説明

樹状細胞−T細胞の相互作用を調節するための組成物及び方法

【課題】樹状細胞−T細胞の相互作用を調節するための組成物及び方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、動物、特にヒト又は他の哺乳動物の免疫応答を調節、特に抑制するための組成物の調製における樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合する化合物の使用に関する。該組成物は、特に、樹状細胞とT細胞、具体的には、樹状細胞の表面上のC型レクチンとT細胞の表面上のICAMとの相互作用を調節する。組成物は、特異的な抗原に対する免疫応答を阻止/阻害するために、免疫療法のために、免疫抑制のために、自己免疫疾患の治療、アレルギーの治療、及び/又はHIV感染を阻害するために使用できる。C型レクチンに結合する化合物は、好ましくは、マンノース、フコース、植物レクチン、抗生物質、糖、タンパク質、又はC型レクチンに対する抗体である。本発明は、このような抗体にも関し、このような抗体を用いて樹状細胞を単離する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は他の哺乳動物のような動物における免疫応答を調節するための、特に増加又は抑制するための組成物及び方法に関する。
【0002】
ある態様では、本発明は、樹状細胞のT細胞への接着を調節するための、特に抑制するための組成物及び方法に関する。
【0003】
より具体的には、本発明の該態様は、T細胞の表面上のICAM受容体への、樹状細胞の表面上のC型レクチン受容体の接着を調節するための、特に抑制するための組成物及び方法に関する。該接着を調節することによって、クラスターの形成及び抗原提示のような樹状細胞−T細胞相互作用、並びに、例えば、これに依存する一次T細胞応答が共に影響を受けることができ、免疫応答の調節がもたらされる。
【0004】
本発明の組成物及び方法は、それ故、特異的な抗原に対する免疫応答に加えて、自己免疫疾患又はアレルギーで起こり得るような、免疫系の疾患によって引き起こされた免疫応答を変化させるために使用し得る。
【0005】
さらなる態様では、本発明の方法は、さらに、HIV感染の治療及び類似の免疫系疾患の治療に加えて、移植片に対する又は移植後の免疫応答を調節するために使用し得る。
【0006】
別の態様では、本発明は、ヒト又は他の哺乳動物のような動物における免疫応答を調節するための、特に増加させるための化合物、組成物及び方法に関する。
【0007】
より具体的には、本態様では、特異的な抗原に対する免疫応答は、樹状細胞の表面上のC型レクチン受容体に結合できる形態で、前記抗原又はその抗原部分を樹状細胞に提示することによって、生じ、増加され、又は促進される。このようにして提示された抗原は、樹状細胞に入り、続いて、樹状細胞がT細胞に抗原を提示することにより、抗原に対する免疫応答、又は増加した免疫応答を惹起する。
【0008】
本発明のさらなる態様は、前記組成物を用いた、及び/又は上述の方法を具体化した予防手法及び診断手法に関する。
【0009】
本発明は、樹状細胞のT細胞への接着は、樹状細胞の表面上のC型レクチン受容体によって媒介されるという驚くべき発見に基づいている。このC型レクチンは、T細胞の表面上にあるICAM受容体に結合するということも明らかとなった。「ICAM受容体」という語は、ICAM−2及びICAM−3受容体の両者を意味し、特にICAM−3受容体を意味する。
【0010】
本発明は、さらに、既知のC型レクチンの阻害剤及び/又はC型レクチン受容体に対して誘導された特異的抗体によるような、樹状細胞上の該C型レクチン受容体の阻害は、T細胞の樹状細胞への接着を調節、より具体的には抑制することができ、それによって、免疫応答、とりわけ免疫応答の初発段階に影響を与えることができるという発見に基づいている。
【背景技術】
【0011】
WO 96/23882は、樹状細胞及び胸腺上皮細胞の表面上に豊富に発現されているC型レクチンドメインを有するマウス及びヒト受容体を記載している。「DEC−205」と名付けられたマウス受容体は、10個のC型レクチンドメインを含有し、マクロファージマンノース受容体(MMR)と相同性のある、約7.5の等電点を有する205kDaのタンパク質として記載されている。
【0012】
WO 96/23882は、さらに、DEC−205に対するモノクローナル及びポリクローナル抗体を記載している。しかしながら、これらの抗体は、樹状細胞の機能をブロックすることはできなかった。特に、モノクローナル及びポリクローナル抗DEC−205抗体は、インビトロ(一方向混合リンパ球反応で、抗DEC−205が同種異系のT細胞の増殖を阻害できないことによって決定された)及びインビボ(抗DEC−205が、インビボ応答を、すなわち、局所的な移植片対宿主(GVH)反応で阻害できないことによって決定された)の両者で、樹状細胞とヘルパーT細胞間の相互作用を阻害することができなかった。これらの結果は、DEC−205受容体が、樹状細胞−T細胞の相互作用(すなわち、接着)に関与しておらず、抗DEC−205抗体は、免疫応答を調節するために使用することができないということを示唆している。
【0013】
Curtisらは、Proc. Natl.Acad.Sci.USA,89(1992),p.8356−8360及びWO 93/01820中で、ヒト胎盤組織から単離され、クローニングされた非CD4gp120受容体を記載している。該gp120受容体は、胎盤、骨格筋、脳、神経及び粘膜細胞のような高レベルのCD4を発現していない哺乳類細胞、並びに、腸、胸腺、心臓、T細胞、B細胞、及びマクロファージ(但し、肝臓又は腎臓にはない)を含む他の組織及び細胞上に発現されている。WO 93/01820の配列番号1及び2に開示されているC型レクチンgp120受容体のアミノ酸配列は、樹状細胞上に存在することが、今、見出されたC型レクチンと高度の配列相同性(>98%)を有している。
【0014】
Curtis及びWO 93/01820は、さらに、該C型レクチン受容体が、上記細胞/組織のHIVによる感染、すなわち、ビリオンが細胞中に取り込まれる前に、主要なHIVエンベロープである糖タンパク質gp120を結合することによる感染において果たしている役割についてさらに考察している。C型レクチンgp120受容体の阻害は、これらの細胞/組織のHIV感染を抑制又は阻害し得ることが見出された。適切な阻害剤として、WO 93/01820は、マンノース炭水化物、フコース炭水化物、コンカナバリンAのような植物レクチン、プラジミシンA(pradimicin A)のような特異的抗生物質、並びに(効力がより弱いと記載されているが)N−アセチル−D−グルコサミン及びガラクトースのような糖を開示している。それらを含有するこれらの化合物及び組成物は、HIVの細胞表面への結合を阻害するために、インビトロ又はインビボの何れかで使用される。
【0015】
WO 93/01820は、さらに、COS−7細胞へのHIVの結合が、gp120を抗gp120モノクローナル抗体(「抗体110.1」と名付けられた)とプレインキュベートすることによって阻害され得ることを開示している。しかしながら、本抗体は、C型レクチンではなく、gp120タンパク質に対して誘導されている。
【0016】
しかしながら、Curtis及びWO 93/01820は、何れも、樹状細胞上にこのようなC型レクチンが存在することを記載し、又は示唆していないのみならず、これらの参考文献は、免疫応答における初発段階中の樹状細胞−T細胞の相互作用におけるそれらの役割についても記載又は示唆していない。
【0017】
WO 95/32734は、FcγRII(CD32)架橋(又はクロスリンキング)組成物、及び特異的な抗原に対する免疫応答の調節におけるそれらの使用を記載している。この参照文献は、抗原提示細胞(APCs)上のFcγRII(CD32)分子の架橋は、必須の共同刺激分子B7−1/2の発現を損ない(すなわち、それらのアップレギュレーションを阻止する)、それによって、接着分子ICAM−3の発現を損なわせ(すなわち、接着分子ICAM−3のダウンレギュレーションを引き起こす)、抗原特異的なT細胞の活性化を共同刺激(co−stimulate)する単球の能力が損なわれるという機能的結果がもたらされる(すなわち、抗原特異的なT細胞の非応答性の調節がもたらされる)。架橋剤は、凝集したヒトIgG分子、又はそのFc断片;FcγRIIに対するニ価又は多価モノクローナル抗体又はその断片、又は二以上のヒトIgG Fc部分の融合物から選択される。
【0018】
WO 95/32734は、それ故、とりわけ、エフェクター細胞への増殖及び成熟化を誘導するために、T細胞の活性化に必要とされる共同刺激シグナル(すなわち、TcR/CD3相互作用の初発シグナルの他に)を調節する(すなわち、阻害する)ことに関している。WO 95/32734は、樹状細胞−T細胞の接着を調節することには関しておらず、樹状細胞(の表面)上にC型レクチンが存在することも、T細胞上のICAM−3受容体とのそれらの相互作用も開示又は示唆していない。
【0019】
WO 98/02456は、刺激されたヒトマクロファージライブラリーから単離されたII群ヒトC型レクチンを開示している。WO 98/49306は、ヒト膵炎関連タンパク質(PAP;pancreatitis−associated protein)中に存在するIV群C型レクチンを開示している。WO 98/41633は、ヒト腫瘍クローンから単離されたV群ヒトC型レクチンを開示している。
【0020】
WO 98/02456、WO 98/49306、及びWO 98/41633は、さらに、これらのC型レクチンに対する抗体を製造する方法を開示している。
【0021】
しかしながら、これらの参照文献は、何れも、樹状細胞上のC型レクチンに関しておらず、これらの参照文献に開示されたC型レクチンは、由来、生物学的機能、及び構造において、それらに記載されているC型レクチンとは異なっている。
【0022】
樹状細胞(DC)は、抹消組織中の抗原を捕捉し、リンパ又は血液を介して、排出(draining)リンパ節及び脾臓のT細胞領域に移動する専門の抗原提示細胞である。ここで、それらは、加工された抗原をナイーブT細胞に提示し、抗原特異的な一次T細胞応答を開始する。
【0023】
身体表面における免疫監視細胞としてのそれらの地位のため、DCは、粘膜暴露後、HIVに感染する最初の細胞であるように思われ、それ故、HIVの免疫的な病因で重要な役割を果たしていると推定されている。原発性サル免疫不全ウイルスを感染させたマカクをモデル系として用いて、インビボで実証されたように(Spira et al.,1996)(Joag et al.,1997)、現在では、HIVは、リンパ節に侵入し、CD4 T細胞に接近するために、DCの正常な移動過程を変化せしめると一般的に信じられている。DCのHIVによる増殖性感染が、幾人かの研究者によって報告されており(Granelli−Piperno et al.,J Virol 72(4),2733−7,1998)(Blauvelt et al., Nat Med 3(12),1369−75.1997.)、相当の証拠が、インビトロでHIVを規則的に与えたDCをT細胞と共に培養すると、強い感染を引き起こし得ることを示している(Cameron et al., Science 257(5068),383−7,1992).同様のシナリオが、HIVに感染した個体に起こっているかどうかは未だ不明確であるが、DCからT細胞へのHIV−1の伝達は、AIDSで観察されるCD4T細胞の枯渇に寄与し得るかもしれない。HIV−DCの相互作用を研究することは、HIV感染の初期の出来事を理解するのに寄与するはずであり、おそらくは、伝達における初期の出来事をブロックすることを目的とした戦略に導くであろう。さらなる考察については、WO 95/32734及びWO 96/23882も参照される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1) 動物、特にヒト又は他の哺乳動物の免疫応答を調節、特に抑制するための組成物の調製における樹状細胞の表面上のC型レクチン(但し、該C型レクチンは、DEC−205受容体ではない)に結合する化合物の使用。
(項目2) 樹状細胞とT細胞間の一以上の相互作用を調節するための、特に抑制するための組成物の調製における項目1に記載の使用。
(項目3) 樹状細胞とT細胞間の接着、特に樹状細胞の表面上のC型レクチンとT細胞の表面上のICAM受容体、特にT細胞の表面上のICAM−2又はICAM−3受容体間の接着を調節するための、特に抑制するための組成物の調製における項目1及び/又は2に記載の使用。
(項目4) 特異的な抗原に対する免疫応答を阻止し、又は阻害するための、免疫寛容を誘導するための、免疫療法のための、免疫抑制のための、自己免疫疾患の治療のための、及び/又はアレルギーの治療のための組成物の調製における項目1〜3の何れか1項に記載の使用。
(項目5) 樹状細胞のHIV感染を阻害するための、特に樹状細胞の表面へのHIV表面タンパク質(すなわち、gp120)の接着を阻害することによって、前記樹状細胞内へのHIVの侵入を阻害するための組成物の調製における樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合することができる化合物の使用。
(項目6) 感染した樹状細胞から感染していないT細胞へのHIVの転移を阻害するための組成物の調製における、樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合することができる化合物の使用。
(項目7) 動物、特にヒト又は他の哺乳動物の前記抗原に対する免疫応答を調節するための、特に生じさせるための、増加するための、及び/又は促進するための組成物の調製における1)樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合し、これに付着した化合物:2)抗原又はその断片若しくは一部の組み合わせの使用。
(項目8) 前記抗原が、C型レクチンに結合することができる化合物に共有結合し、又は融合している項目7に記載の使用。
(項目9) 抗原が、前記抗原、又は感染症(に対するワクチンで使用される)抗原を含有、又は発現する腫瘍細胞に対して免疫応答を生じせしめるために使用することができる癌抗原から選択される項目7又は8に記載の使用。
(項目10) 樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合できる化合物が、マンナン及びD−マンノースのようなマンノース炭水化物;L−フコースのようなフコース炭水化物;コンカナバリンAのような植物レクチン;プラジミシンAのような抗生物質;N−アセチル−D−グルコサミン及びガラクトースのような糖;gp120及びその類縁体又はそれらの断片のようなタンパク質;及び樹状細胞の表面上に発現されたC型レクチンに対して誘導された抗体又はその一部、断片、若しくはエピトープからなる群から選択される項目1〜9の何れか1項に記載の使用。
(項目11) 樹状細胞の表面上のC型レクチンが、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質、又はその天然の変異形、又はその均等物である項目1〜9の何れか1項に記載の使用。
(項目12) 樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合することができる化合物が、モノクローナル抗体、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列を有するC型レクチンに対して誘導されたモノクローナル抗体、又はその天然の変異形若しくは均等物;及び/又はその一部、断片、若しくはエピトープである項目10又は11に記載の使用。
(項目13) 配列番号1又は図9のアミノ酸配列を有するC型レクチンに対して誘導された抗体、好ましくはモノクローナル抗体、又はその天然の変異形若しくは均等物;及び/又はその一部、断片、若しくはエピトープ。
(項目14) AZN−D1又はAZN−D2の何れかである項目13に記載の抗体。
(項目15) 少なくとも一つの項目13又は14に記載の抗体と、それ自体公知である少なくとも一つのさらなる担体、賦形剤、アジュバント、及び/又はフォーミュラントを含有する薬学的組成物。
(項目16) 1)樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合し、これに付着した化合物:2)抗原又はその断片若しくは一部の組み合わせ。
(項目17) 前記抗原が、C型レクチンに結合し得る化合物と共有結合し、又は融合している項目16に記載の組み合わせ。
(項目18) 抗原が、前記抗原、又は感染症(に対するワクチンで使用される)抗原を含有する、又は発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を生じせしめるために使用することができる癌抗原から選択される項目16又は17に記載の組み合わせ。
(項目19) 樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合できる化合物が、マンナン及びD−マンノースのようなマンノース炭水化物;L−フコースのようなフコース炭水化物;コンカナバリンAのような植物レクチン;プラジミシンAのような抗生物質;N−アセチル−D−グルコサミン及びガラクトースのような糖;gp120及びその類縁体又はそれらの断片のようなタンパク質;及び樹状細胞の表面上に発現されたC型レクチンに対して誘導された抗体又はその一部、断片、若しくはエピトープからなる群から選択される項目16〜18の何れか1項に記載の組み合わせ。
(項目20) 生物学的試料中の樹状細胞の検出における項目13又は14に記載の抗体の使用。
(項目21) 生物学的試料又は培地からの樹状細胞の単離、調製、及び/又は精製における項目13又は14に記載の抗体の使用。
(項目22) 生物学的試料中のC型レクチン、特に、配列番号1のアミノ酸配列を有するC型レクチン、又はその天然の変異形、若しくは均等物である;及び/又はその一部、断片、又はエピトープの存在及び/又は発現を決定するためのアッセイにおける項目13又は14に記載の抗体の使用。
(項目23) 生物学的試料又は培地から樹状細胞を生産し、単離し、及び/又は精製する方法であって、
a)樹状細胞を含有する生物学的試料又は培地を項目13又は14に記載の抗体と接触させる工程と;
b)前記抗体に結合していない細胞から、及び、必要に応じて前記試料又は培地の任意のさらなる構成成分から、前記抗体に結合している細胞を分離する工程とを備え、
必要に応じて、さらに
c)前記抗体から前記抗体に結合している細胞を分離する工程
を備えた方法。
(項目24) 前記抗体が、カラム又はマトリックスに、(常)磁性ビーズに、又は類似の固相支持体に付着されている項目23に記載の方法。
(項目25) 前記生物学的試料が、血液、血漿、又はリンパ液のような生物学的流体である項目23又は24に記載の方法。
(項目26) 項目23又は24の方法によって得た樹状細胞。
DCは、非活性化T細胞と相互作用し、活性化する能力がユニークである。しかしながら、本発明の以前には、DC−T細胞接触がどのように開始され、調節されるかについては殆ど不明であった。本明細書では、DC−T細胞相互作用におけるICAM−3の役割が調べられている。DCは、ICAM−3に強く接着するが、この接着は、LFA−1、αD、又は他の全てのインテグリンによっては媒介されないことが実証されている。DC上の該新規ICAM−3受容体を検索する上で、DCが多く発現しているC型レクチン受容体がクローニングされ、DC−SIGNと名付けられた。DC−T細胞のクラスタリング及びT細胞応答の開始におけるその顕著な役割に加えて、我々は、DC−SIGNが、DCの感染、及びそれに続くT細胞へのHIV−1伝達に関与する主要なHIV−1受容体であることを発見した。このため、HIVと非活性化T細胞は、DCと相互作用するために、類似の高度に発現された受容体を利用する。
【0025】
第一の側面では、本発明は、動物、特にヒト又は他の哺乳動物の免疫応答を調節するための、特に抑制するための組成物の調製における樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合できる化合物の使用に関する。
【0026】
特に、本発明の該側面は、樹状細胞とT細胞間の相互作用を調節する、特に阻害するための組成物の調製における、樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合できる化合物の使用に関する。
【0027】
より具体的には、本発明の該側面は、樹状細胞とT細胞間の接着を調節するための、特に抑制するための組成物の調製における化合物の使用に関する。
【0028】
特に、本発明の該側面は、樹状細胞の表面上のC型レクチンとT細胞の表面上のICAM受容体間の接着を調節するための、特に抑制するための組成物の調製における、樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合できる化合物の使用に関する。
【0029】
樹状細胞のT細胞への結合に関与することが見出されたあるC型レクチンのアミノ酸配列が、配列番号1と図9に示されている。該C型レクチン受容体は、実質的に、Curtisらによって、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89(1992),p.8356−8360及びWO 93/01820に記載されたC型レクチンgp120受容体に類似している。特に、それは、WO 93/01820の配列番号1に記載のアミノ酸配列と高度の相同性(<98%)を有する。それは、404アミノ酸のII群C型レクチンであり;約44kDaの見かけの分子量を有し、;細胞質のアミノ末端を含む第一のドメイン(Met1〜Ala76)、タンデムリピートを含む第二のドメイン(Ile77〜Val249)、及びII型膜タンパク質である他の公知のC型レクチンと高度な相同性を有する第三のドメイン(Cys253〜Ala404)を有する。さらなる特性決定は、以下に示されている。
【0030】
本発明では、樹状細胞上の該C型レクチンは、T細胞の表面上にあるICAM受容体に結合することが見出された。
【0031】
従って、本発明の組成物は、樹状細胞とT細胞間の相互作用を調節する(すなわち、変化及び/又は修飾する)ために、より具体的には阻害する(すなわち、抑制、及び/又はダウンチューンする)ために使用し得る。
【0032】
このような相互作用には、例えば、樹状細胞−T細胞クラスタリング、T細胞の活性化におけるT細胞の樹状細胞への接着が含まれ、さらに、樹状細胞とT細胞間の接触に依存する全ての相互作用(直接的な細胞−細胞接触、又は樹状細胞とT細胞の近接化の何れかを意味する)が含まれる。
【0033】
このようなさらなる相互作用には、免疫応答を生じさせるのに関与するプロセス、とりわけ、Tリンパ球の一次感作/活性化(すなわち、抗原及び/又はMHCに結合したペプチドのT細胞への提示)、及びT細胞の共同刺激のような、このような応答の初発段階における免疫応答;並びに化学的なシグナリング、エンドサイトーシス、及び経上皮輸送のようなプロセスを生じせしめるのに関与するプロセスが含まれるが、これらに限定されない。一般的に樹状細胞−T細胞の相互作用を論述する場合、それらの全ては、本発明の組成物によって影響を受け得、以下の考察、並びにWO 95/32734及びWO 96/23882が参照される。
【0034】
本発明の組成物は、それ故、樹状細胞の免疫制御能力に影響を与えるために;樹状細胞を介した(一次)T細胞応答を調節、特に抑制するために;及び/又は、一般的に免疫系に影響を与える、特に阻害するために使用され得る。
【0035】
幾つかの具体的な応用には、特定の抗原に対する免疫応答を阻止又は阻害すること;免疫寛容を誘導すること;免疫療法;例えば、移植の拒絶を阻止するための免疫抑制:甲状腺炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、及び自己免疫性糖尿病のような自己免疫疾患の治療;並びにアレルギーの防止又は治療が含まれる。
【0036】
本発明の組成物には、樹状細胞のT細胞への接着又は接近に依存するT細胞上にある他の受容体の活性化も調節し得る。さらに、樹状細胞上のC型レクチンが、T細胞上のICAM受容体に結合するという本発明の発見は、樹状細胞とT細胞間の相互作用に影響を与えることによって、一般的に免疫系を調節するための新たな戦略又は可能性を開き得る。
【0037】
さらに、本発明の組成物は、化学物質、ケモカイン及び/又はインターロイキンなどのようなシグナリング因子などの物質、とりわけ、HIVのようなウイルス粒子の樹状細胞からT細胞への移送を阻止又は抑制するために使用され得る。このようにして、本発明の組成物を使用することによって、HIVの樹状細胞への初期の接着が阻害され得るのみならず、樹状細胞からT細胞へのHIV感染の伝播も阻害され得る。
【0038】
樹状細胞は、特にHIV感染の初期段階の間、HIVの「貯蔵場所(reservoir)」として働き得ると考えられているので、この発見は、特に重要である。本発明の組成物は、それ故、樹状細胞のHIV感染を阻止するために使用され得るのみならず、樹状細胞が感染した後に、HIV感染がT細胞に広がるのを抑制することにより、該疾病の過程を遅くするために使用され得る。
【0039】
T細胞の、すなわちリンパでの活性化は、HIVに感染した患者におけるAIDSの進行に重要な役割を果たしていることも知られている。本発明の組成物は、前記T細胞の活性化を阻止し、阻害し、又は少なくとも遅延させることにより、該疾病の開始及び/又は進行を遅らせるために使用し得ると考えられている。
【0040】
それ故、さらなる側面では、本発明は、さらに、樹状細胞のHIV感染を阻害するための、特に、樹状細胞の表面へのHIV表面タンパク質(すなわち、gp120)の接着を阻害することにより、前記樹状細胞へのHIVの進入を阻害するための組成物の調製における、樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合することができる化合物の使用に関する。
【0041】
本発明は、さらに、感染した樹状細胞から感染していない樹状細胞へのHIVの転移を阻害するための組成物の調製における、樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合することができる化合物の使用に関する。
【0042】
本発明の組成物に使用できる化合物には、上記WO 93/01820号に記載されているものを含む(これらに限定されない)、それ自体公知であるC型レクチンの阻害剤が含まれる。
【0043】
一般的に、これらは、C型レクチン、特に、配列番号1/図9のC型レクチン、又はその天然の変異形若しくは均等物に結合し得る、又は(好ましくは、可逆的な態様で)接着し得る、又は、これらのリガンドとして働き得る化合物である。例は、マンナン及びD−マンノースのようなマンノース炭水化物;L−フコースのようなフコース炭水化物;コンカナバリンAのような植物レクチン;プラジミシンAのような抗生物質;N−アセチル−D−グルコサミン及びガラクトースのような糖(効力がより弱いと記載されているが);並びに、例えば、ファージディスプレー法を用いて同定され得る適切なペプチド模倣化合物及び小薬剤分子である。さらに、gp120のようなタンパク質、及びその類縁体若しくは断片、又は樹状細胞上のC型レクチンへの結合能を有する類似のタンパク質に加えて、単離されたICAM受容体と、その一部及び断片を含むその類縁体が使用され得る。このような一部又は断片は、好ましくは、その時になお、樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合できるようなものであるべきである。
【0044】
しかしながら、炭水化物の使用は、インビボで迅速に代謝され得るので、通常、治療的観点からすると、より望ましくない。また、コンカナバリンA及びプラジミシン抗生物質のような植物のレクチンの使用は、治療環境で、特に、自己免疫疾患及び/又はHIV感染を有する患者を治療するときに、不利な点を有し得る。
【0045】
好ましくは、WO 93/01820に記載されているような、一以上の生理的に耐えられる及び/又は薬学的に許容され得る化合物が使用される。例えば、gp120又はその誘導体の使用は、特に、神経系に望ましくない副作用を引き起こし得る(WO 93/01820)。
【0046】
それ故、本発明によれば、好ましくは、樹状細胞の表面上に存在する/発現されたC型レクチンに対して誘導された抗体、又はその一部、断片、若しくはエピトープが使用される。本明細書において使用される抗体という語には、とりわけ、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ及び一本鎖抗体、並びに断片(Fab、Fv、Fa)及びFab発現ライブラリーが含まれる。さらに、例えば、WO98/49306に記載されているような「ヒト化」抗体を使用し得る。
【0047】
本発明のC型レクチンに対するこのような抗体は、以下に記載されているように、又は、WO 95/32734、WO 96/23882、WO 98/02456、WO 98/41633、及び/又はWO 98/49306に記載されているようなそれ自体公知である任意の他の方法で得ることができる。
【0048】
例えば、必要に応じて、(ウシ血清アルブミン又はスカシガイヘモシアニンのような)免疫原の担体、及び/又は、フロイントのアジュバント、サポニン、ISCOM’s、水酸化アルミニウム、又は類似のミネラルゲル、又はスカシガイヘモシアニン、又は類似の界面活性物質のようなアジュバントの使用とともに、C型レクチン、又はその免疫原部分、断片、若しくは融合物を用いてヤギ、ウサギ、ヒツジ、ラット、ブタ、又はマウスのような適切な宿主を免疫することによって、ポリクローナル抗体を取得し得る。必要に応じて、公知のイムノアッセイ手法を用いて(例えば、ここでも、WO 96/23882号が参照される)、所望の特性(すなわち、特異性)を有する抗体をスクリーニングする工程を含んでもよい、それ自体公知の方法で、(通常、1〜7日以内に)C型レクチンに対する免疫応答が生じた後、抗体は、免疫された動物から採取した血液又は血清から単離することができる。
【0049】
モノクローナルは、ハイブリドーマ及び類似の手法を含む、連続した培養細胞系統を用いて製造され得る。ここでも、実質的には、上記参照文献に記載されているとおりである。
【0050】
F(ab)、Fab’、及びFab断片のようなFab−断片は、それぞれ、ペプシン又は他のプロテアーゼを用いた抗体の消化、ジスルフィド結合の還元、及びパパインと還元剤による処理によって得られ得る。Fab−発現ライブラリーは、例えば、Huseら、1989,Science 245:1275−1281の方法によって得られ得る。
【0051】
好ましくは、樹状細胞上のC型レクチンに対するモノクローナル抗体、より具体的には、配列番号1及び2及び図9に示された/コードされたアミノ酸配列を有するペプチドに対するモノクローナル抗体、又は(抗原性のある)その一部が使用される、このようなモノクローナルは、本発明のさらなる側面である。以下、本発明は、本明細書でAZN−D1及びAZN−D2と称される2つのこのようなモノクローナルによって説明されるが、C型レクチンに対して同等の特異性を有する類似のモノクローナルも使用し得る。
【0052】
さらなる側面では、本発明は、樹状細胞上のC型レクチンに対する、より具体的には、配列番号1及び2及び図9に示された/コードされたアミノ酸配列を有するペプチドに対する抗体、好ましくはモノクローナル抗体、又は(抗原性のある)その一部を産生するハイブリドーマのような細胞系統を提供する。本発明の上記モノクローナルAZN−1及びAZN−2を産生するハイブリドーマは、1999年4月8日、それぞれ(仮)ECACC受付番号990400818及び99040819で、European Collection of Cell Culturesに寄託された。
【0053】
本発明は、樹状細胞上のC型レクチンに対する、より具体的には、配列番号1及び2及び図9に示された(又はコードされたアミノ酸配列を有するペプチドに対する抗体、好ましくはモノクローナル抗体、又は(抗原性のある)その一部を製造する方法にも関し、該方法は、前記抗体を産生する細胞又は細胞系統を栽培する工程と;細胞培養から抗体を採取/単離する工程を備える。
【0054】
樹状細胞上のC型レクチンに対する(モノクローナル)抗体、及びこのような抗体を産生する細胞又は細胞株は、何れも、これまで本分野で記載されておらず、本発明の新規抗体は、(すなわち、本明細書で開示した薬学的/治療的使用に加えて)広範な応用性を有するものと想定される。(本発明の別の側面を構成する)これらの出願のうち幾つかは、本明細書の開示から、当業者に明らかであろう。
【0055】
例えば、本明細書の抗体は、組織又は細胞全体の中又は上にあるC型レクチンの存在を検出するために、(及び、それにより、その発現を決定するために)、並びに、細胞断片のような他の生物学的試料中、又は細胞調製物中のC型レクチンの存在を検出するために使用され得る。このようにして得られた情報は、続いて、本発明の方法又は組成物が、このような組織又は細胞に適用できるかどうかを決定するために使用され得る。続いて、このようにして得られた情報は、本発明の方法又は組成物がこのような組織又は細胞に適用できるかどうかを決定するために(も)使用できる。本発明の抗体は、例えば、血液、血漿、又はリンパ液のような生物学的流体;骨髄、皮膚組織、腫瘍組織などのような組織試料又は細胞試料、又は細胞培養、又は栽培用培地を含む生物学的試料中/からの樹状細胞を(定性的に、及び/又は定量的に)検出し、単離し、精製し、及び/又は製造するためにも使用され得る。
【0056】
例えば、ロイカフェレース(leukapherese)後に蛍光活性化細胞ソーティングを含むUS−A−5,643,786号に記載された方法のような、生物学的試料から樹状細胞を単離/製造するために現在利用できる数少ない方法は、低い収率と均質でない試料のみを与える極めて扱いにくい多段階操作である。その結果、樹状細胞の入手が限られるため、この重要なクラスの細胞に対する研究が著しく妨げられてきた。
【0057】
本発明のモノクローナルを用いることによって、より高い収率と高い特異性で樹状細胞を単離し、製造することができる。このような方法では、モノクローナルは、抗体を用いて、生物学的流体から細胞を採集し、単離し、及び/又は精製するための、それ自体公知の方法で使用され得る。
【0058】
例えば、モノクローナルは、カラム又はマトリックスに、(常)磁性ビーズに、又は類似の固相支持体に付着された後、樹状細胞を含有する生物学的試料又は培地と接触され得る。それ自体は担体に付着しない細胞は、例えば、洗浄することによって、分離又は除去され、その後、樹状細胞は、それ自体公知の方法で担体から分離され、単離される。
【0059】
また、本発明のモノクローナルは、樹状細胞(及び/又はC型レクチン)の存在、及び/又は、生物学的試料中のそれをコードする遺伝子の発現を検出/定量するために使用することができ、ここでも、競合阻害アッセイ又はELISAタイプのイムノアッセイのような、それ自体公知である抗体の分析のための方法で、抗体を使用することができる。例えば、抗体は、顕微鏡法、フローサイトメトリー及びFACSを含む細胞ソーティング手法、(抗体に付着され得る)固相支持体及び/又は検出可能な標識又はマーカーをベースとする手法、(常)磁性ビーズをベースとする手法、又は他の任意の検出、又は抗体を使用できるそれ自体公知のアッセイ手法と組み合わせて使用することができる。(本発明の抗体の他に、抗体をベースとするアッセイ用のそれ自体公知のさらなる成分を全て含有し得る)このようなアッセイ及びキット並びにマニュアル等は、本発明のさらなる側面を構成する。
【0060】
このように、本発明のモノクローナルは、インビトロ及びインビボの両者で使用するのに、極めて有用な診断及び研究ツールを構成する。考えられる非限定的な応用の分野には、樹状細胞及びそれらの機能及び相互作用の研究:免疫系の研究;滑膜組織及び皮膚組織/皮膚細胞(皮膚樹状細胞)のような細胞、組織、又は生物学的流体中の樹状細胞及び/又はC型レクチンの検出;並びに、癌(腫瘍形成及び発達に照射する(irradicate)ための臨床試験において、樹状細胞がインビボで使用される)及び(例えば、慢性関節リウマチを含む)自己免疫疾患のような生物学的プロセス又は疾病機序において樹状細胞が果たす役割の研究が含まれる。
【0061】
本発明の抗体が使用できるそれ自体公知の方法及び手法のさらなる記載としては、D.P.Sites,A.I.Terr,T.G. Parslow:“Basic and clinical immunology”,8th Ed.,Prentice−Hall(1994);I. Roitt,J. Brostof,D.Male“Immunology”,2nd.Ed.,Churchill Livingstone(1994)のような一般的なテキストブックが参照され、全て参照文献として本明細書に組み込まれる。抗体及びそれに関連する手法の一般的な使用は、Janeway−Traversによる一般的な参照文献集:“Immunobiology,the immune system in health and disease”,Third Editionの2.7〜2.17部に挙げられているものが特に参照される。
【0062】
本発明の組成物は、ニ以上の上記活性な化合物を含有してもよく、又はこのような化合物は組み合わせて使用してもよい。例えば、抗C型レクチン抗体は、マンノース又はフコース炭水化物、レクチン類及び/又はプリダミシンAのような抗生物質と調合することができ、これによって相乗効果が得られるかもしれない。
【0063】
本発明の組成物は、抗LF3Aのような公知の共同阻害化合物;並びに治療すべき状態に応じて、それ自体公知である他の活性成分を含んでもよく、又は組み合わせて使用してもよい。例えば、本発明の組成物は、免疫抑制剤(すなわち、移植の拒絶を抑えるための)、免疫調節剤、抗生物質、自己抗原又はアレルゲン(例えば、WO 95/3234又はWO96/23882に記載されているようなもの)、腫瘍壊死因子(TNF)、並びに抗HIV剤のような抗ウイルス剤及びLeu−3AのようなCD4に対して誘導された抗体を含むCD4阻害剤のに調合され、又は組み合わせて使用してもよく、同じく、これによって相乗効果を得ることができる。
【0064】
本発明の組成物は、さらに、好ましくは単位投与量形態で、錠剤、カプセル、粉末、凍結乾燥された調製物、注射用の溶液等のような、それ自体公知の医薬形態を与えるために、公知の担体及び/又はアジュバントを使用して調合することができる。このような医薬形態、それらの使用、及び投与(単又は複投薬形態)、並びにその中で使用するための担体、賦形剤、アジュバント、及び/又はフォーミュラント(formulant)は、本分野で一般的に公知であり、例えば、WO 93/01820、WO 95/32734、WO 96/23882、WO 98/02456、WO 98/41633、及び/又はWO 98/49306に記載されており、全て、本明細書に参照文献として組み込まれる。さらに、調合物(formulation)は、WO 93/01820に記載されているような、リポソームの形態であり得る。
【0065】
抗体の医薬調合物、それらの投与、及び使用は、一般的に、WO 95/32734、WO 96/23882、WO 98/02456、WO 98/41633、及び/又はWO 98/49306に記載されている。
【0066】
本発明の組成物は、必要に応じて、適切な患者情報のパンフレット及び/又は使用上の説明書とともに、さらに、例えば、バイアル、瓶、袋(sachet)、泡(blister)等の中にパッケージしてもよい。
【0067】
さらなる側面では、本発明は、動物、特に、ヒト又は他の哺乳動物の免疫応答を調節する方法であって、好ましくは上述の組成物の形態で、免疫応答を変化、又は修飾するのに十分な量で、樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はレクチンに結合することができる化合物を前記動物に投与することを備えた方法に関する。
【0068】
該化合物又は組成物は、特に、樹状細胞とT細胞の相互作用が変化し、又は修飾されるような量で投与され、さらに具体的には、樹状細胞のT細胞への接着が減少するような量で投与される。
【0069】
本方法は、免疫系の疾患を予防し、及び/又は治療するために、並びに、上述のように、移植の拒絶を予防するために使用できる。
【0070】
本発明は、さらに、HIV感染を予防又は治療する方法であって、HIVに感染した患者又はHIVに感染するリスクがある人に、HIVの樹状細胞への接着、とりわけ、HIVのgp120エンベロープタンパク質の、樹状細胞の表面上のC型レクチンへの接着が阻害される量で、樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合することができる化合物を投与することを備えた方法に関する。
【0071】
本発明は、さらに、HIV感染の治療する方法であって、樹状細胞の表面上のC型レクチンを結合する、又はC型レクチンに結合することができる化合物を、感染した樹状細胞から感染していないT細胞へのHIVの転移を阻害する量で、HIVに感染した患者に投与することを備えた方法にも関する。
【0072】
さらなる側面では、本発明は、樹状細胞の表面上のC型レクチン受容体に結合することができる形態で、前記抗原、又は一以上のその抗原部分を樹状細胞に提示することにより、ヒト又は他の哺乳動物のような動物の、特異的な抗原又は抗原の組み合わせに対する免疫応答を調節するために、とりわけ、免疫応答を生じさせ、増加し、及び/又は促進するために使用される。このように提示された抗原は、樹状細胞に侵入した後、続いて、樹状細胞がT細胞に抗原を提示することによって、抗原に対する免疫応答を引き起こす。
【0073】
「樹状細胞の表面上のC型レクチン受容体に結合することができる形態」とは、一般的に、抗原又は抗原性断片が、上記化合物/リガンド又はその一部のような、樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合し得る化合物、リガンド、又は残基(residu)に付着していることを意味する。前記付着は、例えば、(好ましくは共有)結合、リガンド−リガンド相互作用、複合体形成、連結(ligation)、タンパク質の融合(例えば、前記融合物の発現を介した)、又は他の任意の種類の物理的又は化学的相互作用、またはC型レクチンに対するリガンドと共に、抗原を樹状細胞に提示することができる結合、すなわち安定な又は準安定な部分(entity)に結合されることにより得る。
【0074】
例えば、抗原は、上述のマンノース及びフコース炭水化物と共に、共有結合した基又は側鎖として与えられ得る;コンカナバリンAのような植物レクチン又はプラジミシンAのような抗生物質に共有結合され得る;又は、N−アセチル−D−グルコサミン及び(より好ましくないが)ガラクトースのような糖残基とともに与えることができ、これらは全て、抗原を樹状細胞に「誘導(direct)」する役割を果たす。
【0075】
好ましくは、抗原は、gp120及びその類縁体、若しくはICAM受容体及びその類縁体のようなC型レクチンに対するリガントに結合できる、若しくはリガンドとして働き得るタンパク質に、又はこのようなタンパク質の断片の一部に付着される(例えば、融合され、又は共有結合される)。あるいは、抗原は、C型レクチンに対して誘導された抗体、好ましくは、上述のAZN−D1及びAZN−D2のようなモノクローナル抗体に;又は、上記したこのような抗体の一部若しくは断片に付着(例えば、融合又は共有結合)することができる。
【0076】
抗原は、それに対する(増加した)免疫応答が得られる任意の抗原、又は任意のその一部若しくは断片であり得る。好ましくは、任意のこのような断片の一部は、それ自体、エピトープのような、免疫反応を引き起こし(illiciting)得るようである。しかしながら、本発明によれば、断片は、樹状細胞に対して誘導されている、すなわち増加した特異性又は親和性を有しており、本来免疫応答を引き起こすことができないであろう部分断片が、本明細書に記載したC型レクチンに対するリガンドと共に使用すると免疫応答を与え得るので、これは必要とされない。一般的には、C型レクチンに対するリガントと共に抗原を使用すると、抗原の効力を増加させ得る、すなわち投与される抗原の単位量当たり、より高い又は強い免疫応答を与え得る。このように、(血清又はワクチン中に存在するもののみならず、所望の抗原をコードするレトロウイルスも含む)抗原は、より低い投薬で投与しながらも、十分な免疫応答を与えることができる。
【0077】
適切な抗原の例は、gp100、g250、p53、MAGE、BAGE、GAGE、MART 1、チロシナーゼ関連タンパク質II、及びチロシナーゼ関連タンパク質を含む癌抗原であり、これらは全て、前記抗原を含有する又は発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を生じさせるために使用できる。本発明に使用できる他の種類の抗原には、インフルエンザ、おたふく風邪、麻疹、風疹、ジフテリア、破傷風、ヘモフィラス・インフルエンザ(例えば、b型)、ナイセリア、ボルデテラ・パーチュシス、ポリオミレタス、インフルエンザウイルス、及びニューモコッカスのような微生物の感染に起因する(感染性)疾病、及び、一般的には、寄生虫の、原生動物、及び/又はHIV及びヘルペスのようなウイルス感染も含む、それに対するワクチンを開発することができる、又は想定することができる他の任意の感染又は疾病に対するワクチンに使用される実質的に全ての抗原が含まれる。血清又はワクチンを与えるために、本発明の化合物は、さらにそれ自体公知の他の抗原と組み合わせ得る。
【0078】
本発明の該側面は、それ故、動物、特にヒト又は他の哺乳動物の前記抗原に対する免疫応答を調節するための、特に、生じさせるための、増加するための、及び/又は促進するための組成物の調製における、1)樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合し、これに付着した化合物:2)抗原又はその断片若しくは一部の組み合わせの使用に関する。
【0079】
それ自体本発明の別の側面を構成する、(例えば、複合体、化学物質又は部分、又は融合タンパク質若しくはタンパク質構造の形態である)これらの組み合わせは、同じく、上述のようなそれ自体公知の方法で調合し、投与することができる。
【0080】
上記方法、態様では全て、使用される化合物/組成物は、治療的に有効な量で(用語の参照は、一般的に、WO 93/01820、WO 95/32734、及び/又はWO 96/23882に対してなされる)投与されるであろう。投与は、単回投与であり得るが、好ましくは、一日、一週間、又は一ヶ月以上にわたって行われる複数回投与治療計画の一部である。
【0081】
本明細書で使用される全ての用語は、当分野における通常の意味であり、とりわけ、同様に適用された、WO 93/01820、WO 95/32734、WO 96/23882、WO 98/02456、WO 98/41633、及び/又はWO 98/49306で与えられた定義を参照することができる。
【0082】
さらに、本明細書において、本発明は、本明細書に開示された特定の44kDaのC型レクチン受容体に関して記載されているが、配列番号1及び図9の配列の天然の変異形を含む他の、一般的に類似したC型レクチンが、樹状細胞上に存在してもよく、及び/又は樹状細胞−T細胞相互作用に関与し得ることが排除されるわけではない。このような変異形は、通常、本明細書に開示した特定のC型レクチンと高度のアミノ酸相同性(80%超〜90%超)を有し、及び/又は機能的に等価であろう。任意のこのような受容体は、一般的に、本明細書に記載されたものと類似の特性を示すであろう;とりわけ、該受容体の阻害は、炭水化物阻害剤又は特異抗体の何れかによって、樹状細胞/T細胞相互作用の変化をもたらすであろう。任意のこのような変異形受容体は、しかしながら、WO 96/23882に開示されたC型レクチン受容体とは区別されなければならず、その阻害は、樹状細胞とT細胞の相互作用の阻害をもたらさない。
ここで、本発明は、以下に示された実験の部、及び図によってさらに説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1A】図1A−1Cは、白血球のICAM−1とICAM−3への自発的接着(図1A);β2−インテグリンの活性化後の、白血球のICAM−3への接着(図1B);β2−インテグリン(NKI−L19)、β1−インテグリン(AIIB2)、ICAM−3(CBR−IC3/1、CBR−IC3/2)に対する遮断抗体(20μg/mL)の存在下、又はEDTA(5mM)若しくはEGTA(5mM)の存在下でのDCのICAM−3への接着(図1C)を示すグラフである。
【図1B】図1A−1Cは、白血球のICAM−1とICAM−3への自発的接着(図1A);β2−インテグリンの活性化後の、白血球のICAM−3への接着(図1B);β2−インテグリン(NKI−L19)、β1−インテグリン(AIIB2)、ICAM−3(CBR−IC3/1、CBR−IC3/2)に対する遮断抗体(20μg/mL)の存在下、又はEDTA(5mM)若しくはEGTA(5mM)の存在下でのDCのICAM−3への接着(図1C)を示すグラフである。
【図1C】図1A−1Cは、白血球のICAM−1とICAM−3への自発的接着(図1A);β2−インテグリンの活性化後の、白血球のICAM−3への接着(図1B);β2−インテグリン(NKI−L19)、β1−インテグリン(AIIB2)、ICAM−3(CBR−IC3/1、CBR−IC3/2)に対する遮断抗体(20μg/mL)の存在下、又はEDTA(5mM)若しくはEGTA(5mM)の存在下でのDCのICAM−3への接着(図1C)を示すグラフである。
【図2A】図2A−2Cは、抗体AZN−D1とAZN−D2が、DCのICAM−3への接着を阻害し、DCによって特異的に発現されている抗原を認識することを示しているグラフである。
【図2B】図2A−2Cは、抗体AZN−D1とAZN−D2が、DCのICAM−3への接着を阻害し、DCによって特異的に発現されている抗原を認識することを示しているグラフである。
【図2C】図2A−2Cは、抗体AZN−D1とAZN−D2が、DCのICAM−3への接着を阻害し、DCによって特異的に発現されている抗原を認識することを示しているグラフである。
【図2D】図2Dである。
【図3A】図3Aと3Bは、SDS−PAGE(図3A)及びヒトDCから単離されたDC−SIGNの図示(3B)から分かるように、DC−SIGNがヒト胎盤HIVgp120結合C型レクチンと同一であることを示している。
【図3B】図3Aと3Bは、SDS−PAGE(図3A)及びヒトDCから単離されたDC−SIGNの図示(3B)から分かるように、DC−SIGNがヒト胎盤HIVgp120結合C型レクチンと同一であることを示している。
【図4A】図4Aと4Bは、COS7細胞で過剰発現されたDC−SIGNが、抗DC−SIGN抗体AZN−D1によって認識され、ICAM−3に結合することを示している。
【図4B】図4Aと4Bは、COS7細胞で過剰発現されたDC−SIGNが、抗DC−SIGN抗体AZN−D1によって認識され、ICAM−3に結合することを示している。
【図5】図5は、扁桃(AとB)及びリンパ節(CとD)切片におけるDC−SIGNの発現の免疫組織化学的な分析によって決定されたDC−SIGNの組織分布を示している(OM×100)。
【図6A】図6A−6Dは、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着(図6A);DCとK562−ICAM−3細胞との異種(heterotypic)細胞クラスタリング(図6B);非活性化PBLとDCとの動的な細胞クラスタリング(図6C);及びDC誘導性のT細胞増殖で果たしているDC−SIGN−ICAM−3相互作用の役割(図6D)によって実証されているように、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着が、DC−Tリンパ球の相互作用に関与していることを示している。
【図6B】図6A−6Dは、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着(図6A);DCとK562−ICAM−3細胞との異種(heterotypic)細胞クラスタリング(図6B);非活性化PBLとDCとの動的な細胞クラスタリング(図6C);及びDC誘導性のT細胞増殖で果たしているDC−SIGN−ICAM−3相互作用の役割(図6D)によって実証されているように、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着が、DC−Tリンパ球の相互作用に関与していることを示している。
【図6C】図6A−6Dは、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着(図6A);DCとK562−ICAM−3細胞との異種(heterotypic)細胞クラスタリング(図6B);非活性化PBLとDCとの動的な細胞クラスタリング(図6C);及びDC誘導性のT細胞増殖で果たしているDC−SIGN−ICAM−3相互作用の役割(図6D)によって実証されているように、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着が、DC−Tリンパ球の相互作用に関与していることを示している。
【図6D】図6A−6Dは、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着(図6A);DCとK562−ICAM−3細胞との異種(heterotypic)細胞クラスタリング(図6B);非活性化PBLとDCとの動的な細胞クラスタリング(図6C);及びDC誘導性のT細胞増殖で果たしているDC−SIGN−ICAM−3相互作用の役割(図6D)によって実証されているように、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着が、DC−Tリンパ球の相互作用に関与していることを示している。
【図7】図7は、DC SIGNが、DC上のHIV−1に対する受容体であることを示している。
【図8】図8は、DC SIGNが、ICAM−3とICAM−3を発現しているK562細胞の両者に結合することを示している。
【図9】図9は、DC−SIGNの配列を示している。
【実施例】
【0084】
実験
樹状細胞(DC)は、抗原を捕捉し、それらがナイーブT細胞に抗原を提示する場所である二次リンパ組織に移動する。HIV−1は、CD4T細胞に接近するために、このユニークな能力を破壊する。本発明では、ICAM−2及び/又はICAM−3に高い親和性で結合するのみならず、HIV−1にも結合することができるDC特異的なC型レクチンがクローニングされ、DS−SIGNと名付けられた。また、一過性のDC−T細胞相互作用とDC誘導性のT細胞の増殖を阻害するのみならず、DCのHIV−1感染も効率的に阻害する抗DC−SIGN抗体が開発された。これらの発見は、CD4非依存性のHIVのDC中への侵入に対する理解に重要な結果を有するのみならず、一次免疫応答の開始におけるDC−SIGNの役割に新たな光を投じる。
【0085】
例1:DCのICAM−3への接着はインテグリンによって媒介されない
最初のDC−T細胞接触におけるICAM−3を介した接着の役割を調べた。ICAM−3−Fcキメラをコートした蛍光ビーズ(Geijtenbeek et al.)を含む新規なフローサイトメトリー接着アッセイを利用して、DC、非活性化末梢血リンパ球(PBL)、及び単球がこのインテグリンリガンドに結合する能力をテストした。IL−4及びGM−CSFの存在下で、7日間単球を培養した後に得られた、未成熟なDCは、予めβ2インテグリンの活性化がなくても、強固にICAM−3を結合する(72%、図1A)。図1は、DCのICAM−3への接着が、Ca2+依存性であり、インテグリン非依存性であることを実証している:図1A、B、及びCには、少なくとも3つの実験のうち代表的な実験が1つ示されている(SD<5%)。
【0086】
−1A:ICAM−1及びICAM−3への白血球の自発的な接着。単離したばかりのPBL、単球、及びDCを、ICAM−1Fc又はICAM−3Fc蛍光ビーズのうち何れかとともに、30分間、37℃でインキュベートした。洗浄後、フローサイトメトリーによって、ビーズに結合した細胞のパーセントを決定した。
【0087】
−1B:β2−インテグリンの活性化後の、白血球のICAM−3への接着。蛍光性ICAM−3Fcビーズの結合を、PMA(980nM)又は活性化抗β2インテグリン抗体KIM185(10μg/mL)のうち何れかの存在下において、30分後に37℃でインキュベートした。PMA活性化後に、遮断抗LFA−1抗体NKI−L15(20μg/mL)の存在下で、LFA−1特異的な接着の阻害を測定した。
【0088】
−1C:β2−インテグリン(NKI−L19)、β1−インテグリン(AIIB2)、ICAM−3(CBR−IC3/1、CBR−IC3/2)に対する遮断抗体(20μg/mL)の存在下での、又はEDTA(5mM)若しくはEGTA(5mM)の存在下でのDCのICAM−3への接着。該接着は、図1Aに記載されているように決定された。
【0089】
DCのICAM−3へのこの自発的結合は、単球のそれよりも強力であるのに対して、非活性化PBLは、ほとんどICAM−3を結合しない(図1A)。DCのICAM−3への接着は、何れの抗αL又は抗β2インテグリン抗体によってもブロックすることはできなかった(図1A)。対照的に、接着は、抗αL抗体によってブロックされないので、ICAM−3への単球の接着はLFA−1依存的である(図1A)。他のβ2インテグリンメンバー(αDβ2、αMβ2、αXβ2、データは示さず)に対して誘導された抗体も、他のインテグリン(β1、β7インテグリン、図1B)に対して誘導された抗体もDCのICAM−3への接着をブロックしなかったので、DCのICAM−3への結合は、インテグリン非依存性であると結論付けた。
【0090】
本発明の抗ICAM−3抗体CBR3/1、CBR3/2及び両抗体の組み合わせは、かなりの程度、接着を阻害することができるので(図1B)、DCとICAM−3−Fcビーズの相互作用は、ICAM−3特異的である。興味深いことに、DCのICAM−3への接着は、EDTAとEGTAによって完全にブロックされ得る(図1B)。これらの発見は、DCが、β1又はβ2インテグリンファミリーに属していないCa2+依存性の表面受容体を介してICAM−3に結合することを強く示唆している。この分子は、DCpecific CAM−3 rabbing on−integrin(DC−SIGN)と名付けられた。
【0091】
例2:DC−SIGNに対する抗体は、DC−ICAM−3相互作用を阻害する
DC−SIGNをより詳細に調べるために、ICAM−3結合受容体に対する抗体を産生せしめた。DCで免疫したマウスの脾臓をSP2/0ミエローマ細胞と融合し、DC特異的なICAM−3への接着を阻害することができる抗体の存在について、得られたハイブリドーマの上清をスクリーニングした。2つのハイブリドーマを選択し、クローニングし、得られた抗体をAZN−D1及びAZN−D2と名付けた。精製された両抗体は、DCのICAM−3への接着を強く阻害するが、LFA−1を介した単球のICAM−3への接着には影響を与えない(図2A)。図2は、抗体AZN−D1とAZN−D2が、DCのICAM−3への接着を阻害し、DCによって特異的に発現されている抗原を認識することを実証している。
【0092】
−2A:モノクローナル抗体AZN−D1とAZN−D2(20μg/mL)は、DCの蛍光性ICAM−3Fcビーズへの接着をブロックするが、単離したばかりの単球の接着はブロックしない。少なくとも3つの実験のうち、代表的な実験が示されている(SD<5%)。
【0093】
−2B:DC−SIGNの発現は、DCの発達中に増加した。DCは、GM−CSF及びIL−4の存在下で単球から培養した。異なる時点で、単球マーカーCD14、β2インテグリンLFA−1、及びDC−SIGNの発現について、発達中のDCを分析した。細胞は、フォワード側の散乱でゲートされ、ヒストグラムの右上隅に平均蛍光が示されている。3つの実験のうちの代表的な実験が示されている。
【0094】
−2C:GM−CSF及びIL−4の存在下で、単球から発育しているDCは、DC−SIGN依存性の態様で、次第に多くのICAM−3に結合する。培養中の異なる時点で、細胞を採集し、遮断抗β2−インテグリン抗体AZN−L19又はAZN−D1抗体(20μg/mL)の存在下で、蛍光ICAM−3Fcビーズとともにインキュベートした。接着は、図1Aで記載したように決定した。AZN−D2は、AZN−D1と同様に、ICAM−3への接着を阻害した(結果は示されていない)。3つの実験のうち代表的な実験が示されている(SD<5%)
【0095】
−2D:発育しているDCによるβ2インテグリン及びDC−SIGNを介したICAM−3への接着の相対的寄与。相対的寄与は、図2Cに記載されているように、AZN−D1又はAZN−L19の存在下での接着の阻害から算出される。
【0096】
フローサイトメトリー分析でAZN−D1抗体を使用して、DC−SIGNは、単球によって発現されていないことが実証された(図2B)。DC−SIGNを発現している細胞は、培養の1日後に、既に検出できる。DC−SIGNの発現レベルは、培養の間に増加する(図2B)。単球マーカーCD14の発現は、培養の間、徐々に減少し、7日目には、低いCD14の発現のみが観察される(図2B)。さらなるフローサイトメトリー分析によって、7日目に、単球の未成熟なDCへの分化と一致して、細胞が、高レベルのMHCクラスI、II、β2インテグリンp150,95、及びCD86も発現していることが実証された(データは示されていない)。これらの結果は、DC−SIGNが7日目にDCによって豊富に発現され、発現レベルがLFA−1のそれより数倍高いことを実証している。
【0097】
同時に、単球が未成熟なDCに分化する間の、ICAM−3結合におけるDC−SIGNの関与を調べた(図2C)。遮断抗β2インテグリン抗体L19(図2C)による接着の阻害によって実証されたように、培養の開始時点で(0日)、単球によるICAM−3への結合は、完全にβ2インテグリン(LFA−1)依存性である。第1日目に、低レベルのDC−SIGNが発現されると(図2B)、ICAM−3特異的な接着は、β2インテグリン(LFA−1)とDC−SIGNの両者に依存する(図2C)。2日から7日まで、ICAM−3特異的な接着が増加して、β2インテグリン非依存性になり(図2C)、抗DC−SIGNが該接着を完全にブロックするので、2日目からは、専らDC−SIGNによって媒介される。DC−SIGNを介した接着は、7日目に最大に達する(図2C)。
【0098】
これらの結果を合わせると、DC−SIGNの発現の増加は、ICAM−3結合の観察された増加と一致することを示している(図2AとB)。これらの発見から、抗体AZN−D1とAZN−D2によって認識されるDC−SIGNは、DCによって発現される新規ICAM−3結合受容体であると結論することができる。
【0099】
例3:DC−SIGNは、44kDaのタンパク質である。
【0100】
DC−SIGNの分子量に関する情報を得るために、125−表面標識したDCの溶解物からDC−SIGNを免疫沈降した。還元条件下でのSDS−PAGEによる分析によって、単一の44kDaのタンパク質が明らかとなった(図3A、レーン1−2)。図3は、DC−SIGNが、ヒト胎盤HIVgp120結合C型レクチンと同一であることを実証している。
【0101】
−3A:DC−SIGNは、44kDaのタンパク質である。DCは、125Iで表面標識され、溶解され、抗DC−SIGN抗体AZN−D1(レーン1)、AZN−D2(レーン2)、及びAZN−L19(抗β2−インテグリン;レーン3)でDC−SIGNを免疫沈降した。免疫沈降物は、SDS−PAGE(5〜15%ゲル)、続くオートラジオグラフィーによって分析した(5−15%)。分子量マーカーの移動は、左側に示されている。矢印は、LFA−1(αL、180kDa)のα鎖、MAC−1(αM、165kDa)、及びp150,95(αX、150kDa)、β2インテグリン鎖(95kDa)、及びDC−SIGN(44kDa)を示している。同様の結果は、他の3つの実験で得られた。
【0102】
−3B:ヒトDCから単離されたDC−SIGNの模式図。2つの四角に囲まれたペプチド(ヒト胎盤gp120結合C型レクチン()のアミノ酸296〜306位、及び187〜197位)が、エドマン分解を用いた、免疫沈降したDC−SIGnの内部ペプチド配列決定によって同定された。DC−SIGNをコードするcDNAは、DCから単離された。推定アミノ酸配列は、ヒト胎盤gp120結合C型レクチン()の配列と100%同じである。膜貫通領域、レクチンドメイン、並びに7つの完全な、及び8つの部分的なリピート(R1−R8)が示されている。
【0103】
非還元性のSDS−PAGEゲル上での免疫沈降の分析は、DC−SIGNがモノマーとして存在することを示している(結果は示されていない)。さらに、ICAM−3−Fcコートされたビーズを用いて、DC溶解物から44kDaのタンパク質を抽出することができたのに対して、遮断抗DC−SIGN抗体の存在下では、このタンパク質は、ICAM−3−Fcコートされたビーズを用いて沈殿させることができなかった(結果は示されていない)。これらの発見は、DC−SIGNが、還元条件下で、44kDaのタンパク質としてDCによって発現されていることを示している。ICAM−3Fcを結合したビーズが、DC溶解物から44kDaのタンパク質のみを抽出したという観察は、DC−SIGNが、同じくDCによって発現され(図3A)、ICAM−3を結合すると報告されてきた(Vandervieren et al.,Immunity.3,683−690,1995)LFA−1又はαDβ2に比べて、ICAM−3に対して、ずっと高い親和性を有することを示している(図3A)。DC−SIGNと比較して、極めて低量のLFA−1は、免疫沈降しないので(図3A、レーン1と3)、これは、DC−SIGNが、LFA−1に比べてDCによって、より豊富に発現されていることを確かめている。総合すると、これらのデータは、DC−SIGNが、44kDaの単一ポリペプチドであり、DC上のICAM−3に対する一次的な受容体であることを実証している。
【0104】
例4:DC−SIGNが、ヒトHIVgp120結合C型レクチンに同一である
DC−SIGNを同定するために、抗DC−SIGN抗体AZN−D1を用いたDC溶解物からの予備的免疫沈降を行い、SDS−PAGEゲルから44kDaタンパク質を切り出した。トリプシン消化後、生じたペプチドをゲルから抽出し、予備的HPLCを用いて精製した。続いて、エドマン分解操作を用いて2つのペプチドのアミノ酸配列(0.5〜1pmol)を決定した。両ペプチドは、11アミノ酸残基からなり(図3B)、該ペプチド配列は、公知のタンパク質との相同性をEMBLデータベースでスクリーニングするために使用された。両ペプチドは、ヒトHIVgp120結合C型レクチンの推定アミノ酸配列(Curtis et al.,1992)と100%同一であることが証明された。該タンパク質は、これまでは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)エンベロープ糖タンパク質gp120に対するCD4非依存性の受容体として、専ら胎盤だけに同定されていた。
【0105】
gp120結合C型レクチン配列、DCから単離されたRNAに基づくプライマーを用いたRT−PCR分析は、1237ntの長さを有すると予想されるPCR産物を与えた。DC特異的なPCR産物をクローニングし、配列決定によって、ヒトgp120結合レクチンと100%の同一性を確認した(図3B)。胎盤gp120結合C型レクチンをコードするcDNAをトランスフェクトしたCOS7細胞のフローサイトメトリー分析は、gp120結合C型レクチンがDC−SIGNと実際に同一であることを明確に証明している(図4A)。図4は、COS7細胞中で過剰発現されたDC−SIGNは、抗DC−SIGN抗体AZN−D1によって認識され、ICAM−3を結合することを示している。
【0106】
−4A:AZN−D1は、DC−SIGNをコードするcDNAをトランスフェクトしたCOS7細胞を認識するが(黒)、モックトランスフェクトしたCOS7細胞(白)は認識しない。AZN−D2は、同様の染色を与えた(結果は示されていない)。
【0107】
−4B:COS7−DC−SIGNのICAM−3への接着。COS7細胞にトランスフェクトし、接着は、それぞれ、図1Aに記載されているように決定した。CSO7−DC−SIGN細胞のICAM−3への接着は、EGTA(5mM)及びDC−SIGN(AZN−D1)、ICAM−3(CBR−IC3/1、CBR−IC3/2)、及びβインテグリン(AZN−L19)に対する遮断抗体の存在下で測定した。3つの実験のうち代表的な実験が示されている(SD<5%)。トランスフェクトされたCOS7細胞の約30%が、抗DC−SIGN抗体で染色され、それ故、DC−SIGNを発現している。さらに、COS7−DC−SIGN細胞は、ICAM−3を結合することができるのに対して、モックトランスフェクトしたCOS7細胞は、ICAM−3を結合することができない(図4B)。COS7によって発現されたDC−SIGNの結合は、ICAM3及びDC−SIGNに対する抗体によって完全に阻害され得、EGTAは接着を完全にブロックするので、Ca2+依存性であった(図4B)。
【0108】
DCによって発現されるICAM−3結合受容体(DC−SIGN)は、404のアミノ酸からなり、3つの異なるドメインを有するII型膜貫通タンパク質である胎盤HIVgp120結合C型レクチン(Curtis et al., 1992)と同一であると結論付けられた。40アミノ酸残基のN末端細胞質ドメインは、15アミノ酸の疎水性のストレッチによって、ほぼ同一の配列の7つの完全なタンデムリピートと1つの不完全なタンデムリピートからなる領域から、分断されている。残りのC末端領域(Cys253−Ala404)は、Ca2+依存性(C型)レクチンと相同性を示している(図3B)。
【0109】
例5:DC−SIGNは、DCによって特異的に発現されている
AZN−D1/D2抗体を用いた多岐にわたる造血細胞群のフローサイトメトリー分析は、抗原が、DCによって優先的に発現されていることを実証している(表1)。テストした全ての造血細胞は、DCを除いて、DC−SIGNの発現が陰性であった。さらに、RT−PCR分析は、DC−SIGNをコードするmRNAが、DC中で特異的に転写されているのを確認し、これは、DC−SIGNタンパク質の発現パターンと一致している(表1)。
【0110】
DC−SIGNの発現をインビボでさらに調べるために、抗DC−SIGN抗体を用いて二次リンパ組織の免疫組織化学的分析を行った。これらの組織は、樹状細胞を含有していることが知られている。扁桃及びリンパ節の切片は、DC−SIGNを発現する細胞を含有しており、これは、主として、扁桃とリンパ節の両者のT細胞領域中に観察された(図5)。図5は、DC−SIGNの組織分布を示している:扁桃及びリンパ節切片におけるDC−SIGNの発現の免疫組織化学的分析(OM×100)。切片は、アセトンで固定し、核の染色は、ヘマテインを用いて行った。DC−SIGNの染色は、AZN−D1を用いて行った。胚芽中心(GC)、T(T)及びB細胞(B)領域が図示されている。樹状細胞の分布及び形態と一致して、DC−SIGNを発現している細胞は、胚芽中心及びリンパ組織のマントルゾーンには検出されない(図5)。CD3とCD14に対する連続切片の染色によって、これらの細胞のフローサイトメトリー分析とRT−PCRの両者によっても実証されたように(表1)、DC−SIGNを発現している細胞は、T細胞及び単球とは異なること(データは示されていない)が確認された。
【0111】
例6:DC−SIGN/ICAM−3相互作用は、一過性のDC−Tリンパ球クラスタリングを媒介する
DCが、DC−SIGN依存性の態様で、ICAM−3を発現しているトランスフェクタントに結合することを実証するために、ICAM−3をコードするcDNAをトランスフェクトした白血病細胞株K562(K562−ICAM−3)がDCに結合する能力を調べた。図6Aに示されているように、相互作用が抗DC−SIGN抗体によってブロックできるので、DCは、DC−SIGN依存性の態様で、K562−ICAM−3とクラスターを形成する。DCとK562との間ではクラスタリングが全く観察されなかったことは、ICAM−3がDC−SIGNに対するリガンドであることを実証している。図6は、DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着が、DC−Tリンパ球相互作用に関与していることを示す。
【0112】
−6A:DC−SIGNを介したDCのICAM−3への接着は、完全な状態の細胞骨格に依存する。DCのICAM−3ビーズへの接着は、様々な濃度で滴定された、サイトカラシンDの存在下、遮断DC−SIGN抗体AZN−D1あり(白四角)、又はなし(黒四角)で決定した。2つの実験のうち代表的な実験が示されている(SD<5%)。
【0113】
−6B:DCとK562−ICAM−3細胞との異種細胞クラスタリング。K562及びICMA−3をコードするcDNAを安定にトランスフェクトしたK562細胞(K562−ICAM−3)を、赤い色素HE(ハイドロエチジン)で標識した。DCは緑の色素SFDAで標識した。K562とK562−ICAM−3を、遮断抗体DC−SIGN抗体(AZN−D1;10分。プレインキュベーション)あり、又はなしで、DC(50×10細胞/細胞種類)とともに、37℃でインキュベートした。異なる時点で、細胞をパラホルムアルデヒド(0.5%)で固定し、異種細胞のクラスタリングをフローサイトメトリーで測定した。2つの実験のうち代表的な実験が示されている。
【0114】
−6C:非活性化PbLとDCの動的な細胞クラスタリングは、DC−SIGNによって媒介される。抗DC−SIGN抗体AZN−D1とAZN−D2(10μg/mL)あり/なしで、10分間室温で、DC(50×10細胞)をプレインキュベートした。蛍光性色素カルセインA(25μg/10細胞/mL、30分間37℃)で標識した、同種異系PBL(1×10細胞)を加え、細胞混合物を37℃でインキュベートした。クラスタリングは、フローサイトメトリーによって測定した。2つの実験のうち代表的な実験が示されている。
【0115】
−6D:DC−SIGN−ICAM−3相互作用は、DC誘導性のT細胞増殖に重要である。LFA−3(TS2/9)とDC−SIGN(AZN−D1、AZN−D2)に対する遮断抗体(20μg/mL)の存在下で、同種異系の反応性(responder)Tリンパ球(100×10)をDC刺激因子(stimulator)(1.5×10)に加えた。細胞を4日間培養した。4日目に、[H]メチルチミジンを16時間細胞にパルスし、取り込み量を決定した。結果は、3つのウェルからのCPMの平均パーセントとして表されている。
【0116】
DC−SIGN依存性のクラスタリングが一過性であり、60分に最大となることは、DC−SIGN−ICAM−3相互作用がDCによって積極的に調整され得ることを示している。さらに、この現象は、TCRの参加後にこの相互作用化が強化されるまで、DCが複数のナイーブT細胞と一過性に相互作用することを可能とする。
【0117】
これをテストするために、DCのT細胞へのクラスタリングが、DC−SIGNによって媒介されるかどうか、及びこの相互作用も一過性であるかどうかを調べた。DCを非活性化同種異系T細胞(DC:T細胞、1:20)とともにインキュベートして、DC−T細胞クラスタリングを決定した。図6Bに示されているように、DCとT細胞とのクラスタリングは一過性であり、20分後に最大(32%)に達する。さらに、DC−T細胞相互作用は、抗DC−SIGN抗体によって阻害することができ(約50%)、DC−T細胞のクラスタリングは、他の表面受容体によっても媒介されることが示唆されている。このように、DC−T細胞クラスタリングは、実際に一過性であり、部分的には、DC−SIGN/ICAM−3相互作用によって媒介されている。同様に、図8は、DC−SIGNが、ICAM−3をコードするcDNAを発現しているK562細胞と結合するのみならず、ICAM−3をコードするcDNAを発現している細胞に結合し、前記結合は、マンナンと抗DC−SIGN抗体の両者によって阻害され得ることを示している。
【0118】
例7:同種異系DCによって誘導された非活性化T細胞の増殖は、DC−SIGN依存性である
DC−SIGNのICAM−3への結合は、DCのT細胞とのクラスタリングに重要なので、DC誘導性のT細胞増殖におけるDS−SIGNの役割も調べた。遮断抗DC−SIGN抗体の存在下、又は非存在下で、同種異系DCを用いて非活性化Tリンパ球を刺激した。図6Cに示されているように、抗DC−SIGN抗体AZN−D1とAZN−D2は、ともにTリンパ球の増殖を75%超、阻害した。同様に、T細胞上のCD2に結合し、T細胞増殖を媒介することも知られている共同刺激分子LFA−3に対する抗体は、T細胞の増殖を阻害する。抗LFA−3と抗DC−SIGN抗体の組み合わせは、T細胞の増殖を完全に阻害する(図6C)。
【0119】
例8:DC−SIGNは、DCのHIV感染に関与している
上記のごとく、DC−SIGNは、胎盤HIVgp120結合レクチンと同一であり、DCによって豊富に発現されていることが実証されたので、DC−SIGNは、HIV−1のDC中への侵入を促進し得るかもしれない。これを調べるために、DCにHIV−1をパルスし、DC−T細胞共培養中の増殖性感染を測定した。IL−4とGM−CSFの存在下で、7日間培養した後に採集したDCは、低レベルのCD4(Blauvelt et al.,1997;Granelli−Piperno et al., J Exp Med 184(6),2433−8,1996)と高レベルのDC−SIGN(図7)を発現した。図7に示されているように、DCに、2時間、HIV−1をパルスし、洗浄し、活性化されたPBMC細胞の存在下で培養すると強力な増殖性感染が起こる。DC−T細胞の共培養の3日目までに、HIV−1複製の指標であるp24Gagタンパク質が、培地中に蓄積し始め(図7)、他者によって示されたのと同様に(Blauvelt et al.,1997;Granelli−Piperno et al.,1998;Granelli−Piperno et al., Curr Biol 9(1),21−29,1999)、HIV−1が共培養中で効率的に複製されることを実証している。しかしながら、HIV−1パルスに先立って、DCを抗DC−SIGN抗体とプレインキュベートし、活性化されたPBMCとインキュベートすると、DC−T細胞の共培養の3及び5日目に示されているように、HIV−1の複製が75%超、阻害される(図7)。HIV−1でパルスした後、抗DC−SIGN抗体とDCをインキュベートすると、DC−T細胞の共培養中に、効率的なHIV−1複製が、なお観察された(図7)。これらの発見は、DCからT細胞へのHIV−1の伝達ではなく、HIV−1のDCへの結合の阻害を通じて、抗DC−SIGN抗体がHIV−1の感染をブロックすることを実証しており、DC−SIGNが、DC上の主要なHIV−1受容体として作用することを示している。このように、DC−SIGNは、DC上に高度に発現されており、ICAM−3とHIV−1の両者に対するDC特異的な受容体として機能する。
【0120】
上記の実験結果から、DCとTリンパ球との最初の相互作用は、抗原非依存性であり、且つ一過性であると、特に結論付けることができる。この一過性の性質は、増殖性のTCRの参加がなされるまで、多数のT細胞と相互作用する能力をDCに与える。現在まで、この一過性のプロセスが開始される機序は不明確であった。本明細書では、新規DC特異的な受容体、DC−SIGNとICAM−3との相互作用が、この一過性のDC−T細胞相互作用を媒介することが実証されている。DC−SIGNは、DCによって豊富に発現されており、DC−SIGNは、DC上の主要なHIV−1受容体として働くことが示された。
【0121】
HIV−1感染中のDCの重要な役割は、HIV−1をT細胞に伝播して、CD4+T細胞の死をもたらす大量の複製を促進することである(Cameron et al.,1992;Cameron:AIDS Res Hum Retroviruses 10(1),61−71,1994)。DCの増殖性HIV−1感染は明確に実証されており、DCの発育段階に依存する(Granelli−Piperno et al.,1998)。IL−4とGM−CSFの存在下で単球から培養された未成熟なDCは、M−トロピック(tropic)HIV−1株によって増殖性に感染される(Granelli−Piperno et al.,1996;Granelli−Piperno et al.,1998)(Blauvelt et al.,1997)のに対して、M及びTトロピックHIV−1の成熟したDCへの侵入は、ともに、増殖性の感染をもたらさない(Granelli 1998)。しかしながら、両種類のDCへのHIV−1の侵入は、非活性化又は活性化T細胞の何れかとともに共培養すると、爆発的な複製をもたらす(Granelli 1998,1999)。標的細胞のHIV−1感染における最初の出来事には、受容体の結合と膜の融合が含まれる。このプロセスは、エンベロープ糖タンパク質gp120のCD4への高親和性結合によって開始される。しかしながら、CD4のみでは、融合を開始するのに十分ではなく、最後の融合現象が起こるための共受容体として、CCR5及びCXCR4のようなケモカイン受容体が必要とされる(Littman et al.,1998による総説)(Dragic et al., Nature 381(6584),667−73,1996;Feng et al.,Science 272(5263),872−7,1996)。DCは、低量のCD4を発現しているのに対して、細胞表面上には高レベルのDC―SIGNが発現されている。DCの増殖性感染、及びHIV−1を捕捉し、続いてHIV−1を転移させるその能力は、別個の経路を通じて媒介されると示唆されてきた。DCの増殖性感染は、CD4依存性の経路によって媒介されるのに対して、HIV−1は、なおDCがHIV−1をT細胞に転移させるのを可能とするCD4非依存性の経路を介してDCによりHIV−1を捕捉することができる(Blauvelt et al.(1997))。本明細書では、HIV−1パルスの前に、抗DC−SIGN抗体とともにDCをプレインキュベートすると、DC−T細胞の共培養中に増殖性の感染が欠如することによって測定されたように、DC−SIGNが、HIV−1のDCへの侵入を特異的に媒介することが示された。抗DC−SIGN抗体は、HIV−1のDC中への侵入を完全には阻害しない。このDC−SIGN非依存性の経路は、おそらく、DC上に低レベルで発現されているCD4()によって媒介される。これらの結果は、DC中へのウイルスの侵入経路に、CD4依存性の経路と非依存性の経路の両者が存在することを確認している。様々な接着分子が、DC−T細胞接触の妨害を通じて、DCからT細胞へのHIV−1の伝達を阻害し得ることが示された(Tsunetsugu−Yokota et al.,1997)。DC−T細胞相互作用を阻害するために、HIV−1パルス後に抗DC−SIGN抗体を添加すると、抗DC−SIGN抗体は、T細胞へのHIV−1の伝達を阻止することができなかった。これらのデータは、DC−SIGNが、HIV−1がDC中に侵入するための主要な受容体として働いていることを示している。DCが、高レベルのDC−SIGNと低レベルのCD4を発現しているという事実(図7)は、DC中へのHIV−1の侵入が、主としてDC−SIGNによって媒介されることをさらに実証している。DC−SIGNのHIV−1受容体としての発見は、HIV−1のDC中への侵入をよりよく理解する上で重要であり得る。さらに、抗DC−SIGN抗体の存在下で観察されるHIV−1感染の阻害は、ウイルス感染と局所的なHIV−1の拡散に対する治療的な戦略での抗DC−SIGN抗体の開発を可能にするであろう。
【0122】
DCは、様々な組織で、僅かなレベルで存在する細胞の異種集団を構成する。様々な集団をより明確にするために、DC系統特異的な細胞表面分子に対して誘導される抗体の生成に努力が注がれている。これまでは、ヒトDC特異的な抗原を認識する2〜3の抗体のみが作られてきた((Hock et al.,Immunol.83,573−581,1994)(de Saint−Vis et al.,Immunity 9(3),325−36,1998)(Hart et al.,1997))。本明細書において、テストした全ての造血細胞のうち、DCのみが、タンパク質及びmRNAレベルでDC−SIGNを発現していることが実証されたので、いま、ヒトDC特異的な抗原のこのリストに、DC−SIGNを加えることができる(表1)。インシチュで、DC−SIGNは、専ら、扁桃及びリンパ節のT細胞領域に存在するDCサブセットによって発現されている。これらの成熟DCは、ナイーブT細胞の活性化に極めて強い効力を有する。それ故、インシチュでのDC−SIGN発現は、DC−T細胞クラスタリング及びそれに引き続くT細胞の活性化の重要な媒介物質としてのその機能と相関している。
【0123】
抗原提示細胞による非活性化Tリンパ球の活性化は、後天性の免疫応答における極めて重要な工程である。多くの組織に局在し、DCは抗原を捕捉、加工し、それらがナイーブな抗原特異的T細胞と相互作用し、これを活性化する場所であるリンパ組織に移動する。T細胞は、ケモカインによって、これらの抗原提示部位に誘導される。最近、ナイーブT細胞を免疫開始部位に特異的に誘引するDC特異的なケモカインDC−CK1が同定された(Adema et al., Nature 387, 713−717,1997)。二次リンパ組織に到達すると、T細胞はDCと相互作用し、MHC分子に結合したペプチドのTCR認識後に活性化が起こる。しかしながら、MHC分子によって提示された抗原に対するTCRの親和性は極めて低いので、APC上の特異的なMHC−ペプチド複合体の数は限られており、TCRの抗原との相互作用は、通常、完全な活性化に必要なDCとTリンパ球との近接した膜接触の形成を駆動するには不十分である。
【0124】
現在まで、LFA−1は、DC上のICAM−3に対する最も重要な受容体であった。しかしながら、ICAM−3結合におけるその役割は、本明細書におけるDC−SIGNの発見のため、現在では、議論の余地があるものとなった。DCのICAM−3への接着は、DC−SIGNによって完全に媒介されることが実証された。DC−SIGNは、LFA−1よりDCによって、より豊富に発現されている(図2B)。さらに、LFA−1は、DC上で不活性であり(図2C)、ICAM−3に対するその親和性は、ICAM−3に対するDC−SIGNの親和性よりずっと低い。これらのデータは、DC−SIGNが、DC上の主要なICAM−3受容体であることを明確に実証している。DCに対するDC−SIGNの機能は、抗DC−SIGN抗体が一過性のDC−T細胞クラスタリングを部分的に阻害したという発見によってさらに明確にされた。それ故、DC−SIGNは、免疫応答における最初のDC−T細胞相互作用に関わっている。以前は、LFA−1に割り振られた役割であった。DC−SIGNによって媒介されるDC−T細胞相互作用の一過性の性質は、増殖性のTCRを介した相互作用が起こり、それによって相互作用が安定化されるまで、DCが多数の非活性化T細胞と相互作用することを可能にする。DC−SING−ICAM−3相互作用の重要性は、DC−SIGNに対する抗体が、同種異系のDC誘導性Tリンパ球増殖を阻害し得るという発見によって、さらに強調される。さらに、DC−SIGNと公知の共同刺激分子LFA−3()に対する抗体の組み合わせは、ほぼ完全にTリンパ球の増殖を阻害する。それ故、DC−SIGNのICAM−3への一過性の高親和性接着は、DCとナイーブT細胞間の最初の抗原非依存性相互作用において重要な役割を果たしている。おそらく、この最初の高親和性相互作用は、MHCに結合した抗原によるTCRの関与を可能とし、引き続き、LFA−1−ICAM−1相互作用のような、DCとT細胞間の他の幾つかの接着性相互作用を開始させる。LFA−1はT細胞に対して不活性なので、DCによる抗原提示後におけるTCR/CD3複合体の活性化は、LFA−1の活性化と、引き続くDC上に発現されたLFA−1のICAM−1への強力な結合()をもたらすであろう。複数の接触を介したDCとT細胞間の相互作用の強化は、続いて、DC刺激因子によるTリンパ球の完全な活性化をもたらすであろう()。
【0125】
結論をいえば、DC上に新規ICAM−3受容体が同定され、DC−SIGNと名付けられ、この受容体は、ヒトDCによって特異的に発現されており、免疫応答を開始するために必要な最初の一過性DC−T細胞相互作用に関与している。興味深いことに、DC−SIGNは、HIVエンベロープタンパク質gp120も結合し、HIV−1のDCへの侵入を促進することもできる。本明細書に開示した発見に基づいて、様々な治療的及び予防的可能性と手法が、当業者に示唆されるであろう。
【0126】
例9:実験の手順
例9A:抗体
以下の抗体:KIM185(抗β2インテグリン、(Andrew et al.,Eur.J.Immunol.23,2217−2222,1993)、AZN−L19(抗β2インテグリン、)、NKI−L15(抗αL、(Keizer et al.,Eur.J.Immunol.15,1142−1147,1985))、AIIB2(抗β1インテグリン、(Da Silva et al.,J.Immunol.143,617−622,1989))、CBR−IC3/1及びCBR−IC3/2(抗ICAM−3(de Fougerolles et al.,J.Exp.Med.177,1187−1192,1993))、CD14(WT14())、CD4(wt4())を使用した。抗DC−SIGN抗体AZN−D1及びAZN−D2は、BALB/cマウスをDCで免疫し、続いて、ハイブリドーマ上清が、蛍光性ビーズの接着アッセイによて測定したDCのICAM−3への接着をブロックする能力をスクリーニングすることによって得られた。
【0127】
例9B:細胞
DCは、記載に従って単球から培養した(Sallusto and Lanzavecchia,J.Exp.Med.179,1109−1118,1994;Romani et al.,J.Exp.Med.180,82−93,1994)。簡潔に述べれば、接着工程によって、新鮮なPBMCから単球を単離した。IL−4(Schering−Plough,Brussels,Belgium;500U/mL)及びGM−CSF(Schering−Plough,Brussels,Belgium;1000U/mL)の存在下で、単球を7日間培養した。4日目に、新鮮なサイトカインを添加した。7日目に、MHCクラスI及びII、CD1a、p150,95、及びCD80の発現のフローサイトメトリー分析によって、培養されたDCの表現型を確認した。ICAM−3を発現している安定なK562トランスフェクタント(K562−ICAM−3)は、記載のごとく(Lub et al.,Mol.Biol Cell 8,719−728,1997)エレクトロポレーションによって、10μgのPCRII ICAM−3 R1プラスミド(D.Simmons博士から入手)と2μgのPGK−hygベクター(te Riele et al 1990)でK562をトランスフェクションすることによって作成した。非活性化T細胞(>90% CD3 陽性)は、記載のごとく(Figdor et al.,J.Immunol.Methods 68,73−87,1984)、健康なドナーの骨髄からPBMCの遠心による水力分級によって得た。
【0128】
例9C:放射能標識、免疫沈降、及びタンパク質配列の分析
ラクトペルオキシダーゼ法(Pink and Ziegler,1979,in:Research Methods in Immunology,L.Lefkovits and B Pernis,eds.(New York:Academic pres),pp.169−180)により、細胞をNa125I(Amersham,Buckinghamshire、UK)で表面標識した。4℃で1時間、溶解用緩衝液(1% NP−40、50mMトリエタノールアミン(pH7.8)、150mM NaCl、1mM CaCl、1mM MgCl、1mM PMSF、0.02mg/mLロイペプチン)の中でDCを溶解した。4℃で15分間、13,000gでの遠心によって、核の破砕物を溶離液から除去した。タンパク質A−セファロースCL−4Bビーズに共有結合したmAbとともに、予め清澄にした溶離液を3時間インキュベートした(Pharmacia Fine Chemicals、Piscataway、NJ)。免疫沈降物を溶解用緩衝液で徹底的に洗浄し、Laemmliの操作(Laemmli,Nature 227,680685,1970)変法に従って、SDS−PAGEによって分析した。切り出したタンパク質をトリプシン消化し、生じたペプチドを精製し、Eurosequence BV(Groningen, The Netherlands)によって配列分析を行った。
【0129】
例9D:DC−SIGNをコードするcDNAの単離及び発現
酸性のグアニジニウムイソチオシアネート−フェノール−クロロホルム操作によって全RNAを単離した(Chomczyski and Sacchi,Anal Biochem 162(1),156−9,1987)。胎盤gp120結合C型レクチンをコードするcDNAは、全RNAに対するRT−PCRによって、DCから増幅した。PCRプライマーは、胎盤gp120結合C型レクチンのヌクレオチド配列(受付番号M98457、(Curtis et al.,1992))に基づいており、ヌクレオチド配列(5’から3’)は、以下のとおりである:XF29、AGAGTGGGGTGACATGAGTG;XR1265,GAAGTTCTGCTACGCAGGAGである。PCR断片をpGEM−Tベクター(Promega,Madison WI)中にクローニングし、配列を決定した。クローニングされたcDNAのヌクレオチド配列は、胎盤gp120結合C型レクチンの配列と同じであった(Curtis et al.,1992)。続いて、真核細胞発現ベクターpRc/CMV中にcDNAをクローニングし(pRc/CMV−DC−SIGN))、DEAEデキストラン法(Seed and Aruffo,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84,3365−3369,1987)を用いて、pRc/CMV−DC−SIGNでCOS7細胞を一過性にトランスフェクトした。
【0130】
例9E:蛍光ビーズ接着アッセイ
以前記載したとおりに(Geijtenbeek et al.,1999 投稿された)、ICAM−1FcとICAM−3を用いて、カルボキシレートで修飾されたTransFluorSpheres(488/645nm、1.0μm;Molecular Probes,Eugene,OR)をコートした。簡潔に述べれば、20μLのストレプトアビジン(50mM MES緩衝液中5mg/mL)を50μLのTransFluorSpheresに添加した。30μLのEDAC(1.33mg/mL)を添加し、混合液を室温で2時間インキュベートした。反応は、100mMの最終濃度になるようにグリシンを添加することによって停止された。ストレプトアビジンでコートされたビーズをPBS(50mM リン酸、0.9% NaCl pH7.4)で3回洗浄し、150μLのPBS、0.5%BSA(w/v)中に再懸濁した。0.5mLのPBA中、37℃で2時間、ビオチン化されたヤギ−抗ヒト抗FcFab2断片(6μg/mL)とともに、ストレプトアビジンでコートされたビーズ(15μL)をインキュベートした。PBS、0.5%BSAで一度ビーズを洗浄し、0.5mL中、ヒトIgG1Fc融合リガンド(ICAM−1 Fc、VCAM−1 Fc;250ng/mL)とともに、4℃で一晩インキュベートした。リガンドをコートしたビーズを洗浄し、100μLのPBS、0.5%BSA中に再懸濁し、4℃で保存した。ICAM−1 FcとICAM−3 Fcは、ヒトIgG1 Fc断片(D.Simmons博士が提供)に融合されたタンパク質の細胞外部分からなる。蛍光性ビーズの接着アッセイは、Geijtenbeekら(投稿された)によって記載されたように行った。簡潔に述べれば、Tris−Sodium−BSA緩衝液(20mM Trsi−HCl pH8.0、150mM NaCl、1mM CaCl、2mM MgCl、0.5% BSA;5×10細胞/mL)中に再懸濁した。遮断mAb(20μg/mL)あり/なしで、10分間室温で、96ウェルのV字底プレート中、50.000細胞をプレインキュベートした。リガンドをコートされた蛍光性ビーズ(20ビーズ/細胞)と様々な刺激/阻害剤を添加し、37℃で30分間、懸濁物をインキュベートした。細胞を洗浄し、100μLのTSA中に再懸濁した。FACScan(Becton and Dickinson & Co.,Oxnard,CA)を用いたフローサイトメトリーによって、結合した蛍光性ビーズを有する、細胞のパーセントを測定することによって接着を決定した。
【0131】
例9F:異種細胞クラスタリングアッセイ
DC、及びICAM−3を発現している細胞間のクラスタリングをフローサイトメトリーによって評価した。DC、及びICAM−3を発現している細胞(2×10細胞/mL)を、それぞれ、スルフォフルオレセイン(Molecular Probes,Eugene,OR;50μg/mL)とハイドロエチジン(Molecular Probes,Eugene,OR;40μg/mL)により、37℃で1時間標識した。洗浄後、DC、及びICAM−3を発現している細胞を混合し(それぞれ50×10細胞)、37℃でインキュベートした。異なる時点で、細胞をパラホルムアルデヒド(0.5%)で固定し、FACScan(Becton and Dickinson & Co.,Oxnard,CA)を用いたフローサイトメトリーによって、異種細胞クラスタリングを測定した。
【0132】
DCと非活性化T細胞間のクラスタリングは、異なる方法によって評価した。DC(50×10細胞)を、抗DC−SIGN抗体AZN−D1とAZN−D2(10g/mL)あり/なしで、10分間室温でプレインキュベートした。蛍光色素カルセイン−A(Molecular Probes,Eugene,OR;25μg/10細胞/mL、37℃で30分間)で標識した同種異系のPBL(1×10細胞)を添加し、細胞混合物を37℃でインキュベートした。FACScan(Becton and Dickinson & Co.,Oxnard,CA)を用いたフローサイトメトリーによって、結合した蛍光性のT細胞を有するDCのパーセントを測定することにより、クラスタリングを決定した。
【0133】
例9G:DC誘導性T細胞増殖アッセイ
遮断抗体(20 g/ml)の存在下で、同種異系の反応性Tリンパ球(100×10)をDC−刺激因子(1.5×10)に加えた。該細胞を4日間培養した。4日目に、細胞に、16時間、[H]メチル−チミジン(1.52TBq/mmol/mmol、0.5μCi/ウェル;Amersham、Buckinghamshire、UK)をパルスし、取り込み量を定量した。
【0134】
例9H:DCのHIV−1感染
単球由来のマクロファージ(MDM)中で、HIVBa−Lを高力価になるまで増殖させた。MDMに対するウイルス株の滴定から7日後、p24抗原ELISA((Dignostics Pasteur,Marnes la Coquette,France)を用いてTCID50を決定し、10/mLと推定した。室温で20分間、抗体(50μg/mL)とともにプレインキュベートしたDC(50×10)を2時間、(10細胞当たり10の感染単位という多数の感染で)野生型HIVBa−Lをパルスし、洗浄し、PHA/IL−2活性化されたPBMC(50×10)とともに共培養した。DC−T細胞の共培養から3日及び5日後に、上清を集めて、p24抗原ELISAによって、p24抗原レベルを測定した(Diagnostics Pasteur、Marnes la Coquette,France)。PBMCは、IL−2(10U/mL)とPHA(10μg/mL)の存在下でそれらを培養することによって活性化した。
【0135】
例9I:免疫組織化学的分析
扁桃とリンパ節の凍結切片(8μm)を100%のアセトンで固定化し(10分)、PBSで洗浄し、第一の抗体(10μg/mL)とともに、室温で60分間インキュベートした。洗浄後、製造者のプロトコールに従って、ABC−APベクタスタインキット(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を用いて最終染色を行った。核の染色は、ヘマテインを用いて行った()。
【0136】
【表1】


[配列表]
【表2】










【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−285450(P2010−285450A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176824(P2010−176824)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【分割の表示】特願2000−612337(P2000−612337)の分割
【原出願日】平成12年4月19日(2000.4.19)
【出願人】(500579361)カトリーケ・ウニベルジテート・ニイメゲン (1)
【Fターム(参考)】