説明

標示線とその形成方法

【課題】ICタグを、故障の発生を防止しつつ簡単な作業によって道路上に配設する。
【解決手段】標示線1の施工時には、道路1に塗料2を塗布し、塗料2が冷却固化する前に、球形粒状の複数のICチップ5を球形粒状の複数のガラスビーズ4と一緒に塗料2の表面に散布する。ICチップ5は、被覆材と、被覆材の内部に封入され外部電波の受信によって動作して所定の電波を発信するICチップ本体とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上の標示線とその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−293348号公報には、電源を必要としないIDタグを塗料に混入し、その塗料を舗装道路上に印刷することにより、道路上にIDタグを配置する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−293348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法では、IDタグを混入した塗料を舗装道路上に印刷するだけで、IDタグを道路上に配設することができ、作業が簡単である。
【0005】
しかし、施工時の塗料は高温状態(約200℃)であり、このような高温状態の塗料に精密な電子部品であるIDタグを混入するため、IDタグの故障を招くおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、通信機能を有する電子部品を、故障の発生を防止しつつ簡単な作業によって道路上に配設することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の標示線は、道路に塗布される塗料と、塗料の表面に保持される複数の反射用粒状体及び複数の通信用粒状体とを備える。通信用粒状体は、被覆材と、被覆材の内部に封入され外部電波の受信によって動作して所定の電波を発信する通信部とを有する。
【0008】
また、本発明の標示線形成方法は、道路に塗料を塗布する工程と、上記複数の通信用粒状体を上記複数の反射用粒状体とともに塗料の表面に散布する工程とを備える。
【0009】
上記構成及び方法では、標示線の施工時において、作業者は、道路の所定の位置に塗料を塗布する。次に、塗料が冷却固化する前に、複数の通信用粒状体を複数の反射用粒状体とともに塗料の表面に散布する。このとき、反射用粒状体に通信用粒状体を混入しておき、これらの粒状体を一緒に散布する。
【0010】
従って、作業者は2つの粒状体をそれぞれ個別に散布する必要がなく、作業性が良好である。
【0011】
また、通信用粒状体が混入される反射用粒状体は常温であり、通信用粒状体が散布される際の塗料の温度は塗布時よりも低下しており、且つ通信機能を有する電子部品である通信部は、被覆材の内部に封入されているので、施工に起因する通信部の故障を防止することができる。
【0012】
また、施工後は、通信用粒状体が塗料の表面に保持されるので、通信部の電波特性が向上する。さらに、通信部が被覆材によって保護されるので、車両等からの荷重による通信部の破損が防止される。
【0013】
また、上記反射用粒状体と上記通信用粒状体とは、ほぼ同じ形状で且つほぼ同じ重さであることが好ましい。
【0014】
反射用粒状体とほぼ同じ形状で且つほぼ同じ重さの通信用粒状体を用いることにより、反射用粒状体に対して通信用粒状体をより均一に混入させることができ、標示線の表面における通信用粒状体(通信部)の配置密度を一段と均一化させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信機能を有する電子部品を、故障の発生を防止しつつ簡単な作業によって道路上に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の標示線を示す断面図である。
【図2】図1のガラスビーズ及びICタグを示す外観図である。
【図3】図1の標示線の使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の標示線1は、道路2に塗布される塗料3と、塗料3の表面に保持される球形粒状の複数のガラスビーズ(反射用粒状体)4と、ガラスビーズ4と同様に塗料3の表面に保持される球形粒状の複数のICタグ(通信用粒状体)5とを備える。塗料3としては、白色や黄色など様々な色の塗料が用いられる。ガラスビーズ4は、反射材として機能し、標示線1の視認性を補助する。
【0019】
標示線1には、連続線や破線として車線の進行方向に沿って描かれて路面を複数の車線に区画する車線指示線の他、例えば「止まれ」などの文字や横断歩道など、道路1上に描かれる様々な標示線が含まれる。
【0020】
図2に示すように、ICタグ5は、被覆材6と、被覆材6の内部に封入されたICタグ本体(通信部)7とからなる。ICタグ本体7は、ICチップやアンテナ等からなり、被覆材6は、耐熱性を有する樹脂によって形成される。また、ICタグ5は、ガラスビーズ4とほぼ同じ外径及び重さであることが好ましい。
【0021】
ICタグ5は、電源を必要とせず外部から所定の電波を受信することによって動作して発信する受動(パッシブ)タイプである。本実施形態では、ミリ波帯の電波を送受信するICタグ5が使用される。ICタグ5には、所定の識別情報が予め記憶され、所定の外部電波を受信した際に、記憶された識別情報に対応した変調波を発信する。
【0022】
図3に示すように、ミリ波レーダ10から電波を発信しながら走行する車両11が標示線1に近づき、ミリ波レーダ10からの電波がICタグ5に達すると、ICタグ本体7が動作して発信し、ミリ波レーダ10は、ICタグ5から発信された変調波を受信する。これにより、車両11のECU(Electric Control Unit)12は、ICタグ5の位置などを認識することができる。また、ICタグ5が表示線1の種別を特定可能な識別情報を記憶している場合、ECU12は標示線1の種別を認識することができる。
【0023】
次に、標示線1の施工について説明する。
【0024】
標示線1の施工前に、作業者は、ガラスビーズ4にICタグ5を混入し、攪拌しておく。ガラスビーズ4とほぼ同じ外径及び重さのICタグ5を用いることによって、両者をより均一な状態に混ぜ合わせることができる。なお、標示線1の施工現場でICタグ5をガラスビーズ4に混入してもよく、既に混合した状態のガラスビーズ4とICタグ5とを用いてもよい。
【0025】
ICタグ5の混入率は、標示線1の表面における単位面積当たりのガラスビーズ4の配置数とICタグ5の配置数とに応じて設定される。
【0026】
また、ガラスビーズ4に対するICタグ5の混入率が過大であると、ICタグ5によってガラスビーズ4の反射率及び透過率が損なわれる可能性が生じるため、ガラスビーズ4の反射率及び透過率を考慮してICタグ5の混入率を設定しなければならない。但し、ミリ波レーダ10の分解能を考慮すると、ICタグ5は最少で10cm四方に1つ存在すればよく、この程度であれば、標示線1全体の反射率に与える影響は極めて小さい。また、密度のバラツキや損耗に対する冗長性を考慮し、これよりも高密度(例えば、1cm四方に1つ)に配置した場合であっても、反射率に与える影響は十分に小さく、ICタグ5の混入率を設定する際に、反射率の考慮は実用上不要である。なお、何らかの理由によって反射率に影響を与える程度までICチップ5の混入率を高める必要がある場合には、ガラスビーズ4と同程度の透明度を有する被覆材6を用いればよい。
【0027】
標示線1の施工時において、作業者は、道路2の所定位置に高温状態(約200℃)の塗料3を、スプレーガン等を用いて塗布する。続いて、冷却固化する前の塗料3の表面に、混合されたガラスビーズ4とICタグ5とを、散布機等を用いて散布する。
【0028】
このように、本実施形態によれば、作業者は、ICタグ5を配設するための特別な作業を要することなく、ガラスビーズ4の一般的な散布作業を行うだけでICタグ5を標示線1の表面上に簡単に配設することができ、作業性が良好である。
【0029】
また、ICタグ5が混入されるガラスビーズ4は常温であり、ICタグ5が散布される際の塗料3の温度は塗布時よりも低下しており、且つICタグ本体7は被覆材6の内部に封入されているので、施工に起因するICタグ本体7の故障を防止することができる。
【0030】
また、施工後は、ICタグ5が塗料2の表面に保持されるので、ICタグ5の電波特性が向上する。さらに、ICタグ本体7が被覆材6によって保護されるので、車両等からの荷重によるICタグ本体7の破損が防止される。
【0031】
また、ガラスビーズ4とほぼ同じ形状で且つほぼ同じ重さのICタグ5を用いることにより、ガラスビーズ4に対してICタグ5をより均一に混入させることができ、標示線1の表面におけるICタグ5の配置密度を一段と均一化させることができる。
【0032】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、上述の実施形態以外であっても種々の変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、道路上に施工される標示線及びその形成方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:標示線
2:道路
3:塗料
4:ガラスビーズ(反射用粒状体)
5:ICタグ(通信用粒状体)
6:被覆材
7:ICタグ本体(通信部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に塗布される塗料と、
前記塗料の表面に保持される複数の反射用粒状体及び複数の通信用粒状体とを備え、
前記通信用粒状体は、被覆材と、該被覆材の内部に封入され外部の電波を受信して動作し所定の電波を発信する通信部とを有する
ことを特徴とする道路上の標示線。
【請求項2】
請求項1に記載の道路上の標示線であって、
前記反射用粒状体と前記通信用粒状体とは、ほぼ同じ形状で且つほぼ同じ重さである
ことを特徴とする標示線。
【請求項3】
道路に塗料を塗布する工程と、
複数の通信用粒状体を複数の反射用粒状体とともに前記塗料の表面に散布する工程とを備え、
前記通信用粒状体は、被覆材と、該被覆材の内部に封入され外部の電波を受信して動作し所定の電波を発信する通信部とを有する
ことを特徴とする道路上への標示線形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−252294(P2011−252294A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125698(P2010−125698)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】