説明

樹脂丸棒成形方法及び成形用装置

【課題】構造が均整で真円度に優れた樹脂丸棒を得る製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】熱可塑性樹脂を溶融状態で円形の吐出口を有するノズルから鉛直下方に押し出して液槽に貯留された冷却用液に突入させ、該冷却用液中で把持手段で把持して定速で鉛直下方に引き取る樹脂丸棒成形方法であって、引き取り速度が、引き取り中の樹脂丸棒の径が前記吐出口の径より大であるような速度である樹脂丸棒成形方法であり、前記吐出口と前記冷却用液とは接触せずかつ間隔が30mm以下である前記樹脂丸棒成形方法であり、冷却用液の温度が(Tg−20℃)以上、Tg未満(Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度)である前記樹脂丸棒成形方法であり、前記熱可塑性樹脂がポリ乳酸のような生体吸収性樹脂である前記樹脂丸棒成形方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱状の樹脂丸棒を溶融押し出しにより成形する成形方法及びその成形方法に用いる成形用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の生体吸収性樹脂は骨を固定するためのボルトねじなどに使用されるが、このようなボルトねじを作成するための丸棒には真円性と、ねじ加工時にクラックが入らないなど構造の均一性が要求される。
【0003】
円柱状の樹脂丸棒を溶融押し出しにより成形する方法としては、溶融された樹脂原料を水平に押出して溶融状態から固定状態になるまで送りローラによつて支持されて、引取装置まで導く方法や、溶融状態の樹脂を、ダイの出口から鉛直方向上向きあるいは鉛直方向下向きに引取る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、樹脂原料を水平に押出して溶融状態から固定状態になるまで送りコンベアによつて支持されて、引取装置まで導く、例えば図6に示す方法も知られている。図6においては、加熱溶融させた熱可塑性樹脂を押し出し機100によってノズルダイ102を介して水平方向に押し出し、コンベア104でノズルダイ102側から水平方向に搬送し、ひき続いて水冷却装置108で冷却して、一対の無端ベルト110でニップして水平方向に引き取り、丸棒を得る。この方法では、ノズルダイ102から押し出された樹脂棒が充分に冷却されるまでにコンベア104上で自重により断面形状が扁平化する傾向があり、真円度の良好な丸棒を得ることが困難であった。
【0005】
溶融状態の樹脂を、ダイの出口から鉛直方向上向きに引取る方法は、吐出直後の溶融樹脂が下方に垂れやすく引取速度の変動に過敏に反応して外径寸法が変動してしまうのでこれを防ぐため引き取り速度を大きくする必要があり、このため、ロッドの表層部と中心部とで温度差や延伸度合の差が生じて構造が均一な丸棒を得るうえで問題となる。
【0006】
ダイの出口から鉛直方向下向きに引取る方法にあっても、従来は引き取り速度を遅くすると吐出直後の溶融樹脂の棒が曲がってしまうので引き取り速度を大きくする必要があり、このため、ロッドの表層部と中心部とで温度差や延伸度合の差が生じて構造が不均一になることが避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
[特許文献1]特公開平7−337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、構造が均整で真円度に優れた樹脂丸棒を得る樹脂丸棒成形方法及び成形用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、熱可塑性樹脂を溶融状態で円形の吐出口を有するノズルから鉛直下方に押し出して液槽に貯留された冷却用液に突入させ、該冷却用液中で把持手段で把持して定速で鉛直下方に引き取る樹脂丸棒成形方法であって、引き取り速度が、引き取り中の樹脂丸棒の径が前記吐出口の径より大であるような速度であることを特徴とする樹脂丸棒成形方法であることにある。
【0010】
前記吐出口と前記冷却用液の液面とは接触せずかつ間隔が30mm以下であり得る。
【0011】
前記冷却用液の温度は(Tg−20℃)以上、Tg未満(Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度)であり得る。
【0012】
前記熱可塑性樹脂は生体吸収性樹脂であり得る。
【0013】
前記生体吸収性樹脂はポリ乳酸であり得る。
【0014】
また、前記樹脂丸棒成形方法においては、前記熱可塑性樹脂の前記ノズルからの吐出が連続的になされ得、
前記冷却用液に突入させた前記熱可塑性樹脂の引き取りが間欠的になされ得、
前記冷却用液に突入させた前記熱可塑性樹脂を定速で所定時間引き取るステップ1、
前記冷却用液の液面を下降させるステップ2、
引き取られた熱可塑性樹脂を、前記ノズルと下降した液面との間に露出され熱可塑性樹脂が熱軟化状態の部分で、前記吐出口から吐出された直後の部分の熱可塑性樹脂から切りはなすステップ3、
引き取られた熱可塑性樹脂を前記液槽から取り出すステップ4、
前記冷却用液の液面を上昇させるステップ5
を含み得、
ステップ1からステップ5が繰り返され得る。
【0015】
また、本発明の要旨とするところは、前記樹脂丸棒成形方法に用いる装置であって、
円形の吐出口を備え前記熱可塑性樹脂を該吐出口から鉛直下方に溶融押し出しする押し出し手段、
前記吐出口の直下に備えられた液槽、
該液槽に貯留され、押し出された熱可塑性樹脂が突入して冷却される冷却用液の液面を上下させる液面上下手段、
押し出された熱可塑性樹脂を鉛直下方に引き取る引き取り手段、
前記吐出口と前記冷却用液の液面との間で、押し出された熱可塑性樹脂を切断する切断手段、
を備え、
前記引き取り手段が、前記液槽に貯留された前記冷却用液中の熱可塑性樹脂を把持して定速下降し次いで把持を解放したのちもしくは熱可塑性樹脂が把持位置より前記吐出口寄りで切断されたのち上昇する把持手段を備える樹脂丸棒成形用装置であることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、構造が均整で真円度に優れた樹脂丸棒を得る樹脂丸棒成形方法及び成形用装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の態様の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の樹脂丸棒成形方法の実施の態様の一例をステップを追って説明する説明図である。
【図3】本発明に用いられる樹脂丸棒成形用装置の態様の一例を示す説明図である。
【図4】本発明に用いられる樹脂丸棒成形用装置の他の態様の一例を示す説明図である。
【図5】本発明に用いられる樹脂丸棒成形用装置のさらに他の態様の一例を示す説明図である。
【図6】従来の樹脂丸棒成形方法の態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
周知のとおり一般に熱可塑性樹脂を溶融状態で円形の吐出口を有するノズルから押し出して引き取ることにより得られる丸棒の径は引き取り速度に依存し、引き取り速度が大きくなれば得られる丸棒の径は小さくなる。しかし、引き取り速度を大きくすると引き取り中の丸棒の表層部と内部と間に延伸比率の差や温度差による構造差が生じ、製品表層部が剥離しやすいなどの問題が生ずる。引き取り速度を小さくすると構造差が生じにくいが吐出が不安定になりやすい。しかし、本願発明者らは引き取り速度を小さくして安定的に樹脂を吐出し引き取ることを試み本願発明に至った。
【0019】
本発明は、図1の模式図に示すように、熱可塑性樹脂を溶融状態で円形の吐出口2を有するノズルダイ4から鉛直下方に押し出して液槽34に貯留された冷却用液6に突入させ、冷却用液6中で把持手段8で把持して定速で鉛直下方に引き取る樹脂丸棒成形方法であって、熱可塑性樹脂の引き取り速度が、引き取り中の樹脂丸棒の径が吐出口2の径より大であるような速度である樹脂丸棒成形方法である。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。
【0020】
このような態様においては、吐出口2から吐出直後の溶融状態の樹脂が、すでに冷却用液6中で引き取られて冷却固化した樹脂の上に乗った状態で安定するので、安定して丸棒が製造され、かつ、真円度に優れた丸棒を得ることができることがわかった。また、得られた丸棒は、ねじ加工時にクラックが入らず構造が均一であった。
【0021】
引き取り中の樹脂丸棒の径が吐出口2の径より大であるようにするためには、目視と実測で吐出口2の径と樹脂丸棒の径を比較して引き取り速度を調節して設定できる。引き取り中の樹脂丸棒の径が吐出口2の径の1.05〜3.5倍になるように引き取り速度を調節して設定することにより、安定して丸棒が製造され、かつ、真円度に優れた丸棒が得られる。引き取り中の樹脂丸棒の径が吐出口2の径の1.15〜2倍であることがさらに好ましい。あるいは、このような状態は、ノズルダイ4からの熱可塑性樹脂の単位時間当たりの吐出量をW(g/min)吐出口2の径をd(cm)、引き取り中の熱可塑性樹脂の密度をρ(g/cm)としたとき、引き取り中の樹脂の引き取り速度(cm/min)をVS=4W/(ρ・π・d)の値より小さくすることにより達成できる。
【0022】
VSを標準引き取り速度としたとき、樹脂の引き取り速度は0.1VS〜0.99VSであることが、安定して丸棒が製造され、かつ、真円度に優れた丸棒を得るうえで好ましい。0.87VS〜0.5VSであることがさらに好ましい。
【0023】
本発明においては、吐出口2と冷却用液6は接触せず、かつ、吐出口2と液面7との距離pが30mm以下であることが真円度の良好な樹脂丸棒を得るうえで好ましい。丸棒の径の長手方向の変動が生じやすい。pが30mmを超えると吐出口2と液面7との間で樹脂が揺らぎやすく、吐出が不安定になって真直な丸棒が得られにくいことがある。pが15〜25mmであることが真円度の良好な樹脂丸棒を得るうえでさらに好ましい。
【0024】
なお、樹脂を冷却する手段として冷却した流体を引き取り中の樹脂に吹きかける方式もあるが、そのような方式では吐出口2と液面7との間で樹脂が揺らぎやすく、吐出が不安定になって真直な丸棒が得られにくい。また、均一な冷却が難しい。また、その流体による冷却域と、その流体により冷却されない域との境界がはっきりと一定の位置に定まらないので、上述の吐出口2から吐出直後の溶融状態の樹脂が、すでに冷却用液6中で引き取られて冷却固化した樹脂の上に乗った状態で安定するという状態が得られない。
【0025】
本発明においては、冷却用液6としては水が好ましいが、使用する樹脂を溶解または過度に膨潤させるものでなければとくに限定されない。
【0026】
冷却用液6の温度は使用する樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−20℃)以上、Tg未満であることが好ましい。この範囲より低温であると溶融樹脂が急冷されて丸棒内部に収縮差によるボイドができやすい。この範囲より高温であると冷却が不十分で、引き取り中に丸棒が曲がってしまうことがある。例えば、樹脂がポリ乳酸のときは、冷却用液6の温度は40〜60℃であることが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては溶融状態でノズルダイ4から吐出可能なものであればとくに限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンなどが挙げられ、これらの樹脂は、用途等に応じて1種類単独でも2種類以上を混合して使用してもよい。また、これらの熱可塑性樹脂には、必要に応じて可塑剤、剥離剤、帯電防止剤、難燃剤、等の種々の添加剤や物性改良のための各種フィラー、ガラス繊維、カーボン繊維等、さらには、着色剤、染料等を混合して使用してもよい。
【0028】
さらに、本発明は真円性と構造の均一性が要求される生体吸収性樹脂からの丸棒の作成に好適に適用される。生体吸収性樹脂としては、この生体吸収性樹脂としてはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリジオキサノン等の脂肪族ポリエステル系の生体吸収性樹脂などが挙げられる。
【0029】
原料素材として生体吸収性樹脂を用いる場合、冷却用液6としてはpHが6〜8の範囲にあることが好ましい。
【0030】
本発明の樹脂丸棒成形方法の実施の態様の一例を説明するならば、本発明の樹脂丸棒成形方法において、ノズルダイ4から熱可塑性樹脂を連続的に吐出し、液槽34に貯留された冷却用液6に突入させた熱可塑性樹脂の引き取りが間欠的になされる。このとき、
冷却用液6に突入させた熱可塑性樹脂を定速で所定時間引き取るステップ1、(図2−(1))
冷却用液6の液面7を下降させるステップ2(図2−(2))、
引き取られた熱可塑性樹脂を、ノズルダイ4と下降した液面7´との間に露出され熱可塑性樹脂が熱軟化状態の部分9で、吐出口2から吐出された直後の部分11の熱可塑性樹脂から切りはなすステップ3(図2−(3))、
引き取られた熱可塑性樹脂(丸棒)を前記液槽から取り出すステップ4(図2−(4))、
前記冷却用液の液面を上昇させるステップ5(図2−(5))
を順次行い、
このステップ1からステップ5のサイクルを繰り返す。なお、ステップ1では、図2−(6)に示すように、直前のサイクルにおけるステップ3で丸棒を切り離した、吐出口2から吐出される樹脂の先端部13を把持手段8で把持したのち把持手段8を下降させて引き取りが行われる。また、ステップ4においては熱可塑性樹脂(丸棒)はその引き取り手段から解放してのち引き取られる。
【0031】
かかる態様にあっては、熱可塑性樹脂(丸棒)が熱可塑性樹脂が熱軟化状態の部分9で切断されるので、鋏などの簡易な治具により切断が可能で、全ステップにわたり複雑な装置を必要とせず操作が円滑かつ容易である。
【0032】
本発明の樹脂丸棒成形方法は図3に示す樹脂丸棒成形用装置30を用いて好適に行うことができる。樹脂丸棒成形用装置30は、円形の吐出口2を備え熱可塑性樹脂を吐出口2から鉛直下方に溶融押し出しする押し出し手段32と、吐出口2直下に備えられた液槽34と、液槽34に貯留され、押し出された熱可塑性樹脂が突入して冷却される冷却用液6の液面7を上下させる液面上下手段37と、吐出口2から押し出された熱可塑性樹脂を鉛直下方に引き取る引き取り手段36と、吐出口2冷却用液6の液面7との間で吐出口2から押し出された熱可塑性樹脂を切断する不図示の切断手段とを備える。
【0033】
押し出し手段32は溶融押し出し機40と溶融押し出し機40に接続されたノズルダイ4を備える。
【0034】
液面上下手段37は液槽34と導通するダクト46を有する一時貯留槽48と、液槽34中の冷却用液を導通するダクト46を介して一時貯留槽48に一時的にかつ可逆的に搬送するポンプ52とを備えてなる。この搬送により、液面7の位置を変える。
【0035】
引き取り手段36は、押し出された熱可塑性樹脂を着脱自在に把持する把持部60と、把持部60の上下動を案内するレール66と把持部60を上下に駆動する不図示の駆動手段からなる。把持部60はクランプ等の着脱自在な把持手段8を備える。駆動手段は把持部60を所定の位置に停止させる機能を有する。また、把持部60は、液槽6に貯留された冷却用液中の熱可塑性樹脂を上方で把持したのち把持状態で駆動手段により定速下降し、下方で把持を解放されたのち駆動手段により上昇する。
【0036】
切断手段は鋏などの切断用治具からなり、手動で操作される。切断手段は自動化されているものであってもよい。
【0037】
また、本発明の樹脂丸棒成形方法は図4に示す樹脂丸棒成形用装置30aを用いて好適に行うことができる。樹脂丸棒成形用装置30aは、円形の吐出口2を備え熱可塑性樹脂を吐出口2から鉛直下方に溶融押し出しする押し出し手段32と、吐出口2直下に備えられた液槽34と、液槽34に貯留され、押し出された熱可塑性樹脂が突入して冷却される冷却用液6の液面7を上下させる不図示の液面上下手段と、吐出口2から押し出された熱可塑性樹脂を鉛直下方に引き取る引き取り手段36aと、吐出口2冷却用液6の液面7との間で吐出口2から押し出された熱可塑性樹脂を切断する不図示の切断手段とを備える。切断手段は鋏などの切断用治具からなり、手動で操作される。切断手段は自動化されているものであってもよい。
【0038】
押し出し手段32は不図示の溶融押し出し機と溶融押し出し機に接続されたノズルダイ4を備える。
【0039】
液面上下手段は液槽34と導通するダクト46を有する不図示の一時貯留槽と、液槽34中の冷却用液を導通するダクト46を介して一時貯留槽に一時的にかつ可逆的に搬送する不図示のポンプとを備えてなる。この搬送により、液面7の位置を変える。
【0040】
引き取り手段36aは、押し出された熱可塑性樹脂を着脱自在に把持する一の把持部60a(把持部A)と他の把持部60b(把持部B)からなる。一の把持部60aと他の把持部60bは吐出された樹脂(丸棒)を図4に示す態様で交互に把持して下方に引き取る。一の把持部60aと他の把持部60bはそれぞれクランプ等の着脱自在な把持手段8と把持手段8を支持する支持部17を備える。また、一の把持部60aと他の把持部60bそれぞれの支持部17は電導のリニアフィーダーを組み合わせてなる不図示の移動手段により、上下左右に図4に示す態様でそれぞれ移動させられる。すなわち、取る引き取り手段36aが一の把持部60aと他の把持部60bとを含んで構成される。
【0041】
図4に示す樹脂丸棒成形用装置30aを用いた樹脂丸棒成形方法においては、ノズルダイ4から熱可塑性樹脂を連続的に吐出し、液槽34に貯留された冷却用液6に突入させた熱可塑性樹脂の引き取りが間欠的になされる。このとき、
冷却用液6に突入させた熱可塑性樹脂を他の把持部60b(把持部B)により定速で所定時間引き取るステップ1、(このとき、一の把持部60a(把持部A)は水槽34の内部で液面7の下側の所定の位置で待機している)(図4−(1))
樹脂(丸棒)を把持部Bにより所定のストローク量引き取って引き取りが終了したステージ(図4−(2))で把持部Aを水平方向に移動させて吐出された樹脂を把持させるステップ2、(図4−(2)→図4−(3))
冷却用液6の液面7を下降させ、把持部Aの把持手段8の下方かつ下降した液面7´の上方で熱可塑性樹脂が熱軟化状態の部分9で樹脂を切断するステップ3(図4−(4))、
把持部Bを、樹脂の引き取り経路から退避させるように水平移動させ次いで上昇させるステップ4(図4−(5))、
把持部Aを定速で下降させるとともに把持部Bに把持されている樹脂丸棒15を外部に取り出すステップ5(図4−(6))、
これにより、操作がステップ1において把持部Aと把持部Bが入れ替わった状態(図4−(7))となって、ステップ1〜5が繰り返される。
【0042】
この方式は把持部の上昇による時間のロスを極めて少なくできるので、丸棒をさらに効率よく製造することができる。
【0043】
さらに、本発明の他の態様においては、樹脂丸棒成形を図5に示す樹脂丸棒成形用装置30bを用いて図5に示す手順で好適に行うことができる。樹脂丸棒成形用装置30bは、樹脂丸棒成形用装置30aと同様に、円形の吐出口2、押し出し手段32、液槽34、冷却用液6の液面7を上下させる不図示の液面上下手段、引き取り手段36a、不図示の切断手段とを備える。
【0044】
引き取り手段36aは、樹脂丸棒成形用装置30aと同様に、押し出された熱可塑性樹脂を着脱自在に把持する一の把持部60a(把持部A)と他の把持部60b(把持部B)からなり、一の把持部60aと他の把持部60bは吐出された樹脂(丸棒)を図5に示す手順で交互に把持して下方に引き取る。一の把持部60aと他の把持部60bはそれぞれクランプ等の着脱自在な把持手段8と把持手段8を支持する支持部17を備える。また、一の把持部60aと他の把持部60bそれぞれの支持部17は電導のリニアフィーダーを組み合わせてなる不図示の移動手段により、上下左右に図4に示す態様でそれぞれ移動させられる。
【0045】
図5に示す樹脂丸棒成形用装置30bを用いた樹脂丸棒成形方法においても、ノズルダイ4から熱可塑性樹脂を連続的に吐出し、液槽34に貯留された冷却用液6に突入させた熱可塑性樹脂の引き取りが間欠的になされる。このとき、
冷却用液6に突入させた熱可塑性樹脂を把持部Bにより定速で所定時間引き取るステップ1、(このとき、把持部Aは水槽34の内部で液面7の下側の所定の位置で待機している)(図5−(1))
樹脂(丸棒)を把持部Bにより所定のストローク量引き取って引き取りが終了したステージ(図4−(2))で把持部Aを水平方向に移動させて吐出された樹脂を把持させるステップ2、(図5(2))
冷却用液6の液面7を下降させて、把持部Aを引き取られた樹脂方向に水平移動させて、下降した液面7´の上方で、引き取られた樹脂を把持部Aで把持するステップ3(図5−(3))、
把持部Aを定速で下降させるとともに把持部Bを把持部Aの下降速度より速い速度で下降させ、把持部Aと下降した液面7´との間に存在する樹脂を引き伸ばして、把持部Aと下降した液面7´との間に存在する樹脂丸棒にくびれ47を生じさせるステップ4(図5−(4))、
把持部Aの下方かつ下降した液面7´の上方で、引き取られた樹脂のくびれ47の部分(細くなった部分)を切断し、丸棒を把持した状態の把持部Bを引き取り経路から退避させるように水平移動するステップ5(図5−(5))、
把持部Bを、丸棒を把持した状態で上昇させるステップ6(図5−(6))、
把持部Aを定速で引き続き下降させるとともに把持部Bに把持されている樹脂丸棒15を外部に取り出すステップ7(図5−(7))、
これにより、操作がステップ1において把持部Aと把持部Bが入れ替わった状態(図5−(8))となって、ステップ1〜7が繰り返される。
【0046】
この方式は把持部の上昇による時間のロスを極めて少なくできるとともに、ステップ5においてくびれ47の部分(細くなった部分)で丸棒を切断するので、切断を容易に円滑に行うことができ好ましい。
【0047】
実施例
原料の熱可塑性樹脂としてポリ乳酸を用い、図3に示す樹脂丸棒成形用装置30により丸棒を作成した。溶融押し出し機40の温度はシリンダ部で170〜190℃、吐出口2の径は5mmとした。液槽34はΦ450mm×高さ600mmのものを用いた。冷却用液としては水を用い液温を温度コントローラにより50〜55℃に保った。液面7と吐出口2の間隔を20mmとした。吐出量7g/minで吐出口2から鉛直下方に樹脂を押し出し、液面7から冷却用液に突入させ、吐出口2から1.5cm下方の位置で、着脱自在のクランプを備える把持部60で樹脂を把持させ、水中で鉛直下方に3.2cm/secの引き取り速度で引き取った。引き取りのストロークが40cmに達した位置で、液面7を液面上下手段36により下降開始させ、液面7と吐出口2の間隔が7cmに達するまで下降させた。ついで把持部60を停止させるとともに引き取られた樹脂(丸棒)の根元を吐出口2から3.5cm下がった位置で鋏で切断し、丸棒を液槽から取り出した。切断の位置では樹脂は熱軟化状態であった。次いで把持部60を上昇させるとともに液面をもとのレベルまで上昇させ、吐出口2から1.5cm下方の位置で把持部60で樹脂を把持させ、以下は同様の引き取りから次の引き取りに至る同様の操作を繰り返した。
【0048】
得られた丸棒の径(平均径)は6mmであり、丸棒の長径と短径の差は平均径に対して±0.2%であり真円度が良好であった。
【0049】
以上本発明の態様を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものであり、これらの態様はいずれも本発明の範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は熱可塑性樹脂から真円度に優れた丸棒を成形することに好適に利用される。
【符号の説明】
【0051】
2:吐出口
4:ノズルダイ
6:冷却用液
7:液面
8:把持手段
30:樹脂丸棒成形用装置
32:押し出し手段
34:液槽
37:液面上下手段
36:引き取り手段
40:溶融押し出し機
46:ダクト
48:一時貯留槽
52:ポンプ
60:把持部
66:レール
100:押し出し機
102:ノズルダイ
104:コンベア
108:水冷却装置
110:無端ベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を溶融状態で円形の吐出口を有するノズルから鉛直下方に押し出して液槽に貯留された冷却用液に突入させ、該冷却用液中で把持手段で把持して定速で鉛直下方に引き取る樹脂丸棒成形方法であって、引き取り速度が、引き取り中の樹脂丸棒の径が前記吐出口の径より大であるような速度であることを特徴とする樹脂丸棒成形方法。
【請求項2】
前記吐出口と前記冷却用液とは、接触せずかつ間隔が30mm以下である請求項1に記載の樹脂丸棒成形方法。
【請求項3】
前記冷却用液の温度が(Tg−20℃)以上、Tg未満(Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度)である請求項1または2に記載の樹脂丸棒成形方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が生体吸収性樹脂である請求項1から3のいずれかに記載の樹脂丸棒成形方法。
【請求項5】
前記生体吸収性樹脂がポリ乳酸である請求項4に記載の樹脂丸棒成形方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂の前記ノズルからの吐出が連続的になされ、
前記冷却用液に突入させた前記熱可塑性樹脂の引き取りが間欠的になされ、
前記冷却用液に突入させた前記熱可塑性樹脂を定速で所定時間引き取るステップ1、
前記冷却用液の液面を下降させるステップ2、
引き取られた熱可塑性樹脂を、前記吐出口と前記冷却用液の液面との間で、前記吐出口から吐出された直後の部分の熱可塑性樹脂から切りはなすステップ3、
引き取られた熱可塑性樹脂を前記液槽から取り出すステップ4、
前記冷却用液の液面を上昇させるステップ5
を含み、
ステップ1からステップ5が繰り返される請求項1から5のいずれかに記載の樹脂丸棒成形方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の樹脂丸棒成形方法に用いる装置であって、
円形の吐出口を備え前記熱可塑性樹脂を該吐出口から鉛直下方に溶融押し出しする押し出し手段、
前記吐出口の直下に備えられた液槽、
該液槽に貯留され押し出された熱可塑性樹脂が突入して冷却される冷却用液の液面を上下させる液面上下手段、
押し出された熱可塑性樹脂を鉛直下方に引き取る引き取り手段、
前記吐出口と前記冷却用液の液面との間で、押し出された熱可塑性樹脂を切断する切断手段、
を備え、
前記引き取り手段が、前記液槽に貯留された前記冷却用液中の熱可塑性樹脂を把持して定速下降し次いで把持を解放したのちもしくは熱可塑性樹脂が把持位置より前記吐出口寄りで切断されたのち上昇する把持手段を備える樹脂丸棒成形用装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−5813(P2011−5813A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153514(P2009−153514)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】