、膀胱、膣、直腸又は尿道のような中空の内臓の壁に対して最小限に攻撃的で(aggressive)なければならない。
【0009】
これらインプラントと、特に、これらインプラントから切り取られたテープは、ほつれてはならないことが好ましい。
【0010】
結局、患者は、異なる組織を有するので、外科医は、手術現場で、治療措置の時に、インプラントの外形又は形状を患者の体の外形又は形状に適合させることができるように、インプラントを作り出すことができることが重要である。
【0011】
このように、所望のように切られることができ、特に低い密度の領域を有し、広い孔を備えた、前記インプラントの中央部に対応し得る柔軟で弾性的な編成部と、前記インプラントの横端部に対応し得て、例えば1cm幅未満の幅で切られることができる一方で、巻きとほつれとに抵抗する、特に抵抗力を示す複数の領域とを有することは、有利である。
【0012】
文書WO 01/80773は、透かし織りの人工的補充用の編成部を記述しており、この編成部の中央部は、周辺部の弾性よりも大きな弾性を有しており、この中央部は、突起を形成するために変形されることを意図されている。しかし、この編成部は、糸からなるいくつかのシートの配置を用いて形成されており、これらシートのうち1つだけが網目を有し(meshing)、この1つのシートは、鎖織(chain weave)である。「網目のあるシート」により、本出願の文脈では、糸からなるシートであり、このシートのための糸を編むためのチャートが網目の形成をもたらす、糸からなるシートを意味している。これが鎖織の中に1つだけの網目のあるシートを有していると仮定すると、WO 01/80773に記述されている編成部は、バランスが取れていなくて、その周辺部においては、例えば1cm幅に等しく、裂けと巻きとに対して抵抗力を示す、小さな幅のほつれない部分の切り取りが不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、一般的に編成部の少なくとも一つの方向又はディメンジョンに可変な密度の、切断されることが可能であり、特に脱出症と腹圧性尿失禁との治療のための支持インプラントを容易に迅速に作り出し又は得るためにもちいることができ、前記編成部の生産の方向に、低密度、広い多孔性、弾性及び弾力性を有している中央バンドと、この中央バンドの両側に、各々が、裂けと巻きとに対する高い抵抗を生じるようにより大きな密度を有する2つの横バンドとを有する編成部を提案することによりこの問題を克服することを目的としている。この編成部は、一体的に構成され、過剰な厚さを持たず、1つのバンドから他のバンドへの連続性を持っており、さらに、例えば1cmから3cmの小さな幅の端部を有する複数のテープを切ることを可能にしている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、生体親和性ポリマ材料の糸からなる複数のシートにより形成された配置に基づき一体的に構成された、透かし織りの人工的補充用の編成部であって、編成部の生産の方向に、連続的な仕方で、中央バンドと、この中央バンドの両側に沿う2つの横バンドとを有し、前記中央バンドにおける、前記編成部の弾性は、前記横バンドの各々における前記編成部の弾性よりも大きい、編成部において、この編成部は、i)少なくとも前記中央バンドの全表面に延びており、網目のあるシートであり、第1の織布を規定している少なくとも2つのベースシートすなわち、前面ベースシートと背面ベースシートと、ii)前記背面ベースシートの後ろで、前記横バンドのそれぞれの表面のみに渡って延びている少なくとも2つの補助シートとを具備し、これら補助シートは、横糸だけの(partial weft)の網目のない(non-meshing)シートであり、第2の織布を規定している、編成部に関する。
【0015】
本発明は、また、生体親和性ポリマ材料の糸からなる複数のシートにより形成されている配置に基づき一体的に構成された、透かし織りの人工的補充用の編成部であって、編成部の生産の方向に、連続した仕方で、中央バンドと、この中央バンドの両側に沿う2つの横バンドとを有し、前記中央バンドにおける前記編成部の弾性は、前記横バンドの各々における前記編成部の弾性よりも大きい、編成部を生産するための方法において、
縦編み機又はラッシェル編み機の上での、2つのベースシート、すなわち第1の織布を規定している前面ベースシート及び背面ベースシートと、第2の織布を規定している2つの補助シートとを用いた編成部の生産であって、前記2つのベースシートは、少なくとも前記中央バンドの幅に渡って連続的に又は断続的に縫い進められ、前記ベースシートの各々は、一つのガイドバーから得られ、各ベースシートの糸を編むためのチャートは、網目の形成をもたらし、また、前記2つの補助シートは、前記横バンドのそれぞれの幅にだけに渡って断続的に縫い進められ、前記補助シートの各々は、1つのガイドバーから得られ、各補助シートの糸を編むためのチャートは、網目のない横糸だけをもたらす、編成部の生産の工程を具備することを特徴とする方法に関する。
【0016】
本発明の係る編成部は、多孔性で、柔軟で、弾性的な、特に低密度の中央部と、例えば、たとえ1cmから3cmの幅を有していても裂けと巻きとに対して特に抵抗力を示す端部とを有している支持インプラントを容易に切り抜くことを可能にしている。
【0017】
編成部の前記中央バンドの少なくとも2つの網目のあるシートの存在のために、後者は、特に安定である。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態において、前記2つのベースシートは、前記編成部の表面全体に渡って、すなわち、前記中央バンドの表面に渡ってと、前記横バンドのそれぞれの表面にわたって、延びている。この場合、少なくとも2つの網目のあるシートの前記編成部全体に渡っての存在のために、後者は、特にバランスが取られており、ディメンジョンがその表面全体に渡って安定化されている。すなわち、これは、切った後は、中央バンドであっても、横バンドであっても、縦であろうと、横であろうと、又は対角であろうといかなる方向又はディメンジョンにおいて弾性と強度との最小限の質を失う危険がない。
【0019】
さらに、2つのベースシートに、横部分上の2つの横糸だけのシートの追加を含む前記編成部の固有の編み方のために、本発明に係る前記編成部は、一体に形成されており、全く過剰な厚さや、1つのバンドから他のバンドへの外見の不連続さがない。
【0020】
本出願において、「人工的補充用の編成部」という用語は、人間又は動物の体に人工的補充物の形式で又は少なくとも部分的にこの編成部で形成されたあらゆる他の部分の形式で、移植されることを意図されている編成部を意味している。
【0021】
本出願において、「透かし織り」は、その織布が編成部の厚さにおけるセル(cell)又はギャップ(gap)を決定している編成部を意味し、これらのセル又はギャップは、前記編成部のいずれの側にも開いているチャネル(channel)を形成することができる。このような透かし織りの編成部は、比較的良い組織一体化を可能にしている。特に、この特定の編み方のために、本発明に係る人口器官用の編成部は、その中央及び横バンドの全体に渡って透かし織りの構造を有している。特に、前記中央バンドにおける編成部の多孔性は、前記横バンドの各々における編成部の多孔性よりも
大きい。
【0022】
本出願において、
編成部の単位面積あたりの質量は、ISO 3801に従って測定され、
編成部の縦方向と横方向とにおける引っ張り強さは、ISO 13934−1に従って測定されている。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態において、前記横バンドにおける編成部の単位面積当たりの質量、すなわち、密度、は、前記中央バンドにおける編成部の単位面積当たりの質量、すなわち、密度よりも大きい。本発明の好ましい実施の形態において、前記横バンドの各々の編成部の単位質量当たりの質量は、前記中央バンドの編成部における単位面積当たりの質量の少なくとも2倍である。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態において、各横バンドの領域における縦方向における、そして、横方向における前記編成部の引っ張り強さは、前記中央バンドの領域における縦方向における、そして、横方向における引張り強さの少なくとも2倍である。
【0025】
このように、本発明に係る編成部は、前記横バンドの各々における弾性よりも、その中央バンドにおいて大きな弾性を有している。
【0026】
本発明の一実施の形態において、前記中央バンドは、15乃至50g/mの範囲の単位面積当たりの質量を有しており、25乃至35g/mの範囲であることが好ましい。好ましくは、編成部の前記中央バンドにおける引張り強さは、縦方向と横方向とに約90Nである。
【0027】
本発明の一実施の形態において、各横バンドは、60乃至80g/mの範囲の単位面積当たりの質量を有し、70g/mのオーダであることが好ましい。好ましくは、各横バンドにおける前記編成部の引張り強さは、縦方向と横方向とに約200Nである。
【0028】
本発明に係る編成部は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド及びこれらの混合物の中から選ばれた生体親和性のポリマ材料の、モノフィラメント又は多繊維の、糸から形成されている。
【0029】
好ましくは、モノフィラメントの糸は、好ましくは、0.06mm乃至0.18mmの範囲の直径を有している。多繊維の糸は、好ましくは、44dtex(g/10000m)乃至100dtex(g/10000m)の範囲の線密度を有している。
【0030】
本発明に係る編成部の第1の織布は、前面ベースシートと背面ベースシートとにより規定されており、これらのシートの各々は、例えば、縦編み機又はラッシェル織機のガイドバーから得られ、各シートの糸を編むためのチャートは、網目の形成をもたらす。本発明の好ましい実施の形態において、このチャートは、網目の開いた(open-mesh)アトラスパターンの形成をもたらす。「アトラス」パターンにより、本出願の文脈において、各ガイドは、ガイドの糸を1つ以上の針の下に何回か同じ方向に投げ(throw)、それから反対の方向に投げるという事実により得られるパターンを意味している。より好ましくは、このチャートは、不規則な(irregular)網目の開いたアトラスパターンをもたらす。「不規則なアトラス」により、本出願の文脈において、連続している網目が不規則に離間されている列に形成されているアトラスパターンを意味している。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態において、前記前面ベースシートの糸は、チャート0−1/1−2/3−4/5−4/4−3/2−1//に従って編まれており、前記背面ベースシートの糸は、チャート5−4/4−3/2−1/0−1/1−2/3−4//に従って編まれている。好ましくは、前記ベースシートを形成する2つのガイドバーは、連続的に糸を通されており、すなわち、横のディメンジョンに前記編成部の幅全体にわたって、一方には糸が通され(one full)、他方には糸が通されないで(one empty)、換言すれば、1つのガイドには完全に糸が通され、1つのガイドには全く糸を通されないで(one full guide, one empty guide)、これらは、互いに対して対称に動いている。
【0032】
本発明に係る編成部の前記第2の織布は、前記背面ベースシートの後ろの2つの補助シートにより規定されており、これら2つの補助シートは、例えば、縦編み機又はラッシェル織機の1つのガイドバーから得られ、各補助シートの糸を編むためのチャートは、網目のない部分的に横糸をもたらし、結果として網目の形成をもたらさない。
【0033】
本発明の好ましい実施の形態において、前記第1の織布は、前記編成部の表面全体に渡って延びており、前記補助シートを形成する2つのガイドバーは、前記第1の織布に対して「下に」掛け目を備えて(with throws “underneath”)横糸だけを動いている。より好ましくは、前記補助シートを形成する2つのガイドバーは、2目と5目との針(two and five needles)の「下に」掛け目を備えて横糸だけを動いている。この横糸の動きのために、前記横バンドの領域における前記編成部の横の抵抗力を改善することが可能である一方、単位面積当たりの低い質量を維持している。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態において、前記2つの補助シートの一方の糸は、チャート3−3/5−5/0−0/2−2/0−0/5−5//に従って編まれ、他方の補助シートの糸は、チャート2−2/0−0/5−5/3−3/5−5/0−0//に従って編まれている。
【0035】
好ましくは、補助シートを形成する前記2つのガイドバーは、前記編成部の横のディメンジョンにおいて、断続的に縫い進められ、すなわち、前記横バンドのそれぞれの幅に渡ってしか縫い進められていない。各横バンドの内側では、補助シートを形成する前記2つのガイドバーは、一方には糸が通され、他方には糸がとおされていないことが好ましい。
【0036】
前記編成部の横部分の横糸だけのバーから得られている2つの補助シートの追加のために、前記編成部の厚さは、前記人工的補充用の編成部の表面全体に渡ってほぼ等しい。この厚さは、好ましくは、0.3mmから0.5mmである。
【0037】
前記人工的補充用の編成部は、既に上で述べられた前記2つのベースシートと2つの補助シートとに加えて、追加して他の糸からなるシートを有することができる。この場合、追加のガイドバーが、同じだけ多くの追加の糸からなるシートを得るために編み機に加えられる。例えば、本発明に係る人工的補充用の編成部は、2つのベースシートと、3つの補助シートを、そうでなければ4つの補助シートを有することができる。
【0038】
本発明の他の主題は、外科的な使用のための人工的補充用の製品を得るための、特に、脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するための支持インプラントを得るための、上で規定されてきたような人工的補充用の編成部の使用である。
【0039】
本発明の他の主題は、上で規定されてきたような人工的補充用の編成部を切ることにより得られる、脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するための支持インプラントである。
【0040】
一方で、編成部の前記中央バンドの特定の特性、すなわち、単位面積当たりの小さい質量、高い多孔性、弾性及び柔軟性のために、他方で、編成部の前記横バンドの特定の特性、すなわち、引っ張り強さと巻きに対する抵抗とのために、特に外科医師が、この編成部から直接、脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するために用いられることができ、中央部分では、低密度、多孔性、弾性及び柔軟性を有し、端部の領域では裂けに対する抵抗を有し、これら端部は、例えば1cm幅のオーダの細いストリップに切った時でも巻きが起こらない、支持インプラントを切り抜くことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、添付されている図面を参照されている以下の記述からよりよく理解される。
【0042】
図1乃至6の各々に対して、E−E’は、前記編成部の横の方向又はディメンジョンを、F−F’は、この編成部の縦の方向又はディメンジョンを、G−G’は、この編成部の対角の方向又はディメンジョンを規定している。
【0043】
図1を参照して、本発明に係る人工的補充用の編成部1が示されている。この編成部1は、2つのベースシートを備えている中央バンド2と、4つのシート、すなわち前記2つのベースシート及び2つの補助シート、を備えている2つの横バンド3とを有している。この編成部1は、脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するための支持インプラント4を規定している複数の切り抜きを有しており、この支持インプラント4の中央部6は、編成部1の前記中央バンド2で切り抜かれている、前記支持インプラント4の端部5は、編成部1の2つの前記横バンド3でそれぞれ切り抜かれている。このように、対称的に又は非対称的にふくらんだ中央部6を有しているインプラント4を切り抜くことが可能である。端部5が前記中央部6に対して垂直な又は対照的に傾いたインプラント4を切り抜くことが可能である。例えば、前記中央部6の各側に2つの端部5を有しているインプラント4を切り抜くことも可能である。以下で説明されている人工的補充用の編成部の構成のために、これらのインプラント4は、支持される器官と接触することが意図されている中央部6において、大きな柔軟性と、高い多孔性と、大きな弾力性とを有する一方で、前記端部が、例えば1cmから3cmの幅を有しているとしても、腹壁に留められることが意図されている前記端部5の領域においては、前記インプラント4は、裂けと巻き(curling)とに対して良好な抵抗を有している。
【0044】
前記人工的補充用の編成部は、特定の切抜きを有していないこともできる。この場合には、外科医が、脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するために、自分が所望する特定の形状を切り抜くことができる。本発明に係る人工的補充用の編成部の使用の単純さのためにとりわけ全ての形状のインプラントとテープとを、とても複雑なものでさえ、作ることが可能である。
【0045】
図2と図3とを参照して、これらは、前面ベースシートと背面ベースシートとをそれぞれ形成している前面糸(A)と背面糸(B)とを示している。前記前面ベースシートと背面ベースシートとは、本発明に係る人工的補充用の編成部の基礎の編成部、すなわち、本発明に係る編成部の第1の織布をなしている。
【0046】
図2は、糸の動きを明確に示すために、ただ1つの前面糸(A)と1つの背面糸(B)を、示している。図2と図3とを参照して、図示されている編成部は、2つのガイドバーの一方に糸を通され他方には糸を通されないで、互いに対称に動いて、縦編み機又はラッシェル織機に形成されている。図3を参照すると、いくつかの前面糸といくつかの背面糸とが示されており、形成されているパターンは、2つ及び3つの針の下で進む網目の開いたアトラスである。この織布に対して縦、横及び対角の弾性は同様である。
【0047】
図2と図3とに模式的に示されている編成チャート(knitting chart)は、以下のチャートである。
【0048】
前記前面シートに対して:
0−1/1−2/3−4/5−4/4−3/2−1//、
前記背面シートに対して:
5−4/4−3/2−1/0−1/1−2/3−4//。
【0049】
図4を参照すると、この図4は、本発明に係る人工的補充用の編成部の第2の織布を形成している第1の補助シートの糸(C)と第2の補助シートの糸(D)を示している。この第2の織布は、編成部の前記横バンド3にのみ渡って延びている。図5を参照すると、これら2つの補助シートのいくつかの糸(C、D)が示されている。より良く理解するために、前記糸Cは、破線で示されており、前記糸Dは実勢で示されている。当業者にとって、この図から生じたパターンが網目を形成しないことは明確である。糸C、Dの数多くの水平方向の戻り(returns)があるために、この第2の織布の横方向への引張り強さは、特に高い。
【0050】
図4と図5とに概略的に示されている編成チャートは以下のチャートである。
【0051】
前記第1の補助シートに対して、糸Cに従って、
3−3/5−5/0−0/2−2/0−0/5−5//、
前記第2の補助シートに対して、糸Dに従って、
2−2/0−0/5−5/3−3/5−5/0−0//。
【0052】
図6を参照すると、この図6は、前記第1の織布が、前記編成部の全面に渡って延びている場合の図2と図3とに従う前記第1の織布と、図4と図5に従う前記第2の織布の組合せを示している。より良く理解するために、前記糸A、Bは、実線で示されており、前記糸Cは一点鎖線で示されており、前記糸Dは、破線で示されている。この組合せは、人工的補充用の編成部の前記中央バンドと横バンドとの間の結合点からだけ起こり、前記横バンドの対応する境界まで起こっている。この目的のために、前記第2の織布を規定している2つの前記補助シートは、断続的に、すなわち、前記横バンドの幅だけに渡って糸を通されている2つのガイドバーを加えられることにより、前記第1の織布のために用いられたのと同じ織機で形成されている。これら2つの補助的なガイドバーも、互いに対して対称的に動いている。
【0053】
この図6を参照すると、編成部の前記中央バンド2は、2つのガイドバーで製造される一方、編成部の前記横バンド3は、4つのガイドバーで製造されている。さらに、図3と図5とから編成部の全ての糸は、全てで5つの針の下で動いており、糸の比較的良好な張りを得て、端のほつれと、ほどけとの危険がより少なくなっていることを可能にしている。最後に、図6から前記第1の織布により規定されている複数の穴又はセル(cells)は、前記第2の織布の追加により阻止されず、このように得られている編成部は、前記中央バンドと横バンドとの全体に渡って透かし細工の構造を有している。
【0054】
このように、編成部の前記横バンド3の領域においては、2つの補助シートの前記糸C、Dは、網目を形成せず、横糸だけを形成しており、これらは、前記第1の織布により形成されている網目の内側に取り入れられている。前記ベースシートと補助シートとの特定の配置は、糸そして材料を、厚さを余計に増すことなく前記中央バンド2と横バンド3との間に目に見える破断を作ることなく加えることを可能にしている。さらに、材料のこの追加と、前記第2の織布の固有の特性と、互いに対するシートの固有の配置とのために、前記編成部は、この編成部の横バンドの各々において、この編成部の中央バンドよりも大きな引張り強度と、巻きに対する抵抗とを有している。
【0055】
前記第1の織布が人工的補充用の編成部の前記中央バンド2のみに渡って延びている時、前記中央バンド2は、この中央バンド2の幅のみに渡って断続的に糸を通されている2つのガイドバーで製作されることができ、前記横バンド3は、また断続的に縫い進められているがこの場合は前記横バンド3のそれぞれの幅のみに渡って糸が通されている2つの他のガイドバーにより製作されている。
【0056】
織機から離されるとすぐに、得られた編成部は、熱硬化の操作にさらされることが好ましい。この熱硬化の操作により、縦方向と横方向とにおける編成部の安定性が改善されている。
【0057】
本発明に係る編成部は、このように、この編成部の横バンドの領域内で複数の細いテープ、例えば、少なくとも1cmの複数のテープ、をテープの長さに沿った引っ張りの効果の下でこれらの巻き又は裂けの危険なく、切り抜くことを可能にしている。
【0058】
例:
本発明に係る編成部は、直径0.10mmのポリプロピレンのモノフィラメントの糸からラッシェル織機で、様々なシートのための以下のチャートを用いて、製造された。
【0059】
前面ベースシート:0−1/1−2/3−4/5−4/4−3/2−1//、
背面ベースシート:5−4/4−3/2−1/0−1/1−2/3−4//、
第1の補助シート:3−3/5−5/0−0/2−2/0−0/5−5//、
第2の補助シート:2−2/0−0/5−5/3−3/5−5/0−0//。
【0060】
前記前面及び背面ベースシートを形成するガイドバーは、連続的に、一方に糸を通され他方には糸を通されていない。用いられた編みゲージは、24針で、糸を通されている針と通されていない針が交互にあった(one full, one empty)。すなわち、インチ(2.54cm)あたり12針である。
【0061】
前記2つの補助シートを形成するガイドバーは、前記横バンドのそれぞれの幅に渡って、断続的に縫い進められている。各々の横バンドの内側には、ガイドバーが、一方には糸を通され他方には糸が通されていない。用いられた編みゲージは、24針で糸を通されている針と糸を通されていない針が交互であった。すなわち、インチ(2.54cm)あたり12針である。
【0062】
織機から離されるとすぐに、前記編成部は、熱硬化の操作にさらされた。
【0063】
前記中央バンド2の幅は、5cmであった。各々の横バンド3の幅は、20cmであった。幅10mmがあり長さ150mmがあるテープが、編成部の横バンドから切り抜かれた。それから、前記編成部の縦方向に、すなわち、前記テープの幅に沿って、そして、この編成部の横方向に、すなわち、このテープの長さに沿って、そして、このテープの対角方向に、このテープの引張り強さを測定した。結果は、以下のようであった。
【0064】
ISO 13934−1に従って測定された縦方向での引張り強さ。このための試料の幅は10mm、試料の長さは150mmであった:31N
ISO 13934−1に従って測定された横方向での引張り強さ。このための試料の幅は10mm、試料の長さは150mmであった:42N
ISO 13934−1に従って測定された対角方向での引張り強さ。このための試料の幅は10mm、試料の長さは150mmであった:33N
本発明に係る編成部の横部分からこのように切り取られた幅10mmを有するテープは、すばらしい張力強さを有し、このように、脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するための支持インプラントの製造に著しく適している。
【0065】
本発明は、本出願の中で例により記述されている実施形態に限定されない。例えば、前記中央バンドの幅と横バンドの幅とは、変わり得る。
【0066】
本発明の他の実施形態において、人工的補充用の編成部の前記中央バンド2は、このバンドの表面の少なくとも一方を生体吸収性材料、例えば、コラーゲン、で覆われている。インプラントは、こうして、支持される器官に対して特に非攻撃的である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するための様々な形状の支持インプラントの形成のために予備的に切り抜かれている、本発明に係る人工的補充用の編成部を示している。
【図2】本発明に係る編成部の第1の織布の前面ベースシート(A)の糸と、背面ベースシート(B)の糸との単純化された概略的な図を示している。
【図3】図2に従う第1の織布の単純化された概略的な図を示している。
【図4】本発明に係る編成部の第2の織布の第1の補助シート(C)の糸と、第2の補助シート(D)の糸との単純化された概略的な図を示している。
【図5】図4に従う第2の織布の単純化された概略的な図を示している。
【図6】図2と図4とのそれぞれに従う第1の織布と第2の織布との組み合わせの単純化された概略的な図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体親和性ポリマ材料の糸からなる複数のシートにより形成された配置に基づき一体的に構成された、透かし織りの人工的補充用の編成部(1)であって、編成部の生産の方向に、連続的な仕方で、中央バンド(2)と、この中央バンド(2)の両側に沿う2つの横バンド(3)とを有し、前記中央バンド(2)における、前記編成部の弾性は、前記横バンド(3)の各々における前記編成部の弾性よりも大きい、編成部(1)において、この編成部は、i)少なくとも前記中央バンド(2)の全表面に延びており、網目のあるシートであり、第1の織布を規定している少なくとも2つのベースシートすなわち、前面ベースシートと背面ベースシートと、ii)前記背面ベースシートの後ろで、前記横バンドのそれぞれの表面のみに渡って延びている少なくとも2つの補助シートとを具備し、これら補助シートは、部分的な横糸の網目のないシートであり、第2の織布を規定している、編成部(1)。
【請求項2】
2つのベースシートが、前記編成部(1)の全表面に渡って延びている、すなわち、前記中央バンド(2)の表面と、前記横バンド(3)のそれぞれの表面とに渡って延びていることを特徴とする請求項1に係る編成部(1)。
【請求項3】
前記横バンド(3)の各々における前記編成部(1)の単位面積当たりの質量は、前記中央バンド(2)における前記編成部(1)の単位面積当たりの質量の少なくとも2倍の大きさであることを特徴とする前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項4】
前記各横バンド(3)の領域における縦方向へと横方向へとの前記編成部(1)の引張り強さは、前記中央バンド(2)の領域における縦方向へと横方向へとの前記編成部の引張り強さの少なくとも2倍であることを特徴とする前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項5】
前記中央バンド(2)は、15乃至50g/mの範囲の単位面積当たりの質量を有し、好ましくは、25乃至35g/mの範囲である前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項6】
前記中央バンド(2)における前記編成部の引張り強さは、縦方向と横方向とで約90Nであることを特徴とする前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項7】
前記各横バンド(3)は、60乃至80g/mの範囲の単位面積当たりの質量を有し、好ましくは、70g/mのオーダであることを特徴とする前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項8】
各横バンド(3)における前記編成部(1)の引張り強度は、縦方向と横方向とで約200Nであることを特徴とする前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項9】
ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド及びこれらの混合物の中から選ばれた生体親和性のポリマ材料の、モノフィラメント又は多繊維の、糸から形成されていることを特徴とする前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項10】
2つのベースシートと2つの補助シートとに加えて、糸からなる他のシートをさらに有していることを特徴とする前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項11】
前記中央バンド(2)は、この中央バンド(2)の面の少なくとも一方を生体吸収性材料で覆われていることを特徴とする前記全ての請求項のいずれか1に係る編成部(1)。
【請求項12】
外科的な使用のための人工的補充用の製品を得るための、特に、脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するための支持インプラント(4)を得るための請求項1乃至11のいずれか1に係る人工的補充用の編成部(1)の使用。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1に係る人工的補充用の編成部(1)を切ることにより得られる、脱出症と腹圧性尿失禁とを治療するための支持インプラント(4)。
【請求項14】
対称的な又は非対称的なふくらんだ中央部分(6)を有することを特徴とする請求項13に係るインプラント(4)。
【請求項15】
端部(5)が、前記中央部分(6)に対して垂直であることを特徴とする請求項13又は14に係るインプラント(4)。
【請求項16】
端部(5)が、前記中央部分(6)に対して傾斜していることを特徴とする請求項13又は14に係るインプラント(4)。
【請求項17】
前記中央部分(6)の各側に2つの端部(5)を有することを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1に係るインプラント(4)。
【請求項18】
生体親和性ポリマ材料の糸からなる複数のシートにより形成されている配置に基づき一体的に構成された、透かし織りの人工的補充用の編成部であって、編成部の生産の方向に、連続した仕方で、中央バンド(2)と、この中央バンドの両側に沿う2つの横バンド(3)とを有し、前記中央バンド(2)における前記編成部の弾性は、前記横バンド(3)の各々における前記編成部の弾性よりも大きい、編成部(1)を生産するための方法において、
2つのベースシート、すなわち第1の織布を規定している前面ベースシート及び背面ベースシートと、第2の織布を規定している2つの補助シートとを用いた縦編み機又はラッシェル編み機による、編成部(1)の生産であって、前記2つのベースシートは、少なくとも前記中央バンド(2)の幅に渡って連続的に又は断続的に縫い進められ、前記ベースシートの各々は、1つのガイドバーから得られ、各ベースシートの糸を編むためのチャートは、網目の形成をもたらし、また、前記2つの補助シートは、前記横バンド(3)のそれぞれの幅にだけに渡って断続的に縫い進められ、前記補助シートの各々は、1つのガイドバーから得られ、各補助シートの糸を編むためのチャートは、網目のない部分的な横糸をもたらす、編成部(1)の生産の工程を具備することを特徴とする方法。
【請求項19】
各ベースシートの糸を編むためのチャートは、網目の開いたアトラスパターンの形成をもたらすことを特徴とする請求項18に係る方法。
【請求項20】
前記チャートは、不規則な網目の開いたアトラスパターンの形成をもたらすことを特徴とする請求項19に係る方法。
【請求項21】
前面ベースシートの糸は、チャート0−1/1−2/3−4/5−4/4−3/2−1//に従って編まれ、背面ベースシートの糸は、チャート5−4/4−3/2−1/0−1/1−2/3−4//に従って編まれることを特徴とする請求項20に係る方法。
【請求項22】
前記ベースシートを形成する2つのガイドバーは、連続的に、一方のガイドバーには完全に糸が通され、他方のガイドバーには糸が通されないで、互いに対して対称的に動いていることを特徴とする請求項18乃至21のいずれか1に係る方法。
【請求項23】
前記補助シートを形成する2つのガイドバーは、横糸だけを前記第1の織布に対して「下に」掛け目を備えて動いていることを特徴とする請求項22に係る方法。
【請求項24】
前記補助シートを形成する2つのガイドバーは、部分的な横糸を2目と5目との針の「下を」掛け目を備えて動いていることを特徴とする請求項23に係る方法。
【請求項25】
前記2つの補助シートのうちの一方の糸は、チャート3−3/5−5/0−0/2−2/0−0/5−5//に従って編まれ、他方の補助シートの糸は、チャート2−2/0−0/5−5/3−3/5−5/0−0//に従って編まれることを特徴とする請求項24に係る方法。
【請求項26】
各横バンドの内側で、前記補助シートを形成する2つのガイドバーは、一方は完全に糸が通され、他方は糸が通されていないことを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1に係る方法。
【請求項27】
追加的なガイドバーが、同じだけ多くの追加的な糸からなるシートを得るために、織機に加えられることを特徴とする請求項18乃至26のいずれか1にかかる方法。
【請求項28】
織機から離されるとすぐに、前記編成部は、熱硬化の操作にさらされることを特徴とする請求項18乃至27のいずれか1に係る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−505647(P2007−505647A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525860(P2006−525860)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002283
【国際公開番号】WO2005/027786
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(505453631)
【Fターム(参考)】