説明

横型振動圧縮機

【課題】懸架コイルばねの本来のばね特性を有効に発揮させることができて吸振性が良好で,しかも騒音が少ない横型振動圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機本体2を収容する筒状容器1が,円筒状の胴体3と,この胴体3の両端開口部に接合される一対の蓋体4とで構成すると共に,中心軸線X1を水平方向に向けて設置され,圧縮機本体2及び各蓋体4の対向面間に,該圧縮機本体2を支持すべく懸架コイルばね7を介装し,また各蓋体4の内面に,中空のクッション部材15を保持するクッションホルダ10を固着し,クッション部材15の中空部16に挿入されるロッド17を圧縮機本体2の端面に固設した横型振動圧縮機において,クッション部材15及びロッド17の対向周面間に,圧縮機本体2の半径方向の振幅が所定値未満の範囲にあるときは,クッション部材15及びロッド17相互を非接触にする環状空隙18を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,主として自動車に搭載される冷蔵庫に適用される横型振動圧縮機に関し,特に,圧縮機本体を収容する筒状容器が,円筒状の胴体と,この胴体の両端開口部に接合される一対の蓋体とで構成されると共に中心軸線を水平方向に向けて設置され,前記圧縮機本体及び前記各蓋体の対向面間に,該圧縮機本体を支持すべく予圧縮された懸架コイルばねを介装し,また前記各蓋体の内面に,中空のクッション部材を収容,保持するクッションホルダを固着し,前記クッション部材の中空部に挿入されるロッドを前記圧縮機本体の端面に固設したものゝ改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,かゝる横型振動圧縮機は,下記特許文献1に開示されているように,知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−11509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のかゝる横型振動圧縮機では,ロッドをクッション部材の中空部の内周面に摺動自在に嵌合し,圧縮機本体の軸方向の振動を懸架コイルばねの伸縮方向の弾性により吸収し,圧縮機本体の半径方向の振動をクッション部材の弾性により吸収することにより,圧縮機本体自体が発生する振動や,外部から圧縮機本体に加えられる振動を吸収し,横型振動圧縮機の騒音の低減と耐久性を図るようにしている。
【0005】
しかしながら,そうしたものでは,ロッドをクッション部材の中空部の内周面に摺動自在に嵌合しているため,ロッドとクッション部材とが常時接触しており,その間に発生する摩擦の影響により,懸架コイルばねの本来のばね特性が有効に発揮されず,しかも上記摩擦による摺動騒音が発生することがある。
【0006】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,懸架コイルばねの本来のばね特性を有効に発揮させることができて吸振性が良好で,しかも騒音が少ない横型振動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために,本発明は,圧縮機本体を収容する筒状容器が,円筒状の胴体と,この胴体の両端開口部に接合される一対の蓋体とで構成されると共に中心軸線を水平方向に向けて設置され,前記圧縮機本体及び前記各蓋体の対向面間に,該圧縮機本体を支持すべく予圧縮された懸架コイルばねを介装し,また前記各蓋体の内面に,中空のクッション部材を収容,保持するクッションホルダを固着し,前記クッション部材の中空部に挿入されるロッドを前記圧縮機本体の端面に固設した横型振動圧縮機において,前記クッション部材及びロッドの対向周面間に,前記圧縮機本体の半径方向の振幅が所定値未満の範囲にあるときは,前記クッション部材及びロッド相互を非接触にする環状空隙を設けたことを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記クッション部材の中空部を,該クッション部材の前記圧縮機本体側の一端面に開口する円筒孔と,この円筒孔の内端から該クッション部材の他端面に向かって拡径しつゝ延びるテーパ孔とで構成したことを第2の特徴とする。
【0009】
さらに本発明は,第1の特徴に加えて,前記クッションホルダを,前記各蓋体の内面に基端を固着される大径円筒部と,この大径円筒部の先端に環状肩部を介して連なる,大径円筒部より小径の小径円筒部とで構成する一方,前記クッション部材を,前記大径円筒部に嵌入される大径クッション部と,この大径クッション部に環状段部を介して連なり前記小径円筒部に嵌入される小径クッション部とで構成すると共に,前記大径クッション部を,前記環状肩部と,前記蓋体との間で挟持し,前記懸架コイルばねの一端部を前記小径円筒部の外周に嵌合すると共に前記環状肩部の外面に支承させる一方,この懸架コイルばねの他端部を,前記ロッドの根元に形成される位置決めボスの外周に嵌合すると共に前記圧縮機本体の端面に支承させたことを第3の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は,第3の特徴に加えて,前記クッションホルダを前記筒状容器の中心軸線上に配置すると共に,前記ロッドを前記圧縮機本体の中心軸線上に配置し,前記クッション部材の中空部の中心軸線を前記筒状容器の中心軸線に対して,前記圧縮機本体の重量により生じる前記懸架コイルばねの撓み量に対応した所定量だけ下方にオフセットさせて,前記圧縮機本体の振動停止状態で前記前記ロッドを前記中空部の中心軸線上に位置させたことを第4の特徴とする。
【0011】
さらにまた本発明は,第1又は第3の特徴に加えて,前記懸架コイルばねの線材の断面形状を,該懸架コイルばねの半径方向を長辺とする長方形にしたことを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の特徴によれば,圧縮機本体の左右両端より突出するロッドと,それを受け入れた,蓋体に固定のクッションホルダとの間には環状空隙が設けられているので,圧縮機本体の左右振動時や振幅が微小な半径方向の振動時には,ロッドのクッション部材との接触が回避される。その結果,懸架コイルばねは本来のばね特性を確実に発揮して圧縮機本体を確実にフローティング支持して,圧縮機本体の左右振動及び微細な半径方向振動を効果的に吸収することができ,しかもクッション部材との摺動による騒音を防ぐことができ,静粛な横型振動圧縮機を提供することができる。
【0013】
また加振エネルギが大きく,圧縮機本体の半径方向の振幅が所定値以上になった場合には,懸架コイルばねを大きく撓ませながらロッドをクッション部材の中空部内面に当接させるので,ロッドの振動衝撃をクッション部材の圧縮変形により吸収することができる。
【0014】
本発明の第2の特徴によれば,ロッドが中空部の内面に当接してクッション部材に圧縮変形を与えるときは,ロッドのクッション部材との当接面は,円筒孔の内周面からテーパ孔の内周面へと広がり,その当接面積が漸増する結果,ロッドに対するクッション部材の反発力は,ロッドの半径方向の変位の増加に応じて増加することになり,これにより圧縮機本体の横振れの過度の増加を衝撃を伴なうことなく効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明の第3の特徴によれば,クッション部材をクッションホルダにより簡単確実に保持し得るのみならず,懸架コイルばねの長さを,大径円筒部の長さ分,短くすることができ,これにより懸架コイルばねの撓み剛性を強めると共に横型振動圧縮機の軸方向寸法の短縮化を図ることが可能となる。
【0016】
本発明の第4の特徴によれば,圧縮機本体の振動停止状態では,圧縮機本体の重量により生じる懸架コイルばねの撓みにも拘らず,ロッド及びクッション部材の対向周面間には,隙間が全周均等な環状空隙を形成することができ,したがって,圧縮機本体の横ぶれ抑制をロッドの全周に亙り均等に行うことができる。
【0017】
しかもクッションホルダの筒状容器との同軸配置,並びにロッドは圧縮機本体との同軸配置により,それぞれの製作を容易にすることができる。
【0018】
本発明の第5の特徴によれば,前記懸架コイルばねの線材の断面形状を,該懸架コイルばねの半径方向を長辺とする長方形にしたことで,懸架コイルばねの撓み剛性を効果的に高めることができ,したがって,外部から横型振動圧縮機が半径方向に加振されたときでも,圧縮機本体の半径方向の横振れを極力防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る横型振動圧縮機の縦断平面図。
【図2】図1の2−2線断面図。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】図2の4−4線断面図。
【図5】図2の5部拡大図。
【図6】図4の6部拡大図。
【図7】図6の7−7線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて以下に説明する。
【0021】
図1〜図3において,本発明の横型振動圧縮機Cは,例えばトラック,バス等の車両等に搭載される冷蔵庫のコンプレッサとして庫体Rの適所に設置される。この横型振動圧縮機Cは,筒状容器1と,この筒状容器1に収容される圧縮機本体2とを備えている。筒状容器1は,円筒状の胴体3と,この胴体3の両端開口部に接合される一対のカップ状の蓋体4とで構成される。胴体3及び蓋体4の接合構造は,図示例では,蓋体4の内端部に形成された印籠嵌合孔4aに胴体3の端部を嵌合し,その全周を気密に溶接して構成される。両蓋体4の一側には設置用のブラケット5が溶接等により固着されており,これらブラケット5を前記庫体Rの水平面にボルト6により固着することにより,筒状容器1は,その中心軸線X1を水平方向に向けて設置されることになる。
【0022】
圧縮機本体2は,左右の蓋体4に左右一対の懸架コイルばね7を介してフローティング支持される。圧縮機本体2の左右のフローティング支持構造は対称的であるので,右方のフローティング支持構造についてのみ,図2〜図5により詳細に説明する。
【0023】
蓋体4の内面にはクッションホルダ10が固着される。このクッションホルダ10は,基端に取り付けフランジ10aを有する大径円筒部10bと,この大径円筒部10bの先端に環状肩部10cを介して連なる,大径円筒部10bより小径の小径円筒部10dとで構成され,取り付けフランジ10aが蓋体4の内面に溶接11により接合される。
【0024】
一方,圧縮機本体2の右端面には,圧縮機本体2の中心軸線X2上にあって前記大径円筒部10bと同径の位置決めボス12が形成される。而して,懸架コイルばね7は,その一端部を大径円筒部10bに嵌合すると共に環状肩部10cに支承させ,また他端部を位置決めボス12に嵌合すると共に圧縮機本体2の端面に支承させることで,蓋体4及び圧縮機本体2の対向端面間に予圧縮の状態で介装される。その際,懸架コイルばね7と,クッションホルダ10及び圧縮機本体2とに各間には,断面L字状で環状の耐摩耗性リテーナ13が介装される。こうして,圧縮機本体2は,左右一対の予圧縮状態の懸架コイルばね7を介して左右の蓋体4にフローティング支持される。
【0025】
図5に明示するように,懸架コイルばね7を構成する線材7aは,懸架コイルばね7の半径方向に長辺を向けた長方形断面を有する。
【0026】
前記クッションホルダ10は,その内部にクッション部材15を収容し保持する。そのクッション部材15は,前記大径円筒部10bに嵌入される大径クッション部15aと,この大径クッション部15aに環状段部15bを介して連なり前記小径円筒部10dに嵌入される小径クッション部15cとで構成されており,その大径クッション部15aは,クッションホルダ10の環状肩部10cと蓋体4との間で挟持される。こうしてクッション部材15はクッションホルダ10により保持される。
【0027】
このクッション部材15は中空部16を有しており,その中空部16は,前記小径円筒部10dの端面からクッション部材15の軸方向中間部まで延びる円筒孔16aと,この円筒孔16aの内端から前記大径円筒部10bの端面に向かって拡径しつゝ該端面に開口するテーパ孔16bとで構成される。
【0028】
一方,蓋体4には,位置決めボス12の中心部から突出して前記中空部16に挿入されるロッド17が設けられる。このロッド17は,その先端部をテーパ孔16bまで延ばしており,このロッド17及びクッション部材15の対向周面間には,圧縮機本体2の半径方向の振幅が所定値未満の範囲にある限り,前記クッション部材15及びロッド17相互を非接触にする環状空隙18が設けられる。したがって,圧縮機本体2の半径方向の振幅が所定値以上になると,ロッド17がクッション部材15の内周面に当接するようになっている。
【0029】
図3及び図5に示すように,蓋体4の端壁には,筒状容器1の中心軸線X1上で筒状容器1の内方に隆起する位置決め凸部19が形成される。この位置決め凸部19は,一側にカット状の平坦部19aを有する円形断面をなしており,前記クッションホルダ10の大径円筒部10bの内周面を上記位置決め凸部19に適合させることで,クッションホルダ10の蓋体4への固定位置が決定される。こうしてクッションホルダ10は筒状容器1の中心軸線X1上で蓋体4に固定されることになる。
【0030】
尚,クッションホルダ10の,筒状容器1の中心軸線X1上での蓋体4への固定手段として,蓋体1の前記印籠嵌合孔4a(図1,図2参照)を基準として,クッション本体10の小径円筒部10dの外周側を治具により位置決めして,蓋体4に溶接等により固着してもよい。
【0031】
また大径円筒部10bに嵌入する前記クッション部材15の大径クッション部15aも大径円筒部10bの内周面に適合して位置決めされ,クッション部材15はクッションホルダ10に対して回転しないようになっており,このように位置決めされたクッション部材15において,中空部16は,その中心軸線がクッション部材15の外周面の軸線,換言すれば筒状容器1の中心軸線X1に対して所定量eだけ下方へオフセットして配置される。このオフセット量eは,圧縮機本体2の重量に起因して懸架コイルばね7に生じる撓み量に対応したものである。したがって,クッションホルダ10に一端部を同心状に支持させた懸架コイルばね7は,圧縮機本体2の重量により撓んでも,圧縮機本体2の振動停止状態では,圧縮機本体2の中心軸線X2上のロッド17を中空部16の中心軸線上に位置させることになる。
【0032】
次に,圧縮機本体2の内部構造について説明する。
【0033】
図1において,圧縮機本体2は,円筒状のヨーク22と,このヨーク22の一端にそれを閉塞するよう,溶接等により結合されてヨーク22の内部に同心状に配置されるコアポール23と,ヨーク22の他端にそれを閉塞するよう,かしめ等に結合されるシリンダブロック24とと,このシリンダブロック24の外端面にガスケット25を介してボルト(図示せず)等により接合されるシリンダヘッド26とで構成され,前記左右のロッド17は,そのコアポール23及びシリンダヘッド26にそれぞれ形成される。
【0034】
コアポール23の外周には永久磁石27が固設され,この永久磁石27と前記ヨーク22との間の環状間隙には駆動コイル28が配設される。この駆動コイル28は,後述するピストン31に一体的に連結される。
【0035】
シリンダブロック24は,ヨーク22内に突出するシリンダ延長部24aを一体に備えており,このシリンダブロック24のシリンダ孔30はそのシリンダ延長部24a内まで延びている。このシリンダ孔30には中空円筒状のピストン31が摺動自在に嵌装される。このピストン31の,シリンダ延長部24a外に突出する外端部には支持板32が圧入等により固着され,この支持板32に有底円筒状の中間部材33を介して前記駆動コイル28が連結される。また支持板32と,コアポール23及びシリンダブロック24との各間には左右一対の共振ばね34が介装され,これら共振ばね34は懸架コイルばねで構成され,圧縮方向に所定のセット荷重が付与される。こうして前記駆動コイル28はピストン31に一体的に連結されると共に,一対の共振ばね34により支持される。
【0036】
シリンダ孔30には,ピストン31によりポンプ室35が画成され,ピストン31の中空部31a及びポンプ室35間には吸入弁37が配設される。またシリンダヘッド26には,ポンプ室35に並ぶ吐出室38が設けられ,これらポンプ室35及び吐出室38間に吐出弁39が配設される。吸入弁37は,ピストン31が図1で右方に移動する吸入行程で開弁してピストン31の中空部31aからポンプ室35に気体を吸入させ,吐出弁39は,ピストン31が図1で左方に移動する吐出行程で開弁してポンプ室35から吐出室38に気体を吐出させるようになっている。
【0037】
さらにシリンダブロック24には,ガスケット25により閉塞される低圧室40及び高圧室41が設けられる。低圧室40は,シリンダヘッド26に設けられる第1連通管42と筒状容器1の内部とを介して,左方の蓋体4から引き出される低圧管44に連通される一方,シリンダブロック24に設けられる第2連通管43を介して圧縮機本体2内部とも連通される。左方の蓋体4から外部に引き出される低圧管44は,冷蔵庫のエバポレータの出口側に接続される。
【0038】
また高圧室41は,シリンダヘッド26に穿設される通孔45を介して吐出室38に連通される一方,高圧管46とも連通される。この高圧管46は,一端部がシリンダヘッド26に取り付けられて高圧室41に開口し,他端部が左方の蓋体4に取り付けられて外部に引き出され,中間部は,圧縮機本体2の左右往復動に応じて伸縮し得るようコイル状に形成される。左方の蓋体4から外部に引き出される高圧管46は,冷蔵庫のコンデンサの入口側に接続される。
【0039】
次に,横型振動圧縮機C内の潤滑系について図2,図4,図6及び図7を参照しながら説明する。
【0040】
筒状容器1内の底部には,通常,圧縮機本体2が漬からない程度のレベルで潤滑油が貯留する油溜まり50が形成され,この油溜まり50に,前記低圧室40に潤滑油を供給する吸油管51が浸漬される。この吸油管51は,ガラス繊維や樹脂繊維を管状に編組してなる可撓性及び浸透性を有するもので,この吸油管51内には,その配管形状を保持する金属線52が配設される。そして吸油管51は,筒状容器1の軸方向に延びて油溜まり50に浸漬される直線部51aと,この直線部51aの左端から立ち上がって左方の蓋体4の内周面に沿って湾曲する第1湾曲部51bと,この第1湾曲部51bの先端から圧縮機本体2に向かって屈曲する接続部51cと,直線部51aの右端から立ち上がって右方の蓋体4の内周面に沿って略一周するように湾曲する第2湾曲部51dとを付与され,配管される。上記接続部51cは,低圧室40に開口するようにシリンダヘッド26に設けられる接続管53の外端部外周に嵌め込まれ,クリップ54により固定される。その際,保形用の金属線52の一端は,接続部51cから突出させて接続管53内に緩く挿入される。
【0041】
第2湾曲部51dは自由端部を有しており,その自由端部内には,図4に明示するように金属線52の端部を折り返してなる膨大端部52aが収められ,前記自由端部にかしめ環55を巻き付けてかしめることにより,前記自由端部は潰されてその開口が閉塞されると共に膨大端部52aに固定される。
【0042】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0043】
駆動コイル28に交番電流を流すと,その交番電流の極性に応じてピストン31が駆動コイル28と共に左右に往復動し,このピストン31の往復動は左右の共振ばね34により増幅される。こうして増幅されたピストン31の往復動,即ち吸入行程と吐出行程を行程を繰り返し,その吸入行程では,ポンプ室35の吸入作用により吸入弁37が開弁して,低圧管44から筒状容器1内に導入された気体(冷媒ガス)が第1連通管42,低圧室40,第2連通管43,圧縮機本体2内,ピストン31の中空部31a,吸入弁37を順次経てポンプ室35に吸入され,次の吐出行程では,ポンプ室35の吐出作用により吐出弁39が開弁して,ポンプ室35の気体(冷媒ガス)が吐出弁39を介して吐出室38に吐出され,そして通孔45及び高圧室41を経て高圧管46へと圧送される。
【0044】
このような横型振動圧縮機Cの作動中,ピストン31及び駆動コイル28の上記左右往復動によれば,圧縮機本体2が左右に振動するが,圧縮機本体2は,左右一対の懸架コイルばね7により筒状容器1の左右の蓋体4によりフローティング支持されいるので,圧縮機本体2の左右振動を一対の懸架コイルばね7の伸縮作用により吸収することができる。その際,特に圧縮機本体2の左右両端より突出するロッド17は,それを受け入れた,蓋体4に固定のクッションホルダ10との間には環状空隙18が設けられているので,圧縮機本体2の左右振動時や振幅が微小な半径方向の振動時には,ロッド17のクッション部材15との接触が回避される。その結果,懸架コイルばね7は本来のばね特性を確実に発揮して,圧縮機本体2の左右振動及び微細な半径方向振動を効果的に吸収することができ,しかもクッション部材15との摺動による騒音を防ぐことができる。
【0045】
しかも懸架コイルばね7の線材7aは,長辺を半径方向に向けた長方形断面を持つので,懸架コイルばね7の撓み剛性を効果的に高める。したがって,車両の悪路走行や加速及び減速運転等に横型振動圧縮機Cが半径方向に加振されたときでも,圧縮機本体2の半径方向の横振れを極力防ぐことができる。
【0046】
また上記加振エネルギが大きく,圧縮機本体2の半径方向の振幅が所定値以上になった場合には,懸架コイルばね7を大きく撓ませながらロッド17をクッション部材15の中空部16内面に当接させるので,ロッド17の振動衝撃をクッション部材15の圧縮変形により吸収することができる。しかも,クッション部材15の中空部16は,クッション部材15の内端に開口する円筒孔16aと,この円筒孔16aからクッション部材15の外端に向かって拡径するテーパ孔16bとからなっているので,ロッド17が中空部16の内面に当接してクッション部材15に圧縮変形を与えるとき,ロッド17のクッション部材15との当接面は,円筒孔16aの内周面からテーパ孔16bの内周面へと広がり,その当接面積が漸増する結果,ロッド17に対するクッション部材15の反発力は,ロッド17の半径方向の変位の増加に応じて増加することになり,これにより圧縮機本体2の横振れの過度の増加を衝撃を伴なうことなく効果的に抑制することができる。
【0047】
またクッションホルダ10は,各蓋体4の内面に取り付けフランジ10aを介して固着される大径円筒部10bと,この大径円筒部10bの先端に環状肩部10cを介して連なる小径円筒部10dとで構成され,クッション部材15は,大径円筒部10bに嵌入される大径クッション部15aと,この大径クッション部15aに環状段部15bを介して連なり小径円筒部10dに嵌入される小径クッション部15cとで構成され,前記大径クッション部15aを,環状肩部10cと,蓋体4との間で挟持し,前記懸架コイルばね7の一端部を前記小径円筒部10dの外周に嵌合すると共に前記環状肩部10cの外面に支承させる一方,この懸架コイルばね7の他端部を,前記ロッド17の根元に形成される位置決めボス12の外周に嵌合すると共に前記圧縮機本体2の端面に支承させたことで,クッション部材15をクッションホルダ10により簡単確実に保持し得るのみならず,懸架コイルばね7の長さを,大径円筒部10bの長さ分,短くすることができ,これにより懸架コイルばね7の撓み剛性を強めると共に横型振動圧縮機Cの軸方向寸法の短縮化を図ることが可能となる。
【0048】
さらにクッションホルダ10は筒状容器1の中心軸線X1上に配置される一方,ロッド17は圧縮機本体2の中心軸線X2上に配置され,クッション部材15の中空部16の中心軸線を筒状容器1の中心軸線X1に対して,圧縮機本体2の重量により生じる懸架コイルばね7の撓み量に対応した所定量だけ下方にオフセットさせて,圧縮機本体2の振動停止状態でロッド17を前記中空部16の中心軸線上に位置させたので,圧縮機本体2の振動停止状態では,圧縮機本体2の重量により生じる懸架コイルばね7の撓みにも拘らず,ロッド17及びクッション部材15の対向周面間には,隙間が全周均等な環状空隙18を形成することができ,したがって,圧縮機本体2の横ぶれ抑制をロッド17の全周に亙り均等に行うことができる。
【0049】
しかもクッションホルダ10の筒状容器1との同軸配置,並びにロッド17は圧縮機本体2との同軸配置により,それぞれの製作を容易にすることができる。
【0050】
筒状容器1の油溜まり50には,低圧室40に連通する可撓性且つ浸透性の吸油管51が浸漬しているので,低圧室40がポンプ室35の前記吸入作用による減圧することにより,吸油管51内に浸透した潤滑油が低圧室40へと吸い上げられ,低圧室40を通過する前記気体(冷媒ガス)と共に,ポンプ室35へと運ばれ,シリンダ孔30を通してピストン31の摺動面等を潤滑する。
【0051】
ところで,上記吸油管51内には,その配管形状を保持する金属線52が挿入配設され,その状態で吸油管51は,筒状容器1の軸方向に延びて油溜まり50に浸漬される直線部51aと,この直線部51aの左端から立ち上がって左方の蓋体4の内周面に沿って湾曲する第1湾曲部51bと,この第1湾曲部51bの先端から圧縮機本体2に向かって屈曲する接続部51cと,直線部51aの右端から立ち上がって右方の蓋体4の内周面に沿って略一周するように湾曲する第2湾曲部51dとを付与され,配管されるので,吸油管51は,圧縮機本体2の左右振動に応じて第1湾曲部51bを撓ませながら,低圧室40への給油を確実に行うことができる。
【0052】
また圧縮機本体2が振動したり,横型振動圧縮機Cが外部から加振されても,金属線52により保形された吸油管51は暴れることがない。特に,吸油管51の自由端部を持つ第2湾曲部51dは,右方の蓋体4の内周面に沿って略一周するように湾曲して,その蓋体4の内周面で支持されるので,第2湾曲部51dの暴れを蓋体4の内面で確実に抑えることができる。したがって吸油管51の他物との衝撃的接触を回避し,騒音の発生を防ぐと共に吸油管51の耐久性を確保することができる。
【0053】
また横型振動圧縮機Cのローリング及びピッチング時でも,吸油管51は,直線部51a,第1湾曲部51b及び第2湾曲部51dの少なくとも一部を油溜まり50に浸漬し続けることができ,したがって常にその浸漬部から潤滑油を吸い上げて低圧室40に供給することができ,潤滑切れを防ぐことができる。
【0054】
しかも吸油管51の自由端部は潰されてその開口が閉塞されると共に,金属線52に固定されるので,第2湾曲部51dの自由端部が油溜まり50から露出していても,その自由端部からは筒状容器1内の気体を吸入することを防ぎ,吸油管51の良好な吸油機能を保持することができ,また吸油管51及び金属線52相互のずれを確実に防いで,吸油管51の配管形状及び長さの変化を防ぐことができる。
【0055】
特に,第2湾曲部51dの自由端部内には金属線52の膨大端部52aが収められ,上記自由端部にかしめ環55を巻き付けてかしめることにより,前記自由端部は,潰されてその開口が閉塞されると共に膨大端部52aに固定されるので,一個のかしめ環55により第2湾曲部51dの自由端部の開口の閉塞と,その自由端部の金属線52への固定とを一挙に行うことができ,構造が簡単である。
【0056】
また筒状容器1の左右の前記蓋体4に一対の設置用のブラケット5が固設されるので,両ブラケット5は,筒状容器1の左右の最外端部に設けられることになり,横型振動圧縮機Cの軸方向の支持スパンを最大にして,横型振動圧縮機Cの動きを極力抑え得ると共に,ブラケットの荷重負担を減少することができる。
【0057】
以上,本発明の実施例について説明したが,本発明はそれに限定されることなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・・・筒状容器
2・・・・・圧縮機本体
7・・・・・懸架コイルばね
10・・・・クッションホルダ
10b・・・大径円筒部
10c・・・環状肩部
10d・・・小径円筒部
12・・・・位置決めボス
15・・・・クッション部材
16・・・・クッション部材の中空部
16a・・・円筒孔
16b・・・テーパ孔
17・・・・ロッド
18・・・・環状空隙
C・・・・・横型振動圧縮機
X1・・・・筒状容器の中心軸線
X2・・・・圧縮機本体の中心軸線
e・・・・・X1,X2相互のオフセット量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体(2)を収容する筒状容器(1)が,円筒状の胴体(3)と,この胴体(3)の両端開口部に接合される一対の蓋体(4)とで構成されると共に中心軸線(X1)を水平方向に向けて設置され,前記圧縮機本体(2)及び前記各蓋体(4)の対向面間に,該圧縮機本体(2)を支持すべく予圧縮された懸架コイルばね(7)を介装し,また前記各蓋体(4)の内面に,中空のクッション部材(15)を収容,保持するクッションホルダ(10)を固着し,前記クッション部材(15)の中空部(16)に挿入されるロッド(17)を前記圧縮機本体(2)の端面に固設した横型振動圧縮機において,
前記クッション部材(15)及びロッド(17)の対向周面間に,前記圧縮機本体(2)の半径方向の振幅が所定値未満の範囲にあるときは,前記クッション部材(15)及びロッド(17)相互を非接触にする環状空隙(18)を設けたことを特徴とする横型振動圧縮機。
【請求項2】
請求項1記載の横型振動圧縮機において,
前記クッション部材(15)の中空部(16)を,該クッション部材(15)の前記圧縮機本体(2)側の一端面に開口する円筒孔(16a)と,この円筒孔(16a)の内端から該クッション部材(15)の他端面に向かって拡径しつゝ延びるテーパ孔(16b)とで構成したことを特徴とする横型振動圧縮機。
【請求項3】
請求項1記載の横型振動圧縮機において,
前記クッションホルダ(10)を,前記各蓋体(4)の内面に基端を固着される大径円筒部(10b)と,この大径円筒部(10b)の先端に環状肩部(10c)を介して連なる,大径円筒部(10b)より小径の小径円筒部(10d)とで構成する一方,前記クッション部材(15)を,前記大径円筒部(10b)に嵌入される大径クッション部(15a)と,この大径クッション部(15a)に環状段部(15b)を介して連なり前記小径円筒部(10d)に嵌入される小径クッション部(15c)とで構成すると共に,前記大径クッション部(15a)を,前記環状肩部(10c)と,前記蓋体(4)との間で挟持し,前記懸架コイルばね(7)の一端部を前記小径円筒部(10d)の外周に嵌合すると共に前記環状肩部(10c)の外面に支承させる一方,この懸架コイルばね(7)の他端部を,前記ロッド(17)の根元に形成される位置決めボス(12)の外周に嵌合すると共に前記圧縮機本体(2)の端面に支承させたことを特徴とする横型振動圧縮機。
【請求項4】
請求項3記載の横型振動圧縮機において,
前記クッションホルダ(10)を前記筒状容器(1)の中心軸線(X1)上に配置すると共に,前記ロッド(17)を前記圧縮機本体(2)の中心軸線(X1)上に配置し,前記クッション部材(15)の中空部(16)の中心軸線(X2)を前記筒状容器(1)の中心軸線(X1)に対して,前記圧縮機本体(2)の重量により生じる前記懸架コイルばね(7)の撓み量に対応した所定量だけ下方にオフセットさせて,前記圧縮機本体(2)の振動停止状態で前記前記ロッド(17)を前記中空部(16)の中心軸線上に位置させたことを特徴とする横型振動圧縮機。
【請求項5】
請求項1又は3記載の横型振動圧縮機において,
前記懸架コイルばね(7)の線材の断面形状を,該懸架コイルばね(7)の半径方向を長辺とする長方形にしたことを特徴とする横型振動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−94568(P2011−94568A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250883(P2009−250883)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000253075)澤藤電機株式会社 (31)
【Fターム(参考)】