説明

標識板及びその製造方法

【課題】本発明は、屋外の風雨に曝される環境下においても、蓄光層に水分が滲入することはなく、長期間に渡って夜間の視認性が良い蓄光標識機能を維持すると共に、取り付けが確実容易で、特別な製造設備を必要としないため、安価に製造出来る標識板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板の一方の面に設けた白色反射層と、前記白色反射層側に設けた熱硬化性樹脂中に蓄光材が存在する蓄光層と、前記蓄光層の前記白色反射層と反対側の面側に存在する意匠と、前記意匠を含む前記蓄光層表面を覆う透明層とより成る標識板において、
前記基板、前記白色反射層及び前記蓄光層の各側面及び前記基板の他方の面の全面が、熱硬化性樹脂の被覆層により覆われていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難誘導、室内及び屋外の案内などの標識に用いられる標識板に関し、特に、屋外の光源の無い道路地点の標識として有用な標識板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外用途の蓄光標識板としては以下の内容のものが知られている。(特許文献1)
これまでの屋外用途の蓄光標識板は、蓄光材に水が触れると、蓄光材が酸化し、蓄光材の発光輝度が低下する問題を発生した。
そこで、残光性を有する蓄光材を含有した蓄光板を基板に設け、この蓄光板の前面側に保護板を設けると共に、蓄光板と保護板との間に介在させて蓄光板と保護板とを接着するとともに、蓄光板の周囲であり、かつ基板と保護板との間に介在させて基板と保護板とを接着する接着部を設ける態様としている。
【0003】
そして、この接着部が、蓄光板の周囲であり、かつ基板と保護板との間に設けられ、蓄光板の周囲を囲うようにして基板と保護板とを接着しているので、蓄光板が基板と保護板との間から露出する部分がなくなる。
従って、蓄光板の厚みが厚く、基板と保護板との間が開いていても、基板と保護板とを接着して標示板としての形を保ちつつ、雨水などによる水分の浸入を蓄光板まで到達しないようにして、蓄光材の劣化を防ぐことにより屋外用途に使用可能とした蓄光式標示板及び製造法である。
【0004】
しかし、この製造法は、減圧下での加工が必要である為、特殊な装置が必要となる欠点があった。
また、蓄光板は、樹脂、インク剤でシート状にしているが、蓄光材粒径100〜200μmを樹脂、インク剤で板状に加工することは困難であった。
更に、接着部が基板の全面を覆う形になっていない為、基板と蓄光板との界面に水分が滲入する余地が残されていると共に、蓄光標識板を支柱に取り付ける際に、緩みなく固定する事が困難であった。
【0005】
更にまた、意匠を含む標示面の保護が不十分であるため、意匠を含む標示面が、早期に大気中の塵埃により汚れる問題を惹起した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−162799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、屋外の風雨に曝される環境下においても、蓄光層に水分が滲入することはなく、長期間に渡って夜間の視認性が良い蓄光標識機能を維持すると共に、取り付けが確実容易で、特別な製造設備を必要としないため、安価に製造出来る標識板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る標識板にあっては、基板の一方の面に設けた白色反射層と、前記白色反射層側に設けた熱硬化性樹脂中に蓄光材が存在する蓄光層と、前記蓄光層の前記白色反射層と反対側の面側に存在する意匠と、前記意匠を含む前記蓄光層表面を覆う透明層とより成る標識板において、
前記基板、前記白色反射層及び前記蓄光層の各側面及び前記基板の他方の面の全面が、熱硬化性樹脂の被覆層により覆われていることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る標識板の製造方法にあっては、熱盤上に、意匠を施した面を上にして透明層を配置する工程と、
前記透明層上に内型及び外型を配置する工程と、
前記内型内に、蓄光材が練り込まれた熱硬化性樹脂材料を流し込む工程と、
前記蓄光材が沈降して蓄光層と熱硬化性樹脂層とに分離した後、白色反射層を一方の面に形成した基板を、前記白色反射層が前記蓄光層側に配置される様に、前記蓄光層と前記熱硬化性樹脂層との間に配置する工程と、
前記内型を取り除き、前記内型が取り除かれた空所に前記熱硬化性樹脂層の一部を流し込むことにより被覆層を形成する工程と、
前記熱硬化性樹脂層が硬化した後、前記外型を取り外す工程と、
前記熱盤上から製品を取り出した後、不要な個所を裁断する仕上げ工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に記載される効果を奏する。
請求項1記載の発明の標識板によれば、屋外の風雨に曝される環境下においても、蓄光層に水分が滲入することはなく、長期間に渡って夜間の視認性が良い蓄光標識機能を維持すると共に、取り付けが確実容易で、特別な製造設備を必要としないため、安価に製造出来る。
請求項2記載の発明の標識板によれば、基板、蓄光層及び被覆層の一体化が、より確実に行える。
【0011】
請求項3記載の発明の標識板によれば、大気中の塵埃により汚れる問題を効果的に回避出来る。
請求項4記載の発明の標識板によれば、標識板の支柱への取り付けが確実容易に行える。
【0012】
請求項5記載の発明の標識板によれば、長期間に渡って夜間の視認性が良い蓄光標識機能を発揮する標識板を、特別な製造設備を必要とせず、安価に製造出来る。
請求項6記載の発明の標識板の製造方法によれば、基板を蓄光層と熱硬化性樹脂層の間に、容易に配置する事が出来る。
【0013】
請求項7記載の発明の標識板の製造方法によれば、耐久性の良好な標識板とする事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る標識板の断面図。
【図2】図1の標識板を地点標として使用した状態の部分断面図。
【図3】熱盤上に配置した透明フィルム上に配置した金型内に材料を注入した状態を示す断面図。
【図4】図3の材料が蓄光層と熱硬化性樹脂層に分離した状態を示す断面図。
【図5】白色塗装基板が蓄光層と熱硬化性樹脂層との間に配置された状態を示す断面図。
【図6】図5の内型を取り外した状態の断面図。
【図7】図6の熱硬化性樹脂層の一部が、内型の取り除かれた空所に流れ込んだ状態を示す断面図。
【図8】図7の外型を取り除いた断面図。
【図9】図8の熱盤を取り除いた断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、図1に基づき本発明の形態を説明する。
本発明に係る標識板10は、基板1の一方の面11に設けた白色反射層2と、この白色反射層2側に設けた熱硬化性樹脂中に蓄光材が存在する蓄光層3と、この蓄光層3の白色反射層2と反対側の面側に存在する意匠4と、この意匠4を含む蓄光層3表面を覆う透明層5とより構成されている。
【0016】
そして、基板1、白色反射層2及び蓄光層3の各側面及び基板1の他方の面12の全面は、熱硬化性樹脂の被覆層6により覆われている。
基板1は、本実施の形態では、アルミニウム板としたが、防錆加工を施した鉄板、アクリル板、ステンレス板とすることもできる。
この基板1には、複数の貫通孔13がその周囲に形成されている。
そして、この貫通孔13により、蓄光層3と被覆層6とが連通している。
このことにより、基板1、蓄光層3及び被覆層6の一体化が、より確実に行える。
また、この基板1の一方の面11には、白色塗料が塗布され、白色反射層2を形成している。
【0017】
また、熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が使用可能であるが、ポリウレタン樹脂が好ましい。
本実施形態で使用するウレタン材は、注型ウレタン材であり、プレポリマーと言われる反応基(−NCO)を持つ主材と硬化剤(アミン系)とが反応してポリウレタンになるものである。この中でも、特に、透明無黄変熱硬化ウレタン材が好ましい。
【0018】
また、蓄光層3に使用される蓄光材としては、例えば、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化希土類等を使用することができるが、粒径100〜800μmのアルミン酸系蓄光材であることが好ましい。
そして、蓄光層3の表面には、蓄光材が、1,000g/平方メートル以上存在することが望ましい。
このことにより、夜間の間、十分な発光輝度を維持出来ると共に、日没後、12時間で15mcd/平方メートル以上を維持出来る。
【0019】
また、透明層5は、THV(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロラィド共重合体)等のフツ素系透明フィルム、透明無黄変ウレタンフィルム(50〜300μm)の外側に光触媒層(酸化チタン0.1〜0.3μm)、下引き層(光触媒から耐候性透明フィルムの保護及び光触媒層と耐候性透明フィルムの接着剤で厚み1〜3μm)をコーティングし、内側に(蓄光層3側に)意匠4を印刷したもので、高透明性(UV領域の光も透過)、防水性、耐候性を有するフィルムである。
【0020】
このため、透明層5表面は、大気中の塵埃により汚れる問題を効果的に回避出来る。
この様な構成を備えた標識板10は、例えば、図2に示す様な地点標として使用される。
そして、標識板10は、被覆層6が支柱8に接する形で、取り付け金具81により固定されるため、標識板10の支柱8への取り付けが確実容易に行える。
すなわち、標識板10が過大に締め付け固定されたとしても、被覆層6が緩衝材となる為、標識板10が損傷する事は無い。
【0021】
ついで、本発明に係る標識板10の製造方法を図3乃至図9に基づき説明する。
まず、図3に示す様に、90〜140℃に熱した熱盤9上に、意匠4を施した面を上にして耐候性透明フィルムの透明層5を配置する。
ついで、この透明層5上に内型91及び外型92を配置する。
この、内型91及び外型92は、矩形形状を呈している。
【0022】
ついで、この内型91内に、透明無黄変熱硬化ウレタンプレポリマー100部、アミン系硬化剤10部、蓄光材(アルミン酸系蓄光材で粒径100〜300μm)150部、反応促進剤0.02部を混合、撹拌した熱硬化性樹脂材料31を流し込む。
ついで、図4に示す様に、注入後2〜3分経過すると、熱硬化性樹脂材料31は、比重の大きい蓄光材が沈降して蓄光層3を形成し、蓄光材を殆ど含まない熱硬化性樹脂層61とに分離する。
【0023】
この段階で、図5に示す様に、白色塗料が塗布された白色反射層2を一方の面11に形成したアルミ材製の基板1を、蓄光層3と熱硬化性樹脂層61との間に配置する。
この基板1には、透明無黄変熱硬化ウレタンプレポリマーである熱硬化性樹脂31が通過できる貫通孔13が形成されている為、熱硬化性樹脂材料31上に基板1を乗せ、荷重を掛けることにより、基板1は、蓄光層3と熱硬化性樹脂層61との間に留まる形で、配置される。
【0024】
これは、熱盤9に近い蓄光層3の透明無黄変熱硬化ウレタンプレポリマーは、硬化が進むが、熱硬化性樹脂層61は、蓄光層3の蓄光材が断熱材の役割も果たし、熱盤9の熱が伝わり難いため、硬化が進まない為である。
【0025】
ついで、図6に示す様に、内型91を取り除くと、図7に示す様に、内型91が取り除かれた空所911に未硬化の熱硬化性樹脂層61の一部が流れ込み被覆層6を形成する。
この際、蓄光層3は硬化が進んでいる為、蓄光層3の一部が空所911に流れ込む事は無い。
【0026】
ついで、図8に示す様に、熱硬化性樹脂層61が硬化した後、外型92を取り外す。
【0027】
最後に、図9に示す様に、20〜30分経過後に、熱盤9上から製品を取り出した後、不要な個所を裁断する仕上げを行うことにより、図1に示す標識板10が得られる。
尚、仕上げ工程の後、製品を80℃で12時間の熱処理を施すことにより、熱硬化性樹脂材料に十分な機械的強度を与える事が出来る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上述の発明は、視線誘導標、案内板や看板等に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 基板
2 白色反射層
3 蓄光層
4 意匠
5 透明層
6 被覆層
7 防汚層
8 支柱
9 熱盤
10 標識板
11 一方の面
12 他方の面
13 貫通孔
31 熱硬化性樹脂材料
61 熱硬化性樹脂層
91 内型
92 外型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)の一方の面(11)に設けた白色反射層(2)と、前記白色反射層(2)側に設けた熱硬化性樹脂中に蓄光剤が存在する蓄光層(3)と、前記蓄光層(3)の前記白色反射層(2)と反対側の面側に存在する意匠(4)と、前記意匠(4)を含む前記蓄光層(3)表面を覆う透明層(5)とより成る標識板(10)において、
前記基板(1)、前記白色反射層(2)及び前記蓄光層(3)の各側面及び前記基板(1)の他方の面(12)の全面が、熱硬化性樹脂の被覆層(6)により覆われていることを特徴とする標識板。
【請求項2】
前記蓄光層(3)と前記被覆層(6)は、前記基板(1)に設けた貫通孔(13)により連通していることを特徴とする請求項1記載の標識板。
【請求項3】
前記透明層(5)の表面に防汚層(7)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の標識板。
【請求項4】
前記標識板が、前記被覆層(6)が支柱(8)に接する形で固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の標識板。
【請求項5】
熱盤(9)上に、意匠(4)を施した面を上にして透明層(5)を配置する工程と、
前記透明層(5)上に内型(91)及び外型(92)を配置する工程と、
前記内型(91)内に、蓄光剤(32)が練り込まれた熱硬化性樹脂材料(31)を流し込む工程と、
前記蓄光剤が沈降して蓄光層(3)と熱硬化性樹脂層(61)とに分離した後、白色反射層(2)を一方の面(11)に形成した基板(1)を、前記白色反射層(2)が前記蓄光層(3)側に配置される様に、前記蓄光層(3)と前記熱硬化性樹脂層(61)との間に配置する工程と、
前記内型(91)を取り除き、前記内型(91)が取り除かれた空所(911)に前記熱硬化性樹脂層(61)の一部を流し込むことにより被覆層(6)を形成する工程と、
前記熱硬化性樹脂層(61)が硬化した後、前記外型(92)を取り外す工程と、
前記熱盤(9)上から製品を取り出した後、不要な個所を裁断する仕上げ工程とを備えた標識板の製造方法。
【請求項6】
前記基板(1)には、前記熱硬化性樹脂(31)が通過できる貫通孔(13)が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の標識板の製造方法。
【請求項7】
前記仕上げ工程の後、製品に熱処理を施すことを特徴とする請求項5または6記載の標識板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−221219(P2011−221219A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89282(P2010−89282)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】