説明

標的を検出するための方法および組成物

本発明は、連結および増幅を用いて標的核酸配列の存在もしくは不在を検出する(または定量する)ための方法およびキットに関する。本発明はまた、アドレス可能部分および標識プローブを用いる方法、試薬、およびキットにも関する。本発明はまた、連結反応組成物を形成する工程を包含し、この連結反応組成物は、サンプルおよび標的核酸配列についての連結プローブセットを含む。本発明はまた、サンプル中の少なくとも一つの標的核酸配列を検出するための方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(I.発明の分野)
本発明は、サンプル中の標的の検出のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(II.背景)
1つ以上の標的配列を含むサンプル中の1つ以上の標的配列の存在もしくは不在の検出(または定量)は、一般に実施される。例えば、癌および多くの感染病(例えば、AIDSおよび肝炎)の検出は、慣用的に、診断の核酸配列の存在または不在についての生物学的サンプルのスクリーニングを包含する。また、核酸配列の存在または不在の検出は、しばしば、法科学、実父確定検査、遺伝的カウンセリング、および臓器移植において使用される。
【0003】
生物の遺伝子構成は、その生物のゲノム内に含まれる遺伝子によって決定される。遺伝子は、タンパク質を作製するのに必要とされる情報をコードする長鎖またはデオキシリボ核酸(DNA)ポリマーで構成される。生物の特性、能力、および形質は、しばしば、その生物によって生成されるか、または生成されないタンパク質のタイプおよび量に関連される。
【0004】
タンパク質は、以下のように遺伝子から生成され得る。まず、タンパク質(例えば、タンパク質「X」)をコードする遺伝子のDNAは、「転写」として知られるプロセスによってリボ核酸(RNA)に変換される。転写の間、遺伝子の一本鎖相補的RNAコピーが作製される。次に、このRNAコピー(タンパク質XメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる)が細胞の生化学的機構によって使用され、タンパク質Xを作製する(「翻訳」と呼ばれるプロセス)。基本的には、細胞のタンパク質製造機構は、mRNAに結合し、RNA暗号を「読み取り」、そしてそれをタンパク質Xのアミノ酸配列に「翻訳する」。まとめると、DNAが転写されてmRNAを作製し、これが翻訳されてタンパク質を作製する。
【0005】
細胞によって生成されるタンパク質Xの量は、しばしば、細胞内に存在するタンパク質X mRNAの量に大きく依存する。細胞内のタンパク質X mRNAの量は、少なくとも一部分は、遺伝子Xが発現される程度に起因する。特定遺伝子が発現されるか否か、そして発現される場合どのレベルであるかということは、生物に対して顕著な影響を有し得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(III.発明の要旨)
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的核酸配列を検出するための方法が提供される。特定の実施形態では、当該方法は、連結反応組成物を形成する工程を包含し、ここで該連結反応組成物が、該サンプルおよび各標的核酸配列についての連結プローブセットを含む。特定の実施形態では、当該プローブセットが、(a)少なくとも1つの第一のプローブおよび(b)少なくとも1つの第二のプローブを含み、当該第一のプローブが、標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含み、ここで当該5’プライマー特異的部分が配列を含み、この第二のプローブが、標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含み、ここで当該3’プライマー特異的部分が配列を含む。特定の実施形態では、各セット中の両当該プローブは、相補的な標的核酸配列において互いに対して隣接した位置でハイブリダイズされた場合に、一緒に連結されるのに適切であり、そしてここで各プローブセット中の一方のプローブが、当該プライマー特異的部分と当該標的特異的部分との間に位置するアドレス可能部分をさらに含み、ここで当該アドレス可能部分が配列を含む。
【0007】
特定の実施形態では、当該方法はさらに、当該連結反応組成物を少なくとも1サイクルの連結に供することにより、試験組成物を形成する工程であって、ここで隣接してハイブリダイズする相補的なプローブが、互いに対して連結されて、当該5’プライマー特異的部分、両当該標的特異的部分、当該アドレス可能部分、および当該3’プライマー特異的部分を含む連結産物を形成する工程を包含する。
【0008】
特定の実施形態では、当該方法はさらに、
該試験組成物;
ポリメラーゼ;
標識プローブであって、ここで当該標識プローブは、相補的な配列に対してハイブリダイズされていない場合に第一の検出可能シグナル値を有し、そしてここで当該標識プローブが、当該アドレス可能部分の当該配列を含むかまたは当該アドレス可能部分の当該配列に対して相補的な配列を含む、プローブ;ならびに
少なくとも1つのプライマーセットであって、当該プライマーセットが、(i)少なくとも1つの第一のプライマーおよび(ii)少なくとも1つの第二のプライマーを含み、ここで当該第一のプライマーが、当該連結産物の当該5’プライマー特異的部分の該配列を含み、当該第二のプライマーが、当該連結産物の当該3’プライマー特異的部分の該配列に対して相補的な配列を含む、セット、
を含む増幅反応組成物を形成する工程を包含する。
【0009】
特定の実施形態では、当該方法はさらに、当該増幅反応組成物を少なくとも1つの増幅反応に供する工程を包含する。特定の実施形態では、当該方法はさらに、当該増幅反応の間および後の少なくとも一方で第二の検出可能シグナル値を検出する工程を包含し、ここで当該第一の検出可能シグナル値と当該第二の検出可能シグナル値との間の閾値差が、当該標的核酸配列の存在を示し、そしてここで該第一の検出可能シグナル値と該第二の検出可能シグナル値との間の閾値差なしが、該標的核酸配列の不在を示す。
【0010】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的核酸配列を検出するための方法が提供される。特定の実施形態では、当該方法は、連結反応組成物を形成する工程を包含し、ここで該連結反応組成物が、該サンプルおよび各標的核酸配列についての連結プローブセットを含む。特定の実施形態では、該プローブセットが、(a)少なくとも1つの第一のプローブおよび(b)少なくとも1つの第二のプローブを含み、該第一のプローブが、標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含み、ここで該5’プライマー特異的部分が配列を含み、該第二のプローブが、標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含み、ここで該3’プライマー特異的部分が配列を含む。特定の実施形態では、各セット中の両該プローブは、相補的な標的核酸配列において互いに対して隣接した位置でハイブリダイズされた場合に、一緒に連結されるのに適切であり、そしてここで各プローブセット中の一方のプローブが、該プライマー特異的部分と該標的特異的部分との間に位置するアドレス可能部分をさらに含み、ここで該アドレス可能部分が配列を含む。
【0011】
特定の実施形態では、当該方法はさらに、該連結反応組成物を少なくとも1サイクルの連結に供することにより、試験組成物を形成する工程であって、ここで隣接してハイブリダイズする相補的なプローブが、互いに対して連結されて、該5’プライマー特異的部分、両該標的特異的部分、該アドレス可能部分、および該3’プライマー特異的部分を含む連結産物を形成する工程を包含する。
【0012】
特定の実施形態では、当該方法はさらに、
該試験組成物;
ポリメラーゼ;
標識プローブであって、ここで当該標識プローブは、相補的な配列に対してハイブリダイズされていない場合に第一の検出可能シグナル値を有し、そしてここで該標識プローブが、該アドレス可能部分の該配列を含むかまたは該アドレス可能部分の該配列に対して相補的な配列を含む、プローブ;ならびに
少なくとも1つのプライマーセットであって、該プライマーセットが、(i)少なくとも1つの第一のプライマーおよび(ii)少なくとも1つの第二のプライマーを含み、ここで該第一のプライマーが、該連結産物の該5’プライマー特異的部分の該配列を含み、該第二のプライマーが、該連結産物の該3’プライマー特異的部分の該配列に対して相補的な配列を含む、セット、
を含む増幅反応組成物を形成する工程を包含する。
【0013】
特定の実施形態では、この方法はさらに、この増幅反応組成物を少なくとも1つの増幅反応に供する工程を包含する。特定の実施形態では、当該方法はさらに、この少なくとも1つの増幅反応の間および後の少なくとも一方でシグナルをモニタリングすることにより、この標的核酸配列の存在または不在を検出する工程を包含する。
【0014】
特定の実施形態では、少なくとも1つの標的核酸配列を検出するために、キットが提供される。特定の実施形態では、このキットは、各標的核酸配列についての連結プローブセットを備える。特定の実施形態では、このプローブセットが、(a)少なくとも1つの第一のプローブおよび(b)少なくとも1つの第二のプローブを含み、この第一のプローブが、標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含み、ここでこの5’プライマー特異的部分は、配列を含み、そしてこの第二のプローブが、標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含み、ここで該3’プライマー特異的部分は、配列を含む。特定の実施形態では、各セット中の両プローブは、相補的な標的核酸配列において互いに対して隣接してハイブリダイズされた場合に、連結されて一緒になるのに好適であり、そして各プローブセット中の一方のプローブが、プライマー特異的部分と標的特異的部分との間に位置するアドレス可能部分をさらに含み、ここでこのアドレス可能部分は、配列を含む。
【0015】
特定の実施形態では、このキットは、さらに標識プローブを備え、ここでこの標識プローブは、アドレス可能部分の配列を含むか、またはアドレス可能部分の配列に対して相補的な配列を含む。
【0016】
当業者は、以下に記載される図面が、説明の目的のみであることを理解する。図面は、いかなるようにも本発明の範囲を限定するとは意図されない。
【0017】
(V.特定の例示の実施形態の詳細な説明)
前出の一般的な説明および以下の詳細な説明はともに、請求される本発明の単なる例示および説明であって、制限ではないことが理解されるべきである。本願では、単数形の使用は、他に明確に記載のない限り複数を含む。本願では、「または」の使用は、他に記載のない限り「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」ならびに他の形式(例えば、「含む(includes)および「含まれる(included)」の使用は、限定的ではない。また、「要素」または「成分」のような用語は、他に明確に記載されない限り、1ユニットを含む要素および成分と、1より多いサブユニットを含む要素および成分との両方を包含する。
【0018】
本明細書中で使用した節見出しは、単に構成目的のためであって、記載の事項を制限すると解釈されるべきではない。本願において引用した全ての文書または文書の部分(特許、特許出願、記事、書籍、および学術論文を含むが、これらに限定されない)は、任意の目的のために、本明細書によってその全体が参考として明白に援用される。米国特許出願番号09/584,905(2000年5月30日出願)、米国特許出願番号09/724,755(2000年11月28日出願)、米国特許出願番号10/011,993(2001年12月5日出願)、および特許協力条約出願番号PCT/US01/17329(2001年5月30日出願)は、任意の目的のために、本明細書によってその全体が参考として明白に援用される。
【0019】
(A.特定の定義)
本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオチド塩基」は、置換されたまたは置換されていない、1つまたは複数の芳香族環をいう。特定の実施形態では、この1つまたは複数の芳香族環は、少なくとも1つの窒素原子を含有する。特定の実施形態では、ヌクレオチド塩基は、適切な相補ヌクレオチド塩基と共にワトソン−クリック水素結合および/またはフーグスティン水素結合を形成し得る。例示のヌクレオチド塩基およびそれらのアナログは、以下を含むが、これらに限定されない:天然に存在するヌクレオチド塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、6メチル−シトシン、ウラシル、チミン、および天然に存在するヌクレオチド塩基のアナログ(例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、7−デアザ−8−アザグアニン、7−デアザ−8−アザアデニン、N6−Δ2−イソペンテニルアデニン(6iA)、N6−Δ2−イソペンテニル−2−メチルチオアデニン(2ms6iA)、N2−ジメチルグアニン(dmG)、7−メチルグアニン(7mG)、イノシン、ネブラリン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、プソイドウリジン、プソイドシトシン、プソイドイソシトシン、5−プロピニルシトシン、イソシトシン、イソグアニン、7−デアザグアニン、2−チオピリミジン、6−チオグアニン、4−チオチミン、4−チオウラシル、O−メチルグアニン、N−メチルアデニン、O−メチルチミン、5,6−ジヒドロチミン、5,6−ジヒドロウラシル、ピラゾロ[3,4−D]ピリミジン(例えば、米国特許番号6,143,877および同6,127,121ならびにPCT公開出願WO01/38584を参照のこと)、エテノアデニン、インドール(例えば、ニトロインドールおよび4−メチルインドール)、およびピロール(例えば、ニトロピロール)。特定の例示のヌクレオチド塩基は、例えば、Fasman、1989、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、385〜394頁、CRC Press,Boca Raton,Fla.,およびその中の引用文献において見出され得る。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオチド」は、糖(例えば、リボース、アラビノース、キシロース、およびピラノースおよびそれらの糖アナログ)のC−1’炭素に連結されたヌクレオチド塩基を含む化合物をいう。用語ヌクレオチドはまた、ヌクレオチドアナログをも包含する。糖は、置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されたリボース糖には、以下が含まれるが、これらに限定されない:炭素原子の1つ以上(例えば、2’炭素原子)が1つ以上の同じまたは異なるCl、F、−R、−OR、−NR、またはハロゲン基で置換されているリボースであり、ここで、各Rは、独立して、H、C−CアルキルまたはC−C14アリールである。例示のリボースには、以下が含まれるが、これらに限定されない:2’−(C1−C6)アルコキシリボース、2’−(C5−C14)アリールオキシリボース、2’,3’−ジデヒドロリボース、2’−デオキシ−3’−ハロリボース、2’−デオキシ−3’−フルオロリボース、2’−デオキシ−3’−クロロリボース、2’−デオキシ−3’−アミノリボース、2’−デオキシ−3’−(C1−C6)アルキルリボース、2’−デオキシ−3’−(C1−C6)アルコキシリボース、および2’−デオキシ−3’−(C5−C14)アリールオキシリボース、リボース、2’−デオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、2’−ハロリボース、2’− フルオロリボース、2’−クロロリボース、および2’−アルキルリボース(例えば、2’−O−メチル)、4’−α−アノマーヌクレオチド、1’−α−アノマーヌクレオチド、2’−4’−連結および3’−4’−連結および他の「ロックされた(locked)」または「LNA」、二環式糖修飾(例えば、PCT公開出願番号WO98/22489、WO98/39352、およびWO99/14226を参照のこと)。ポリヌクレオチド内の例示のLNA糖アナログには、以下の構造が含まれるが、これらに限定されない:
【0021】
【化1】

ここでBは、任意のヌクレオチド塩基である。
【0022】
リボースの2’位または3’位での修飾には、以下が含まれるが、これらに限定されない:水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、アリルオキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、メトキシエチル、アルコキシ、フェノキシ、アジド、アミノ、アルキルアミノ、フルオロ、クロロ、およびブロモ。ヌクレオチドには、以下が含まれるが、これらに限定されない:天然のD光学異性体ならびにL光学異性体形態(例えば、Garbesi(1993)Nucl.Acids Res.21:4159−65;Fujimori(1990)J.Amer.Chem.Soc.112:7435;Urata,(1993)Nucleic Acids Symposium Ser.No.29:69−70を参照のこと)。ヌクレオチド塩基がプリン(例えば、AまたはG)である場合、リボース糖がヌクレオチド塩基のN位に付着される。ヌクレオチド塩基がピリミジン(例えば、C、T、またはU)である場合、ペントース糖がヌクレオチド塩基のN位に付着されるが、但しプソイドウリジンでは、ペントース糖は、ウラシルヌクレオチド塩基のC5位に付着される(例えば、KornbergおよびBaker,(1992)DNA Replication,第2版、Freeman,San Francisco,CAを参照のこと)。
【0023】
ヌクレオチドのペントース炭素の1つ以上が、以下の式を有するリン酸エステルと置換され得る:
【0024】
【化2】

ここでαは、0〜4の整数である。特定の実施形態では、αは2であり、そしてリン酸エステルは、ペントースの3’炭素または5’炭素に付着される。特定の実施形態では、ヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基がプリン、7−デアザプリン、ピリミジン、またはそれらのアナログであるヌクレオチドである。「ヌクレオチド5’−三リン酸」は、5’位に三リン酸エステル基を有するヌクレオチドをいい、時に、「NTP」、または特にリボース糖の構造特徴を示すために「dNTP」および「ddNTP」と示される。三リン酸エステル基は、種々の酸素に対するイオウ置換を含み得る(例えば、α−チオ−ヌクレオチド5’−三リン酸)。ヌクレオチド化学の概説については、以下を参照のこと:Shabarova,Z.およびBogdanov,A.Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,VCH,New York,1994)。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオチドアナログ」は、ペントース糖および/またはヌクレオチド塩基および/またはヌクレオチドのリン酸エステルの1つ以上が、そのそれぞれのアナログと置換され得る実施形態をいう。特定の実施形態では、例示のペントース糖アナログは上記の通りである。特定の実施形態では、ヌクレオチドアナログは、上記のようなヌクレオチド塩基アナログを有する。特定の実施形態では、例示のリン酸エステルアナログとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アルキルホスホネート、メチルホスホネート、ホスホルアミダイト、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート、ボロノホスフェートなど。また、付随の対イオンを含み得る。
【0026】
また、「ヌクレオチドアナログ」の定義内には、重合されて、DNA/RNAリン酸エステルおよび/または糖リン酸エステル骨格が異なるタイプのヌクレオチド間連結と置換されているポリヌクレオチドアナログを形成し得る、ヌクレオチドアナログモノマーが含まれる。例示のポリヌクレオチドアナログには、以下が含まれるが、これらに限定されない:ポリヌクレオチドの糖リン酸骨格が、ペプチド骨格によって置換されているペプチド核酸。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸」は、交換可能に使用され、そしてヌクレオチドモノマーの一本鎖ポリマーおよび二本鎖ポリマーを意味し、これには、ヌクレオチド間ホスホジエステル結合連結またはヌクレオチド間アナログ、および付随の対イオン(例えば、H、NH、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Naなど)によって連結された2’−デオキシリボヌクレオチド(DNA)およびリボヌクレオチド(RNA))が含まれる。核酸は、完全にデオキシリボヌクレオチドで構成され得るか、完全にリボヌクレオチドで構成され得るか、またはそれらのキメラ混合物であり得る。ヌクレオチドモノマーユニットは、本明細書中に記載のヌクレオチドのいずれかを含み得、これには、以下が含まれるが、これらに限定されない:天然に存在するヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ。核酸は、代表的には、少数モノマーユニット(例えば、5〜40、これらは時に当該分野ではオリゴヌクレオチドと呼ばれる)から数千のモノマーヌクレオチドユニットの大きさの範囲である。核酸配列が表されている場合、他に示されなければ、ヌクレオチドは、左から右に向かって5’から3’の方向であること、および他に記されなければ、「A」はデオキシアデノシンまたはそのアナログを示し、「C」はデオキシシチジンまたはそのアナログを示し、「G」はデオキシグアノシンまたはそのアナログを示し、そして「T」はチミジンまたはそのアナログを示すことが理解される。
【0028】
核酸としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ゲノムDNA、cDNA、hnRNA、mRNA、rRNA、tRNA、フラグメント化核酸、細胞内小器官(例えば、ミトコンドリアまたは葉緑体)から得られた核酸、および生物学的サンプル上または中に存在し得る微生物またはDNAもしくはRNAウイルスから得られた核酸。
【0029】
核酸は、単一のタイプの糖部分(例えば、RNAおよびDNAの場合のように)または異なる糖部分の混合物(例えば、RNA/DNAキメラの場合のように)で構成され得る。特定の実施形態では、核酸は、以下の構造式に従う、リボポリヌクレオチドおよび2’−デオキシリボポリヌクレオチドである:
【0030】
【化3】

ここで各Bは、独立して、ヌクレオチドの塩基部分(例えば、プリン、7−デアザプリン、ピリミジンまたはアナログヌクレオチド)であり;各mは、それぞれの核酸の長さを規定し、これは、0から数千、数万、またはそれ以上の範囲であり得;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−−R”、−−OR”、および−−NR”R”を含む群から選択され、ここで各R”は、独立して、(C1−C6)アルキルまたは(C5−C14)アリールであるか、または2つの隣接するRが一緒になって、リボース糖が2’,3’−ジデヒドロリボースになるように結合を形成し;そして各R’は、独立して、ヒドロキシルまたは以下の式
【0031】
【化4】

(ここでαは0、1、または2である)である。
【0032】
上述のリボポリヌクレオチドおよび2’−デオキシリボヌクレオチドの特定の実施形態では、ヌクレオチド塩基Bは、以前に記載されるように、糖部分のC1’炭素に共有結合される。
【0033】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」はまた、核酸アナログ、ポリヌクレオチドアナログ、およびオリゴヌクレオチドアナログを含み得る。用語「核酸アナログ」、「ポリヌクレオチドアナログ」および「オリゴヌクレオチドアナログ」は交換可能に使用され、そして本明細書中に使用される場合、少なくとも1つのヌクレオチドアナログおよび/または少なくとも1つのリン酸エステルアナログおよび/または少なくとも1つのペントース糖アナログを含む核酸をいう。また、核酸アナログの定義内に、リン酸エステル連結および/または糖リン酸エステル連結が他のタイプの連結(例えば、N−(2−アミノエチル)−グリシンアミドおよび他のアミド(例えば、Nielsenら,1991,Science 254:1497−1500;WO 92/20702;米国特許第5,719,262号;米国特許第5,698,685号;を参照のこと);モルホリノ(例えば、米国特許第5,698,685号;米国特許第5,378,841号;米国特許第5,185,144号を参照のこと);カルバメート(例えば、Stirchak & Summerton,1987,J.Org.Chem.52:4202を参照のこと);メチレン(メチルイミノ)(例えば、Vasseurら,1992,J.Am.Chem.Soc.114:4006を参照のこと);3’−チオホルムアセタール(例えば、Jonesら,1993,J.Org.Chem.58:2983を参照のこと);スルファメート(例えば、米国特許第5,470,967号を参照のこと);2−アミノエチルグリシン(一般にPNAと呼ばれる)(例えば、Buchardt,WO 92/20702;Nielsen(1991)Science 254:1497−1500を参照のこと);および他の連結(例えば、米国特許第5,817,781号;Frier & Altman,1997,Nucl.Acids Res.25:4429およびその中に引用された参考文献を参照のこと))と置換されている核酸が含まれる。リン酸エステルアナログには、以下が含まれるが、これらに限定されない:(i)C−Cアルキルホスホネート(例えば、メチルホスホネート);(ii)ホスホルアミデート;(iii)C−Cアルキルホスホトリエステル;(iv)ホスホロチオエート;および(v)ホスホロジチオエート。
【0034】
用語「アニーリング」および「ハイブリダイゼーション」は、交換可能に使用され、そして、二重鎖、三重鎖、または他のさらに高次な構造の形成を生じる、ある核酸と別の核酸との塩基対合相互作用を意味する。特定の実施形態では、一次相互作用は、ワトソン/クリックおよびフーグスティン型の水素結合による塩基特異的(例えば、A/TおよびG/C)である。特定の実施形態では、塩基スタッキングおよび疎水性相互作用もまた、二重鎖安定性に寄与し得る。
【0035】
酵素(例えば、ポリメラーゼまたはリガーゼ)に関して使用される場合、「それらの酵素的に活性な変異体または改変体」とは、適切な酵素活性を有するタンパク質を意味する。従って、例えば(しかし限定されることなく)、DNAポリメラーゼの酵素的に活性な変異体または改変体は、鋳型依存様式での新生DNA鎖への適切なデオキシヌクレオシド三リン酸の逐次付加を触媒し得るタンパク質である。酵素的に活性な変異体または改変体は、その酵素についての「一般に受け入れられている」配列またはコンセンサス配列とは、少なくとも1アミノ酸異なり、これには、以下が含まれるが、これらに限定されない:1つ以上のアミノ酸の置換、1つ以上のアミノ酸の付加、1つ以上のアミノ酸の欠失、およびアミノ酸それら自体に対する改変。しかし、変化があっても、少なくともいくらかの触媒活性が保持される。特定の実施形態では、この変化は、保存的アミノ酸置換を包含する。保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸を、例えば、類似の疎水性、親水性、電荷、または芳香性を有する別のアミノ酸に置換することを包含し得る。特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、類似の疎水性親水性指標に基づいて行われ得る。疎水性親水性指標は、アミノ酸の疎水性および電荷特徴を斟酌し、そして特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換の選択のための指針として使用され得る。疎水性親水性指標は、例えば、Kyteら,J.Mol.Biol.,157:105−131(1982)において考察される。保存的アミノ酸置換は、上述の特徴のいずれかに基づいて行われ得ることが、当該分野において理解される。
【0036】
アミノ酸に対する改変には、以下が含まれ得るが、これらに限定されない:グリコシル化、メチル化、リン酸化、ビオチン化、およびアミノ酸配列に変化を生じさせないタンパク質への任意の共有結合および非共有結合による付加。本明細書中で使用される「アミノ酸」は、天然または非天然の任意のアミノ酸をいい、これは、ポリペプチドまたはタンパク質に酵素または合成のいずれかで組み込まれ得る。
【0037】
フラグメント(例えば(しかし限定されることなく)、タンパク質切断産物)もまた、少なくともいくらかの酵素触媒活性が保持される限り、この用語によって包含される。
【0038】
当業者は、適切な周知のアッセイを用いて、触媒活性を容易に測定し得る。従って、ポリメラーゼ触媒活性についての適切なアッセイは、例えば、改変体が、適切な条件下で、rNTPまたはdNTPを新生ポリヌクレオチド鎖に鋳型依存様式で組み込む能力を測定することを包含し得る。同様に、リガーゼ触媒活性についての適切なアッセイは、例えば、適切な反応基を含む、隣接してハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドを連結する能力を包含し得る。このようなアッセイのためのプロトコルは、とりわけ、以下に見い出され得る:Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1989)(以下、本明細書中では「Sambrookら」)、SambrookおよびRussell,Molecular Cloning,第三版,Cold Spring Harbor Press(2000)(以下、本明細書中では「SambrookおよびRussell」),Ausbelら,Current Protocols in Molecular Biology(1993)(2001年4月までの補遺を含む),John Wiley & Sons(以下、本明細書中では「Ausbelら」)。
【0039】
本発明に従う「標的」または「標的核酸配列」は、プローブによって識別され得る特異的核酸配列を含む。標的は、天然に存在する分子および合成分子の両方を含み得る。
【0040】
本発明に従う「プローブ」は、特異的核酸配列(例えば、標的核酸配列)において相補的領域と配列特異的様式でハイブリダイズするように設計される特異的部分を含む、オリゴヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、このプローブのこの特異的部分は、特定配列に対して特異的であり得るか、または代替的に、縮重したものであり得る(例えば、配列のセットに特異的であり得る)。
【0041】
本発明に従う「連結プローブセット」は、少なくとも1つの標的を検出するように設計された2つ以上のプローブのグループである。非限定的な例として、連結プローブセットは、これら2つのプローブが、互いに対して隣接した位置で、標的に対してハイブリダイズする場合に、それらが共に連結されるのに適切であるように、標的に対してハイブリダイズするように設計された2つの核酸プローブを含み得る。
【0042】
本発明の状況において使用される場合、「連結されるのに適切である」とは、各々が適切な反応基を含む、少なくとも1つの第一の標的特異的プローブおよび少なくとも1つの第二の標的特異的プローブをいう。例示の反応基には、第一のプローブの3’末端の遊離ヒドロキシル基および第二のプローブの5’末端の遊離リン酸基が含まれるが、これらに限定されない。例示の反応基対には、以下が含まれるが、これらに限定されない:ホスホロチオエート基と、トシレート基またはヨージド基;エステル基と、ヒドラジド基;RC(O)S基、ハロアルキル基、またはRCHS基と、α−ハロアシル基;チオホスホリル基と、ブロモアセトアミド基。例示の反応基には、以下が含まれるが、これらに限定されない:S−ピバロイルオキシメチル−4−チオチミジン。さらに、特定の実施形態では、第一の標的特異的プローブと第二の標的特異的プローブとが、第一の標的特異的プローブの3’末端と第二の標的特異的プローブの5’末端とがじかに隣接して連結されるように、標的配列に対してハイブリダイズされる。
【0043】
本明細書中で使用される用語「シグナル部分」とは、任意のタグ、標識、または同定可能部分をいう。
【0044】
「検出可能に異なるシグナル」は、異なるシグナル部分からの検出可能シグナルが、少なくとも1つの検出方法によって互いから識別可能であることを意味する。
【0045】
用語「検出可能シグナル値」は、標識から検出されるシグナルの値をいう。特定の実施形態では、検出可能シグナル値は、標識から検出されるシグナルの量または強度である。従って、標識からの検出可能シグナル値が検出可能でない場合、その検出可能シグナル値はゼロ(0)である。特定の実施形態では、検出可能シグナル値は、シグナルの量または強度以外のシグナルの特徴であって、例えば、シグナルのスペクトル、波長、色、または寿命である。
【0046】
「検出可能に異なるシグナル値」は、1つ以上の検出可能シグナル値が、少なくとも1つの検出方法によって互いから識別可能であることを意味する。
【0047】
用語「標識プローブ」は、所与の核酸配列が存在するかまたは存在しないかに依存して、検出可能に異なるシグナル値を提供するプローブをいう。特定の実施形態では、標識プローブは、インタクトな標識プローブが所与の核酸配列に対してハイブリダイズされている場合、インタクトな標識プローブが所与の核酸配列に対してハイブリダイズされていない場合とは検出可能に異なるシグナル値を提供する。従って、所与の核酸配列が存在する場合、標識プローブは、所与の核酸配列が存在しない場合とは検出可能に異なるシグナル値を提供する。特定の実施形態では、標識プローブは、このプローブがインタクトである場合、このプローブがインタクトでない場合とは検出可能に異なるシグナル値を提供する。特定のこのような実施形態では、標識プローブは、所与の核酸配列が存在しない限り、インタクトなままである。特定のこのような実施形態では、所与の核酸配列が存在する場合、標識プローブは切断され、このプローブがインタクトである場合とは検出可能に異なるシグナル値を生じる。
【0048】
特定の実施形態では、標識プローブは、「相互作用プローブ」である。用語「相互作用プローブ」は、少なくとも2つの部分を含むプローブであって、これら部分が、互いと相互作用して、所与の核酸配列が存在するか存在しないかに依存して、検出可能に異なるシグナル値を提供し得る、プローブをいう。相互作用プローブから検出されるシグナル値は、これら2つの部分が互いに対して十分に近接しているか、または互いから離れて位置しているかに依存して、異なる。本明細書中に記載の方法の間において、これら2つの部分の互いに対する近接度は、所与の核酸が存在するか存在しないかに依存して、異なる。
【0049】
特定の実施形態では、相互作用プローブのこれら2つの部分は、所与の核酸配列が存在する場合、さらに離れた距離に移動される。特定の実施形態では、相互作用プローブは、連結要素によって一緒に連結される2つの部分を含み、そしてこれら2つの部分は、所与の核酸配列が存在する場合、その方法の間に連結されない。一緒に連結される2つの部分を含む相互作用プローブから検出されるシグナル値は、これら2つの部分が連結されていない場合に相互作用プローブから検出されるシグナル値とは異なる。
【0050】
用語「シグナル値間の閾値差」は、探索されている標的核酸配列がサンプル中に存在する場合に生じるが、この標的核酸配列が存在しない場合には生じない、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の集合差(set difference)をいう。標識プローブの第一の検出可能シグナル値は、プローブが所与の核酸配列に曝露されていない場合の、プローブからの検出可能なシグナル値である。第二の検出可能シグナル値は、標識プローブを含む組成物を用いる増幅反応の間および/または後に検出される。
【0051】
用語「定量する」は、増幅産物に関して使用される場合、サンプル中の標的核酸配列を表す特定配列の数量(quantity)または量(amount)を決定することをいう。例えば(しかし限定されることなく)、標識プローブからのシグナルの強度を測定し得る。シグナルの強度または数量は、代表的には、増幅産物の量に関連される。生成した増幅産物の量は、連結および増幅の前に存在する標的核酸配列の量と相関し、従って、特定の実施形態では、特定遺伝子についての発現のレベルを示し得る。
【0052】
本明細書中で使用される用語「増幅産物」は、増幅反応の産物をいい、この反応には、プライマー伸長、ポリメラーゼ連鎖反応、RNA転写などが含まれるが、これらに限定されない。従って、例示の増幅産物は、プライマー伸長産物、PCRアンプリコン、RNA転写産物などの少なくとも1つを含み得る。
【0053】
本発明に従う「プライマー」とは、プローブ、連結産物、または増幅産物のプライマー特異的部分と配列特異的様式でハイブリダイズし、そして増幅反応のためのプライマーとして働くように設計されているオリゴヌクレオチドをいう。
【0054】
「ユニバーサルプライマー」は、適切な場合に、プローブ、連結産物、または増幅産物の1つより多くの種のプライマー特異的部分に対してハイブリダイズし得る。「ユニバーサルプライマーセット」は、第一のプライマーおよび第二のプライマーを含み、これらプライマーは、適切な場合に、プローブ、連結産物、または増幅産物の複数の種とハイブリダイズする。
【0055】
本発明に従う「連結剤」は、互いに対して核酸の連結を達成し得る、任意数の酵素剤または化学剤(すなわち、非酵素剤)を含み得る。
【0056】
本願において、ある配列が別の配列と同じである、または別の配列に対して相補的であると述べることは、それら両配列が互いに対して完全に同じまたは相補的である状況、およびこれら配列の一方の一部のみが他方の配列の一部または全体と同じまたは相補的である状況を包含する。ここで、用語「配列」は、核酸配列、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、プローブ、プライマー、プライマー特異的部分、標的特異的部分、アドレス可能部分(addressable portion)、およびオリゴヌクレオチド連結要素を包含するが、これらに限定されない。
【0057】
本願において、ある配列が別の配列に対して相補的であると述べることは、これら2つの配列がミスマッチを有する状況を包含する。ここで、用語「配列」は、核酸配列、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、プローブ、プライマー、プライマー特異的部分、標的特異的部分、アドレス可能部分、およびオリゴヌクレオチド連結要素を包含するが、これらに限定されない。ミスマッチにもかかわらず、これら2つの配列は、適切な条件下では互いに対して選択的にハイブリダイズしている。
【0058】
用語「選択的にハイブリダイズする」とは、特定同一配列について、これら特定同一配列の相当な部分が、所与の所望の配列(1つまたは複数)に対してハイブリダイズし、そしてこれら特定同一配列の相当な部分が他の所望ではない配列に対してハイブリダイズしないことを意味する。各々の場合における「これら特定同一配列の相当な部分」は、これら特定同一配列の総数の一部分をいうのであって、個々の特定同一配列の一部分をいうわけではない。特定の実施形態では、「これら特定同一配列の相当な部分」は、これら特定同一配列の少なくとも90%を意味する。特定の実施形態では、「これら特定同一配列の相当な部分」は、これら特定同一配列の少なくとも95%を意味する。
【0059】
特定の実施形態では、存在し得るミスマッチの数は、組成物の複雑性を考慮して変動し得る。従って、特定の実施形態では、存在するDNA配列がより少ない組成物よりも、ゲノム全体からのDNAを含む組成物において、寛容化され得るミスマッチはより少ない。例えば、特定の実施形態では、所与数のミスマッチが存在すると、プローブは、両組成物について同じハイブリダイゼーション条件が用いられる場合、より少ないDNA配列を有する組成物におけるよりも全ゲノムDNAを有する組成物において、所望でない配列に対してハイブリダイズする可能性が高くなり得る。従って、その所与数のミスマッチは、より少ないDNA配列を有する組成物にとっては適切であり得るが、全ゲノムDNAを有する組成物にとっては、より少ないミスマッチがより最適であり得る。
【0060】
特定の実施形態では、配列は、20%以下のミスマッチのヌクレオチドを有する場合に相補的である。特定の実施形態では、配列は、15%以下のミスマッチのヌクレオチドを有する場合に相補的である。特定の実施形態では、配列は、10%以下のミスマッチのヌクレオチドを有する場合に相補的である。特定の実施形態では、配列は、5%以下のミスマッチのヌクレオチドを有する場合に相補的である。
【0061】
本願において、ある配列が別の配列に対してハイブリダイズする、または別の配列に結合すると述べることは、これら配列の両方の全体が互いに対してハイブリダイズする、または結合する状況、およびこれら配列の一方または両方の一部のみが他方の配列全体または他方の配列の一部に対してハイブリダイズする、または結合する状況を包含する。ここで、用語「配列」は、核酸配列、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、プローブ、プライマー、プライマー特異的部分、標的特異的部分、アドレス可能部分、およびオリゴヌクレオチド連結要素を包含するが、これらに限定されない。
【0062】
特定の実施形態では、用語「測定可能により少ない程度に」は、問題の事象が少なくとも10倍減少している状況を包含する。特定の実施形態では、用語「測定可能により少ない程度に」は、問題の事象が少なくとも100倍減少している状況を包含する。
【0063】
特定の実施形態では、成分が、「実質的に除去」され得る、される、またはされたと述べることは、その成分の少なくとも90%が除去され得る、される、またはされたことを意味する。特定の実施形態では、成分が、「実質的に除去」され得る、される、またはされたと述べることは、その成分の少なくとも95%が除去され得る、される、またはされたことを意味する。
【0064】
(B.特定の成分)
特定の実施形態では、標的核酸配列には、RNAおよびDNAが含まれ得る。例示のRNA標的配列には、mRNA、rRNA、tRNA、ウイルスRNA、およびRNAの改変体(例えば、スプライシング改変体)が含まれるが、これらに限定されない。例示のDNA標的配列には、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、核小体DNA、ミトコンドリアDNA、および葉緑体DNAが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
特定の実施形態では、標的核酸配列には、cDNA、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、他の染色体外DNA、および核酸アナログが含まれるが、これらに限定されない。例示の核酸アナログには、LNA、PNA、PPG、および他の核酸アナログが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
種々の方法が、本発明の組成物および方法とともに使用される標的核酸配列を得るために利用可能である。核酸標的が生物学的マトリックスからの単離を通じて得られる場合、特定の単離技術には、以下が含まれるが、これらに限定されない:(1)有機溶剤抽出後のエタノール沈殿(例えば、フェノール/クロロホルム有機試薬を用いる)(例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology Volume 1,Chapter 2,Section I,John Wiley & Sons,New York(1993))(特定の実施形態では、自動化DNA抽出機(例えば、Model 341 DNA Extractor(Applied Biosystems(Foster City,CA)から入手可能)を用いる);(2)固定相吸着法(例えば、Boomら、米国特許番号5,234,809;Walshら、Biotechniques 10(4):506−513(1991));および(3)塩誘導DNA沈殿法(例えば、Millerら,Nucleic Acids Research,16(3):9−10(1988))(このような沈殿法は、代表的には、「塩析」法と呼ばれる)。特定の実施形態では、上記単離法の前に酵素消化工程を行って、サンプルからの望ましくないタンパク質の排除を促進させ得る(例えば、プロテイナーゼKまたは他の同様のプロテアーゼでの消化)。例えば、米国特許出願番号09/724,613を参照のこと。
【0067】
特定の実施形態では、標的核酸配列は、任意の生存している生物またはかつて生存していた生物に由来し得、このような生物には、原核生物、真核生物、植物、動物、およびウイルスが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、標的核酸配列は、細胞の核に起因し得る(例えば、ゲノムDNA)か、または細胞外核酸(例えば、プラスミド、ミトコンドリア核酸、種々のRNAなど)であり得る。特定の実施形態では、生物由来の配列がRNAである場合、それは、cDNA標的核酸配列に逆転写され得る。さらに、特定の実施形態では、標的核酸配列は、二本鎖または一本鎖の形態で存在し得る。
【0068】
例示の標的核酸配列には、増幅産物、連結産物、転写産物、逆転写産物、プライマー伸長産物、メチル化DNA、および切断産物が含まれるが、これらに限定されない。例示の増幅産物には、PCRおよび等温産物が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
特定の実施形態では、サンプル中の核酸が、切断手順に供され得る。特定の実施形態では、このような切断産物が標的であり得る。
【0070】
異なる標的核酸配列は、単一の連続した核酸の異なる部分であり得るか、または異なる核酸上にあり得る。単一の連続した核酸の異なる部分は、重複していることも重複していないこともあり得る。
【0071】
特定の実施形態では、標的核酸配列は、上流もしくは5’領域、下流もしくは3’領域、およびこの上流領域またはこの下流領域に位置する「中心ヌクレオチド(pivotal nucleotide)」を含む(例えば、図4を参照のこと)。特定の実施形態では、中心ヌクレオチドは、プローブセットによって検出されるヌクレオチドであり得、そして例えば(限定することなく)、多重対立遺伝子標的座中の単一の多型ヌクレオチドを表し得る。特定の実施形態では、1つより多くの中心ヌクレオチドが存在する。特定の実施形態では、1つ以上の中心ヌクレオチドが上流領域中に存在し、かつ1つ以上の中心ヌクレオチドが下流領域中に存在する。特定の実施形態では、1つより多くの中心ヌクレオチドが、上流領域または下流領域中に位置する。
【0072】
当業者は、代表的には、標的核酸配列が一本鎖分子として記載されるが、二本鎖分子の反対鎖は、これもまた標的配列として使用され得る相補的配列を含むことを理解する。
【0073】
特定の実施形態に従う連結プローブセットは、2つ以上のプローブを含むが、これらプローブは、特定の標的核酸配列上の相補的領域と配列特異的様式でハイブリダイズするように設計される標的特異的部分を含む(例えば、図2中のプローブ2および3を参照のこと)。連結プローブセットのプローブは、プライマー特異的部分、アドレス可能部分、またはこれらのさらなる成分の組み合わせをさらに含み得る。特定の実施形態では、プローブの成分のいずれかが、任意の他のプローブ成分(単数または複数)に重複し得る。例えば(しかし限定されることなく)、標的特異的部分は、プライマー特異的部分に重複し得る。また、限定されることなく、アドレス可能部分は、標的特異的部分もしくはプライマー特異的部分、またはその両方と重複し得る。
【0074】
特定の実施形態では、連結プローブセットの少なくとも1つのプローブは、標的特異的部分とプライマー特異的部分との間に位置するアドレス可能部分を含む(例えば、図3中のプローブ23を参照のこと)。特定の実施形態では、このプローブのアドレス可能部分が、標識プローブの少なくとも一部と同じであるかまたは相補的である、配列を含み得る。特定の実施形態では、このプローブのプライマー特異的部分が、標識プローブの少なくとも一部と同じであるかまたは相補的である、配列を含み得る。特定の実施形態では、このプローブのアドレス可能部分は、標識プローブの相補的部分以外の、標的配列とも、プライマー配列とも、プローブ配列とも、相補的でない。
【0075】
プローブの配列特異的部分は、適切な場合に、プライマー中の相補的配列、アドレス可能部分、および標的への特異的アニーリングを可能にするのに十分な長さである。特定の実施形態では、アドレス可能部分および標的特異的部分の長さは、6〜35の任意数のヌクレオチドである。配列特異的アニーリングを提供するプローブ設計の詳細な説明は、とりわけ、DiffenbachおよびDveksler,PCR Primer,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,1995、およびKwokら,Nucl.Acid Res.18:999−1005(1990)において見出され得る。
【0076】
特定の実施形態に従う連結プローブセットは、少なくとも1つの第一のプローブおよび少なくとも1つの第二のプローブを含み、これらは、同じ標的核酸配列に対して、隣接してハイブリダイズする。特定の実施形態に従って、連結プローブセットは、第一のプローブの標的特異的部分が下流標的領域とハイブリダイズし(例えば、図2中のプローブ2を参照のこと)、そして第二のプローブの標的特異的部分が上流標的領域とハイブリダイズする(例えば、図2中のプローブ3)ように設計される。これらプローブの配列特異的部分は、適切な場合に、標的およびプライマー中の相補的配列との特異的アニーリングを可能にするのに十分な長さである。特定の実施形態では、プローブセット中の少なくとも1つの第一のプローブおよび少なくとも1つの第二のプローブの一方が、アドレス可能部分をさらに含む。
【0077】
適切な条件下では、隣接してハイブリダイズされたプローブは、それらが適切な反応基(例えば(限定されることなく)、遊離の3’−ヒドロキシル基および5’−リン酸基)を含む限り、一緒に連結されて、連結産物を形成し得る。
【0078】
特定の実施形態に従って、いくつかの連結プローブセットは、1つ以上のヌクレオチドが異なる標的配列の間の配列識別を可能にする、1つより多くの第一のプローブまたは1つより多くの第二のプローブを含み得る(例えば、図5を参照のこと)。
【0079】
本発明の特定の実施形態に従って、連結プローブセットは、第一のプローブの標的特異的部分が下流標的領域とハイブリダイズし(例えば、図4中の第一のプローブを参照のこと)、そして第二のプローブの標的特異的部分が上流標的領域とハイブリダイズする(例えば、図4中の第二のプローブを参照のこと)ように設計される。特定の実施形態では、中心ヌクレオチドに対して相補的なヌクレオチド塩基(「中心相補体(pivotal complement)」または「中心相補ヌクレオチド(pivotal complement nucleotide)」)は、標的特異的プローブセットの第二のプローブの近位末端に存在する(例えば、図4中の第二のプローブの5’末端(PC)を参照のこと)。特定の実施形態では、第二のプローブではなく第一のプローブが、中心相補体およびアドレス可能部分を含み得る(例えば、図5を参照のこと)。当業者は、種々の実施形態において、中心ヌクレオチド(1つまたは複数)が標的配列中のどこかに位置し得ること、および同様に、中心相補体(1つまたは複数)が、プローブ(1つまたは複数)の標的特異的部分内のどこかに位置し得ることを理解する。例えば、種々の実施形態に従って、中心相補体は、プローブの3’末端、プローブの5’末端、またはプローブの3’末端と5’末端との間のどこかに位置し得る。
【0080】
特定の実施形態では、連結プローブセットの第一のプローブおよび第二のプローブが適切な上流および下流の標的領域に対してハイブリダイズし、かつ中心相補体が一方のプローブの5’末端またはもう一方のプローブの3’末端にあり、そして中心相補体が標的配列上の中心ヌクレオチドと塩基対合する場合、ハイブリダイズされた第一のプローブおよび第二のプローブは、一緒に連結されて、連結産物を形成し得る(例えば、図5(2)−(3)を参照のこと)。しかし、図5(2)−(3)において示された例において、中心ヌクレオチドでのミスマッチ塩基は、たとえ、連結を妨害しなければ両プローブがそれらのそれぞれの標的領域に対して十分にハイブリダイズする場合であっても、連結を妨害する。
【0081】
特定の実施形態では、他の機構が、中心相補体に正確な相補ヌクレオチドを含まないプローブの連結を回避するために使用され得る。例えば、特定の実施形態では、中心ヌクレオチドにミスマッチがある場合、連結プローブセットのプローブが、測定可能により少ない程度に、標的配列に対してハイブリダイズするような条件が使用され得る。従って、このような実施形態では、このようなハイブリダイズされないプローブは、プローブセット中の他方のプローブに連結されない。
【0082】
特定の実施形態では、連結プローブセットにおける第一のプローブおよび第二のプローブは、同様の融解温度(T)を有するように設計される。プローブが中心相補体を含む場合、特定の実施形態では、探索される標的中心ヌクレオチドの中心相補体(1つまたは複数)を含むプローブ(1つまたは複数)のTは、プローブセット中の中心相補体を含まない他方のプローブ(1つまたは複数)より約4〜15℃低い。特定のこのような実施形態では、中心相補体(1つまたは複数)を含むプローブはまた、連結温度に近いTを有するように設計される。従って、ミスマッチヌクレオチドを有するプローブは、連結温度で標的からより容易に解離する。従って、この連結温度は、特定の実施形態では、例えば、標的中の複数の潜在対立遺伝子間を識別する別の方法を提供する。
【0083】
さらに、特定の実施形態では、連結プローブセットは、第一のプローブまたは第二のプローブの末端に(例えば、第一のプローブまたは第二のプローブの3’末端にも5’末端にも)中心相補体を含まない。むしろ、中心相補体は、第一のプローブまたは第二のプローブの5’末端と3’末端の間の任意の領域に位置する。特定のこのような実施形態では、それらのそれぞれの標的領域と十分に相補的である標的特異的部分を有するプローブが、高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする。逆に、標的特異的部分において1つ以上のミスマッチ塩基を有するプローブは、測定可能により少ない程度に、それらのそれぞれの標的領域に対してハイブリダイズする。第一のプローブおよび第二のプローブの両方ともが、連結産物が生成されるように標的に対してハイブリダイズされなければならない。
【0084】
特定の実施形態では、1ヌクレオチド程度の数しか異ならない非常に関連した配列が識別され得る。例えば、特定の実施形態に従って、以下のように、二重対立遺伝子座における2つの潜在対立遺伝子を識別し得る。それらのアドレス可能部分およびそれらの中心相補体が異なる2つの第一のプローブ(例えば、図5(2)中のプローブAおよびBを参照のこと)、1つの第二のプローブ(例えば、図5(1)中のプローブZを参照のこと)を含む連結プローブセット、および標的を含むサンプルを合わせ得る。3つのプローブ全ては、適切な条件下で標的配列とハイブリダイズする(例えば、図5(2)を参照のこと)。しかし、ハイブリダイズされた中心相補体を有する第一のプローブのみが、ハイブリダイズされた第二のプローブと連結される(例えば、図5(3)を参照のこと)。従って、1つの対立遺伝子のみがサンプル中に存在する場合、その標的について1つの連結産物のみが生成される(例えば、図5(4)中の連結産物A−Zを参照のこと)。両連結産物とも、ヘテロ接合性個体由来のサンプル中で形成される。特定の実施形態では、中心ヌクレオチドに対して相補的でない中心相補体を有するプローブの連結が生じ得るが、このような連結は、中心ヌクレオチドに対して相補的である中心相補体を有するプローブの連結よりも測定可能により少ない程度に生じる。
【0085】
多くの異なるシグナル部分が、本発明の種々の実施形態で使用され得る。例えば、シグナル部分には、以下が含まれるが、これらに限定されない:蛍光体、放射性同位体、色原体、酵素、抗原、重金属、色素、リン光基、化学発光基、および電気化学検出部分。シグナル部分として使用され得る例示の蛍光体には、以下が含まれるが、これらに限定されない:ローダミン、シアニン3(Cy 3)、シアニン5(Cy 5)、フルオレセイン、VicTM、LizTM、TamraTM、5−FamTM、6−FamTM、およびテキサスレッド(Molecular Probes)。(VicTM、LizTM、TamraTM、5−FamTM、および6−FamTM(全て、Applied Biosystems,Foster City,CA.から入手可能。)例示の放射性同位体には、以下が含まれるが、これらに限定されない:32P、33P、および35S。シグナル部分はまた、マルチエレメント間接レポーターシステム(例えば、ビオチン/アビジン、抗体/抗原、リガンド/レセプター、酵素/基質など)の要素を含む。ここでは、要素は、検出可能シグナルを生じるために、そのシステムの他方の要素と相互作用する。特定の例示のマルチエレメントシステムは、プローブに付着されたビオチンレポーター基および蛍光標識と結合体化されたアビジンを含む。オリゴヌクレオチドにシグナル部分を付着させる方法についての詳細なプロトコルは、とりわけ、G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,CA(1996)およびS.L.Beaucageら,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,John Wiley & Sons,New York,NY(2000)において見出され得る。
【0086】
上述のように、用語「相互作用プローブ」は、互いと相互作用して、所与の核酸配列が存在するか存在しないかに依存して検出可能に異なるシグナル値を提供し得る少なくとも2つの部分を含む、プローブをいう。特定の実施形態では、それらの部分の一方は、シグナル部分であり、そして他方の部分は、クエンチャー部分である。シグナル部分から検出されるシグナル値は、クエンチャー部分が、シグナル部分に十分に近接しているか、またはシグナル部分から離れて位置しているかに依存して、異なる。特定の実施形態では、クエンチャー部分は、クエンチャー部分がシグナル部分に十分に近接している場合、シグナル部分からの検出可能シグナル値を減少させる。特定の実施形態では、クエンチャー部分は、クエンチャー部分がシグナル部分に十分に近接している場合、0または0に近いところまで検出可能シグナル値を減少させる。
【0087】
特定の実施形態では、相互作用プローブの部分の一方はシグナル部分であり、他方の部分はドナー部分である。シグナル部分から検出されるシグナル値は、ドナー部分がシグナル部分に十分に近接しているか、またはシグナル部分から離れて位置しているかに依存して異なっている。特定の実施形態では、ドナー部分は、ドナー部分がシグナル部分に十分に近接している場合、シグナル部分からの検出可能シグナル値を増加させる。特定の実施形態では、検出可能シグナル値は、ドナー部分がシグナル部分に十分に近接していない場合、0または0に近い。
【0088】
ドナー部分およびシグナル部分を用いる特定の実施形態では、特定のエネルギー転移蛍光色素を使用し得る。特定の非限定的な例示のドナー(ドナー部分)およびアクセプター(シグナル部分)の対は、例えば、米国特許第5,863,727号;同第5,800,996号;および同第5,945,526号において図示されている。ドナーおよびアクセプターの特定のこのような組み合わせの使用はまた、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)とも呼ばれている。
【0089】
特定の実施形態では、相互作用プローブの部分は、連結要素(例えば、オリゴヌクレオチドであるが、これらに限定されない)によって互いに対して連結される。特定のこのような実施形態では、相互作用プローブに対してハイブリダイズする配列の存在は、本明細書に記載の方法の間に、互いに対する部分の近接度に影響する。種々の実施形態では、これら部分は、当該分野で公知の種々の方法で連結要素に付着され得る。例えば、オリゴヌクレオチドに部分を付着させるための特定の非限定的なプロトコルは、とりわけ、G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,CA(1996)およびS.L.Beaucageら,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,John Wiley & Sons,New York,NY(2000)において見出される。特定の実施形態では、相互作用プローブは、1つより多くのシグナル部分を含む。特定の実施形態では、相互作用プローブは、1つより多くのクエンチャー部分を含む。特定の実施形態では、相互作用プローブは、1つより多くのドナー部分を含む。
【0090】
特定の実施形態に従って、相互作用プローブは、「5’−ヌクレアーゼプローブ」(これは、短いオリゴヌクレオチド連結要素によってクエンチャー部分またはドナー部分に連結されたシグナル部分を含む)であり得る。5’−ヌクレアーゼプローブがインタクトである場合、クエンチャー部分またはドナー部分は、シグナル部分からの検出可能シグナルに影響を及ぼす。特定の実施形態に従って、5’−ヌクレアーゼプローブは、特異的核酸配列に結合し、そしてこのプローブが、増幅反応(例えば、PCRまたはいくつかの他の鎖置換プロトコル)の間に、新規に重合された鎖によって置換される場合、ポリメラーゼおよび別の酵素構築物の少なくとも1つの5’ヌクレアーゼ活性によって切断される。
【0091】
5’−ヌクレアーゼプローブのオリゴヌクレオチド連結要素が切断される場合、シグナル部分からの検出可能シグナルは、シグナル部分が、クエンチャー部分またはドナー部分からさらに離れた場合、変化する。クエンチャー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、シグナル部分がクエンチャー部分からさらに離れた場合、増大する。ドナー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、シグナル部分がドナー部分からさらに離れた場合、減少する。
【0092】
特定の実施形態に従う5’ヌクレアーゼプローブの例を図1Aに示す。図1Aでは、標識プローブ(LBP)は、クエンチャー部分(Q)およびシグナル部分(S)を含む。図1A中で相互作用プローブが相互作用する核酸配列は、5’プライマー特異的部分P−SP1、アドレス可能部分(ASP)、および3’プライマー特異的部分(P−SP2)を含む。標識プローブから検出されるシグナルは、切断とともに増大する。
【0093】
特定の実施形態では、5’−ヌクレアーゼプローブは、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブであり、ここでは、シグナル部分が蛍光部分であり、そしてクエンチャー部分が蛍光クエンチャー部分である。プローブが鎖置換プロトコルの間に切断される場合、蛍光部分は、検出可能蛍光シグナルを放射する。特定の実施形態では、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブは、それが切断前に相補的配列に対してハイブリダイズされる場合、所与のレベルのシグナルを放射し得、そしてこのシグナルのレベルは、切断と共に増大する。5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブの特定の例示の実施形態は、例えば、米国特許番号5,538,848において記載され、そしてTaqMan(登録商標)プローブ分子(これは、TaqMan(登録商標)アッセイシステムの一部である(Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能))により例示される。
【0094】
特定の実施形態に従って、相互作用プローブは、「ハイブリダイゼーション依存性プローブ」であり得る。この「ハイブリダイゼーション依存性プローブ」は、オリゴヌクレオチド連結要素を介してクエンチャー部分またはドナー部分に連結されたシグナル部分を含む。ハイブリダイゼーション依存性プローブが所与の核酸配列に結合されず、従って一本鎖である場合、オリゴヌクレオチド連結要素は柔軟に曲がり得、このためクエンチャー部分またはドナー部分は、シグナル部分からの検出可能シグナルに影響を及ぼすのに十分に、シグナル部分に対して近接する。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション依存性プローブのオリゴヌクレオチド連結要素は、それが所与の核酸配列に対してハイブリダイズされない場合、折り畳まれてそれ自体に対してハイブリダイズするように設計される(例えば、図1Cを参照のこと)(例えば、分子ビーコンプローブ(molecular beacon probe))。例えば、米国特許番号5,118,801;5,312,728;および5,925,517を参照のこと。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション依存性プローブのオリゴヌクレオチド連結要素は、それが所与の核酸配列に対してハイブリダイズしない場合、それ自体に対してハイブリダイズしない(例えば、図1Bを参照のこと)。
【0095】
ハイブリダイゼーション依存性プローブが二本鎖核酸として所与の核酸に結合される場合、クエンチャー部分またはドナー部分は、検出可能シグナルが変化されるように、シグナル部分から離れて位置する。クエンチャー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、シグナル部分がクエンチャー部分からさらに離れた場合、増大する。ドナー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、シグナル部分がドナー部分からさらに離れた場合、減少する。
【0096】
特定の実施形態に従う特定のハイブリダイゼーション依存性プローブの例を、図1Bおよび1Cに示す。ここでは、標識プローブ(LBP)が、クエンチャー部分(Q)およびシグナル部分(S)を含む。図1Bおよび1Cにおいて相互作用プローブが相互作用する核酸配列は、5’プライマー特異的部分P−SP1、アドレス可能部分(ASP)、および3’プライマー特異的部分(P−SP2)を含む。
【0097】
ハイブリダイゼーション依存性プローブの特定の実施形態では、シグナル部分は蛍光部分であり、そしてクエンチャー部分は蛍光クエンチャー部分である。プローブが特異的核酸配列に対してハイブリダイズされる場合、蛍光部分は、検出可能蛍光シグナルを放射する。プローブが核酸配列に対してハイブリダイズされず、インタクトである場合、クエンチングが生じ、蛍光はほとんどまたは全く検出されない。
【0098】
ハイブリダイゼーション依存性プローブの特定の例示の実施形態は、例えば、米国特許番号5,723,591において記載される。
【0099】
特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション依存性プローブの相当な部分が増幅反応の間に酵素によって切断されないように、ハイブリダイゼーション依存性プローブ中の核酸を用いる。「ハイブリダイゼーション依存性プローブの相当な部分が切断されない」とは、増幅されるべき所与の核酸配列に対してハイブリダイズするように設計されているハイブリダイゼーション依存性プローブの総数の一部分のことをいい、これは、個々のプローブの一部分をいうわけではない。特定の実施形態では、「切断されないハイブリダイゼーション依存性プローブの相当な部分」とは、これらハイブリダイゼーション依存性プローブの少なくとも90%が切断されないことを意味する。特定の実施形態では、これらハイブリダイゼーション依存性プローブの少なくとも95%が切断されない。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション依存性プローブの核酸のいくらかまたは全てについてPNAを用いる。
【0100】
特定の実施形態では、伸長反応の間に、ハイブリダイゼーション依存性プローブの相当な部分が、アドレス可能部分に対してもアドレス可能部分の相補体に対してもハイブリダイズしない、ハイブリダイゼーション依存性プローブを用いる。「ハイブリダイゼーション依存性プローブの相当な部分がハイブリダイズしない」とは、本明細書中では、増幅されるべき所与の核酸配列に対してハイブリダイズするように設計されているハイブリダイゼーション依存性プローブの総数の一部分のことをいい、個々のプローブの一部分をいうわけではない。特定の実施形態では、「ハイブリダイズしないハイブリダイゼーション依存性プローブの相当な部分」とは、これらハイブリダイゼーション依存性プローブの少なくとも90%がハイブリダイズしないことを意味する。特定の実施形態では、これらハイブリダイゼーション依存性プローブの少なくとも95%がハイブリダイズしない。
【0101】
特定の実施形態に従って、相互作用プローブは、「切断可能RNAプローブ」であり得、この切断可能RNAプローブは、短いRNA連結要素を介してクエンチャー部分またはドナー部分に連結されたシグナル部分を含む。切断可能RNAプローブがインタクトである場合、クエンチャー部分またはドナー部分は、シグナル部分からの検出可能シグナルに影響を及ぼす。特定の実施形態に従って、切断可能RNAプローブは、特異的DNA配列に結合し、そしてRNase Hまたは同様の活性を有する薬剤によって切断される。
【0102】
切断可能RNAプローブのRNA連結要素が切断される場合、シグナル部分からの検出可能シグナルは、シグナル部分がクエンチャー部分またはドナー部分からさらに離れた場合に変化する。クエンチャー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、シグナル部分がクエンチャー部分からさらに離れた場合に増大する。ドナー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、シグナル部分がドナー部分からさらに離れた場合に減少する。
【0103】
特定の実施形態では、検出されるべき特定核酸配列がサンプル中に存在する場合、核酸増幅手順は、切断可能RNAプローブが結合する特異的DNA配列を含むDNAを、この特定核酸配列がサンプル中に存在しない場合よりも多く生じる。このような実施形態では、増幅手順の間および/または後に切断可能RNAプローブから生成されたシグナルを考慮して、サンプル中の特定核酸の存在を決定し得る。特定の実施形態では、増幅手順の間および/または後に切断可能RNAプローブから生成されたシグナルを考慮して、サンプル中の特定核酸の量を定量し得る。
【0104】
特定の実施形態では、切断可能RNAプローブは、切断可能RNA蛍光プローブであり、ここではシグナル部分が蛍光部分であり、そしてクエンチャー部分が蛍光クエンチャー部分である。プローブが切断される場合、蛍光部分は、検出可能蛍光シグナルを放射する。特定の実施形態では、切断可能RNAプローブは、それが切断の前に相補的配列に対してハイブリダイズされる場合、所与のレベルのシグナルを放射し得、そしてそのシグナルのレベルは、切断と共に増大する。
【0105】
特定の実施形態に従って、相互作用プローブは、「構造特異的ヌクレアーゼプローブ」であり得る。この「構造特異的ヌクレアーゼプローブ」は、短いオリゴヌクレオチド連結要素を介してクエンチャー部分またはドナー部分に連結されたシグナル部分を含む。構造特異的ヌクレアーゼプローブがインタクトである場合、クエンチャー部分またはドナー部分は、シグナル部分からの検出可能シグナルに影響を及ぼす。特定の実施形態に従って、構造特異的ヌクレアーゼプローブは、特異的核酸配列に結合し、そしてそれがこの特異的核酸配列に対して適切にハイブリダイズされる場合、構造特異的ヌクレアーゼによって切断される。
【0106】
構造特異的ヌクレアーゼプローブのオリゴヌクレオチド連結要素が切断される場合、シグナル部分からの検出可能シグナルは、このシグナル部分がクエンチャー部分またはドナー部分からさらに離れた場合に変化する。クエンチャー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、このシグナル部分がクエンチャー部分からさらに離れた場合に増大する。ドナー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、このシグナル部分がドナー部分からさらに離れた場合に減少する。
【0107】
特定の実施形態では、構造特異的ヌクレアーゼプローブは、構造特異的ヌクレアーゼ蛍光プローブであり、ここではシグナル部分が蛍光部分であり、そしてクエンチャー部分は蛍光クエンチャー部分である。プローブが切断される場合、蛍光部分は、検出可能蛍光シグナルを放射する。特定の実施形態では、構造特異的ヌクレアーゼプローブは、それが切断の前に相補的配列に対してハイブリダイズされる場合、所与のレベルのシグナルを放射し得、そしてそのシグナルのレベルは、切断と共に増大する。
【0108】
特定の実施形態では、アドレス可能部分に対して実質的にハイブリダイズしないフラップを含む構造特異的ヌクレアーゼプローブを用い、そして構造特異的ヌクレアーゼとしてフラップエンドヌクレアーゼ(FEN)を用いる。例示の実施形態を図8中に示す。図8中の構造特異的ヌクレアーゼプローブは、アドレス可能部分に対してハイブリダイズしないフラップ部分、アドレス可能部分に対してハイブリダイズするハイブリダイジング部分、およびフラップ部分とハイブリダイジング部分との間のFEN切断位置ヌクレオチドを含む。FEN切断位置ヌクレオチドは、プローブのハイブリダイジング部分の5’末端ヌクレオチドに対してハイブリダイズするヌクレオチドに対してすぐ3’側にある、アドレス可能部分のヌクレオチドに対して相補的であるように、設計される。フラップ部分は、それに対して付着されたシグナル部分を含み、そしてハイブリダイジング部分は、それに対して付着されたクエンチャー部分またはドナー部分を含む。
【0109】
図8中に図示された実施形態において示されるように、別のオリゴヌクレオチドXが、構造特異的ヌクレアーゼプローブのハイブリダイジング部分に対してハイブリダイズするアドレス可能部分の部分に対して3’側のアドレス可能部分に対してハイブリダイズするように、設計される。適切なアドレス可能部分が存在する場合、FENは、シグナル部分がクエンチング部分またはドナー部分から離れるように、構造特異的ヌクレアーゼプローブを切断する。
【0110】
特定の実施形態に従って、相互作用プローブは、互いに対して隣接した位置で所与の核酸配列に対してハイブリダイズする、2つのオリゴヌクレオチドを含み得る。特定の実施形態では、これらオリゴヌクレオチドの一方は、シグナル部分を含み、そしてこれらオリゴヌクレオチドの一方は、クエンチャー部分またはドナー部分を含む。両オリゴヌクレオチドともが所与の核酸配列に対してハイブリダイズされる場合、クエンチャー部分またはドナー部分は、シグナル部分からの検出可能シグナルに影響を及ぼすのに十分に、シグナル部分に対して近接している。
【0111】
ドナー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、これら2つのオリゴヌクレオチドが所与の核酸配列に対してハイブリダイズされる場合、増大する。クエンチャー部分を用いる特定のこのような実施形態では、シグナル値は、これら2つのオリゴヌクレオチドが所与の核酸配列に対してハイブリダイズされる場合、減少する。特定の実施形態では、シグナル部分は蛍光部分である。
【0112】
特定の実施形態に従う適切な標識プローブの他の例は、i−プローブ、スコルピオンプローブ(scorpion probe)、エクリプスプローブ(eclipse probe)などである。例示であって限定ではないプローブが、例えば、以下において考察されている:Whitcombeら,Nat.Biotechnol.,17(8):804−807(1999)(スコルピオンプローブを含む);Thelwellら,Nucleic Acids Res.,28(19):3752−3761(2000)(スコルピオンプローブを含む);Afoninaら,Biotechniques,32(4):(2002)(エクリプスプローブを含む);Liら,「A new class of homogeneous nucleic acid probes based on specific displacement hybridization」,Nucleic Acids Res.,30(2):E5(2002);Kandimallら,Bioorg.Med.Chem.,8(8):1911−1916(2000);Isacssonら,Mol.Cell.Probes,14(5):321−328(2000);Frenchら,Mol.Cell.Probes,15(6):363−374(2001);およびNurmiら,「A new label technology for the detection of specific polymerase chain reaction products in a closed tube」,Nucleic Acids Res.,28(8),E28(2000)。特定の実施形態に従う例示のクエンチャー部分は、Epoch Biosciences,Bothell,Washingtonから入手可能なものであり得る。
【0113】
特定の実施形態では、標識プローブおよび第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の閾値差を使用して、サンプル中の標的核酸の存在または不在を検出し得る。このような実施形態では、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の差が閾値差と同じであるか、または閾値差より大きい(すなわち、閾値差がある)場合、標的核酸が存在すると結論する。第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の差が閾値差より小さい(すなわち、閾値差がない)場合、標的核酸が存在しないと結論する。
【0114】
特定の実施形態に従う閾値差をいかにして設定し得るかとの特定の非限定的な例は、以下の通りである。
【0115】
第一に、特定の実施形態では、相補的配列に対してハイブリダイズされない標識プローブは、0の第一の検出可能シグナル値を有し得る。特定の実施形態では、増幅前に、標識プローブ、ならびに任意の連結されていない連結プローブおよび連結産物(相補的アドレス可能部分を含む)を含む増幅反応組成物を形成する場合、検出可能シグナル値は、0.4に増大し得る。特定のこのような実施形態では、このような増幅反応組成物が、相補的アドレス可能部分を含む連結産物を含まない場合、検出可能シグナル値は、増幅反応の間および/または後、0.4で維持され得る(言い換えれば、第二の検出可能シグナル値は0.4である)。しかし、特定のこのような実施形態では、このような増幅反応組成物が、相補的アドレス可能部分を含む連結産物を含む場合、検出可能シグナル値は、増幅反応の間および/または後、2に増大し得る。(言い換えれば、第二の検出可能シグナル値は2である)。
【0116】
従って、特定のこのような実施形態では、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の閾値差を0.4のちょうど上の値から約2の間のいずれかの値に設定し得る。例えば、0.5〜2の間のいずれかに閾値差を設定し得る。
【0117】
第二に、特定の実施形態では、相補的配列に対してハイブリダイズされない標識プローブは、0の第一の検出可能シグナル値を有し得る。特定の実施形態では、増幅前に、標識プローブ、ならびに任意の連結されていない連結プローブおよび連結産物(相補的アドレス可能部分を含む)を含む増幅反応組成物を形成する場合、検出可能シグナル値は、0.4に増大し得る。特定のこのような実施形態では、このような増幅反応組成物が、相補的アドレス可能部分を含む連結産物を含まない場合、検出可能シグナル値は、増幅反応の間および/または後、0.7に増大し得る(言い換えれば、第二の検出可能シグナル値は0.7である)。しかし、特定のこのような実施形態では、このような増幅反応組成物が、相補的アドレス可能部分を含む連結産物を含む場合、検出可能シグナル値は、増幅反応の間および/後、2に増大し得る。(言い換えれば、第二の検出可能シグナル値は2である)。
【0118】
従って、特定のこのような実施形態では、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の閾値差を0.7のちょうど上の値から約2の間のいずれかの値に設定し得る。例えば、0.8〜2の間のいずれかに閾値差を設定し得る。
【0119】
第三に、特定の実施形態では、相補的配列に対してハイブリダイズされない標識プローブは、0の第一の検出可能シグナル値を有し得る。特定の実施形態では、増幅前に、標識プローブ、ならびに任意の連結されていない連結プローブおよび連結産物(相補的アドレス可能部分を含む)を含む増幅反応組成物を形成する場合、検出可能シグナル値は、0.4に増大し得る。特定のこのような実施形態では、このような増幅反応組成物が、相補的アドレス可能部分を含む連結産物を含まない場合、検出可能シグナル値は、増幅反応の間および/または後、線形に増大し得る(言い換えれば、第二の検出可能シグナル値は、第一の検出可能シグナル値から線形に増大する)。しかし、特定のこのような実施形態では、このような増幅反応組成物が、相補的アドレス可能部分を含む連結産物を含む場合、検出可能シグナル値は、増幅反応の間および/または後、指数関数的に増大し得る。(言い換えれば、第二の検出可能シグナル値は、第一の検出可能シグナル値から指数関数的に増大する)。
【0120】
従って、特定のこのような実施形態では、増幅の間の2つ以上の時点で、および増幅反応の終了時に、検出可能シグナル値を測定し、検出可能シグナル値の増大が線形であるか、または指数関数的であるかを決定し得る。特定の実施形態では、増幅の間の3つ以上の時点で検出可能シグナル値を測定し、検出可能シグナル値の増大が線形であるか、または指数関数的であるかを決定し得る。特定の実施形態では、増大が指数関数的である場合、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間に閾値差がある。
【0121】
特定の実施形態では、異なるアドレス可能部分に特異的である異なる標識プローブを用い得る。特定のこのような実施形態では、異なる配列および検出可能に異なるシグナル部分を含む、異なる標識プローブを用い得る。検出可能に異なるシグナル部分には、以下が含まれるが、これらに限定されない:異なる波長の光を放射する部分、異なる波長の光を吸収する部分、異なる蛍光崩壊寿命を有する部分、異なるスペクトルシグネチャを有する部分、および異なる放射能崩壊特性を有する部分。
【0122】
特定の実施形態に従って、小溝結合剤が、少なくとも1つの標識プローブに付着され得る。特定の例示の小溝結合剤および小溝結合剤をオリゴヌクレオチドに付着させる特定の例示の方法は、例えば、米国特許番号5,801,155および6,084,102において考察されている。特定の例示の小溝結合剤は、Epoch Biosciences,Bothell,Washingtonから入手可能であるものである。
【0123】
特定の実施形態に従うプライマーセットは、連結プローブセットの少なくとも1つのプローブのプライマー特異的部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのプライマーを含む。特定の実施形態では、プライマーセットは、少なくとも1つの第一のプライマーおよび少なくとも1つの第二のプライマーを含み、ここでこの少なくとも1つの第一のプライマーは、連結プローブセットの1つのプローブ(またはこのようなプローブの相補体)と特異的にハイブリダイズし、そしてプライマーセットのこの少なくとも1つの第二のプライマーは、同じ連結プローブセットの第二のプローブ(またはこのようなプローブの相補体)と特異的にハイブリダイズする。特定の実施形態では、プライマーセットの第一のプライマーおよび第二のプライマーは、異なるハイブリダイゼーション温度を有し、温度ベースの非対称PCR反応を可能にする。
【0124】
当業者は、本発明のプローブおよびプライマーは単数形で記載され得るが、文脈から理解されるように、単数形の用語によって、複数のプローブまたはプライマーが包含され得ることを理解する。従って、例えば、特定の実施形態では、連結プローブセットは、代表的に、複数の第一のプローブおよび複数の第二のプローブを含む。
【0125】
配列特異的プライマーおよびプローブを設計するための基準は、当業者に周知である。配列特異的アニーリングを提供するプライマー設計の詳細な説明は、とりわけ、DiffenbachおよびDveksler,PCR Primer,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,1995,およびKwokら(Nucl.Acid Res.18:999−1005,1990)において見い出され得る。プライマーの配列特異的部分は、適切な場合に、連結産物および増幅産物における相補的配列への特異的アニーリングを可能にするのに十分な長さである。
【0126】
特定の実施形態に従って、本発明のプライマーセットは、少なくとも1つの第二のプライマーを含む。特定の実施形態では、そのプライマーセット中の第二のプライマーは、配列特異的様式で連結産物または増幅産物の3’プライマー特異的部分とハイブリダイズするように設計される(例えば、図2Cを参照のこと)。特定の実施形態では、プライマーセットは、少なくとも1つの第一のプライマーをさらに含む。特定の実施形態では、プライマーセットのこの第一のプライマーは、配列特異的様式で同じ連結産物または増幅産物の5’プライマー特異的部分の相補体とハイブリダイズするように設計される。
【0127】
ユニバーサルプライマーまたはプライマーセットが、特定の実施形態に従って用いられ得る。特定の実施形態では、ユニバーサルプライマーまたはユニバーサルプライマーセットは、適切な場合では、反応において、プローブ、連結産物、または増幅産物の2つ以上とハイブリダイズする。ユニバーサルプライマーセットが特定の増幅反応(例えば、PCRであるが、これらに限定されない)において使用される場合、広範な鋳型濃度の範囲に対して、質的または量的な結果が得られ得る。
【0128】
特定の実施形態は、連結剤を含む。例えば、リガーゼは、適切な条件下で、DNAまたはRNA分子、またはハイブリッド中の隣接ヌクレオチドの3’−OHと5’−リン酸との間にホスホジエステル結合を形成する、酵素連結剤である。例示のリガーゼには、以下が含まれるが、これらに限定されない:Tth K294RリガーゼおよびTsp AK16Dリガーゼ。例えば、Luoら,Nucleic Acids Res.,24(14):3071−3078(1996);Tongら,Nucleic Acids Res.,27(3):788−794(1999);および公開PCT出願番号WO 00/26381を参照のこと。温度感受性リガーゼには、以下が含まれるが、これらに限定されない:T4 DNAリガーゼ、T7 DNA リガーゼ、およびE.coliリガーゼ。特定の実施形態では、熱安定性リガーゼには、以下が含まれるが、これらに限定されない:Taqリガーゼ、Tthリガーゼ、Tscリガーゼ、およびPfuリガーゼ。特定の熱安定性リガーゼは、好熱性または超好熱性生物(原核生物、真核生物、または古細菌生物が含まれるが、これらに限定されない)から得られ得る。特定のRNAリガーゼが、特定の実施形態において用いられ得る。特定の実施形態では、リガーゼは、RNA依存性DNAリガーゼであり、これは、RNA 鋳型およびDNA連結プローブと共に用いられ得る。このようなRNA依存性DNAリガーゼ活性を有する例示の(しかし、非限定的な)例は、T4 DNAリガーゼである。特定の実施形態では、連結剤は、「活性化」剤または還元剤である。
【0129】
化学連結剤には、限定されないが、以下が含まれる:活性化剤、縮合剤、および還元剤(例えば、カルボジイミド、臭化シアン(BrCN)、N−シアノイミダゾール、イミダゾール、1−メチルイミダゾール/カルボジイミド/シスタミン、ジチオトレイトール(DTT)、および紫外光。自己連結(すなわち、連結剤の不在下での自発性連結)もまた、本発明の特定の実施形態の範囲内である。化学的連結方法についての詳細なプロトコルおよび適切な反応基の説明は、とりわけ、以下において見い出され得る:Xuら,Nucleic Acid Res.,27:875−81(1999);GryaznovおよびLetsinger,Nucleic Acid Res.21:1403−08(1993);Gryaznovら,Nucleic Acid Res.22:2366−69(1994);KanayaおよびYanagawa,Biochemistry 25:7423−30(1986);LuebkeおよびDervan,Nucleic Acids Res.20:3005−09(1992);Sieversおよびvon Kiedrowski,Nature 369:221−24(1994);LiuおよびTaylor,Nucleic Acids Res.26:3300−04(1999);WangおよびKool,Nucleic Acids Res.22:2326−33(1994);Purmalら,Nucleic Acids Res.20:3713−19(1992);AshleyおよびKushlan,Biochemistry 30:2927−33(1991);ChuおよびOrgel,Nucleic Acids Res.16:3671−91(1988);Sokolovaら,FEBS Letters 232:153−55(1988);NaylorおよびGilham,Biochemistry 5:2722−28(1966);および米国特許番号5,476,930。
【0130】
特定の実施形態では、少なくとも1つのポリメラーゼが含まれる。特定の実施形態では、少なくとも1つの熱安定性ポリメラーゼが含まれる。例示の熱安定性ポリメラーゼには、以下が含まれるが、これらに限定されない:Taqポリメラーゼ、Pfxポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Vent(登録商標)ポリメラーゼ、Deep VentTMポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、UITmaポリメラーゼ、ならびにそれらの酵素活性変異体および改変体。これらのポリメラーゼの説明は、とりわけ、以下において見い出され得る:ワールドワイドウェブURL:the−scientist.com/yr1998/jan/profile 1_980105.html;ワールドワイドウェブURL:the−scientist.com/yr2001/jan/profile_010903.html;ワールドワイドウェブURL:the−scientist.com/yr2001/sep/profile2_010903.html;文献The Scientist 12(1):17(Jan.5,1998);および文献The Scientist 15(17):1(Sep.3,2001)。
【0131】
当業者は、開示されたプローブ、標的、およびプライマー配列の相補体、またはそれらの組み合わせが、本発明の特定の実施形態において用いられ得ることを理解する。例えば(限定されることなく)、ゲノムDNAサンプルは、標的配列およびその相補体の両方を含み得る。従って、特定の実施形態では、ゲノムサンプルが変性される場合、標的配列およびその相補体の両方とも、一本鎖配列としてサンプル中に存在する。特定の実施形態では、連結プローブは、適切な配列(標的配列またはその相補体のいずれか)に対して特異的にハイブリダイズするように設計され得る。
【0132】
(C.特定の例示の成分方法)
本発明に従う連結は、任意の酵素的または化学的プロセスを含む。ここでヌクレオチド間連結が、隣接して鋳型に対してハイブリダイズされる核酸配列の対向する末端の間に形成される。さらに、アニーリングされた核酸配列の対向する末端は、連結に対して適切でなければならない(連結に対する適合性が、用いられる連結方法の機能である)。ヌクレオチド間連結には、以下が含まれ得るが、これらに限定されない:ホスホジエステル結合形成。このような結合形成には、限定されることなく、以下が含まれ得る:DNAまたはRNAリガーゼ(例えば、バクテリオファージT4 DNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ、T7 DNAリガーゼ、Thermus thermophilus(Tth)リガーゼ、Thermus aquaticus(Taq)リガーゼ、またはPyrococcus furiosus(Pfu)リガーゼ)により酵素的に作出される結合形成。他のヌクレオチド間連結には、限定されることなく、以下が含まれ得る:適切な反応基間の共有結合形成(例えば、α−ハロアシル基とホスホチオエート基との間の結合で、チオホスホリルアセチルアミノ基を形成する;およびホスホロチオエート基とトシレート基またはヨージド基との間の結合で、5’−ホスホロチオエステル連結またはピロホスフェート連結を形成する)。
【0133】
特定の実施形態では、化学連結は、適切な条件下で、自発的(例えば、自己連結により)に生じ得る。あるいは、特定の実施形態では、「活性化」剤または還元剤が用いられ得る。活性化剤および還元剤の例には、限定されないが、以下が含まれる:カルボジイミド、臭化シアン(BrCN)、イミダゾール、1−メチルイミダゾール/カルボジイミド/シスタミン、N−シアノイミダゾール、ジチオトレイトール(DTT)、および紫外光。特定の実施形態に従う非酵素連結は、整列されたプローブのそれぞれの3’末端および5’末端にある特異的反応基を利用し得る。
【0134】
特定の実施形態では、連結は、一般には、少なくとも1サイクルの連結を含み、例えば、以下の逐次的な手順である:標的核酸配列におけるそれらのそれぞれの相補的領域に対して、連結に適切である第一のプローブおよび第二のプローブの標的特異的部分をハイブリダイズする工程;第一のプローブの3’末端を第二のプローブの5’末端と連結して、連結産物を形成する工程;および核酸二重鎖を変性して、標的核酸配列から連結産物を分離する工程。このサイクルは、反復されても反復されなくてもよい。例えば(限定されることなく)、連結反応を熱サイクリングすることにより、連結産物の量を線形に増大させる。
【0135】
特定の実施形態に従って、連結技術(例えば、ギャップ充填連結(ギャップ充填OLAおよびLCRが、限定されることなく、含まれる)、架橋オリゴヌクレオチド連結、および修正連結)を使用し得る。これらの技術の説明は、とりわけ、以下において見い出され得る:米国特許番号5,185,243、公開欧州特許出願EP 320308およびEP 439182、ならびに公開PCT特許出願WO 90/01069。
【0136】
特定の実施形態では、連結反応組成物を少なくとも1サイクルの連結に供することにより、続く増幅反応のための試験組成物を形成する。特定の実施形態では、連結後、試験組成物は、続く増幅反応において直接的に使用され得る。特定の実施形態では、増幅反応の前に、試験組成物は、精製技術に供され得る。この精製技術は、少なくとも1サイクルの連結後に存在し得た成分の全体より少なく含む試験組成物を生じる。例えば、特定の実施形態では、連結産物を精製し得る。
【0137】
特定の実施形態に従って連結産物を精製することは、少なくとも1サイクルの連結後に、少なくともいくらかの非連結プローブ、標的核酸配列、酵素、および/または補助剤を連結反応組成物から除去する任意のプロセスを包含する。このようなプロセスには、以下が含まれるが、これらに限定されない:分子量/サイズ排除プロセス(例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーまたは透析)、配列特異的ハイブリダイゼーションベースプルアウト法(sequence−specific hybridization−based pullout method)、アフィニティー捕捉技術、沈降、吸着、または他の核酸精製技術。当業者は、特定の実施形態における増幅前の連結産物の精製が、連結産物を増幅するために必要とされるプライマーの数量を減少し、従って、標的配列を検出するコストを減少させることを理解する。また、特定の実施形態では、増幅前の連結産物の精製は、増幅の間の生じ得る副反応を減少し得、そしてハイブリダイゼーションの間の非連結プローブからの競合を減少させ得る。
【0138】
本発明の特定の実施形態に従うハイブリダイゼーションベースプルアウト(Hybridization−based pullout)(HBP)は、1つのプローブ(またはその相補体)の少なくとも一部(例えば、プライマー特異的部分)に対して相補的であるヌクレオチド配列が、固体または粒状のプルアウト支持体に対して担持されるか、または固定化されるプロセスを含む(例えば、米国特許番号6,124,092を参照のこと)。特定の実施形態では、連結産物、標的配列、および非連結プローブを含む組成物が、プルアウト支持体に曝露される。連結産物は、適切な条件下で、支持体担持配列とハイブリダイズする。組成物の非担持成分は除去され、プルアウト支持体上の配列に対して相補的である配列を含まない連結反応組成物成分から連結産物を精製する。続いて、この精製された連結産物を支持体から除去し、そしてそれらを少なくとも1つのプライマーセットと合わせて、第一の増幅反応組成物を形成する。当業者は、特定の実施形態では、プルアウト支持体に対して異なる相補的配列を用いるさらなるサイクルのHBPが、非連結プローブの全てまたは実質的に全てを除去し得、連結産物をさらに精製することを理解する。
【0139】
本発明に従う増幅は、核酸配列を線形または指数関数的のいずれかで増幅するための広範な技術を包含する。例示の増幅技術には、以下が含まれるが、これらに限定されない:PCR、またはプライマー伸長工程を用いる任意の他の方法、ならびに転写、または少なくとも1つのRNA転写産物を生成する任意の他の方法。増幅の他の非限定的な例は、リガーゼ検出反応(LDR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)である。増幅方法は、熱サイクリングを含み得るか、または等温で実施され得る。用語「増幅産物」は、他に文脈から明らかでなければ、増幅反応、プライマー伸長反応、およびRNA転写反応の任意数のサイクルからの産物を含む。
【0140】
特定の実施形態では、増幅方法は、少なくとも1サイクルの増幅を含み、例えば、以下の逐次的な手順であるが、これらに限定されない:増幅反応の任意数のサイクルからの連結産物または増幅産物のプライマー特異的部分に対してプライマーをハイブリダイズする工程;ポリメラーゼを用いて鋳型依存様式でヌクレオチドの鎖を合成する工程;および新規に形成された核酸二重鎖を変性し、これら鎖を分離する工程。このサイクルは、反復されても反復されなくてもよい。
【0141】
特定の増幅技術の説明は、とりわけ、以下において見い出され得る:H.Ehrlichら,Science,252:1643−50(1991),M.Innisら,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,New York,NY(1990),R.Favisら,Nature Biotechnology 18:561−64(2000),およびH.F.Rabenauら,Infection 28:97−102(2000);SambrookおよびRussell,Ausbelら。
【0142】
本発明に従うプライマー伸長は、鋳型依存性ポリメラーゼを用いて5’から3’の方向に鋳型に対してアニーリングされるプライマーを伸長させることを含む、増幅プロセスである。特定の実施形態に従って、適切な緩衝液、塩、pH、温度、およびヌクレオチド三リン酸(それらのアナログおよび誘導体を含む)と共に、鋳型依存性ポリメラーゼは、アニーリングされたプライマーの3’末端で開始して、鋳型鎖に対して相補的なヌクレオチドを取り込み、相補鎖を生成する。特定の実施形態に従うプライマー伸長の詳細な説明は、とりわけ、Sambrookら,SambrookおよびRussell,およびAusbelらにおいて見い出され得る。
【0143】
特定の実施形態に従う転写は、RNAポリメラーゼを含む増幅プロセスであり、このポリメラーゼは、一本鎖または二本鎖の鋳型上でプロモーターと相互作用し、そして5’から3’への方向にRNAポリマーを生成する。特定の実施形態では、転写反応組成物は、転写因子をさらに含む。特定の実施形態に従うRNAポリメラーゼ(T3、T7、およびSP6ポリメラーゼを含むが、これらに限定されない)は、二本鎖プロモーターと相互作用し得る。特定の実施形態に従う転写の詳細な説明は、とりわけ、Sambrookら,Sambrook and Russell,およびAusbelらにおいて見い出され得る。
【0144】
増幅の特定の実施形態は、マルチプレックスPCRを用い得るが、ここでは、多重標的配列が同時に増幅される(例えば、H.Geadaら,Forensic Sci.Int.108:31−37(2000)およびD.G.Wangら,Science 280:1077−82(1998)を参照のこと)。
【0145】
特定の実施形態では、非対称PCRを用いる。特定の実施形態に従って、非対称PCRは、増幅反応組成物を含み、この組成物は、以下を含む:(i)少なくとも1つのプライマーセットであって、このセットには、(プライマーセット中の他方のプライマーに対して)過剰の1つのプライマーが存在する;(ii)少なくとも1つのプライマーセットで、ここでこのセットは、第一のプライマーのみまたは第二のプライマーのみを含む;(iii)少なくとも1つのプライマーセットであって、このセットは、所与の増幅条件の間に、一方の鎖の増幅を生じるプライマーを含み、かつ増幅が可能でない別のプライマーを含む;または(iv)少なくとも1つのプライマーセットであって、このセットは、上記(i)および(iii)の両方の説明に適合する。結果として、連結産物が増幅される場合、(その相補体に対して)増幅産物の一方の鎖が過剰に生成される。
【0146】
特定の実施形態では、少なくとも1つのプライマーセットを使用し得るが、ここでこれらプライマーの1つの融解温度(Tm50)は、他方のプライマーのTm50より高い。このような実施形態は、非同期型PCR(asynchronous PCR)(A−PCR)と呼ばれている。例えば、米国特許出願番号09/875,211(2001年6月5日出願)を参照のこと。特定の実施形態では、第一のプライマーのTm50は、第二のプライマーのTm50とは少なくとも4〜15℃異なる。特定の実施形態では、第一のプライマーのTm50は、第二のプライマーのTm50とは少なくとも8〜15℃異なる。特定の実施形態では、第一のプライマーのTm50は、第二のプライマーのTm50とは少なくとも10〜15℃異なる。特定の実施形態では、第一のプライマーのTm50は、第二のプライマーのTm50とは少なくとも10〜12℃異なる。特定の実施形態では、少なくとも1つのプライマーセットで、少なくとも1つの第一のプライマーのTm50は、少なくとも1つの第二のプライマーの融解温度とは、少なくとも約4℃、少なくとも約8℃、少なくとも約10℃、または少なくとも約12℃異なる。
【0147】
A−PCRの特定の実施形態では、プライマーセット中のプライマーのTm50の差異に加えて、また、プライマーセット中で、一方のプライマーが、他方のプライマーに対して過剰である。特定の実施形態では、プライマーセット中で、一方のプライマーは、他方のプライマーに対して5〜20倍過剰である。A−PCRの特定の実施形態では、プライマー濃度は、少なくとも50mMである。
【0148】
特定の実施形態に従うA−PCRでは、両プライマーがアニーリングし、そして両鎖が増幅されるように、第一のサイクルにおいて従来のPCRを使用し得る。しかし、続くサイクルにおいて温度を上昇させることにより、一方の鎖のみが増幅されるように、低い方のTmを有するプライマーを不能にし得る。従って、低い方のTmを有するプライマーが不能である、A−PCRの続くサイクルは、非対称の増幅を生じる。結果として、連結産物が増幅される場合、(その相補体に対して)増幅産物の一方の鎖が過剰に生成される。
【0149】
A−PCRの特定の実施形態に従って、増幅のレベルは、従来のPCRサイクリングの第一相の間のサイクル数を変更することにより制御され得る。このような実施形態では、初期の従来サイクルの数を変更することにより、より高い温度での続くPCRサイクル(ここでは、低い方のTmを有するプライマーが不能になる)に供され、二重鎖の量を変動させ得る。
【0150】
特定の実施形態では、A−PCRプロトコルは、一対のプライマーの使用を含み得、これら各々のプライマーは、少なくとも50mMの濃度を有する。特定の実施形態では、従来のPCR(ここでは、両プライマーともが増幅を生じる)が、最初の20〜30サイクル、実施される。特定の実施形態では、20〜30サイクルの従来のPCRの後、アニーリング温度は66〜70℃に上昇し、そしてPCRは、より高いアニーリング温度で5〜40サイクル実施される。このような実施形態では、このようなより高いアニーリング温度での5〜40サイクルの間、低い方のTmのプライマーが不能となる。このような実施形態では、より高いアニーリング温度での第二相のPCRサイクルの間に、非対称増幅が生じる。
【0151】
特定の実施形態では、非対称再増幅を用いる。特定の実施形態に従って、非対称の再増幅は、第二の増幅プロセスにおける一本鎖増幅産物の生成を含む。特定の実施形態では、第一の増幅プロセスの二本鎖増幅産物が、非対称再増幅プロセスにおける増幅標的として働く。特定の実施形態では、非同期型PCRを用いて非対称再増幅を達成し得、ここでこのPCRでは、初期サイクルのPCRが従来どおりに2つの鎖を増幅し、そして続くサイクルが、上述したようにプライマーセットのプライマーの一方を不能にするより高いアニーリング温度で実施される。特定の実施形態では、第二の増幅反応組成物は、少なくとも1つのプライマーセットを含み、このセットは、少なくとも1つの第一のプライマーか、またはプライマーセットの少なくとも1つの第二のプライマーかを含むが、代表的にはその両方ともを含むものではない。当業者は、特定の実施形態では、非対称再増幅がまた、プライマーセット中のプライマーが等モル比で存在しない場合に、最終的に生じることを理解する。特定の非対称再増幅方法では、代表的には、一本鎖アンプリコンのみが生成される。これは、第二の増幅反応組成物が、各プライマーセットからの第一のプライマーのみもしくは第二のプライマーのみを含むか、またはプライマーセットからの第一のプライマーおよび第二のプライマーを非等モル比で含むからである。
【0152】
特定の実施形態では、さらなるポリメラーゼもまた、第二の増幅反応組成物の一成分であり得る。特定の実施形態では、第一の増幅組成物から、第二の増幅産物を合成するのに十分な残余ポリメラーゼが存在し得る。
【0153】
増幅反応を最適化する方法は、当業者に周知である。例えば、PCRは、アニーリング、重合、および変性のための時間および温度を変更することにより、ならびに反応組成物中の緩衝液、塩、および他の試薬を変更することにより最適化されることが周知である。最適化はまた、用いられる増幅プライマーの設計によって影響され得る。例えば、プライマーの長さは、G−C:A−T比と同様に、プライマーアニーリングの効率を変化させ得、従って、増幅反応を変化させる。James G.Wetmur、「Nucleic Acid Hybrids,Formation and Structure」、Molecular Biology and Biotechnology,605〜8頁(Robert A.Meyers編、1995)を参照のこと。
【0154】
特定配列が存在するか否かを検出するために、特定の実施形態では、標識プローブが増幅反応中に含まれる。特定の実施形態に従って、標識プローブは、反応における特異的核酸配列の存在もしくは不在(または量)を示す。これらには、5’−ヌクレアーゼプローブ、切断RNAプローブ、構造特異的ヌクレアーゼプローブ、およびハイブリダイゼーション依存性プローブが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、標識プローブは、連結要素を介して(例えば、特異的オリゴヌクレオチドを介して)クエンチング分子に連結された蛍光色素を含む。このようなシステムの例は、例えば、米国特許番号5,538,848および5,723,591において記載されている。
【0155】
特定の実施形態に従う適切な標識プローブの他の例は、i−プローブ、スコルピオンプローブ、エクリプスプローブなどである。例示であるが限定ではないプローブが、例えば、以下において考察されている:Whitcombeら,Nat.Biotechnol.,17(8):804−807(1999)(スコルピオンプローブを含む);Thelwellら,Nucleic Acids Res.,28(19):3752−3761(2000)(スコルピオンプローブを含む);Afoninaら,Biotechniques,32(4):(2002)(エクリプスプローブを含む);Liら「A new class of homogeneous nucleic acid probes based on specific displacement hybridization」,Nucleic Acids Res.,30(2):E5(2002);Kandimallら,Bioorg.Med.Chem.,8(8):1911−1916(2000);Isacssonら,Mol.Cell.Probes,14(5):321−328(2000);Frenchら,Mol.Cell.Probes,15(6):363−374(2001);およびNurmiら,「A new label technology for the detection of specific polymerase chain reaction products in a closed tube」,Nucleic Acids Res.,28(8),E28(2000)。
【0156】
特定の実施形態では、放射された光に応じて蛍光シグナルを与える標識プローブの量は、代表的には、増幅反応において生成される核酸の量に関連する。従って、特定の実施形態では、蛍光シグナルの量は、増幅反応において作出される産物の量に関連される。従って、このような実施形態では、蛍光インジケーターからの蛍光シグナルの強度を測定することにより、増幅産物の量を測定し得る。特定の実施形態に従って、内部標準を用いて、蛍光シグナルにより示される増幅産物を定量し得る。例えば、米国特許番号5,736,333を参照のこと。
【0157】
蛍光インジケーターを含有する組成物を用いた熱サイクリング反応の実施、特定の波長の光線の放射、蛍光色素の強度の読み取り、および各サイクル後の蛍光の強度の呈示を行い得るデバイスが開発されている。熱サイクラー、光線放射器、および蛍光シグナル検出器を備えるデバイスが、例えば、米国特許番号5,928,907;6,015,674;および6,174,670において記載されており、そしてこれらには、以下が含まれるが、これらに限定されない:ABI Prism(登録商標)7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster City,California)およびABI GeneAmp(登録商標)5700 Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster City,California)。
【0158】
特定の実施形態では、これらの各々の機能は、別々のデバイスによって実施され得る。例えば、増幅のためにQ−ベータレプリカーゼ反応を用いる場合、この反応は、熱サイクラーで行われなくてもよいが、特定の波長で放射される光線、蛍光シグナルの検出、ならびに増幅産物の量の算出および呈示を含み得る。
【0159】
特定の実施形態では、熱サイクリングと蛍光検出とのデバイスの組み合わせが、サンプル中での標的核酸配列の正確な定量のために使用され得る。特定の実施形態では、蛍光シグナルは、1つ以上の熱サイクルの間および/または後に検出および呈示され得、従って、反応が「リアルタイム」で生じるにつれて増幅産物をモニタリングすることを可能にする。特定の実施形態では、標的核酸配列のどれほどが増幅前にサンプル中に存在したかを算出する、増幅サンプルの量および増幅サイクルの数を使用し得る。
【0160】
特定の実施形態に従って、単に、サンプル中の標的核酸配列の存在を示すために十分な所定数のサイクル後に、増幅産物の量をモニタリングし得る。当業者は、任意の所与のサンプルタイプ、プライマー配列、および反応条件について、所与の標的ポリヌクレオチドの存在を決定するために、どれだけのサイクルが十分であるかを容易に決定し得る。
【0161】
特定の実施形態に従って、増幅産物は、所与の数のサイクルが完了するとすぐに、ポジティブまたはネガティブとしてスコア付けされ得る。特定の実施形態では、結果は、データベースに対して直接的に電子的に伝達されて、表にまとめられ得る。従って、特定の実施形態では、必要な時間および労働力を少なくして、多数のサンプルがプロセシングおよび分析され得る。
【0162】
特定の実施形態に従って、異なる標識プローブは、異なる標識核酸配列間を識別し得る。このようなプローブの非限定的な例は、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブ(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ分子)であり、このプローブでは、蛍光分子が、オリゴヌクレオチド連結要素を介して蛍光クエンチング分子に付着されている。特定の実施形態では、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブのオリゴヌクレオチド連結要素は、アドレス可能部分またはその相補体の特異的配列に結合する。特定の実施形態では、異なる5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブ(各々、異なる波長で蛍光する)が、同じ増幅反応内の異なる増幅産物の間を識別し得る。
【0163】
例えば、特定の実施形態では、2つの異なる波長(WLおよびWL)で蛍光し、そして2つの異なる連結産物(それぞれA’、B’)の2つの異なるアドレス可能部分に対して特異的である、2つの異なる5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブを使用し得る。連結産物A’は、標的核酸配列Aがサンプル中にある場合に形成され、そして連結産物B’は、標的核酸配列Bがサンプル中にある場合に形成される。特定の実施形態では、連結産物A’および/またはB’は、適切な標的核酸配列がサンプル中に存在しなくても形成し得るが、このような連結は、適切な標的核酸配列がサンプル中にある場合よりも測定可能により少ない程度に生じる。増幅後、検出されるシグナルの波長に基づいて、どの特異的標的核酸配列がサンプル中に存在するかを決定し得る。従って、波長WLのみの適切な検出可能シグナル値が検出される場合、サンプルが標的核酸配列Aを含むが、標的核酸配列Bを含まないことを知る。波長WLおよびWLの両方の適切な検出可能シグナル値が検出される場合、サンプルが標的核酸配列Aおよび標的核酸配列Bの両方を含むことを知る。
【0164】
(D.標的検出の特定の例示の実施形態)
本発明は、連結および増幅反応を用いる、サンプル中の標的核酸配列の存在もしくは不在の検出(または定量)のための方法、試薬、およびキットに関する。特定標的核酸配列がサンプル中に存在する場合、アドレス可能部分を含む連結産物が形成される。増幅反応の間に相補的配列が存在するか存在しないかに依存して、異なる検出可能シグナル値を提供する標識プローブが用いられる。特定の実施形態では、標識プローブは、アドレス可能部分の配列と同じであるか、またはアドレス可能部分の配列に対して相補的である配列を含むように設計される。
【0165】
特定の実施形態では、1つ以上の核酸種が、直接的にまたは中間体を介して(例えば、逆転写によりmRNAから生成されたcDNA標的を介して)のいずれかで、連結および増幅反応に供される。特定の実施形態では、初期核酸は、mRNAを含み、そして逆転写反応が実施されて少なくとも1つのcDNAを生成し、続いて、少なくとも1つの連結反応および少なくとも1つの増幅反応を行い得る。特定の実施形態では、DNA連結プローブは、標的RNAに対してハイブリダイズし、そしてRNA依存性DNAリガーゼが、連結反応、続いて増幅反応において用いられる。連結産物および増幅産物は、標識プローブを用いて検出(または定量)され得る。
【0166】
特定の実施形態では、検出されるべき各標的核酸配列について、連結プローブセット(少なくとも1つの第一のプローブおよび少なくとも1つの第二のプローブを含む)が、サンプルと合わされて、連結反応組成物を形成する。特定の実施形態では、連結組成物は、連結剤をさらに含み得る。特定の実施形態では、各連結プローブセット中の第一のプローブおよび第二のプローブは、一緒に連結されるのに適しており、そして標的核酸配列中に存在する隣接する配列に対してハイブリダイズするように設計される。標的核酸配列がサンプル中に存在する場合、第一のプローブおよび第二のプローブは、適切な条件下で、標的核酸配列において隣接した領域に対してハイブリダイズする(例えば、図2A中の標的核酸配列1に対してハイブリダイズされるプローブ2および3を参照のこと)。図2Aにおいて、本明細書中に示される例示目的のために、標的核酸配列(1)は、5’プライマー特異的部分(25)、アドレス可能部分(4)、および標的特異的部分(15a)を含む第一のプローブ(2)と、ならびに3’プライマー特異的部分(35)、標的特異的部分(15b)、および連結のための遊離5’リン酸基(「P」)を含む第二のプローブ(3)とハイブリダイズされるとして図示される。
【0167】
特定の実施形態では、隣接してハイブリダイズされたプローブは、適切な条件下で、一緒に連結されて、連結産物を形成し得る(例えば、図2B中の連結産物6を参照のこと)。図2Bは、連結産物(6)を図示し、これは、第一のプローブ(2)および第二のプローブ(3)の連結から生成された。5’プライマー特異的部分(25)、アドレス可能部分(4)、および3’プライマー特異的部分(35)を含む連結産物(6)が示される。特定の実施形態では、標的核酸配列(1)および連結産物(6)を含む二重鎖が、例えば加熱によって、変性されると、連結産物(6)が遊離される。
【0168】
特定の実施形態では、連結産物6、少なくとも1つのプライマーセット7、ポリメラーゼ8、および標識プローブ26を含む増幅反応組成物を形成する(例えば、図2Cを参照のこと)。図示された実施形態における標識プローブ26は、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブであって、このプローブは、連結産物のアドレス可能部分の配列に対して相補的である配列を含むオリゴヌクレオチド連結要素を介して、蛍光部分(F)に連結されたクエンチング部分(Q)を含む。第一の増幅サイクルでは、第二のプライマー7’(連結産物6の3’プライマー特異的部分35の配列に対して相補的である配列を含む)は、連結産物6とハイブリダイズし、そしてDNAポリメラーゼおよびデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の存在下で、鋳型依存様式で伸長される。ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性は、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブの切断を生じ、これにより、蛍光部分(F)がクエンチング部分(Q)によってもはやクエンチングされず、蛍光シグナルが検出される。5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブからの蛍光シグナルの検出は、サンプル中の標的核酸配列の存在を示す。
【0169】
特定の実施形態では、標的核酸配列がサンプル中に存在していなかったのであれば、連結反応の間で、アドレス可能部分ならびに5’プライマー特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む連結産物は形成されない。従って、連結産物または増幅産物に結合する標識プローブはなく、増幅反応の間に標識プローブの切断はない。(標識プローブのいくらかは、非連結の連結プローブに対してハイブリダイズし得る。)従って、増幅反応の間または後に検出可能シグナルがないことは、サンプル中に標的核酸配列がないことを示す。特定の実施形態では、連結産物は、適切な標的核酸配列がサンプル中になくても形成し得るが、このような連結は、サンプル中に適切な標的核酸配列がある場合よりも測定可能により少ない程度に生じる。特定のこのような実施形態では、適切な標的核酸配列を含むサンプルと適切な標識核酸配列を含まないサンプルとの間を区別するために、検出可能シグナル値間の適切な閾値差を設定し得る。
【0170】
特定の実施形態は、図2Aから2Cに示したものと実質的に同じであり得るが、但し5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブのオリゴヌクレオチド連結要素が、連結産物のアドレス可能部分の配列(アドレス可能部分の配列に対して相補的である配列ではなく)を含むことを除く。例えば、図2Dおよび2E中の標識プローブ27を参照のこと。
【0171】
第一の増幅サイクルでは、第二のプライマー7’(連結産物6の3’プライマー特異的部分35の配列に対して相補的である配列を含む)は、連結産物6とハイブリダイズし、そしてDNAポリメラーゼおよびデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の存在下で、鋳型依存様式で伸長される。第一の増幅サイクルは、連結産物の5’プライマー特異的部分(25)の相補体および連結産物のアドレス可能部分(4)の相補体を含む二本鎖産物を生成する(図2Dを参照のこと)。
【0172】
二本鎖プライマー伸長産物は、変性され、標識プローブ27(これは、連結産物のアドレス可能部分の配列を含むオリゴヌクレオチド連結要素を含む)を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の1つ以上のサイクルに供される(図2Eを参照のこと)。連結産物の5’プライマー特異的部分の配列を含むプライマーは、5’プライマー特異的部分の配列に対して相補的である配列25’を含む増幅産物とハイブリダイズし、そしてDNAポリメラーゼおよびデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の存在下で、鋳型依存様式で伸長される。例えば、図2Eを参照のこと。ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性は、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブの切断を生じ、これにより、蛍光部分(F)は、クエンチング部分(Q)によってもはやクエンチングされず、蛍光シグナルが検出される。5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブからの蛍光シグナルの検出は、サンプル中の標的核酸配列の存在を示す。
【0173】
特定の実施形態では、標的核酸配列がサンプル中に存在しない場合には、連結反応の間に、アドレス可能部分ならびに5’プライマー特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む連結産物は形成されない。従って、このような連結産物のアドレス可能部分の相補体を含む増幅産物は形成されない。従って、連結産物または増幅産物に結合する標識プローブはなく、増幅反応の間に標識プローブの切断はない。従って、増幅反応の間または後に検出可能シグナルがないことは、サンプル中に標的核酸配列がないことを示す。特定の実施形態では、連結産物は、適切な標的核酸配列がサンプル中にない場合でも形成し得るが、このような連結は、サンプル中に適切な標的核酸配列がある場合よりも測定可能により少ない程度に生じる。特定のこのような実施形態では、適切な標的核酸配列を含むサンプルと適切な標識核酸配列を含まないサンプルとを区別するために、検出可能シグナル値間の適切な閾値差を設定し得る。
【0174】
図2におけるいずれかの実施形態において増幅産物が二本鎖分子として存在する場合、特定の実施形態では、その後の増幅サイクルは、この分子を指数関数的に増幅し得る。特定の実施形態では、蛍光シグナルの強度のレベルを決定することにより、サンプル中に存在する標的核酸を定量し得る。
【0175】
図3Aに示されるように、特定の実施形態では、cDNAコピー1’を生成するために、mRNAが使用される。このcDNAは、連結プローブセットの第一のプローブおよび第二のプローブがハイブリダイズする標的核酸配列としての役割を果たす(図3Bを参照のこと)。第一のプローブ22は、5’プライマー特異的部分(25)および標的特異的部分15aを含み、そして第二のプローブ23は、標的特異的部分15b、アドレス可能部分4、および3’プライマー特異的部分(35)を含む。適切な条件下で、隣接してハイブリダイズされたプローブは、連結産物28を形成し得、この連結産物は、5’プライマー特異的部分(25)、標的特異的部分15aおよび15b、アドレス可能部分4、および3’プライマー特異的部分(35)を含む(図3Cを参照のこと)。
【0176】
標的核酸配列1’および連結産物28により形成された二重鎖が変性されると、特定の実施形態では、加熱により、連結産物が遊離される。適切なプライマーセットの存在下かつ適切な条件下で、3’プライマーは、連結産物28の3’プライマー特異的部分35とハイブリダイズする。3’プライマーは、DNAポリメラーゼ8の存在下で伸長され、連結産物の5’プライマー特異的部分(25)の相補体(25’)および連結産物のアドレス可能部分(4)の相補体(4’)を含む二本鎖産物を生成する(図3Dを参照のこと)。
【0177】
二本鎖プライマー伸長産物は、変性され、そして標識プローブ27を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の1つ以上のサイクルに供される(例えば、図3Eを参照のこと)。図示される実施形態における標識プローブ27は、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブであり、これは、連結産物のアドレス可能部分の配列を含むオリゴヌクレオチドによって蛍光部分(F)に連結されたクエンチング部分(Q)を含む。連結産物の5’プライマー特異的部分の配列を含むプライマーは、5’プライマー特異的部分の配列に対して相補的である配列25’を含む増幅産物とハイブリダイズし、そしてDNAポリメラーゼおよびデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の存在下で、鋳型依存様式で伸長される。ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性は、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブの切断を生じ、これにより、蛍光部分(F)は、クエンチング部分(Q)によってもはやクエンチングされず、蛍光シグナルが検出される(例えば、図3Eを参照のこと)。5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブからの蛍光シグナルの検出は、サンプル中の標的核酸配列の存在を示す。
【0178】
特定の実施形態では、標的核酸配列がサンプル中に存在していない場合には、連結反応の間に、アドレス可能部分ならびに5’プライマー特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む連結産物は形成されない。従って、このような連結産物の相補体を含む増幅産物は形成されない。従って、連結産物または増幅産物に結合する標識プローブはなく、増幅反応の間に標識プローブの切断はない。従って、増幅反応の間または後に検出可能シグナルがないことは、サンプル中に標的核酸配列がないことを示す。特定の実施形態では、連結産物は、適切な標的核酸配列がサンプル中にない場合でも形成し得るが、このような連結は、サンプル中に適切な標的核酸配列がある場合よりも測定可能により少ない程度に生じる。特定のこのような実施形態では、適切な標的核酸配列を含むサンプルと適切な標識核酸配列を含まないサンプルとを区別するために、検出可能シグナル値間の適切な閾値差を設定し得る。
【0179】
特定の実施形態は、図3Aから3Eに示したものと実質的に同じであり得るが、但し5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブのオリゴヌクレオチド連結要素が、(アドレス可能部分の配列ではなく)連結産物のアドレス可能部分の配列に対して相補的である配列を含むことを除く。例えば、図3Fの標識プローブ26を参照のこと。
【0180】
第一の増幅サイクルでは、第二のプライマー7’(連結産物28の3’プライマー特異的部分35の配列に対して相補的である配列を含む)は、連結産物28とハイブリダイズし、そしてDNAポリメラーゼおよびデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の存在下で、鋳型依存様式で伸長される。ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性は、5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブの切断を生じ、これにより、蛍光部分(F)は、クエンチング部分(Q)によってもはやクエンチングされず、蛍光シグナルが検出される。
【0181】
特定の実施形態では、連結していない第二の連結プローブが連結反応後に組成物から実質的に除去される場合には、第一の増幅サイクルからの蛍光シグナルの検出は、サンプル中の標的核酸配列の存在を示す。特定の実施形態では、連結反応後に、第一の連結プローブ上に含まれるが、第二の連結プローブ上には含まれない配列に対して相補的である固相上の核酸に、組成物を曝露することにより、連結していない第二のプローブを実質的に除去し得る。次いで、固相上で、連結していない第二の連結プローブから、ハイブリダイズされた連結産物および連結していない第一の連結プローブを分離し得る。
【0182】
連結していない第二の連結プローブが連結反応後に組成物から実質的に除去されない場合には、第一の増幅サイクルからの蛍光シグナルの検出は、サンプル中の標的核酸の存在を必ずしも示すわけではない。このような実施形態では、標識プローブは、連結していない第二の連結プローブおよび連結産物の両方に対してハイブリダイズする。また、ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性は、連結していない第二の連結プローブおよび連結産物の両方に対してハイブリダイズされる5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブの切断を生じる。従って、連結産物の存在にかかわらず、同じシグナルが検出される。
【0183】
しかし、このような実施形態では、標的核酸配列の存在もしくは不在を検出するために(または定量するために)、その後の増幅サイクルが用いられ得る。連結産物が存在しない場合、アドレス可能配列を含む配列の量は、その後の増幅サイクルと共に増大しない。連結していない第二の連結プローブの初期量のみが、標識プローブと相互作用して、シグナルを放射する。
【0184】
対照的に、連結産物を含む組成物を包含するその後の増幅サイクルは、アドレス可能部分を含む配列の量の増大を生じる。従って、標識プローブが相互作用する増幅産物の量が増大する。従って、特定の実施形態では、連結産物を含むサンプルと連結産物を含まないサンプルとを区別するために、検出可能シグナル値間の閾値差を設定し得る。特定の実施形態では、連結産物は、適切な標的核酸配列がサンプル中に存在しない場合でも形成し得るが、このような連結は、サンプル中に適切な標的核酸配列がある場合よりも測定可能により少ない程度に生じる。特定のこのような実施形態では、適切な標的核酸配列を含むサンプルと適切な標識核酸配列を含まないサンプルとを区別するために、検出可能シグナル値間の適切な閾値差を設定し得る。
【0185】
図3に図示される実施形態は、RNAの逆転写から生じるcDNAを用いるのではなく、単にサンプル中の標的DNAを用いることによって改変され得る。また、図3に図示される実施形態は、連結プローブがハイブリダイズする標的核酸配列としてRNAを用いることによって改変され得る。
【0186】
本願では、標識プローブからのシグナル値の閾値差が存在するか否かを決定するために増幅反応を用いるたびに、増幅反応が、探索される標的配列がサンプル中に含まれる場合にこのような閾値差を生じるような様式で実施される。以下の非限定的な例示の実施態は、この概念を説明する。
【0187】
第一の例示の実施形態では、以下の成分を含む連結プローブセットを用いる:5’プライマー特異的部分および標的特異的部分を含む第一のプローブ;ならびに標的特異的部分、アドレス可能部分、および3’プライマー特異的部分を含む第二のプローブ。標的核酸がサンプル中に存在する場合、連結反応の間に、第一のプローブと第二のプローブとが一緒に連結されて、連結産物を形成する。連結産物は、5’プライマー特異的部分、2つの標的特異的部分、アドレス可能部分、および3’プライマー特異的部分を含む。
【0188】
この実施形態では、増幅反応組成物を形成し、この組成物は、連結産物と、アドレス可能部分の配列を含む5’ヌクレアーゼ蛍光プローブと、5’プライマー特異的部分および3’プライマー特異的部分についての適切なプライマーのセットとを含む。5’ヌクレアーゼ蛍光プローブは、相補配列に対してハイブリダイズされていない場合に第一の検出可能シグナル値を有する。増幅反応としてPCRを用いる場合、第一の増幅サイクルは、第一の増幅サイクルの間および/または後に、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の閾値差を生じない。5’ヌクレアーゼ蛍光プローブは連結産物のアドレス可能部分と同じ配列を有するので、アドレス可能部分にはハイブリダイズしない。そのため、閾値差は検出されない。従って、第一の増幅サイクルの間に、5’ヌクレアーゼ蛍光プローブの切断はない。
【0189】
しかし、第一の増幅サイクルは、その3’末端に、アドレス可能部分の相補体および5’プライマー特異的部分の相補体を含む増幅産物を生じる。従って、5’ヌクレアーゼ蛍光プローブは、第二の増幅サイクルの間に、増幅産物に対してハイブリダイズし、そして切断される。従って、この例示の実施形態では、第二の増幅サイクルは、第二の増幅サイクルの間および/または後に、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の閾値差を生じる。従って、このような実施形態では、シグナル値における閾値差があるか否かを決定するために使用される増幅反応は、少なくとも2回のPCR増幅サイクルを含む。
【0190】
第二の例示の実施形態では、以下の成分を含む連結プローブセットを用いる:5’プライマー特異的部分、アドレス可能部分、および標的特異的部分を含む第一のプローブ;および標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む第二のプローブ。標的核酸がサンプル中に存在する場合、連結反応の間に、第一のプローブと第二のプローブとが一緒に連結されて、連結産物を形成する。連結産物は、5’プライマー特異的部分、アドレス可能部分、2つの標的特異的部分、および3’プライマー特異的部分を含む。
【0191】
この実施形態では、増幅反応組成物を形成し、この組成物は、連結産物と、アドレス可能部分の配列に対して相補的である配列を含む5’ヌクレアーゼ蛍光プローブと、5’プライマー特異的部分および3’プライマー特異的部分についての適切なプライマーのセットとを含む。5’ヌクレアーゼ蛍光プローブは、相補配列に対してハイブリダイズされていない場合に第一の検出可能シグナル値を有する。増幅反応としてPCRを用いる場合、第一の増幅サイクルは、第一の増幅サイクルの間および/または後に、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の閾値差を生じる。5’ヌクレアーゼ蛍光プローブは、連結産物のアドレス可能部分の配列に対して相補的である配列を有するので、アドレス可能部分に対してハイブリダイズし、そして第一の増幅サイクルは、5’ヌクレアーゼ蛍光プローブの切断を生じる。そのため、閾値差が検出される。従って、このような実施形態では、シグナル値における閾値差が存在するか否かを決定するために使用される増幅反応は、少なくとも1回のPCR増幅サイクルを含む。
【0192】
第三の例示の実施形態では、以下の成分を含む連結プローブセットを用いる:5’プライマー特異的部分および標的特異的部分を含む第一のプローブ;および標的特異的部分、アドレス可能部分、および3’プライマー特異的部分を含む第二のプローブ。標的核酸がサンプル中に存在する場合、連結反応の間に、第一のプローブおよび第二のプローブが一緒に連結されて、連結産物を形成する。連結産物は、5’プライマー特異的部分、2つの標的特異的部分、アドレス可能部分、および3’プライマー特異的部分を含む。
【0193】
この実施形態では、増幅反応組成物を形成し、この組成物は、連結産物と、アドレス可能部分の配列を含むハイブリダイゼーション依存性プローブと、5’プライマー特異的部分および3’プライマー特異的部分についての適切なプライマーのセットとを含む。ハイブリダイゼーション依存性プローブは、相補配列に対してハイブリダイズされていない場合に第一の検出可能シグナル値を有する。この実施形態では、PCRが増幅反応として使用される。
【0194】
連結していないプローブが第一の増幅サイクル前に増幅反応組成物から実質的に除去されない場合、第一のサイクルの間および/または後に閾値差は検出されない。探索される連結産物の存在にかかわらず、第一の増幅サイクルが、ハイブリダイゼーション依存性プローブがハイブリダイズするのと同じ数の増幅産物を生じるので、閾値差は検出されない。このような実施形態における連結していないプローブおよび連結産物はいずれも、第一の増幅サイクルで伸長を開始する同じ3’プライマー特異的部分を含み、そして同じアドレス可能部分を含む。従って、第一の増幅サイクル後に、ハイブリダイゼーション依存性プローブが増幅産物におけるアドレス可能部分の相補体に対してハイブリダイズする場合、連結産物が存在するか否かにかかわらず、同じシグナル値が生じる。
【0195】
しかし、連結産物が増幅されるときに、アドレス可能部分の配列に対して相補的な配列を有する増幅産物が指数関数的に増大する場合、その後の増幅サイクルにおいて検出可能シグナル値における閾値差が生じる。このようなその後のサイクルでは、連結産物が存在しない場合、このような増幅産物は、連結していないプローブの存在から、線形的に増大するのみである。連結産物とは異なり、連結していないプローブは、5’プライマー特異的部分を含まないので、このような線形増幅が生じる。
【0196】
第四の例示の実施形態では、以下の成分を含む連結プローブセットを用いる:5’プライマー特異的部分および標的特異的部分を含む第一のプローブ;および標的特異的部分、アドレス可能部分、および3’プライマー特異的部分を含む第二のプローブ。標的核酸がサンプル中に存在する場合、連結反応の間に、第一のプローブと第二のプローブとが一緒に連結されて、連結産物を形成する。連結産物は、5’プライマー特異的部分、2つの標的特異的部分、アドレス可能部分、および3’プライマー特異的部分を含む。
【0197】
この実施形態では、増幅反応組成物を形成し、連結産物と、アドレス可能部分の配列に対して相補的な配列を含むハイブリダイゼーション依存性プローブと、5’プライマー特異的部分および3’プライマー特異的部分についての適切なプライマーのセットとを含む。また、この実施形態では、増幅反応のサイクルの間に、ハイブリダイゼーション依存性プローブのうちのかなりの部分は切断されない。「ハイブリダイゼーション依存性プローブのうちのかなりの部分は切断されない」とは、増幅されている所定の核酸配列に対してハイブリダイズされるように設計されるハイブリダイゼーション依存性プローブの総数のうちの一部分をいい、これは、個々のプローブの一部分をいうのではない。特定の実施形態では、「切断されないハイブリダイゼーション依存性プローブのうちのかなりの部分」とは、これらハイブリダイゼーション依存性プローブの少なくとも90%が切断されないことを意味する。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション依存性プローブの少なくとも95%は切断されない。ハイブリダイゼーション依存性プローブは、それが、相補配列に対してハイブリダイズされない場合、第一の検出可能シグナル値を有する。この実施形態では、PCRが増幅反応として使用される。
【0198】
連結していないプローブが第一の増幅サイクル前に増幅反応組成物から実質的に除去されない場合、第一のサイクルの間および/または後に閾値差は検出されない。ハイブリダイゼーション依存性プローブは連結していない第二のプローブと連結産物との両方に対してハイブリダイズするので、閾値差は検出されない。第一の増幅サイクルは、連結産物のアドレス可能部分の配列に対して相補的である配列を有する増幅産物を生じる。従って、ハイブリダイゼーション依存性プローブは、第一の増幅サイクルで生成されたいかなる増幅産物に対してもハイブリダイズしない。
【0199】
しかし、検出可能シグナル値における閾値差が、第二の増幅サイクル後に生じる。なぜなら、この第二のサイクルは、連結産物が存在する場合にのみアドレス可能部分の配列を含むDNAの増大を生じるからである。従って、このような実施形態では、シグナル値における閾値差が存在するか否かを決定するために使用される増幅反応は、少なくとも2回のPCR増幅サイクルを含む。
【0200】
特定の実施形態に従って、各連結プローブセットにおける第一のプローブおよび第二のプローブは、標的配列の中心ヌクレオチドにすぐ隣接する配列に対して相補的であるように設計される(例えば、図6(1)中のプローブA、B、およびZを参照のこと)。図6中に示される実施形態では、連結プローブセットの2つの第一のプローブAおよびBは、中心相補体に異なるヌクレオチドを含み、かつ中心相補体での各異なるヌクレオチドに対する異なるアドレス可能部分を含む。それは、プローブセットおよびサンプルを含む連結反応組成物を形成する。
【0201】
標的配列がサンプル中に存在する場合、第一のプローブおよび第二のプローブは、適切な条件下で、標的上の隣接する領域に対してハイブリダイズする(例えば、図6(2)を参照のこと)。中心相補体が標的に対して塩基対合する場合、適切な連結剤の存在下で、2つの隣接してハイブリダイズされたプローブが一緒に連結されて、連結連結連結産物を形成し得る(例えば、図6(3)を参照のこと)。特定の実施形態では、第一のプローブの中心相補体が標的に対して塩基対合しない場合、そのミスマッチのプローブを含む連結連結産物は形成されない(例えば図6(2)〜6(4)中のプローブBを参照のこと)。
【0202】
図6(2)および6(3)において、第一のプローブBは、標的に対してハイブリダイズされない。特定の実施形態では、ミスマッチの末端中心相補体を有するプローブが第二のプローブに連結しないことは、ミスマッチを有するプローブが、用いられる条件下で標的に対してハイブリダイズしないことに起因し得る。特定の実施形態では、ミスマッチの末端中心相補体を有するプローブの、第二のプローブへの連結の失敗は、ミスマッチを有するプローブが標的に対してハイブリダイズされるが、中心相補体のヌクレオチドが標的に対して塩基対合しない場合に生じ得る。
【0203】
特定の実施形態では、連結反応に供される反応容量は、試験組成物を形成する。特定の実施形態では、次いで、以下:試験組成物、少なくとも1つのプライマーセット、ポリメラーゼ、および異なる第一のプローブの各々に対する異なる標識プローブ(LBP−AおよびLBP−B)、を含む増幅反応組成物を形成する。ここで、この異なる標識プローブは、検出可能に異なるシグナルを提供し得る(例えば、図6(4)を参照のこと)。図示された実施形態における標識プローブは、異なる5’−ヌクレアーゼ蛍光プローブであり、これは、異なるオリゴヌクレオチド連結要素にを通じて検出可能に異なる蛍光部分(F)に連結されたクエンチング部分(Q)を含む。異なるオリゴヌクレオチド連結要素は、異なる第一の連結プローブの異なるアドレス可能部分の1つに対して相補的である配列を含む。
【0204】
図示された実施形態では、第一の標識プローブ(LBP−A)は、オリゴヌクレオチド連結要素を通じてクエンチング部分(Q)に連結された第一の蛍光部分(FA)を含み、ここでこの連結要素は、第一のプローブAのアドレス可能部分(ASP−A)の配列に対して相補的である配列を含む。図示された実施形態では、第二の標識プローブ(LBP−B)は、オリゴヌクレオチド連結要素を通じてクエンチング部分(Q)に連結された第二の蛍光部分(FB)を含み、ここでこの連結要素は、第一のプローブBのアドレス可能部分(ASP−B)の配列に対して相補的である配列を含む。これら異なる各々の標識プローブの蛍光部分は、クエンチング部分によってクエンチングされない場合、互いから検出可能に異なるシグナルを放射する。
【0205】
特定の適切な塩、緩衝液、およびヌクレオチド三リン酸において、増幅反応組成物は、少なくとも1つの増幅サイクルに供される。第一の増幅サイクルでは、第二のプライマー(P2)(これは、連結連結産物の3’プライマー特異的部分の配列に対して相補的な配列を含む)は、連結連結産物とハイブリダイズし、そして鋳型依存様式で伸長されて二本鎖分子を作製する。
【0206】
また、第一の増幅サイクルの間、ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性は、連結連結連結産物のアドレス可能部分に対してハイブリダイズされる標識プローブの切断をもたらす(例えば、図6(5)中の標識プローブLBP−Aを参照のこと)。切断は、もはやクエンチング部分(Q)によってクエンチングされない蛍光部分(FA)を生じ、そして蛍光シグナルが検出される。蛍光部分(FA)からの蛍光シグナルの検出は、連結連結連結産物の中心相補体でのヌクレオチド(T)に対して相補的である中心ヌクレオチド(A)を有する標的核酸配列が、サンプル中に存在することを示す。
【0207】
この例では、サンプル中のどの標的核酸配列も、プローブBの中心相補体のヌクレオチドに対して相補的である中心ヌクレオチド(C)を有しない。従って、この例では、プローブBのアドレス可能部分および3’プライマー特異的部分を含む連結連結産物は形成されない。従って、蛍光部分(FB)を含む標識プローブ(LBP−B)は、連結連結産物または増幅産物に結合せず、増幅反応の間に、標識プローブ(LBP−B)の切断はない。従って、増幅反応の間または後に蛍光部分(FB)からの検出可能シグナルがないことは、中心ヌクレオチド(C)を有する標的核酸配列がサンプル中にないことを示す。特定の実施形態では、中心ヌクレオチドに対して相補的でない中心相補体を有するプローブの連結が生じ得るが、このような連結は、中心ヌクレオチドに対して相補的である中心相補体を有するプローブの連結よりも測定可能により少ない程度に生じる。特定のこのような実施形態では、適切な標的核酸配列を含むサンプルと適切な標的核酸配列を含まないサンプルとの間を区別するために、検出可能シグナル値間の適切な閾値差を設定し得る。
【0208】
特定の実施形態では、5’−ヌクレアーゼプローブがアドレス可能部分またはアドレス可能部分の相補体に対してハイブリダイズする場合、クエンチング部分が、シグナルが検出され得るように、シグナル部分から十分に分離され得る。特定の実施形態では、このようなシグナルの検出可能シグナル値(切断前)は、5’−ヌクレアーゼプローブの切断後の検出可能シグナル値よりも低い。従って、特定のこのような実施形態では、検出可能シグナル値における閾値差を設定して、切断を生じることのない、所与の配列に対する5’−ヌクレアーゼプローブのハイブリダイゼーションの後に検出されるシグナル値が、この設定された閾値差を生じないようにし得る。しかし、5’−ヌクレアーゼプローブの切断と共に検出されるシグナル値は、この設定された閾値差を生じる。
【0209】
特定の実施形態では、後に続く増幅サイクルは、指数関数的増幅を生じ得る(例えば、図6(4)〜(11)を参照のこと)。従って、各サイクルと共に、標識プローブ(LBP−A)の切断から検出されるシグナル値は増大し、一方、標識プローブ(LBP−B)から検出されるシグナル値は実質的に同じままである。
【0210】
特定の実施形態では、一本鎖増幅産物は、例えば(限定されることなく)、非対称PCR、非同期型PCR、プライマー伸長、または非対称再増幅によって、合成される。非対称PCRの例示的の実施形態では、増幅反応組成物は、少なくとも1つのプライマーセットを用いて調製され、ここで少なくとも1つの第一のプライマーもしくは少なくとも1つの第二のプライマーのいずれか(しかし、その両方ではない)が、過剰に添加される。従って、特定の実施形態では、過剰プライマーと限定プライマーとの比が、およそ100:1であり得る。当業者は、特定の実施形態に従うプライマーの最適量は経験的に決定され得ることを認識する。特定の実施形態では、量は、限定プライマーについて約2〜約50nMの範囲であり、そして過剰プライマーについて約100〜約900nMの範囲である。経験的には、特定の実施形態では、プライマーセット中の一方のプライマーの濃度は、代表的に、増幅反応組成物100μl当たり5pmol以下に保たれる。
【0211】
特定の実施形態では、両プライマーとも最初に、PCRの開始時には相当に過度で存在するので、両鎖とも指数関数的に増幅される。しかし、特定の実施形態では、増幅サイクルの全てを完了する前に、限定プライマーが消耗される。後に続く増幅サイクルの間、一方の鎖のみが増幅され、従って、過剰の一本鎖増幅産物を生成する。
【0212】
例えば(しかし、限定されることなく)、特定の実施形態では、約40〜45サイクルの増幅が実施された後、増幅プロセスは、長い伸長工程とともに完了する。特定の実施形態では、限定プライマーは、代表的に、25サイクル目の増幅によって消耗される。続く増幅サイクルの間、プライマーセットの一方のみのプライマーの存在に起因して、増幅産物の一方の鎖のみが生成される。特定の実施形態では、標識プローブは、5’ヌクレアーゼプローブであり、これは、このような後に続くサイクルの間に生成されることのない鋳型鎖とハイブリダイズするように設計され、これにより、各後に続くサイクルが、さらなる量のシグナルを生じる。特定の実施形態では、標識プローブは、ハイブリダイゼーション依存性プローブであり、これは、このような後に続くサイクルの間に生成されていく鋳型鎖とハイブリダイズするように設計され、これにより、各後に続くサイクルが、さらなる量のシグナルを生じる。
【0213】
特定の例示的非対称再増幅プロトコルでは、二本鎖増幅産物を含む風乾した第一の増幅組成物が、30μlの0.1×TE緩衝液(pH 8.0)中に再懸濁される。第二の増幅反応組成物は、0.2ml MicroAmp反応チューブ中の2μlの再懸濁増幅産物と9μl滅菌濾過脱イオン水、18μl AmpliTaq Gold(登録商標)ミックス(PE Biosystems,Foster City,CA)、適切な量の標識プローブ、および20〜40pmolの、少なくとも1つの第一のプライマーまたは少なくとも1つの第二のプライマーのいずれか(1μl 1×TE緩衝液中に懸濁)とを合わせることにより、調製される。
【0214】
チューブは、12分間95℃に加熱され、次いで10サイクル(94℃で15秒間、60℃で15秒間、および72℃で30秒間)、続いて25サイクル(89℃で15秒間、53℃で15秒間、および72℃で30秒間)が行われ、次いで45分間60℃にされる。標識プローブは、対応する連結連結産物が初期増幅反応の前に存在する場合、後に続く再増幅手順の間に検出可能シグナル値が変化するように設計される。
【0215】
例えば、特定の実施形態では、以下:5’プライマー特異的部分、アドレス可能部分、および標的特異的部分を含む第一のプローブ;および標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む第二のプローブ、から連結連結産物を形成する。プライマーセットは、5’プライマー特異的部分の配列を含む第一のプライマー、および3’プライマー特異的部分の配列に対して相補的である配列を含む第二のプライマーを含む。標識プローブは、アドレス可能部分の配列に対して相補的である配列を含み、そして第二のプライマーは、第一のプライマーより多く含まれる。
【0216】
特定の実施形態では、二本鎖増幅産物が生成され、続いて一本鎖配列に変換される。二本鎖核酸を一本鎖配列に変換するためのプロセスとしては、限定されることなく、以下:熱変性、化学変性、およびエキソヌクレアーゼ消化、が挙げられる。一本鎖核酸分子を合成するまたは二本鎖核酸を一本鎖配列に変換するための詳細なプロトコルは、例えば、以下:Ausbelら、Sambrookら、Novagen StrandaseTM product insert(Novagen,Madison,WI)、ならびにSambrookおよびRussell、に見い出され得る。
【0217】
特定の実施形態では、本発明の方法は、ユニバーサルプライマー、ユニバーサルプライマーセット、またはその両方を含む。特定の実施形態では、異なる標的配列に対するの任意数の増幅反応のために、単一のユニバーサルプライマーセットを使用し得る。
【0218】
特定の実施形態では、1つ以上の遺伝子座での2つの異なる対立遺伝子選択のため、同じ、2つの異なるアドレス可能部分を利用し得る。特定のこのような実施形態では、各遺伝子座について異なる反応組成物を用いることにより、異なる遺伝子座間を識別し得る。
【0219】
従って、3つの異なる二重対立遺伝子座での対立遺伝子における1つのヌクレオチド差異を決定することを欲する場合、特定のこのような実施形態では、3つの異なる反応組成物を利用し得るが、この各々が、各遺伝子座での2つの選択のために、特異的な異なる連結プローブセットを有する。図7A〜7Cは、特定のこのような実施形態を例示し、ここでは、3つの二重対立遺伝子座のため、3つの異なる反応組成物を用いる。図7A〜7Cでは、3つの異なる遺伝子座の各々のために、異なるプローブセットがある。各プローブセットは、各遺伝子座での2つの異なる対立遺伝子のために、2つの第一のプローブを含む。各プローブセットの第一のプローブの各々は、以下:同じ5’プライマー特異的部分(P−SP(A))、所与の遺伝子座の一部分に対して相補的であり、かつ中心相補体に異なるヌクレオチド(第一の遺伝子座についてAまたはG;第二の遺伝子座についてTまたはG;第三の遺伝子座についてGまたはC)を含む標的特異的部分、および各遺伝子座における2つの対立遺伝子ヌクレオチド選択の一方に対応する異なるアドレス可能部分(AP1またはAP2)を含む。アドレス可能部分(AP1およびAP2)の同じセットが、3つの異なるプローブセットの各々の、2つの第一のプローブに対して使用され得る。各プローブセットの各々の第二のプローブは、各異なる遺伝子座に対して、同じ3’プライマー特異的部分(P−SP(Z))および異なる標的特異的部分を含む。
【0220】
図7A〜7C中に示される特定の実施形態では、各遺伝子座における別々の連結反応後に、同じプライマーセット(PA)および(PZ)ならびに同じ2つの標識プローブ(LBP−1、これは、アドレス可能部分AP1の配列に対して相補的である(またはアドレス可能部分AP1の配列と同じである)配列を含む;およびLBP−2、これは、アドレス可能部分AP2の配列に対して相補的である(またはアドレス可能部分AP2の配列と同じである)配列を含む)を用いて、各遺伝子座について3つの別々の増幅反応を実施し得る。また、2つの異なる標識プローブは、2つの検出可能に異なるシグナルを提供する。
【0221】
従って、この例では、増幅が、3つの反応組成物の全てにおいて両標識プローブ(LBP−1およびLBP−2)からの検出可能シグナル値に閾値差を生じる場合、サンプルが3つの全ての遺伝子座でヘテロ接合性であったと結論する。増幅反応からの別の可能性のある結果は、以下の通りであり得る:第一の増幅反応組成物は、標識プローブLBP−1からの検出可能シグナル値における閾値差を生じ、第二の増幅反応組成物は、標識プローブLBP−1およびLBP−2からの検出可能シグナル値における閾値差を生じ、そして第三の増幅反応組成物は、標識プローブLBP−1からの検出可能シグナル値における閾値差を生じる。このような結果から、サンプルが、中心ヌクレオチドとして(C)を有する遺伝子座1でホモ接合性であり、遺伝子座2でヘテロ接合性であり、そして中心ヌクレオチドとして(G)を有する遺伝子座3でホモ接合性であると結論し得る。
【0222】
特定の実施形態では、別々の反応組成物において特異的な異なるプローブセットを用いて、多くの異なる標的配列を分析し得る。例えば、96の異なる標的核酸配列に対して、96の異なる連結プローブセットを有する96ウェルプレートを用い得る。特定の実施形態では、96プローブセットの各々を用いて1つの標的核酸配列の存在もしくは非存在を検出すること(または定量すること)を欲し得る。特定のこのような実施形態では、96の異なる標的配列についての結果を得るために、異なる96ウェルの各々において、同じセットの2つのプライマーおよび同じ標識プローブを用い得る。
【0223】
特定の実施形態では、96の異なる連結プローブセットを用いて、96の異なる遺伝子座での2つの異なる対立遺伝子の存在もしくは非存在を検出すること(または定量すること)を欲し得る。特定の実施形態では、各プローブセットは、2つの第一のプローブおよび1つの第二のプローブを含む。特定の実施形態では、各プローブセットの第一のプローブの各々は、所与の遺伝子座の一部分に対して相補的であり、かつ中心相補体に異なるヌクレオチドを含む標的特異的部分と、各遺伝子座における2つの対立遺伝子ヌクレオチド選択の一方に対応する2つの異なるアドレス可能部分の一方とを含む。特定の実施形態では、同じ、2つの異なるアドレス可能部分が、96の各々のプローブセットの2つの第一のプローブにおいて使用され得る。特定の実施形態では、各プローブセットの第二のプローブの各々は、各遺伝子座に対して異なる標的特異的部分を含む。特定の実施形態では、96のプローブセットの各々の2つの第一のプローブは、同じプライマー特異的部分をさらに含み得る。特定の実施形態では、96のプローブセットの各々の第二のプローブの各々は、別のプライマー特異的部分をさらに含み得る。
【0224】
特定のこのような実施形態では、連結後、96の異なるウェル中で、96の別々の増幅反応を実施し得る。特定のこのような実施形態では、96ウェルのすべてにおいて、同じプライマーセットおよび同じ2つの標識プローブを使用し得る。1つの標識プローブは、2つのアドレス可能部分の配列の一方に対して相補的である(または2つのアドレス可能部分の配列の一方に対してと同じである)配列を含み得、そして他方の標識プローブは、2つのアドレス可能部分の他方の配列に対して相補的である(または2つのアドレス可能部分の他方の配列と同じである)配列を含み得る。また、2つの異なる標識プローブは、2つの検出可能に異なるシグナルを提供する。96ウェルの各々中にどの対立遺伝子(単数または複数)が存在するかを、標識プローブからの検出可能シグナル値の変化を検出することにより検出し得る。
【0225】
当業者は、種々の実施形態において、第一のプローブまたは第二のプローブのいずれかでの任意の位置に中心相補体を有する連結プローブが設計され得ることを理解する。加えて、特定の実施形態では、連結プローブは、複数の中心相補体を含み得る。
【0226】
異なる中心相補体を有する標的特異的部分を含む、所与の遺伝子座に対する複数の第一のプローブを含む、連結プローブセットを用いる特定の実施形態では、所与の遺伝子座に対する異なる各々の第一のプローブの標的特異的部分は、中心相補体での異なるヌクレオチドを除いて、同じ配列を有し得る。特定の実施形態では、所与の遺伝子座についての各々の第一のプローブの標的特異的部分は、中心相補体に異なるヌクレオチドを有し得、そして中心相補体に対して5’側に異なる長さの配列を有し得る。特定のこのような実施形態では、中心相補体に対して5’側のこのような標的特異的部分配列は全て、中心ヌクレオチドに隣接する同じ遺伝子座核酸配列の一部分に対して相補的であり得るが、異なる長さを有し得る。例えば、2つの異なる第一のプローブが存在するこのような実施形態では、中心相補体に対して5’側の標的特異的部分配列は、同じであり得るが、但し、それらの1つが、標的特異的部分の5’末端に1つ以上のさらなるヌクレオチドを有し得ることを除く。
【0227】
異なる中心相補体を有する標的特異的部分を含む、所与の遺伝子座に対する複数の第二のプローブを含む、連結プローブセットを用いる特定の実施形態では、所与の遺伝子座についての異なる各々の第二のプローブの標的特異的部分は、中心相補体での異なるヌクレオチドを除いて、同じ配列を有し得る。特定の実施形態では、所与の遺伝子座に対する各々の第二のプローブの標的特異的部分は、中心相補体に異なるヌクレオチドを有し得、そして中心相補体に対して3’側に異なる長さの配列を有し得る。特定のこのような実施形態では、中心相補体に対して3’側のこのような標的特異的部分配列は全て、中心ヌクレオチドに隣接する同じ遺伝子座核酸配列の一部分に対して相補的であり得るが、異なる長さを有し得る。例えば、2つの異なる第二のプローブが存在するこのような実施形態では、中心相補体に対して3’側の標的特異的部分配列は、同じであり得るが、但し、それらの1つが、標的特異的部分の3’末端に1つ以上のさらなるヌクレオチドを有し得ることを除く。
【0228】
特定の実施形態では、任意数の標的配列を検出するために使用される連結プローブの数は、検出される標的の数と標的あたりの検出される対立遺伝子の数に1を加えた数との積である(すなわち、(標的配列数×[対立遺伝子数+1])。従って、例えば、3つの二重対立遺伝子配列を検出するためには、9つのプローブが使用される(3×[2+1])。特定の実施形態では、4つの三重対立遺伝子配列を検出するためには、16のプローブが使用され(4×[3+1])、以下同様である。
【0229】
特定の実施形態におけるプライマーおよび標識プローブの数、および従って操作のコストおよび数の減少の有意性は、多数の多重対立遺伝子座についての個体の遺伝的スクリーニング、または多くの個体の遺伝的スクリーニングを実施する場合に容易に明らかになる。特定の実施形態では、標的配列の連結産物を増幅するために、2つのプライマーが使用される。一方のプライマーが、連結産物の3’プライマー特異的部分の配列に対して相補的であり、そして一方のプライマーが、5’プライマー特異的部分の配列を含む。特定の従来の方法を用いて、各異なる連結産物について3つの異なるプライマーを用いる。従って、特定の従来の方法を用いて、個体に存在すると考えられる3つの二重対立遺伝子座について連結産物を増幅するためには、9つ(3n,ここでn=3)のプライマーを使用し得る。
【0230】
対して、本発明の特定の実施形態は、この数を、2つ程度の数の増幅プライマーにまで有効に減少させ得る。本発明の特定の実施形態に従って、1つ以上の連結または増幅産物を増幅するために、2つ程度の数の「ユニバーサル」プライマーが使用され得る。これは、プライマー特異的部分を共有するが、異なるアドレス可能部分を含むように、プローブが設計され得るからである。100の潜在二重対立遺伝子座を含むサンプルは、特定の従来の検出方法では200のプライマーを必要とし得るが、本発明の特定の実施形態では、たった2つのユニバーサルプライマーが使用され得る。
【0231】
また、標識プローブを用いる特定の従来の方法を使用したとすると、各異なる遺伝子座での各異なる対立遺伝子について異なる標識プローブが使用され得る。本発明の特定の実施形態に従って、1つ以上の異なる遺伝子座の配列を検出するために、2つの標識プローブを用い得る。例えば、特定の従来の方法では、100の二重対立遺伝子座での200の潜在配列を検出するために、200の異なる標識プローブを使用し得る。本発明の特定の実施形態を用いると、100の二重対立遺伝子座での200の潜在配列を検出するために、2つの標識プローブを使用し得る。
【0232】
(E.特定の例示の適用)
特定の実施形態では、サンプルについてのいくつかの標的核酸配列の遺伝子発現レベルが知られている場合、そのサンプルについての遺伝子発現プロフィールが編集され、そして他のサンプルと比較され得る。例えば(しかし、限定されることなく)、サンプルは、同じ細胞集団からの細胞の2つのアリコートから得られ得、ここで一方のアリコートは、化学化合物または薬物の存在下で増殖され、そして他方のアリコートは、そうではなかった。薬物の存在下で増殖された細胞についての遺伝子発現プロフィールを薬物の不在下で増殖された細胞と比較することにより、特定標的遺伝子の発現に対する薬物効果を決定し得る。
【0233】
特定の実施形態では、個体の特定状態を決定するために、特定タンパク質をコードするmRNAの細胞内における量を定量し得る。例えば、タンパク質インスリンは、とりわけ、血中グルコースのレベルを調節する。個体において生成されるインスリンの量は、個体が健常であるか否かを決定し得る。インスリン欠乏は、糖尿病を生じ、これは致死の可能性がある疾患である。糖尿病個体は、代表的に、低レベルのインスリンmRNAを有し、従って、低レベルのインスリンを生成する。一方、健常個体は、代表的に、より高いレベルのインスリンmRNAを有し、正常レベルのインスリンを生成する。
【0234】
異常に低い遺伝子発現に代表的に起因する別のヒト疾患は、テイ−サックス病である。テイ−サックス病を有する小児は、スフィンゴ脂質分解に必要なタンパク質(単数または複数)を欠くか、または欠乏している。従って、これらの小児は、異常に高いレベルのスフィンゴ脂質を有し、このことは、死を生じ得る神経系障害を引き起こす。
【0235】
特定の実施形態では、遺伝子過剰発現または遺伝子過少発現により引き起こされるさらなる遺伝子ベースの疾患/障害を同定および検出することが有用である。さらに、癌および特定の他の公知の疾患または障害は、特定の遺伝子の過剰発現または過少発現によって検出され得るか、またはそれに関連される。例えば、前立腺癌を有する男性は、代表的に、異常に高いレベルの前立腺特異的抗原(PSA)を生成し;そして腫瘍抑制遺伝子からのタンパク質は、多くのタイプの癌の発達において決定的な役割を果たすと考えられている。
【0236】
核酸技術を用いて、特定の実施形態では、代表的に、生物学的サンプルの微小量で、多くの異なる疾患、障害、および素因について同時に調べるのに十分な材料を提供し得る。さらに、細胞または生物中の特異的標的核酸(特定の場合、mRNA)の量を定量すること(このプロセスは、時に「遺伝子発現プロファイリング」と呼ばれる)が望ましい多数の他の状況がある。例えば特異的細胞タイプもしくは組織における、または個体における、特異的標的核酸の数量が知られている場合、特定の場合では、その細胞タイプ、組織、または個体についての遺伝子発現プロフィールの編集を始め得る。個体の遺伝子発現プロフィールと既知の発現プロフィールとを比較することにより、特定の場合における特定の疾患または障害の診断が可能になり得る。将来における特定の疾患または障害の発症に対する素因または感受性もまた、特定の場合における遺伝子発現プロフィールを評価することにより同定され得る。遺伝子発現プロフィール分析はまた、とりわけ、特定の場合における遺伝的カウンセリングおよび法医学検査のために、有用であり得る。
【0237】
(F.特定の例示的なキット)
特定の実施形態では、本発明はまた、特定の方法の実施を促進するように設計されたキットを提供する。特定の実施形態では、キットは、この方法を実施する際に使用される2つ以上の成分を合わせることにより、目的の方法の性能を促進するのに役立つ。特定の実施形態では、キットは、エンドユーザーによる測定の必要を最小限とするために、予め測定された単位量の成分を含み得る。特定の実施形態では、キットは、本発明の1つ以上の方法を実施するための指示書を備え得る。特定の実施形態では、キットの成分は、互いに関連して作動するように最適化される。
【0238】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的核酸配列を検出するためのキットが提供される。特定の実施形態では、キットは、以下を備える:各標的配列についての連結プローブセットであって、このプローブセットは以下を含む:(a)少なくとも1つの第一のプローブ、このプローブは、標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含み、ここで5’プライマー特異的部分は、配列を含む;および(b)少なくとも1つの第二のプローブ、このプローブは、標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含み、ここで3’プライマー特異的部分は、配列を含む。各セット中のプローブは、相補的標的配列において互いに対して隣接した位置でハイブリダイズされた場合に、一緒に連結されるのに適切である。各プローブセット中の一方のプローブはさらに、プライマー特異的部分と標的特異的部分との間に位置するアドレス可能部分を含み、ここでアドレス可能部分は、配列を含む。特定の実施形態では、キットはさらに標識プローブを備え、このプローブは、アドレス可能部分の配列を含むか、またはアドレス可能部分の配列に対して相補的である配列を含む。
【0239】
特定の実施形態では、キットは、標識プローブを備え、これは、相補的配列に対してハイブリダイズされていない場合に第一の検出可能シグナル値を有し、そして標識プローブの第二の検出可能なシグナル値は、増幅反応の間および後の少なくとも一方で検出され得る。特定の実施形態では、第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の閾値差は、標的核酸配列の存在を示し、そして第一の検出可能シグナル値と第二の検出可能シグナル値との間の閾値差なしは、標的核酸配列の不在を示す。
【0240】
特定の実施形態では、キットはさらに、プライマーを備える。特定の実施形態では、キットはさらに、少なくとも1つのプライマーセットを備え、このプライマーセットは、以下を含む:(i)少なくとも1つの第一のプライマー、これは、少なくとも1つの第一のプローブの5’プライマー特異的部分の配列を含む;および(ii)少なくとも1つの第二のプライマー、これは、少なくとも1つの第二のプローブの3’プライマー特異的部分の配列に対して相補的である配列を含む。
【0241】
特定の実施形態では、キットは、1つ以上のさらなる成分を含み、この成分には、限定されることなく、以下の少なくとも1つが含まれる:少なくとも1つのポリメラーゼ、少なくとも1つの転写酵素、少なくとも1つの連結剤、オリゴヌクレオチド三リン酸、ヌクレオチドアナログ、反応緩衝液、塩、イオン、および安定剤。特定の実施形態では、キットは、連結産物を精製するための1つ以上の試薬を備え、これには、限定されることなく、以下の少なくとも1つが含まれる:透析膜、クロマトグラフィー化合物、支持体、およびオリゴヌクレオチド。
【0242】
以下の実施例は、説明の目的のみが意図され、いかなるようにも本発明の範囲を限定するとしてみなされるべきではない。
【実施例】
【0243】
(実施例1)
以下の表1を、以下の実施例1を通して参照する:
(表1)
【0244】
【表1】

(MGB=小溝結合剤およびNFQ=非蛍光クエンチャー、これらは共に、TaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能)上に含まれる)。
【0245】
(A.連結プローブ)
これらの実施例において、各標的核酸配列についての連結プローブセットは、第一の連結プローブおよび第二の連結プローブを含み、これらプローブは、適切な標的核酸配列に対して、隣接してハイブリダイズするように設計した。これらの隣接してハイブリダイズされたプローブは、適切な条件下で、連結されて、連結産物を形成した。
【0246】
この例示の実施形態は、2つの二重対立遺伝子座を検出するために、2つの異なる連結プローブセットを使用した。ゲノムDNAの3つの異なるサンプルを試験した。表1は、使用した2つのプローブセットを示す。表1はまた、これらの実施例において使用した2つのTaqman(登録商標)プローブを示す。連結プローブは、標的特異的部分(表1においてイタリック文字で示した)を含んだ。表1において太字で示されるように、連結プローブはまた、ユニバーサルプライマー特異的部分配列を含んだ(各プローブセット中の列挙した第一のプローブの5’末端の18ヌクレオチドおよび各プローブセット中の列挙した第二のプローブの3’末端の18ヌクレオチド)。表1において下線を付した文字で示されるように、各連結プローブセット中の2つの第一のプローブはまた、2つのTaqMan(登録商標)プローブの異なる配列に対して相補的である、同じ、2つの異なるアドレス可能部分を含んだ。
【0247】
従来の自動化DNA合成化学を用いて、連結プローブを合成した。
【0248】
(B.例示の連結反応(オリゴヌクレオチド連結アッセイ「OLA」)
表1中に示した2つの異なる各々の連結プローブセットを用いて、別々の反応容量で、連結反応を実施した。連結反応組成物を形成する前の成分材料の濃度を、以下、表2中に示す。
【0249】
(表2)
【0250】
【表2】

Taqリガーゼを、1×OLA緩衝液2混合物中で2.0単位/μLに希釈した。Taqリガーゼの容量は、OLA試薬の以下のストックを形成するのに十分であった。OLA試薬の一般作業ストックを、以下の表3中に詳述されるように形成した。以下の成分容量は、単一の10μLのOLA反応容量に基づく。所望されるOLA反応の数に依存して、ストックOLA試薬の特定容量を形成し得る。
【0251】
(表3)
【0252】
【表3】

表1の2つのプローブセットの一方との各反応のために、表3のストックOLA反応組成物7μLを、表2中のOLAプローブセット濃度を用いて所与のプローブセット2.0μLと、そして表2中のゲノムDNA濃度を用いて1.0μLゲノムDNAと、合わせた。OLA反応についての最終アッセイ成分濃度を以下の表4中に記載する。
【0253】
(表4)
【0254】
【表4】

これらの実施例について、表1における2つの異なる各々のプローブセットを、3つの異なるゲノムDNAサンプルについて異なる反応中に含めた。従って、6つの異なる反応容量があり、各々は、プローブセットおよびゲノムDNAサンプルの異なる組み合わせを有した。3つのゲノムDNAサンプルをCoriell Cell Repositories(Camden,NJ)から得、以下のように称した:NA17103、NA17212、およびNA17247。連結反応組成物中で各々のゲノムDNAサンプルを合わせる前に、DNase I消化によってゲノムDNAをフラグメント化した。
【0255】
ABI 9700 Thermal Cycler(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、連結反応容量を、以下の表5中に示される反応条件に供した。反応容量を、それらを熱サイクラーに移すまで、氷上に置いた。熱サイクラーが90℃の第一の保持温度に達すると、OLA反応チューブを氷から熱サイクラーに移した。
【0256】
(表5)
【0257】
【表5】

(C.例示の増幅反応)
10×プライマー/標識プローブ組成物を、表1の順方向プライマーおよび逆方向プライマーと、VICおよびFAMで標識した2つのTaqMan(登録商標)プローブとを、以下のように最終濃度となるように合わせることにより、形成した:
順方向プライマー 9μM
逆方向プライマー 9μM
TaqMan(登録商標)[VIC] 2μM
TaqMan(登録商標)[FAM] 2μM。
【0258】
各PCR反応容量は、以下の成分を含んだ:
12.5μL−−2× TaqMan(登録商標)Universal PCR Mix(Applied Biosystems,Foster City,CA)。PCR Mixは、PCR緩衝液、dNTP、MgCl、ウラシル−N−グルコシダーゼ、およびAmpliTaq Gold(登録商標)DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems,Foster City,CA)を含む;
2.5μL−−10×プライマー/標識プローブ組成物(上述);
8μL−−水;および
2μL−−OLA反応容量(上記実施例1Bからの連結反応後の)。
【0259】
従って、各PCR反応についての総PCR反応容量は、25μLであった。ABI 7700 Thermal Cycler(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、各PCR反応容量を、以下の表6中に示される反応条件に供した。
【0260】
(表6)
【0261】
【表6】

アッセイ1において、FAMで標識したTaqMan(登録商標)プローブからのシグナルは、ゲノムDNA NA17103が第一のプローブ−RNA(1)(これは、中心相補体のヌクレオチドとして「C」を有する)に対応する対立遺伝子についてホモ接合性であったことを示した。従って、ゲノムDNA NA17103は、中心ヌクレオチドに「G」を有する、アッセイ1において分析した遺伝子座でホモ接合性であることが、正確に決定された。
【0262】
アッセイ1において、VICで標識したTaqMan(登録商標)プローブからのシグナルは、ゲノムDNA NA17212が第一のプローブ−CYC(1)(これは、中心相補体のヌクレオチドとして「T」を有する)に対応する対立遺伝子についてホモ接合性であったことを示した。従って、ゲノムDNA NA17212は、中心ヌクレオチドに「A」を有する、アッセイ1において分析した遺伝子座でホモ接合性であることが、正確に決定された。
【0263】
アッセイ1において、FAMで標識したTaqMan(登録商標)プローブおよびVICで標識したTaqMan(登録商標)プローブからのシグナルは、ゲノムDNA NA17247が第一のプローブ−CYC(1)および第一のプローブ−RNA(1)の両方に対応する対立遺伝子についてヘテロ接合性であったことを示した。従って、ゲノムDNA NA17247は、中心ヌクレオチドに「G」および「A」を有する、アッセイ1において分析した遺伝子座でヘテロ接合性であることが、正確に決定された。
【0264】
アッセイ2において、FAMで標識したTaqMan(登録商標)プローブからのシグナルは、ゲノムDNA NA17103が第一のプローブ−RNA(2)(これは、中心相補体のヌクレオチドとして「A」を有する)に対応する対立遺伝子についてホモ接合性であったことを示した。従って、ゲノムDNA NA17103は、中心ヌクレオチドに「T」を有する、アッセイ2において分析した遺伝子座でホモ接合性であることが、正確に決定された。
【0265】
アッセイ2において、FAMで標識したTaqMan(登録商標)プローブおよびVICで標識したTaqMan(登録商標)プローブからのシグナルは、ゲノムDNA NA17212が第一のプローブ−CYC(2)および第一のプローブ−RNA(2)の両方に対応する対立遺伝子についてヘテロ接合性であったことを示した。従って、ゲノムDNA NA17212は、中心ヌクレオチドに「T」および「C」を有する、アッセイ2において分析した遺伝子座でヘテロ接合性であることが、正確に決定された。
【0266】
アッセイ2において、VICで標識したTaqMan(登録商標)プローブからのシグナルは、ゲノムDNA NA17247が第一のプローブ−CYC(2)(これは、中心相補体のヌクレオチドとして「G」を有する)に対応する対立遺伝子についてホモ接合性であったことを示した。従って、ゲノムDNA NA17247は、中心ヌクレオチドに「C」を有する、アッセイ2において分析した遺伝子座でホモ接合性であることが、正確に決定された。
【0267】
アッセイ1および2と同じ濃度の材料および同じ熱サイクリング条件を用いるが、異なる遺伝子座での2つの対立遺伝子の存在または不在の検出のために異なるプローブセットを用いる他のアッセイもまた、実施した。それらのアッセイのいくつかは偽陰性シグナルを生じた。それらのプローブセットの第二のプローブが不完全であった(それらは、適切な連結を阻害した)と結論付けられた。
【0268】
本発明を特定の適用、方法、および組成物に関して記載してきたが、種々の変更および改変が本発明から逸脱することなくなされ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】図1は、特定の例示の実施形態に従う標識プローブの模式図である。
【図2−1】図2(2A−2E)は、連結およびプライマー伸長増幅を含む特定の実施形態の例示の実施形態を示す模式図である。
【図2−2】図2(2A−2E)は、連結およびプライマー伸長増幅を含む特定の実施形態の例示の実施形態を示す模式図である。
【図3−1】図3(3A−3F)は、連結およびPCRベース増幅を含む本発明の例示の実施形態を図示し、ここで例示の標的核酸配列は、サンプル中のmRNAである。
【図3−2】図3(3A−3F)は、連結およびPCRベース増幅を含む本発明の例示の実施形態を図示し、ここで例示の標的核酸配列は、サンプル中のmRNAである。
【図4】図4は、本発明の特定の実施形態に従う連結プローブセットを示す模式図である。各プローブは、標的に対して相補的である部分(「標的特異的部分」、T−SP)と、プライマーに対して相補的であるか、またはそれと同じ配列を有する部分(「プライマー特異的部分」、P−SP)とを含む。各プローブセット中の少なくとも1つのプローブは、アドレス可能部分(ASP)をさらに含み、これは、標的特異的部分とプライマー特異的部分との間に位置する(ここでは、第二のプローブ)。各プローブセットは、少なくとも1つの第一のプローブおよび少なくとも1つの第二のプローブを含み、これらは、第一のプローブ(ここでは、プローブA)の3’末端が、第二のプローブ(ここでは、プローブZ)の5’末端にすぐ隣接しかつ対向して、標的とハイブリダイズするように設計される。
【図5】図5は、本発明の特定の実施形態を用いる標的遺伝子座における2つの潜在対立遺伝子間を区別する方法を図示する。図5は(1)で、以下を示す:(i)標的特異的プローブセットは以下:2つの第一のプローブ(AおよびB)を含み、これらは、同じプライマー特異的部分(P−SP1)、異なる中心相補体であることを除いて同じ標的特異的部分(ここで、プローブAの3’末端はTでありプローブBの3’末端はCである)、および異なるアドレス可能部分((ASP−A)および(ASP−B))を有する;ならびに1つの第二のプローブ(Z)(これは、標的特異的部分およびプライマー特異的部分(P−SP2)を含む)。図5は(2)で、標的に対してアニーリングされた3つのプローブを示す。プローブAの標的特異的部分は、中心ヌクレオチドを含む3’標的領域と完全に相補的である。プローブBの中心相補体は、3’標的領域と相補的でない。従って、プローブBの標的特異的部分は、3’末端に塩基対合ミスマッチを含む。プローブZの標的特異的部分は、5’標的領域に対して完全に相補的である。図5は(3)で、連結産物A−Zを形成する、プローブAおよびZの連結を示す。プローブBおよびZは、プローブB上のミスマッチの中心相補体に起因して、連結産物を形成するように一緒に連結されない。図5は(4)で、A−Z連結産物ならびに非連結プローブBおよびZを遊離する、二本鎖分子の変性を示す。
【図6−A】図6は、本発明の特定の実施形態を図示する模式図である。図6(A)は(1)で、標的配列および以下:2つの第一のプローブ(AおよびB)および1つの第二のプローブ(Z)を含む連結プローブセットを図示し、これら2つの第一のプローブは、同じプライマー特異的部分(P−SP1)、異なる中心相補体であることを除いて同じ標的特異的部分(ここで、プローブAの3’末端はTでありプローブBの3’末端はGである)、および異なるアドレス可能部分((ASP−A)および(ASP−B))を有する;そして1つの第二のプローブ(Z)は、標的特異的部分およびプライマー特異的部分(P−SP2)を含む。図6(A)は(2)で、アニーリング条件下で標的配列に対してハイブリダイズされたAおよびZのプローブを図示する。図6(A)は(3)で、連結産物を形成する、連結剤の存在下における第一のプローブおよび第二のプローブの連結を図示する。図6(A)は(4)で、一本鎖連結産物を遊離する、連結産物:標的複合体の変性;プライマーセット(P1およびP2)および2つの標識プローブ(LBP−AおよびLBP−B)の添加;ならびに連結産物へのプライマーP2のアニーリングを図示する。図6(A)は(5)で、ポリメラーゼを用いて鋳型依存様式でP2プライマーを伸長させることによる、二本鎖核酸産物の形成を図示する。
【図6−B】図6は、本発明の特定の実施形態を図示する模式図である。図6Bおよび6Cは(6)から(11)で、さらなる増幅サイクルを図示する。
【図6−C】図6は、本発明の特定の実施形態を図示する模式図である。図6Bおよび6Cは(6)から(11)で、さらなる増幅サイクルを図示する。
【図7】図7(7A−7C)は、3つの二重対立遺伝子座を包含する特定の実施形態を図示する。
【図8】図8は、フラップエンドヌクレアーゼを用いる特定の実施形態を図示する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも1つの標的核酸配列を検出するための方法であって、以下:
連結反応組成物を形成する工程であって、ここで該連結反応組成物が、該サンプルおよび各標的核酸配列についての連結プローブセットを含み、該プローブセットが、(a)少なくとも1つの第一のプローブおよび(b)少なくとも1つの第二のプローブを含み、該第一のプローブが、標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含み、ここで該5’プライマー特異的部分が配列を含み、該第二のプローブが、標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含み、ここで該3’プライマー特異的部分が配列を含み、
ここで各セット中の両該プローブは、相補的な標的核酸配列において互いに対して隣接した位置でハイブリダイズされた場合に、一緒に連結されるのに適切であり、そしてここで各プローブセット中の一方のプローブが、該プライマー特異的部分と該標的特異的部分との間に位置するアドレス可能部分をさらに含み、ここで該アドレス可能部分が配列を含む、工程;
該連結反応組成物を少なくとも1サイクルの連結に供することにより、試験組成物を形成する工程であって、ここで隣接してハイブリダイズする相補的なプローブが、互いに対して連結されて、該5’プライマー特異的部分、両該標的特異的部分、該アドレス可能部分、および該3’プライマー特異的部分を含む連結産物を形成する工程;
以下:
該試験組成物;
ポリメラーゼ;
標識プローブであって、ここで該標識プローブは、相補的な配列に対してハイブリダイズされていない場合に第一の検出可能シグナル値を有し、そしてここで該標識プローブが、該アドレス可能部分の該配列を含むかまたは該アドレス可能部分の該配列に対して相補的な配列を含む、プローブ;および
少なくとも1つのプライマーセットであって、該プライマーセットが、(i)少なくとも1つの第一のプライマーおよび(ii)少なくとも1つの第二のプライマーを含み、ここで該第一のプライマーが、該連結産物の該5’プライマー特異的部分の該配列を含み、該第二のプライマーが、該連結産物の該3’プライマー特異的部分の該配列に対して相補的な配列を含む、セット、
を含む増幅反応組成物を形成する工程;
該増幅反応組成物を少なくとも1つの増幅反応に供する工程;および
該増幅反応の間および後の少なくとも一方で第二の検出可能シグナル値を検出する工程
を包含し、ここで該第一の検出可能シグナル値と該第二の検出可能シグナル値との間の閾値差が、該標的核酸配列の存在を示し、そしてここで該第一の検出可能シグナル値と該第二の検出可能シグナル値との間の閾値差なしが、該標的核酸配列の不在を示す、方法。
【請求項2】
前記標識プローブが5’ヌクレアーゼプローブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記5’ヌクレアーゼプローブが、少なくとも1つのシグナル部分および少なくとも1つのクエンチャー部分を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのシグナル部分が、少なくとも1つの蛍光部分を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記5’ヌクレアーゼプローブが、少なくとも1つのシグナル部分および少なくとも1つのドナー部分を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記標識プローブがハイブリダイゼーション依存性プローブである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ハイブリダイゼーション依存性プローブが、少なくとも1つのシグナル部分および少なくとも1つのクエンチャー部分を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシグナル部分が、少なくとも1つの蛍光部分を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ハイブリダイゼーション依存性プローブが、少なくとも1つのシグナル部分および少なくとも1つのドナー部分を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
サンプル中の少なくとも1つの標的核酸配列を検出するための方法であって、以下:
連結反応組成物を形成する工程であって、ここで該連結反応組成物が、該サンプルおよび各標的核酸配列についての連結プローブセットを含み、該プローブセットが、(a)少なくとも1つの第一のプローブおよび(b)少なくとも1つの第二のプローブを含み、該第一のプローブが、標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含み、ここで該5’プライマー特異的部分が配列を含み、該第二のプローブが、標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含み、ここで該3’プライマー特異的部分が配列を含み、
ここで各セット中の両該プローブは、相補的な標的核酸配列において互いに対して隣接した位置でハイブリダイズされた場合に、一緒に連結されるのに適切であり、そしてここで各プローブセット中の一方のプローブが、該プライマー特異的部分と該標的特異的部分との間に位置するアドレス可能部分をさらに含み、ここで該アドレス可能部分が配列を含む、工程;
該連結反応組成物を少なくとも1サイクルの連結に供することにより、試験組成物を形成する工程であって、ここで隣接してハイブリダイズする相補的なプローブが、互いに対して連結されて、該5’プライマー特異的部分、両該標的特異的部分、該アドレス可能部分、および該3’プライマー特異的部分を含む連結産物を形成する工程;
以下:
該試験組成物;
ポリメラーゼ;
標識プローブであって、ここで該標識プローブが、該アドレス可能部分の該配列を含むかまたは該アドレス可能部分の該配列に対して相補的な配列を含む、プローブ;および
少なくとも1つのプライマーセットであって、該プライマーセットが、(i)少なくとも1つの第一のプライマーおよび(ii)少なくとも1つの第二のプライマーを含み、ここで該第一のプライマーが、該連結産物の該5’プライマー特異的部分の該配列を含み、該第二のプライマーが、該連結産物の該3’プライマー特異的部分の該配列に対して相補的な配列を含む、セット、
を含む増幅反応組成物を形成する工程;
該増幅反応組成物を少なくとも1つの増幅反応に供する工程;および
該少なくとも1サイクルの増幅の間および後の少なくとも一方でシグナルをモニタリングすることにより、該標的核酸配列の存在または不在を検出する工程
を包含する、方法。
【請求項11】
サンプル中の少なくとも1つの標的核酸配列を検出するためのキットであって、以下:
各標的核酸配列についての連結プローブセットであって、該プローブセットが、(a)少なくとも1つの第一のプローブおよび(b)少なくとも1つの第二のプローブを含み、該第一のプローブが、標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含み、ここで該5’プライマー特異的部分が配列を含み、該第二のプローブが、標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含み、ここで該3’プライマー特異的部分が配列を含み、
ここで各セット中の両該プローブは、相補的な標的核酸配列において互いに対して隣接した位置でハイブリダイズされた場合に、一緒に連結されるのに適切であり、そしてここで各プローブセット中の一方のプローブが、該プライマー特異的部分と該標的特異的部分との間に位置するアドレス可能部分をさらに含み、ここで該アドレス可能部分が配列を含む、セット;および
標識プローブであって、ここで該標識プローブが、該アドレス可能部分の該配列を含むかまたは該アドレス可能部分の該配列に対して相補的な配列を含む、プローブ
を備える、キット。
【請求項12】
請求項11に記載のキットであって、ここで前記標識プローブが、相補的な配列に対してハイブリダイズされていない場合に第一の検出可能シグナル値を有し、そして該標識プローブの第二の検出可能シグナル値が、増幅反応の間および後の少なくとも一方で検出され得、ここで該第一の検出可能シグナル値と該第二の検出可能シグナル値との間の閾値差が、該標的核酸配列の存在を示し、そしてここで該第一の検出可能シグナル値と該第二の検出可能シグナル値との間の閾値差なしが、該標的核酸配列の不在を示す、キット。
【請求項13】
前記標識プローブが5’ヌクレアーゼプローブである、請求項11に記載のキット。
【請求項14】
前記5’ヌクレアーゼプローブが、少なくとも1つのシグナル部分および少なくとも1つのクエンチャー部分を含む、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記少なくとも1つのシグナル部分が、少なくとも1つの蛍光部分を含む、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記5’ヌクレアーゼプローブが、少なくとも1つのシグナル部分および少なくとも1つのドナー部分を含む、請求項13に記載のキット。
【請求項17】
前記標識プローブがハイブリダイゼーション依存性プローブである、請求項11に記載のキット。
【請求項18】
前記ハイブリダイゼーション依存性プローブが、少なくとも1つのシグナル部分および少なくとも1つのクエンチャー部分を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記少なくとも1つのシグナル部分が、少なくとも1つの蛍光部分を含む、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記ハイブリダイゼーション依存性プローブが、少なくとも1つのシグナル部分および少なくとも1つのドナー部分を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項21】
請求項11に記載のキットであって、少なくとも1つのプライマーセットをさらに備え、該プライマーセットが、(i)少なくとも1つの第一のプライマーおよび(ii)少なくとも1つの第二のプライマーを含み、ここで該第一のプライマーが、前記少なくとも1つの第一のプローブの前記5’プライマー特異的部分の前記配列を含み、該第二のプライマーが、前記少なくとも1つの第二のプローブの前記3’プライマー特異的部分の前記配列に対して相補的な配列を含む、キット。

【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図6−C】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−500033(P2006−500033A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538337(P2004−538337)
【出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/029693
【国際公開番号】WO2004/027081
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】