説明

標的検出用基材及びその製造方法、並びに、標的検出装置及び標的検出方法

【課題】 本発明は、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を高価な測定装置等を用いることなく、少ない測定誤差で簡便かつ迅速にしかも極めて高感度で効率的に検出可能であり、更には定量も可能な標的検出装置及び標的検出方法、並びに、それらに好適に用いられる標的検出用基材及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 照射された光を干渉光として放射可能であり、標的相互作用部が標的と相互作用した際に生ずる該干渉光の波長変化を検知することによって該標的を検出するのに用いられる標的検出用基材であって、該標的検出用基材が、複数の細穴を有し、かつ、該複数の細穴が形成された側の露出面の少なくとも一部に、前記標的と相互作用可能な前記標的相互作用部を有することを特徴とする標的検出用基材、及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を効率よく確実にかつ簡便にしかも極めて高感度に検出可能な標的検出装置及び標的検出方法、並びに、それらに好適に用いられる標的検出用基材及びその効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を検出する各種の方法が検討されてきており、例えば、ELISA等のエンザイム・イムノ・アッセイ法などが知られている。しかし、これらにおいては、高価な蛍光標識や危険な放射線マーカー等を使用しなければならない等の問題があった。
近時、蛍光標識や放射線マーカーを使用せずに、前記各種標的を検出する検出層による干渉光の干渉色変化等を検知することにより、前記各種標的を検出する装置や方法が提案されてきている。例えば、非特異性蛋白質層の膜厚変化を干渉色変化としてエリプソメータ等により測定する装置が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。また、核酸鎖による光反射表面における厚み変化を干渉色変化として検出することが提案されている(例えば、特許文献3〜5参照)。また、光源から発した光を偏光子を介して試料表面に照射し、その反射光を偏光変調器により反射させ、偏光子を介して検出する装置が提案されている(例えば、特許文献6〜9参照)。また、非特異性蛋白質層の膜厚変化を干渉光の干渉色変化としてエリプソメータ等により測定すると共に該干渉光を偏光子を介して検出する装置が提案されている(例えば、特許文献10参照)。
【0003】
しかしながら、これらの場合は、前記標的との反応が二次元的な面に制限される結果、前記標的と相互作用可能な反応表面積が小さくなり、測定感度が十分でないという問題がある。また、前記装置では、測定ノイズを拾い易く、測定誤差が大きく、簡便かつ迅速な測定ができず、更には定量ができないという問題もある。したがって、前記反応表面積を十分に確保することにより、病原物質、生体物質、有毒物質等の前記各種標的を高価な測定装置等を用いることなく、少ない測定誤差で簡便かつ迅速にしかも極めて高感度で効率的に検出可能であり、更には定量も可能な標的検出装置及び標的検出方法、並びに、それらに好適に用いられる標的検出用基材は未だ提供されていないのが現状であり、これらの開発が切に望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−122603号公報
【特許文献2】特開2002−116208号公報
【特許文献3】特公平7−32720号公報
【特許文献4】特開平10−288616号公報
【特許文献5】特開2001−235473号公報
【特許文献6】特開昭61−34442号公報
【特許文献7】特開平4−78122号公報
【特許文献8】特公昭62−57936号公報
【特許文献9】米国特許明細書第4,332,476号明細書
【特許文献10】特開2002−122603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を高価な測定装置等を用いることなく、少ない測定誤差で簡便かつ迅速にしかも極めて高感度で効率的に検出可能であり、更には定量も可能な標的検出装置及び標的検出方法、並びに、それらに好適に用いられる標的検出用基材及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> 照射された光を干渉光として放射可能であり、標的相互作用部が標的と相互作用した際に生ずる該干渉光の波長変化を検知することによって該標的を検出するのに用いられる標的検出用基材であって、該標的検出用基材が、複数の細穴を有し、かつ、該複数の細穴が形成された側の露出面の少なくとも一部に、前記標的と相互作用可能な前記標的相互作用部を有することを特徴とする標的検出用基材である。該<1>に記載の標的検出用基材においては、前記複数の細穴を有することにより前記細穴が形成されない場合よりも表面積が飛躍的に増大される。表面積が飛躍的に増大した前記露出面の少なくとも一部に前記標的相互作用部を有することにより該露出面に担持された該標的相互作用部の数が飛躍的に増大され、前記標的と相互作用する前後において屈折率が大きく変化される。この結果、前記干渉光の透過率のグラフにおける波長シフトが極めて大きくなり、前記標的を極めて高感度に検出可能である。
<2> 露出面の少なくとも一部が、細穴における露出面である前記<1>に記載の標的検出用基材である。
<3> 複数の細穴が、互いに独立して形成された前記<1>から<2>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<4> 複数の細穴における少なくとも一部が、互いに連結して形成された前記<1>から<2>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<5> 細穴における開口部が、規則的に配列された前記<1>から<4>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<6> 細穴における開口部が、不規則的に配列された前記<1>から<4>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<7> 複数の細穴が形成された側の面に対して垂直な断面に存在する細穴の形状が、直線状及び曲線状の少なくともいずれかである前記<1>から<6>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<8> 複数の細穴が形成された側の面において、単位面積当たりに存在する全ての該細穴の和が、1.0〜10cm/cmである前記<1>から<7>のいずれかに記載の標的検出用基材である。該<8>に記載の標的検出用基材においては、前記表面積の和が所定の範囲であって、前記細穴が形成されない場合よりも表面積が飛躍的に増大される。表面積が飛躍的に増大した前記露出面の少なくとも一部に前記標的相互作用部を有することにより該露出面に担持された該標的相互作用部の数が飛躍的に増大される。この結果、前記標的と相互作用する前後において前記干渉光の透過率のグラフにおける波長シフトが極めて大きくなり、前記標的を極めて高感度に検出可能である。
<9> 細穴における開口部の最大口径が、0.1〜10,000nmである前記<1>から<8>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<10> 複数の細穴が形成された側の面に対して垂直な断面に存在する前記複数の細穴から任意に選択した10個の平均深さが、0.1〜10,000nm以下である前記<1>から<9>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<11> 最大口径をAとし、平均深さをBとしたとき、最大口径に対する平均深さの比(B/A)が、0.01〜1,000である前記<10>に記載の標的検出用基材である。
<12> 標的検出用基材が、複数の層を有し、該複数の層の少なくとも一層が、光干渉層であり、該光干渉層から最表面に位置し、複数の細穴を有する層までの各層が光透過性である前記<1>から<11>のいずれかに記載の標的検出用基材である。該<12>に記載の標的検出用基材においては、前記光干渉層を有することにより極めてシャープなスペクトル曲線が得られ、前記標的を極めて高感度に検出可能である。
<13> 複数の細穴を有する層が、セラミックス、アルミナ、シリコン、金属酸化物、ガラス、石英ガラス、ポリマー、及び金属から選択される少なくとも1種で形成されてなる前記<1>から<12>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<14> 光干渉層が、該光干渉層と接する層の屈折率と異なる屈折率を有する異屈折率膜を少なくとも1層有する前記<12>から<13>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<15> 異屈折率膜が、誘電体膜である前記<14>に記載の標的検出用基材である。
<16> 異屈折率膜が、酸素化合物を含む前記<14>から<15>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<17> 酸素化合物が、金属酸化物及び非金属酸化物から選択される少なくとも1種である前記<16>に記載の標的検出用基材である。
<18> 金属酸化物が、Ta、TiO及びSiOから選択される少なくとも1種である前記<17>に記載の標的検出用基材である。
<19> 標的相互作用部が、標的を捕捉可能な標的捕捉体である前記<1>から<18>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<20> 標的捕捉体が、酵素、補酵素、酵素基質、酵素阻害剤、ホスト化合物、金属、抗体、抗原、微生物、寄生虫、細菌、ウイルス、ウイルス粒子、細胞、細胞破砕物、代謝産物、核酸、ホルモン、ホルモンレセプター、レクチン、糖、生理活性物質、生理活性物質受容体、アレルゲン、タンパク質、血液タンパク質、組織タンパク質、核物質、神経伝達物質、ハプテン、薬物、環境物質、化学種及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1種である前記<19>に記載の標的検出用基材である。該<20>に記載の標的検出用基材においては、前記標的捕捉体が前記酵素である場合には、前記標的は、例えば該酵素の補酵素、酵素基質又は酵素阻害剤であり、前記標的捕捉体が前記補酵素、酵素基質又は酵素阻害剤である場合には、前記標的は、例えば該補酵素を補酵素、酵素基質又は酵素阻害剤とする酵素であり、前記標的捕捉体が前記ホスト化合物である場合には、前記標的は、例えば該ホスト化合物のゲスト化合物であり、前記標的捕捉体が前記金属である場合には、前記標的は、例えば前記ホスト化合物であり、前記標的捕捉体が前記抗体である場合には、前記標的は、例えば該抗体の抗原、ウイルス、細胞破砕物、代謝産物としてのタンパク質であり、前記標的捕捉体が前記タンパク質である場合には、前記標的は、例えば該タンパク質を抗原とする抗体であり、前記標的捕捉体が前記核酸である場合には、前記標的は、例えば該核酸と相補的な核酸であり、前記標的捕捉体が前記ホルモンレセプターである場合には、前記標的は、例えば該ホルモンレセプターに受容されるホルモンであり、前記標的捕捉体が前記レクチンである場合には、前記標的は、例えば該レクチンに受容させる糖であり、前記標的捕捉体が前記生理活性物質受容体である場合には、前記標的は、例えば該生理活性物質受容体に受容される生理活性物質である。
<21> ホスト化合物が、単分子系ホスト化合物、多分子系ホスト化合物、高分子系ホスト化合物及び無機系ホスト化合物から選択され、
該単分子系ホスト化合物が、シクロデキストリン、クラウン化合物、シクロファン、アザシクロファン、カリックスアレーン、シクロトリペラトリレン、スフェランド、キャビタンド、及び環状オリゴペプチドから選択され、
該多分子系ホスト化合物が、尿素、チオ尿素、デオキシコール酸、ペルヒドロトリフェニレン、トリ−o−チモチドから選択され、
該高分子系ホスト化合物が、セルロース、デンプン、キチン、キトサン及びポリビニルアルコールから選択され、
該無機系ホスト化合物が、層間化合物、ゼオライト及びHofmann型錯体から選択される前記<20>に記載の標的検出用基材である。
<22> 基材が、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス及びポリマーから選択される少なくとも1種で形成された層を有する前記<12>から<21>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<23> 相互作用が、物理吸着及び化学吸着の少なくともいずれかである前記<1>から<22>のいずれかに記載の標的検出用基材である。
<24> 前記<1>から<23>のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法であって、表面に細穴を形成する細穴形成工程を含むことを特徴とする標的検出用基材の製造方法である。該<24>に記載の標的検出用基材の製造方法は、前記細穴形成工程において前記表面に前記細穴が形成される。
<25> 細穴形成工程が、光線、X線及び電子線の少なくともいずれかを用いたリソグラフィーにより行われる前記<24>に記載の標的検出用基材の製造方法である。該<25>に記載の標的検出用基材の製造方法は、光線、X線及び電子線の少なくともいずれかを用いて前記細穴を形成するため、前記細穴の開口部の形状及び開口径を任意に形成可能である。
<26> 細穴形成工程が、疎水性溶媒と、該疎水性溶媒に溶解可能なポリマーとを混合した溶液で膜を形成し、該膜の表面を結露させつつ、前記疎水性溶媒を蒸発させることにより行われる前記<24>に記載の標的検出用基材の製造方法である。該<26>に記載の標的検出用基材の製造方法は、前記膜の表面を結露させつつ、前記疎水性溶媒を蒸発させることにより、前記ポリマーが細穴を形成しつつ自己組織化される。
<27> 疎水性溶媒が、ハロゲン含有有機溶媒、エステル基含有有機溶媒及び炭化水素から選択される少なくとも1種である前記<26>に記載の標的検出用基材の製造方法である。
<28> ポリマーが、生分解性ポリマー、両親媒性ポリマー及び親水性ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<26>から<27>のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法である。
<29> 細穴形成工程が、陽極基材を酸性溶液中に浸漬させ、該陽極基材を陽極酸化することにより行われる前記<24>に記載の標的検出用基材の製造方法である。該<29>に記載の標的検出用基材の製造方法は、前記陽極基材が前記酸性溶液中で陽極酸化され、該陽極基材上に前記細穴が形成される。
<30> 酸性溶液が、シュウ酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液、塩酸水溶液、及び硝酸水溶液から選択される少なくとも1種である前記<29>に記載の標的検出用基材である。
<31> 細穴形成工程が、標的検出用材料基材の表面を、酸化させて酸化物パターン部を形成した後、非酸化物パターン部を除去することにより行われる前記<24>に記載の標的検出用基材の製造方法である。該<31>に記載の標的検出用基材の製造方法においては、前記標的検出用材料基材の表面が酸化され、酸化物パターン部が形成される。該酸化物パターン部以外の部分(前記非酸化物パターン部)が除去されることにより前記細穴が形成される。
<32> 標的検出用材料基材が、導電性表面を少なくとも有してなり、
酸化物パターン部の形成が、複数の溝が互いに略平行になるように形成されたラインパターンを有する酸化物パターン部形成用導電性基材を、前記標的検出用材料基材の導電性表面に当接させ、前記酸化物パターン部形成用導電性基材と、前記導電性表面との間に電圧を印加させ、前記導電性表面に前記ラインパターンと同じ形状の前記酸化物パターン部を形成することにより行われる前記<31>に記載の標的検出用基材の製造方法である。該<32>に記載の標的検出用基材の製造方法は、前記酸化物パターン部形成用導電性基材が前記導電性表面に当接される。前記酸化物パターン部形成用導電性基材と、前記導電性表面との間に電圧が印加されることにより前記導電性表面に前記ラインパターンと同じ形状の前記酸化物パターン部が形成される。
<33> 酸化物パターン部が格子状に形成され、非酸化物パターン部が独立して複数形成された前記<31>から<32>のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法である。
<34> 除去が、エッチングである前記<31>から<33>のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法である。
<35> エッチングが、アルカリ性の溶液で行われる前記<34>に記載の標的検出用基材の製造方法である。
<36> 複数の溝から任意に選択した10個の幅方向の平均長さが、0.5〜10,000nmである前記<32>から<35>のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法である。
<37> 酸化物パターン部形成用導電性基材及び導電性表面の少なくともいずれかが、導電性シリコンで形成された前記<32>から<36>のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法である。
<38> 光を照射する光照射手段と、標的と相互作用して前記光照射手段により照射された光の干渉光の波長を変化可能な光干渉手段と、前記干渉光の進路に設けられ前記光干渉手段により放射される前記干渉光の波長変化を検出する波長変化検出手段とを有してなり、
前記光干渉手段が、前記<1>から<23>のいずれかに記載の標的検出用基材を含むことを特徴とする標的検出装置である。該<38>に記載の標的検出装置においては、前記光照射手段が光を照射する。前記光干渉手段は、前記細穴を有する標的検出用基材を有することにより前記細穴が形成されない場合よりも表面積が飛躍的に増大される。表面積が飛躍的に増大した前記露出面の少なくとも一部に前記標的相互作用部を有することにより該露出面に担持された該標的相互作用部の数が飛躍的に増大され、前記標的と相互作用する前後において屈折率が大きく変化される。この結果、前記干渉光の透過率のグラフにおける波長シフトが極めて大きくなり、前記波長変化検出手段が、該波長シフトした干渉光を検出することにより、前記標的が極めて高感度に検出される。
<39> 光照射手段が、線状の光束を照射可能である前記<38>に記載の標的検出装置である。該<39>に記載の標的検出装置においては、該光照射手段により照射される光の前記光干渉手段への入射角の制御が容易であり、また、前記光干渉手段における、前記光照射手段により照射される光の受光面の面積を小さく設計することができ、また、該光干渉手段による干渉光の波長変化を検出する前記波長変化検出手段における受光面の面積を小さく設計することができ、測定ノイズを抑制することができ、測定誤差が少ない。
<40> 光照射手段が、レーザー光照射器である前記<38>から<39>のいずれかに記載の標的検出装置である。
<41> 波長変化検出手段が、特定波長の光のみを透過可能であり、該特定波長の光が透過したことを検知可能である前記<38>から<40>のいずれかに記載の標的検出装置である。該<41>に記載の標的検出装置においては、前記波長変化検出手段が、特定波長の光のみを透過可能であることにより、該波長変化検出手段は、前記標的相互作用部が前記標的と相互作用する前では前記干渉光を透過不能とし、かつ、前記相互作用した後では前記干渉光を透過可能とすることにより、あるいは、前記相互作用する前では前記干渉光を透過可能とし、かつ、前記相互作用した後では前記干渉光を透過不能とすることにより、前記標的を簡便かつ確実に検出可能であり、該波長変化検出手段が前記干渉光の透過を検出したことをもって、前記干渉光の波長変化を検出し、前記標的相互作用部が前記標的と相互作用したこと、即ち試料等中における該標的の存在が容易にかつ簡便にしかも極めて高感度に検出される。
<42> 波長変化検出手段が、干渉フィルタ及び該干渉フィルタを透過した透過光を検知可能な光検知センサーである前記<38>から<41>のいずれかに記載の標的検出装置である。該<42>に記載の標的検出装置においては、前記干渉フィルタを、前記標的相互作用部が前記標的と相互作用する前では前記干渉光を透過不能とし、かつ、前記相互作用した後では前記干渉光を透過可能とすることにより、あるいは、前記相互作用する前では前記干渉光を透過可能とし、かつ、前記相互作用した後では前記干渉光を透過不可能とすることにより、該干渉フィルタを透過した前記干渉光を前記光検知センサーが検出したことをもって、前記干渉光の波長変化を検出し、前記標的相互作用部が前記標的と相互作用したこと、即ち試料等中における該標的の存在が容易にかつ簡便にしかも極めて高感度に検出される。また、前記干渉フィルタを、前記相互作用した後では前記干渉光を透過可能とし、あるいは、前記相互作用する前では前記干渉光を透過可能とし、該干渉光の透過光量を前記光検知センサーが測定すると前記標的が定量される。
<43> 波長変化検出手段が、干渉光の波長変化前におけるスペクトルと、干渉光の波長変化後におけるスペクトルとを測定し、その差スペクトルを測定可能である前記<38>から<42>のいずれかに記載の標的検出装置である。
<44> 波長変化検出手段が、差スペクトルをスペクトル強度に変換し、該スペクトル強度を増幅可能である前記<43>に記載の標的検出装置である。該<44>に記載の標的検出装置においては、前記波長変化検出手段が、前記干渉光の波長変化の前後におけるスペクトル差、即ち差スペクトルを測定するので、それぞれブロードなスペクトル曲線ではなく、極めてシャープなスペクトル曲線が得られ、増幅が可能となる。そして、該干渉光の波長変化をスペクトル強度に変換することができ、任意にその増幅が可能であり極めて高感度にであり、しかもスペクトル強度の強弱によって前記標的の定量も行うことができる。
<45> 波長変化検出手段が、分光光度計である前記<38>から<44>のいずれかに記載の標的検出装置である。
<46> 前記<1>から<23>いずれかに記載の標的検出用基材に対して光を照射し、標的相互作用部と、標的とを相互作用させ、該照射した光を干渉光として放射させる光照射工程と、前記干渉光の波長変化を検出する波長変化検出工程とを含むことを特徴とする標的検出方法である。該<46>に記載の標的検出方法においては、前記光照射工程において、前記標的相互作用部と前記標的とが相互作用され、該相互作用の前後において屈折率が大きく変化する結果、前記照射された光の前記干渉光は、前記相互作用の前後で極めて大きく波長変化(波長シフト)され、前記波長変化検出手段が、該波長シフトした前記干渉光を検出することにより、前記標的が極めて高感度に検出される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を高価な測定装置等を用いることなく、少ない測定誤差で簡便かつ迅速にしかも極めて高感度で効率的に検出可能であり、更には定量も可能な標的検出装置及び標的検出方法、並びに、それらに好適に用いられる標的検出用基材及びその効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(標的検出装置)
本発明の標的検出装置は、光照射手段と、光干渉手段と、波長変化検出手段とを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
【0009】
<光照射手段>
前記光照射手段は、光を照射する機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ハロゲンランプ(例えばキセノンランプ)等の光源、レーザー光照射器、などが挙げられる。
これらの中でも、線状の光束を照射可能であるものが好ましく、レーザー光照射器などが好適に挙げられる。この場合、該光照射手段より照射される光の前記光干渉手段への入射角の制御が容易であり、また、該光照射手段より照射される光の前記光干渉手段における受光面の面積を小さく設計することができ、更に該光干渉手段による干渉光の波長変化を検出する前記波長変化検出手段における受光面の面積を小さく設計することができ、測定ノイズを抑制することができ、測定誤差を小さくすることができる点で有利である。
なお、本発明においては、前記波長変化検出手段として、分光光度計を使用する場合には、該光照射手段として、該分光光度計に内蔵された光源を使用することができる。
【0010】
<光干渉手段>
前記光干渉手段は、標的と相互作用することにより、前記光照射手段により照射された光の干渉光の波長を変化させることができる手段である。前記光干渉手段は、本発明の標的検出用基材を含み、更に必要に応じてその他の部材等を有してなる。
【0011】
(標的検出用基材)
前記本発明の標的検出用基材は、照射された光を干渉光として放射可能であり、標的相互作用部が標的と相互作用した際に生ずる該干渉光の波長変化を検知することによって該標的を検出するのに用いられ、複数の細穴を有し、かつ、該複数の細穴が形成された側の露出面の少なくとも一部に、前記標的と相互作用可能な前記標的相互作用部を有する。
【0012】
−細穴−
前記細穴の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、柱状、錐状、錐台状などであってもよく、また無定型の形状などであってもよい。従って、前記複数の細穴が形成された側の面に体して垂直な断面に存在する該細穴の形状は、直線状であってもよく、曲線状であってもよく、これらが互いに併存していてもよい。
また、前記細穴は、互いに独立して形成されていてもよく、前記細穴における少なくとも一部が互いに連結して形成されていてもよい。
【0013】
前記細穴の開口部の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、規則的な配列であってもよく、不規則的な配列であってもよいが、より大きな表面積を確保する観点から前者の方が好ましい。なお、前記規則的とは、前記複数の細穴が形成された面において、前記開口部が互いに等しい間隔で二次元マトリクスを形成して配列している状態、又は前記開口部若しくは前記開口部の集団が一定の規則性をもって配列している状態等を意味し、前記不規則的とは、前記規則的以外の状態を意味する。なお、前記開口部の配列は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により簡便に確認することができる。
【0014】
前記細穴における開口部の最大口径としては、特に制限はなく、前記標的相互作用部の大きさ等に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜10,000nmであることが好ましく、0.1〜1,000nmであることがより好ましい。前記口径が0.1nm未満である場合には、Hのような分子が吸着できないことがあり、10,000nmを超える場合には、干渉色が変化しないことがある。
【0015】
前記細穴の平均深さとしては、特に制限はなく、前記細穴が形成される層(以下「細穴形成層」と称するころがある)の厚み等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.0〜10,000nmであることが好ましく、1.0〜1,000nmであることがより好ましい。前記深さが1.0nm未満である場合には、干渉色がみられないことがある。なお、前記平均深さとは、前記複数の細穴が形成された側の面に対して垂直な断面に存在する該複数の細穴から任意に選択した10個の平均深さを意味する。
また、前期細穴形成層において、前期開口部が形成された面とは反対側の面にも開口部を有する貫通孔であってもよく、前期開口部が形成された面とは反対側の面に開口部を有しない非貫通孔であってもよいが、より大きな表面積を確保する観点から前者の方が好ましい。
【0016】
前記最大口径A対する前記平均深さの比(B/A)(以下「アスペクト比」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.01〜1,000であることが好ましく、1.0〜100であることがより好ましい。前記アスペクト比が0.01未満である場合には、十分な感度が得られないことがある。
【0017】
単位体積当たりに存在する全ての前記細穴の表面積の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.0〜10cm/cmが好ましく、10〜10,000cm/cmがより好ましい。なお、前記単位体積当たりの表面積の和は、例えば、BET比表面積測定装置などにより簡便に測定することができる。
【0018】
前記細穴形成層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、セラミックス、アルミナ、シリコン、金属酸化物、ガラス、石英ガラス、ポリマー、金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記細穴形成層は、光透過性であることが好ましい。
【0019】
−標的相互作用部−
前記標的相互作用部が形成される位置としては、前記複数の細穴が形成された側の露出面の少なくとも一部である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記細穴における露出面であることが好ましく、前記細穴における露出面、及び前記細穴が形成された側の表面であることがより好ましい。
【0020】
前記標的相互作用部としては、前記標的と相互作用可能である限り、特に制限はないが、前記標的を捕捉可能な標的捕捉体であることが好ましい。
前記標的捕捉体としては、前記標的を捕捉することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素、補酵素、酵素基質、酵素阻害剤、ホスト化合物、金属、抗体、抗原、微生物、寄生虫、細菌、ウイルス、ウイルス粒子、細胞、細胞破砕物、代謝産物、核酸、ホルモン、ホルモンレセプター、レクチン、糖、生理活性物質、生理活性物質受容体、アビジン、ビオチン、アレルゲン、タンパク質、血液タンパク質、組織タンパク質、核物質、神経伝達物質、ハプテン、薬物、環境物質、化学種、これらの誘導体、などが挙げられる。また、前記標的捕捉体は、互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0021】
前記捕捉の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、物理吸着、化学吸着などが挙げられる。これらは、例えば、水素結合、分子間力(ファン・デル・ワールス力)、配位結合、イオン結合、共有結合、などにより形成され得る。
【0022】
前記標的としては、前記標的捕捉体がそれぞれ、前記酵素である場合には、例えば該酵素の補酵素であり、記補酵素である場合には、例えば該補酵素を補酵素とする酵素であり、前記ホスト化合物である場合には、例えば該ホスト化合物のゲスト化合物(包接される成分)であり、前記抗体である場合には、例えば該抗体の抗原としてのタンパク質であり、前記タンパク質である場合には、例えば該タンパク質を抗原とする抗体であり、前記核酸である場合には、例えば該核酸と相補的な核酸、チューブリン、キチン、などであり、前記ホルモンレセプターである場合には、例えば該ホルモンレセプターに受容されるホルモンであり、前記レクチンである場合には、例えば該レクチンに受容させる糖であり、前記生理活性物質受容体である場合には、例えば該生理活性物質受容体に受容される生理活性物質である。
【0023】
なお、前記標的を含む試料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細菌、ウイルス等の病原体、生体から分離された血液、唾液、組織病片等、糞尿等の排泄物などが挙げられる。更に、出生前診断を行う場合は、羊水中に存在する胎児の細胞や、試験管内での分裂卵細胞の一部を試料とすることもできる。また、これらの試料は、直接、又は必要に応じて遠心分離操作等により沈渣として濃縮した後、例えば、酵素処理、熱処理、界面活性剤処理、超音波処理、これらの組合せ等による細胞破壊処理を予め施したものを使用してもよい。
【0024】
前記ホスト化合物としては、分子認識能(ホスト−ゲスト結合能)を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、筒状(一次元)の空洞を有するもの、層状(二次元)の空洞を有するもの、かご状(三次元)の空洞を有するもの、などが好適に挙げられる。
【0025】
前記筒状(一次元)の空洞を有するホスト化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、デオキシコール酸、ジニトロジフェニル、ジオキシトリフェニルメタン、トリフェニルメタン、メチルナフタリン、スピロクロマン、PHTP(ペルヒドロトリフェニレン)、セルロース、アミロース、シクロデキストリン(但し、溶液中では前記空洞がかご状)、などが挙げられる。
【0026】
前記尿素が捕捉可能な標的としては、例えば、n−パラフィン誘導体などが挙げられる。
前記チオ尿素が捕捉可能な標的としては、例えば、分岐状又は環状の炭化水素などが挙げられる。
前記デオキシコール酸が捕捉可能な標的としては、例えば、パラフィン類、脂肪酸、芳香族化合物、などが挙げられる。
前記ジニトロジフェニルが捕捉可能な標的としては、例えば、ジフェニル誘導体などが挙げられる。
【0027】
前記ジオキシトリフェニルメタンが捕捉可能な標的としては、例えば、パラフィン類、n−アルケン類、スクアレン、などが挙げられる。
前記トリフェニルメタンが捕捉可能な標的としては、例えば、パラフィン類などが挙げられる。
前記メチルナフタリンが捕捉可能な標的としては、例えば、C16までのn−パラフィン類、分岐状パラフィン類、などが挙げられる。
前記スピロクロマンが捕捉可能な標的としては、例えば、パラフィン類などが挙げられる。
前記PHTP(ペルヒドロトリフェニレン)が捕捉可能な標的としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、各種高分子物質、などが挙げられる。
前記セルロースが捕捉可能な標的としては、例えば、HO、パラフィン類、CCl、色素、ヨウ素、などが挙げられる。
前記アミロースが捕捉可能な標的としては、例えば、脂肪酸、ヨウ素、などが挙げられる。
【0028】
前記シクロデキストリンは、デンプンのアミラーゼによる分解で生成する環状のデキストリンであり、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンの3種が知られている。本発明においては、前記シクロデキストリンとして、これらの水酸基の一部を他の官能基、例えば、アルキル基、アリル基、アルコキシ基、アミド基、スルホン酸基、などに変えたシクロデキストリン誘導体も含まれる。
【0029】
前記シクロデキストリンが捕捉可能な標的としては、例えば、チモール、オイゲノール、レゾルシン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン等のフェノール誘導体、サリチル酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等の安息香酸誘導体及びそのエステル、コレステロール等のステロイド、アスコルビン酸、レチノール、トコフェロール等のビタミン、リモネン等の炭化水素類、イソチオシアン酸アリル、ソルビン酸、ヨウ素分子、メチルオレンジ、コンゴーレッド、2−p−トルイジニルナフタレン−6−スルホン酸カリウム塩(TNS)、などが挙げられる。
【0030】
前記層状(二次元)のホスト化合物としては、例えば、粘土鉱物、グラファイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ゼオライト、などが挙げられる。
【0031】
前記粘土鉱物が捕捉可能な標的としては、例えば、親水性物質、極性化合物、などが挙げられる。
前記グラファイトが捕捉可能な標的としては、例えば、O、HSO、ハロゲン、ハロゲン化物、アルカリ金属、などが挙げられる。
前記モンモリロナイトが捕捉可能な標的としては、例えば、ブルシン、コデイン、o−フェニレンジアミン、ベンジジン、ピペリジン、アデニン、グイアニン及びこれらのリポシド、などが挙げられる。
前記ゼオライトが捕捉可能な標的としては、例えば、HOなどが挙げられる。
【0032】
前記かご状(三次元)のホスト化合物としては、例えば、ヒドロキノン、気体水化物、トリ−o−チモチド、オキシフラバン、ジシアノアンミンニッケル、クリプタンド、カリックスアレーン、クラウン化合物、などが挙げられる。
【0033】
前記ヒドロキノンが捕捉可能な標的としては、例えば、HCl、SO、アセチレン、希ガス元素、などが挙げられる。
前記気体水化物が捕捉可能な標的としては、例えば、ハロゲン、希ガス元素、低級炭化水素、などが挙げられる。
前記トリ−o−チモチドが捕捉可能な標的としては、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、などが挙げられる。
前記オキシフラバンが捕捉可能な標的としては、例えば、有機塩基などが挙げられる。
前記ジシアノアンミンニッケルが捕捉可能な標的としては、例えば、ベンゼン、フェノール、などが挙げられる。
前記クリプタンドが捕捉可能な標的としては、例えば、NH4+、各種金属イオン、などが挙げられる。
【0034】
前記カリックスアレーンは、フェノールとホルムアルデヒドとから適当な条件で合成されるフェノール単位をメチレン基で結合した環状オリゴマーであり、4〜8核体が知られている。これらの内、p−t−ブチルカリックスアレン(n=4)が捕捉可能な標的としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=5)が捕捉可能な標的としては、例えば、イソプロピルアルコール、アセトン、などが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=6)が捕捉可能な標的としては、例えば、クロロホルム、メタノール、などが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=7)が捕捉可能な標的としては、例えば、クロロホルムなどが挙げられる。
【0035】
前記クラウン化合物としては、電子供与性のドナー原子として酸素を持つクラウンエーテルのみではなく、そのアナログとして窒素、硫黄などのドナー原子を環構造構成原子として持つ大環状化合物を含み、また、クリプタンドを代表する2個以上の環よりなる複環式クラウン化合物も含まれ、例えば、シクロヘキシル−12−クラウン−4、ジベンゾ−14−クラウン−4、t−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、18−クラウン−6、トリベンゾ−18−クラウン−6、テトラベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−26−クラウン−6、などが挙げられる。
【0036】
前記クラウン化合物が捕捉可能な標的としては、例えば、Li,Na、K等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属などの各種金属イオン、NH4+、アルキルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、芳香族ジアゾニウムイオンなどが挙げられ、該クラウン化合物はこれらと錯体を形成する。また、該クラウン化合物が捕捉可能な標的としては、これら以外にも、酸性度が比較的大きいC−H(アセトニトリル、マロンニトリル、アジポニトリルなど)、N−H(アニリン、アミノ安息香酸、アミド、スルファミド誘導体など)、O−H(フェノール、酢酸誘導体など)ユニットを有する極性有機化合物、などが挙げられ、該クラウン化合物はこれらと錯体を形成する。
【0037】
前記ホスト化合物の空洞の大きさ(径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、安定した分子認識能(ホスト−ゲスト結合能)を発揮し得る観点から、0.1nm〜2.0nmであるのが好ましい。
【0038】
なお、前記ホスト化合物は、例えば、単分子系ホスト化合物、多分子系ホスト化合物、高分子系ホスト化合物、無機系ホスト化合物、などに分類することもできる。
前記単分子系ホスト化合物としては、例えば、シクロデキストリン、クラウン化合物、シクロファン、アザシクロファン、カリックスアレーン、シクロトリペラトリレン、スフェランド、キャビタンド、環状オリゴペプチド、などが挙げられる。
前記多分子系ホスト化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、デオキシコール酸、ペルヒドロトリフェニレン、トリ−o−チモチド、などが挙げられる。
前記高分子系ホスト化合物としては、例えば、セルロース、デンプン、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、などが挙げられる。
前記無機系ホスト化合物としては、例えば、層間化合物、ゼオライト、Hofmann型錯体、などが挙げられる。
【0039】
前記抗体としては、抗原と特異的に抗原抗体反応を生じるものであれば、特に制限はなく、例えば、多クローン性抗体であっても、単クローン性抗体であってもよく、更にはIgG、IgM、IgE、IgGのFab’、Fab、F(ab’)なども含まれる。
【0040】
前記抗原としては、特に制限はなく、前記抗体の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス抗原、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、HLA抗原、などが挙げられる。
【0041】
前記血漿蛋白としては、例えば、免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)、補体成分(C3,C4,C5,C1q)、CRP、α−アンチトリプシン、α−マイクログロブリン、β−マイクログロブリン、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチン、などが挙げられる。
【0042】
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、CA125、CA15−3、SCC抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、PIVKA−II、γ−セミノプロテイン、TPA、エラスターゼI、神経特異エノラーゼ(NSE)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)、などが挙げられる。
【0043】
前記アポ蛋白としては、例えば、アポA−I、アポA−II、アポB、アポC−II、アポC−III、アポE、などが挙げられる。
【0044】
前記ウイルス抗原としては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)関連抗原、C型肝炎ウイルス(HVC)関連抗原、HTLV−I、HIV、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、などが挙げられる。
前記HCV関連抗原としては、例えば、HCVc100−3リコビナント抗原、pHCV−31リコビナント抗原、pHCV−34リコビナント抗原などが挙げられ、それらの混合物が好ましく使用できる。前記HIV関連抗原としては、ウイルス表面抗原などが挙げられ、例えば、HIV−I env.gp41リコビナント抗原、HIV−I env.gp120リコビナント抗原、HIV−I gag.p24リコビナント抗原、HIV−II env.p36リコビナント抗原、などが挙げられる。
また、ウイルス以外の感染症としては、MRSA、ASO、トキソプラズマ、マイコプラズマ、STD、などが挙げられる。
【0045】
前記自己抗体としては、例えば、抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体、抗核抗体、リュウマチ因子、抗ミトコンドリア抗体、ミエリン抗体、などが挙げられる。
【0046】
前記凝固・線溶因子としては、例えば、フィブリノゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プラスミノゲン、α−プラスミンインヒビター、アンチトロンビンIII、β−トロンボグロブリン、第VIII因子、プロテインC、プロテインS、などが挙げられる。
【0047】
前記ホルモンとしては、例えば、下垂体ホルモン(LH、FSH、GH、ACTH、TSH、プロラクチン)、甲状腺ホルモン(T、T、サイログロブリン)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、性腺ホルモン(hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL)、膵・消化管ホルモン(インスリン、C−ペプチド、グルカゴン、ガストリン)、その他(レニン、アンジオテンシンI,II、エンケファリン、エリスロポエチン)、などが挙げられる。
【0048】
前記血中薬物としては、例えば、カルバマゼピン、プリミドン、バルプロ酸等の抗てんかん薬、ジゴキシン、キニジン、ジギトキシン、テオフィリン等の循環器疾患薬、ゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン等の抗生物質、などが挙げられる。
【0049】
前記タンパク質としては、多くの重金属、特に亜鉛、カドミウム、銅、水銀、等に高い親和性を示す低分子量(約6000〜13000)のもの、などが好適に挙げられる。これらのタンパク質は、動物の肝臓、腎臓、その他の組織中に存在し、最近では微生物体内にも存在することが見出されている。また、これらのタンパク質は、システイン含有量が多く、芳香族の残基を殆ど含まないアミノ酸分布を呈しており、生体内においてカドミウム、水銀などの解毒化機能を有する物質であるとともに、亜鉛,銅など生体に必須の微量金属の貯蔵と、生体内における分布にも関与している重要な物質である。
【0050】
前記重金属としては、例えば、アルキル水銀化合物(R−Hg)、水銀又はその化合物(Hg)、カドミウム又はその化合物(Cd)、鉛又はその化合物(Pb)、六価クロム(Cr6+)、銅又はその化合物(Cu)、亜鉛又はその化合物(Zn)、シアン、六価クロム、砒素、セレン、マンガン、ニッケル、鉄、亜鉛、セレン、スズ、などが挙げられる。
【0051】
−その他の層−
本発明の前記標的検出用基材は、前記細穴形成層以外にも必要に応じてその他の層を有していてもよい。
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材、光干渉層、などが挙げられる。
【0052】
−−基材−−
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス、プラスチックス、などで形成されたものが好適に挙げられる。
前記基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、平板状であることが好ましい。
【0053】
−−光干渉層−−
前記光干渉層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、該光干渉層と接する層の屈折率と異なる屈折率を有する異屈折率膜を少なくとも1層有していることが好ましい。
前記異屈折率膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、誘電体膜、酸素化合物を含む膜などが挙げられ、また、その数も2以上であってもよく、2以上の場合にはそれぞれの該異屈折率膜の屈折率が互いに異なっていてもよい。
前記酸素化合物としては、特に制限はなく、公知の酸素化合物の中から適宜選択することができ、例えば、金属酸化物、非金属酸化物、などが挙げられる。
前記金属酸化物としては、特に制限はなく、公知の金属酸化物の中から適宜選択することができ、例えば、Ta、TiO、SiO、などが好適に挙げられる。
前記非金属酸化物としては、特に制限はなく、公知の非金属酸化物の中から適宜選択することができる。
【0054】
前記異屈折率膜の厚み(物理膜厚)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、0.01〜5.0μmが特に好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、前記干渉光の波長変化に対する透過率のグラフにおいてリップルが発生しない場合があり、100μmを超えると、前記リップルが多く発生し過ぎる場合があり、好ましくない。
【0055】
前記異屈折率膜の密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.0〜3.0g/cmが好ましく、1.2〜2.6g/cmがより好ましく、1.4〜2.6g/cmが特に好ましい。前記密度が、1.0g/cm未満であると、前記異屈折率膜が脆くなる結果、前記光干渉基材自体の耐久性が劣ることとなり、3.0g/cmを超えると、前記リップルの発生する数が不適切となる場合があり、好ましくない。
【0056】
前記異屈折率膜(前記光干渉層)を形成する方法としては、公知の成膜方法により形成することができ、特に制限はないが、例えば、EB(電子線)蒸着法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、などが好適に用いられる。
【0057】
前記光干渉層における前記異屈折率膜の層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、該異屈折率膜が1層である場合が好ましい。前記異屈折率膜が、1層であったとしても照射された光を干渉して干渉光として放射し、該干渉光の波長変化に対する透過率のグラフにおいて、リップルを生じさせ、該リップルを利用した波長変化に基づく検出を高価な測定装置等を用いることなく、少ない測定誤差で簡便かつ迅速にしかも極めて高感度で効率的に検出可能であり、本発明の標的検出用基材及び標的検出装置を低コストで量産することができる点で有利である。また、前記干渉光の波長を可視光域に容易に調整することができ、前記酸化膜の厚みや材質によっては、該光干渉層による干渉光が干渉色を示すことがあり、この場合、「プレカラード基材」として使用することもできる。
【0058】
前記同屈折率膜としては、前記基材及び細穴形成層の少なくともいずれかの屈折率と略同等屈折率を有している限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0059】
前記基材及び光干渉層が形成される位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材(最下層)と前記光干渉層(中間層)と前記細穴形成層(最上層)としたもの、などが挙げられる。
【0060】
−−構造性発色−−
前記構造性発色は、モルフォ蝶翅の鱗粉の発色基本原理である多層薄膜干渉理論に基づき、構造発色体(膜、層)に電場、磁場、温度、光(例えば自然光、赤外線光、紫外線光)などの外部刺激を与えたときに、該構造発色体(膜、層)の厚みとその屈折率に応じて特定波長の光が反射する結果、該構造発色体の表面で生ずる発色である。前記構造性発色では、染料や顔料は不要である。
【0061】
ここで、前記構造性発色の原理について下記に示す。
図1及び図2に示すように、細穴形成層40(又は、基材20)に前記光照射手段より光が照射された際に該細穴形成層40(又は、基材20)による干渉光の波長(λ)は、下記式(1)に示す条件で強められ、下記式(2)に示す条件で弱められる。
【0062】

【0063】

【0064】
前記式(1)及び前記式(2)において、λは、干渉光の波長(nm)を意味し、αは、前記細穴形成層(又は、前記標的検出用基材における各層)への光の入射角(度)を意味し、tは、前記標的検出用基材における光透過性を有する全ての層の厚み(nm)を意味し、lは、前記標的検出用基材における光透過性を有する層の数を意味し、nは、前記細穴形成層(又は、前記標的検出用基材における光透過性を有する層)の屈折率を意味し、mは、1以上の整数を意味する。
【0065】
前記細穴形成層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、810nm以下が好ましく、10nm〜810nmがより好ましい。前記厚みを適宜変更することにより、前記構造性発色の色(波長)を変化させることができる。
【0066】
以下、図3を参照しながら本発明の標的検出用基材の一例について説明する。図3に示すように、前記標的検出用基材は、基材20と光干渉層30と細穴形成層40とをこの順に有し、細穴形成層40には、開口部が円形である細穴45が形成されている。該開口部は二次元的に規則的に配列され、細穴45が形成された面に対して垂直な面に存在する細穴45の形状は直線上である。また、細穴形成層40において細穴45は、貫通して形成された貫通孔を形成している。細穴45が形成された面には前記標的相互作用部(図示せず)を有し、例えば、前記標的を有する溶液中に前記標的検出用基材を浸漬することにより該標的相互作用部が前記標的と相互作用される。
【0067】
本発明の標的検出用基材は、前記複数の細穴を有することにより前記細穴が形成されない場合よりも表面積が飛躍的に増大される。表面積が飛躍的に増大した前記露出面の少なくとも一部に前記標的相互作用部を有することにより該露出面に担持された該標的相互作用部の数が飛躍的に増大され、前記標的と相互作用する前後において屈折率が大きく変化される。この結果、前記干渉光の透過率のグラフにおける波長シフトが極めて大きくなり、前記標的を極めて高感度に検出可能である点で有利である。また、本発明の標的検出用基材は、各種分野において使用することができ、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を少ない測定誤差で簡便かつ迅速にしかも極めて高感度で効率的に検出でき、更には定量も可能な標的検出装置に好適に用いることができ、特に本発明の標的検出装置に好適に用いることができる。
【0068】
(標的検出用基材の製造方法)
本発明の前記標的検出用基材の製造方法は、表面に細穴を形成する細穴形成工程を含む。
前記細穴形成工程としては、前記表面に細穴を形成する限り、特に制限はなく、公知の細穴形成方法の中から適宜選択することができるが、例えば、後述する第1の形態から第6の形態が好適に挙げられる。該第1の形態から第4の形態の製造方法は、前記細穴を互いに独立して形成する方法として特に好適であり、第5の形態から第6の形態の製造方法は、前記細穴の少なくとも一部を互いに連結して形成する方法として特に好適である。なお、前記表面は、前記細穴が形成される層における表面を意味する。
【0069】
前記第1の形態は、光線、X線及び電子線の少なくともいずれかを用いたリソグラフィーにより行われ、必要に応じてその他の工程を含む。
前記光線としては、例えば、i線、g線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、などが挙げられる。
前記第1の形態としては、光線、X線及び電子線の少なくともいずれかを用いて露光する限り、特に制限はなく、公知のリソグラフィー技術の中から適宜選択した方法により前記細穴を形成することができるが、前記細穴が形成された側の面における表面積を飛躍的に増大させる観点から、電子線が好ましい。
前記第1の形態における製造方法は、前記光線、X線及び電子線から適宜選択したものにより露光することにより、前記細穴における最大口径を任意に選択することができ、露光時におけるマスクを適宜選択することにより、前記細穴における開口部の形状を任意に選択することができる点で有利である。
【0070】
前記第2の形態は、疎水性溶媒と、該疎水性溶媒に溶解可能なポリマーとを混合した溶液で膜を形成し、該膜の表面を結露させつつ、前記疎水性溶媒を蒸発させることにより行われ、必要に応じてその他の工程を含む。
前記疎水性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン含有有機溶媒、エステル基含有有機溶媒、炭化水素(例えば、芳香族炭化水素)などが挙げられる。
前記ハロゲン含有有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。
前記エステル基含有有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記ポリマーとしては、疎水性溶媒に溶解可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生分解性ポリマー、両親媒性ポリマー、などが好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、などが挙げられる。
前記両親媒性ポリマーは、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、などが挙げられる。
前記膜の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記溶液を滴下する方法、前記溶液を塗布する方法、などが挙げられる。
前記膜の表面を結露させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、雰囲気を高湿度にする方法、高湿度の気体を前記膜に吹き付ける方法、などが挙げられる。
前記第2の形態における製造方法は、前記ポリマー及び湿度条件などを調整することにより、前記細穴における開口部の開口径及び形状を調整することができる点で有利である。
【0071】
前記第3の形態は、陽極基材を酸性溶液中に浸漬させ、該陽極基材を陽極酸化することにより行なわれ、必要に応じてその他の工程を含む。
前記陽極基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミニウム、シリコンなどが好適に挙げられる。
前記酸性溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、シュウ酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記陽極酸化の方法としては、特に制限はなく、公知の陽極酸化の方法の中から適宜選択することができる。
前記第3の形態は、前記印加する電圧及び電流の数値、印加時間などを適宜選択することにより前記細穴における開口部の開口径を調整することができる点で有利である。
【0072】
前記第4の形態は、標的検出用材料基材の表面を、酸化させて酸化物パターン部を形成した後、非酸化物パターン部を除去することにより行われ、必要に応じてその他の工程を含む。
【0073】
前記標的検出用材料基材としては、前記細穴が形成される前の状態である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記基材上に前記光干渉層と前記細穴が未形成の導電性表面(導電性層)からなるものなどが挙げられる。
前記酸化物パターン部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すすることができるが、例えば、以下の方法などが好適に挙げられる。
即ち、前記標的検出用材料基材が、導電性表面を少なくとも有してなり、
前記酸化物パターン部の形成が、複数の溝が互いに略平行になるように形成されたラインパターンを有する酸化物パターン部形成用導電性基材を、前記標的検出用材料基材の導電性表面に当接させ、前記酸化物パターン部形成用導電性基材と、前記導電性表面との間に電圧を印加させ、前記導電性表面に前記ラインパターンと同じ形状の前記酸化物パターン部を形成することにより行われる方法である。
前記酸化物パターン部形成用導電性基材としては、例えば、導電性シリコン等が好適に挙げられる。
前記導電性表面としては、例えば、導電性シリコン等が好適に挙げられる。
【0074】
前記酸化物パターン部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、格子状が好ましい。この場合、前記非酸化物パターン部は、独立して複数形成される。
【0075】
前記除去の方法としては、前記非酸化部を除去することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エッチングによる方法が好ましい。
前記エッチングの方法としては、前記非酸化物パターンの材料により適宜選択する必要があるが、例えば、アルカリ性又は酸性の溶液に浸漬する方法などが挙げられる。
【0076】
前記溝の幅方向の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜10,000nmが好ましい。
なお、前記溝の幅方向の長さとは、前記複数の溝から任意に選択した10個の幅方向の平均長さを意味する。
前記印加する電圧の数値及び印加時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第4の形態は、前記溝の幅方向の長さを調整することにより前記細穴における開口部の開口径を任意に調整することができ、更に、簡便かつ迅速に低コストで前記細穴を大量に量産することができる点で有利である。
【0077】
前記第5の形態は、微粒子を堆積させて焼結することにより細穴を形成する焼結工程を含み、必要に応じてその他の工程を含む。
前記微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属微粒子、金属酸化物微粒子、ポリマー微粒子、半導体微粒子、生体微粒子などが好適に挙げられる。
前記焼結の温度としては、前記微粒子の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、50〜1,500℃が好ましい。
【0078】
前記第6の形態は、2種以上の材料からなる前記標的検出用材料基材を加熱処理することにより、該標的検出用材料基材において少なくと最表面に設けられた層を2層以上の層に層分離させ、該層分離させた層の中から少なくとも1層を溶出させて行い、必要に応じてその他の工程を含む。
前記2種以上の材料からなる標的検出用材料基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、NaO−B−SiO系ガラス基材などが好適に挙げられる。前記標的検出用材料基材が、前記NaO−B−SiO系ガラス基材である場合には、該NaO−B−SiO系ガラス基材を加熱処理することによりNaO−B層と、SiO層とに層分離(分層)させることができ、更に適宜選択した酸性の溶液に浸漬させることにより、前記NaO−B層のみを溶出させ、前記細穴の少なくとも一部が互いに連結して形成された標的検出用基材を製造することができる。
【0079】
<波長変化検出手段>
前記波長変化検出手段は、前記干渉光の進路に設けられ、前記干渉光の波長変化を検出する機能を有する。
前記波長変化検出手段としては、前記機能を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明の標的検出装置においては、前記光干渉手段が、本発明の前記標的検出用基材を有することにより、前記標的と相互作用する前後において、屈折率が大きく変化し、干渉光の波長変化に対する透過率のグラフにおける波長シフトが極めて大きくなる。このため、前記標的検出装置は、前記標的を極めて高感度に検出可能であり、例えば、(1)前記干渉光の波長変化に対する透過率のグラフにおいて、該グラフにおけるリップル又は主波長を用いることにより波長変化を検知可能であるもの、(2)目視により前記干渉色の変化を検知可能であるもの、などが好適に挙げられる。
また、検出感度を更に高めるために、例えば、(3)特定波長の光のみを透過可能であり、該特定波長の光が透過したことを検知可能であるもの、(4)干渉光の波長変化前におけるスペクトルと、干渉光の波長変化後におけるスペクトルとを測定し、その差スペクトルを測定可能であるもの、などが特に好適に挙げられる。
【0080】
これらの中でも、前記(3)のものの場合には、前記波長変化検出手段を、前記標的が前記光干渉手段と相互作用する前においては、前記干渉光を透過不可能とし、かつ前記標的が前記光干渉手段と相互作用した後においては、波長変化した特定波長の前記干渉光を透過可能とすることにより、あるいは、前記標的が前記光干渉手段と相互作用する前においては、特定波長の前記干渉光を透過可能とし、かつ前記標的が前記光干渉手段と相互作用した後においては、波長変化した前記干渉光を透過不可能とすることにより、極めて高感度に検出可能であり、前記波長変化検出手段が前記干渉光の透過を検出したことをもって、前記干渉光の波長変化を検出することができ、前記標的が前記光干渉手段と相互作用したこと、即ち試料等中における該標的の存在を簡便にかつ迅速にしかも極めて高感度に検出することができる。
更に、透過光量の大小(透過光の強度)によって前記標的の定量も行うことができる。即ち、前記干渉光の透過光量(透過光の強度)と、前記光干渉手段(前記標的検出用基材)による前記標的の捕捉量との関係を示す検量線を予め作成しておき、前記標的を含有する試料について該標的の含有量を測定した時に、前記干渉光の透過光量(透過光の強度)を測定すれば、前記検量線から前記光干渉手段(前記標的検出用基材)により捕捉された前記標的の量を定量することができる。
【0081】
また、前記(4)のものの場合には、該波長変化検出手段が、干渉光の波長の変化前後におけるスペクトル差、即ち差スペクトルを測定するので、該波長変化をスペクトル強度に変換することができ、任意にその増幅が可能である。その結果、増幅したスペクトル強度として検出することができ、簡便にかつ迅速にしかも極めて高感度な検出を行うことができる。
更に、スペクトル強度を測定することによって前記標的の定量も行うことができる。即ち、前記干渉光の透過光量(透過光の強度)と、前記光干渉手段(前記標的検出用基材)による前記干渉光の波長変化(波長シフト)の差スペクトルにおける波長強度との関係を示す検量線を予め作成しておき、また、該差スペクトルの波長強度と、前記光干渉手段(前記標的検出用基材)により捕捉された前記標的の量との関係を示す検量線とを予め作成しておき、前記標的を含有する試料について該標的の含有量を測定した時に、前記干渉光の波長変化(波長シフト)の差スペクトルの波長強度を測定すれば、前記検量線から前記光干渉手段(前記標的検出用基材)により捕捉された前記標的の量を定量することができる。
【0082】
前記(3)のものの具体例としては、干渉フィルタと、該干渉フィルタを透過した透過光を検知可能な光検知センサーとの組合せ、などが好適に挙げられる。この場合、該干渉フィルタを、前記標的が前記光干渉手段と相互作用する前は前記干渉光を透過不可能でかつ前記標的が前記光干渉手段と相互作用した後の特定波長の前記干渉光を透過可能とすることにより、あるいは、前記標的が前記光干渉手段と相互作用する前は、特定波長の前記干渉光を透過可能でかつ前記標的が前記光干渉手段と相互作用した後は、波長変化した前記干渉光を透過不可能とすることにより、前記光検知センサーが前記干渉フィルタを透過した前記干渉光を検出したことをもって、前記干渉光の波長変化(波長シフト)が検出され、前記標的が前記光干渉手段と相互作用したこと、即ち試料等中における該標的の存在が極めて高感度に検出される。また、前記干渉フィルタを、前記標的が前記光干渉手段と相互作用した後の特定波長の前記干渉光は透過可能とした場合に、あるいは、前記標的が前記光干渉手段と相互作用する前の特定波長の前記干渉光を透過可能とした場合に、該干渉光の透過光量を前記光検知センサーが測定することにより、前記標的の定量を行うことができる。
【0083】
前記干渉フィルタとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を使用してもよい。
前記干渉フィルタは、特定の波長の入射光のみを干渉する、該特定の波長以外の波長の入射光は透過可能である。
前記光検知センサーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CdSセル、フォトダイオード、光電管、焦電センサー、CCDセンサー、PSDセンサーなどが挙げられる。
前記(1)及び(4)のものの具体例としては、公知の分光光度計などが好適に挙げられる。
【0084】
本発明の標的検出装置においては、前記光照射手段が光を照射する。前記光干渉手段が、前記光照射手段から照射された光を干渉して干渉光として放射する。前記光干渉手段は、前記細穴を有する標的検出用基材を有するため、該標的と相互作用して該相互作用前後における屈折率が大きく変化し、前記光照射手段により照射された光の干渉光の透過率のグラフにおいて極めて大きく波長が変化(波長シフト)される。前記波長変化検出手段が、該波長シフトした干渉光を検出することにより、前記標的が極めて高感度に検出される点で有利である。このため、該波長変化検出手段が検出した前記干渉光の波長変化により、前記標的が前記光干渉手段と相互作用したこと、即ち、試料等中における該標的の存在が極めて高感度に検出される。
本発明の標的検出装置は、各種分野において使用することができ、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を効率よくしかも確実にかつ簡便に検出することができ、更にはこれらの定量も行うことができ、診断装置、分析装置、定量装置等として好適に使用することができる。
【0085】
(標的検出方法)
本発明の標的検出方法は、光照射工程と、波長変化検出工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の標的検出方法は、本発明の前記標的検出装置、本発明の前記標的検出用基材を使用して好適に実施することができる。なお、本発明の前記標的検出装置を実施すると、本発明の標的検出方法を実施したこととなる。
【0086】
前記光照射工程は、前記標的と相互作用可能な前記光干渉手段(前記標的検出用基材)に対して光を照射し干渉光として放射させる工程である。
前記光干渉手段(前記標的検出用基材)としては、上述した通りであり、前記標的と相互作用した後で干渉光の波長を変化させる機能を有するものが好ましい。
前記光干渉手段(前記標的検出用基材)に対し光を照射するには、前記光照射手段を好適に使用することができる。
前記干渉光の放射は、前記光干渉手段(前記標的検出用基材)に光を照射することにより、該光干渉手段が該光を反射又は透過することにより行われる。
【0087】
前記波長変化検出工程は、前記干渉光の波長変化を検出する工程である。
なお、前記干渉光の波長変化の検出には、前記波長変化手段を好適に使用することができる。
前記波長変化検出工程における、前記干渉光の波長変化の検出は、前記標的検出装置における前記波長変化検出手段に関する説明として上述した通りであり、例えば、前記波長変化検出手段を、前記標的が前記光干渉手段と相互作用する前においては、前記干渉光を透過不可能とし、かつ前記標的が前記光干渉手段と相互作用した後においては、波長変化した特定波長の前記干渉光を透過可能とすることにより、あるいは、前記標的が前記光干渉手段と相互作用する前においては、特定波長の前記干渉光を透過可能とし、かつ前記標的が前記光干渉手段と相互作用した後においては、波長変化した前記干渉光を透過不可能とすることにより、前記波長変化検出手段が前記干渉光の透過を検出したことをもって、前記干渉光の波長変化を検出することができ、前記標的が前記光干渉手段と相互作用したこと、即ち試料等中における該標的の存在を簡便にかつ迅速にしかも極めて高感度に検出することができる。
更に、透過光量の大小(透過光の強度)によって前記標的の定量も行うことができる。即ち、前記干渉光の透過光量(透過光の強度)と、前記光干渉手段(前記標的検出用基材)による前記標的の捕捉量との関係を示す検量線を予め作成しておき、前記標的を含有する試料について該標的の含有量を測定した時に、前記干渉光の透過光量(透過光の強度)を測定すれば、前記検量線から前記光干渉手段(前記標的検出用基材)により捕捉された前記標的の量を定量することができる。
【0088】
また、例えば、前記波長変化検出手段により、前記干渉光の波長の変化前後におけるスペクトル差、即ち差スペクトルを測定することにより、更に高い検出感度でそれを簡便かつ確実に検出可能である。この場合、該波長変化をスペクトル強度に変換することができ、任意にその増幅も可能である。その結果、増幅したスペクトル強度として検出することができ、簡便にかつ迅速にしかも極めて高感度な検出を行うことができる。
更に、スペクトル強度を測定することによって前記標的の定量も行うことができる。即ち、前記干渉光の透過光量(透過光の強度)と、前記光干渉手段(前記標的検出用基材)による前記干渉光の波長変化(波長シフト)の差スペクトルにおける波長強度との関係を示す検量線を予め作成しておき、また、該差スペクトルの波長強度と、前記光干渉手段(前記標的検出用基材)により捕捉された前記標的の量との関係を示す検量線とを予め作成しておき、前記標的を含有する試料について該標的の含有量を測定した時に、前記干渉光の波長変化(波長シフト)の差スペクトルの波長強度を測定すれば、前記検量線から前記光干渉手段(前記標的検出用基材)により捕捉された前記標的の量を定量することができる。
【0089】
本発明の標的検出方法においては、前記光照射工程において、標的と相互作用可能な光干渉手段(前記標的検出用基材)に対して光を照射し干渉光として放射させる。前記波長変化検出工程において、前記干渉光の波長変化を検出する。このため、該波長変化検出手段が検出した前記干渉光の波長変化により、前記標的が前記光干渉手段(前記標的検出用基材)と相互作用したこと、即ち、試料等中における該標的の存在が検出される。
本発明の標的検出方法においては、前記光干渉手段として前記標的検出用基材を使用する場合には、干渉光の波長変化に対する透過率のグラフにおいて波長シフトが極めて大きく、極めて高感度に検出することができる点で有利である。本発明の標的検出方法は、各種分野において使用することができ、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を効率よくしかも確実にかつ簡便に検出することができ、更にはこれらの定量も行うことができ、診断方法、分析方法、定量方法等として好適に使用することができる。
【0090】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例は、本発明の前記標的検出用基材の製造方法により製造した本発明の前記標的検出用基材を備えた本発明の前記標的検出装置を、本発明の前記標的検出装置の製造方法により製造する内容である。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
−−基材の作製−−
前記基材としてガラス基材〔SCHOTT DESAG AG社製、B270−SUPERWITE(白板ガラス)、50mm×50mm、厚み2.0mm〕と、ターゲットとしてTaとを用いて、イオンアシスト法により、該ガラス基材上に前記光干渉層としてTa層を1層設け、実施例1の基板を作製した。
なお、前記Ta層の厚み(物理膜厚)及び密度を測定したところ、前記厚みは、1.0μmであり、前記密度は2.45g/cmであった。
前記基板は、前記ガラス基材上にTa層を1層設けることにより作製することができ、低コストで、しかも効率よく作製することができた。
【0092】
−標的検出用基材(光干渉手段)の製造−
ポリ−L−乳酸(分子量85,000〜160,000)のクロロホルム溶液(1g/l)と、下記構造式(1)で表されるポリマーのベンゼン溶液(1g/l)とを、4:1の質量比で混合した溶液を調製した。該溶液を作製した前記基板上にキャストして、該基板上に該溶液の膜を形成させた。その後、室温で湿度80%の条件の下で該膜の表面を結露させつつクロロホルム及びベンゼンを徐々に蒸発させて複数の細穴を形成した。該細穴を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、前記最大口径Aが200nmである六角形の開口部が、中心間距離220nmの等間隔で網目状に六方最密充填配置(前記開口部が、正三角形の頂点を占める配置)で二次元的に規則的に配列していることが確認できた。また、前記細穴が形成された面に対して垂直な破断面を同様に観察したところ、前記細穴は、前記網目状の面に対して垂直方向に直線状の形状を有しており、互いに独立して形成されていることが確認できた。また、該細穴の前記平均深さBは平均200nmであり、前記アスペクト比(平均深さB/最大口径A)は、1.0である。なお、前記細穴の形成は、自己組織化反応により形成されたものである。
【0093】
次に、前記細穴を形成した基板は、公知の方法に準じ、前記標的捕捉体としてのビオチンの緩衝溶液(1.5μM)中に0.5時間浸漬させて、該基板における前記細穴にビオチンを担持した実施例2の標的検出用基材を製造した。このように製造した標的検出用基材は、前記ビオチン緩衝溶液から取り出した後、純水で洗浄し、前記細穴に担持されていないビオチンを取り除いた。
前記標的検出用基材における単位体積当たりの前記細穴の表面積の和をBET比表面積測定装置(NIKKISO社製、自動比表面積計)により測定したところ、前記表面積の和は、250cm/cmであった。
【0094】
【化1】

【0095】
−波長変化検出−
前記光照射手段として、分光光度計(日本分光社製、V560)における光源を用いた。該光照射手段より前記光干渉手段への入射角が10度となるようにして、光(キセノンランプ光)を照射した。
そして、該光照射手段より照射された光の前記光干渉手段による反射光(干渉光)の進路に、分光光度計(日本分光社製、V560)における受光部を配置して、該反射光(干渉光)のスペクトル波長を測定したところ、そのピークトップは371nm(図4の「アビジン吸着後」の線)であり、前記光干渉手段と前記標的との相互作用前に比べて約19nmの波長シフトが観察された。この19nmは、屈折率1.51で計算した場合、約6.3nmの膜厚変化に相当するものであり、これは、直径約6nmのアビジンが前記光干渉手段の表面に吸着したことに基づくものであることが確認された。以上のスペクトル測定のデータを図4に示した。
【0096】
<アビジン吸着量の計算>
前記標的検出用基材(5mm×5mm)上のアビジンの吸着量は、該標的検出用基材上における該アビジンの吸着体積/アビジン1分子の体積、により算出することができ、計算すると、(5×10×5×10×6.3)/4.0×5.5×6.0=1.2×1012個であった。次に、該標的検出用基材上のアビジンの吸着モル数は、該吸着数/アボガドロ数、により算出することができ、計算すると、1.2×1012/6.23×1023=1.93×10−12M=1.93pMであった。したがって、ここでは、干渉光の波長シフトが19nmの時のアビジン吸着量は1.93pMであることが判った。
次にアビジンの重量換算をしてみると、アビジンの分子量が約68,000として計算すると、1.93×10−12M×68,000=1.31×10−7g(131ng)となり、波長シフト1nm当たり6.9ngの吸着量に相当した(6.9ng/nm)。
【0097】
(実施例2)
−標的検出用基材(光干渉手段)の製造−
下記構造式(2)で表されるポリマーと、前記構造式(1)でポリマーとを10:1の質量比で混合したクロロホルム溶液を調製し、実施例1で作製した基板上にキャストして、該基板上に該溶液の膜を形成させた。その後、室温で湿度80%の高湿度空気を2l/minの流量で吹き付けて、該膜の表面を結露させつつ前記クロロホルムを徐々に蒸発させることにより複数の細穴を形成した。該細穴を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、前記最大口径Aが600nmの円形の開口部が、中心間距離670nmの等間隔で網目状に六方最密充填配置(前記開口部が、正三角形の頂点を占める配置)で二次元的に規則的に配列していることが確認できた。また、前記細穴が形成された面に対して垂直な破断面を同様に観察したところ、前記細穴は、前記網目状の面に対して垂直方向に直線状の形状を有しており、互いに独立して形成されていることが確認できた。また、該細穴の前記平均深さBは平均600nmであり、前記アスペクト比(平均深さB/最大口径A)は、1.0である。なお、前記細穴の形成は、自己組織化反応により形成されたものである。
【0098】
次に、前記細穴を形成した基板は、公知の方法に準じ、前記標的捕捉体としてのビオチンの緩衝溶液(1.5μM)中に0.5時間浸漬させて、該基板における前記細穴にビオチンを担持した実施例2の標的検出用基材を製造した。このように製造した標的検出用基材は、前記ビオチン緩衝溶液から取り出した後、純水で洗浄し、前記細穴に担持されていないビオチンを取り除いた。
前記標的検出用基材における単位体積当たりの前記細穴の表面積の和を実施例1と同じBET比表面積測定装置により測定したところ、前記表面積の和は、715cm/cmであった。
【0099】
【化2】

【0100】
−波長変化検出−
実施例2の標的検出用基材について、実施例1と同様にして、反射光(干渉光)のスペクトル波長を測定したところ、ピークトップは381nm(図5の破線)であり、前記光干渉手段と前記標的との相互作用前に比べて約18nmの波長シフトが観察された。この18nmは、屈折率1.51で計算した場合、約6.0nmの膜厚変化に相当するものであり、これは、直径約6.0nmのアビジンが前記光干渉手段の表面に吸着したことに基づくものであることが確認された。以上のスペクトル測定のデータを図5に示した。
【0101】
<アビジン吸着量の計算>
実施例1と同様にして、アビジン吸着量を計算したところ、波長シフト1nm当たり6.8ngの吸着量に相当することが分かった(6.8ng/nm)。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の標的検出用基材は、複数の細穴を有し、該細穴が形成された露出面の少なくとも一部に標的相互作用部を有することにより、標的と相互作用可能な表面積が飛躍的に増大され、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を高価な測定装置等を用いることなく、少ない測定誤差で簡便かつ迅速にしかも極めて高感度で効率的に検出できる標的検出装置に好適に用いることができる。本発明の標的検出装置は、本発明の標的検出用基材を有することにより、病原物質、生体物質、有毒物質等の各種標的を高価な測定装置等を用いることなく、少ない測定誤差で簡便かつ迅速にしかも極めて高感度で効率的に検出できる用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、構造性発色(干渉色の発生)を説明するための概略図である。
【図2】図2は、構造性発色の原理を説明するための概念図である。
【図3】図3は、本発明の標的検出用基材の一例を示す断面概略説明図である。
【図4】図4は、実施例1で作成した本発明の光干渉手段(標的検出用基材)自体による干渉光のスペクトルと、該光干渉手段(標的検出用基材)が標的を捕捉した際における干渉光のスペクトルとを示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2で作成した本発明の光干渉手段(標的検出用基材)自体による干渉光のスペクトルと、該光干渉手段(標的検出用基材)が標的を捕捉した際における干渉光のスペクトルとを示すグラフである。
【符号の説明】
【0104】
20 基材
30 光干渉層
40 細穴形成層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された光を干渉光として放射可能であり、標的相互作用部が標的と相互作用した際に生ずる該干渉光の波長変化を検知することによって該標的を検出するのに用いられる標的検出用基材であって、該標的検出用基材が、複数の細穴を有し、かつ、該複数の細穴が形成された側の露出面の少なくとも一部に、前記標的と相互作用可能な前記標的相互作用部を有することを特徴とする標的検出用基材。
【請求項2】
露出面の少なくとも一部が、細穴における露出面である請求項1に記載の標的検出用基材。
【請求項3】
複数の細穴が、互いに独立して形成された請求項1から2のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項4】
複数の細穴における少なくとも一部が、互いに連結して形成された請求項1から2のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項5】
細穴における開口部が、規則的に配列された請求項1から4のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項6】
細穴における開口部が、不規則的に配列された請求項1から4のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項7】
複数の細穴が形成された側の面に対して垂直な断面に存在する細穴の形状が、直線状及び曲線状の少なくともいずれかである請求項1から6のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項8】
複数の細穴が形成された側の面において、単位体積当たりに存在する全ての該細穴の表面積の和が、1.0〜10cm/cmである請求項1から7のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項9】
細穴における開口部の最大口径が、0.1〜10,000nmである請求項1から8のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項10】
複数の細穴が形成された側の面に対して垂直な断面に存在する前記複数の細穴から任意に選択した10個の平均深さが、0.1〜10,000nmである請求項1から9のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項11】
最大口径をAとし、平均深さをBとしたとき、最大口径に対する平均深さの比(B/A)が、0.01〜1,000である請求項10に記載の標的検出用基材。
【請求項12】
標的検出用基材が、複数の層を有し、該複数の層の少なくとも一層が、光干渉層であり、該光干渉層から最表面に位置し、複数の細穴を有する層までの各層が光透過性である請求項1から11のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項13】
複数の細穴を有する層が、セラミックス、アルミナ、シリコン、金属酸化物、ガラス、石英ガラス、ポリマー、及び金属から選択される少なくとも1種で形成されてなる請求項1から12のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項14】
光干渉層が、該光干渉層と接する層の屈折率と異なる屈折率を有する異屈折率膜を少なくとも1層有する請求項12から13のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項15】
異屈折率膜が、誘電体膜である請求項14に記載の標的検出用基材。
【請求項16】
異屈折率膜が、酸素化合物を含む請求項14から15のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項17】
酸素化合物が、金属酸化物及び非金属酸化物から選択される少なくとも1種である請求項16に記載の標的検出用基材。
【請求項18】
金属酸化物が、Ta、TiO及びSiOから選択される少なくとも1種である請求項17に記載の標的検出用基材。
【請求項19】
標的相互作用部が、標的を捕捉可能な標的捕捉体である請求項1から18のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項20】
標的捕捉体が、酵素、補酵素、酵素基質、酵素阻害剤、ホスト化合物、金属、抗体、抗原、微生物、寄生虫、細菌、ウイルス、ウイルス粒子、細胞、細胞破砕物、代謝産物、核酸、ホルモン、ホルモンレセプター、レクチン、糖、生理活性物質、生理活性物質受容体、アレルゲン、タンパク質、血液タンパク質、組織タンパク質、核物質、神経伝達物質、ハプテン、薬物、環境物質、化学種及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1種である請求項19に記載の標的検出用基材。
【請求項21】
ホスト化合物が、単分子系ホスト化合物、多分子系ホスト化合物、高分子系ホスト化合物及び無機系ホスト化合物から選択され、
該単分子系ホスト化合物が、シクロデキストリン、クラウン化合物、シクロファン、アザシクロファン、カリックスアレーン、シクロトリペラトリレン、スフェランド、キャビタンド、及び環状オリゴペプチドから選択され、
該多分子系ホスト化合物が、尿素、チオ尿素、デオキシコール酸、ペルヒドロトリフェニレン、トリ−o−チモチドから選択され、
該高分子系ホスト化合物が、セルロース、デンプン、キチン、キトサン及びポリビニルアルコールから選択され、
該無機系ホスト化合物が、層間化合物、ゼオライト及びHofmann型錯体から選択される請求項20に記載の標的検出用基材。
【請求項22】
基材が、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス及びポリマーから選択される少なくとも1種で形成された層を有する請求項12から21のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項23】
相互作用が、物理吸着及び化学吸着の少なくともいずれかである請求項1から22のいずれかに記載の標的検出用基材。
【請求項24】
請求項1から23のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法であって、表面に細穴を形成する細穴形成工程を含むことを特徴とする標的検出用基材の製造方法。
【請求項25】
細穴形成工程が、光線、X線及び電子線の少なくともいずれかを用いたリソグラフィーにより行われる請求項24に記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項26】
細穴形成工程が、疎水性溶媒と、該疎水性溶媒に溶解可能なポリマーとを混合した溶液で膜を形成し、該膜の表面を結露させつつ、前記疎水性溶媒を蒸発させることにより行われる請求項24に記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項27】
疎水性溶媒が、ハロゲン含有有機溶媒、エステル基含有有機溶媒及び炭化水素から選択される少なくとも1種である請求項26に記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項28】
ポリマーが、生分解性ポリマー、両親媒性ポリマー及び親水性ポリマーから選択される少なくとも1種である請求項26から27のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項29】
細穴形成工程が、陽極基材を酸性溶液中に浸漬させ、該陽極基材を陽極酸化することにより行われる請求項24に記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項30】
酸性溶液が、シュウ酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液、塩酸水溶液、及び硝酸水溶液から選択される少なくとも1種である請求項29に記載の標的検出用基材。
【請求項31】
細穴形成工程が、標的検出用材料基材の表面を、酸化させて酸化物パターン部を形成した後、非酸化物パターン部を除去することにより行われる請求項24に記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項32】
標的検出用材料基材が、導電性表面を少なくとも有してなり、
酸化物パターン部の形成が、複数の溝が互いに略平行になるように形成されたラインパターンを有する酸化物パターン部形成用導電性基材を、前記標的検出用材料基材の導電性表面に当接させ、前記酸化物パターン部形成用導電性基材と、前記導電性表面との間に電圧を印加させ、前記導電性表面に前記ラインパターンと同じ形状の前記酸化物パターン部を形成することにより行われる請求項31に記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項33】
酸化物パターン部が格子状に形成され、非酸化物パターン部が独立して複数形成された請求項31から32のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項34】
除去が、エッチングである請求項31から33のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項35】
エッチングが、アルカリ性の溶液で行われる請求項34に記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項36】
複数の溝から任意に選択した10個の幅方向の平均長さが、0.5〜10,000nmである請求項32から35のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項37】
酸化物パターン部形成用導電性基材及び導電性表面の少なくともいずれかが、導電性シリコンで形成された請求項32から36のいずれかに記載の標的検出用基材の製造方法。
【請求項38】
光を照射する光照射手段と、標的と相互作用して前記光照射手段により照射された光の干渉光の波長を変化可能な光干渉手段と、前記干渉光の進路に設けられ前記光干渉手段により放射される前記干渉光の波長変化を検出する波長変化検出手段とを有してなり、
前記光干渉手段が、請求項1から23のいずれかに記載の標的検出用基材を含むことを特徴とする標的検出装置。
【請求項39】
光照射手段が、線状の光束を照射可能である請求項38に記載の標的検出装置。
【請求項40】
光照射手段が、レーザー光照射器である請求項38から39のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項41】
波長変化検出手段が、特定波長の光のみを透過可能であり、該特定波長の光が透過したことを検知可能である請求項38から40のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項42】
波長変化検出手段が、干渉フィルタ及び該干渉フィルタを透過した透過光を検知可能な光検知センサーである請求項38から41のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項43】
波長変化検出手段が、干渉光の波長変化前におけるスペクトルと、干渉光の波長変化後におけるスペクトルとを測定し、その差スペクトルを測定可能である請求項38から42のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項44】
波長変化検出手段が、差スペクトルをスペクトル強度に変換し、該スペクトル強度を増幅可能である請求項43に記載の標的検出装置。
【請求項45】
波長変化検出手段が、分光光度計である請求項38から44のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項46】
請求項1から23いずれかに記載の標的検出用基材に対して光を照射し、標的相互作用部と、標的とを相互作用させ、該照射した光を干渉光として放射させる光照射工程と、前記干渉光の波長変化を検出する波長変化検出工程とを含むことを特徴とする標的検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−38754(P2006−38754A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221853(P2004−221853)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】