説明

樹脂シートおよびそれを用いた成形品

【課題】高い選択反射性能を有し、高温高湿成型加工性に優れ、かつ接着面での剥離が生じず、また、ブロッキングのない積層ポリエステルフィルムを提供すること。また、成型加工時におけるオリゴマーの発生およびヘイズの上昇、金型汚れを低減すること。
【解決手段】ポリエステル樹脂Aからなる層(A層)とポリエステル樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ50層以上積層した構造を含み、相対反射率が30%以上となる反射帯域を少なくとも1つ有する積層フィルムの片面もしくは両面にアクリル・ウレタン共重合樹脂とオキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド架橋剤を少なくとも含む塗剤の反応物からなる層が設けられていることを特徴とする樹脂シートとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体に意匠性を与えるに好適な樹脂シートおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屈折率が異なる2種以上の材料を光の波長レベルの層厚みで交互に積層することにより発現する光の干渉現象を利用して、特定の波長の光を選択に取り除く光干渉多層膜が知られている。このような多層膜は、用いる材料の屈折率、層数、各層厚みを所望の光学的な設計とすることで、種々の性能を具備せしめることが可能であるので様々な光学用途向けに市販されている。例えば、コールドミラー、ハーフミラー、レーザーミラー、ダイクロイックフィルタ、熱線反射膜、近赤外カットフィルタ、単色フィルタ、偏光反射フィルム等があげられる。
【0003】
このような多層膜を溶融押出法にて得る場合、透明性・耐熱性・耐候性・耐薬品性・強度寸法安定性などの理由から、一方の樹脂にポリエチレンテレフタレートを使用し、もう一方の樹脂に、低屈折率の共重合ポリエステルを使用した多層フィルムであることが知られている (特許文献1、2)。
【0004】
しかしながら、ポリエステル樹脂は成形追随性や他の樹脂との接着性が必ずしも十分ではなくその改善が望まれていた。フィルム表面の接着性はポリエステルフィルムの上に様々な層を設ける際に必須である。フィルムの接着性を上げるためには、コロナ処理やフレーム処理、薬液処理といった表面処理が知られているが不十分であった。
【0005】
また、フィルム表面に易接着性塗剤を塗布してプライマー層(以後、易接着層ということもある)を形成する方法も知られている。しかしながら、従来知られた易接着層付きのフィルムは、インモールド成型などを行った後に、長時間高温高湿下に曝されるとフィルム表面と易接着層の界面の接着性が低下し、表層にハードコート層や粘着層などを設けている場合、剥離が生じる問題が指摘されており、特に前記多層フィルムにおいてはその解決が切望されていた。
【0006】
易接着層の高温耐湿性を高める手段として、疎水性の樹脂を有機溶媒とともに塗布させることが提案されているが、疎水性樹脂を用いる以上有機溶媒を用いざるを得ないので自然環境や人体への悪影響は計り知れないものがある。
【0007】
一方、水分散性樹脂を用いた塗膜はコストや環境面で優位であり、特許文献3や特許文献4には高温耐湿性の改良を目的とした例が開示されている。しかしながら、これらの方法では、成型加工により生じるクラックまでは防止できないため本質的な改善はできなかった。また、これら方法では、オリゴマーの析出により成形体の外観を損ねる金型汚れの問題や金型を汚損する問題も解決できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−059332号公報
【特許文献2】特開2004−249587号公報
【特許文献3】特開2005−343118号公報
【特許文献4】特開平7−214738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、上記問題について鋭意検討を重ね、高温高湿下での剥離の現象が成型加圧時に易接着層にわずかにクラックが生じて水分が侵入することによって生じることを発見した。この傾向は深絞り成形であるほど顕著にあらわれることも発見した。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、高い選択反射性能を有し、高温高湿成型加工性に優れ、かつ接着面での剥離が生じず、また、ブロッキングのない積層ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。また、ヘイズの上昇や金型汚れを低減することのできる樹脂シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、
(1)ポリエステル樹脂Aからなる層(A層)とポリエステル樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ50層以上積層した構造を含み、相対反射率が30%以上となる反射帯域を少なくとも1つ有する積層フィルムの片面もしくは両面にアクリル・ウレタン共重合樹脂とオキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド架橋剤を少なくとも含む塗剤の反応物からなる層が設けられていることを特徴とする樹脂シート、
(2)150℃30分加熱前後のヘイズ増加率が2%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の樹脂シート、
(3)樹脂シートの前記塗剤の反応物からなる層に印刷層を設け、さらにインサート成形をフィルム温度120℃、樹脂温度250℃、金型温度60℃、射出速度240mm/sの条件にて実施し、その後65℃、湿度95%の雰囲気下にて168時間放置した後の樹脂シートと印刷層との接着性が良好であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の樹脂シート、
(4)前記(1)から(3)のいずれかに記載の樹脂シートを用いた成形体、
であることを本旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、高い選択反射性能を有し、高温高湿成型加工性に優れ、かつ接着面での剥離が生じず、また、ブロッキングがないという優れた効果を奏する。また、成型加工時におけるオリゴマーの発生およびフィルムヘイズの上昇、すなわち金型汚れを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂Aからなる層(A層)とポリエステル樹脂Bからなる層(B層)が交互に50層以上積層され、相対反射率が30%以上の反射帯域を少なくとも1つ有するものである。
【0015】
本発明に用いるポリエステルとしては、ジカルボン酸成分骨格とジオール成分骨格との重縮合体であるホモポリエステルや共重合ポリエステルが代表的である。ここで、ホモポリエステルとしては、1種のオキシカルボン酸単位からなるポリエステル、または、各1種のジカルボン酸単位とジオール単位とからなるポリエステルをいい、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどが代表的なものである。特にポリエチレンテレフタレートは、安価であるため、非常に多岐にわたる用途に用いることができるため好ましい。一方、共重合ポリエステルとは、2種以上のオキシカルボン酸単位からなるポリエステル、2種以上のジカルボン酸単位若しくはジオール単位とからなるポリエステル、または、オキシカルボン酸単位とジカルボン酸単位とジオール単位とからなるポリエステルのことをいい、次にあげるジカルボン酸骨格を有する成分とジオール骨格を有する成分とより選ばれる少なくとも3つ以上の成分からなる重縮合体が代表的なものである。ジカルボン酸単位を与えるものとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。ジオール単位を与えるものとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。
【0016】
本発明においては、二種のポリエステル樹脂を用いるが、該二種のポリエステル樹脂のSP値の差の絶対値は1.0以下であることが好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなる。かかる範囲を実現する手段としてはポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bは同一の基本骨格を有していることが好ましい。ここで基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は、エチレンテレフタレートが基本骨格であり、ポリエチレンテレフタレートと基本骨格が同じポリエステルとしては、例えば、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートやブチレングリコール共重合ポリエチレンテレフタレートといったエチレンテレフタレート骨格を含んだ共重合ポリエステルである。
【0017】
好ましいポリエステル樹脂の組合せとしては、ポリエチレンテレフタレートとスピログリコールをジオール単位に用いたポリエステルが挙げられる。スピログリコールをジオール単位に用いたポリエステルとは、スピログリコールが共重合された共重合ポリエステル、またはスピログリコールを用いたホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことをいう。スピログリコールをジオール単位に用いたポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいポリエステルとできるためにそのようなポリエステルを用いることによって製膜時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離も生じにくくなる。より好ましくは、ポリエステル樹脂Aとしてポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを用い、ポリエステル樹脂Bとしてスピログリコールとシクロヘキサンジカルボン酸が重合成分として用いられたポリエステルであることが好ましい。スピログリコールとシクロヘキサンジカルボン酸を重合成分として用いたポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
【0018】
また、本発明の樹脂シートは、ポリエステル樹脂Aからなる層(A層)とポリエステル樹脂Bからなる層(B層)が交互に50層以上積層された構造を有している。交互に積層した構造とは、A層とB層とが厚み方向に交互に積層された状態をいう。また、交互に積層されたA層とB層の数としては、好ましくそれぞれ200層以上、さらに好ましくはそれぞれ600層以上である。A層とB層をそれぞれ50層以上積層した構造を含まないと、反射帯域が狭い若しくは反射率が低いといった反射性能に劣るフィルムとなる。また、200層以上とすると、反射帯域を広幅化することが容易となり、600層以上であると50%以上の反射率を有する300〜600nmの広い反射帯域を有する樹脂シートとすることも可能となる。300nm〜600nmに反射帯域を有すると樹脂シートの外観は金属調とすることができ、反射率を高くすればするほどその度合いは更に高まる。積層数の上限値としては特に限定するものではないが、積層装置の大型化や層数が多くなりすぎることによる積層精度の低下に伴う波長選択性の低下を考慮すると、それぞれ1500層以下であることが好ましい。なお、本発明の樹脂シートは、前記A層とB層とが交互に50層以上積層された構造を有していれば、他の層が該50層以上積層された構造の外に積層されたものであってもよい。
【0019】
本発明の樹脂シートは380〜2500nmの波長領域において、反射率が30%以上の反射帯域を一つ以上有している。反射帯域とは30%以上の反射率を示す20nm以上の幅を有する波長の範囲(幅)をいい、好ましくその幅は50nm以上であり、より好ましくは380〜1400nmの区間で反射率が30%以上であるものである。かかる樹脂シートとするには、製膜時に用いるフィードブロックにおいて各層の厚みを表面側から反対表面側に向かうにつれ徐々に厚くなるよう設計し、前記A層とB層からなる厚み方向に交互に積層された構造とすることで達成できる。
【0020】
本発明において、A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が0.03以上であることが好ましい。より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上である。屈折率差が0.03より小さい場合には、十分な反射率が得られ難い。一方のポリエステル樹脂を非晶性のポリエステル樹脂とすることによって、シート状に成形した後のテンターでの熱処理においてB層の配向緩和を生ぜしめることによりA層とB層の面内平均屈折率の差を大きくすることができる。
【0021】
本発明の樹脂シートは、150℃における100%伸張時の応力(F−100値)が、10〜70MPaの範囲にあることが望ましい。このような構成にすることにより、成型性の改善がはかれるとともに、加圧力が少なくてもハリやカドを出すことが可能となるため、易接着層へのクラックが低減する。より好ましいF−100値の範囲は20〜60MPaであり、成型性がさらに良化する。F−100値を70MPa以下とするには、基材となる樹脂シートの20〜80重量%の範囲で非晶性ポリエステルが含ませることが簡便である。より好ましくは40〜60重量%の範囲である。詳細な理由は判らないが、樹脂シートの伸張応力の低減がはかれることが関係していると思われる。
【0022】
本発明の樹脂シートは、前記A層とB層を交互にそれぞれ50層以上積層された構造を含む積層フィルムの片面もしくは両面に、アクリル・ウレタン共重合樹脂とオキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド架橋剤を少なくとも含む塗剤の反応物からなる層(以下、本塗膜層ともいう)が設けられていることが必要である。本塗膜層の表面粗さ(Ra)は8〜30nm、厚さは10〜1000nmとすると接着性が良好となるため望ましい。また、前記塗剤はさらにイソシアネート化合物、メラミン化合物、有機金属系化合物の少なくとも何れか1種をさらに含有したものであることが望ましい。また、例えば、エポキシ化合物、アジリジン化合物、アミドエポキシ化合物、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系化合物、アクリルアミド系化合物などを任意で用いることもできる。
【0023】
本発明の樹脂シートは、F−100値が10〜70MPaであり、かつ、前記アクリル・ウレタン共重合樹脂とオキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド架橋剤を少なくとも含む塗剤の反応物からなる層の表面粗さ(Ra)が8〜30nm、厚さ10〜1000nmであるとき本発明の効果はより顕著なものとなる。
【0024】
次に、本塗膜層の形成に用いる塗剤について説明する。
【0025】
(1)アクリル・ウレタン共重合樹脂(A)
本発明では、接着性、耐UV性(UV照射後の接着性)の観点からアクリルとウレタンとを共重合させたものを用いる。アクリル・ウレタン共重合樹脂(A)は、アクリル成分とウレタン成分が共重合された樹脂であれば特に限定されないが、特にアクリルをスキン層とし、ウレタンをコア層とするアクリル・ウレタン共重合樹脂が好ましい。このとき、コア層が完全にスキン層によって包み込まれた状態ではなく、コア層の一部が露出した形態を有しているものが好ましい。すなわち、該コア層がスキン層によって完全に包み込まれた状態の場合、該樹脂を塗布、乾燥して被膜を形成した場合、アクリルの特徴のみを有する表面状態となり、コア層由来のウレタンの特徴を有する表面状態を得ることができにくくなる。一方、該コア層がスキン層によって包み込まれていない状態、すなわち、両者が分離している状態は、単にアクリルとウレタンを混合した状態であり、一般的には樹脂の表面エネルギーが小さいアクリルが表面側に選択的に配位するため、該樹脂を塗布、乾燥して被膜を形成した場合、該被膜はアクリルの特徴のみを有する表面状態となる。コア・スキン構造のアクリル・ウレタン共重合樹脂は、例えば、まず重合体樹脂のコア部分を形成するモノマー、乳化剤、重合開始剤および水の系で第一段乳化重合を行ない、重合が実質的に終了した後、シェル部分を形成するモノマーと重合開始剤を添加し、第二段乳化重合を行なうことによって得ることができる。この際、生成する共重合樹脂を2層構造とするため、第二段乳化重合においては乳化剤を添加しないか、あるいは添加したとしても新しいコアを形成しない程度の量にとどめ、第一段乳化重合で形成された共重合樹脂コア表面において重合が進行するようにするのが有効である。特に、本発明の好ましい態様であるコア層が完全にスキン層によって包み込まれた状態ではなく、コア層が露出した形態は、例えば上記製法において、第二段乳化重合時の乳化剤の仕込量を調整したり、第二段乳化重合に供するスキン層相当部分を別に重合しておき、さらにコア表面で該第二段乳化重合を行うなどの方法により、作製することができる。上記したアクリル・ウレタン共重合樹脂(A)は、例えば、水性ウレタンの存在下でアクリルを構成するアクリル系モノマーを共重合させたり、水性ウレタンと水性アクリル、特に架橋性官能基を有する水性アクリルを共重合させたり、あるいは水性ウレタンと水性アクリルをそれぞれ共重合したものを各樹脂の架橋性官能基などにより共重合化させることによって得ることができる。これらの水性ウレタンは通常のウレタン樹脂に水への親和性を高める官能基、例えば、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、硫酸半エステル塩基などアニオン性官能基、第4級アンモニウム塩基などのカチオン性官能基を導入したものが例示できる。これらの官能基の中では、水中での分散性、合成時の反応制御のしやすさからアニオン性官能基が好ましく、更にカルボン酸塩基やスルホン酸塩基が好ましい。カルボン酸塩基の導入は、例えばウレタン共重合時に原料となるポリヒドロキシ化合物の1成分としてカルボン酸基含有ポリヒドロキシ化合物を用いたり、未反応イソシアネート基を有するウレタンの該イソシアネート基に水酸基含有カルボン酸やアミノ基含有カルボン酸を反応させ、次いで反応生成物を高速攪拌下でアルカリ水溶液中に添加し、中和することなどによって行なうことができる。
【0026】
また、スルホン酸塩基または硫酸半エステル塩基の導入は、例えば、ポリヒドロキシ化合物、ポリイソシアネートおよび鎖延長剤からプレポリマーを生成させ、これに末端イソシアネート基と反応しうるアミノ基または水酸基とスルホン酸塩基または硫酸半エステル塩基とを分子内に有する化合物を添加、反応させ、最終的に分子内にスルホン酸塩基または硫酸半エステル塩基を有する水性ウレタンを得ることなどによって行うことができる。
【0027】
その際、生成反応は有機溶剤中で行ない、次いで水を加えてから該有機溶剤を除去することが好ましい。また、他の方法としては、スルホン酸基を有する化合物を原料の一つとして使用してスルホン酸基を有するウレタンを重合し、次いで該ウレタンを高速攪拌下でアルカリ水溶液中に添加し、中和する方法、ウレタンの主鎖または側鎖の第1級または第二級アミノ基にアルカリの存在下で、スルホン酸アルカリ塩(例えばスルホン化ナトリウム塩基など)を導入する方法などが挙げられる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アルキルアミンなどの水溶液を用いることが好ましいが、塗布乾燥後に該アルカリが塗布膜中に残留しないアンモニア、乾固条件で揮発するアミンなどが特に好ましい。カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、硫酸半エステル塩基などの塩基の量は0.5×10-4 〜20×10-4 当量/gが好ましく、更には1×10-4〜10×10-4 当量/gが好ましい。塩基の割合が少なすぎるとウレタンの水に対する親和性が不足して水分散液の調製が難しくなり、また多すぎるとウレタン本来の特性が損なわれる。もちろん、該水性ウレタンは、必要に応じて分散助剤を用いて、安定な水分散液を形成するもの、あるいは水溶液を形成するものである。
【0028】
ウレタンの合成に用いるポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリンなどを用いることができる。
【0029】
特に、本発明においては、ポリヒドロキシ化合物として、ポリカプロラクトンやポリカーボネートジオールを用いたものが好ましく、この場合、特に、フィルム上に塗布した場合の塗布外観の点で優れる。
【0030】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
【0031】
カルボン酸基含有ポリヒドロキシ化合物としては、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、トリメリット酸ビス(エチレングリコール)エステルなどを用いることができる。アミノ基含有カルボン酸としては、例えばβ−アミノプロピオン酸、γ−アミノ酪酸、p−アミノ安息香酸などを用いることができる。水酸基含有カルボン酸としては、例えば3−ヒドロキシプロピオン酸、γ−ヒドロキシ酪酸、p−(2−ヒドロキシエチル)安息香酸、リンゴ酸などを用いることができる。
【0032】
末端イソシアネート基と反応しうるアミノ基または水酸基とスルホン基を有する化合物としては、例えばアミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−2−スルホン酸、β−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム、脂肪族ジ第1級アミン化合物のプロパンサルトン、ブタンサルトン付加生成物などを用いることができ、好ましくは脂肪族第1級アミン化合物のプロパンサルトン付加物である。
【0033】
更に、末端イソシアネート基と反応しうるアミノ基または水酸基と硫酸半エステルを含有する化合物としては、例えばアミノエタノール硫酸、エチレンジアミンエタノール硫酸、アミノブタノール硫酸、ヒドロキシエタノール硫酸、γ−ヒドロキシプロパノール硫酸、α−ヒドロキシブタノール硫酸などを用いることができる。
【0034】
これら化合物を用いたウレタンの重合は、従来から用いられている方法で重合することができる。
【0035】
アクリル・ウレタン共重合樹脂(A)に用いるアクリル系モノマーとしては、例えばアルキルアクリレート(アルキル基としてはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシルなど)、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシルなど)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができる。本発明においては、架橋性官能基を共重合することが好ましく、特にN−メチロールアクリルアミドを共重合することが、自己架橋性や架橋密度向上点で特に好ましい。N−メチロールアクリルアミドの共重合比率は、共重合性や架橋度の点で0.5〜5重量%が好ましく、特に塗布外観の点を考慮すると、1〜3重量%がより好ましい。0.5重量%より少ない場合、例えば耐湿接着性が劣る傾向があり、5重量%を越える場合、例えば樹脂の水分散体の安定性が劣ったり、塗布外観が悪くなったりする傾向がある。
【0036】
またこれらアクリル系モノマーは他種モノマーと併用して用いることもできる。他種モノマーとしては、例えばアリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウムなど)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルピロリドンなどを用いることができる。
【0037】
アクリル系モノマーは1種または2種以上を用いて重合させるが、他のモノマーを併用する場合、全モノマー中、アクリル系モノマーの割合が50重量%以上、さらには70重量%以上となることが好ましい。
【0038】
アクリル・ウレタン共重合樹脂(A)を構成するアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は20℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上である。このガラス転移温度が20℃未満になると耐熱性が不足し、例えば、室温でもブロッキングしやすくなる傾向がある。
またアクリル・ウレタン共重合樹脂(A)中の「アクリル/ウレタン」の割合は、重量比で、「10/90」〜「70/30」が好ましく、更に好ましくは「20/80」〜「50/50」である。アクリル系モノマーを用いた割合が10/90より小さくなると塗布乾燥後に得られた積層体の接着性が悪くなる傾向があり、また、70/30より大きくなると該積層体の表面がアクリルで覆われる比率が大きくなるため、初期接着性が悪くなる傾向がある。「アクリル/ウレタン」の重量比は、アクリル・ウレタン共重合樹脂(A)の製造時の原料の配合量を調整することによって所望の値とすることができる。
【0039】
アクリル・ウレタン共重合樹脂(A)の製造方法としては、例えば前述の水性ウレタンの水分散液中に少量の分散剤と重合開始剤を添加し、一定温度に保ちながら前述のアクリル系モノマーを攪拌しながら徐々に添加し、その後必要に応じて温度を上昇させ一定時間反応を続けてアクリル系モノマーの重合を完結させ、アクリル・ウレタン共重合樹脂の水分散体として得る方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0040】
上記アクリル・ウレタン共重合樹脂(A)を用いることで樹脂シートに良好な透明性を付与できるたけでなく、接着性を付与することができる。
【0041】
(2)オキサゾリン化合物(B)
本発明に用いるオキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基またはオキサジン基を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーを単独で重合、もしくは他のモノマーとともに重合した高分子型が好ましい。高分子型のオキサゾリン化合物を用いることで、樹脂シートの可撓性や強靭性、耐水性、耐溶剤性が高めることができる。
【0042】
付加重合性オキサゾリン基含有モノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンを挙げることができる。これらは、1種で使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)クリル酸エステル類やアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類、スチレン、α−メチルスチレン、等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0043】
上記オキサゾリン化合物(B)を用いることで、後述する耐湿熱接着性を樹脂シートに付与させることができる。
【0044】
(3)カルボジイミド化合物(C)
本発明に用いるカルボジイミド化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表されるカルボジイミド構造を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、耐湿熱接着性などの点で、1分子中に2つ以上を有するポリカルボジイミド化合物が特に好ましい。特に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などのポリマーの末端や側鎖に、複数個のカルボジイミド基を有する、高分子型のイソシアネート化合物を用いると、樹脂シートの可撓性や強靭性が高まり好ましく用いることができる。
-N=C=N- (1)
ポリカルボジイミド化合物は公知の手段によって得ることができ、一般的には、ジイソシアネート化合物を触媒存在下で重縮合することにより得られる。該ポリカルボジイミド化合物の出発原料であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族、脂環式ジイソシアネートなどを用いることができ、具体的にはトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどを用いることができる。更に本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加しても用いてもよい。
【0045】
上記カルボジイミド化合物(C)を用いることで、後述する耐湿熱接着性を積層体に付与させることができる。またオキサゾリン化合物(B)と併用されることでオキサゾリン化合物(B)またはカルボジイミド化合物(C)をそれぞれ用いたときから予測される以上の相乗的な耐湿熱接着性を樹脂シートに付与させることができる。
【0046】
(4)イソシアネート化合物(D)
本発明に用いることのできるイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ビトリレン−4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。特に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などのポリマーの末端や側鎖に、複数個のイソシアネート基を有する、高分子型のイソシアネート化合物を用いると、樹脂シートの可撓性や強靭性が高まり好ましく用いることができる。
【0047】
更に、コーティング用組成物を用いる場合など、イソシアネート基が該水と反応し易く、塗剤のポットライフなどの点で、該イソシアネート基をブロック剤などでマスクしたブロックイソシアネート系化合物などを好適に用いることができる。ブロック剤は塗布後の加熱、乾燥工程の熱によって、該ブロック剤が揮散したりして、イソシアネート基が露出し、架橋反応を起こすシステムが代表的である。また、該イソシアネート基は単官能タイプでも多官能タイプでもよいが、多官能タイプのブロックポリイソシアネート系化合物の方が架橋密度を上げやすいなどの点で好適に用いることができる。ブロックイソシアネート基を2基以上有する低分子または高分子化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート3モル付加物、ポリビニルイソシアネート、ビニルイソシアネート共重合体、ポリウレタン末端ジイソシアネート、トリレンジイソシアネートのメチルエチルケトンオキシムブロック体、ヘキサメチレンジイソシアネートの次亜硫酸ソーダブロック体、ポリウレタン末端ジイソシアネートのメチルエチルケトンオキシムブロック体、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート3モル付加物へのフェノールブロック体などを用いることができる。
【0048】
上記イソシアネート化合物(B)を用いることで強靱な樹脂シートを形成でき、また、接着性をより良好にすることができる。
【0049】
(5)メラミン化合物(E)
本発明に用いることのできるメラミン化合物としては、メラミン構造を有していれば特に限定されるものではないが、親水化の点でメラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に、低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが挙げられる。
【0050】
メチロール化メラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。
【0051】
上記メラミン化合物(E)を用いることで、樹脂シート上に耐湿熱接着性をより一層良好なものとできる。
【0052】
(6)有機金属系化合物(F)
本発明に用いることのできる有機金属系化合物としては、金属原子を含有し、一般的にイソシアネート基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基などの付加反応、重合反応、架橋反応を促進する触媒作用を有する化合物であれば特に限定されないが、含有される金属原子が錫、ビスマス、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、鉄および亜鉛からなる有機金属系化合物から選ばれるものである好ましい。特に反応促進効果の高い錫系化合物、ジルコニウム系化合物であることが好ましい。
【0053】
上記有機金属系化合物(F)を用いることで、樹脂シートが加熱された状況にあっても白化を大幅に抑制することができる。さらに詳しくは、積層体を150℃30分加熱した後のヘイズ増加率を2%以下、アクリル・ウレタン共重合樹脂と2種類以上の架橋剤からなる層における分子量60〜700のオリゴマー含有量を0.7重量%以下にすることができる。
【0054】
これらの塗剤(A)(B)(C)(D)(E)(F)は、凝集のないように混合して#4のバーコーターにて均一に塗布することで、本塗膜が形成される。混合の際、これら塗剤の配合比(重量部)を以下の範囲にすることが好ましい。
(A)/(B)/(C)/(D)/(E)/(F)=38〜50/20〜40/20〜40/50〜62/1〜20/0.1〜1
本発明の樹脂シートは、基材である積層フィルムの両最表層が、厚さ2〜10μmのポリエチレンテレフタレートで構成されていることが好ましい。該最表層のポリエチレンテレフタレートの層は、オリゴマーのブリードアウトを抑止に効果的である。なお、10μmより大きくしても特に問題はないが効果に大きな差は見られなくなる。該最表層は、積層装置において、スリット板の両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾を適宜厚くすることによって達成できる。もしくは積層装置で多層フィルムを形成後、第3の押出機にてポリエチレンテレフタレートを両表層に合流積層させることによっても達成できる。
【0055】
こうした材料を水などの溶剤に溶解若しくは分散せしめ、必要に応じて、レベリング剤、発泡抑制剤、粘度調整剤、安定剤、防腐剤などの添加剤を添加・混合して、塗剤は調製される。
【0056】
また、さらに両表層のポリエチレンテレフタレートのIV(固有粘度)が0.55〜0.7であり、且つオリゴマーの含有量が0.1〜0.7重量%であることが好ましい。ここで、オリゴマーについて簡単に説明しておくと、オリゴマーは、通常分子量が60〜700の有機物であり、室温(25℃)で固体の性状を持つ。その多くはポリエステルの溶融分解物や未反応物である。例としてテレフタル酸、2−ビスヒドロキシエチルテレフタル酸、環状三量体、4−カルボキシベンズアルデヒドなどが挙げられ、ポリエステルのジカルボン酸もしくはジオールの構造を持つものがほとんどである。特に、酸化劣化し易い成分をポリエステルの分子鎖中含むと増加する傾向にある。本発明に用いられるポリエステルは、オリゴマーの含有量が0.1〜0.7重量%であることが望ましく、そのため積層フィルムとする前に固相重合を行ったり、公知の酸化分解抑制剤をポリエステルに対し、0.1〜5重量%の比率で含有せしめておくことは好ましく採用される。
【0057】
オリゴマーの含有量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によって測定される。装置は、東ソー社製HPLC8120シリーズ、カラムはTSKgel superHM−H H4000/H3000/H2000(7.8mm径、150mm×3)、溶離液THF(テトラヒドロフラン)、流量1ml/分、試料濃度0.1%、注入量20μL、検出器RI、測定温度40℃、測定前処理はフィルムをTHFに溶解後0.45μmのフィルターでろ過しシリカ等の添加剤を除去した樹脂成分について測定する。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、樹脂成分の濃度として0.05〜0.6重量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。これから、分子量700未満のピークの、全体に対する面積割合を算出できる。
【0058】
次に本発明の樹脂シートを得る方法について、例を挙げて、詳細に説明する。2種類のポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bをペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルタ等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。
【0059】
これらの2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出されたポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bは、次に多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィールドブロックを用いることができる。また、これらを任意に組み合わせても良い。そのフィードブロックの構造は、多数の微細スリットを有する櫛形のスリット板に部材を少なくとも1個有しており、2つの押出機から押し出された樹脂Aと樹脂Bが、各マニホールドを経由して、スリット板に導入される。ここでは導入板を介して、樹脂Aと樹脂Bが選択的に交互にスリットに流入するため、最終的にはA/B/A/B/A・・・といった多層膜を形成することができる。また、スリット板をさらに重ね合わせることにより、層数を増やすことも可能である。
【0060】
また、反射波長は下記式1によって求めることができるため、各層厚みによって任意に反射波長次を調整できる。また、反射率についてはA層とB層の屈折率差と、A層とB層の層数にて制御する。
2×(na・da+nb・db)=λ 式1
na:A層の面内平均屈折率
nb:B層の面内平均屈折率
da:A層の層厚み(nm)
db:B層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
このようにして多層積層された溶融体を、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着、冷却固化して未延伸シートとした後、二方向に延伸、熱処理することが好ましい。また、フィルムに走行性(易滑性)や耐候性、耐熱性などの機能を持たせるため、表層部を構成する樹脂層には粒子が添加されたものとしてもよい。かかる粒子の例としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレンなどの有機微粒子、同じく、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレーなどの無機微粒子などが使用できる。延伸方法としては、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法や、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸する同時二軸延伸方法などの技術が用いられる。延伸前予熱温度および延伸温度は60℃〜130℃であり、延伸倍率は2.0〜5.0倍であり、必要ならば延伸後に140℃から240℃の熱処理を行う。
【0061】
本発明に用いる積層フィルムは、高次工程に耐えうる耐熱性や機械強度、寸法安定性を有するものであることが好ましい。積層フィルムの厚みは、10μm以下であると熱的および機械的安定性に不足が生じ、また、250μm以上であると、剛性が高すぎて取り扱い性が低下すること、ロール長尺化が物理的に困難になること、そして透明性などに問題が生じやすいため、14〜250μmが好ましく、より好ましくは38〜188μmである。
【0062】
本塗膜層を形成するための好ましい方法としては、積層フィルムの製造時にその製造工程中に塗剤のコーティング手段を設置し、塗布・乾燥を行って形成することが簡便である。このときフィルムと共に延伸することもできる。例えば、テンターに導入する前に塗布し、横延伸工程・熱処理工程にて乾燥硬化させる方法が好適な方法である。塗布の方法は各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。またコーティング膜の塗布の均一性や接着性を考慮して、塗工前にフィルム表面にコロナ放電を施すことが好ましい。また、積層フィルムの形成後に公知の方法を用いて本塗膜層を設けることも可能である。
【0063】
このようにして得られた樹脂シートは、高温成型加工性に優れたものとなり、また、耐熱・耐湿下での接着性に優れるために、貼合成型、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形などの各種成形において、剥がれ等の問題がなく成型することができる。
【0064】
また、本発明の樹脂シートには、ハードコート層、帯電防止層、耐摩耗性層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、印刷層、金属層、透明導電層、ガスバリア層、ホログラム層、剥離層、粘着層、エンボス層、接着層などの機能性層をさらに形成してもよい。
【実施例】
【0065】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
【0066】
(物性値の評価法)
(1)相対反射率、反射性能
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotomater)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率を測定した。なお、バンドパラメーターは2/servoとし、ゲインは3と設定し、380nm〜2500nmの範囲を120nm/分の検出速度で測定した。また、反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl板を用いた。
【0067】
また、反射性能は、波長380nm〜2500nmの波長範囲において、半値幅20nm以上で反射率が30%以上の反射帯域を持つものを○、半値幅50nm以上で反射率が60%以上の反射帯域を持つものを◎、半値幅20nm以上ではあるが、反射率が30%に満たないものを△、反射帯域が全く見られないものを×として評価した。
【0068】
(2)積層数、積層膜の厚み
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVでフィルムの断面を40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuOやOsOなどを使用した染色技術を用いても良い。
【0069】
積層構造の具体的な求め方を、説明する。約4万倍のTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をJPEG形式で保存し、次いで画像処理ソフトImage−Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このJPGファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(ビジュアル・ベーシック・フォア・アプリケーションズ)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。
【0070】
(3)接着性
樹脂シートの塗膜層が設けられた面側に印刷層を設け、さらにインサート成形をフィルム温度120℃、樹脂温度250℃、金型温度60℃、射出速度240mm/sの条件にて実施した面に1mmのクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、1.5kg/cmの荷重で押し付けた後、90°方向に剥離し、残存した個数により4段階評価(◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49)した。(◎)を接着性良好とした。
【0071】
(4)耐湿熱接着性
樹脂シートの塗膜層が設けられた面側に印刷層を設け、さらにインサート成形をフィルム温度120℃、樹脂温度250℃、金型温度60℃、射出速度240mm/sの条件にて実施し、その後65℃、湿度95%の雰囲気下にて168時間放置した後、インサート成形を実施した面に1mm2のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、1.5kg/cm2 の荷重で押し付けた後、90°方向に剥離し、残存した個数により4段階評価(◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49)した。(◎、○)を接着性良好とした。
【0072】
(5)ヘイズ
ヘイズの測定は、23℃、相対湿度65%の雰囲気下に樹脂シートサンプルを2時間放置した後、スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて行った。3回測定した平均値を該サンプルのヘイズ値とした。
【0073】
(6)加熱後ヘイズ
23℃、相対湿度65%の雰囲気下に2時間おくことに代えて、樹脂シートサンプルを150℃で30分加熱し、上記(5)のヘイズの測定を行なった。
【0074】
(7)ブロッキング
2枚のフィルムの、易接着層面と易接着層を施していない面を重ね合わせ、これに1.5kg/cmの圧力を60℃×80%RHの雰囲気下65時間かけた後剥離し、その剥離力で評価する(重ね合わせ幅5cm当たりのg数)。なお、評価は剥離力から下記の基準で行う。(◎)と(○)を良好とした。
◎:2g未満
○:2g以上〜5g未満
×:5g以上、または、フィルムが破断する。
【0075】
(8)金型汚れ
プレス機の上下のプレス板を平滑に洗浄しておき、その間に200mm×200mmのフィルムを挟み、190℃、30kg/cmの条件で加圧し、その状態で30分間保持した。その後、新しいフィルムを挟み、同様に加圧保持した。これを10回繰り返したとき、1枚目のフィルムと10枚目のフィルムの外観にて金型汚れを目視判定した。
【0076】
◎:1枚目のフィルムをプレスしたときと比べて、殆ど透明性に差が認められない
○:1枚目のフィルムをプレスしたときと比べて、透明性においてわずかに低下が認められる
△:1枚目のフィルムをプレスしたときと比べて、透明性において低下が認められる
×:1枚目のフィルムをプレスしたときと比べて、透明性において著しい低下が認められる。
【0077】
(9)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から算出した。また、溶液粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示した。なお、n数は3とし、その平均値を採用した。

(実施例1)
ポリエステル樹脂Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)[東レ製F20S]、ポリエステル樹脂Bとしてテレフタル酸に対しシクロヘキサンジカルボン酸を20mol%共重合し、エチレングリコールに対しスピログリコールを15mol%共重合した共重合ポリエステル(共重合PET1)を用いた。なお、この樹脂Bの固有粘度は0.67であり、非晶性樹脂であった。ポリエステル樹脂Aを回転式真空乾燥機(180℃・3時間)にて乾燥し、ポリエステル樹脂Bは、絶乾空気循環式乾燥機(70℃・5時間)にてそれぞれ乾燥した後、別々の押出機に供給した。
【0078】
ポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、吐出比1.1/1で51層のフィードブロックにて交互に積層するように合流させた。なお、シート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0079】
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に、以下の材料A、B、C、Dを凝集のないように混合してコーティング用組成物1を調整し、#4のバーコーターにて均一に塗布し易接着層を形成した。
「コーティング用組成物1」
アクリル・ウレタン共重合樹脂(A):
アクリル・ウレタン共重合樹脂アニオン性水分散体(山南合成化学(株)製“サンナロン”WG−353(試作品))。アクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分(ポリカーボネート系)の固形分重量比が12/23、トリエチルアミンを2重量部用いて水分散体化したもの。
オキサゾリン化合物(B):
オキサゾリン含有ポリマー水系分散体((株)日本触媒製“エポクロス”WS−500)
カルボジイミド化合物(C):
カルボジイミド水系架橋剤(日清紡ケミカル(株)“カルボジライト”V−04)
イソシアネート化合物(D):
ポリイソシアネート水分散体(DIC(株)製“バーノック”DNW−500)
固形分重量比:
(A)/(B)/(C)/(D)=40重量部/30重量部/30重量部/60重量部
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で230℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に5%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0080】
(実施例2)
実施例1で用いたポリエステル樹脂を用い、積層装置を51層から801層のフィードブロックに変更して合流させた。なお、上記のフィードブロックは267個のスリットを有するスリット部材が3つからなるものである。合流したポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bは、フィードブロック内にて各層の厚みが表面側から反対表面側に向かうにつれ徐々に厚くなるように変化させ、ポリエステル樹脂Aが401層、ポリエステル樹脂Bが400層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。また、両表層部分はポリエステル樹脂Aとなるようにし、かつ隣接するA層とB層の層厚みはほぼ同じになるようにスリット形状を設計した。この設計では、400nm〜1200nmに反射帯域が存在するものとなる。このようにして得られた計801層からなる積層体を、マルチマニホールドダイに供給しシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。これを実施例1と同様の製膜方法にて製膜した。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0081】
(実施例3)
実施例1で用いた(A)〜(D)を固形分重量比で、(A)/(B)/(C)/(D)=50/30/30/50で混合し調整した以外は実施例1と同様の方法でコーティング用組成物2を調整した。
【0082】
コーティング用組成物2を用いた以外は実施例2と同様の方法で樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0083】
(実施例4)
実施例1で用いた(A)〜(D)を固形分重量比で、(A)/(B)/(C)/(D)=38/30/30/62で混合し調整した以外は実施例1と同様の方法でコーティング用組成物3を調整した。
【0084】
コーティング用組成物3を用いた以外は実施例2と同様の方法で樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0085】
(実施例5)
実施例1で用いた(A)〜(D)に加えてメラミン化合物(E)を固形分重量比で、(A)/(B)/(C)/(D)/(E)=40/30/30/60/10で混合し調整した以外は実施例1と同様の方法でコーティング用組成物4を調整した。
メラミン化合物(E):メラミン樹脂ウォーターゾル(DIC(株)製“WATERSOL”S−695)
コーティング用組成物4を用いた以外は実施例2と同様の方法で樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0086】
(実施例6)
実施例1で用いた(A)〜(D)に加えて有機金属系化合物(F)を固形分重量比で、(A)/(B)/(C)/(D)/(F)=40/30/30/60/0.6で混合し調整した以外は実施例1と同様の方法でコーティング用組成物5を調整した。
【0087】
有機金属系化合物(F):有機ジルコニウム化合物(マツモトファインケミカル(株)製“オルガチックス”ZB−126)
コーティング用組成物5を用いた以外は実施例2と同様の方法で樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0088】
(実施例7)
実施例1で用いた(A)〜(D)に加えて実施例5で用いたメラミン化合物(E)と実施例6で用いた有機金属系化合物(F)を固形分重量比で、(A)/(B)/(C)/(D)/(E)/(F)=40/30/30/60/10/0.6で混合し調整した以外は実施例1と同様の方法でコーティング用組成物6を調整した。
コーティング用組成物6を用いた以外は実施例2と同様の方法で樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0089】
(比較例1)
実施例2と同様の条件で製膜を行った。ただしコーティング用組成物1による層は形成していない。得られた積層フィルムの特性等を表1に示す。
【0090】
(比較例2)
コーティング用組成物1を次に示すコーティング組成物7に変更した以外は実施例2と同様の条件で製膜・塗布を行った。
「コーティング用組成物7」
A’:水分散アルキルアクリレート(酸基2.8mg/g)
B’:メチロール化メラミン(希釈剤:イソプロピルアルコール/水)
C’:コロイダルシリカ(平均粒径80nm)
D’: パーフルオロブチルスルホン酸塩(希釈剤:水)
固形分重量比:(A’)/(B’)/(C’)/(D’)=100重量部/25重量部/3重量部/0.2重量部
得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0091】
(比較例3)
51層のフィードブロックに代えて33層のフィードブロックを用いた以外は、実施例1と同様の方法で樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0092】
(比較例4)
実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施した。
【0093】
次にコーティング用組成物1を該一軸延伸フィルムのコロナ放電処理面にバーコートを用いて塗布した。コーティング用組成物1を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導き、雰囲気温度75℃とした後、引き続いてラジエーションヒーターを用いて雰囲気温度を110℃とし、次いで雰囲気温度を90℃として、塗液を乾燥させた。引き続き連続的に120℃の加熱ゾーン(延伸ゾーン)で幅方向に3.5倍延伸し、続いて230℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)で20秒間熱処理を施し、結晶配向の完了した樹脂シートを得た。得られた樹脂シートにおいてPETフィルム部分の厚みは100μmであった。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0094】
(比較例5)
コーティング用組成物1に代えてコーティング用組成物6を用いた以外は、比較例4と同様の条件で樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0095】
(比較例6)
コーティング用組成物1に代えてコーティング用組成物7を用いた以外は、比較例4と同様の条件で樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの特性等を表1に示す。
【0096】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、建材、包装、自動車、携帯電話など種々の成形品の内外装などに意匠性をあたえるものとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂Aからなる層(A層)とポリエステル樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ50層以上積層した構造を含み、相対反射率が30%以上となる反射帯域を少なくとも1つ有する積層フィルムの片面もしくは両面にアクリル・ウレタン共重合樹脂とオキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド架橋剤を少なくとも含む塗剤の反応物からなる層が設けられていることを特徴とする樹脂シート。
【請求項2】
150℃30分加熱前後のヘイズ増加率が2%以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
樹脂シートの前記塗剤の反応物からなる層上に印刷層を設け、さらにインサート成形をフィルム温度120℃、樹脂温度250℃、金型温度60℃、射出速度240mm/sの条件にて実施し、その後65℃、湿度95%の雰囲気下にて168時間放置した後に印刷層側の面に1mmのクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、1.5kg/cmの荷重で押し付けた後、90°方向に剥離したときに印刷層に剥離のないことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の樹脂シートを用いた成形体。

【公開番号】特開2011−156687(P2011−156687A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18289(P2010−18289)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】