説明

樹脂塗工シート

【課題】シート状支持体上に樹脂層を塗工して製造される塗工シートに関して、高温・高湿度条件下においてもブロッキング現象が発生しにくく、かつ表面が折れ割れしにくいことを特徴とする樹脂塗工シート、具体的には、例えば本や手帳の表紙、皮革製品に利用される樹脂塗工シートを提供することを課題とする。
【解決手段】シート状支持体の少なくとも片面に樹脂層とブロッキング防止層を順次設けた樹脂塗工シートにおいて、前記樹脂層のガラス転移温度(Tg)が+60℃以下、且つ前記ブロッキング防止層の厚さが0.1〜20μmの構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート状支持体上に樹脂層を塗工して製造される樹脂塗工シートであり、詳しくは本や手帳の表紙、皮革製品等に利用される樹脂塗工シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本や手帳を長期間使用する場合、それら表紙の表面強度や保存性の高さが要求される。表紙の表面強度として特に問題となるのが、曲げたときに折れ目にそって割れが生じることである。そのため、この折れ割れを防ぐことが重要となる。
【0003】
このような折れ割れがしにくい性能を樹脂シートに保持させるために、これまでに様々な検討がなされてきた。例えば特許文献1では、上質紙、中質紙、片艶紙、クラフト紙などの紙クロス原紙からなる支持体上に少なくとも一層以上の顔料層と該顔料層を被覆する保護層からなる塗被層を設けた紙クロスであって、該保護層はメタアクリルアマイド系樹脂を主成分とし、かつ前記支持体の層間・層内剥離強度は、製造・加工時に、前記塗被層及び該塗被層の支持材である支持体が破れることなく、しかも塗被層全体が支持体と共に剥離し得るために1.5〜6.0kg/cmの範囲に形成したことを特徴とする各種梱包材料、袋、箱などの表層材料用の紙クロスを提案している。しかしながら、冊子に加工してその塗被層同士を対向させて積み重ねると、一定以上の温度や湿度によりブロッキング現象が発生するという問題があった。
【0004】
特許文献2では、繊維集合体に弾性重合体を主体とした重合体を含有した基体層と弾性重合体を主体とした重合体の被覆層とからなる皮革様シート状物において、該被覆層の表面には非繊維状で平均粒径10μm以下かつ見掛け嵩密度0.1〜0.3g/cm3のコラーゲン粉末とポリウレタンを主体とした重合体よりなる層、ポリウレタンおよび/またはアクリル系樹脂、油脂およびカゼインよりなる層が積層されてなることを特徴とする皮革様シート状物を提案し、更にその表面に更にアクリル系樹脂またはポリウレタンと硝化綿ラッカー(ニトロセルロース)および油脂よりなる層が積層されてなることを特徴とする皮革様シート状物を提案している。しかしながら、冊子に加工してその表面同士を対抗して積み重ねた場合、折れ割れとブロッキングの両方の課題を同時に解決する構成にはなっていない。また、塗工の際に有機溶剤系の樹脂を使用することは、製品に有機溶剤が残存するといった環境面や安全面での課題が残っていた。また塗工表面に型押し、エンボスパターン等、加圧成型等を施し凹凸のある表面とする際に、微小な断層が生じ、その断層面がブロッキング現象を起こすことがある。
【0005】
【特許文献1】特許第3435617号公報
【特許文献2】特許第2809804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はシート状支持体上に樹脂層を塗工して製造される塗工シートに関し、高温・高湿度条件下においてもブロッキング現象が発生しにくく、かつ表面が折れ割れしにくい樹脂塗工シートの製造を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前述の従来技術の問題点を改善するために鋭意研究した結果、シート状支持体上にガラス転移温度(Tg)が+60℃以下の樹脂層を設け、その上に厚さが0.1〜20μmのブロッキング防止層を設けることにより本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、シート状支持体の少なくとも片面に樹脂層とブロッキング防止層を順次設けた樹脂塗工シートにおいて、前記樹脂層のガラス転移温度(Tg)が+60℃以下、且つ前記ブロッキング防止層の厚さが0.1〜20μmであることを特徴とする樹脂塗工シートである。
【0009】
また、本発明は、前記樹脂塗工シートにおいて、前記ブロッキング防止層が、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロースのいずれか1種、またはそれらの混合物を主体とすることを特徴とする樹脂塗工シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、高温・高湿度条件下においてもブロッキング現象が発生しにくく、かつ表面が割れにくい樹脂塗工シートが得られる。斯かる特長を有する本発明の樹脂塗工シートは、書籍、手帳等の表紙として有用であり、また合成皮革として皮革性製品に好適に用いることができる。
【0011】
また、本発明を実施するために使用する樹脂の多くは、水系の塗料として使用可能であるため、このような水系の塗料として使用可能な樹脂を用いた場合には、溶剤を使用するための特殊な設備を必要とせず、さらには環境負荷の低減や製品中の残留溶剤成分の問題も解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の樹脂塗工シートは、シート状支持体の少なくとも片面に樹脂層とブロッキング防止層を順次設けたものである。斯かる構成を有する本発明の樹脂塗工シートにおいては、折れ割れを起こしにくい樹脂層とブロッキング現象を発生しにくいブロッキング防止層の材料と厚さの選択が重要となる。
【0013】
本発明に係る樹脂層のガラス転移温度(Tg)は、+60℃以下、好ましくは+30℃以下である。樹脂層のTgが+60℃を超えると、十分な折れ割れ防止効果が得られず、樹脂塗工シートを折り曲げた時にその折り目にそって塗工層に割れが生じるおそれがある。ここで樹脂層のTgとは、下記測定方法に従って測定された測定値を意味する。樹脂層のTgの下限値は、特に制限されないが、形状維持の観点から、好ましくは−30℃(下記測定方法の温度範囲の下限値)である。
【0014】
<樹脂層のTgの測定方法>
測定対象の樹脂層の構成成分からなる塗料を調製し、該塗料をPPC用紙上に乾燥後の厚さが10〜20μmとなるようにバーコーターで塗布し、105℃で1分間乾燥させて樹脂層を形成する。該樹脂層の一部をカミソリで剥ぎ取り、剥ぎ取った樹脂層の一部を乳鉢で粉末にする。該粉末について、JIS K7121に準拠する測定方法により示差熱分析装置(島津製作所製DSC−60A)を用いて熱分析を行う。該熱分析は、窒素雰囲気下で行い、測定温度範囲を−30〜100℃、加熱速度を20℃/minとし、サンプル(上記粉末)は1回の測定に5〜10mg使用する。該熱分析で得られた示差熱グラフからTgを算出し、その算出した値を当該樹脂層のTgとする。尚、示差熱グラフから算出されるTgが2つ以上あった場合は、それらのうちの最も低いTgを当該樹脂層のTgとする。
【0015】
本発明に係る樹脂層に使用できる樹脂としては、例えば、SBRラテックス、NBRラテックス、天然ゴムラテックス、メタクリル酸メチルグラフト共重合天然ゴムラテックス、(メタ)アクリル樹脂エマルジョン、シリコーン−アクリルエマルジョン、スチレン−アクリルエマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン等が挙げられる。これらの水系樹脂は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの水系樹脂の含有量は、樹脂層の全質量に対して好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40〜95質量%である。
【0016】
本発明に係る樹脂層に用いられる樹脂は、樹脂層のTgが上記範囲になるものであれば特に制限は無いが、水系の溶媒を用いたものが好ましく、具体的には、上述した水系樹脂や後述する水溶性樹脂が挙げられる。樹脂層中の樹脂成分としてこれらの樹脂を用いた場合、該樹脂層の塗工液は水系の塗工液(樹脂水溶液あるいは水系樹脂エマルジョン)とすることができるため、樹脂層の塗工工程において溶剤系の塗工液を用いる場合の如き特殊な設備が不要となり、さらには環境負荷の低減や製品中の残留溶剤成分の問題も解決することができる。
【0017】
本発明では、また、上記水系樹脂に水溶性樹脂を添加することができる。水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールとその変性物、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、各種デンプンとその変性物、ゼラチン、カゼイン、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド等を使用することができる。これらの水溶性樹脂は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。樹脂層における水溶性樹脂の添加量は、上記水系樹脂100質量部に対して好ましくは5〜30質量部である。
【0018】
本発明に係る樹脂層には、樹脂層の不透明度の向上や樹脂層の着色などを目的として、上述の如き樹脂に加えて更に、微粒子充填剤及び顔料を添加することができる。微粒子充填剤及び顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、珪藻土、ガラス粉末、シラスバルーン、活性白土、穀物デンプン粒子及びその変性物、ゼオライト、微球状アクリル樹脂、微球状メタクリル樹脂、微球状ポリエチレン、プラスチックピグメント等を使用することができる。これらの微粒子充填剤及び顔料は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。樹脂層における微粒子充填剤及び顔料の添加量は、樹脂100質量部に対して好ましくは10〜30質量部である。
【0019】
また本発明に係る樹脂層には、必要に応じて、折れ割れ防止に効果のある添加剤を使用することもできる。該添加剤としては例えば、柔軟剤、コラーゲン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等を使用できる。
【0020】
また本発明に係る樹脂層には、必要に応じて、慣用されている添加剤、例えば粘着付与剤、粘度調整剤、老化防止剤、UV吸収剤、安定剤、防腐剤、着色剤、架橋剤、分散剤、消臭剤、芳香剤、消泡剤などを添加することができる。
【0021】
本発明に係る樹脂層の厚さは1〜50μmが好ましく、5〜40μmが特に好ましく、10〜30μmが更に好ましい。樹脂層の厚さが1μm未満であると折れ割れに対して効果がない。また、50μm以上になると折れ割れ防止効果は頭打ちになってしまい、逆にコストアップになったり後述する塗工時の作業性を悪くしたりするという問題が生じる。
【0022】
また本発明では、シートに立体的な意匠性や手触り感を与えるために、この樹脂層の表面に型押し、エンボスパターン、加圧成型等公知の凹凸処理を施し凹凸のある表面とすることも可能である。即ち、樹脂層におけるブロッキング防止層との対向面は、凹凸の無い平滑面であっても良く、あるいは凹凸を有していても良く、凹凸を有している場合は意匠性や手触り感の向上が期待できる。
【0023】
本発明に係るブロッキング防止層には、OCO結合を有する樹脂を好ましく使用できる。OCO結合を有する樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン−アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられるが、中でもウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか1種、またはそれらの混合物を主体とするものを用いると特に好ましい。その理由は明らかではないが、OCO結合が上記樹脂層との親和性と、表層すなわち最外層の表面性を、本発明の目的にかなうような最適な状態に調整し得ると推測する。
【0024】
また本発明に係るブロッキング防止層で好ましく用いられる樹脂としては、上述したOCO結合を有する樹脂(何れも水系樹脂)の他に、ニトロセルロース(非水系樹脂)が挙げられる。従って、本発明に係るブロッキング防止層は、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロースのいずれか1種、またはそれらの2種以上の混合物を主体とするものが好ましい。ここで「主体とする」とは、ブロッキング防止層の全組成中に占めるこれらの樹脂(OCO結合を有する樹脂、ニトロセルロース)の配合割合が50質量%以上であることを意味する。これらの樹脂(OCO結合を有する樹脂、ニトロセルロース)の含有量は、ブロッキング防止層の全質量に対して好ましくは60質量%以上、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは100質量%である。
【0025】
尚、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR樹脂)、イソプレンゴムなどの樹脂をブロッキング防止層の樹脂成分として用いると、該層がブロッキングを起こすおそれがあるため、これらの樹脂を本発明に係るブロッキング防止層に用いることはできない。本発明に係るブロッキング防止層は、文字通り、ブロッキング防止機能を有する層であり、ブロッキング防止機能を有しない層は、本発明に係るブロッキング防止層に含まれない。
【0026】
また、本発明に係るブロッキング防止層の上記樹脂(OCO結合を有する樹脂、ニトロセルロース)には架橋剤を使用して架橋構造とすることも必要に応じて可能である。ブロッキング防止層に架橋剤を配合することは、ブロッキング防止効果の向上に有効である。本発明で使用できる架橋剤として、ホルマリンやグリオキザールのようなアルデヒド系化合物、ジアセチルやクロルペンタンジオンのようなケトン系化合物、反応性のオレフィンを持つ化合物、N−メチロール化合物、イソシアネート類、アジリジン化合物類、カルボジイミド系化合物類、エポキシ化合物、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、塩酸や硫酸、燐酸等の無機酸及びこれらのアンモニウム塩、クロム明ばん、硫酸ジルコニウムや塩酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム化合物、ホウ酸及びホウ酸塩、硫酸亜鉛、蟻酸カルシウム等を挙げることができ、これらを1種以上使用することができる。また、本発明に係るブロッキング防止層としてシリコーン−アクリル樹脂を使用する場合、架橋剤として加水分解性シリコーン化合物を使用するとより効果的である。架橋剤の添加量は、樹脂100質量部に対して好ましくは5〜20質量部である。
【0027】
ブロッキング防止層の厚さは0.1〜20μmであり、1〜15μmが好ましい。ブロッキング防止層の厚さが0.1μm未満の場合、表面に凹凸が生じる程度の傷が生じた際に、目的とするブロッキング防止の効果を十分に得ることができない。また、20μmを超えると、層の折れ割れが発生しやすくなるため適さない。
【0028】
また、上記ブロッキング防止層に水溶性樹脂を添加することができる。水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールとその変性物、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、各種デンプンとその変性物、ゼラチン、カゼイン、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド等を使用することができる。これらの水溶性樹脂は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。ブロッキング防止層における水溶性樹脂の添加量は、上記樹脂(OCO結合を有する樹脂)100質量部に対して好ましくは5〜30質量部である。
【0029】
更に上記ブロッキング防止層に、つや消しや着色などを目的として、微粒子充填剤及び顔料を添加することができる。微粒子充填剤及び顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、珪藻土、ガラス粉末、シラスバルーン、活性白土、穀物デンプン粒子及びその変性物、ゼオライト、微球状アクリル樹脂、微球状メタクリル樹脂、微球状ポリエチレン、プラスチックピグメント等を使用することができる。これらの微粒子充填剤及び顔料は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。ブロッキング防止層における微粒子充填剤及び顔料の添加量は、樹脂100質量部に対して好ましくは5〜20質量部である。
【0030】
また上記ブロッキング防止層に、必要に応じて、慣用されている添加剤、例えば粘着付与剤、粘度調整剤、老化防止剤、UV吸収剤、安定剤、防腐剤、着色剤、分散剤、消臭剤、芳香剤、消泡剤などを添加することができる。
【0031】
また本発明では、シートに立体的な意匠性や手触り感を与えるために、ブロッキング防止層の表面に型押し、エンボスパターン、加圧成型等公知の凹凸処理を施し凹凸のある表面とすることも可能である。即ち、ブロッキング防止層の表面(樹脂層との対向面とは反対側の面)は、凹凸の無い平滑面であっても良く、あるいは凹凸を有していても良く、凹凸を有している場合は意匠性や手触り感の向上が期待できる。また、上述した樹脂層におけるブロッキング防止層との対向面、及びブロッキング防止層の表面の両面が、何れも凹凸を有していても良い。但し、ブロッキング防止層形成後に凹凸処理を施すと、ブロッキングがやや起こりやすくなるので注意が必要である。従って、ブロッキングを確実に防止する観点から、ブロッキング防止層の表面にのみ凹凸処理を施すことは避けた方が望ましい。ブロッキング防止層の表面に凹凸処理を施す場合は、樹脂層の表面にも凹凸処理を施すことが望ましい。
【0032】
本発明で用いられるシート状支持体としては、紙、不織布、フィルム、合成紙等が用いられる。紙としては、製紙用として一般的に用いられている木材パルプを主体にして、これに必要に応じて非木材パルプやカチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、ミクロフィブリル化パルプ、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の再生繊維、半合成繊維、合成繊維を適宜混合して用いることができるが、特に上質紙や含浸紙が好ましい。不織布としてはレーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、綿、パルプ、麻、羊毛、ガラス繊維等の材料を使用して乾式、湿式、直接式で製造したものが挙げられる。フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料が挙げられる。合成紙としては、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、エチレンープロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド等を原材料とし、延伸法により製造した物が挙げられるが、いずれも上記したものに限定されるものではない。
【0033】
特に、上記シート状支持体として含浸紙、合成紙を用いると、優れた折れ割れ防止効果が得られる。含浸紙としては、例えば、上述した紙にスチレン−アクリル酸エステル、メチルメタアクリレート及びブチルアクリレート樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を10〜30質量%含浸させてなる含浸紙を用いることができる。含浸紙を用いた場合、含浸樹脂の効果により紙自体の割れを防ぐことができる。また合成紙としては、例えば、フィルム法(合成樹脂に必要に応じ各種添加剤を加えて混合し、押し出し機で溶融混練後、ダイ・スリットから押し出して成膜する方法)による合成紙を用いることができる。このようなフィルム法による合成紙としては市販品を用いることができ、例えばユポ・コーポレーション製のユポFEB150(商品名)が挙げられる。合成紙の原料となる合成樹脂としては、例えば軟質ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いることができる。
【0034】
上記シート状支持体の坪量は、折り曲げが可能な用紙である観点から、30〜300g/m2が好ましく、50〜200g/m2が特に好ましい。
【0035】
本発明において、樹脂層やブロッキング防止層は通常の塗工方式を用いて設けることができる。例えば、エアナイフコーター、ロッドコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ゲートロールコーター等の一般的に用いられている塗工機で塗工可能である。あるいは、印刷方式により層を設けてもよい。
【実施例】
【0036】
以下実施例、比較例によって本発明を具体的に説明する。なお、実施例、比較例で記載された部数はすべて重量基準(荷姿換算)である。
【0037】
[実施例1]
(A)樹脂層の塗料調製
アクリル樹脂(三井化学製 商品名:ボンロンS482)100質量部に、染色用顔料(山陽色素製 商品名:エマコール Carmin FB)20質量部を添加し、固形分濃度40%の水系塗料を調製した。
【0038】
(B)ブロッキング防止層の塗料調製
シリコーン−アクリル樹脂(大日本インキ製 商品名:ウォーターゾルWSA−910)100質量部に、架橋剤(大日本インキ製 商品名:ウォーターゾルWSA−950)を15質量部添加し、固形分濃度20%の水系塗料を調製した。
【0039】
(C)シート状支持体(上質紙)の製造
NBKP70重量部(乾燥重量部、以下同じ)、LBKP30重量部をフリーネス350mlC.S.F.に叩解し、クレー10重量部、ポリアクリルアマイド(商品名「ポリマセット500L」、荒川化学工業(株)製造)0.2重量部、硫酸バンド3重量部を加え定着し、長網多筒式抄紙機を用い、坪量130g/m2(乾燥重量)の上質紙を得た。
【0040】
上記(A)で調整した樹脂層の塗料を、上記(C)の上質紙(坪量130g/m2)に、塗工層厚さが20μmとなるようにロッドコーターで塗工した。続いて、上記(B)で調製したブロッキング防止層の塗料を、塗工層厚さが10μmとなるように、ロッドコーターで塗工し、樹脂塗工シートを得た。
【0041】
[実施例2]
アクリル樹脂(三井化学製 商品名:ボンロンS482TBF)100質量部に、染色用顔料(山陽色素製 商品名:エマコール Carmin FB)20質量部を添加し、固形分濃度40%の水系塗料を調製した。これを樹脂層の塗料として用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0042】
[実施例3]
樹脂層の厚さを0.5μmとする以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0043】
[実施例4]
ニトロセルロース樹脂(大日精化製 商品名:NCワニス1/8)の固形分濃度20%の溶剤(酢酸エチル)系塗料を調製した。これをブロッキング防止層の塗料として用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0044】
[実施例5]
ウレタン樹脂(大日本インキ製 商品名:ハイドランWLS−231)の固形分濃度20%の水系塗料を調製した。これをブロッキング防止層の塗料として用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0045】
[実施例6]
ブロッキング防止層の厚さが0.3μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0046】
[実施例7]
ブロッキング防止層の厚さが18μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0047】
[実施例8]
実施例1において、ブロッキング防止層の形成後に、巾1mm深さ0.5mmの線状の凸部が平行に配置している平板状エンボス板に、該ブロッキング防止層表面を接触させ、面圧24.5kPaで10秒加圧することで凹凸のあるブロッキング防止層表面を得た。それ以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0048】
[実施例9]
実施例1において、樹脂層の形成後でブロッキング防止層の形成前に、巾1mm深さ0.5mmの線状の凸部が平行に配置している平板状エンボス板に、該樹脂層表面を接触させ、面圧24.5kPaで10秒加圧することで凹凸のある樹脂層表面を得た。それ以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0049】
[実施例10]
実施例1において、樹脂層の形成後でブロッキング防止層の形成前に、巾1mm深さ0.5mmの線状の凸部が平行に配置している平板状エンボス板に、該樹脂層表面を接触させ、面圧24.5kPaで10秒加圧することで凹凸のある樹脂層表面を得、更にブロッキング防止層の形成後に、上記エンボス板を用いて上記と同様に凹凸処理を施して凹凸のあるブロッキング防止層表面を得た。それ以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0050】
[実施例11]
シート状支持体を以下の含浸紙(D)にした以外は実施例2と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
(D)シート状支持体(含浸紙)の製造
NBKP70重量部(乾燥重量部、以下同じ)、LBKP30重量部をフリーネス550mlC.S.F.に叩解し、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤(商品名「WS−4010」、星光PMC(株)製造)0.2重量部、クレー10重量部、ポリアクリルアマイド(商品名「ポリストロン117」、荒川化学工業(株)製造)0.2重量部、硫酸バンド3重量部を加え定着し、長網多筒式抄紙機を用い、坪量110g/m2(乾燥重量、以下同じ)の原紙を抄造した。次いで、分子量20000、酸価100のカルボキシル基変性したスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂エマルジョン(商品名「J−450」、ジョンソンポリマー(株)製造)を20g/m2含浸処理し、坪量130g/m2の含浸紙を得た。
【0051】
[実施例12]
シート状支持体を、合成紙(ユポ・コーポレーション製 商品名:ユポFEB150(坪量115.5g/m2))にした以外は実施例2と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0052】
[比較例1]
アクリル樹脂(三井化学製 商品名:ボンロンS1320)の固形分濃度20%の水系塗料を調製した。これを樹脂層の塗料として用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0053】
[比較例2]
ブロッキング防止層の厚さが0.05μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0054】
[比較例3]
ブロッキング防止層の厚さが25μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0055】
[比較例4]
ブロッキング防止層を設けない以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0056】
[比較例5]
SBR樹脂(日本エイアンドエル製 商品名:スマーテックスPA−1013)の固形分濃度20%の水系塗料を調製した。これをブロッキング防止層の塗料の代わりとして用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂塗工シートを得た。
【0057】
実施例及び比較例で得られた樹脂塗工シートについて、樹脂層のTgを前記<樹脂層のTgの測定方法>に従って測定すると共に、折れ割れとブロッキングの評価を下記評価方法により行った。評価結果を下記表1に示す。
【0058】
[折れ割れの評価]
樹脂塗工シートに対してJIS P8115:2001に規定された操作を準用し、耐折回数100回時に試験を停止し、該樹脂塗工シートの折り目の状態を目視にて観察した。目視観察結果について下記のような3段階評価をし、○及び△を合格とした。
○:折れ目に亀裂がない
△:折れ目に極短い亀裂が2、3箇所ある
×:折れ目に太い亀裂がある
【0059】
[ブロッキング試験]
10cm四方の試験片2枚をブロッキング防止層同士(ブロッキング防止層が無い場合は樹脂層同士)が向かい合うように接触させ、温度80℃、湿度80%の環境下において、10kgの荷重をかけて10時間後の状態を目視で確認した。目視観察結果について下記のような3段階評価をし、○及び△を合格とした。
○:ブロッキングが認められない。
△:ブロッキングが若干あるが、表面を破壊せずに元の2枚の試験片へと分離することができる。
×:ブロッキングがあり、表面を破壊せずに元の2枚の試験片へと分離することができない。
【0060】
【表1】

【0061】
評価結果より以下のことがわかった。
(1)実施例2と比較例1との比較より、樹脂層のTgが+60℃以下であれば、折れ割れ防止効果に優れる。また、実施例1と実施例2との比較より、樹脂層のTgが+30℃以下であれば、折れ割れ防止効果に一層優れる。
(2)実施例1と実施例3とを比較すると、樹脂層の厚さは折れ割れやブロッキング防止に対して大きな影響はないことがわかる。
(3)実施例1、4、5と比較例4、5との比較より、ブロッキング防止層にシリコーン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂(以上、OCO結合を有する樹脂)及びニトロセルロースを使用すると、ブロッキング防止に効果があることがわかる。また、実施例1、4、5と比較例5との比較より、OCO結合を有する樹脂及びニトロセルロースは、SBR樹脂に比してブロッキング防止に有効であることがわかる。比較例5のSBR樹脂を用いた層は、ブロッキング防止機能を有しておらず、ブロッキング防止層ではない。
(4)実施例1、6と比較例2とを比較すると、ブロッキング防止層が0.1μm以上であるとブロッキング防止効果に優れる。
(5)実施例1、7と比較例3とを比較すると、ブロッキング防止層が20μm以下であると折れ割れ防止効果に優れ、15μm以下であるとより一層優れる。
(6)実施例1、8、9、10の比較より、ブロッキング防止層にのみ凹凸処理を施すとブロッキング防止効果にやや劣る。
(7)実施例2と実施例11、12との比較より、支持体として含浸紙又は合成紙を使用すると、折れ割れ防止効果が一層優れる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の樹脂塗工シートは、書籍や手帳等の表紙として、あるいは合成皮革として皮革性製品に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状支持体の少なくとも片面に樹脂層とブロッキング防止層を順次設けた樹脂塗工シートにおいて、前記樹脂層のガラス転移温度(Tg)が+60℃以下、且つ前記ブロッキング防止層の厚さが0.1〜20μmであることを特徴とする樹脂塗工シート。
【請求項2】
前記ブロッキング防止層が、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロースのいずれか1種、またはそれらの混合物を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の樹脂塗工シート。

【公開番号】特開2008−214844(P2008−214844A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24335(P2008−24335)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】