説明

横型連続処理炉の冷却帯とその冷却帯における鋼帯スレッディング方法

【課題】鋼帯の両面に高速のガスを吹付けて冷却するガスジェットクーラを備えた横型連続処理炉の冷却帯において、スレッディング専用に新たな搬送ロールを設けることなく、スレッディングバーを通過させる隙間を簡易かつ安価に確保できるようにすること。
【解決手段】鋼帯7をスレッディングバー11に接続し横型連続処理炉の冷却帯4内を通過させるスレッディング時に、ガスジェットクーラA内およびガスジェットクーラAの入側と出側のハースロール6を下降させ、スレッディングバー11が通過できるスレッディング間隙を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯の両面に高速のガスを吹付けて冷却するガスジェットクーラを備えた横型連続処理炉の冷却帯における鋼帯スレッディング技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の連続焼鈍炉・連続溶融めっき設備等の横型連続処理炉において、炉の立ち上げ時や、鋼帯の破断時等には、新たに鋼帯を炉内に通板するスレッディングが必要となる。鋼帯の炉内へのスレッディングは、鋼帯の搬送手段であるハースロールによりスレッディングバーを搬送させ、そのスレッディングバーの後端に鋼帯を接続して行っている。
【0003】
このスレッディングバーは、ハースロールが約3mピッチで設けられている場合、ハースロール間に落下しないよう、3つのハースロールにまたがるようにすると、その長さは約10mになる。また、スレッディングバーは、スレッディング時にハースロールに突っかからないように、その先端部下部が面取りされてはいるが、断面高さは、100mmを超えることもある。
【0004】
鋼帯の横型連続処理炉は、鋼帯を連続的に加熱・均熱および冷却し、必要に応じて過時効処理する工程を備えている。そして、鋼帯の特性を所望のものにするためには、加熱温度や均熱時間のほかに、その鋼帯を均一に急速冷却することが重要である。鋼帯の冷却媒体としてガスを用いる冷却方法は、例えば、水冷却やロール冷却等の他の冷却方法に比べて、鋼帯の幅方向の均一冷却が可能であるが、冷却速度が劣るという問題がある。そこで、その冷却速度を改善する対策として、ガスを噴射するノズルの先端を鋼帯に近づけたり、冷却媒体の熱伝達率を上げたりする対策がとられている。ただし、ガスを噴射するノズルの先端を鋼帯に近づける対策をとる場合、スレッディング時にスレッディングバーがガスジェットクーラ内を通過できなくなる。
【0005】
これに対して、特許文献1には、ガスを噴射するノズルと一体化したウィンドボックス(プレナムチャンバー)を鋼帯搬送路に対向配置し、ウィンドボックスを鋼板搬送路に対して接離する方向に移動可能とする考案が開示されている。このようにウィンドボックスを移動可能とすることにより、ノズルと鋼帯表面との間隔を小さくすることで、鋼帯に与える冷却速度を大きくでき、また、間隔を拡げることで、鋼帯のスレッディングを迅速容易化することもできる。
【0006】
また、特許文献2には、フローティング炉あるいはカテナリー炉等の、炉内にハースロールを有しない横型連続熱処理炉において、スレッディングのために昇降可能なハースロールを新たに設ける発明が開示されている。これによれば、スレッディング時にハースロールを上昇させることにより、鋼帯とフロータとの接触を避けることができる。また、通常操業時には、ハースロールを下降させておくことにより、鋼帯とハースロールとの接触を避けることができる。
【特許文献1】実公昭59−40436号公報
【特許文献2】特開平8−13044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
横型連続処理炉においても、特許文献1に開示されているように上下のウィンドボックス間隙を拡げる方法を応用して、スレッディング時にスレッディングバーがガスジェットクーラ内を通過できるようにすることが考えられる。この場合、鋼帯の通板レベル(パスライン)はハースロール上面レベルに固定されているため、スレッディングバーを通過させるためには、図5に示すように上部ウィンドボックスの昇降機構17によって上部ウィンドボックス15を上昇させる。上部ウィンドボックスの昇降機構17は、例えば、4本のジャッキをメカタイで結び、同期をとって昇降するように構成する。
【0008】
しかし、この方法によれば、ガスジェットクーラの上部スペースは、上部ウィンドボックスの昇降機構17で占有されてしまう。そして、ガスジェットクーラの熱交換器・送風機等の付属機器(図示せず)は、ウィンドボックス近傍に別置きにする必要がある。また、上部ウィンドボックスの昇降機構17は、上部ウィンドボックス15自体が大きく、しかも、上部ウィンドボックス15を可動とするために、上部ウィンドボックス15にガスを供給するガス供給ダクト24と、炉本体25並びに上部ウィンドボックス15とを相対変位させるためのベローズ23を必要とするため、その設備費も高い。
【0009】
一方、特許文献2の方法は、スレッディング時にのみ使用するハースロールを新たに設ける必要がある。さらに特許文献2の方法は、連続熱処理炉内全域にスレッディング用のハースロールを設け、単にハースロールを一定レベル以上に上昇させるようにしたもので、ガスジェットクーラ設置部のように、スレッディングバーを通過させる隙間に制限があるものには対応できない。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、鋼帯の両面に高速のガスを吹付けて冷却するガスジェットクーラを備えた横型連続処理炉の冷却帯において、スレッディング専用に新たな搬送ロールを設けることなく、スレッディングバーを通過させる隙間を簡易かつ安価に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る横型連続処理炉の冷却帯における鋼帯スレッディング方法は、鋼帯の両面に高速のガスを吹付けて冷却するガスジェットクーラを備えた横型連続処理炉の冷却帯における鋼帯スレッディング方法であって、鋼帯をスレッディングバーに接続し横型連続処理炉の冷却帯内を通過させるスレッディング時に、ガスジェットクーラ内およびガスジェットクーラの入側と出側のハースロールを下降させ、スレッディングバーが通過できるスレッディング間隙を確保することを特徴とする。
【0012】
本発明において、スレッディング時の、ガスジェットクーラの入側と出側のハースロールの下降量は、ガスジェットクーラ内のハースロールの下降量よりも小さくすることが好ましい。これは、ガスジェットクーラ内のハースロールにスレッディングバーが激突するのを防止するためである。
【0013】
また、本発明に係る横型連続処理炉の冷却帯は、鋼帯の両面に高速のガスを吹付けて冷却するガスジェットクーラを備えた横型連続処理炉の冷却帯において、鋼帯をスレッディングバーに接続し横型連続処理炉の冷却帯内を通過させるスレッディング時に、ガスジェットクーラ内およびガスジェットクーラの入側と出側のハースロールを下降させるハースロールの昇降機構を設け、スレッディング時にスレッディングバーが通過できるスレッディング間隙を確保するようにしたことを特徴とする。
【0014】
ハースロールの昇降機構は、横型連続処理炉の炉側壁に設けることが好ましい。
【0015】
また、ガスジェットクーラにガスを供給する送風機およびガス供給ダクトとそのガスの熱交換を行う熱交換器は、ガスジェットクーラの上部および側部にユニット化して設置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハースロールを昇降させるようにすることで、スレッディング専用の搬送ロールを新設することなく、また、上部ウインィドボックスを上昇させることなく、上部ウィンドボックスとハースロールとの間を、スレッディングバーが通過できるようになる。
【0017】
したがって、ガスジェットクーラの上部に上部ウィンドボックスの昇降機構を設ける必要がなく、スレッディングバーを通過させる隙間を簡易かつ安価に確保できる。また、スレッディング時に昇降させるハースロールは、ウィンドボックスと比較して小さく、ベローズも不要のため、ハースロールの昇降機構の製作コストを削減できる。
【0018】
さらに、ハースロールの昇降機構は横型連続処理炉の炉側壁に設けることができるので、ガスジェットクーラの上部スペースを有効活用できる。すなわち、ガスジェットクーラの熱交換器・送風機等の付属機器を、ガスジェットクーラの上部スペースに集約でき、省スペースなガスジェットクーラのユニット化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明を適用した横型連続処理炉12を備える連続溶融めっき設備の一例を示す。横型連続処理炉12は、鋼帯7を連続的に加熱・均熱および冷却するために、予熱帯1、無酸化加熱帯2、還元帯3および冷却帯4を備え、必要に応じて過時効処理帯をさらに備え、めっき処理設備5に続く。炉内には、ハースロール6が、適当な間隔を持って配置されている。鋼帯7はペイオフリール8より払い出され、ルーパ等の中間設備を通って炉内に導かれる。
【0021】
炉の立ち上げや、鋼帯7の破断等の場合には、新たに鋼帯7を炉内に通板するスレッディングが必要となる。鋼帯7の炉内へのスレッディング作業は、炉尻10よりスレッディングバーを炉内に入れ、鋼帯7の搬送手段であるハースロール6により、炉前9まで搬送する。そして、ペイオフリール8やルーパ等の炉入側設備にて供給される鋼帯7を、炉前9で、スレッディングバーの後端に接続して、再びハースロール6で炉尻10まで搬送する。
【0022】
このスレッディングバーは、ハースロール6が約3mピッチで設けられている場合、ハースロール間に落下しないよう、3つのハースロール6にまたがるようにすると、その長さは約10mになることもある。また、スレッディングバーは、スレッディング時にハースロール6に突っかからないように、その先端部下部が面取りされているが、断面高さは、100mmを超えることもある。
【0023】
図2は、図1に示した横型連続処理炉12の冷却帯4の詳細を示す。冷却帯4は鋼帯7の両面に高速のガスを吹付けて冷却するガスジェットクーラAを備えている。このガスジェットクーラAは、上部ウィンドボックス15に設けた上ノズル13と、下部ウィンドボックス16に設けた下ノズル14を有し、上部ウィンドボックス15および下部ウィンドボックス16に供給されたガスを上ノズル13および下ノズル14から鋼帯7の両面に高速で吹付けて鋼帯7を冷却する。また、ガスジェットクーラA内およびガスジェットクーラAの入側と出側には、鋼帯7の搬送手段であるハースロール6が配置されており、通常操業時には鋼帯7がハースロール6によってガスジェットクーラA内を搬送され、スレッディング時にはスレッディングバー11とその後端に接続された鋼帯7がハースロール6によってガスジェットクーラA内を搬送される。
【0024】
図2には、上ノズル13と下ノズル14の間隙を140mm(すなわち、鋼帯7とノズル先端との距離が70mm)、スレッディングバー11の高さが100mmで、スレッディング必要高さが余裕代を入れて120mmの場合の例を示す。このような寸法関係では、通常操業時の鋼帯7の通板レベル(パスライン)は、上ノズル13と下ノズル14の中間レベルとして鋼帯7とノズル先端との距離が70mmとなるように設定され、ハースロール6上面もこの高さレベルに配置される。しかし、この通常操業時の鋼帯7の通板レベル(パスライン)のままでは、高さが100mmのスレッディングバー11を通過させることはできない。そこで、スレッディング時には、ガスジェットクーラA内およびガスジェットクーラの入側と出側のハースロール6を下降させ、スレッディングバー11がガスジェットクーラA内を通過できるスレッディング必要高さを確保する。
【0025】
図2の例では、ハースロール6の下降量を50mmにして、スレッディング必要高さ120mmを確保した。ここで、ガスジェットクーラAの入側と出側のハースロール6の下降量は、スレッディングバー11が通過できるスレッディング必要高さを確保できる範囲で、ガスジェットクーラA内のハースロール6の下降量より小さくすることが好ましい。これは、スレッディングバー11の先端下部は面取りされているが、ガスジェットクーラA内でハースロール6のレベルが急激に変化し、ハースロール6とスレッディングバー11とが激突することを避けるためである。なお、ガスジェットクーラA内のハースロール6の下降量は、図2の例による50mmに限定されるものではなく、スレッディングバー11の高さ等により決まるスレッディング必要高さに応じて、決定すればよい。
【0026】
図3はハースロールの昇降機構を示し、(a)はその断面図、(b)はその側面図である。このハースロールの昇降機構20は、本願出願人が特開平8−283871号公報にて開示した、炉内搬送ロールのステアリング装置と同様の構成を有する。すなわち、ハースロール6の軸受を炉側壁の軸受支持金物21に偏芯して取り付け、軸受支持金物21を回転させることにより、ハースロール6を炉側壁側での操作により昇降させることができる。このハースロールの昇降機構20は、グランドパッキン22を用いてシールを行っているので、構造が簡単で、補修も容易で安価という特徴を持つ。
【0027】
図4は、本発明に係るガスジェットクーラのユニット化の一例を示す。本発明では、上部ウィンドボックス15を上昇させず、ガスジェットクーラAの上部スペースが、図5の従来例のように上部ウィンドボックスの昇降装置17にて占有されることはないため、ガスジェットクーラにガスを供給する送風機19やそのガスの熱交換を行う熱交換器18等の付属機器をガスジェットクーラAの上部スペースに集約でき、ガス供給ダクト24を含めてガスジェットクーラAの上部および側部にユニット化して設置できる。
【0028】
このように、本発明によると、省スペースなガスジェットクーラのユニット化が実現できる。通常、ガスジェットクーラの上方には天井クレーンが走行し、ガスジェットクーラの架台下方にはルーパが設置され、ガスジェットクーラ廻りの有効空間は少ない。本発明により、ガスジェットクーラをユニットすると、有効空間が広がる。
【0029】
また、現在においてもガスジェットクーラの冷却速度を改善する開発が盛んに行われているが、本発明によるユニット化したガスジェットクーラであれば、開発成果の高効率のものに交換する際にも、熱交換器18・送風機19等の付属機器の設置スペースへの配慮が不要で、短工期で交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用した横型連続処理炉を備える連続溶融めっき設備の一例を示す。
【図2】図1に示した横型連続処理炉の冷却帯の詳細を示す。
【図3】ハースロールの昇降機構を示し、(a)はその断面図、(b)はその側面図である。
【図4】本発明に係るガスジェットクーラのユニット化の一例を示す。
【図5】上部ウィンドボックスを上昇させる従来の例を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 予熱帯
2 無酸化加熱帯
3 還元帯
4 冷却帯
5 めっき処理設備
6 ハースロール(炉内搬送ロール)
7 鋼帯
8 ペイオフリール
9 炉前
10 炉尻
11 スレッディングバー
12 横型連続処理炉
13 上ノズル
14 下ノズル
15 上部ウィンドボックス
16 下部ウィンドボックス
17 上部ウィンドボックスの昇降装置
18 熱交換器
19 送風機
20 ハースロール昇降装置
21 軸受支持金物
22 グランドパッキン
23 ベローズ
24 供給ダクト
25 炉本体
A ガスジェットクーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯の両面に高速のガスを吹付けて冷却するガスジェットクーラを備えた横型連続処理炉の冷却帯における鋼帯スレッディング方法であって、
鋼帯をスレッディングバーに接続し横型連続処理炉の冷却帯内を通過させるスレッディング時に、ガスジェットクーラ内およびガスジェットクーラの入側と出側のハースロールを下降させ、スレッディングバーが通過できるスレッディング間隙を確保することを特徴とする横型連続処理炉の冷却帯における鋼帯スレッディング方法。
【請求項2】
スレッディング時の、ガスジェットクーラの入側と出側のハースロールの下降量を、ガスジェットクーラ内のハースロールの下降量よりも小さくする請求項1に記載の横型連続処理炉の冷却帯における鋼帯スレッディング方法。
【請求項3】
鋼帯の両面に高速のガスを吹付けて冷却するガスジェットクーラを備えた横型連続処理炉の冷却帯において、
鋼帯をスレッディングバーに接続し横型連続処理炉の冷却帯内を通過させるスレッディング時に、ガスジェットクーラ内およびガスジェットクーラの入側と出側のハースロールを下降させるハースロールの昇降機構を設け、スレッディング時にスレッディングバーが通過できるスレッディング間隙を確保するようにしたことを特徴とする横型連続処理炉の冷却帯。
【請求項4】
ハースロールの昇降機構が横型連続処理炉の炉側壁に設けられている請求項3に記載の横型連続処理炉の冷却帯。
【請求項5】
ガスジェットクーラにガスを供給する送風機およびガス供給ダクトとそのガスの熱交換を行う熱交換器が、ガスジェットクーラの上部および側部にユニット化して設置されている請求項3または4に記載の横型連続処理炉の冷却帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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