説明

樹脂容器

【課題】容器本体の底部を接地させて床やパレット等に置かれる樹脂容器であっても転倒し難く、また、蒸気圧の高い液体を充填した樹脂容器の上に種々の物品を安定して積重ねることができるようにする。
【解決手段】円筒状の胴部10、底部20及び天部30を有する外形寸法が直径略600mm、高さ略900mmのドラム状の容器本体1が樹脂により一体成形された樹脂容器100であって、容器本体1と共に一体成形され、底部20周りに配設されると共に下端が底部20の最下面よりも高く位置するように容器本体1の下側の角部分に突設された下リング部40と、容器本体1と共に一体成形され、天部30周りに配設されると共に上端が天部30の最上面よりも少なくとも10mm高く位置するように容器本体1の上側の角部分に突設された上リング部50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂容器に関するものであり、詳しくは、外形寸法が直径略600mm、高さ略900mmのドラム状の容器本体が樹脂により一体成形された樹脂容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外形寸法が直径略600mm、高さ略900mmのドラム状に形成された200リットル程度の容器として、円筒状の胴体、この胴体の下端を塞く地板、及び、胴体の上端を塞ぐ天板を有するスチール製の容器、所謂「ドラム缶」が周知であるが、近年においては、樹脂によって一体成形した樹脂容器も種々開発されている。ここで、このような樹脂容器は、円筒状の胴部、この胴部の下端を塞ぐ底部、及び、胴部の上端を塞ぐ天部を有するドラム状の容器本体がブロー成形によって一体成形されたものである。
【0003】
ところで、ドラム缶では、胴体と地板とを一体化するために、また、胴体と天板とを一体化するために、胴体の下端部分と地板の外周縁部分とを重ね合わせて折り曲げることで形成されたリング状のリング部や、胴体の上端部分と天板の外周縁部分とを重ね合わせて折り曲げることで形成されたリング状のリング部が設けられており、上下のリング部、所謂「チャイム」が必須である。これに対して、容器本体が一体成形された樹脂容器では、胴部と底部とが、並びに、胴部と天部とが、夫々、そもそも一体成形されていることからリング部は必須でなく、リング部のない樹脂容器では、容器本体の上下の角部が胴部と底部や天部との明確な境界のないR形状となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リング部のない樹脂容器では、蒸気圧の高い液体を充填すると、内部圧力によって底部が外側に膨れて曲面状に変形する。よって、このような樹脂容器は、床やパレット等の平坦な面に置いても、蒸気圧の高い液体を充填すると安定性が悪くなり、転倒する虞があるものであった。
【0005】
ここで、底部の外周縁に下方に突出するリング状の突出部を設け、この突出部の下面を床やパレット等に接地させることで、変形する底部を床やパレット等から浮かせるようにした樹脂容器が案出されてはいる。
【0006】
しかしながら、このような樹脂容器では、液体を充填した樹脂容器全体の重量を底部周縁の突出部によって支えなければならず、突出部としての強度を十分に確保しなければならない。そして、突出部の強度を十分に確保しようとすると、突出部を厚く形成せざるを得ず、樹脂容器自体の重量増加を招いてしまう。また、リング状の厚い突出部をブロー成形によって形成することは困難であり、金型の大型化、複雑化を招いてしまう。
【0007】
さらに、底部が変形しても床やパレット等に接触しないようにするためには、突出部の高さを十分に高くしなければならない。よって、この点からも樹脂容器自体の重量増加を招き、また、高さの高い突出部をブロー成形によって形成することは困難であり、金型の大型化、複雑化を招いてしまう。
【0008】
このように、底部の外周縁にリング状の突出部を設け、この突出部を床やパレット等に接地させて樹脂容器全体を支えることは好ましくなく、容器本体の底部を接地させることが要望されていた。
【0009】
ところで、樹脂容器では、蒸気圧の高い液体を充填すると、天部が外側に膨れるように大きく変形する。よって、蒸気圧の高い液体を充填した樹脂容器の上に、パレット等を介して他の樹脂容器を積重ねたり、下の樹脂容器に上の樹脂容器を直接、千鳥状に積重ねたりする等、種々の物品を積重ねようとしても、積重ねた物品の安定性が悪いものであった。また、栓を装着する栓口が天部に突設された樹脂容器の場合には、上に種々の物品を積重ねることで、この物品の接触により栓口が損傷する虞があった。
【0010】
ここで、天部の外周縁に上方に突出するリング状の突出部を設け、この突出部の上面に種々の物品を積重ねることができるようにした樹脂容器が案出されてはいる。しかしながら、天部から突出するリング状の突出部を有する従来既存の樹脂容器では、リング状の突出部の高さが十分ではなく、天部が大きく変形すると、天部の上面や栓口が突出部から飛び出てしまうものであった。
【0011】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、容器本体の底部を接地させて床やパレット等に置かれる樹脂容器であっても転倒し難く、また、蒸気圧の高い液体を充填した樹脂容器の上に種々の物品を安定して積重ねることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「円筒状の胴部、該胴部の下端を塞ぐ底部、及び、前記胴部の上端を塞ぐ天部を有する外形寸法が直径略600mm、高さ略900mmのドラム状の容器本体が樹脂により一体成形された樹脂容器であって、
前記容器本体と共に一体成形され、前記底部周りに配設されると共に下端が前記底部の最下面よりも高く位置するように前記容器本体の下側の角部分に突設された下リング部と、
前記容器本体と共に一体成形され、前記天部周りに配設されると共に上端が前記天部の最上面よりも少なくとも10mm高く位置するように前記容器本体の上側の角部分に突設された上リング部と
を備えることを特徴とする樹脂容器」
である。
【0013】
ここで、上記構成の樹脂容器では、容器本体の外形寸法として「略」を用いているが、本発明は、200リットル程度の樹脂容器を対象とするものであり、容器本体の寸法については、限界的な意義はない。よって、「略」は、一般常識的な概略値として、±10%と捉えればよい。
【0014】
また、下リング部や上リング部が設けられる容器本体の下側や上側の角部分とは、胴部と底部との境界部分や胴部と天部との境界部分を示すものではあるが、胴部、底部及び天部が樹脂により一体成形された容器本体では、胴部と底部との境界、胴部と天部との境界が必ずしも明確ではない。よって、容器本体の下側の角部分については、胴部と底部との境界及びその近傍として捉えればよく、また、容器本体の上側の角部分については、胴部と天部との境界及びその近傍として捉えればよい。そして、上記構成においては、下リングを、胴部と底部との境界部分において、胴部側に設けてもよく、底部側に設けてもよい。また、上記構成においては、上リングを、胴部と天部との境界部分において、胴部側に設けてもよく、天部側に設けてもよい。
【0015】
上記構成の樹脂容器では、容器本体の下側の角部分から突出する下リング部が設けられており、この下リング部の下端は、底部の最下面(最も低いレベルの面)よりも高い位置にあり、床やパレット等に接地されるのは、この底部の最下面である。そして、蒸気圧の高い液体の充填によって底部の最下面が変形して樹脂容器が不安定になったとしても、底部の周りには下リング部が配設されていることから、樹脂容器が傾くと下リング部が床やパレット等に当接して、樹脂容器のそれ以上の傾きを抑制する。すなわち、下リング部は、樹脂容器の転倒防止として機能する。
【0016】
よって、上記構成の樹脂容器は、容器本体の底部を接地させて床やパレット等に置かれる樹脂容器ではあるが、蒸気圧の高い液体を充填しても転倒し難いものとなる。
【0017】
なお、下リングは、床やパレットに置いた樹脂容器そのものの重量を支えるものではなく、樹脂容器が傾いた場合に床やパレットに当接してそれ以上の傾きを抑制するものであればよいことから、さほど厚く形成する必要はなく、また、容器本体の下の角部分において大きく突出させる必要もない。よって、下リング部のない樹脂容器に比して、大幅な重量の増加を招くことはなく、また、金型の著しい大型化や複雑化を招くこともない。
【0018】
ところで、上記構成の樹脂容器では、容器本体の上側の角部分から突出する上リング部が設けられており、この上リング部の上端は、天部の最上面(最も高いレベルの面)よりも少なくとも10mm(換言すれば、10mm以上)高い位置にある。すなわち、上記構成の樹脂容器では、蒸気圧の高い液体を充填して天部が変形したとしても、天部が上リング部の上端からはみ出ることのない上リング部の十分な高さが確保されている。
【0019】
よって、上記構成の樹脂容器では、蒸気圧の高い液体を充填しても、樹脂容器としての最上位の面は上リング部の上端面で不変であり、この不変な上リング部の上端面に種々の物品を安定して積重ねることができる。
【0020】
なお、上リング部の高さの上限については、限界値的な意義はなく、使用に支障がなく、また、安定した品質で安価に量産できる範囲で適宜設定すればよい。具体的には、容器本体からの突出量が、70mm以下、好ましくは60mm以下で、略50mmとするのが、使用の利便性や量産性を考慮した上で上リング部の十分な高さを確保できることから、好適である。
【0021】
上述した手段において、
「前記下リング部の容器本体からの突出量は、前記上リング部の容器本体からの突出量よりも少ないことを特徴とする樹脂容器」
とするのが好適である。
【0022】
上リング部は、天部の最上面から少なくとも10mm高くする必要があり、樹脂容器の角部分からの突出量を十分に大きく設定しなければならないのであるが、下リング部については、樹脂容器の転倒を防止できればよく、容器本体の角部分から大きく突出させる必要はない。よって、上記構成の如く、下リング部の容器本体からの突出量を上リング部の容器本体からの突出量よりも少なく設定することで、樹脂容器全体の無用な重量の増加を招かず、また、樹脂容器をブロー成形する際に用いる金型の無用な大型化、複雑化を招くことがなく、本発明に係る樹脂容器を良好に実現することができる。なお、下リング部を形成するための材料の低減化や金型の簡略化の観点から、下リング部の突出量を、上リング部の突出量の1/2以下とするのが望ましい。
【0023】
上述した手段において、
「前記天部は、栓が装着される突出する栓口を含むものであると共に、該栓口の上端面によって前記最上面が構成されたものであることを特徴とする樹脂容器」
とするのが好適である。
【0024】
上記構成の樹脂容器では、天部の最上面が栓口の上端面によって構成されているのであるが、上リング部の上端の高さは、この栓口の上端面よりも少なくとも10mm高い位置にある。よって、樹脂容器に蒸気圧の高い液体を充填することで天部が変形して栓口上端面の高さが高くなったとしても、栓口の上端面が上リング部の上端からはみ出ることのない十分な高さの上リング部となっている。これにより、蒸気圧の高い液体を充填した樹脂容器の上に種々の物品を積重ねても、栓口は、栓口よりも高い上リング部によって保護されることになり、樹脂容器の上に積重ねた物品が栓口に当接し難くなる。
【0025】
上述した手段において、
「前記下リング部は、前記底部との間に溝を形成するように前記胴部の下部にスカート状に形成されており、
前記上リング部は、上端が前記溝に挿入可能な寸法形状に形成されている
ことを特徴とする樹脂容器」
とするのが好適である。
【0026】
従前のドラム缶や樹脂容器等の容器では、多数の容器を保管したり搬送したりする場合に、下の容器の真上に直に他の容器を積重ねるといったことは想定されておらず、複数の容器の上にパレットを介して他の容器を積重ねたり、複数の容器の上に直に他の容器を千鳥状に積重ねている。
【0027】
これに対して、上記構成の樹脂容器では、上リング部が、下リング部と底部との間に形成された溝に挿入可能な寸法形状に形成されていることから、樹脂容器の真上に直に同じタイプの樹脂容器を、上段の樹脂容器の溝に下段の樹脂容器の上リング部が挿入されるように積重ねれば、同じタイプの二つの樹脂容器を安定して積重ねることができる。
【0028】
なお、上リング部、及び、下リング部と底部との間に形成された溝の夫々を、液体を充填した樹脂容器を積重ねても耐え得る強度とすればよいのであるが、このような態様では、上リング部及び下リング部を十分な厚さで形成しなければならず、無用な重量増加を招く虞がある。よって、上リング部、及び、下リング部と底部との間に形成された溝の夫々を、液体を充填した樹脂容器の積重ねには耐え得ないが、空の樹脂容器を積重ねた場合には耐え得る強度とすればよい。このようにすることで、一つの樹脂容器の真上に直に同じタイプの樹脂容器を積重ねることができ、多数の空の樹脂容器を保管したり搬送したりする場合において、保管や搬送の仕方の自由度が増す。
【発明の効果】
【0029】
上述した通り、本発明によれば、容器本体の底部を接地させて床やパレット等に置かれる樹脂容器であっても転倒し難くすることができ、また、蒸気圧の高い液体を充填した樹脂容器の上に他の樹脂容器を安定して積重ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る樹脂容器の一例を示す部分断面正面図である。
【図2】図1に示した樹脂容器の平面図である。
【図3】図1に示した樹脂容器の底面図である。
【図4】図1におけるA部拡大図である。
【図5】図1におけるB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る樹脂容器の実施形態としての一例を、以下に、図面に従って詳細に説明する。
【0032】
図1〜3に、樹脂容器100の一例を示す。この樹脂容器100は、円筒状の胴部10、この胴部10の下端を塞ぐ底部20、及び、胴部10の上端を塞ぐ天部30を有する形態の容器本体1が樹脂のブロー成形によって一体成形されたものである。また、容器本体1は、外形寸法が直径略600mm、高さ略900mmのドラム状に形成されたものであり、200リットルの液体を入れることができるものである。なお、具体的な寸法は、容器本体1の最大外径が直径576mmであり、容器本体1の高さが893mmであり、容器本体1の肉厚が概ね5mmである。
【0033】
また、容器本体1の上側の角部分には、図4に示すように、上リング部50が突設されており、容器本体1の下側の角部分には、図5に示すように、下リング部40が突設されている。ここで、これら上リング部50及び下リング部40は、容器本体1をブロー成形する際に容器本体1と共に一体成形されてなるものである。なお、上リング部50及び下リング部40の詳細は、後述することとする。
【0034】
胴部10には、上部及び下部の夫々に、複数の微細な凸条11が並設されており、樹脂容器100にロープを掛けた際において、ロープが滑り難くなっている。
【0035】
天部30には、夫々栓が装着される二つの栓口31が突設されており、これら栓口31の上端面が、天部30の最上面(最も高いレベルの面)となっている。また、栓口31を除く天部30の上面は、栓口31の上端面よりも順次低い第一天面33、第二天面32によって構成されている。ここで、第一天面33及び第二天面32の夫々は、湾曲しない平坦面となっており、樹脂容器100に蒸気圧の高い液体を充填しても、外側に大きく湾曲せず、変形し難い面となっている。
【0036】
また、二つの栓口31は、夫々第二天面32から突出するように設けられているのであるが、第二天面32においては、二つの栓口31の間にリブ34が突設されており、天部30は、このリブ34によっても変形し難い構造となっている。なお、リブ34の上端面は、第一天面33と同一レベルとしてあり、第一天面33及びリブ34の上に種々の物品を安定して置くことができるようにしてある。
【0037】
底部20は、その底面が、最もレベルの高い第一底面21、最もレベルの低い第二底面22、及び、第一底面21と第二底面22との間の中間レベルとなった第三底面23によって構成されている。
【0038】
第一底面21は、底部20の中央部分の面であり、緩やかに内側に湾曲する面となっている。なお、この第一底面21は、樹脂容器100を床やパレット等に置いた場合において、接地されない面である。
【0039】
第二底面22及び第三底面23は、上記第一底面21を囲む環状の面であり、夫々、平坦な面となっている。なお、第三底面23は、樹脂容器100を床やパレット等に置いた場合において、接地されない面であるが、第二底面22は、底部20において最下面(最も低いレベルの面)を構成する面であり、樹脂容器100を床やパレット等に置いた場合において接地される面である。
【0040】
なお、本例においては、第三底面23が、天部30の栓口31の真下に対応する部分に設けられている。そして、第二底面22は、図3において格子模様で示すように、第三底面23によって分断された対向する一対の半円弧状の面となっている。よって、本例の樹脂容器100では、蒸気圧の高い液体の充填により底部20が変形したとしても、接地面である第二底面22が球面形状となり難く、安定性がよい構造となっている。
【0041】
上リング部50は、天部30周りに設けられており、図4に示すように、容器本体1の上側の角部分に突設されている。ここで、上リング部50の先端部分は、略L字状に形成されており、上リング部50の先端部分の十分な強度が確保されている。また、略L字状に形成された上リング部50の先端部分の表面には、複数の細微な凸条51が設けられており、上リング部50を手で掴んで樹脂容器100を搬送する際に、手が滑り難くなっている。
【0042】
この樹脂容器100では、上リング部50の上端面が樹脂容器100全体における最も上の面となるのであるが、上リング部50の上端面は、天部30に突設された栓口31の上端面よりも10mm以上高くなっている。より具体的に、上リング部50の上端面は、栓口31の上端面よりも18mm高くなっている(図4のH1参照)。よって、樹脂容器100への蒸気圧の高い液体の充填によって天部30が大きく変形したとしても、栓口31の上端面が上リング部50の上端面からはみ出すことがなく、樹脂容器100の上に種々の物品を積重ねた場合に、上の物品が不安定になることはない。また、栓口31は、天部30に突設されたものであるが、上リング部50によって保護されることから、樹脂容器100の上リング部50の上にパレット等の種々の物品を積重ねたとしても、物品が栓口31に当接して栓口31を破損させることがない。
【0043】
また、第一天面33及び第二天面32は、口栓31よりも低い位置にあり、上リング部50の上端面は、当然、これら第一天面33及び第二天面32より高い位置にあるのであるが、具体的に、第一天面33よりも35mm高く(図4のH2参照)、第二天面32よりも45mm高い位置にある(図4のH3参照)。
【0044】
また、上リング部50は、天部30の周りに設けられているのであるが、天部30との間に溝(以下「上リング溝52」と称する)が形成されるように容器本体1の角部分に形成されている。そして、上リング部50は、上リング溝52の底から50mmの高さとなっており(図4のH4参照)、容器本体1の角部分からの上リング部50の突出量は、50mmとなっている。なお、上リング溝52は、第二天面32に対する深さが5mmであり、上リング部50にて囲まれた領域における最下部を構成する。よって、この上リング溝52に雨水やこぼれた液体等が溜まるのであるが、上リング部50の下部には、栓口31と対向する部位に、上リング溝52を外リング部50外面に連通させる水抜き孔(図示省略)が穿設されており、上リング溝52に溜まった雨水や液体等は、この水抜き孔を通じて上リング部50の外面側に良好に排出される。
【0045】
下リング部40は、底部20周りに設けられており、図5に示すように、容器本体1の下側の角部分に突設されている。ここで、下リング部40の先端部分は、略L字状に形成されており、下リング部40の先端部分の十分な強度が確保されている。また、下リング部40の基端部分の表面には、複数の細微な凸条41が設けられており、樹脂容器100をひっくり返す場合等において下リング部40を手で掴んだ際に、手が滑り難くなっている。
【0046】
この樹脂容器100では、底部20の最下面(具体的に本例では第二底面22)が樹脂容器100全体における最も下位の面となるのであるが、下リング部40の下端面は、底部20の最下面よりも高くなっている。より具体的に、下リング部40の下端面は、底部20の最下面よりも6mm高くなっている(図5のH5参照)。よって、樹脂容器100への蒸気圧の高い液体の充填によって底部20が変形し、樹脂容器100が不安定になって傾いたとしても、僅かな傾きで下リング部40の下端が接地し、樹脂容器100のそれ以上の傾きを抑制する。そして、これにより、樹脂容器100の転倒が防止される。
【0047】
なお、下リング部40を具備する樹脂容器Aと、下リング部40を除去した樹脂容器Bとの夫々に、水を充填し、150kPaの圧力を付加して平坦な床面に放置したところ、樹脂容器Bが30日経過後に転倒したのに対して、樹脂容器Aは転倒しなかったといった実証結果を出願人は得ており、下リング部40による転倒防止効果が十分に発揮されていることは実証済である。
【0048】
ところで、下リング部40は、底部20周りに配設されているのであるが、底部20との間に溝(以下「下リング溝42」と称する)が形成されるように容器本体1の角部分に形成されている。そして、下リング部40は、下リング溝42の底から20mmの高さとなっており(図5のH6参照)、容器本体の角部分からの下リング部40の突出量は20mmとなっている。ここで、この下リング部40の突出量は、上述した上リング部50の突出量(50mm)よりも小さいものであり、上リング部50の突出量の1/2以下となっている。このように、本例の樹脂容器100では、無用に大きく突出しない下リング部40とすることで、樹脂容器100全体の無用な重量増加を招くことがないように構成されている。
【0049】
また、下リング部40は、下リング溝42が形成されるように胴部20の下部にスカート状に形成されており、下リング溝42及び上リング部50の寸法形状は、夫々、上リング部50の上端が下リング溝42に挿入可能な寸法形状に設定されている。よって、樹脂容器100の真上に同じタイプの他の樹脂容器100を直に積重ねると、下の樹脂容器100の上リング部50に上の樹脂容器100の下リング溝42が嵌って、二つの樹脂容器100を安定して積重ねることができる構成となっている。
【0050】
なお、樹脂容器100の底部20の第三底面23は、前述した通り、最も低い第二底面22に対して凹んで高い位置にあることから、下段の樹脂容器100の真上に直に上段の樹脂容器100を積重ねた場合において、下段の樹脂容器100の栓口31の上方に上段の樹脂容器100の第三底面23を位置させることで、下段の樹脂容器100の栓口31に上段の樹脂容器100の底部20が接触し難くなる。また、本例の樹脂容器100では、このように積重ねることで下段の樹脂容器100の栓口31に上段の樹脂容器100の底部20が接触しないように、口栓31や第三底面23の寸法形状が設定されている。
【0051】
以上、本発明に係る樹脂容器の一例を説明したが、本発明に係る樹脂容器は、上述の例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜の変更が可能である。
【0052】
例えば、上述した例の樹脂容器における各種寸法は、あくまでも例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 容器本体
10 胴部
11 凸条
20 底部
21 第一底面
22 第二底面
23 第三底面
30 天部
31 栓口
32 第二天面
33 第一天面
34 リブ
40 下リング部
41 凸条
42 下リング溝
50 上リング部
51 凸条
52 上リング溝
100 樹脂容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部、該胴部の下端を塞ぐ底部、及び、前記胴部の上端を塞ぐ天部を有する外形寸法が直径略600mm、高さ略900mmのドラム状の容器本体が樹脂により一体成形された樹脂容器であって、
前記容器本体と共に一体成形され、前記底部周りに配設されると共に下端が前記底部の最下面よりも高く位置するように前記容器本体の下側の角部分に突設された下リング部と、
前記容器本体と共に一体成形され、前記天部周りに配設されると共に上端が前記天部の最上面よりも少なくとも10mm高く位置するように前記容器本体の上側の角部分に突設された上リング部と
を備えることを特徴とする樹脂容器。
【請求項2】
前記下リング部の容器本体からの突出量は、前記上リング部の容器本体からの突出量よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の樹脂容器。
【請求項3】
前記天部は、栓が装着される突出する栓口を含むものであると共に、該栓口の上端面によって前記最上面が構成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂容器。
【請求項4】
前記下リング部は、前記底部との間に溝を形成するように前記胴部の下部にスカート状に形成されており、
前記上リング部は、上端が前記溝に挿入可能な寸法形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の樹脂容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−228800(P2010−228800A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80928(P2009−80928)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000105590)コダマ樹脂工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】